平成14(ネ)3850 損害賠償(通称 東海旅客鉄道損害賠償)

裁判年月日・裁判所
平成15年11月6日 東京高等裁判所
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判決文本文21,116 文字)

主文 1 本件控訴をいずれも棄却する。 2 控訴費用は控訴人らの負担とする。 事実及び理由 第1 当事者の求めた裁判 1 控訴の趣旨(1) 原判決を取り消す。 (2) 被控訴人らは,控訴人aに対し,各自金1億0500万円及びこれに対する平成4年5月31日から支払済みに至るまで年5分の金員を支払え。 (3) 被控訴人らは,控訴人JR総連に対し,各自金2億1000万円及びこれに対する平成4年5月31日から支払済みに至るまで年5分の金員を支払え。 (4) 訴訟費用は,第1,2審とも,被控訴人らの負担とする。 (5) 仮執行宣言 2 控訴の趣旨に対する答弁(被控訴人ら全員)主文と同旨第2 事案の概要(なお,当事者以外の略称については,原判決「事実及び理由」欄の第2の2のとおりとする。) 1 本件は,被控訴人らの共謀による不法行為(不当労働行為)により,控訴人aは,中央執行委員長をしていたJR東海労組からの脱退を余儀なくされたことにより,控訴人JR総連は,傘下の単位組合であったJR東海労組が控訴人JR総連から脱退したことにより,それぞれ損害を受けたとして,被控訴人ら各自に対し,控訴人aは1億0500万円(慰謝料1億円,弁護士費用500万円),控訴人JR総連は2億1000万円(無形損害2億円,弁護士費用1000万円)の損害賠償とその遅延損害金を請求した事案である。 その中心的争点は,①被控訴人らによる共同不法行為の有無,②控訴人らの権利侵害の有無及び共同不法行為と損害との因果関係,③控訴人らの損害額である。 2 第1審裁判所は,控訴人らが被控訴人らの共同不法行為の根拠とする本件送付文書(甲38を除く。)について,写しの成立はもとより,写しに対応する真の原本の存在及びその成立を認めることができないから,真の原本の記載内容の実質的証拠力は認め らの共同不法行為の根拠とする本件送付文書(甲38を除く。)について,写しの成立はもとより,写しに対応する真の原本の存在及びその成立を認めることができないから,真の原本の記載内容の実質的証拠力は認められないし,甲38はその内容及び被控訴人dの供述からして控訴人ら主張の共同不法行為を裏付けるに足るものとはいえないなど,その余の点について判断するまでもなく控訴人らの請求はいずれも理由がないとして棄却した。 3 争点の前提となる事実,主な争点及び前提事実及び当事者双方の主張は,原判決38頁11行目の「3 争点(3)(損害額)について」を「5 争点(3)(損害額)について」に改め,同別紙送付文書一覧表(原判決51頁)の「甲19の(4)」と「甲20」の間に「甲19の(5)『別紙8 JR総連が会社に対して面会等を求めた場合の対応方』と題する文書。ワープロで作成された文書」及び「甲19の(6)『別紙9 東海労組の最近の動きに対する会社の基本的考え方(案)』と題する文書。ワープロで作成された文書」を挿入するほか,原判決の「事実及び理由」欄の第3と同じであるから,これを引用する。 (前記引用に係る争点の前提となる事実の概要)(1) 国鉄の分割・民営化による被控訴人会社発足後の昭和62年4月30日,被控訴人会社と東海鉄道労連及び東海鉄輪会とは,相互の理解と信頼に基づいた健全かつ対等な労使関係の確立等を内容とする「東海旅客鉄道株式会社の経営基盤確立に向けて」と題する共同宣言(第一次共同宣言)を締結した。同年9月13日,東海鉄道労連傘下の6労働組合(鉄労,動労,社員労,日鉄労,列乗協,東海鉄輪会)は解散し,第一次共同宣言の理念に基づき大同団結してJR東海労組を結成し,控訴人aがその中央執行委員長に選任された。JR東海労組は,控訴人JR総連に加盟し,被控訴人会社と第一次共 列乗協,東海鉄輪会)は解散し,第一次共同宣言の理念に基づき大同団結してJR東海労組を結成し,控訴人aがその中央執行委員長に選任された。JR東海労組は,控訴人JR総連に加盟し,被控訴人会社と第一次共同宣言と同文の共同宣言を改めて締結した。 平成2年1月24日,被控訴人会社とJR東海労組との協定によって非組合員の範囲が変更され,課長代理(人事及び労務担当を除く。)に組合員資格が認められた。被控訴人会社の課長代理クラス約240名は,JR東海労組加入に備え,「労使共同宣言に基づく協調的な労使関係の更なる発展をめざす会」(めざす会)を結成した。同会の代表となった被控訴人bは,同年4月1日,同会に属する者らとともにJR東海労組に加入し,同年6月に中央執行副委員長に選出された。 同年3月下旬,清算事業団職員の第4回広域追加採用問題に関し,新生JRへの政治の介入によって国鉄と同じ轍を踏むことを懸念した控訴人JR総連は,抗議集会を行い,JR東海労組も参加した。この問題を契機に,JR東海労組は,労使関係について被控訴人会社と協議を続けた結果,同年6月8日,被控訴人会社とJR東海労組は,第一次共同宣言に基づく国鉄改革の成果を強調し,労使の共通認識による安定した労使関係の下で協力体制を築いていくべきことなどを内容とする「国鉄改革の完遂に向けて」と題する共同宣言(第二次共同宣言)を締結した。 (2) 控訴人JR総連の第5回定期大会(同年6月17日~19日)における運動方針案の中で「真の労使関係の確立,JR総連の団結の強化を前提として,『スト権の確立』について職場討議を深め,可能な限り早い時期に各単組でスト権確立をはかるよう努力すること」が提起され,職場討議の結果を次期中央委員会で集約することとなった。JR東海労組の中央執行委員会内部では,控訴人JR総連の主張は企業内の問 な限り早い時期に各単組でスト権確立をはかるよう努力すること」が提起され,職場討議の結果を次期中央委員会で集約することとなった。JR東海労組の中央執行委員会内部では,控訴人JR総連の主張は企業内の問題を労使が自主的に解決するとの共同宣言に矛盾するなどの意見が多数を占め,職場討議を「スト権の確立」ではなく「スト権の認識(スト権が権利としてあるという認識)」問題という形で行うこととし,同年9月から10月にかけて職場討議が実施された。その間,被控訴人会社は,同年8月に「争議権(ストライキ権)論議について」と題する文書(甲7の1,乙8)を主要幹部らに配布した。同文書の内容は,「JR東海は民間企業であるから,労働組合に正当なストライキ権が保障されていることはいうまでもない。しかし,JR東海は,東海道新幹線による大動脈輸送を主軸とする社会性,公共性の高い旅客輸送の使命を国鉄から承継し,日本経済の発展と向上に大きな役割を果たしている。仮にストライキにより輸送が停滞すれば,日本経済・国民生活に大きな迷惑をかけ,多くの国民・利用者から強い批判を受ける。その結果,労使の社会的信用を失墜すると共に,企業体質が未だ脆弱な現状においては,経営の悪化に直結し,被告会社の経営を危うくすることとなり,ひいては社員(=組合員)の雇用と生活の安定の基盤を危うくすることになる。従って,争議権(ストライキ権)を行使すれば大変なことになるというのが会社の実態であり,そういう状況の中で,会社の発展と社員・家族の幸せをはかるために,労使がそのようなことにならないようにするためにはどうしたら良いか,という観点で真剣に取り組まなければならない。着実に築き上げてきた労使の信頼関係を前提とすると,争議権(ストライキ権)については第一次,第二次共同宣言と一体のものとして議論すべきもの,すなわち,争議権 いう観点で真剣に取り組まなければならない。着実に築き上げてきた労使の信頼関係を前提とすると,争議権(ストライキ権)については第一次,第二次共同宣言と一体のものとして議論すべきもの,すなわち,争議権(ストライキ権)の行使を必要とするような労使紛争を発生させないようにするためには,労使はどうしたら良いかという観点から議論すべきであると考える。 争議権(ストライキ権)の行使を必要とするような労使紛争を発生させないようにするために労使がしなければならないことは,一人一人が,第一次,第二次共同宣言を正しく理解し,誠実に実践していくことにほかならない。争議権(ストライキ権)は,本来,行使が必要となった場合に確立すべきもので,そのような事態が発生しないよう全力を尽くすことこそ重要であり,そのような前提がない中で争議権(ストライキ権)を確立しておくことは,共同宣言の主旨と全く相容れない。」などとするものである。 控訴人JR総連は,同年11月28日の第9回中央委員会で「スト権問題は組織内の議論を深めた。」と集約し,継続論議することとなったのに対し,JR東海労組は,同年12月6日の第6回定期中央委員会において,正当な争議権ページ(1)を放棄することはあり得ない,「共同宣言」を軸に会社との信頼関係をより一層強め,諸活動を展開するなどと総括した。 (3) JR東海労組中央執行委員会は,控訴人aの招集により,平成3年4月18日(第14回)及び同年5月24日(第15回)に開催され,第7回定期大会の日時・場所・議題等を論議し,同大会を同年7月9日午後1時から翌10日午後3時まで開催すること,議題は経過報告,運動方針,予算案等とすることを決定し,同年5月25日発行の「JR東海労組新聞」第96号で全組合員に周知した。 定期大会の議題である運動方針案について,同年6月に中央執行 催すること,議題は経過報告,運動方針,予算案等とすることを決定し,同年5月25日発行の「JR東海労組新聞」第96号で全組合員に周知した。 定期大会の議題である運動方針案について,同年6月に中央執行委員会等で論議されたが,会社における労使関係の現状認識等の4つの問題について,中央執行委員会内部(総員12名)で,多数意見(被控訴人bを含む9名)と少数意見(控訴人aら3名)とで意見の一致をみることができず,運動方針の素案の討議にも進めなかった。 同年6月29日の第18回中央執行委員会において,被控訴人bら9名が規約に従った採決又は両論併記を主張したのに対し,控訴人aは,委員長の権限であるとして,期限を定めることなく定期大会の延期を命じ,同年7月1日には,委員長名で,大会延期を下部機関に通知する指示第184号を発した。被控訴人bら9名は,控訴人aに対し,大会延期について抗議し,緊急中央執行委員会の開催を請求するなどしたが,執行委員会は開催されなかった。 控訴人a及びその同調者は,同年5月31日,JR東海労組の正式な機関紙ではない「さつき会報」を発行し,その主張を組合内部に教宣し,同年7月6日には,控訴人aに同調する組合員を中心に「東海労を考える大集会」が開催され,「JR東海労組を考える会」なる組織が結成され,控訴人aがその会長となった。 JR東海労組の下部組織では予定通りの定期大会開催を求める要請等がされたほか,開催予定日であった平成3年7月9日には,代議員199名中153名が「第7回定期大会の開催を請求する代議員の集い」を開き,臨時大会の開催を請求するなどしたが,控訴人aは,「開催は自分が決める。」と言って,臨時大会の招集手続をしなかった。 控訴人aらは,同月17日,愛知県地方労働委員会に対し,被控訴人会社がJR東海労組の一部組合員と通謀して,控訴 したが,控訴人aは,「開催は自分が決める。」と言って,臨時大会の招集手続をしなかった。 控訴人aらは,同月17日,愛知県地方労働委員会に対し,被控訴人会社がJR東海労組の一部組合員と通謀して,控訴人aらを組合役員から解任することを図ったり,その援助をしているなどとして,その禁止,支配介入禁止などを求める不当労働行為救済申立てを行った。控訴人aらは,その疎明資料の一部として,第一次送付文書を提出した。 翌18日,被控訴人bら9名は,第一次送付文書について,「我々の検討資料であり,何らかの方法でa一派が入手したものと思われ,我々の運動に対する重大な挑戦である。」などとする緊急声明を発表した。 臨時大会の開催を求める代議員らは,同年7月20日,臨時大会の可及的速やかな開催と法的措置をとることを決定し,同月25日,被控訴人bらがJR東海労組及び控訴人aに対し,臨時大会及び中央執行委員会の開催を求める仮処分を名古屋地方裁判所に申し立てた。 控訴人a及びその同調者は,同年8月4日,「JR東海労結成準備委員会」を発足させ,その後JR東海労組を脱退し,同月11日,JR東海労を結成した。被控訴人bを含むJR東海労組の役員らは,JR東海労組名で,同日,組織破壊の暴挙に対する緊急声明を発表し,翌12日の第19回緊急執行委員会で被控訴人bを委員長代行に選任するとともに,大会開催を決定した上,同月19日上記仮処分申立てを取り下げた。 JR東海労が,同月12日,控訴人JR総連への加盟を申請したのに対し,JR東海労組は,同月13日,控訴人JR総連に対し,上記加盟を認めないよう文書で申し入れるなどしたが,控訴人JR総連は,JR東海労の加盟を基本的に認める決定をした。 JR東海労組は,同月26日の第7回定期大会で被控訴人bを中央執行委員長に選出した。 控訴人JR総連とJR東 で申し入れるなどしたが,控訴人JR総連は,JR東海労の加盟を基本的に認める決定をした。 JR東海労組は,同月26日の第7回定期大会で被控訴人bを中央執行委員長に選出した。 控訴人JR総連とJR東海労組は,同年9月4日及び9日にJR東海労の加盟問題について話合いを持ったが,決裂し,控訴人JR総連は,同月11日,連絡執行委員会でJR東海労の加盟承認を決定し,同年10月11日,第12回臨時中央委員会でJR東海労の加盟を正式に承認した。 JR東海労組は,同年11月15日の第8回臨時大会において,控訴人JR総連から脱退することを決定した。なお,JR東海労組は,平成5年3月15日,東海鉄産労と組織統一し,東海旅客鉄道労働組合(略称「東海ユニオン」)となり,組合員数1万7400名,組織率82パーセントを擁する組合となった。 4 控訴人らの当審における主張(1) 控訴人らが,被控訴人らによる共同不法行為の裏付け証拠として,写しを原本として提出した本件送付文書について,原判決は,写し自体の成立の主張立証も必要であるとするが,写しの成立が原本の存在等を推し量る意味しか有しないことから上記主張立証の必要性を論理的に導き出すことは不可能である。写しの成立が不明であったとしても,他の補助事実から,真の原本の存在及び原本の成立の真正が認められれば,形式的証拠能力を有するものとして認めるべきである。また,文書の成立の真正とは,ある文書が挙証者により作成者と主張される者の意思に基づいて作成されたことを意味するのであって,写しの正確性は写し自体の成立の問題ではないし,本件送付文書については,機械コピーによる文書であるという事実自体から原本を正確に写したものであることが事実上推定される上,真の原本の存在及び成立の真正が認められることも明らかである。 なお,企業等の組織内部で密 いては,機械コピーによる文書であるという事実自体から原本を正確に写したものであることが事実上推定される上,真の原本の存在及び成立の真正が認められることも明らかである。 なお,企業等の組織内部で密かに実行される不法行為を裏付ける文書の存在を知った者がその文書の内容を外部に明らかにしようとする場合,その原本を入手できることは稀であり,仮に密かにコピーをとるとしても,その者が特定されれば内部的制裁が加えられる可能性が高い。本件においても,控訴人aに第一次送付文書を送付したのは被控訴人会社の内部の者であるが,仮にその者が特定されれば被控訴人会社に制裁を加えられる可能性が高いため,控訴人aとしても,その者の氏名を明らかにできないとしている。このような場合に,本件送付文書の内容から判断すると,組織内部の不正行為を裏付けるに十分であり,ある者がその不正行為により被害を被ったことが明らかであると認められるにもかかわらず,論理的には何ら必然性もない写しの成立という形式的要件によっていわば門前払いの判断をするのは,あまりにも実質的正義の観念を欠く,不当なものである。 (2) 被控訴人会社がスト権議論に関する会社見解文書(甲7の1,乙8)(以下「本件配布文書」という。)をJR東海労組組合員を含む管理職社員に配布した行為はもとより,被控訴人c,被控訴人dらの被控訴人会社首脳部が行ったJR東海労組内の被控訴人bら会社派に対する支援,指導等の一連の行為が支配介入の不当労働行為(労働組合法7条3号)に該当する。このような不当労働行為に該当する行為に対し,民法上の不法行為制度による司法救済を肯定することは判例・学説の一致するところであって,被控訴人cらのほか,被控訴人bについても共同不法行為が成立する。 被控訴人会社の主な支配介入行為は,①被控訴人会社が,平成2年8月ころ, 法救済を肯定することは判例・学説の一致するところであって,被控訴人cらのほか,被控訴人bについても共同不法行為が成立する。 被控訴人会社の主な支配介入行為は,①被控訴人会社が,平成2年8月ころ,本件配布文書をJR東海労組組合員を含む管理職社員に配布した行為,②平成3年3月下旬ころから同年8月ころにかけて,被控訴人cを中心とする被控訴人会社首脳部による綿密な協議・計画に基づいて組織的に実行された被控訴人bら会社派に対する極めて詳細かつ継続的な指導・教育,支援等の一連の行為である。上記①は,被控訴人会社が自らの行為であることを認めており,上記②は,被控訴人c(当時の被控訴人会社代表取締役副社長)を中心に,被控訴人d(当時の人事部勤労課課長)らが共同して実行した行為であって(甲11,12,19,28等),使用者自身によるものとみるべきであり,少なくとも使用者の直接の関与(通謀,示唆,容認)が認められるので,当然に使用者に帰責される。 支配介入の不当労働行為については,不当労働行為意思を要しないとするのが判例(最高裁昭和29年5月28日判決)であるから,本件についても格別被控訴人会社の支配介入意思は必要でないが,仮に必要であるとしても,JR東海労組内から控訴人a及び同人を中心とする控訴人JR総連の運動方針を支持する一派を排除し,ひいてはJR東海労組を控訴人JR総連から脱退させるとの目的をもって行われたものであるから,JR東海労組及び控訴人JR総連における「正常な組合運営を妨害する反組合的行為の意思をもってなされた行為」であるといえ,支配介入の意思が存在すページ(2)ることは明らかである。なお,使用者の意見の表明と支配介入との関係においても,本件配布文書は,スト権議論をするかしないかという組合が自主的に決定すべき事項を批判したものであり,内容的にも組 ージ(2)ることは明らかである。なお,使用者の意見の表明と支配介入との関係においても,本件配布文書は,スト権議論をするかしないかという組合が自主的に決定すべき事項を批判したものであり,内容的にも組合内の一派を擁護(支援)したり,スト権議論が組合の弱体化につながるとの批判であるなど,その配布行為は支配介入に該当する。 5 被控訴人らの当審における主張(1) 被控訴人会社,被控訴人c及び被控訴人dア本件送付文書のように,写しを原本として提出する場合は,写し自体を民事訴訟規則143条1項の「原本」として取り扱うものであるところ,この写しの性質は特定人(写しの作成者)が真の原本文書を認識見聞した内容を表現した報告文書の一種であるから,写しの成立(真正),すなわち,写しの作成者が真の原本の記載内容のとおりに正確に写しを作成したことが認められなければならない。控訴人らの主張は,機械コピーにより容易に真の原本と異なる写しが作成される可能性を無視したものであって,経験則に反する。 イ控訴人らは,被控訴人会社による本件配布文書の配布(前記4(2)①)が支配介入行為となるとの主張をする。 しかし,使用者及びその利益代表者が言論の自由(憲法21条)を有することは当然であり,言論の内容それ自体に不当労働行為の成立が認められるためには,その表現に強制,威圧,利益誘導の明示ないし暗示を含むなど,労働組合の自主性を害するものと通常考えられる要素の存在を必要とし,そうでない限りは不当労働行為とならない。本件配布文書は,第二次共同宣言(乙5)の締結直後にされ始めた「スト権論議」について,上記共同宣言の当事者としての見解を相手方当事者であるJR東海労組に示すためにまとめたものであって,上記共同宣言を互いに遵守し,より強固なものとする点について「一定の利害関係」を有する被控訴人会 て,上記共同宣言の当事者としての見解を相手方当事者であるJR東海労組に示すためにまとめたものであって,上記共同宣言を互いに遵守し,より強固なものとする点について「一定の利害関係」を有する被控訴人会社に発言の自由があることは明らかであるし,内容的にも,強制,威圧及び利益誘導の要素もなく,事前に控訴人aに提示してその意見を聞いた上でその内容に修正を加える手順などを踏んでいることにかんがみても,労働組合の運動方針を批判するものなどではなく,使用者の言論の自由の範囲内である。なお,控訴人らは,被控訴人会社が本件配布文書をJR東海労組組合員を含む管理職社員に配布したとするが,被控訴人会社は非現業の主要な幹部に配布しただけである。 また,控訴人らは,被控訴人cらによる被控訴人bら会社派に対する指導・教育,支援等の一連の行為(前記4(2)②)が支配介入行為となるとの主張をする。しかし,控訴人らが提出する本件送付文書が控訴人らの主張を裏付ける証拠とは全くなり得ないことは明らかであり,控訴人らはこれらの書証以外に実質的な立証をしていないなど,控訴人ら主張のような事実は全く存在しない。控訴人aらがJR東海労組を脱退したのは,控訴人a自身の組合内外での一連の行動や,控訴人aの少なくとも平成3年初めころからの分派活動の結果,多数組合員の支持を失い,控訴人aらの自由意思により行っただけである。 したがって,被控訴人会社に,控訴人らの主張する控訴人JR総連及びJR東海労組の運営に支配介入した事実はないなど,控訴人らの主張は失当である。 (2) 被控訴人b被控訴人bは,当時,単に組合の民主化のために多数の同志組合員とともに運動を展開してきたに過ぎないのであって,控訴人らが主張する支配介入行為への関与の事実は一切存在せず,不法行為は成立しない。なお,控訴人らが主張する結 単に組合の民主化のために多数の同志組合員とともに運動を展開してきたに過ぎないのであって,控訴人らが主張する支配介入行為への関与の事実は一切存在せず,不法行為は成立しない。なお,控訴人らが主張する結果は,そもそも控訴人らが自ら招来したものであって,被控訴人bの意思あるいは意図によって左右し得る事柄ではなく,因果関係はない。 控訴人らが主張する本件配布文書について,被控訴人bは無関係である。 なお,上記文書の配布の背景には,第二次共同宣言締結後,前提事情に変動がないにもかかわらず,「スト権確立」について職場討議を強行しようとする控訴人らの非常識な言動があるのであって,その間の経緯等からすると,労働協約の一方当事者としての被控訴人会社が締結したばかりの上記共同宣言の履行を求める文書を発したのも十分に理解できるし,控訴人aらと打ち合わせた上で発せられた文書が組合の支配介入であるとの主張は納得し難い。 また,控訴人らは,本件送付文書を唯一最大の証拠として,組合内部の意見対立状況下において,被控訴人会社が被控訴人bら組合執行部内多数派に対する支援行為を行ったと主張するが,いずれも客観的事実に反するか,一方的な認識に基づく曲解であり,誤りである。 第3 当裁判所の判断 1 共同不法行為の成否について(前記引用に係る原判決争点(1))(1) 控訴人らは,前記のとおり,①被控訴人会社が,平成2年8月ころ,本件配布文書をJR東海労組組合員を含む管理職社員に配布した行為,②平成3年3月下旬ころから同年8月ころにかけて,被控訴人cを中心とする被控訴人会社首脳部による綿密な協議・計画に基づいて組織的に実行された被控訴人bら会社派に対する極めて詳細かつ継続的な指導・教育,支援等の一連の行為が,支配介入の不当労働行為(労働組合法7条3号)に該当するので,民法上の共同不法行為 ・計画に基づいて組織的に実行された被控訴人bら会社派に対する極めて詳細かつ継続的な指導・教育,支援等の一連の行為が,支配介入の不当労働行為(労働組合法7条3号)に該当するので,民法上の共同不法行為が成立する旨を主張する。 (2) 労働組合法は,労働者と使用者との実質的対等な労働力の取引交渉を集団的労働契約の締結を保障するために労働者の団体組織化の自由(団結権)と団交行動の自由(団体交渉権)を行政的手続の次元で保護するために,それらの自由を阻害する不当労働行為の排除,上記自由の回復等をするものである。 したがって,使用者による労働者の団結権の侵害があったとしても,不当労働行為として労働委員会等による行政的手続によって排除・回復の措置がとられるだけのことであって,民法上原則として取引の自由ないし取引交渉上の駆け引きの自由を認められている使用者が,それらの自由の下に行動し,そのために不当労働行為と評価されたとしても,直ちに不法行為が成立するものではない。 また,使用者が特定の労働者あるいは労働組合を嫌悪したり,労働力の取引交渉等において不平等扱いするとか他の労働組合を重視することは不当労働行為となっても,それが使用者の内部意思に止まっていて,外部的に差別等の現実結果を生じさせない限り,不法行為が成立するものでない。 ただ,使用者の不当労働行為が不当労働行為意思とは別の次元の民法上等の故意又は過失によって労働者の雇用契約上の財産的利益,名誉権等人格権,労働組合の財産的利益や信用など民法上等の法的利益を侵害し,賃金収入等の減少,組合員の名誉の毀損,組合費収入等の減少,組合の信用毀損による組合費の減少などの結果が生じたときに不法行為が成立するものと解すべきである。支配介入等の不当労働行為が,外形上のものに止まり,労働者や労働組合の抽象的ないし主観的な団結 の減少,組合の信用毀損による組合費の減少などの結果が生じたときに不法行為が成立するものと解すべきである。支配介入等の不当労働行為が,外形上のものに止まり,労働者や労働組合の抽象的ないし主観的な団結権を侵害しただけの場合は,それのみでは必ずしも損害が発生したとはいえず,不法行為は成立しないものと解すべきである。 (3) 前記(1)①の支配介入行為について前記のとおり,被控訴人会社とJR東海労組とは,従前の第一次共同宣言と同文の共同宣言を改めて締結した上で,平成2年6月8日に至って,第一次共同宣言に基づく国鉄改革の成果を強調し,労使の共通認識による安定した労使関係の下で協力体制を築いていくべきことなどを内容とする第二次共同宣言を締結した関係にあることからすると,そのような共同宣言の当事者である被控訴人会社とJR東海労組はお互いに共同宣言の内容を誠実に履行する義務を負っているといえる。そして,被控訴人会社がスト権論議に関する見解を記述した本件配布文書(甲7の1,乙8)の内容は,前記のとおり,労働組合に正当なストライキ権が保障されていることを前提とした上で,ストライキが,労使の社会的信用を失墜すると共に経営を悪化させ,社員(組合員)の雇用と生活の安定の基盤を危うくすることになるため,争議権(ストライキ権)は,第一次及び第二次共同宣言と一体のものとして議論すべきであって,争議権行使のような事態が発生しないよう全力を尽くすことこそが重要であるなどとするものであるので,本件配布文書全体の趣旨からすれば,被控訴人会社は,第二次共同宣言締結直後に生じた争議権(ストライキ権)論議の動きについて,共同宣言の一ページ(3)方当事者として共同宣言の内容を誠実に履行しようとして,その観点からスト権議論について使用者としての意見を述べたものとして管理職を対象に本件配布文 キ権)論議の動きについて,共同宣言の一ページ(3)方当事者として共同宣言の内容を誠実に履行しようとして,その観点からスト権議論について使用者としての意見を述べたものとして管理職を対象に本件配布文書を作成・配布したものと認めるのが相当である。 したがって,本件配布文書の配布行為が,控訴人aを誹謗,中傷したり,控訴人aと対立するJR東海労組内の被控訴人bらのグループを支援する目的でなされたものと認められない。上記配布行為が,支配介入の不当労働行為に該当するという控訴人らの主張に沿う証拠(甲128,140,147,証人e,証人f,証人g,控訴人a)は,憶測を述べるか主観的見解を述べるものであって,採用できない。他にこれを認めるに足る証拠はない。 以上によれば,本件配布文書の作成,配布は,前提においても不法行為になるものでないことが明らかである。 (4) 前記(1)②の支配介入行為についてア控訴人らが根拠とする本件送付文書の記載内容等の概要についての認定判断は,次のとおり補正するほか,原判決の「事実及び理由」欄の第4の1(1)並びに(2)ア,イ及びウ(ア)ないし(コ)と同じであるから,これを引用する。 原判決41頁3行目の「面会」を「面会等」に,同21行目の「甲12,20」を「甲20」に,同42頁13行目から14行目にかけての「ファクシミリ文書であり」を「ファクシミリ文書の体裁であり」に,同43頁11行目の「代議員会の手順が」を「代議員会等の手順や問題点が」に,同行目の「甲54の(1)ないし(4)」を「甲54の(1)ないし(5)」に,同13行目から14行目にかけての「臨時大会に向けての戦術等が」を「臨時大会に向けてのスケジュールの概要等」にそれぞれ改め,同19行目の「甲19の(1)の」の次に「一部であるⅣ項欄の」を加える。 イ甲19の(1)ない 目にかけての「臨時大会に向けての戦術等が」を「臨時大会に向けてのスケジュールの概要等」にそれぞれ改め,同19行目の「甲19の(1)の」の次に「一部であるⅣ項欄の」を加える。 イ甲19の(1)ないし(6)について控訴人らは,上記文書の真の原本について,本文は被控訴人会社が,書き込み部分は被控訴人dがそれぞれ作成したと主張する。 上記文書には,「Ⅰ これまでの経過,Ⅱ JR総連定期大会,Ⅲ 東海労内の争点,Ⅳ 当面のスケジュール,Ⅴ危機(Xデー)への対応方,Ⅵ 最重要対策」との項目が記載され,それらを具体化した内容の別紙(甲19の(2)ないし(6))が添付されており,その表題が「情勢分析と当面の対応方」となっている。上記文書は,内容から見て被控訴人会社がその原本を作成したものと推認する余地があるが,被控訴人会社としても,組織として適切かつ合理的な労務管理を行う必要がある以上,関連する情勢について詳細かつ正確な分析を行い,それを前提に様々な状況を想定した対応方を危機管理的に検討し,準備しておくのは極めて当然のことであって,JR東海労組の内部の対立状況から部分的に控訴人aが執行委員長から解任される可能性もあると分析し,その場合を想定した記載があったとしても何ら不自然ではない。また,「危機(Xデー)」,「代議員の切り崩し防止」等のような多少オーバーな表現があり,JR東海労組内の控訴人aらと対立するグループに好意的ないし同調的な意向を被控訴人会社がもっていたことが窺われるものであるので,被控訴人会社の潜在的な支配介入意思を推認させるものといえなくはないが,体裁から見て,内部的な検討用の文書として作成されたものに過ぎないことにかんがみ,被控訴人会社の内部的行為に止まるものであり,支配介入行為自体があったと推認するのは相当ではない。仮に上記文書の真の原 体裁から見て,内部的な検討用の文書として作成されたものに過ぎないことにかんがみ,被控訴人会社の内部的行為に止まるものであり,支配介入行為自体があったと推認するのは相当ではない。仮に上記文書の真の原本を被控訴人会社ないし被控訴人dが作成したとしても,文書全体の趣旨からすると,被控訴人会社としては,単に組合内の対立集団の一派を支援するなどという安直な発想によるものではなく,共同宣言を締結した当事者としてその誠実な履行を図ろうとしている行動の範囲内にとどまるものと認めるのが相当であって,控訴人ら主張のような計画・実行を被控訴人らが企図した内容とまでは認められないし,控訴人aらの具体的法益を侵害する不法行為の故意ないし過失があるとまでいえない。 ウ甲9ないし12,15,28,29,31,49,52及び61について控訴人らは,上記文書の真の原本について,甲15は被控訴人会社が,その余は被控訴人dがそれぞれ作成したと主張する。上記文書は,いずれも手書きのものであるが,その体裁から見て,何らかの機会の意見聴取メモないしは検討結果メモ程度であり,被控訴人会社の最終的な意思内容が記載されているとまでは認められない。仮に上記文書の真の原本を被控訴人会社が甲15を,被控訴人dが甲15以外の上記文書を作成したとしても,前記イと同様,内容的に見ても,組織としての適切かつ合理的な労務管理を行う前提としての危機管理的な検討,又は,共同宣言の誠実な履行のための検討に過ぎず,控訴人ら主張のような計画・実行を被控訴人らが企図した内容とまでは認められない。 エ甲17,18,20及び64について控訴人らは,上記文書の真の原本について,甲17及び18は被控訴人dが,甲20は本文を被控訴人会社が,書き込み部分を被控訴人dが,甲64は被控訴人会社がそれぞれ作成したと主張する。 甲1 について控訴人らは,上記文書の真の原本について,甲17及び18は被控訴人dが,甲20は本文を被控訴人会社が,書き込み部分を被控訴人dが,甲64は被控訴人会社がそれぞれ作成したと主張する。 甲17及び64は,内容的に甲19の(1)記載とほぼ同旨のものである。甲18には,批判派がa派を攻撃する方法等の記載があるが,仮にそれを被控訴人dが作成したとしても,その内容が,単なる情勢分析の前提としての情報収集メモ程度でしかない可能性もあるなど,控訴人ら主張のような計画・実行を被控訴人らが企図した内容のものとまでは認められない。 甲115(hの筆跡鑑定)は,甲20の手書き部分について,被控訴人dの筆跡である可能性が高いと判定するが,乙114の1(iの意見書)並びに鑑定人jの鑑定及び尋問の各結果と対比すると,甲115の鑑定結果は採用するには未だ信頼性が低く,被控訴人dが作成したとは認め難いし,作成者以外の人物が別の機会に新たな書き込み工作をした疑問があるので,甲20の内容の信用性も低いものといわざるを得ない。仮に被控訴人dが作成した部分が含まれるとしても,内容的には前記甲19の(1)の場合と同様に,会社組織としての適切かつ合理的な労務管理を行う前提での危機管理的な検討ないし情勢分析のためのものという範囲を超えるものとまでは認められないので,これによって,控訴人らが主張するような支配介入が具体的に実行された事実が推認できるものでない。 オ甲22及び27について控訴人らは,上記文書の真の原本について,甲22は,本文を被控訴人会社が,書き込み部分を被控訴人dが,甲27は被控訴人会社がそれぞれ作成したと主張する。 甲22については,「会社の介入の印象が強くなる」と記載してある部分もあるので,被控訴人会社の内部検討文書である疑いもある。しかし,文書全体を見ると 7は被控訴人会社がそれぞれ作成したと主張する。 甲22については,「会社の介入の印象が強くなる」と記載してある部分もあるので,被控訴人会社の内部検討文書である疑いもある。しかし,文書全体を見ると,内容的に,その本文をJR東海労組の控訴人a批判グループの組合員が被控訴人会社の立場も配慮して作成したものとしても何ら不合理とはいえない。他に被控訴人会社が作成したとまで認めるに足る確たる証拠はないというほかない。仮に被控訴人会社が作成したとしても,内容的に2つのシナリオを想定し,それぞれのメリット・デメリットを検討しただけのものである可能性も高く,情勢分析の範囲を超えて控訴人らに対する具体的支配介入行為を策謀したものとまでは認められない。 甲27は,ファクシミリ文書の体裁であり,書面上部に「発信:JR東海人事部」との印字があるからといって被控訴人会社が作成したことにはならないし,何らかの情報収集過程で入手した組合作成の文書を関係各所の管理職等に情報提供したに過ぎないとも考え得ることにかんがみると,その真の原本を被控訴人会社が作成したとまで認めることはできない。 カ甲24,30,33及び62について控訴人らは,上記文書の真の原本について,甲24及び62は被控訴人会社が,甲30及び33は被控訴人dがそれぞれ作成したと主張する。 甲24には電話による連絡方法の記載があるが,その真の原本を仮に被控訴人会社が作成したものであるとしても,それが何の機会に何を目的として作成されたものであるかを記載内容から特定することはできないし,その余の上記文書についても,仮に被控訴人dらが作成したものであるとしても,前記判断と同様に労務管理の前提としての合理的なページ(4)情報収集のためのものという範囲を超えて控訴人らに対する具体的支配介入行為を策謀したものとまでは認め 控訴人dらが作成したものであるとしても,前記判断と同様に労務管理の前提としての合理的なページ(4)情報収集のためのものという範囲を超えて控訴人らに対する具体的支配介入行為を策謀したものとまでは認められない。 キ甲32及び35の(1)ないし(4)について控訴人らは,上記文書の真の原本について,甲32及び35の(3)は本文を被控訴人会社が,書き込み部分を被控訴人dが,甲35の(1)は被控訴人dが,甲35の(2)・(4)は被控訴人会社がそれぞれ作成したと主張する。 甲32には全社員に対する事実関係説明についての説明方法等が,甲35の(1)ないし(4)には「当面の進め方」との表題でJR東海労組の本部・地方においてとるべき戦術等がそれぞれ記載されている。内容的にはJR東海労組の控訴人らに対する批判グループが作成したものと推認することも可能である。仮に,これらの真の原本の作成者が控訴人ら主張のとおりであるとしても,内容的には,労務管理のための合理的な検討内容であったり,情勢分析のための情報収集の結果をまとめたに過ぎないのであって,控訴人ら主張のようなJR東海労組に対する支配介入行為の計画・実行を被控訴人らが企図した内容のものとまでは認められないし,それ自体被控訴人らの法的利益を具体的に侵害する不法行為が成立するとまで認められない。 ク甲42ないし45について控訴人らは,上記文書の真の原本について,甲44は本文を被控訴人会社が,書き込み部分を被控訴人dが,その余は被控訴人会社がそれぞれ作成したと主張する。 甲42には決起集会の進め方等が,甲43には「当面の流れ」として決起集会等に対する被控訴人会社の対応等が,甲44及び45では,7月5日から10日までの被控訴人会社とJR東海労組のスケジュールが記載されている。甲42及び45は,内容的にJR東海労組 の流れ」として決起集会等に対する被控訴人会社の対応等が,甲44及び45では,7月5日から10日までの被控訴人会社とJR東海労組のスケジュールが記載されている。甲42及び45は,内容的にJR東海労組の組合員側で作成すべき文書であって,その真の原本を被控訴人会社が作成したと窺わせるような事情は見当たらない。甲43及び44についても,仮にその真の原本の作成者が控訴人ら主張のとおりであるとしても,情報収集した結果の分析等に基づいて被控訴人会社の対応方法等を具体的に検討したものを記載したと認めるのが合理的であって,内容的にも控訴人ら主張のような具体的な支配介入の計画・実行を被控訴人らが企図したものとまでも認められない。 ケ甲48の(1)・(2),53,54の(1)ないし(4),55の(1)ないし(3)及び58について控訴人らは,上記文書の真の原本について,甲48の(1)・(2),54の(4)・(5)及び55(3)は被控訴人会社が,その余は本文を被控訴人会社が,書き込み部分を被控訴人dがそれぞれ作成したと主張する。 甲48の(1)・(2)には「東海労を考える会」の動きに応じた控訴人aを解任する場合の手順や問題点等が,甲53には代議員会等の手順や問題点が,甲54の(1)ないし(5)には7月1日以降控訴人a解任までの戦術等が,甲55の(1)ないし(3)には臨時大会における戦術等が,甲58には臨時大会に向けてのスケジュールの概要等がそれぞれ記載されている。 上記文書は,いずれもその記載内容を見ると控訴人aらに批判的になったJR東海労組の組合員側で作成した文書であると推認され,その真の原本を被控訴人会社が作成したと窺わせるような事情は見当たらない。 コその余の原判決別紙送付文書一覧表記載の被控訴人会社の作成したものと認められる甲38以外の文書も同様であるので と推認され,その真の原本を被控訴人会社が作成したと窺わせるような事情は見当たらない。 コその余の原判決別紙送付文書一覧表記載の被控訴人会社の作成したものと認められる甲38以外の文書も同様であるので,結局のところ,甲38以外の本件送付文書については,仮にそれらの真の原本の作成者が控訴人ら主張のとおりであるとしても,内容的に見て,会社組織として当然に行うべき労務管理の前提での危機管理的な検討ないし情勢分析のための情報収集の結果に過ぎないものが大部分であって,それだけで,被控訴人会社が,自らあるいはJR東海労組の批判派やJR東海労が分裂した後のJR東海労組と共謀して,控訴人らが主張するような具体的な支配介入行為の計画・実行を被控訴人らが企図したとまで認めることはできないし,その他これを認めるに足る確たる証拠もない。また,甲38の文書自体から支配介入の意思や事実は認めることができない。なお,被控訴人dは,平成3年当時ころに自らが書いた文書等が手元に何ら残っていないなどと不自然な供述をする部分もあるが,結局のところ,上記判断を左右するに足るものとまでは認められない。 むしろ,前記引用に係る原判決の争点の前提となる事実等をも総合すると,労使の共通認識による安定した労使関係の下で協力体制を築こうとする第二次共同宣言の締結後間もなくの時期に,「スト権の確立」についての職場討議に固執し,中央執行委員会における多数派から提案された規約に従った運動方針案の採決等を拒否し,委員長の権限であるとして期限の定めなく定期大会の延期を命じ,代議員有志による臨時大会の開催請求に対しても「開催は自分が決める。」と言って招集手続をとらなかったなど,控訴人aらによる多数派組合員から乖離した一連の独裁的な行動や,多数派との対立構造の明確化・顕在化の中で,控訴人aらが自発的な意思・判断に 「開催は自分が決める。」と言って招集手続をとらなかったなど,控訴人aらによる多数派組合員から乖離した一連の独裁的な行動や,多数派との対立構造の明確化・顕在化の中で,控訴人aらが自発的な意思・判断に基づいてJR東海労組を脱退するなどに至ったものと認めるのが自然かつ合理的である。そして,そのような本件の経緯に照らすと,本件配布文書や本件送付文書が存在していたことから,被控訴人会社がJR東海労組と共謀ないし連携して控訴人らに支配介入する具体的不法行為に該当するような具体的な行動があったものと推認させるものではない。被控訴人会社としても,容易に想定し得るものであるし,第二次共同宣言においても「労使は,それぞれの立場で広範な社員の率直な意見を正確に把握し」と連携協議を行うことをうたっていたのであるから,組織としてJR東海労組やJR東海労の内部の情勢を把握して労務管理等を行う必要からその想定に従った情報収集や対応方の内部的な検討をするのは当然のことであるので,仮にそれらの内容が記載された文書等が被控訴人会社内に存在したとしてもその程度のことは何ら不自然なことではない。そうすると,被控訴人会社が,必要な検討をした情勢分析や見込みの内容が結果的に控訴人aらの自発的行動を的確に予想分析したに過ぎないのであって,被控訴人会社が控訴人aをJR東海労組の執行委員長から解任するなどの方策を計画・実行したために,控訴人aがJR東海労組からの脱退を余儀なくされたなどとする控訴人らの主張は到底採用できるものではない。 (5) 本件係争について,その当時の全体の経緯や状況から検討するに,「スト権の確立」についての職場討議の議論等について,JR東海労組内部で控訴人aを中心とするグループ(以下「a派」という。)と被控訴人bを中心とするグループ(以下「b派」という。)とに二分されてお ,「スト権の確立」についての職場討議の議論等について,JR東海労組内部で控訴人aを中心とするグループ(以下「a派」という。)と被控訴人bを中心とするグループ(以下「b派」という。)とに二分されており,実質的に複数の組合が併存しているに等しい状況にあった。このような場合,使用者としては,いわば労働組合内部の問題であり,団体交渉等とは異なるレベルであるが,各グループの団結権を平等に承認,尊重するため,その限りでは中立的立場を保持しなければならないというべきである。他方で,現実問題としては,労働組合のグループ間の組織人員や支持見解等に大きな違いがある場合に,使用者が経営政策上の判断ないし裁量として,より大きなグループの持つ現実の交渉力や組織力に応じた合理的,合目的的な対応をせざるを得ない面があるのは否定できないので,そのことが直ちに中立義務違反につながるものというべきではない。 被控訴人会社の担う公的な業務内容からすると,莫大な損失につながる可能性のあるストが実行されることをできるだけ避けたいと考えるのは当然のことといえる。ただ,a派が主張するスト権の確立論議も現実のスト実行と直接結びついた切迫性を有するものとも認められない。そして,被控訴人会社としても,当然,使用者としての意見ないしは第二次共同宣言を締結した当事者として意見を有しているはずであって,率直に自己の意見を表明すること自体が支配介入行為となるわけではない。 しかも,使用者の行動傾向として,できるだけ多数派のグループと事を荒立てずに迎合的な方向で対応することを是認せざるを得ない面があり,経営政策上の判断として合理的,合目的的な裁量行為といえるので,結果として,一方のグループを重視することにつながるとしても,それのみで直ちに支配介入となる支援とはいえず,前記の中立義務違反になるものではな 策上の判断として合理的,合目的的な裁量行為といえるので,結果として,一方のグループを重視することにつながるとしても,それのみで直ちに支配介入となる支援とはいえず,前記の中立義務違反になるものではない。特に,本件では,被控訴人会社が具体的に何らかの処遇上の取扱いの差異を生じさせたというわけではないし,被控訴人会社が意見表明した場合,結果として,少数派であるa派の孤立,脱退を容易に予測できるとページ(5)しても,それをもって,被控訴人会社がa派の弱体化を企図したものであると短絡的な推定をするのは相当でない。そうすると,第二次共同宣言の当事者である被控訴人会社が自己の率直な意見を文書の配布という形で表明したとしても,それ自体が直ちにJR東海労組はもとよりJR東海労や控訴人JR総連の団結権の制限や組織の切り崩しといえるものでなく,労働組合等の団結権を不当に侵害し,控訴人らの法的利益を害する不法行為性のある支配介入に当たるとはいえない。 また,被控訴人会社がJR東海労組に何らかの圧力をかけて控訴人JR総連から脱退させたと認めるに足る客観的証拠はなく,かえって証拠(丙40の1ないし3,50,55,57)によるとJR東海労組はJR東海労の控訴人JR総連への加入問題を問いただすなどの経緯を経て,組合大会の満場一致の決議をもって,自ら控訴人JR総連から脱退したものであることが認められる。 そして,控訴人らの本件請求は不法行為に基づく損害賠償請求であるが,使用者が支配介入行為によって損害賠償責任を負うためには,前記1(2)で述べたとおり,単に外形的に支配介入に当たるだけでは足りず,使用者の主観的事情として,支配介入の意思があり,支配介入の具体的行為形態が民法上も不法であることを認識していたか,認識していなかったことに過失があったことが必要となるものと解すべきで けでは足りず,使用者の主観的事情として,支配介入の意思があり,支配介入の具体的行為形態が民法上も不法であることを認識していたか,認識していなかったことに過失があったことが必要となるものと解すべきである。そうすると,仮に被控訴人会社の本件配布文書の配布行為が外形的に支配介入行為に当たると解する余地があったとしても,前記のとおり,控訴人らが問題とする控訴人aのJR東海労組からの脱退やJR東海労組の控訴人JR総連からの脱退がいずれも各者の自発的な意思決定に基づく行動の結果であることなどをも含めて総合考慮すると,本件全証拠によっても,被控訴人会社に前記のような控訴人aらの排除,誹謗,中傷や控訴人JR総連からのJR東海労組の脱退を勧めたり,圧力をかけて脱退させるなどの控訴人JR総連の組織の切り崩しの積極的加害の支配介入意思があったと認めることができず,不法行為となる主観的事情を認めることもできない。 また,被控訴人会社が,JR東海労組に弁護士を紹介し,足代を補給した事実を認めるに足る証拠はない。 (6) したがって,その余の点を判断するまでもなく,被控訴人らに控訴人ら主張のような共同不法行為が成立すると認めることはできず,他にこれを認めるに足る証拠はない。 2 結論以上によれば,その余の点について判断するまでもなく,控訴人らの本件請求はいずれも理由がないので棄却すべきであって,これと結論を同じくする原判決は相当である。 よって,控訴人らの本件控訴をいずれも棄却することとして,主文のとおり判決する。 東京高等裁判所第16民事部裁判長裁判官鬼頭季郎裁判官瀧澤泉裁判官任介辰哉ページ(6) 澤泉裁判官 任介辰哉

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