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昭和40(う)395 賭博開張図利幇助被告事件

裁判所

昭和40年7月30日 仙台高等裁判所

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7,549 文字

主文 原判決中被告人三名に関する部分を破棄する。被告人Dを判示第一の(一)の事実につき罰金三、〇〇〇円、同(二)の事実につき罰金三、〇〇〇円、被告人A、同Bを罰金五、〇〇〇円に各処する。被告人らにおいて右罰金を完納することができないときは、各金五〇〇円を一日に換算した期間当該被告人を労役場に留置する。原審における訴訟費用(国選弁護人佐久間貢に支給した分)はこれを四分し、その一を被告人Aの負担とし、当審における訴訟費用中証人Cに支給した分はこれを三分し、その二を被告人D、同Aの負担とする。理由 (控訴趣意)本件控訴趣意は大河原区検察庁検察官事務取扱検事渡辺寛一名義の控訴趣意書記載のとおりであるから、これを引用する。(当裁判所の判断)控訴趣意(事実誤認と審理不尽)について原判決が、本件各公訴事実の本犯である原審相被告人E、同Fに対する各賭博開張図利の公訴事実については、いずれも有罪と認定判示したが、その幇助犯として起訴された被告人三名に対する本件公訴事実、すなわち第一、 被告人Dは(一) 昭和三八年八月六日頃原審相被告人Eらが白石市e字fg番地G方において、賭場を開張し、H外一〇名位の賭客を誘引し、花札を用い俗に「アトサキ」と称する賭銭博奕をさせて寺銭名下に金銭を徴収して利を図つた際、その情を知りながら、開張者側関係者の輸送、賭客の誘導案内をして、右Eらの右犯行を容易ならしめてこれを幇助した(二) 同年一〇月中旬頃、原審相被告人Eらが同市abのc番地dアパート内原審相被告人F方二階において、賭場を開張し、I外一〇数名の賭客を誘引し、花札を用い俗に「アトサキ」と称する賭銭博奕をさせて寺銭名下に金銭を徴収して利を図つた際、その情を知りながら、前 dアパート内原審相被告人F方二階において、賭場を開張し、I外一〇数名の賭客を誘引し、花札を用い俗に「アトサキ」と称する賭銭博奕をさせて寺銭名下に金銭を徴収して利を図つた際、その情を知りながら、前同様の行為をして右Eらの右犯行を容易ならしめてこれを幇助した第二、 被告人A、同Bは同年八月六日頃前記G方において前記第一、(一)記載のように原審相被告人Eらが賭場を開張し利を図つた際、その情を知りながら、賭客の案内、接待、見張をしてその犯行を容易ならしめてこれを幇助したという事実に対しては、いずれも、被告人らにおいて、右公訴事実にあるような行為を担当したこと、そしてその際多分賭博が行なわれるであろうということは知つていたものと認めることができるが、それ以上の本犯Eらの賭博開張図利の所為、目的についての認識があつたという点については、被告人Bについてはこれを認める証拠がなく、被告人L、同Aについては、被告人Lの検察官に対する昭和三九年六月一〇日付供述調書、被告人Aの検察官に対する同月一六日付供述調書のほかには証拠はなく、しかも右各供述調書におけるこの点に関する供述部分は、いずれも採用できないから結局同被告人らについても、この点の証拠がないとして、被告人ら三名に対し無罪を言い渡したものであることは所論のとおりである。 については、被告人Bについてはこれを認める証拠がなく、被告人L、同Aについては、被告人Lの検察官に対する昭和三九年六月一〇日付供述調書、被告人Aの検察官に対する同月一六日付供述調書のほかには証拠はなく、しかも右各供述調書におけるこの点に関する供述部分は、いずれも採用できないから結局同被告人らについても、この点の証拠がないとして、被告人ら三名に対し無罪を言い渡したものであることは所論のとおりである。ところで、原判決が本犯E、Fに対する有罪判決において挙示する証拠および被告人Lの司法警察員に対する昭和三九年六月八日付供述調書二通((甲)(乙))、被告人Aの司法警察員に対する同月一一日付、同月一四日付(甲)供述調書、被告人Bの司法警察員および検察官に対する各供述調書ならびに当審における証人Eの証言によれば、本件各公訴事実のように本犯Eらの賭博開張図利の所為があつたこと、本犯Eがその各賭博場において自らも賭博をなしたこと、被 警察員および検察官に対する各供述調書ならびに当審における証人Eの証言によれば、本件各公訴事実のように本犯Eらの賭博開張図利の所為があつたこと、本犯Eがその各賭博場において自らも賭博をなしたこと、被告人らがそれぞれ本件公訴事実にあるような行為をなしたこと、その際被告人らはそれそれその賭博場において賭博が行なわれるであろうことを知つていたこと、以上の事実が認められるのである。そこでまず被告人らが本犯Eらの賭博開張図利の所為を知つていたかどうかの点について検討する。記録および当審証人Cの証言によれば、被告人らはいずれもJ会K地区の会員であり、同会はいわゆる暴力団といわれているものであつて相当多数の会員をもつていること、J会K地区支部長は本犯Eであつて被告人Dはその実弟であり、右J会会員としても同人の弟分となり、また被告人A、同Bは同会内においては本犯Eの若衆の立場にあるものであること、本件公訴事実の本犯の所為が右J会を利用して行なわれたものであろうこと等は、おおむね検察官所論のとおりである。しかし、他面記録によれば、本犯E、FがJ会に加入したのは昭和三七年一〇月頃であつて、当時同会K地区支部長はLであつたところ、同人が同年一二月頃強盗罪により逮捕され、その後その罪により服役するようになつたため、本犯Eが右支部長となつたものであること(八九二丁、九一九丁)が認められることからすれば、本犯Eが自ら自由にK地区において賭博場を開張し得るようになつたのは、その後のことに属するものと思われる。 しかし、他面記録によれば、本犯E、FがJ会に加入したのは昭和三七年一〇月頃であつて、当時同会K地区支部長はLであつたところ、同人が同年一二月頃強盗罪により逮捕され、その後その罪により服役するようになつたため、本犯Eが右支部長となつたものであること(八九二丁、九一九丁)が認められることからすれば、本犯Eが自ら自由にK地区において賭博場を開張し得るようになつたのは、その後のことに属するものと思われる。また記録によれば、本犯Eが賭博を覚えはじめたのも本件公訴事実第一の(一)の時点からはさほど古いものでないこと(五七五丁)、同人は昭和三九年四月一四日大河原簡易裁判所で賭博罪により略式命令で罰金一〇、〇〇〇円に処せられたのが唯一の賭博に関する前科であること( 一の(一)の時点からはさほど古いものでないこと(五七五丁)、同人は昭和三九年四月一四日大河原簡易裁判所で賭博罪により略式命令で罰金一〇、〇〇〇円に処せられたのが唯一の賭博に関する前科であること(一〇一五丁、一三九丁)等が認められ、以上の諸事実と記録にあらわれた捜査の経過等を総合し検討すると、本犯Eが本件以外に自ら賭博開張図利を行なつた事実があると認めるに足る証拠はないのである。さらに記録によれば、被告人らはいずれも賭博には関心が薄く、本件公訴事実当時は賭博ないしは賭博場等に関する知識も少なかつたものであつたばかりでなく、本件公訴事実の賭博開張図利の点については本犯の者らから知らされていたわけでもなく、本犯の者らからの指示命令により行動したに過ぎず、その行動範囲も制限されていたものであることが窺えるのであつて、これと前記本犯Eの賭博歴が浅く、かつ賭博開張図利の前歴も証拠上これを認められないこと等を合わせ考えれば、被告人らが本件各公訴事実当時、本犯の各賭博開張図利の所為を知つていたものと断定するのはちゆうちよしないわけにはゆかない。各被告人らの司法警察員に対する各供述調書、被告人Lの原審第二回公判廷および当審公判廷における供述、被告人A、同Bの原審および当審公判廷における各供述に対比し、所論指摘の被告人L、同Aの各検察官に対する供述調書の供述部分、原審第一回公判調書中被告人Lの供述調書における供述はたやすく信用し得ないものである。また記録によれば、被告人Lは本件公訴事実後の同年一二月頃本件公訴事実第一の(二)のアパートにおいて行なわれた賭博の際、その賭博場に入つて見ようとしたところEから、お前が賭場に顔を出してはまずいから帰れといわれアパートの入口前に停めていた車の中で待つていたことが認められるのであるし(七九九丁)、原審相被告人Mは右 、原審第一回公判調書中被告人Lの供述調書における供述はたやすく信用し得ないものである。また記録によれば、被告人Lは本件公訴事実後の同年一二月頃本件公訴事実第一の(二)のアパートにおいて行なわれた賭博の際、その賭博場に入つて見ようとしたところEから、お前が賭場に顔を出してはまずいから帰れといわれアパートの入口前に停めていた車の中で待つていたことが認められるのであるし(七九九丁)、原審相被告人Mは右 その賭博場に入つて見ようとしたところEから、お前が賭場に顔を出してはまずいから帰れといわれアパートの入口前に停めていた車の中で待つていたことが認められるのであるし(七九九丁)、原審相被告人Mは右賭博場および本件公訴事実の二個の賭博場に出席していること(七八三丁裏)等を思えば右Mの司法警察員に対する昭和三九年六月一二日付供述調書における供述部分もたやすく信用することはできない。なお所論指摘の被告人Bの検察官に対する供述調書、同被告人の行動の如きは、本件公訴事実当時における同被告人の賭博に関する知識、関心の度合、本件公訴事実の賭博場における行動範囲等が前記のようなものであるところからすれば、同被告人が本件公訴事実の本犯Eらの賭博開張図利の所為を知つていたと認定する資料としては足りないものといわなければならない。以上要するに記録を精査し当審における事実取り調べの結果に徴し、かつ本犯Eの賭博歴が浅いこと、賭博開張図利の前歴が証拠上認められないこと、同人および被告人らのK地区のJ会会員としての経歴、地位等諸般の事情をも総合し勘案すれば、被告人らが本件公訴事実の各幇助行為をなした当時本犯の各賭博開張図利の所為を知つていたものとは断定できないものというべく、原判決が前記のように証拠の取捨選択および証拠価値の判断をして被告人らが本犯の賭博開張図利の所為を知つていたとの点は認定できないと判示したのは結局正当であつて、この範囲においては、原判決には所論のような自由心証主義の範囲を逸脱し、経験則に反した心証形成をして事実誤認の誤りを犯したものとは認められない。<要旨>よつて進んで原判決がこの点において直ちに被告人らを無罪とした当否につき検討する。おもうに賭博開張</要旨>図利の幇助罪はその本犯の性質上賭博の幇助を包含するものであるから(大審院大正九年 <要旨>よつて進んで原判決がこの点において直ちに被告人らを無罪とした当否につき検討する。 には所論のような自由心証主義の範囲を逸脱し、経験則に反した心証形成をして事実誤認の誤りを犯したものとは認められない。<要旨>よつて進んで原判決がこの点において直ちに被告人らを無罪とした当否につき検討する。おもうに賭博開張</要旨>図利の幇助罪はその本犯の性質上賭博の幇助を包含するものであるから(大審院大正九年 <要旨>よつて進んで原判決がこの点において直ちに被告人らを無罪とした当否につき検討する。おもうに賭博開張</要旨>図利の幇助罪はその本犯の性質上賭博の幇助を包含するものであるから(大審院大正九年(れ)第一四九九号、同年一一月四日判決、大審院刑事判決録第二六輯七九三頁参照)、同一の日時場所で同一人らにより同一の方法によつて行なわれた賭博開張図利を幇助したという罪とその者らが行なつた賭博を幇助したという罪とは基本的事実関係を同じうしその間には公訴事実の同一性が存するものというべく、したがつてこのような場合には、たとえ幇助者が本犯の賭博開張図利の事実を認識していなかつたとしても本犯らが行なつた賭博の事実を認識していたとすれば、少なくとも軽い賭博幇助の罪責を認定することができると解すべきであつて、しかも本件のような事案においては、この場合に訴因変更の手続を経ないでこれを認定しても毫も被告人らの実質的防禦を害することはないといつてよいところ、本犯Eは自らも本件各賭博場において賭客と共に賭博を行なつたことが認められることは既に説明したとおり証拠上明らかであり、しかも被告人らが右賭博行為を幇助したと認めるに足る証拠の存することは後記認定のとおりである本件においては、原判決が前記冒頭のように判断しながら右の点につき審理判断をしないで、単に本犯の賭博開張図利の所為を知つていたとの点につき証明がないとして直ちに無罪を言い渡したのは、審理不尽もしくはこれに基づく事実誤認の違法があり、この違法が判決に影響を及ぼすことは明らかであるから原判決中被告人らに関する部分は破棄を免れない。論旨はこの限度において理由がある。よつて、刑訴法三九七条一項、三七九条、三八二条により原判決中被告人三名に関する部分を破棄し、同法四〇〇条但書により被告人ら三名に対し当裁判所に 破棄を免れない。論旨はこの限度において理由がある。よつて、刑訴法三九七条一項、三七九条、三八二条により原判決中被告人三名に関する部分を破棄し、同法四〇〇条但書により被告人ら三名に対し当裁判所においてさらにつぎのとおり判決する。 はこの限度において理由がある。よつて、刑訴法三九七条一項、三七九条、三八二条により原判決中被告人三名に関する部分を破棄し、同法四〇〇条但書により被告人ら三名に対し当裁判所に 破棄を免れない。論旨はこの限度において理由がある。よつて、刑訴法三九七条一項、三七九条、三八二条により原判決中被告人三名に関する部分を破棄し、同法四〇〇条但書により被告人ら三名に対し当裁判所においてさらにつぎのとおり判決する。(当裁判所の判決)〔罪となるべき事実〕第一、 被告人Dは(一) 昭和三八年八月六日頃、原審相被告人Eらが宮城県白石市e字fg、G方において、賭博場を開張し、H外一〇名位の賭客を集め自らもこれに加わつて花札を使用して金銭を賭け、俗にアトサキと称する賭博を行ない、寺銭名義で金銭を徴収して利を図つた際、右開張者側関係者の輸送、賭客の誘導案内をしてEらの右犯行を容易ならしめてこれを幇助し(二) 同年一〇月中旬頃、前示Eらが、同県同市abのcdアパート内原審相被告人F方二階において、賭博場を開張し、I外一〇数名の賭客を集め自らもこれに加わつて、前同様の方法による賭博を行ない、前同様の方法で金銭を徴収して利を図つた際、前同様開張者側関係者の輸送、賭客の誘導案内をしてEらの右犯行を容易ならしめてこれを幇助し第二、 被告人A、同Bは、前示Eらが、前記第一の(一)記載の賭博開張図利行為を行なつた際、それぞれ賭客の案内、接待、見張をしてEらの右犯行を容易ならしめてこれを幇助したものであるが、被告人らはいずれも前記犯行に際しEらが賭博を行なうものとの認識のもとにこれを幇助したにすぎないものであつて、Eらの賭博開張図利行為は被告人らの予知しなかつたものである。(証拠の標目)(省略)(被告人Dに対する確定裁判)被告人Dは昭和三八年九月五日大河原簡易裁判所で業務上過失傷害罪により罰金七、〇〇〇円に処せられ、該裁判は同月二九日確定したものであつて、右は同被告人に対する検察事務官作成の前科調書、同被告人の原審公 告人Dは昭和三八年九月五日大河原簡易裁判所で業務上過失傷害罪により罰金七、〇〇〇円に処せられ、該裁判は同月二九日確定したものであつて、右は同被告人に対する検察事務官作成の前科調書、同被告人の原審公判廷における供述により認められる。(法令の適用)被告人Dの判示第一の(一)、(二)の各所為、同A、同Bの判示第二の各所為は、結果としてはいずれも本犯Eらの刑法一八六条二項に当る賭博開張図利行為を幇助したことになるが、前示認定のように、被告人らはいずれも本件犯行時には右Eらが賭博を行なうものとの認識のもとにこれを幇助したにすぎないものであつて、Eらの賭博開張図利行為は被告人らの予知しないところであつて、軽い犯罪事実の認識のもとにこれを幇助したところ、重い犯罪事実が行なわれた場合に当るから、刑法三八条二項により軽い単純賭博の幇助罪の刑により処断することとし、同法一八五条六二条一項罰金等臨時措置法二条三条を適用し、所定刑中各罰金刑を選択した上、刑法六三条六八条四号によりそれぞれ法定の減軽をした金額の範囲内において、被告人A、同Bに対してはそれぞれ罰金五、〇〇〇円に処し、被告人Dの判示第一の(一)の罪と前記確定裁判を経た罪とは同法四五条後段の併合罪であるから同法五〇条により未だ裁判を経ない右第一の(一)の罪につきさらに裁判することになるので、同被告人に対しては前示金額の範囲内において判示第一の(一)の事実につき罰金三、〇〇〇円、同(二)の事実につき罰金三、〇〇〇円に各処すべく、右各罰金不完納の場合にはそれぞれ同法一八条を適用し金五〇〇円を一日に換算した期間当該被告人を労役場に留置することにし、原審および当審における訴訟費用については刑訴法一八一条一項本文を適用し主文末頃記載のとおり被告人D、同Aにそれぞれ負担させることにし、なお同条一項但書に 対しては前示金額の範囲内において判示第一の(一)の事実につき罰金三、〇〇〇円、同(二)の事実につき罰金三、〇〇〇円に各処すべく、右各罰金不完納の場合にはそれぞれ同法一八条を適用し金五〇〇円を一日に換算した期間当該被告人を労役場に留置することにし、原審および当審における訴訟費用については刑訴法一八一条一項本文を適用し主文末頃記載のとおり被告人D、同Aにそれぞれ負担させることにし、なお同条一項但書に た期間当該被告人を労役場に留置することにし、原審および当審における訴訟費用については刑訴法一八一条一項本文を適用し主文末頃記載のとおり被告人D、同Aにそれぞれ負担させることにし、なお同条一項但書により被告人Bに対しては原審および当審における訴訟費用は全部負担させないこととし、主文のとおり判決する。(裁判長裁判官斎藤寿郎裁判官小鶴弥作裁判官杉本正雄)

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