令和2(あ)1751 傷害、暴行被告事件

裁判年月日・裁判所
令和4年4月21日 最高裁判所第一小法廷 判決 破棄差戻 東京高等裁判所 令和1(う)2234
ファイル
hanrei-pdf-91114.txt

判決文本文8,663 文字)

- 1 -令和2年(あ)第1751号傷害、暴行被告事件令和4年4月21日第一小法廷判決 主文 原判決を破棄する。 本件を東京高等裁判所に差し戻す。 理由 検察官の上告趣意は、判例違反をいう点を含め、実質は単なる法令違反、事実誤認の主張であり、弁護人山下幸夫の上告趣意は、憲法違反をいう点を含め、実質は単なる法令違反、事実誤認の主張であって、いずれも刑訴法405条の上告理由に当たらない。 しかしながら、検察官の所論に鑑み、職権をもって調査すると、原判決は、刑訴法411条1号により破棄を免れない。その理由は、以下のとおりである。 第1 事案の概要 1 被告人は、交際相手Cの双子の男児A及びB(当時7歳)に対する傷害等(Aに対する暴行及び傷害、Bに対する傷害)の各事実で起訴された。 第1審判決は、Aに対する暴行及びBに対する傷害の各事実を認定した上、Aに対する傷害について、要旨、「被告人は、平成28年4月3日午後1時34分頃から同日午後1時41分頃までの間(以下「本件時間帯」という。)に、東京都府中市内の公園(以下「本件公園」という。)において、Aに対し、その頭部に回転性加速度減速度運動を伴う外力を加える暴行(以下「本件暴行」という。)を加え、よって、Aに急性硬膜下血腫等及び重度の認知機能障害等の後遺症を伴う脳実質損傷の傷害を負わせた」旨の犯罪事実を認定し、被告人を懲役3年に処した。 被告人は、第1審判決に対して控訴し、訴訟手続の法令違反、事実誤認、量刑不当を主張した。 原判決は、Aに対する傷害について本件暴行を認定することはできないとして第1審判決を事実誤認を理由に破棄し、被告人に対し、Aに対する暴行及びBに対す- 2 -る傷害の各事実につき懲役1年6 た。 原判決は、Aに対する傷害について本件暴行を認定することはできないとして第1審判決を事実誤認を理由に破棄し、被告人に対し、Aに対する暴行及びBに対す- 2 -る傷害の各事実につき懲役1年6月、4年間執行猶予を言い渡し、Aに対する傷害の事実につき無罪を言い渡した。 2 第1審判決の認定及び記録によれば、本件の事実関係は以下のとおりである。 被告人とCは、平成27年7月に知り合って交際を始め、本件当時も交際していた。被告人は、保険会社の営業の仕事をする傍らスポーツトレーナーもしていたことから、AとBを陸上クラブに所属させるようCに勧め、同年10月にAとBが陸上クラブに入り、さらに、被告人自身もAとBの陸上活動を厳しく指導していた。 平成28年4月2日、被告人は、陸上クラブを続けさせるかどうか判断するテストとしてAとBに相撲を取らせるなどし、その結果、Bはやる気が見られるため陸上クラブを続けさせるが、Aはやる気が見られないため翌日に再テストをすることとした。Aは、帰宅後の同日午後3時頃、気持ちが悪いなどと言っておう吐したが、普段よりは少ないものの夕食等を食べ、同日午後8時頃就寝した。 同月3日午後1時頃、A、B及びCは被告人と合流し、BとCは陸上クラブの会合に行ったが、被告人は再テストをするためAと共に本件公園に向かい、同日午後1時25分頃本件公園に到着した。その後、被告人は、同日午後1時29分頃までは、本件公園近隣の防犯カメラに映る本件公園南側にいたが、その頃本件公園北側に移動した。Aは、同日午後1時34分頃までは本件公園南側におり、公園内を走っている様子であったが、その頃本件公園北側に移動した。 同日午後1時41分頃、被告人は、Cに電話し、「Aなんか変、なんかおかしい、大丈夫かこいつ。」、「すぐ来て。」などと言った。 り、公園内を走っている様子であったが、その頃本件公園北側に移動した。 同日午後1時41分頃、被告人は、Cに電話し、「Aなんか変、なんかおかしい、大丈夫かこいつ。」、「すぐ来て。」などと言った。Cがタクシーで本件公園に到着した際、Aは本件公園東側にあるベンチの背もたれに寄りかかり、両手をだらりと垂らしたまま半ばのけぞるように顔を空に向け、身動きもせず腰掛けていた。被告人は、自らAを抱えてタクシーまで運び、後部座席に座ったCにAを抱かせたが、その際、Aの目は開いていたものの焦点が合わず、声掛けにも反応しなかった。 - 3 -Cは、そのままタクシーでAを病院に運び、同日午後2時15分頃到着した。その時点でAの意識レベルは最も重篤な状態であり、CT検査等の結果、頭蓋骨を含めた骨折等はなかったが、右急性硬膜下血腫、脳浮腫と診断され、血腫量は多く、脳腫脹も強くて脳幹を圧迫している極めて重篤な状態で、緊急手術が必要とされた。 同日午後2時44分過ぎ頃、執刀医が、手術前に、被告人とCに対し、Aに硬膜下血腫があり命にかかわる重症であることを説明した上で、発症時の状況を聴取したところ、被告人は、「Aと公園で遊んでいて、気付くと滑り台の横でうずくまっており、呼びかけても返事がなかったので病院へ運んだ」旨の虚偽の事実を述べた。 緊急手術やその際の検査により、Aに硬膜下血腫があり、比較的太い架橋静脈(以下「本件架橋静脈」という。)が破断していたこと、内因性の異常により脳内出血が発生したり症状が増悪したりしたものではないことが認められた。 第2 第1審判決及び原判決の要旨 1 第1審判決は、要旨、以下のとおり判示して、本件暴行を認定した。 関係証拠によれば、本件時間帯に本件公園内においてAの頭部に回転性加速度減速度運動が加わり、本件架橋静脈が破 び原判決の要旨 1 第1審判決は、要旨、以下のとおり判示して、本件暴行を認定した。 関係証拠によれば、本件時間帯に本件公園内においてAの頭部に回転性加速度減速度運動が加わり、本件架橋静脈が破断して急性硬膜下血腫が生じたことが認められる。 Aの傷害に関するD医師の意見(Aの年齢を考えると、乳幼児を抱えて強く揺さぶる程度のみで硬膜下血腫が生じたとは考えにくい。高所転落や転倒と考えると、頭部に明らかな外傷や頭皮の汚れが認められないことは不自然である。柔道の投げ技等に起因するとしても矛盾がなく、頭部への直接打撃に起因する可能性もある。)や、E医師の意見(内因性疾患がない場合、7歳程度の児童が自らの過失による転倒程度でAのような重篤な硬膜下血腫を生じる症例はない。)などからすると、Aが自ら転倒するなどした際に本件架橋静脈が破断したとは考えられない。 F医師は、いわゆる中村Ⅰ型(つかまり立ちが始まったばかりの乳幼児が後方に転倒して後頭部を打ち、架橋静脈等が破断するというもの)と同様の機序により、Aがベンチの背もたれから跳び下りて背中から頭を地面に打った場合などの比較的- 4 -低位から後方転倒した場合でも本件架橋静脈の破断は生じ得るし、実際に五、六歳の児童についてそのような機序で架橋静脈が破断した症例を何件か経験している旨の意見を述べるが、本件は、典型的な中村Ⅰ型とは異なる類型であり、F医師が述べる症例は、受傷機序の特定方法も含めて本件と比較できるほどの具体性はないことなどからすると、上記認定に合理的な疑いを生じさせるものではない。 また、弁護人は、Aが、本件前日にBと相撲を取った際に頭部を地面に打ち付けたことなどにより、本件当日、硬膜下血腫を生じやすい状況にあり、軽微な転倒等によって本件架橋静脈が破断した可能性がある旨主張するが、G 護人は、Aが、本件前日にBと相撲を取った際に頭部を地面に打ち付けたことなどにより、本件当日、硬膜下血腫を生じやすい状況にあり、軽微な転倒等によって本件架橋静脈が破断した可能性がある旨主張するが、G医師及びF医師は、そのような機序でAの傷害が生じた可能性を裏付ける医学的知見を述べていないから、抽象的な可能性にとどまる。 以上によれば、Aの頭部にA以外の者の行為による強い回転性加速度減速度運動が加わり本件架橋静脈が破断したものと認められる。 そして、Aが受傷した当時の状況や、被告人が第三者による有形力の行使の可能性について供述していないことからすると、被告人がAに有形力を行使したものと認められる。 被告人は、Aが頭部に強い外力が加わったことにより意識を失っている可能性が高いことを認識しながら、救急車を呼ばず、Cに対しても、その外力の原因について告げていない。しかも、被告人は、本件当日の緊急手術前に、医師からAの命にかかわる状態であると説明され、受傷状況を尋ねられた際に、「気付くと滑り台の横でうずくまっていた」などと虚偽の事実を述べている。 このような言動は、被告人が、自己の行為によりAが受傷したことを隠蔽したものとしか考えられず、被告人が暴行の故意によりAの頭部に外力を加えたことを強く推認させる。 また、本件公園内における被告人とAの行動等も併せ考えれば、被告人の過失行為により、Aの頭部に相応に強い回転性加速度減速度運動をもたらす有形力が行使されることは通常想定し難い。 - 5 - 被告人は、Aの受傷状況について、公判で、「Aが、ベンチの背もたれの上に立って、前方に立ち幅跳びをした際、仰向けに背中から後頭部にかけて地面にぶつかった」旨供述する。 しかし、ベンチの背もたれに立ったAが前方へ跳び、地面に着地したとすれば、 ベンチの背もたれの上に立って、前方に立ち幅跳びをした際、仰向けに背中から後頭部にかけて地面にぶつかった」旨供述する。 しかし、ベンチの背もたれに立ったAが前方へ跳び、地面に着地したとすれば、まず足が地面に着くはずであり、空中で回転して仰向けになり、背中から地面に落ちるとは考えられず、体育科学の研究者も、「高い所から跳んだ場合、足が着けば前につんのめることはあっても、体が後ろに行くということはない」旨供述している。仮に、被告人が供述する態様でAが後頭部を地面にぶつけたとすれば、まず、足や背中が地面に着いた後、後頭部をぶつけたことになるから、本件架橋静脈が破断するような強い回転性加速度減速度運動が加わるとは考え難い。 そうすると、被告人の供述するAの受傷状況は不合理である。 また、被告人は、本件当日、Aの緊急手術前に、医師に対し、Aの受傷状況について虚偽を述べ、約1年後の平成29年3月の警察官取調べ以降は、上記公判供述と同旨の供述をしているが、その理由等に関する被告人の供述も信用できない。 以上によれば、本件暴行が認められる。 2 原判決は、要旨、以下のとおり判示して、本件暴行を認定することはできないから、第1審判決には判決に影響を及ぼすことが明らかな事実誤認があるとした。 本件時間帯に本件公園内においてAの頭部に一定の力が加わって本件架橋静脈が破断し、硬膜下血腫が生じたとする第1審判決の判断は、是認できる。 しかし、第1審判決が、Aの傷害に関する医師の意見から、A以外の者の行為によりAの頭部に強い回転性加速度減速度運動が加わったと認定した点は、次のとおり疑問が残る。 E医師の意見や、G医師の意見(Aの頭部にかなり強い回転性加速度減速度運動が加わった。肩を持って揺さぶりを繰り返したり、振り回してどこかにぶ 運動が加わったと認定した点は、次のとおり疑問が残る。 E医師の意見や、G医師の意見(Aの頭部にかなり強い回転性加速度減速度運動が加わった。肩を持って揺さぶりを繰り返したり、振り回してどこかにぶつけたり、投げ技や足払いで頭部を強く回転させて打ち付けたり、着地前に頭部を持って引き戻したりするなど、回転力が相当強くないとAの傷害はもたらされない。)な- 6 -ど、第1審判決の上記判断には一定の根拠がある。 しかし、F医師の意見は、経験豊富な専門家が本件に即して証言する際に、Aに近い年齢の児童が後ろ向きに転倒して後頭部を打ち、中村Ⅰ型と同様の機序により架橋静脈が破断する例が複数ある、中村Ⅰ型については頭蓋骨と脳実質との隙間が大きい児童が多いところ、Aも7歳にしてはその隙間が大きいなどと指摘するものであって、Aの受傷がA以外の者の行為によるという認定に合理的な疑いを生じさせる。 また、F医師は、本件前日にAがBと相撲を取った際に頭部を地面に打ち付け、その後おう吐したことに関して、架橋静脈の破断等を起こす前の打撲で何らかの症状(警告兆候)があった場合、その後に比較的軽微な外傷でも硬膜下血腫を起こす症例がある旨述べており、G医師も、何らかの原因で架橋静脈が破断しやすい状態になっていたところへ、健全な状態であれば破断が生じない程度の運動が加わったという場合でも架橋静脈の破断が生じ得ることを否定する趣旨の供述はしていない。したがって、本件時間帯より前に、本件架橋静脈が弱い力でも破断する状態になっていた可能性がある。 これらによれば、Aの頭部にある程度の強さの運動が加わったことは認められるが、その強さの程度は幅があり得るから、A以外の者による強い力が加わらないとAの傷害が生じないとは断定できない。 したがって、本件時間帯に、被告人によ る程度の強さの運動が加わったことは認められるが、その強さの程度は幅があり得るから、A以外の者による強い力が加わらないとAの傷害が生じないとは断定できない。 したがって、本件時間帯に、被告人によるもの以外には考えられない強い回転性加速度減速度運動がAの頭部に加わり、故意も推認されるとする第1審判決の認定は、その前提を欠く。 Aの受傷状況に関する被告人の第1審公判供述は、体育科学の研究者の供述も踏まえると不自然であり、本件当日に医師に対して異なる説明をしていたことからも、信用し難いが、被告人の供述が信用できないという理由だけで、本件暴行を認定することはできない。また、被告人が医師に対して虚偽の供述をしたことをもって本件暴行を認定することもできない。 - 7 -第3 当裁判所の判断 1 本件時間帯に本件公園内においてAの頭部に外力が加わって本件架橋静脈が破断した旨の第1審判決を是認した原判断に不合理なところはなく、これを是認することができる。 2 本件では、上記のように限られた時間・場所で被告人と一緒にいたAに加わった外力の原因が本件暴行であると認定できるか否かが問題となるところ、第1審判決は、Aの傷害に関する医師の意見(以下「医師の意見」という。)のみからAの頭部にA以外の者の行為による強い外力が加わった事実を認定し、この事実に加えてAが受傷した当時の状況(以下「当時の状況」という。)やAの受傷状況に関する被告人の言動(以下「被告人の言動」という。)を考慮して、本件暴行を認定している。 これに対し、原判決は、医師の意見からは第1審判決が本件暴行の認定の根拠としたAの頭部にA以外の者の行為による強い外力が加わった事実を認定することはできないから第1審判決の認定は前提を欠くとした上で、Aの受傷状況に関する被告人の供述 は第1審判決が本件暴行の認定の根拠としたAの頭部にA以外の者の行為による強い外力が加わった事実を認定することはできないから第1審判決の認定は前提を欠くとした上で、Aの受傷状況に関する被告人の供述が信用できないからといって本件暴行を認定することはできないとしている。 3 原判示のとおり、F医師の意見は、本件に即してA自身の行為による受傷の具体的可能性を指摘するものといえる。一方、A自身の行為による受傷の可能性に否定的なE医師及びD医師の各意見は、いずれも相当数の症例に基づくものと考えられるが、警察官作成の意見聴取結果報告書に記載されたものであって、根拠となる症例の概数や概要すら不明であり、また、検察官が立証の柱としているG医師の意見は、断定的な意見の根拠に関する説得的な説明が不足していることなどに照らせば、これらの医師の意見をもって、F医師が指摘する上記可能性を排斥し得る立証がされているとはいい難い。 また、本件前日、AはBと相撲を取った際に地面に頭を打ち付け、その後おう吐しているところ、F医師が、架橋静脈の破断等を起こす前の打撲で何らかの症状が- 8 -生じた場合、その後に比較的軽微な外傷でも急性硬膜下血腫を起こした症例がある旨述べており、この意見を否定する他の医師の意見は証拠上存しない。そうすると、本件受傷時において本件架橋静脈が健常時より弱い外力によって破断し得る状態になっていた可能性を裏付ける医学的知見がないとした第1審判決は不合理であるとして、その可能性を認めた原判断も、是認することができる。 以上によれば、医師の意見のみからA自身の行為による受傷の具体的可能性を否定することはできず、同旨の原判決は、医師の意見のみからその可能性を否定した第1審判決の判断が不合理であることを具体的に示したものといえる。 4 しかしながら 自身の行為による受傷の具体的可能性を否定することはできず、同旨の原判決は、医師の意見のみからその可能性を否定した第1審判決の判断が不合理であることを具体的に示したものといえる。 4 しかしながら、原判決が、Aの頭部にA以外の者の行為による強い外力が加わった事実を認定することはできないから第1審判決の認定は前提を欠くとしたほかは、Aの受傷状況に関する被告人の供述が信用できないからといって本件暴行を認定することはできない旨を説示しただけで、本件暴行を認定した第1審判決に判決に影響を及ぼすことが明らかな事実誤認があるとした点は、是認することができない。その理由は、以下のとおりである。 5 本件では、検察官が主張するように、医師の意見から認められる外力の態様に加え、当時の状況、被告人の言動を総合して、本件暴行を認定することができるか、言い換えれば、A自身の行為等の本件暴行以外の原因による受傷の具体的可能性を否定することができるかを検討しなければ、これらの間接事実から本件暴行を認定した第1審判決に判決に影響を及ぼすことが明らかな事実誤認があるか否かを判断することはできない。 そこで検討すると、上記のとおり、医師の意見からA自身の行為による受傷の具体的可能性を否定することはできないが、医師の意見からその可能性がどの程度認められるかは、重要な事情である。 また、当時の状況は、被告人から厳しい陸上活動の指導を受けていたAが、陸上クラブを続けるかどうかを判断するテストとして本件公園内を走っていた際に被告人の近くに行き、その後受傷したというものであるところ、このような状況のAが- 9 -自身の行為により受傷した具体的可能性を検討する必要がある。 さらに、被告人は、Cに対して、Aの受傷直後や病院において説明する機会がありながら、A自身の行為により 、このような状況のAが- 9 -自身の行為により受傷した具体的可能性を検討する必要がある。 さらに、被告人は、Cに対して、Aの受傷直後や病院において説明する機会がありながら、A自身の行為により受傷した旨の説明をせず、他方で、医師に対して、自分の知らないうちに受傷していた旨の虚偽を述べている。その後、被告人は、A自身の行為により受傷した状況を具体的に供述しているが、第1審判決及び原判決は、いずれもその内容は事実と異なると判断しており、この判断は不合理なものではない。これらの被告人の言動に照らして、A自身の行為による受傷の具体的可能性を検討する必要もある。 その上で、これらを総合した場合にA自身の行為による受傷の具体的可能性を否定することができるか否かについて判断する必要があるところ、原判決は、上記の必要な検討を経た判断を示しているものと評価することはできない。 6 以上の検討によれば、本件暴行を認定した第1審判決に判決に影響を及ぼすことが明らかな事実誤認があるとした原判決は、事実誤認の審査に当たり必要な検討を尽くして第1審判決の事実認定が論理則、経験則等に照らして不合理であることを十分に示したものと評価することはできず(最高裁平成23年(あ)第757号同24年2月13日第一小法廷判決・刑集66巻4号482頁参照)、刑訴法382条の解釈適用を誤ったものというべきであり、この違法は判決に影響を及ぼすものであって、原判決を破棄しなければ著しく正義に反すると認められる。なお、Aに対する傷害の事実は、原判決が有罪としたAに対する暴行及びBに対する傷害の各事実と併合罪の関係にあるとして起訴されたものであるから、上記違法は、原判決の全部に影響を及ぼすものである。 よって、刑訴法411条1号により原判決を破棄し、同法413条本文に従い、本件を東 の各事実と併合罪の関係にあるとして起訴されたものであるから、上記違法は、原判決の全部に影響を及ぼすものである。 よって、刑訴法411条1号により原判決を破棄し、同法413条本文に従い、本件を東京高等裁判所に差し戻すこととし、裁判官全員一致の意見で、主文のとおり判決する。 検察官古賀栄美公判出席(裁判長裁判官岡正晶裁判官山口厚裁判官深山卓也裁判官- 10 -安浪亮介)

▼ クリックして全文を表示

🔍 類似判例を検索𝕏 でシェア← 一覧に戻る