平成27(ワ)3452 損害賠償請求事件

裁判年月日・裁判所
令和2年6月17日 京都地方裁判所
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判決文本文65,818 文字)

- 1 - 令和2年6月17日判決言渡同日原本交付裁判所書記官第3452号損害賠償請求事件第2679号損害賠償請求事件損害賠償請求事件口頭弁論終結日令和元年11月14日 判決 当事者の表示別紙「当事者目録」記載のとおり 主文 1 被告は,原告Aに対し,432万1743円及びこれに対する平成25年9月16日から支払済みまで年5分の割合による金員を支払え。 2 被告は,原告Dに対し,38万円及びこれに対する平成25年9月16日から支払済みまで年5分の割合による金員を支払え。 3 被告は,原告Gに対し,341万0400円及びこれに対する平成25年9 月16日から支払済みまで年5分の割合による金員を支払え。 4 原告A,原告D及び原告Gのその余の請求並びに原告B,原告C,原告E及び原告Fの請求をいずれも棄却する。 5 訴訟費用は,原告Aと被告との間においては,原告Aに生じた費用の10分の7及び被告に生じた費用の10分の1を原告Aの負担とし,原告Aに生じた 費用の10分の3及び被告に生じた費用の70分の3を被告の負担とし,原告Dと被告との間においては,原告Dに生じた費用の14分の13及び被告に生じた費用の98分の13を原告Dの負担とし,原告Dに生じた費用の14分の1及び被告に生じた費用の98分の1を被告の負担とし,原告Gと被告との間においては,原告Gに生じた費用の2分の1及び被告に生じた費用の14分の 1を原告Gの負担とし,原告Gに生じた費用の2分の1及び被告に生じた費用- 2 - の14分の1を被告の負担とし,原告Bと被告との間においては,原告Bに生じた費用全部及び被告に生じた費用の7分の1を原告Bの負担とし,原告C 生じた費用の2分の1及び被告に生じた費用- 2 - の14分の1を被告の負担とし,原告Bと被告との間においては,原告Bに生じた費用全部及び被告に生じた費用の7分の1を原告Bの負担とし,原告Cと被告との間においては,原告Cに生じた費用全部及び被告に生じた費用の7分の1を原告Cの負担とし,原告Eと被告との間においては,原告Eに生じた費用全部及び被告に生じた費用の7分の1を原告Eの負担とし,原告Fと被告と の間においては,原告Fに生じた費用全部及び被告に生じた費用の7分の1を原告Fの負担とする。 事実及び理由 第1 請求 1 被告は,原告Aに対し,1380万0300円及びこれに対する平成25年 9月16日から支払済みまで年5分の割合による金員を支払え。 2 被告は,原告Bに対し,554万3484円及びこれに対する平成25年9月16日から支払済みまで年5分の割合による金員を支払え。 3 被告は,原告Cに対し,723万4539円及びこれに対する平成25年9月16日から支払済みまで年5分の割合による金員を支払え。 4 被告は,原告Dに対し,535万1000円及びこれに対する平成25年9月16日から支払済みまで年5分の割合による金員を支払え。 5 被告は,原告Eに対し,731万5000円及びこれに対する平成25年9月16日から支払済みまで年5分の割合による金員を支払え。 6 被告は,原告Fに対し,1583万6405円及びこれに対する平成25年 9月16日から支払済みまで年5分の割合による金員を支払え。 7 被告は,原告Gに対し,715万0804円及びこれに対する平成25年9月16日から支払済みまで年5分の割合による金員を支払え。 第2 事案の概要 1 事案の要旨 本件は,平成25年9月15日から16 Gに対し,715万0804円及びこれに対する平成25年9月16日から支払済みまで年5分の割合による金員を支払え。 第2 事案の概要 1 事案の要旨 本件は,平成25年9月15日から16日にかけて近畿地方に接近した台風- 3 - 18号(以下「平成25年台風」という。)の影響による降雨によって,自宅の床上浸水等の被害(以下「本件浸水被害」という。)に遭った原告らが,被告に対し,被告は原告らに対して,原告らの自宅が所在する地域における過去の水害の発生状況,浸水被害に遭う危険性の高さ等について説明又は情報提供すべきであったにもかかわらず,これを怠ったなどと主張して,①原告A,同D及 び同G(以下これら原告3名を「買主原告ら」という。)においては,不法行為による損害賠償請求権に基づき,②原告A,同B,同C,同D,同E及び同F(以下これら原告6名を「a地区原告ら」といい,これに原告Gを加えた原告7名を「原告ら」という。)においては,国家賠償法1条1項による損害賠償請求権に基づき(①及び②の請求をする原告らにおいては,これらは選択的併合 と解される。),それぞれ建物補修費用,動産損害,慰謝料及び弁護士費用等の損害賠償金並びにこれに対する損害発生日である平成25年9月16日から支払済みまで民法所定の年5分の割合による遅延損害金の支払を請求する事案である。なお,a地区原告らは,平成29年10月23日の台風21号(以下「平成29年台風」という。)による被害に遭い,さらに今後も同様の被害に遭うか もしれない恐怖に怯えながら生活を続けなければならないことを考慮すると,a地区原告らの慰謝料は500万円を下らないとして,請求の拡張をした。 2 前提となる事実(当事者間に争いのない事実並びに後掲の証拠及び弁論の全趣旨により容 続けなければならないことを考慮すると,a地区原告らの慰謝料は500万円を下らないとして,請求の拡張をした。 2 前提となる事実(当事者間に争いのない事実並びに後掲の証拠及び弁論の全趣旨により容易に認定することができる事実) 当事者等 ア原告ら 原告Aは,平成22年9月27日,被告から別紙物件目録記載1の土地(以下「本件土地1」という。)を代金1130万4161円で購入する旨の契約(以下「本件売買契約1」という。)を締結し,同年11月22日に所有権移転登記,同月25日に引渡しを受け,平成24年2月頃 から本件土地1上に建築した自宅建物に居住する者である(甲A1~3,- 4 - 7,8)。 原告Bは,平成21年12月28日,HことI(以下「H」という。)を仲介業者として,Jから別紙物件目録記載2の土地(以下「本件土地2」という。)を代金1070万円で購入する旨の契約(以下「本件売買契約2」という。)を締結し,平成22年3月16日に所有権移転登記を 受け,同年7月から本件土地2上に建築した自宅建物(原告B持分2分の1,K持分2分の1)に居住する者である(甲B1~3)。 原告Cは,平成22年3月28日,Hを仲介業者として,Lと共にJから別紙物件目録記載3の土地(以下「本件土地3」という。)を代金1280万円で購入する旨の契約(以下「本件売買契約3」という。)を締 結し(持分各2分の1),同年5月27日に所有権移転登記を受け,同年11月から本件土地3上に建築した自宅建物(原告C持分5分の3,L持分5分の2)に居住する者である(甲C1~3)。 原告Dは,平成25年2月26日,被告から別紙物件目録記載4の土地(以下「本件土地4」という。)を代金890万9742円で購入する 3,L持分5分の2)に居住する者である(甲C1~3)。 原告Dは,平成25年2月26日,被告から別紙物件目録記載4の土地(以下「本件土地4」という。)を代金890万9742円で購入する 旨の契約(以下「本件売買契約4」という。)を締結し,同年3月8日に所有権移転登記を受け,同年12月から本件土地4上に建築した自宅建物(原告D持分4分の1,M持分4分の3)に居住する者である(甲D1~3)。 原告Eは,平成22年9月18日,Hを仲介業者として,Nと共にO から別紙物件目録記載5の土地(以下「本件土地5」という。)を代金1030万円で購入する旨の契約(以下「本件売買契約5」という。)を締結し,同年10月22日に所有権移転登記を受け(当初原告E持分3分の2,N持分3分の1,平成25年7月3日に原告EがNの持分全部取得。),平成23年5月から本件土地5上に建築した自宅建物(当初原告 E持分3分の2,N持分3分の1,平成25年7月3日に原告EがNの- 5 - 持分全部取得。)に居住する者である(甲E1~3)。 原告Fは,平成21年8月1日,積和不動産関西株式会社を仲介業者として,Pと共に有限会社現代商事から別紙物件目録記載6の土地(以下「本件土地6」という。)を代金1050万円で購入する旨の契約(以下「本件売買契約6」という。)を締結し,同年10月16日に所有権移 転登記を受け(原告F持分2分の1,P持分2分の1),平成22年1月頃以降,同土地上に建築した自宅建物(原告F持分2分の1,P持分2分の1)に居住する者である(甲F1~3)。 原告Gは,平成22年6月30日,被告から別紙物件目録記載7の土地(以下「本件土地7」といい,本件土地1及び本件土地4を併せて「本 件各土地」と 居住する者である(甲F1~3)。 原告Gは,平成22年6月30日,被告から別紙物件目録記載7の土地(以下「本件土地7」といい,本件土地1及び本件土地4を併せて「本 件各土地」という。)を代金630万7844円で購入する旨の契約(以下「本件売買契約7」という。)を締結し,同年8月27日に所有権移転登記を受け,平成23年5月から本件土地7上に建築した自宅建物に居住する者である(甲1,3,4。以下においと表記する。)。 イ被告被告は,普通地方公共団体であって,後述するa地区土地区画整理事業及びb地区非農用地造成事業の事業主体であり,各事業により造成した土地の一部を自ら売主として販売していた。 ⑵ 本件土地1ないし6について ア概況等本件土地1ないし6(以下これらの土地を「本件a地区土地」という。)は,京都府福知山市a(以下「a地区」という。)に所在する土地である。 a地区は,福知山市中心部から東へ約5.5㎞に位置する地区であり,同地区のほぼ中央を東西に府道8号福知山綾部線及びJR山陰本線が通っ ている。a地区は,その北側を一級河川である大谷川に,西側を一般地方- 6 - 道石原停車場戸田線に囲まれており,南側は府立工業高校等の文教厚生施設を主とする地区に,東側は山林にそれぞれ接している。a地区の西側にはf地区が接しており,a地区とf地区は南北を走る府道下の通路でつながっている。 本件a地区土地は,後記の土地区画整理事業により宅地化される前は農 地であり,平成16年台風当時,造成中であった。 イ a地区土地区画整理事業(甲共16)近畿自動車道敦賀線の福知山インターチェンジが開設され,そのアクセス道路としての都市計画道路石原長田線が整備されることと 6年台風当時,造成中であった。 イ a地区土地区画整理事業(甲共16)近畿自動車道敦賀線の福知山インターチェンジが開設され,そのアクセス道路としての都市計画道路石原長田線が整備されることとなったことに伴い,昭和55年12月,a地区の開発に関し,検討を行うための西中 筋地区a区開発委員会が発足した。昭和56年12月25日,京都府によってa地区の大谷川の線以南の地域が市街化区域に指定された。 昭和61年8月,a地区の臨時総会で土地区画整理事業の施行者を被告とする旨が可決され,京都府は,平成3年1月9日,a地区土地区画整理事業についての都市計画決定をし,同月18日に告示した。平成5年1月 12日,京都府知事が同事業の事業計画を決定し,平成6年10月1日,仮換地が指定された。平成21年12月4日,換地処分が告示され,平成22年2月26日竣工式が行われた。その後,被告は,a地区の一部の保留地を宅地として自ら販売した。 ⑶ 本件土地7について ア概況等本件土地7は,京都府福知山市b(以下「b地区」という。)に所在する土地である。b地区の北側には,京都,滋賀,福井の府県境の三国岳に発し,京都府南丹市c町の山間部を西流しながら綾部市を経て,福知山市内において土師川を合わせて流れを北に転じ,宮津市及び舞鶴市を左右岸に 望みながら日本海に注ぐ一級河川である由良川がある。由良川の流域面積- 7 - は,京都府の約40%を占める1880㎢に及び,近畿地方整備局管内では,淀川,九頭竜川,熊野川に次ぐ大きさである。流域の地形は,山地が約90%,平地が約10%という典型的な山地河川の特徴を示しており,中流部の福知山盆地は標高が低く,そこから河口までの下流部では勾配が緩やかで,かつ,狭長な谷底平野と さである。流域の地形は,山地が約90%,平地が約10%という典型的な山地河川の特徴を示しており,中流部の福知山盆地は標高が低く,そこから河口までの下流部では勾配が緩やかで,かつ,狭長な谷底平野となっていることから,中下流部では水 害が頻発している。(以上につき甲共5)イ b地区非農用地造成事業(併合前甲30)本件土地7は,b地区非農地造成事業によって宅地造成されたものである。b地区非農用地造成事業とは,由良川の改修事業によって築堤するに当たり,現在のb地区より北側に位置していたb集落が,堤防の内側(川 側)に入ってしまうことになるため,被告が事業主となって,b集落の住民の移転先の住宅用地の確保を目的として行われた宅地造成事業である。 b集落の住民の中には他地域に移住する者もおり,b地区の宅地に空きが生じたことから,被告は,宅地の空き部分を一般分譲した。 ⑷ 福知山市における水害の概況(甲共1,併合前甲13) ア昭和28年9月の台風による水害昭和28年9月24日から同月25日にかけて,台風13号(以下「昭和28年台風」という。)が近畿地方に接近し,その影響を受けた豪雨により,由良川上流では時間雨量30~60㎜,総雨量が約500㎜に達し,福知山市においても総雨量約360.2㎜を記録した。由良川の最高水位 は,福知山市内においても7.8mに達し,その左岸が破堤したため,福知山市内は一面湖と化した。昭和28年台風の影響により,福知山市等において,死者36名,負傷者893名,家屋流失205棟,全壊1178棟,半壊1432棟,床上浸水5307棟,床下浸水2458棟等の被害が発生した(甲共5,甲共13,併合前甲14)。 イ平成16年10月の台風による水害- 8 - 平成16 壊1432棟,床上浸水5307棟,床下浸水2458棟等の被害が発生した(甲共5,甲共13,併合前甲14)。 イ平成16年10月の台風による水害- 8 - 平成16年10月20日,台風23号(以下「平成16年台風」という。)が近畿地方に接近し,その影響を受けた豪雨により,福知山市で総雨量約288.7㎜を記録し,福知山市内における由良川の最高水位が7.55mに達し,由良川が氾濫した。同台風の影響により,福知山市等において,死者5名,全壊17棟,床上浸水1251棟,床下浸水418棟の被害が 発生した。 ⑸ 平成25年台風とそれによる被害ア平成25年台風の概要(甲共2,併合前甲8)平成25年9月15日から同月16日にかけて,最低気圧965hPaとなった台風18号(平成25年台風)が近畿地方に接近し,福知山観測 所では,総雨量216㎜,時間最大雨量29㎜/h,由良川の最高水位8. 3mを記録した。由良川流域の広い範囲で20~30㎜程度の雨が長時間降り続いたことにより河川水位が上昇し,家屋全壊2棟,大規模半壊19棟,半壊311棟,一部損壊・床上浸水423棟,床上浸水356棟,土砂崩れ9件のほか,河川,道路及び農業被害等が発生した。 イ a地区の被災状況a地区では,平成25年台風により,大規模半壊3棟,半壊33棟,一部損壊・床上浸水36棟のほか,床下浸水多数の被害があった。 ウ b地区の被災状況b地区では,平成25年台風により,大規模半壊3棟,半壊58棟,一 部損壊・床上浸水49棟のほか,床下浸水多数の被害があった。 ⑹ 平成25年台風による原告らの被災状況原告らは,平成25年台風により,居宅等に次のとおりの被害(本件浸水被害)を ,一 部損壊・床上浸水49棟のほか,床下浸水多数の被害があった。 ⑹ 平成25年台風による原告らの被災状況原告らは,平成25年台風により,居宅等に次のとおりの被害(本件浸水被害)を受けた。 ア原告A(甲A11,12) 自宅床上浸水70㎝,自動車水没- 9 - イ原告B(甲B5)自宅床上浸水125㎝ウ原告C(甲C4)自宅半壊,床上浸水130㎝エ原告D(甲D9,証人M) 建築中自宅床上浸水10㎝オ原告E(甲E6)自宅床上浸水15㎝カ原告F(甲F8)自宅半壊,床上浸水110㎝ キ原告G(併合前甲12)自宅床上浸水44㎝⑺ 被告による防災ハザードマップの作成等防災ハザードマップとは,堤防決壊,洪水氾濫等発生時の浸水情報及び避難に関する情報を住民にわかりやすく提供することにより,人的被害を防ぐ ことを目的として市町村長が作成主体となって作成するものであり,浸水想定区域及び避難情報等が記載されたものである(平成25年6月12日号外法律第35号による改正前の水防法14条3項,15条4項,平成25年7月5日号外国土交通省令第59号による改正前の水防法施行規則4条)。 被告は,平成18年6月,「福知山市由良川拡大版防災ハザードマップ (観音寺~土師川合流点)」(乙9,併合前乙1。以下「本件ハザードマップ」という。)を作成した。本件ハザードマップには,昭和28年台風と同規模の大雨が発生したことを想定した場合の由良川本川及びその支川(土師川,武田川,和久川,鴨谷川,牧川,宮川,弘法川)の浸水想定区域に加え,当該浸水想定区域に含まれていない区域の 昭和28年台風と同規模の大雨が発生したことを想定した場合の由良川本川及びその支川(土師川,武田川,和久川,鴨谷川,牧川,宮川,弘法川)の浸水想定区域に加え,当該浸水想定区域に含まれていない区域のうち平成16年台風の際に浸水した区 域等が記載されている。 - 10 - 本件ハザードマップにおいて,本件a地区土地及び本件土地7は3~5mの浸水が想定される区域として表示されている。 ⑻ 平成29年台風とそれによる被害ア平成29年台風の概要(甲共38~47)平成29年10月23日に日本に上陸した台風21号(平成29年台風) と停滞した前線の影響等により,本庄雨量観測所では同日10時時点の累加雨量258.0㎜,福知山水位観測所では同日4時30分時点の由良川の最高水位7.39mを記録した。同台風による被害状況は,人的被害はなかったものの,住家被害181棟(半壊12棟,一部損壊・床上浸水77棟,床下浸水92棟),非住家被害167件,土砂崩れ10件,道路被災・ 河川被害・農林業被害等が発生した。 イ a地区の被災状況(甲共47)a地区の家屋被災状況は,人的被害はなかったものの,床上浸水21世帯,床下浸水13世帯,車両被害5台,バイク被害3台,避難者数24名であった。 ⑼ 平成29年台風によるa地区原告らの被災状況a地区原告らは,平成29年台風により,居宅等に次のとおりの被害を受けた。 ア原告A(甲A23)床下浸水 イ原告B(甲B14)半壊,床上浸水25㎝ウ原告C(甲C10)半壊,床上浸水90㎝エ原告D 浸水被害なし- 11 - オ原告E浸水被害なしカ原告F(甲F16)半壊,床上浸水3㎝ 3 争点及びこれに関する当事者の主張 半壊,床上浸水90㎝エ原告D 浸水被害なし- 11 - オ原告E浸水被害なしカ原告F(甲F16)半壊,床上浸水3㎝ 3 争点及びこれに関する当事者の主張 ⑴ 土地の売主としての説明義務違反の有無(不法行為関係)(買主原告らの主張)ア説明義務の発生根拠契約交渉に入った者の間では,誠実に交渉を行い,一定の場合には重要な情報を相手方に提供すべき信義則上の義務を負う。そして,土地の売主 としての説明義務は,次のⓐないしⓓの各事情を総合的に考慮して,説明を受ける者の自己決定権を保障する必要があるといえる場合に発生する。 ⓐ 当事者の力関係・能力関係(専門的知識・情報量の格差等)ⓑ 当事者,特に説明を受ける者の意思・意向・目的(取引に入る目的等)ⓒ 当事者の受ける効果(取引におけるリスク,当事者双方の利益不利益) ⓓ その他当該取引に関する一切の事情上記各事情に加え,国や地方公共団体が主体となって宅地建物取引を行う場合には,その公共的性質から私企業に対する業法規制を上回る高次の公正性・適正性の確保が当然期待されているという宅地建物取引業法(以下「宅建業法」という。)の前提を併せ考慮すると,地方公共団体たる被告 は,次のとおり,買主原告らに対し,a地区及びb地区の過去の浸水被害発生状況及び浸水被害に遭う危険性の高さについて,信義則上説明すべき義務を負っていた。 当事者の力関係・能力関係災害対策基本法は,地方公共団体として災害計画の策定及び実施義務 (同法5条)及び被害状況等の報告義務(同法53条)を定めており,- 12 - また,水防法は,水防責任を定める(同法3条)ととも 基本法は,地方公共団体として災害計画の策定及び実施義務 (同法5条)及び被害状況等の報告義務(同法53条)を定めており,- 12 - また,水防法は,水防責任を定める(同法3条)とともに,防災ハザードマップ等の配布により住民への周知を市町村に義務付けている(同法14,15条3項,同法施行規則11条)ことからも明らかなように,被告は,水害の被害状況に関する情報を収集し,分析する立場にあるから,調査能力,情報収集能力,情報分析能力及び保有している情報量な どのあらゆる面において,被告の情報力は,一般市民であり素人にすぎない買主原告らとは比較にならない水準である。 被告が本件ハザードマップを作成したことは争わないが,100年に1回程度起こる規模の大雨の想定は現実感に乏しく,規模の小さい支川(本件では大谷川がそれに当たる。)の氾濫や内水の氾濫等は考慮されて いない。また,宅地を購入しようとする者がより強く関心を抱くのは,直近,特に5~10年以内の水害に関する情報であるところ,本件ハザードマップには直近の水害である平成16年台風時の浸水状況の明示がない上,本件a地区土地の存するa地区の浸水頻度に関する記載がない。 したがって,本件ハザードマップの情報は不十分である。 また,本件ハザードマップは,本件各売買契約とは無関係に行政として一般的な周知を行ったものにすぎない上,その配布時期も,買主原告らが取引関係に入る約4年も前に自治会を通じて配布されたにすぎないところ,土地を購入する段階で有意義な情報を提供すべきであるにもかかわらず,適切な時期に配布していないから,情報提供の方法として不 適切である。 以上のことからすると,被告との間の情報格差は,買主原告らの土地購入時においてもなお著しいものであったというべき わらず,適切な時期に配布していないから,情報提供の方法として不 適切である。 以上のことからすると,被告との間の情報格差は,買主原告らの土地購入時においてもなお著しいものであったというべきである。 当事者,特に説明を受ける者の意思・意向・目的買主原告らは,自分自身や家族が居住する自宅を建築する目的で土地 の購入を検討していたのであるから,居住した場合の安全性に関しては- 13 - 強い関心を有しており,過去の浸水状況や浸水被害に遭う危険の高さを認識していれば,土地を購入することについて重大な障害・マイナス要因となっていた。 当事者の受ける効果浸水状況や浸水被害に遭う危険性の高さについて説明を受けていれば, 本件各土地を購入しない選択の可能性や本件各土地を購入したとしても相応の浸水被害対策を講じる可能性もある一方,建物の再築等には通常経済的な面で著しく困難を伴うことからすると,説明を受けられなかった場合の不利益は,取り返しのつかない極めて深刻なものである。 その他当該取引に関する一切の事情 a地区及びb地区は,被告が公共事業として造成した宅地であり,その事業の公共性・公益的性質から,取引の公正性確保のため,被告は,契約締結段階において,十分な説明を買主に対して行うべきである。また,私企業が造成・販売する宅地に比べ,より安全性に対する期待・信頼が高いから,私企業が売主である場合によりも,取引の公正性や説明 の誠実さが求められる。 まとめ以上のことを総合考慮すると,被告は,買主原告らに対し,それぞれの売買契約締結の際,購入した土地周辺の過去の浸水被害発生状況及び浸水被害に遭う危険性の高さについて,信義則上説明すべき義 まとめ以上のことを総合考慮すると,被告は,買主原告らに対し,それぞれの売買契約締結の際,購入した土地周辺の過去の浸水被害発生状況及び浸水被害に遭う危険性の高さについて,信義則上説明すべき義務を負っ ていたというべきである。 イ被告の認識本件各土地は,被告自らが事業主体として造成した土地であり,被告は,a地区の過去の水害発生状況についての情報を保有し,a地区の浸水被害に遭う危険性の高さについて具体的に認識していた。 被告は,遅くとも平成13年までには,a地区内を流れる大谷川の周- 14 - 辺において由良川からの逆流により浸水被害が発生していることを認識していた。 被告は,平成16年台風後においては,a地区土地区画整理事業地内で発生した浸水被害について,それを改善するためには大谷川の抜本的改修が不可欠であることを認識していた。 被告は,大谷川流域の浸水被害に遭う危険性の高さは,平成16年当時から今日に至るまで軽減されていないことを認識していた。被告は,大谷川について減災措置を講じてきた旨主張するが,府道下の通路によってf地区からa地区に水が流入することや,標高の低さなどにより本件各土地は依然として浸水被害に遭う危険性が高いままであり,減災措 置は不十分である。 昭和28年台風及び平成16年台風の際も,本件土地7のあるb地区は浸水被害を被っており,被告はこれを認識していた。 原告Gが本件土地7を購入した当時,b地区付近には由良川の堤防が施工途上である区間や未整備区間が存在しており,被告は,これを把握 していた。 本件土地7は,被告自らが造成・販売した宅地であり,被告は,b地区の過去の水害発生状況や由良川の堤防の整備状況について情報を保有し,b地区の浸水被害に遭う 被告は,これを把握 していた。 本件土地7は,被告自らが造成・販売した宅地であり,被告は,b地区の過去の水害発生状況や由良川の堤防の整備状況について情報を保有し,b地区の浸水被害に遭う危険性の高さについて具体的に認識していた。 ウ説明義務違反の有無 原告A被告は,原告Aに対し,本件売買契約1に際して本件土地1を含むa地区の過去の水害発生状況及び浸水被害に遭う危険性の高さについて何ら説明しなかった。 原告Aは,本件売買契約1の被告担当者から本件ハザードマップを交- 15 - 付されることも,過去の浸水被害発生状況や浸水被害に遭う危険性の高さについての説明を受けることもないまま,本件土地1を購入した。 原告D原告Dの夫及び実父は,本件売買契約4の被告担当者から,a地区は以前の台風で道路や駐車場くらいまでは浸水したことがあると説明を受 けたが,同時に,本件土地4の辺りは少し高くなっている,由良川の堤防ができているから大丈夫などの説明も受けた。また,被告担当者は,原告Dの夫及び実父に対し,被害が甚大であった平成16年台風の被害の説明を行わなかった。原告Dの夫及び実父は,本件ハザードマップの交付を受けたが,本件ハザードマップの記載内容の説明やその記載に基 づく過去の水害についての詳しい説明は受けておらず,本件ハザードマップは過去の浸水被害状況を記載したものと誤解しており,被告担当者の本件ハザードマップに関する説明は不正確,不十分であった。 原告G平成22年5月8日頃のb地区における宅地分譲フェアの際,被告職 員は,b地区の造成の経緯,分譲地の過去の浸水状況や浸水被害に遭う危険性の高さについて説明せず,その 原告G平成22年5月8日頃のb地区における宅地分譲フェアの際,被告職 員は,b地区の造成の経緯,分譲地の過去の浸水状況や浸水被害に遭う危険性の高さについて説明せず,その後の交渉過程において,本件ハザードマップの確認を促すこともしなかった。また,同年6月上旬から中旬頃,原告Gが本件売買契約7締結に際して必要な手続説明があるとして被告に呼ばれた際も,被告担当者から由良川の築堤状況やb地区の過 去の浸水被害状況や浸水被害に遭う危険性の高さ等水害に関する情報は一切説明されなかった。同月30日に売買契約書を取り交わした際に,重要説明書の交付を受けたものの,本件土地7の過去の浸水状況や浸水被害に遭う危険性の高さについては一切説明されなかった。 (被告の主張) ア説明義務の発生根拠- 16 - 私法取引においては,取引当事者は,互いに対等な立場にあるから,自己の利益は自ら守るべきであり,契約締結に際して必要な情報は自分で集めるのが原則である。被告と買主原告らとの関係は,地方公共団体と市民の関係ではあるものの,その取引は,あくまで対等な当事者間のものであるから,一方当事者が他方当事者に対し,説明義務を負わない ことが原則である。しかし,当事者間の情報力に著しい較差がある場合であって,取引を行うに当たり,重要な情報を一方当事者が知り得ないまま取引が成立することになると,それを知り得なかった当事者の自己決定権が害されることになるような場合もあることから,そのような説明義務を肯認する根拠となり得るような特段の事情がある場合に限り, 信義誠実の原則に照らして,その取引を行うか否かの決定を左右する重要な情報を有している一方当事者が他方当事者に対し,例外的にその情報を説明する義務を負う るような特段の事情がある場合に限り, 信義誠実の原則に照らして,その取引を行うか否かの決定を左右する重要な情報を有している一方当事者が他方当事者に対し,例外的にその情報を説明する義務を負うことがあり得る。 したがって,重要な情報を他方当事者が既に保有している場合や他方当事者が容易に取得できる場合のように,売主と買主の間に情報力の格 差がない場合は,説明義務の存在を肯認する基礎に欠けるので,買主原告ら主張のⓐがない限り,ⓑないしⓓを検討するまでもなく,説明義務を負うことはない。 なお,買主原告らは,宅建業法を根拠として主張するが,被告は,地方公共団体であるから,宅建業法上の重要事項説明義務を負わず(同法 78条1項),浸水被害の危険性は同法35条において説明すべき重要事項として掲げられていないのであるから,被告の説明義務を基礎付けるものではない。 当事者の力関係・能力関係情報力の格差を埋めるために両当事者間の保有する全ての情報を同じ レベルまで共有することまでは必要なく,買主が土地の購入を行うか否- 17 - かを決定するに当たり,a地区及びb地区が浸水被害に遭う危険性を考慮することが出来る程度の説明が行われれば足りるところ,次のとおり本件ハザードマップの配布で尽くされているというべきである。 a 本件ハザードマップの作成及び配布平成16年7月に発生した全国各地での一連の豪雨災害を踏まえ, 地域の水災防止力向上を図るため水防法の一部が改正され,洪水予報等の伝達方法や避難場所などを記載した防災ハザードマップ等の配布による住民への周知が市町村に義務付けられた。被告は,この水防法改正に対応するとともに,平成16年台風の結果を踏まえ,平成18年に本件ハザードマップを作成した。 本件 ザードマップ等の配布による住民への周知が市町村に義務付けられた。被告は,この水防法改正に対応するとともに,平成16年台風の結果を踏まえ,平成18年に本件ハザードマップを作成した。 本件ハザードマップには,①由良川本川及び支川(土師川,竹田川,和久川,鴨谷川,牧川,宮川,弘法川)の浸水想定区域(昭和28年台風と同規模の大雨により河川が氾濫した場合の浸水想定区域及び想定浸水深であり,国土交通省が平成13年頃の河川状況を念頭に作成したもの。),②平成16年台風時の浸水区域(上記浸水想定区域に含 まれていない区域のうち,平成16年台風により浸水した箇所を示したもの),③土砂災害警戒箇所,避難所の位置・名称,情報の収集先等各種防災情報が記載されている。上記浸水想定区域は,堤防がないところは氾濫し,堤防があっても流下能力がないところは破堤することを前提とし,流下能力が低い箇所を何点か選定し,同時に複数地点で 破堤することを想定せず,当該各地点において破堤した場合の氾濫による最大の影響値を重ね合わせたものである。 被告は,本件ハザードマップを,平成18年6月23日時点での住民に対しては全戸配布し,同日以降の福知山市への転入者に対しては住民登録の手続の際に被告の市民課窓口において配布した。後述のと おり,買主原告らも本件ハザードマップを受け取っているから,浸水- 18 - 被害に関する情報収集は容易であった。 b 浸水被害の危険性の情報を容易に取得できたこと買主原告らを含む住民に対しては,広報ふくちやま,きょうと府民だより等の広報誌や自治会への配布書面を通して,本件ハザードマップを確認するよう注意喚起が複数回実施されたほか,国土交通省のウ ェブサイトには浸水想定区域が掲載されていたのであるから,買主原 だより等の広報誌や自治会への配布書面を通して,本件ハザードマップを確認するよう注意喚起が複数回実施されたほか,国土交通省のウ ェブサイトには浸水想定区域が掲載されていたのであるから,買主原告らとしては,本件ハザードマップの情報を取得することが容易であった。また,平成16年から平成24年にかけて,平成16年台風の被害状況や,福知山市内における台風による浸水被害について,複数回にわたりテレビ報道がされた。 したがって,福知山市内に居住する住民にとって,由良川水域周辺において,台風による浸水被害に遭う危険性は容易に認識可能であったというべきである。 c 本件ハザードマップによる情報格差の解消平成25年台風は,昭和28年台風に匹敵する規模であるところ, 前記a のとおり,本件ハザードマップには,昭和28年台風の浸水想定区域及び平成16年台風時の浸水区域が記載されているのであるから,浸水被害に遭う危険性を適切に提供するための情報として十分である。また,浸水被害の程度は外的要因によって異なるから,浸水被害の程度を算出するのは困難であるし,過去の浸水頻度は土地購入 に当たっての必須の情報ではないから,浸水頻度の情報がなくても情報格差は発生しない。なお,平成25年台風の浸水被害は,由良川の氾濫が原因であるから支川の情報が記載されていないことに問題はなく,由良川の管理者は国であって,被告は,本件ハザードマップ記載の情報のほかに由良川氾濫による浸水被害に係る情報を保有していな いから,より現実的な確率で起こる大雨によって浸水する危険性がど- 19 - の程度であったかという情報を提供することは困難である。 買主原告らは,本件ハザードマップの配布の時期及び方法からすると,土地購入者に対する適時適切な情報 て浸水する危険性がど- 19 - の程度であったかという情報を提供することは困難である。 買主原告らは,本件ハザードマップの配布の時期及び方法からすると,土地購入者に対する適時適切な情報提供と評価することはできないと主張するが,重要なのは買主原告らがどのような情報を取得していたかであって,被告が買主原告らに対して適時適切な情報提供をし たか否かは情報格差とは関連性がない。 d 以上のことからすると,買主原告らと被告との間に浸水被害に遭う危険性についての情報力の格差はなく,そうである以上,他の要素(買主原告ら主張のⓑないしⓓ)を検討するまでもなく,被告が説明義務を負うことはない。 イ被告の認識本件各土地は,被告自らが事業主体として造成した宅地であること,被告がa地区やb地区の過去の水害発生状況について情報を保有していることは認める。 被告は,本件ハザードマップに記載されている範囲で危険性を認識し ていた。 大谷川に関しては,逆流する可能性があるとしても,由良川の合流地点から約2㎞離れたa地区まで逆流する現象は確認されていない。 被告は,a地区及びb地区において,次のとおりの減災措置を講じていた。 a 洪水調整池の設置被告は,大谷川の改修がa地区土地区画整理事業より遅れるため,大谷川改修が完了するまでの減災措置として洪水調整池を2か所整備し,開発による雨水の流失増に対処した。洪水調整池とは,集中豪雨などの局地的な出水により,河川の流下能力を超過する可能性のある 洪水を河川に入る前に一時的に溜める池のことである。 - 20 - b 石原口池への調整機能の付与被告は,平成16年台風を受け,大谷川の起点である石原口池に調整機能を持たせるため,洪水吐け(水を放流するた 前に一時的に溜める池のことである。 - 20 - b 石原口池への調整機能の付与被告は,平成16年台風を受け,大谷川の起点である石原口池に調整機能を持たせるため,洪水吐け(水を放流するための設備)の切込みを大きくし,さらに約2m下に内ネジゲートを新設し,降雨前に口池の水を抜いておきゲートを下げ,できるだけ口池に水を溜めてから, 大谷川に放流する調整機能を持たせた。 c フラップゲートの設置被告は,大谷川の増水時における逆流防止を目的に,a地区土地区画整理事業地の北西部に位置する地下埋設雨水管の下流端(大谷川との合流点)にフラップゲートを設置した。フラップゲートとは,河川 の合流地点において逆流を防止するための可動式のゲートのことである。 d 道路の嵩上げ被告は,a地区土地区画整理地内側の道路を嵩上げし,大谷川増水時に区画整理地内への水の侵入を防止する減災措置を講じていた。 e 地区内調整池b地区の浸水被害を軽減することを目的として,避難所に指定されているb会館に隣接した場所に,約450tの貯水量を備え,洪水時には容量超過した排水を排水ポンプ施設へ送水する機能を持った調整池を設置している。 f 排水ポンプ施設b地区内に貯まった内水を外へ排水するための排水ポンプ施設を設置している。 g 止水板由良川からの外水が道路まで上がってきた際に,道路を遮断するた めの止水板を迅速に設置できるよう設置箇所付近に常に止水板が保管- 21 - されている。 ウ説明義務違反の有無仮に,被告が売主としての説明義務を負うとしても,次のとおり買主原告らとの関係において説明義務違反はない。 原告A 原告Aは,平成22年9月27日に被告から ウ説明義務違反の有無仮に,被告が売主としての説明義務を負うとしても,次のとおり買主原告らとの関係において説明義務違反はない。 原告A 原告Aは,平成22年9月27日に被告から本件土地1を購入したが,平成18年12月頃,福知山市に転入しているので,その際に本件ハザードマップの交付を受けている。本件売買契約1の約4年前から福知山市内に居住していたことに加え,前の住所地がa地区との直線距離がわずか900mの地点であることも併せ考慮すると,原告Aは,本件売買 契約1締結までに本件土地1周辺が浸水被害に遭う危険性を相当程度認識していた可能性が高い。 また,原告Aは,本件売買契約1を締結する前に,勤務先会社の同僚にa地区の土地を購入したという話をしたところ,「あんな土地買ったん?水の浸く土地やで。」などと言われたことを契機に,a地区の浸水被 害に遭う危険性を認識し,自ら地元の建築業者に基礎を70㎝上げるように求めている。 したがって,被告との間で情報力に格差はないから,被告は,原告Aに対して説明義務を負わない。 原告D 原告Dは,平成25年2月26日に被告から本件土地4を購入したが,平成19年5月29日に福知山市に転入しているので,その際にハザードマップの交付を受けている。また,転入した際の住所地とa地区との直線距離は約1500mである。 また,被告の職員であるQは,本件売買契約4締結に先立ち,原告D の夫及び実父に対し,本件ハザードマップを示しながら,本件ハザード- 22 - マップの意味や本件土地4に関する浸水区域について具体的に説明し,本件ハザードマップを交付した。 以上のとおり,原告Dの夫及び実父を通じて,原告Dに対し,本件土地4が浸水被害に遭う危険性について具体的な説明 味や本件土地4に関する浸水区域について具体的に説明し,本件ハザードマップを交付した。 以上のとおり,原告Dの夫及び実父を通じて,原告Dに対し,本件土地4が浸水被害に遭う危険性について具体的な説明を行ったのであり,原告Dと被告との間で情報力に格差はないから,被告は,原告Dに対し 説明義務を負わない。仮に,被告が説明義務を負うとしても,被告は,上記のとおり説明義務を適正に履行した。 原告G原告Gは,平成18年6月23日頃には福知山市に居住しており,本件ハザードマップの交付を受けていた。また,原告Gは,本件売買契約 7に先立ち,b地区の現地確認をした際,由良川の堤防が未完成であることを認識していたし,分譲フェアにおいて水害対策のポンプの実演等を見る機会があった。さらに,被告の職員であるRが本件土地7の説明を行った際,同席したb地区の自治会長は,原告Gに対し,b地区の水害の歴史を説明した。 以上のとおり,原告Gは,本件売買契約7の前にb地区が浸水被害に遭う危険性について適切な情報提供を受けているのであるから,原告Gと被告との間で情報力に格差はなく,被告は,原告Gに対し説明義務を負わない。 ⑵ 地方公共団体としての情報提供義務違反の有無(国家賠償関係) (a地区原告らの主張)ア情報提供義務の発生根拠次の法的根拠に加え,情報提供義務を発生させる具体的な根拠事実があることからすると,被告には後述のような情報提供義務が発生する。 法的根拠 a 災害対策基本法- 23 - この法律は,国民の生命,身体及び財産を災害から保護すること等を目的とし(同法1条),市町村は,災害の発生を常に想定し,被害最小化のために防災計画を作成し,防災上必要な情報を普及させる等の責務を有する(同法2条の の生命,身体及び財産を災害から保護すること等を目的とし(同法1条),市町村は,災害の発生を常に想定し,被害最小化のために防災計画を作成し,防災上必要な情報を普及させる等の責務を有する(同法2条の2,5条,8条)ことを定める。 b 水防法 水災防御・被害軽減を目的とし(同法1条),浸水想定区域をその区域に含む市町村長は,防災計画に定められた事項を住民に周知させるために必要な措置を講じなければならない(同法15条3項)という義務を定める。洪水予報等の伝達方法・避難場所等についてあらかじめ住民に周知しておくことにより洪水時における住民の円滑かつ迅速 な避難を確保するという同条の趣旨からすると,水防法上の「住民」には,周辺住民を含むと考えるべきであり,宅地購入希望者等の安全のために,より理解しやすいように周知する措置を講じる義務が認められる。だからこそ,平成27年改正水防法も,「住民,滞在者その他の者」を周知対象としている。 c 宅建業法宅建業法35条は,十分な知識を持ち合わせていない一般買主と取引する専門家たる宅建業者に重要事項説明義務を課している。同法は,地方公共団体への適用が除外されているが(同法78条1項),同法47条の趣旨が事実不告知と不実告知を禁止する点にあること,上記地 方公共団体への適用除外の趣旨が,地方公共団体は取引の公正の確保が期待され,それを前提にしているという点にあることからすると,地方公共団体には,同法と同様の規範が適用される必要性があり,重要事項を説明すべき義務があって,事実不告知・不実告知は許されないものと解される。 また,宅建業法35条1項各号が例示列挙と解されており,国交省- 24 - の通達を受けた全宅連等の告知書ひな形には,浸水等の被害についての記載 実告知は許されないものと解される。 また,宅建業法35条1項各号が例示列挙と解されており,国交省- 24 - の通達を受けた全宅連等の告知書ひな形には,浸水等の被害についての記載があることからすると,実際の取引上も浸水被害に関する情報は重要事項として認識されている。 具体的な根拠事実a 危険性の作出 a地区は,本来宅地化すべきではない土地であるところ,被告は,a地区土地区画整理事業の実施主体として浸水被害に遭う危険性の高い土地を造成して宅地化し,自らもその一部を保留地として販売している。これにより被告はa地区原告らに甚大な被害を惹起した。被告は,このような浸水常襲区域を造成したにもかかわらず,何ら危険性 を除去していない。 b 浸水の危険性の認識福知山市内は,昭和28年台風時に甚大な浸水被害に遭っており,その後も幾度となく浸水被害に見舞われた。そのため,被告は,a地区土地区画整理事業着手時(平成5年5月)には,a地区を区画整理 した場合には住民となる者が浸水被害に遭うことを予見していたし,現に平成16年台風によって床上及び床下浸水の被害が生じたことを十分認識していた。 c 行政への減災措置の期待上記の各法令からすると,地方公共団体は,住民等の生命,身体及 び財産を災害から保護すべき責任を負っており,住民も行政による減災措置を期待しているといえる。とりわけ被告は,福知山市域において,豪雨による由良川や大谷川の氾濫により浸水被害等が生じていること,豪雨発生時には甚大な被害が生じることを予見でき,市議会においても継続的に水害問題が議論されてきたのであるから,被告には 他の地方公共団体に比べ,浸水被害減少のための措置をとることがよ- 25 - り強く求められていた。 予見でき,市議会においても継続的に水害問題が議論されてきたのであるから,被告には 他の地方公共団体に比べ,浸水被害減少のための措置をとることがよ- 25 - り強く求められていた。 また,遅くとも平成8年以降は,被告のみならず,他の地方公共団体においても情報の重要性が認識されるようになり,地方公共団体が災害情報に関する情報提供をすることへの期待を持つことは社会的に容認されているというべきである。 そして,住民となろうとする者,とりわけ宅地購入希望者は,自己が購入する土地が浸水するかどうかについて重大な関心を持つものであるため,より行政への減災措置の期待は高い。 d 減災措置としての情報提供が必要かつ容易であったこと被告としては,由良川の河川整備には相当の時間を要すること,大 谷川の河川整備は未着手であること,由良川及び大谷川の氾濫の可能性が平成16年台風後も軽減されていないこと,今後も相当の期間その可能性が軽減されないことを認識していたのであれば,河川の改修のみに頼るのではなく,氾濫の発生を前提として,浸水被害に遭う危険性を減少させるために,より現実的に取り得る減災措置を講じるべ きであった。 しかし,被告は,土地区画整理事業の見直し,建築基準法39条に基づく災害危険区域の指定,土地区画整理事業地の盛土・嵩上げなどの減災措置を講じなかったのであるから,そうである以上は,住民及び住民となろうとする者に対し,a地区の浸水被害の危険性に関する 情報を適宜受け取れるような状態にしておくべきであり,被告にとってそれは容易であった。 被告は,a地区内において減災措置をとっている旨主張するが,減災措置による効果や現実の危険性の除去の立証はなく,次のとおり減災措置としては不十分であるから,情 告にとってそれは容易であった。 被告は,a地区内において減災措置をとっている旨主張するが,減災措置による効果や現実の危険性の除去の立証はなく,次のとおり減災措置としては不十分であるから,情報提供義務を負わないことには ならない。 - 26 - イ情報提供義務の具体的内容及びその義務違反以上のことからすると,被告は,ハザードマップを作成し,これを公表してインターネットを通じて閲覧できるようにし,ハザードマップを印刷物によりa地区の住民及び住民となろうとする者に配布することで浸水被害に遭う危険性について一般に周知させる義務を負っていた。 そして,具体的な情報の提供としては次の方法をとるべきであった。 ① a地区土地区画整理事業及びこれにより造成された土地に関する情報が掲げられたWEBページに,浸水被害に遭う危険性の高さについて注意を喚起する危険表示を行った上,ハザードマップを掲示し,あるいはハザードマップが閲覧できるページへのリンクを貼ること ② a地区土地区画整理事業により造成された土地の売却に関する広告,宣伝を行う場合は,その一面又はトップページ内に,浸水被害に遭う危険性の高さについて注意を喚起する危険表示を行った上,ハザードマップが閲覧できるURLの表示又はリンクを貼ること③ a地区土地区画整理事業により造成された土地を被告が自ら販売す る場合は,物件調書に浸水被害に遭う危険性の高さについて注意喚起する危険表示を行った上,ハザードマップが閲覧できるURLの表示をすること④ a地区土地区画整理事業により造成された土地の売買に被告が直接関与しない場合に備え,同土地の仲介に係る不動産仲介業者に対して, ハザードマップの交付を行った上で,浸水被害に遭う危険性の高さについての情報 画整理事業により造成された土地の売買に被告が直接関与しない場合に備え,同土地の仲介に係る不動産仲介業者に対して, ハザードマップの交付を行った上で,浸水被害に遭う危険性の高さについての情報提供を行うよう,条例上の適切な措置をとること,又は少なくとも行政指導その他の適切な措置をとること⑤ 嵩上げ,基礎を高くする,損害保険の情報提供等を行うこと⑥ a地区の宅地購入希望者が現地を確認する際に,過去の水害発生状況 や浸水被害に遭う危険性の高さを認識できるよう,浸水深(想定浸水深- 27 - 又は実績浸水深)を表示する洪水標識を設置し,又は目につきやすい場所に看板等を設置し,浸水被害に遭う危険性の高さについて注意を喚起する危険表示を行った上,浸水被害に遭う危険性の高さに関する必要な情報が得られる問い合わせ先やこれが入手できるWEB上のURLを表示すること このように,被告は,上記義務を負っていたにもかかわらず,a地区原告らに対し,上記各情報提供を行わなかった。 ウ違法性行政の不作為は,㋐被侵害法益の重要性,㋑予見可能性,㋒結果回避可能性及び㋓期待可能性の4要素の総合判断により国家賠償法上違法とな る(最判平成元年11月24日民集43巻10号1169頁)。前記の情報提供義務の発生根拠に基づいて発生した情報提供義務を履行しないことは著しく合理性を欠き,国家賠償法1条1項の適用上も違法と評価される。 本件では,㋐生命,身体,多額の資本投資をして入手する代替性のない住宅という財産及び平穏で安心な生活という極めて重要な法益に対する 侵害があり,㋑水害被害の歴史からすると,被告が平成25年台風におけるa地区原告らの被害を十分予見することが可能であったこと,㋒洪水標識の設置,不動産仲介業者に対する行政指導 な法益に対する 侵害があり,㋑水害被害の歴史からすると,被告が平成25年台風におけるa地区原告らの被害を十分予見することが可能であったこと,㋒洪水標識の設置,不動産仲介業者に対する行政指導,回避措置についての情報提供等を行えば,購入者も基礎を高くするなどの措置をとったり,水害保険に加入したりすることで結果を回避することが可能であったこと,㋓前記 のとおり,a地区原告らと被告との間には情報格差があり,市民を災害から保護する責務を有する者たる地方公共団体としての立場及び自ら危険性を作出した立場であったことからすると,被告には,情報を集積し,被害を受ける者に対する最も効果的な情報提供が行える者として,a地区原告らが被害に遭う危険性を回避するべき措置を取ることが期待されてい たというべきである。これらに加え,本件a地区土地は,被告が造成した- 28 - 土地であり,被告が自ら危険を作出したことを併せ考慮すると,被告が前記のような情報提供を行わないことは,著しく合理性を欠くものと認められるから,上記の被告の情報提供義務違反は,国家賠償法上1条1項上も違法と評価される。 (被告の主張) ア情報提供義務の発生根拠 法的根拠情報提供義務が発生する前提としては,当事者間に信義誠実の原則が支配するような契約交渉段階における関係又はこれに類似する緊密な関係があることが必要であるところ,単なる土地購入希望者であるa地区 原告らと被告との間には,契約交渉準備段階における関係又はこれに類似するような関係はない。 a地区原告らは,災害対策基本法,水防法及び宅建業法の3つの法令を根拠法令として主張するが,災害対策基本法は,地方公共団体の土地購入希望者に対する情報提供義務について定めるものではない。 はない。 a地区原告らは,災害対策基本法,水防法及び宅建業法の3つの法令を根拠法令として主張するが,災害対策基本法は,地方公共団体の土地購入希望者に対する情報提供義務について定めるものではない。また, 水防法は,住民に対する関係でのみ,防災計画に定められた事項を周知させるために必要な措置を講じなければならないと規定している(同法15条4項(平成25年6月12日号外法律第35号による改正前のもの))。さらに,宅建業者ではない被告は,宅建業法上の重要事項説明を行う義務を負わない上,宅建業法上も浸水被害に遭う危険性については 宅建業者が説明すべき重要事項として掲げられておらず(同法35条1項各号,同法施行規則16条の4の3参照),そもそも,地方公共団体と土地購入希望者は宅地を取引する関係にはないのであるから,宅建業法を参照すること自体が不合理である。 以上のことからすると,a地区原告らが言及する法令はいずれも土地 購入希望者に対する情報提供義務の根拠にはなり得ない。 - 29 - 具体的な根拠事実a 危険性の作出被告は,a地区土地区画整理事業に当たって,昭和56年の市街化区域指定の際や平成3年の都市計画決定の際,京都府と協議し,京都府が大谷川の治水事業を進めていくこと,大谷川上流部の石原口池, 奥池及び新池が設置され,一定の調整機能が付与されていたこと,京都府の指導の下,フラップゲート,道路の嵩上げ等の災害防止の具体的措置を講じており,上記事業に何ら問題はなく,被告が危険性を作出したとはいえない。 b 浸水危険性の認識 被告が,ハザードマップ上,a地区が浸水被害に遭う可能性を有していたことを認識していたことは認める。 c 行政への減 はいえない。 b 浸水危険性の認識 被告が,ハザードマップ上,a地区が浸水被害に遭う可能性を有していたことを認識していたことは認める。 c 行政への減災措置の期待由良川の管理責任者は国,大谷川の管理責任者は京都府であるので,これらの川の治水対策を行うのは国又は京都府である。また,平成2 5年台風による浸水被害は,由良川の上流において豪雨の影響を受け,福知山市を流れる由良川が氾濫したことが原因となって発生した浸水被害であるので,大谷川の治水対策は,原告らが主張する情報提供義務とは無関係である。さらに,大谷川単独の氾濫では,a地区原告らの居住する土地に被害が生じることはない。したがって,大谷川の治 水対策の問題は,情報提供義務の存在を基礎付けるものではない。 d 減災措置としての情報提供が必要かつ容易であったこと被告は,前記主張のとおり,洪水調整池の設置,石原口池への調整機能の付与,フラップゲートの設置,道路の嵩上げの減災措置を講じていた。 イ情報提供義務の具体的内容及びその義務違反- 30 - 被告は,本件ハザードマップを福知山市の各世帯に個別配布しており,福知山市への転入者に対しても転入の際に交付しているから,水防法に定める義務を履行している。 また,被告は,平成18年度より,浸水区域に居住する住民の浸水被害への警戒意識の更なる高揚を目指し,本件ハザードマップを補助する目的 で想定浸水深を示す標識を設置する実施計画を策定し,平成21年度及び平成22年度には浸水想定区域に該当する自治会の70か所に想定浸水深を示す標識を設置した。なお,a地区については,想定浸水深を示す標識を設置していないが,これは,a地 計画を策定し,平成21年度及び平成22年度には浸水想定区域に該当する自治会の70か所に想定浸水深を示す標識を設置した。なお,a地区については,想定浸水深を示す標識を設置していないが,これは,a地区の自治会から,平成22年12月2日付け書面で,平成16年台風による被害が甚大であったことを踏まえ 住民の心情を考慮し,想定浸水深を示す標識の設置を辞退する旨の申出を受けたため,a地区については想定浸水深を示す標識を設置していない。 ウ違法性a地区原告らが引用する前記最高裁判決は,行政機関の規制権限不行使の違法性が問題となった事案において,規制権限の不行使が違法となる場 合があることを認めたものであって,本件訴訟のように事実行為を行わないと行政機関の不作為が違法となる余地を認めたものではない。 行政機関において,事実行為をするか否か,事実行為をするとしてどのような事実行為をするかを判断する場面では,行政権限の行使不行使を判断する場面と比較して,行政機関に非常に広い裁量が認められるというべ きである。そして,a地区が浸水被害に遭う危険性に関する情報は,被告が提供しなければ取得できない情報ではなく,土地購入希望者が自ら調査して取得することも可能であるし,土地の売主や仲介業者等から提供を受けることも可能である。 エ原告ごとの個別事情 原告Bについて- 31 - 原告Bは,福知山市内で出生し,本件土地2を購入する約7年前から,JRa駅付近の本件土地2に近接した場所に居住していた。したがって,原告Bは,平成16年台風時の浸水被害状況を相当程度把握していたと思われる。また,平成18年6月23日当時,福知山市の住民であったから,本件ハザードマップの配布を受けており,本件各土地が浸水被害 原告Bは,平成16年台風時の浸水被害状況を相当程度把握していたと思われる。また,平成18年6月23日当時,福知山市の住民であったから,本件ハザードマップの配布を受けており,本件各土地が浸水被害 に遭う危険性に関する情報を保有していた。これらの事実によると,原告Bは,本件土地2の購入の際,本件各土地が浸水被害に遭う危険性に関する情報を保有し,又は容易に浸水被害に遭う危険性に関する情報を取得できる状況にあったから,被告と原告Bとの間に,a地区が浸水被害に遭う危険性について,情報力の格差は存在しない。 原告Cについて原告Cは,福知山市内において出生し,現在に至るまで福知山市の市民である。したがって,原告Cは,平成18年6月23日時点において福知山市の住民であったから,被告による本件ハザードマップを受け取っており,本件各土地が浸水被害に遭う危険性に関する情報を保有して いた。原告Cは,出生から本件土地3購入までの約27年間,福知山市のa地区に近接した場所又はa地区内に居住しており,本件土地3購入に至るまでの間もa地区の浸水被害に遭う危険性について相当程度認識していたものと推認される。 また,原告Cは,本件土地3を購入する際,叔父から「あそこ浸から んのか」という話を聞いたことを契機として,仲介業者であるHから,「平成16年台風の時でも自動車のタイヤ半分が水に浸かるかどうかの被害しか出ていない。」との浸水被害に関する情報を聞いている。 以上のことからすると,原告Cは,本件土地3購入の際,本件各土地が浸水被害に遭う危険性に関する情報を保有し,又は容易に本件各土地 が浸水被害に遭う危険性に関する情報を取得できる状況にあったのであ- 32 - るから,被告と原告Cの間に,a地区が浸水被害に遭う危険性に 険性に関する情報を保有し,又は容易に本件各土地 が浸水被害に遭う危険性に関する情報を取得できる状況にあったのであ- 32 - るから,被告と原告Cの間に,a地区が浸水被害に遭う危険性について,情報力の格差は存在しない。 原告Eについて原告Eは,平成18年6月7日に福知山市に転入しており,同月23日当時,福知山市の住民であったから,本件ハザードマップを受けて取 っており,また,広報ふくちやまの配布も受けていたのであるから,本件各土地が浸水被害に遭う危険性に関する情報を保有していた。 原告Eは,仲介業者であるHから,数年前にa地区で水害があったことを,建築業者の森下住建からは,「この辺の地域は,水害のある地域である」ことをそれぞれ聞いており,a地区が浸水被害に遭う危険性につ いて情報提供をうけており,被告との間に情報力の格差は存在しない。 原告Fについて原告Fは,平成18年9月1日に福知山市e町に転入したが,同所とa地区との間は,直線距離で2400mほどである。また,原告Fは,福知山市に転入した際,本件ハザードマップの交付を受けていた。また, 原告Fは,土地を探していた際,セキスイハイムからa地区の水害の話を聞いたという事実がある。したがって,原告Fは,本件各土地が浸水被害に遭う危険性に関する情報を保有していたのであるから,a地区が浸水被害に遭う危険性について,被告との間に情報力の格差は存在しない。 ⑶ 原告らの損害(原告らの主張)被告の説明義務又は情報提供義務違反により,原告らは,次のとおり損害を被った。上記説明義務又は情報提供義務が果たされていれば,原告らは,土地を購入しないという選択,又は洪水に備えた建物設計,水害に対応した 損害保険やより大きな補償を得ら らは,次のとおり損害を被った。上記説明義務又は情報提供義務が果たされていれば,原告らは,土地を購入しないという選択,又は洪水に備えた建物設計,水害に対応した 損害保険やより大きな補償を得られる保険への加入により損害を回避・軽減- 33 - させることができたのであるから,相当因果関係は認められる。 ア原告A 合計1380万0300円 建物補修費用 719万円平成25年台風により,自宅建物が床上70cmまで浸水し,補修が必要になった。なお,建物の補修に必要な必要は719万円であるが, 原告Aには当時必要な費用を支払う資力がなく,最低限の補修のみを行ったため,実際の支出額は181万円であった。 動産損害合計54万0300円a 電子レンジ計5万9800円本件浸水被害を受け,生活のための臨時措置として,代替品として 安価なもの(6000円)を水害直後に購入し,その後被災前と同等品(5万3800円)を購入し直した。 b 冷蔵庫計15万3000円電子レンジと同様に,生活のための臨時措置として,代替品として安価なもの(2万3000円)を水害直後に購入し,その後被災前と 同等品(13万円)を購入し直した。 c 手洗い鉢 2万7500円トイレの収納棚及び壁の補修のため,トイレの手洗い鉢の取換えを余儀なくされた。 d 自動車 30万円 当時所有していた自動車(エブリィワゴン)が平成25年台風による水害で水没したため,平成25年9月24日,応急修理(2万9843円)を行ったが,エンジンがいつ止まるか分からない状態であったため,買替えを余儀なくされた。 慰謝料 500万円 原告Aは,平成25年台風により床上浸水の被害を受け,それ 43円)を行ったが,エンジンがいつ止まるか分からない状態であったため,買替えを余儀なくされた。 慰謝料 500万円 原告Aは,平成25年台風により床上浸水の被害を受け,それにより- 34 - 生命身体に対する恐怖を感じ,極めて甚大な精神的苦痛を味わった。その後も大雨のたびに浸水被害の恐怖に脅かされており,現に,平成29年台風により床下浸水の被害も受けた。このような精神的苦痛を慰謝するための金額は500万円を下らない。 弁護士費用 107万円 本件訴訟の遂行には,法的知識が要求され,弁護士の代理が必須であるところ,その費用としては,上記損害合計の約1割が相当である。 イ原告B 合計554万3484円 建物補修費用 630万1575円平成25年台風により,自宅建物が床上125cmまで浸水し,補修 が必要になった。ただし,原告Bは,費用を抑えるために必要な補修の全部は行わず,一部補修に留めるなどしたため,実際の支出額は469万0332円である。 付属設備補修費用 7万2030円上記床上浸水被害を受け,エアコン室外機(4万4100円)及び床 暖房制御基盤(2万7930円)の修補を余儀なくされた。 家財道具買替費用 151万2879円(ピアノ等25点合計額) 慰謝料 500万円原告Bは,平成25年台風によって生命・身体への脅威にさらされるとともに,自宅の床上125㎝まで浸水する甚大な被害を受けた。その 後も原告Bは,大雨の度に浸水被害を受ける恐怖に脅かされ続け,平成29年台風の際は,自宅カーポートが完全に水没した上,建物も床上25㎝まで浸水するに至った。このような精神的苦痛は舌筆に尽くしがたいも も原告Bは,大雨の度に浸水被害を受ける恐怖に脅かされ続け,平成29年台風の際は,自宅カーポートが完全に水没した上,建物も床上25㎝まで浸水するに至った。このような精神的苦痛は舌筆に尽くしがたいものであり,これを慰謝するための金額は500万円を下らない。 損益相殺 ▲766万3000円 原告Bは,平成25年台風当時,東京海上日動火災保険株式会社が提- 35 - 供する水害保険(火災保険の特約)に加入しており,平成25年9月26日,同社から保険金として766万3000円の支払を受けた。 弁護士費用 32万円ウ原告C 合計723万4539円 建物補修費用 1020万6299円 平成25年台風により,自宅建物が床上130㎝まで浸水し,補修が必要になった。 動産損害合計696万円前記床上浸水被害を受け,家財道具買替え等のために合計511万5000円,車両損害等として181万5000円,ペットとして飼って いたモモンガ(3万円で購入)が死亡し,3万円の損害を受けたことにより,上記合計金額のとおり損害を受けた。 慰謝料 500万円原告Cは,平成25年台風によって自宅が徐々に浸水していく中で生命身体の恐怖を感じ,自宅の床上130㎝まで浸水する甚大な被害を受 けた。その後も原告Cは,大雨の度に浸水被害を受ける恐怖に脅かされ続け,平成29年台風の際は,床上浸水90㎝の被害を受けた。このような精神的苦痛は舌筆に尽くしがたいものであり,このような精神的苦痛を慰謝するための金額は500万円を下らない。 損益相殺 ▲1540万1760円 原告Cは,平成25年台風当時,日本興亜損害保険株式会社の水害保険(すまい総合フルハウ 神的苦痛を慰謝するための金額は500万円を下らない。 損益相殺 ▲1540万1760円 原告Cは,平成25年台風当時,日本興亜損害保険株式会社の水害保険(すまい総合フルハウス)に加入しており,平成25年10月23日に同社から保険金として1358万6760円の支払を受けた。また,三井住友海上火災保険株式会社の車両保険にも加入しており,平成25年9月26日同社から保険金として181万5000円の支払を受けた。 弁護士費用 47万円- 36 - エ原告D 合計535万1000円 賃料 5万1000円原告Dは平成25年7月25日,エコデザイン株式会社との間で,本件土地4上に新築建物を建築する工事請負契約を締結し,同契約上引渡日は同年11月10日とされていた。しかし,棟上げが済んだところで 平成25年台風に遭い,床上浸水したため,補修の必要が生じたことから,引渡しが同年12月9日になった。そのため,原告Dは,転居する前に当時住んでいたアパートに引き続き居住することを余儀なくされ,1か月分の家賃相当の損害を受けた。 慰謝料 500万円 自宅建物は,平成25年台風により床上10㎝程度浸水し,完成する前に被害を受けたが,このような状況を目の当たりにし,甚大な精神的苦痛を被った。また,今後も大雨の度に自宅建物が浸水し,生命身体に危険が及ぶのではないかという恐怖に脅かされ続けており,平成29年台風では浸水の被害がなかったものの,浸水被害に遭う現実を突き付け られた。このような精神的苦痛を慰謝するための金額は500万円を下らない。 弁護士費用 30万円オ原告E 合計731万5000円 建物補修費用等 178 られた。このような精神的苦痛を慰謝するための金額は500万円を下らない。 弁護士費用 30万円オ原告E 合計731万5000円 建物補修費用等 178万5000円 平成25年台風により,自宅建物が床上15㎝まで浸水し,補修が必要になった。なお,給湯器及び付属設備機器取替の費用も含まれている。 動産損害 5万円前記床上浸水被害により使用できなくなり,買い替えることとなった家財道具等の金額は,少なくとも5万円を下らない。 慰謝料 500万円- 37 - 原告Eは,平成25年台風により,床上最大15cm の浸水の被害を受け,自宅が無くなる恐怖を感じたほか,十分な給付金や見舞金を受け取ることができなかったため,浸水により使用できなくなった家財道具を買い替えることができず,使用を継続せざるを得ない状況に置かれている。また,今後も大雨の度に自宅建物が浸水し,生命身体に危険が及ぶ のではないかという恐怖に脅かされ続けており,幸い平成29年台風では浸水の被害がなかったものの,浸水の恐怖に襲われたものである。このような精神的苦痛を慰謝するための金額は500万円を下らない 弁護士費用 48万円カ原告F 合計1583万6405円 建物補修費用等 675万7541円平成25年台風により,自宅建物が床上110㎝まで浸水し,補修が必要になった。 動産損害合計552万3864円a キッチンやトイレの入替取付工事費用合計136万4950円 前記床上浸水により,キッチンやトイレ等が使用不能となり,入れ替えざるを得なかった。 b 給湯器の入替取付工事費用 36万3000円 レの入替取付工事費用合計136万4950円 前記床上浸水により,キッチンやトイレ等が使用不能となり,入れ替えざるを得なかった。 b 給湯器の入替取付工事費用 36万3000円c テレビ 9万1584円d タブレット端末 1万0330円 e その他家具家電合計70万円上記浸水被害により,洗濯機(15万円),冷蔵庫(15万円),電子レンジ(4万円),ソファ(7万円),パソコン2台(合計14万円),IHコンロ(15万円)等が使用できなくなった。 f 自動車2台合計299万4000円 原告Fは,平成25年台風当時2台所有していたが,いずれも平成- 38 - 25年台風により使用不能となり,廃車にして買替えを余儀なくされた。 慰謝料 500万円原告Fは,平成25年台風によって生命・身体への脅威にさらされるとともに,自宅の床上110㎝まで浸水する甚大な被害を受けた。その 後も原告Fは,大雨の度に浸水被害を受ける恐怖に脅かされ続け,現に,平成29年台風の際は,床上3㎝以上の浸水する被害を受けた。このような精神的苦痛を慰謝するための金額は500万円を下らない。 損益相殺 ▲269万5000円原告Fは,平成25年台風当時,所有する自動車2台について,それ ぞれ保険に加入しており,保険金として,平成25年10月3日に東京海上日動株式会社から214万5000円,同月18日にあいおいニッセイ同和損害保険株式会社から55万円の支払を受けた。 弁護士費用 125万円キ原告G 合計715万0804円 建物補修費用等合計155万0500円上記浸水被害により,次のとおりの支出を余儀なくされ た。 弁護士費用 125万円キ原告G 合計715万0804円 建物補修費用等合計155万0500円上記浸水被害により,次のとおりの支出を余儀なくされた。 自宅基礎泥洗浄・消毒費用 4万円外構修繕費用 9万5000円エコ給湯器他修繕費用 25万2000円 電気系統復旧費用 3万1500円自宅復旧工事費用 54万4000円機器入換費用 58万8000円 冷蔵庫買替え費用 9万9800円 自動車購入費用 185万0504円 原告Gは,本件当時自動車2台を所有・使用していたところ,2台と- 39 - も水没し,使用することができなくなったため,1台分のみ買い替えたものである。 慰謝料 300万円原告Gは,自宅に押し寄せた水の脅威を目の当たりにし,生命・身体の危機にさらされ,強い恐怖を感じた。また,床上浸水の被害に遭い, 自宅修繕のため,平成25年12月頃まで自宅建物の2階のみで生活することを余儀なくされた。さらに,平成25年台風以降,大雨の度に,再び水害に見舞われないかという恐怖に脅かされ続けている。このような精神的苦痛を慰謝するための金額は300万円を下らない。 弁護士費用 65万円 (被告の主張)ア総論 仮に,被告に説明義務違反又は情報提供義務違反が認められるとしても,原告らは,本件ハザードマップにより,昭和28年台風と同規模の大雨があれば,3~5mの浸水被害が生じ得ることを認識していたので あるから,原告らは,浸水被害に対する備えを行うことが可能だったのであり,被告の説明義務違反又は情報提供義務違反と原告らの損害と 雨があれば,3~5mの浸水被害が生じ得ることを認識していたので あるから,原告らは,浸水被害に対する備えを行うことが可能だったのであり,被告の説明義務違反又は情報提供義務違反と原告らの損害との間に相当因果関係は存在しない。 また,平成25年台風は降雨量が非常に多く,稀に見る規模の災害であったから,仮に被告において原告らの主張する説明義務又は情報提供 義務を履行していたとしても,平成25年台風による浸水被害は防げなかったというべきであるから,被告の義務違反と原告らの損害との間に相当因果関係は存在しない。 仮に被告に上記義務違反が認められたとしても,その義務違反がある場合に侵害されるのは,被告が正しい情報を提供していれば,他の選択 ができたはずであるという自己決定権が奪われたことである。そして,- 40 - 適切な情報を提供された場合の原告らの選択は必ずしも一つではなく,適切な情報を提供されていれば土地を購入しなかったとはいえないから,上記義務違反と原告らが主張する具体的な財産的被害との相当因果関係はなく,自己決定権が侵害されたものとして,慰謝料の賠償のみが認められるべきである。 原告らは,それぞれ平成25年台風の浸水被害による建物補修費用及び動産損害について,前者は修理額全額,後者は買替え費用を請求しているが,これらの損害額は被害に遭った建物及び動産の時価額に限定されることになるところ,原告らは,建物補修費用及び動産損害等の請求に当たって,いずれも経年劣化(減価償却)を考慮しておらず不当であ る。また,慰謝料については,原告らの中には被告から相当額の金銭的支援を受けている者もおり,この事実は精神的苦痛を慰謝する効果を有するから,慰謝料額の算定に当たって考慮すべきである。 る。また,慰謝料については,原告らの中には被告から相当額の金銭的支援を受けている者もおり,この事実は精神的苦痛を慰謝する効果を有するから,慰謝料額の算定に当たって考慮すべきである。 イ各論 原告A 不知又は争う。 a 建物補修費用については,建物補修費用に関する見積書(甲A13)には疑義があり,信用性に欠けることから,原告Aの主張する建物補修費用をそのまま認めることはできない。 b 車両買替費用については,買替えが必要な損害が生じていたのかは 証拠上判然とせず,立証がされていないことから,車両買替費用の請求は認められない。買替費用を30万円とする根拠も不明である。なお,買主はSとなっており,水没した車両の名義が原告Aであったのかも不明である。 c また,原告Aは,平成25年台風の後,被告から被災者住宅支援事 業に基づく補助金として約60万円を受領している。 - 41 - 原告B不知又は争う。 原告Bは,免責金額5000円を除いて,平成25年台風による被害に関する物的損害について,自身が加入する任意保険会社から保険金を受け取っているところ,この保険金は保険会社が綿密な調査を行った上 で平成25年台風と相当因果関係を有する損害に限定して損害額を認定して支払を行った金額であるから,原告Bが被った物的損害は免責金額を除いてすべて填補されている。したがって,上記金額を除いてもなお填補されていない物的損害が存在するとの原告Bの主張には理由がない。 また,原告Bは,平成25年台風の後,被告から住宅再建のための支 援制度に基づき150万円を受領している。 原告C不知又 るとの原告Bの主張には理由がない。 また,原告Bは,平成25年台風の後,被告から住宅再建のための支 援制度に基づき150万円を受領している。 原告C不知又は争う。 原告Cは,平成25年台風による被害に関する物的損害について,自身が加入する任意保険会社から保険金を受け取っているところ,同保険 金は上記保険会社が綿密な調査を行った上で平成25年台風と相当因果関係を有する損害に限定して損害額を認定して支払を行った金額であるから,原告Cが被った物的損害は免責金額を除いてすべて填補されている。したがって,上記金額を除いてもなお填補されていない物的損害が存在するとの原告Cの主張には理由がない。 また,原告Cは,平成25年台風の後,被告から住宅再建のための支援制度に基づき125万円又は150万円を受領している。 原告D不知又は争う。 原告E 不知又は争う。 - 42 - 原告Eは,平成25年台風の後,被告から数十万円単位の金銭を受領している。 原告F不知又は争う。 原告Fは,自動車2台の買替費用全額として299万4000円を請求 しているが,買替費用の中には未預託リサイクル料等,賠償対象とならない項目があり,項目それぞれについて相当因果関係のある損害かを判断する必要がある。そして,原告Fは,任意保険会社から保険金として269万5000円の支払を受けており,保険会社は明細書を取得して項目ごとに相当因果関係を判断して支払を行うことからすると,浸水被害と相当因 果関係を有する車両損害は保険金により全て填補されているというべきである。したがって,填補外の車両損害が を取得して項目ごとに相当因果関係を判断して支払を行うことからすると,浸水被害と相当因 果関係を有する車両損害は保険金により全て填補されているというべきである。したがって,填補外の車両損害が存在するとの原告Fの主張には理由がない。 原告G不知又は争う。 自動車に係る損害について,受注明細票(甲25)だけでは,車両の時価額は立証されていない。不法行為と相当因果関係を有する車両損害は,車両の再購入費用そのものではなく,全損した車両時価及び買替えに必要な諸費用である。また,不法行為と相当因果関係を有する買替諸費用には含まれない費用(自動車税等)が損害として計上されている点でも不当で ある。 また,原告Gは,平成25年台風の後,被告から地域再建被災者住宅支援事業に基づき50万円を受領したほか,被告等から義援金として10万円単位で複数回金銭を受領している。 ⑷ 過失相殺 (被告の主張)- 43 - 将来永続的に居住する建物を建築するために土地を取得するのであれば,原告らとしては,自らの責任で当該土地周辺の自然災害に対する安全性を含む場所的な環境を自ら調査すべきであった。また,前記のとおり,ハザードマップや広報紙によって浸水被害を含む自然災害の危険性が周知されていたのであるから,原告らは,容易に本件土地1ないし7が浸水被害に遭う危険 性に関する情報を取得することができた。そうであるにもかかわらず,原告らは自ら情報を取得することを怠ったといえる。 したがって,仮に被告に何らかの損害賠償義務が生じたとしても,損害の公平な分担の理念に照らし,相当大幅な過失相殺がされるべきである。 (原告らの主張) 争う。 第3 当 したがって,仮に被告に何らかの損害賠償義務が生じたとしても,損害の公平な分担の理念に照らし,相当大幅な過失相殺がされるべきである。 (原告らの主張) 争う。 第3 当裁判所の判断 1 認定事実前記前提となる事実,証拠(甲A28,甲B21,甲C22,甲D9,甲E12,甲F19,甲G1,乙9(併合前乙1),乙48~51,57,58のほ か後掲各証拠,証人T,同U,同V,同W,同Q,同R,同M,原告A,同B,同C,同E,同F及び同G)及び弁論の全趣旨によると次の事実が認められる。 ⑴ 法令の定めア災害対策基本法災害対策基本法は,国土並びに国民の生命,身体及び財産を災害から保 護するため,防災に関し,国や地方公共団体等を通じて必要な体制を確立すること等を目的とし(同法1条),市町村は,当該市町村の地域並びに当該市町村の住民の生命,身体及び財産を災害から保護するため,関係機関等の協力を得て,当該市町村の地域に係る防災に関する計画を作成し,実施する責務を有する旨定めている(同法5条1項)。また,国及び地方公共 団体は,災害の発生を予防し,又は災害の拡大を防止するため,防災上必- 44 - 要な気象等の情報等の業務に関する施設及び組織等に関する事項や災害の予報等の改善に関する事項の実施に努めなければならない旨定めている(同法8条2項5,6号)。さらに,市町村防災会議(同会議を設置しない市町村にあっては,当該市町村の市町村長)は,市町村地域防災計画を作成しなければならないものとされている(同法42条1項)。なお,同法 53条では,災害が発生した場合の被害状況等の報告義務について定めている。 イ水防法(甲共27)水防法(平成25年6月12日号外法律第3 とされている(同法42条1項)。なお,同法 53条では,災害が発生した場合の被害状況等の報告義務について定めている。 イ水防法(甲共27)水防法(平成25年6月12日号外法律第35号による改正前のもの。 以下同じ。)においては,都道府県知事は,同法11条1項又は13条2 項の規定により指定した河川(洪水予報河川及び水位周知河川)について,洪水時の円滑かつ迅速な避難を確保し,水災による被害の軽減を図るため,当該河川の洪水防御に関する計画の基本となる降雨により当該河川が氾濫した場合に浸水が想定される区域を浸水想定区域として指定するものとされ(同法14条1項,同法施行規則(平成25年7月5日 号外国土交通省令第59号による改正前のもの。以下同じ。)1条1項),上記指定をしたときは,浸水想定区域図を作成して,同区域及び浸水した場合に想定される水深を公表するとともに,関係市町村の長に通知しなければならないとされている(同法14条3項,同法施行規則2条1項)。 浸水想定区域をその地域に含む市町村の長は,市町村地域防災計画(災害対策基本法42条参照)に定められた事項を住民に周知させるため,洪水ハザードマップ(浸水想定区域及び浸水した場合に想定される水深を表示した図面に洪水予報等の事項を記載したもの)を作成,配布その他必要な措置を講じることが義務付けられている(水防法15条4 項)。 - 45 - 水防法施行規則4条は,水防法15条4項に基づく周知のために必要な措置として,洪水ハザードマップを,印刷物の配布その他の適切な方法により各世帯に提供すること(同条1号),洪水ハザードマップの情報を,インターネットの利用その他の適切な方法により,住民がその提供を受けることができる状態に置くこと(同条2 の配布その他の適切な方法により各世帯に提供すること(同条1号),洪水ハザードマップの情報を,インターネットの利用その他の適切な方法により,住民がその提供を受けることができる状態に置くこと(同条2号)を定めている。 ⑵ 福知山市における平成25年台風より前の主な水害の状況(甲共1,併合前甲13)ア昭和28年台風による水害昭和28年9月24日から同月25日にかけて,台風13号(昭和28年台風)が近畿地方に接近し,その影響を受けた豪雨により,由良川上流 では時間雨量30~60㎜,総雨量が約500㎜に達し,福知山市においても約雨量360.2㎜を記録した。由良川の最高水位は,福知山市内においても7.8mに達し,その左岸が破堤したため,福知山市内は一面湖と化した。昭和28年台風の影響により,福知山市等において,死者36名,負傷者893名,家屋流失205棟,全壊1178棟,半壊1432 棟,床上浸水5307棟,床下浸水2458棟等の被害が発生した。また,a地区では,その一部が浸水し,本件a地区土地付近では,1.0~2. 0m未満の浸水が生じた(甲共6)。 イ平成16年台風による水害平成16年10月20日,台風23号(平成16年台風)が近畿地方に 接近し,その影響を受けた豪雨により,福知山市で総雨量約288.7㎜を記録し,福知山市内における由良川の最高水位が7.55mに達し,由良川が氾濫した。同台風の影響により,福知山市等において,死者5名,全壊17棟,床上浸水1251棟,床下浸水418棟の被害が発生した。 また,a地区では,本件a地区土地付近を含む北西付近が0.5m以上浸 水し,床上浸水7棟,床下浸水14棟の被害があった(甲共5,甲共6~- 46 - 9)。 被告は,平成16年 した。 また,a地区では,本件a地区土地付近を含む北西付近が0.5m以上浸 水し,床上浸水7棟,床下浸水14棟の被害があった(甲共5,甲共6~- 46 - 9)。 被告は,平成16年台風後,a地区の被害状況を調査した(乙26の1・2)。 ウ平成23年の水害平成23年5月29日に発生した台風2号により,福知山市内における 由良川最高水位が5.14mとなり,冠水1,177ha,床上浸水1棟,床下浸水8棟の被害が生じた。また,同年9月20日に発生した台風15号によっては,福知山市内における由良川最高水位5.73mを記録し,冠水1,334ha,床上浸水2棟,床下浸水7棟の被害が生じた。 (甲共5,併合前甲14,乙10の3) エ本件a地区土地及び本件土地7の被害状況本件a地区土地は,昭和28年台風時に1~2m,平成16年台風時に0.5m以上浸水した(甲共6)。また,本件土地7は,昭和28年台風及び平成16年台風のいずれにおいても0.5m以上浸水した(併合前甲11)。 オ上記各水害についての報道状況平成16年から平成23年にかけて,平成16年台風や平成23年9月20日に発生した台風15号による福知山市内の浸水被害等について,テレビ放送で複数回報道された(乙45の1・2)。 ⑶ 河川の整備状況等 ア由良川について由良川は,京都,滋賀,福井の府県境の三国岳に発し,京都府南丹市c町の山間部を西流しながら綾部市を経て,福知山市内において土師川を合わせて流れを北に転じ,宮津市及び舞鶴市を左右岸に望みながら日本海に注ぐ流路延長146㎞,流域面積1880㎢の一級河川であり,その管理 主体は国土交通省である。福知山市は,綾部市から福知山市にかけて勾配- に転じ,宮津市及び舞鶴市を左右岸に望みながら日本海に注ぐ流路延長146㎞,流域面積1880㎢の一級河川であり,その管理 主体は国土交通省である。福知山市は,綾部市から福知山市にかけて勾配- 47 - が緩くなるという地形のために,由良川の氾濫が発生しやすい地域であった。(以上につき甲共5,甲共13,併合前甲14)昭和22年には由良川の本格的な改修事業が開始され,それ以降,建設省福知山工事事務所(当時)は,由良川下流部を主体に約490万㎡に及ぶ河道拡幅と掘削,福知山~綾部間での連続堤防の構築,和久川改修と福 知山市内の内水排水施設の整備,牧川改修や土師川の災害復旧助成による改修等を進めた。 国土交通省近畿地方整備局福知山河川国道事務所は,平成11年に由良川水系河川整備基本方針を,平成15年に由良川水系河川整備計画を策定し,福知山市周辺においては,現在これらに基づいた連続堤整備作業を進 めている(甲共5,甲共13,併合前甲14)。 平成25年台風発生時点で,b地区付近において,由良川の堤防が未完成の部分があった(併合前甲17,乙40)。被告は,当時,由良川の堤防が未整備であること,由良川の堤防の整備が完成する見込み及びその時期に関する情報を保有していた。また,被告は,由良川の堤防に未完成の部 分があるため,仮に平成16年台風と同程度の降雨があった場合には,由良川の氾濫により,a地区及びb地区が浸水する可能性があることを認識していた(証人V(16~17頁))。 イ大谷川について大谷川は,a地区内を流れる一級河川であり,a地区北端をほぼ東西に 走り,本川たる由良川に合流する支川で,その管理主体は京都府である。 大谷川は,ほぼ全区間に渡り流下能力が低く,平成16年台風の際は,大谷川上流部の地 る一級河川であり,a地区北端をほぼ東西に 走り,本川たる由良川に合流する支川で,その管理主体は京都府である。 大谷川は,ほぼ全区間に渡り流下能力が低く,平成16年台風の際は,大谷川上流部の地点で民家浸水被害が生じた。そのため,京都府は,平成24年4月,平成16年台風と同規模の出水を安全に流下させることを目的とし,築堤,河道拡幅,河床掘削を行うことを計画した(甲共13)。その 具体的な改修として,平成26年から一部暫定掘削工事が実施されている- 48 - (甲共55~58)。 ⑷ a地区についてア概況a地区は,福知山市中心部から東へ約5.5㎞に位置する地区であり,同地区のほぼ中央を東西に府道8号福知山綾部線及びJR山陰本線が通 っている。a地区は,その北側を一級河川である大谷川に,西側を一般地方道石原停車場戸田線に囲まれており,南側は府立工業高校等の文教厚生施設を主とする地区に,東側は山林にそれぞれ接している。a地区の西側にはf地区が接しており,a地区とf地区は南北を走る府道下の通路でつながっている。 本件a地区土地は,後記の土地区画整理事業により宅地化される前は農地であり,平成16年台風当時,造成中であった。 イ a地区土地区画整理事業(甲共16)近畿自動車道敦賀線の福知山インターチェンジが開設され,そのアクセス道路としての都市計画道路石原長田線が整備されることとなったこと に伴い,昭和55年12月,a地区の開発に関し,検討を行うための西中筋地区a区開発委員会が発足した。昭和56年12月25日,京都府によってa地区の大谷川の線以南の地域が市街化区域に指定され,a地区は大谷川の線以南が市街化区域となった。ただし,a地区は,溢水,湛水等による災害発生のおそれのある土地 和56年12月25日,京都府によってa地区の大谷川の線以南の地域が市街化区域に指定され,a地区は大谷川の線以南が市街化区域となった。ただし,a地区は,溢水,湛水等による災害発生のおそれのある土地の区域に当たり,原則として市街化区域 に含めない土地であった(都市計画法7条1項,同法施行令8条2号ロ,昭和45年1月8日付建設省都市局長・河川局長通達(乙24))。なお,同通達では,上記のように市街化区域に含めないこととした場合,適正な市街化区域の設定上支障があると認められるときは,災害防止のための具体的措置について検討した上,市街化区域に含めることができるものとさ れているが,上記市街化区域の指定においていかなる検討がされたかは不- 49 - 明である。 昭和61年8月,a地区の臨時総会で土地区画整理事業の施行者を被告とする旨が可決され,京都府は,平成3年1月9日,a地区土地区画整理事業についての都市計画決定をし,同月18日に告示した。平成5年1月12日,京都府知事が同事業の事業計画を決定し,平成6年10月1日, 仮換地が指定された。なお,被告は,a地区の宅地造成は,道路高より10㎝高く盛土を行うことを予定していた(乙1,2)。 平成21年12月4日,換地処分が告示され,平成22年2月26日竣工式が行われた。その後,被告は,a地区の一部の保留地を宅地として自ら販売した。また,平成20年4月には,保留地の販売を強力に推進する べく用地販売促進室が設置され,同室では,広報誌等への広告の掲載のほか,同室に紹介した者がa地区等の保留地を購入した場合には,紹介者に10万円の紹介料を支払う情報提供制度を設ける等して,保留地の販売促進活動が進められた。(甲共14,68)しかしながら,保留地の売却は進まず,a地区土地区 区等の保留地を購入した場合には,紹介者に10万円の紹介料を支払う情報提供制度を設ける等して,保留地の販売促進活動が進められた。(甲共14,68)しかしながら,保留地の売却は進まず,a地区土地区画整理事業が属す る土地区画整理事業特別会計は巨額の赤字を抱え,平成23年度の時点では,資金不足比率は8.8%に上り,経営健全化基準を上回らないよう,同年度までに一般会計から合計4億円が繰り入れられる状態であった。被告の土木建設部長は,同年度の被告市議会定例会での質疑に対し,a地区土地区画整理事業が一番厳しい状況にあると認識している,平成26年度 で事業完了して上記特別会計を閉鎖する予定であり,a地区の保留地を積極的に販売し早期に特別会計を閉鎖するなどと答弁した。 ウ減災措置等 被告は,a地区内に洪水調整池を2か所(大子公園付近とその南西)設置した。これらの洪水調整池は,集中豪雨などの局地的な出水により, 大谷川の流下能力を超過する可能性のある雨水が大谷川に入る前に一時- 50 - 的に貯めることで,大谷川への雨水等の流入量を抑制するために設置されたものである(乙3~6,乙28)。 また,被告は,大谷川の起点(舞鶴若狭自動車道付近)にある石原口池に開口部(内ネジゲートにより開閉を行うことで貯水量の調節を行う。)を新設し,これにより,短時間の豪雨等に対して初期の流入水の流出を 抑制する機能を持たせた(乙6の1・2)。 さらに,大谷川増水時の逆流防止を目的として,a土地区画整理事業地の北西端に位置する地下埋設雨水管の下流端と大谷川との合流点にフラップゲートを設置した(乙3,8)。フラップゲートとは,河川の合流地点において逆流を防止するための可動式のゲートであり,大谷川の水 位が増大した 地下埋設雨水管の下流端と大谷川との合流点にフラップゲートを設置した(乙3,8)。フラップゲートとは,河川の合流地点において逆流を防止するための可動式のゲートであり,大谷川の水 位が増大した場合にa地区内に流入を防ぐための装置である。加えて,堤防の役割を持たせるため,大谷川の左岸(a地区側)の道路の嵩上げをした。 被告は,平成21年度及び平成22年度に洪水標識整備事業を実施し,a地区においても自治会長を通じて意見照会を実施したが(乙19の1 ~5,20の1・2),a地区内には洪水関連標識(甲共19)を設置していない。 ⑸ b地区について(併合前甲30)ア概況等b地区は,西流する由良川の南側に位置する地区であり,b地区非農用 地造成事業によって宅地造成がされている。 b地区非農用地造成事業とは,由良川の改修事業によって築堤するに当たり,現在のb地区より北側に位置していたb集落が,堤防の内側(川側)に入ってしまうことになるため,被告が事業主となって,b集落の住民の移転先の住宅用地の確保を目的として行われた宅地造成事業である。b集 落の住民の中には他地域に移住する者もおり,b地区の宅地に空きが生じ- 51 - たことから,被告は,宅地の空き部分を一般分譲した。 b地区には,基礎の嵩上げを施した住宅が多数見られ,付近住民の避難場所となっているb会館は1階部分がピロティとなっている。 イ減災措置等b会館に隣接した場所に約450tの貯水量を備え,洪水時には容量超 過した排水が水路を経由して排水ポンプ施設へ送水される調整池が存在するほか,集落内にたまった内水を外へ排水するためのポンプ施設や止水板が設置されている(併合前乙18~20)。もっとも,平成25年台風の際はポンプ 路を経由して排水ポンプ施設へ送水される調整池が存在するほか,集落内にたまった内水を外へ排水するためのポンプ施設や止水板が設置されている(併合前乙18~20)。もっとも,平成25年台風の際はポンプが水没し,排水機能を果たさなかった(併合前甲30,証人U(9頁))。 被告は,上記のとおり洪水標識整備事業を実施したが,b地区内にも洪水関連標識を設置していない。 ⑹ 本件ハザードマップの作成についてア法令の定め災害対策基本法5条1項は,市町村の責務として,当該市町村の地域並 びに当該市町村の住民の生命,身体及び財産を災害から保護するため,当該市町村の地域に係る防災に関する計画を作成し,これを実施する責務を有する旨定めている。また,水防法14条3項は,都道府県知事が,浸水想定区域及び浸水した場合に想定される水深を公表するとともに,関係市町村の長に通知しなければならない旨定めている。また,同法15条4項 は,浸水想定区域をその区域に含む市町村の長は,市町村地域防災計画に定められた事項を住民に周知させるため,当該事項を記載した印刷物の配布等の必要な措置を講じなければならないと定めている。 イ本件ハザードマップ 防災ハザードマップとは,堤防決壊,洪水氾濫等発生時の浸水情報及 び非難に関する情報を住民にわかりやすく提供することにより,人的被- 52 - 害を防ぐことを目的として市町村長が作成主体となって作成するものであり,浸水想定区域及び避難情報等が記載されたものである。 被告は,平成18年6月,「福知山市由良川拡大版防災ハザードマップ(観音寺~土師川合流点)」(本件ハザードマップ)を作成した。本件ハザードマップには,昭和28年台風と同規模の大 。 被告は,平成18年6月,「福知山市由良川拡大版防災ハザードマップ(観音寺~土師川合流点)」(本件ハザードマップ)を作成した。本件ハザードマップには,昭和28年台風と同規模の大雨が発生したこと を想定した場合の由良川本川及びその支川(土師川,武田川,和久川,鴨谷川,牧川,宮川,弘法川)の浸水想定区域に加え,当該浸水想定区域に含まれていない区域のうち平成16年台風の際に浸水した区域等が記載されている。平成16年台風の際の浸水区域は,上記浸水想定区域に含まれない区域についてのみ記載されているので,本件各土地のよう な浸水想定区域内の土地が平成16年台風の際に浸水したかは,本件ハザードマップ上明らかではない(証人T(2,3,13頁))。本件ハザードマップには「(おおよそ100年に1回程度起こる規模の大雨)」との記載がある。本件ハザードマップに記載された浸水想定区域は,国や京都府が想定したものである。 本件ハザードマップ上,a地区及びb地区は2m以上浸水する区域とされており,本件a地区土地及び本件土地7は3~5m浸水する区域として表示されている。 ウ本件ハザードマップの交付等 本件ハザードマップの交付 被告は,平成18年6月23日,本件ハザードマップを福知山市内の各世帯に自治会を通じて戸別配布したほか,その日以降に福知山市へ転入した者に対しては,転入者が転入届出をする際に交付している。 本件ハザードマップの周知被告は,本件ハザードマップの配布に関し新聞報道を通して周知を行 ったほか,上記配布後も,月2回各戸に配布される「広報ふくちやま」- 53 - (本件ハザードマップに関しては,平成18年9月1日号,同19年6月1日号,同19年9月 を通して周知を行 ったほか,上記配布後も,月2回各戸に配布される「広報ふくちやま」- 53 - (本件ハザードマップに関しては,平成18年9月1日号,同19年6月1日号,同19年9月1日号,同20年6月1日号及び9月1日号,同21年6月1日号及び9月1日号,同22年6月1日号及び9月1日号,同23年6月1日号及び9月1日号に記載がある。)によって,本件ハザードマップの確認を行うこと,所持していない者は市役所に問い合 わせることを継続して呼び掛けた(乙11の1~6,13の1~11(併合前乙3の1~6,5の1~11))。このように,被告は,住民に対して本件ハザードマップを確認するよう定期的に促していたほか,問い合わせがあれば対応できる体制をとっていた。 また,京都府においても,月1回各戸に配布される「きょうと府民だ より」(平成19年6月号,同20年6月号,同22年6月号には,防災ハザードマップに関連する記載がある。)において,防災ハザードマップに関する記載をしていた(乙14の1~4(併合前乙6の1~4))。 ⑺ 原告らの本件a地区土地及び本件土地7購入経緯等ア原告A 原告Aは,平成18年頃まで大阪市福島区に居住していたが,同年末頃,転職を機に福知山市内に居住するようになった。平成22年頃から自宅購入のために福知山市内で物件を探すようになり,最終的に本件土地1の購入を決めた。 原告Aは,本件土地1を購入するにあたり,担当となった当時の土木建 設部用地販売促進室の用地販売促進次長Wから,契約の流れについての説明を受け,購入を決意した。同年8月に売却決定通知を受けた後,原告Aが職場の同僚に対し,本件土地1を購入したと話したところ,同僚から水に浸かる土地である旨告げられたことから,原告Aは れについての説明を受け,購入を決意した。同年8月に売却決定通知を受けた後,原告Aが職場の同僚に対し,本件土地1を購入したと話したところ,同僚から水に浸かる土地である旨告げられたことから,原告Aは不安になり,同年9月6日,福知山市役所に赴き,Wに本件土地1が浸水する恐れはないか尋 ねた。これに対し,Wは,堤防ができているのでもう水に浸かることはな- 54 - い,大丈夫であるなどと答えた。同月27日,原告Aは,被告との間で本件売買契約1を締結し,同年11月22日に本件土地1の所有権移転登記,同月25日に引渡しを受けた(甲A1,2,7,8)。原告Aは,引渡し後も,再度Wに対し,本件土地1に浸水の恐れはないか尋ね,Wは,再度堤防が完成済みだから大丈夫であると答えた。 Wは,本件売買契約1締結までに,原告Aに対して本件ハザードマップを交付したり,本件ハザードマップの保有を確認したりしなかった(証人W(12~16頁))。また,Wは,浸水被害に関する説明や本件ハザードマップを用いた説明を一切しなかった(証人W(2頁),原告A(3~5,12頁))。 Wは,原告Aから本件土地1の浸水の恐れについて尋ねられた記憶はないが,仮に尋ねられたとすれば担当課に回答してもらったはずである旨証言する(証人W(11,12頁))。しかしながら,前記1認定のとおり,平成22年当時,被告は,用地販売促進室を中心に,a地区の保留地の販売を積極的に推進しており,Wとしても本件土地1は水が浸くところとは 認識していなかったのであるから(証人W(11,12頁)),そのような認識であったWが,原告Aの質問についてわざわざ担当課に回答してもらうといった迂遠な方法をとったとは考え難いから,上記Wの証言は採用することができない。 他方,原告Aは, ,12頁)),そのような認識であったWが,原告Aの質問についてわざわざ担当課に回答してもらうといった迂遠な方法をとったとは考え難いから,上記Wの証言は採用することができない。 他方,原告Aは,本件売買契約1を締結した時点において,本件ハザー ドマップの存在や由良川の堤防が完成していなかったことを認識していなかった。 原告Aは,平成23年7月12日,地元の業者である株式会社HORI建築(以下「HORI建築」という。)との間で自宅建築を目的とする請負契約を締結したが,自宅建築の際,基礎の高さを70㎝嵩上げすることを 依頼した。もっとも,原告Aは,自宅について保険に加入した際,水害に- 55 - 対応できる保険には加入しなかった。原告Aは,平成24年2月27日,完成した自宅の引渡しを受け,現在まで居住している。 イ原告B原告Bは,福知山市d町で生まれ,平成15年頃からJRa駅付近のアパートに居住していた(比較的高い所だったため,平成16年台風では浸 水被害に遭わなかった。)ところ,自宅を建築しようと考え,Hに物件探しを依頼していたところ,本件土地2を紹介された。原告Bは,現地を確認した上,福知山市が造成した土地であることも踏まえ,平成21年12月28日,本件売買契約2を締結した(甲B1)。原告Bは,本件土地2を購入するに当たって,Hから本件土地2についての過去の水害発生状況や浸 水被害に遭う危険性の高さについての説明を受けなかった。また,原告Bは,被告から本件ハザードマップを受け取っていたが,本件売買契約2を締結するに当たって,被告から本件ハザードマップに沿った説明を受けなかった。 原告Bは,上記のとおり,浸水の危険性について何ら説明を受けず,平 成16年台風の際, 本件売買契約2を締結するに当たって,被告から本件ハザードマップに沿った説明を受けなかった。 原告Bは,上記のとおり,浸水の危険性について何ら説明を受けず,平 成16年台風の際,JRa駅付近に住んでいながら浸水被害に遭わなかったことから,本件土地2が浸水被害に遭うことはないと考え,自宅建築の際に嵩上げをしなかったものの,水害に対する保障のついた火災保険に加入した。 その後,原告Bは,自宅が完成した平成22年7月頃から現在まで,本 件土地2上の自宅に居住している。 ウ原告C原告Cは,福知山市内で生まれ,同市内に居住しており,結婚を機にa地区のアパートで暮らすようになった。原告Cは,自宅を購入しようと考え,Hに相談していたところ,本件土地3を紹介されたことから,現地を 確認した上,平成22年3月28日,Lと共にJとの間で本件売買契約3- 56 - を締結した(甲C1)。原告Cは,本件土地3を購入するにあたって,Hから,本件土地3は,平成16年台風の際,自動車のタイヤ半分が浸かる程度浸水したことを聞いたが,過去の浸水被害発生状況や浸水被害に遭う危険性の高さについて説明を受けることはなかった。また,原告Cは,本件売買契約3締結当時,本件ハザードマップの存在を認識していなかった。 原告Cは,平成22年5月18日,HORI建築との間で自宅建築を目的とする請負契約を締結し,HORI建築から基礎の高さをどうするか尋ねられたが,被告が造成して販売した本件土地3が浸水被害に遭うことはないと考え,嵩上げを依頼しなかった。しかし,自宅については水害に対する保障の付いた火災保険に加入した。 その後,原告Cは,自宅が完成した平成22年11月頃から現在まで本件土地3上 いと考え,嵩上げを依頼しなかった。しかし,自宅については水害に対する保障の付いた火災保険に加入した。 その後,原告Cは,自宅が完成した平成22年11月頃から現在まで本件土地3上の自宅に居住している。 エ原告D原告Dは,平成19年から福知山市内のアパートに居住していたが,平成24年夏頃から自宅購入のために福知山市内で物件を探すようになっ た。原告Dの夫であるM及び父(以下,両名を併せて「Mら」という。)は,平成25年1月頃から本件売買契約4を締結するまでに,複数回,その当時保留地の販売等を主管していた福知山市役所財務部資産活用課用地販売係を訪れ,担当職員であったQからa地区についての説明を受けた。 平成25年当時,用地販売係では,a地区の宅地の購入を希望する者に 対しては物件調書を用いてその土地の概要を説明しており,その土地が本件ハザードマップの浸水区域内にある場合には,物件調書中の「6.当該宅地の存する区域」の「その他」の欄に,その旨記載することとしていた(乙30,証人Q(2頁))。Qは,Mらに対し,上記「その他」の欄の本件ハザードマップ上の浸水区域にある旨の記載を説明するに当たり,本件 ハザードマップを広げ,同マップが昭和28年台風と同程度の雨量によっ- 57 - て河川が氾濫した場合に想定される浸水状況を示したものである旨説明した上で,Mらが当初購入を希望していた土地がある箇所と凡例を示しつつ,同土地は,本件ハザードマップ上,3~5mの浸水が想定されている区域であることを説明し,本件ハザードマップを交付した(証人Q(2,5,6頁))。次に,Qは,保留地位置図(乙29)を示しながら,平成2 3年5月に発生した大雨によって当初購入を希望していた土地付近の道路周辺や駐車場で 件ハザードマップを交付した(証人Q(2,5,6頁))。次に,Qは,保留地位置図(乙29)を示しながら,平成2 3年5月に発生した大雨によって当初購入を希望していた土地付近の道路周辺や駐車場で冠水被害が生じたことを伝えた。しかし,Qは,Mらに対し,平成16年台風の際,本件土地4を含むa地区の北西部は,広範囲にわたって0.5m以上浸水した事実については説明しなかった。(証人Q(10頁)) Mらは,本件ハザードマップに関するQの説明に対しては特段反応しなかった。もっとも,平成23年5月の大雨の際の冠水被害に関する説明に対しては,Mは建物に被害がなかったのであれば問題ないと考えたものの,原告Dの父は懸念を示し,条件に沿う他の土地(本件土地4)も現地に見に行くほうがよいと提案した。Mらは,一旦中座して現地に赴き,本件土 地4を見学した。(証人M(6頁),証人Q(6頁))Mらは,現地を確認した上で,購入希望地を本件土地4に変更した。本件土地4については,平成23年5月の大雨による冠水被害はなかったものの,本件ハザードマップ上,当初購入を希望していた土地と同様に3~5mの浸水が予想される区域として色付けがされていた。Qは,上記購入 土地の変更を踏まえ,改めてMらに対し,同人らが当初購入を希望した土地についてしたのと同様に,本件土地4の物件調書に基づいて,本件ハザードマップを用いて本件土地4の浸水の可能性について説明した。Mらは,上記Qの説明に対し,特に反応しなかった。(証人Q(17頁))。 原告Dは,平成25年2月26日,被告との間で本件売買契約4を締結 し,同年3月8日,本件土地4の引渡しを受けた(甲D1,2)。 - 58 - 原告D及びMは,平成25年7月25日,エコデザイン株式会社との間で自宅建物 告との間で本件売買契約4を締結 し,同年3月8日,本件土地4の引渡しを受けた(甲D1,2)。 - 58 - 原告D及びMは,平成25年7月25日,エコデザイン株式会社との間で自宅建物の建築を目的として請負契約を締結し,同年11月10日に完成予定とされていた(甲D8)。しかし,平成25年台風の影響で1か月程度施工が遅れ,同年12月に同建物の引渡しを受けた(甲D3)。 オ原告E 原告Eは,福知山市内に居住していたが,平成22年春頃から自宅購入のために物件を探し始め,同年6月頃,Hから紹介を受けて,同年9月18日,Nと共にOとの間で本件売買契約5を締結し,同年10月22日に所有権移転登記を受け(当初原告E持分3分の2,N持分3分の1,平成25年7月3日に原告EがNの持分全部取得。),平成23年5月から本件 土地5上に建築した自宅建物(当初原告E持分3分の2,N持分3分の1,平成25年7月3日に原告EがNの持分全部取得。)に居住する者である(甲E1~3)。 原告E及びNは,本件売買契約5締結に先立ち,同月4日,株式会社森下住建との間で,自宅建物の建築を目的とする工事請負契約を締結した (甲E4)。その際,株式会社森下住建から基礎を嵩上げするかどうか尋ねられたことから,基礎の高さを30㎝嵩上げした。 カ原告F原告Fは,平成18年頃から福知山市内に居住していたが,平成20年6月頃から自宅購入のために物件を探し始め,平成21年6月頃,ハウス メーカーであるセキスイハイム近畿株式会社から,本件土地6の紹介を受けた。原告Fは,同年8月1日,有限会社現代商事との間で本件売買契約6を締結し,同年10月16日には本件土地6の引渡しを受け,所有権移転登記(原告F持分2分の1,P 式会社から,本件土地6の紹介を受けた。原告Fは,同年8月1日,有限会社現代商事との間で本件売買契約6を締結し,同年10月16日には本件土地6の引渡しを受け,所有権移転登記(原告F持分2分の1,P持分2分の1)を受けた(甲F1,4)。 本件売買契約6当時,原告Fは本件ハザードマップの存在を認識していな かった。 - 59 - 原告F及びPは,平成21年8月1日,セキスイハイム近畿株式会社との間で自宅建物の建築を目的とする工事請負契約を締結した(甲F5)。その後,原告Fは,平成22年1月17日に自宅建物の引渡しを受け,現在に至るまで自宅建物(原告F持分2分の1,P持分2分の1)に居住している。(甲F6)。 キ原告G原告Gは,平成16年4月頃に福知山市に転入し,平成22年2月末頃から自宅購入のために物件を探し始め,同年4月頃,b地区の土地を紹介され,同年5月8日頃,b宅地分譲フェアに参加した(併合前甲6)。同分譲フェアでは,大雨の際にb地区内に溜まった内水を排水するための排水 ポンプの実演や,平時開いている道路を大雨の際にアルミ板で閉鎖して輪中堤とする実演がされた。b宅地分譲フェアには,当時b地区非農用地造成事業を主管していた被告の農林商工部農林管理課の職員も出席していた。 原告Gは,同年6月頃,担当職員のRから,b地区内の土地購入に当た っての手続について説明を受けた。もっとも,Rは,b地区の水害の歴史や水害対策に関する説明については,分譲フェアで実施済みであると考え,原告Gに対して特に説明をせず,原告Gに対し,分譲フェアでどのような説明がなされたか,排水ポンプ等の実演を見学したかを確認することはなかった。また,農林商工部農林管理課では,平成22年当時,本件ハザー ドマップ 明をせず,原告Gに対し,分譲フェアでどのような説明がなされたか,排水ポンプ等の実演を見学したかを確認することはなかった。また,農林商工部農林管理課では,平成22年当時,本件ハザー ドマップを購入希望者に対して提示して説明する運用をしていなかったことから,原告Gに対し,本件ハザードマップを提示してその内容を説明することもなく,同マップを保有しているかを確認することもなかった。 さらに,農林商工部農林管理課では,b地区の宅地の売買契約の締結の際には,買主に対し,b地区の自治会長が,b地区の水害の歴史について説 明する機会を設けていたが,原告Gが同自治会長から受けた説明内容は,- 60 - 主として由良川の河川拡幅が住民の悲願であったこと,住居の移転が実現したことといった,b地区の住民が過去の水害をどのように克服してきたかということであり,平成16年台風の際にb地区が浸水したことや,現時点でもb地区には浸水の危険があるといった説明はされなかった。 原告Gは,平成22年6月23日,本件土地7について重要説明書(乙 60)に基づく説明を受けた。重要説明書には,本件土地7の浸水被害に関する記載はなかった。原告Gは,同月30日,被告との間で本件売買契約7を締結し,同年8月27日に所有権移転登記を受けた。原告Gは,本件売買契約7締結当時,本件ハザードマップの存在を認識していなかったが,その一方でb地区付近の由良川の堤防が完成していないことは認識し ていた(原告G(15頁))。 原告Gは,平成22年11月5日,高柴商事株式会社との間で自宅建物の建築を目的とする工事請負契約を締結した(併合前甲7)。その際,高柴商事株式会社から基礎の高さについて尋ねられたが,基礎を高くするように依頼することはなかった。その後,原告 式会社との間で自宅建物の建築を目的とする工事請負契約を締結した(併合前甲7)。その際,高柴商事株式会社から基礎の高さについて尋ねられたが,基礎を高くするように依頼することはなかった。その後,原告Gは,平成23年5月16日に 自宅建物の引渡しを受け,同月21日から現在まで居住している。なお,原告Gは,自宅建物につき水害に対応する保険に加入していない。 ⑻ 本件浸水被害についてア概要平成25年9月15日から同月16日にかけて,平成25年台風が近畿 地方に接近し,由良川流域の広い範囲で20~30㎜程度の雨が長時間降り続いたことにより,由良川が増水し,過去60年間で最大となる最高水位8.3mを記録した。その結果,由良川の氾濫及び逆流が生じ,本件浸水被害が発生した。平成25年台風では,大雨特別警報(気象庁が平成25年8月30日に運用を開始した基準であり,警報の発表基準をはるかに 超える豪雨等が予想され,重大な災害の危険性が著しく高まっている場合- 61 - に発令する(乙18,併合前乙9))が発令された。 a地区やb地区では,平成25年台風により,多数の床上床下浸水被害が発生した。 イ原告らの被害原告らは,前記前提となる事実⑹のとおり,床上10~130㎝の浸水 被害を受けた。 ⑼ 本件浸水被害後の水害平成29年10月23日に静岡県御前崎市付近に上陸した台風21号(平成29年台風)と停滞した前線の影響等により,本庄雨量観測所では同日10時時点の累加雨量258.0㎜,福知山水位観測所では同日4時30分時 点の由良川の最高水位7.39mを記録した。福知山市における同台風による被害状況は,人的被害はなかったものの,住家被害181棟(半壊1 加雨量258.0㎜,福知山水位観測所では同日4時30分時 点の由良川の最高水位7.39mを記録した。福知山市における同台風による被害状況は,人的被害はなかったものの,住家被害181棟(半壊12棟,一部損壊・床上浸水77棟,床下浸水92棟),非住家被害167件,土砂崩れ10件,道路被災・河川被害・農林業被害等が発生した。a地区では,床上浸水21世帯,床下浸水13世帯などの家屋被害が発生した(甲共47)。 平成29年台風により,原告Aは床下浸水,原告Bは床上浸水25㎝,原告Cは床上浸水90㎝,原告Fは床上浸水3㎝の被害を受けた。 ⑽ 被告からの金銭受領平成25年台風の後,被告から地域再建被災者住宅支援事業等に基づき,原告Aは60万円,原告Bは150万円,原告Cは少なくとも125万円, 原告Eは数十万円,原告Gは少なくとも50万円を受領した。 2 争点⑴(土地の売主としての説明義務違反の有無〔不法行為関係〕)について⑴ 説明義務違反の有無及び内容についてア宅地の購入に当たっては,その宅地が浸水すれば宅地上に住居を構えた住民は,住居や家財等に大きな財産的損害を被るだけでなく,生命身体ま でも重大な危険にさらされることになるから,その宅地が浸水する恐れの- 62 - ある土地であるか否かは,購入を検討する者にとって重大な関心事である。 この点に関し,水防法においては浸水想定区域をその地域に含む市町村の長は,市町村地域防災計画に定められた事項を住民に周知させるため,洪水ハザードマップを作成し,住民に配布する等して周知することが義務付けられ,洪水ハザードマップに記載されている限度においては,一般市 民においても土地の浸水可能性に関する情報を収集することが可能である。特に プを作成し,住民に配布する等して周知することが義務付けられ,洪水ハザードマップに記載されている限度においては,一般市 民においても土地の浸水可能性に関する情報を収集することが可能である。特に,福知山市は,前記1認定のとおり,歴史的に水害に悩まされてきた地域であり,被告においても,水防法及び同法施行規則に従って,本件ハザードマップを作成し,住民に配布するほか,市の広報等で定期的にその存在を周知し,内容を確認するよう呼びかけるなどして情報提供に努 めていた。 イもっとも,本件ハザードマップには,同マップにおいて想定する大雨は,「おおよそ100年に1回程度起こる規模の大雨」であると記載されており,これが,同規模の大雨が100年間に複数回発生する可能性を排除する趣旨でないことは明らかであるものの,宅地の購入に当たっては,建築 予定の住宅の耐用年数に相当する期間内に大雨によって浸水被害が生じる可能性が主たる関心事であるから,宅地の購入を検討する者にとって,本件ハザードマップに記載された情報だけでは購入の可否を判断するのに十分であるとは言い難い。また,本件ハザードマップは,人的被害を防ぐことを目的として作成されたものであるから,同マップに記載された情報を 提供することで,本件のような宅地の購入に当たっての意思決定に必要かつ十分な情報を提供したということもできない。 このように,宅地を購入しようとする者にとっては,100年単位の情報だけでなく,その土地の比較的近時の浸水被害状況や今後浸水被害が生じる可能性に関する情報が存在する場合には,そのような情報も契約締結 の可否を決定する上で重要な情報であるということができる。そして,こ- 63 - のような本件ハザードマップに記載されていない比較的近時の浸水被害等 場合には,そのような情報も契約締結 の可否を決定する上で重要な情報であるということができる。そして,こ- 63 - のような本件ハザードマップに記載されていない比較的近時の浸水被害等の事実,例えば,本件各土地は同マップ上浸水想定区域内であるのみならず,平成16年台風の際,いずれも0.5m以上浸水したこと,現在においても由良川の堤防は未完成の部分があるため,平成16年台風と同規模の降雨があった場合,由良川から溢水し,a地区及びb地区が浸水する 可能性があることなどといった事実を一般市民である買主原告らが自力で調査し,把握することは困難である。 ウ被告は,被告は本件ハザードマップを配布し,その確認を呼び掛けていたほか,平成16年台風による福知山市内の浸水被害状況等について,複数回にわたりテレビ報道がされたことからすると,浸水被害状況等に関し, 説明義務の発生の前提となる被告と買主原告らの間の情報力の格差はない旨主張する。しかしながら,前記判示のとおり,本件ハザードマップに記載された情報を提供することで宅地の購入に当たっての意思決定に必要かつ十分な情報を提供したということはできない。また,本件ハザードマップについても,その存在及び内容が広く市民に周知徹底されていたかどう かは不明であると言わざるを得ず(だからこそ,被告は,広報等で周知を図ろうとしていたともいえる。),買主原告らが上記テレビ報道により,平成16年台風による福知山市内の浸水被害状況のみならず,a地区及びb地区並びに本件各土地の浸水被害状況までを把握していたことを認めるに足りる証拠はない。したがって,被告の上記主張は採用することができな い。 エ他方,被告は,本件ハザードマップ作成の主体であって,a地区及びb地区を含む地方公共団体とし いたことを認めるに足りる証拠はない。したがって,被告の上記主張は採用することができな い。 エ他方,被告は,本件ハザードマップ作成の主体であって,a地区及びb地区を含む地方公共団体として,両地区の浸水被害状況等の情報を収集・把握し,市民に対してこれを提供する立場にあったのみならず,前記1認定のとおり,上記両地区において各種減災措置を講ずるなどして宅地化を 実施していた事業者であることを考慮すると,買主原告らに対し,本件ハ- 64 - ザードマップの存在及び内容について確認,説明することや,保有している上記両地区及び本件各土地についての浸水被害状況等に関する情報を開示し,提供することは極めて容易であったということができる。 オ以上に加え,本件各土地の売主である被告は,本件各土地の存するa地区及びb地区において宅地化を実施してきた事業者であって,宅地の販売 促進を実行していた立場にあり,買主原告らからすると,福知山市が歴史的に水害に悩まされてきた地域であって,由良川の堤防に一部未完成の区間があることを認識していたとしても,近時治水事業や各種減災措置が講じられてきたことを踏まえ,住民の生命,身体,財産の保護を使命とする地方公共団体たる被告が,よもや嵩上げ等の特別な措置を講じない限り住 居が浸水する恐れがある宅地を造成した上,それを積極的に販売することはないものと信頼し,本件各土地の浸水可能性ひいては本件ハザードマップに思いを致すことがないまま,本件各土地を購入する意思決定をする可能性があることは,被告において十分予見可能であったというべきである。 このことは,原告Aも,本人尋問において,被告の担当者に浸水の恐れが あるかを口頭で確認するにとどまり,その担当者から堤防が出来ているから大丈夫と聞いて安 分予見可能であったというべきである。 このことは,原告Aも,本人尋問において,被告の担当者に浸水の恐れが あるかを口頭で確認するにとどまり,その担当者から堤防が出来ているから大丈夫と聞いて安心し,販売主である被告を信頼し,それ以上に浸水の恐れについて調査する必要は感じなかったと供述し(原告A(5頁)),Mも,a地区が昔農地であったときはよく冠水していたことは知っていたが,被告が区画整理事業の施行者として宅地を造成して販売しており,由良川 に堤防ができているので大丈夫だと思っていたと証言していること(証人M(2,3頁))によっても裏付けられている。 カこのような買主原告らと被告との関係に加え,買主原告らは,いずれも自宅を建築する目的で本件各土地の購入を検討していたのであるから,本件各土地の安全性には強い関心を有しており,そのことは被告においても 十分認識可能であったといえる上,買主原告らが本件各土地やa地区及び- 65 - b地区の浸水被害状況等を認識していれば,それは本件各土地の購入に関する重要な考慮要素となり,買主原告らは,本件各土地の購入をしないという選択をする可能性も相当程度あったといえる上,購入するにしても,浸水被害状況等に対応する土地の嵩上げや水害に対応する保険への加入等,相応の浸水被害対策を講じる可能性が高かったというべきである。 キこれらのことを総合して考慮すると,本件各土地の売主である被告には,本件各土地の売買契約に付随する信義則上の義務として,買主原告らに対して本件各土地を売却する際に,本件各土地に関する本件ハザードマップの内容について説明するのみならず,被告において把握していた本件各土地に関する近時の浸水被害状況や今後浸水被害が発生する可能性に関する 情報について開示し, 件各土地に関する本件ハザードマップの内容について説明するのみならず,被告において把握していた本件各土地に関する近時の浸水被害状況や今後浸水被害が発生する可能性に関する 情報について開示し,説明すべき義務を負っていたというべきである。したがって,被告がこの義務に違反し,それによって買主原告らに損害が生じた場合には,それを賠償すべき責任があるというべきである。 クなお,被告は,地方公共団体であって宅建業法の直接適用はない(同法78条1項)から,同法を被告の説明義務の根拠とすることはできない。 しかし,同法が地方公共団体に適用されないのは,そもそも地方公共団体には不動産取引の公正の確保が期待されており,同法を適用する必要はないということによるものであるから,同法の適用がないことが地方公共団体の説明義務を否定することにはならない。 ケ被告は,a地区及びb地区において,各種の減災措置を講じてきたこと を主張する。しかしながら,その具体的な効果は明らかではない上,前記1認定のとおり,本件売買契約1,4及び7が締結された平成22年ないし平成25年当時,由良川の堤防には一部未完成の区間があり,その状態で平成16年台風と同程度の降雨があった場合には,上記両地区がいずれも浸水する可能性があることを被告は認識していたのであるから,各種減 災措置を講じてきたことをもって,被告が買主原告らに対して本件各土地- 66 - の浸水被害状況等を説明する義務がないということはできない。 ⑵ 買主原告らに対する説明義務違反の有無についてア原告A前記1⑺ア認定の事実関係によると,原告Aは,本件売買契約1が締結された平成22年9月当時,本件ハザードマップの存在や由良川の堤防が 完成していなかったことを認識し ア原告A前記1⑺ア認定の事実関係によると,原告Aは,本件売買契約1が締結された平成22年9月当時,本件ハザードマップの存在や由良川の堤防が 完成していなかったことを認識していなかったところ,被告の保留地の販売事務等を主管していた土木建設部用地販売促進室の次長であったWは,原告Aに対し,本件売買契約1締結の際,本件ハザードマップを交付したり,その保有の有無を確認したりせず,同マップに基づくa地区の浸水被害の可能性について説明しなかったのみならず,原告Aから本件土地1に ついて浸水の恐れがないか尋ねられたのに対し,由良川の堤防が完成していなかったにもかかわらず,堤防が完成済みだから大丈夫である旨答え,平成16年台風による浸水被害の状況や由良川の堤防が一部未完成の区間があるため平成16年台風と同程度の降雨の際には由良川が溢水しa地区は浸水する恐れがあることを全く説明しなかった。 これらの事情によると,被告は,原告Aに対する説明義務を尽くさず,同義務に違反したものというべきである。 イ原告D前記1⑺エ認定の事実関係によると,被告の担当職員であったQは,Mらに対し,本件売買契約4締結の際に,本件ハザードマップを示し,Mら が当初購入を希望していた土地が同マップ上浸水区域内にあり,同マップによれば3~5mの浸水の可能性があることを説明した上,平成23年5月の大雨の際に周辺地に冠水被害があったことを説明したものの,平成16年台風の際には,本件土地4を含むa地区の北西部全体が0.5m以上浸水したにも関わらず,Mらに対し,この浸水被害について説明しなかっ た(なお,Mは,Qから由良川の堤防はできているとの説明を受けた旨証- 67 - 言するが(証人M(14頁)),これを裏 水したにも関わらず,Mらに対し,この浸水被害について説明しなかっ た(なお,Mは,Qから由良川の堤防はできているとの説明を受けた旨証- 67 - 言するが(証人M(14頁)),これを裏付ける的確な証拠はなく,M自身がQから説明を受ける前に由良川の堤防は完成済みであると思っていたことからすると,M自身の従前からの認識とQからの説明内容とを混同している可能性も否定できず(証人M(19頁)),Mの上記証言をもってQが由良川の堤防は完成済みである旨説明したとまでは認めることができ ない。また,証人Mの陳述書(甲D9)には,被告の職員から,a地区は以前の台風で道路や駐車場くらいまで浸水したことがあるが,本件土地4の辺りは少し高くなっているから大丈夫であるとの説明を受けたとの記載があるものの,説明を受けたか覚えていないと証言している(証人M(13頁))ことを考慮すると,上記陳述書の記載を採用することはできず,他 に上記事実を認めるに足りる証拠はない。)。 被告は,平成16年台風の際にa地区に生じた浸水被害を把握しており,これを情報提供することは容易であったこと,前記1⑺エで認定したとおり,Mらは,周辺道路や駐車場の冠水被害にすら懸念を示しており,そのことはQも認識していたこと,本件ハザードマップ上,平成16年台風時 の浸水区域は,昭和28年台風と同程度の大雨が降った場合の浸水区域に含まれない区域についてのみ記載されており,同マップを見ただけでは平成16年台風における本件土地4の浸水被害の有無は明らかではないこと(乙9)からすると,Qには,Mらに対し,平成23年5月の大雨の被害のみならず,より大きな被害をもたらした平成16年台風による浸水被 害状況についても説明すべき義務があったというべきである。 これらの事 すると,Qには,Mらに対し,平成23年5月の大雨の被害のみならず,より大きな被害をもたらした平成16年台風による浸水被 害状況についても説明すべき義務があったというべきである。 これらの事情によると,被告は,原告Dに対する説明義務を尽くさず,同義務に違反したものというべきである。 なお,原告Dは,Mらが本件ハザードマップは過去の浸水被害状況を記載したものと誤解していた,Qの本件ハザードマップに関する説明は不正 確,不十分であった旨主張し,証人Mはこれに沿う証言をする。しかしな- 68 - がら,本件ハザードマップは,100年に1回起こる程度の大雨が降った場合の被害予測であって,広範囲にわたって浸水する極めて甚大な被害を予測する内容であることは,同マップの記載上も明らかであること(乙9)からすると,Mらにおいて,発生頻度の低い水害予測であるとして土地の購入に際しては考慮する必要性が低いと考え,格別の関心を払わなかった 可能性も否定できず,本件ハザードマップ上,本件土地4が当初購入を希望していた土地と同様に浸水区域内であったことをもって,Mらが本件ハザードマップの記載を誤解していたとまでは認めることができない。また,仮にMらがそのような誤解をしていたとしても,Qがこれに気づいたか又は気づくことができたと認めるに足りる証拠はない。以上によると,原告 Dの上記主張は採用することができない。 ウ原告G前記1⑺キ認定の事実関係によると,原告Gは,本件売買契約7締結当時,本件ハザードマップの存在を認識していなかったところ,被告の担当職員であったRは,原告Gに対し,本件売買契約7締結の際,本件ハザー ドマップの保有を確認せず,本件土地7について同マップを示して浸水被害の可能性について説明する いなかったところ,被告の担当職員であったRは,原告Gに対し,本件売買契約7締結の際,本件ハザー ドマップの保有を確認せず,本件土地7について同マップを示して浸水被害の可能性について説明することなく,平成16年台風による浸水被害状況や過去のb地区の浸水被害発生状況等についても全く説明しなかった。 確かに,原告Gが売買契約を締結するに先立って参加したb地区の分譲フェアでは,参加者に対して排水ポンプ等の減災措置を説明する機会が設 けられていたが,本件土地7に浸水被害が生じる可能性があることを知らせないまま単に分譲フェアにおいて各種減災措置について説明を受ける機会を提供するだけでは足りず,本件売買契約7を締結する際に,具体的に説明する必要があったというべきである。また,原告Gは,由良川の堤防が未完成であることを認識していたが,そのことが直ちに原告Gの本件 土地7周辺の浸水被害状況や浸水被害の危険性の認識につながるとは認- 69 - め難い。 これらの事情によると,被告は,原告Gに対する説明義務を尽くさず,同義務に違反したものというべきである。 3 争点⑵(地方公共団体としての情報提供義務違反の有無〔国家賠償関係〕)について ⑴ 地方公共団体の地域に含まれる土地の購入を希望する住民に対する関係において,地方公共団体と住民という一般的な関係を超え,それ以上に浸水被害状況等についての特別な情報提供義務を地方公共団体に対して課した法令の定めはない。 a地区原告らは,浸水被害状況等に関する情報提供義務の法的根拠として 災害対策基本法を挙げる。しかし,同法は,国土並びに国民の生命,身体及び財産を災害から保護するため,防災に関し,国や地方公共団体等を通じて必要な体制を確立すること等を目的とし(同法1条),市町村 災害対策基本法を挙げる。しかし,同法は,国土並びに国民の生命,身体及び財産を災害から保護するため,防災に関し,国や地方公共団体等を通じて必要な体制を確立すること等を目的とし(同法1条),市町村が,その市町村の地域並びに住民の生命,身体及び財産を災害から保護するため,防災に関する計画を作成し,実施する責務を有する旨定め(同法5条1項),住民との 関係で防災計画等を整備する責務があることを定めているにすぎず,その市町村内の土地を購入しようとする者との関係で,浸水被害に関する情報提供義務を課すものではない。 a地区原告らは,水防法も法的根拠に挙げるが,前記1⑹認定のとおり,被告は,本件ハザードマップを作成し,住民に配布していることが認められ る上,同法は,地方公共団体に対し,その地域の土地の購入希望者との関係において特別な情報提供義務を課しているとは認められない。 また,本件の国家賠償請求においては,a地区原告らと被告との間において不動産取引をすることが前提とされていないから,その関係について宅建業法が適用されたり,その趣旨が考慮されたりする余地もない。 ⑵ このように,a地区原告らが主張するような被告の情報提供義務について- 70 - は法令上の根拠が認められないから,被告の職員等が職務上の法的義務に違背したということはできない。 以上によると,a地区原告らの国家賠償法1条1項に基づく請求は,その余の点について判断するまでもなく,いずれも認めることができない。 4 争点⑶(原告らの損害)について ⑴ア被告は,仮に被告に説明義務違反が認められるとしても,①原告らは本件ハザードマップにより昭和28年台風と同規模の大雨があれば3~5mの浸水被害が生じ得ることを認識していたのであるから,原告らは浸水被 告は,仮に被告に説明義務違反が認められるとしても,①原告らは本件ハザードマップにより昭和28年台風と同規模の大雨があれば3~5mの浸水被害が生じ得ることを認識していたのであるから,原告らは浸水被害に対する備えを行うことが可能だったのであり,被告の説明義務違反と原告らの損害との間に相当因果関係は存在しない,②平成25年台風は降 雨量が非常に多く,稀に見る規模の災害であったから,仮に被告において原告らの主張する説明義務を履行していたとしても,平成25年台風による浸水被害は防げなかったというべきであるから,被告の義務違反と原告らの損害との間に相当因果関係は存在しない旨主張する。 しかしながら,上記①については,前記2判示のとおり,そもそも原告 A及び原告Gについては,本件ハザードマップの存在を認識していなかった上,被告の担当職員らも,同マップを提示したり,説明したりしていない。また,宅地を購入しようとする者にとっては,本件ハザードマップに記載された100年単位の情報だけでは足りず,その土地の比較的近時の浸水被害状況や今後浸水被害が生じる可能性に関する情報も契約締結の 可否を決定する上で重要な情報であり,買主原告らが,住民の生命,身体,財産の保護を使命とする地方公共団体たる被告が,よもや嵩上げ等の特別な措置を講じない限り住居が浸水する恐れがある宅地を造成した上,それを積極的に販売することはないものと信頼し,本件各土地を購入する意思決定をする可能性があることは,被告において十分予見可能であったこと も考慮すると,本件の事実関係の下においては,買主原告らが本件ハザー- 71 - ドマップ記載の情報を認識していたとしても,それのみによって浸水被害に対する備えを行うことが現実的に可能であったということはできない。 係の下においては,買主原告らが本件ハザー- 71 - ドマップ記載の情報を認識していたとしても,それのみによって浸水被害に対する備えを行うことが現実的に可能であったということはできない。 また,上記②についても,前記2⑴判示のとおり,買主原告らは,本件各土地の購入をしないという選択をする可能性も相当程度あったといえる上,購入するにしても,浸水被害状況等に対応する土地の嵩上げや水害 に対応する保険への加入等,相応の浸水被害対策を講じる可能性が高かったというべきであり,被告において原告らの主張する説明義務を履行していたとしても,平成25年台風による浸水被害による損害を防げなかったということはできない。 したがって,被告の上記主張はいずれも採用することができない。 イ被告は,仮に被告に説明義務違反が認められたとしても,その義務違反がある場合に侵害されるのは,被告が正しい情報を提供していれば,他の選択ができたはずであるという自己決定権が奪われたことであり,適切な情報を提供された場合の原告らの選択は必ずしも一つではなく,適切な情報を提供されていれば土地を購入しなかったとはいえないから,上記義務 違反と原告らが主張する具体的な財産的被害との相当因果関係はなく,自己決定権が侵害されたものとして慰謝料の賠償のみが認められるべきである旨主張するが,前記2⑴判示のとおり,買主原告らは,被告の説明義務違反がなければ本件各土地の売買契約を締結しなかった可能性も相当程度あったといえる上,購入するにしても,浸水被害状況等に対応する土地の 嵩上げや水害に対応する保険への加入等相応の浸水被害対策を講じる可能性が高かったというべきであって,そうであれば財産的損害を受けなかったというべきであるから,被告の説明義務違反と買主原告らの財 嵩上げや水害に対応する保険への加入等相応の浸水被害対策を講じる可能性が高かったというべきであって,そうであれば財産的損害を受けなかったというべきであるから,被告の説明義務違反と買主原告らの財産的損害との間には相当因果関係があるというべきである。 ⑵ 原告Aの損害 ア建物補修費用(請求額719万円認容額181万円)- 72 - 前記前提となる事実のとおり,原告Aの自宅建物は,平成25年台風により床上70㎝まで浸水したところ,原告Aは,本件浸水被害により損傷した自宅建物の修補のために要する費用が719万円である旨主張し,それに沿うHORI建築作成の見積書(甲A13)を提出する。 しかしながら,本件浸水被害による原告Aの自宅建物の浸水状況(甲A 10)を見ても,具体的な損壊箇所は明らかではなく,上記見積書記載の補修の必要性は不明であると言わざるを得ず,原告AがHORI建築に対して実際に発注した補修工事に係る費用は181万円にとどまること(甲A14,15)も併せ考慮すると,本件浸水被害による原告Aの自宅建物の補修費用としては181万円の限度で認めることができるというべき である。 イ動産損害電子レンジ及び冷蔵庫(請求額21万2800円認容額9万1900円)証拠(甲A10,16,17)及び弁論の全趣旨によると,電子レン ジ及び冷蔵庫は本件浸水被害によって損壊したこと,原告Aは一旦安価なものを購入した上で,その後被災前と同等品を購入したことが認められる。これらの動産に係る損害の算定に当たっては,購入時の代金額から経年を考慮して減額した残存価格又は代替物の購入費用等をもって損害額とするのが相当であるものの,本件において上記のような算定のた めに必 の動産に係る損害の算定に当たっては,購入時の代金額から経年を考慮して減額した残存価格又は代替物の購入費用等をもって損害額とするのが相当であるものの,本件において上記のような算定のた めに必要な購入時期及び購入価格や各家電の適切な減価率についての立証を求めることは困難である。そこで,民法248条を適用して,原告Aが被災前の同等品購入価格として主張する金額の5割をもって相当な損害額と認定すべきである。したがって,電子レンジに係る損害は2万6900円,冷蔵庫に係る損害は6万5000円と認められる。 手洗い鉢(請求額2万7500円認容額なし)- 73 - 本件浸水被害により原告Aの自宅建物のトイレも浸水し,トイレの壁等の補修が必要となったこと,本件浸水被害後にトイレの手洗い鉢を購入したこと(甲A18,19)が認められるものの,トイレの収納棚及び壁の補修のため手洗い鉢自体を取り替える必要性が不明であることからすると,その購入費用を損害ということはできない。 自動車(請求額30万円認容額2万9843円)証拠(甲A12,20~22)及び弁論の全趣旨によると,原告Aが本件浸水被害当時所有していた自動車(エブリィワゴン)は本件浸水被害により水没したこと,平成25年9月24日にエンジン水没に伴う修理を行い,2万9843円を支出したこと,その後,上記自動車を下取 りに出した上,原告Aの妻であるSが新たな自動車を144万8370円で購入したことが認められる。 しかしながら,そもそも新たな自動車を購入したのは原告Aではない上,原告Aは,本件浸水被害により使用していた自動車がいつ止まるか分からない状態となったことから車を買い替えた旨主張するが,買替え が必要な状態であったと認めるに足りる証拠はな 原告Aではない上,原告Aは,本件浸水被害により使用していた自動車がいつ止まるか分からない状態となったことから車を買い替えた旨主張するが,買替え が必要な状態であったと認めるに足りる証拠はない。 したがって,自動車に係る損害は修理費用2万9843円の限度でのみ認めることができる。 ウ慰謝料(請求額500万円認容額200万円)前記判示のとおり,被告は,本件ハザードマップについて確認や提示し なかった上,平成16年台風による浸水被害等のa地区の過去の浸水被害状況を十分認識しながらこれらについて全く説明しなかったこと,原告Aは,地方公共団体たる被告を信頼して本件土地1を購入し,生活の基盤となる自宅建物を建てたにもかかわらず,平成25年台風により床上浸水の被害を受け,建物及び動産につき財産的損害を被ったのみならず生命身体 に対する危険に晒されたこと,また,平成29年台風によっても床下浸水- 74 - の被害も受けるなど今後も浸水被害を受ける可能性があり,原告Aの精神的苦痛は,その自宅建物に居住する限り継続し得るものであることからすると,原告Aが被った精神的苦痛についても損害として認めるのが相当というべきである。そして,上記の事情に加え本件に表れた一切の事情を併せ考慮すると,原告Aの精神的苦痛に対する慰謝料額は200万円とする のが相当である。 エまとめ以上によると,原告Aの損害額は393万1743円と認められる。 ⑶ 原告Dの損害ア賃料(請求額5万1000円認容額なし) 前記判示のとおり,原告D及びMは,平成25年7月25日に本件土地4上に自宅建物を建築する工事請負契約を締結し,その引渡日が同年11月10日とされていたにもかかわらず,平成25年台風の影響で1か月 前記判示のとおり,原告D及びMは,平成25年7月25日に本件土地4上に自宅建物を建築する工事請負契約を締結し,その引渡日が同年11月10日とされていたにもかかわらず,平成25年台風の影響で1か月程度施工が遅れ,同年12月に自宅建物の引渡しを受けたことが認められるものの,原告Dが1か月分の家賃相当の損害を受けたことを認めるに足り る証拠はない。 イ慰謝料(請求額500万円認容額50万円)前記判示のとおり,被告は,平成16年台風によるa地区の浸水被害状況等について十分認識しながらこれを説明しなかったこと,原告Dは,地方公共団体たる被告を信頼して本件土地4を購入したこと,平成29年台 風では幸い浸水被害がなかったものの,今後その恐れがないわけではなく,原告Dの浸水被害の不安は自宅建物に居住する限り継続し得るものであることからすると,原告Dが被った精神的苦痛についても損害として認めるのが相当というべきである。そして,上記事情に加え本件に表れた一切の事情を併せ考慮すると,原告Dの精神的苦痛に対する慰謝料額は50万 円とするのが相当である。 - 75 - ウまとめ以上によると,原告Dの損害額は50万円と認められる。 ⑷ 原告Gの損害ア建物補修費用等(請求額155万0500円認容額155万0500円) 前記前提となる事実並びに証拠(併合前甲18~23(いずれも枝番号を含む。))及び弁論の全趣旨によると,原告Gは平成25年台風により床上浸水の被害を受け,次のとおり建物及び建物周辺設備の補修費用として合計155万0500円を支出したことが認められ,同費用は,原告Gの損害と認められる。 自宅基礎泥洗浄・消毒費用 4万円外構修繕費用 9万5 周辺設備の補修費用として合計155万0500円を支出したことが認められ,同費用は,原告Gの損害と認められる。 自宅基礎泥洗浄・消毒費用 4万円外構修繕費用 9万5000円エコ給湯器他修繕費用 25万2000円電気系統復旧費用 3万1500円自宅復旧工事費用 54万4000円 機器入替費用 58万8000円イ冷蔵庫買替費用(請求額9万9800円認容額4万9900円)前記前提となる事実及び弁論の全趣旨によると,原告Gの浸水被害状況からすると冷蔵庫が水没し,買替が必要な状態になったものと認められる。 しかしながら,動産に係る損害の算定に当たっては,前記判示のとおり, 購入時期,購入価格や適切な減価率についての立証を求めることは困難であることから,民法248条を適用して,原告Gが主張する金額の5割である4万9900円をもって相当な損害額と認定すべきである。 ウ自動車購入費用(請求額185万0504円認容額なし)原告Gは,本件浸水被害によって,当時所有し使用していた2台の自動 車が水没し,使用することができなくなったため,1台分のみ買い替えた- 76 - と主張し,その費用に関する証拠として受注明細票(併合前甲25)を提出する。しかしながら,原告Gは,本件浸水被害に際し,自動車を移動させることができたにもかかわらず移動させなかった上(甲G1),自動車が水没によって使用不能となり,かつ,買い替える必要があったことを認めるに足る証拠はないことを考慮すると,原告Gが主張する自動車購入費用 を損害と認めることはできない。 エ慰謝料(請求額300万円認容額150万円)前記判示のとおり,被告は,本件ハザードマップについ いことを考慮すると,原告Gが主張する自動車購入費用 を損害と認めることはできない。 エ慰謝料(請求額300万円認容額150万円)前記判示のとおり,被告は,本件ハザードマップについて確認や提示しなかった上,平成16年台風による浸水被害等のa地区の過去の浸水被害状況を十分認識しながらこれらについて全く説明しなかったこと,原告G は,地方公共団体たる被告を信頼して本件土地7を購入し,生活の基盤となる自宅建物を建てたにもかかわらず,平成25年台風により床上浸水の被害を受け,建物及び動産につき財産的損害を被ったのみならず生命身体に対する危険に晒されたこと,今後も浸水被害を受ける可能性があり,精神的苦痛は,その自宅建物に居住する限り継続し得るものであることから すると,原告Gが被った精神的苦痛についても損害として認めるのが相当というべきである。そして,上記事情に加え本件に表れた一切の事情を併せ考慮すると,原告Gの精神的苦痛に対する慰謝料額は150万円とするのが相当である。 オまとめ 以上によると,原告Gの損害額は310万0400円と認められる。 5 争点⑷(過失相殺)について被告は,原告らは購入する土地が浸水被害に遭う危険性に関する情報を容易に取得することができたにもかかわらず,自ら情報を取得することを怠ったといえるから,損害の公平な分担の理念に照らし,相当大幅な過失相殺がされる べき旨主張する。 - 77 - 確かに,自宅建物を建てるための土地を購入するのであれば,購入しようとする土地に関する情報を収集し,検討するのが一般的であり,買主原告らが土地購入を判断する過程において慎重さに欠ける点があったことは否定し難いものの,本件における損害の公平な分担を考慮するに際しては, する土地に関する情報を収集し,検討するのが一般的であり,買主原告らが土地購入を判断する過程において慎重さに欠ける点があったことは否定し難いものの,本件における損害の公平な分担を考慮するに際しては,買主原告らが,地方公共団体である被告が売主であることから問題のない土地であると信頼し て売買契約を締結したことは不合理とはいえないこと,買主原告らは一般市民にすぎないのに対し,被告は本件ハザードマップ作成の主体であるのみならず,a地区及びb地区において宅地造成を実施し,販売してきた事業者であり,かつ,上記両地区を含む地方公共団体として,上記両地区の浸水被害状況等の情報を収集・把握し,市民に対してこれを提供する立場にあったことを十分に考 慮する必要がある。そして,このような事情を踏まえると,原告A及び同Gについては,損害の公平な分担の理念に照らし,過失相殺すべきほどの落ち度があるとは言い難い。他方,原告Dについては,本件売買契約4締結に先立って,被告の担当職員であるQから本件ハザードマップを示され,本件土地4が同マップ上3~5mの浸水被害が生じる恐れがあるとされる区域にあることを認識 したにもかかわらず,それ以上,Qに質問したり,自ら調査することなく,本件売買契約4を締結したことなどの落ち度が認められ,その他本件に表れた一切の事情を考慮すると,原告Dについては3割の過失相殺をすべきである。 6 小括⑴ 以上検討したように,原告Aの損害額は393万1743円であるから, それと相当因果関係のある弁護士費用相当損害金は39万円と認められる。 また,原告Dの損害額は過失相殺により35万円となるから,それと相当因果関係のある弁護士費用相当損害金は3万円と認められる。そして,原告Gの損害額は310万0400円であるから,それと相 められる。 また,原告Dの損害額は過失相殺により35万円となるから,それと相当因果関係のある弁護士費用相当損害金は3万円と認められる。そして,原告Gの損害額は310万0400円であるから,それと相当因果関係のある弁護士費用相当損害金は31万円と認められる。 - 78 - ⑵ 被告は,原告Aは被告から被災者住宅支援事業に基づく補助金として約60万円を受領していること,原告Gは被告から地域再建被災者住宅支援事業に基づき50万円を受領したほか,被告等から義援金として10万円単位で複数回金銭を受領した旨主張し,損益相殺を主張するものと解される。しかしながら,被告が主張する上記金員は,いずれも損害をてん補する趣旨のも のとは認め難いから,損益相殺の対象とすることはできないというべきである。 第4 結論以上によると,被告に対し,原告Aの請求は,432万1743円及びこれに対する平成25年9月16日から支払済みまで年5分の割合による遅延損害 金の支払を請求する限度で,同Dの請求は,38万円及びこれに対する同日から支払済みまで年5分の割合による遅延損害金の支払を請求する限度で,そして,同Gの請求は,341万0400円及びこれに対する同日から支払済みまで年5分の割合による遅延損害金の支払を請求する限度でそれぞれ理由あるから認容し,原告A,同D及び同Gのその余の請求並びに原告B,同C,同E及 び同Fの請求はいずれも理由がないから棄却することとして,主文のとおり判決する。なお,原告A,同D及び同Gは,いずれも仮執行宣言を求めるが,相当でないから付さないこととする。 京都地方裁判所第1民事部 裁判長裁判官井上一成 めるが,相当でないから付さないこととする。 京都地方裁判所第1民事部 裁判長裁判官井上一成 裁判官中嶌諏訪 裁判官友延裕美は,てん補のため署名押印することができない。 裁判長裁判官井上一成 別紙当事者目録省略 別紙 物件目録 1 所在福知山市a地番地目宅地地積 186.23㎡ 2 所在福知山市a地番地目宅地地積 258.61㎡ 3 所在福知山市a地番地目宅地地積 277.69㎡ 4 所在福知山市a地番地目宅地地積 199.77㎡ 5 所在福知山市a地番地目宅地地積 248.62㎡ 6 所在福知山市a地番地目宅地地積 283.66㎡ 7 所在福知山市字b地番地目宅地地積 227.72㎡以上

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