主文 1 本件控訴を棄却する。 2 控訴費用は,控訴人の負担とする。 事実及び理由 第1 控訴の趣旨 1 原判決を取り消す。 2 処分行政庁が平成18年1月27日付けで控訴人に対してした控訴人の平成14年4月1日から平成15年3月31日までの事業年度(以下「平成15年3月期」という。)の法人税に係る更正処分のうち所得金額4764万5865円,納付すべき税額487万7800円を超える部分及び過少申告加算税賦課決定処分を取り消す。 3 処分行政庁が平成18年1月27日付けで控訴人に対してした控訴人の平成15年4月1日から平成16年3月31日までの事業年度(以下「平成16年3月期」という。)の法人税に係る更正処分のうち所得金額6億6475万5388円,納付すべき税額1億7603万0600円を超える部分及び過少申告加算税賦課決定処分を取り消す。 4 処分行政庁が平成18年1月27日付けで控訴人に対してした控訴人の平成16年4月1日から平成17年3月31日までの事業年度(以下「平成17年度3月期」という。)の法人税に係る更正処分のうち所得金額10億1997万6893円,納付すべき税額2億5552万5700円を超える部分及び過少申告加算税賦課決定処分のうち過少申告加算税33万3000円を超える部分を取り消す。 第2 事案の概要 1 本件は,諏訪税務署長が,光学レンズ・光学機器の製造販売等を目的とする法人である控訴人の平成15年3月期,平成16年3月期及び平成17年3月期(以下「本件各事業年度」という。)の法人税につき,中華 人民共和国(以下「中国」という。)香港特別行政区(以下「香港」という。)に本店を有する控訴人の子会社であるAが租税特別措置法(平成 月期(以下「本件各事業年度」という。)の法人税につき,中華 人民共和国(以下「中国」という。)香港特別行政区(以下「香港」という。)に本店を有する控訴人の子会社であるAが租税特別措置法(平成17年法律第21号による改正前のもの。以下「措置法」という。)66条の6第1項所定の特定外国子会社等に該当し,その主たる事業である製造業を中国で行っており同条3項各号の適用除外事由に該当しないため,同条1項に規定するタックス・ヘイブン対策税制が適用され,Aに係る同項所定の課税対象留保金額に相当する金額を控訴人の所得の金額の計算上益金の額に算入すべきである等として各更正処分(以下「本件各更正処分」という。)及び各過少申告加算税賦課決定処分(以下「本件各賦課決定処分」といい,本件各更正処分と併せて「本件各更正処分等」という。)を行ったところ,控訴人が,Aの主たる事業は卸売業であり,措置法66条の6第3項1号,措置法施行令39条の17第2項1号で定める適用除外事由に該当し,仮にその主たる事業が製造業であるとしても香港は中国の一部であり,同法66条の6第3項2号,同施行令39条の17第5項3号で定める適用除外事由に該当する等の理由により措置法66条の6第1項は適用されず,本件各更正処分等はいずれも違法であるとして,その取消しを求める事案である。 原判決が,Aの主たる事業は製造業であり,所在地国基準も満たさないから適用除外事由は認められず,本件各更正処分等は適法であるとして,控訴人の請求をいずれも棄却した。控訴人がこれを不服として控訴した。 2 関連法令等の定め,前提事実,争点及び争点に関する当事者の主張の要旨は,3のとおり当審における当事者の主張の概要を付加するほかは,原判決の「事実及び理由」欄の「第2 事案の概要」1から5まで(原判決3頁1 等の定め,前提事実,争点及び争点に関する当事者の主張の要旨は,3のとおり当審における当事者の主張の概要を付加するほかは,原判決の「事実及び理由」欄の「第2 事案の概要」1から5まで(原判決3頁15行目から33頁15行目まで)のとおりであるから,これを引用する。 3 当審における当事者の主張の概要 (1) 控訴人原判決のα 工場での製造行為の主体はAであると認定し,Aの主たる事業が製造業であるとした判断には次のとおり誤りがある。 ア法律的実質主義違反原判決は,タックス・ヘイブン対策税制適用の前提として特定外国子会社等の主たる事業は,現実の当該事業の経済活動としての実質・実体によって判定すべきとし,Aの主たる事業を製造業と判断した。これは,経済的実質主義により判断したものであり,法律的実質主義を採用した最高裁判所平成19年9月28日第二小法廷判決(民集61巻6号2486頁)に反する。 イ私法関係準拠主義違反課税は,私法上の法律関係(当事者が選択した法形式又は契約関係)に即して行わなければならない。したがって,α 工場における製造行為が誰に帰属するかは準拠法である中国法令に基づく本件各契約書の解釈によって判定すべきである。原判決は,準拠法である中国法令によらない契約解釈を行っている。そのため,中国法令によれば法的主体性が認められるにもかかわらずα 工場には法人格はない,本件来料加工取引の内容を理解せずに,中国法令によれば本来製造主体とはなれないAがα 工場の製造主体であるなどの誤った事実認定を行い,それを前提にAの主たる事業は製造業であると判断している。 ウ経験則違反委託加工取引において,委託先の技術が十分でないような事情がある場合は,委託元が顧客に供給する加工製品の品質を確保するため,委託先が 主たる事業は製造業であると判断している。 ウ経験則違反委託加工取引において,委託先の技術が十分でないような事情がある場合は,委託元が顧客に供給する加工製品の品質を確保するため,委託先が純然たる第三者企業であっても,外注管理(品質管理,生産管理,製造設備の状況等の調査,技術指導,製造に必要な機械・設備等の貸与等)を行うことはよくあることであり,委託加工業(卸売業者)を営む会社(委託 元)は,必要な限度で外注管理をしなければならない立場にある。したがって,委託元である会社が委託先である工場における委託加工取引の事業計画を立てることはよくあることであり,だからといって,独立の法的主体を有する委託加工取引の相手方当事者の工場における製造行為が,委託元の事業になるものではない。委託元が委託先を一体として事業計画を立てることも,上記外注管理の重要性から社会通念上当然行われる行為である。また,委託加工取引では委託元が委託先に材料を無償で提供することはよくあることである。したがって,控訴人が上記の外注管理等を行っていたことをもって,Aの主たる事業がα 工場における製造業であるとの原判決の認定は,委託取引における外注管理の重要性という社会通念を無視した経験則に反する認定である。 エ目的論的解釈による適用除外タックス・ヘイブン対策税制に適用除外要件を設けたのは正常な事業活動を営むものまでも同税制の対象とするのは適当でないと考えられたからである。本件来料加工取引には経済的合理性が認められ,正常な取引であって,租税回避行為ではない。原判決は,カントリーリスク等の回避の要請から本件来料加工方式を選択し,主観的な租税回避や所得の国外移転の意図がなかったとしても,これらの事情はAがα 工場で製造業を行っていたとの判定に影響しないと判断す ,カントリーリスク等の回避の要請から本件来料加工方式を選択し,主観的な租税回避や所得の国外移転の意図がなかったとしても,これらの事情はAがα 工場で製造業を行っていたとの判定に影響しないと判断するが,立法趣旨から経済的合理性が認められる本件にタックス・ヘイブン対策税制を適用するのは相当でない。 オ香港投資協定違反日本は香港政府との間で「投資の促進及び保護に関する日本国政府と香港政府との間の協定」(平成9年6月18日条約7号)(以下「香港投資協定」という。)を締結している。 香港投資協定3条は「いずれの一方の締約政府の投資家も,他方の締約政府の地域内において,投資財産,収益及び投資に関連する事業活動に関 し,当該地方の締約政府又は両締約政府以外の政府の投資家に与えられる待遇よりも不利でない待遇を与えられる。」と規定する。同協定12条1項の規定によれば,同協定の適用除外される租税事項は,締約国(日本又は香港)と第三国との間の租税条約において規定している事項のみであり,タックス・ヘイブン対策税制を含めて租税条約に規定されていない租税事項については全面的に香港投資協定の適用対象となる。 また,香港投資協定は,投資保護のみならず投資の自由化も趣旨・目的とするものである。そうすると,外国人の事業活動を保護することになるから,保護される外国人の事業活動に地域的限定はない。したがって,第三国向け投資も保護の対象となり,Aの中国での事業は第三国向け投資に該当するから,香港投資協定3条の保護の対象となる。 以上によれば,タックス・ヘイブン対策税制は,Aに対して,香港投資協定3条にいう不利な待遇を与えるものであり,本件各更正処分等は香港投資協定に違反し,違法である。 (2) 被控訴人措置法66条の6が香港投資協定3条に違反し無効であ 制は,Aに対して,香港投資協定3条にいう不利な待遇を与えるものであり,本件各更正処分等は香港投資協定に違反し,違法である。 (2) 被控訴人措置法66条の6が香港投資協定3条に違反し無効であるというためには,香港投資協定3条の文理において措置法66条の6の適用を排除する旨が明らかにされているか,香港投資協定3条が措置法66条の6の適用を排除する旨定める規定であるとの十分な解釈上の根拠があるといえなければならない(最高裁判所平成21年10月29日第一小法廷判決,民集63巻8号1881頁参照,最高裁判所平成21年12月4日第二小法廷判決,判例タイムズ1316号92頁参照)。しかし,香港投資協定3条は,文言上,措置法66条の6の適用を排除していない。さらに,香港投資協定3条は,日本国政府が香港の投資家に対し最恵国待遇をすべきことを定めるものであり,日本国内の法人に対する課税を制限する規定であるとは解されない。香港投資協定の目的が「一方の締約政府の投資家による他方 の締約政府の地域内における投資を増加させるための良好な条件を作り出す」点にあると規定されていることに鑑みても,同協定3条は,我が国において投資活動を行う香港の投資家に対する最恵国待遇を要求する趣旨と解されるのであって,我が国の企業に対する課税を制限する趣旨とは到底解されない。したがって,解釈上も,香港投資協定3条が,措置法66条の6の適用を排除する規定ということはできない。 また,香港投資協定の前文の「一方の締約政府の投資家による他方の締約政府の地域内における投資を増加させるため」,投資促進等が「両締約政府の地域において一層の繁栄をもたらすことになることを認識して」の文言及び同協定2条1項の「他方の締約政府の投資家による投資が自己の地域内において行われるための良好 るため」,投資促進等が「両締約政府の地域において一層の繁栄をもたらすことになることを認識して」の文言及び同協定2条1項の「他方の締約政府の投資家による投資が自己の地域内において行われるための良好な条件を醸成し」との文言から,同協定が,日本,香港双方の「地域内」(領域)での投資促進を目指した条項であることが看取できるのであり,そこには香港子会社が中国(第三国)で行っている投資(以下「第三国向け投資」という。)については何ら規定されていない。仮に,香港投資協定3条が,第三国向け投資を含むのであれば,一方の締約政府の投資家と他方の締約政府との紛争の規定である同協定9条の「仲裁」の対象となっていなければならないが,第1段階の「協議」に関する同条1項は「当該他方の締約政府の地域内における投資家による投資に関するもの」となっており,紛争処理の対象を明確に締約国の「地域内」の投資に限定し,同条2項の「仲裁」への付託対象についても同条1項と全く同様の規定となっている。したがって,控訴人の主張は,第三国向け投資については,同協定3条の「最恵国待遇」の対象となるが,同協定9条の「投資協定仲裁」の対象から外したといっているのに等しく,不自然な解釈といわざるを得ない。 第3 当裁判所の判断 1 当裁判所も,① Aは,β 本社及びα 工場の一体的運営による製品 の製造販売を目的として設立され,商業登記簿でも業務性質は製造業と登記されていたこと,② Aは,α 工場における販売製品製造のための生産設備の整備,人員の配置及び原材料・補助材料等の調達等の全ての面において主体的に関与して,α 工場における生産管理を実行していたこと,③α 工場の製造業務を掌握・管理し,同工場の製造業務の人員を組織的に統括・管理していたこと,④ Aは,β 本社とα 工場を一 おいて主体的に関与して,α 工場における生産管理を実行していたこと,③α 工場の製造業務を掌握・管理し,同工場の製造業務の人員を組織的に統括・管理していたこと,④ Aは,β 本社とα 工場を一体のものとして,各年度の事業計画を策定し,設備投資計画を定め,財務管理を行い,人事・労務管理を行っていたこと,⑤Aは,中国税務当局に対し,香港において卸売業を,中国本土において製造業を行っており,Aの役員において,α工場の全ての製造工程を監督・指揮していることなどを申告し,中国本土における製造活動による販売所得のうち50%を非課税所得として認める取扱いを受けていたこと,⑥ Aが中国当局の100%出資により設立された経済合作社及びBとの間に締結した本件借用契約書,本件経営契約書及び本件協議書等によっても,Aは実質的にα 工場において自ら販売製品の製造を行っていたと解されることなどの事情からすると,Aはα 工場において自ら販売製品の製造を行っていたものと認められる。そして,α 工場で行っていた製品製造がAの主たる事業であり,しかもα 工場はAの本店所在地以外の「地域」に所在し,措置法66条の6第3項2号,同法施行令39条の17第5項3号に掲げる要件(所在地国基準)を満たさないから,Aを控訴人の特定外国子会社等として諏訪税務署長が行った本件各更正処分等は適法であると判断する。その理由は,原判決を次のとおり補正し,2のとおり当審における控訴人の主張に対する判断を加えるほかは,原判決が「事実及び理由」欄の「第3 当裁判所の判断」1から4まで(原判決33頁17行目から88頁18行目まで)に説示するところと同一であるから,これを引用する。 控訴人は,原審の認定及び判断をるる批判するが,控訴人の主張を鑑み ても,原審の認定及び判断を変更する必要を 7行目から88頁18行目まで)に説示するところと同一であるから,これを引用する。 控訴人は,原審の認定及び判断をるる批判するが,控訴人の主張を鑑み ても,原審の認定及び判断を変更する必要を認めない。 (1) 原判決38頁23行目冒頭から39頁1行目の「「職務分掌」においても,」までを次のとおり改める。 「(エ) α 工場の実地計画書の作成(α 工場)Aの副総経理(当時)は,2000年(平成12年)3月31日付けで「C(2000年4月1日改名)電子廠金型工場規模拡大実施計画書」(乙10)を作成し,高精 度部品へのチャレンジ計画として,「中国工場のスペース拡大の為に新工場建設を実施した」との背景事情を説明するとともに,α 工場における設備検討の第1次計画,工数検討,立上げ費用,損益目論見書をそれぞれ作成し,職務分掌についても,」(2) 原判決61頁10行目の「ついては。」を「ついては,」に改める。 2 当審における控訴人の主張に対する判断(1) 措置法66条の6第3項の適用除外の制度に係る非関連者基準又は所在国基準のいずれが適用されるかを決定するための特定外国子会社等の「主たる事業」の判定(製造業又は卸売業のいずれであるか等の判定)は,現実の当該事業の経済活動としての実質・実体がどのようなものであるかという観点から,事業実体の具体的な事実関係に即した客観的な観察によって,当該事業の目的,内容,態様等の諸般の事情に加え,関係当事者間で作成されている契約書の記載内容等も加味した上,社会通念に照らして総合的に考慮して個別具体的に行われるべきであり,関係当事者間で作成されている契約書の記載内容のみから一般的・抽象的に行われるべきものではない。 そして,原判決は,特定外国子会社等の主たる事業が製造 合的に考慮して個別具体的に行われるべきであり,関係当事者間で作成されている契約書の記載内容のみから一般的・抽象的に行われるべきものではない。 そして,原判決は,特定外国子会社等の主たる事業が製造業に当たるか卸売業に当たるかの判断に当たって,上記の基本的な考え方に立って,上記1に説示した各事情を総合的に考慮し,加えて製品の製造・販売を行う ために関係当事者間で作成されている契約書の内容も勘案しつつ,事業実体の具体的な事実関係に即した客観的な観察によって,社会通念に照らして個別具体的に判断した結果,α 工場において販売製品の製造を実質的に行っていたのはAであり,α 工場で行っていた販売製品の製造がAの主たる事業であると認めたものであり,原判決のこの点の判断は相当である。 控訴人は,上記判断の枠組みは,経済的実質主義に依拠するものであり,法律的実質主義を採用する判例に反すると主張する(当審における控訴人の主張のア)。しかしながら,法律的実質主義か経済的実質主義かは所得の帰属の判定をめぐる問題であり,本件ではそれとは異なる措置法66条の6第3項の適用の前提となる特定外国子会社等の主たる事業の判定を問題としているのであるから,事業の実体に即して主たる事業を判定するという前記判断の枠組みが法律的実質主義に反するとの批判は当たらない。よって,控訴人の上記主張は理由がない。 (2) 控訴人は,Aの主たる事業の判定に当たっては,準拠法である中国法令に基づく本件各契約書等の解釈に基づく法律関係によって判定されるべきである旨主張する(当審における控訴人の主張のイ)。 しかしながら,特定外国子会社等の主たる事業が何であるかについての判断は,前記のとおり,現実の当該事業の経済活動としての実質・実体がどのようなものであるかという観点等から,社会通 人の主張のイ)。 しかしながら,特定外国子会社等の主たる事業が何であるかについての判断は,前記のとおり,現実の当該事業の経済活動としての実質・実体がどのようなものであるかという観点等から,社会通念に照らして総合的に考慮して個別具体的に行われるべきものであり,上記判定に当たっては,契約書等の内容及びそれに基づく法律関係は,総合判断の一要素にすぎないというべきであり,準拠法である中国法令に基づく本件各契約書等の解釈に基づく法律関係によって判定されるべきである旨の控訴人の主張は採用できない。 (3) 控訴人は,Aがα 工場に対し外注管理を行い,委託加工取引の事業計画を立てたことなどをもって,Aの主たる事業がα 工場における製造業 であると認定したのは,委託加工取引における外注管理等の重要性という社会通念を無視した経験則に反する認定であると主張する(当審における控訴人の主張のウ)。 しかしながら,上記1のとおり,Aがα 工場において自ら販売製品の製造を行っていたとの認定は,当該事業の目的,内容,態様等の諸般の事情に加え,契約書の記載内容等も加味した上での総合判断によって行ったものであり,Aがα 工場に対し外注管理を行い,委託加工取引の事業計画を立てていたことなどの事情のみから上記認定をしたものではないから,控訴人の経験則違反の上記主張も採用できない。 (4) 控訴人は,タックス・ヘイブン対策税制に適用除外要件を設けたのは正常な事業活動を営むものまでも同税制の対象とするのは適当でないと考えられたからであり,本件来料加工取引は経済的合理性が認められる正常な取引であり租税回避行為ではないから,タックス・ヘイブン税制の適用はないと主張する(当審における控訴人の主張のエ)。 しかしながら,Aの主たる事業の判定は,事業実体の具体的な事実 が認められる正常な取引であり租税回避行為ではないから,タックス・ヘイブン税制の適用はないと主張する(当審における控訴人の主張のエ)。 しかしながら,Aの主たる事業の判定は,事業実体の具体的な事実関係に即した客観的な観察によって,社会通念に照らして総合的に考慮して判定されるべきことは前記判示のとおりであり,主観的な租税回避の意図や所得の国外移転の意図がなかったとしても,前記基準による判定を左右するものではない。したがって,控訴人の上記主張も理由がない。 (5) 控訴人は,タックス・ヘイブン対策税制は,香港投資協定に違反して控訴人に不利な待遇を与えるものであり,本件各更正処分等は違法であると主張し(当審における控訴人の主張のオ),これに沿う内容のの意見書(甲132,251)を提出する。 一般に,自国における税負担の公平性や中立性に有害な影響をもたらす可能性のある他国の制度に対抗する手段として,いわゆるタックス・ヘイブン対策税制を設けることは,国家主権の中核に属する課税権の内容に含 まれるものと解される。したがって,租税条約その他国際約束等によってこのような税制を設ける我が国の権能が制約されるのは,当該国際約束におけるその旨の明文規定その他の十分な解釈上の根拠が存する場合でなければならないと解される(前掲最高裁判所平成21年10月29日第一小法廷判決,最高裁判所同年12月4日第二小法廷判決)。 したがって,措置法66条の6の規定が,租税条約等の国際約束等に反するとされるのは,当該国際約束等におけるその旨の明文規定その他の十分な解釈上の根拠がある場合に限られるところ,香港投資協定には,そのような明文規定は存在しない。 ところで,控訴人が提出する前記作成の意見書は,① 日本が締結している投資協定には,租税事項を明示 解釈上の根拠がある場合に限られるところ,香港投資協定には,そのような明文規定は存在しない。 ところで,控訴人が提出する前記作成の意見書は,① 日本が締結している投資協定には,租税事項を明示的に対象から外しているものも少なくはないが,香港投資協定12条1項は同協定において適用除外される租税事項は,締約国(日本又は香港)と第三国の間の租税条約において規定している事項のみであるから,タックス・ヘイブン対策税制を含めて租税条約に規定されていない租税事項については,全面的に香港投資協定の適用対象となる,② 同協定3条の規定上,「他方の締約政府の地域内においては」は,「不利でない待遇を与えられる。」にかかっており,「投資に関連する事業活動」にかかっていない。すなわち,同条は,「投資に関連する事業活動」について,それがどこで行われるかについて一切地理的な制限を加えていない,したがって,第三国向け投資に該当するAの中国での事業についても同協定の適用がある,③ 親会社である控訴人に対するタックス・ヘイブン対策税制の適用があり,これを避けるためにAが控訴人に対する配当を行うとすれば事業資金の減少を来すのであり,Aに対し不利な待遇を与えることになるとして,タックス・ヘイブン対策税制が香港投資協定に違反するとの見解を述べる。 しかしながら,① タックス・ヘイブン対策税制は,我が国の内国法人 に対する課税権の行使として行われるものである以上,香港投資協定3条が措置法66条の6の適用を排除する規定とは解されない,② 同協定の前文及び2条の規定からも,同協定が日本・香港双方の「地域内」(領域内)での投資促進を目指したものであることが看取できるのであり,同協定3条において,香港子会社が中国(第三国)で行っている第三国向け投資については何ら規定さ 同協定が日本・香港双方の「地域内」(領域内)での投資促進を目指したものであることが看取できるのであり,同協定3条において,香港子会社が中国(第三国)で行っている第三国向け投資については何ら規定されていないと理解できる,③ 同協定9条の仲裁の対象は,「当該地方の締約政府の地域内における当該投資家による投資に関するもの」となっており,明確に仲裁の対象となるのが締約国の「地域内における投資」に限定しており,このことからも同協定3条が「第三国向け投資」に最恵国待遇が与えられると定めていると理解するのは不自然である,④ 同協定3条は,その規定の文言上からも措置法66条の6の適用を排除するものと理解されない,という事情を考えると,香港投資協定はタックス・ヘイブン対策税制を排除しているものとは解されず,少なくともそのことについて十分な解釈上の根拠が存するということはできない( 作成の鑑定意見書(乙50)参照)。 そうすると,香港投資協定が措置法66条の6の規定を排除しているとの十分な解釈上の根拠があるということもできない。 よって,控訴人の前記主張も採用できない。 第4 以上によれば,控訴人の請求は理由がないから棄却すべきところ,これと同旨の原判決は相当であり,本件控訴は理由がない。 よって,本件控訴を棄却することとし,主文のとおり判決する。 東京高等裁判所第21民事部 裁判長裁判官前田順司 裁判官飯田恭示 裁判官森冨義明は填補のため署名押印できない 裁判長裁判官前田順司 田恭示 裁判官森冨義明は填補のため署名押印できない 裁判長裁判官前田順司
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