主文 1 本件控訴を棄却する。 2 控訴費用は控訴人の負担とする。 事実及び理由 第1 当事者の求めた裁判 1 控訴人(1) 原判決を取り消す。 (2) 本件を富山地方裁判所へ差し戻す。 2 被控訴人主文同旨第2 事案の概要 1 本件は,富山県高岡市内に病院の開設を計画し,平成9年3月6日付けで被控訴人に対して病院開設の許可申請(本件許可申請)をした控訴人が,被控訴人が平成9年10月1日付けでした医療法30条の7の規定に基づく病院開設の中止勧告(本件勧告)の取消しを求めるとともに,同年12月16日付けの病院開設許可処分(本件許可処分)の際に,被控訴人が富山県厚生部長名をもってした「中止勧告にもかかわらず病院を開設した場合,厚生省通知(昭和62年9月21日付け保発第69号厚生省保険局長通知)において,保険医療機関の指定の拒否をすることとされているので,念のため申し添える。」との部分は,控訴人に病院開設の中止を勧告したものであるとして,当該勧告部分(以下,この部分と本件勧告とを併せて「本件勧告等」という。)の取消しを求めた事案である。 原審は,本件勧告等は行政事件訴訟法3条2項の「行政庁の処分その他公権力の行使に当たる行為」に該当しないとして,控訴人の訴えを却下した。そこで,控訴人が本件控訴に及んだ。 2 本件の前提となる事実,争点及び争点に関する当事者双方の主張は,次項において控訴人の当審における補充主張を付加するほかは,原判決「第2 事案の概要」の1ないし4記載のとおりであるから,これを引用する。ただし,原判決9頁8行目に「不公正な取扱い」とあるのを,「不公平な取扱い」と改める。 3 控訴人の当審における補充主張(1) 原判決は,「行政事件訴訟法3条2項の『行政庁の処分その他公権力の行使に当たる行為』とは,公権力 に「不公正な取扱い」とあるのを,「不公平な取扱い」と改める。 3 控訴人の当審における補充主張(1) 原判決は,「行政事件訴訟法3条2項の『行政庁の処分その他公権力の行使に当たる行為』とは,公権力の主体たる国又は公共団体が法令の規定に基づき行う行為のうち,その行為によって直接国民の権利義務を形成し又はその範囲を確定することが法律上認められているものをいうと解するのが相当である。」とした。 しかし,これは,最高裁昭和39年10月29日判決(民集18巻8号1809頁)で示された処分性に対する1つの判断であるが,最高裁判所は,現在に至るも常にこの判断を維持しているわけではない。 例えば,最高裁昭和54年12月25日判決(民集33巻7号753頁)は,関税定率法21条3項の規定による税関長の通知を「観念の通知」であるとしながら,「これにより上告人に対し申告にかかる本件貨物を適法に輸入することができなくなるという法律上の効果を及ぼす」ことを理由に,通知の処分性を認めているし,同じく関税定率法21条3項の通知について,最高裁昭和59年12月12日大法廷判決(民集38巻12号1308頁)は,上記昭和54年判決の考え方をさらに進めて,「実質的な拒否処分である」として処分性を肯定しているのである。 しかして,関税定率法には,税関長が「公安又は風俗を害する書籍,図画,彫刻物その他の物品」であると認めるのに相当の理由がある場合には,当該貨物を輸入しようとする者に対し,その旨を通知することを定めた規定はあるが(関税定率法21条3項),かかる通知を受けた者が輸入を禁止される等の法律効果を定めた規定は一切存在しない。上記各判例は,法律の文言ではなく,通知を受けた貨物は,現実に輸入できなくなることに鑑み,通知の処分性を認めているのである。これは,他に適切な救済方法が る等の法律効果を定めた規定は一切存在しない。上記各判例は,法律の文言ではなく,通知を受けた貨物は,現実に輸入できなくなることに鑑み,通知の処分性を認めているのである。これは,他に適切な救済方法が認められない場合の救済の論理に立っているものと考えられる。 また,国税通則法37条1項の督促は,国税通則法上は,行政庁の単なる意思の通知としての性質を有するに過ぎないが,国税徴収法が滞納処分開始の要件としていることから(国税徴収法47条),最高裁平成5年10月8日判決(訟月40巻8号2020頁)は,「滞納処分の前提となるものであり,督促を受けたときは,納税者は,一定の日までに督促に係る国税を完納しなければ滞納処分を受ける法的地位に立たされることになる」ことを理由に,処分性を肯定しているのである。したがって,処分性の有無の判断は,当該行政庁の行為によって,行為の名宛人がいかなる法的地位に立たされるのかによって判断しなければならないのである。 さらに,下級審の裁判例ではあるが,行政代執行法3条1項の「戒告」については,「戒告」が代執行開始の要件とされていることから,東京地裁昭和41年10月5日決定(行裁集17巻10号1155頁)等多くの裁判例が,処分性を認めるところである。そして,この裁判例に反対する見解は研究者の間にもみられない。 したがって,行政事件訴訟法3条2項の「行政庁の処分その他公権力の行使に当たる行為」に該当するというためには,法律がその文言上直接処分の名宛人に不利益な法律効果を定めている必要性はないし,当該処分によって生じる不利益が確定的なものである必要もないのである。 これに対して,本件中止勧告は,平成10年法律第109号による改正後の健康保険法43条ノ3第4項により「当該病院又ハ診療所ノ開設者又ハ管理者ガ同法30条の7ノ規定 なものである必要もないのである。 これに対して,本件中止勧告は,平成10年法律第109号による改正後の健康保険法43条ノ3第4項により「当該病院又ハ診療所ノ開設者又ハ管理者ガ同法30条の7ノ規定ニ依ル都道府県知事ノ勧告ヲ受ケ之ニ従ハザルトキ」(同項2号)は,「申請ニ係ル病床ノ全部又ハ一部ヲ除キテ其ノ指定ヲ行フコトヲ得」(同項柱書)とされ,勧告に従わないことは,保険病床の指定拒否処分の要件とされているのである。 すなわち,勧告を受けなければ,保険病床の指定を受けられる病院が,勧告を受けたために,保険病床の指定を拒否できる病院となるのであって,これは勧告を受けたことによって発生する不利益な法律上の効果である。 そして,行政事件訴訟法3条2項の「行政庁の処分その他公権力の行使に当たる行為」に該当するというためには,法律がその文言上直接処分の名宛人に不利益な法律効果を定めている必要性はないし,当該処分によって生じる不利益が確定的なものである必要もないことは上記のとおりであるから,控訴人が,中止勧告を受けたことによって,保険病床の指定を拒否される地位に立たされる以上,勧告の処分性は認められなければならない。 (2) 原判決は,保険医療機関の指定申請について拒否処分がなされた場合は,保険医療機関の指定申請の拒否処分を争うことによる救済が可能であるとするが,これは実態を考慮しない机上の空論というべきである。 すなわち,保険医療機関及び保険薬局の指定並びに特定承認保険医療機関の承認並びに保険医及び保険薬剤師の登録に関する省令1条1号により,保険医療機関の指定を受けようとする場合は,病院の使用許可(医療法27条)を得て,その使用許可証を添付しなければならないとされているところ,病院の使用許可を得るためには,病院の建物を建築し,機材を揃え,医師,看護 指定を受けようとする場合は,病院の使用許可(医療法27条)を得て,その使用許可証を添付しなければならないとされているところ,病院の使用許可を得るためには,病院の建物を建築し,機材を揃え,医師,看護婦,薬剤師等の医療従事者を雇用しなければならないのである(医療法21条,22条)。すなわち,保険医療機関の指定申請を行うためには莫大な投資を必要とするのであって,かかる投資をした後に保険病床の指定が拒否され,この拒否処分が取り消されるまで病床の使用ができないのでは,そもそも病院経営が成り立たず,事後的に保険病床指定拒否処分を争うのでは,到底救済を図ることはできない。 この点について,最高裁昭和47年11月30日判決(民集26巻9号1746頁)は「具体的・現実的な争訟の解決を目的とする現行訴訟制度のもとにおいては,義務違反の結果として将来なんらかの不利益処分を受けるおそれがあるというだけで,その処分の発動を差し止めるため,事前に右義務の存否の確定を求めることが当然許されるわけではな(い)」とするが,他方「当該義務の履行によって侵害を受ける権利の性質およびその侵害の程度,違反に対する制裁としての不利益処分の確実性およびその内容または性質等に照らし,右処分を受けてからこれに関する訴訟のなかで事後的に義務の存否を争ったのでは回復しがたい重大な損害を被るおそれがある等,事前の救済を認めないことを著しく不相当とする特段の事情がある場合は格別(である)」としている。 我が国においては国民皆保険制が取られており,医療保険の使用できない病床については入院患者を受け入れることができず,病院として成り立ち得ないことは明らかである。これに対して,原判決は,保険医療機関の指定拒否処分を争えばよいとするのであるが,上記のとおり,保険医療機関及び保険薬局の指定並びに特定 れることができず,病院として成り立ち得ないことは明らかである。これに対して,原判決は,保険医療機関の指定拒否処分を争えばよいとするのであるが,上記のとおり,保険医療機関及び保険薬局の指定並びに特定承認保険医療機関の承認並びに保険医及び保険薬剤師の登録に関する省令1条1号により,保険医療機関の指定を受けようとする場合は,病院の人的,物的設備を整えて使用許可を得る必要があり,莫大な投資をした後に保険病床の指定が受けられないと,事後的救済では賄いきれない不利益が発生し,病院の開設自体を断念せざるを得ないことは明らかである。そして,かかる事態が違法な中止勧告によって発生している事実に鑑みると,勧告自体を争うことを認めるのでなければ,法的正義を実現することはできないのである。 また,厚生省は,昭和62年通知によって「医療法第30条の7の規定に基づき,都道府県知事が医療計画達成の推進のため特に必要があるものとして勧告を行ったにもかかわらず,病院開設が行われ,当該病院から保険医療機関の指定申請又は療養取扱機関の申し出があった場合には,健康保険法(平成10年法律第109号による改正前のもの)43条ノ3第2項に規定する『著シク不適当ト認ムルモノナルトキ』に該当するものとして,地方社会保険医療協議会に対し,指定拒否又は受理拒否の諮問を行うこと」を命じていたところ,その後の平成10年法律第109号による改正後の健康保険法43条ノ3第4項では,前記のとおり,医療法30条の7の規定に基づく中止勧告を保険病床指定拒否の要件として規定され,上記昭和62年の通知の趣旨が健康保険法の改正によって法律に取り入れられたのである。 加えて,過去に中止勧告を受けた病院で,保険医療機関又は保険病床の指定を受けた者が存在しないこと及び本件においても富山県厚生部長は,病院開設の 康保険法の改正によって法律に取り入れられたのである。 加えて,過去に中止勧告を受けた病院で,保険医療機関又は保険病床の指定を受けた者が存在しないこと及び本件においても富山県厚生部長は,病院開設の許可に際して,控訴人に対して「病院の開設許可について」と題する書面(甲4号証)が同封されており,同書面には「中止勧告にもかかわらず病院を開設した場合には,厚生省通知(昭和62年9月21日付け保発第69号厚生省保険局長通知)において,保険医療機関の指定の拒否をすることとされているので,念のため申し添える。」と記載した書面を送付していることに鑑みれば,本件は上記最高裁昭和47年11月30日判決が述べる「制裁としての不利益処分の確実性」が十分に認められる事案である。 以上の次第で,本件は「制裁としての不利益処分の確実性及びその内容または性質等に照らし,処分を受けてからこれに関する訴訟のなかで事後的に義務の存否を争ったのでは回復しがたい重大な損害を被るおそれがある等,事前の救済を認めないことを著しく不相当とする特段の事情がある場合」に該当し,事前の救済が認められなければならない。 第3 当裁判所の判断 1 当裁判所も,行政事件訴訟法3条2項の「行政庁の処分その他公権力の行使に当たる行為」とは,「公権力の主体たる国または公共団体が法令の規定に基づき行う行為のうち,その行為によって直接国民の権利義務を形成しまたはその範囲を確定することが法律上認められているものをいう」と解するものであり,これよりすれば,控訴人の本件取消請求に係る本件勧告等は,同条項の定める「行政庁の処分その他公権力の行使に当たる行為」に該当しないと判断するものであって,その理由は,次項において控訴人の当審における補充主張に対する判断を示すほかは,原判決「第3 争点に対する判断」の理由説 庁の処分その他公権力の行使に当たる行為」に該当しないと判断するものであって,その理由は,次項において控訴人の当審における補充主張に対する判断を示すほかは,原判決「第3 争点に対する判断」の理由説示のとおりであるから,これを引用する。 2 控訴人の当審における補充主張に対する判断(1) 本件勧告等のうち,控訴人に対する病院開設許可処分(本件許可処分)の際に被控訴人が富山県厚生部長名をもってした「中止勧告にもかかわらず開設された病院については,保険医療機関の指定の拒否をすることとされている」旨の通告部分は,「行政庁の処分その他公権力の行使に当たる行為」に該当しないことは明らかである。けだし,この通告は,当時の保険医療機関の指定権限が国の機関委任事務として都道府県知事に属していたことから,単に処分庁の意思を事前に通知したもので,法令に基づくものとは認められないことに加え,この通告自体によって,控訴人にいかなる不利益も生ずるとは認められないからである。したがって,以下においては,本件勧告の処分性に限って,判断することとする。 なお,現在においては,法律の改正により,「厚生大臣」「厚生省」は国家行政組織法上それぞれ「厚生労働大臣」「厚生労働省」となっているが,ここでは,当該大臣及び省に言及する際には,当時の所管大臣,所管省である「厚生大臣」「厚生省」の名称をもって表示する。 (2) 本件勧告は,医療法30条の7の規定に基づいて被控訴人がした勧告であるが,その条文からも明らかなように,強制力を伴うものではなく,それに従うか否かは,あくまで勧告を受けた者の任意の意思に委ねられており,勧告を拒否したからといって,医療法上は何らの不利益も生じないと認められる。しかし,健康保険法(平成10年法律第109号による改正後のもの)43条ノ3第4項は,病院開 の任意の意思に委ねられており,勧告を拒否したからといって,医療法上は何らの不利益も生じないと認められる。しかし,健康保険法(平成10年法律第109号による改正後のもの)43条ノ3第4項は,病院開設者から保険医療機関の指定の申請があった場合につき,「当該申請ニ係ル病床ノ種別ニ応ジ医療法第7条の2第1項ニ規定スル地域ニ於ケル保険医療機関ノ病床ノ数ガ其ノ指定ニ依リ同法第30条の3第1項ニ規定スル医療計画ニ於テ定ムル基準病床数ヲ勘案シテ厚生大臣ノ定ムル所ニ依リ算定シタル数ヲ超ユルコトトナルト認ムル場合(其ノ数ヲ既ニ超エタル場合ヲ含ム)ニシテ当該病院又ハ診療所ノ開設者又ハ管理者ガ同法30条の7ノ規定ニ依ル都道府県知事ノ勧告ヲ受ケ之ニ従ハザルトキ」(同項2号)の事由があるときは,厚生大臣は,「申請ニ係ル病床ノ全部又ハ一部ヲ除キテ其ノ指定ヲ行フコトヲ得」(同項柱書)と規定し,医療法30条の7の規定に基づく都道府県知事の勧告に従わなかった病院開設者に対しては,厚生大臣は,保険医療機関の指定をするについて,その病床の全部又は一部を除外する(以下,この病床の除外を「保険病床指定の拒否処分」という。)ことができるとしている。 (3) 控訴人は,この保険医療機関の指定の際に不利益処分(保険病床指定の拒否処分)を受けることを理由に,本件勧告の処分性を認めるべきであると主張するものである。 アしかしながら,上記条文から明らかなように,健康保険法は,医療法30条の7の規定による勧告に従わなかった者から保険医療機関の指定の申請があった場合,処分庁(厚生大臣)に必ず保険病床指定の拒否処分をすることを義務付けているものではない。しかも,健康保険法は,処分庁(厚生大臣)が保険病床指定の拒否処分をするには,地方社会保険医療協議会の議によることを要件としており(43条ノ3 指定の拒否処分をすることを義務付けているものではない。しかも,健康保険法は,処分庁(厚生大臣)が保険病床指定の拒否処分をするには,地方社会保険医療協議会の議によることを要件としており(43条ノ3第7項),この議に反して保険病床指定の拒否処分をすることはできないと解されている。そうすると,控訴人が本件勧告に従わなかったとして,それにより必然的に保険病床指定の拒否処分がされる訳ではないから,本件勧告の不服従によって保険病床指定の拒否処分が確実にされることを前提とする控訴人の主張は採用することができない。控訴人の引用する関税定率法21条3項の通知及び国税通則法37条1項の督促に関する最高裁の判例は,これらの通知,督促の法律上の効果の確定性・確実性において,本件勧告とはその法的性質を異にするものであり,本件に適切でない。また,行政代執行法上の戒告に関する従前の裁判例も,戒告に従わなければ,その後何らの行政庁の行為が介在することなく,代執行という事実行為が行われるという関係にあることから,戒告に処分性を認めたものであって,本件とは事情を異にするものである。 控訴人は,これまでの厚生省の行政の運用,通達などからしても,また,被控訴人が富山県厚生部長名をもって控訴人に対してした通告において,保険医療機関の指定の拒否を事前に通知していることからしても,控訴人に対して保険病床指定の拒否処分が行われることは確実である旨主張する。しかしながら,抗告訴訟の対象たる「処分」の該当性は,法令の解釈によって客観的に定められるべきものであり,行政の運用,通達や処分庁の事前の意思によって左右されるものではない。したがって,控訴人の上記主張にかかわらず,控訴人の将来における保険医療機関指定の申請の際の保険病床指定の拒否処分は,法律上未だこれが確実であるということはで の意思によって左右されるものではない。したがって,控訴人の上記主張にかかわらず,控訴人の将来における保険医療機関指定の申請の際の保険病床指定の拒否処分は,法律上未だこれが確実であるということはできない。 イ控訴人は,本件勧告を受けることは,これを受けない他の病院開設者と比較して,より不利な地位に立たされたと主張する。 しかし,その点は所論のとおりであるとしても,控訴人につき保険病床指定の拒否処分がされるか否かは未だ確定していないのであり,同処分がされない可能性が法律上存在する以上,上記の不利益な地位は,一般的,抽象的危険性の域に止まり,これにより控訴人の具体的な権利又は法的に保護された利益が侵害されたということはできない。 ウ控訴人は,原判決が保険病床指定の拒否処分を争うことにより救済を得られるとしたことについて,保険医療機関の指定の申請をするには,省令により病院の人的,物的設備を整えて使用許可を得る必要があり,これには莫大な投資を要するのであって,かかる投資をした後に保険病床指定の拒否処分を争うのでは,我が国が国民皆保険制を採用していることから,その間病院としての経営は成り立たず,これでは病院の開設を断念せざるを得ず,回復しがたい重大な損害を被ることになるとして,本件勧告の違法を争う事前救済を認めるべきであると主張する。 なるほど,多額な投資をして病院を開設した後に保険病床指定の拒否処分を争う場合の経済的負担の大きいことは理解できないわけではない。しかし,このような経済的負担(不利益)は,法的なものではなく,事実上のものに過ぎないというべきである。また,控訴人は,本件勧告を取り消す勝訴判決を得れば,当然に保険病床指定の拒否処分は阻止できることを前提に立論しているけれども,健康保険法43条ノ3第4項は,医療法30条の7の規定に基 べきである。また,控訴人は,本件勧告を取り消す勝訴判決を得れば,当然に保険病床指定の拒否処分は阻止できることを前提に立論しているけれども,健康保険法43条ノ3第4項は,医療法30条の7の規定に基づく勧告に従わなかった場合のみを保険病床指定の拒否処分の事由としているのではなく,同項1号,3号の事由も拒否処分の事由としているのであるから,仮に本件勧告の取消しが認められたとしても,他の事由を根拠に保険病床指定の拒否処分がされる余地があり,事前救済の必要をいう控訴人の上記主張は,その前提において首肯し難いものがある。 なお,控訴人が事前救済の必要性を認めるべきものとして引用する最高裁昭和47年11月30日判決(民集26巻9号1746頁)は,訴えの利益について判示したものであって,処分性の有無を論じたものではないが,事前救済の必要性が抗告訴訟の対象たる「処分」の該当性を定める上で,1つの判定要素としての意味を持つとしても,法律上,本件勧告が保険病床指定の拒否処分を確実にするものではなく,また,本件勧告の取消しが直ちに保険病床指定の拒否処分の事前救済となるものでないことは,上記のとおりであるから,上記判例の趣旨は,これまでの認定判断を何ら左右するものでない。 3 よって,原判決は相当であり,本件控訴は理由がないからこれを棄却することとして,主文のとおり判決する。 名古屋高等裁判所金沢支部第1部裁判長裁判官川崎和夫裁判官榊原信次裁判官入江猛
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