平成30(ワ)33181 損害賠償請求事件

裁判年月日・裁判所
令和3年12月27日 東京地方裁判所
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判決文本文29,111 文字)

令和3年12月27日判決言渡同日原本領収裁判所書記官平成30年(ワ)第33181号損害賠償請求事件口頭弁論終結日令和3年10月11日判決主文 1 原告の請求を棄却する。 2 訴訟費用は原告の負担とする。 事実 及び理由第1 請求被告は,原告に対し,1100万円及びこれに対する平成30年10月18日か ら支払済みまで年5分の割合による金員を支払え。 第2 事案の概要等 1 事案の概要本件は,被告が発行した週刊誌「週刊文春」第60巻第40号(以下「本件雑誌」という。)に掲載された記事によって名誉を毀損されたと主張する原告が,被告に 対し,民法709条に基づき,慰謝料と弁護士費用の合計1100万円及びこれに対する本件雑誌の発売日である平成30年10月18日から支払済みまで平成29年法律第44号による改正前の民法所定の年5分の割合による遅延損害金の支払を求める事案である。 2 前提事実(当事者間に争いがないか,後掲各証拠(以下,特に明記しない限 り,枝番の表記は省略する。)及び弁論の全趣旨により容易に認められる事実)(1)当事者等原告は,本件雑誌が発行された当時,内閣府特命担当大臣(地方創生・規制改革・男女共同参画),女性活躍担当大臣及びまち・ひと・しごと創生担当大臣であった者であり,衆議院議員を1期務めた後,平成22年7月以降,参議院議員を2 期務めていた。 被告は,雑誌,書籍の発行,販売等を目的とする株式会社であり,週刊誌「週刊文春」を発行,販売している。 (2)被告による本件雑誌の発行(甲1)被告は,平成30年10月18日,本件雑誌を発行した。 本件雑誌には,「A大臣国税口利きで百万円」(別紙1中①),「証 文春」を発行,販売している。 (2)被告による本件雑誌の発行(甲1)被告は,平成30年10月18日,本件雑誌を発行した。 本件雑誌には,「A大臣国税口利きで百万円」(別紙1中①),「証拠文書入 手!」,「古巣・財務省に関する口利きの依頼を受け,側近秘書が依頼人に送った文書にはこうある。『着手金100万円を』『国税に手配させて頂きます』。金を振り込んだ依頼人の前で局長に電話したA氏は,こう言ったという。『100万なんて決して高くないわよね』。」(別紙1中②)との目次と,「A大臣国税口利きで百万円」と題する別紙2記載の記事(以下「本件記事」という。)が掲載されており, 本件記事の冒頭には,「あっせん利得処罰法違反の疑い」,「A大臣」,「国税口利きで百万円」との大見出し(別紙2中③,④)及び「証拠文書入手!」,「古巣・財務省に関する口利きの依頼を受け,側近秘書が依頼人に送った文書にはこうある。 『着手金100万円を』『国税に手配させて頂きます』。金を振り込んだ依頼人の前で局長に電話したA氏は,こう言ったという。『100万なんて決して高くないわ よね』。」との見出し(別紙2中⑤)に続けて,「『二人分も三人分もある存在感で女性活躍の旗を掲げてもらいたい』。B首相が高く評価する唯一の女性閣僚に重大疑惑が持ち上がっている。A大臣が事務所ぐるみで財務省に口利きを行い,百万円を受け取ったというのだ。決定的証拠とともに爆弾証言を公開する。」とのリード文(別紙2中⑩の記載参照)が記載されている。 また,本件記事の本文部分には,原告について,概要,以下のような疑惑(以下「本件疑惑」という。)が記載された上で,被告は平成28年頃から本件疑惑を取材していたが,その当時は100万円の支払を裏付ける確証が得られなかったため記事 原告について,概要,以下のような疑惑(以下「本件疑惑」という。)が記載された上で,被告は平成28年頃から本件疑惑を取材していたが,その当時は100万円の支払を裏付ける確証が得られなかったため記事化を見送ったこと(別紙2中⑳,㉑の各記載参照)や,原告にはあっせん利得処罰法(公職にある者等のあっせん行為による利得等の処罰に関する法律のこと。 以下同じ。)違反の疑いがあり,告発状が提出されれば捜査の対象となるだろうと の元検察官による指摘(別紙2中㉓の記載参照)が記載されている。なお,本件記事のうち原告が名誉毀損部分として主張する各記載(別紙1中①及び②,別紙2中③ないし㉖,以下「本件各記載」という。)の読み方については当事者間に争いがあるものの,別紙1中②及び別紙2中⑤ないし㉒,㉔ないし㉖の記載並びにこれを前提とする別紙1中①及び別紙2中③,④,㉓の記載が原告の社会的評価を低下さ せるものであることについては当事者間に争いがない。 ア製造業を営むX氏は,平成27年当時,自身の会社に税務調査が入り,青色申告の承認が取り消されそうになったことで悩んでいたところ,知人から旧大蔵省出身の原告を紹介すると言われ,参議院議員会館に所在する原告の事務所(以下,特に区別しない限り,組織としての原告の事務所と場所としての原告の事務所をい ずれも「原告事務所」という。)の秘書を通じて,原告の私設秘書であり,原告の政治活動を支える「右腕」ともいうべき存在であった税理士のCを紹介された。X氏は,Cが「大丈夫ですから,安心してください。」などと言ったことから,同年6月頃,税務調査への対応をCに依頼した。(別紙2中⑦ないし⑨,⑱,⑲,㉒,㉕の各記載参照) イその後,差出人欄に「議員名参議院議員 A」,「秘書名秘書・税 どと言ったことから,同年6月頃,税務調査への対応をCに依頼した。(別紙2中⑦ないし⑨,⑱,⑲,㉒,㉕の各記載参照) イその後,差出人欄に「議員名参議院議員 A」,「秘書名秘書・税理士C」と記載され,「着手金100万円を,至急下記にお願い申し上げます。ご確認後,国税に手配させて頂きます。」と記載された平成27年7月1日付けの書類送付状(以下「本件送付状」という。)がX氏のもとに届いた。X氏は,原告やその秘書が国税当局に対して働きかける「口利き」によって,自身の会社に対する青色 申告の承認が取り消されないようにしてくれるとの認識で,同月10日,本件送付状記載の指定口座に100万円を振り込んだ。(別紙2中⑥,⑪,⑰,㉔の各記載参照)ウしかし,その後,Cからの報告がなかったことから,X氏は,同年9月頃,関係者と共に原告事務所を訪れた。X氏が「口利き」の件で既に100万円を指定 口座に振り込んだことを原告に報告したところ,原告は,傍らの秘書に対し,「C にすぐ連絡して!(こっちに)振り込みさせなさい!」と怒鳴りつけたが,秘書はCに連絡を取ることができなかった。最終的に,原告は,X氏に対し,「じゃあやっておきますよ。任せてもらえれば,大した問題じゃないから。」と言い,旧知の国税局長がいると言って電話を掛けようとした。電話は繋がらなかったが,原告は,X氏に対し,「うまくいったら,100万円なんて決して高いものじゃないわよね。」 と言った。(別紙2中⑫ないし⑯,㉖の各記載参照) 3 争点及びこれに関する当事者の主張(1)真実性・相当性の抗弁(争点1)【被告の主張】ア意見ないし論評のような表現行為が名誉毀損に該当するとしても,その行為 が公共の利害に関する事実に係り,かつ,そ る当事者の主張(1)真実性・相当性の抗弁(争点1)【被告の主張】ア意見ないし論評のような表現行為が名誉毀損に該当するとしても,その行為 が公共の利害に関する事実に係り,かつ,その目的が専ら公益を図ることにあった場合に,当該意見ないし論評の基礎となった事実が重要な部分について真実であることの証明があれば,人身攻撃に及ぶなど意見ないし論評としての域を逸脱したものでない限り,その表現行為に違法性はなく,仮に,真実であることの証明がないとしても,行為者においてその事実を真実と信ずるについて相当の理由があれば, 故意又は過失が否定される。 本件記事のうち本件各記載は,原告事務所がX氏から依頼された国税当局への「口利き」を受け入れ,原告がその秘書やCと共に事務所ぐるみで「口利き」の対価として100万円をX氏に要求し,現実にもこれを受け取ったとの事実(以下「被告主張の基礎事実」という。)を基礎として,国税当局への「口利き」の対価 として原告側が100万円を受け取ったことは,あっせん利得処罰法違反に当たる疑いがあるとの法的見解を表明したものである。 そして,以下のとおり,本件雑誌の発行については,公共性及び公益目的が認められ,また,被告主張の基礎事実は重要な部分について真実であり,あるいは被告において真実と信ずるについて相当の理由があるといえ,法的見解については人身 攻撃に及ぶなど意見ないし論評としての域を逸脱したものでない。 イ公共性及び公益目的原告は,本件雑誌が発行された当時,内閣府特命担当大臣等を務めていた3期目の国会議員である。このような地位にある原告が事務所ぐるみで国税当局への「口利き」の対価として100万円を受け取るというあっせん利得処罰法違反の疑いがある行為に及んだとの 当大臣等を務めていた3期目の国会議員である。このような地位にある原告が事務所ぐるみで国税当局への「口利き」の対価として100万円を受け取るというあっせん利得処罰法違反の疑いがある行為に及んだとの本件疑惑は,内閣府特命担当大臣等としての重責を担い,か つ,国民の厳粛な信託を受けて長期間にわたり国会議員を務める人物としての資質を問われるべき重大な問題である。したがって,原告側が国税当局への「口利き」の対価として100万円を受け取ったことについて,あっせん利得処罰法違反の疑いがあることを報じた本件記事は,公共の利害に関する事実に係るものというべきである。 そして,本件疑惑を報じるために,被告が本件記事の掲載された本件雑誌を発行することは,公衆の正当な関心に応えることになるとともに,有権者たる国民の知る権利に奉仕するものであるから,その目的は専ら公益を図ることにあったというべきである。 ウ真実性及び相当性 (ア) 被告の契約記者であるDは,平成28年5月,知人から原告に関する情報を有する原告事務所関係者であるEを紹介され,同年6月2日に取材をする機会を得た。Dは,Eから,①かつてから知り合いの製造業を営む株式会社F´に平成27年税務調査が入り青色申告の承認が取り消されるおそれが生じたこと,②Eが株式会社F´の代表取締役であるF(本件記事で「X氏」とされている。)に原告を 紹介することを提案したところ,Fがこれを希望したため,原告事務所の秘書であったGに連絡したこと,③Gから株式会社A´で役員を務めるなど原告の政治活動を支える右腕ともいうべき,税理士であり原告の私設秘書でもあるCを紹介されたこと,④FはCに税務調査の対応を依頼したこと,⑤その後Cから具体的な経過報告がなかったため,EとFは原告と話をするため 動を支える右腕ともいうべき,税理士であり原告の私設秘書でもあるCを紹介されたこと,④FはCに税務調査の対応を依頼したこと,⑤その後Cから具体的な経過報告がなかったため,EとFは原告と話をするために原告事務所を訪れたこと,⑥原 告は,E及びFに対し非常に不機嫌そうな対応をしたが,EとFが事実経過を説明 したところ,Cに連絡を取ろうとし,連絡が取れなかったことなどの話を聞いた。 Dの取材を進めるために加わった被告の記者のHは,原告の政治資金収支報告書,同報告書に記載されている企業の登記情報,Cの関係する企業の登記情報,株式会社F´の会社情報などを収集し,Dは株式会社A´の所在地のビルを訪問してその確認を行った。その結果,株式会社A´の登記情報(乙1の1及び乙1の2)によ れば,Cは平成22年11月から同社の監査役,平成24年12月から同社の取締役を歴任していることが判明し,また,Cのブログ(乙2)によれば,Cは,原告の母親の葬儀の際の来賓受付や電報整理を行い(平成23年2月17日),原告の中国訪問をアレンジし(同年8月23日),原告の代理として挨拶する(平成24年1月27日)などしており,Cと原告が非常に近しい関係にあることが分かり, Cが原告の政治活動を支える右腕というべき存在であるなどとするEの発言が裏付けられた。 DとHは,平成28年6月25日,Fの自宅を訪ねたが,Fが不在であったことから,Fの妻と思われる人物に対し,取材趣旨を記した手紙をFに渡すよう依頼した。Fは,同日夜,Dに電話をして取材を拒んだが,Dの要請により面談を行うこ とを了承した。DとHは,同月27日,Fと面談し,同人から,①平成27年,株式会社F´に税務調査が入ったことで青色申告の承認が取り消されそうになったこと,②税務調査 の要請により面談を行うこ とを了承した。DとHは,同月27日,Fと面談し,同人から,①平成27年,株式会社F´に税務調査が入ったことで青色申告の承認が取り消されそうになったこと,②税務調査の対応に悩んでいたところ,Eから原告を紹介しようとの提案があり,これを希望したところ,Cを紹介されたこと,③Cと,株式会社A´が所在する東京都港区麻布十番のビルの一室で会い,青色申告の承認取消しは困ることを訴 えたところ,Cから「大丈夫ですから,安心してください」と言われたので,税務調査の対応を依頼したこと,④後日,差出人を「議員名参議院議員 A」,「秘書名秘書・税理士 C」とする書類が届いたため,原告やその秘書が国税当局に働きかけてくれると認識し,着手金100万円を指定口座に振り込んだこと,⑤Eと共に原告事務所を訪れたところ,原告から「何?何の用ですか?忙しいのよ。」な どと不機嫌そうな対応をされたが,Eと共に事実経過を説明したところ,原告が 「Cにすぐ連絡して!(こっちに)振り込みさせなさい!」などと述べたこと,⑥Cに連絡が取れなかったところ,最終的に,原告は,自分とEの説明を聞いた上で,「じゃあやっておきますよ。任せてもらえれば大した問題じゃないから。」などと述べたこと,⑦しかしながら,結果的に青色申告の承認は取り消されたこと,⑧その後,Cと電話で話したところ,Cから「頂いたお金は全てA本人に取られた」と 言われたこと,⑨Fが原告に電話したところ,原告が「なんかいろいろ過去のことで駄目みたいです。言うだけは言っておいたんですけどね。」と述べたことなどの話を聞いた。Dが,Fに対し,裏付けとなるものがあるかを確認したところ,Fから,Cの名刺(乙3),原告の名刺(乙4),差出人欄に「議員名参議院議員A」,「 いたんですけどね。」と述べたことなどの話を聞いた。Dが,Fに対し,裏付けとなるものがあるかを確認したところ,Fから,Cの名刺(乙3),原告の名刺(乙4),差出人欄に「議員名参議院議員A」,「秘書名秘書・税理士 C」,「住所東京都千代田区永田町2-1-1 (注:参議院議員会館の住所)」と記載され,末尾に「着手金100万円を,至急下記(注:Cが代表を務めるC´税理士法人名義の普通預金口座)にお願い申し上げます。ご確認後,国税に手配させて頂きます。」と記載された本件送付状(乙5),Fが上記指定口座に平成27年7月10日に100万円を振り込んだことが分かる書類(乙6,以下「本件照会回答書」という。),Cが代表を務める税理士法人に対 する税務代理権限証書(乙7,以下「本件権限証書」という。)などが提供された。 DとHは,平成28年7月6日,Fに対する取材を再度実施した。Fは,先の話に加えて,①原告事務所を訪れた際,原告が旧知の国税局長がいると言って電話を掛けようとしたが繋がらなかったこと,②原告が「うまくいったら,100万円なんて決して高いものじゃないわよね。」などと言ったこと,③結果的に青色申告の 承認が取り消されたため,Cと共に税務署の担当職員から説明を聞いた際,同職員がCに「いろいろ書いてあるから,A先生に渡してくれ。」などと言って税務署長から預かったとする封筒を手渡したため,原告が国税当局に手を回してくれていたと思われること,④Dらが先日の取材に来た後,原告から電話があり「リークしているのは〇〇だから。」などと述べていたことなどを話した。 Dは,同月16日,Cに電話を掛け,Fの氏名や具体的な内容を告げずに,「業 者から口利きの金を受け取ってトラブルになっていると聞いたが?」と尋ねた。C いたことなどを話した。 Dは,同月16日,Cに電話を掛け,Fの氏名や具体的な内容を告げずに,「業 者から口利きの金を受け取ってトラブルになっていると聞いたが?」と尋ねた。Cは,約1時間にわたり,Fの氏名や相談内容,株式会社F´の内情について自ら語り始め,Fからは交通費と出張日当相当額のみ受領し,100万円を受領したことはないこと,原告がこのことを知っているかどうかは分からないこと,Cは同年2月25日付けで原告の秘書を退任したが,原告の側近であったことを述べた。その 後,Cが同年7月22日にDに電話を掛けてきたため,Dが100万円は貰っていないとの話の真偽を確認したところ,Cは,そんなことは言っていない,着手金として100万円はもらったなどと受領したことを認めた。 Dは,平成30年10月1日,翌2日の内閣改造で原告が入閣するとのニュースが報じられたことから,本件疑惑について再度取材を進めることとした。 同月9日にDが株式会社F´を訪問して再度Fに対価の支払及び原告による「口利き」に関する経緯を確認したが,Fは前回の取材において述べた内容と同じ内容を述べた。 同月11日,Hは,Cが代表を務める税理士法人の口座である本件送付状に記載されている振込先口座が実在することを確認した。そのため,Fの発言は信用性が 高いと判断できた。 同月12日,被告の記者のIが税理士に取材したところ,法人に対する青色申告の承認取消処分に対する不服申立てをする際の報酬相場は30万円程度であり,100万円の着手金は非常に高いとの回答を得た。また,同日,被告の記者のJが元特別国税調査官に取材したところ,国税庁は平成12年に定めた「法人の青色申告 の承認の取消しについて」という指針に従って機械的に処分しているため, との回答を得た。また,同日,被告の記者のJが元特別国税調査官に取材したところ,国税庁は平成12年に定めた「法人の青色申告 の承認の取消しについて」という指針に従って機械的に処分しているため,国会議員や税理士など外部からの交渉で何とかなるものではないこと,税務署に青色申告の承認を取り消すかもしれないと言われた段階で簡単に「任せてください」などと言って100万円を受け取るのは詐欺的であり,税理士の仕事とは到底いえないこと等の回答を得た。 Jは,同月13日,Cに対する電話取材を実施した。Cは,Jによる取材に応じ たが,Fから受領した100万円が原告の手に渡ったのかについては「そこについてはノーコメントにさせてください。」と述べ,Cが税務署職員から原告宛てに封書を預かったかについては「記憶が定かでない。」と述べるとともに,「場合によっては政変になりますからね,一気に。」などと述べた。 被告の記者のK及びIは,同13日,講演のために鳥取県内を訪れていた原告に 対し,Fに依頼されて国税当局への「口利き」をしたか尋ねた。これに対し,原告は,「いや,そんなことは知らないです,私。」と述べた。 Kは,同13日,大学時代に原告と同じテニスサークルに属し,旧大蔵省の入省時期も原告と1年違いの後輩であって,平成27年7月頃から平成28年5月頃までの間,株式会社F´が所在する長野県の税務署を管轄する関東信越国税局長を務 めていたLの自宅を訪れ,Lに対する取材を実施した。Lは,Kによる取材に応じ,原告との関係について雄弁に語ったが,関東信越国税局長を務めていた頃に原告から青色申告の承認取消しの件で連絡を受けたことがあるかについては,「仕事,個別の事案は,業務上お話しできないことになっているんで。」と一転して口ごもり, たが,関東信越国税局長を務めていた頃に原告から青色申告の承認取消しの件で連絡を受けたことがあるかについては,「仕事,個別の事案は,業務上お話しできないことになっているんで。」と一転して口ごもり,具体的な回答をすることはなかったが,原告からの連絡はなかったと否定すること もなかった。他方,Iは,同日,旧大蔵省に原告と同期に入省し,平成27年頃に金融庁監督局長を務めていたMに対する電話取材を実施したが,Mは,原告から青色申告の承認取消しの件で連絡を受けたことがあるかについて,Lとは異なり,「3年前ですか?そんな相談なかったと思いますけど。」と明確に否定した。 Kは,同月14日,原告が選挙応援のために訪れる新潟県に向かったが,直接取 材を行うことができなかった。他方,同日,Iは,Fが原告ないし原告事務所に相談するに至った経緯,Cに対し100万円を支払った事実についての原告の認識,Fらが原告事務所を訪れた事実及びその際の原告の言動の有無,Cが100万円は原告に取られたとFに説明したこと,Cの秘書の退任時期や理由などについて回答を求める「取材のお願い」と題する文書(乙9)を原告事務所にファクシミリ送信 した。これに対し,原告事務所は,同月15日,「回答書(10月14日付取材の お願い)」と題する文書(乙10)を被告にファクシミリ送信し,その中で,平成27年7月頃,株式会社F´が税務調査を受けているようだとの連絡を受け,原告事務所の秘書が原告に相談の上,知り合いの税理士であるCを紹介した事実は認めたが,Cは同年5月頃には既に私設秘書を退職していたと主張し,Cが100万円は原告に取られたとFに説明したことやFらが原告事務所を訪れた際に原告がFら の説明を受けた上で「口利き」をしようとしたことなどの事実関係につい 既に私設秘書を退職していたと主張し,Cが100万円は原告に取られたとFに説明したことやFらが原告事務所を訪れた際に原告がFら の説明を受けた上で「口利き」をしようとしたことなどの事実関係については全面的に否定した。 Iは,平成30年10月15日,Cから電話を受けた。IはCに電話番号を教示したことはなかったため,Cは,前日に原告事務所に送付された「取材のお願い」と題する文書(乙9)に記載されていた電話番号を原告事務所から教えられて,電 話を掛けてきたものと思われる。この電話の中で,Cは,「A大臣は,仕事を続けたいということで,防御をされると思うんです。ただ他人に何かを押し付け,自分の責任を逃れるということになれば,反論に出された人(C自身のこと)が不可逆的な不利益を被るということがあるということはご注意ください!」などと述べた。 同時に,Cは,自分が原告の秘書という肩書の名刺を使用していることを原告は当 然認識しており,勝手に秘書を名乗っていたものではないことを強調し,原告から「Cには事務所の名刺を使わないよう注意していたのに,勝手に秘書を名乗って,今回の行為に及んだ」などと切り捨てられるのではないかと懸念している様子であった。 (イ) このように,国税当局への「口利き」の対価として原告側が100万円を 受け取ったことを報じる本件記事は,F及びEという,原告が旧知の国税局長に「口利き」をしようとした現場に居合わせた当事者による具体的かつ詳細な発言,陳述ないし供述に基づいているところ,これらの発言等は,差出人に原告の氏名の記載のある本件送付状や本件照会回答書などの客観的証拠に裏付けられているとともに,相互の発言等が裏付けとなっており,その内容は真実といえる。なお,本件 雑誌が発行された後,被告は,当時原告の 記載のある本件送付状や本件照会回答書などの客観的証拠に裏付けられているとともに,相互の発言等が裏付けとなっており,その内容は真実といえる。なお,本件 雑誌が発行された後,被告は,当時原告の秘書であり,Fらと原告が面会した平成 27年9月4日に同席したGの発言,陳述及び供述を得ているが,Gは,①同年6月頃,Eから株式会社F´の税務に関する相談が持ち込まれ,原告が不在だったことから対応したこと,②原告に国税当局に圧力を掛けさせるようなことはさせたくなかったため,Cに頼んでやってもらったらどうかと原告に提案し,原告がこれを承諾したため,Cに話を振ったこと,③その後,EからCの対応について連絡があ ったため,Cにきちんと対応するよう話をしていたこと,④FとEが原告事務所を訪れた際には,同席しており,事情を聴いた原告が,「Cに直ぐ連絡して!(こっちに100万円を)振り込ませなさい!」と怒鳴り始めたため,Cに連絡を試みたが繋がらなかったこと,⑤原告がFらとの面談の最中に,国税関係者に電話を掛けたが,そのときには電話は通じなかったことを具体的に述べており,この内容はF やEによる発言等の内容と一致しているから,被告主張の基礎事実の真実性はさらに確固たるものとなったといえる。 Gの発言等がないとしても,その他の者の発言等の信用性について客観的証拠の有無などに照らして慎重に吟味し,真実であると確認した被告において,真実と信じるにつき相当の理由があったと認められる。 (ウ) これに対し,原告は,Cが原告の「右腕」ともいうべき私設秘書であったことはないと主張する。しかしながら,原告は,国会議員が自分の秘書ではない者に交付するとは考え難い議員会館への出入記章をCに交付していたことを認めている。また,被告の記者からの べき私設秘書であったことはないと主張する。しかしながら,原告は,国会議員が自分の秘書ではない者に交付するとは考え難い議員会館への出入記章をCに交付していたことを認めている。また,被告の記者からの質問に対して原告事務所が作成した回答書(乙10)には,同事務所としてはCが平成27年5月に私設秘書を退職したと認識している 旨記載されている。さらに,Cは,肩書を原告の秘書とし,原告事務所の住所が記載された名刺を使用していた。以上によれば,Cが原告の私設秘書であったことは明らかである。なお,国会議員によっては,秘書として雇用しておらず,給与・報酬を支払っていない者に対しても,自分の秘書と名乗ることを認めている場合があり,原告がCを秘書として雇用しておらず,給与・報酬を支払っていなかったとし ても,Cが原告の私設秘書であったことに変わりはない。 また,原告は,FとEが平成27年9月4日に原告事務所を訪れたことについては,原告のスケジュール表にFらとの面会の予定が記載されていないことや,Fらが原告事務所を訪れたことを示す面会申込書が参議院議員会館に存在しないこと,原告の同日のスケジュールからすればFらと面会する余裕はなかったこと等からして虚偽である旨主張する。しかしながら,Gの供述によれば,直前に追加された予 定については原告のスケジュール表に記載されないことがあったというのであるし,Fらが原告事務所を訪れた際にはGが通行証を用意していたのであるから,通行証を受け取るための面会申込書が存在しないとしてもおかしくはない。また,原告の主張するスケジュールによっても,原告が上記同日に原告事務所でFらと面会することは十分に可能であったというべきであるから,原告の上記主張には理由がない。 なお,E及びGは原告に対し ,原告の主張するスケジュールによっても,原告が上記同日に原告事務所でFらと面会することは十分に可能であったというべきであるから,原告の上記主張には理由がない。 なお,E及びGは原告に対して特段の悪感情を抱いておらず,国会議員という強い立場にある原告について,殊更に虚偽の供述をして偽証罪の制裁を受ける危険を冒す必要は何らないはずであるから,同人らの供述の信用性を疑う余地はない。 エ被告主張の基礎事実を基礎として,本件記事において表明された「国税当局への『口利き』の対価として原告側が100万円を受け取ったことは,あっせん利 得処罰法違反に当たる疑いがある」との法的見解が,人身攻撃に及ぶなど意見ないし論評としての域を逸脱したものということはできないオ以上によれば,被告が本件記事の掲載された本件雑誌を発行した行為は,違法性を欠くか,故意又は過失が否定されるというべきである。 【原告の主張】 ア被告の主張のうち,本件雑誌が発行された当時,原告が内閣府特命担当大臣等を務める国会議員であったことは認め,被告の記者らによる本件疑惑に関する取材経過については不知,その余はいずれも否認する。 イ事実を摘示する表現行為が名誉毀損に該当するとしても,その行為が公共の利害に関する事実に係り,かつ,その目的が専ら公益を図ることにあった場合に, 当該事実が真実であることの証明があれば,その表現行為に違法性はなく,仮に真 実であることの証明がないとしても,行為者においてその事実を真実と信ずるについて相当の理由があれば,故意または過失が否定される。なお,被告は真実性・相当性の証明対象となる事実について「重要な部分」であることとするが,これは,新聞記事が本来有する表現の自由,迅速性等の要請からきた特殊性ゆえ あれば,故意または過失が否定される。なお,被告は真実性・相当性の証明対象となる事実について「重要な部分」であることとするが,これは,新聞記事が本来有する表現の自由,迅速性等の要請からきた特殊性ゆえであり,雑誌記事のように,新聞記事と比較して知る権利に奉仕する程度が低く,その内容も 迅速性が要求されないものについては,真実性ないし相当性の証明対象は「重要な部分」に限定されない。 ウ本件記事のうち本件各記載が摘示する事実別紙1中①及び別紙2中③,④の各記載は,原告が国税当局への「口利き」を行い100万円を受領したことが,あっせん利得処罰法違反の疑いがあるとの事実を 摘示するものである。 別紙1中②及び別紙2中⑤,⑥の各記載は,原告の側近秘書が着手金100万円で「口利き」の手配をする旨の約束をし,その後,当該100万円が振り込まれていることを原告が認識し容認した上,依頼者の目の前で国税当局への手配を行ったとの事実を摘示するものである。 別紙2中⑦の記載は,青色申告の承認が取り消されそうになり,それを回避したいと考えた相談者は,原告が旧大蔵省出身者ということに目を付けて,原告に相談したところ,原告が承認取消しを回避するための「口利き」の対価として100万円を要求し,それを受けた相談者が原告が指定した口座に100万円を振り込んだとの事実を摘示するものである。 別紙2中⑧,⑨,⑱,⑲,㉒,㉕の各記載は,Fが,原告の私設秘書であるばかりでなく単なる秘書の域を超えて,原告の右腕ともいえるCを紹介され,Cに対し青色申告の承認取消しを回避したい旨相談し,Cに青色申告の承認取消し回避のための対応を任せることにしたとの事実を摘示するものである。 別紙2中⑩の記載は,原告が事務所ぐるみで,財務省に「口利き」を行い 申告の承認取消しを回避したい旨相談し,Cに青色申告の承認取消し回避のための対応を任せることにしたとの事実を摘示するものである。 別紙2中⑩の記載は,原告が事務所ぐるみで,財務省に「口利き」を行い,10 0万円を受け取ったのであり,その決定的証拠及び証言があるとの事実を摘示する ものである。 別紙2中⑪,㉔の各記載は,原告が「口利き」の対価を要求していた決定的な証拠がある,それは,原告とその秘書が連名で「口利き」の対価として100万円を要求し,振込先としてその秘書が代表を務める税理士法人の口座を指定した文書である,それを受けた相談者は原告及び秘書が国税当局へ働きかけてくれるものと考 え,100万円を指定口座に振り込んだのであって,上記秘書が個人的に「口利き」を引き受けたのではなく,原告がこれを引き受けたことは明らかであるとの事実を摘示するものである。 別紙2中⑫,⑬,⑭,⑮,⑯,⑰の各記載は,原告に100万円で税務の「口利き」を依頼した相談者が,進捗確認のため原告事務所を訪ね,その対価である10 0万円を指定口座に振り込んだことを伝えた上,説明を求めたところ,原告は秘書に対して当該100万円を原告の管理する口座に振り込みさせるように指示した上で,国税当局へ働きかけることを明言し,相談者の目の前で,相談者の地元を管轄している国税局長に電話を掛けた上,「口利き」の見返りとして100万円は高くないと述べたとの事実を摘示するものである。 別紙2中⑳,㉑の各記載は,被告は,本件記事に掲載している問題に関して,2年半前から取材をしていたが,2年前の取材では一部確証を得ることができず記事にすることを見送ったとの事実を摘示するものであり,この摘示により,本件記事全体の信ぴょう性を高め,他の記載と一体とな ,2年半前から取材をしていたが,2年前の取材では一部確証を得ることができず記事にすることを見送ったとの事実を摘示するものであり,この摘示により,本件記事全体の信ぴょう性を高め,他の記載と一体となって原告が100万円を見返りとして「口利き」を行ったとの印象を強めるものである。 別紙2中㉓の記載は,原告にあっせん利得処罰法違反の疑いがあるとの事実を摘示するものである。 別紙2中㉖の記載は,X氏(相談者)との面会をしたときに「口利き」の要請を受けた原告は,言い逃れができないとの事実を摘示するものである。 (原告が主張する上記各摘示事実を以下「原告主張の各摘示事実」という。)。 エ公共性及び公益目的がないこと 本件記事には,税理士であるCに関する記載(別紙2中⑧,⑨,⑱,⑲,㉒,㉕の各記載)や被告の取材経過に関する記載(別紙2中⑳,㉑の各記載)が含まれているところ,これらの記載が公共の利害に関する事実に係るものとはいえない。また,被告は,平成28年頃には本件疑惑の記事化を見送っていたにもかかわらず,その2年後に原告が唯一の女性閣僚として入閣することになるや否や,専ら週刊誌 の発行部数を稼ぐため,原告をあしざまに言う本件記事を本件雑誌に掲載することにしたというべきであるから,被告が本件記事の掲載された本件雑誌を発行した目的が専ら公益を図ることにあったともいえない。このことは,本件記事の目次や見出しでは原告が国税当局への「口利き」により100万円を受領した旨が記載されている一方,本文部分ではCが上記100万円を受領したことが記載されているな ど,原告を貶めるために本件記事の本文部分の内容とは明らかに異なる目次や見出しが付されていることからも明らかである。 オ原告主張の各摘示事実はいずれ 万円を受領したことが記載されているな ど,原告を貶めるために本件記事の本文部分の内容とは明らかに異なる目次や見出しが付されていることからも明らかである。 オ原告主張の各摘示事実はいずれも真実ではないこと原告事務所の秘書がFに対して税理士のCを紹介したことはあったが,Cは原告の知人にすぎず,しかも平成27年5月頃には,Cが活動拠点を福岡県大牟田市に 移していたため,事実上関係がほぼ途絶えていた。Cのブログに記載されている出来事はいずれも平成27年7月以前の出来事であるし,Cは原告が国会議員として活動するうちの数日を手助けしたり,当時親交のあった原告の名前を出して挨拶したりしたことがあるという程度のことにすぎない。原告がCを私設秘書として雇用したことはなく,Cが原告の「右腕」ともいうべき存在であった事実もない。 また,CはFから株式会社F´の法人税に関する税務処理を依頼されたにすぎず,CがFから受領した100万円もこれについての着手金であって,国税当局への「口利き」の対価ではない。そもそも,法人に対する青色申告の承認取消しについては国税庁が定める事務運営指針に基づいて機械的に判断されており,仮にその判断に裁量が認められるとしても極めて限定されたものであることが明らかであって, 国会議員の「口利き」によって回避できるものではないことは,国会議員であれば 誰もが知る周知の事実であるから,原告が青色申告の承認取消しを回避させるために「口利き」を行うはずがない。なお,本件送付状には原告の氏名等が記載されているが,これは原告事務所で使用されている送付状(甲3)とは異なる体裁のものであり,Cが勝手に作成したものにすぎず,原告がCを通じてFから100万円を受領しようとしたことはない。 さらに いるが,これは原告事務所で使用されている送付状(甲3)とは異なる体裁のものであり,Cが勝手に作成したものにすぎず,原告がCを通じてFから100万円を受領しようとしたことはない。 さらに,原告が平成27年9月4日にF及びEと面会した事実はなく,同日にFからの依頼に応じて旧知の国税局長に「口利き」をしようとしたという事実もない。 この点,F,E及びGは,上記同日にFとEが参議院議員会館内の原告事務所を訪れ,原告がFからの「口利き」の依頼に応じ,Fらの面前で旧知の国税局長に電話を掛けようとしたとの発言,陳述ないし供述をするようである。しかしながら,原 告の予定が全て正確に反映されているスケジュール表には,同年7月28日にFらと面会する予定が記載されているのみで,Fらが面会を行ったとする同年9月4日にその予定は記載されていない(甲7,甲8参照)。また,Fらが同日に原告と面会したとすれば,参議院議員会館に入館するために面会申込書を記入しているはずであるが,そのような内容の面会申込書は参議院議員会館に残されていない(甲2 参照)。さらに,同4日にFらが原告と面会することが決まった経緯についてのEとGの供述は整合しておらず,FやEの手帳にも同日に原告と面会するとの予定は記載されていない。加えて,同日の原告のスケジュールによれば,原告は午前10時の参議院本会議に出席し,午前10時10分頃に同会議が終了してから直ちに羽田空港に移動し,午前11時20分発の飛行機に搭乗しなければならなかったので あり,同日の上記会議後に原告事務所に戻ってFらと面会する余裕はなく,無理にFらと面会しようとすべき合理的理由もない。このように,F,E及びGの上記各発言等はいずれも客観的事実に反している。加えて,Eは,原告の後援会の幹事長を務めていたが Fらと面会する余裕はなく,無理にFらと面会しようとすべき合理的理由もない。このように,F,E及びGの上記各発言等はいずれも客観的事実に反している。加えて,Eは,原告の後援会の幹事長を務めていたが,わずか半年程度で解任させられており,原告に対して悪感情を抱いていると推認され,原告にとって不利益な虚偽供述をする動機が十分に認められ ること,Gは,原告事務所が弁護士を紹介してくれなかったことについて不信感を 抱いており,金銭的にも困窮していたところ,被告の記者から「訴えられたら訴訟費用は出すし,弁護士の面倒を見る。」などと言われたというのであって,被告の記者に迎合し,自らの記憶にないことを陳述・供述していることが疑われることも併せ鑑みると,F,E及びGの上記各発言等はいずれも信用することができない。 そして,原告がCから100万円を受け取った事実はないし,そのことに関する 証拠はない。そもそも,突然面会を受けて説明されたとしても,原告にとっては寝耳に水のことであり,わずかな時間で事態を理解し,適切な対応をするために必要な事実経過の把握などできるはずがない。また,実際に税務の委任を受けたCの話を一切聞くことなく,一方的に100万円を原告名義の口座等に振り込ませるよう指示するはずがない。さらに,その後原告がCに連絡するなどしたことについては GやEらは何も述べていない。これらからすれば,原告がCに対し100万円のことで電話をしたことはないし,100万円を原告名義の口座等に振り込むよう指示したこともないことは明らかである。 加えて,原告が国税局長に電話をしたことについての具体的な証拠がない。そもそも,事態を飲み込めず,Cから事情を確認することのないまま,国税局長に電話 をしても,どのような説明をし,どのよ 加えて,原告が国税局長に電話をしたことについての具体的な証拠がない。そもそも,事態を飲み込めず,Cから事情を確認することのないまま,国税局長に電話 をしても,どのような説明をし,どのような要求をしようというのか,想像することすら困難であって,原告が国税局長に電話をする理由が全く考えられない。また,仮に一度国税局長に電話をしたのであれば,折り返し電話を受け,あるいは再度電話をして何らかのやりとりをするはずであるが,これに関する事実及び証拠は一切ない。したがって,原告が国税局長に電話などしていないことは明らかである。 カ真実であると信ずることに相当の理由はないこと報道機関が取材に係る事実を真実であると信ずるについて相当の理由があるというためには,報道機関にとって可能な限りの取材を行い,報道機関をして一応真実と思わせるだけの合理的資料又は根拠が必要である。 この点,被告の主張によれば,被告の記者は,平成28年頃,Fらに対する取材 を実施し,同人らから前記2(2)アないしウ記載の事実関係に沿う発言を得てい たようだが,本件訴訟において,被告は,F及びCの陳述書を提出したり同人らの証人尋問を申請したりしておらず,そもそも被告の記者がF及びCに対する取材を実施していたかどうかも疑わしいというべきである。 また,それを措くとしても,前記オのとおり,少なくともEには原告にとって不利益な虚偽供述をする動機があったのであるから,客観的な証拠による裏付けがな い限り,E及びFの上記各発言を信用するには足りないというべきである。この点,被告の記者は,FがCに株式会社F´の法人税に関する税務処理を依頼し,その着手金として100万円を支払ったことを示す書類を入手していたにすぎず,Cが原告の秘書としてFから というべきである。この点,被告の記者は,FがCに株式会社F´の法人税に関する税務処理を依頼し,その着手金として100万円を支払ったことを示す書類を入手していたにすぎず,Cが原告の秘書としてFから国税当局への「口利き」を依頼され,その対価として原告がCを通じてFから100万円を受領したことや,FとEが原告事務所を訪れ,原告 がFらの面前で旧知の国税局長に電話を掛けようとしたことを示す客観的な証拠を入手していたわけではなく,原告に対する反対取材も実施していなかった。特に,E及びFの上記各発言のうち平成27年9月4日にFらが原告事務所を訪れたとの点が事実に反することは前記オのとおりであるところ,被告の記者はこの点に関する証拠を一切入手していなかったというのであるから,E及びFの上記各発言に客 観的な証拠による裏付けがあったということはできないというべきであり,このことは,平成28年当時,被告が本件疑惑の記事化を見送ったことからも明らかである。 しかるに,被告は,新たな証拠が得られていなかったにもかかわらず,原告が入閣することになるや,週刊誌の発行部数を稼ごうとの目的から,十分な取材を尽く すことなく拙速に本件記事の掲載された本件雑誌を発行したのであり,本件雑誌の発行当時,被告が原告主張の各摘示事実を真実と信ずるについて相当の理由があったはいえない。 (2)損害額(争点2)【原告の主張】 原告の経歴,立場及び本件記事の内容からして,原告の被った精神的損害は甚大 であり,これに対する慰謝料は1000万円を下らない。 また,原告は,被害回復のためやむなく原告訴訟代理人らに本件訴訟の提起,追行を委任したところ,被告の名誉毀損行為と相当因果関係が認められる損害である弁護士費用は100万円を下らな 円を下らない。 また,原告は,被害回復のためやむなく原告訴訟代理人らに本件訴訟の提起,追行を委任したところ,被告の名誉毀損行為と相当因果関係が認められる損害である弁護士費用は100万円を下らない。 【被告の主張】 原告の主張のうち,原告が本件訴訟の提起,追行を原告訴訟代理人らに委任したことは認め,その余はいずれも不知ないし争う。 第3 当裁判所の判断 1 名誉毀損とは他人の社会的評価を低下させる表現行為であるところ,前記第2の2(2)のとおり,本件記事のうち本件各記載が原告の社会的評価を低下させ るものであることは当事者間に争いがないから,被告が本件記事の掲載された本件雑誌を発行したことは,原告に対する名誉毀損に該当するということができる。 2 争点1(真実性・相当性の抗弁)について(1) 事実を摘示しての名誉毀損にあっては,その行為が公共の利害に関する事実に係り,かつ,その目的が専ら公益を図ることにあった場合に,摘示された事実 がその重要な部分について真実であることの証明があったときには,上記行為には違法性がなく,仮に上記事実が真実であることの証明がないときにも,行為者において上記事実を真実と信ずるについて相当の理由があれば,その故意又は過失は否定される(最高裁昭和37年(オ)第815号同41年6月23日第一小法廷判決・民集20巻5号1118頁,最高裁昭和56年(オ)第25号同58年10月 20日第一小法廷判決・裁判集民事140号177頁参照)。また,ある事実を基礎としての意見ないし論評の表明による名誉毀損にあっては,その行為が公共の利害に関する事実に係り,かつ,その目的が専ら公益を図ることにあった場合に,上記意見ないし論評の前提としている事実が重要な部分について真実であることの証明があった 誉毀損にあっては,その行為が公共の利害に関する事実に係り,かつ,その目的が専ら公益を図ることにあった場合に,上記意見ないし論評の前提としている事実が重要な部分について真実であることの証明があったときには,人身攻撃に及ぶなど意見ないし論評としての域を逸脱したも のでない限り,上記行為は違法性を欠くものというべきである(最高裁昭和60年 (オ)第1274号平成元年12月21日第一小法廷判決・民集43巻12号2252頁参照)。そして,仮に上記意見ないし論評の前提としている事実が真実であることの証明がないときにも,行為者において上記事実の重要な部分を真実と信ずるについて相当の理由があれば,その故意又は過失は否定されると解するのが相当である(最高裁平成6年(オ)第978号同9年9月9日第三小法廷判決・民集5 1巻8号3804頁参照)。 なお,原告は,真実性・相当性の証明対象に「重要な部分」との限定が付されるのは,表現の自由や迅速性が要請される新聞記事の場合であって,雑誌等の記事についてはそのような限定は付されないと主張する。しかし,上記のような限定が付されるのは,重要な部分が真実であることの証明がありあるいは真実であると信ず るについて相当の理由があるにもかかわらず,重要ではない部分が真実であることの証明がなくあるいは真実と信ずるについて相当の理由がないときに,違法性や故意・過失を肯定するのは相当ではないからであると解されるところ,その理は雑誌等においても当てはまるということができるから,原告の主張は採用しない。 (2)本件における事実の摘示等 前記第2の2(2)によれば,本件記事のうち本件各記載は,①X氏(F)が,自身の会社(株式会社F´)に対する青色申告の承認が取り消されそうになったため,何とか )本件における事実の摘示等 前記第2の2(2)によれば,本件記事のうち本件各記載は,①X氏(F)が,自身の会社(株式会社F´)に対する青色申告の承認が取り消されそうになったため,何とかならないかと旧大蔵省出身の原告事務所に相談したところ(別紙2中⑦の記載参照),原告事務所の秘書を通じて原告の右腕ともいうべき私設秘書であった税理士のCを紹介され,原告やその秘書が国税当局に働きかける「口利き」をし てくれるとの認識の下,Cに着手金100万円を支払って国税当局への「口利き」を依頼したとの事実(別紙2中⑥,⑧,⑨,⑪,⑰ないし⑲,㉒,㉔,㉕の各記載参照)(以下「摘示事実①」という。),②Cからの報告がなかったため,X氏と関係者が,平成27年9月に原告事務所を訪れて原告に事情を説明したところ,(別紙2中⑫,⑬の各記載参照),原告が国税当局への「口利き」の対価であることを 認識しながら上記100万円をCから受け取ろうとした上で(別紙2中⑩,⑭の記 載参照),X氏からの依頼を了承し,旧知の国税局長とされる人物に電話を掛けようとしたとの事実(別紙1中②,別紙2中⑤,⑮,⑯,㉖の各記載参照)(以下「摘示事実②」という。)を摘示するとともに,これを基礎として,元検察官による指摘(別紙2中㉓の記載参照)を紹介しつつ,原告が事務所ぐるみで国税当局に対する「口利き」の対価としてX氏から100万円を収受したことは,あっせん利 得処罰法に反する疑いがあるとの法的な見解(別紙1中①,別紙2中③,④の各記載参照)を表明したものと解するのが相当である。 そこで,以下,被告が本件記事の掲載された本件雑誌を発行した行為に,公共性・公益目的があり,摘示事実①及び摘示事実②の重要な部分が真実であり,あるいは被告において摘示事実①及び摘 が相当である。 そこで,以下,被告が本件記事の掲載された本件雑誌を発行した行為に,公共性・公益目的があり,摘示事実①及び摘示事実②の重要な部分が真実であり,あるいは被告において摘示事実①及び摘示事実②の重要な部分を真実と信ずるについて 相当の理由があり,意見等について人身攻撃に及ぶなど意見ないし論評としての域を逸脱したものでないかを検討する。 (3)公共性・公益目的について前記第2の2(1)によれば,原告は,本件雑誌が発行された当時,内閣府特命担当大臣等を務めており,衆議院議員を1期務めた後,参議院議員を2期務めてい たことが認められるところ,国務大臣であり国会議員でもある原告が,あっせん利得処罰法という,国会議員等公職にある者の政治活動の清廉潔白性を保持するとともに,政治に対する国民の信頼を確保することを目的とする法律に違反したか否かという本件疑惑を報じた本件記事の内容は,公共の利害に関する事実ということができる。また,前記第2の2(2),乙第20号証,D供述及び弁論の全趣旨によ れば,被告は,平成30年10月2日の内閣改造で原告が入閣するとのニュースが報じられたことから,国務大臣に就任する原告の資質を問うため,本件記事の掲載された本件雑誌を発行したとの事実が認められるから,その目的は専ら公益を図ることにあったということができる。 なお,原告は,被告が一度は本件疑惑の記事化を見送ったにもかかわらず,原告 が入閣することになるや否や本件雑誌を発行したという経緯からすれば,被告が本 件記事の掲載された本件雑誌を発行した目的は,原告をあしざまに言うことで週刊誌の発行部数を稼ぐことにあり,専ら公益を図ることにあったとはいえない旨主張する。しかしながら,本件全証拠及び弁論の全趣旨によっても,被 された本件雑誌を発行した目的は,原告をあしざまに言うことで週刊誌の発行部数を稼ぐことにあり,専ら公益を図ることにあったとはいえない旨主張する。しかしながら,本件全証拠及び弁論の全趣旨によっても,被告が,原告をあしざまに言うことで本件雑誌の発行部数を増やすことを企図し,そのために,本件記事の掲載された本件雑誌を発行したとの事実は認められない。 (4)真実性・真実相当性についてア摘示事実①についてDの陳述(乙20)及び供述によれば,被告が本件記事の掲載された本件雑誌を発行するまでの間に,被告の記者らは,原告事務所に対する取材を実施し,原告事務所から,株式会社F´が税務調査を受けているとの相談が原告事務所にあり,原 告事務所の秘書が原告と相談の上で税理士のCをFに紹介したとの回答(乙10)を得ていた。また,被告の記者らは,E,F及びCに対する取材を実施し,概ね摘示事実①に沿う内容の発言を得た上,これを裏付ける資料として,原告の名刺(乙4)及びCの名刺(乙3),本件送付状(乙5),本件照会回答書(乙6),本件権限証書(乙7)をFから提供されていた。 なお,原告事務所はFにCを紹介した平成27年7月より前の同年5月にCが私設秘書を退職した旨回答(乙10)していたが,「Cが原告の右腕ともいうべき私設秘書」であった旨の記載(別紙2中⑧,⑲)については,被告の記者らが取得した株式会社A´の商業登記簿(乙1の1及び乙1の2)によれば,原告が代表取締役を務める同社にCが平成22年11月11日に監査役に就任し(他に取締役や監 査役はいない。),平成24年12月26日に取締役に就任し,上記商業登記簿取得時の平成28年6月2日時点でも取締役であったこと(他には取締役1名,監査役1名),Cのブログ記事によれば,原告の母の 査役はいない。),平成24年12月26日に取締役に就任し,上記商業登記簿取得時の平成28年6月2日時点でも取締役であったこと(他には取締役1名,監査役1名),Cのブログ記事によれば,原告の母の葬儀で受付役を務めたり(平成23年2月17日の記事),原告の中国視察旅行を企画したり(同年8月23日の記事),Cがパーティにおいて原告を代理して挨拶したり(平成24年1月27日の記事) していたことなどが記載されていたこと(乙2),FがDに交付したCの名刺(乙 3)に,「参議院議員A」「秘書 C」,「国会事務所東京都千代田区永田町2-1-1参議院議員会館a号室(注記:原告事務所の住所)」と記載されていたこと,FがDに交付した本件送付状(乙5)には,差出人欄に「議員名参議院議員A」,「秘書名秘書・税理士 C」,「住所東京都千代田区永田町2-1-1(注記:参議院議員会館の住所)」と記載されていたことなどによって裏付けられると いうことができる。また,原告事務所は株式会社F´の件は単なる税務調査に関する相談であった旨回答(乙10)しているが,Fがそれまでほとんど関係のなかった原告事務所に税務関係の相談をしていること(乙19,E供述),同相談を受けた原告事務所がFに紹介したCは,Fの依頼内容を聞いた後,「議員名参議院議員 A」,「秘書名秘書・税理士 C」,「着手金100万円を,至急下記にお願い 申し上げます。」「ご確認後,国税に手配させて頂きます。」との記載がある本件送付状(乙5)をFに送付したこと,被告の記者らの取材によれば,法人に対する青色申告の承認取消処分に対する不服申立てをする際の報酬相場は30万円程度であること(乙20)からすれば,Fが,青色申告の承認取消しの不服申立て等の通常の手続を超える,旧大 材によれば,法人に対する青色申告の承認取消処分に対する不服申立てをする際の報酬相場は30万円程度であること(乙20)からすれば,Fが,青色申告の承認取消しの不服申立て等の通常の手続を超える,旧大蔵省出身の原告やその秘書でなければできないような,青色 申告の承認取消処分等への国税当局への働きかけとしての「口利き」を依頼しようとし,原告事務所がそれと認識の上で応じたとのE及びFの発言が裏付けられるということができる。 以上からすると,Fが,株式会社F´に対する青色申告の承認が取り消されそうになったため,何とかならないかと旧大蔵省出身の原告事務所に相談し,同事務所 から原告の右腕ともいうべき私設秘書のCを紹介され,原告やその秘書が国税当局に働きかける「口利き」をしてくれるとの認識で,Cに着手金100万円を支払って国税当局への「口利き」を依頼したとの摘示事実①を,本件記事掲載当時,被告が真実であると信じたことには相当の理由があるということができる。 イ摘示事実②について Dの陳述(乙20)及び供述によれば,被告が本件記事の掲載された本件雑誌を 発行するまでの間に,被告の記者らは,原告事務所及び原告本人に対して取材を実施したが,原告事務所も原告本人も,平成27年9月にFらが原告事務所を訪問したことはもとより,原告が国税当局への「口利き」の対価であることを認識しながら100万円を受け取ろうとしたり,旧知の財務省幹部に電話を掛けようとしたりしたとの事実を否認していた(乙10,乙20)。また,Cも,一旦はFに対して 「頂いたお金は全てA本人に取られた。」と述べたものの,被告の記者らに対し,原告に100万円を渡したのかについては「ノーコメントにさせてください。」などと述べた(乙20,D供述)。そして,被 「頂いたお金は全てA本人に取られた。」と述べたものの,被告の記者らに対し,原告に100万円を渡したのかについては「ノーコメントにさせてください。」などと述べた(乙20,D供述)。そして,被告の記者らは,取材時にFらが原告事務所を訪問した日を平成27年9月4日と特定していた(乙9)にもかかわらず,同日Fらが原告事務所を訪れたことを裏付ける資料や原告が同日原告事務所にいた ことを裏付ける資料を入手しておらず,ましてや同日,原告が,Cに電話を掛けてFが支払った100万円を原告に渡すよう求めようとしたり,旧知の国税局長とされる人物に電話を掛けようとしたりしたとの事実を裏付ける資料を入手していない。 とりわけ,「Cにすぐ連絡して!振り込みさせなさい!」との原告の発言(別紙2中⑭)が「Cに,FがCの関係する金融機関口座に振り込んだ100万円を,原告 側の金融機関口座に振り込みさせなさい」との趣旨であることや,原告が電話を掛けようとした相手が「旧知の国税局長」であったとする根拠については,その場にいたF,EあるいはGがそのように受け止めたという発言,陳述及び供述以上のものはない(乙18ないし乙20,G供述,E供述,D供述)。しかも,本件訴訟になって判明したことではあるが,平成27年9月4日当日,原告は,午前10時1 分に開議した参議院本会議に出席し,午前10時7分に同会議が散会した後,羽田空港に移動して午前11時20分発の飛行機に搭乗し,佐賀に向かっている(甲8ないし甲11,乙21)が,羽田空港に移動するまでのわずかの時間に,原告事務所に戻り,Fらと面会をして話を聞き,各所に電話を掛けることなどできるのかあるいはやろうとするのかといった疑義が生じる。 他方で,被告の記者らはE及びFにも取材を実施したが,両名から,概 所に戻り,Fらと面会をして話を聞き,各所に電話を掛けることなどできるのかあるいはやろうとするのかといった疑義が生じる。 他方で,被告の記者らはE及びFにも取材を実施したが,両名から,概ね摘示事 実②に沿った発言を得ていた(乙20,D供述)。E及びFの発言内容はほぼ一致しており,とりわけFの発言は,平成28年の取材時と平成30年の取材時とで,ほぼ変わることはなかった(乙20,D供述)。また,概ね摘示事実①に沿うE及びFの発言については,これを裏付ける資料も存在するため,真実である蓋然性が相当高いといえるところ,摘示事実②に関してのみ虚偽の発言を行う事情や動機は, 本件全証拠及び弁論の全趣旨からはうかがわれない。とりわけ,原告がCに100万円を振り込ませようとしていたとの事実については,原告が国税当局に「口利き」を行い,その対価を得ようとする行為といえ,同行為が政治家として不適切なものであることは明らかであるところ,その内容が記事となって相当の発行部数のある週刊誌「週刊文春」に掲載されたときには,原告の社会的評価が著しく低下するこ とが明らかであるにもかかわらず,週刊誌「週刊文春」の記者であることを明示した被告の記者らの取材に対しFやEがあえて虚偽の発言をする事情や動機は,本件全証拠及び弁論の全趣旨によってもうかがわれない。さらに,内容面に関していえば,100万円を振り込んだ後にCから報告がないため,FとEが,振込みの約2か月後の平成27年9月頃,原告に確認しようと原告事務所を訪れ,原告に対して 青色申告の承認取消しの件を原告事務所に依頼をし,原告事務所から紹介されたCの指示により100万円をCが指定する口座に振り込んだことを説明したとの話の流れは極めて自然であるし,本件送付状には「議員名参議院 の承認取消しの件を原告事務所に依頼をし,原告事務所から紹介されたCの指示により100万円をCが指定する口座に振り込んだことを説明したとの話の流れは極めて自然であるし,本件送付状には「議員名参議院議員 A」,「秘書名秘書・税理士C」,「着手金100万円を,至急下記にお願い申し上げます。」「ご確認後,国税に手配させて頂きます。」と記載されていたのであるから,当該100 万円は原告事務所に対して支払われたものといえるため,Cが着手金100万円を原告事務所に渡していないことを原告が認識した場合には,Cにそれを渡すよう指示しようとすることも自然であり,青色申告の承認取消しの件に関して何か働きかけをしようとするのであれば,所轄の国税局長に対して連絡を取ろうとするのも自然であるといえる。そして,本件当時株式会社F´が所在する長野県の税務署を管 轄する関東信越国税局長を務めていたLが,被告の記者の取材に対し,原告との関 係(大学のテニスサークルにおける関係等)については雄弁に語りながら,「関東信越国税局長を務めていた時に原告から青色申告の承認取消の件で連絡を受けたことはないか」との問いかけに対しては,具体的な回答を避けつつ,否定することもなかったこと(乙20,D供述)は,原告がLに連絡を取った可能性をうかがわせないではない。 そうすると,FとEが,平成27年9月に原告事務所を訪れて原告に説明をし,原告が国税当局への「口利き」の対価であることを認識しながら上記100万円をCから受け取ろうとした上で,Fからの依頼を了承し,旧知の国税局長とされる人物に電話を掛けようとしたとの摘示事実②が真実であるとの証明があったということはできないものの,摘示事実②を,本件記事の掲載された本件雑誌が発行された 当時,被告が真実 知の国税局長とされる人物に電話を掛けようとしたとの摘示事実②が真実であるとの証明があったということはできないものの,摘示事実②を,本件記事の掲載された本件雑誌が発行された 当時,被告が真実であると信じたことには相当の理由があるということができる。 ウ原告は,以下のような主張をするが,いずれも,被告において摘示事実①及び摘示事実②を真実であると信ずるにつき相当の理由があるとの前記判断を左右するものではない。 (ア) 原告は,Cが原告の私設秘書であったことはなく,Cの名刺も本件送付状 もCが原告に無断で勝手に作成し使用したものであると主張する。 しかしながら,時期はともかく,Cが原告の秘書であったことは原告事務所も認めるところである(乙10)。また,Cの名刺も本件送付状のひな型も,何かの機会に原告が入手する可能性があることを考えれば,Cが本件当時(平成27年)原告に無断で名刺や本件送付状のひな型を作成し使用していたとは考え難い。そうす ると,本件当時,Cが原告の私設秘書であったと信ずるについて相当の理由があったということができる。 (イ) 原告は,原告とF及びEが原告事務所で面会した日とされる平成27年9月4日について,原告の予定が全て正確に反映されているスケジュール表にはその予定が記載されておらず,参議院議員会館に入館するための面会申込書もなく,F やEの手帳にも原告との面会予定が記載されておらず,何より当日は午前10時の 参議院本会議に出席し,午前10時10分頃に同会議が終了した後直ちに羽田空港に移動して午前11時20分発の飛行機に搭乗しなければならなかったのであるから,同会議後に原告事務所に戻ってFらと面会する余裕はないし,無理にFらと面会しようとすべき理由もなく,この点について被告の に移動して午前11時20分発の飛行機に搭乗しなければならなかったのであるから,同会議後に原告事務所に戻ってFらと面会する余裕はないし,無理にFらと面会しようとすべき理由もなく,この点について被告の記者らが裏付けとなる資料を何ら入手していないことからすれば,被告が摘示事実②を真実と信ずるについて相 当の理由があったとはいえないと主張する。 しかしながら,原告自身のスケジュール表やF及びEの手帳に予定の記載がないことから直ちに当該予定はなかったということになるものではない。また,被告の記者であるIは,原告事務所に対し,平成27年9月4日に原告が原告事務所でFらと面会した事実の有無を尋ねたが(乙9参照),原告事務所は,同日に面会した 事実はない旨回答するのみで,上記のように,Fらが同日に参議院議員会館を訪れたことを示す面会申込書がないことを指摘したり,同日における原告の予定を具体的に回答したりすることはなかったのであるから(乙10参照),この点について被告の記者らが裏付けとなる資料を入手していないことをもって,被告が摘示事実②を真実と信ずるについて相当の理由があったとはいえないことになるものではな い。なお,Fらが同日に参議院議員会館を訪れたことを示す面会申込書がないことや,原告の同日における予定を前提としても,このことから直ちに,同日に原告が原告事務所でFらと面会することがおよそあり得ない話とまではいうことができない。 (ウ) 原告は,法人に対する青色申告の承認取消しについては国税庁が定める事 務運営指針に基づいて機械的に判断されており,仮にその判断に裁量が認められるとしても極めて限定されており,国会議員の「口利き」によって回避できるものではなく,そのことは国会議員であれば誰もが知る周知の事実であるから,原告が に判断されており,仮にその判断に裁量が認められるとしても極めて限定されており,国会議員の「口利き」によって回避できるものではなく,そのことは国会議員であれば誰もが知る周知の事実であるから,原告が「口利き」を行うはずがない,また,その場で聞いて事情もよく分からないまま国税局長に電話をする理由がないと主張する。 しかしながら,法人の青色申告の承認取消しに関する法人税法127条1項柱書 は,各号のいずれかに該当する事実がある場合には,納税地の所轄税務署長はその承認を取り消すことができる旨規定していることや,平成12年7月3日付「法人の青色申告の承認の取消しについて(事務運営指針)」(乙17)によれば,法人税法127条1項3号に該当すると認められる場合であっても,「取消しをしないことが相当と認められるもの」については「(所轄の税務署長は)所轄国税局長と協 議の上その事案に応じた処理を行うものとする。」とされていることからすれば,納税地の所轄税務署長には,その程度は措くとしても一定の裁量が認められている上,所轄国税局長の判断が取り消すか否かの結論に影響を与え得るということができる。したがってまた,法人の青色申告の承認取消しの件と聞いて,所轄国税局長に連絡を取ろうとしたのであれば,上記事務運営指針を踏まえた理由のある行動と いえる。 (エ) 原告は,被告の記者がFに対する取材を実施したのかどうかは疑わしいと主張する。 しかしながら,被告の記者は,本件送付状や本件権限証書などの資料(原告はこれらの資料をCが代表を務める税理士事務所で作成されたことを否定していない。) を取得していたというのであり,これらの資料はその内容に照らしてF以外から取得することは通常考え難いことからすれば,被告の記者がFに対する取 る税理士事務所で作成されたことを否定していない。) を取得していたというのであり,これらの資料はその内容に照らしてF以外から取得することは通常考え難いことからすれば,被告の記者がFに対する取材を実施した旨のDの供述が信用できることは明らかである。 (オ) 原告は,Eについては,原告の後援会の幹事長を務めていたところ,わずか半年程度で解任させられたから,原告に対して悪感情を抱いていると推認できる ため,原告にとって不利益な虚偽供述をする動機が十分に認められるとして,Eの供述等は信用できないと主張する。 しかしながら,原告の後援会の幹事長をわずか半年程度で解任させられたことをもって,直ちに,Eが取材に対し殊更に悪感情をもって原告に対して疑惑の目が向けられる可能性がある虚偽の発言をするとは考え難いし,EとFの発言内容が一致 していること,Fには虚偽の発言をする動機が全く見当たらないこと,被告におい てE及びFの一部の発言の内容を裏付ける資料を入手していたことなども踏まえれば,原告の主張は採用し難い。 (5) 摘示事実①及び摘示事実②を基礎として,原告が事務所ぐるみで国税当局に対する「口利き」の対価としてX氏から100万円を収受したことは,あっせん利得処罰法に反する疑いがあるとの法的な見解を示すことが,人身攻撃に及ぶなど 意見ないし論評としての域を逸脱したものということはできない。 (6) よって,被告が本件記事の掲載された本件雑誌を発行したことについて,被告の原告に対する不法行為は成立しない。 第4 結論以上によれば,その余の争点につき判断するまでもなく,原告の請求は理由がな いからこれを棄却することとし,訴訟費用の負担につき民訴法61条を適用して,主文のとおり判決する。 東京地方裁判 以上によれば,その余の争点につき判断するまでもなく,原告の請求は理由がないからこれを棄却することとし,訴訟費用の負担につき民訴法61条を適用して,主文のとおり判決する。 主文 東京地方裁判所民事第32部 理由 裁判長裁判官大濵寿美 裁判官松井俊洋 裁判官町田哲哉 事実 別紙1及び別紙2は記載を省略

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