平成27年(う)第1190号殺人,死体遺棄,詐欺,窃盗被告事件平成28年5月26日大阪高等裁判所第1刑事部判決主文原判決中被告人Aに関する部分を破棄する。 本件を和歌山地方裁判所に差し戻す。 理由 控訴趣意は,訴訟手続の法令違反,事実誤認及び量刑不当の主張である。 第1 控訴趣意書第1の主張(訴訟手続きの法令違反(その1)の主張)について 1 控訴趣意の要旨原判決は,原判示第1の殺人(以下「本件殺人」という。)の事実について,被害者の死亡の直接の原因となった最後の首絞め行為を行ったのは被告人(以下「A」という。)と認定したが,同事件の公訴事実では,当審分離前の相被告人B(以下「B」という。)が同行為を行ったとされており,検察官は,原審において,一貫してその旨主張していたから,Aが同行為を行ったという同被告人にとって不利益な認定をするには,訴因変更手続を経ることが必要だったのに,原審裁判所は,その手続を経ることなく,Aが同行為を行ったと認定したから,原審の訴訟手続には判決に影響を及ぼすことが明らかな訴訟手続の法令違反がある。 2 当裁判所の判断原審裁判所が,本件殺人の事実について,訴因変更手続を経ることなく,Aが被害者の死亡の直接の原因となった最後の首絞め行為を行ったと認定したのは,訴訟手続に関する法令に違反したものであり,その違反が判決に影響を及ぼすことは明らかである。 その理由は,以下のとおりである。 本件殺人の訴因及び原判決の認定等ア Aは,本件殺人の事実について,Bと1通の起訴状で公訴提起された。その公訴事実の要旨は,「被告人両名は,共謀の上,平成25年7月24日午前3時1 5分頃から同日午前4時頃までの間,堺市堺区所在のガールズバー店内において,C(当時45歳)に 訴提起された。その公訴事実の要旨は,「被告人両名は,共謀の上,平成25年7月24日午前3時1 5分頃から同日午前4時頃までの間,堺市堺区所在のガールズバー店内において,C(当時45歳)に対し,殺意をもって,Aが仰向けに横たわった前記Cの首を両手で絞め付け,その際,BがCの下半身に乗り,さらに,Bが前記Cの首を両手で絞め付け,よって,その頃,同所において,同人を頸部圧迫による窒息により死亡させて殺害した」というものである。 イ A及びBに対する本件各殺人被告事件は,A及びBに対する各死体遺棄被告事件等と併合され,公判前整理手続を経て,審理された。なお,第4回公判前整理手続期日において,Bの主任弁護人が,AとBの主張が大きく食い違うため弁論を分離することを希望すると述べたが,原審裁判長は,第6回公判前整理手続期日において,「本件については事件の内容,証拠関係及び結論の合一的確定の観点から併合して審理するのが相当であり,弁論分離決定は行わない。」旨述べて,その希望をいれなった。 ウ原審の審理の過程を通じて,本件殺人の事実については,訴因変更の手続はとられなかったが,原判決は,同事実について,要旨,「Aは,堺市堺区所在のガールズバーの店長であり,Bは,Cとともに,その共同経営者であったが,Aは,平成25年7月24日午前3時15分頃から同日午前4時頃までの間,前記店内において,C(当時45歳)に対し,「今日は帰れませんよ」などと言って口論になったところ,激高した同人が首を絞めてきたことから,身の危険を感じ,自己の身体を防衛するため,同人の首を絞め返してもみあいになり,同人と共に床に転倒し,さらに,防衛の程度を超え,仰向けに横たわった同人の上にまたがって同人の首を両手で絞め付け,その際,Bが,暴れているCの下半身に乗ってきたことから 首を絞め返してもみあいになり,同人と共に床に転倒し,さらに,防衛の程度を超え,仰向けに横たわった同人の上にまたがって同人の首を両手で絞め付け,その際,Bが,暴れているCの下半身に乗ってきたことから,ここにおいて,AとBは,共謀を遂げ,いずれも殺意をもって,引き続き,BがCの下半身に乗った状態で,AがCの首を両手で絞め付け,よって,その頃,同所において,同人を頸部圧迫による窒息により死亡させて殺害した。」との事実を認定した。 上記のとおり,原判決は,本件殺人の事実について,公訴事実においては, 被害者の死亡の直接の原因となった最後の首絞め行為を行ったのはBとされていたのに,訴因変更の手続を経ることなく,同行為を行ったのはAと認定している。 一般に,殺人罪の共同正犯の訴因において,実行行為者が明示された場合,それと実質的に異なる認定をするには,そのような認定をすることが,被告人に不意打ちを与えるものでなく,かつ,認定事実が訴因に記載された事実に比べて被告人にとってより不利益であるとはいえない場合のほかは,訴因変更手続を経ることを要するものと解されている。 本件では,公訴事実において,被告人両名がいずれも実行行為を行ったとされており,取り分け,A自身も,被害者の首を絞めるという直接被害者の死亡の結果に結びつきかねない行為を行ったと明示されているから,本件は,実行行為者が明示されている場合にそれと異なる認定をしたという場合に直ちにあてはまるわけではない。 しかし,本件のように,被害者の首を絞めて殺害したとされている事案では,同じく実行行為を行ったとされている者であっても,被害者が絶命するまで首を絞め続け,いわば最後にとどめを刺した者と,その行為自体には直接加担していない者との間では,責任等に相当の差異が生じる可能性があるか 実行行為を行ったとされている者であっても,被害者が絶命するまで首を絞め続け,いわば最後にとどめを刺した者と,その行為自体には直接加担していない者との間では,責任等に相当の差異が生じる可能性があるから,訴因において,最後にとどめを刺した者が明示されている場合に,それと異なる認定をするには,実行行為者が明示されているときにそれと実質的に異なる認定をする場合と同様に,上記のような例外的な場合のほかは,その旨の訴因変更手続を経ることを要すると解するのが相当である。 そこで,さらに,本件が上記の例外的な場合に当たるかどうかについて検討する。 ア不意打ちについて原審の審理経過ⅰ 原審の公判前整理手続において,検察官は,「Aは,殺意をもって,被害者の首を絞め続けたが,怖くなって,一旦,手を離した。そのとき,被害者は苦しそ うに呼吸をしていた。すると,Bが,殺害を完遂するため,被害者の首を上から締め付け,やがて被害者を死亡させた。」旨主張した。そして,Aも,「Aが被害者の首を絞め,手を離した後,Bが,息をしている状態の被害者の首を絞めて死亡させた。」旨検察官の上記主張と同旨の主張をした上,殺意及びBとの共謀を争い,さらに,共犯からの離脱,中止未遂,正当防衛の主張をした。 一方,Bは,「Aが被害者の首を絞めて死亡させた。Bは,既に死亡していた被害者の首に軽く手を当てて首を絞めるまねをしただけであって,被害者の首を絞めたことはない。」などと主張した。 そして,原審第16回公判前整理手続期日において,争点の整理が行われ,本件殺人については,被告人ごとに争点がまとめられ,Aの関係では,犯行の態様は争点として掲げられず,殺意の有無,共謀の有無,共犯関係の解消の有無,中止未遂の成否,正当防衛(過剰防衛)の成否が争点とされ,Bの関係では, ,被告人ごとに争点がまとめられ,Aの関係では,犯行の態様は争点として掲げられず,殺意の有無,共謀の有無,共犯関係の解消の有無,中止未遂の成否,正当防衛(過剰防衛)の成否が争点とされ,Bの関係では,実行行為,殺意及び共謀の有無が争点とされた。 ⅱ 原審の公判手続において,検察官,A及びBは,それぞれ,公判前整理手続における主張と同旨の主張をし,A及びBは,それぞれ,自己の主張に沿う供述をした。 そして,原審における論告,弁論においても,検察官,弁護人らは同様の主張を繰り返した。その際,検察官は,「Aは,捜査段階から一貫して,「Bが被害者の首を絞め始める前,被害者は,ハアハアと荒い息をして苦しそうにしていた」と供述しており,Bが本気で被害者の首を絞めて殺したとしか考えられない」と主張した。一方,Aの弁護人は,「現場で首を絞めたのはB被告人」というAの公判供述や,Aから「オレはとどめはさしていない」と聞いたという知人の公判供述を指摘し,「Bの単独犯行であり共謀はなかった」と述べた。なお,Aの弁護人は,その際,Bの公判供述の信用性については特に言及していない。 以上のとおり,原審において,Aが被害者の首を絞めた後,Bが被害者の首を絞めて死亡させたという基本的な事実関係については,検察官とBとの間では争 いがあったものの,検察官とAとの間では,争いがなかった。 原判決は,【争点に対する判断】の項で,三者の主張を整理すると,「被告人の死亡の直接の原因となった首絞め行為を行ったのはA,Bのどちらであるか」も争点に含まれると判示しているが,主観的併合が行われたときであっても,各被告人に対する訴訟法律関係は被告人ごとに別個に成立しているのだから,Aは,Bの主張に対して反論しなければならない立場にはない。 確かに,Bの弁護人の主張に沿うB 的併合が行われたときであっても,各被告人に対する訴訟法律関係は被告人ごとに別個に成立しているのだから,Aは,Bの主張に対して反論しなければならない立場にはない。 確かに,Bの弁護人の主張に沿うBの原審公判供述は,Aとの関係でも証拠となっており,かつ,その内容はAの主張と食い違うものであるから,AはBの上記供述の信用性を争うことはできた。しかし,Aが被害者の首を絞めた後にBが被害者の首を絞めて死亡させたという事実関係は,訴因に明示され,検察官もそれを強く主張していたのだから,原審裁判所が事実の合一確定のため本件を併合審理していたとしても,Aとしては,原審裁判所が,訴因や検察官の主張と異なる認定をしようとする場合は,訴因変更手続がとられるはずであり,原審裁判所が,訴因変更手続も経ないまま,訴因や検察官の主張と異なる認定をするはずがないと期待したとしても何ら不当ではない。 そして,本件記録を精査しても,原審裁判所が,検察官に訴因変更を促したり,Aに対する被告人質問の機会に,同被告人にその供述の信用性に疑いを抱いている旨の発言をするなどして,最終的な首絞め行為の実行者について訴因と異なる認定をする可能性があることを示唆し,この点をAとの関係でも争点として顕在化させるような努力をした形跡は見当たらない。 そうすると,原判決が,Aのみが死亡の直接の原因となる首絞め行為をしたと認定したことは,Aにとって不意打ちであるというほかない。 イ不利益性について前記のとおり,本件殺人の訴因は,Aが被害者の首を両手で絞め付けた後,Bが被害者の首を両手で絞め付け,被害者を死亡させたというものであるのに対し,原判決の認定は,Aのみが被害者の首を絞め付け,被害者を死亡させたというのであ る。 そして,本件のような首絞めによる殺人の事案において,訴 け,被害者を死亡させたというものであるのに対し,原判決の認定は,Aのみが被害者の首を絞め付け,被害者を死亡させたというのであ る。 そして,本件のような首絞めによる殺人の事案において,訴因では最後まで首を絞め続けて被害者を死亡させ,いわばとどめを刺したのは他の共犯者とされていたのに,当該他の共犯者はそのような行為をしておらず,被告人だけが被害者の首を絞めたと認定された場合,刑事責任の軽重という点から見ると,そのこと自体が,当該被告人にとって不利益というべきであるから,原判決の上記認定は,その点だけを見ても,Aにとって不利益なものというべきである。 のみならず,原判決の上記のような認定は,本件の主張立証構造からみても,Aにとって不利益なものである可能性がある。すなわち,Aは,原審において,前記のとおり,殺意及びBとの共謀を争うとともに,共犯からの離脱,中止未遂及び正当防衛の成立を主張していたところ,Aだけが被害者の首を絞めて被害者を死亡させたのか,それとも,Aが被害者の首を絞めた後,引き続きBが被害者の首を絞めて被害者を死亡させたのかということは,Aの上記主張の当否を判断する上で,根幹となる事実関係である。例えば,原判決のとおりAのみが被害者の首を両手で絞め付けて被害者を死亡させたというのであれば,Aの行為と死亡結果との因果関係は容易に肯定され,中止未遂や共犯からの離脱は成立の余地がなくなるのに対して,訴因どおりAが首を絞めた後,さらに,Bが首を絞めて被害者を死亡させたというのであれば,中止未遂,共犯からの離脱も検討の対象となってくる。もっとも,正当防衛の成否については,被害者からの攻撃の危険がいつまで続いていたかが問題となるから,攻防が主としてAと被害者と間で行われていた場合のほうが,成立の可能性が高まるのではないかと思わ 。もっとも,正当防衛の成否については,被害者からの攻撃の危険がいつまで続いていたかが問題となるから,攻防が主としてAと被害者と間で行われていた場合のほうが,成立の可能性が高まるのではないかと思われ,この点については,原判決の認定のほうがAにとって有利といえるかもしれない(原判決は,正当防衛の成立を否定し,過剰防衛の成立を認めたにとどまるが,訴因どおりの認定であれば,過剰防衛も否定されていた可能性もないわけではない。)。しかし,原判決でも正当防衛そのものの成立が認められているわけではないから,正当防衛が認められやすくなるということから,直ちに,中止未遂や共犯からの離脱の成立の可能性がなくなっても,その ほうがAにとって有利とは断定できない。そうすると,Aだけが,被害者の首を絞めて被害者を死亡させたと認定することは,Aのその余の主張との関係でも,Aにとってより不利益であるとはいえない場合に当たらないというべきである。 結語以上によれば,原判決が前記のような認定をしたことは,Aに不意打ちを与えるものであり,かつ,認定事実がAにとってより不利益であるとはいえない場合でもないから,本件は,訴因変更手続を経ることなく訴因と異なる認定をすることが許される場合ではなかったというべきである。 したがって,原審裁判所が,本件殺人の事実について,訴因変更手続を経ることなく,前記のような認定をしたのは,訴訟手続に関する法令に違反したものであり,その違反が判決に影響を及ぼすことは明らかである。 よって,論旨は理由があり,その余の論旨について検討するまでもなく,原判決は破棄を免れない。 第2 差戻しとした理由その上で,当裁判所は,本件については,自判するのではなく,差戻しをするのが相当と判断した。 その理由は,以下のとおりである。 原 もなく,原判決は破棄を免れない。 第2 差戻しとした理由その上で,当裁判所は,本件については,自判するのではなく,差戻しをするのが相当と判断した。 その理由は,以下のとおりである。 原審裁判所が訴因変更手続を経ることなく訴因と異なる事実を認定したことが違法となる場合であっても,訴因変更をし,あるいは,訴因変更をすることもなく,直ちに判決をすることができる場合等は,控訴審は,当該事件を原審に差し戻すことなく自判することが許されるが,その程度を超え,事実関係を確定するため,さらに,詳細な証拠調べをすることが必要となる場合は,そのような審理をすることは,実質的に被告人の審級の利益を奪うことになるから,許されないものと解される。 これを本件についてみると,本件の場合,Aが首を絞めたことによって被害者が死亡したと認められるかどうかを確定することなく自判することはできないと思わ れるところ,現在の証拠関係では,この点について,医学的見地からの検討及びこれを踏まえた総合判断等必要な審理が尽くされているとはいえず,その点を確定的に認定するためには,更に詳細な証拠調べが必要である。 すなわち,本件は,A,B及び被害者の3名しかいない室内で起きた事件であるため,行為の主体に関する直接的証拠は,A及びBの捜査段階及び原審公判段階の各供述しかない。そして,AとBの供述は,Bが被害者の首を絞めたかどうかで基本的に対立している。その各供述についても,捜査段階と公判段階で変遷が見られる。一方,本件殺人をめぐる客観的証拠は,被害者の解剖所見等限られている。したがって,本件では,客観的証拠が乏しい中で,A及びBの供述の信用性をどのように判断するかが認定の鍵を握っている。 ところで,A及びBの捜査段階及び原審公判段階の各供述の中には,被害を受けて 。したがって,本件では,客観的証拠が乏しい中で,A及びBの供述の信用性をどのように判断するかが認定の鍵を握っている。 ところで,A及びBの捜査段階及び原審公判段階の各供述の中には,被害を受けている際の被害者の状態に関して,被害者が首を絞められて体全体をばたばたして抵抗した,Aが被害者の首から手を離した時,被害者は,はあ,はあと息づかいが荒かった,Bが被害者の股間あたりに座ると被害者の尿か何かでズボンが濡れたなどというものが含まれている。 そうすると,このような被害者の状態についての供述が医学的見地からどのように解釈されるべきか,さらに,それを踏まえて,被害者の各時点の状態をどのようなものと理解するのが相当であるかについて検討を加えることは,本件の事案の解明のために不可欠と考えられる。 ところで,原判決は,Aが被害者の首を絞めているとき,被害者の下半身に乗ったところ,被害者の漏らした尿で股間が濡れたというBの捜査段階の供述の信用性を肯定した上,首を絞められて尿を漏らすということは,単に意識を失ったという程度では起こり得ず,既に死亡しているか,そのまま放置すれば死に至るような状態とならなければ起こらないから,Aが被害者の首から手を離した時点で,既に被害者は死亡していたか,そのまま放置すれば死に至るような状態にあったといえると認定している(その上で,被害者の首から手を離した時,被害者が荒い呼吸をし ていたというAの供述は,尿失禁の事実と矛盾するから信用できないとしている。)。 しかし,所論が指摘するとおり,本件記録上,原判決の上記判断を裏付ける医学的知見に関する証拠はない。 そうすると,本件では,原判決が前記判断の前提とした「首を絞められて尿を漏らすということは,単に意識を失ったという程度では起こり得ず,既に死亡してい 断を裏付ける医学的知見に関する証拠はない。 そうすると,本件では,原判決が前記判断の前提とした「首を絞められて尿を漏らすということは,単に意識を失ったという程度では起こり得ず,既に死亡しているか,そのまま放置すれば死に至るような状態とならなければ起こらない」という命題の当否がまずもって問題とされなければならないし,「被害者が荒い呼吸をしていたということと,尿失禁の事実とが矛盾する」かどうかもまた,医学的見地から検討される必要がある。 ところで,当審弁護人は,原判決が前提とした前記命題は誤っているとして,被害者のトランクス等の尿反応に関する証拠や多数の医学文献等を証拠請求している。 これらの証拠は,上記命題の当否等を判断する上で有用なものと思われる。しかし,上記命題の当否の判断は,失禁の状況に,文献上得た医学的知見を適用することによって直ちに可能なものとは思われず,やはり,その点について専門的知識を有するものの助言が不可欠と思われる。そして,上記命題が誤っている場合は,改めて,Aらの供述する被害者の各時点における状態をどのようなものと理解するのが相当かについて,専門家の説明を受ける必要があると思われる。 そうすると,Aが首を絞めたことによって被害者が死亡したと認められるかどうかを確定的に認定するためには,法医学の専門家による鑑定あるいは証人尋問を実施して,上記の点について専門的知見を補充しながら,A及びBの供述の信用性を総合的に判断する必要があるというべきである。そして,そのような審理は,原審においてその点がAと検察官との間で争点となっていなかった本件の場合,控訴審で自判のために許される証拠調べの程度を超えているものと考えられる。 以上の次第で,本件については,上記のような審理を尽くさせるため,原裁判所に差し戻すのが相当と判断した なかった本件の場合,控訴審で自判のために許される証拠調べの程度を超えているものと考えられる。 以上の次第で,本件については,上記のような審理を尽くさせるため,原裁判所に差し戻すのが相当と判断した(なお,当裁判所は,当審弁護人の証拠請求を全て 却下したが,それは,差戻し後の審理において,改めて争点の整理が行われ,これに即した適切な証拠の採否が行われることを想定してのものであって,これらが全て不必要と判断したからではない。)。 第3 結論よって,刑訴法397条1項,379条により,原判決中Aに関する部分を破棄した上,同法400条本文により本件を原裁判所である和歌山地方裁判所に差し戻すこととし,主文のとおり判決する。 平成28年5月26日大阪高等裁判所第1刑事部 裁判長裁判官福崎伸一郎 裁判官野口卓志 裁判官酒井英臣
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