令和5(ワ)2929 損害賠償請求事件

裁判年月日・裁判所
令和7年4月22日 大阪地方裁判所
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判決文本文14,897 文字)

主文 1 被告らは、原告に対し、各自73万2875円及びうち別紙計算書「返済額」欄各記載の金額につき、各「返済日」欄記載の日から支払済みまで年3分の割合による金員を支払え。 2 原告のその余の請求を棄却する。 3 訴訟費用はこれを10分し、その1を原告の負担とし、その余を被告らの連帯負担とする。 4 この判決は、第1項に限り、仮に執行することができる。 事実 及び理由第1 請求 1 主位的請求被告らは、原告に対し、各自79万9500円及びうち別紙計算書「返済額」欄記載の各金額につき、各「返済日」欄記載の日から各支払済みまで年3分の割合による金員を支払え。 2 予備的請求 被告会社は、原告に対し、66万6250円及びこれに対する令和4年12月15日から支払済みまで年3分の割合による金員を支払え。 第2 事案の概要 1 本件は、被告会社の顧客であった原告が、被告会社が原告に対して、貸金業法に反する高金利で実質的に貸付けを行ったと主張して、主位的には被告会社 及び被告会社の当時の代表者であった被告Aに対して、共同不法行為に基づく損害賠償及び損害発生の日から各支払済みまで法定利率による遅延損害金の支払を求め、予備的には被告会社に対して民法121条2項に基づく原状回復請求及び催告日である令和4年12月15日(訴状送達日の翌日)から支払済みまで法定利率による遅延損害金の支払を求める事案である。 2 前提事実(争いのない事実、当裁判所に顕著な事実及び各掲記の証拠並びに 弁論の全趣旨により容易に認定できる事実)⑴ 当事者原告は、被告会社が提供していたいわゆるフラッシュ買取サービス(以下「本件サービス」とい 事実及び各掲記の証拠並びに 弁論の全趣旨により容易に認定できる事実)⑴ 当事者原告は、被告会社が提供していたいわゆるフラッシュ買取サービス(以下「本件サービス」という。)を約1年半にわたって利用した者である。(原告本人、弁論の全趣旨) 被告会社は、「B」という表題のインターネット上のサイト(以下「本件サイト」という。)上において、本件サービスを提供していた会社である。 被告Aは、原告が被告会社との取引をしていた当時、被告会社の取締役ないし代表取締役であった者である。(甲1)⑵ 本件サービスの概要 本件サービスは、概ね以下の流れで被告会社と利用者が取引を行うものである。(弁論の全趣旨)① 利用者が被告会社に買い取ってもらいたい商品の画像を送信し、商品状態等を伝える。 ② 被告会社が商品画像をもとに査定を行う(画像や商品内容に不明な点 がある場合には、被告会社の担当者が利用者に電話で商品状態を確認して査定を行う。)。 ③ 査定結果を利用者に通知し、7日以内に発送を行わない場合には規約違反になることを伝える。 ④ 利用者が査定結果に同意した場合には、被告会社が利用者に取引約款 をデータで送信する。 ⑤ 利用者は、査定価格に同意する場合、取引約款に電子サインを行う。 同意しない場合には契約は不成立となる。 ⑥ 被告会社は、利用者が前記電子サインを行った場合、利用者に対して査定金額の買取代金を振り込む。 ⑦ 利用者は、契約日を含めた7日以内に商品を被告会社に送付する。 ⑧ 商品が被告会社に到着したことが確認されれば契約が完了する。 ⑨ 商品が7日以内に発 ⑦ 利用者は、契約日を含めた7日以内に商品を被告会社に送付する。 ⑧ 商品が被告会社に到着したことが確認されれば契約が完了する。 ⑨ 商品が7日以内に発送されない場合、利用者は被告会社に対し、顧客が申告する期限までに、買取代金に30%の違約金を付して返金する。 ⑶ 原告と被告会社との間の取引原告は、令和2年12月10日から令和4年9月22日までの間、被告会 社との間で、別紙計算書のとおり、合計23回にわたって本件サービスを利用した。なお、この23回について、原告は一度も買取を依頼した商品を発送せず、違約金を支払った。(争いがない。)⑷ 原告による催告原告は、被告会社に対し、本件訴状において被告会社に支払った金銭の返 還を請求し、同訴状は令和4年12月14日に被告会社に送達された。(顕著な事実)⑸ 訴訟の提起追行の状況原告は、司法書士に委任して、大阪簡易裁判所に本件訴訟を提起し(同庁令和4年(ハ)第25407号)、同裁判所は令和5年3月15日付けで当 庁に本件を移送する旨の決定をした。当庁において、原告は、上田智子弁護士に委任して訴訟を追行した。(顕著な事実、弁論の全趣旨) 3 争点及びこれに関する当事者の主張本件の争点は、本件取引が実質的に金銭の貸付けに当たるか否か及び損害額である。 ⑴ 原告の主張被告会社による本件買取契約、商品代金交付行為及び違約金受領行為は、実質的には商品の売買を目的とせず、貸金業法及び出資法違反の貸付け、貸金元本及び利息の返済を受けることを目的とする行為である。 このことは、被告会社が申込時に原告の勤務先や年収を聞いて在籍確認を 行ったりして、違約金 貸金業法及び出資法違反の貸付け、貸金元本及び利息の返済を受けることを目的とする行為である。 このことは、被告会社が申込時に原告の勤務先や年収を聞いて在籍確認を 行ったりして、違約金の支払能力を判断していること、物の受領の前に査定 を行い、商品の価値に重きをおいていないこと、商品の価格や利用額に上限を設け、利用者の経済的信用を査定していること、違約金の支払期限が、違約との関連ではなく、支払能力に着目して給与支払日に設定されていること、買取商品の送付先が明示されず、梱包や送付の方法も指示もされていないこと、倉庫であると主張する物件が居住用マンションの一居室であって、床面 積も買取事業の保管倉庫としては狭すぎること、違約件数の月ごとの割合が、68%から96%となっていて、違約をした者との間でも契約を繰り返しており、収益の大半が違約金から発生していること等から明らかである。 被告会社の行為は貸金業法等を潜脱し、暴利を目的とする違法な行為であるから、被告らの行為は共同不法行為を構成するものであるし、仮に不法行 為を構成しないとしても、被告会社が原告から受領した金銭は、貸金業法等に違反する無効な法律行為によるものであるから、返還されるべきである。 原告は、別紙計算書の各返済日に、各返済額相当の損害を被った。加えて、原告は高金利での返済を余儀なくされて精神的苦痛を被り、その苦痛に対する慰謝料は6万6625円が相当である。また、原告は、司法書士及び弁護 士に訴訟の提起追行を委任したが、その費用として6万6625円相当の損害を被った。 ⑵ 被告らの主張被告会社は、古物事業に必要な許可を取得し、古物の取り扱いについて警察の指導の下にサービス提供を開始して、現に多数の取引実績を有 6万6625円相当の損害を被った。 ⑵ 被告らの主張被告会社は、古物事業に必要な許可を取得し、古物の取り扱いについて警察の指導の下にサービス提供を開始して、現に多数の取引実績を有している。 また、フラッシュ買取のほかに、郵送買取も実施しており、買い取った商品は被告会社が運営するショッピングサイトその他で販売して利益を上げている。 本件サービスに係る取引は、あくまで写真に写った商品が被告会社に送付されれば、利用者の債務は消滅し、被告会社から金銭の返還要求をすること はできないのであり、金銭の交付と返還約束とが一体になった仕組みとはい えない。 被告会社は年収の確認を行っておらず、勤務先の確認については、古物営業法に基づいて職業を確認していたものであり、融資の審査のためではない。 給与明細の提示については、勤務先についての虚偽申告防止のために求めていた時期はあるが、現在は行っていない。被告会社は、利用者に対して商品 の郵送先をホームページやメールで伝えており、原告の主張はあたらない。 本件サービスでの査定は写真に基づくもので現金先払いであることから金額を低く見積もらざるを得ないため、実店舗やメルカリ等での売却の方が高額になることが多く、違約金を払ってもキャンセルしたい顧客が一定数存在するので、キャンセルが繰り返されることが貸金であることの根拠とはならな い。 被告会社は、ホームページやSNSを通じて、貸金目的ではないことを明示し、実際に商品なく取引を行っている顧客に対しては、詐欺による刑事告訴を検討する旨警告することや、貸金目的での利用を防ぐ措置を講じていた。 以上によれば、被告らの行為は不法行為を構成することはなく、無効など ということもない。 ては、詐欺による刑事告訴を検討する旨警告することや、貸金目的での利用を防ぐ措置を講じていた。 以上によれば、被告らの行為は不法行為を構成することはなく、無効など ということもない。 原告の損害の発生及び金額はいずれも争う。被告会社が提供した元本については、原告が支出したものではないから損害にあたらない。 第3 当裁判所の判断 1 上記前提事実及び各掲記の証拠並びに弁論の全趣旨によれば、本件につき、 以下の事実が認められる。 ⑴ 当事者原告は、大阪市内在住の会社員である。 被告会社は、令和元年に設立され、不動産取引や土木建築工事のほか、古物の売買及び委託販売、書籍、雑貨、ゲーム機器、家電用電化製品等の販売 等を目的とする株式会社である。被告Aは、令和2年9月に被告会社の取締 役に就任し、令和3年4月から令和5年11月まで被告会社の代表取締役であった者である。(甲1)⑵ 本件サービスの提供に係る体制等ア被告会社は、令和2年5月頃から本件サービスの提供を開始した。本件サービスの適法性につき、被告会社は、同年6月18日頃、C弁護士(以 下「C弁護士」という。)の意見書を取得していた(乙9、以下「本件意見書」という。)。 本件意見書においては、本件サービスについて、適法性及び適法利用性の視点から考察した結果が「法律意見」として記載されている。 このうち、「適法性」については、本件サービスは形式的に見た場合に は売買契約であり、先払いである点を含めても、それ自体が問題になるものではないが、運用方法によっては、貸金業法における金銭の貸付けに該当すると判断されるリスクがあると指摘している。その上で、どのような場合に金銭の貸 先払いである点を含めても、それ自体が問題になるものではないが、運用方法によっては、貸金業法における金銭の貸付けに該当すると判断されるリスクがあると指摘している。その上で、どのような場合に金銭の貸付けに該当すると判断されるかという点について、「金銭の返還」によって取引を終了させることが取引の主たる目的になっている か否かという点が重要になると考えられるとし、取引内容に照らして売買契約としての履行を期待できないような場合であったり、売買契約の履行と金銭の返還による取引の終了が同列に取り扱われたりしているような場合には、金銭の返還による取引を終了させることが取引の主たる目的になっていると判断される可能性が高いといえるが、何らかのイレギュラーな 事態が発生した場合に限って金銭の返還による取引終了を選択できる場合や、そのような取引終了を選択できる期間が売買契約の履行期限と比較して短期に設定されているような場合は金銭の貸付けに該当すると判断される可能性は低いと言えるとし、また、金銭の返還による取引終了が選択された場合において、売買代金の返還の他に費用の支払を求める場合には、 金銭の貸付けに該当すると判断される可能性が高まるとされている。違約 金については、売買契約における目的物引渡義務違反を理由に契約解除となった場合、売買代金の返金を求めることは当然のことであって問題がないが、買主がモノの取得を目的としておらず、一定期間の経過後に売買代金の返還を受けることを目的としているような場合には、金銭の貸付けに該当する可能性が高いとされ、モノの引き渡しをせずに売買代金を返還す る選択肢があることを利用者に示したり、利用者がモノの引き渡しをする方法を困難・複雑なものにすることで契約解除の可能性を高めるような運用をしたり とされ、モノの引き渡しをせずに売買代金を返還す る選択肢があることを利用者に示したり、利用者がモノの引き渡しをする方法を困難・複雑なものにすることで契約解除の可能性を高めるような運用をしたりした場合には実質的に金銭の貸付けに該当するサービスであると判断される可能性があるとされ、違約金の額が事業者に生ずべき平均的な損害の額を超える場合には、消費者契約法上無効となることを指摘して おり、転売利益が売買代金の30%程度であれば問題ないが、転売利益の平均が30%未満である場合には、違約金の額を下げる必要があると指摘している。(乙9)イ本件サービスの利用規約には、本件サービスは利用者から被告会社が目的物を買い取るサービスであることや査定から売買契約に至る手続につい てのほか、1品あたりの買取価格及び利用者一人あたりの月間買取価格又は月間件数については、被告会社所定の上限が設定されていること(第4条1項、2項ただし書)、被告会社が利用者の本人確認のための資料の提出を求めること(第5条3項)、利用者が売買契約の目的物を引き渡さなかった場合を含み、規約に違反する行為を行った場合には、被告会社は理 由の如何にかかわらず本件サービスの提供を直ちに中止し、何らの催告なく会員資格の停止処分又は除名処分等の必要な措置を行うこと(第8条1項2号)、被告会社は、利用者からの買取価格または件数(利用者が目的物等の引渡を終えていない売買契約に関するものに限る。)が被告会社所定の上限額を上回っている場合には、仮査定又は本査定を行わず、利用者 の申込みを拒絶することができること(第12条6項3号)が定められて いた。(甲9)ウ本件サービスの利用状況は別紙取引状況一覧表のとおりであり、1か月あたりの総取引件 の申込みを拒絶することができること(第12条6項3号)が定められて いた。(甲9)ウ本件サービスの利用状況は別紙取引状況一覧表のとおりであり、1か月あたりの総取引件数は、令和2年8月から令和4年12月まで、1000件を下回ることがなく、最大で1800件であった。その他の月についても、サービスを開始した令和2年5月には483件、最終の月である令和 5年10月は683件であるが、他の月は最低でも840件であり、その余は900件台で推移していた。これらの取引のうち、令和2年中の取引については、毎月、96%から99%の取引において、商品が発送されず、違約金が発生していた。令和3年以降についても、令和3年中は5月が88.9%であったものの、その他の月は概ね97%以上で違約金が発生し ており、7月及び8月は1400件ないし1500件の取引のうち、商品が発送された契約はなかった。令和4年中も、5月に81.5%であった以外は、91%ないし99%で違約金が発生していた。令和5年には、68.9%から97.6%の契約で違約金が発生していた。(乙3、4、12、14) エ被告会社は、本件サービス開始当初、ビル内の一室に設けられた被告会社の事務所内に、本件サービスで送付されてきた商品を保管しており、サービス開始から約2年後の令和4年5月31日、東京都新宿区内の居住用建物を賃借したが、当該建物もまた居住用マンションの一居室であり、床面積は23.56㎡であった。被告会社は、送付されてきた商品を、プラ スチックケースに入れるなどして保管していた。(乙6、17、被告A)オ本件サービスについては、令和2年6月から同年11月頃、匿名掲示板において、商品代金に30%の違約金を付す必要があること、在籍 クケースに入れるなどして保管していた。(乙6、17、被告A)オ本件サービスについては、令和2年6月から同年11月頃、匿名掲示板において、商品代金に30%の違約金を付す必要があること、在籍確認がされること、インターネット上の画像データを送付することにより商品代金の振込がされたこと、売却する物にかかわらず一定額の提案がされたこ と、違約金の支払日を給料日ないしその翌日か7日後かの長い方を選べた こと、信用を重ねて枠が増えると感じていることなどの書込みがなされていた。(甲10)⑶ 先払い買取現金化についての状況日本貸金業協会、財務局、金融庁、警察庁、消費者庁は、令和4年3月、実際に商品が売買されない前提で業者に商品の買取依頼を行い、先払い代金 として業者から金銭を受領し、商品発送期限到来後、買取代金の返還と違約金名目の金銭の支払いを行う取引につき、「商品売買を装っているが、契約の解除を前提としている」「違約金(キャンセル料)名目の金銭が高額」という特徴を有する取引について、高額な違約金名目の金銭の支払により生活が悪化して多重債務に陥る危険性があることや、取引で提供した個人情報が 悪用されたり、インターネット上にさらされるなどのトラブルや犯罪に巻き込まれる危険性があることを挙げ、商品売買を装っていても、経済的な実態が貸付けであって、業として行う場合には貸金業に該当するおそれがあり、貸金業登録を受けずに貸金業を営む者は刑事罰の対象であると記載したチラシを作成して注意喚起を行った。(甲7) ⑷ 原告と被告会社との取引状況ア原告は、令和2年12月10日、本件サイトを通じて被告会社に対し、本件サービス利用の申込みをした。申込みにあたり、原告は、被告会社のインターネット ⑷ 原告と被告会社との取引状況ア原告は、令和2年12月10日、本件サイトを通じて被告会社に対し、本件サービス利用の申込みをした。申込みにあたり、原告は、被告会社のインターネット上のウェブサイトで、氏名や住所、生年月日等の個人情報を入力し、本人確認書類の写真データを送信した。その後、原告は被告会 社に対し、勤務先の情報や年収、月収、給与の支払日、家族構成等を伝え、被告会社の担当者の求めに応じて給与明細のデータを送信した。被告会社の担当者は、原告の勤務先に電話で在籍確認を行い、その後、被告会社が原告に対する本件サービスの利用を承諾し、原告は、本件サービスの取引約款に電子サインをした。(原告本人) 原告が電子サインをした取引約款は、「取引約款(フラッシュ買取)」 と題するものであり、売買契約の成立時期、商品の送付の方法(レターパック、ゆうパック、宅配便のいずれかの方法で、ウェブサイト上で被告会社が指定する東京都内の住所地に送付する。)などが定められており、また、売買契約成立後であっても、翌日午後3時までに売買代金全額及び解約事務手数料1000円を被告会社指定の口座に振り込み、その後3時間 以内に被告会社指定の方法によりキャンセルの通知をした場合にはキャンセルが認められること、期限内に商品の送付をしなかった場合には、期限の経過により当然に契約が解除となり、売買代金の全額にその30%相当額の違約金を請求できることが記載されていた。(甲2)被告会社は、原告に対し、同日、1万1340円を送金し、「送金が完 了いたしました。商品の発送をお願いいたします。行き違いで発送して頂いておりましたら、失礼のほどご容赦ください。また、即日キャンセルをご希望のお客様は24時間以内に 0円を送金し、「送金が完 了いたしました。商品の発送をお願いいたします。行き違いで発送して頂いておりましたら、失礼のほどご容赦ください。また、即日キャンセルをご希望のお客様は24時間以内に〇〇-〇〇〇〇-〇〇〇〇までご連絡の上、手数料1000円と共に下記の返金口座まで、ご返金お願いいたします。」として、みずほ銀行四ツ谷支店の被告会社名義の口座を明記したメ ール(以下「送金完了メール」という。)を送信した。送金完了メールには、上記のとおり返金先の口座情報や、古物商許可の番号が記載されていたものの、商品の発送方法や宛先についての明示の記載はない(メールの送信者署名には被告会社の住所が記載されているが、発送先である旨の記載はない。)。(甲4) イ原告は、令和2年12月25日に写真を送信して本件サービスの利用申込みをした。これに対し、被告会社は、同日中に、買取金額1万5000円を提案し、問題なければ後に送付するメールの規約にサインしてほしいと求めるメールを送信した。その後、被告会社は、原告に対し、サインを求める規約へのリンクが貼られたメールを送信したが、そのメールには、 入金確認後24時間は無条件でキャンセル可能であること、7日以内に発 送してほしいこと、7日以内に発送が確認できない場合には無断キャンセルとみなされるとの注意喚起がされていた。(甲5)ウ原告は、令和4年9月には、自分の持っているデジタルカメラの写真を送付して取引の申込みを行った。申込みの際、原告は、商品の外箱の写真のほかに、運転免許証を持った自分の写真と、運転免許証の写真を送付し た。このときの買取承認金額は送金手数料込みで2万5700円であり、発送期限は同月28日、違約時返金期限は同年10月25日午後2時まで 、運転免許証を持った自分の写真と、運転免許証の写真を送付し た。このときの買取承認金額は送金手数料込みで2万5700円であり、発送期限は同月28日、違約時返金期限は同年10月25日午後2時までとされていた。原告には同年9月24日に2万5000円が振り込まれ、原告は、同年10月25日に3万2500円を被告会社に支払った。原告は、キャンセル理由として、選択肢の中から「実店舗で買い取りを行った」 を選択した。(甲5、乙2、原告本人、弁論の全趣旨)エ原告は、別紙計算書記載のとおり、23回にわたって本件サービスを利用したが、実際に商品を発送したことは一度もなく、毎回違約金を支払っていた。原告は、一連の取引の途中で再度在籍確認を受けたことがあったが、違約を理由に被告会社から資格停止や除名等の処分を受けたことはな かった。原告は、本件サービスにおいて、スマートフォンや携帯型ゲーム機等を売ることが多く、自分が持っていない物の画像をインターネット上で探し、その画像データを使って本件サービスを申し込むことがほとんどであったが、画像テータの差し替えを求められることはあっても、それ以上の調査をされることはなかった。(原告本人、弁論の全趣旨) 原告の違約金支払日は、給料日に近い25日であった。これに対し、別の顧客については、毎月25日ではなく別の特定の日に違約金が支払われていた。(甲12、原告本人) 2 争点に対する判断⑴ 上記認定事実⑷アによれば、被告会社は、本件サービスについて、契約成 立翌日までに、手数料1000円を支払ってキャンセルすることはできるが、 それ以外のキャンセルは認めておらず、利用者が売買契約の締結後に商品を発送しないことは、売買契約の債務不履行として、契約の無催 手数料1000円を支払ってキャンセルすることはできるが、 それ以外のキャンセルは認めておらず、利用者が売買契約の締結後に商品を発送しないことは、売買契約の債務不履行として、契約の無催告解除原因となり、会員資格停止や除名の事由と定めている。 他方で、上記認定事実⑵ウによれば、本件サービス提供開始当初から、成立した契約の9割以上で商品が送付されず、違約の状態が継続していたこと が認められ、本件サービスが金融目的で利用できることが匿名掲示板上で紹介されていたことから、違約をする者は、金融目的で本件サービスを利用していたことがうかがわれる(匿名掲示板上の書き込みは、匿名であることから、書込みを行った者がその内容の正確性等に責任を負わないものではあるけれども、上記掲示板は、形態を問わずに借入れをすることを希望する者が 情報交換の目的で利用しているものであることや、違約金の率や支払期限についての書き込みが本件サービスの内容と概ね合致していることに照らし、上記匿名であるという事情を前提としても、一定程度の信用性があるものと認められる。)。同⑷エのとおり、原告も、1回も商品を発送したことがなかったところ、被告会社からは再度の在籍確認をされることはあっても、利 用停止や除名などの規約に記載された措置をとられたことはなかったことが認められる。 被告らは、不正利用者を排除する措置をとってきたと主張するが、個人の利用者に対する措置を取ったことを裏付ける確たる証拠はないし、上記認定事実⑵ウの取引件数の推移に照らしても、金融を目的として利用する利用者 に対して、本件サービスが利用できなくなるような措置をとっていたと認めることはできない。 以上によれば、被告会社が、商品を送付せずに違約金を支払う形態 金融を目的として利用する利用者 に対して、本件サービスが利用できなくなるような措置をとっていたと認めることはできない。 以上によれば、被告会社が、商品を送付せずに違約金を支払う形態について、形式的には、規約に違反するものであるということを外部に表明するものの、個々の利用者との関係では、悪質な利用者であると判断して契約の相 手方から排除するという姿勢をとらなかったということができる。 ⑵ 上記認定事実⑵エのとおり、被告会社が買い取った物の保管のために利用していたのは、本件サービス提供開始から約2年間は、事務所を兼ねたマンションの一室のみであり、令和4年5月に賃借した物件も、居住用マンションの一室であって、最大でも二部屋しかなかったところ、同ウのとおり、本件サービスの利用件数は、令和2年8月から令和4年中は1か月1000件 を下回ることはなかったのであるから、実際に物の買取を行う事業を行うには保管場所の広さや設備等がその件数に全く見合っておらず、逆に、同ウの商品発送の割合の少なさには合致したものということができる。 上記の保管場所の規模や体制に加え、上記認定事実⑷アのとおり、被告会社が商品に対して送付した送金完了メールに、商品の発送をしてほしいと記 載しながら、商品の梱包や送付の方法についての記載がなく(本件サービスは、ゲーム機やスマートフォン等の電子機器を買い取りの対象としていたのであるから、被告会社が商品を受領して転売することを目的としていたのであれば、その目的との関連で重要なのは物自体の価値を毀損しないことであるのに、梱包や送付の方法についての指定や注意書きがないのは、キャンセ ルする際の振込先の預金口座の記載があることに照らしても不自然というほかなく、被告会社の 物自体の価値を毀損しないことであるのに、梱包や送付の方法についての指定や注意書きがないのは、キャンセ ルする際の振込先の預金口座の記載があることに照らしても不自然というほかなく、被告会社の関心の所在が、商品自体の価値ではなく、金銭のやりとりにあることをうかがわせるものであるとすらいえる。)、被告会社の住所の記載はあるものの、物の送付先とは明示されていないこともあわせると、被告会社において、本件サービスの利用者が商品を発送することをほとんど 想定しておらず、物自体の価値への関心も低かったものというべきである。 ⑶ 他方で、上記認定事実⑷アのとおり、被告会社は、原告が本件サービス利用の申込みを行った際に、本人確認のために、氏名や住所、生年月日等の確認に加えて、勤務先や収入に関する情報を取得し、給与明細の画像等を徴求して、在籍確認を行っており、古物営業法における本人確認には必要のない、 資力についての情報収集をしていることが認められる。被告Aは、在籍確認 は本人確認における虚偽申告を防ぐために行っていた、給料日や月額給与をオペレーションとして確認していたことはないと供述するが、古物営業法が本人確認を求める趣旨からは勤務先に在籍確認をする理由はないし、被告会社が作成していたフォーマットに「月額給料額」や「給料日」を記載する欄を設けていること(乙2)に照らして採用できない。 さらに、上記認定事実⑵イのとおり、本件サービスの規約には、被告会社が一人あたりの月間の買取件数や金額に上限を設ける旨の規定が存在し、このことに加えて、原告の毎回の買取金額に大きな差がなかったことからは、被告会社が買取金額に上限を定めていたことが認められる。被告らは、上限の設定を否認し、被告Aは、資金繰りの問題があるため、 し、このことに加えて、原告の毎回の買取金額に大きな差がなかったことからは、被告会社が買取金額に上限を定めていたことが認められる。被告らは、上限の設定を否認し、被告Aは、資金繰りの問題があるため、買取ができない場 合に顧客に説明する必要があるために規約において上限額を定めたが、実際には上限がなかった旨供述するが、被告会社の資金繰りに問題が生じかねない状況であったことについては裏付けがなく、採用できない。被告会社が買い取った商品を転売して利益を上げることを目的とするのであれば、上限額を定めることは不合理というべきであり、被告会社が利用者の支払能力につ いての情報を収集していたこととあわせると、取引の上限額は、違約金の不払を生じさせないことを目的として設けられたものというべきである。 加えて、被告会社は、原告については毎月25日に違約金の支払期限を定めており(被告らは、違約金について支払期限を定めたことはないと主張するが、上記認定事実⑷ウのとおり、メールに違約金支払期限が時間まで指定 して記載されていることに照らして採用できない。)、同エのとおり、利用者ごとに、毎月一定の日の前後に違約金支払期限が定められていたことから、違約金の支払期限を給与日ないしその翌日と定めていたことが認められる。 違約金が、売買契約の債務不履行に基づく損害賠償という趣旨であれば、その支払期限は、損害賠償請求権が発生する発送期限の日との関係で定められ るのが自然であるところ、損害の発生日にかかわらず、給与の支払われる日 又はその翌日に支払期限を設定するのは、違約金が発生することを所与の前提として、その支払を確実にさせることを目的とするものであるといえる。 以上からは、被告会社は、本件サービスの利用者について、給与 翌日に支払期限を設定するのは、違約金が発生することを所与の前提として、その支払を確実にさせることを目的とするものであるといえる。 以上からは、被告会社は、本件サービスの利用者について、給与の支払を受けている者であることを確認した上で取引を開始し、商品を発送しないときに、利用者の支払能力を超えない程度の違約金が発生する限度の内容で売 買契約を締結し、違約金の支払期限を給料日又はその近くの日に固定しておくことで、違約金を確実に回収できるような仕組みを構築していたものということができる。 ⑷ 以上によれば、本件サービスは、物の売買契約を締結して商品を買い取って転売することよりも、商品の買取代金を顧客に送金し、売買契約を解除し て違約金を加算した金額の支払を受けることを目的としたものというべきであるから、本件サービスにおける被告会社と原告との間の金銭の交付は、貸金業法にいう「貸付け」にあたるものと認められる。 被告らは、被告会社が古物営業法上の許可を所得し、実際に商品が送付されてきていて、商品の発送が一度なされると売買契約をキャンセルすること ができないと主張するけれども、これらの事情はいずれも本件サービスが売買契約の形式をとっていることからくる帰結にすぎないのであって、上記判断を左右するものではない。 原告が支払った違約金を、被告会社から売買代金名目で振り込まれた金銭に対する利息としてその利率を計算すると、最低でも年利300%を下回る ことはないのであるから、被告会社による支払は、貸金業法に違反する著しく高利率での貸付けといわざるを得ず、違法であるとの評価を免れない。 また、被告Aは、上記認定事実⑵イのとおり、本件サービスについてC弁護士に相談し、本件意見書を取得するなどしてい する著しく高利率での貸付けといわざるを得ず、違法であるとの評価を免れない。 また、被告Aは、上記認定事実⑵イのとおり、本件サービスについてC弁護士に相談し、本件意見書を取得するなどしていたことは認められるけれども、本件サービスの仕組みを構築して運営し、本件サービスの実態を把握し ていたことは、同人の供述からも明らかであるから、被告会社と連帯して共 同不法行為に基づく損害賠償責任を負うものというべきである。 ⑸ 損害の額について原告は、原告が被告会社に支払った額の全部が被告らの不法行為による損害であると主張する。これに対し、被告らは、原告の支払った額のうち、売買代金相当額については、原告が支出したものではないから、損害にはあた らないと主張する。 上記⑶において説示したとおり、本件サービスは、売買契約の形式をとって、実質的には、貸金業法に反する非常な高金利での「貸付け」を行うもので、公序良俗に反し、不法行為を構成するものである。したがって、そのような行為の一環として被告会社が原告に交付した売買代金名目の金員は、民 法708条所定の不法原因給付にあたり、本来、被告会社が原告に対して返還を求めることができない性質のものである。そうすると、原告は、支払う必要のない売買代金相当額と違約金を、別紙計算書各「返済日」欄の日に、被告会社に支払ったということになるから、原告が上記の日にそれぞれ支払った全額(合計66万6250円)が、被告らの不法行為による損害である と認められ、この点に関する被告らの主張は採用できない。 また、原告が簡易裁判所においては司法書士に、移送後の当庁においては弁護士にそれぞれ訴訟の追行を委任していたことは上記前提事実⑸のとおりである。 る被告らの主張は採用できない。 また、原告が簡易裁判所においては司法書士に、移送後の当庁においては弁護士にそれぞれ訴訟の追行を委任していたことは上記前提事実⑸のとおりである。 以上によれば、原告は、別紙計算書の「返済額」合計66万6250円と、 弁護士ないし司法書士費用相当額6万6625円の経済的損害を被ったものと認められる。 なお、原告は、本件サービスの利用により精神的苦痛を被ったと主張して慰謝料の請求もするが、原告の供述によっても、その内容は原告が本件サービスを利用したことによる自己嫌悪であったり、多重債務により精神的に追 い込まれることになったことというのであるから、本件サービスの利用ない し被告らの行為によるものというよりも、その原因となった自身の多重債務状態に端を発するものというべきであって、本件全証拠によっても、被告らの行為により、慰謝料の支払いを要するような精神的苦痛が生じたことは認められないから、慰謝料についての原告の請求には理由がない。 3 以上によれば、原告の主位的請求のうち、経済的損害についての損害賠償請 求には理由があるが、精神的損害についての慰謝料の請求には理由がない。原告の予備的請求は、主位的請求で認容された損害賠償請求権についての請求が認容されない場合について請求する者であると解されるから、その部分についての主位的請求が認容される以上、判断の必要がない。 第4 結論 以上のとおりであるから、原告の主位的請求には主文の限度で理由があるのでこれを認容し、その余の請求については理由がないので棄却することとして、主文のとおり判決する。 大阪地方裁判所第17民事部 裁判官 これを認容し、その余の請求については理由がないので棄却することとして、主文のとおり判決する。 主文 大阪地方裁判所第17民事部 裁判官皆川更

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