令和2(ワ)11652 損害賠償請求事件

裁判年月日・裁判所
令和5年4月20日 大阪地方裁判所
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判決文本文45,968 文字)

主文 1 被告は、原告X1に対し、27万5000円並びにうち11万円に対する令和元年9月25日から支払済みまで年5分の割合による金員及びうち16万5000円に対する令和3年5月12日から支払済みまで年3分の割合による金員を支払え。 2 被告は、原告X2に対し、10万円及びこれに対する令和元年9月25日から支払済みまで年5分の割合による金員を支払え。 3 原告らのその余の請求をいずれも棄却する。 4 訴訟費用は、原告X1に生じた費用の10分の9及び被告に生じた費用の5分の3を原告X1の負担とし、原告X2に生じた費用の15分の 14及び被告に生じた費用の3分の1を原告X2の負担とし、その余を被告の負担とする。 事実 及び理由第1 請求 1 被告は、原告X1に対し、330万円並びにうち220万円に対する令和元 年9月25日から支払済みまで年5分の割合による金員及びうち110万円に対する令和3年5月7日から支払済みまで年3分の割合による金員を支払え。 2 被告は、原告X2に対し、160万1493円及びこれに対する令和元年9月25日から支払済みまで年5分の割合による金員を支払え。 第2 事案の概要 原告X1は、強度近視のため視力補正用眼鏡(以下「本件眼鏡A」という。)を使用していたところ、刑事事件の被告人となり未決拘禁者として大阪拘置所に収容された際、大阪拘置所長からレンズの着色濃度が基準を満たさないなどとして本件眼鏡Aの使用を許可しない措置(以下「本件不許可措置A」という。)を受けた。その後、原告X1は、刑事事件の国選弁護人であった原告X2から、 別の視力補正用眼鏡(以下「本件眼鏡B」という。)の差入れを受けてこれを使 用していたが 可措置A」という。)を受けた。その後、原告X1は、刑事事件の国選弁護人であった原告X2から、 別の視力補正用眼鏡(以下「本件眼鏡B」という。)の差入れを受けてこれを使 用していたが、刑事事件の有罪判決の確定により大阪刑務所に移送された際、大阪刑務所長からレンズが無色透明ではないなどとして本件眼鏡Bの使用を許可しない措置(以下「本件不許可措置B」という。)を受けた。 本件は、原告X1が、本件不許可措置A及びBは国家賠償法上違法であるなどと主張して、被告に対し、国家賠償法1条1項に基づき、本件不許可措置A につき慰謝料等220万円及びその遅延損害金の、本件不許可措置Bにつき慰謝料等110万円及びその遅延損害金の支払を求めるとともに、原告X2が、本件不許可措置Aにより弁護人の固有権である接見交通権が違法に侵害されたと主張して、被告に対し、同項に基づき、慰謝料等160万1493円及びその遅延損害金の支払を求める事案である(なお、上記各遅延損害金の起算点及 び利率は上記第1に記載のとおり。)。 1 関係法令等の定め(1) 刑事収容施設及び被収容者等の処遇に関する法律(以下「刑事収容施設法」という。)ア 31条(未決拘禁者の処遇の原則) 刑事収容施設法31条は、未決拘禁者の処遇に当たっては、未決の者としての地位を考慮し、その逃走及び罪証の隠滅の防止並びにその防御権の尊重に特に留意しなければならない旨規定する。 イ 73条(刑事施設の規律及び秩序の維持)(ア) 刑事収容施設法73条1項は、刑事施設の規律及び秩序は、適正に維 持されなければならない旨規定する。 (イ) 刑事収容施設法73条2項は、同条1項の目的を達成するため執る措置は、被収容者の収 施設法73条1項は、刑事施設の規律及び秩序は、適正に維 持されなければならない旨規定する。 (イ) 刑事収容施設法73条2項は、同条1項の目的を達成するため執る措置は、被収容者の収容を確保し、並びにその処遇のための適切な環境及びその安全かつ平穏な共同生活を維持するため必要な限度を超えてはならない旨規定する。 ウ 42条(眼鏡その他の補正器具の自弁) 刑事収容施設法42条1項は、被収容者には、同項各号に掲げる物品(眼鏡その他の補正器具〔1号〕等)については、刑事施設の規律及び秩序の維持その他管理運営上支障を生ずるおそれがある場合を除き、自弁のものを使用させるものとする旨規定し、同条2項は、同条各号に掲げる物品について、被収容者が自弁のものを使用することができない場合であって、 必要と認めるときは、その者にこれを貸与し、又は支給するものとする旨規定する。 (2) 「被収容者に係る物品の貸与、支給及び自弁に関する訓令」(平成19年5月30日付け矯成訓第3339号法務大臣訓令。以下「本件物品訓令」という。乙17) 本件物品訓令15条本文は、他の刑事施設からの移送により被収容者が収容される際に、同訓令10条の規定により定めた物品の形状又は規格と異なる自弁の物品を所持する場合において使用又は摂取を許されていたものであるときは、当該物品の使用又は摂取を許すものとする旨を、同訓令15条ただし書は、当該物品の使用又は摂取を許すことにより、刑事施設の規律及び 秩序の維持その他管理運営上支障を生ずるおそれがある場合は、この限りでない旨を、それぞれ定める。 (3) 「着色眼鏡の許可基準等について」(平成26年9月3日付け大阪拘置所会計課長・首席矯正処遇官(処遇担当)指 理運営上支障を生ずるおそれがある場合は、この限りでない旨を、それぞれ定める。 (3) 「着色眼鏡の許可基準等について」(平成26年9月3日付け大阪拘置所会計課長・首席矯正処遇官(処遇担当)指示第1号。以下「本件拘置所指示」という。乙3) 本件拘置所指示記2(許可基準)は、「医療上、着色眼鏡を使用する必要があるなど特別な理由があると認められる場合を除き、レンズの可視光線透過率が75パーセントを超える(着色度25パーセント以内)眼鏡について使用を許可すること」と定める(以下「本件基準A」という。)。 本件拘置所指示記5(許可基準に適合しない着色眼鏡の使用を願い出た場 合の手続)は、「当該被収容者の願い出に対して、許可すべき特別な理由があ ると認める場合のみ使用を許可することとするが、その際、使用場所等を制限することは差し支えないものとする。」と定める。 (4) 「眼鏡等の許可基準について」(平成30年2月26日付け大阪刑務所首席矯正処遇官(処遇担当)指示甲第14号。以下「本件刑務所指示」という。 乙18) 本件刑務所指示記1(使用を許す眼鏡の規格)は、次のとおり定める(以下、後記イ(ア)の許可基準を「本件基準B」という。)。 アフレーム(ア) 彫金、装飾、ブランドロゴ等が際立つなど高級又は華美でないもの。 (イ) 特異な形状のフレームでないもの。 イレンズ(ア) 原則として無色透明とする。 ただし、以下の場合においては、個別検討を行うものとする。 a 医療上の理由により着色レンズの使用を認められた場合b 着色レンズの眼鏡しか所持しておらず、かつ、当該レンズの着色濃 度が25%以下 は、個別検討を行うものとする。 a 医療上の理由により着色レンズの使用を認められた場合b 着色レンズの眼鏡しか所持しておらず、かつ、当該レンズの着色濃 度が25%以下であって、その使用が許されなければ日常生活に著しい支障が生じると認められる場合(イ) 偏光レンズ又はミラーコートレンズではないこと。 (ウ) 補正器具としての機能を有していること。 2 前提事実(当事者間に争いがないか、掲記の証拠又は弁論の全趣旨により容 易に認められる事実。なお、証拠番号は特記なき限り枝番号を含む。)(1) 原告らア原告X1は、令和元年8月15日付けで暴力行為等処罰に関する法律違反被告事件により、同年9月13日付けで覚せい剤取締法違反被告事件により、大阪地方裁判所にそれぞれ公訴提起され、同裁判所において懲役2 年10月の有罪判決を受け、遅くとも令和3年5月7日までに、同判決の 確定により懲役刑の執行を受けることとなった者である(甲1の1・2、11、25)。 イ原告X2は、大阪弁護士会所属の弁護士であり、令和元年7月28日及び同年8月30日、原告X1の各被疑事件の国選弁護人に選任され、公訴提起後も引き続き上記アの各被告事件の国選弁護人に選任された者であ る(甲2)。 (2) 原告X1の大阪拘置所への移送及び本件不許可措置A等ア原告X1は、令和元年9月25日、未決拘禁者として収容されていた大阪府西成警察署の留置施設から大阪拘置所に移送され、大阪拘置所において、入所時健康診断を受けた。その結果、原告X1の裸眼視力は、左右と もに0.03と測定された。(甲1の1・2、乙4)イ大阪拘置所長は、令和元年9月25日、原告X1が入所時に において、入所時健康診断を受けた。その結果、原告X1の裸眼視力は、左右と もに0.03と測定された。(甲1の1・2、乙4)イ大阪拘置所長は、令和元年9月25日、原告X1が入所時に所持していた本件眼鏡Aのレンズを測定機器で測定したところ、その可視光線透過率が75%に満たなかったため、本件眼鏡Aの使用を許可せずにこれを領置した(本件不許可措置A)。なお、原告は、当時、本件眼鏡A以外の眼鏡を 所持していなかった。(乙1、5、6)ウ原告X2は、令和元年10月8日、大阪拘置所の弁護士面会室において、原告X1と接見した。このとき、原告X1は、本件眼鏡Aを含む眼鏡等の視力補正器具を使用していなかった。(甲6、25)エ原告X2は、大阪拘置所長に対し、令和元年10月9日付け申入書を送 付し、原告X1に対して本件眼鏡Aを引き渡すよう申し入れた(以下「本件申入れ」という。甲9)。 オ大阪拘置所長は、令和元年10月15日、本件眼鏡Aについて、レンズの可視光線透過率を改めて測定機器で測定した結果、左レンズが58. 3%、右レンズが60.8%であり、本件基準Aの使用を許可する基準を 満たしていないことから、その使用を許可せずに領置する旨判断し、同月 16日、主任矯正処遇官をして、その旨を原告X1に告知した(乙2、6)。 カ原告X2は、本件眼鏡Aの宅下げを受けた上で、令和元年11月8日、原告X1に対し、本件眼鏡Bとその付属品(眼鏡拭き及び眼鏡ケース)を差し入れた。原告X1は、同月11日、その引渡しを受けた。(乙9、10)(3) 原告X1の大阪刑務所への移送及び本件不許可措置B等 ア原告X1は、懲役2年10月の有罪判決の言渡しを受け、同判決確定後の令和3年5月7日 引渡しを受けた。(乙9、10)(3) 原告X1の大阪刑務所への移送及び本件不許可措置B等 ア原告X1は、懲役2年10月の有罪判決の言渡しを受け、同判決確定後の令和3年5月7日、懲役受刑者として大阪拘置所から大阪刑務所に移送された(甲25)。 イ原告X1は、令和3年5月7日、大阪刑務所において入所時健康診断を受けた結果、裸眼視力は左右ともに0.01、本件眼鏡Bによる矯正視力 は右眼0.3、左眼0.2と測定された。大阪刑務所の職員は、原告X1が入所時に所持していた本件眼鏡Bのレンズが無色透明ではなかったことから、同日、検査のために本件眼鏡Bを預かることとした。(乙21~23)ウ大阪刑務所長は、令和3年5月11日、原告X1に対して本件眼鏡Bの 使用を許可しない旨の決定をしてこれを領置し、同月12日、主任矯正処遇官をして、その旨を原告X1に告知した(本件不許可措置B。乙23、25)。 エ原告X1は、令和3年6月24日、大阪刑務所から神戸刑務所に移送された。原告X1は、移送先の神戸刑務所において、本件眼鏡Bの使用を許 可された。(甲25) 3 争点(1) 本件不許可措置Aの国家賠償法上の違法性(争点1)(2) 本件不許可措置Bの国家賠償法上の違法性(争点2)(3) 原告X1の損害の有無及び額(争点3) (4) 原告X2の損害の有無及び額(争点4) 4 争点に関する当事者の主張別紙「当事者の主張」のとおり第3 当裁判所の判断 1 認定事実前提事実並びに掲記の証拠及び弁論の全趣旨を総合すれば、以下の事実が認 められる。 (1) 原告X1の前刑等原告X1は、平成27年4月8日に確定した有 1 認定事実前提事実並びに掲記の証拠及び弁論の全趣旨を総合すれば、以下の事実が認 められる。 (1) 原告X1の前刑等原告X1は、平成27年4月8日に確定した有罪判決の懲役刑の執行のため、京都刑務所において服役した。原告X1は、その服役の際、本件眼鏡Aの使用を許され、これを使用していた。(甲25、原告X1本人3頁) (2) 大阪拘置所関係ア原告X1は、未決拘禁者として大阪府西成警察署の留置施設(なお、原告X1は、同留置施設において、本件眼鏡Aを使用していた。)に収容されていたところ、令和元年9月25日、同留置施設から大阪拘置所に移送され、入所時健康診断を受けた。その結果、原告X1の裸眼視力は、左右と もに0.03と測定された。 大阪拘置所長は、同日、本件眼鏡Aのレンズを測定機器によって測定したところ、その可視光線透過率が75%に満たなかったため、原告X1に対し、本件眼鏡Aの使用を許可せずに領置する本件不許可措置Aをした。 なお、原告は、当時、本件眼鏡A以外の眼鏡を所持していなかった。(以上 につき、前提事実(2)ア、イ、甲1の1、25、乙1、4、5)イ原告X2は、令和元年10月8日、大阪拘置所の弁護士面会室において、原告X1と接見した(前提事実(2)ウ、甲6)。 弁護士面会室の構造は、中央付近において面会者(弁護士)側と被収容者側を分ける透明な仕切り板(当時はアクリルボード1枚)が設置されて おり、仕切り板を挟んで弁護士と被収容者が向かい合って椅子に座り、面 会(接見)を行う構造である。弁護士面会室の被収容者側の壁又は扉には、室外から弁護士面会室内を目視することができる視察窓が設置されている。(乙35)原 い合って椅子に座り、面 会(接見)を行う構造である。弁護士面会室の被収容者側の壁又は扉には、室外から弁護士面会室内を目視することができる視察窓が設置されている。(乙35)原告X2は、上記接見において、検察官から開示を受けていた証拠書類に添付されている写真を確認させるため、原告X1に対し、同写真のカラ ーコピーを弁護士面会室の仕切り板(アクリル板)越しに示した。しかし、原告X1は、「眼鏡がないのでよくわからない。」、「実をいうと、先生の顔もぼやけて見えている。」などと述べた。(甲8、25、原告X1本人6~7頁)原告X2は、このまま接見を続けても、原告X1において証拠を確認す ることができず、接見の目的を達することができないと判断し、その旨を原告X1に伝えて接見を終了した。原告X2は、接見終了後、大阪拘置所の弁護士接見の受付職員や庶務課職員に対し、原告X1に本件眼鏡Aを使用させるよう口頭で申し入れたが、その申入れは容れられなかった。 ウ原告X2は、大阪拘置所長に対し、令和元年10月9日付け申入書を送 付して本件申入れをした。本件申入れは、要旨、本件眼鏡Aを原告X1に使用させたとしても「刑事施設の規律及び秩序の維持その他管理運営上の支障を生ずるおそれ」はなく、原告X1は極度の近視であり、裸眼では周りがほとんど見えないため、公判準備はおろか、弁護人との接見もままならない状況に置かれているから、本件眼鏡Aを原告X1に使用させないこ とで公判準備に支障が生じているなどとして、原告X1に本件眼鏡Aを引き渡すよう求めるものであった。(前提事実(2)エ、甲9)エ大阪拘置所長は、本件申入れを踏まえ、原告X1に対して本件眼鏡Aの使用を許可するかどうかを再検討することとした。 件眼鏡Aを引き渡すよう求めるものであった。(前提事実(2)エ、甲9)エ大阪拘置所長は、本件申入れを踏まえ、原告X1に対して本件眼鏡Aの使用を許可するかどうかを再検討することとした。 大阪拘置所長は、令和元年10月15日、本件眼鏡Aについて、改めて レンズの可視光線透過率を測定機器で測定した結果、左レンズが58. 3%、右レンズが60.8%であり(ただし、原告X2が後日依頼して行われた一般社団法人日本眼鏡普及光学器検査協会〔以下「本件検査協会」という。〕による試験結果によれば、左レンズが67.3%、右レンズが70.4%であった。)、本件基準Aを満たしていなかったことから、その使用を許可せずに領置する(本件不許可措置Aを継続する)のが相当である 旨判断し、同月16日、主任矯正処遇官をして、その旨を原告X1に告知した。(以上につき、甲3、乙2、6)オ原告X2は、令和元年10月18日、弁護士面会室において、原告X1と接見した際、原告X1から、本件眼鏡Aの使用を認めない旨の告知を受けた旨を聴取した。原告X2は、本件眼鏡Aの宅下げを受けた上で本件眼 鏡Aの度数に合わせた眼鏡を調達して差し入れることとし、その旨を原告X1に告げた。なお、原告X2は、同日の接見においても、原告X1との間で、検察官から開示を受けた証拠書類に添付されている写真のカラーコピーについて確認しながら打ち合わせることはできないと判断し、これを確認させなかった。(甲6、原告X1本人7頁) カ原告X1は、令和元年10月23日、大阪拘置所長に対し、本件眼鏡Aを原告X2に宅下げするよう求める旨の申請をし、原告X2は、同月24日、本件眼鏡Aの宅下げを受けた(乙5、7、8)。 キ原告X2は、令和元年11月7 月23日、大阪拘置所長に対し、本件眼鏡Aを原告X2に宅下げするよう求める旨の申請をし、原告X2は、同月24日、本件眼鏡Aの宅下げを受けた(乙5、7、8)。 キ原告X2は、令和元年11月7日、本件眼鏡Aの度数に合わせた本件眼鏡B(眼鏡拭き及び眼鏡ケース付き)を代金7万円で購入した。原告X2 は、同月8日、大阪拘置所を訪れ、原告X1に対し、本件眼鏡Bとその付属品(眼鏡拭き及び眼鏡ケース)を差し入れるとともに、弁護士面会室において原告X1と接見し、その旨を報告した。原告X1は、検査終了後の翌開庁日である同月11日、その引渡しを受けた。(甲6、10、11、25、乙9、10、原告X1本人9頁) なお、原告X2は、本件眼鏡Aの購入代金7万円につき、令和元年11 月8日、大阪弁護士会会長に対し、刑事弁護援助金支出申請をし、同申請は、令和2年1月6日付けで承認された。この承認には、国家賠償請求訴訟において、眼鏡代金相当額として損害賠償請求が認容された場合には、同額を援助金に返還されたいとする条件が付されている。(甲11)ク原告X2は、令和元年11月19日、弁護士面会室において、本件眼鏡 Bを着用した原告X1と接見し、原告X1に対し、検察官から開示を受けた証拠書類に添付されている写真のカラーコピーを示し、その写真に写された状況等について確認した(甲6、原告X1本人7~9頁)。 ケ原告X1は、令和2年1月17日、大阪拘置所入所後初めて刑事事件の公判に出廷した。その際、原告X1は、本件眼鏡Bを着用していた。 コ原告X1は、大阪拘置所に入所した令和元年9月25日から本件眼鏡Bの引渡しを受ける前日の同年11月10日までの約1か月半の間、4回の信書の発送(令和元年10月7日、17日、同年 コ原告X1は、大阪拘置所に入所した令和元年9月25日から本件眼鏡Bの引渡しを受ける前日の同年11月10日までの約1か月半の間、4回の信書の発送(令和元年10月7日、17日、同年11月8日2通)及び9回の信書の受信(同年9月27日、同年10月1日、3日、9日、10日、16日、21日、29日、同年11月6日)をした(乙32)。 (3) 大阪刑務所関係ア原告X1は、大阪地方裁判所において懲役2年10月に処する旨の有罪判決の言渡しを受け、同判決確定後の令和3年5月7日、刑執行開始時調査のため、懲役刑受刑者として大阪拘置所から大阪刑務所に移送された(前提事実(3)ア、甲25、乙25)。 イ原告X1は、令和3年5月7日、大阪刑務所において入所時健康診断を受けた結果、裸眼視力は左右ともに0.01、本件眼鏡Bによる矯正視力は右眼0.3、左眼0.2と測定された。また、眼の疾患等について特段の指摘はなかった。 大阪刑務所の職員は、令和3年5月7日、原告X1が入所時に所持して いた本件眼鏡Bのレンズが無色透明ではなかったことから(本件眼鏡Bの レンズは、一見すると無色透明のようにみえるが、薄くブラウン系の着色がされている。)、検査のために本件眼鏡Bを預かることとした。なお、本件眼鏡Bを原告X2に販売した眼鏡店の計測によれば、その可視光線透過率は約90%であった。(以上につき、前提事実(3)イ、甲15、乙21~23、36、原告X1本人10~12頁) ウ大阪刑務所統括矯正処遇官(第六担当)は、令和3年5月11日、原告X1に対し本件眼鏡Bの使用を許さなければ日常生活に著しい支障が生じるか否かを確認するため、居室棟区処遇第四監督矯正処遇官副看守長に対し、原告X 括矯正処遇官(第六担当)は、令和3年5月11日、原告X1に対し本件眼鏡Bの使用を許さなければ日常生活に著しい支障が生じるか否かを確認するため、居室棟区処遇第四監督矯正処遇官副看守長に対し、原告X1の動静確認を指示した。同副看守長は、同日、同統括矯正処遇官(第六担当)に対し、「作業時、見えにくいことで作業の変更を申し 出ることなく、作業ができている。連行時においても見えにくい素振りもなく、他の者と同様に行動ができている。購入または差し入れてもらうよう指導した。」と追記された眼鏡等使用許否判定表を提出するとともに、第7居室棟4階担当法務事務官看守から聴取した次の内容を報告した。(乙25) (ア) 第7居室棟4階担当法務事務官看守は、令和3年5月10日朝、原告X1から、検査中の本件眼鏡Bが不許可とされ所持できない場合はどうしたらよいのかとの質問を受けた際、原告X1に対し、大阪刑務所の基準に沿った眼鏡を新たに購入し又は差し入れてもらうよう指導するとともに、原告X1が刑執行開始時調査終了後に他の処遇施設に移送される ことが考えられるため、眼鏡を購入する場合は十分な日数を要する必要があることから、眼鏡を購入する場合は、移送のことも考慮した方がよい旨回答したところ、原告X1は、「落ち着いてから考えます。」と答えて、それ以上不満等を述べなかったので対応を終えたこと。 (イ) 原告X1が当時従事していた室内刑務作業(折鶴の解体)について、 原告X1から、手元が見えないなど、同作業の実施ができないことを理 由とした作業変更の申出はなく、作業ペースも他の被収容者と比べて問題がないこと、また、入浴により居室を出て、他の被収容者とともに廊下を歩き階段を昇降する際に、列から遅れることなく、足元が見えなく 由とした作業変更の申出はなく、作業ペースも他の被収容者と比べて問題がないこと、また、入浴により居室を出て、他の被収容者とともに廊下を歩き階段を昇降する際に、列から遅れることなく、足元が見えなくて歩きにくい様子は認められず、他の被収容者と同様の行動ができていること。 エ大阪刑務所長は、令和3年5月11日、上記ウを踏まえ、原告X1に対し、本件眼鏡Bの使用を許可せずに領置することと決定し、同月12日、主任矯正処遇官からその旨を原告X1に告知し、本件不許可措置Bをした(前提事実(3)ウ、乙23、25)。 オ原告X2は、令和3年5月14日、大阪刑務所長に対し、同日付け申入 書を送付し、本件眼鏡Bの可視光線透過率は約90%であり、JIST7333(屈折用補正レンズの透過率の仕様及び試験方法)において「カテゴリ0(透明又はとても薄い色合い)」に分類されるレンズであるとした上で、本件眼鏡Bを着色レンズの眼鏡とみなした大阪刑務所長の判断は誤っており、原告X1には、刑務作業をこなすことができない、集団行進の列 から外される、房から出ると自分の部屋の場所が分からなくなる、運動に出ることができない、入浴後、自分のスリッパがどこにあるのか分からなくなる、眼の周りの筋肉が酷く痛むといった生活上の支障があるなどとして、本件眼鏡Bを原告X1に引き渡すよう申し入れた(甲16)。 カ原告X1は、令和3年6月1日、当時収容されていた第5居室棟3階か ら1階の戸外運動場に移動する際、警備隊運動入浴担当法務事務官看守に対し、眼が悪いので、列の最後尾にしてほしい旨申し出たことから、当日の移動は列の最後尾とされたが、同日以降はそのような申出をすることはなく、遅れて歩行する様子も列を乱す様子もなかった。また、原告X1は、常時 悪いので、列の最後尾にしてほしい旨申し出たことから、当日の移動は列の最後尾とされたが、同日以降はそのような申出をすることはなく、遅れて歩行する様子も列を乱す様子もなかった。また、原告X1は、常時ではないが、階段昇降時に手すりを使用することがあった。 原告X1の刑務作業については、原告X1の視力が悪いことを把握して いた第7居室棟4階担当法務事務官看守の判断により、折鶴の作成ではなく、折鶴の解体とされた。また、統括矯正処遇官(第六担当)は、原告X1が大阪刑務所に収容されている間、原告X1が入浴場で転倒した旨の報告を受けたことはなく、原告X1から入浴場で転倒した旨の申出を受けたことはない。(以上につき、乙31) キ原告X1は、大阪刑務所に収容されていた期間のうち、令和3年5月10日から同月17日までは第7居室棟4階405号室(共同室)において、同日から同年6月24日までは第5居室棟3階337室(単独室)において、いずれも本件眼鏡Bを使用することなく生活していた。 原告X1は、大阪刑務所に収容されていた約1か月半の間、信書7通を 作成して発信し(令和3年5月11日、17日、24日、同年6月3日、9日、15日、21日)、同月2日及び16日に、それぞれ小説等の官本3冊(合計6冊)の貸与を受け、爪切りも自身で行っていた。(以上につき、乙25~29、原告X1本人15~16、21~23頁)ク原告X1は、令和3年6月24日、大阪刑務所から神戸刑務所に移送さ れた。原告X1は、神戸刑務所においては、本件眼鏡Bの使用を許可された。(前提事実(3)エ、甲25、原告X1本人18頁) 2 争点1及び争点2の前提事項(判断枠組み等)(1) 視力の矯正を行う権利について 所においては、本件眼鏡Bの使用を許可された。(前提事実(3)エ、甲25、原告X1本人18頁) 2 争点1及び争点2の前提事項(判断枠組み等)(1) 視力の矯正を行う権利について刑事施設の被収容者も、基本的人権の享有主体であり、個人として尊重さ れるのであるから、拘禁関係に伴う制約の範囲外においては、公共の福祉に反しない限り、生命、自由及び幸福追求に対する権利を保障されるものというべきである(憲法13条)。そして、近視、遠視及び乱視については、通常、視力補正用眼鏡を着用したり、コンタクトレンズを装用したりすれば、日常生活を特段の支障なく営むことができる一方、そのような視力の矯正が許さ れない場合には、その矯正前の視力の程度によっては、新聞紙や図書等の閲 読(憲法21条)にも相当の支障を来す上、歩行、運動、入浴、食事、トイレ、階段の昇降などの日常生活にも多大な支障を来すことがあり得る。そうすると、近視等の程度には個人差があるものの、一般的に、自己の視力補正用眼鏡を使用すること等により適切に視力を矯正して日常生活を送ること(視力補正用眼鏡の使用等を妨げられないこと)は、一種の人格権として、 生命、自由及び幸福追求に対する権利を保障した憲法13条の趣旨に照らし、十分に尊重されるべきものと解されるのであり、特に裸眼視力では日常生活に著しい制限を受けることが想定される者(例えば、いわゆる強度近視とされる者など)においては、視力の矯正は日常生活を送る上で必要不可欠というべきものであるから、同条に基づく基本的人権と同等に尊重されるべきも のと解される。 (2) 視力の矯正を行う権利に対する制約の可否等上記のとおり、被収容者のうち、特に裸眼視力では日常生活に著しい制限を受けることが想 と同等に尊重されるべきも のと解される。 (2) 視力の矯正を行う権利に対する制約の可否等上記のとおり、被収容者のうち、特に裸眼視力では日常生活に著しい制限を受けることが想定される者については、自己の視力補正用眼鏡を使用すること等により適切に視力を矯正して日常生活を送ることは、一種の人格権と して、憲法13条に基づく基本的人権と同等に尊重されるべきものと解される。そうすると、このような者につき、刑事施設内の規律及び秩序の維持のために視力補正用眼鏡の使用等を制限する場合においても、それは、上記の目的を達するために真に必要と認められる限度にとどめられるべきものである。 したがって、被収容者のうち裸眼視力では日常生活に著しい制限を受けることが想定される者につき、当該被収容者が所持する視力補正用眼鏡の使用を許さないとともに、官給による適切な視力補正用眼鏡を貸与ないし支給しないこと(すなわち、当該被収容者において使用が許される眼鏡を別途調達しない限り、一日中裸眼で生活させること)が許されるためには、当該被収 容者が所持する視力補正用眼鏡の使用等を許すことにより上記の規律及び秩 序の維持が害される一般的、抽象的なおそれがあるというだけでは足りず、被収容者の性向、行状、刑事施設内の管理、保安の状況、当該眼鏡のレンズの着色の有無とその程度、当該眼鏡の外観その他の具体的事情の下において、その使用を許すことにより刑事施設内の規律及び秩序の維持、被収容者の身柄の確保(さらに、受刑者においてはその改善及び更生)の点において放置 することのできない程度の障害が生ずる相当の蓋然性があると認められることが必要であり、かつ、その場合においても、その制限の程度は、障害発生の防止のために必要かつ合理的な範囲に の点において放置 することのできない程度の障害が生ずる相当の蓋然性があると認められることが必要であり、かつ、その場合においても、その制限の程度は、障害発生の防止のために必要かつ合理的な範囲にとどまるべきものと解するのが相当である(未決拘禁者につき最高裁昭和58年6月22日大法廷判決・民集37巻5号793頁〔以下「昭和58年最判」という。〕等、受刑者につき最高 裁平成18年3月23日第一小法廷判決・集民第219号947頁参照)。 (3) 弁護人との接見交通権との関係未決拘禁者には、憲法34条前段により弁護人との接見交通権(刑事訴訟法39条1項)が保障されていると解されるところ、この弁護人との接見交通権は、身体を拘束された未決拘禁者が弁護人の援助を受けることができる ための刑事手続上最も重要な基本的権利に属するものであるとともに、弁護人からいえばその固有権の最も重要なものの一つである(最高裁昭和53年7月10日第一小法廷判決・民集32巻5号820頁参照)。そして、未決拘禁者が弁護人から有効かつ適切な援助を受けるためには、証拠資料等の情報が記載された書類等を閲覧しながら打合せをすることが必要不可欠であるか ら、上記の接見交通権には、口頭での打合せだけでなく、弁護人が上記の書類等を閲覧させながら未決拘禁者と打合せをすることも含まれると解すべきである。しかるに、弁護人との接見を行う部屋において、視力補正用眼鏡等により視力を矯正しなければ証拠書類等を閲覧することが困難な者においては、当該眼鏡の使用等が許されなければ、上記書類等を閲覧しながら弁護人 と打ち合わせることができなくなるおそれがある。そうすると、このような 者について、憲法34条前段に基づく弁護人との接見交通権を実質的に保障するために 記書類等を閲覧しながら弁護人 と打ち合わせることができなくなるおそれがある。そうすると、このような 者について、憲法34条前段に基づく弁護人との接見交通権を実質的に保障するためには、一般的には視力補正用眼鏡の使用制限が許される場合であっても、弁護人との接見時においてはその使用制限を解除する取扱いが検討されるべきであり、それでもなお使用を制限するには、刑事施設内の規律及び秩序の維持、被収容者の身柄の確保等の点において更に具体的かつ高度の必 要性(具体的な支障が生ずる高度の蓋然性)があることを要するものと解するのが相当である。 (4) 刑事収容施設法42条1項の「刑事施設の規律及び秩序の維持その他管理運営上支障を生ずるおそれがある場合」について刑事収容施設法42条1項は、被収容者には、眼鏡その他の補正物品(1 号)等については、「刑事施設の規律及び秩序の維持その他管理運営上支障を生ずるおそれがある場合」を除き、自弁のものを使用させることとする旨規定し、同条2項は、同条1項各号に掲げる物品について、被収容者が自弁のものを使用することができない場合であっても、必要と認めるときは、その者にこれを貸与し、又は支給するものとする旨規定する。 同条の趣旨は、被収容者が使用する物品には、その使用を保障する必要はあるが、国庫の負担での貸与・支給を保障するのは、必要ではなく、あるいは適当でないものがあるため、自弁能力がある以上、官給は行わず自弁のものを使用させ、自弁能力がない場合に限り、官給を保障するという趣旨に基づくものと解される(林眞琴ほか「逐条解説刑事収容施設法第3版」152 頁)。そして、同条1項1号の「眼鏡その他の補正器具」は、通常、刑事施設に収容される前から使用しているものがあ う趣旨に基づくものと解される(林眞琴ほか「逐条解説刑事収容施設法第3版」152 頁)。そして、同条1項1号の「眼鏡その他の補正器具」は、通常、刑事施設に収容される前から使用しているものがあり、釈放後にも使用する必要があるものであること、個々の被収容者用に調製されたものでなければならず、官給するのは大きな負担となることなどから、官給を保障するのは、必要ではなく、むしろ適当ではないと考えられるからであると解される(同153 頁)。 刑事収容施設法42条及び同条1項1号の上記の趣旨(視力補正用眼鏡については被収容者に自弁のものを使用させるのが原則であること)に加え、上記(1)ないし(3)で言及した視力の矯正を行う権利(憲法13条)や弁護人との接見交通権(憲法34条前段)の重要性等を踏まえると、被収容者のうち裸眼視力では日常生活に著しい制限を受けることが想定される者等につき、 刑事収容施設法42条1項の「刑事施設の規律及び秩序の維持その他管理運営上支障を生ずるおそれがある場合」に該当するとして、当該被収容者が所持する視力補正用眼鏡の使用を許さないとともに、官給の適切な視力補正用眼鏡を貸与ないし支給しないことが許されるのは、上記(2)、(3)の要件及びその範囲内に限られるものと解するのが相当である。 ただし、刑事収容施設法42条1項の「刑事施設の規律及び秩序の維持その他管理運営上支障を生ずるおそれがある場合」の文言の抽象性や事柄の性質等に鑑みると、当該要件はいわゆる要件裁量を定めたものというべきであって、その該当性の判断については、刑事施設内の実情に通暁し、直接その衝に当たる刑事施設の長による合理的な裁量判断に委ねられているというこ とができる。 そうすると、具体的事情の下におい あって、その該当性の判断については、刑事施設内の実情に通暁し、直接その衝に当たる刑事施設の長による合理的な裁量判断に委ねられているというこ とができる。 そうすると、具体的事情の下において、視力補正用眼鏡の使用を許すことにより刑事施設内の規律及び秩序の維持、被収容者の身柄の確保等の点において放置することのできない程度の障害が生ずる相当の蓋然性があるとした刑事施設の長の判断に合理的な根拠があり、その防止のために当該眼鏡の使 用を制限する措置が必要であるとした判断に合理性が認められる限り、刑事収容施設法42条1項の「刑事施設の規律及び秩序の維持その他管理運営上支障を生ずるおそれがある場合」に該当するとしてされた視力補正用眼鏡の使用制限は、裁量権の範囲を逸脱し又はこれを濫用するものではないと解するのが相当である(昭和58年最判参照)。 (5) 国家賠償法上の違法性の判断枠組み 国家賠償法1条1項は、国又は公共団体の公権力の行使に当たる公務員が個別の国民に対して負担する職務上の法的義務に違背して当該国民に損害を加えたときに、国又は公共団体がこれを賠償する責任を負うことを規定するものであるから、公務員による公権力の行使に同項にいう違法があるというためには、当該公務員が職務上通常尽くすべき注意義務を尽くすことなく漫 然と当該行為をしたと認め得るような事情があることが必要である(最高裁平成5年3月11日第一小法廷判決・民集47巻4号2863頁参照)。 したがって、本件不許可措置A又はBが刑事収容施設法42条1項に反し違法である場合であっても、大阪拘置所長又は大阪刑務所長が職務上通常尽くすべき注意義務を尽くすことなく漫然と当該行為をしたと認め得るような 事情がないときは、本件不許可 施設法42条1項に反し違法である場合であっても、大阪拘置所長又は大阪刑務所長が職務上通常尽くすべき注意義務を尽くすことなく漫然と当該行為をしたと認め得るような 事情がないときは、本件不許可措置A又はBは国家賠償法上違法とはいえないというべきである。 3 争点1(本件不許可措置Aの国家賠償法上の違法性)について(1) 本件基準Aが刑事収容施設法42条1項に違反し、本件不許可措置Aは同項に違反する旨の主張(主位的主張)について ア本件拘置所指示記2は、着色眼鏡の許可基準につき、「医療上、着色眼鏡を使用する必要があるなど特別な理由があると認められる場合を除き、レンズの可視光線透過率が75パーセントを超える(着色度25パーセント以内)眼鏡について使用を許可すること。」としている(本件基準A。ただし、本件基準Aを満たすものであっても、偏光レンズやミラーレンズなど 特殊な加工がされた眼鏡については、原則使用を認めないものとされている。本件拘置所指示記7(2))。また、本件拘置所指示記5は、許可基準に適合しない着色眼鏡の使用を願い出た場合の手続につき、「当該被収容者の願い出に対して、許可すべき特別な理由があると認める場合のみ使用を許可することとするが、その際、使用場所等を制限することは差し支えない ものとする。」としている。 イ本件基準Aにより着色眼鏡(被収容者が所持する視力補正用眼鏡でレンズが着色されているもの)の使用を制限する理由は、本件拘置所指示記1(着色眼鏡の着装を制限する理由)によれば、刑務官は、受け持ち被収容者の動静視察を行い、心身の状況の把握に努めなければならない義務があり、着色眼鏡を無制限に許可した場合、当該被収容者の目の動きが分から ないことなどから、動静視察に支障を来 官は、受け持ち被収容者の動静視察を行い、心身の状況の把握に努めなければならない義務があり、着色眼鏡を無制限に許可した場合、当該被収容者の目の動きが分から ないことなどから、動静視察に支障を来すおそれがあり、これを制限することにあるものとされている。しかるところ、着色眼鏡のレンズの着色の度合い、大阪拘置所内の照明の明るさや当日の天気、時間帯、被収容者と刑務官との距離や角度等の諸条件によっては、刑務官において当該被収容者の視線や目の動きを確認することが困難になる場合があり、その動静視 察に支障を来すおそれがあることは十分に想定されるところであるから、未決拘禁者の逃走等の防止に留意すべき旨を定める刑事収容施設法31条等に照らし、一定の基準を設けて着色眼鏡の使用を制限することには合理的な理由があるというべきである。 また、レンズの可視光線透過率が75%を超えるかどうかによって取扱 いを異にしている点については、①運用の公平性や客観性を担保するためには、一定の数値を用いて取扱いの基準を定めることは必要でやむを得ない面があること、②日本産業規格(JIS)において、可視光線透過率(視感透過率)75%未満の眼鏡レンズは、「薄暮又は夜間における路上及び運転に使用してはならない。」とされていること(乙12・6頁)に照らし、 合理性が認められる。 さらに、本件基準Aによれば、仮に着色眼鏡の可視光線透過率が75%を超えない場合であっても、「医療上、着色眼鏡を使用する必要があるなど特別な理由があると認められる場合」には許可するものとされているところ、この例外要件を柔軟に解釈運用すれば、刑事収容施設法42条1項の 「刑事施設の規律及び秩序の維持その他管理運営上支障を生ずるおそれ がある場合」に係る上記2(1)ないし( るところ、この例外要件を柔軟に解釈運用すれば、刑事収容施設法42条1項の 「刑事施設の規律及び秩序の維持その他管理運営上支障を生ずるおそれ がある場合」に係る上記2(1)ないし(4)の説示に沿った運用(すなわち、少なくとも裸眼視力では日常生活に著しい制限を受けることが想定される者については、その使用を許すことにより刑事施設内の規律及び秩序の維持、被収容者の身柄の確保等の点において放置することのできない程度の障害が生ずる相当の蓋然性があると認められない限り、上記の特別の理 由があると認められるものとして視力補正用の着色眼鏡の使用を許可するなどの運用)は十分に可能である。加えて、本件拘置所指示では被収容者の願い出による許可(本件拘置所指示記5)が認められていることも併せ考慮すると、本件基準Aの定めは、その文言上直ちに、刑事収容施設法42条1項の「刑事施設の規律及び秩序の維持その他管理運営上支障を生 ずるおそれがある場合」に係る大阪拘置所長の裁量権の範囲を逸脱し又はこれを濫用するものとはいえず、同項に反するものということはできない。 なお、本件拘置所指示には、弁護人との接見の際に視力補正用眼鏡の使用を原則として許可するなどの定めがなく、接見交通権に対する配慮が十分ではないようにもみえるが、この点についても、上記例外要件(医療上、 着色眼鏡を使用する必要があるなど特別な理由があると認められる場合)を柔軟に解釈すること等により、上記2(3)の説示に沿った運用は十分に可能であると解されるから、本件拘置所指示(本件基準A)の定めが直ちに刑事収容施設法42条1項に反するとか、憲法34条前段及び刑事訴訟法39条1項に反するということはできない。 ウ以上によれば、本件基準Aは、その文言上直ちに刑事収容施設 A)の定めが直ちに刑事収容施設法42条1項に反するとか、憲法34条前段及び刑事訴訟法39条1項に反するということはできない。 ウ以上によれば、本件基準Aは、その文言上直ちに刑事収容施設法42条1項に反するものとはいえないから、本件基準Aが同項に反することを前提とする原告らの主位的主張は、その前提を欠くものであって採用することができない。 (2) 仮に本件基準Aが刑事収容施設法42条1項に違反しないとしても、本件 不許可措置Aは本件基準Aの例外要件に該当するから違法である旨の主張 (予備的主張)についてア原告X1の本件眼鏡Aを使用する必要性等認定事実によれば、大阪拘置所入所時の健康診断の結果、原告X1の裸眼視力は左右ともに0.03と測定されたこと(認定事実(2)ア)、原告X1は、当時、本件眼鏡A以外の眼鏡を所持していなかったこと(同上)、原 告X2が弁護士面会室の仕切り板(アクリル板)越しに示した証拠書類添付の写真につき、原告X1は、「眼鏡がないのでよくわからない。」、「実をいうと、先生の顔もぼやけて見えている。」などと述べたこと(認定事実(2)イ)が認められる。また、本件検査協会の試験結果(甲3の3)によれば、本件眼鏡Aの主経線屈折力(度数)は、左レンズが-13.12D、右レ ンズが-16.23Dであり、乱視屈折力は、左レンズが-3.68D、右レンズが-2.86Dであったことが認められる。 また、一般に、眼鏡のレンズの度数が-6.0D以上の者を強度近視というところ(なお、-10.0D以上を最強度近視ということもある。)、通常、強度近視の者の裸眼視力は0.1を優に下回ること、国民年金法施 行令別表には、「…日常生活が著しい制限を受けるか、又は日常生活に著しい制限を加えるこ 上を最強度近視ということもある。)、通常、強度近視の者の裸眼視力は0.1を優に下回ること、国民年金法施 行令別表には、「…日常生活が著しい制限を受けるか、又は日常生活に著しい制限を加えることを必要とする程度のもの」(2級15号)と同等のものとして、「両眼の視力がそれぞれ0.07以下のもの」(2級1号イ。ただし、矯正後の視力による。)と定められていること(顕著な事実、甲4)が認められる。 以上によれば、原告X1が大阪拘置所に入所した令和元年9月25日から本件眼鏡Bの引渡しを受ける前日の同年11月10日まで約1か月半の間、4回の信書の発送をしたこと(認定事実(2)コ)などの事情を考慮しても、原告X1の近視の程度は強度近視(最強度近視)に分類されるものであり、両眼の視力はそれぞれ0.03にとどまるのであるから、常識的 に考えて、視力の矯正は日常生活を送る上で必要不可欠というべきもので ある。したがって、原告X1が本件眼鏡Aを使用する必要性はかなり高度なものであるといえ、原告X1は、上記2(2)及び(4)にいう裸眼視力では日常生活に著しい制限を受けることが想定される者に該当するというべきであり、また、上記2(3)にいう(弁護人との接見を行う部屋において)視力補正用眼鏡等により視力を矯正しなければ証拠書類等を閲覧するこ とが困難な者にも該当するというべきである(なお、被告は、原告X1が弁護人面会室のアクリル板に近づくことによって書類等を閲読することが可能であった旨主張するが、原告X1の近視の程度からすると、上記のような方法で閲読可能であったとは必ずしもいえない上、仮にある程度可能であったとしても、示された書類や写真等を全体として把握することは 難しく、その見え方は本件眼鏡Aを使用した場合とは大きく異 ような方法で閲読可能であったとは必ずしもいえない上、仮にある程度可能であったとしても、示された書類や写真等を全体として把握することは 難しく、その見え方は本件眼鏡Aを使用した場合とは大きく異なるはずであるから、証拠書類等を確認しながら弁護人との接見を行うことにはなお重大な支障があるというべきである。)。 イ本件基準Aの例外要件「医療上、着色眼鏡を使用する必要があるなど特別な理由があると認められる場合」に該当するか否か(すなわち、本件眼 鏡Aの使用を許すことにより、刑事施設内の規律及び秩序の維持、被収容者の身柄の確保等の点において放置することのできない程度の障害が生ずる相当の蓋然性があると認められるか否か)上記アのとおり、原告X1は、裸眼視力では日常生活に著しい制限を受けることが想定される者に該当するというべきであるから、上記2(2)及 び(4)によれば、原告X1に本件眼鏡Aを使用させないこと(一日中裸眼で生活させること)が許されるためには、具体的事情の下において、その使用を許すことにより刑事施設内の規律及び秩序の維持、被収容者の身柄の確保等の点において放置することのできない程度の障害が生ずる相当の蓋然性があると認められることが必要であり、かつ、その場合においても、 その制限の程度は、障害発生の防止のために必要かつ合理的な範囲にとど まるべきものと解するのが相当である。 しかるところ、本件検査協会の試験結果(甲3の3)によれば、本件眼鏡の可視光線透過率(視感透過率)は、左レンズが67.3%、右レンズが70.4%であって、本件基準Aの75%からそれほど大きく離れていないし(なお、大阪拘置所の測定機器によれば、左レンズが58.3%、右 レンズが60.8%であるが、その が67.3%、右レンズが70.4%であって、本件基準Aの75%からそれほど大きく離れていないし(なお、大阪拘置所の測定機器によれば、左レンズが58.3%、右 レンズが60.8%であるが、その正確性を担保する証拠は特に見当たらず、専門的な機関である本件検査協会の試験結果よりも正確な測定結果であるとは認め難い。)、その外観は、一見してレンズに薄紫色の着色がされていることが分かるものではあるが、かなり暗い場所やかなり距離がある場合等を除いては、着用時の視線や目の動きを確認することが殊更困難な ものではないことが認められる(甲3、21、乙2、36。なお、甲19も参照)。また、原告X1の性向、行状等から、本件眼鏡Aの使用を制限する特段の必要性があることは証拠上うかがわれないし、本件眼鏡Aの使用を制限する必要性を裏付けるような大阪拘置所内の具体的な管理、保安の状況等の存在も証拠上明らかでない。 そうすると、原告X1に本件眼鏡Aの使用を許すことにより、大阪拘置所内の規律及び秩序の維持、被収容者の身柄の確保(逃走や自殺等の防止)等の点において放置することのできない程度の障害が生ずる相当の蓋然性があると判断することについては、社会通念に照らし、相当な疑問があるといわざるを得ない。 もっとも、上記のとおり、本件眼鏡Aの外観は、一見してレンズに薄紫色の着色がされていることが分かるものであるし、かなり暗い場所やかなり距離がある場合等においては、その着色のため、着用時の視線や目の動きを確認することが困難な場合もあり得ると考えられ、被告において大阪拘置所内の具体的な管理、保安の状況等を詳細に明らかにすることは事柄 の性質上困難な面があると思われることも考慮すると、上記のような障害 が生ずる相当 ると考えられ、被告において大阪拘置所内の具体的な管理、保安の状況等を詳細に明らかにすることは事柄 の性質上困難な面があると思われることも考慮すると、上記のような障害 が生ずる相当の蓋然性があると判断することに合理的な根拠が全くないとはいえない。そうすると、本件不許可措置Aにつき、刑事収容施設法42条1項の「刑事施設の規律及び秩序の維持その他管理運営上支障を生ずるおそれがある場合」に該当する(すなわち、本件基準Aの例外要件である「医療上、着色眼鏡を使用する必要があるなど特別な理由があると認め られる場合」に該当しない)とした大阪拘置所長の判断に、裁量権の範囲を逸脱し又はこれを濫用した違法があるとまでは断じ難い。また、少なくとも、職務上通常尽くすべき注意義務を尽くすことなく漫然と上記の判断をしたものとはいい難く、国家賠償法上の違法性及び過失があるとは認められない。 ウ本件眼鏡Aの使用を制限する程度は、障害発生の防止のために必要かつ合理的な範囲にとどまるか否か上記イで説示したとおり、大阪拘置所長が、原告X1に本件眼鏡Aを使用させなかったこと(本件不許可措置A)については、裁量権の範囲を逸脱し又はこれを濫用した違法があるとまでは断じ難く、少なくとも、国家 賠償法上の違法性及び過失があるとは認められないが、その制限の程度は、前述のとおり、障害発生の防止のために必要かつ合理的な範囲にとどまるべきものと解される。 原告X1は、上記2(3)にいう(弁護人との接見を行う部屋において)視力補正用眼鏡等により視力を矯正しなければ証拠書類等を閲覧すること が困難な者に該当するところ、それでもなお接見の際の本件眼鏡Aの使用を制限するには、刑事施設内の規律及び秩序の維持、被収容者の身柄 正用眼鏡等により視力を矯正しなければ証拠書類等を閲覧すること が困難な者に該当するところ、それでもなお接見の際の本件眼鏡Aの使用を制限するには、刑事施設内の規律及び秩序の維持、被収容者の身柄の確保等の点において、更に具体的かつ高度の必要性(具体的な支障が生ずる高度の蓋然性)があることを要するものと解するのが相当である。 そこで検討するに、確かに、未決拘禁者が弁護人との接見のため弁護士 面会室に出入りする際には、未決拘禁者の視線や目の動きを確認し、その 動静視察を行い、その逃亡や自傷等を防止する必要があるといえるし、接見中においても、未決拘禁者が逃亡や自傷等に及ぼうとしていることが外部からうかがわれる場合など、その動静視察を行う必要が生じる場合が全くないとはいえないように思われる(ただし、弁護人との接見中に弁護士面会室の内部を視察することは、接見交通の秘密性を侵害することにつな がりかねず、違法の疑いが濃いというべきであるから、緊急時を除き、接見中の動静視察の必要性は認め難い。)。 しかし、上記イで説示したとおり、本件眼鏡Aのレンズの着色の程度等に照らすと、明るさや距離等の点において目の動き等の視認が難しい状況下でない限り、原告X1に本件眼鏡Aの使用を許しても、その視線や目の 動き等を視認することが困難とはいえず、大阪拘置所内の規律及び秩序の維持、被収容者の身柄の確保等の点において放置することのできない程度の障害が生ずる相当の蓋然性があるとはいい難いのであって、更に具体的かつ高度の必要性(具体的な支障が生ずる高度の蓋然性)を要すると解すべき弁護人との接見において、そのような高度の必要性ないし蓋然性を認 めることは困難である。 そうすると、原告X1に本件眼鏡Aの使用を許さないこととした 障が生ずる高度の蓋然性)を要すると解すべき弁護人との接見において、そのような高度の必要性ないし蓋然性を認 めることは困難である。 そうすると、原告X1に本件眼鏡Aの使用を許さないこととした本件不許可措置Aは、弁護人(原告X2)との接見の際に本件眼鏡Aの使用を許さなかった点において、障害発生の防止のために必要かつ合理的な範囲を超えるものといわざるを得ず、裁量権の範囲を逸脱し又はこれを濫用した ものというべきである。したがって、本件不許可措置Aには、弁護人との接見の際に、本件基準Aの例外要件に該当するものとして本件眼鏡Aの使用を許さなかった点につき、刑事収容施設法42条1項に反する違法があるというべきである。 そして、前述のとおり、大阪拘置所入所時の健康診断において、原告X 1の裸眼視力は左右ともに0.03と測定されていたのであるし、本件眼 鏡Aのレンズは一見して度数が高いものと分かること(甲3、乙36〔進行協議調書添付の写真等〕)も考慮すると、大阪拘置所長において、本件不許可措置Aを行うに当たり、弁護人との接見の際に本件眼鏡Aの使用を許さなければ、原告X1が証拠書類等を閲覧しながら弁護人と打ち合わせることができなくなることは容易に認識可能であったというべきであり、ひ いては、原告らの接見交通権を実質的に侵害することを認識可能であったといえる。そうすると、大阪拘置所長は、本件不許可措置Aの時点で、職務上通常尽くすべき注意義務に違反したものといえ、原告ら双方との関係において、国家賠償法上の違法性及び過失が認められる(なお、本件においては、原告X2から、大阪拘置所に対し、原告X1に本件眼鏡Aを使用 させるよう令和元年10月8日に口頭の申入れがあり、その旨の同月9日付け申入書による本件申入れもされて れる(なお、本件においては、原告X2から、大阪拘置所に対し、原告X1に本件眼鏡Aを使用 させるよう令和元年10月8日に口頭の申入れがあり、その旨の同月9日付け申入書による本件申入れもされているのであるから、それ以後もなお接見時に本件眼鏡Aの使用を許さないことの違法性は、より顕著なものというべきである。)。 これに対し、被告は、本件不許可措置Aは、原告X1とその弁護人であ る原告X2との接見について、一般的な未決拘禁者と弁護人との接見における制限と異なる特別の制限を加えたものではない、弁護人固有の権利利益を直接制限するものではない旨主張するが、上記に説示したところに反する被告のこれらの主張を採用することはできない。 エ小括 したがって、本件不許可措置Aは、弁護人(原告X2)との接見の際に本件眼鏡Aの使用を許さない点において、原告らの接見交通権(原告X1の防御権及び原告X2の弁護権)を侵害するものであり、国家賠償法上の違法性及び過失が認められる。 なお、原告X1は、裁判を受ける権利(憲法32条)も侵害された旨主 張するが、刑事事件の公判廷において視力補正用眼鏡を着用することが憲 法32条の裁判を受ける権利により保障されているかどうかはともかく、原告X1は最初の公判廷から本件眼鏡Bを着用することができていたのであるから(認定事実(2)ケ)、原告X1の当該主張は採用することができない。 4 争点2(本件不許可措置Bの国家賠償法上の違法性)について (1) 本件基準Bが刑事収容施設法42条1項に違反し、本件不許可措置Bは同項に違反する旨の主張(主位的主張)についてア本件刑務所指示記1(2)アは、眼鏡等の許可基準のうち、使用を許す眼鏡の規格(レンズ) が刑事収容施設法42条1項に違反し、本件不許可措置Bは同項に違反する旨の主張(主位的主張)についてア本件刑務所指示記1(2)アは、眼鏡等の許可基準のうち、使用を許す眼鏡の規格(レンズ)につき、「原則として無色透明とする。ただし、以下の場合においては、個別検討を行うものとする。」とし、個別検討を行う場合と して、「(ア) 医療上の理由により着色レンズの使用を認められた場合」と、「(イ) 着色レンズの眼鏡しか所持しておらず、かつ、当該レンズの着色濃度が25パーセント以下であって、その使用が許されなければ日常生活に著しい支障が生じると認められる場合」を掲げている(本件基準B)。また、本件刑務所指示記1(2)イは、「偏光レンズ又はミラーコートレンズではな いこと。」を、同ウは、「補正器具としての機能を有していること。」としている。 なお、本件不許可措置Bの時点で、原告X1の本件眼鏡Bにつき、個別検討を行う場合の要件(イ)のうち「着色レンズの眼鏡しか所持しておらず、かつ、当該レンズの着色濃度が25パーセント以下」に該当することにつ いては、当事者間に事実上争いがない。 イ本件基準Bにおいて、原則として着色レンズの使用を許可しないこととされている理由は、被告の主張によれば、①着色レンズの眼鏡が自己顕示や他者を威圧する手段として用いられるおそれがあり、これを制限しなければ、受刑者間のいさかいを招いたり、受刑者間に支配・被支配の関係が 生じたりするおそれがあるためであり、②仮に着色度(可視光線透過率) について数値化した基準を定めたとしても、不許可とした場合に施設に不満が向けられるだけでなく、なぜ他の受刑者の眼鏡は認められて自分の眼鏡は認められなかったのかといった形で受刑者間の不公平 について数値化した基準を定めたとしても、不許可とした場合に施設に不満が向けられるだけでなく、なぜ他の受刑者の眼鏡は認められて自分の眼鏡は認められなかったのかといった形で受刑者間の不公平感を訴える者が現れ、受刑者間のいさかい等につながるおそれもあるため、処遇のための適切な環境及び安全かつ平穏な共同生活を維持するという目的を達す るためには、原則として着色レンズの使用を許可しないこととする必要があるからであるとされている。しかるところ、大阪刑務所においては、受刑者の処遇の在り方として、未決拘禁者とは異なり、集団で矯正処遇や共同生活が行われることや、犯罪傾向の進んでいる受刑者が多数収容されているという施設の特質があること(弁論の全趣旨)を踏まえると、原則と して着色レンズの使用を許可しないこととすることには、合理的な理由がないとはいえない。 また、本件基準Bが、個別検討を行う場合の一つとして、「着色レンズの眼鏡しか所持しておらず、かつ、当該レンズの着色濃度が25パーセント以下であって、その使用が許されなければ日常生活に著しい支障が生じる と認められる場合」を掲げている理由は、被告の主張によれば、本件基準Aと同様の理由(着色眼鏡の使用を無制限に許可すると、被収容者の動静視察に支障を来すおそれがあるため。上記3(1)イ)であるとされている。 そして、少なくとも本件眼鏡B(着色濃度約10%)に適用される限度においては、個別検討を通じて、刑事収容施設法42条1項の「刑事施設の 規律及び秩序の維持その他管理運営上支障を生ずるおそれがある場合」に係る上記2(1)ないし(4)の説示に沿った運用は十分に可能である(ただし、日常生活に著しい支障が生じると認められる場合には、特段の事情がない限り、許可されなければ 支障を生ずるおそれがある場合」に係る上記2(1)ないし(4)の説示に沿った運用は十分に可能である(ただし、日常生活に著しい支障が生じると認められる場合には、特段の事情がない限り、許可されなければならないものと解される。)。したがって、本件基準Bの定めは、着色濃度25%を超えると一律に不許可となる点の合理性 はともかく、少なくとも本件眼鏡Bに適用される限度では、刑事収容施設 法42条1項の「刑事施設の規律及び秩序の維持その他管理運営上支障を生ずるおそれがある場合」に係る大阪刑務所長の裁量権の範囲を逸脱し又はこれを濫用するものとはいえず、同項に反するものということはできない。 ウ以上によれば、本件基準Bは、少なくとも本件眼鏡Bに適用される限度 では、その文言上直ちに刑事収容施設法42条1項に反するものとはいえないから、本件基準Bが同項に反することを前提とする原告らの主位的主張は、その前提を欠くものであって採用することができない。 (2) 仮に本件基準Bが刑事収容施設法42条1項に違反しないとしても、本件不許可措置Bは本件基準Bの例外要件に該当するから違法である旨の主張 (予備的主張)についてア原告X1の本件眼鏡Bを使用する必要性等上記3(2)アで指摘した点に加え、大阪刑務所入所時の健康診断の結果、原告X1の裸眼視力は左右ともに0.01、本件眼鏡Bによる矯正視力は右眼0.3、左眼0.2と測定されたこと(認定事実(3)イ)にも照らすと、 原告X1が本件眼鏡Bを使用する必要性はかなり高度なものであるといえ、原告X1は、上記2(2)及び(4)にいう裸眼視力では日常生活に著しい制限を受けることが想定される者に該当するというべきである。 イ本件基準Bの例外要件「その使用が許されなければ日常 いえ、原告X1は、上記2(2)及び(4)にいう裸眼視力では日常生活に著しい制限を受けることが想定される者に該当するというべきである。 イ本件基準Bの例外要件「その使用が許されなければ日常生活に著しい支障が生じると認められる場合」に該当するか否か(すなわち、本件眼鏡B の使用を許すことにより、刑事施設内の規律及び秩序の維持、被収容者の身柄の確保等の点において放置することのできない程度の障害が生ずる相当の蓋然性があると認められるか否か)上記アのとおり、原告X1は、裸眼視力では日常生活に著しい制限を受けることが想定される者に該当するというべきであるから、上記2(2)及 び(4)によれば、原告X1に本件眼鏡Bを使用させないこと(一日中裸眼で 生活させること)が許されるためには、具体的事情の下において、その使用を許すことにより刑事施設内の規律及び秩序の維持、被収容者の身柄の確保等の点において放置することのできない程度の障害が生ずる相当の蓋然性があると認められることが必要であり、かつ、その場合においても、その制限の程度は、障害発生の防止のために必要かつ合理的な範囲にとど まるべきものと解するのが相当である。 しかるところ、本件眼鏡Bのレンズは、薄くブラウン系の着色がされているものの、一見すると無色透明のようにみえること、本件眼鏡Bを原告X2に販売した眼鏡店の計測によれば、本件眼鏡Bの可視光線透過率は約90%(着色濃度約10%。なお、日本産業規格では「透明又はとてもう すい色合い」に分類される。乙12)であったことが認められる(認定事実(3)イ)。また、本件眼鏡Bは、弁護人である原告X2が本件眼鏡Aの代用として購入し差し入れたものであり、大阪拘置所においては使用が許されていたこと れる。乙12)であったことが認められる(認定事実(3)イ)。また、本件眼鏡Bは、弁護人である原告X2が本件眼鏡Aの代用として購入し差し入れたものであり、大阪拘置所においては使用が許されていたこと(同(2)キ)、令和3年6月24日に原告X1が移送された神戸刑務所においては、本件眼鏡Bの使用が許可されたこと(同(3)ク)など も考慮すると、本件眼鏡Bのレンズはわずかに着色されているとはいえ、原告X1が、本件眼鏡Bを、自己顕示や他者を威圧する手段として用いることは想定し難い(なお、原告X1の性向や行状等から、本件眼鏡Bの使用を許すべきでない特段の必要性があることは証拠上うかがわれない。)。 また、犯罪傾向の進んでいる受刑者が多数収容されているという大阪刑務 所の特質等を考慮しても、他の受刑者が、本件眼鏡Bと同程度の着色眼鏡を入手して自己顕示や他者を威圧する手段として用いるおそれや、本件眼鏡Bの使用が許可されることにより、受刑者間の不公平感を訴える者が現れ、受刑者間のいさかい等につながるおそれがあるとは考え難く、少なくとも、被告が指摘するこれらのおそれは、一般的、抽象的なおそれの範囲 を超えるものではない。 そうすると、原告X1に本件眼鏡Bの使用を許すことにより、大阪刑務所内の規律及び秩序の維持、被収容者の身柄の確保(逃走や自殺等の防止)等の点において放置することのできない程度の障害が生ずる相当の蓋然性があると判断することにつき、合理的な根拠を見いだすことはできないというべきであり、本件不許可措置Bにつき、刑事収容施設法42条1項 の「刑事施設の規律及び秩序の維持その他管理運営上支障を生ずるおそれがある場合」に該当する(すなわち、本件基準Bの例外要件である「その使用が許されなければ日常生活に著し 事収容施設法42条1項 の「刑事施設の規律及び秩序の維持その他管理運営上支障を生ずるおそれがある場合」に該当する(すなわち、本件基準Bの例外要件である「その使用が許されなければ日常生活に著しい支障が生じると認められる場合」に該当しない)とした大阪拘置所長の判断には、裁量権の範囲を逸脱し又はこれを濫用した違法があるというべきである。 そして、大阪刑務所入所時の健康診断において、原告X1の裸眼視力は左右ともに0.01と測定されていたこと、本件眼鏡Bのレンズは一見して度数が高いものと分かること(乙36〔進行協議調書添付の写真等〕)、本件眼鏡Bの着色濃度は約10%であり無色透明のものと大差ないことなどの事情に照らすと、本件不許可措置Bは、原告X1への配慮を欠く硬 直的な対応といわざるを得ず、社会通念上著しく不合理なものであるから、大阪刑務所長は、本件不許可措置Bの時点で、職務上通常尽くすべき注意義務に違反したものといえ、国家賠償法上の違法性及び過失が認められる。 ウ被告の主張について被告は、①大阪刑務所は犯罪傾向の進んでいる受刑者を収容する施設で あり、着色レンズの眼鏡の使用による弊害を防止するため、その使用を制限する必要性が高い、②原告X1は刑務作業に従事し、官本を借り、手紙や願箋を記載するなどしていたから、その日常生活において著しい支障は生じていない旨主張する。 しかし、上記①については、前述のとおり、被告が指摘するような施設 の特質を考慮しても、原告X1に本件眼鏡Bの使用を許すことにより、大 阪刑務所内の規律及び秩序の維持、被収容者の身柄の確保(逃走や自殺等の防止)等の点において放置することのできない程度の障害が生ずる相当の蓋然性があるとはいえない。 用を許すことにより、大 阪刑務所内の規律及び秩序の維持、被収容者の身柄の確保(逃走や自殺等の防止)等の点において放置することのできない程度の障害が生ずる相当の蓋然性があるとはいえない。そもそも、本件眼鏡Bは、一見してレンズが着色されていることが分かるものではなく、外観上は無色透明のレンズの眼鏡と大差ないのであって、この程度のレンズの着色をもって、原告X 1に一日中裸眼で生活することを強いるのは、明らかに過剰といわざるを得ない(なお、原告X1において、本件眼鏡Bの代わりに無色透明のレンズの眼鏡を別途調達することは禁じられていないが、少なくとも数万円以上の費用が必要となる上、作成のため相応の期間も必要であるから、代わりの眼鏡の調達が可能であることを制限の正当化根拠とすることも困難 である。)。 また、上記②については、原告X1は強度近視であり、裸眼視力が左右ともに0.01ないし0.03しかない以上、それだけで日常生活において著しい支障があることは優に認められるというべきであり、大阪刑務所収容中の個別のエピソードは上記認定を左右するものではない。また、確 かに、原告X1は、大阪刑務所に収容されていた約1か月半の間、信書7通を作成して発信したり、小説等の貸与を受けたり、爪切りを自身で行ったりしていたことが認められるが(認定事実(3)キ)、顔を近づければ手紙を書いたり本を読んだりすることができるからといって、また、指先の爪を切ることができるからといって、日常生活において著しい支障がないと いうことはできないし、かえって、原告X1は、目が悪いので列の最後尾にしてほしいと申し出たり、常時ではないが階段昇降時に手すりを利用したり、眼が悪くてもできる刑務作業(折鶴の解体)を割り当てられたりしていたのであ いし、かえって、原告X1は、目が悪いので列の最後尾にしてほしいと申し出たり、常時ではないが階段昇降時に手すりを利用したり、眼が悪くてもできる刑務作業(折鶴の解体)を割り当てられたりしていたのであって(同カ)、浴室で転倒した事実があるか否かはともかく、日常生活に著しい支障があったことは、これらの事実からも裏付けられる というべきである。被告の上記主張はいずれも採用することができない。 その他、以上の認定及び判断に反する被告の主張は、いずれも採用することができない。 エ小括したがって、本件不許可措置Bは、原告X1の人格権(自己の視力補正用眼鏡を使用すること等により適切に視力を矯正して日常生活を送る権 利)を侵害するものであり、本件物品訓令15条に基づく主張(再予備的主張)について検討するまでもなく、国家賠償法上の違法性及び過失が認められる。 5 争点3(原告X1の損害の有無及び額)について(1) 本件不許可措置A(接見交通権の侵害)に関する損害 上記3のとおり、大阪拘置所長による本件不許可措置Aは、弁護人(原告X2)との接見の際に本件眼鏡Aの使用を許さない点において、原告X1の接見交通権(防御権)を侵害するものであり、国家賠償法上の違法性及び過失が認められる。しかも、大阪拘置所長は、令和元年10月8日の接見の後、弁護人である原告X2から職員に対して口頭による申入れがあり、さらに同 月9日付けで本件申入れを受けたにもかかわらず、その後の接見においても本件眼鏡Aの使用を許さなかったものであり、その違法性は顕著である。ただし、原告X1は、接見の際にその場で証拠等を確認することはできなかったものの、弁護人である原告X2と口頭で打ち合わせることや、その他の方 の使用を許さなかったものであり、その違法性は顕著である。ただし、原告X1は、接見の際にその場で証拠等を確認することはできなかったものの、弁護人である原告X2と口頭で打ち合わせることや、その他の方法により証拠等を確認することまで制限されたわけではない。 これらの事情に加え、本件不許可措置Aがされてから本件眼鏡Bが差し入れられるまでに約1か月半を要し、その間に4回の接見の機会があったこと(令和元年10月8日、18日、24日、同年11月8日の4回(甲6))など諸般の事情を考慮すると、原告X1が本件不許可措置Aにより違法に接見交通権を侵害されたことに対する慰謝料は、10万円とするのが相当である。 また、これに関する相当因果関係のある弁護士費用は、1万円とするのが相 当である。 (2) 本件不許可措置B(人格権の侵害)に関する損害上記4のとおり、大阪刑務所長による本件不許可措置Bは、原告X1の人格権(自己の視力補正用眼鏡を使用すること等により適切に視力を矯正して日常生活を送る権利)を侵害するものであり、国家賠償法上の違法性及び過 失が認められる。そして、原告X1は、令和3年5月11日に本件不許可措置Bがされてから同年6月24日に神戸刑務所に移送されるまで約1か月半の間、本件眼鏡Bを使用することができず、一日中裸眼で過ごさざるを得なかったのであって、手紙の作成や図書の閲覧だけでなく、運動、入浴、階段の昇降等にも多大な支障があったことが認められる。これらの事情に加え、 原告X2が同年5月14日に本件眼鏡Bを原告X1に引き渡すよう申し入れていること(認定事実(3)オ)、大阪拘置所や神戸刑務所では本件眼鏡Bの使用が許されていることなど諸般の事情を考慮すると、原告X1が本件不許可措置Bにより違法に人格 を原告X1に引き渡すよう申し入れていること(認定事実(3)オ)、大阪拘置所や神戸刑務所では本件眼鏡Bの使用が許されていることなど諸般の事情を考慮すると、原告X1が本件不許可措置Bにより違法に人格権を侵害されたことに対する慰謝料は、15万円とするのが相当である。また、これに関する相当因果関係のある弁護士費用は、 1万5000円とするのが相当である。 なお、原告X1は、本件不許可措置B(大阪刑務所長が本件不許可措置Bをしたこと)を国家賠償法上の違法行為として主張しているところ、本件不許可措置Bがされたのは、その決定が原告X1に告知された令和3年5月12日であると認められるから(認定事実(3)エ、乙23、25)、本件不許可 措置Bに係る遅延損害金の起算点は、同日とするのが相当である。 (3) 小括したがって、原告X1が被った損害は、本件不許可措置Aにつき11万円(遅延損害金の起算点は令和元年9月25日、遅延損害金の利率は平成29年法律第44号による改正前の民法所定の年5分)、本件不許可措置Bにつ き16万5000円(遅延損害金の起算点は令和3年5月12日、遅延損害 金の利率は同改正後の民法所定の年3分)となる。 6 争点4(原告X2の損害の有無及び額)について(1) 慰謝料上記3のとおり、大阪拘置所長による本件不許可措置Aは、弁護人(原告X2)との接見の際に本件眼鏡Aの使用を許さない点において、原告X2の 接見交通権(弁護権)を侵害するものであり、国家賠償法上の違法性及び過失が認められる。 接見交通権は弁護人固有の権利であるところ、原告X2は、原告X1と接見した際、本件不許可措置Aにより原告X1が裸眼での資料確認を余儀なくされ、証拠等を示したもののこ び過失が認められる。 接見交通権は弁護人固有の権利であるところ、原告X2は、原告X1と接見した際、本件不許可措置Aにより原告X1が裸眼での資料確認を余儀なくされ、証拠等を示したもののこれを確認させることができなかった上、口頭 ないし書面(本件申入れ)により数度にわたり大阪拘置所側に申し入れたにもかかわらず、上記の扱いは改善されなかったこと、本件眼鏡Aの代わりに本件眼鏡Bを調達して差し入れるため、通常の国選弁護人としての職務の他に、各種手続等に多くの時間と労力を費やさざるを得なかったことが認められる(甲10~12)。 これらの事情に加え、本件不許可措置Aがされてから本件眼鏡Bが差し入れられるまでに約1か月半を要し、その間に4回の接見の機会があったこと、後記(2)のとおり、原告X2が弁護士会の刑事弁護援助を受けて本件眼鏡Bの調達費用7万円を出捐したこと、本件不許可措置Aの違法性の立証のため試験手数料等3万1493円(振込手数料含む。)を支出したことなど諸般の事 情を考慮すると、原告X2が本件不許可措置Aにより違法に接見交通権を侵害されたことに対する慰謝料は、10万円とするのが相当である。 (2) 本件眼鏡Bの調達費用等原告X2は、本件眼鏡Bの調達費用を出捐しているところ、本件眼鏡Bは、大阪拘置所での接見以外においても使用されるものであるし、最終的には、 原告X1の所有物(資産)となることが想定されることや、その購入金額の 相当性も明らかでないことなどに鑑みると、本件眼鏡Bの調達費用につき、本件不許可措置Aと相当因果関係のある損害の範囲を認定することは困難である。そこで、当該費用については、上記(1)の慰謝料の増額事由として考慮することとした。 また、原告X2は、本件不許可 つき、本件不許可措置Aと相当因果関係のある損害の範囲を認定することは困難である。そこで、当該費用については、上記(1)の慰謝料の増額事由として考慮することとした。 また、原告X2は、本件不許可措置Aの違法性の立証のため、本件検査協 会に対し、本件眼鏡Aの試験の実施を依頼し、試験手数料等3万1493円(振込手数料含む。)を支出したことが認められるが(甲12)、本件眼鏡Aの試験結果は左右とも可視光線透過率75%未満であり、その試験成績書(甲3の3)が本件不許可措置Aの違法性の立証のため必要不可欠なものであったとはいい難く、原告X1に一部求償し得る余地もあることから、この試験 手数料等についても、上記(1)の慰謝料の増額事由として考慮することとした。 (3) 小括したがって、本件不許可措置Aにより原告X2が被った損害は、10万円(遅延損害金の起算点は令和元年9月25日、遅延損害金の利率は平成29年法律第44号による改正前の民法所定の年5分)となる。 第4 結論よって、原告X1の請求については、被告に対し、27万5000円並びにうち11万円に対する令和元年9月25日から支払済みまで年5分の割合による金員及びうち16万5000円に対する令和3年5月12日から支払済みまで民法所定の年3分の割合による金員の各支払を求める限度で理由があり、ま た、原告X2の請求については、被告に対し、10万円及びこれに対する令和元年9月25日から支払済みまで年5分の割合による金員の支払を求める限度で理由がある。 そこで、原告らの請求は上記の限度でいずれも理由があるからこれを認容し、原告らのその余の請求はいずれも理由がないからこれを棄却し、仮執行宣言は 相当でないからこれを付さないこととし、主文のとおり判決 、原告らの請求は上記の限度でいずれも理由があるからこれを認容し、原告らのその余の請求はいずれも理由がないからこれを棄却し、仮執行宣言は 相当でないからこれを付さないこととし、主文のとおり判決する。 大阪地方裁判所第7民事部 裁判長裁判官徳地淳 裁判官新宮智之 裁判官関尭熙 (別紙)当事者の主張 1 本件不許可措置Aの国家賠償法上の違法性(争点1)について(原告らの主張)(1) 本件基準Aは刑事収容施設法42条1項に違反し、本件不許可措置Aは同項 に違反する旨の主張(主位的主張)ア本件基準Aの違法性刑事収容施設法42条1項1号は、「眼鏡その他の補正器具」について、被収容者においてこれを使用する必要がある限り、自弁の眼鏡等の使用が原則として許容されるという趣旨の規定である。刑事施設の長が自弁の資力補正 用眼鏡の使用の許否を判断するためには、被収容者において当該視力補正用眼鏡を使用する必要性の有無・程度を判断する必要がある。特に視力補正用眼鏡という物品の性質上、視力補正の必要性の有無・程度を考慮することは必須である。 しかし、本件基準Aは、その文言上、自弁の着色眼鏡による視力補正の必 要性を考慮することが予定されていない。本件基準Aは、レンズの可視光線透過率が75%を超えない眼鏡全般について、当該自弁の眼鏡による視力補正の必要性という必須の考慮要素を考慮せずにその使用をほぼ一律に不許可にするという、刑事収容施設法42条1項の趣旨に反する運用を許容している点 を超えない眼鏡全般について、当該自弁の眼鏡による視力補正の必要性という必須の考慮要素を考慮せずにその使用をほぼ一律に不許可にするという、刑事収容施設法42条1項の趣旨に反する運用を許容している点で、同条に違反する。 イ刑事収容施設法42条1項の「刑事施設の規律及び秩序の維持その他管理運営上の支障を生ずるおそれがある場合」の意義本件不許可措置Aは未決拘禁者に対するものであることから、刑事収容施設法42条1項にいう「刑事施設の規律及び秩序の維持その他管理運営上の支障を生ずるおそれがある場合」とは、本件不許可措置Aとの関係では、① 具体的事情の下において、刑事施設の規律及び秩序の維持又は逃亡及び罪証 隠滅の防止の点において事後的に回復することが不可能な障害が生ずる危険が必至に予見される場合であると解される。 仮に、上記の見解が採用されない場合には、昭和58年最判に照らし、②具体的事情の下において、当該視力補正用眼鏡の使用を許すことにより刑事施設内の規律及び秩序の維持又は逃亡及び罪証隠滅の防止の点において放置 することのできない支障が生ずる相当の蓋然性が認められる場合をいうと解すべきである。 ウ本件不許可措置Aの違法性(当てはめ)(ア) 原告X1において本件眼鏡Aを使用する必要性が極めて大きかったこと大阪拘置所入所時点で原告X1の裸眼視力が左右とも0.03と測定さ れていたこと、本件眼鏡Aのレンズの球面度数が左右とも強度近視の目安とされる-6を大きく超えていること、大阪拘置所入所時点で原告X1が他に視力補正用眼鏡を所持していなかったことに照らせば、原告X1において、本件眼鏡Aを使用する必要性が極めて大きかったことは明らかである。 (イ) 上記イ 拘置所入所時点で原告X1が他に視力補正用眼鏡を所持していなかったことに照らせば、原告X1において、本件眼鏡Aを使用する必要性が極めて大きかったことは明らかである。 (イ) 上記イ②の「具体的事情の下において…支障が生ずる相当の蓋然性が認められる場合」にすら当たらないこと被告が主張する被収容者の逃亡防止等の観点からは、着色眼鏡の使用を制限する一般的な必要性自体が乏しく、本件眼鏡Aとの関係ではなおさらその必要性が乏しい。被告が主張する動静視察や被収容者の身柄確保に対 する懸念は、抽象的あるいは非現実的な危惧感の域を出るものではなく、上記②の場合にすら当たらないというべきである。 (ウ) 必要かつ合理的な範囲を超えた制限であること仮に上記イ②の「具体的事情の下において…支障が生ずる相当の蓋然性」が認められるとしても、大阪拘置所内における本件眼鏡Aの使用を全面的 に禁止した点、特に、接見時における使用をも禁止した点については、障 害発生の防止のために必要かつ合理的な範囲を超えて本件眼鏡Aの使用を制限するものであり、刑事収容施設法42条1項に違反する。 (エ) 小括本件不許可措置Aは、上記イ②の「具体的事情の下において…支障が生ずる相当の蓋然性が認められる場合」にすら当たらず、刑事収容施設法4 2条1項にいう「刑事施設の規律及び秩序の維持その他管理運営上の支障を生ずるおそれがある場合」に該当しないにもかかわらず、本件眼鏡Aの使用を不許可とした点で、同項に違反する。 仮に上記イ②の「具体的事情の下において…支障が生ずる相当の蓋然性」が認められるとしても、大阪拘置所内における本件眼鏡Aの使用を全面的 に禁止した点、特に、接見時における使 する。 仮に上記イ②の「具体的事情の下において…支障が生ずる相当の蓋然性」が認められるとしても、大阪拘置所内における本件眼鏡Aの使用を全面的 に禁止した点、特に、接見時における使用をも禁止した点については、障害発生の防止のために必要かつ合理的な範囲を超えて本件眼鏡Aの使用を制限するものであり、刑事収容施設法42条1項に違反する。 (2) 仮に本件基準Aが刑事収容施設法42条1項に違反しないとしても、本件不許可措置Aは本件基準Aの例外要件に該当するから違法である旨の主張(予備 的主張)ア本件基準Aにいう「特別な理由があると認められる場合」の意義等本件基準Aの「特別な理由があると認められる場合」とは、医療上の必要性がある場合に限らず、被収容者において自弁の眼鏡を使用する必要性が強く認められる場合をいい、未決拘禁者の自弁の眼鏡による視力矯正の必要性 が認められる場合は、常に「特別な理由があると認められる場合」に当たる。 イ本件不許可措置Aの違法性(当てはめ)上記(1)ウ(ア)のとおり、大阪拘置所入所時点で原告X1の裸眼視力が左右とも0.03と測定されていたこと等の事情に照らせば、眼疾患に関する特段の指摘がなかったとされることなど被告が指摘する事情を考慮しても、原 告X1については、本件眼鏡Aを使用する必要性が優に認められ、ひいては 本件眼鏡Aの必要性が強く認められる。 したがって、原告X1による本件眼鏡Aの使用については、本件基準Aにいう「特別な理由があると認められる場合」に当たり、本件基準Aに照らしても本件眼鏡Aの使用を許可すべきであったというべきである。 (3) 原告らの被侵害利益等 ア原告X1について本件不許可措置Aは、原 と認められる場合」に当たり、本件基準Aに照らしても本件眼鏡Aの使用を許可すべきであったというべきである。 (3) 原告らの被侵害利益等 ア原告X1について本件不許可措置Aは、原告X1の①健康に対する権利の一内容としての視力補正用眼鏡を使用する自由(経済的、社会的及び文化的権利に関する国際規約12条と憲法98条2項、憲法13条)、②防御権としての接見交通権(憲法34条前段、刑事訴訟法39条1項)及び③裁判を受ける権利(憲法 32条)を侵害するものであるから、原告X1との関係で国家賠償法上違法である。 イ原告X2について本件不許可措置Aは、原告X2の弁護権としての接見交通権(憲法34条前段、刑事訴訟法39条1項)を侵害するものであるから、原告X2との関 係でも国家賠償法上違法である。 (被告の主張)(1) 本件基準Aは刑事収容施設法42条1項に違反し、本件不許可措置Aは同項に違反する旨の主張(主位的主張)についてア本件基準Aの違法性について 自弁の眼鏡の使用を制限する法令上の根拠は、刑事収容施設法42条1項であるところ、同項にいう「刑事施設の規律及び秩序の維持その他管理運営上支障を生ずるおそれがある場合」に該当するか否かの判断及びその具体的な許可基準の設定については、刑事施設内の実情に通暁し、直接個々の被収容者に接してその状況を最も把握することのできる刑事施設の長の広範な裁 量に委ねられていると解される。 大阪拘置所長が本件基準Aにより着色眼鏡の着装を制限する理由は、「刑務官は、受け持ち被収容者の動静視察を行い、心身の状況の把握に努めなければならない義務があり、着色眼鏡を無制限に許可した場合、当該被収容者の目の動きが分からないことなど の着装を制限する理由は、「刑務官は、受け持ち被収容者の動静視察を行い、心身の状況の把握に努めなければならない義務があり、着色眼鏡を無制限に許可した場合、当該被収容者の目の動きが分からないことなどから、動静視察に支障を来すおそれ」があるためである(本件拘置所指示記1)。そして、着色眼鏡の使用を無制限に許 可した場合には、被収容者の目の動き等の視認状況が悪化するため、被収容者の動静の視察を十分に行うことができず、被収容者が逃走や自傷等を試みた場合に、これらを防止することができないおそれがある。 したがって、着色眼鏡が刑事収容施設法42条1項にいう「刑事施設の規律及び秩序の維持その他管理運営上支障を生ずるおそれがある場合」に該当 するとして着色眼鏡の着装を制限した大阪拘置所長の判断に不合理な点はない。 また、着色眼鏡の許可基準を具体的にどのように設定するかについても、刑事施設の長の広範な裁量に委ねられていると解されるところ、レンズの可視光線透過率が75%を下回ると視認性に影響が生じることを前提とする規 格が定められていること(乙12)や、他の刑事施設においても本件基準Aとおおむね同じ基準か当該施設の実情を踏まえてより厳しい基準が採用されていること(乙15)からすると、本件基準Aにおいて、レンズの可視光線透過率が75%を超える(着色度25%以内)眼鏡について使用を許可するとの基準を定めた判断に不合理な点はない。 イ刑事収容施設法42条1項の「刑事施設の規律及び秩序の維持その他管理運営上の支障を生ずるおそれがある場合」の意義について刑事収容施設法42条1項にいう「刑事施設の規律及び秩序の維持その他管理運営上支障を生じるおそれがある場合」は、「刑事施設の規律及び秩序を害するおそれがあ おそれがある場合」の意義について刑事収容施設法42条1項にいう「刑事施設の規律及び秩序の維持その他管理運営上支障を生じるおそれがある場合」は、「刑事施設の規律及び秩序を害するおそれがある場合」を含むがこれよりも広い。すなわち、規律秩序を 害するおそれがある場合とは、単に、論理的・抽象的にその可能性があると いうだけでは足りず、合理的な根拠に基づくそれがあるといえる場合であり、刑事施設において採られる措置によってその具体的なおそれを防止できるときは、規律秩序を害するおそれがある場合とはいえないが、刑事施設の人的物的能力が有限である中でそうした措置を採ることが現実に困難であるときは、規律秩序を維持する上で支障を生ずるおそれがあるということになる。 以上に反する原告の主張はいずれも理由がない。 ウ本件不許可措置Aの違法性(当てはめ)について本件基準Aは上記アのとおり合理的なものであるところ、本件基準Aに従った本件不許可措置Aについて、「刑事施設の規律及び秩序の維持その他管理運営上支障を生じるおそれがある場合」に該当するとの大阪拘置所長の判 断に裁量権の範囲の逸脱又はその濫用があるとは認められない。仮に本件眼鏡Aの使用を許可した場合には、被収容者の目の動き等の視認状況が悪化するため、被収容者の動静の視察を十分に行うことができず、被収容者が逃走や自傷等を試みた場合に、これらを防止することができないおそれがある。 また、未決拘禁者と弁護人との接見時についても、接見(面会)の内容を 聞き取るなどの知れることのない限度での動静視察を行い、その結果次第では、更に動静視察を継続して行うべき場合(被収容者が接見中に逃亡や自傷に及ぼうとしている場合等、刑事施設の職員が弁護人面会室内に入室し 取るなどの知れることのない限度での動静視察を行い、その結果次第では、更に動静視察を継続して行うべき場合(被収容者が接見中に逃亡や自傷に及ぼうとしている場合等、刑事施設の職員が弁護人面会室内に入室し、接見を一時停止させるとともに被収容者の動静を確実に把握して、臨機の措置を講ずべき場合が生じることがある。)があり、そのような事態が生じるか否 かは事前に予測しておくことのできない事柄であるから、弁護人との接見中に着色眼鏡の使用を認めないことの必要性及び相当性が認められる。したがって、弁護人との接見時における着色眼鏡の使用についても、刑事収容施設法42条1項にいう「刑事施設の規律及び秩序の維持その他管理運営上支障を生じるおそれがある場合」に該当するとの大阪拘置所長の判断に不合理な 点はない。 (2) 仮に本件基準Aが刑事収容施設法42条1項に違反しないとしても、本件不許可措置Aは本件基準Aの例外要件に該当するから違法である旨の主張(予備的主張)について本件基準Aにいう「医療上、着色眼鏡を使用する必要がある」場合として想定されるのは、例えば、網膜色素変性症において網膜保護のために着色眼鏡を 着用することが医療上必要な場合などであり、原告X1については、着色眼鏡の医療上の必要性を基礎付ける医師の所見その他の医学的証拠はなかった。また、一般的な禁止における眼鏡は、眼鏡装用中の視力を矯正するために用いられるものにすぎず、近視を有する者に眼鏡を使用させなかったからといって、直ちにその者の健康を害することにはならない。もとより、本件眼鏡Aの使用 を許可せずにこれを領置したことは、一般的な未決拘禁者と弁護人との接見における制限と異なる特別の制限を加えたものではない。 これらの事情に照らし、原 らない。もとより、本件眼鏡Aの使用 を許可せずにこれを領置したことは、一般的な未決拘禁者と弁護人との接見における制限と異なる特別の制限を加えたものではない。 これらの事情に照らし、原告X1に本件眼鏡Aの使用を許可すべき医療上の必要性その他特別な理由があったと認められないことは明らかであり、大阪拘置所長の判断に裁量権の範囲の逸脱又はその濫用があったとは認められない。 (3) 原告らの被侵害利益等についてア原告X1について争う。 イ原告X2について争う。大阪拘置所長は、原告X1に対して本件眼鏡Aの使用を許可せずに 領置したにとどまり、原告X1とその弁護人である原告X2との接見について、一般的な未決拘禁者と弁護人との接見における制限と異なる特別の制限を加えたものではない。また、本件不許可措置Aは、弁護人固有の権利利益を直接制限するものではないから、本件不許可措置Aは、原告X1の弁護人である原告X2に対する関係において国家賠償法上違法となるものではない。 2 本件不許可措置Bの国家賠償法上の違法性(争点2)について (原告X1の主張)(1) 本件基準Bは刑事収容施設法42条1項に違反し、本件不許可措置Bは同項に違反する旨の主張(主位的主張)ア本件基準Bの違法性本件基準Bは、レンズが無色透明でない自弁の視力補正用眼鏡の使用を許 可する場合を、「(着色レンズの眼鏡の使用を許可しなければ)日常生活に著しい支障が生じると認められる場合」に限定しており、レンズが無色透明でない眼鏡全般について、当該眼鏡の使用の必要性が認められる被収容者に対しても眼鏡の使用をほぼ一律に許可しないという刑事収容施設法42条1項の趣旨に反する運用を許容する 定しており、レンズが無色透明でない眼鏡全般について、当該眼鏡の使用の必要性が認められる被収容者に対しても眼鏡の使用をほぼ一律に許可しないという刑事収容施設法42条1項の趣旨に反する運用を許容するものであり、同項に違反する。 イ刑事収容施設法42条1項の「刑事施設の規律及び秩序の維持その他管理運営上の支障を生ずるおそれがある場合」の意義本件不許可措置Bとの関係では、刑事収容施設法42条1項の「刑事施設の規律及び秩序の維持その他管理運営上の支障を生ずるおそれがある場合」とは、具体的事情の下において、当該視力補正用眼鏡の使用を許すことによ り刑事施設内の規律及び秩序の維持、受刑者の身柄の確保、受刑者の改善、更生の点において放置することのできない程度の障害が生ずる相当の蓋然性が認められる場合であるものと解される。 ウ本件不許可措置Bの違法性(当てはめ)(ア) 原告X1において本件眼鏡Bを使用する必要性が極めて大きかったこと 大阪刑務所入所時点で原告X1の裸眼視力が左右とも0.01と測定されていたこと、大阪刑務所入所時点で原告X1が他に視力補正用眼鏡を所持していなかったことに照らせば、原告X1において、本件眼鏡Bを使用する必要性が極めて大きかったことは明らかである。 (イ) 上記イの「具体的事情の下において…障害が生ずる相当の蓋然性が認め られる場合」に当たらないこと 本件眼鏡Bのレンズの可視光線透過率は約90%であるから、被収容者の動静視察を確保するために本件眼鏡Bの使用を制限する必要性はない。 また、本件眼鏡Bの外観は、無色透明の眼鏡と大差ないのであり、本件眼鏡Bを自己顕示や人を威圧する手段として用いるのはおよそ不可能であることに照らせば、 ために本件眼鏡Bの使用を制限する必要性はない。 また、本件眼鏡Bの外観は、無色透明の眼鏡と大差ないのであり、本件眼鏡Bを自己顕示や人を威圧する手段として用いるのはおよそ不可能であることに照らせば、自己顕示等の手段を封じるという観点からも、本件眼 鏡Bの使用を制限する必要性はない。したがって、上記イの「具体的事情の下において…障害が生ずる相当の蓋然性が認められる場合」には当たらない。 (ウ) 小括本件不許可措置Bは、上記イの「具体的事情の下において…障害が生ず る相当の蓋然性が認められる場合」に当たらず、刑事収容施設法42条1項の「刑事施設の規律及び秩序の維持その他管理運営上の支障を生ずるおそれがある場合」に該当しないにもかかわらず、本件眼鏡Bの使用を不許可とした点で、刑事収容施設法42条1項に違反する。 (2) 仮に本件基準Bが刑事収容施設法42条1項に違反しないとしても、本件不 許可措置Bは本件基準Bの例外要件に該当するから違法である旨の主張(予備的主張)及び本件物品訓令15条に基づく主張(再予備的主張)についてア本件基準Bの例外要件に該当すること一般的に、被収容者が視力補正用眼鏡の使用を禁じられた場合には、多かれ少なかれ日常生活に支障が生じるものである。そして、その支障の大きさ は、被収容者の近視の強度に比例すると考えるのが合理的である。 大阪刑務所入所時点で原告X1の裸眼視力は左右とも0.01であったこと、労災実務において両眼の視力(矯正視力)が0.02以下になった場合の労働能力喪失率が100%とされていることに照らせば、本件眼鏡Bの使用が許されない場合には、原告X1の「日常生活に著しい支障が生じる」と 優に認められる。また、本件基準Bのその他の要件 場合の労働能力喪失率が100%とされていることに照らせば、本件眼鏡Bの使用が許されない場合には、原告X1の「日常生活に著しい支障が生じる」と 優に認められる。また、本件基準Bのその他の要件も充足している。 イ本件物品訓令15条に基づき使用を許可すべきであったこと本件物品訓令の実質的根拠は、他の刑事施設において使用が許可されていた物品については、移送後の刑事施設でその使用を許可しても、同施設の規律及び秩序の維持その他管理運営上の支障を生ずるおそれがないとの事実上の推定が働くことであると解される。そうすると、本件物品訓令15条ただ し書が適用されるのは、上記推定を覆すに足りる特段の事情が存在する場合に限定されるべきである。 原告X1による本件眼鏡Bの使用に関して、上記推定を覆すに足りる特段の事情は存在しない。このことは、原告X1が大阪刑務所に入所する前後の施設(大阪拘置所と神戸刑務所)において、本件眼鏡Bの使用が許可された ことからも明らかである。したがって、原告X1による本件眼鏡Bの使用に関して、本件物品訓令15条ただし書の適用はないというべきである。 (3) 原告X1の被侵害利益等本件不許可措置Bは、原告X1の健康に対する権利の一内容としての視力補正用眼鏡を使用する自由(経済的、社会的及び文化的権利に関する国際規約1 2条と憲法98条2項、憲法13条)を侵害するから、国家賠償法上違法である。 (被告の主張)(1) 本件基準Bは刑事収容施設法42条1項に違反し、本件不許可措置Bは同項に違反する旨の主張(主位的主張)について ア本件基準Bの違法性について眼鏡は、本来、視力矯正や眼病等への対応を目的とした補正器具ないし医療機器であるから、受刑者に 可措置Bは同項に違反する旨の主張(主位的主張)について ア本件基準Bの違法性について眼鏡は、本来、視力矯正や眼病等への対応を目的とした補正器具ないし医療機器であるから、受刑者にとっては、刑事施設内で生活ないし刑務作業をするのに必要最小限度の機能を備えているものを使用できれば足りるものである。一方で、着色レンズの眼鏡は、一般に、高価で華美なものも存在する ほか、その本来の用途を超えて、自己を誇張したり他の受刑者を威嚇したり する手段として着装する者もあり得るほか、場合によっては、受刑者の視線を確認することができないなど、刑事施設職員による受刑者の動静の視察を困難にすることもあるものである。 そうすると、着色レンズの眼鏡の使用を認めた場合には、受刑者の動静の視察が十分に行えなくなり、受刑者が逃走や自傷等を試みた場合にこれを防 止することができないおそれがあるといえる。また、大阪刑務所は、主に暴力団関係者を含む犯罪傾向の進んでいる受刑者を収容する施設であるところ、着色眼鏡の使用を制限しなければ、受刑者間のいさかいを招き、受刑者間に支配・被支配の関係が生じたりするおそれがあり、刑事収容施設法73条1項の「処遇のための適切な環境」及び「安全かつ平穏な共同生活」を維持す ることができないおそれがあった。 そこで、以上のことを踏まえ、大阪刑務所長は、着色眼鏡が刑事収容施設法42条1項にいう「刑事施設の規律及び秩序の維持その他管理運営上支障を生ずるおそれがある場合」に該当するとして着色眼鏡の着装を制限したのであり、その判断に不合理な点はない。また、着色眼鏡の許可基準を具体的 にどのように設定するかについても刑事施設の長の広範な裁量に委ねられているところ、仮に着色度(可視光線透過率 を制限したのであり、その判断に不合理な点はない。また、着色眼鏡の許可基準を具体的 にどのように設定するかについても刑事施設の長の広範な裁量に委ねられているところ、仮に着色度(可視光線透過率)について数値化した基準を定めたとしても、なぜ他の受刑者の眼鏡は認められて自分の眼鏡は認められなかったのかといった形で受刑者間の不公平感を訴える者が現れ、受刑者間のいさかいにつながるおそれがある。このことを踏まえたとき、本件基準Bを定 め、原則として着色レンズの使用を許可しないこととした上で、例外的に「着色レンズの眼鏡しか所持しておらず、かつ、当該レンズの着色濃度が25パーセント以下であって、その使用が許されなければ日常生活に著しい支障が生じると認められる場合」等に個別検討を行うものとした大阪刑務所長の判断に不合理な点はない。 イ本件不許可措置Bの違法性(当てはめ)について 本件基準Bは上記アのとおり合理的なものであるところ、本件基準Bに従った本件不許可措置Bについて、「刑事施設の規律及び秩序の維持その他管理運営上支障を生じるおそれがある場合」に該当するとの大阪刑務所長の判断に裁量権の範囲の逸脱又はその濫用があるとは認められない。 仮に本件眼鏡Bの使用を許可した場合には、受刑者間のいさかいを招き、 受刑者間に支配・被支配の関係が生じたりするおそれがあるし、被収容者の目の動き等の視認状況が悪化するため、被収容者の動静の視察を十分に行うことができず、被収容者が逃走や自傷等を試みた場合に、これらを防止することができないおそれがある。 したがって、本件眼鏡Bの使用を許可した場合には、刑事収容施設法42 条1項にいう「刑事施設の規律及び秩序の維持その他管理運営上支障を生じるおそれがある場合」に該当する。 いおそれがある。 したがって、本件眼鏡Bの使用を許可した場合には、刑事収容施設法42 条1項にいう「刑事施設の規律及び秩序の維持その他管理運営上支障を生じるおそれがある場合」に該当する。 (2) 仮に本件基準Bが刑事収容施設法42条1項に違反しないとしても、本件不許可措置Bは本件基準Bの例外要件に該当するから違法である旨の主張(予備的主張)及び本件物品訓令15条に基づく主張(再予備的主張)について ア本件基準Bの例外要件該当性(予備的主張)について原告X1の裸眼視力が両眼とも0.01であったとして、そのことから直ちに刑務所内での「日常生活に著しい支障が生じる」とはいえない。原告X1が大阪刑務所に入所した当初、検査のために本件眼鏡Bを預かることとされた期間においても、原告X1からは、実施中の室内刑務作業(折鶴の解体) に関して、手元が見えないなど作業の実施ができないことを理由とした作業変更等の申出はなかった上、原告X1は、作業ペースも他の受刑者に比べて問題なく、入浴のため居室を出て他の受刑者と共に廊下を歩き階段を昇降する際にも列から遅れることなく、足元が見えなくて歩きにくい様子も認められず、他の受刑者と同様の行動ができていた。これらの事情も含めて検討し た結果、大阪刑務所長は、本件眼鏡Bの使用を許可しない旨決定してこれを 領置したものである(本件不許可措置B)。そして、本件不許可措置Bの後の原告X1の行動をみても、原告X1は、眼鏡を使用することなく生活していたが、信書7通を作成して発信し、官本6冊の貸与を受け、爪切りも自身で行っていたのであるから、文書の読み書きを含め、原告X1の大阪刑務所における日常生活に著しい支障が生じていたとは認められない。 したがって、本件 、官本6冊の貸与を受け、爪切りも自身で行っていたのであるから、文書の読み書きを含め、原告X1の大阪刑務所における日常生活に著しい支障が生じていたとは認められない。 したがって、本件不許可措置Bが刑事収容施設法42条1項に違反する旨の原告X1の主張(予備的主張)は理由がない。 イ本件物品訓令15条に基づく主張(再予備的主張)について本件物品訓令15条は、そのただし書において、「ただし、当該物品の使用又は摂取を許すことにより、刑事施設の規律及び秩序の維持その他管理運営 上支障を生ずるおそれがある場合は、この限りでない。」と定めている。そして、大阪刑務所において原告X1に本件眼鏡Bの使用を許した場合に「刑事施設の規律及び秩序の維持その他管理運営上支障を生ずるおそれ」があると認めて本件不許可措置Bをした大阪刑務所長の判断に裁量権の範囲の逸脱又はその濫用がないことは、既に述べたとおりである。 そうすると、大阪刑務所における原告X1に対する本件眼鏡Bの使用の許否については、本件物品訓令15条ただし書の場合に当たるから、同条本文に基づき使用を許すべきものとはいえない。したがって、原告X1の主張(再予備的主張)は理由がない。 (3) 原告X1の被侵害利益等 争う。 3 原告X1の損害の有無及び額(争点3)について(原告X1の主張)(1) 慰謝料ア本件不許可措置A(大阪拘置所長) 本件不許可措置Aにより、原告X1は、接見交通権及び裁判を受ける権利 等を侵害された。そして、大阪拘置所長は、原告X2からの本件申入れを受けたにもかかわらず、本件眼鏡Aを原告X1に使用させることを許さず、原告X1は約1か月にわたって法益侵害を受け続けた。これ 等を侵害された。そして、大阪拘置所長は、原告X2からの本件申入れを受けたにもかかわらず、本件眼鏡Aを原告X1に使用させることを許さず、原告X1は約1か月にわたって法益侵害を受け続けた。これにより、原告X1は、自身の刑事事件における証拠内容の確認や、大阪拘置所内での生活等に支障を生じることとなった。 これらの被侵害利益の重大性、加害行為の悪質性及び原告X1が被った実害の内容に照らせば、本件不許可措置Aにより原告X1が被った精神的苦痛に対する損害は200万円を下らない。 イ本件不許可措置B(大阪刑務所長)本件不許可措置Bにより、原告X1は、その身体に対する重大な侵害を受 け、生活上の支障が生じた。本件眼鏡Bは大阪拘置所において使用を許されていたものであり、また、大阪刑務所長は、過去に類似の人権侵害案件に及んでいることからすると、本件不許可措置Bが原告X1に与えた衝撃は大きく、かつ、本件不許可措置Bは悪質であったといえる。 本件不許可措置Bによる原告X1の生活上の支障、原告X1が受けた衝撃 の大きさ及び加害行為の悪質性に照らせば、本件不許可措置Bによって原告X1が被った精神的苦痛に対する損害は100万円を下らない。 (2) 弁護士費用原告X1は、本件不許可措置A及び本件不許可措置Bによる損害の賠償請求を弁護士である原告X2に委任することを余儀なくされた。そのため、原告X 1は、弁護士費用相当額として合計30万円の損害を被った。 (3) 小括上記(1)、(2)によれば、原告X1が被った損害は合計330万円となる。 (被告の主張)否認ないし争う。 4 原告X2の損害の有無及び額(争点4)について (原告X2の主張) によれば、原告X1が被った損害は合計330万円となる。 (被告の主張)否認ないし争う。 4 原告X2の損害の有無及び額(争点4)について (原告X2の主張)(1) 慰謝料本件不許可措置Aにより、原告X2は、接見交通権を侵害された。そして、大阪拘置所長は、原告X2がした本件申入れを無視し、約1か月にわたって接見交通権の侵害を継続し、これにより原告X2が担当した原告X1の刑事事件 の証拠の確認等が遅延するなど、原告X2の弁護活動に多大な支障が生じた。 被侵害利益の重大性、加害行為の悪質性及び生じた実害の内容に照らせば、本件不許可措置Aにより原告X2が被った精神的苦痛に対する損害は150万円を下らない。 (2) 本件眼鏡Bの購入費用等 原告X2は、本件眼鏡Aに代わる眼鏡(本件眼鏡B)を調達するため、本件眼鏡Bの代金7万円の支出を余儀なくされ、同額の損害を被った。 また、原告X2は、本件不許可措置Aの違法性を主張するため、本件検査協会に試験手数料等合計3万1053円及びその振込手数料440円を支払うことを余儀なくされ、同額の損害を被った。 (3) 小括上記(1)、(2)によれば、原告X2が被った損害は合計160万1493円となる。 (被告の主張)否認ないし争う。

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