令和5年3月24日判決言渡令和元年(行ウ)第266号種子法廃止違憲確認等請求事件(第1事件)令和3年(ワ)第6342号種子法廃止違憲確認等請求事件(第2事件)令和4年(ワ)第8759号種子法廃止違憲確認等請求事件(第3事件)主文 1 第1事件原告A、同B及び同Cの訴えのうち、主要農作物種子法を廃止する法律が違憲無効であることの確認を求める部分並びに第1事件原告B及び同Cの地位確認を求める部分をいずれも却下する。 2 第1事件原告A、同B及び同Cのその余の請求をいずれも棄却する。 3 その余の原告らの請求をいずれも棄却する。 4 訴訟費用は原告らの負担とする。 事実及び理由 第1 請求 1 第1事件主要農作物種子法を廃止する法律(平成29年法律第20号)は、第1事 件原告A、同B及び同Cと被告との間において違憲無効であることを確認する。 第1事件原告Aは、自らの所有する別紙2土地目録記載の土地に所在するほ場が主要農作物種子法(昭和27年法律第131号)に定められた指定種子生産ほ場(同法3条)として都道府県によって指定される地位にあること を確認する。 第1事件原告Bは、主要農作物種子法(昭和27年法律第131号)に定められた「ほ場審査その他の措置」(同法1条)を受けて生産された種子を用いて主要農作物を栽培できる地位にあることを確認する。 第1事件原告Cは、主要農作物種子法(昭和27年法律第131号)に定 められた「ほ場審査その他の措置」(同法1条)を受けて生産された種子を用 いて栽培された主要農作物の供給を受ける地位にあることを確認する。 被告は、第1事件原告らに対し、各1万円を支払え。 2 第2事件被告は、第2事件原告らに対し、各1万円を 種子を用 いて栽培された主要農作物の供給を受ける地位にあることを確認する。 被告は、第1事件原告らに対し、各1万円を支払え。 2 第2事件被告は、第2事件原告らに対し、各1万円を支払え。 3 第3事件 被告は、第3事件原告らに対し、各1万円を支払え。 第2 事案の概要本件は、主要農作物の採種農家である第1事件原告A、一般農家である第1事件原告B及び一般消費者である第1事件原告C(原告A及び原告Bと併せて「原告Aら」という。)が、被告との間で、①主要農作物種子法を廃止する法 律(平成29年法律第20号。以下「種子法廃止法」という。)が違憲無効であることの確認と、②種子法廃止法が違憲無効であることを前提に、主要農作物種子法(昭和27年法律第131号。以下「種子法」という。)に係る各自の立場に応じた法律上の地位にあることの確認を求め、また、原告らが、種子法廃止法の制定によって憲法上の権利を侵害されて精神的苦痛を受けたとして、 被告に対し、国家賠償法(以下「国賠法」という。)1条1項に基づき、各1万円の支払を求める事案である。 1 関係法令等の定め別紙3-1「関係法令等の定め」に記載のとおりである(なお、同別紙中で定義した略称等は、以下の本文においても同様に用いるものとする。)。 2 前提事実(当事者間に争いがないか後掲各証拠及び弁論の全趣旨により認められる事実並びに当裁判所に顕著な事実)当事者ア原告らは、日本国に居住する者である(弁論の全趣旨)。 イ原告Aは、山形県西置賜郡(住所省略)において水稲の種子生産ほ場等 を所有等し、主要農作物の種子の生産・販売を営んでいる者である。原告 Aの所有する別紙2土地目録記載の土地に所在するほ場(以下「本件ほ場」 置賜郡(住所省略)において水稲の種子生産ほ場等 を所有等し、主要農作物の種子の生産・販売を営んでいる者である。原告 Aの所有する別紙2土地目録記載の土地に所在するほ場(以下「本件ほ場」という。)は、昭和30年以降、種子法が廃止されるまで65年にわたり、同法3条に基づき指定を受けてきた種子生産ほ場であった。種子法が廃止された後、本件ほ場は、山形県種子条例に基づき、ほ場として指定されている。原告Aは、山形県において稲の奨励品種として指定されている「は えぬき」及び「つや姫」の原種を同県から購入し、本件ほ場で種子生産を行っている。(甲32、原告A本人)ウ原告Bは、昭和57年から栃木県下都賀郡(住所省略)で農業を営んでいる者であり、米、小麦、大豆等を生産し出荷している。原告Bは、平成4年から有機農法(化学的に合成された肥料及び農薬、遺伝子組換技術を 使用しない農法)を始め、有機の種子を使って米を栽培しているところ、当該種子は、有機種子生産登録団体であり、種子法が廃止されるまでは種子法3条所定の種子生産ほ場として栃木県から指定を受けていたEから購入している。(甲27の1、原告B本人)エ原告Cは、東京都に在住し、米、麦等の主要農作物の供給を受けている 者である。原告Cは、平成18年にDの理事に、平成25年に理事長に就任し、令和元年からDの顧問となっている。(原告C本人)種子法についてア種子法は、第二次世界大戦後、食糧増産という国家的要請を背景として、稲、大麦、はだか麦及び小麦の種子対策の重要性が認識されるようになり、 昭和26年度には稲麦の原種ほ等の設置費を中心とした予算措置が講じられるようになり、昭和27年度には都道府県による種子生産ほ場の審査などの採種管理に係る事業が拡充されるなど、 るようになり、 昭和26年度には稲麦の原種ほ等の設置費を中心とした予算措置が講じられるようになり、昭和27年度には都道府県による種子生産ほ場の審査などの採種管理に係る事業が拡充されるなど、種子対策事業が都道府県を中心に運営される基礎が築かれる過程で、優良種子の生産・普及に関する基本的な施策の恒久的な制度化を求める機運が高まり、制定されたものであ る。 イ種子法を廃止する旨定めた種子法廃止法は、平成29年4月21日に公布され、平成30年4月1日に施行された(当裁判所に顕著な事実)。 ウ種子法廃止法が施行される直前の主要農作物種子の流通構造を図示すると、別紙4のとおりとなる(乙4)。 種子法廃止法が施行される直前の種子法の概要 ア生産及び普及の対象となる優良品種の決定種子法は、我が国の多様な気象、土壌条件の下で主要農作物の安定的な生産を確保するためには地域の条件に適した品種を栽培することが適切であるとして、同法8条において、都道府県が、当該都道府県内に普及すべき主要農作物の優良な品種(奨励品種)を決定するため必要な試験を行 わなければならないと規定していた。 奨励品種を決定するために必要な上記試験の実施により、各地域において、気象、土壌条件に対する適応性、病虫害や気象被害に対する抵抗性、生産物の品質の良否等、その品種の特性が十分吟味され、地域の条件に適した品種の選択が可能になるとともに、このような試験を通じて品種の特 性が的確に把握され、その知見が、都道府県による栽培指導等にも生かされていた。 イ原種及び原原種の生産主要農作物の種子の増殖は、種の特性維持・純正度保全のため、次のとおり三段階に分けて行われる。すなわち、①まず、 都道府県による栽培指導等にも生かされていた。 イ原種及び原原種の生産主要農作物の種子の増殖は、種の特性維持・純正度保全のため、次のとおり三段階に分けて行われる。すなわち、①まず、品種の育成者(国や都 道府県の農業試験場等)から配布された種子(育種家種子)を元種として、原原種ほ(原原種を生産するためのほ場)において厳密な栽培管理の下に増殖し、②次に、原原種ほで生産された種子(原原種)を原種ほ(原種を生産するためのほ場)に移して更に増殖し、③さらに、原種ほで生産された種子(原種)を指定種子生産ほ場に供給して大規模に増殖し、最終的に 一般種子が生産されるというものである。 種子増殖に当たっては、一般種子の生産以上に高度な技術・知識に基づき厳格な管理の下で栽培された原種・原原種を使用することが、品種の特性維持・純正度保全の面から特に重要であるとして、種子法7条において、上記の種子の増殖過程のうち、原種及び原原種の生産につき、都道府県において、主要農作物の原種ほ及び原原種ほを設置し、指定種子生産ほ場に おいて必要な原種及び当該原種の生産を行うために必要な原原種の生産を行わなければならないと規定されていた。 ウほ場の指定優良な種子を生産するためには、土壌、水利、気象等の諸条件が当該作物の種子生産に適した農地(採種適地)を選定する必要があること、また、 種子生産者に必要な技術指導を行い、採種専業農家の育成を図る必要があること等の理由から、種子法3条1項は、都道府県は種子生産ほ場(採種ほ)を指定しなければならない旨規定していた。同条2項の規定により、上記の指定種子生産ほ場の指定を受けようとする者は、都道府県にその申請をしなければならないとされ、この指定申請の手続について (採種ほ)を指定しなければならない旨規定していた。同条2項の規定により、上記の指定種子生産ほ場の指定を受けようとする者は、都道府県にその申請をしなければならないとされ、この指定申請の手続については、主要農 作物種子法施行規則1条により、毎年、主要農作物の種類ごとに同条に定める期日までに別紙3-2の書式による指定申請書を当該都道府県知事に提出するよう定められていた。 エほ場審査及び生産物審査指定種子生産ほ場で生産する種子の品質の向上を図り、優良な種子の生 産を図るため、種子法4条1項は、指定種子生産ほ場について都道府県のほ場審査を受けることを、同条2項は、ほ場審査に合格したほ場で生産された種子について都道府県の生産物審査を受けることをそれぞれ義務付けていた。 ほ場審査は、優良な種子の具備すべき条件(遺伝的な純正度が高いこと、 発芽率、発芽勢が高いこと、比重が重いこと、粒形が整一で色沢が良好で あること、被害粒・未熟粒、異種穀粒及び異物の混入等がないこと等)を満たすか否かの判定のためには、単なる種子の現品検査だけでは不十分であり、特に遺伝的に優良であるかどうかを確認することは困難であって、ほ場において栽培中の作物につき、初期生育の段階から種子ができるまでの過程を終始観察し、特に出穂、穂ぞろい、成熟状況等について注意し、 将来種子として適格であるかどうかをあらかじめ判定する必要があるという理由から、義務付けられていたものである。 そして、ほ場審査に合格したものについて、発芽率、整粒歩合、異種異物の混入状況等の生産物審査を受けることを義務付けることによって、ほ場から生産物に至るまでの一貫した審査制度が確立され、遺伝的にも生態 的にも優良な種子を生産確保することが 、整粒歩合、異種異物の混入状況等の生産物審査を受けることを義務付けることによって、ほ場から生産物に至るまでの一貫した審査制度が確立され、遺伝的にも生態 的にも優良な種子を生産確保することが可能となっていた。 3 争点本案前の争点ア地位確認の訴えの適法性 原告Aの地位確認の訴えの適法性(争点1-1) 原告Bの地位確認の訴えの適法性(争点1-2)原告Cの地位確認の訴えの適法性(争点1-3)イ無効確認の訴えの適法性(争点2)本案の争点ア種子法廃止法の違憲性(争点3) イ国賠法上の違法性(争点4) 4 争点に対する当事者の主張争点1-1(原告Aの地位確認の訴えの適法性)について(原告Aの主張)原告Aは、農業専門学校を卒業後、20歳の頃から父の下で採種農業を手 伝い、昭和51年頃に父から指定種子生産ほ場を引き継ぎ、40年以上にわ たって採種農家の経営を行っている。本件ほ場は、昭和30年に、種子法3条に基づいて山形県から指定種子生産ほ場として指定されたものであり、同法の廃止後は、山形県種子条例に基づく指定種子生産ほ場としての指定を受けている。 原告Aは、種子法により、都道府県の管理の下、指定種子生産ほ場におけ る厳格な管理によって種子生産を行うことができる権利及び指定種子生産ほ場として指定され続けてきた権利を有し、前者は憲法25条により、後者は憲法29条によりそれぞれ保障された権利であるところ、種子法廃止法によって同各権利を侵害された。また、同法は、原告Aの職業選択の自由及び営業の自由(憲法22条)並びに人格権及び自己決定権(憲法13条)をも侵 害している。種子法廃止法は、このように原告Aの憲法上の権利を侵害するものであって違憲無効であるか の職業選択の自由及び営業の自由(憲法22条)並びに人格権及び自己決定権(憲法13条)をも侵 害している。種子法廃止法は、このように原告Aの憲法上の権利を侵害するものであって違憲無効であるから、原告Aは今もなお、自ら経営する本件ほ場について、種子法3条に基づき、山形県から指定種子生産ほ場に指定される法的地位にある。 原告Aは、山形県種子条例により、一定期間は山形県から指定種子生産ほ 場としての指定を受け続けることになり得るが、種子法3条に基づいて山形県から指定種子生産ほ場として指定される法的根拠を既に失っているため、法律上の地位ないし利益が害される危険が現に生じている。また、種子法が廃止されたため被告による予算が減少し、山形県種子条例が改廃される可能性も否定できない。そうすると、将来的には原告Aのほ場が山形県からのほ 場指定を受けることができなくなり、大規模な民間事業者のほ場で種子が生産されることになりかねない。民間事業者の主導による大規模企業型の種子生産が参入すれば、従前の生産体系を維持することができなくなり、また、大規模民間事業者の種子生産に加わることになれば、その大規模民間事業者の提供する除草剤、農薬等を使用することが義務付けられるなどして、地域 独自の種子生産体系を維持することがほとんど不可能になる。このように、 原告Aは、種子法3条所定の指定種子生産ほ場に指定される法的地位にない場合には、従来の経営を維持することができず損害を受けることになるため、上記法的地位にあることの確認を求める必要があるから、確認の利益が肯定される。 なお、原告Aの上記各権利が一旦侵害されると、その回復は容易ではなく、 国家賠償請求によって権利行使の実質を回復することはできない。 (被告の主張)原告Aの地位確 の利益が肯定される。 なお、原告Aの上記各権利が一旦侵害されると、その回復は容易ではなく、 国家賠償請求によって権利行使の実質を回復することはできない。 (被告の主張)原告Aの地位確認の訴えは、以下のとおり、確認の利益を欠き、不適法である。 ア原告Aが主張する、都道府県の管理の下、指定種子生産ほ場における厳 格な管理によって種子生産を行うことができる権利は、権利主体、成立要件、法律効果等の一義性に欠け、その外延を画することもできない極めて曖昧なものであって、憲法上又は法律上、具体的な権利として保障されているものとはいえない。 また、種子法3条所定の指定種子生産ほ場は、毎年、指定を受けようと する者の申請を受けて都道府県が指定するものであり、当然に指定が継続されるものではない。このことからすると、指定種子生産ほ場として指定される地位とは、単に、指定種子生産ほ場としての指定を受けるために申請を行い、指定されることを期待する立場であるにすぎないのであり、そのような地位が財産権として保障されているということはできない。 イ原告Aが、種子法が廃止された後も、山形県種子条例に基づき、従前と同様に山形県から指定種子生産ほ場として指定を受けていることからすれば、原告Aの地位は、種子法廃止法の施行前後で大きな違いはない。原告Aの主張する上記アの権利が憲法上又は法律上保障されているものと仮定したとしても、原告Aが主張する上記各権利に対する危険や不安は、一般 的抽象的な危惧感にすぎず、確認の利益を肯定するほどの現実かつ具体的 な危険又は不安ということはできない。 ウ原告Aが確認の対象とする地位が確認されることが、原告Aの主張する被告との間の法律上の紛争の解決のために必要かつ適切といえる理由は明らかで つ具体的 な危険又は不安ということはできない。 ウ原告Aが確認の対象とする地位が確認されることが、原告Aの主張する被告との間の法律上の紛争の解決のために必要かつ適切といえる理由は明らかでない。上記の地位が確認されたとして、そのことから、被告において何らかの作為又は不作為が必要になるものとも理解することはできない。 したがって、原告Aが確認の対象とする地位が確認されることが、被告との間の法律上の紛争の解決に必要かつ適切であるとはいえない。 争点1-2(原告Bの地位確認の訴えの適法性)について(原告Bの主張)原告Bは、栃木県において、稲作10ha、小麦1ha、大豆、野菜(自 家用)等を耕作する農家であり、全て有機農法で耕作している。 原告Bは、稲作関係では例年5品種を耕作しており、そのうち3品種については、各品種ともその3分の1は栃木県河内郡(住所省略)所在の、日本で初めて有機栽培用の種子の採種ほ場として種子法3条に基づいて栃木県から指定種子生産ほ場として指定を受けたほ場を経営するEが生産した種もみ を購入して使用し、残り3分の2は自家採種した種もみ(稲種)を使用している。すなわち、原告Bは、特定品種の品質の維持にほとんど問題が発生しない3世代程度まで指定種子生産ほ場の種もみから自家採種を行い、その後は一旦、指定種子生産ほ場の種もみに代えて、また3世代まで自家採種することを繰り返すことによって、特定品種の品質を維持しているものである。 有機稲作農家は、仮に指定種子生産ほ場からの種もみの供給が無くなれば、特定品種を維持するため、自家採種を指定種子生産ほ場並みに厳重に管理する必要が生じるが、たとえ技術的には対応できたとしても、指定種子生産ほ場からの種もみ購入に比べると非常に高いコストを伴うことにな 特定品種を維持するため、自家採種を指定種子生産ほ場並みに厳重に管理する必要が生じるが、たとえ技術的には対応できたとしても、指定種子生産ほ場からの種もみ購入に比べると非常に高いコストを伴うことになる。また、指定種子生産ほ場に代わって民間で特定品種の有機の種もみを栽培して供給 するようになった場合、その価格が現状の5~10倍に高騰することは確実 であるし、従来と同じ方法で自家採種を続けることによって特定品種の品質を維持できなくなれば、品種が特定されない「国産うるち米」としての販売になり、売上単価が減少することとなる。いずれにしても、従来の種子法に基づく指定種子生産ほ場からの奨励品種の有機の種もみ購入ができなくなることは、有機農家である原告Bにとって経営危機を招くものである。 種子法に規定されている、自由に天然資源である良好な品質の種子を安価で安定的に入手し、これを使って安全安心な米などの農作物を栽培、収穫し、自ら消費するとともに一般消費者である顧客に販売する権利は、食料への権利として、憲法25条の生存権の規定において保障されるものである。種子法が廃止されたことにより、栃木県では原原種・原種の生産についての県の 管理、審査が無くなり、単なる指導、助言者の役割にとどまることになり、原告Bが安定的に品質の良い種子の入手ができなくなり、種子価格の上昇が見込まれることにより、原告Bの農業者(一般農家)としての上記権利が侵害されている。また、原告Bは、米作農家として、都道府県で指定されている水稲奨励品種から、耕作地の土壌、気候に適した品種で食味の良く多収量 のものを選択、決定して栽培しているところ、種子法を根拠に、一般財源からの予算措置、高い技術と豊富な遺伝資源の蓄積、一般農家に対する良質で安価な種子の安定的な提供 した品種で食味の良く多収量 のものを選択、決定して栽培しているところ、種子法を根拠に、一般財源からの予算措置、高い技術と豊富な遺伝資源の蓄積、一般農家に対する良質で安価な種子の安定的な提供が可能となっていたことからすれば、種子法廃止法により、原告Bの人格権及び自己決定権が侵害されているといえる。 したがって、種子法廃止法は、原告Bの憲法上の権利を侵害するものであ って違憲無効であり、種子法は廃止されたことにはならないところ、原告Bは、種子法に定められた「ほ場審査その他の措置」(同法1条)を受けて生産された種子を用いて主要農作物を栽培できることとなり、そのような法的地位にあることの確認を求める必要があるから、確認の利益は肯定される。 なお、ほ場審査等がなされない種子が市場を独占し、自らの農作物生産に 影響が出た場合、原告Bは農家の経営を続けることが困難になり、上記各権 利が一旦侵害されると、その回復は容易ではなく、国家賠償請求によって権利行使の実質を回復することはできない。 (被告の主張)原告Bの地位確認の訴えは、以下のとおり、確認の利益を欠き、不適法である。 ア原告Bが主張する、自由に天然資源である良好な品質の種子を安価で安定的に入手し、これを使って安全安心な米などの農作物を栽培、収穫し、自ら消費するとともに一般消費者である顧客に販売する権利は、権利主体、成立要件、法律効果等の一義性に欠け、その外延を画することもできない極めて曖昧なものであって、憲法上又は法律上、具体的な権利として保障 されているものとはいえない。 イ種子法が廃止された後も、都道府県の種子の供給に係る事務は継続され、稲、麦類及び大豆の種子の品質基準についても、種子法4条5項の農林水産大臣が定める基準と同様のものが、 いるものとはいえない。 イ種子法が廃止された後も、都道府県の種子の供給に係る事務は継続され、稲、麦類及び大豆の種子の品質基準についても、種子法4条5項の農林水産大臣が定める基準と同様のものが、種苗法61条1項の規定に基づく告示である「指定種苗の生産等に関する基準」(平成14年農林水産省告示第 933号)に規定されていることにより、引き続き種子の品質確保のための基準が設けられている。このような事情に加え、原告Bの主張する「安全安心」が具体的にどのようなものであるか不明であり、主要農産物の種子の品質の低下を示す具体的事実についても何ら主張されていないことからすれば、原告Bが主張する上記権利に対する危険又は不安は、一般的抽 象的な危惧感にすぎず、確認の利益を肯定するほどの現実かつ具体的な危険又は不安ということはできない。 ウ原告Bが確認の対象とする地位が確認されることが、原告Bの主張する被告との間の法律上の紛争の解決のために必要かつ適切といえる理由は明らかでない。上記の地位が確認されたとして、そのことから、被告におい て何らかの作為又は不作為が必要になるものとも理解することはできない。 したがって、原告Bが確認の対象とする地位が確認されることが、被告との間の法律上の紛争の解決に必要かつ適切であるとはいえない。 争点1-3(原告Cの地位確認の訴えの適法性)について(原告Cの主張)原告Cは、一般消費者であるとともに、Dの役員として食料の流通に携わ ってきた者である。このような立場にある原告Cは、天然資源である種子を使って栽培された安全安心な農作物の供給を受け消費する権利を有し、同権利は、食料への権利として、憲法25条の生存権の規定において保障されるものである。 原告Cは、種子法の廃止に伴い、「ほ る種子を使って栽培された安全安心な農作物の供給を受け消費する権利を有し、同権利は、食料への権利として、憲法25条の生存権の規定において保障されるものである。 原告Cは、種子法の廃止に伴い、「ほ場審査その他の措置」(同法1条)を 受けて生産された種子を用いて栽培された主要農作物を購入して供給を受けることができなくなり、その結果、安全安心な品質の主要農作物を一般消費者に提供することも、自らが食することもできなくなる。このことは、上記食料への権利の侵害、すなわち、憲法25条の権利侵害に該当する。 したがって、種子法廃止法は、原告Cの憲法上の権利を侵害するものであ って違憲無効であり、種子法は廃止されたことにはならないところ、原告Cは、種子法に定められた「ほ場審査その他の措置」(同法1条)を受けたほ場(同法3条)で生産された奨励品種である種子を用いて栽培された主要農作物の供給を受けることができることとなる。 種子法が廃止された以上、原告Cは、消費者として種子法に基づく奨励品 種である種子を用いて栽培された主要農作物の供給を受ける法的地位にはないから、法律上の地位ないし利益が害される危険が現に生じており、原告Cにおいてはそのような法的地位にあることの確認を求める必要があるから、確認の利益は肯定される。 なお、種子法廃止法により、ほ場審査等がなされないまま安全でない種子 が市場を独占し、その結果、我が国の食の安全に一旦影響が出た場合、その 回復は容易ではなく、国家賠償請求によって権利行使の実質を回復することはできない。 (被告の主張)原告Cの地位確認の訴えは、以下のとおり、確認の利益を欠き、不適法である。 ア原告Cが主張する、天然資源である種子を使って栽培された安全安心な農産物の供給を受け消 い。 (被告の主張)原告Cの地位確認の訴えは、以下のとおり、確認の利益を欠き、不適法である。 ア原告Cが主張する、天然資源である種子を使って栽培された安全安心な農産物の供給を受け消費するという権利は、権利主体、成立要件、法律効果等の一義性に欠け、その外延を画することもできない極めて曖昧なものであって、憲法上又は法律上、具体的な権利として保障されているものとはいえない。 イ原告Cが主張する上記アの権利に対する危険ないし不安は、原告Bの主張する権利と同様、一般的抽象的な危惧感にすぎず、確認の利益を肯定するほどの現実かつ具体的な危険又は不安ということはできない。 ウ原告Cが確認の対象とする地位が確認されることが、原告Cの主張する被告との間の法律上の紛争の解決のために必要かつ適切といえる理由は明 らかでない。上記の地位が確認されたとして、そのことから、被告において何らかの作為又は不作為が必要になるものとも理解することはできない。 したがって、原告Cが確認の対象とする地位が確認されることが、被告との間の法律上の紛争の解決に必要かつ適切であるとはいえない。 争点2(無効確認の訴えの適法性)について (原告Aらの主張)原告Aらの地位確認の訴えは、廃止された種子法に基づく権利ないし法律関係が存することを前提にその地位の確認を求めるものであるところ、その地位が保障されるためには、国会で採決されて成立した種子法廃止法を違憲無効とすることにより、廃止された種子法を復活・回復させ、種子法に基づ く原告Aらそれぞれの地位を回復させる必要がある。したがって、原告Aら は種子法廃止法が無効であることについて確認する必要があるから、確認の利益は肯定される。 (被告の主張)原告Aらが侵害されている ぞれの地位を回復させる必要がある。したがって、原告Aら は種子法廃止法が無効であることについて確認する必要があるから、確認の利益は肯定される。 (被告の主張)原告Aらが侵害されているとして主張する各権利は具体的権利として保障されているものではなく、それら権利に対する危険又は不安というものも、 一般的抽象的な危惧感にすぎない。また、原告Aらは、種子法廃止法が違憲無効であることの確認を求めることが、原告Aらの主張する被告との間の法律上の紛争の解決のために、どのような理由から必要かつ適切であるのかについて、何ら具体的に主張をしていない。原告Aらは、それぞれ、種子法廃止法によって自らの権利が侵害されている旨主張しているのであり、そのよ うな場合、法令等の無効の確認を求めるよりも、国家賠償請求等を行う方が紛争の解決につながるから、種子法廃止法無効確認の訴えが、紛争の解決に必要かつ適切であるということもできない。 争点3(種子法廃止法の違憲性)について(原告らの主張) ア種子法の目的 食糧増産・国民への安定供給の目的種子法は、昭和27年、我が国における戦後の食糧増産という国家的要請を背景に、米麦等の主要食糧の増産、国内の自給率確保による国民への食糧の安定供給の確保を目的として、優良な種子を安価で農家に提 供することが必要であり、国又は地方公共団体に種子生産に公的な役割(指導・助成)を担わせるために制定されたものであり、同法1条によりその趣旨が明らかにされている。サンフランシスコ講和条約が同年4月28日に発効し、我が国の主権が回復した3日後に種子法が成立したことからも、我が国において食料への権利を保障していくことが国の基 盤であるとして制定されたといえる。 和条約が同年4月28日に発効し、我が国の主権が回復した3日後に種子法が成立したことからも、我が国において食料への権利を保障していくことが国の基 盤であるとして制定されたといえる。 種子法は、その後複数回改正されたが、それらの改正審議においても、食糧増産及び国民への食糧の安定供給という目的については揺らいでいない。 食の安全に係る目的昭和28年の種子法改正により、ほ場審査に加えて生産物審査も実施 されることとなったことで、安全性に問題のあるほ場や生産物については排除されることとなり、結果的に、種子法に基づき種子の安全性、ひいては食の安全性についても保障されることとなった。 また、都道府県が原原種及び原種の生産施設を整備し、かつ品種適性試験を行うことにより、都道府県が種子生産において更なる厳格な管理 を行い、完全に保証された優良な種子の確保が図られることとなった。 種子法の上記改正によって、同法の目的は食糧増産及び国民全体に対する安全な食料の安定供給となり、更には種子の安全性確保も含まれることになった。種子法で定めるそれぞれの審査や奨励品種制度の選定を通じ、種の食味、品質を検討するとともに安全性もまた検討されるのは 当然のことである。 我が国の食品安全確保のための基本理念を定めた食品安全基本法が、食品の安全性の確保を最優先として(同法3条)、国が食品の安全性の確保に関する施策を総合的に策定、実施する責務を有し、かつ、地方公共団体も国との適切な役割分担を踏まえ、地方自治体の区域の自然的経済 的社会的諸条件に応じた施策を策定、実施する義務を負うとしている(同法6条、7条)ことからすると、都道府県が実施する種子法に基づくほ場審査、 な役割分担を踏まえ、地方自治体の区域の自然的経済 的社会的諸条件に応じた施策を策定、実施する義務を負うとしている(同法6条、7条)ことからすると、都道府県が実施する種子法に基づくほ場審査、生産物審査等において、種子の安全性に関する点については最優先で審査されるべきである。このことからすると、種子法における目的に種子の安全性、ひいては食の安全性も当然に組み込まれたといえる。 わが国の農業全体が大規模な民間事業者に委ねられた場合、農業市場に おいて、グローバル企業が生産する遺伝子組み換え食品やゲノム編集食品が席巻する可能性が高く、これらの種子や農作物については食の安全性について重きが置かれていないため、種子法廃止法の施行に伴い、安全性の審査等はおろそかになる。 イ種子法廃止法が原告Aらの有する憲法上の権利に違反すること 食料への権利等について食料への権利は、誰でも、いつでも、どこに住んでいても、人が生まれながらに持つ、人が心も体も健康で生きていくために必要な食料を自らの手で得られる権利である。食料への権利は、世界人権宣言25条並びに経済的、社会的及び文化的権利に関する国際規約(以下「国際人権 A規約」という。)11条1項に規定され、社会権規約委員会の一般的意見第12号(「十分な食料に対する権利の中核的な内容は、個人の食物的ニーズを充足するのに十分な量及び質であり、有害な物質が含まれず、かつ、ある一定の文化の中で受容されうる食料が利用できること、持続可能であり、他の人権の享受を害しない方法で、そのような食料にアク セスできることを含意する」)において具体化されている。 憲法には、食料について明言する規定はないが、憲法前文が「恐怖と欠乏から免かれ、平和のうちに生存す しない方法で、そのような食料にアク セスできることを含意する」)において具体化されている。 憲法には、食料について明言する規定はないが、憲法前文が「恐怖と欠乏から免かれ、平和のうちに生存する権利を有することを確認」し、憲法25条1項の「健康で文化的な最低限度の生活を営む権利」を定め、同条2項に「国は、すべての生活部面について、社会福祉、社会保障及 び公衆衛生の向上及び増進に努めなければならない」としていることから、食料は、生命、健康、文化を維持する上で必要不可欠なものとして、生存権(憲法25条)さらには幸福追求権(憲法13条)に当然に包含されている。基本法2条1項が「食料は、人間の生命の維持に欠くことができないものであり、かつ、健康で充実した生活の基礎として重要な ものである」と定めていること、食育基本法が前文第2項に「子どもた ちに対する食育は、心身の成長及び人格の形成に大きな影響を及ぼし、生涯にわたって健全な心と身体を培い豊かな人間性をはぐくんでいく基礎となる」と定めていることは、このような食料への権利の憲法上の位置付けに由来するものと理解される。日本の食料自給率が恒常的に低いことに加え、最近の新型コロナウイルス感染拡大による各国の農作物及 び農業生産資材の輸出制限、戦争による小麦・化学肥料のひっ迫、新興国の食糧需要の急増等、世界は現在有事にあって、貿易が著しく不安定化しており、構造的な問題に由来する貿易の不安定は将来にも継続するものと考えられ、日本の飢餓のリスクが高まっていることからすると、食料への権利を保護する必要性は高い。 食糧の増産とは、十分な量の食料を確保することにほかならず、優良な種子を確保することは、食料の量のみならず質を確保する上で必要不可欠である。種子法は十分な量と質の を保護する必要性は高い。 食糧の増産とは、十分な量の食料を確保することにほかならず、優良な種子を確保することは、食料の量のみならず質を確保する上で必要不可欠である。種子法は十分な量と質の食料への権利を、米、麦、大豆の主要農作物について優良な種子を安価に供給する制度として保障したものである。 このように、種子法は、食糧増産という国家的要請や、食糧安全保障の重要性という観点から、食料の質、量を確保すべく生産者を支援する法制度であり、食料の質及び量は、人の生命、健康、文化を維持する上で必要不可欠なものであることから、憲法上の生存権(憲法25条)及び幸福追求権(憲法13条)の基盤である食料への権利を保障する法律 であると理解すべきである。そして、食料への権利が生存権(憲法25条)及び幸福追求権(憲法13条)の保障に含まれるものとすると、良質な主要農作物の種子の安定的供給を図るための制度を創設した種子法は、食料への権利を具現化するための制度を定める法律である。 また、生産者の観点からみて、十分な食料を生産する農業者の権利は、 憲法22条の職業選択の自由及び営業の自由並びに憲法29条の財産権 としても保障されるべきものである。この点につき、国際社会では小規模農家の権利、小規模農家の種子の権利についても人権として認められている。 種子法廃止法が憲法上保障される上記権利を侵害すること種子法が廃止され、公共による種子の管理を廃止し、民間に開放する ことによって、①種子の生産を続けられなくなる採種農家の上記の憲法上の権利が侵害されるとともに、②安定的な種子提供を受けられなくなる一般農家の上記の憲法上の権利が侵害され、また、③十分な食料への個人のアクセスが制約され、食料の安全性が害さ る採種農家の上記の憲法上の権利が侵害されるとともに、②安定的な種子提供を受けられなくなる一般農家の上記の憲法上の権利が侵害され、また、③十分な食料への個人のアクセスが制約され、食料の安全性が害される蓋然性があるから、一般消費者の上記の憲法上の権利が侵害される。 a 原告Aの権利侵害原告Aは、自身の経営する本件ほ場について山形県から指定種子生産ほ場として指定され続けており、当該指定種子生産ほ場で種子を生産し、農家・農協に種子を安定的に供給し、経営を成り立たせてきた。 このように、指定種子生産ほ場として指定され続けてきた地位は、憲 法25条及び憲法13条のみならず、憲法22条の職業選択の自由及び営業の自由並びに憲法29条の財産権として保障されるべきである。 種子法廃止法は、原告Aの本件ほ場につき、種子法に基づいて指定種子生産ほ場として指定される地位を奪うものである。 また、原告Aは、良好な主要農作物の種子を提供することを業務と して続けていることに自らの役割や矜持を感じており、手間暇をかけて原種から種を栽培し続けるということは、採種農家である原告Aにとって人格権的利益であり、法的保護に値するところ、種子法廃止法により、原告Aの上記の人格権及び自己決定権も侵害されたものである。 b 原告Bの権利侵害 種子法が廃止され、農業競争力強化支援法8条4号に基づき、地方公共団体が有する種苗の生産に関する知見が民間事業者に提供されると、今後、民間事業者が日本国内向けに種を開発し品種登録して市場を独占すること、あるいは、地方公共団体が種子生産を行わなくなり、地方公共団体が権利を持つ登録品種を民間事業者に委譲することが予 想される。そして、民間事業者が自己の登録品種について、 して市場を独占すること、あるいは、地方公共団体が種子生産を行わなくなり、地方公共団体が権利を持つ登録品種を民間事業者に委譲することが予 想される。そして、民間事業者が自己の登録品種について、種子の価格や自家増殖の許諾料を高額にする可能性がある。この結果、わが国の一般農家の経営が成り立たなくなり、農業者(一般農家)の食料への権利が侵害される。 原告Bのような一般農家が、自由に天然資源である良好な品質の種 子を安価で安定的に入手し、これを使って安全安心な米などの農作物を栽培、収穫し、自ら消費するとともに一般消費者である顧客に販売することは、憲法25条の保障する食料への権利として認められるところである。 種子法廃止法によって、栃木県では原原種及び原種の生産について 県の管理、審査が無くなり、単なる助言、指導者の役割にとどまることになってしまったことにより、原告Bが安定的に品質の良い種子の入手ができなくなること、そして、種子価格の上昇が生じており今後も価格の上昇が見込まれることは、原告Bの一般農家としての上記権利を侵害するものである。 c 原告Cの権利侵害種子法廃止法は、消費者が、種子法に基づいて生産された奨励品種である種子を用いて栽培された主要農作物の供給を受けることができなくすることにより、安全で良好な食料の提供を安定的に受けるという消費者の食料への権利を擁護する制度を喪失させた。すなわち、上 記bのとおり、種子法の廃止の影響を受けて有機栽培の農家の経営が 成り立たなくなり、従来と同等の品質・安全性を有する作物の生産が困難となるので、供給を受ける消費者においても食料への権利が侵害されることになる。 したがって、種子法廃止法は、消費者の一人である原告Cの食料へ なり、従来と同等の品質・安全性を有する作物の生産が困難となるので、供給を受ける消費者においても食料への権利が侵害されることになる。 したがって、種子法廃止法は、消費者の一人である原告Cの食料への権利を侵害したものである。 ウ種子法廃止法による原告Aらの憲法上の権利の侵害は正当化されないこと 厳格な違憲審査基準によって判断されるべきこと種子法の枠組みによる主要農作物の優良な種子の確保は、国民の生命に対する権利に直結するものであって、主要農作物種子制度が事業者の 種子生産に一定の規制を課していたのは、国民の生命及び健康を保障するために他ならない。このようないわゆる消極目的規制については厳格な違憲審査基準によるべきであるところ、種子法廃止法は、国民の生命や健康を犠牲にして企業の利潤追求を優先させるものであり、憲法上許されない。 また、社会権など、内容の形成が法律に委ねられた部分がある人権についても、当該人権の内容が制度として具体化された後は、当該制度の後退については人権制限の法理が適用される。すなわち、当該人権を制限する正当な理由については、人権の総則規定である憲法13条の公共の福祉に反しない限り最大限尊重されなければならないとの立場から確 認される必要があるところ、種子法は基本的人権である食料への権利の内容を構成するものであり、その廃止は人権の制限に該当する。国連人権高等弁務官事務所が、後退措置を正当化するためには、国家は全ての選択肢を注意深く検討し、影響を評価し、利用可能な資源を十分に最大限に活用した後に措置を講じたことを証明しなければならないとの見解 を示していることからすると、種子法廃止法の違憲性の判断に当たって は、立法目的を達成するのに他の手段 資源を十分に最大限に活用した後に措置を講じたことを証明しなければならないとの見解 を示していることからすると、種子法廃止法の違憲性の判断に当たって は、立法目的を達成するのに他の手段が存在しなかったかについても審査する、厳格な審査基準が用いられるべきである。 本件において立法の裁量を尊重するべきではないこと種子法廃止法は、以下のとおり、専門家の意見及び利害関係者の意見を十分に聴取することなく法案として国会に提出された上に、国会の審 議においても、客観的裏付けとなる資料も提出されないまま、国会が機能不全(審議不能)に陥った状態で採決されている。立法に際して基礎資料を把握し検討することは、国会が立法府としての適切な判断を行いその権能を行使する上で欠くべからざる前提条件であるところ、政府が、審議過程で強い利害関係を有する農家や消費者の意見を無視し、また審 議過程で再三にわたって求められた資料も提出しなかったことは、国会の立法行為に対する明確な妨害・阻害行為であったといわざるを得ない。 したがって、種子法廃止法の憲法適合性を判断するに際し、司法府が立法府の裁量を尊重する前提は存在しておらず、三権分立に基づく民主的政治過程の保障という見地からも、司法府による積極的な審査が必要不 可欠である。 a 種子法廃止法案の成立経過において食料・農業・農村審議会に諮問しなかった瑕疵主要農作物の優良な種子の生産及び普及を促進することを目的とする種子法は、基本法の掲げる具体的施策である、良質な食料の安定的 供給(同法2条1項)の基盤を構成するとともに、同法の政策の実現に欠かすことのできない同法の根幹をなす重要な法律であった。仮に種子法を廃止するのであれば、基本法40条1項の「この法律 安定的 供給(同法2条1項)の基盤を構成するとともに、同法の政策の実現に欠かすことのできない同法の根幹をなす重要な法律であった。仮に種子法を廃止するのであれば、基本法40条1項の「この法律の施行に関する重要事項」として審議会に諮問されるべきであったが、種子法廃止法案は審議会には諮問・付議されず、専ら規制改革会議が主導 し、審議会委員に知らせることすらせずに国会に法案として提出され たものである。したがって、種子法廃止法案は、基本法が位置付ける食料・農業・公共政策の専門家や農業従事者及び消費者の立場等による専門的な知見の裏付けのないままに国会に提出されたもので、国際競争戦略・企業戦略の立場から企業の経済的利益のみを優先して策定されたものであり、国の農業政策の基本を無視している。 b 限られた審議時間種子法が主要農作物の種子の供給の根幹をなす法律であるにもかかわらず、種子法廃止法案は、衆議院参議院合わせて12時間(うち2時間は参議院における参考人質疑)という極めて限られた審議時間で審議が打ち切られ、採決された。その結果、審議過程において、立法 事実が明らかにされず、考慮すべき事項が考慮されないという事態がもたらされた。 c 立法事実の不存在・立法事実の基礎となる資料の不提出政府は、種子法の廃止により、コスト削減による種子価格の引下げが図られることを立法理由として挙げたが、水稲の資料のみを提出し、 大豆・麦については、議員から再三提出の要求があったにもかかわらず、上記のとおり資料提出に応じなかった。議員による国会審議に必要な資料の要求は、議院の国政調査権を背景にしたものであって、国会がその機能を発揮する上で重要なものであるにもかかわらず、立法事実をめぐる国会の審議を阻害 提出に応じなかった。議員による国会審議に必要な資料の要求は、議院の国政調査権を背景にしたものであって、国会がその機能を発揮する上で重要なものであるにもかかわらず、立法事実をめぐる国会の審議を阻害・妨害したものであり、立法過程の重 大な瑕疵というべきである。 政府は、種子法廃止法案の提案理由として、民間企業の開発した種子は奨励品種の指定を受けにくいと説明したが、国会での審議を通して、民間が開発した種子が奨励品種となりにくいとする客観的裏付け(公的機関開発の種子及び民間開発の種子がそれぞれどれだけあり、 それぞれどれだけが奨励品種の指定を受けているのか等)を提出せず、 種子法が民間企業の参入を阻害しているという立法事実について客観的根拠が示されることはなかった。 また、審議の過程では、議員から、種子法が種子事業への民間企業の参入を阻害しているとしても、奨励品種の在り方を見直せばよいのであり、種子法自体を廃止する理由にはならない旨の指摘が繰り返し なされた。しかし、奨励品種制度の見直しに止まらず、種子法そのものを廃止しなければならない理由については示されることがなかった。 d 採決の瑕疵種子法という戦後日本の農政の主要な法律の一つを突然廃止することについては、農政に通じている議員(与党議員を含む。)が大いに懸 念を有していたのが実情である。政府は、都道府県によるほ場審査の継続、種子の生産・普及事業に必要な財政的裏付けの確保につき繰り返し述べ、奨励品種の条項を除けば、従前どおり都道府県の種子の生産・普及事業が継続されるものと国会議員を誤信させて種子法廃止法を可決・成立させたものであるから、その採決には瑕疵がある。 種子法の廃止による人権制限は正当化されないこと種子法廃止 生産・普及事業が継続されるものと国会議員を誤信させて種子法廃止法を可決・成立させたものであるから、その採決には瑕疵がある。 種子法の廃止による人権制限は正当化されないこと種子法廃止法の目的は、種子事業への民間企業の参入を促して市場化を図るというものである。被告は、稲の奨励品種に指定されている品種が、公的機関が開発した種子に限られているという事実を取り上げるとともに、都道府県の種子開発・供給体制を活かすとしているのであるか ら、上記目的のためには奨励品種に関わる制度の見直しで十分であった。 都道府県によるほ場審査等の種子の生産・普及制度も含めて種子法全体を廃止するのは立法目的から逸脱している。種子法廃止法は、立法目的と無関係に食料への権利を制限したものであり、目的・手段審査のいかなる審査基準によっても正当化される余地はない。 (被告の主張) ア種子法廃止法が憲法上の権利に違反しないこと憲法25条又は憲法13条が原告らの主張する食料への権利を保障しているとの解釈は一般的なものとはいえない。また、原告らの主張する「十分な食料を生産する農業者の権利」が憲法22条の職業選択の自由及び営業の自由並びに憲法29条の財産権として保障されるべきであるとの根 拠は明らかではない。 種子法は、戦後の食糧増産という国家的要請に基づき、都道府県に対しては優良な品種の決定に必要な試験の実施(同法8条)、決定された優良な品種についての原種及び原原種の生産(同法7条)、指定種子生産ほ場の指定(同法3条1項)、ほ場及び生産物の審査(同法4条)等を義務付け、農 林水産大臣が上記各審査の基準等を定めるものとしていたが、主要農作物の生産者や消費者に何らかの権利を保障するものではなかった。 同法3条1項)、ほ場及び生産物の審査(同法4条)等を義務付け、農 林水産大臣が上記各審査の基準等を定めるものとしていたが、主要農作物の生産者や消費者に何らかの権利を保障するものではなかった。また、食の安全に関しては、食品衛生法等の他の関連法制度で担保されるものであり、種子法が目的とするものではないから、同法が食の安全に関する何らかの権利を一般消費者に保障していたとみることはできない。 イ種子法廃止法の審議過程の瑕疵として原告らが主張する事実により種子法廃止法が違憲となるものではないこと立法時の審議過程において原告らが主張するような事実がある場合に、かかる審議過程を経て成立した法が厳格な違憲審査基準に服することになるとの原告らの主張は、独自の見解にすぎない。 そもそも、原告らが違憲である旨主張するのは種子法自体ではなく種子法廃止法であるところ、同法の目的は、種子法により一律に全ての都道府県に対し義務付けを行うという硬直的な態度を改め、都道府県の力に加えて、民間事業者の力も活かした種子の供給体制を構築し、多様な需要に応じた種子が供給される環境を整備することなのであるから、消極目的と呼 べるものではない。したがって、消極目的規制について用いられる違憲審 査基準が適用されるべきである旨の原告らの主張には理由がない。 いずれにしても、そもそも、原告らが主張する食料への権利は憲法上又は法律上保障された権利ないし利益とはいえないから、原告らの上記主張は前提を欠くものである。 争点4(国賠法上の違法性)について (原告らの主張)種子法は、憲法に根拠を置く法律であり、本件の原告らはそれぞれ採種農家、一般農家及び一般消費者に分けられ、種子法廃止 争点4(国賠法上の違法性)について (原告らの主張)種子法は、憲法に根拠を置く法律であり、本件の原告らはそれぞれ採種農家、一般農家及び一般消費者に分けられ、種子法廃止法によって、天然資源である種子を使って栽培された安全安心な農作物の供給を受け消費するという憲法上の権利、都道府県の管理の下、指定種子生産ほ場における厳格な管 理によって種子生産を行うことができる権利及び指定種子生産ほ場として指定される地位という財産権等がそれぞれ各立場に応じて侵害されている。 国会が正当な理由なく種子法を廃止したことにより、原告らの憲法上の権利が侵害され損害が生じており、また、原告らそれぞれの権利侵害についてその実態を全く考慮せず、異例の短時間の審議で、かつ、十分な検討もなさ れないまま種子法廃止法を成立させたことには違法性があり、上記の権利侵害又は違法行為によって、原告らは精神的苦痛を負っている。 したがって、原告らそれぞれの精神的苦痛に対する賠償として、国賠法1条1項に基づき、慰謝料各1万円の支払を求める。 (被告の主張) 国会議員の立法行為又は立法不作為については、仮に、当該立法行為又は立法不作為が違憲ないし違法と評価されるものであっても、原則として国民全体に対する政治的責任を負うにとどまるものであり、その立法行為又は立法不作為が個別の国民に対する職務上の法的義務に違背したとして国賠法1条1項の適用上違法となるのは極めて例外的な場合に限られ、当該立法内容 又は立法不作為が憲法上保障されている国民の権利を違法に侵害することが 明白な場合や、国民に憲法上保障されている権利行使の機会を確保するために所要の立法措置を執ることが必要不可欠であり、それが明白である場合などに該当する ている国民の権利を違法に侵害することが 明白な場合や、国民に憲法上保障されている権利行使の機会を確保するために所要の立法措置を執ることが必要不可欠であり、それが明白である場合などに該当することが必要であるというべきである。 原告らが侵害されていると主張する上記各権利は、憲法上又は法律上保障されているとはいえないから、種子法廃止法によって種子法が廃止されたこ とにより原告らの権利が違法に侵害されたということはできないし、当然に、それが明白であるなどということもできないから、同法の立法が国賠法上違法であるという余地はない。 第3 当裁判所の判断 1 争点1-1(原告Aの地位確認の訴えの適法性)について 原告Aの地位確認の訴えの法的性質原告Aの地位確認の訴えは、本件ほ場が種子法3条所定の指定種子生産ほ場として都道府県によって指定される地位にあることの確認を求めるものであるところ、同訴えは、種子法廃止法が違憲無効であることを前提に、同地位が種子法に基づく公法上の地位としてなお存在するとしてその確認を求め るものであるから、行政事件訴訟法4条所定の当事者訴訟のうち公法上の法律関係に関する確認の訴えと解される。 確認の利益についてア種子法は、主要農作物の優良な種子の生産及び普及を促進するため、種子の生産についてほ場審査その他の措置を行うことを目的とし(同法1条)、 都道府県において、ほ場の指定(同法3条)、ほ場審査及び生産物審査(同法4条)、ほ場審査証明書又は生産物審査証明書の交付(同法5条)、勧告、助言及び指導(同法6条)、原種及び原原種の生産(同法7条)、優良な品種を決定するための試験(同法8条)をすることを規定するものであるから、その経営するほ場について同法3条1項の指定を受ける者 告、助言及び指導(同法6条)、原種及び原原種の生産(同法7条)、優良な品種を決定するための試験(同法8条)をすることを規定するものであるから、その経営するほ場について同法3条1項の指定を受ける者と都道府県 との間には、指定種子生産ほ場としての指定をめぐり、種子法に基づく法 律関係が存在するものといえる。 イそこで、確認の利益について検討するに、種子法3条により指定種子生産ほ場として指定されるには、種子生産ほ場の性質上、採種に適した場所に一定の広さの土地を所有等していることが前提となる上、指定種子生産ほ場として指定されたほ場の経営者は当該ほ場についてほ場審査を受けな ければならず(同法4条1項)、当該ほ場において生産された主要農作物の種子について生産物審査を受けなければならない(同条2項)ことからすると、採種につき、ほ場審査や生産物審査に対応することができる程度の専門的な知識及び技術や管理能力を有していることが必要となると解される。主要農作物種子法施行規則1条において、種子法所定のほ場の指定を 受けるに当たっては毎年ほ場申請をすることが求められているところ、同施行規則1条所定の指定申請書書式(別紙3-2)においてほ場の所在地や面積、主要農作物の採種に関する経験等に係る記載事項があることは、同申請において判断される種子法3条による指定種子生産ほ場としての適格性が上記のようなものであったことを裏付けるものである。 前提事実ア、証拠(甲32、原告A本人)及び弁論の全趣旨によれば、本件ほ場は、昭和30年から種子法廃止法の施行まで60年以上にわたり種子法3条所定の指定種子生産ほ場として指定されてきたこと、原告Aが同人の父から同ほ場を引き継いで以降45年以上にわたり採種農家を営んできたことが認められ、原告A 廃止法の施行まで60年以上にわたり種子法3条所定の指定種子生産ほ場として指定されてきたこと、原告Aが同人の父から同ほ場を引き継いで以降45年以上にわたり採種農家を営んできたことが認められ、原告A又は原告Aの所有する本件ほ場は、指定 種子生産者又は指定種子生産ほ場としての適格性を満たしていたものと認められるから、同適格性を欠くに至った等の事情がない限り、種子法適用下において種子法3条所定の指定がされた蓋然性が高いといえるところ、本件全証拠によっても上記のような事情は認められない。そうすると、種子法が廃止されていなければ、原告Aの所有する本件ほ場については、 原告Aにおいて同法3条2項に基づくほ場指定の申請をすれば、指定種子 生産ほ場としての指定がされていた蓋然性が高いというべきである。 そして、原告Aにおいて、種子法廃止法が違憲無効であることを前提に種子法に基づく上記地位を有することが被告との間で確認された場合には、被告に対し、種子法という法律が存在することを前提とした対応(財政的措置等を含む。)をする義務を生じさせることになるから、原告Aの地 位確認の訴えは、上記地位の存否に関する法律上の紛争を解決するために有効適切な手段であると解するのが相当である。また、種子法廃止法の施行以降、原告Aは種子法に基づく公法上の地位を喪失しているから、原告Aには現実かつ具体的な危険又は不安が認められるというべきである。 以上によれば、原告Aは、所有する本件ほ場が種子法3条所定の指定種 子生産ほ場として都道府県によって指定される地位にあることの確認を求める利益を有するものと認めるのが相当である。 ウこれに対し、被告は、原告Aが本件ほ場について山形県から山形県種子条例に基づく指定種子生産ほ場としての指定を受けていること 地位にあることの確認を求める利益を有するものと認めるのが相当である。 ウこれに対し、被告は、原告Aが本件ほ場について山形県から山形県種子条例に基づく指定種子生産ほ場としての指定を受けていることから、確認の利益を肯定するほどの現実かつ具体的な危険又は不安はない旨主張する が、法律に基づく地位と条例に基づく地位とを同視することはできず、また、本件全証拠によっても、種子法廃止法施行後の被告及び都道府県における種子の生産・普及に必要な財政的措置等が同法施行前と同程度に保障されているとは認められないから、被告の上記主張を採用することはできない。 小括したがって、原告Aの地位確認の訴えは、確認の利益が認められる適法なものである。 2 争点1-2(原告Bの地位確認の訴えの適法性)について原告Bの地位確認の訴えは、種子法に定められた「ほ場審査その他の措置」 (同法1条)を受けて生産された種子を用いて主要農作物を栽培できる地位 にあることの確認を求めるものであるところ、同訴えも、原告Aの地位確認の訴えと同様、行政事件訴訟法4条所定の当事者訴訟のうち公法上の法律関係に関する確認の訴えと解される。 ⑵ 上記1⑵で判示したとおり、種子法は、主要農作物の優良な種子の生産及び普及を促進するため、種子の生産についてほ場審査その他の措置を行うこ とを目的とし、都道府県において、ほ場の指定(同法3条)、ほ場審査及び生産物審査(同法4条)、ほ場審査証明書又は生産物審査証明書の交付(同法5条)、勧告、助言及び指導(同法6条)、原種及び原原種の生産(同法7条)、優良な品種を決定するための試験(同法8条)をすることを規定するが、種子の流通・販売について具体的に定めた規定は存在しない。このことに加え、 同法 法6条)、原種及び原原種の生産(同法7条)、優良な品種を決定するための試験(同法8条)をすることを規定するが、種子の流通・販売について具体的に定めた規定は存在しない。このことに加え、 同法3条所定のほ場の指定の対象が「譲渡の目的をもって、又は委託を受けて、主要農作物の種子を生産する者が経営するほ場」、同法4条所定のほ場審査及び生産物審査の対象が「指定種子生産者」、同法6条所定の勧告等の対象が「指定種子生産者又は指定種子生産者に主要農作物の種子の生産を委託した者」とされていることからすると、種子法に基づく公法上の法律関係は、 都道府県が同法に基づき行政行為を行う対象とされている者(ほ場の指定や審査、勧告等の対象となる者等)との間で成立し、それ以外の者との間では成立しないと解するのが相当である。そうすると、原告Bは、指定種子生産ほ場において生産された主要農作物の種子を購入等する立場の者であるから、種子法に基づく公法上の法律関係を有する者には当たらず、原告Bについて 行政事件訴訟法4条所定の「公法上の法律関係」の存在を認めることはできない。したがって、原告Bは、種子法廃止法の施行により公法上の地位を喪失したとはいえず、そのほか、原告Bに危険又は不安が生じるような権利又は法律上の地位が存在すると認めるに足りる証拠ないし事情は見当たらない。 以上によれば、原告Bは、種子法に定められた「ほ場審査その他の措置」 (同法1条)を受けて生産された種子を用いて主要農作物を栽培できる地位 にあることの確認を求める利益を有しないものというべきである。 ⑶ したがって、原告Bの地位確認の訴えは、確認の利益を欠く不適法なものである。 3 争点1-3(原告Cの地位確認の訴えの適法性)について原告Cの地位確認の訴えは、種子法に いうべきである。 ⑶ したがって、原告Bの地位確認の訴えは、確認の利益を欠く不適法なものである。 3 争点1-3(原告Cの地位確認の訴えの適法性)について原告Cの地位確認の訴えは、種子法に定められた「ほ場審査その他の措置」 (同法1条)を受けて生産された種子を用いて栽培された主要農作物の供給を受ける地位にあることの確認を求めるものであるところ、同訴えも、原告Aの地位確認の訴えと同様、行政事件訴訟法4条所定の当事者訴訟のうち公法上の法律関係に関する確認の訴えと解される。 ⑵ しかし、上記2で判示したとおり、種子法に基づく公法上の法律関係は、 都道府県が同法に基づき行政行為を行う対象とされている者(ほ場の指定や審査、勧告等の対象となる者等)との間で成立し、それ以外の者との間では成立しないと解するのが相当である。そうすると、原告Cは、指定種子生産ほ場において生産された主要農作物の種子を用いて栽培された主要農作物について供給を受ける一般消費者であり、かつ、そのような主要農作物の流通 に携わる者であるから、種子法に基づく公法上の法律関係を有する者には当たらず、原告Cについて行政事件訴訟法4条所定の「公法上の法律関係」の存在を認めることはできない。したがって、原告Cは、種子法廃止法の施行により公法上の地位を喪失したとはいえず、そのほか、原告Cに危険又は不安が生じるような権利又は法律上の地位が存在すると認めるに足りる証拠な いし事情は見当たらない。 以上によれば、原告Cは、種子法に定められた「ほ場審査その他の措置」(同法1条)を受けて生産された種子を用いて栽培された主要農作物の供給を受ける地位にあることの確認を求める利益を有しないものというべきである。 ⑶ したがって、原告Cの地位確認の訴えは、確認の利 1条)を受けて生産された種子を用いて栽培された主要農作物の供給を受ける地位にあることの確認を求める利益を有しないものというべきである。 ⑶ したがって、原告Cの地位確認の訴えは、確認の利益を欠く不適法なもの である。 4 争点2(無効確認の訴えの適法性)について 確認の訴えは、即時確定の利益がある場合、すなわち、現に原告の有する権利又は法律上の地位に危険又は不安が存在し、これを除去するため被告に対し確認判決を得ることが必要かつ適切な場合に限り、許されるものである。 上記2及び3で判示したとおり、原告B及び原告Cは種子法に基づく公法上の法律関係を有さず、種子法廃止法により危険又は不安が生じるような権利又は法律上の地位が存在すると認めるに足りる証拠ないし事情は見当たらない。したがって、原告B及び原告Cによる種子法廃止法無効確認の訴えについては、即時確定の利益があるとはいえず、いずれも不適法である。 上記1で判示したとおり、原告Aは種子法に基づく公法上の法律関係を有する者である。しかしながら、確認の訴えは、他により適切な訴えによってその目的を達成することができる場合には、確認の利益を欠き不適法であるというべきところ、原告Aにとっては地位確認を求める訴え(請求1項)の方がより適切な訴えであるといえるから、原告Aによる種子法廃止法無効 確認の訴えは、確認の利益を欠き不適法である。 5 争点3(種子法廃止法の違憲性)について原告Aの地位確認の訴えは、種子法廃止法が違憲無効であることを前提としていることから、同法の違憲性につき、以下、検討する。 認定事実 前提事実、後掲各証拠及び弁論の全趣旨によれば、次の事実が認められる。 ア種子法制定までの経緯 明治から第二次世界大 ことから、同法の違憲性につき、以下、検討する。 認定事実 前提事実、後掲各証拠及び弁論の全趣旨によれば、次の事実が認められる。 ア種子法制定までの経緯 明治から第二次世界大戦前までの種子をめぐる状況国の施策に基づく本格的な種子対策は、明治24年に農務局仮試験場が設けられ、品種試験が行われたことから始まり、その後、各府県にも 試験場が設けられ、優良種を選定し、積極的な普及奨励が行われた。1 900年前後には、各試験場に種苗配布規程等が整備され、採種田も設けられるようになった。 大正時代には、国及び府県の試験場が、純系分離法による本格的な育種試験を行うようになった。農商務省は組織的な米麦品種改良事業を開始し、国立農事試験場等で純系育種と交配育種が行われ、育成系統は道 府県に補助金を交付して適否試験が行われるようになった。また、原種の管理、増殖・配布及び採種ほの整備も奨励の対象となり、補助金が交付された。 昭和に入ると、交雑育種法が本格化し、国立農事試験場を全体の中枢として、全国を気象・土壌条件等によっていくつかの生態区に分け、指 定試験地を設置して国が交配した雑種後代の選抜・固定・適応試験と優良種の決定を行うとともに、道府県の試験場は、優良種の適否試験を行って奨励品種の決定と原種の増殖普及に当たった。 (乙2) 第二次世界大戦開始後の種子をめぐる状況 第二次世界大戦開始後、昭和17年に食糧管理法が施行され、稲麦の種子も統制対象となると、種子の移動更新はほとんど停止されるに至った。第二次世界大戦後も、行政機構の改廃、国庫助成金の打切り等によって、種子の増殖作業はわずかに地方公共機関の単独事業として行われるにすぎないこととなり、その結果、種 更新はほとんど停止されるに至った。第二次世界大戦後も、行政機構の改廃、国庫助成金の打切り等によって、種子の増殖作業はわずかに地方公共機関の単独事業として行われるにすぎないこととなり、その結果、種子をめぐる状況は、品種の混こ う、品質の低下を来すなど悪化し、その一方で、我が国経済の自立という方針の下で食糧増産が基幹的施策となり、農業生産の恒久的かつ基礎的問題として、種子対策の重要性が再確認されるようになった。(乙2) 種子法の制定等昭和23年制定の食糧増産確保臨時措置法に基づく農業計画の一環と して種子対策の検討が始まり、昭和26年度予算として稲麦の原・採種 ほの設置等に要する経費が計上され、昭和27年度には都道府県による種子生産ほ場の審査、種子計画の樹立・生産普及の指導に必要な経費として採種管理事業費が加えられ、種子対策事業が都道府県を中心に運営される基礎が築かれた。昭和27年1月に主要農作物種子対策制度要綱が閣議決定され、同年3月31日、種子法案が国会に提出された。 種子法案提出議員は、同年4月2日に開かれた衆議院農林委員会において、種子法の趣旨につき、我が国の自立の基礎条件は、米麦等主要食糧の増産をはかり、国内においてその自給率を高めることにあること、米麦の増産のためには、優良な種子を確保し、これを普及することが根本的な方法であること、米麦の種子については、需要者である農家が自 発的に優良な種子の導入を行っていないことが実情であること、優良な種子を生産するためには、特別の技術と管理が必要とされるにもかかわらず、その収量は一般米麦に比して低位にありその種子は高価なものとなるから、国又は地方公共団体がその生産と普及について特別の指導ないし助成を行う必要が生じること、優良な 管理が必要とされるにもかかわらず、その収量は一般米麦に比して低位にありその種子は高価なものとなるから、国又は地方公共団体がその生産と普及について特別の指導ないし助成を行う必要が生じること、優良な種子を確保するには、種子の 現品検査のみでは実効を期し難く、ほ場において栽培中の農作物につき出穂、穂ぞろい、成熟状況等について審査を行い、優良な種子としての適否をあらかじめ判定する制度を確立し、需要者である農家がほ場において生産された種子を導入し得るような態勢を整えることが肝要であること、ほ場経営者に対しては勧告、助言及び指導を行い、当該ほ場産の 種子用米穀については食糧管理法に基づく供出の免除措置を執ることを考慮し、併せて財政的援助を行って初めて優良な種子の生産確保並びに普及の効果を期待し得るのであり、種子法案は、かかる優良な種子の生産、普及に関する国、都道府県の指導助成の基本方針を確立し、制度の恒久化を図るものである旨説明した。 種子法は、昭和27年法律第131号として成立し、昭和27年5月 1日に公布された。また、同法は、昭和28年3月20日、対象となる主要農作物に大豆を追加し、ほ場審査に引き続いて生産物審査を行う等の改正がされた。 (甲2の1、乙2)イ種子法のその後の改正 昭和58年に設置された臨時行政改革推進審議会においては、国全体の技術革新と社会変化の動きに対応した民間活力の発揮・推進方策の一環として各種の規制緩和方策が打ち出され、農業の分野では種子が取り上げられた。このため、総務庁行政監察局は、昭和60年2月から5月にかけて、種苗業を対象として、規制行政に関する調査を行い、同月に臨時行政改革 推進審議会に報告書を提出した。同審議会は、規制緩和分科会による農林水産 務庁行政監察局は、昭和60年2月から5月にかけて、種苗業を対象として、規制行政に関する調査を行い、同月に臨時行政改革 推進審議会に報告書を提出した。同審議会は、規制緩和分科会による農林水産省のヒアリングを行った上で、同年7月22日に「行政改革の推進に関する答申」を政府に提出した。同答申においては、我が国の米麦等の品種開発、種子生産が、高度な知識、技術等の集積を国、都道府県のみが有していたことを踏まえた体系であり、種子法もこのことを前提としていた という歴史的経緯を認めつつも、結果的に民間事業者に活動の余地を与えていない体系となっていることが指摘され、具体的には、民間事業者による原原種・原種の生産とその審査体制、民間による採種ほ産種子の生産及び販売の方法と順守すべきルール等、自社開発の品種の種子を一貫生産・販売できるルートが確保されておらず、これを整備すべきである旨の提言 がされていた。政府は、同答申を受けて諸制度の改善のための検討に着手することとし、農林水産省が、新たな主要農作物種子制度の在り方について検討を開始し、主要農作物種子行政の主体である都道府県から代表12道県を選択してヒアリングを行い、また、学識経験者等の参集を得て、農作物種子の生産流通の改善に関する研究会を開催した。同研究会は、昭和 61年2月まで5回の開催を経て、種子増殖制度については、原原種、原 種の生産は今後とも都道府県が責任をもって確保し、また、ほ場審査及び生産物審査の制度は今後とも維持するのが相当とした上で、技術・知識を有している民間事業者にもその生産や流通の機会を与えるべきである旨の検討結果を提出した。農林水産省は、同検討結果を踏まえ、種子法及び種苗法の改正の検討を行い、種子法については、指定種子生産ほ場の指定 対象のう 業者にもその生産や流通の機会を与えるべきである旨の検討結果を提出した。農林水産省は、同検討結果を踏まえ、種子法及び種苗法の改正の検討を行い、種子法については、指定種子生産ほ場の指定 対象のうち、委託を受けて主要農作物の種子を生産する者のほ場につき、その委託者の限定を廃止するという内容を含む法律案要綱を作成し、同年3月27日に法案の閣議決定がされ、国会に送付された。国会における法案審議の過程では、与野党議員から、民間参入による支障(不良種子の出回り、供給の不安定化、種子価格の高騰等)やその対策の存否、国、都道 府県の種子生産等からの撤退の有無等の質疑応答がされ、それらを経て、最終的には賛成多数で採択され、同年6月10日に改正法が公布・施行された。これらの論議を踏まえ、衆参両農林水産委員会からは、法案に対し、優良な種苗の安定的供給を確保するための国及び都道府県の主導的な役割を今後も堅持しつつ、最近におけるバイオテクノロジー等による技術開 発の進展に適切に対処する旨の附帯決議が行われ、全会一致で採択された。 (乙2)ウ種子法廃止法の制定 農林水産省は、平成28年9月20日に実施された第1回未来投資会議構造改革徹底推進会合「ローカルアベノミクスの深化」会合・第2回 規制改革推進会議農業ワーキング・グループ合同会合において、生産資材価格形成の仕組みの見直し及び生産者が有利に取引できる流通・加工の業界構造の確立に係る取組に関する農業水産省へのヒアリングが行われた際に、「生産資材価格の引下げに向けて」と題する資料を提出した。 上記資料の「⑦種子(稲・麦・大豆)」と題する部分には、種子法の下、 都道府県が自県の気象・土壌条件などの特性を踏まえて自県で普及すべ き奨励品種を決定していると する資料を提出した。 上記資料の「⑦種子(稲・麦・大豆)」と題する部分には、種子法の下、 都道府県が自県の気象・土壌条件などの特性を踏まえて自県で普及すべ き奨励品種を決定しているところ、奨励品種に指定されれば、都道府県はその種子の増産や審査に公費を投入しやすくなるため、公費を投入して自ら開発した品種を優先的に奨励品種に指定している一方、民間企業が開発した品種は、都道府県が開発した品種と比べて、特に優れた形質などがないと奨励品種には指定されず、その結果、都道府県が開発した 品種は、民間企業が開発した品種よりも安く提供することが可能であり、都道府県と民間企業では競争条件が同等とはなっていないため、民間企業が稲・麦・大豆種子産業に参入しにくい状況となっている旨、民間企業が参入しにくい中においても普及が進んでいる品種もあり、国や都道府県と民間企業が平等に競争できる環境を整備する必要がある旨が記載 されている。 (乙4)平成28年10月6日に実施された、第3回未来投資会議構造改革徹底推進会合「ローカルアベノミクスの深化」会合・第4回規制改革推進会議農業ワーキング・グループ合同会合において、「総合的なTPP関連 政策大綱に基づく「生産者の所得向上につながる生産資材価格形成の仕組みの見直し」及び「生産者が有利な条件で安定取引を行うことができる流通・加工の業界構造の確立」に向けた施策の具体化の方向」と題する書面が取りまとめられた。同書面においては、関連産業の合理化・効率化等を進め、資材価格の引下げと国際競争力の強化を図るために具体 化すべき施策の一つとして、「戦略物資である種子・種苗については、国は、国家戦略・知財戦略として、民間活力を最大限に活用した開発・供給体制を構築する。そうした体制整備に資する 図るために具体 化すべき施策の一つとして、「戦略物資である種子・種苗については、国は、国家戦略・知財戦略として、民間活力を最大限に活用した開発・供給体制を構築する。そうした体制整備に資するため、地方公共団体中心のシステムで、民間の品種開発意欲を阻害している主要農作物種子法は廃止する。」旨記載されている。(乙5) 政府の農林水産業・地域の活力創造本部は「農業競争力強化プログラ ム」を策定し、種子法を廃止するための法整備を進め、政府は、平成29年2月10日、種子法廃止法案を国会に提出した。農林水産省が作成した「主要農作物種子法を廃止する法律案の概要」と題する書面には、種子法廃止法案の「背景」として、「種子生産者の技術水準の向上等により、種子の品質は安定」、「農業の戦略物資である種子については、多様 なニーズに対応するため、民間ノウハウも活用して、品種開発を強力に進める必要。しかしながら、都道府県と民間企業の競争条件は対等になっておらず、公的機関の開発品種が大宗を占めている。」、「都道府県による種子開発・供給体制を生かしつつ、民間企業との連携により種子を開発・供給することが必要」との記載がある(乙6)。 衆議院農林水産委員会において、平成29年3月23日、種子法廃止法案が議題として取り上げられ、約5時間の審議を経て、同日、種子法廃止法案は可決された。続いて、参議院農林水産委員会において、同年4月11日、種子法廃止法案が議題として取り上げられ、同日及び同月13日の2日間にわたって審議がされ、合計約7時間の審議がされた。 同月11日の審議において、議員から、麦及び大豆の資料がないことから同月12日までに提出されたいとの指摘・要望があり、同月13日の審議においても、議員から、立法事実に関 時間の審議がされた。 同月11日の審議において、議員から、麦及び大豆の資料がないことから同月12日までに提出されたいとの指摘・要望があり、同月13日の審議においても、議員から、立法事実に関わる資料の提出がないまま法案審議が続けられている旨の指摘があったが、同日、種子法廃止法案は可決された。なお、その際、参議院農林水産委員会は、政府に対し、種 子法廃止法の施行に当たり、実現に万全を期すべきことを求める項目に係る附帯決議をした。その中には、「将来にわたって主要農作物の優良な品質の種子の流通を確保するため、種苗法に基づき、主要農作物の種子の生産等について適切な基準を定め、運用すること」、「種子法の廃止に伴って都道府県の取組が後退することのないよう、都道府県がこれまで の体制を生かして主要農作物の種子の生産及び普及に取り組むに当たっ ては、その財政需要について、引き続き地方交付税措置を確保し、都道府県の財政部局も含めた周知を徹底するよう努めること」という内容が含まれていた。 国会での上記審議を経て、平成29年4月14日に種子法廃止法が成立し、同月21日に公布され、同法は平成30年4月1日に施行された。 (前提事実⑵イ、甲2の2、2の4、2の5)政府は、種子法廃止法成立後の平成29年5月9日頃、種子法廃止法に関する資料として、小麦について公的機関が育成した品種の3kg当たりの価格と民間企業が育成した品種の3kg当たりの価格とが同じである旨記載された書面を提出した。なお、大豆についての民間企業の価 格に関する資料は提出されていない。(甲2の2、2の4、2の5、2の7)農林水産事務次官は、種子法廃止法の施行に伴い、地方自治法245条の4(ただし、令和3年法律第36号による改正前のもの) 格に関する資料は提出されていない。(甲2の2、2の4、2の5、2の7)農林水産事務次官は、種子法廃止法の施行に伴い、地方自治法245条の4(ただし、令和3年法律第36号による改正前のもの)に基づく技術的助言として、都道府県は、官民の総力を挙げた種子の供給体制の 構築のため、民間事業者による稲、麦類及び大豆の種子生産への参入が進むまでの間、種子の増殖に必要な栽培技術等の種子の生産に係る知見を維持し、それを民間事業者に対して提供する役割を担うという前提も踏まえつつ、都道府県内における稲、麦類及び大豆の種子の生産や供給の状況を的確に把握し、それぞれの都道府県の実態を踏まえて必要な措 置を講じていくことが必要である旨通知した(平成29年11月15日付け「稲、麦類及び大豆の種子について(通知)」(29政統第1238号)。乙9)。 種子法廃止法が原告Aに憲法上保障されている権利を侵害したといえるか否かについて ア憲法25条の権利侵害性について 憲法25条は、1項において「すべて国民は、健康で文化的な最低限度の生活を営む権利を有する。」と規定して、いわゆる福祉国家の理念に基づき、全ての国民が健康で文化的な最低限度の生活を営み得るよう国政を運営すべきことを国の責務として宣言するとともに、2項において「国は、すべての生活部面について、社会福祉、社会保障及び公衆衛生の向上及び 増進に努めなければならない。」と規定して、同じく福祉国家の理念に基づき、社会的立法及び社会的施設の創造拡充に努力すべきことを国の責務として宣言したものであるところ、同条1項は、国が個々の国民に対して具体的・現実的に上記のような義務を有することを規定したものではなく、同条2項によって国の責務であるとされている社会的立法及び社会的 して宣言したものであるところ、同条1項は、国が個々の国民に対して具体的・現実的に上記のような義務を有することを規定したものではなく、同条2項によって国の責務であるとされている社会的立法及び社会的施 設の創造拡充により個々の国民の具体的・現実的な生活権が設定充実されてゆくものとしているものと解される(最高裁昭和23年(れ)第205号同年9月29日大法廷判決・刑集2巻10号1235頁、最高裁昭和51年(行ツ)第30号同57年7月7日大法廷判決・民集36巻7号1235頁参照)。 原告Aは、食料への権利(人が心も体も健康で生きていくために必要な食料を自らの手で得られる権利)は憲法25条の権利として認められ、種子法において規定される、都道府県の厳格な管理によって種子生産を行うことができる権利も食料への権利として憲法25条で保障される旨主張する。確かに、憲法25条1項にいう「健康で文化的な最低限度の生活を 営む権利」の実現に向けては、一定程度の衣食住の保障が必要となることは否定できないものの、上記判示のとおり、同条1項にいう「健康で文化的な最低限度の生活を営む権利」が、社会的立法等を経て個々の国民の権利として具体化されることにより具体的な権利として認められるものであることからすると、原告Aの主張する食料への権利が種子法廃止法によ って侵害されたといえるためには、同権利が種子法によって具体化されて いたといえる必要がある。 そこで検討するに、種子法は、前提事実⑵ア及び認定事実アのとおり、戦時中の政策の結果種子の品質の低下等を来したこと等により、戦後、食糧増産が国家的要請となり、その達成が基幹的施策となったことから、主要農作物の優良な種子の生産及び普及を促進するため、種子の生産に ついてほ場審査その他の の低下等を来したこと等により、戦後、食糧増産が国家的要請となり、その達成が基幹的施策となったことから、主要農作物の優良な種子の生産及び普及を促進するため、種子の生産に ついてほ場審査その他の措置を行うことを目的(同法1条)として制定されたものであり、都道府県が、生産及び普及の対象となる優良品種(奨励品種)の決定をし(同法8条)、主要農作物の原種ほ及び原原種ほの設置等により主要農作物の原種及び原原種を生産し(同法7条)、指定種子生産ほ場を指定し、当該ほ場に係るほ場審査(同法4条1項)や当該ほ 場において生産された主要農作物の種子に係る生産物審査(同条2項)を行うことを義務付けるものであって、上記2⑵で判示したとおり、都道府県と行政行為の対象者との間の法律関係について定めた規定はあるが、他方において、原告Aの主張する食料への権利に係る明文の規定はなく、また、国民を権利の享有主体として位置付けるなどの、同権利が 具体化されたと解する根拠となり得るような規定も見当たらない。 このような種子法の制定経緯、立法趣旨及び内容からすると、種子法は、国家的要請としての食糧増産を達成するために採られた政策の一環として制定されたものであり、個々の国民に対して食糧増産等に係る権利を具体化したものではないと解するのが相当である。種子法の施行及 びその運用によって食糧増産が実現し、その結果として、個々の国民の食生活が豊かになったという事実が認められるとしても、国民の受けたそのような利益は、上記政策の実施に伴う事実上のものにとどまるものと解される。 原告Aは、昭和28年の種子法改正により、ほ場審査のみならず生産 物審査も実施されることとなったことを根拠に、種子の安全性確保も種 子法の目的に含まれることになった旨主張する。 る。 原告Aは、昭和28年の種子法改正により、ほ場審査のみならず生産 物審査も実施されることとなったことを根拠に、種子の安全性確保も種 子法の目的に含まれることになった旨主張する。 しかしながら、上記で判示したとおり、種子法は国家的要請としての食糧増産を達成するために採られた政策の一環として制定されたものであるところ、平成12年基準において規定されていた生産物審査の内容(同基準2号)は、種子の調製において品種や栽培方法の異なる種 子の混同を防止するための適切な措置の有無、発芽率、異品種粒等の混入に係る各審査であり(乙7)、また、証人Fの証言によれば、実際の審査も上記基準に沿って行われていたことが認められる。そうすると、種子法所定の生産物審査の目的は、種子の純正度保全や発芽率の担保であったといえ、種子の安全性確保が含まれるものとは直ちには認め難い。 原告Aは、種子の安全性確保が種子法の目的に含まれることの根拠として食品安全基本法の条文を挙げるが、同法は種子法制定の50年以上後の平成15年に制定されたものであるから、食品安全基本法の規定が種子法の目的の根拠となると解することはできない。したがって、種子法の目的に種子の安全性確保が含まれているとはいえず、この点に関する 原告Aの主張を採用することはできない。 それを措くとしても、以上の種子法改正の経緯を踏まえても、種子法が個々の国民に対する権利を具体化したものであると解する根拠となり得る事情を認めるに足りる証拠はなく、原告Aの主張する食料への権利が種子法によって具体化された旨の原告Aの主張には理由がない。 原告Aは、世界人権宣言や国際人権A規約等において食料への権利に係る規定があること等を根拠に、種子法においても原告Aの主張する食料 て具体化された旨の原告Aの主張には理由がない。 原告Aは、世界人権宣言や国際人権A規約等において食料への権利に係る規定があること等を根拠に、種子法においても原告Aの主張する食料への権利が認められる旨主張するが、種子法の上記制定経緯、立法趣旨及び内容に鑑みると、原告Aの主張を採用することはできない。 以上より、原告Aの主張する食料への権利が種子法によって具体化さ れ、保障されているということはできないから、原告Aの憲法25条の 権利が種子法廃止法によって侵害されたということはできず、この点に関する原告Aの主張を採用することはできない。 イ憲法13条の権利侵害性について 原告Aは、種子法廃止法により国民の生命に対する憲法13条の権利が侵害される旨主張する。 憲法13条の保障する生命に対する国民の権利は、個人の生命に対し、犯罪処罰の場合を除いて国家が侵害を加えることを禁止するものであるところ、種子法に基づく都道府県による主要農作物の種子の管理が義務付けられなくなることにより、直ちに個人の生命に危害が加えられたと評価できるほどに種子の品質が低下すると認めるに足りる証拠はない。 確かに、従前、種子法に基づき、都道府県による厳格な管理がされてきたことにより種子の品質が一定以上に保たれてきたという実績は否定し難く、この点については当事者間に争いがないものであるが、それを踏まえても上記判断は左右されず、憲法13条違反をいう原告Aの主張を採用することはできない。 原告Aは、種子法廃止法により、手間暇をかけて原種から種を栽培し続けるという人格権及び自己決定権が侵害されたと主張する。 原告Aの上記主張を、種子法の定めに従い、指定種子生産ほ場が都道府県からほ場 原告Aは、種子法廃止法により、手間暇をかけて原種から種を栽培し続けるという人格権及び自己決定権が侵害されたと主張する。 原告Aの上記主張を、種子法の定めに従い、指定種子生産ほ場が都道府県からほ場審査や生産物審査を受けるなどして原種から種を栽培し続ける権利が憲法13条により保障されるとの趣旨であると解したとして も、上記アで判示したとおり、種子法は国家的要請としての食糧増産を達成するために採られた政策の一環として制定されたものであり、上記権利が同法によって保障されていたとは認められないから、同法が廃止されることによって憲法13条違反があったとはいえない。 したがって、この点に関する原告Aの上記主張を採用することはでき ない。 ウ憲法22条の権利侵害性について原告Aは、種子法廃止法により、憲法22条により保障される職業選択の自由及び営業の自由が侵害されると主張する。 種子法は、3条において指定種子生産ほ場の指定につき定めるものであるが、上記アで判示したとおり、同法は、国家的要請としての食糧増産 を達成するために採られた政策の一環として制定されたものであるから、憲法22条による職業選択の自由及び営業の自由が種子法によって保障されていたとは認められない。 また、種子法廃止法は、都道府県が種子法3条に基づき指定種子生産ほ場を指定するという制度を廃止するものであり、原告Aの採種農家として の活動そのものが制限されるわけではないから、原告Aの職業選択の自由及び営業の自由が種子法廃止法によって侵害されたということはできない。 したがって、原告Aの上記主張を採用することはできない。 エ憲法29条の権利侵害性について原告Aは、指定種子生産ほ場として指定され続けてきた地位 って侵害されたということはできない。 したがって、原告Aの上記主張を採用することはできない。 エ憲法29条の権利侵害性について原告Aは、指定種子生産ほ場として指定され続けてきた地位は、憲法2 9条の財産権として保障されており、同財産権が種子法廃止法によって侵害される旨主張する。 憲法29条所定の財産権とは、一切の財産的価値を有する権利をいうところ、種子法3条は、都道府県が指定種子生産ほ場の指定をする旨(同条1項)、経営するほ場について指定種子生産ほ場として指定を受けようと する者が申請することを要する旨(同条2項)を規定するにとどまる。また、種子法において、指定種子生産ほ場の経営者が指定種子生産ほ場として指定を受けた地位を譲渡、換価等できる旨定めた規定は見当たらず、種子法4条の定めに鑑みると、ほ場審査及び生産物審査に合格しない限り生産した種子を販売等することはできないのであるから、指定種子生産ほ場 として指定されること自体に財産的価値があるとはいい難い。加えて、種 子法廃止法により、他の法令の定めがない限りは、種子法所定の指定種子生産ほ場の指定や審査を受けなくても生産した主要農作物の種子を販売できるようになったことからしても、憲法29条の財産権が侵害されているとは認められない。 他方、都道府県の厳重な管理の下で種子の管理がされていた種子法適用 下においては、ほ場審査や生産物審査などに合格する技能等を有する一定の者のみが種子の生産を職にすることができたという事実は存在したものと認められる。しかしながら、そのようにして得ることができた稼働に係る利益は、国家的要請としての食糧増産を達成するために採られた政策の一環として制定された種子法の施行及びその運用によって生じた事実 上のものであ ながら、そのようにして得ることができた稼働に係る利益は、国家的要請としての食糧増産を達成するために採られた政策の一環として制定された種子法の施行及びその運用によって生じた事実 上のものであって、直ちに法的保護に値するものとはいい難いから、憲法29条の財産権として保障されるということはできない。 したがって、憲法29条の権利が種子法廃止法によって侵害されたということはできず、この点に関する原告Aの主張を採用することはできない。 小括 以上のとおり、原告Aの憲法上保障された権利が種子法廃止法によって侵害されたと認めることはできない。したがって、原告Aのその余の主張を判断するまでもなく、種子法廃止法が違憲無効であるとはいえないから、種子法に係る法律上の地位があることの確認を求める原告Aの請求には理由がない。 6 争点4(国賠法上の違法性)について 国賠法1条1項は、国又は公共団体の公権力の行使に当たる公務員が個別の国民に対して負担する職務上の法的義務に違背して当該国民に損害を加えたときに、国又は公共団体がこれを賠償する責任を負うことを規定するものであり、国会議員の立法行為又は立法不作為が同項の適用上違法となるかど うかは、国会議員の立法過程における行動が個別の国民に対して負う職務上 の法的義務に違背したかどうかの問題であって、当該立法の内容又は立法不作為の違憲性の問題とは区別されるべきである。仮に当該立法の内容又は立法不作為が憲法の規定に違反するものであるとしても、国会議員の立法行為又は立法不作為が直ちに違法の評価を受けるものではないが、立法の内容又は立法不作為が国民に憲法上保障されている権利を違法に侵害するものであ ることが明白な場合や、国民に憲法上保障されている権利行使 は立法不作為が直ちに違法の評価を受けるものではないが、立法の内容又は立法不作為が国民に憲法上保障されている権利を違法に侵害するものであ ることが明白な場合や、国民に憲法上保障されている権利行使の機会を確保するために所要の立法措置を執ることが必要不可欠であり、それが明白であるにもかかわらず、国会が正当な理由なく長期にわたってこれを怠る場合などには、例外的に、国会議員の立法行為又は立法不作為は、国賠法1条1項の規定の適用上、違法の評価を受けることになる(最高裁昭和53年第1 240号同60年11月21日第一小法廷判決・民集39巻7号1512頁、最高裁平成13年(行ツ)第82号、平成13年(行ツ)第83号、平成13年(行ヒ)第76号、平成13年(行ヒ)第77号同17年9月14日大法廷判決・民集59巻7号2087頁参照)。 原告Aの憲法25条、13条、22条及び29条の各権利が種子法廃止法 の制定によって侵害されたとは認められないことは、上記5において判示したとおりであり、同様に、原告Bの憲法25条及び13条の各権利、原告Cの憲法25条の権利並びにその余の原告らがそれぞれ主張する憲法上の各権利についても、種子法廃止法の制定によってこれらが侵害されたとは認められない。そのほか、種子法廃止法の内容が国民に憲法上保障されている権 利を違法に侵害するものであることが明白であると認めるに足りる証拠はない。 したがって、国会議員の種子法廃止法に係る立法行為は、国賠法1条1項の規定の適用上違法の評価を受けるものとはいえず、原告らの主張を採用することはできない。 第4 結論 以上の次第で、①原告Aらの訴えのうち、種子法廃止法が違憲無効であることの確認を求める部分並びに原告B及び原告Cの地位確認を らの主張を採用することはできない。 第4 結論 以上の次第で、①原告Aらの訴えのうち、種子法廃止法が違憲無効であることの確認を求める部分並びに原告B及び原告Cの地位確認を求める部分はいずれも不適法であるから却下し、原告Aらのその余の請求はいずれも理由がないから棄却することとし、②その余の原告らの請求はいずれも理由がないから棄却することとして、主文のとおり判決する。 東京地方裁判所民事第2部 裁判長裁判官品田幸男 裁判官横井靖世 裁判官下道良太(別紙1すべて、別紙2及び別紙4省略) (別紙3-1)関係法令等の定め第1 種子法及び同法に関連する法令等 1 種子法1条(目的) この法律は、主要農作物の優良な種子の生産及び普及を促進するため、種子の生産についてほ場審査その他の措置を行うことを目的とする。 2条(定義)ア 1項この法律で「主要農作物」とは、稲、大麦、はだか麦、小麦及び大豆を いう。 イ 2項この法律で「ほ場審査」とは、都道府県が、種子生産ほ場において栽培中の主要農作物の出穂、穂ぞろい、成熟状況等について審査することをいい、「生産物審査」とは、都道府県が、種子生産ほ場において生産さ れた主要農作物の種子の発芽の良否、不良な種子及び異物の混入状況等について審査することをいう。 3条(ほ場の指定)ア 1項都道府県は、あらかじめ農林水産大臣が都道府県別、主要農作物の種類 別に定めた種子生産ほ場の面積を超えない範囲内において、譲渡の目的をもって、又は委託を受けて、主要農作物の種子を生産する者が 都道府県は、あらかじめ農林水産大臣が都道府県別、主要農作物の種類 別に定めた種子生産ほ場の面積を超えない範囲内において、譲渡の目的をもって、又は委託を受けて、主要農作物の種子を生産する者が経営するほ場を指定種子生産ほ場として指定する。 イ 2項その経営するほ場について前項の指定を受けようとする者は、農林水産 省令で定める手続に従い、都道府県にその申請をしなければならない。 4条(審査)ア 1項指定種子生産ほ場の経営者(以下「指定種子生産者」という。)は、その経営する指定種子生産ほ場についてほ場審査を受けなければならない。 イ 2項指定種子生産者は、種子法5条の規定により交付を受けたほ場審査証明書に係る指定種子生産ほ場において生産された主要農作物の種子について、生産物審査を受けなければならない。 ウ 3項 ほ場審査及び生産物審査(以下本条において「審査」という。)は、指定種子生産者の請求によって行う。 エ 4項都道府県は、指定種子生産者から前項の請求があったときは、当該職員に、審査をさせなければならない。 オ 5項審査の基準及び方法は、農林水産大臣が定める基準に準拠して都道府県が定める。 カ 6項種子法4条5項の農林水産大臣が定める基準は、主要農作物の優良な種 子として具備すべき最低限度の品質を確保することを旨として定める。 (7項省略)5条(ほ場審査証明書等の交付)都道府県は、ほ場審査又は生産物審査の結果、当該主要農作物又はその種子が種子法4条5項の都道府県が定める基準に適合すると認めるときは、当 該請求者に対し、農林水産省令で定めるほ場審査証明書又は生産物審査証明 書を交付しなければならない。 6条(都道府県の 子法4条5項の都道府県が定める基準に適合すると認めるときは、当 該請求者に対し、農林水産省令で定めるほ場審査証明書又は生産物審査証明 書を交付しなければならない。 6条(都道府県の行う勧告等)都道府県は、指定種子生産者又は指定種子生産者に主要農作物の種子の生産を委託した者に対し、主要農作物の優良な種子の生産及び普及のために必要な勧告、助言及び指導を行わなければならない。 7条(原種及び原原種の生産)ア 1項都道府県は、主要農作物の原種ほ及び原原種ほの設置等により、指定種子生産ほ場において主要農作物の優良な種子の生産を行うために必要な主要農作物の原種及び当該原種の生産を行うために必要な主要農作物の 原原種の確保が図られるよう主要農作物の原種及び原原種の生産を行わなければならない。 イ 2項都道府県は、都道府県以外の者が経営するほ場において主要農作物の原種又は原原種が適正かつ確実に生産されると認められる場合には、当該 ほ場を指定原種ほ又は指定原原種ほとして指定することができる。 ウ 3項種子法3条2項の規定は同法7条2項の指定について、同法4条から同法6条までの規定は同項の指定原種ほ又は指定原原種ほにおける主要農作物の原種又は原原種の生産について準用する。 8条(優良な品種を決定するための試験)都道府県は、当該都道府県に普及すべき主要農作物の優良な品種を決定するため必要な試験を行わなければならない。 2 主要農作物種子法施行規則(昭和27年農林省令第39号。平成29年農林水産省令第59号により廃止。) 1条(指定種子生産ほ場等の指定申請) 種子法3条1項又は同法7条2項の指定を受けようとする者は、次の表の上欄に掲げる区分に従い、それぞ 農林水産省令第59号により廃止。) 1条(指定種子生産ほ場等の指定申請) 種子法3条1項又は同法7条2項の指定を受けようとする者は、次の表の上欄に掲げる区分に従い、それぞれ同表の下欄に掲げる期日までに、別記第一号様式(別紙3-2)による申請書を都道府県知事に提出しなければならない。 区分期日稲毎年2月末日春まきの大麦、はだか麦及び小麦大豆大麦、はだか麦及び小麦(これらのうち春まきのものを除く。)毎年8月31日 3 平成12年農林水産省告示第112号(種子法4条5項の農林水産大臣が定める基準。平成12年4月1日施行。以下「平成12年基準」という。乙7) 1号ほ場審査の基準は、次のとおりとすること。 イほ場の隔離の程度についての基準は、次のとおりとすること。 「同一のほ場において前作と同じ農作物の種子を生産する場合には、原則として、前作の収穫後1年以上経過した後に栽培が開始されていること。 隣接して同じ農作物を生産するほ場がある場合には、原則として、当該ほ場と畦畔、垣根等によって区分され、かつ、十分な距離が確保されていること。」ロほ場における変種(農作物の品種の個体のうち変異を生じているものをいう。以下同じ。)、異品種及び異種類の農作物並びに雑草の混入の最 高限度は、次のとおりとすること。 「変種、異品種及び異種類の農作物が混入していないこと。 雑草の混入が、農作物の生育に影響を及ぼさない程度であるこ と。」ハほ場における病虫害及び気象被害の発生の最高限度は、病虫害及び気象被害が発生している面積がほ場全体の面積の20%以下とすること。 作物の生育に影響を及ぼさない程度であるこ と。」ハほ場における病虫害及び気象被害の発生の最高限度は、病虫害及び気象被害が発生している面積がほ場全体の面積の20%以下とすること。 ニ農作物の生育状況の程度についての基準は、特に異常が生じていないこととすること。 2号生産物審査の基準は、次のとおりとすること。 イ種子の調製の方法についての基準は、品種や栽培方法の異なる種子の混同を防止するための適切な措置が採られており、種子の搬入及び搬出の記録その他調製作業に関する記録が保存されていることとすること。 ロ生産物の発芽率の最低限度は、稲にあっては90%以上、麦類(大麦、 はだか麦及び小麦をいう。以下同じ。)及び大豆にあっては80%以上とすること。 ハ異品種粒、異種穀粒、雑草種子及び病虫害粒(病害粒及び虫害粒をいう。以下同じ。)の混入の最高限度は、次のとおりとすること。 「異品種粒及び異種穀粒については、原則として、これらが混入して いないこと。 雑草種子については、稲及び麦類にあってはその混入が0.2%以下であり、大豆にあっては混入していないこと。 病虫害粒については、稲及び麦類にあってはその混入が0.5%以下、大豆にあってはその混入が10%以下であり、かつ、種子伝染性 の病虫害粒が混入していないこと。」3号ほ場審査の方法は、次のとおりとすること。 イ審査の単位は、畦畔、垣根等で明確に区分されたほ場を一単位とすること。 ロ審査の時期は、原則として、稲及び麦類にあっては出穂期及び糊熟期、 大豆にあっては開花期及び成熟期とすること。 ハほ場における変種、異品種及び異種類の農作 こと。 ロ審査の時期は、原則として、稲及び麦類にあっては出穂期及び糊熟期、 大豆にあっては開花期及び成熟期とすること。 ハほ場における変種、異品種及び異種類の農作物並びに雑草の混入の程度、ほ場における病虫害及び気象被害の発生の程度並びに農作物の生育状況の程度の確認方法は、ほ場全体の状況が十分確認できる方法であること。 4号生産物審査の方法は、次のとおりとすること。 イ審査の単位は、一の包装若しくは容器又は機械的に十分均質化された荷口を一単位とすること。 ロ審査の時期は、原則として、種子を包装若しくは容器に密封する直前とすること。 ハ審査試料の採取方法は、採取される試料の品質が当該荷口全体の品質を 正しく代表する方法であること。 ニ発芽率並びに異品種粒、異種穀粒、雑草種子及び病虫害粒の混入の程度の測定方法は、その精度について十分立証された方法であること。 4 山形県主要農作物種子条例(山形県条例第58号。平成30年10月16日公布・施行。以下「山形県種子条例」という。甲39の1・2) 1条(目的)この条例は、山形県の農業の更なる発展を図る上で主要農作物(稲、大麦、はだか麦、小麦及び大豆をいう。以下同じ。)の優良な種子の低廉かつ安定的な供給が不可欠であることに鑑み、主要農作物の優良な種子の生産及び供給に関する計画の策定、種子を生産するほ場の審査その他の措置を講ず ることにより、主要農作物の優良な種子の将来にわたる低廉かつ安定的な供給を図ることで、山形県の主要農作物の品質の確保及び安定的な生産を推進し、もって山形県の農業の持続的な発展に寄与することを目的とする。 2条(県の責務)ア 1項 的な供給を図ることで、山形県の主要農作物の品質の確保及び安定的な生産を推進し、もって山形県の農業の持続的な発展に寄与することを目的とする。 2条(県の責務)ア 1項 県は、主要農作物の優良な種子の低廉かつ安定的な供給に関する施策を 計画的に推進するとともに、当該供給を図るために必要な体制の整備を図るものとする。 イ 2項県は、山形県種子条例2条1項の施策の推進に当たっては、採種団体(主要農作物の優良な種子の低廉かつ安定的な供給に関する事項につい て県及び農業者その他関係者と協議等を行い、主要農作物の優良な種子の生産及び供給を行う団体をいう。以下同じ。)、農業者その他関係者との連携を図るものとする。 3条(採種団体の役割)採種団体は、主要農作物の優良な種子の安定的な生産及び低廉かつ安定的 な供給に努めるものとする。 4条(指定種子生産者の役割)山形県種子条例7条1項に規定する指定種子生産者は、主要農作物の優良な種子の低廉かつ安定的な供給の重要性に対する理解を深め、主要農作物の優良な種子の生産に努めるものとする。 6条(種子生産ほ場の指定)ア 1項知事は、種子計画(知事が毎年度定める、主要農作物の優良な種子の安定的な生産及び供給に関する計画。山形県種子条例5条1項)において主要農作物の種類別に定めた種子生産ほ場の面積を超えない範囲内で、 主要農作物の優良な種子の生産のために必要な知識及び技術を有する者が経営し、かつ、主要農作物の優良な種子の生産に適すると認めるほ場を、指定種子生産ほ場として指定することができる。 イ 2項山形県種子条例6条1項の規定による指定を受けようとする が経営し、かつ、主要農作物の優良な種子の生産に適すると認めるほ場を、指定種子生産ほ場として指定することができる。 イ 2項山形県種子条例6条1項の規定による指定を受けようとする者は、山形 県主要農作物種子条例施行規則で定めるところにより、申請書を知事に 提出しなければならない。 7条(審査)ア 1項山形県種子条例6条1項の規定により指定した指定種子生産ほ場(以下「指定種子生産ほ場」という。)の経営者(以下「指定種子生産者」と いう。)は、その経営する指定種子生産ほ場についてほ場審査(知事が、指定種子生産ほ場において栽培中の主要農作物の出穂、穂ぞろい、成熟状況等について審査することをいう。以下同じ。)を受けなければならない。 イ 2項 指定種子生産者は、山形県種子条例7条5項の規定によりほ場審査の基準に適合する旨の通知を受けた指定種子生産ほ場において生産された主要農作物の種子について、生産物審査(知事が、指定種子生産ほ場において生産された主要農作物の種子の発芽の良否、不良な種子及び異物の混入状況等について審査することをいう。以下同じ。)を受けなければ ならない。 ウ 3項ほ場審査及び生産物審査は、指定種子生産者の請求により行う。 9条(原種等の生産)ア 1項 知事は、ほ場の設置等により、県内に普及すべき主要農作物の優良な品種として決定したものその他知事が必要と認めるものについて、指定種子生産ほ場において主要農作物の優良な種子の生産を行うために必要な原種及び当該原種の生産を行うために必要な原原種(以下「原種等」という。)の生産を行うものとする。 イ 3項 子生産ほ場において主要農作物の優良な種子の生産を行うために必要な原種及び当該原種の生産を行うために必要な原原種(以下「原種等」という。)の生産を行うものとする。 イ 3項 知事は、山形県種子条例9条1項の規定により原種等の生産を行うほか、知事以外の者が経営するほ場において、原種等が適正かつ確実に生産されると認める場合は、当該ほ場を指定原種ほ場又は指定原原種ほ場として指定することができる。 ウ 4項 山形県種子条例6条2項の規定は同条例9条3項の規定による指定について、同条例7条及び8条の規定は同条例9条3項の指定原種ほ場又は指定原原種ほ場における原種等の生産について準用する。 第2 その他の法令等 1 食料・農業・農村基本法(平成11年法律第106号。以下「基本法」とい う。)1条(目的)この法律は、食料、農業及び農村に関する施策について、基本理念及びその実現を図るのに基本となる事項を定め、並びに国及び地方公共団体の責務等を明らかにすることにより、食料、農業及び農村に関する施策を総合的か つ計画的に推進し、もって国民生活の安定向上及び国民経済の健全な発展を図ることを目的とする。 2条(食料の安定供給の確保)ア 1項食料は、人間の生命の維持に欠くことができないものであり、かつ、健 康で充実した生活の基礎として重要なものであることにかんがみ、将来にわたって、良質な食料が合理的な価格で安定的に供給されなければならない。 イ 2項国民に対する食料の安定的な供給については、世界の食料の需給及び 貿易が不安定な要素を有していることにかんがみ、国内の農業生産の増 大を図ることを基本とし、これと輸入及び備蓄とを適切に組み合わせて行 料の安定的な供給については、世界の食料の需給及び 貿易が不安定な要素を有していることにかんがみ、国内の農業生産の増 大を図ることを基本とし、これと輸入及び備蓄とを適切に組み合わせて行われなければならない。 ウ 3項食料の供給は、農業の生産性の向上を促進しつつ、農業と食品産業の健全な発展を総合的に図ることを通じ、高度化し、かつ、多様化する国 民の需要に即して行われなければならない。 エ 4項国民が最低限度必要とする食料は、凶作、輸入の途絶等の不測の要因により国内における需給が相当の期間著しくひっ迫し、又はひっ迫するおそれがある場合においても、国民生活の安定及び国民経済の円滑な運営に著 しい支障を生じないよう、供給の確保が図られなければならない。 39条(設置)農林水産省に、食料・農業・農村政策審議会(以下「審議会」という。)を置く。 40条(権限) ア 1項審議会は、この法律の規定によりその権限に属させられた事項を処理するほか、農林水産大臣又は関係各大臣の諮問に応じ、この法律の施行に関する重要事項を調査審議する。 イ 2項 審議会は、基本法40条1項に規定する事項に関し農林水産大臣又は関係各大臣に意見を述べることができる。 41条(組織)ア 1項審議会は、委員30人以内で組織する。 イ 2項 委員は、基本法40条1項に規定する事項に関し学識経験のある者のうちから、農林水産大臣が任命する。 42条(資料の提出等の要求)審議会は、その所掌事務を遂行するため必要があると認めるときは、関係行政機関の長に対し、資料の提出、意見の開陳、説明その他必要な協力を求 めることができる。 2 食品安全基本法(平成15 審議会は、その所掌事務を遂行するため必要があると認めるときは、関係行政機関の長に対し、資料の提出、意見の開陳、説明その他必要な協力を求 めることができる。 2 食品安全基本法(平成15年法律第48号) 1条(目的)この法律は、科学技術の発展、国際化の進展その他の国民の食生活を取り巻く環境の変化に適確に対応することの緊要性にかんがみ、食品の安全性の 確保に関し、基本理念を定め、並びに国、地方公共団体及び食品関連事業者の責務並びに消費者の役割を明らかにするとともに、施策の策定に係る基本的な方針を定めることにより、食品の安全性の確保に関する施策を総合的に推進することを目的とする。 3条(食品の安全性の確保のための措置を講ずるに当たっての基本的認 識)食品の安全性の確保は、このために必要な措置が国民の健康の保護が最も重要であるという基本的認識の下に講じられることにより、行われなければならない。 5条(国民の健康への悪影響の未然防止) 食品の安全性の確保は、このために必要な措置が食品の安全性の確保に関する国際的動向及び国民の意見に十分配慮しつつ科学的知見に基づいて講じられることによって、食品を摂取することによる国民の健康への悪影響が未然に防止されるようにすることを旨として、行われなければならない。 6条(国の責務) 国は、食品安全基本法3条ないし5条に定める食品の安全性の確保につい ての基本理念にのっとり、食品の安全性の確保に関する施策を総合的に策定し、及び実施する責務を有する。 7条(地方公共団体の責務)地方公共団体は、食品安全基本法6条所定の基本理念にのっとり、食品の安全性の確保に関し、国との適切な 施策を総合的に策定し、及び実施する責務を有する。 7条(地方公共団体の責務)地方公共団体は、食品安全基本法6条所定の基本理念にのっとり、食品の安全性の確保に関し、国との適切な役割分担を踏まえて、その地方公共団体 の区域の自然的経済的社会的諸条件に応じた施策を策定し、及び実施する責務を有する。 3 農業競争力強化支援法(平成29年法律第35号)8条(農業資材事業に係る事業環境の整備)国は、良質かつ低廉な農業資材の供給を実現する上で必要な事業環境の整備 のため、次に掲げる措置その他の措置を講ずるものとする。 (1~3号略)4号種子その他の種苗について、民間事業者が行う技術開発及び新品種の育成その他の種苗の生産及び供給を促進するとともに、独立行政法人の試験研究機関及び都道府県が有する種苗の生産に関する知見の民 間事業者への提供を促進すること。 以上 (別紙3-2)
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