- 1 -平成27年5月28日判決言渡平成24年(行ウ)第152号所得税決定処分等取消請求事件主文 1 原告の請求をいずれも棄却する。 2 訴訟費用は原告の負担とする。 事実 及び理由第1 請求処分行政庁が原告に対して平成22年6月30日付けでした,平成17年分ないし平成20年分の所得税の各決定処分及び無申告加算税の各賦課決定処分をいずれも取り消す。 第2 事案の概要本件は,所得税法上の非居住者として,アメリカ合衆国(以下「米国」という。)から本邦に輸入した自動車用品を,インターネットを通じて専ら日本国内の顧客に販売する事業(以下「本件販売事業」という。)を営んでいた原告が,処分行政庁から,本件販売事業の用に供していたアパート及び倉庫(以下,併せて「本件アパート等」という。)は,所得に対する租税に関する二重課税の回避及び脱税の防止のための日本国政府とアメリカ合衆国政府との間の条約(平成16年条約第2号。以下「日米租税条約」という。)5条の規定する「恒久的施設」に該当し,原告は本邦において所得税を納税すべき義務があるとして,原告の平成17年分ないし平成20年分(以下「本件各係争年分」という。)の所得税についての各決定処分(以下,併せて「本件各所得税決定処分」という。)及び無申告加算税の各賦課決定処分(以下,併せて「本件各賦課決定処分」といい,本件各所得税決定処分と併せて「本件各処分」という。)を受けたことに対し,本件アパート等は恒久的施設に該当せず,原告が本邦において所得税を納税すべき義務はないとして,本件各処分の取消しを求める事案である。 - 2 - 1 関係法令の定め本件に関係する法令の定めは,別紙2「関係法令の定め」記載のとおりである(同別紙において定義した略語等は,本文においても用 各処分の取消しを求める事案である。 - 2 - 1 関係法令の定め本件に関係する法令の定めは,別紙2「関係法令の定め」記載のとおりである(同別紙において定義した略語等は,本文においても用いることとする。)。 2 前提事実(証拠等を掲げていない事実は,当事者間に争いのない事実である。)(1) 原告ア原告は,「P1」との屋号で本件販売事業を個人で営む者である(以下,原告が上記屋号で営む企業を原告個人と区別して「本件企業」ともいう。)。 イ原告は,平成16年10月23日,米国に向けて本邦を出国し(以下,この出国を「本件出国」という。),同日以降少なくとも平成20年末までの間,米国に居住しており,平成17年ないし平成20年(以下「本件各係争年」という。)において,所得税法上の非居住者(同法2条1項5号)であった。 (2) 本件販売事業の概要ア原告は,平成14年以降,専ら日本の顧客を対象として,本件販売事業を営んでおり,本件企業の営業所を兵庫県高砂市α×番29-208号所在のアパート(以下「本件アパート」という。),本件企業の連絡先電話番号を「×」(以下「本件電話番号」という。)として,インターネット上に自動車用品を販売するホームページ(以下「原告ホームページ」という。)を開設するほか,P2株式会社が運営するインターネット上の電子商店街であるP3に出店し(以下,原告がP3に掲載する本件企業のウェブページを「P3ウェブページ」といい,原告ホームページと併せて「原告ホームページ等」という。),P4株式会社が運営するインターネットを介して競売を行うウェブサイトのP5に出品していた。 イ(ア) 原告は,平成14年1月14日,P5を利用するための「P6」を取得し,遅くとも同年3月23日までに,原告ホームページを開設した。 を介して競売を行うウェブサイトのP5に出品していた。 イ(ア) 原告は,平成14年1月14日,P5を利用するための「P6」を取得し,遅くとも同年3月23日までに,原告ホームページを開設した。 (イ) 原告は,平成16年7月1日から,P3ウェブページ上に出店して - 3 -いる。 ウ(ア) 原告は,平成13年11月16日,本件アパートを賃借し,同月17日,本件アパートに本件電話番号を設置し,平成16年4月22日,本件アパートに電話番号「×」(以下「本件ファックス番号」といい,本件電話番号と併せて「本件電話番号等」という。)を設置した。本件電話番号は,原告ホームページ等において,本件企業の連絡先電話番号として掲載されており,また,本件ファックス番号は,P3ウェブページにおいて,本件企業のファックス番号として掲載されている。 (イ) 原告は,本件出国後である平成18年11月29日,兵庫県高砂市β×番8号所在の倉庫(以下「本件倉庫」という。)を賃借した。なお,本件アパートに設置された本件ファックス番号は,本件倉庫の賃借に伴い,本件倉庫に移設された。 エ(ア) 本件企業は,米国において仕入れた自動車用品を,本件アパート等(本件アパート及び本件倉庫)に保管しておき,日本国内の顧客からインターネットを通じて注文を受けた場合には,その商品を本件アパート等から当該顧客に向けて発送するという方法により,本件販売事業を行っており,注文商品を発送する際,独自の日本語版取扱説明書(以下「日本語取説書」という。)を同梱することもあった。 (イ) 原告は,本件販売事業のうち本件アパート等における業務に従事する従業員(以下「本件従業員」という。)を雇用しており,本件従業員が同業務に従事していた。なお,本件企業が本件アパート等から顧客に向けて発送する 本件販売事業のうち本件アパート等における業務に従事する従業員(以下「本件従業員」という。)を雇用しており,本件従業員が同業務に従事していた。なお,本件企業が本件アパート等から顧客に向けて発送する商品は,全てP7株式会社(以下「P7」という。)が集荷して顧客に配達している。[乙22,弁論の全趣旨](3) 原告の本件出国前後における確定申告等の状況ア原告は,平成16年10月23日,本件出国をした。 イ原告は,平成16年11月19日,処分行政庁に対し,所得税法施行規 - 4 -則98条1項3号の規定に基づき,米国へ移住することを理由として,同年10月23日に本件販売事業を廃業した旨の「個人事業の開廃業等届出書」(以下「本件廃業届出書」という。)を提出するとともに,通則法117条1項及び2項の規定に基づき,平成16年分の所得税の確定申告を行うために納税管理人としてP8税理士を選任する旨の「所得税の納税管理人の届出書」を提出した。 ウ原告は,本件廃業届出書を提出する一方で,本件各係争年において,本件アパート等を本件販売事業の用に供して,本件販売事業を継続して営んでいた(なお,原告が本件倉庫を賃借した後において,本件企業が本件アパートを本件販売事業の用に供していたといえるかどうかについては,当事者間に争いがある。)。 (4) 本件訴訟に至る経緯等ア(ア) 原告は,平成17年3月10日,処分行政庁に対し,平成16年分の所得税の確定申告書を提出したが,その後は,本件各係争年分の所得税の確定申告書を提出しなかった。 (イ) 原告は,消費税及び地方消費税(以下「消費税等」という。)について,平成17年1月1日から平成20年12月31日までの各課税期間(以下「本件各課税期間」という。)に係る消費税等の確定申告書を提出しなかった 消費税及び地方消費税(以下「消費税等」という。)について,平成17年1月1日から平成20年12月31日までの各課税期間(以下「本件各課税期間」という。)に係る消費税等の確定申告書を提出しなかった。 イ(ア) 加古川税務署の調査担当職員(以下「本件調査担当職員」という。)は,平成20年10月8日,原告に対し,所得税及び消費税等の調査(以下「本件税務調査」という。)を実施し,同日から平成21年11月9日までの間,本件アパート等に赴くなどして,繰り返し本件税務調査への協力及び帳簿書類等の提示を要請した。しかし,原告は,本件各係争年分に係る帳簿書類等を提示することはしなかった。 (イ) 原告は,平成21年1月23日,本件倉庫において,本件調査担当 - 5 -職員からの質問に応じており(以下,この調査を「本件訪問調査」という。),本件調査担当職員の一人であるP9は,このときのやり取りについて,問答形式により「質問調査応答内容」と題する書面(乙7〔4ないし10枚目〕。以下「本件訪問調査記録」という。)を作成した(なお,原告は,本件訪問調査記録に記載された内容の信用性を争っている。)。 [乙7,弁論の全趣旨]ウ(ア) 処分行政庁は,原告から帳簿書類等の提示がなく,本件各係争年分に係る原告の所得金額等を実額により把握することができなかったため,やむを得ず,原告の平成16年分の事業所得に係る青色申告特別控除前の所得金額の総収入金額に占める割合(以下「原告所得率」という。)を本人比率として算出して,本件税務調査により把握した本件各係争年分における原告の事業所得の総収入金額に原告所得率を乗じて原告の所得金額を推計し,平成22年6月30日付けで,本件各処分を行った。 (イ) なお,処分行政庁は,平成22年1月29日付けで,消費税等について,本 告の事業所得の総収入金額に原告所得率を乗じて原告の所得金額を推計し,平成22年6月30日付けで,本件各処分を行った。 (イ) なお,処分行政庁は,平成22年1月29日付けで,消費税等について,本件税務調査の結果に基づき,本件各課税期間に係る消費税等の決定処分及び無申告加算税賦課決定処分を行った。 エ(ア) 原告は,平成22年8月27日,処分行政庁に対し,本件各処分に対し,異議申立て(以下「本件異議申立て」という。)をしたが,処分行政庁は,同年11月12日付けで,本件異議申立てを棄却する旨の異議決定をした。なお,原告は,同年10月13日及び同月29日,加古川税務署内において,本件調査担当職員による質問調査に応じ(以下,これらを「本件各質問調査」という。),本件各質問調査に係る各質問てん末書(以下,同月13日の質問調査に係る質問てん末書を「本件原告てん末書」という。)に署名押印した。[乙24,25,弁論の全趣旨](イ) 原告は,平成22年12月9日,国税不服審判所長に対し,本件各 - 6 -処分について審査請求をしたが,国税不服審判所長は,平成23年11月25日付けで,当該審査請求を棄却する旨の裁決(以下「本件裁決」という。)をした。なお,本件各処分の課税の経緯については別表1「課税の経緯(所得税)」記載のとおりである。 オ原告は,平成24年3月16日,本件訴訟を提起した。 3 被告が本件訴訟において主張する本件各処分の根拠及び適法性被告が本件訴訟において主張する本件各処分の根拠及び適法性は,別紙3「本件各処分の根拠及び適法性(被告の主張)」記載のとおりである。 4 争点(1) 実特法省令9条の2第1項又は7項の定める届出書を提出しなければ,日米租税条約7条1項による税の軽減又は免除を受けることができないのか否か (被告の主張)」記載のとおりである。 4 争点(1) 実特法省令9条の2第1項又は7項の定める届出書を提出しなければ,日米租税条約7条1項による税の軽減又は免除を受けることができないのか否か。 [争点1](2) 本件アパート等は,日米租税条約5条の規定する恒久的施設に該当するか否か(本件アパート等は,同条4項(a)号により恒久的施設から除外すべきものに該当するか否か。)。 [争点2](3) 本件アパート等が恒久的施設に該当する場合において,日米租税条約7条に基づき課税できる所得の範囲はどこまでか。 [争点3]第3 争点に関する当事者の主張 1 争点1(実特法省令9条の2第1項又は7項の定める届出書を提出しなければ,日米租税条約7条1項による税の軽減又は免除を受けることができないのか否か。)について(1) 被告の主張ア相手国の居住者である個人が,所得税法165条の規定の適用を受ける国内源泉所得に対する所得税につき当該相手国居住者に係る相手国との間の租税条約の特定規定に基づき軽減又は免除を受けようとする場合には,その適用を受けようとする年分の所得税の確定申告書に,実特法省令9条 - 7 -の2第1項1号から9号までに掲げる事項を記載した届出書を添付するか,当該年分の所得税の確定申告書を提出していない場合は,上記事項に準ずる事項を記載した届出書を,その年の翌年3月15日までに,所轄税務署長に提出しなければならない(同条1項及び7項)。 しかしながら,原告は,本件アパート等を管轄する処分行政庁に対し,実特法省令9条の2第1項又は7項の定める届出書(以下「実特法省令に基づく届出書」という。)を一切提出していないから,租税条約の特定規定による軽減又は免除を受けられないこととなる。そして,日米租税条約における特定規 第1項又は7項の定める届出書(以下「実特法省令に基づく届出書」という。)を一切提出していないから,租税条約の特定規定による軽減又は免除を受けられないこととなる。そして,日米租税条約における特定規定とは,日米租税条約の規定のうち特典条項(日米租税条約22条1項,2項及び4項)の適用がある規定をいうところ(本件総務大臣等告示),日米租税条約7条1項は,特典条項(日米租税条約22条1項)の適用がある規定といえるから,特定規定に当たる。 したがって,原告は,実特法省令に基づく届出書を一切提出していない以上,特定規定である日米租税条約7条1項による軽減又は免除を受けられないこととなり,本件販売事業から生じた所得については,本邦の国内法である所得税法によって課税されることとなる。 イ本件アパート等は,後述するとおり(後記2(1)ウ参照),商品を保管・管理するほか,商品に日本語取説書を同梱し,P7を介して顧客に商品を引き渡し,顧客から不良品の返品を受けて代替品を引き渡すなど,本件販売事業における本質的かつ重要な活動を行う場所であるから,所得税法施行令289条2項に規定する恒久的施設の除外規定に該当せず,所得税法164条1項1号及び所得税法施行令289条1項3号に規定する恒久的施設に該当する。 したがって,原告の本件販売事業に係る全ての所得は,国内源泉所得に該当することとなり,非居住者に対する所得税の総合課税の規定(所得税法165条)に基づき,日本国内で課税されることとなる。 - 8 -ウ(ア) この点,原告は,実特法省令により課税に関して義務を課すること自体が,租税法律主義(憲法84条)に違反して無効であるなどと主張している。しかしながら,実特法は,その制定時から,租税条約による特典の適用を受けるに当たっての届出の書式や方法等につ 務を課すること自体が,租税法律主義(憲法84条)に違反して無効であるなどと主張している。しかしながら,実特法は,その制定時から,租税条約による特典の適用を受けるに当たっての届出の書式や方法等については,法律ではなく省令によって定めることを予定していたのであり,実特法12条は,その規定どおり,租税条約の実施を前提として,租税条約による特典の適用を受けるに当たっての手続的な事項の定めを省令に委任することを定めた委任規定である。また,日米租税条約による特典の適用を受けるための実体的要件そのものは日米租税条約によって明確に規定されているのであり,実特法省令9条の2は,実特法12条の委任を受けて,日米租税条約による特典の適用を受けるための実体的要件の存否,内容を確認するための手続的な事項を規定したものにすぎない。よって,実特法省令9条の2の規定に従うことは,租税法律主義に反するものではなく,原告の上記主張には理由がない。 (イ) 原告は,実特法省令に基づく届出書の提出は,税務当局が納税義務者の判断が正しいかどうか(租税条約の特典条項の適用により税が軽減又は免除されるかどうか)の調査を効率的に実施できるようにしたにとどまり,当該納税義務者がその義務を履行するか否かが,租税条約の適用の可否には影響しない旨主張している。 しかしながら,日米租税条約22条の特典条項は,平成16年に発効された日米租税条約において新たに設けられたものであるところ,その趣旨については,日米租税条約が投資所得に対する源泉地国免税の範囲を拡大したことから,第三国居住者が形式的に締約国の居住者となることにより条約特典を濫用することを防止するため,日米租税条約に基づく特典を享受しようとする締約国の居住者に対し,その者が真に特典を受けるべき立場にあることに関する所定の条件を 締約国の居住者となることにより条約特典を濫用することを防止するため,日米租税条約に基づく特典を享受しようとする締約国の居住者に対し,その者が真に特典を受けるべき立場にあることに関する所定の条件を具備するように求めた - 9 -ものである(乙38〔364頁〕)。また,日米租税条約が新たに特典条項を設けたことを踏まえ,実特法12条の委任を受けた実特法省令9条の2において,届出等の手続に関する規定が設けられたものであるところ,同条1項の趣旨については,特典条項のある租税条約の特典の適用を受ける場合に当たり,その特典条項に定められた条約を満たすことを明らかにするための届出書を提出することとしたものである(乙38〔282,283頁〕)。 日米租税条約22条の上記趣旨に鑑みれば,同条は,特典条項の適用がある租税条約の規定に基づく税の軽減又は免除の特典が,条件なく誰でも当然に適用できることとしたものではなく,同条の適用に当たっては,居住者適格の確認が当然に予定されているものということができ,実特法省令9条の2の上記趣旨等からすれば,実特法省令に基づく届出書を提出することによって初めて,適格者基準等を満たしていることを明らかにすることができるのであり,その提出がなければ,特典条項に定める条件を満たす者であるかどうかを判断することはできない。 したがって,原告が特典条項の適用がある租税条約の規定に基づき税の軽減又は免除を受けるためには,実特法省令に基づく届出書を提出する必要があるというべきであり,その提出いかんによって租税条約の適用の可否に影響しないとする原告の上記主張には理由がない。 (ウ) 原告は,日米租税条約上認められた特典を国内法規により排除することは,憲法98条2項に違反して無効である旨主張している。しかしながら,同項の解釈上 ないとする原告の上記主張には理由がない。 (ウ) 原告は,日米租税条約上認められた特典を国内法規により排除することは,憲法98条2項に違反して無効である旨主張している。しかしながら,同項の解釈上,租税条約が国内法規に優先して適用されるとしても,国内法の立法による手当ないし補充が必要なものについては,その部分は国内法に従うこととなるのであり,実特法は,租税条約の規定のうち,国内法による手当ないし補充が必要なものを具体的に規定したものである。日米租税条約22条が設けられた趣旨は,条約濫用の防止 - 10 -にあり,日米租税条約に基づく特典を享受しようとする締約国の居住者に対し,その者が真に特典を受けるべき立場にあることに関する所定の条件を具備するよう求めたものである。そして,我が国では,本来租税条約の定める税の軽減又は免除の特典を享受する資格のない者が,不当にもこれを享受することのないようにするため,国内法として租税条約の適用に関する実特法及びその委任を受けた実特法省令を定めて,税の軽減又は免除を受けるには一定の手続を要するとしたのであり,正に同条の趣旨(条約濫用の防止)を達成するために設けられたものである。 したがって,実特法12条及びその委任に基づく実特法省令9条の2は,日米租税条約22条を補充するものであり,同条による特典の適用を制約するものではないから,原告の上記主張には理由がない。 ⑵ 原告の主張ア(ア) 国際条約である租税条約は,国内法規に優先して適用される(憲法98条2項)。条約の中には,プログラム規定として,国内の立法措置を待って初めて適用されるものもあるが,我が国が締結している租税条約は,条文の規定が不明確な場合又は条文の規定上国内の立法措置を想定していることが明らかな場合を除き,一般に,国内の立法措置を待 措置を待って初めて適用されるものもあるが,我が国が締結している租税条約は,条文の規定が不明確な場合又は条文の規定上国内の立法措置を想定していることが明らかな場合を除き,一般に,国内の立法措置を待たずに直接適用されることとなる。そして,租税条約上の軽減又は免除の規定は,明確かつ完全であり,国内法規による措置を待たずして,かつ,国内法規に優先して適用されることとなるから,国内法規によって,日米租税条約による特典を排除して課税を行うことは許されない。 (イ) この点,被告は,条約濫用の防止という日米租税条約22条の趣旨に照らせば,実特法省令9条の2は日米租税条約22条による特典の適用を制約するものではない旨主張している。しかしながら,同条は,条約の特典を享受しようとする締約国の居住者に対し,日米租税条約の条文に規定された一定の実体的な条件を満足することを求めることによっ - 11 -て,その者が真に特典を受けるべき立場にあることを求める規定であり,それに付け加えて,何らかの手続要件を求めるものではない。また,実特法省令に基づく届出書の提出がなくとも,税務当局は税務調査によって同条の定める条件を満たすか否かを判断することは十分に可能であり,実特法省令に基づく届出書の提出が租税条約の適用の要件ではないと解することによって,同条の趣旨が損なわれることもない。 イ(ア) 実特法省令に基づく届出書の提出を規定しているのは,法律よりも下位の規定である実特法省令であるところ,課税に関する規定を省令によって定めるためには,法律上の根拠がなければならず(憲法84条),課税要件に関する定めを省令に委任する場合においても,個別・具体的な委任に限って許容されるものである(課税要件法定主義)。しかしながら,実特法省令の上位規定である実特法には,租税条約 憲法84条),課税要件に関する定めを省令に委任する場合においても,個別・具体的な委任に限って許容されるものである(課税要件法定主義)。しかしながら,実特法省令の上位規定である実特法には,租税条約の適用を受けるための条件として届出書を提出する義務を省令によって定めることを,具体的,個別的に委任した規定は含まれていない。したがって,実特法省令によって,租税条約による特典を受けるための要件を設定するなど,課税に関する義務を課することは,それ自体が憲法84条(租税法律主義)に違反して無効であると解すべきである。 (イ) この点,実特法省令9条の2第1項及び第7項は,相手国居住者等に対し,実特法省令に基づく届出書を添付し又は提出しなければならないとしているが,実特法省令や,その上位規定である実特法には,実特法省令に基づく届出書を期限内に提出しなかった場合において,租税条約の規定に基づく税の軽減又は免除を受けることができないとは規定しておらず,実特法省令に基づく届出書を提出しなければ,租税条約に基づく税の軽減又は免除を受けることができない旨の被告の主張は,租税法律主義(憲法84条)に加えて,実特法省令の文理解釈にも反する。 なお,被告は,一方において,実特法省令9条の2が手続的な事項を規 - 12 -定したものにすぎず,課税に関する義務を課するものではないと主張しているが,他方において,実特法省令に基づく届出書を提出せずに日米租税条約による特典の適用を受けることはできないと主張しており,これらの主張は明らかに矛盾している。 (ウ) 実特法省令9条の2第1項及び第7項については,条約優先主義(憲法98条2項)や租税法律主義(憲法84条)の要請と整合的に解するならば,納税義務者が租税条約の特典条項の適用により国内源泉所得に対する所得税が 9条の2第1項及び第7項については,条約優先主義(憲法98条2項)や租税法律主義(憲法84条)の要請と整合的に解するならば,納税義務者が租税条約の特典条項の適用により国内源泉所得に対する所得税が軽減又は免除されると判断した場合には,実特法省令に基づく届出書を提出させることによって,税務当局が当該納税義務者の判断が正しいかどうか(租税条約の特典条項の適用により,所得税が軽減又は免除されるのかどうか)の調査を効率的に実施できるようにしたものであり,当該納税義務者が実特法省令に基づく届出書の提出義務を履行するか否かは,租税条約の適用の可否や税の軽減又は免除の結果には影響しないと解すべきである。 2 争点2(本件アパート等は,日米租税条約5条の規定する恒久的施設に該当するか否か。)について(1) 被告の主張ア日米租税条約5条1項の規定する恒久的施設が存在するというためには,① 「事業を行う場所」があること,② 事業を行う場所が「一定」であること,③ 事業が一定の場所を「通じて」なされることの要件を充足する必要がある。原告は,本件出国後も,本件販売事業における商品の保管や発送を行う拠点として,本件アパート等を利用していたから,本件アパート等は,いずれも上記①ないし③を満たし,同項に規定する恒久的施設に該当する。なお,本件出国から本件倉庫が賃借されるまでの間は,本件アパートが恒久的施設に該当し,その後は,本件アパート等が一体として恒久的施設に該当する。 - 13 -イ(ア) 日米租税条約5条4項各号は,同条1項に規定する恒久的施設の一般的定義に対する例外として,その活動の機能の側面から恒久的施設とされない場合を規定しているところ,同項(a)号ないし(d)号は,それぞれ「準備的又は補助的な性格の活動」を例示したものであり,事 一般的定義に対する例外として,その活動の機能の側面から恒久的施設とされない場合を規定しているところ,同項(a)号ないし(d)号は,それぞれ「準備的又は補助的な性格の活動」を例示したものであり,事業を行う一定の場所における活動が上記「準備的又は補助的な性格の活動」であるか否かを判断するに当たっては,事業を行う一定の場所での活動が,本来,企業の全体としての活動の本質的かつ重要な部分を形成するか否かということを規準にすべきである。また,同項(a)号ないし(d)号は,それぞれに規定された活動のみを行っている場合を指し,これ以外の活動については,同項(e)号により,また,同項(a)号ないし(e)号に掲げる活動を組み合わせた活動については,同項(f)号により,いずれも準備的又は補助的な性格を維持しているか否かによって,恒久的施設に該当するか否かを判断することとなる。 (イ)a この点,原告は,日米租税条約5条4項(a)号ないし(d)号に該当するためには,当該活動が準備的又は補助的な性格の活動であることを要しない旨主張している。しかしながら,日米租税条約5条1項,2項及び4項は,OECDモデル租税条約5条1項,2項及び4項と同様の規定振りとなっており,OECD理事会勧告により,加盟国は,二国間条約の規定の解釈適用において,OECDモデル租税条約のコメンタリー(以下「OECDコメンタリー」といい,その年度を特定する場合には「OECDコメンタリー(2003年)」などと表記する。)に従うべきものとされているところ,OECDコメンタリーは,同項全体が準備的又は補助的な性格の活動について規定したものであることを明確に示しており,日米租税条約の逐条解説にも同様の規定がある。さらに,日米租税条約5条4項各号の規定振りなどに照らせば,同項(a)号ないし( 又は補助的な性格の活動について規定したものであることを明確に示しており,日米租税条約の逐条解説にも同様の規定がある。さらに,日米租税条約5条4項各号の規定振りなどに照らせば,同項(a)号ないし(d)号は,準備的又は補助的な性格の活動を例示 - 14 -したものであると解すべきである。 b 原告は,国連モデル租税条約とOECDモデル租税条約を比較して,OECDモデル租税条約に準拠した日米租税条約5条4項(a)号が,「引渡し」のための施設を恒久的施設にしないとの政策的判断をしたなどと主張しているが,前述のとおり(上記a),OECDモデル租税条約5条4項(a)号は,OECDコメンタリーに従って解釈されるのであり,国連モデル租税条約の規定内容と比較することは無意味である。 c 原告は,OECDの検討チームが,2012年(平成24年)10月19日に公表した報告書(甲24。以下「2012年報告書」という。)において,OECDモデル租税条約5条4項(a)号ないし(d)号の適用に関し,当該場所で行われている活動が準備的又は補助的な性格の活動に限られる必要はないとの見解を明らかにしており,日米租税条約5条4項(a)号についても,同様に解釈すべきである旨主張している。しかしながら,OECDは,現時点の条文解釈について検討を行っているにすぎず,その一時点における検討状況のみを取り出して,本件各係争年における適用条文の解釈指針とすることはできず,条文改正や新たな見解によって,OECDモデル租税条約及び日米租税条約の従前の解釈やそれが通用していた当時の適用関係が変更されることにはならない。 ウ本件アパート等における活動は,以下述べるとおり,商品を保管・管理するほか,商品に日本語取説書を同梱して,P7を介して顧客に商品を引き渡し,顧客から不良 用関係が変更されることにはならない。 ウ本件アパート等における活動は,以下述べるとおり,商品を保管・管理するほか,商品に日本語取説書を同梱して,P7を介して顧客に商品を引き渡し,顧客から不良品の返品を受けて顧客に代替品を引き渡すことなどであり,日米租税条約5条4項(a)号の活動のみに限定されるものではない上,これらの一連の活動は,本件販売事業の本質的かつ重要な部分を形成する一連の事業活動であり,同項(e)号及び(f)号の準備的又は補助的な性格の活動を超えたものである。したがって,本件アパート等は,同項各号 - 15 -のいずれにも該当せず,同条の規定する恒久的施設に該当する。 (ア)a 本件販売事業は,インターネット等を使った方法により売買契約の申込みを受けて行う商品の販売,すなわち通信販売である(特定商取引法2条2項参照)ところ,商品の引渡しのための発送等の活動は,通信販売の本質的かつ重要な部分を形成している。また,通信販売においては,対面取引と比べて商品の返品の可能性が高く,返品に関する手続等も重要な部分を形成している。 b 原告は,インターネット又はファックスを通して顧客から注文を受けると,在庫確認の上,本件アパート等に設置されたパソコンに注文内容のデータを送付し,本件従業員に,本件アパート等において,同データを商品管理システム(マクロ機能を読み込んだ○ファイル。以下「本件受注ソフト」という。)に取り込ませて自動的に納品書を作成させ,商品を日本語取説書と共に梱包させ,P7を介して宅配の方法で顧客に引き渡していたのであり,本件アパート等においては,通信販売の本質的かつ重要な部分を形成する発送等の活動が行われていた。さらに,原告は,顧客から返品を受ける際には,原告ホームページ等に記載された本件アパートの住所に宛てて 本件アパート等においては,通信販売の本質的かつ重要な部分を形成する発送等の活動が行われていた。さらに,原告は,顧客から返品を受ける際には,原告ホームページ等に記載された本件アパートの住所に宛てて商品を送らせ,転送届により本件アパートから転送された商品を本件倉庫において受け取っていたのであり,本件アパート等は,通信販売の重要な部分を形成する返品等に関する手続において,顧客に返品先として認識される場所(本件アパート)及び顧客からの返品を受ける場所(本件倉庫)として,それぞれ利用されていた。 c この点,原告は,本件倉庫を賃借した平成18年12月以降,本件アパートが無人であり,本件アパートと本件倉庫における一連の活動を一体とみることはできない旨主張している。しかしながら,本件アパートは,同月以降も,原告ホームページ等において,本件企業の住 - 16 -所として表示されるなどしていたのであり,本件アパート宛てに返品された商品が本件倉庫に転送されていた。また,P3は,本邦に事業所がなければ出店することができず,後述する事情(後記(イ)ないし(エ))を併せ考えれば,本件アパート等は,原告ホームページ等上で本邦内の事業所として周知され,現実に本邦内の事業所としての機能・役割を果たし,有機的に一体的に機能していたものというべきである。 (イ) 原告は,原告ホームページにおいて,商品を国内最安値の低価格で販売することを本件販売事業の特徴として宣伝しているところ,このように販売価格を抑えることができるのは,原告があらかじめある程度の数量の商品をまとめて本邦に輸入することで運送料等を節減しているためである。また,原告は,原告ホームページ等において,商品の注文から引渡しまでが短期間であることを商品販売の条件として表示しているところ,このように めて本邦に輸入することで運送料等を節減しているためである。また,原告は,原告ホームページ等において,商品の注文から引渡しまでが短期間であることを商品販売の条件として表示しているところ,このように短期間で商品の引渡しができるのは,原告があらかじめ輸入した在庫商品を本件アパート等に確保しているためである。以上によれば,本件アパート等に商品を確保しておき,本件アパート等から商品を発送するという活動は,低価格の代金設定や短期間の引渡条件の実現にとって不可欠であって,本件販売事業の本質的かつ重要な部分を形成しているということができる。 (ウ)a 本件従業員は,本件アパート等において,商品の出入りを確認し,在庫数等の情報を本件受注ソフトに入力して,米国にいる原告に同情報を提供していたと認められる(乙7,24)。原告は,上記情報により,顧客から注文を受けた商品を即座に発送できるか(売買契約を成立させるか)を判断する指標を得ていたのであり,このような在庫管理は,単に在庫をその場に保管することとは一線を画し,準備的又は補助的な性格を超えるものである。 b 原告は,売上げの増加を図るために日本語取説書を無料で添付する - 17 -こととし,その旨を原告ホームページ等で広く宣伝するなどしているところ,本件従業員が本件アパート等において日本語取説書を商品と組み合わせて引き渡すという行為は商品価値を高める重要な事業活動であって,上記活動は,準備的又は補助的な性格を超えるものである。 c 本件従業員は,本件アパート等において,顧客からの返品を受け取り,代替商品を発送していたところ,これらは,本件販売事業における事後的な補完措置(アフター・サービス)としての機能を有する活動であって,準備的又は補助的な性格を超えるものである。 d 原告は,原告ホーム 商品を発送していたところ,これらは,本件販売事業における事後的な補完措置(アフター・サービス)としての機能を有する活動であって,準備的又は補助的な性格を超えるものである。 d 原告は,原告ホームページ等に掲載する商品等の写真を,米国の自宅のみならず,本件倉庫においても本件従業員に撮影させていたところ(乙7),顧客に提供する商品情報として商品等の写真を撮影するという活動は,準備的又は補助的な性格を超えるものである。 (エ) 本件受注ソフトを作成したP10に対する調査(以下「本件P10調査」といい,本件P10調査に係る質問てん末書〔乙28〕を「本件P10てん末書」という。)によれば,本件受注ソフトは,原告が本件倉庫を賃借する前はもとより,本件倉庫を賃借した平成18年12月以降も,本件アパートのデスクトップパソコンに入れられていたことが認められ,本件受注ソフトが本件販売事業における情報を集中して処理していることに鑑みれば,上記パソコンはホストコンピュータであったということができる。さらに,本件販売事業においては,顧客に対して確認メールを送信した時点で契約が成立するところ,上記確認メールの送信に先立ち在庫確認をするためには上記システムが必要不可欠であって,本件アパートに設置された上記パソコン(ホストコンピュータ)は,販売契約の締結において,不可欠かつ中心となる役割・機能を担っていたものと認められる。 (2) 原告の主張 - 18 -ア被告は,ある施設が日米租税条約5条4項(a)号ないし(d)号に該当するためには,当該施設における活動が「準備的又は補助的な性格の活動」であることを要する旨主張している。しかしながら,以下述べるとおり,同項各号が適用されるためには,ある施設における活動が同項各号に規定された活動であれば足り,それ が「準備的又は補助的な性格の活動」であることを要する旨主張している。しかしながら,以下述べるとおり,同項各号が適用されるためには,ある施設における活動が同項各号に規定された活動であれば足り,それに加えて,当該活動が「準備的又は補助的な性格の活動」であることを要しない。 (ア) 被告の主張は,日米租税条約5条4項(a)号ないし(d)号に記載されていない要件を解釈で読み込むものであり,文理解釈に反する。また,ある施設が「準備的又は補助的な性格の活動」に該当するならば,当該施設は同項(e)号によって恒久的施設から除外されるのであるから,被告の主張によれば,同項(a)号ないし(d)号には全く存在意義がないこととなってしまい,極めて不合理である。 (イ) 国際的に広く使用されている租税条約のモデルには,OECDモデル租税条約のほか,国連モデル租税条約が存在しているところ,国連モデル租税条約が物品又は商品の「引渡し」を行う施設(倉庫)を恒久的施設から除外していないのに対し,OECDモデル租税条約は,上記施設(倉庫)を恒久的施設から除外している。日米租税条約5条4項は,OECDモデル租税条約5条4項と同文であるが,日米租税条約5条4項(a)号及び(b)号に物品又は商品の「引渡し」が含まれているのは,「引渡し」が準備的又は補助的な性格の活動であるという理論的な根拠によるものではなく,「引渡し」を行う施設(倉庫)があることだけを理由としては,源泉地国に課税権を帰属させないという政策的判断をしたことによるものと解すべきである。また,被告の主張によれば,国連モデル租税条約5条4項(a)号とOECDモデル租税条約5条4項(a)号は,全く同じ結論を導くこととなってしまい,国連モデル租税条約が発展途上国の課税権を広く認めるものとされ,租税条約の締約国が国 モデル租税条約5条4項(a)号とOECDモデル租税条約5条4項(a)号は,全く同じ結論を導くこととなってしまい,国連モデル租税条約が発展途上国の課税権を広く認めるものとされ,租税条約の締約国が国連モデル - 19 -租税条約とOECDモデル租税条約とを使い分けている事実を説明することができない。 (ウ) 被告は,OECDコメンタリーの記載内容等を根拠として,OECDモデル租税条約5条4項(a)号ないし(d)号が「準備的又は補助的な性格の活動」の例示である旨主張している。しかしながら,OECDコメンタリーは,準備的又は補助的な性格を有する活動のみを行う場所は恒久的施設に当たらないということを述べているにすぎず,恒久的施設から除外される場所が,準備的又は補助的な性格を有する活動のみを行う場所に限られるとは述べていないのであって,上記主張は,OECDコメンタリーを誤読するものである。 (エ) OECDの検討チームは,OECDモデル租税条約5条について,条文やコメンタリーの改訂作業を進め,OECDの見解を記載した報告書の原案を公表するなどしており,2012年報告書が現時点で最新のものである。2012年報告書は,同条4項各号に規定されている活動は準備的又は補助的な性格の活動でなければならないのか否かという問題点を掲げた上で,同項(a)号ないし(d)号の適用に関し,当該場所で行われている活動が「準備的又は補助的な性格の活動」に限られる必要はないという統一見解を明らかにしており,日米租税条約5条4項(a)号ないし(d)号の解釈においても,上記見解を採用するべきである。なお,2012年報告書は,最終版ではないが,その趣旨は,現在国際的に通用している理解をコメンタリーに明示するものであって,原告の主張を裏付けるものである。 イ(ア) 見解を採用するべきである。なお,2012年報告書は,最終版ではないが,その趣旨は,現在国際的に通用している理解をコメンタリーに明示するものであって,原告の主張を裏付けるものである。 イ(ア) 原告は,原告が本邦を出国してから本件倉庫を賃借するまでの間,本件アパートを商品の倉庫として使用し,本件倉庫を賃借した後は,本件倉庫を商品の倉庫として使用していた。したがって,本件アパート等における活動は,日米租税条約5条4項(a)号の定める「企業に属する物 - 20 -品又は商品の保管,展示又は引渡しのためにのみ施設を使用すること」に当たり,本件アパート等は「恒久的施設」に該当しない。 (イ) 本件アパートは,本件倉庫を賃借した平成18年12月以降の期間において,基本的に無人であり,原告が時折帰国した際に宿泊するために使用していたにすぎず,後述するとおり(後記(ウ)b),本件アパートに本件受注ソフトの入ったデスクトップパソコンが置かれていたという事実もない。したがって,本件アパートは,上記期間において,本件販売事業を行う「一定の場所」(日米租税条約5条1項)として使用されておらず,「恒久的施設」に該当しない。 この点,被告は,本件アパート等が一体として一連の事業活動を行う場所であったなどと主張している。しかしながら,ある場所が恒久的施設に該当するか否かは,当該場所において行われる活動に照らして判断するべきであり,当該場所で行われたのではない活動を理由として,当該場所が恒久的施設に該当すると判断することはできないのであって,上記主張は,日米租税条約5条4項の趣旨を没却するものである。なお,被告は,原告ホームページ等に本件アパートの住所等が記載されていることを指摘しているが,単に原告ホームページ等に住所等が記載されたこと自体は,本件ア 税条約5条4項の趣旨を没却するものである。なお,被告は,原告ホームページ等に本件アパートの住所等が記載されていることを指摘しているが,単に原告ホームページ等に住所等が記載されたこと自体は,本件アパート等における活動ではなく,日米租税条約5条4項(a)号の適用に際して考慮すべき要素には当たらない。 (ウ)a 被告は,本件訪問調査記録に基づき,本件販売事業における本件アパート等の使用態様等について主張している。しかしながら,本件訪問調査記録は,本件調査担当職員と原告との間の会話内容を記録したものではなく,本件訪問調査の際に見聞した内容と想像に基づき杜撰に作成された虚偽の証拠であり,その内容が不正確であることは,本件原告てん末書の内容と食い違っていることからも明らかである。 例えば,本件訪問調査記録には,原告が米国から本件従業員に対して - 21 -メールで発送指示を行い,本件従業員がメールデータを発送に関する伝票に出力させる(乙7・問13),本件従業員が原告からのメールを確認し,本件倉庫のパソコンを操作して原告から送信されたデータを本件受注ソフトに取り込み,納品書等を出力する(乙7・問14)などと記載されているが,原告が本件従業員にメールで発送指示をしたり,本件従業員が本件アパート等のパソコンに入力したりすることはなく,これらの記載内容は事実と異なる。 b 被告は,本件P10てん末書を根拠として,原告が米国に移住した後も,本件受注ソフトが入っているデスクトップパソコンが,本件アパートにおいて,ホストコンピュータとしての役割・機能を担っていた旨主張している。しかしながら,本件受注ソフトを入れたデスクトップパソコンは,本件出国の際にアメリカに移送され,米国にある原告の事務所において,本件販売事業に使用されていたのであり,被告の上 いた旨主張している。しかしながら,本件受注ソフトを入れたデスクトップパソコンは,本件出国の際にアメリカに移送され,米国にある原告の事務所において,本件販売事業に使用されていたのであり,被告の上記主張は事実に反する。本件P10てん末書は,P10に対して書類の作成目的を知らせず(P10は自身に対する税務調査と思い込んでいた。),読み聞かせなどもせずに杜撰に作成されたものであって信用できない。 なお,P10は,本件P10調査の際,本件P10てん末書の写しを交付されず,内容を精査して訂正することもできなかったが,陳述書(甲6。以下「本件P10陳述書」という。)において,本件P10てん末書における主な誤りを指摘して説明している。 ウ(ア) 原告は,本件出国をした後,米国において,① 商品及び商品仕入れ先の開拓,② 原告ホームページ等の作成,③ 日本語取説書の作成,④ 商品の仕入れ(発注)及び決済,⑤ 顧客からの注文メールの受信及び同メールに対する返信による契約締結,⑥ 上記メールの加工による商品発送資料の作成,⑦ 顧客への出荷完了メールの発信及びP7への発送データ - 22 -の送信,⑧ 顧客からの返品申入れに対する対応,⑨ 顧客からの質問メール(その多くが自動車や自動車部品の専門的知識を要するものである。)に対する対応,⑩ 顧客業者からの見積依頼に対する回答,⑪ 市場調査,⑫ 上記⑪に基づく販売価格の設定といった業務を行っており,これらの業務は,いずれも本件販売事業の運営上極めて重要であり,代替性のないものであった。 (イ) 本件アパート等で働いていたのは,特段の研修や訓練を受けていないパートタイマー(本件従業員)である。本件従業員が本件アパート等で行っていた活動は,① 仕入れ商品の受入れ(米国から国際宅急便等で配送された商 ート等で働いていたのは,特段の研修や訓練を受けていないパートタイマー(本件従業員)である。本件従業員が本件アパート等で行っていた活動は,① 仕入れ商品の受入れ(米国から国際宅急便等で配送された商品を開梱して原告が作成した商品リストと照合し,棚に並べるなどの作業),② 商品の発送(原告が用意した商品発送資料に従い,棚から商品をとって梱包し,P7が荷物を受け取りに来た際に引き渡す作業),③ 返品された商品を受け入れ,米国へ発送するといった作業であり,その内容は,専門知識や経験を要しない単純なものに限定されていた。 (ウ) 以上のとおり,本件販売事業における中核的な業務は,原告が米国で行っており,本件アパート等において本件従業員が行っていたのは,商品の受取り(返品を含む。),保管及び発送という機械的な単純作業だけである。したがって,仮に,日米租税条約5条4項(a)号を適用するためには,本件アパート等における活動が「準備的又は補助的な性格の活動」であることを要するとの解釈(被告の主張)を採用したとしても,本件アパート等における活動は重要性に欠けるのであって,日米租税条約5条の規定する恒久的施設には該当しない。 エ(ア) 被告は,本件従業員が商品に日本語取説書を同梱する活動が準備的又は補助的な性格を超えるものである旨主張している。しかしながら,日本語取説書は,原告が米国で作成し,日本の印刷業者に外注して本件 - 23 -アパート等に納入させたものであり,日本語取説書も別個独立の商品である。本件従業員は,商品(自動車用品)を発送用の段ボールに梱包する際,原告の発送指示書に従い,日本語取説書も当該段ボールに入れているのであって,日本語取説書を同梱して発送すること自体が日米租税条約5条4項(a)号に該当する。そして,複数の商品(自動車用 梱包する際,原告の発送指示書に従い,日本語取説書も当該段ボールに入れているのであって,日本語取説書を同梱して発送すること自体が日米租税条約5条4項(a)号に該当する。そして,複数の商品(自動車用品及び日本語取説書)を同梱して同時に発送することは,同号に該当する行為を組み合わせたものにすぎず,同号の適用によって恒久的施設から除外され,同項⒡号は問題にならないと解すべきである。 (イ) 被告は,顧客から返品を受け入れ,代替品を発送することが,準備的又は補助的な性格を超えるものである旨主張している。しかしながら,顧客から返品される商品は,既に顧客の所有権を離れ,原告の所有する「企業に属する物品」となっており,本件従業員が当該商品を受け取って保管し,米国に運送するため原告の手配する宅配業者に引き渡すことは,いずれも日米租税条約5条4項(a)号の「保管」又は「引渡し」に該当するのであり,同号の範囲を超える活動には当たらない。なお,原告は,本件アパート等において,OECDコメンタリーが「アフターセール」と呼ぶような活動(保守や修理作業と補修部品の提供を合わせて行うこと)は全く行っていない。 (ウ) 被告は,原告が原告ホームページ等において本件アパートの住所等を記載したことにより,本件アパート等をアフターサービス(顧客からの返品の受取り及び代替商品の発送)を行う場所として利用し,本件アパート等が一体として本邦内の事業所としての役割・機能を果たしていたなどと主張する。 しかしながら,前述のとおり(上記(イ)),本件従業員が本件アパート等で行っていた返品の受取りや代替品の発送は,アフターサービスではなく,単なる「保管」及び「引渡し」にすぎず,本件アパート等をア - 24 -フターサービスを行う場所として利用していたという事実はない。また 返品の受取りや代替品の発送は,アフターサービスではなく,単なる「保管」及び「引渡し」にすぎず,本件アパート等をア - 24 -フターサービスを行う場所として利用していたという事実はない。また,原告は,原告ホームページやメールにおいて,本件販売事業に関する連絡先として本件アパートの住所等を記載していたが,これらの記載は,米国にある原告の事務所において行われたものであり,本件アパート等における活動には当たらない。OECDモデル租税条約5条4項は,ある場所で事業活動が行われていることを前提とし,事業活動が行われていない場所が何らかの抽象的な「機能」のゆえに恒久的施設になるわけではない(なお,OECDコメンタリーには,ウェブサイト自体が恒久的施設に該当しない旨の結論が明記されている。)。さらに,本件アパートは,前述のとおり(前記イ(イ)),本件倉庫を賃借して以降,無人であり,本件アパート宛ての郵便物は原告が帰国するまで放置され(ただし,本件アパート宛てに配送される荷物は,原告が宅配業者に対し転送の手配を行った結果,本件倉庫に転送されていた。),本件販売事業に関する顧客からの連絡は,全て電子メール及びファックスによって行われ,いずれも原告が米国の事務所において処理していたのであるから,本件アパートの住所等が原告ホームページ等に記載されていたことは,顧客が実際に原告に連絡する方法とは全く関係がない。なお,本件アパートの住所等が原告ホームページ等に記載されていることに何らかの宣伝広告的な機能があったとしても,それは本件アパートの機能ではなく,原告ホームページ等の記載の機能である。 3 争点3(本件アパート等が恒久的施設に該当する場合において,日米租税条約7条に基づき課税できる所得の範囲はどこまでか。)について(1) 被告の主張ア 告ホームページ等の記載の機能である。 3 争点3(本件アパート等が恒久的施設に該当する場合において,日米租税条約7条に基づき課税できる所得の範囲はどこまでか。)について(1) 被告の主張ア(ア) 非居住者は,国内源泉所得を有する場合において,所得税を納める義務があり(所得税法5条2項1号),課税の前提として,国内源泉所得の範囲を決定する必要があるところ,事業所得に関する源泉所得地に - 25 -ついては,日米租税条約に規定がないため,同法の規定により決定することとなる。そして,同法及び所得税法施行令の各規定によれば,本件においては,原告の商品(たな卸資産)の購入者(譲受人)に対する引渡しの時の直前において,その引渡しに係るたな卸資産が国内(本件アパート等)にあったといえるから,所得税法施行令279条4項により,国内において譲渡があったものと認められ,同条1項1号により,その国内における譲渡により生ずる全ての所得が所得税法161条1号の国内源泉所得に該当することとなる(イ) 国内源泉所得のうちいかなる範囲が課税対象となるかについて,所得税法164条1項1号は,非居住者が国内に支店等の恒久的施設を有する場合には,全ての国内源泉所得を対象として総合課税を行うことを規定し,当該所得が当該恒久的施設に帰属するか否かを問わず課税を行うとの考え方(総合主義)を採用しているが,日米租税条約7条1項第2文は,恒久的施設を通じて事業を行う相手国の企業につき,その利得のうち恒久的施設に帰属する部分に対してのみ課税できるという考え方(帰属主義)を採用しており,当該恒久的施設に帰属しない国内源泉所得については同第2文により源泉地国での課税が直接禁止され,当該恒久的施設に帰属する部分のみが課税対象となる。また,同条2項は,「3の規定に従うこ 採用しており,当該恒久的施設に帰属しない国内源泉所得については同第2文により源泉地国での課税が直接禁止され,当該恒久的施設に帰属する部分のみが課税対象となる。また,同条2項は,「3の規定に従うことを条件として,一方の締約国の企業が他方の締約国内にある恒久的施設を通じて当該他方の締約国内において事業を行う場合には,当該恒久的施設が,同一又は類似の条件で同一又は類似の活動を行う別個のかつ分離した企業であって,当該恒久的施設を有する企業と全く独立の立場で取引を行うものであるとしたならば当該恒久的施設が取得したと見られる利得が,各締約国において当該恒久的施設に帰せられるものとする」と規定している(以下,この所得金額の算定基準を「独立企業原則」という。)。 - 26 -イ(ア) 原告による販売活動の全ては,日本国内の恒久的施設である本件アパート等を通じて行われており,国内源泉所得は全て本件アパート等に帰属することとなる(日米租税条約7条1項第2文)。そこで,本件アパート等及び米国における各活動について,独立企業原則に基づき,国内源泉所得のうちいかなる範囲が本件アパート等に配分されるか(課税対象となるか)を検討することとなるが,本件アパート等及び米国における各活動が所得発生に寄与した役割や機能等に照らし,本件アパート等が取得したとみられる利得が本件アパート等に配分される所得(課税金額)になるものと解される。 (イ) 原告は,本件税務調査において,本件調査担当職員から再三にわたり調査への協力及び帳簿書類等の提示を求められたにもかかわらず,帳簿書類等を提示せず,本件訪問調査における質問に応じたのみであった(原告は,本件異議申立て後の調査においても,当初は帳簿書類を提出する用意がある旨申述したが,その後の提示要請には応じず,本件訴訟に 簿書類等を提示せず,本件訪問調査における質問に応じたのみであった(原告は,本件異議申立て後の調査においても,当初は帳簿書類を提出する用意がある旨申述したが,その後の提示要請には応じず,本件訴訟における求釈明にも応じていない。)。このため,本件調査担当職員は,本件各処分までに,原告が米国において取得したとみられる利得が存するとの資料を入手することはできなかった(なお,原告は,米国において,本件販売事業につき何ら税務申告を行っていない〔乙30〕。)。 (ウ) 被告が本件税務調査によって把握し得た事情に基づき,本件アパート等と米国における各活動の役割や機能等をみるに,原告は,前述のとおり(前記2(1)ウ),本件アパート等において,本件従業員をして,本件販売事業の本質的かつ重要な部分を形成する一連の事業活動を行っていた。これに対し,米国での活動については,原告が顧客との間で販売契約の締結に関するメールのやり取りを行い,商品の仕入れをしていたことがうかがわれるのみである。さらに,前述のとおり(上記(イ)),本件調査担当職員が再三求めたにもかかわらず,原告は,帳簿書類等を - 27 -提示せず,本件アパート等及び米国における具体的な活動内容を自ら明らかにしなかった。 (エ) 以上によれば,本件販売事業に係る所得の全てが日米租税条約7条1項の規定により本件アパート等に帰属すると認められることはもとより,本件アパート等及び米国における各活動が所得発生に寄与した役割や機能等に鑑み,米国に配分される所得はなく,国内源泉所得の全てが本件アパート等に配分されるものというべきである。 ウ日本国内にある恒久的施設に帰属する事業所得の存在及び金額については,原則として課税庁側が立証責任を負う。しかしながら,恒久的施設の関与なく,本国において本店直取 されるものというべきである。 ウ日本国内にある恒久的施設に帰属する事業所得の存在及び金額については,原則として課税庁側が立証責任を負う。しかしながら,恒久的施設の関与なく,本国において本店直取引をするなどして得た国内源泉所得の存在は,必要経費や損金と同様,納税者にとって有利な事柄であり,納税者がこれを認識し,証拠資料を整えておくことは困難ではなく,その主張・立証は,通常の場合,納税者の方が課税庁側に比べてはるかに容易である。 したがって,これを納税者が積極的に主張・立証しないということは,事情によっては,恒久的施設の関与なく得た国内源泉所得の不存在について事実上の推定が働くものというべきである。 本件においても,日米租税条約7条1項は本邦における恒久的施設の関与なくして得た国内源泉所得について本邦の課税を減免する規定である上,本件税務調査における協力度合い及び証拠との距離等の諸事情を考慮すると,本件アパート等に帰属しない所得(原告が米国内にあるとする事務所に帰属する所得)については,原告が,その存在及び金額を合理的に推認させるに足りる程度に主張・立証すべきであり,これをなし得ない場合には,そのような所得が存在しないものと推定されるというべきである。そして,本件アパート等及び米国における各活動の役割や機能等(前記イ(ウ))に加え,原告が本件アパート等に帰属しない事業所得の存在等を具体的に主張立証しないことに鑑みれば,そのような事業所得は存在しないものと - 28 -推定されるべきである。 エ(ア) この点,原告は,日米租税条約7条2項によれば,恒久的施設に帰属すべき所得とは,本件アパート等において行われたものと同内容の業務を請け負った独立の倉庫業者の利益に相当する金額であるなどと主張している。しかしながら,同項は,恒久的 2項によれば,恒久的施設に帰属すべき所得とは,本件アパート等において行われたものと同内容の業務を請け負った独立の倉庫業者の利益に相当する金額であるなどと主張している。しかしながら,同項は,恒久的施設に帰属すべき所得配分に関する具体的な算定方法を明らかにしているわけではなく,本件アパート等及び米国における各活動の役割や機能等(前記イ(ウ))からすれば,米国に配分される所得はなく,その全てが本件アパート等に配分されるものというべきであり,上記主張には理由がない。 (イ) 原告は,日米租税条約7条2項について,OECDコメンタリー(2008年)に従った解釈をすべきであるなどと主張している。OECDコメンタリー(2008年)は,恒久的施設に配分される利得について,遂行された機能,使用された資産及び引き受けられた危険を基に,関係企業間における独立企業原則の適用について展開されてきた原則の類推適用によって算定すること(いわゆる機能的分離企業アプローチ)を説明しているが,OECDコメンタリーがこのような説明をしたのは,この時が初めてであり,その後,2010年(平成22年)のOECDモデル租税条約の改訂において,いわゆるOECD承認アプローチ(AuthorizedOECDApproach。以下「AOA」という。)として,機能的分離企業アプローチが採用された。このような経緯に照らせば,原告の上記主張が,2010年以前のOECDモデル租税条約7条2項や日米租税条約7条2項の解釈において,機能的分離企業アプローチ又はAOAに従うべきであるという趣旨であるならば,これを採用することはできない。 (2) 原告の主張ア(ア) 原告が日本国内に恒久的施設を有し,その恒久的施設を通じて事 - 29 -業を行った場合には,我が国は,もし当該恒久的 ならば,これを採用することはできない。 (2) 原告の主張ア(ア) 原告が日本国内に恒久的施設を有し,その恒久的施設を通じて事 - 29 -業を行った場合には,我が国は,もし当該恒久的施設が別個の分離独立した企業であって,独立の企業として当該恒久的施設と同一又は類似の活動を行った場合において当該恒久的施設が取得したとみられる利得に対してのみ課税することができる(日米租税条約7条2項)。 (イ) 本件アパート等が恒久的施設に該当すると仮定しても,日米租税条約7条2項によれば,我が国は,本件販売事業によって得られた所得全体に課税できるわけではなく,日本にある独立した倉庫業者が,非居住者である原告から,本件アパート等で行われたような活動(商品の受入れ,保管,発送等の作業)を請け負った場合に得ることのできる所得(当該活動について支払われる手数料から人件費・固定費・その他諸費用を差し引いた僅かな額)についてのみ課税することができると解すべきである。この点,国連モデル租税条約のコメンタリー(2001年版)においては,倉庫が恒久的施設に該当する場合であっても,当該倉庫に帰属するとして,源泉地国で課税することのできる所得は極めて少額であることが指摘されている。 なお,本件アパート等で行われていた活動を独立した企業が行ったとした場合に,その独立企業が得るべき利得の額を検討するに当たっては,本件販売事業のうち,本件アパート等がどのような機能を有し,どのような活動をしていたのかなどを考える必要があるものの,前述のとおり(前記2(2)ウ),米国における原告の活動が本件販売事業にとって必要不可欠であるのに対し,本件アパート等における本件従業員の活動が単純作業であることに鑑みても,本件アパート等に帰属するものとして課税できる所得は極めて限定的 ける原告の活動が本件販売事業にとって必要不可欠であるのに対し,本件アパート等における本件従業員の活動が単純作業であることに鑑みても,本件アパート等に帰属するものとして課税できる所得は極めて限定的であると解すべきである。 (ウ)a 日米租税条約7条2項は,OECDモデル租税条約7条2項と同文であるところ,OECDコメンタリー(2008年)は,同項について,「本項は,恒久的施設に帰属する利得は,当該恒久的施 - 30 -設が当該企業の他の部門と取引するのではなく,通常の市場における条件及び価格で完全に別個の企業と取引する場合に当該恒久的施設が得たであろう利得である,という見解を具体化している。」と述べており(甲27),これに従って解釈すべきである(なお,2008年以前のOECDコメンタリーにも同旨の記述がされている。)。 b この点,被告は,原告の上記主張について,OECDモデル租税条約(2010年)が採用した機能的分離企業アプローチが日米租税条約にも適用されるという趣旨であるならば,これを採用することはできないと指摘している。 OECDが2008年7月17日付けで発表した「REPORTONTHEATTRIBUTIONOFPROFITSTOPERMANENTESTABLISHMENTS」(以下「PE報告書」という。)には,OECDモデル租税条約7条1項の解釈として,機能的分離企業アプローチと関連事業活動アプローチの2つが加盟国の間で用いられていたこと,関連事業活動アプローチを採用した場合には,恒久的施設に帰属する利得は,企業全体の利益を超えることができないという上限が設けられることがあること,機能的分離企業アプローチが妥当であると考えられること等が記載されている(甲37)。そして,OECDは,OECDコメンタ ,企業全体の利益を超えることができないという上限が設けられることがあること,機能的分離企業アプローチが妥当であると考えられること等が記載されている(甲37)。そして,OECDは,OECDコメンタリー(2008年)において,機能的分離企業アプローチをいわゆるAOAとして採用し,さらに,2010年のOECDモデル租税条約の改訂により,同アプローチを採用することを明確にした。 しかしながら,機能的分離企業アプローチと関連事業活動アプローチの対立は,OECDモデル租税条約7条1項の「企業の利得」についての解釈の対立であり,同条2項についての解釈の対立ではない。 原告は,これらのアプローチのいずれを採用するかに関係なく,同条2項(独立企業原則)に従って,所得を配分すべきであり,本件アパ - 31 -ート等が商品の受入れ,保管,発送等のみを行う独立した業者であるとしたならば取得したとみられる利得のみが本件アパート等に帰属する旨主張しているのであって,被告の指摘は,原告の主張を曲解するものである。 イ(ア) 被告は,本件アパート等における活動の重要度を考慮して,本件販売事業による所得の全てが本件アパート等に帰属するなどと主張している。しかしながら,日米租税条約7条2項は,本店における活動と恒久的施設における活動の重要性を比較して,その重要度に応じて所得を配分するなどという規定ではなく,被告の上記主張は,同項の規定を全く無視するものである。 なお,独立企業原則を適用した結果として,恒久的施設に全ての利得が帰属するのは,当該恒久的施設がそれだけで独立した企業として完結した機能を有しており,非居住者や他の事業所の活動が全く存在しなくとも,当該恒久的施設だけでも同じ利得を得ることができ,かつ,当該事業から損失が生じた場合のリスクを負担する能 独立した企業として完結した機能を有しており,非居住者や他の事業所の活動が全く存在しなくとも,当該恒久的施設だけでも同じ利得を得ることができ,かつ,当該事業から損失が生じた場合のリスクを負担する能力をも有しているような場合(例えば,海外の小売業者が日本国内に支店を有しており,本店の支援を受けないで独立して事業を行っているような場合)に限られるものと解される。しかしながら,本件は,そのような場合ではなく,前述のとおり(前記ア(イ)),本件アパート等が有している機能のみでは,商品の受入れ,保管,発送等の手数料程度の利得しか得ることができないというべきである。 (イ)a 被告は,本件販売事業から得られた所得を推計しているところ,これはあくまで,非居住者が国内に恒久的施設を有している場合において,所得税法164条1項1号に基づいて課税できる所得(原告の全所得)を推計するものにすぎない。本件において日米租税条約7条2項に基づき課税できる所得の範囲は,租税条約が適用され - 32 -ない場合において,所得税法164条1項1号に基づいて課税することができる所得よりも狭い範囲に限定されるはずであり,前述のとおり(前記2(2)ウ(イ)),本件アパート等の機能が極めて限定的であることに鑑みても,その差異は著しいというべきである。したがって,被告の主張する課税所得については,日米租税条約7条2項に沿って計算されたものであるということはできない。 b この点,被告は,本件アパート等に帰属しない所得(米国に帰属する所得)については,原告がその存在及び金額を合理的に推認させる程度に主張・立証すべきであり,これをなし得ない場合には,本件アパート等に帰属しない所得は存在しないものと推定されるなどと主張している。しかしながら,被告が主張立証責任を負ってい 合理的に推認させる程度に主張・立証すべきであり,これをなし得ない場合には,本件アパート等に帰属しない所得は存在しないものと推定されるなどと主張している。しかしながら,被告が主張立証責任を負っているのは,原告の恒久的施設(本件アパート等)に帰属する所得の存在及び金額であって本件アパート等に帰属しない所得(米国の事務所に帰属する所得)の有無や金額は,本邦における課税所得に影響を及ぼすものではなく,その主張立証は問題とならない。被告は,端的に本件アパート等に帰属する所得(本件アパート等における活動と同内容の業務を請け負った倉庫業者の利益に相当する額)の存在と金額を主張立証すべきであるにもかかわらず,これをしていないのであり,課税所得についての主張立証を尽くしていないというべきである。 第4 当裁判所の判断 1 認定事実前提事実並びに後掲の各証拠及び弁論の全趣旨によれば,本件販売事業の概要,本件アパート等の使用状況,本件税務調査の経緯等について,以下の(1)ないし(4)の事実を認めることができ,これらの認定を覆すに足りる事実ないし証拠はない。 (1) 本件販売事業の概要等 - 33 -ア(ア) 原告は,平成14年以降,インターネットを通じ,本件販売事業を営んでおり,本件販売事業の内容は,概要,① 米国で自動車用品(カーセキュリティ用品及びカーオーディオ用品)を仕入れて本邦に輸入し,日本国内において保管する,② 原告ホームページ等を運営し,インターネット(原告ホームページ,P3ウェブページ,P5等)を通じて,上記自動車用品の注文を受ける(なお,商品代金の決済は,日本国内にある銀行への振込み又は代金引換の方法により行う。),③ 顧客の注文を受けて,日本国内の保管先から顧客に対し,P7を介して,注文商品を配送するというもので 受ける(なお,商品代金の決済は,日本国内にある銀行への振込み又は代金引換の方法により行う。),③ 顧客の注文を受けて,日本国内の保管先から顧客に対し,P7を介して,注文商品を配送するというものであった。[前提事実⑵ア・イ,甲2,3,乙1,2,弁論の全趣旨](イ) 原告は,平成16年4月15日付けで,加古川市長に対し,同月12日に米国籍の女性と婚姻した旨の届出書を提出し,同年10月23日,本件出国をして,同日以降少なくとも平成20年末までの間,米国に居住していたが,本件販売事業の内容(上記(ア))は,原告が米国に居住している間においても同様であった。なお,原告の平成16年6月6日から平成22年9月11日までの間における本邦への入国及び本邦からの出国の状況は,別表3「原告の日本への入出国状況」記載のとおりであった。[前提事実(1)イ,甲3,弁論の全趣旨]イ本件企業は,原告ホームページ等を運営して,インターネット上の電子商店街であるP3やP5に出品するなどの方法により,本件販売事業を行っていたが,① P2株式会社は,P3について,日本国内に事業所がない場合には出店することができないこととし(なお,外国に居住する個人が日本国内に事業所を持つ場合であっても,外国の住所を基に出店することはできない。),② P4株式会社は,外国居住者であっても,18歳以上の日本語を理解し,読み書きができる者であって,利用規約を順守することを約束した者であれば,P5に出品することができることとしているが, - 34 -「日本国外との間で商品発送または代金支払が行われた取引または行われることが予定されていた取引」については,同社の設けるトラブル発生時の補償制度(以下「P5補償制度」という。)に基づく補償金支払の対象外としていた。[前提事実⑵ア・イ, 払が行われた取引または行われることが予定されていた取引」については,同社の設けるトラブル発生時の補償制度(以下「P5補償制度」という。)に基づく補償金支払の対象外としていた。[前提事実⑵ア・イ,乙15ないし17,21]ウ(ア) 本件企業が運営する原告ホームページ等は,全て日本語で作成されており,本件企業の所在地,連絡先等について,次の内容が掲載されていた(なお,原告が米国に居住している間も,原告ホームページ等の上記掲載内容に変更はなかった。)。[前提事実(2)イ,ウ(ア),乙1,2,弁論の全趣旨]a 原告ホームページの「法定表示」欄「 事業者名:P1発送元:兵庫県高砂市α×-29連絡先:×(お問い合わせはメールでお願いします) 」bP3ウェブページの「会社概要」欄「 P1〒× 兵庫県高砂市α×-29TEL:× FAX:×店舗運営責任者:P11店舗セキュリティ責任者:P11店舗連絡先:○ 」(イ)a 本件企業は,原告ホームページ等において,取扱商品を他の業者より低い価格で販売している旨を宣伝しており,例えば,原告ホームページには,「当店では定期的に価格チェックを実施し,ほとんどの商品を国内最安値に設定しています。ご注文予定の商品一式を消費税,送料込みで当方より安く販売しているところがあればメールにてご連絡ください。可能な限り検討させていただきます。」などと掲載され - 35 -ていた。[乙14,18,弁論の全趣旨]b 本件企業は,原告ホームページ等において,国内から国内各地の顧客に配送した際に要する通常の期間内に取扱商品を引き渡すことを,本件販売事業の条件として表示しており,例えば,原告ホームページには,「在庫有りと記載された商品は基本的にご注文の翌日発 ら国内各地の顧客に配送した際に要する通常の期間内に取扱商品を引き渡すことを,本件販売事業の条件として表示しており,例えば,原告ホームページには,「在庫有りと記載された商品は基本的にご注文の翌日発送いたします。」と掲載され,P3ウェブページには,「代引きの場合は注文確認後3日以内,銀行振込の場合は入金確認後3日以内に配送します」と掲載されていた。また,本件企業は,原告ホームページ等において,取扱商品の送料を顧客が負担する旨を表示し,例えば,P3ウェブページには,① 個別に送料を設定している商品を除き,送料を「全国一律800円」とし,② 「まとめ買い時の扱い」について「1配送先につき,送料別の商品を複数ご注文いただいた場合,送料は上記料金表1個分送料になります。」と掲載されていた。[乙2,14,弁論の全趣旨]c 本件企業は,原告ホームページ等において,配送した商品に初期不良があった場合には,本件企業が送料を負担した上で,顧客からの返品に応じる旨を表示していた。なお,原告は,(本件出国後である)平成19年3月19日,返品を検討している旨を連絡してきた顧客に対し,電子メールにより,キャンセルする場合には本件アパート宛てに着払いで発送してもらいたい旨を申し入れ,本件アパートの住所及び本件電話番号を連絡していた。[乙2,39,弁論の全趣旨]d 本件企業の取扱商品の中には,自動車への取付けに専門的な知識を要し,日本語の取扱(取付)説明書がなければ,取付けが困難なものも含まれていた。原告は,顧客満足度の向上(販売促進)の観点から,そのような商品に日本語取説書を添付することとし(ただし,日本語取説書を添付しない商品もある。),原告ホームページ等において, - 36 -商品に日本語取説書を無料で添付することを宣伝していた。本件企業は に日本語取説書を添付することとし(ただし,日本語取説書を添付しない商品もある。),原告ホームページ等において, - 36 -商品に日本語取説書を無料で添付することを宣伝していた。本件企業は,例えば,原告ホームページにおいて,「もともと英文取説しかついていません。ただし商品名の横に日本語取説つきと記載のあるものは,当方作成のオリジナル日本語取説をつけており,取り付け,調整,使用方法などをわかりやすく記載しております。(コピー,転売等はご遠慮ください。)」と掲載し,最新情報欄に商品発売の告知と併せて,当該商品の日本語取説書が本件企業独自のものであり,日本初であることを宣伝するなどしていた。[乙14,19,20,弁論の全趣旨]⑵ 本件販売事業に係る施設(本件アパート等)の状況等ア(ア) 原告は,平成13年11月16日,本件アパートを賃借し,平成14年以降,本件販売事業における商品の保管,梱包,発送等の業務を行う場所として,本件アパートを使用していた。なお,原告は,本件アパートに本件電話番号等を設置した。[前提事実(2)ウ(ア),甲2,3](イ) 原告は,平成16年頃,P10に対し,本件販売事業の効率化を図るため,本件受注ソフトの作成を依頼し,同年4月頃,本件アパートにあるデスクトップパソコンに本件受注ソフトが組み込まれた。なお,原告は,その後,P10に対し,複数回にわたり,本件受注ソフトの修正,本件販売事業に使用する別のシステムの作成等を依頼し,P10は,原告に対し,電子メールにより,修正プログラムや新しいシステムファイルを送信していた。[甲6,7,8の1・2,弁論の全趣旨]イ(ア) 原告は,取扱商品が増加したことなどから,(本件出国後である)平成18年11月29日,本件倉庫に係る賃貸借契約を締結し,本件企業は,この していた。[甲6,7,8の1・2,弁論の全趣旨]イ(ア) 原告は,取扱商品が増加したことなどから,(本件出国後である)平成18年11月29日,本件倉庫に係る賃貸借契約を締結し,本件企業は,この頃以降,商品の保管,梱包,発送等の業務を行う場所として,本件倉庫を使用していた。なお,原告は,上記賃貸借契約に係る入居申込書において,勤務先の会社名を「P1」と記載し,原告の住所地及び - 37 -勤務先(本件企業)の所在地として,本件アパートの住所を記載していた。[前提事実(2)ウ(イ),乙12,24,弁論の全趣旨](イ) 本件倉庫には,ファックス機能付電話機(本件ファックス番号を本件アパートから本件倉庫に移設したもの),パソコン,プリンター,商品撮影用のカメラ機器,商品運搬用のフォークリフト,商品の陳列棚,梱包に用いる材料(緩衝材)等が備え付けられていた。[甲2,3,乙24,弁論の全趣旨]ウ(ア) 原告は,本件販売事業における商品の保管,梱包,発送等の業務に従事させるため,勤務時間を13時から15時として,パートタイマー(本件従業員)を二,三人雇用しており,原告が米国に居住している間も同様であった。[甲3,乙24,弁論の全趣旨](イ) 本件従業員は,本件倉庫が賃借された後は,本件倉庫において,商品の保管,梱包,発送等の業務に従事していた。なお,本件倉庫には,監視カメラが設置され,原告は,同カメラにより,本件従業員が業務に従事している状況を確認し得るようになっていた。[甲2,3,乙24,弁論の全趣旨]⑶ 原告が米国に居住している間における本件販売事業の流れ等ア原告が米国に居住している間における本件販売事業の流れ(顧客が原告ホームページ等を通じて商品を注文し,本件企業が顧客に対して商品を発送するまでにおける具体的業務 間における本件販売事業の流れ等ア原告が米国に居住している間における本件販売事業の流れ(顧客が原告ホームページ等を通じて商品を注文し,本件企業が顧客に対して商品を発送するまでにおける具体的業務の内容)は,概要,以下のとおりである(本項(ア)ないし(キ)及び後記イ(ア)・(イ)に「本件倉庫」とあるのは,平成18年11月以前においては,本件アパートを意味するものとする。)。 [甲2,3,9,乙24,弁論の全趣旨](ア) 原告ホームページ等において,顧客が注文ボタンをクリックすると,注文票画面が表示される。顧客(購入者)が,住所,氏名,電話番号,支払方法,配達希望日等を入力し,「注文する」ボタンをクリックして - 38 -注文内容を確定させると,① 原告に対しては,注文が入ったことを知らせる電子メールが送信され,② 顧客に対しては,注文された商品の在庫を確認した上で確認メールを送信する旨の電子メールが自動送信される。 (イ) 原告は,上記電子メールを受信した後,本件受注システムを用いて,本件倉庫に在庫があることを確認の上,顧客に対して確認メールを送信するとともに,本件倉庫にあるパソコンに対し,発送指示を行う(上記指示により,本件倉庫にあるパソコンの印刷ボタンを押せば,注文された商品に係る送り状〔配送伝票〕を印刷することができる状態となる。)。 (ウ) 本件従業員は,本件倉庫にあるパソコンの印刷ボタンを押して,注文された商品に係る送り状(配送伝票)を印刷する。なお,この送り状には,配達依頼主である本件企業の住所等として,本件アパートの住所及び本件電話番号が記載されている。 (エ) 本件従業員は,印刷された送り状(配送伝票)に対応する商品を,本件倉庫の陳列棚から取り出して,緩衝材で包み,発送用の段ボールで梱包する。本件従業員は, 及び本件電話番号が記載されている。 (エ) 本件従業員は,印刷された送り状(配送伝票)に対応する商品を,本件倉庫の陳列棚から取り出して,緩衝材で包み,発送用の段ボールで梱包する。本件従業員は,その際,日本語取説書のある商品については,日本語取説書を同梱する。 (オ) 本件従業員は,送り状(配送伝票)が印刷された全ての商品の梱包を終えた後,本件倉庫にあるパソコンを用いて,本件倉庫における在庫状況が記載された紙(以下「在庫一覧書面」という。)を印刷し,在庫一覧書面の内容と実際の在庫状況を突き合わせることによって,梱包作業に誤りがなかったかを確認する。 (カ) 本件従業員は,P7に対し,発送準備を整えた全ての商品を引き渡し,その後,本件倉庫の施錠をして,その日の業務を終了する。 (キ) なお,本件販売事業における注文の多くは,原告ホームページ等を通じてされていたが,顧客がファックス(本件ファックス番号)により注文をした場合には,当該ファックスの内容が自動的に電子データ化さ - 39 -れ,電子メールにより原告に送信される仕組みとなっていた。また,顧客が本件電話番号に電話を掛けた場合,当該電話は,インターネット回線を通じて,原告の電話に転送された上,常に留守番電話が対応するように設定されており,原告又は本件従業員が本件電話番号等を通じて顧客と直接やりとりをすることはない。 イ(ア) 本件従業員が本件倉庫において行っていた主な業務の内容は,概ね次のとおりである。なお,本件従業員が本件出国後に本件倉庫で行っていた業務は,本件出国以前と比較して特段の変更点はない。[甲2,3,5,9,乙7,24,弁論の全趣旨]a 商品の受取り・保管業務本件従業員は,国際航空宅急便等により日本に輸入され,P12株式会社が本件倉庫に配送した商品を して特段の変更点はない。[甲2,3,5,9,乙7,24,弁論の全趣旨]a 商品の受取り・保管業務本件従業員は,国際航空宅急便等により日本に輸入され,P12株式会社が本件倉庫に配送した商品を受け取り,本件倉庫の陳列棚に並べて保管する。 b 商品の梱包・発送業務本件従業員は,① 本件倉庫のパソコンを用いて,発送すべき商品の送り状(配送伝票)を印刷し(前記ア(ウ)),② この送り状に従い,商品を緩衝材で包み,日本語取説書のあるものについては日本語取説書を同梱するなどして梱包作業を行い(前記ア(エ)),③ 在庫一覧書面を用いて梱包作業に誤りがないかを確認し(前記ア(オ)),④ 梱包した全ての商品をP7に引き渡して,商品を発送する(前記ア(カ))。 c 返品された商品の受取り,代替商品の発送業務等本件企業は,顧客が商品を返品する場合,本件アパートに向けて商品を返品してもらうようにしており,本件従業員は,転送届に基づき本件アパートから転送された商品を受け取り,また,顧客が代替商品を希望している場合には,代替商品を陳列棚から取り出して,上記bの業務を再度行う。なお,顧客から返品された商品は,国際航空宅急 - 40 -便を利用して原告に配送する。 d 商品写真の撮影本件従業員は,原告が取扱商品の写真(原告ホームページ等に掲載するためのもの)を撮影し忘れた場合には,これを撮影して,当該写真データを原告に送信する。なお,原告は,平成20年3月頃,本件従業員が上記撮影に使用するための照明器具等を購入して本件倉庫に郵送しており,本件従業員は,同年4月頃以降,必要に応じ,商品の撮影業務を行っていた。 (イ) 原告が,米国に居住している間,本件販売事業について行っていた主な業務の内容は,概ね次のとおりである。なお,本件販売事業は, 員は,同年4月頃以降,必要に応じ,商品の撮影業務を行っていた。 (イ) 原告が,米国に居住している間,本件販売事業について行っていた主な業務の内容は,概ね次のとおりである。なお,本件販売事業は,全て日本国内の顧客を相手にしたものであり,米国内に顧客はいない。また,原告は,米国において,本件販売事業に係る所得(本件各係争年分)を申告していなかった。[甲2,3,5,7,9,17,18の1ないし5,甲19,乙22,24,25,30,39,弁論の全趣旨]a 市場動向の調査等原告は,日本のP5に出品されている自動車用品の種類と落札記録をインターネットから取り込んで集計し,市場動向を調査し,その結果を踏まえて,商品の販売価格を決定する。 b 商品の仕入れ及び支払業務原告は,米国の仕入れ業者を訪問し,仕入価格等についての交渉を行い,商品の仕入れ及び仕入れた商品の代金の決済を行う。なお,仕入れた商品は,原則として,仕入業者が国際航空宅急便を利用して日本国内に輸入し,本件倉庫に配送していたが,原告自身が国際航空宅急便等を利用して本件倉庫に配送することもあった。 c 原告ホームページ等の管理(記事掲載等)原告は,商品の写真を加工し,商品説明とともに原告ホームページ - 41 -等に掲載するなどして,商品の宣伝を行う(なお,原告は,原則としてメーカーから商品写真を入手していたが,写真のないものは独自に写真を撮影して原告ホームページ等に使用していた。)。 d 電子メールによる顧客とのやり取り(a) 原告は,顧客から注文が入った場合には,本件受注システムを用いて,本件倉庫における在庫を確認した上,確認のメールを顧客に送信し,本件倉庫のパソコンに対して発送指示を行う(前記ア(イ))。 (b) 原告は,顧客からの問合せ,見積依頼等につ 件受注システムを用いて,本件倉庫における在庫を確認した上,確認のメールを顧客に送信し,本件倉庫のパソコンに対して発送指示を行う(前記ア(イ))。 (b) 原告は,顧客からの問合せ,見積依頼等については,全て電子メールで受け付けることとし,これらの問合せ等に対し,電子メールで回答する。 e 日本語取説書の作成業務原告は,一部の商品について,日本語取説書を作成する。なお,原告は,日本語取説書について,日本国内の印刷業者に依頼し,同業他社が日本語取説書をコピーして使用できないような加工(コピーすると「○」の文字が表示される加工)を施したものを本件倉庫に納入させていた。 ⑷ 本件訴訟に至る経緯等ア(ア) 原告は,本件各係争年において,本件販売事業による所得があったにもかかわらず,処分行政庁に対し,本件各係争年分の所得税の確定申告書を提出しなかった。[前提事実(4)ア(ア)](イ) 本件調査担当職員は,平成20年10月8日から平成21年11月9日までの間,本件税務調査を行い,原告に対し,繰り返し,帳簿書類の提示等を要請した。しかしながら,原告は,本件訪問調査において,本件調査担当職員の質問に応じたものの,それ以外の協力はせず,帳簿書類の提示も拒否した。[前提事実(4)イ,弁論の全趣旨]イ(ア) 処分行政庁は,前記アの経緯において,本件各係争年分に係る原告 - 42 -の所得金額等を実額により把握することができなかったため,原告の平成16年分の事業所得に係る青色申告書類に基づき原告所得率を算定し,本件税務調査により把握した原告の事業所得の総収入金額に原告所得率を乗じて原告の所得金額を推計した(処分行政庁が行った推計の内容等は,別紙3記載2(1)ないし(4)のとおりである。)。[前提事実⑷ウ(ア),甲2,3,弁論の全趣旨 事業所得の総収入金額に原告所得率を乗じて原告の所得金額を推計した(処分行政庁が行った推計の内容等は,別紙3記載2(1)ないし(4)のとおりである。)。[前提事実⑷ウ(ア),甲2,3,弁論の全趣旨](イ) 処分行政庁は,平成22年6月30日付けで,上記推計の結果に基づき,本件各処分を行った。[前提事実(4)ウ(ア)]ウ(ア) 原告は,本件異議申立て後,平成22年10月13日に実施された質問調査において,本件調査担当職員に対し,原告が,本件企業の開業以来,帳簿書類を付けており,日本国内と米国内の経費についても帳簿に付けていること,本件販売事業に係る帳簿書類を提出する用意もあることなどを説明したが,結局,帳簿書類を提出しなかった。[甲2,3,乙24,弁論の全趣旨](イ) 原告は,本件異議申立て後,原告の米国における経費が控除されないことは不当であるという趣旨の主張もしていたが,米国における経費を算定するための客観的資料等を提出しなかった。[甲2,3,乙24,弁論の全趣旨]エ(ア) 原告は,平成24年3月16日,本件訴訟を提起した。[前提事実(4)オ](イ) 被告は,原告に対し,平成24年12月14日付け書面により,① 原告が米国において所得税の申告を行っているか否か,② 原告が米国において事業を行う上での何らかの登録等を行っているか否かについて釈明を求め,当裁判所が上記釈明に応じるよう促したが,原告は,これに応じなかった。[顕著な事実] 2 検討 - 43 -(1) 争点1(実特法省令9条の2第1項又は7項の定める届出書を提出しなければ,日米租税条約7条1項による税の軽減又は免除を受けることができないのか否か。)についてア国民は,民主主義の下,その総意を反映する租税立法に基づいて納税の義務を負うものとさ 書を提出しなければ,日米租税条約7条1項による税の軽減又は免除を受けることができないのか否か。)についてア国民は,民主主義の下,その総意を反映する租税立法に基づいて納税の義務を負うものとされており(憲法30条参照),その反面において,新たに租税を課し,又は現行の租税を変更するには,法律又は法律の定める条件によることを必要とされていること(憲法84条)に鑑みれば,納税義務者,課税標準等の課税要件はもとより,租税の賦課,納付,徴収等の手続についても,全て法律により規定すべきものである(最高裁大法廷昭和30年3月23日判決・民集9巻3号336頁,最高裁大法廷昭和37年2月21日判決・刑集16巻2号107頁)。そして,法律により,政令などの下位の法令に課税要件等の定めを委任することは可能ではあるものの,その委任の方法は,当該法律において委任の内容を個別的・具体的に限定するなどして,租税法律主義(憲法84条)の本質を損なわないものでなければならず,委任の内容を何ら限定することなく,包括的・一般的に委任することは,憲法84条に反するものとして許されないというべきである。 イ原告は,本件各係争年における国内源泉所得について,実特法省令に基づく届出書を提出していない(当事者間に争いがない。)ところ,被告は,実特法省令に基づく届出書を提出していない以上,日米租税条約7条1項による税の軽減又は免除を受けることはできない旨主張している。 そこで検討するに,実特法省令9条の2は,租税条約の特定規定に基づき,税の軽減又は免除を受けようとする場合には,実特法省令に基づく届出書を提出しなければならない旨を定めており,日米租税条約7条1項は,上記特定規定に該当するから(実特法12条,本件総務大臣等告示),実特法省令9条の2によれば,原告は,国内源泉所 法省令に基づく届出書を提出しなければならない旨を定めており,日米租税条約7条1項は,上記特定規定に該当するから(実特法12条,本件総務大臣等告示),実特法省令9条の2によれば,原告は,国内源泉所得について,日米租税条 - 44 -約7条1項による税の軽減又は免除を受けるに当たり,実特法省令に基づく届出書を提出すべきであったということができる。 しかしながら,実特法省令9条の2は,実特法省令に基づく届出書を提出しなかった場合において,租税条約に基づく税の軽減又は免除を受けることができない旨を具体的に規定しているわけではない。また,実特法省令は,実特法12条の委任規定に基づくものであるところ,同条は,「租税条約の実施及びこの法律の適用に関し必要な事項は,総務省令,財務省令で定める。」とのみ規定しており,その委任の方法は,一般的,包括的なものであって,租税法律主義(憲法84条)に照らし,実特法12条が課税要件等の定めを省令に委ねたものと解することはできない。そうである以上,同条が,実特法省令に対し,届出書の提出を租税条約に基づく税の軽減又は免除を受けるための手続要件として定めることを委任したものと解することはできないというべきである。 ウこの点,被告は,日米租税条約による特典を受けるための実体的要件は,日米租税条約が定めており,実特法省令9条の2は,実特法12条による委任を受けて,上記実体的要件の存否等を確認するための手続的な事項を定めたものにすぎないなどと主張している。しかしながら,実特法省令に基づく届出書を提出しなければ,租税条約による特典を受けることができないとするならば,実特法省令に基づく届出書を提出することは,租税条約の特典を受けるための手続要件になるものと解さざるを得ない。前記検討のとおり,実特法12条の委任規定 による特典を受けることができないとするならば,実特法省令に基づく届出書を提出することは,租税条約の特典を受けるための手続要件になるものと解さざるを得ない。前記検討のとおり,実特法12条の委任規定の内容は,一般的,包括的なものであるところ,同条が法律よりも下位の省令に対し,租税条約及び実特法を実施するための手続的細則を定めることを委任したものと解することはできるとしても,省令の定める手続を経なければ,租税条約の特典を受けることができないという意味での手続要件を定めることを委任したものと解することはできないというべきである。これに反する被告の主張は採用す - 45 -ることができない。 エ以上によれば,原告が日米租税条約7条1項による税の軽減又は免除を受けることができるか否かについては,同項に基づき判断されるべきものであって,原告が実特法省令に基づく届出書を提出しなかったことをもって,同項の適用を否定することはできない。 ⑵ 争点2(本件アパート等は,日米租税条約5条の規定する恒久的施設に該当するか否か。)についてア(ア) 日米租税条約は,ある場所が日米租税条約5条1項の規定する恒久的施設に該当する場合であっても,同条4項各号のいずれかに該当する場合には,恒久的施設から除外する旨を規定しているところ,原告は,本件アパート等が同項(a)号の定める「企業に属する物品又は商品の保管,[中略]引渡しのためにのみ施設を使用すること」に該当する旨主張していることから,まず,同項各号の意義について検討する。 (イ)a 日米租税条約5条4項各号の文言についてみるに,同項(e)号は,「企業のためにその他の準備的又は補助的な性格の活動を行うことのみを目的として,事業を行う一定の場所を保有すること」と規定しており,上記「その他の」準備的又は の文言についてみるに,同項(e)号は,「企業のためにその他の準備的又は補助的な性格の活動を行うことのみを目的として,事業を行う一定の場所を保有すること」と規定しており,上記「その他の」準備的又は補助的な性格の活動という規定振りに鑑みれば,同号に先立つ同項(a)号ないし(d)号は,文理上,「準備的又は補助的な性格の活動」の例示であると解することができる。 また,同項⒡号は,「(a)から(e)までに掲げる活動を組み合わせた活動を行うことのみを目的として,事業を行う一定の場所を保有すること。ただし,当該一定の場所におけるこのような組合せによる活動の全体が準備的又は補助的な性格のものである場合に限る。」と規定しているところ,同号が同項(a)号ないし(e)号所掲の活動を組み合わせた活動について,あえて「準備的又は補助的な性格」であるとの限定を付しているのは,同項(a)号ないし(e)号所掲の活動が「準備的又は - 46 -補助的な性格」の活動であることを前提とした上で,各号を組み合わせることによって,その活動の全体が「準備的又は補助的な性格」を超える場合には,恒久的施設の対象から除外しない旨を規定したものと解するのが合理的である。 以上によれば,日米租税条約5条4項(a)号ないし(d)号は,「準備的又は補助的な性格の活動」の例示であり,ある場所が同項各号に該当するとして恒久的施設から除外されるためには,当該場所での活動が準備的又は補助的な性格であることを要するものと解すべきである。 b 日米租税条約5条4項は,OECDモデル租税条約5条4項と同文であり,OECDモデル租税条約に準拠して定められたものであるところ,OECD理事会は,OECDの加盟国(日本及び米国を含む。)が二国間条約の締結又は改訂に際して,OECDコメンタリーによって 文であり,OECDモデル租税条約に準拠して定められたものであるところ,OECD理事会は,OECDの加盟国(日本及び米国を含む。)が二国間条約の締結又は改訂に際して,OECDコメンタリーによって解釈されるものとしてのOECDモデル租税条約に従い,その課税当局は,OECDモデル租税条約に基づく二国間条約の規定の解釈適用においてOECDコメンタリーに従うべきとの勧告を行っていることが認められる(乙9)。そこで,OECDコメンタリーの内容をみるに,OECDコメンタリーにおいては,OECDモデル租税条約5条4項各号につき,「これらの活動の共通の特徴は,一般に,準備的又は補助的な活動であることである。これは(e)で定められる例外として明文によって定められている。(e)は,実際には,第1項が規定している定義の適用範囲に対する一般的な制限である。[中略]したがって,第4項の規定は,一方の国の企業が,純粋に準備的又は補助的な性格の活動を他方の国で行う場合には,当該他方の国で租税を課されることがないように企図されているのである」,「第4項は準備的又は補助的な性格を有する活動を遂行する事業を行う一定の場所に関して,第1項の一般的定義に対する例外を規定しようとするものである。」 - 47 -と記述されている(乙9)。これらの記述に鑑みれば,OECDコメンタリーは,OECDモデル租税条約5条4項各号の活動の共通の特徴が準備的又は補助的な性格であって,同項全体が準備的又は補助的な性格の活動を恒久的施設から除外するための規定であるとの解釈を示しており,日米租税条約5条4項(a)号ないし(d)号に係る当裁判所の解釈(上記a)に符合したものであるということができる。なお,原告は,OECDコメンタリーについて,OECDモデル租税条約5条4項各号に該当する 税条約5条4項(a)号ないし(d)号に係る当裁判所の解釈(上記a)に符合したものであるということができる。なお,原告は,OECDコメンタリーについて,OECDモデル租税条約5条4項各号に該当する活動が準備的又は補助的な性格の活動でなければ,同項(a)号ないし(d)号が適用されないと述べているわけではない旨主張するが,前記指摘したOECDコメンタリーの記述内容に照らし,上記主張を採用することはできない。 (ウ)a この点,原告は,日米租税条約(OECDモデル租税条約)5条4項各号が「準備的又は補助的な性格の活動」であると解釈した場合,同項(e)号とは別に,同項(a)号ないし(d)号を定めることは無意味であって,不合理であるなどと主張している。しかしながら,「準備的又は補助的な性格の活動」との文言自体から,その内容が一義的に明らかになるわけではなく,「準備的又は補助的な性格の活動」の具体例(同項(a)号ないし(d)号)を挙げた上で,具体的例示の方法によって網羅しきれない場合に備えて包括的な定め(同項(e)号)を置くという規定の仕方が特段不自然,不合理であるということはできない。 b 原告は,国連モデル租税条約との比較によれば,OECDモデル租税条約(日米租税条約)5条4項(a)号が「引渡し」のための施設(倉庫)を恒久的施設から除外したものと解すべきである旨主張しているところ,国連モデル租税条約5条4項(a)号は,発展途上国の課税権限を広く認めるという観点から,同号に「引渡し」を含めなかったものと解される(甲4)。しかしながら,同号が「引渡し」を含めなかっ - 48 -たからといって,OECDモデル租税条約(日米租税条約)5条4項(a)号が「準備的又は補助的な性格の活動」の例示であることを否定すべきであるということはできず,原 」を含めなかっ - 48 -たからといって,OECDモデル租税条約(日米租税条約)5条4項(a)号が「準備的又は補助的な性格の活動」の例示であることを否定すべきであるということはできず,原告の上記主張を採用することはできない。 c 原告は,OECDモデル租税条約(日米租税条約)5条4項(a)号ないし(d)号について,2012年報告書の見解に沿った解釈をすべきである旨主張しているところ,証拠(甲24)によれば,OECDの検討チームは,OECDモデル租税条約5条4項8(a)号ないし(d)号について,「準備的又は補助的な性格を有する活動」であることを要しないとの解釈を示していることが認められる。しかしながら,2012年報告書は,その記載内容に照らせば,同項(a)号ないし(d)号について,従来,「準備的又は補助的な性格を要する活動」であるとの解釈がされていたことを前提とした上で,OECDコメンタリーの改訂により,上記解釈を変更することを提案したものと解されるのであり,2012年報告書が従来の解釈の変更を提案したからといって,本件各係争年における日米租税条約5条4項の解釈につき,2012年報告書に従わなければならないということはできない。なお,原告は,OECDモデル租税条約5条4項について,自己の主張に沿った見解等が記載されている文献を複数指摘しているものの,日米租税条約5条4項の文理解釈として,同項(a)号ないし(d)号が「準備的又は補助的な性格を有する活動」の例示であると解すべきことは,前記検討のとおりであって(前記(イ)a),これと異なる解釈をすべき理由を認めることはできない。 (エ) 以上のとおり,日米租税条約5条4項(a)号ないし(d)号は,「準備的又は補助的な性格の活動」の例示であると解すべきである。したがって,本 異なる解釈をすべき理由を認めることはできない。 (エ) 以上のとおり,日米租税条約5条4項(a)号ないし(d)号は,「準備的又は補助的な性格の活動」の例示であると解すべきである。したがって,本件アパート等が恒久的施設に該当するためには,同条1項の規定 - 49 -する「恒久的施設」に当たり,かつ,同条4項各号の規定する「準備的又は補助的な性格の活動」を行う施設には当たらないことを要するというべきである。 イ(ア) 前記アを踏まえて検討するに,前記認定のとおり,本件アパート等は,原告が米国に居住している間も,① 本件販売事業の商品を保管しておき,② 顧客の注文を受けて,個別に商品を梱包した上で顧客向けに発送し,また,③ 顧客からの返品があった場合には,返品された商品を受け取り,代替商品を発送するなどの業務を行う場所であった(認定事実(1)ア(ア),(3)ア,イ(ア))のであるから,本件アパート等が本件販売事業の全部又は一部を行う一定の場所であったことは明らかであり,本件アパート等は,日米租税条約5条1項の規定する「恒久的施設」に該当する。 (イ) この点,原告は,本件アパートが,本件倉庫を賃借した後は無人であり,事業を行う一定の場所(日米租税条約5条1項)に該当しない旨の主張をしているところ,原告及び本件従業員が,本件倉庫が賃借された後,本件アパートにおいて,本件販売事業に係る具体的な作業を行っていたことを認めるに足りる事実ないし証拠はない。 しかしながら,① 本件アパートは,本件倉庫が賃借された後も,原告ホームページ等において,本件企業が所在する場所として掲載され(認定事実(1)ウ(ア)),② 本件企業は,本件倉庫において商品の保管,梱包,発送等の業務をしていたにもかかわらず,本件アパートを発送元として,商品を発送し ,本件企業が所在する場所として掲載され(認定事実(1)ウ(ア)),② 本件企業は,本件倉庫において商品の保管,梱包,発送等の業務をしていたにもかかわらず,本件アパートを発送元として,商品を発送していた(認定事実(3)ア(ウ))のである。さらに,③本件企業は,顧客が返品を希望した場合には,あえて本件アパート宛てに商品を発送させ,本件倉庫において,転送届により本件アパートから転送された商品を受け取っていたのである(認定事実(1)ウ(イ)c,(3)イ(ア)c)。 - 50 -これらの事実関係によれば,本件アパートは,本件倉庫が賃借され,原告及び本件従業員による具体的な作業の場所が本件倉庫に移転した後においても,本件倉庫と一体となって,本件企業としての活動を行う場所としての機能・役割を担っていたということができる。なお,ある場所が日米租税条約5条1項の定める恒久的施設に該当するか否かは,企業としての活動(事業)の有無及び内容によって判断すべきものであるから,原告及び本件従業員が本件アパートにおいて具体的な作業を行っていなかったことは,上記認定・判断を覆す事情には当たらない。 ウ次に,本件アパート等が日米租税条約5条4項各号のいずれかに該当するか否かを検討するに,以下述べるとおり,本件アパート等における活動が「準備的又は補助的な性格」のものであるということはできず,本件アパート等は,上記各号のいずれにも該当しないというべきである。 (ア)a 本件販売事業の事業形態は,日本国内の顧客に対し,インターネット(原告ホームページ,P3ウェブページ,P5等)を通じて,本件アパート等にある在庫商品を販売するというものであるところ,本件企業は,原告が米国に居住している間も,原告ホームページ等において,本件企業の所在地及び連絡先として,本件 ージ,P5等)を通じて,本件アパート等にある在庫商品を販売するというものであるところ,本件企業は,原告が米国に居住している間も,原告ホームページ等において,本件企業の所在地及び連絡先として,本件アパートの住所及び本件電話番号等を掲載し,販売活動を行っていた(認定事実(1)ウ(ア))。 b(a) インターネットによる通信販売を利用する者は,通常,インターネット上の情報等を通じ,当該企業が取引の相手として信頼できる者であるかどうかなどを判断しており,企業のホームページに掲載された情報は,当該者にとって極めて重要な情報であると考えられる。また,通信販売を利用する者が取引の相手となる企業を選ぶに当たっては,当該企業が日本国内の企業であるかどうかを重要な判断要素の一つとしているものと考えられる(なお,特定商取引法11条1項5号及び特定商取引法施行規則8条1項1号は,通信販売 - 51 -を行う販売業者が広告を行う際に住所及び電話番号を表示することを義務付けている。)。インターネットによる通信販売の上記特質に鑑みれば,本件企業の顧客は,本件企業の所在地及び連絡先が日本国内(本件アパート)にあることを取引する際の重要な判断要素の一つとし,かつ,これを前提として,本件企業と取引を行っていたものと推認することができる。 (b) また,本件企業が,顧客に対し,原告が米国に居住しているとの情報を公表していたことをうかがわせる事実ないし証拠はなく,原告が,前述のとおり(前記イ(イ)),本件倉庫を賃借した後も,原告ホームページ等において,本件企業の所在地等として,本件アパートの住所等を掲載し続けた上,あえて本件アパートを商品の発送元とし,商品の返品先も本件アパートに指定していたことを併せ考えれば,原告は,顧客に対し,本件企業が日本国内(本件アパ 等として,本件アパートの住所等を掲載し続けた上,あえて本件アパートを商品の発送元とし,商品の返品先も本件アパートに指定していたことを併せ考えれば,原告は,顧客に対し,本件企業が日本国内(本件アパート)にある企業であると認識させた上で,本件販売事業における販売活動を行っていたものと推認することができ,同認定を覆すに足りる事実ないし証拠はない。 (c) さらに,本件企業は,P3及びP5を通じて販売活動を行っているところ(前提事実(2)ア・イ),前記認定のとおり,① P3が,日本国内に事業所があることを出品の条件とし,② P5が,日本国内の事業者が出品していることを,P5補償制度を利用するための条件としていたこと(認定事実(1)イ)に鑑みれば,本件企業の所在地が日本国内(本件アパート)であることは,本件販売事業が行われているインターネット市場との関係においても,取引の前提条件となる重要な要素であったということができる。 c 本件企業は,前述のとおり,本件アパートを所在地として販売活動を行っていたところ,本件販売事業における販売活動が全てインター - 52 -ネットを通じて行われており,本件販売事業が本件アパート等に保管された在庫商品を販売するという事業形態であることを併せ考えれば,本件アパートは,本件販売事業における唯一の販売拠点(事業所)としての役割・機能を担っていたということができる。また,原告が本件倉庫を賃借した後においては,前記イ(イ)で検討した事情に鑑みれば,本件倉庫も,本件アパートと一体となって,本件企業の販売拠点(事業所)としての役割・機能を担っていたということができる。 (イ) 本件販売事業は,インターネットを通じた通信販売であるところ,通信販売という事業形態に鑑みれば,対面取引に比して,商品の購入者に対す 所)としての役割・機能を担っていたということができる。 (イ) 本件販売事業は,インターネットを通じた通信販売であるところ,通信販売という事業形態に鑑みれば,対面取引に比して,商品の購入者に対する商品の配送(発送)業務が事業の重要な部分を占めていることは明らかである。また,通信販売を利用して商品を購入した者は,商品の配送を受けた時点で初めて,実際の商品を確認することができるのであって,通信販売においては,その性質上,配送後における契約解除(返品)の可能性が,対面取引に比して高く,顧客からの返品に対応することも重要な業務であるということができる。 本件従業員は,前記認定のとおり,本件アパート等において,商品を保管しておき,顧客の注文を受けて,個別に商品を梱包した上で顧客に向けて発送し,また,顧客からの返品を受け取り,代替商品を発送するなどの業務を行っており(認定事実(3)イ(ア)),これらの業務は,通信販売である本件販売事業にとって,重要な業務であったというべきである。 さらに,本件企業は,原告ホームページ等において,米国から仕入れた自動車用品を低価格で販売し,注文された商品を速やかに顧客に配送する旨を掲載している(認定事実(1)ウ(イ)a・b)ところ,これらは,原告が米国で仕入れた商品を本件アパート等に在庫商品として保管し,本件アパート等から顧客に対して配送するからこそ実現できるのであっ - 53 -て,本件販売事業における契約条件の実現という観点からも,本件アパート等における保管及び発送業務は重要なものであったということができる。 (ウ) 前記検討のとおり,本件企業は,本件アパート等を販売拠点(事業所)として,本件販売事業における販売活動を行い,かつ,本件従業員が,本件企業の事業所である本件アパート等において,通信販 る。 (ウ) 前記検討のとおり,本件企業は,本件アパート等を販売拠点(事業所)として,本件販売事業における販売活動を行い,かつ,本件従業員が,本件企業の事業所である本件アパート等において,通信販売である本件販売事業にとって重要な業務(商品の保管,梱包,配送,返品の受取り等)を実際に行っていたことに鑑みれば,本件アパート等が本件販売事業にとって「準備的又は補助的な性格の活動」を行っていた場所であるということはできない。そうである以上,本件アパート等は,日米租税条約5条4項各号のいずれにも該当しないというべきである。 エ(ア)a 原告は,本件アパート等は,「企業に属する物品又は商品の保管,[中略]引渡しのためにのみ」使用する場所であって,日米租税条約5条4項(a)号に該当する旨主張しているところ,本件従業員が本件アパート等において行っていた業務の内容は,前記認定のとおりであって,その主な活動が商品の「保管」及び「引渡し」としての性格を有するものであったことは否定できない。 b しかしながら,前記検討のとおり(前記ウ(イ)),通信販売という事業形態の特質に鑑みれば,本件従業員が本件アパート等で行っていた業務は,本件販売事業にとって重要なものであったというべきである。 c(a) また,本件従業員は,商品を個別に梱包する際,日本語取説書のある商品については,日本語取説書を同梱する作業をしていた(認定事実(3)ア(エ))ところ,本件企業が日本語取説書を無料で添付する旨を宣伝していたこと(認定事実(1)ウ(イ)d)に照らしても,上記作業は,本件企業が販売している商品(自動車用品)の経済的価 - 54 -値を高める活動であり,単なる「保管」又は「引渡し」の範囲を超えるものというべきである。 この点,原告は,日本語取説書も独立の商品で 業が販売している商品(自動車用品)の経済的価 - 54 -値を高める活動であり,単なる「保管」又は「引渡し」の範囲を超えるものというべきである。 この点,原告は,日本語取説書も独立の商品であり,上記作業も日米租税条約5条4項(a)号に該当する旨主張している。しかしながら,原告が米国から輸入して本件アパート等に保管していた商品は,その段階では,飽くまで米国内で流通していたままの商品であり,その後,本件従業員が個別に日本語取説書と組み合わせることによって,日本国内の顧客向けの商品としての価値が付加されるものと解されるから,原告の上記主張を採用することはできない。 (b) さらに,本件従業員は,本件アパート等において,① 原告ホームページ等に掲載するための商品の写真を撮影する業務を行い(認定事実(3)イ(ア)d),② 顧客が商品を返品した場合には,本件アパート等において,返品された商品を受け取り,その代替商品を顧客に対して発送し,返品された商品を米国にいる原告に対して発送するといった業務を行っていた(認定事実(3)イ(ア)c)ところ,これらの業務についても,単なる「保管」又は「引渡し」の範囲を超えるものと解すべきである。 この点,原告は,上記②について,顧客から返品される商品が「企業に属する物品」であり,これを受け取り,代替商品を発送するなどの業務は,いずれも日米租税条約5条4項(a)号の「保管」又は「引渡し」に該当する旨主張している。しかしながら,前述のとおり(前記ウ(イ)),顧客からの返品に対応する業務は,通信販売において重要な業務であると解されるところ,原告が,顧客に対し,初期不良品の返品を受け取る旨を申し入れ,本件企業の事業所である本件アパートを返品先として,本件企業の負担において返品を受け取るという一連の活動全体 業務であると解されるところ,原告が,顧客に対し,初期不良品の返品を受け取る旨を申し入れ,本件企業の事業所である本件アパートを返品先として,本件企業の負担において返品を受け取るという一連の活動全体が,商品を購入した顧客に対する事後的なサ - 55 -ービスを形成していると解されるのであって,このようなサービスの一部分を切り取って,同号の規定する「保管」又は「引渡し」として単純化すべきものではない。原告の上記主張は採用することができない。 d 以上に加えて,前記検討のとおり(前記ウ(ア)),本件企業が,本件アパート等を販売拠点(事業所)として販売活動を行っていたことを併せ考えても,本件アパート等が商品の保管又は引渡しのみのために使用する場所であるということはできず,日米租税条約5条4項(a)号に該当するということはできない(なお,既に検討したところによれば,本件アパート等が日米租税条約5条4項(e)号の規定する「準備的又は補助的な性格の活動」を行う場所に該当しないことも明らかである。)。 (イ)a 原告は,本件販売事業における中核的な業務は,全て原告が米国で行っており,本件従業員が本件アパート等で行っていた作業は,機械的な単純作業のみであるから,本件アパート等における活動は「準備的又は補助的な性格の活動」に該当する旨主張している。 b そこで検討するに,前記認定によれば,本件従業員が本件アパート等において行っていた主な業務(認定事実(3)イ(ア))は,機械的な単純作業であったということができる。また,本件従業員が,本件アパート等において,本件販売事業(本件企業)の管理又は経営に関与していたことを認めるに足りる事実ないし証拠はない。 なお,被告は,本件訪問調査記録を根拠として,本件従業員が本件受注ソフトの運用(在庫管理)に おいて,本件販売事業(本件企業)の管理又は経営に関与していたことを認めるに足りる事実ないし証拠はない。 なお,被告は,本件訪問調査記録を根拠として,本件従業員が本件受注ソフトの運用(在庫管理)に関与していたという趣旨の主張をしているが,本件訪問調査記録には原告の署名等はされておらず,原告がその内容を争う陳述書(甲9)を提出し,その内容に特段不自然な点もないことに照らせば,本件従業員が在庫管理に関与していた事実 - 56 -を認めることはできない。また,被告は,本件P10てん末書を根拠として,本件アパートに本件受注システムが組み込まれたパソコンが設置され,本件販売事業の管理を担っていたという趣旨の主張をしているが,本件P10てん末書においても,原告が米国に居住している間において,上記パソコンが本件アパートに設置されていたことを直接裏付ける記載はなく,P10が,本件P10陳述書により,本件P10てん末書の記載内容を一部訂正していることを併せ考えれば,被告の主張する事実を認めることはできない。 c しかしながら,既に検討したとおり,本件企業は,本件アパート等を販売拠点(事業所)として,本件販売事業における販売活動を行っていたのであり,通信販売の特質に鑑みても,本件従業員が本件アパート等で行っていた業務が「準備的又は補助的な性格の活動」であるということはできない(ある業務が準備的又は補助的な性格のものであるか否かは,事業全体における役割・機能に鑑みて判断すべきものであり,本件従業員の業務が機械的な単純作業であったことは上記判断を覆す事情には当たらない。)。さらに,原告は,本件倉庫の使用状況について,「当初から,作業の簡素化を考えていましたので,平成18年以前と変わりません。私が,日本に居たか,米国に居たかの違いです。」と説明し には当たらない。)。さらに,原告は,本件倉庫の使用状況について,「当初から,作業の簡素化を考えていましたので,平成18年以前と変わりません。私が,日本に居たか,米国に居たかの違いです。」と説明しているところ(乙24),原告が本件販売事業の効率化,合理化を進めた結果として,本件従業員が定型的な業務を行えば足りる人的・物的体制が構築されたものと解することもできる。 d よって,本件アパート等における活動が「準備的又は補助的な性格の活動」に該当する旨の原告の主張を採用することはできない。 オ以上によれば,本件アパート等は,本件各係争年において,本件販売事業の全部又は一部を行う一定の場所(日米租税条約5条1項)であり,かつ,同条4項各号のいずれにも該当しないから,同条の規定する「恒久的 - 57 -施設」に該当するというべきである。 ⑶ 争点3(本件アパート等が恒久的施設に該当する場合において,日米租税条約7条に基づき課税できる所得の範囲はどこまでか。)についてア(ア) 我が国の国内法によれば,非居住者は,国内源泉所得を有する場合において,所得税を納める義務があるところ(同法5条2項1号),個人が国外で譲渡を受けたたな卸し資産を国内において譲渡する場合には,当該譲渡により生ずる全ての所得が国内源泉所得に該当し(所得税法161条1号,所得税法施行令279条1項1号),譲受人に対する引渡しの時の直前に,その引渡しに係るたな卸資産が国内にあった場合には,これを国内において譲渡する場合に当たる(同条4項1号)こととなる。 そして,本件販売事業は,原告が米国において仕入れた商品(たな卸し資産)を本件アパート等に保管しておき,国内の顧客からの注文に応じて,本件アパート等に保管している取扱商品を国内の顧客に引き渡すというものであるから(認定 ,原告が米国において仕入れた商品(たな卸し資産)を本件アパート等に保管しておき,国内の顧客からの注文に応じて,本件アパート等に保管している取扱商品を国内の顧客に引き渡すというものであるから(認定事実(1)ア(ア),(3)ア・イ),本件販売事業により生ずる全ての所得が国内源泉所得に該当するというべきである。 (イ)a 他方において,日米租税条約は,我が国の国内法に優先して適用されることから,① 本件販売事業により生ずる所得が課税対象となるか否か,② 課税対象となる所得の範囲については,いずれも日米租税条約を適用することによって判断されることとなるところ,日米租税条約は,一方の締約国の企業が他方の締約国内にある恒久的施設を通じて当該他方の締約国内において事業を行う場合には,その企業の利得のうち当該恒久的施設に帰せられる部分に対してのみ,当該他方の締約国において租税を課することができる旨を定め(日米租税条約7条1項第2文),さらに,当該範囲(恒久的施設に配分される利得)については,当該恒久的施設が,同一又は類似の条件で同一又は類似の活動を行う別個のかつ分離した企業であって,当該恒久的施設を有 - 58 -する企業と全く独立の立場で取引を行うものであるとしたならば当該恒久的施設が取得したとみられる利得であり(同条2項),当該恒久的施設のために生じた費用は,当該恒久的施設が存在する締約国外で生じたものも控除対象となる(同条3項)旨を定めている。 b 日米租税条約の上記各規定の内容に鑑みれば,本件においては,① 原告の所得のうち本邦において課税対象とされる所得は,日本国内の「恒久的施設」を通じて行われた事業による部分であり(日米租税条約7条1項第2文),また,② 当該所得については,当該恒久的施設を原告と独立の立場にある企業と擬制し 税対象とされる所得は,日本国内の「恒久的施設」を通じて行われた事業による部分であり(日米租税条約7条1項第2文),また,② 当該所得については,当該恒久的施設を原告と独立の立場にある企業と擬制した上で,原告の所得を当該恒久的施設に配分することによって算定する(同条2項及び3項)ことになるものと解すべきである。 (ウ) 本件アパート等は,前記検討のとおり(前記(2)),日米租税条約5条1項の規定する恒久的施設に該当するというべきであり,本件販売事業の具体的内容(認定事実(1)ア(ア),(3)ア・イ)に照らせば,本件販売事業は,全て本件アパート等を通じて行われたものであるということができるから,日米租税条約7条に基づき課税できる所得の範囲は,同条2項及び3項に基づき,本件アパート等を原告と独立の立場にある企業と擬制した上で(以下,同条2項及び3項の適用に当たって擬制する上記企業を「本件擬制企業」という。),本件販売事業により生じた国内源泉所得を本件擬制企業に配分することによって算定される所得金額であると解すべきである。 イ(ア) そこで検討するに,日米租税条約7条2項及び3項に基づき本件擬制企業に配分されるべき国内源泉所得を算定するに当たっては,本件アパート等が本件販売事業において担っている役割・機能を前提とすべきであるところ,本件アパート等は,前記検討のとおり(前記(2)ウ(ア)),本件販売事業における唯一の販売拠点(事業所)としての役割・機能を - 59 -担っていたというべきである。 したがって,日米租税条約7条2項及び3項に基づき本件擬制企業に配分されるべき国内源泉所得は,日本国内にある本件擬制企業が,本件アパート等を販売拠点(事業所)として事業活動(販売活動)をした場合において取得したとみられる利得であるというべ 基づき本件擬制企業に配分されるべき国内源泉所得は,日本国内にある本件擬制企業が,本件アパート等を販売拠点(事業所)として事業活動(販売活動)をした場合において取得したとみられる利得であるというべきであり,同認定判断を覆すに足りる事実ないし証拠はない。 (イ) この点,原告は,本件アパート等は,本件販売事業において,「保管」及び「引渡し」(発送)の業務を行っている場所であり,本件アパート等を独立の倉庫業者と擬制して,当該業者が原告から本件アパート等における活動を委託された場合の収益が本件アパート等に帰属すべき所得である旨主張している。 しかしながら,前記検討のとおり,本件販売事業の事業態様は,本件アパート等に保管された在庫商品を,インターネットを通じて国内の顧客に販売するというものであるところ,本件企業が,本件アパート等を販売拠点(事業所)として販売活動を行っている以上,本件アパート等を単なる倉庫業者として擬制することはできないというべきであり(なお,本件の事案は,例えば,米国に居住する個人が,米国に存在する小売業者として,日本国内の顧客と取引を行った上,商品の保管及び引渡しのみを日本国内でしていたような事案とは異なるというべきである。),原告の上記主張を採用することはできない。 なお,原告は,米国に居住している間,本件販売事業について,原告ホームページ等の管理,電子メールによる顧客とのやりとりといった業務を行っている(認定事実(3)イ(イ))が,これらの業務は,原告が,インターネット等を用いることにより,米国にいながらにして,本件アパート等における事業活動を行っていたというべきものであるから,原告が米国において上記業務を行っていたことは,本件擬制企業(原告)が - 60 -本件アパート等を販売拠点(事業所)として事業活 ート等における事業活動を行っていたというべきものであるから,原告が米国において上記業務を行っていたことは,本件擬制企業(原告)が - 60 -本件アパート等を販売拠点(事業所)として事業活動を行っていたことを否定すべき事情には当たらない。 ウ(ア) 上記検討を前提として,本件販売事業につき課税対象となる所得金額を算定するに,原告は,本件販売事業における所得金額等を申告せず,本件調査担当職員が帳簿書類等の提出を繰り返し要求してもこれを拒絶していた(認定事実(4)ア)のであるから,本件擬制企業に配分されるべき所得金額については,実額で計算することはできず,推計の方法によって算出せざるを得ない。なお,日米租税条約7条4項は,課税庁が税務調査によっても恒久的施設に配分されるべき所得金額を決定することができない場合において,課税庁の国の国内法に基づいて当該所得金額が計算されることになる旨を定めたものであって,課税庁が当該所得金額を推計して課税することを予定しているというべきである。 (イ) そこで,本件販売事業につき課税対象となる所得金額,すなわち,本件擬制企業に配分されるべき所得金額の推計方法の合理性についてみるに,被告は,本件販売事業における収入金額(売上金額)に原告所得率を乗じる方法によって,上記所得金額を推計している(認定事実(4)イ(ア))。そして,本件擬制企業に配分されるべき所得金額は,本件擬制企業が,本件アパート等を販売拠点(事業所)として事業活動をした場合において取得したとみられる利得であるところ,原告所得率は,原告が日本国内に居住しながら本件アパートを販売拠点として本件販売事業を営んでいた当時(平成16年分)の青色申告特別控除前の所得金額の総収入金額に占める割合であるから(前提事実(4)ウ(ア)),上記所得金 本国内に居住しながら本件アパートを販売拠点として本件販売事業を営んでいた当時(平成16年分)の青色申告特別控除前の所得金額の総収入金額に占める割合であるから(前提事実(4)ウ(ア)),上記所得金額を推計するに当たって,原告所得率を基礎とすることには合理性があるということができる。そして,上記収入金額が本件税務調査によって把握した実額であり,原告所得率が平成16年分所得 - 61 -税青色申告書に基づき算出されたものであること(認定事実(4)イ(ア))に加えて,平成16年分と本件各係争年分において,本件販売事業の基本的内容に変化はないこと(認定事実(1)ア(イ))を併せ考えれば,本件販売事業における収入金額(売上金額)に原告所得率を乗じる方法によって,本件擬制企業が,本件アパート等を販売拠点(事業所)として事業活動をした場合において取得したとみられる利得を推計する方法には合理性があるということができる。 (ウ)a この点,本件擬制企業が本件アパート等を販売拠点(事業所)として事業活動をした場合において取得したとみられる利得を推計するに当たっては,原告が米国において本件アパート等(本件擬制企業)による事業活動のために支出した費用を考慮に入れる必要があるのではないかが問題となる。 しかしながら,原告が,米国に移住することによって,取扱商品の選択や仕入れに係る業務を効率的に行うことができるようになったことは明らかであり,証拠(甲2,3,9,乙24)及び弁論の全趣旨によれば,原告が米国に移住することは,本件販売事業にとって経済的合理性があったものと推認することができる。さらに,原告が米国に移住したことにより,平成16年当時よりも経費率が増加するなど,課税所得の計算において原告にとって有利に働く事情があったならば,原告としては,当 ったものと推認することができる。さらに,原告が米国に移住したことにより,平成16年当時よりも経費率が増加するなど,課税所得の計算において原告にとって有利に働く事情があったならば,原告としては,当該事情を裏付ける客観的資料を提出するのが自然であるにもかかわらず,原告が帳簿書類等の提出を拒否し(認定事実(4)ア(イ),ウ(ア)),実際,米国における経費を控除すべきであると主張しながら客観的資料を提出していなかったこと(認定事実(4)ウ(イ))を併せ考えれば,原告が米国に移住したことによって,本件販売事業における経費率が増加するなどの事情は存在しないものと事実上推定することができ,これを覆すに足りる事実ないし証拠はない。そうす - 62 -ると,原告の収入金額に原告所得率を乗じることによって所得金額を推計する方法は,いわば控え目な方法による推計であるということができるから,米国における経費等を個別具体的に考慮していないことは,上記推計の合理性を否定する事情には当たらないというべきである。 b また,日米租税条約7条2項に基づき本件擬制企業に配分される所得を算定するに当たっては,本件擬制企業が米国にいる原告と取引をしたものと擬制することになるから,本件擬制企業が米国にいる原告に対し,原告の仕入原価に粗利分を加えた対価を支払うものと観念することになるとも解し得る。 しかしながら,上記対価は,飽くまで日米租税条約7条2項に基づいて観念し得るものであり,仮にこれを算定する場合には,本件アパート等及び米国における事業活動及び経理の具体的状況を把握することが必要不可欠であるところ,原告が,本件税務調査に対し,本件訪問調査における質問以外の協力をせず,帳簿書類等の客観的資料の提出を拒否していたこと(認定事実(4)ア・ウ)に鑑みれば,本件に 握することが必要不可欠であるところ,原告が,本件税務調査に対し,本件訪問調査における質問以外の協力をせず,帳簿書類等の客観的資料の提出を拒否していたこと(認定事実(4)ア・ウ)に鑑みれば,本件において上記対価を試算することは不可能であるといわざるを得ない。このことを前提にした上で,本件販売事業における事業活動(販売活動)は,全て本件アパート等を販売拠点(事業所)としてされたものであり,原告は,インターネット等を用いることにより,米国にいながらにして本件アパート等における事業活動を行っていたという本件販売事業の実態を考慮し,また,原告が米国において本件販売事業に係る所得を申告しておらず(認定事実(3)イ(イ)),前記検討のとおり,原告の収入金額に原告所得率を乗じることによって所得金額を推計する方法は,いわば控え目な方法による推計であることを併せ考えれば,本件擬制企業に配分される所得の算定(推計)に当たり,本件擬制企 - 63 -業が米国にいる原告に支払うべき対価を個別具体的に考慮していないことは,上記推計の合理性を否定する事情には当たらないというべきである。 エ以上によれば,本件については,推計の必要性及び合理性が認められ,被告の主張する所得金額等(別紙3記載2(1)ないし(4))は,適正であるということができる。 3 本件各処分の適法性について(1) 前記検討によれば,本件各係争年分における原告の課税総所得金額及び納付すべき税額は,別紙3記載2(1)ないし(4)の各ウ・エ記載のとおりの金額であると認められ,上記認定に係る納付すべき税額は,いずれも本件各所得税決定処分における納付すべき税額と同額であるから,本件各所得税決定処分はいずれも適法である。 ⑵ 上述のとおり,本件各所得税決定処分はいずれも適法であるところ, 付すべき税額は,いずれも本件各所得税決定処分における納付すべき税額と同額であるから,本件各所得税決定処分はいずれも適法である。 ⑵ 上述のとおり,本件各所得税決定処分はいずれも適法であるところ,本件の全証拠を精査しても,原告が本件各係争年分の所得税について期限内申告書を提出しなかったことについて通則法66条1項の「正当な理由」があると認めるに足りる事実ないし証拠はない。そして,原告の本件各係争年分における無申告加算税の額は,別紙3記載5(1)ないし(4)のとおりであると認めることができ,これらの金額は,いずれも本件各賦課決定処分の無申告加算税の額と同額であるから,本件各賦課決定処分は適法である。 第5 結論以上によれば,原告の請求はいずれも理由がないからこれらを棄却することとし,主文のとおり判決する。 東京地方裁判所民事第2部 裁判長裁判官増田 稔 - 64 - 裁判官村田一広 裁判官不破大輔は,転補につき,署名押印することができない。 裁判長裁判官増田稔 - 65 -(別紙2)関係法令の定め第1 日米租税条約 1 第1条(1) 1項この条約は,この条約に特別の定めがある場合を除くほか,一方又は双方の締約国の居住者である者にのみ適用する。 (2) 2項ないし5項 [省略] 2 第3条(1) 1項この条約の適用上,文脈により別に解釈すべき場合を除くほか,(a)ないし(f) [省略](g) 「企業」は,あらゆる事業の遂行について用いる。 (h) 「一方の締約国の企業」及び「他方の締約国の企業」とは,それぞれ一方の締約国の居住者が営む企業及び他方の締約国の居住者が営む企業 ](g) 「企業」は,あらゆる事業の遂行について用いる。 (h) 「一方の締約国の企業」及び「他方の締約国の企業」とは,それぞれ一方の締約国の居住者が営む企業及び他方の締約国の居住者が営む企業をいう。 (i)ないし(k) [省略](l) 「事業」には,自由職業その他の独立の性格を有する活動を含む。 (m) [省略](2) 2項一方の締約国によるこの条約の適用に際しては,この条約において定義されていない用語は,文脈により別に解釈すべき場合又は両締約国の権限のある当局が第25条の規定に基づきこの条約の適用上の用語の意義について別に合意する場合を除くほか,この条約の適用を受ける租税に関する当該一方の締約国の法令において当該用語がその適用の時点で有する意義を有するも - 66 -のとする。当該一方の締約国において適用される租税に関する法令における当該用語の意義は,当該一方の締約国の他の法令における当該用語の意義に優先するものとする。 3 第5条(1) 1項この条約の適用上,「恒久的施設」とは,事業を行う一定の場所であって企業がその事業の全部又は一部を行っている場所をいう。 (2) 2項「恒久的施設」には,特に,次のものを含む。 (a) 事業の管理の場所(b) 支店(c) 事務所(d) 工場(e) 作業場(f) 鉱山,石油又は天然ガスの坑井,採石場その他天然資源を採取する場所(3) 3項 〔省略〕(4) 4項1項から3項までの規定にかかわらず,「恒久的施設」には,次のことは,含まないものとする。 (a) 企業に属する物品又は商品の保管,展示又は引渡しのためにのみ施設を使用すること(b) 企業に属する物品又は商品の在庫を保管,展示又は引渡しのためにのみ保有すること(c) 企 する。 (a) 企業に属する物品又は商品の保管,展示又は引渡しのためにのみ施設を使用すること(b) 企業に属する物品又は商品の在庫を保管,展示又は引渡しのためにのみ保有すること(c) 企業に属する物品又は商品の在庫を他の企業による加工のためにのみ保有すること(d) 企業のために物品若しくは商品を購入し又は情報を収集することのみを - 67 -目的として,事業を行う一定の場所を保有すること(e) 企業のためにその他の準備的又は補助的な性格の活動を行うことのみを目的として,事業を行う一定の場所を保有すること(f) (a)から(e)までに掲げる活動を組み合わせた活動を行うことのみを目的として,事業を行う一定の場所を保有すること。ただし,当該一定の場所におけるこのような組合せによる活動の全体が準備的又は補助的な性格のものである場合に限る。 (5) 5項ないし7項 〔省略〕 4 第7条(1) 1項一方の締約国の企業の利得に対しては,その企業が他方の締約国内にある恒久的施設を通じて当該他方の締約国内において事業を行わない限り,当該一方の締約国においてのみ租税を課することができる。一方の締約国の企業が他方の締約国内にある恒久的施設を通じて当該他方の締約国内において事業を行う場合には,その企業の利得のうち当該恒久的施設に帰せられる部分に対してのみ,当該他方の締約国において租税を課することができる。 (2) 2項3項の規定に従うことを条件として,一方の締約国の企業が他方の締約国内にある恒久的施設を通じて当該他方の締約国内において事業を行う場合には,当該恒久的施設が,同一又は類似の条件で同一又は類似の活動を行う別個のかつ分離した企業であって,当該恒久的施設を有する企業と全く独立の立場で取引を行うものであるとしたなら おいて事業を行う場合には,当該恒久的施設が,同一又は類似の条件で同一又は類似の活動を行う別個のかつ分離した企業であって,当該恒久的施設を有する企業と全く独立の立場で取引を行うものであるとしたならば当該恒久的施設が取得したとみられる利得が,各締約国において当該恒久的施設に帰せられるものとする。 (3) 3項恒久的施設の利得を決定するに当たっては,経営費及び一般管理費を含む費用で当該恒久的施設のために生じたものは,当該恒久的施設が存在する締 - 68 -約国内において生じたものであるか他の場所において生じたものであるかを問わず,控除することが認められる。 (4) 4項一方の締約国の権限のある当局が入手することができる情報が恒久的施設に帰せられる利得を決定するために十分でない場合には,この条のいかなる規定も,当該恒久的施設を有する者の納税義務の決定に関する当該締約国の法令の適用に影響を及ぼすものではない。ただし,当該情報に基づいて恒久的施設の利得を決定する場合には,この条に定める原則に従うものとする。 (5) 5項恒久的施設が企業のために物品又は商品の単なる購入を行ったことを理由としては,いかなる利得も,当該恒久的施設に帰せられることはない。 (6) 6項及び7項 〔省略〕 5 第22条(1) 1項一方の締約国の居住者で他方の締約国において所得を取得するものは,この条約の特典を受けるために別に定める要件を満たし,かつ,次の(a)から(f)までに掲げる者のいずれかに該当する場合に限り,各課税年度において,この条約の特典(この条約の他の条の規定により締約国の居住者に対して認められる特典に限る。以下この条において同じ。)を受ける権利を有する。ただし,この条約の特典を受けることに関し,この条に別段の定めがある場合は, この条約の他の条の規定により締約国の居住者に対して認められる特典に限る。以下この条において同じ。)を受ける権利を有する。ただし,この条約の特典を受けることに関し,この条に別段の定めがある場合は,この限りでない。 (a) 個人(b)ないし(f) 〔省略〕(2) 2項ないし5項 〔省略〕第2 租税条約の実施に伴う所得税法,法人税法及び地方税法の特例等に関する法律(平成22年法律第6号による改正前のもの。以下「実特法」という。) - 69 -第12条(実施規定)第2条から前条までに定めるもののほか,租税条約の実施及びこの法律の適用に関し必要な事項は,総務省令,財務省令で定める。 第3 租税条約の実施に伴う所得税法,法人税法及び地方税法の特例等に関する法律の施行に関する省令(平成22年総務省,財務省令第1号による改正前のもの。以下「実特法省令」という。)第9条の2(申告納税に係る所得税又は法人税につき特典条項に係る規定の適用を受ける者の届出等)(1) 1項相手国居住者等は,その有する国内源泉所得(〔括弧書き内省略〕)のうち,所得税法第165条又は法人税法第142条の規定の適用を受けるもの(以下この条において「申告対象国内源泉所得」という。)に対する所得税又は法人税につき当該相手国居住者等に係る相手国との間の租税条約の規定(特典条項の適用があるものに限る。以下第9条の9までにおいて「特定規定」という。)に基づき軽減又は免除を受けようとする場合には,その適用を受けようとする年分の所得税法第2条第1項第37号に規定する確定申告書(〔中略〕以下第9条の4までにおいて「所得税確定申告書」という。)又は事業年度の法人税法第2条第30号に規定する中間申告書で同法第72条第1項各号に掲げる事項を記載したもの(〔括弧書き内 定申告書(〔中略〕以下第9条の4までにおいて「所得税確定申告書」という。)又は事業年度の法人税法第2条第30号に規定する中間申告書で同法第72条第1項各号に掲げる事項を記載したもの(〔括弧書き内省略〕)若しくは同法第2条第31号に規定する確定申告書(〔括弧書き内省略〕)に,次の第1号から第9号までに掲げる事項を記載した届出書(次の第10号及び第11号に掲げる書類の添付があるものに限る。 以下この条において「適用届出書等」という。)を添付しなければならない。 一ないし十一 〔省略〕(2) 2項 - 70 -前項に規定する特典条項とは,非居住者又は外国法人の有する国内源泉所得に対する租税の軽減又は免除を定める租税条約の規定の適用に関する条件を定める当該租税条約の規定であって総務大臣及び財務大臣が定めるものをいう。 (3) 3項ないし6項 〔省略〕(4) 7項相手国居住者等である個人で,その有する申告対象国内源泉所得に対する所得税につき第1項に規定する租税条約の特定規定に基づき免除を受けようとするものは,その適用を受けようとする年分の所得税確定申告書を提出している場合を除き,同項第1号から第9号までに掲げる事項に準ずる事項を記載した届出書(特典条項関係書類の添付があるものに限る。次項において「特例届出書等」という。)を,その年の翌年三月十五日までに,その者の所得税の納税地の所轄税務署長に提出しなければならない。 (5) 8項ないし10項 〔省略〕第4 租税条約の実施に伴う所得税法,法人税法及び地方税法の特例等に関する法律の施行に関する省令第9条の2第2項の規定に基づき,同項に規定する総務大臣及び財務大臣が定める規定(平成16年総務省,財務省告示第2号。平成22年総務省,財務省告示第1号による改正前のもの。以下「本 の施行に関する省令第9条の2第2項の規定に基づき,同項に規定する総務大臣及び財務大臣が定める規定(平成16年総務省,財務省告示第2号。平成22年総務省,財務省告示第1号による改正前のもの。以下「本件総務大臣等告示」という。)租税条約の実施に伴う所得税法,法人税法及び地方税法の特例等に関する法律の施行に関する省令(昭和44年大蔵省/自治省令第1号)第9条の2第2項の規定に基づき,同項に規定する総務大臣及び財務大臣が定める規定を次のように定め,平成16年4月1日から適用する。 一所得に対する租税に関する二重課税の回避及び脱税の防止のための日本国政府とアメリカ合衆国政府との間の条約第22条1,2及び4二ないし四 〔省略〕 - 71 -第5 所得税法 1 第2条(定義)(1) 1項この法律において,次の各号に掲げる用語の意義は,当該各号に定めるところによる。 一国内この法律の施行地をいう。 二国外この法律の施行地外の地域をいう。 三居住者国内に住所を有し,又は現在まで引き続いて1年以上居所を有する個人をいう。 四 [省略]五非居住者居住者以外の個人をいう。 六ないし四十八 [省略](2) 2項 [省略] 2 第5条(納税義務者)(1) 1項居住者は,この法律により,所得税を納める義務がある。 (2) 2項ア平成19年法律第6号による改正前のもの(平成17年分及び平成18年分について)非居住者は,第161条(国内源泉所得)に規定する国内源泉所得(以下この条において「国内源泉所得」という。)を有するときは,この法律により,所得税を納める義務がある。 イ平成19年法律第6号による改正後のもの(平成19年分及び平成20年分について)非居住者は,次に掲げる場合には,こ 得」という。)を有するときは,この法律により,所得税を納める義務がある。 イ平成19年法律第6号による改正後のもの(平成19年分及び平成20年分について)非居住者は,次に掲げる場合には,この法律により,所得税を納める義務がある。 - 72 -一第161条(国内源泉所得)に規定する国内源泉所得([括弧内省略])を有するとき([括弧内省略])二 [省略](3) 3項及び4項 [省略] 3 第7条(課税所得の範囲)(1) 1項所得税は,次の各号に掲げる者の区分に応じ当該各号に定める所得について課する。 一及び二 [省略]三非居住者第164条第1項各号(非居住者に対する課税の方法)に掲げる非居住者の区分に応じそれぞれ同項各号及び同条第2項各号に掲げる国内源泉所得四及び五[省略](2) 2項 [省略] 4 第86条(基礎控除)(1) 1項居住者については,その者のその年分の総所得金額,退職所得金額又は山林所得金額から38万円を控除する。 (2) 2項前項の規定による控除は,基礎控除という。 5 第156条(推計による更正又は決定)税務署長は,居住者に係る所得税につき更正又は決定をする場合には,その者の財産若しくは債務の増減の状況,収入若しくは支出の状況又は生産量,販売量その他の取扱量,従業員数その他事業の規模によりその者の各年分の各種所得の金額又は損失の金額(その者の提出した青色申告書に係る年分の不動産 - 73 -所得の金額,事業所得の金額及び山林所得の金額並びにこれらの金額の計算上生じた損失の金額を除く。)を推計して,これをすることができる。 6 第161条(国内源泉所得)この編において「国内源泉所得」とは,次に掲げるものをいう。 一国内において行う事業から生じ 算上生じた損失の金額を除く。)を推計して,これをすることができる。 6 第161条(国内源泉所得)この編において「国内源泉所得」とは,次に掲げるものをいう。 一国内において行う事業から生じ,又は国内にある資産の運用,保有若しくは譲渡により生ずる所得(次号から第12号までに該当するものを除く。)その他その源泉が国内にある所得として政令で定めるもの二ないし十二 [省略] 7 第162条(租税条約に異なる定めがある場合の国内源泉所得)日本国が締結した所得に対する租税に関する二重課税防止のための条約において国内源泉所得につき前条の規定と異なる定めがある場合には,その条約の適用を受ける者については,同条の規定にかかわらず,国内源泉所得は,その異なる定めがある限りにおいて,その条約に定めるところによる。この場合において,その条約が同条第2号から第12号までの規定に代わって国内源泉所得を定めているときは,この法律中これらの号に規定する事項に関する部分の適用については,その条約により国内源泉所得とされたものをもってこれに対応するこれらの号に掲げる国内源泉所得とみなす。 8 第164条(非居住者に対する課税の方法)(1) 1項非居住者に対して課する所得税の額は,次の各号に掲げる非居住者の区分に応じ当該各号に掲げる国内源泉所得について,次節第一款(非居住者に対する所得税の総合課税)の規定を適用して計算したところによる。 一国内に支店,工場その他事業を行う一定の場所で政令で定めるものを有する非居住者すべての国内源泉所得二ないし四 [省略](2) 2項 [省略] - 74 - 9 第165条(総合課税に係る所得税の課税標準,税額等の計算)前条第1項各号に掲げる非居住者の当該各号に掲げる国内源泉所得について課する所 省略](2) 2項 [省略] - 74 - 9 第165条(総合課税に係る所得税の課税標準,税額等の計算)前条第1項各号に掲げる非居住者の当該各号に掲げる国内源泉所得について課する所得税(以下この節において「総合課税に係る所得税」という。)の課税標準及び所得税の額は,当該各号に掲げる国内源泉所得について,政令で定めるところにより,前編第一章から第四章まで(居住者に係る所得税の課税標準,税額等の計算)([括弧内省略])の規定に準じて計算した金額とする。 第168条(更正及び決定)前編第7章(居住者に係る更正及び決定)の規定は,非居住者の総合課税に係る所得税についての更正又は決定について準用する。 第6 所得税法施行令 1 第279条(国内において行なう事業から生ずる所得)(1) 1項国内及び国外の双方にわたって事業を行なう個人については,次の各号に掲げる場合の区分に応じ当該各号に掲げる所得は,その個人の法第161条第1号(国内源泉所得)に規定する国内において行なう事業から生ずる所得とする。 一その個人が国外において譲渡を受けたたな卸資産(動産に限る。以下この条において同じ。)につき国外において製造,加工,育成その他の価値を増加させるための行為(以下この条において「製造等」という。)をしないで,これを国内において譲渡する場合(当該たな卸資産につき国内において製造等をして,その製造等により取得したたな卸資産を譲渡する場合を含む。) その国内における譲渡により生ずるすべての所得二ないし七 [省略](2) 2項 [省略](3) 3項第1項に規定する個人が次に掲げる行為をする場合には,当該行為からは - 75 -所得が生じないものとして,同項の規定を適用する。 一その個人が国内又は国外にお [省略](3) 3項第1項に規定する個人が次に掲げる行為をする場合には,当該行為からは - 75 -所得が生じないものとして,同項の規定を適用する。 一その個人が国内又は国外において行なう事業のためにそれぞれ国外又は国内において行なう広告,宣伝,情報の提供,市場調査,基礎的研究その他当該事業の遂行にとつて補助的な機能を有する行為二その個人が国内又は国外において行なう事業に属する金銭,工業所有権その他の資産をそれぞれその個人が国外又は国内において行なう事業の用に供する行為(4) 4項第1項第1号若しくは第2号又は第2項に規定するたな卸資産について次に掲げる事実のいずれかがある場合には,国内において当該資産の譲渡があったものとして,これらの規定を適用する。 一譲受人に対する引渡しの時の直前において,その引渡しに係るたな卸資産が国内にあり,又は譲渡人である個人の国内において行なう事業(その個人の法第164条第1項第1号(国内に恒久的施設を有する非居住者)に規定する事業を行なう一定の場所を通じて国内において行なう事業又は同項第2号若しくは第3号に規定する事業をいう。)を通じて管理されていたこと。 二譲渡に関する契約が国内において締結されたこと。 三譲渡に関する契約を締結するための注文の取得,協議その他の行為のうちの重要な部分が国内においてされたこと。 (5) 5項及び6項 [省略] 2 第289条(非居住者の有する支店その他事業を行なう一定の場所)(1) 1項法第164条第1項第1号(非居住者に対する課税の方法)に規定する政令で定める場所は,次に掲げる場所とする。 一支店,出張所その他の事業所若しくは事務所,工場又は倉庫(倉庫業者 - 76 -がその事業の用に供するものに限る。)二 税の方法)に規定する政令で定める場所は,次に掲げる場所とする。 一支店,出張所その他の事業所若しくは事務所,工場又は倉庫(倉庫業者 - 76 -がその事業の用に供するものに限る。)二鉱山,採石場その他の天然資源を採取する場所三その他事業を行なう一定の場所で前二号に掲げる場所に準ずるもの(2) 2項次に掲げる場所は,前項の場所に含まれないものとする。 一非居住者がその資産を購入する業務のためにのみ使用する一定の場所二非居住者がその資産を保管するためにのみ使用する一定の場所三非居住者が広告,宣伝,情報の提供,市場調査,基礎的研究その他その事業の遂行にとつて補助的な機能を有する事業上の活動を行なうためにのみ使用する一定の場所第7 国税通則法(以下「通則法」という。) 1 第66条(無申告加算税)(1) 1項ア平成18年法律第10号による改正前のもの(平成17年分について)次の各号の一に該当する場合には,当該納税者に対し,当該各号に規定する申告,更正又は決定に基づき第35条第2項(期限後申告等による納付)の規定により納付すべき税額に100分の15の割合を乗じて計算した金額に相当する無申告加算税を課する。ただし,期限内申告書の提出がなかったことについて正当な理由があると認められる場合は,この限りでない。 一期限後申告書の提出又は第25条(決定)の規定による決定があった場合二期限後申告書の提出又は第25条の規定による決定があった後に修正申告書の提出又は更正があった場合イ平成18年法律第10号による改正後のもの(平成18年分ないし平成20年分について) - 77 -次の各号のいずれかに該当する場合には,当該納税者に対し,当該各号に規定する申告,更正又は決定に基づき第35条 0号による改正後のもの(平成18年分ないし平成20年分について) - 77 -次の各号のいずれかに該当する場合には,当該納税者に対し,当該各号に規定する申告,更正又は決定に基づき第35条第2項(期限後申告等による納付)の規定により納付すべき税額に100分の15の割合を乗じて計算した金額に相当する無申告加算税を課する。ただし,期限内申告書の提出がなかったことについて正当な理由があると認められる場合は,この限りでない。 一期限後申告書の提出又は第25条(決定)の規定による決定があった場合二期限後申告書の提出又は第25条の規定による決定があった後に修正申告書の提出又は更正があった場合(2) 2項[平成18年法律第10号による改正後のもの(平成18年分ないし平成20年分について)]前項の規定に該当する場合において,同項に規定する納付すべき税額(同項第2号の修正申告書の提出又は更正があったときは,その国税に係る累積納付税額を加算した金額)が50万円を超えるときは,同項の無申告加算税の額は,同項の規定にかかわらず,同項の規定により計算した金額に,当該超える部分に相当する税額(同項に規定する納付すべき税額が当該超える部分に相当する税額に満たないときは,当該納付すべき税額)に100分の5の割合を乗じて計算した金額を加算した金額とする。 (3) 3項ないし6項 [省略] 2 第118条(国税の課税標準の端数計算等)(1) 1項国税(印紙税及び附帯税を除く。以下この条において同じ。)の課税標準(その税率の適用上課税標準から控除する金額があるときは,これを控除した金額。以下この条において同じ。)を計算する場合において,その額に1000円未満の端数があるとき,又はその全額が1000円未満であるとき - 78 -は, する金額があるときは,これを控除した金額。以下この条において同じ。)を計算する場合において,その額に1000円未満の端数があるとき,又はその全額が1000円未満であるとき - 78 -は,その端数金額又はその全額を切り捨てる。 (2) 2項 [省略](3) 3項附帯税の額を計算する場合において,その計算の基礎となる税額に1万円未満の端数があるとき,又はその税額の全額が1万円未満であるときは,その端数金額又はその全額を切り捨てる。 第8 特定商取引に関する法律(平成20年法律第74号による改正前のもの。以下「特定商取引法」という。) 1 第2条(定義)(1) 1項 [省略](2) 2項この章[中略]において「通信販売」とは,販売業者又は役務提供事業者が郵便その他の経済産業省令で定める方法(以下「郵便等」という。)により売買契約又は役務提供契約の申込みを受けて行う指定商品若しくは指定権利の販売又は指定役務の提供であって電話勧誘販売に該当しないものをいう。 (3) 3項及び4項 [中略] 2 第11条(通信販売についての広告)(1) 1項販売業者又は役務提供事業者は,通信販売をする場合の指定商品若しくは指定権利の販売条件又は指定役務の提供条件について広告をするときは,経済産業省令で定めるところにより,当該広告に,当該商品若しくは当該権利又は当該役務に関する次の事項を表示しなければならない。ただし,当該広告に,請求により,これらの事項を記載した書面を遅滞なく交付し,又はこれらの事項を記録した電磁的記録([括弧内省略])を遅滞なく提供する旨の表示をする場合には,販売業者又は役務提供事業者は,経済産業省令で定めるところにより,これらの事項の一部を表示しないことができる。 - 79 -一商品若しくは権 ])を遅滞なく提供する旨の表示をする場合には,販売業者又は役務提供事業者は,経済産業省令で定めるところにより,これらの事項の一部を表示しないことができる。 - 79 -一商品若しくは権利の販売価格又は役務の対価(販売価格に商品の送料が含まれない場合には,販売価格及び商品の送料)二商品若しくは権利の代金又は役務の対価の支払の時期及び方法三商品の引渡時期若しくは権利の移転時期又は役務の提供時期四商品の引渡し又は権利の移転後におけるその引取り又は返還についての特約に関する事項(その特約がない場合には,その旨)五前各号に掲げるもののほか,経済産業省令で定める事項(2) 2項[省略]第9 特定商取引に関する法律施行規則(平成20年経済産業省令第74号による改正前のもの。以下「特定商取引法施行規則」という。)第8条(通信販売についての広告)(1) 1項特定商取引法11条1項5号の経済産業省令で定める事項は,次のとおりとする。 一販売業者又は役務提供事業者の氏名又は名称,住所及び電話番号二ないし十 [省略](2) 2項 [省略]以上 - 80 -(別紙3)本件各処分の根拠及び適法性(被告の主張) 1 推計課税の必要性について本件調査担当職員は,平成20年10月8日に本件調査を開始して以後,原告に対し,調査協力及び帳簿書類等の提示を再三にわたり求めたにもかかわらず,原告は,本件各係争年分に係る帳簿書類等を提示しなかった。したがって,処分行政庁は,本件各係争年分に係る原告の所得金額を実額で把握することができなかったのであり,本件について,推計課税の必要性が認められることは明らかである。 2 本件各所得税決定処分の根拠について被告が本件訴訟において主張する原告の本 得金額を実額で把握することができなかったのであり,本件について,推計課税の必要性が認められることは明らかである。 2 本件各所得税決定処分の根拠について被告が本件訴訟において主張する原告の本件各係争年分の所得税額等は,次のとおりである。 (1) 平成17年分ア総所得金額 1801万5586円上記金額は,事業所得の金額であり,その算出過程は次のとおりである。 事業所得の金額は,事業所得の総収入金額1億2685万9852円に,原告の平成16年分所得税青色申告決算書(乙26)の事業所得に係る総収入金額8231万1987円に占める青色申告特別控除前の所得金額1175万6853円の割合(原告所得率)14.28%(小数点第2位未満切捨て)を乗じて算出した金額から青色申告特別控除の額10万円を差し引いた金額である(別表2「事業所得の金額」の「平成17年分」欄参照)。 イ所得控除の額 38万円上記金額は,所得税法165条の規定により非居住者に準用される同法86条に規定する基礎控除の金額である。 - 81 -ウ課税総所得金額 1763万5000円上記金額は,上記アの総所得金額1801万5586円から上記イの所得控除の額38万円を控除した後の金額(ただし,通則法118条1項の規定により1000円未満の端数を切り捨てた後のもの。)である。 エ納付すべき税額 381万0500円上記金額は,次の(ア)の金額から(イ)の金額を差し引いた後の金額である。 (ア) 課税総所得金額に対する税額 406万0500円上記金額は,上記ウの課税総所得金額1763万5000円に所得税法(平 )の金額から(イ)の金額を差し引いた後の金額である。 (ア) 課税総所得金額に対する税額 406万0500円上記金額は,上記ウの課税総所得金額1763万5000円に所得税法(平成18年法律第10号による改正前のもの)89条1項の税率を乗じて算出した金額である。 (イ) 定率減税額 25万円上記金額は,経済社会の変化等に対応して早急に講ずべき所得税及び法人税の負担軽減措置に関する法律(平成17年法律第21号による改正前のもの。なお,上記の負担軽減措置に関する法律〔以下「負担軽減措置法」という。〕は,平成18年法律第10号により廃止された。)6条2項により算出した金額である。 (2) 平成18年分ア総所得金額 1649万7524円上記金額は,事業所得の金額であり,事業所得の総収入金額1億1622万9166円に,原告所得率14.28%を乗じて算出した金額から青色申告特別控除の額10万円を差し引いた金額である(別表2の「平成18年分」欄参照)。 イ所得控除の額 38万円上記金額は,所得税法165条の規定により非居住者に準用される同法86条に規定する基礎控除の金額である。 - 82 -ウ課税総所得金額 1611万7000円上記金額は,上記アの総所得金額1649万7524円から上記イの所得控除の額38万円を控除した後の金額(ただし,通則法118条1項の規定により1000円未満の端数を切り捨てた後のもの。)である。 エ納付すべき税額 348万0100円上記金額は,次の(ア)の金額から(イ)の金額を差し引いた後の金額である。 000円未満の端数を切り捨てた後のもの。)である。 エ納付すべき税額 348万0100円上記金額は,次の(ア)の金額から(イ)の金額を差し引いた後の金額である。 (ア) 課税総所得金額に対する税額 360万5100万円上記金額は,上記ウの課税総所得金額1611万7000円に所得税法(平成18年法律第10号による改正前のもの)89条1項の税率を乗じて算出した金額である。 (イ) 定率減税額 12万5000円上記金額は,負担軽減措置法6条2項により算出した金額である。 (3) 平成19年分ア総所得金額 1547万0424円上記金額は,事業所得の金額であり,事業所得の総収入金額1億0903万6587円に,原告所得率14.28%を乗じて算出した金額から青色申告特別控除の額10万円を差し引いた金額である(別表2の「平成19年分」欄参照)。 イ所得控除の額 38万円上記金額は,所得税法165条の規定により非居住者に準用される同法86条に規定する基礎控除の金額である。 ウ課税総所得金額 1509万円上記金額は,上記アの総所得金額1547万0424円から上記イの所得控除の額38万円を控除した後の金額(ただし,通則法118条1項の規定により1000円未満の端数を切り捨てた後のもの。)である。 - 83 -エ納付すべき税額 344万3700円上記金額は,上記ウの課税総所得金額1509万円に所得税法(平成25年法律第5号による改正前のもの)89条1項の税率を乗じて算出した金額である。 (4) 平成2 344万3700円上記金額は,上記ウの課税総所得金額1509万円に所得税法(平成25年法律第5号による改正前のもの)89条1項の税率を乗じて算出した金額である。 (4) 平成20年分ア総所得金額 1299万0510円上記金額は,事業所得の金額であり,事業所得の総収入金額9167万0241円に,原告所得率14.28%を乗じて算出した金額から青色申告特別控除の額10万円を差し引いた金額である(別表2の「平成20年分」欄参照)。 イ所得控除の額 38万円上記金額は,所得税法165条の規定により非居住者に準用される同法86条に規定する基礎控除の金額である。 ウ課税総所得金額 1261万円上記金額は,上記アの総所得金額1299万0510円から上記イの所得控除の額38万円を控除した後の金額(ただし,通則法118条1項の規定により1000円未満の端数を切り捨てた後のもの。)である。 エ納付すべき税額 262万5300円上記金額は,上記ウの課税総所得金額1261万円に所得税法(平成25年法律第5号による改正前のもの)89条1項の税率を乗じて算出した金額である。 3 推計課税の合理性について本件における推計の方法は,原告の平成16年分の事業所得に係る青色申告特別控除前の所得金額の総収入金額に占める割合を本人比率(原告所得率)として算出して,本件調査により把握した本件各係争年分における原告の事業所得の総収入金額に当該本人比率(原告所得率)を乗じて原告の所得金額を算出 - 84 -するというものである。そして,① 平成16年分の原告の申告が所得税法143条に規定す における原告の事業所得の総収入金額に当該本人比率(原告所得率)を乗じて原告の所得金額を算出 - 84 -するというものである。そして,① 平成16年分の原告の申告が所得税法143条に規定する青色申告であって,申告内容に正確性が認められること,② 平成16年分に係る本件販売事業の総収入金額は,8231万1987円であって,本件各所得税決定処分の各総収入金額(別表2の各年分の「①総収入金額」欄参照)との間に大差がないこと,③ 本件販売事業は,平成16年10月23日に原告が出国する前後において,本件アパート等を賃借して在庫販売形態により外国製自動車用品をインターネットを通じて販売するという基本的内容,態様の変更がないことからすると,原告所得率を用いた本件における推計の方法は合理的である。 4 本件各所得税決定処分の適法性について被告が,本訴において主張する原告の本件各係争年分の所得税の納付すべき税額は,それぞれ,① 平成17年分 381万0500円(前記2(1)エ),②平成18年分 348万0100円(前記2(2)エ),③ 平成19年分 344万3700円(前記2(3)エ),④ 平成20年分 262万5300円(前記2(4)エ)であるところ,これらの金額は,いずれも本件各所得税決定処分における納付すべき税額(別表1の本件各係争年分の「決定処分等」の「納付すべき税額」欄参照)と同額であるから,本件各所得税決定処分は,いずれも適法である。 5 本件各賦課決定処分の根拠及び適法性について上記4で述べたとおり,本件各所得税決定処分はいずれも適法であるところ,原告が本件各係争年分の所得税について期限内申告書を提出しなかったことにつき通則法(平成17年分につき平成18年法律第10号改正前のもの。)66条1項の「正当な理由」があるとは も適法であるところ,原告が本件各係争年分の所得税について期限内申告書を提出しなかったことにつき通則法(平成17年分につき平成18年法律第10号改正前のもの。)66条1項の「正当な理由」があるとは認められない。 被告が本訴において主張する原告の本件各係争年分の無申告加算税の額は,次の(1)ないし(4)記載のとおりであるところ,これらの金額は,いずれも本件各賦課決定処分の無申告加算税の額(別表1の本件各係争年分の「決定処分等」 - 85 -の「無申告加算税の額」欄参照)と同額であるから,本件各賦課決定処分は適法である。 (1) 平成17年分 57万1500円上記金額は,通則法(平成18年法律第10号による改正前のもの)66条1項の規定に基づき,原告の平成17年分の所得税の決定処分に係る納付すべき税額381万円(ただし,同法118条3項の規定により1万円未満の端数を切り捨てた後のもの)に100分の15の割合を乗じて計算した金額である。 (2) 平成18年分 67万1000円上記金額は,通則法66条1項の規定に基づき,原告の平成18年分の所得税の決定処分に係る納付すべき税額348万円(ただし,同法118条3項の規定により1万円未満の端数を切り捨てた後のもの)に100分の15の割合を乗じて計算した金額52万2000円と,同法66条2項の規定に基づき上記納付すべき税額348万0100円のうち50万円を超える部分に相当する税額298万円(ただし,同法118条3項の規定により1万円未満の端数を切り捨てた後のもの)に100分の5の割合を乗じて計算した金額14万9000円との合計額である。 (3) 平成19年分 66万3000円 より1万円未満の端数を切り捨てた後のもの)に100分の5の割合を乗じて計算した金額14万9000円との合計額である。 (3) 平成19年分 66万3000円上記金額は,通則法66条1項の規定に基づき,原告の平成19年分の所得税の決定処分に係る納付すべき税額344万円(ただし,同法118条3項の規定により1万円未満の端数を切り捨てた後のもの)に100分の15の割合を乗じて計算した金額51万6000円と,同法66条2項の規定に基づき上記納付すべき税額344万3700円のうち50万円を超える部分に相当する税額294万円(ただし,同法118条3項の規定により1万円未満の端数を切り捨てた後のもの)に100分の5の割合を乗じて計算した金額14万7000円との合計額である。 - 86 -(4) 平成20年分 49万9000円上記金額は,通則法66条1項の規定に基づき,原告の平成20年分の所得税の決定処分に係る納付すべき税額262万円(ただし,同法118条3項の規定により1万円未満の端数を切り捨てた後のもの)に100分の15の割合を乗じて計算した金額39万3000円と,同法66条2項の規定に基づき上記納付すべき税額262万5300円のうち50万円を超える部分に相当する税額212万円(ただし,同法118条3項の規定により1万円未満の端数を切り捨てた後のもの)に100分の5の割合を乗じて計算した金額10万6000円との合計額である以上
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