令和6(行コ)24 出席停止処分差止め請求控訴事件、同附帯控訴事件

裁判年月日・裁判所
令和6年8月28日 大阪高等裁判所 棄却 奈良地方裁判所 令和4(行ウ)14
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判決文本文7,339 文字)

令和6年(行コ)第24号、同第83号出席停止処分差止め請求控訴事件、同附帯控訴事件令和6年8月28日大阪高等裁判所第10民事部判決 主文 1 本件控訴及び附帯控訴をいずれも棄却する。 2 控訴費用は、控訴人(附帯被控訴人)の負担とし、附帯控訴費用は、被控訴人(附帯控訴人)の負担とする。 事実及び 理由 第1 控訴の趣旨 1 原判決中控訴人敗訴部分を取り消す。 2 上記部分につき、被控訴人の請求を棄却する。 第2 附帯控訴の趣旨 1 原判決を次のとおり変更する。 2 附帯被控訴人は、附帯控訴人に対し、330万円及びこれに対する令和4年12月5日から支払済みまで年3%の割合による金員を支払え。 第3 事案の概要(略称は、原判決の表記に従う。) 1 市議会は、市議会議員である被控訴人(附帯控訴人、以下「被控訴人」という。)の香芝市教育福祉委員会における発言が懲罰事由に当たるとして、被控訴人に対して陳謝の懲罰を科したが、被控訴人は、陳謝文の朗読を拒否した。市議会は、その朗読拒否を懲罰事由として新たに被控訴人に陳謝の懲罰を科したが、被控訴人が陳謝文の朗読を拒否し、市議会が更に被控訴人に陳謝の懲罰を科すということが繰り返された。市議会は、合計5回の陳謝の懲罰を被控訴人に科した後の令和 4年12月5日、5回目の陳謝の懲罰に係る陳謝文の朗読拒否を懲罰事由として、被控訴人に対し、4日間の出席停止の懲罰の処分(以下「本件処分」という。)をした。 本件は、被控訴人が、本件処分が違法であると主張して、控訴人(附帯被控訴人、以下「控訴人」という。)に対し、国家賠償法(以下「国賠法」という。)1条1項に基づき、慰謝料及び弁護士費用合計330万円並びにこ 被控訴人が、本件処分が違法であると主張して、控訴人(附帯被控訴人、以下「控訴人」という。)に対し、国家賠償法(以下「国賠法」という。)1条1項に基づき、慰謝料及び弁護士費用合計330万円並びにこれに対する令和4年12月5日(本件処分の日)から支払済みまで民法所定の年3%の割合による遅延損害金の支払を求める事案である。 原審は、被控訴人の請求につき、控訴人に、33万円及びこれに対する令和4年12月5日から支払済みまで年3%の割合による金員の支払を命じる限度で認容し、その余の請求を棄却したところ、控訴人がこれを不服として控訴し、被控訴人は附帯控訴した。 2 事案の概要は、原判決「事実及び理由」中の第2記載のとおりであるから、これを引用する。ただし、原判決中「別紙」とあるのをいずれも「原判決別紙」と読み替える。 3 控訴人の当審における補充主張①法律上の争訟である出席停止処分の違法判断の前提であっても、議会の内部的な規律事項である陳謝に対し司法権は及ばないはずであり、原判決は判例に違反する、すなわち、最高裁昭和35年10月19日大法廷判決・民集14巻12号2633頁(以下「昭和35年最高裁判決」という。)は、出席停止処分の一般的類型的な性質に着目しておよそ例外なく司法審査を認めないとするものであるから、当然の論理帰結として、陳謝に関しても、例外なく司法審査の対象外とする趣旨とみるのが相当である、最高裁平成31年2月14日判決・民集73巻2 号123頁(以下「平成31年最高裁判決」という。)も同趣旨である、②出席停止処分の法的評価の前提として陳謝に対する法的評価を必要不可欠とするのであれば、議会の判断を尊重してそれを前提に判断し評価すれば足り、例外を考える必要はない、③陳謝に対する司法審査を認めることは、それだけで 的評価の前提として陳謝に対する法的評価を必要不可欠とするのであれば、議会の判断を尊重してそれを前提に判断し評価すれば足り、例外を考える必要はない、③陳謝に対する司法審査を認めることは、それだけで議会に対する司法権の干渉となって懲罰に対する議会の内部的自律性を侵害し、民意を代弁する議員活動の萎縮を招くこととなるところ、陳謝については、議員としての中核的な議会活動を制限するものではなく、出席停止処分と同様の司法審査による議会干渉が許されるものではない。 4 被控訴人の当審における補充主張原判決は、市議会の議事に出席できなかったことにより被控訴人が地方議員として被った精神的苦痛を過少に評価している、出席停止の懲罰は、当該議員個人にとって不本意であったというにとどまらず、住民の負託を受けた議員としてその責務を十分に果たすことができなくなるという側面があるのであり、総体としてより大きな精神的苦痛を被るものと評価するべきである。また、原判決は、懲罰の事実が公表され、市民からの信用が失墜し、それにより被控訴人が被る精神的苦痛を過少に評価している。本件では、特に市議会の多数派議員は、仮の差止め申立て却下決定が、出席停止処分を行うのは裁量権の逸脱濫用となる疑いが強いと指摘しているにもかかわらず、それを無視して第6懲罰動議に関する特別委員会を開くなどしたもので、違法性は極めて強い。 以上の点に鑑みれば、被控訴人が被った多大な精神的苦痛に対する慰謝料は、300万円を下らないというべきである。 第4 当裁判所の判断 1 当裁判所も、控訴人の本件控訴を棄却し、被控訴人の附帯控訴を棄却するのが相当であると判断する。 その理由は、以下のとおり、原判決を補正するほかは、原判決「事実及び理由」中の第3のとおりであるから、これを引用す 控訴人の本件控訴を棄却し、被控訴人の附帯控訴を棄却するのが相当であると判断する。 その理由は、以下のとおり、原判決を補正するほかは、原判決「事実及び理由」中の第3のとおりであるから、これを引用する。 (1) 原判決16頁3行目「そして」を、以下のとおり改める。 「本件処分は、第5陳謝処分について被控訴人が陳謝拒否をしたことを懲罰事由とするものである。そのため、本件処分の違法性を判断するうえでは、被控訴人が陳謝拒否をしたことの評価が問題となり、前提として、第5陳謝処分がいかなる内容であるのか、陳謝の懲罰としての適法性、相当性があるのかを検討しなければ、被控訴人の懲罰事由の有無について判断することは困難である。そして、第5陳謝処分は第4陳謝処分に係る陳謝文の朗読拒否を理由とするもので、第2陳謝処分から第4陳謝処分は、直近の陳謝処分に対する陳謝拒否を懲罰事由とするものであるから、第1陳謝処分以降の陳謝処分の内容や陳謝の懲罰としての適法性、相当性は無関係とはいえず、検討を加える必要がある。このように」(2) 原判決16頁9行目「なりかねない。」の後に「確かに、陳謝処分が出席停止処分のように議事に参与し議決に加わるなどの議員としての中核的な活動を直接制約するものでないことを考慮すれば、その1回的な陳謝処分の適法性について議会の自律性を尊重する必要性は出席停止処分より大きいといえるが、前述したとおり、本件のように陳謝処分に従わなかった場合に、それを懲罰事由として一定数陳謝処分を繰り返した上で最後出席停止処分が行われるに至った場合には、当初の陳謝処分に対する司法審査を及ぼす必要性が高いことは否定できない。」を加える。 (3) 原判決16頁19・20行目「懲罰を科される議員の思想、良心の自由との緊張関係をはらむものであるこ の陳謝処分に対する司法審査を及ぼす必要性が高いことは否定できない。」を加える。 (3) 原判決16頁19・20行目「懲罰を科される議員の思想、良心の自由との緊張関係をはらむものであることから」を「本来、「陳謝」は、個人の内心の意思にかかわる倫理的な行為であって、陳謝処分を科される議員の思想、良心の自由との緊張関係をはらむものであることからすると、同法が陳謝の対象や陳謝文の内容について議会に自由裁量を与えているわけではないことは明らかであって」と、同頁24行目「相当である。」を「相当であり、同法135条1項2号が懲罰として「公開の議場における陳謝」を定めている趣旨も、対象議員に同種の議会の規律や品位を乱す行為を繰り返さないことを強調する意味で「陳謝」の文言を用いるように定めていると解すべきである(最高裁平成2年3月6日判決・裁判集民事159号229頁は、不当労働行為救済命令のポストノーティス命令で用いられた「反省」等の文言について同様に解釈している。)。」と、それぞれ改める。 (4) 原判決18頁9行目末尾の後に、以下を加える。 「また、第1陳謝文には、「議員のパワハラ」と断言したとか「公然とパワハラと発言」した旨の記載があるが、実際の発言は、「それが何か、ある意味ちょっとパワハラのように聞こえたから言っているだけです。」という1回限りのもので、パワハラに該当する可能性を指摘するものではあっても、パワハラと断言したものとはいえないから、上記陳謝文は実際の発言よりも被控訴人の発言の問題性を誇張する不正確な内容が含まれており、かかる内容について被控訴人に朗読を命じることは、なおさら相当性を欠くといえる。」(5) 原判決19頁1行目「明らかである。」を「明らかであるし、また、第2~第4陳謝文は、第1陳謝処分同様 、かかる内容について被控訴人に朗読を命じることは、なおさら相当性を欠くといえる。」(5) 原判決19頁1行目「明らかである。」を「明らかであるし、また、第2~第4陳謝文は、第1陳謝処分同様被控訴人の発言につき不正確な内容が含まれており、かかる内容について被控訴人に朗読 を命じることは相当性を欠く。」と改める。 (6) 原判決19頁7行目「上記のような」の前に「陳謝文の内容は、そこで示される発言内容自体が不正確なもので、さらに、懲罰の対象となる議会における発言とは無関係な部分についても言及するというもので、不相当な内容であり、被控訴人が陳謝文の内容をそのように捉えることも不合理ではないところ、かかる陳謝文の朗読を拒絶したことについて反省の意を述べさせることは、さらに不相当といえ、かかる不相当な第4陳謝処分に従わないことが被控訴人の「身勝手な判断」であるなどとはいえず、」を加える。 (7) 原判決19頁15行目「同様に、」の後に「被控訴人の「身勝手な判断」であるなどとはいえず、」を加える。 2 控訴理由について(控訴人の当審における補充主張)(1) 控訴人は、①法律上の争訟である出席停止処分の違法判断の前提であっても、議会の内部的な規律事項である陳謝に対し司法権は及ばないはずであり、原判決は判例に違反する、すなわち、昭和35年最高裁判決は、出席停止処分の一般的類型的な性質に着目しておよそ例外なく司法審査を認めないとするものであるから、当然の論理帰結として、陳謝に関しても、例外なく司法審査の対象外とする趣旨とみるのが相当である、平成31年最高裁判決も同趣旨である、②出席停止処分の法的評価の前提として陳謝に対する法的評価を必要不可欠とするのであれば、議会の判断を尊重してそれを前提に判断し評価すれば足り みるのが相当である、平成31年最高裁判決も同趣旨である、②出席停止処分の法的評価の前提として陳謝に対する法的評価を必要不可欠とするのであれば、議会の判断を尊重してそれを前提に判断し評価すれば足り、例外を考える必要はない、③陳謝に対する司法審査を認めることは、それだけで議会に対する司法権の干渉となって懲罰に対する議会の内部的自律性を侵害し、民意を代弁する議員活動の萎縮を招くこととなるところ、陳謝については、議員とし ての中核的な議会活動を制限するものではなく、出席停止処分と同様の司法審査による議会干渉が許されるものではない旨主張する。 (2) 上記①について本件においては、原判決を補正して引用したとおり、陳謝処分の対象や陳謝文の内容は、議会が認定した懲罰事由に係る議員の言動及びこれが議会の秩序維持及びその円滑な運営に及ぼした直接の影響に関し、対象議員に今後同種行為を繰り返さないことを宣明させることに限定されているというべきであり、それを逸脱していることが明らかな陳謝処分は議会の有する自律的な権能を逸脱・濫用するものにほかならないから、おおよそ懲罰として除名や出席停止処分と並べて法定された陳謝処分がいかなる内容のものであっても司法審査を控えるべきであるとはいい難い上、本件処分が陳謝処分に従わなかったことに起因し、また、直近の陳謝処分に従わなかったとして数次にわたり陳謝処分が行われる事態となって、より重い懲罰である出席停止処分(本件処分)に至っているのであるから、本件処分が裁量権の範囲を逸脱し、又はこれを濫用したといえるかの評価をする上で、本件処分に至る経緯の中でされた陳謝処分についての適法性、相当性の検討は避けられないというべきである。 なお、昭和35年最高裁判決、平成31年最高裁判決は、懲罰そのほかの措置が内部 価をする上で、本件処分に至る経緯の中でされた陳謝処分についての適法性、相当性の検討は避けられないというべきである。 なお、昭和35年最高裁判決、平成31年最高裁判決は、懲罰そのほかの措置が内部規律の問題にとどまる限りは当該自治体の自律的措置に委ねるのが適当であるとするもので、同各最高裁判決の趣旨に鑑みても、本件のように、司法審査の対象となる出席停止処分に至った場合は、もはや内部規律の問題にとどまるものとはいえないから、控訴人の主張は採用できない。 (3) 上記②について この点、議会に自律的な権能があることから、懲罰事由該当性、処分の取捨選択等の判断について議会の合理的な裁量に委ねられるとしても、議会の当該判断に裁量権の範囲の逸脱・濫用がある場合には、当該判断は違法となると解される。このように解さないと、出席停止処分の違法性を判断する上で、実際上、司法審査が及ばない結果となり、出席停止の懲罰の性格や議員活動に対する制約の程度に照らし、これを司法審査の対象とした最高裁令和2年11月25日大法廷判決・民集74巻8号2229頁の趣旨を没却する結果となり、相当ではない。よって、控訴人の主張は採用できない。 (4) 上記③について出席停止処分の懲罰の性質や議員活動に対する制約の程度に照らし、同処分の適否は、常に司法審査の対象とされる以上、本件のように、出席停止処分の違法性、すなわち同処分が裁量権の範囲を逸脱し、又はこれを濫用したといえるかを判断する上で陳謝処分に従わなかったこと等が問題となる場合は、それを判断するのに必要な限度で陳謝処分についても司法審査が及ばざるを得ないものであって、陳謝処分が出席停止処分のように議事に参与し議決に加わるなどの議員としての中核的な活動を直接制約するものではなく( 判断するのに必要な限度で陳謝処分についても司法審査が及ばざるを得ないものであって、陳謝処分が出席停止処分のように議事に参与し議決に加わるなどの議員としての中核的な活動を直接制約するものではなく(前記説示のとおり)、陳謝処分をした議会の自律的な判断を尊重すべきといえる点については、その点をも踏まえて出席停止処分の違法性を判断すれば足りるから、出席停止処分の違法性を判断するのに必要な限度で陳謝処分について司法審査が及ぶとしたからといって、これにより直ちに議会の内部的自律性が侵害されるものとはいえない(なお、本件においては、補正して引用した原判決のとおり、市議会の内部規律と品位の保持を損なうものではないか、またはその 程度は極めて低いというべきであるのにこれを重く見て第5陳謝処分及び本件処分がなされたものといえ、議会の有する自律的な権能を考慮しても、本件処分は違法との評価を避けられない。)。よって、控訴人の主張は採用できない。 3 附帯控訴理由について(被控訴人の当審における補充主張)被控訴人は、原判決は、市議会の議事に出席できなかったことにより被控訴人が地方議員として被った精神的苦痛を過少に評価している、出席停止の懲罰は、当該議員個人にとって不本意であったというにとどまらず、住民の負託を受けた議員としてその責務を十分に果たすことができなくなるという側面があるのであり、総体としてより大きな精神的苦痛を被るものと評価するべきである、また、原判決は、懲罰の事実が公表され、市民からの信用が失墜し、それにより被控訴人が被る精神的苦痛を過少に評価している、本件では、特に市議会の多数派議員は、仮の差止め申立て却下決定が、出席停止処分を行うのは裁量権の逸脱・濫用となる疑いが強いと指摘しているにもかかわらず、それを無視して第6 苦痛を過少に評価している、本件では、特に市議会の多数派議員は、仮の差止め申立て却下決定が、出席停止処分を行うのは裁量権の逸脱・濫用となる疑いが強いと指摘しているにもかかわらず、それを無視して第6懲罰動議に関する特別委員会を開くなどしたもので、違法性は極めて強い旨主張する。 たしかに、被控訴人は、本件処分及びその公表により議員としての社会的評価が低下し、4日間の出席停止により、被控訴人が議員としての責務を果たすことができない状態となったことからすると、被控訴人が精神的苦痛を被ったことは明らかであるといえる。しかし、本件処分の内容、程度等に鑑み、被控訴人が指摘する上記事情を踏まえても、被控訴人が被った議員としての責務に対する侵害、名誉、信頼の棄損等による精神的苦痛の慰謝料は30万円をもって相当と認める。 第5 結論以上の次第で、被控訴人の請求を一部認容し、その余の請求を棄却した原判決は相当であるから、本件控訴及び附帯控訴をいずれも棄却し、主文のとおり判決する。 大阪高等裁判所第10民事部 裁判長裁判官中垣内健治 裁判官髙橋伸幸 裁判官鈴木紀子

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