令和2(わ)55 電磁的公正証書原本不実記録幇助、同供用幇助、受託収賄、収賄、電磁的公正証書原本不実記録、同供用被告事件

裁判年月日・裁判所
令和4年12月21日 高知地方裁判所
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判決文本文18,647 文字)

令和2年第55号、第74号、第134号、第145号、第187号判決被告人甲被告人乙被告人甲に対する電磁的公正証書原本不実記録幇助、同供用幇助、受託収賄、収賄被告事件、被告人乙に対する電磁的公正証書原本不実記録、同供用、受託収賄被告事件について、当裁判所は、検察官辻󠄀保彦、被告人甲の私選弁護人(氏名省略)(主任)及び同(氏名省略)、被告人乙の私選弁護人(氏名省略)各出席の上審理し、次のとおり判決する。 主文 被告人甲を懲役4年6月に、被告人乙を懲役1年に処する。 未決勾留日数中、被告人甲に対しては720日を、被告人乙に対してはその刑期に満つるまでの分を、それぞれその刑に算入する。 被告人甲から9197万2831円を追徴する。 訴訟費用のうち、証人A及び同Bに関する分は被告人両名の連帯負担とし、証人C及び同Dに関する分は被告人甲の負担とする。 本件公訴事実中受託収賄の点については、被告人乙は無罪。 理由 (罪となるべき事実)被告人甲は、平成26年4月1日から同28年3月31日までの間、奈半利町地域振興課主監として、同年4月1日から同29年3月31日までの間、同課課長補佐心得として、同年4月1日から同31年3月31日までの間、奈半利町地域振興課課長補佐として、同年4月1日から令和2年3月31日までの間、奈半利町地方創成課課長補佐として、ふるさと納税制度に関し、同町への寄付者に送付する返礼品の選定及び発注等の職務に従事していたもの、被告人乙は、平成28年4月1日から同30年7月31日までの間、奈半利町総務課課長補佐として課長を補佐する 立場で防災防犯及び情報管理等に関する事務を統括管理し、同年8月1日から同31年3月31日までの間、同 月1日から同30年7月31日までの間、奈半利町総務課課長補佐として課長を補佐する 立場で防災防犯及び情報管理等に関する事務を統括管理し、同年8月1日から同31年3月31日までの間、同課課長補佐として課長を補佐する立場で町県民税及び法人税に関する事務等を統括管理していたものであるが、第1 被告人甲は、実父のX及び実母のYと共謀の上、 1 被告人甲が、養豚業を営むEをして、同人が畜産した豚のスライス肉等を使用した返礼品を取り扱わせるに際し、上記豚肉の加工・梱包作業等の委託先として、Yの実弟であるCが代表を務めるa 精肉店を指定した上、継続的にEに上記返礼品を発注することにより、Eから豚肉の加工・梱包作業等の委託を受けたa精肉店に継続的な売上げを計上させるなど、a精肉店が有利かつ便宜な取り計らいを受けたことに対する謝礼及び今後も同様の取り計らいを受けたいとの趣旨の下に供与されるものであることを知りながら、C及びその妻であるFから、別表1記載のとおり、平成28年3月4日から令和元年7月16日までの間、前後65回にわたり、高知県内において手渡し又はX管理のb銀行c代理店に開設されたG名義の普通預金口座ほか1口座に振替送金を受ける方法で、上記趣旨の現金合計6029万9151円を含む現金1億2821万8974円の供与を受け、 2 被告人甲が、H及びIをして、「d」の屋号で、豚肉等を使用した返礼品を取り扱わせるに際し、その仕入先としてa精肉店を指定した上、継続的にdに上記返礼品を発注することにより、dから豚肉等の発注を受けたa精肉店に継続的な売上げを計上させるなど、a精肉店が有利かつ便宜な取り計らいを受けたことに対する謝礼及び今後も同様の取り計らいを受けたいとの趣旨の下に供与されるものであることを知りながら、C及びFから、別 継続的な売上げを計上させるなど、a精肉店が有利かつ便宜な取り計らいを受けたことに対する謝礼及び今後も同様の取り計らいを受けたいとの趣旨の下に供与されるものであることを知りながら、C及びFから、別表2記載のとおり、平成29年6月16日から令和元年7月16日までの間、前後52回にわたり、X管理のb銀行c代理店に開設されたG名義の普通預金口座ほか1口座に、上記趣旨の現金合計3125万7270円を含む現金合計1億2165万3174円の振替送金を受け、 3 被告人甲が、Jをして、「e」の屋号で、牛肉を使用した返礼品を取り扱わせるに際し、その仕入先としてa精肉店を指定した上、継続的にeに上記返礼品を発注することにより、eから牛肉の発注を受けたa精肉店に継続的な売上げを計上させるなど、a精肉店が有利かつ便宜な取り計らいを受けたことに対する謝礼及び今後も同様の取り計らいを受けたいとの趣旨の下に供与されるものであることを知りながら、C及びFから、別表3記載のとおり、平成30年1月18日から同年3月19日までの間、前後6回にわたり、X管理のb銀行c代理店に開設されたG名義の普通預金口座に、上記趣旨の現金合計41万6410円を含む現金合計1419万3302円の振替送金を受け、もって、被告人甲の職務に関し、現金合計9197万2831円の賄賂を収受し、第2 被告人甲は、平成30年3月下旬頃から同年6月15日頃までの間、高知県安芸郡(住所省略)内及びその周辺において、水産物等の販売等を行う株式会社f水産代表取締役であるKから、同社が取り扱うアーモンド小魚を返礼品に選定し、継続的に発注するなど有利かつ便宜な取り計らいを受けたい旨の請託を受け、その謝礼として供与されるものであることを知りながら、別表4記載のとおり、同年9月24日から平 アーモンド小魚を返礼品に選定し、継続的に発注するなど有利かつ便宜な取り計らいを受けたい旨の請託を受け、その謝礼として供与されるものであることを知りながら、別表4記載のとおり、同年9月24日から平成31年2月8日までの間、前後4回にわたり、被告人乙管理のg銀行h支店に開設されたA名義の普通預金口座に、前記アーモンド小魚に係るA及びBの梱包作業賃名目で現金合計179万9500円の振込入金を受け、もって、被告人甲の職務に関し、請託を受けて第三者に賄賂を供与させ、第3 被告人乙は、実子のAと共謀の上、平成30年11月16日、高知県安芸市矢ノ丸1丁目4番40号所在の安芸市役所において、情を知らない同市役所職員に対し、真実は、Aが同市(住所省略)に住所を異動した事実がないのに、同所に住所を異動した旨内容虚偽の住民異動届を提出して受理させ、その頃、同市役所において、情を知らない同市役所職員に、権利義務に関する公正証書 の原本として用いられる電磁的記録である住民基本台帳ファイルにその旨不実の記載をさせ、即時これを同所に備え付けさせて公正証書の原本としての用に供し、第4 被告人甲は、被告人乙及びAが、共謀の上、前記第3の犯行に及ぶに際し、その情を知りながら、同月14日、高知県内において、自己が使用する携帯電話機からアプリケーションソフト「LINE」を利用し、被告人乙に対し、Aに係る上記内容虚偽の住民異動届に記載すべき異動先住所として、Kの当時の住所地である安芸市(住所省略)を教示するなどし、もって、被告人乙及びAの犯行を容易にさせてこれを幇助したものである。 (判示第2についての補足説明及び被告人乙の無罪の理由)第1 主たる争点及び当事者の主張の概要本件では、被告人乙管理の預金口座に、同人の息子であるA及びその れを幇助したものである。 (判示第2についての補足説明及び被告人乙の無罪の理由)第1 主たる争点及び当事者の主張の概要本件では、被告人乙管理の預金口座に、同人の息子であるA及びその交際相手であるBが従事したふるさと納税の返礼品であるアーモンド小魚の梱包作業に対する報酬という名目で、K(以下「K」という)から、別表4記載のとおり合計179万9500円が振り込まれているところ(以下「本件各振込」という)、実際には、A及びB(以下「Aら」という)は当該作業に従事していなかったことに争いはなく、関係各証拠上も明らかである。 検察官は、別紙受託収賄罪に係る公訴事実記載のとおり、主位的に、被告人両名は、Aらがアーモンド小魚の梱包作業に従事していないことを認識しながら、梱包作業賃名目で賄賂を収受した旨主張し、予備的には、仮に被告人両名が、Aらの作業実体がなかったことを認識していなかった、すなわち、Aらが梱包作業に従事していると思っていたとしても、1件500円という梱包作業賃が法外に高額であることなどに照らし、当該梱包作業賃を授受すること自体が賄賂の授受に当たる旨主張している。 これに対し被告人両名は、被告人乙が、Aらに自宅で内職をさせたいと考え、 被告人甲を通じてKに依頼し、Aらに、自宅でアーモンド小魚の梱包作業を行わせることになったものであって、Aらの作業実体がなかったことは把握しておらず、また、1件500円という梱包作業賃は当時の奈半利町のふるさと納税事業の実体に照らし法外に高額であるとは言えないなどとして、賄賂性ないしその認識を争い、無罪を主張している。 当裁判所は、判示のとおり、主位的訴因について被告人両名は無罪であり、予備的訴因について、被告人甲は第三者供賄罪の限度で有罪、被告人乙は無罪 賂性ないしその認識を争い、無罪を主張している。 当裁判所は、判示のとおり、主位的訴因について被告人両名は無罪であり、予備的訴因について、被告人甲は第三者供賄罪の限度で有罪、被告人乙は無罪であると判断したので、以下その理由を説明する。 第2 前提事実関係各証拠によれば、本件の経緯・顚末について、以下の事実が認められる。 1 当事者等被告人甲は、本件当時奈半利町の職員であり、平成26年4月以降ふるさと納税の返礼品の選定、発注等を担当しており、奈半利町におけるこれらの権限は、事実上被告人甲に集中している状態であった。 被告人乙は、本件当時奈半利町の職員であり、平成28年4月1日から同31年3月31日までの間、奈半利町総務課課長補佐として防災防犯及び情報管理等に関する事務、町県民税及び法人税に関する事務を統括管理していたが、同年4月1日以降、ふるさと納税を取り扱う地方創生課課長に就任し、被告人甲の直属の上司となった。 被告人両名は、被告人乙が職場の先輩、被告人甲が後輩の立場にあり、公私ともに親しい付合いがあった。 Kは、同人の父が経営するi海産でふるさと納税の仕事を手伝っていた際に被告人甲と知り合い、同人の勧めもあって、水産物等の販売等を行うf水産を設立し、返礼品事業を行うようになったもので、K及び被告人甲は、親しい付合いをしていた。 Aは、被告人乙の息子であり、交際相手であるB、被告人乙の母であるL とともに、(住所省略)内にある被告人乙の実家(以下「A方」という)に居住していた。L及びAの財産は被告人乙が事実上管理しており、Aらの食費等生活費の一部については、被告人乙が支出していた。 2 奈半利町におけるふるさと納税の状況奈半利町のふるさと納税受入額は、平成26年 L及びAの財産は被告人乙が事実上管理しており、Aらの食費等生活費の一部については、被告人乙が支出していた。 2 奈半利町におけるふるさと納税の状況奈半利町のふるさと納税受入額は、平成26年度以前は数万から数千万程度で推移していたが、平成26年度以降は数億円規模になり、平成29年度は39億0563万9000円、平成30年度は37億4560万4000円に上り、全国でも有数の受入額となっていた。 3 f水産における返礼品事業の状況等平成28年8月から令和元年9月までの間における、奈半利町から返礼品業者に対する累計支出額の第1位はf水産で、累計支出額は24億5966円、総支出額の34.4%を占めており、第2位の返礼品業者の倍以上の支出を受けていた。 4 Aらのf水産でのアルバイト開始平成30年3月頃、被告人乙は、被告人甲に対し、f水産でAらにアルバイトをさせることはできないかと相談した。被告人甲がKにその旨打診したところ、Kは、自己の父が経営するi海産で働かせるのはどうかとして、一度これを断ったものの、被告人甲がどうしてもf水産で働かせたいと要望したため、同月頃から、Aらはf水産で返礼品の梱包作業等のアルバイトを行うことになった。 Aらの面接は、平成30年3月16日、f水産でK、被告人乙、被告人甲、Aらの5名同席の下で行われた。当日、被告人乙はKに対し、Aが定時制高校に通っていることや朝は収穫したナスを出荷する必要があるという話をし、Aらの勤務時間は、朝9時から午後3時まで(昼休憩1時間)、時給は900円と決まった。 5 アーモンド小魚の返礼品取扱開始等 被告人甲は、平成30年3月頃、他の市町村が返礼品として取り扱っているアーモンド小魚が、ふるさと納税の返礼品を取り扱うショッピングサイトのスイーツ部 ーモンド小魚の返礼品取扱開始等 被告人甲は、平成30年3月頃、他の市町村が返礼品として取り扱っているアーモンド小魚が、ふるさと納税の返礼品を取り扱うショッピングサイトのスイーツ部門の中で1位、2位を争うような人気商品となっていることを知り、これを奈半利町でも取り扱い、ふるさと納税事業の起爆剤とすることで、奈半利町への寄付額を増やしたいと考えた。そこで被告人甲はKにアーモンド小魚の商品化を持ち掛け、f水産において、アーモンド小魚を返礼品として取り扱うことになった。 Kは、同年4月14日、被告人甲に対し、アーモンド小魚の仕入れ原価が500g あたり950円で、商品価格を4500円としたい旨伝えた。被告人甲は、その価格設定では諸経費を勘案すると赤字になるのではと尋ねたが、Kは、奈半利町の段ボールを使用して発送するため、4500円で構わない旨答えた。 返礼品であるアーモンド小魚(320g×6袋)の寄付金額については、被告人甲が、他の取扱い市町村の価格の半額にしたいと考え、5000円と設定された。 Kは平成30年5月か6月頃、アーモンド小魚を株式会社jから仕入れることに決め、jに梱包及び発送も任せることにした。アーモンド小魚320g×6袋の仕入れ値は税込3742円で、返礼品の商品価格は4500円であったため、f水産の粗利は758円であった。 アーモンド小魚の梱包作業の内容は、小袋の下部に賞味期限シールを貼り、重量計を用いて小袋の中にアーモンド小魚320gを入れ、シーラーで小袋を密封し、段ボールを組み立てて小袋を入れ、封をして送り状を貼って完成するというもので、梱包1件(320g×6袋)に要する時間は約6分33秒であった。 アーモンド小魚は、平成30年6月15日から寄付の受付が、同月26日から受注が開始され をして送り状を貼って完成するというもので、梱包1件(320g×6袋)に要する時間は約6分33秒であった。 アーモンド小魚は、平成30年6月15日から寄付の受付が、同月26日から受注が開始され、同日から平成31年2月8日までのf水産の受注件数 は、320g×6袋のものが4038件、320g×12袋のものが559件であった。 6 本件各振込の実行等 平成30年8月13日、被告人甲は、Kに対し、「前話したアーモンドじゃこ、やらせられるかえ?」とのメッセージを送信し、Kは、「Aらあにやらしてかまんがやったらやってもらうで」「あれ常温やし」と返信し、被告人甲は、「単価のこともあるろうき、また寄るわ」と返信した。 同年9月4日、被告人甲は、Kに対し、アーモンド小魚の梱包作業賃の振込先はA名義のg銀行h支店の普通預金口座(以下「本件口座」という)であること、報酬額については1件500円でいいだろうという内容のメッセージを送信し、Kは、「わかった振り込んでおきます」と返信した。 本件口座は、被告人乙が平成30年5月25日に開設し、これを管理していたところ、Kは、同年9月24日以降、本件口座に別表4記載のとおり前後4回にわたり合計179万9500円を振り込んだ。 被告人乙は、父であるMから預かり、貸金庫に保管していた金員の一部を、同人に無断で投資信託に運用していたところ、同人や奈半利町の職員が、同貸金庫の中身を確認するということになったため、平成31年2月12日及び13日に、本件口座から100万円ずつ引き出し、2回に分けて同貸金庫の中に入れた。また、本件口座から、同月14日に50万円を、同月19日には29万円を引き出し、同月19日の引出分については、自らの生活口座に入金して費消した。 第3 以上の事実を前提 けて同貸金庫の中に入れた。また、本件口座から、同月14日に50万円を、同月19日には29万円を引き出し、同月19日の引出分については、自らの生活口座に入金して費消した。 第3 以上の事実を前提に主位的訴因について検討する。 1 被告人両名の賄賂性の認識についての検察官の主張検察官は、本件各振込について、被告人甲が、f水産の取り扱うアーモンド小魚を返礼品に選定し、継続的に発注するなどして、Kに有利な取扱いを行ったことに対し、被告人甲に支払われる賄賂であり、以下のとおり、被告人両名 には賄賂性の認識があった旨主張する。 被告人甲は、以下の各事情に照らせば、遅くとも平成30年8月下旬頃、梱包作業1件につき500円を支払うよう求め、同年9月4日に本件口座への送金を指示した時以降、Aらがアーモンド小魚の梱包作業をしていないこと、すなわち本件各振込が、Aらの労働実体なしに支払われる賄賂であることを認識していたか、少なくとも未必的に認識していた。 ア本件各振込は被告人乙が管理する本件口座に送金されているところ、Aらの梱包作業賃であるのに、被告人乙が管理する本件口座に振り込ませ、Aらにこれを知らせないことは不自然であり、被告人甲はこれらの事情を事前に認識していた。 イアーモンド小魚の梱包1件にかかる時間は約6分33秒であり、単純で、時間もさほどかからない梱包作業1件につき500円の報酬というのは法外に高価である。 ウ平成30年10月13日、Kが、被告人甲に、Aらが梱包作業をしていない旨告げたにもかかわらず、被告人甲は驚かなかった。 エ被告人甲は、f水産が取り扱っていた返礼品に髪の毛が混入しており、保健所から指導が行われたということがあったにもかかわらず、梱包作業場所であるA方の衛生状況の確認を行っておらず、また、ア た。 エ被告人甲は、f水産が取り扱っていた返礼品に髪の毛が混入しており、保健所から指導が行われたということがあったにもかかわらず、梱包作業場所であるA方の衛生状況の確認を行っておらず、また、アーモンド小魚の発送に数量ミスや遅延が発生していたにもかかわらず、Kにその旨連絡するのみで、Aらの作業方法等について何ら確認しなかった。 更に被告人甲は、Aらがf水産でのアルバイトを辞めるにあたって、今後アーモンド小魚の梱包作業をどうするのかの確認を行っておらず、Kから、平成31年4月下旬頃に、アーモンド小魚の梱包作業を行っていないと聞いた際にも、返金を申し出ていない。 オ被告人甲には、将来自分の直属の上司になるであろう被告人乙に恩を売っておきたいという動機があった。 被告人乙については、被告人乙がAらに本件各振込がなされていることを秘匿しようとし、当該金員についても自己のために費消していること、Aらの生活状況や、A方の不衛生な状況に照らせばAらが同所でアーモンド小魚の梱包作業を行うことが現実的に困難であると認識していたこと、被告人乙が、Aらに梱包作業の詳細を確認していないこと、被告人乙が判示第3の犯行に及んでまで、Aの所得を隠匿していること、Kから、Aらがアーモンド小魚の梱包作業をしていない旨聞かされた後も、返金の申出をしていないことからすれば、被告人乙は当初からAらの労働実体がなかったことを認識していたものといえる。 2 本件各振込等についてのKの供述内容及びその信用性Kは、当公判廷において、以下のとおり供述している。 ア被告人甲の勧めで会社を立ち上げて返礼品事業に参加し、被告人甲から多数の返礼品の選定・発注を受け、相当額の利益を上げていた。 平成28年以降、被告人甲の依頼で、同人の両親であるX及びY(以 。 ア被告人甲の勧めで会社を立ち上げて返礼品事業に参加し、被告人甲から多数の返礼品の選定・発注を受け、相当額の利益を上げていた。 平成28年以降、被告人甲の依頼で、同人の両親であるX及びY(以下「Xら」という)に、返礼品であるクエの加工を1匹6000円で請け負わせたり、メバチマグロとアミエビの梱包を1件500円で請け負わせた。 報酬額については被告人甲から指示があり、他の業者と比較して高額であると思いつつも、被告人甲から儲けさせてもらっているという気持ちから、同人の指示どおりの金額で支払を行っていた。 同年7月18日、被告人甲からアミエビの梱包作業賃を1件500円から750円に値上げすると言われ、それは厳しいと答えたところ、増加分については商品価格に上乗せし、奈半利町への請求額に転嫁させればいいと言われた。 イ Aらをf水産でアルバイトとして雇うことについても、時期的に人手も足りていたため、1度は断ったものの、被告人甲から何とか頼むと言われたため、役場で働いている被告人乙の息子を雇うべきではないという妻の 反対を押し切り、妻に黙って働かせることにした。 ウその後、平成30年5月か6月頃、被告人甲から、Aらに自宅での梱包作業、すなわちAらに帰宅後、自宅で梱包作業をさせて、翌日f水産に出勤する際に梱包したものを持参させるという作業を行わせることはできないかという話をされた。同年7月下旬頃にも、Aらにアーモンド小魚の梱包作業をやらせられないか、という話があり、以前Xらにマグロやアミエビの梱包をさせたのと同じような話なのだろうと思った。 アーモンド小魚の梱包、発送については、既にjに依頼することが決まっていたことなどから、今更Aらにアーモンド小魚の梱包作業を行わせることはできないと考えたが、この話を断ったところ だろうと思った。 アーモンド小魚の梱包、発送については、既にjに依頼することが決まっていたことなどから、今更Aらにアーモンド小魚の梱包作業を行わせることはできないと考えたが、この話を断ったところで、また別の商品の梱包作業をさせてやってほしいと要求されるだけだと考え、被告人両名に黙って、Aらに作業をさせることなく、梱包作業賃名目で金員だけ支払おうと考えた。 そこで、Aに対しては、梱包作業を家に持ち帰って行うことになったが、実際にはやらせないので、被告人乙から、家で梱包作業をやっているかと聞かれたら、やっていると答えるように伝えた。 梱包作業賃については、被告人甲から、同人が同年8月18日頃、梱包加工手数料を請求する際の請求書の書き方についてf水産に話をしに来た際、1件当たり大体500円でという話があった。f水産でかかる経費等からすれば、粗利758円のうち500円を持って行かれるのはきついと考え、被告人甲に対し、その額を支払うのは正直厳しいと伝えたところ、その分役場へ上乗せ請求してくれればいいと言われたが、結局上乗せ請求することはなかった。 エ後日、被告人甲から、振込先は本件口座にしてほしい旨連絡を受け、同年9月7日、被告人両名と居酒屋に行った際、被告人乙から、本件口座は被告人乙が管理していると聞き、同人から、Aは金遣いが荒いので、本件 口座にアーモンド小魚の梱包作業賃が振り込まれていることを知ればすぐに使ってしまうから、自分が貯金をしてやりたい、アーモンド小魚の報酬の存在や本件口座についてはAに黙っておいてくれと頼まれた。 上記Kの供述の信用性について、検察官、両被告人は概ね争っておらず、被告人甲は、このうち、1件500円という梱包作業賃について、Kから厳しいと言われたことや、上乗せ おいてくれと頼まれた。 上記Kの供述の信用性について、検察官、両被告人は概ね争っておらず、被告人甲は、このうち、1件500円という梱包作業賃について、Kから厳しいと言われたことや、上乗せ請求するよう言ったことは否認している。しかし、前提事実記載のとおり、アーモンド小魚1件あたりのf水産の粗利が758円であることや、商品価格が4500円と決定された際の被告人甲とKとの間のやりとりに照らせば、上記Kの供述は信用でき、被告人甲の供述は信用できない。 3 検討上記Kの供述によれば、Kは、被告人甲から、Aらにアーモンド小魚の梱包作業を行わせるよう依頼された際、既に外部業者であるjに当該梱包作業を委託していたことなどから、これを今更Aらに行わせるのは難しいと考えたが、被告人甲からの依頼を断って更に別の要望を受けるぐらいなら、Aらに梱包作業をさせたように装って金員だけを支払おうと考え、被告人両名にこれらの事情を秘し、Aに口止めをした上で本件各振込を行ったものと認められる。本件は、作業実体なしに金員を支払うことにつき、被告人両名とKとの間で明確に認識を共有していた事案ではないのであって、検察官が指摘する各事情から、被告人両名が、労働実体なしに本件各振込が行われていることを認識又は未必的に認識していたといえるかが問題となる。 確かに、検察官が指摘するとおり、被告人乙が、息子であるAの分にとどまらず、その交際相手であるBの作業賃についても、秘密裏に管理するということは一見不自然な面もある。しかし、AとBが被告人乙の実家で同居し、同人に生活費の一部を支払ってもらっていたことなどに鑑みれば、被告人乙が、B分の作業賃についても秘密裏に管理するということがおよそあり得ない話とい うわけでもない。また、被告人乙がアーモンド小魚の梱包 部を支払ってもらっていたことなどに鑑みれば、被告人乙が、B分の作業賃についても秘密裏に管理するということがおよそあり得ない話とい うわけでもない。また、被告人乙がアーモンド小魚の梱包作業賃を管理していることがAらに発覚しても、管理の趣旨を説明して理解を得ることも可能である。 また、Aの公判供述等によれば、本件当時、Aらは午前7時半頃、(住所省略)にあるA方を出発して高知県安芸郡(住所省略)にある集荷場にナスを出荷し、午前9時から午後3時まで安芸市内のf水産でアルバイトをし、上記集荷場からかごを回収した後、Bはその実家に行き、Aは午後6時5分から午後9時10分まで室戸市の定時制高校に行き、その後合流して午後10時前頃に帰宅するという生活を送っており、平日は比較的多忙である上、A方の衛生状態は良くはなかったことが認められるものの、休日や空き時間を利用すればアーモンド小魚の梱包作業を行う時間をそれなりに確保でき、アーモンド小魚が常温保存のできる食材であることに徴すると、衛生面に多少目をつむることにすれば、A方で梱包作業をすることがおよそ不可能な状況にあったともいえない。 そして、被告人甲との関係において、1件500円という梱包作業賃は、後述のとおり作業内容に照らし高額ではあるものの、かかる作業賃を請求していることから直ちに、被告人甲に、労働実体なく賄賂が支払われることについての未必的な認識があったということは困難であるし、後日、KがAらに梱包作業を行わせていない旨被告人甲に伝えた際に、同人が動揺している素振りがなかったこと、アーモンド小魚の発送に遅延等が生じた際にKにAらの作業方法について確認しなかったこと、労働実体がなかったことが発覚した後も返金を申し出ていないことなどについてみても、同様である。 被告人乙との関係で モンド小魚の発送に遅延等が生じた際にKにAらの作業方法について確認しなかったこと、労働実体がなかったことが発覚した後も返金を申し出ていないことなどについてみても、同様である。 被告人乙との関係でも、同人が、本件口座に入金された金員を引き出して、貸金庫に預けたり、生活費に費消したりした事実は認められるものの、当時、被告人乙が、同人の父母やAの財産を管理しており、それを家族に無断で流用するなどしていたことに照らせば、本件口座に入金された金員を費消したことから直ちに賄賂性の認識があったということはできず、その余の主張について も同様である。 結局のところ、検察官の主張する各事実は、本件各振込に関する付随事情の不自然さを指摘するものではあるものの、いずれも間接事実としての推認力は弱く、これらの各事実を併せ考えても、被告人両名が、Aらの労働実体なしに本件各振込が行われていることを認識し又はその可能性を認識していたと認めることはできない。 以上によれば、被告人両名において、本件各振込がAらの労働実体なしに行われていることを未必的にでも認識していたというには合理的な疑いが残り、被告人両名間の共謀の有無など、その余の点について検討するまでもなく、主位的訴因について被告人両名は無罪である。 第4 予備的訴因について 1 被告人甲は、1件500円という梱包作業賃を算定した理由として、「平成22年から同28年頃、奈半利町が50%出資するk観光文化協会が運営する物産館lが、返礼品の梱包作業等を行う場合、商品価格の20%を梱包手数料として請求しており、2500円の商品であれば500円の梱包手数料をとっていたことから、Aらの梱包作業賃についても500円を適正価格と考え提案したものであって、ふるさと納税に関し、両親や兄にf水産やi海産、a精 ており、2500円の商品であれば500円の梱包手数料をとっていたことから、Aらの梱包作業賃についても500円を適正価格と考え提案したものであって、ふるさと納税に関し、両親や兄にf水産やi海産、a精肉店で梱包、加工作業を請け負わせる際や、m漁業協同組合から梱包手数料の要求があった際にも、本件同様1件500円としていた」旨供述する。 そして、これを受けて被告人甲の弁護人は、ふるさと納税制度においては、一般の市場取引とはかけ離れた高額な基準で取引がなされており、1件500円の梱包作業賃は上記物産館の基準に基づき、感覚的、機械的に当てはめたものであって、不正な利益を得る目的で設定したものではなく、被告人甲の職務との対価性もないから、賄賂性が認められない旨主張し、被告人乙も同旨の主張をする。 2 そこで、上記前提事実及びKの供述を踏まえ、本件各振込の賄賂性及び被告 人甲の認識について検討する。 上記のとおり、奈半利町職員として、返礼品の選定、発注等の権限を一手に有していた被告人甲は、その権限の下、知人であったKに多数の返礼品を取り扱わせ、同種業者の中でも群を抜くほどに莫大な利益を享受させ、一方で、職場の先輩である被告人乙から依頼を受けて、Kに対し、Aらをf水産でアルバイトとして働かせるように求め、これを受け入れさせるなどしていたものである。このような状況下で、被告人甲は、f水産の取り扱うアーモンド小魚を返礼品として選定・発注し、寄付の受付が開始されてから約1か月後、Kに対し、Aらに1件500円でアーモンド小魚の梱包作業賃を請け負わせるように要求している。 1件500円という梱包作業賃は、1件(アーモンド小魚320g×6袋)あたりのf水産の粗利である758円の約66%を占めている。被告人甲及びKの公判供述によれば、同人ら わせるように要求している。 1件500円という梱包作業賃は、1件(アーモンド小魚320g×6袋)あたりのf水産の粗利である758円の約66%を占めている。被告人甲及びKの公判供述によれば、同人らが想定していたAらの作業内容は、Aらが自宅でアーモンド小魚を箱詰めし、それをf水産に持って行くというものであったところ、その主たる梱包作業はアーモンド小魚を計量して袋詰めし、段ボール箱に入れて梱包するなどという単純作業であり、これに要する時間は約6分33秒、1時間で約9箱分の作業が可能で、これにより4500円の収入が得られることになる。当時、Aらはf水産で、アルバイトとして同様の梱包作業を行っていたところ、その際の時給は900円であったことに照らせば、Aらは、アルバイトとしてではなく、自宅で時間外に梱包作業を行うだけで、約5倍の報酬を得られることになるのであって、1件500円という梱包作業賃は、その内容に照らし破格な報酬額といえるが、当時、f水産において、それほど高額な報酬を支払ってまで、Aらに自宅で梱包作業を行わせなければならないような差し迫った事情は見当たらない。 Aらに自宅で梱包作業をさせること自体は、被告人乙からの依頼ではあったものの、被告人乙から具体的な報酬額の提案があったことは窺われず、1 件500円という梱包作業賃は、被告人甲がKに対し、一方的に要求したものである。そして、被告人甲はアーモンド小魚についてのf水産の粗利の状況や、梱包作業の大まかな内容について事前に把握しており、Kにおいて、実際にはAらに梱包作業をさせないという腹積もりではあったとはいえ、Kから一度はそこまでの報酬額を支払うのは厳しいと断られながらも、その分奈半利町への請求額に上乗せしてでもその額を支払うように求めている。 上記のとおりの事情に照 という腹積もりではあったとはいえ、Kから一度はそこまでの報酬額を支払うのは厳しいと断られながらも、その分奈半利町への請求額に上乗せしてでもその額を支払うように求めている。 上記のとおりの事情に照らせば、被告人甲は、奈半利町職員として返礼品の選定・発注を行うに際し、Kに多数の返礼品を取り扱わせて莫大な利益を享受させ、さらに目玉商品となり得るアーモンド小魚も取り扱わせたという状況下において、Kに対し、破格の報酬でAらにアーモンド小魚の梱包作業を請け負わせるよう要求して本件各振込を実行させ、本件口座を管理する被告人乙にその利益を享受させたものであって、本件各振込は被告人甲の職務との対価性を有する不法な報酬として、賄賂に該当すると認められる。なお、本件各振込について、実際にはAらが梱包作業を実施していなかったことに照らせば、本件各振込は全額が賄賂性を有すると解するのが相当である。 これに対し、被告人甲は、上記1記載のとおり主張し、梱包作業の中には、送り状のチェックや、発送順序の仕分け、発送前の電話連絡や商品が破損した場合の破損料、クレーム対応も含まれているとも述べる。 しかしながら、そもそもAらが行うことになっていたのは梱包作業のみであり、被告人甲自身、発送自体はf水産で行うものと認識していた旨述べている上、クレーム対応についても、被告人甲から取扱業者であるKに直接連絡が入っており、Aらが独立して対応することが予定されていたものとも認められない。 また、物産館lにしろ、m漁業協同組合にしろ、作業内容には梱包作業以外のものも含まれており、梱包する商品も異なるのであって、本件と同列に論じられるものではなく、Aら以外に1件500円で梱包作業や、加工作業 を行わせていたことについても、そのことが直ちに本件の賄賂性の判断に影響を る商品も異なるのであって、本件と同列に論じられるものではなく、Aら以外に1件500円で梱包作業や、加工作業 を行わせていたことについても、そのことが直ちに本件の賄賂性の判断に影響を及ぼすものではない。1件500円の梱包作業賃の支払が、被告人甲による便宜がなければ到底受け入れられないものであることを、被告人甲が認識していたことは上記のとおりである。被告人甲の主張はいずれも採用できない。 3 被告人乙の賄賂性の認識 検察官は、被告人乙は、被告人甲がKに対し、アーモンド小魚を返礼品として選定し、継続的に発注するという便宜を図っており、本件口座に振り込まれる金員の原資が、当該アーモンド小魚の売上の一部であること、f水産でのアルバイト作業と、アーモンド小魚の梱包作業の内容が同程度のものであり、アルバイトとは別に報酬を支払ってまで内職をさせる必要性が乏しく、またAらの生活状況やA方の不衛生な状況に照らし、Aらに別途報酬が発生するほどにアーモンド小魚の梱包作業を行う時間的、場所的余裕がない状況を認識していたところ、Kに対し、新たに開設した、自らが管理する本件口座に、A分だけではなくB分の梱包作業賃をも含めて入金させた上、Aらに本件各振込の存在を秘匿するよう求め、本件口座に振り込まれた金員も自己のために費消していること、判示第3の犯罪行為に及んでまで、A名義の所得を奈半利町に隠そうとしていることからすれば、被告人乙に賄賂性の認識があったことは疑いの余地がない旨主張する。 しかしながら、検察官の上記主張は、結局のところ主位的訴因における主張と実質的に同じものである。 本件において、被告人乙がアーモンド小魚の梱包作業賃の具体的な額や、梱包作業の具体的な内容を知らされていたとは認められない。被告人乙は、本件各振込の金額を における主張と実質的に同じものである。 本件において、被告人乙がアーモンド小魚の梱包作業賃の具体的な額や、梱包作業の具体的な内容を知らされていたとは認められない。被告人乙は、本件各振込の金額を把握しており、それがAらのアルバイト報酬よりも高額ではないかなどと考えた様子が窺われるものの、そのことから直ちに、本件各振込が賄賂であることを認識していたと認定できるものではない。 以上からすれば、被告人乙には賄賂性の認識は認められない。 4 結論以上からすれば、受託収賄罪の点に関し、本件各振込の賄賂性及びこれについての被告人甲の認識が認められる一方、被告人乙については賄賂性の認識が認められないから、被告人甲については、自己の職務に関し請託を受けて被告人乙に賄賂を供与させたものとして第三者供賄の限度で有罪とし、被告人乙については、犯罪の証明がないものとして、刑事訴訟法336条により無罪を言い渡すこととする。 (量刑の理由)まず、被告人甲に対する収賄(判示第1)、第三者供賄(判示第2)事件は、被告人甲が、両親であるXらと共謀し、3名の返礼品業者に対し、叔父、叔母であるCF夫妻が営む精肉店を返礼品の取引先として指定した上、CF夫妻に対し、Xらに金員を交付するよう働きかけ、XらがCF夫妻から金員を収受したり、返礼品業者であるKに要求し、その承諾を得て、すなわち請託を受けて、f水産の取り扱うアーモンド小魚を返礼品として選定等したことの対価として、当時の上司であった被告人乙に賄賂を供与させたりしたという事案である。 本件の各賄賂は、判示第1の収賄が平成28年3月から令和元年7月16日までの間、前後38回にわたって定期的・継続的に供与を受けたもの、判示第2の第三者供賄が平成30年3月下旬頃から同年6月15日までの間、4 賄賂は、判示第1の収賄が平成28年3月から令和元年7月16日までの間、前後38回にわたって定期的・継続的に供与を受けたもの、判示第2の第三者供賄が平成30年3月下旬頃から同年6月15日までの間、4回にわたって供与させたものであり、その総額は合計9377万2331円とこの種事犯の中でも極めて高額なものである。特に、判示第1の収賄は、返礼品業者からa精肉店に対し、通常よりかなり高額な価格設定で返礼品の加工、梱包等を委託させてa精肉店に法外な利潤を得させた上、その利潤の相当部分を賄賂金として供与させたものであり、その分、返礼品業者から奈半利町への請求金額が高額になり、奈半利町が町政に用いるべき金員を減少させるという背任的色彩を有しているのであって、一連の犯行により公務員の職務の公正及びこれに対する社会の信頼が害された程度は甚だしい。 被告人甲は、直接本件各賄賂を収受してはいないものの、自らの欲望の赴くまま、返礼品業者等に対する強い影響力を利用して賄賂を要求し、父母や職場の先輩など、近しい人物に莫大な利益が流れる仕組みを作り上げたものであって、本件各犯行の首謀者として最も重い責任を負うべき立場にある。 また被告人甲は、被告人乙が後記のとおり、判示第3の犯行に及ぶに際し、Kから聞いた同人の住所地を被告人乙に教示することにより、被告人乙の犯行を幇助しているのであって、この点も軽視することはできない。 以上によれば、被告人甲の刑事責任は相当重く、実刑は免れないが、前科・前歴がなく、当公判廷において判示第1及び第4の犯行を認めて反省の弁を述べていること、判示第1にかかる追徴金全額の回収がなされる見込みであり、その実効性が確保されていることも考慮し、被告人甲については主文掲記の刑に処すのが相当と判断した。 次に、被告人乙に対する電磁 ていること、判示第1にかかる追徴金全額の回収がなされる見込みであり、その実効性が確保されていることも考慮し、被告人甲については主文掲記の刑に処すのが相当と判断した。 次に、被告人乙に対する電磁的公正証書原本不実記録、同供用事件は、奈半利町職員であった被告人乙が、息子であるAと共謀の上、職場の後輩であった被告人甲が、ふるさと納税の返礼品やその納入業者の選定等を一手に行っており、返礼品業者であるKに対し強い影響力を持っていたことを利用し、被告人甲を通じて、KにAの名目上の住民票異動先としてKの当時の住所地を教示させて、Aが同所に住所を異動したという内容虚偽の住民異動届を提出したという事案である。これにより、本来(住所省略)で行われるべきAの住民税の課税手続が安芸市で行われており、公文書の信用が現に害されている。被告人乙は、本件の首謀者として、被告人甲に異動先の住所を手配させたり、自ら内容虚偽の住民異動届を提出している上、法令を遵守すべき公務員の立場にありながら、公文書の信用を毀損する犯罪に及んでいるのであって、その当罰性は看過できない。被告人乙は、本件の動機について、息子に一般常識を学ばせたいという親心からであったなどと弁明するが、いかにも眉唾であると言わざるをえず、動機に酌むべき点は窺われない。以上からすれば、被告人乙の刑事責任を軽視することはできず、本件が罰金刑を選択するのが相当な事 案であるとは認め難い。そこで、懲役刑を選択した上で、被告人乙には前科・前歴がなく、本件犯行を認めていることなどを考慮し、被告人乙を主文掲記の刑に処すのが相当と判断した。 なお、検察官は、判示第2の罪について、被告人両名に受託収賄罪が成立することを前提に、g銀行h支店に開設されたA名義の普通預金口座の同社に対する預金債権9000円を没収 処すのが相当と判断した。 なお、検察官は、判示第2の罪について、被告人両名に受託収賄罪が成立することを前提に、g銀行h支店に開設されたA名義の普通預金口座の同社に対する預金債権9000円を没収することも求めているが、この点に関しては、先に説示したとおり、被告人甲に第三者供賄罪が成立するにとどまり、被告人乙は無罪であって、被告人乙がKから本件各振込を受けた際、情を知って賄賂を収受したとは認められないから、没収刑の宣告はしないこととした。 令和4年12月21日高知地方裁判所刑事部裁判長裁判官 𠮷井広幸 裁判官前田早織 裁判官野澤尚純 別紙受託収賄罪に係る公訴事実 1 主位的訴因被告人乙及び被告人甲は、共謀の上、平成30年3月下旬頃から同年6月15日頃までの間、被告人甲が、高知県安芸郡(住所省略)内及びその周辺において、Kから、f水産が取り扱うアーモンド小魚を返礼品に選定し、継続的に発注するなど有利かつ便宜な取り計らいを受けたい旨の請託を受け、その謝礼として供与されるものであることを知りながら、別表4記載のとおり、同年9月24日から平成31年2月8日までの間、4回にわたり、同社が雇用したA及びBにおいて前記アーモンド小魚の梱包作業に従事した事実はないのに、被告人乙が、自己が管理するg銀行h支店に開設されたA名義の預金口座に、前記アーモンド小魚に係るA及びBの梱包作業賃名目で現金合計179万9500円の振込入金を受け、もって被告人甲の職務に関し、請託を受けて賄賂を収受したものである。 2 予備的訴因被告人乙及び被告人甲は、共謀の上、平成30年3月下旬頃から同年6月15日頃までの間、被告人甲が、高知県 受け、もって被告人甲の職務に関し、請託を受けて賄賂を収受したものである。 2 予備的訴因被告人乙及び被告人甲は、共謀の上、平成30年3月下旬頃から同年6月15日頃までの間、被告人甲が、高知県安芸郡(住所省略)内及びその周辺において、Kから、f水産が取り扱うアーモンド小魚を返礼品に選定し、継続的に発注するなど有利かつ便宜な取り計らいを受けたい旨の請託を受け、その謝礼として供与されるものであることを知りながら、別表4記載のとおり、同年9月24日から平成31年2月8日までの間、4回にわたり、被告人乙が、自己が管理するg銀行h支店に開設されたA名義の預金口座に、前記アーモンド小魚に係るA及びBの梱包作業賃名目で現金合計179万9500円の振込入金を受け、もって被告人甲の職務に関し、請託を受けて賄賂を収受したものである。

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