平成15(行コ)274 行政文書非開示処分取消請求控訴事件(原審・さいたま地方裁判所平成14年(行ウ)第33号)

裁判年月日・裁判所
平成16年4月14日 東京高等裁判所 情報公開
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判決文本文14,287 文字)

- 1 -主文 原判決を次のとおり変更する。 (1)被控訴人が,控訴人に対し,平成14年5月13日付けでした,別表3「」,,(,「」の3-1の各文書のうち番号1 ただし訴訟代理人の口座情報部分を除く,3,4,6ないし8の各文書の各「非公開部分」に対する非。)公開決定を取り消す。 (2)被控訴人が,控訴人に対し,平成14年5月13日付けでした,別表3の3-2の各文書のうち番号14②ないし④ 6の各文書の各非「」,,,,「公開部分」に対する非公開決定を取り消す。 (3)被控訴人が,控訴人に対し,平成14年7月1日にした,別表3の「3-3」の各文書のうち,番号1,3ないし9の各文書の各「非公開部分」に対する非公開決定を取り消す。 (4)控訴人のその余の請求を棄却する。 訴訟費用は,第1,2審を通じてこれを10分し,その1を控訴人の,その余を被控訴人の各負担とする。 事実 及び理由第1控訴の趣旨 原判決を取り消す。 ,,,「」 被控訴人が控訴人に対し平成14年5月13日付けでした別表3の3-1の各文書の各「非公開部分(ただし,番号2の文書の「訴訟代理人の口座情報」」,部分を除く)に対する非公開決定を取り消す。 。 ,,,「」 被控訴人が控訴人に対し平成14年5月13日付けでした別表3の3-2の各文書のうち番号1,4ないし6の各文書の各「非公開部分」に対する非公開決定を取り消す。 被控訴人が,控訴人に対し,平成14年7月1日にした,別表3の「3-3」の各文書のうち番号1,3ないし9の各文書の各「非公開部分」に対する非公開決定を取り消す。 第2事案の概要 本件は,埼玉県上福岡市の住民である控訴人が,上福岡市情報公 にした,別表3の「3-3」の各文書のうち番号1,3ないし9の各文書の各「非公開部分」に対する非公開決定を取り消す。 第2事案の概要 本件は,埼玉県上福岡市の住民である控訴人が,上福岡市情報公開条例(平成9年12月24日上福岡市条例19号。以下「本件条例」という)に基づき,被控訴人。 に対し「上福岡市が当事者になった平成9年度以降の訴訟の概要が分かる資料(訴,訟費用の明細を含む」に関する情報公開請求をしたところ,被控訴人が,平成14)年5月13日及び同年7月1日,別表3の「3-1」ないし「3-3」の各文書中非公開部分を除いた部分について情報公開処分(以下「本件各処分」という)をした。 ことから,控訴人が,本件各処分中非公開部分の取消しを求めた事案である。 本件の争点は,控訴人が本件訴訟において公開を求める各情報(文書(以下「本)件情報」又は「本件文書」ということがある)が,本件条例の定める非公開事由で。 ある本件条例第6条第1号,第5号に該当するか否かである。 本件条例の定め本件各処分当時における本件条例の関連規定は,次のとおりである。 - 2 -第1条(目的)この条例は,市民に対し情報の公開を求める権利を保障するとともに,情報の公開に関し必要な事項を定めることにより,市政に対する市民の理解と信頼を深め,市民参加を促進し,もって透明性を確保した民主的市政の一層の推進に寄与することを目的とする。 第2条(定義)この条例において,次の各号に掲げる用語の意義は,当該各号に定めるところによる。 (1)実施機関市長,教育委員会,選挙管理委員会,公平委員会,監査委員,農業委員会,固定資産評価審査委員会及び議会をいう。 (2)情報実施機関の職員が職務上,作成し,又は取得した文書,図画及び写真並びにフィルム,磁気テープ等から出力 理委員会,公平委員会,監査委員,農業委員会,固定資産評価審査委員会及び議会をいう。 (2)情報実施機関の職員が職務上,作成し,又は取得した文書,図画及び写真並びにフィルム,磁気テープ等から出力され又は採録されたもので,決裁又は供覧等の手続が終了し,かつ,実施機関が管理しているものをいう。 (3)情報の公開実施機関がこの条例の規定(第14条の規定を除く)により,情報の閲覧。 に供し,又はその写しを交付することをいう。 第3条(実施機関の責務)実施機関は,市民の情報の公開を求める権利が十分に尊重されるようこの条例を解釈し,運用するとともに,情報の管理及び検索体制の確立に努め,個人に関する情報が保護されるよう最大限の配慮をしなければならない。 第4条(利用者の責務)この条例の定めるところにより情報の公開を受けたものは,これによって得た情報をこの条例の目的に則して,適正に使用しなければならない。 第5条(情報の公開を請求できるもの)次に掲げるものは,実施機関に対し,情報の公開(第5号に掲げるものにあっては,そのものの有する利害関係に係る情報の公開に限る)を請求することが。 できる。 (1)市内に住所を有する者(2)ないし(5)省略第6条(公開しないことができる情報)実施機関は,次の各号の一に該当する情報が記録されているときは,当該情報の公開をしないことができる。 (1)個人に関する情報(事業を営む個人の当該事業に関する情報を除く)で。 あって,特定の個人が識別され,又は識別され得るもの。ただし,次に掲げる情報を除く。 ア法令又は条例(以下「法令等」という)の規定により,何人でも閲覧す。 ることができるとされている情報イ公表することを目的として実施機関が作成し,又は取得した情報- 3 -ウ法令等の規定に基づく許可,免許, 以下「法令等」という)の規定により,何人でも閲覧す。 ることができるとされている情報イ公表することを目的として実施機関が作成し,又は取得した情報- 3 -ウ法令等の規定に基づく許可,免許,届出その他これらに相当する行為に際して実施機関が作成し,又は取得した情報であって,公開することが公益上必要と認められるもの(2)ないし(4)省略(),,,, 市又は国等の機関が行う検査監査取締りの計画争訟及び交渉の方針入札の予定価格,試験の問題,職員の身分取扱いその他の事務事業に関する情報であって,当該事務事業の性質上,公開することにより,当該事務事業の公正かつ適正な執行を著しく困難にするおそれがあると認められるもの(6)省略第8条(情報の部分公開等)実施機関は,公開の請求に係る情報に第6条又は前条に規定する情報が記録されている場合において,その部分を容易に,かつ,当該情報の趣旨を損なわない程度に分離することができるときは,その部分を除いて当該情報の公開をしなければならない。 省略 基本的事実関係(証拠等の摘示のない事実は,争いのない事実である)。 (1)当事者控訴人は,上福岡市内に住所を有する同市の住民であり,被控訴人は,本件条例第2条第1号所定の実施機関である上福岡市長である。 (2)本件各処分の経緯等ア控訴人は,平成13年10月31日,被控訴人に対し,本件条例第9条に基づき「上福岡市が当事者になった平成9年度以降の訴訟の概要が分かる資料,(訴訟費用の明細を含む」の情報公開請求をした。 )そこで,上福岡市において情報公開事務を担当する総務部推進室で調査した結果,道路課に関してさいたま地方裁判所川越支部平成××年(ワ)第×××号所有権移転登記抹消登記手続等請求事件(以下「第1事件」という)が, 福岡市において情報公開事務を担当する総務部推進室で調査した結果,道路課に関してさいたま地方裁判所川越支部平成××年(ワ)第×××号所有権移転登記抹消登記手続等請求事件(以下「第1事件」という)が,。 下水道課に関してさいたま地方裁判所平成××年(ワ)第×××号損害賠償請求事件(以下「第2事件」という)が,それぞれ係争中であることが判明し。 た(弁論の全趣旨。 ),,,,そのため控訴人は改めて平成13年11月5日付けで被控訴人に対し道路課と下水道課に分けて「上福岡市が当事者になった平成9年度以降の訴,訟の概要が分かる資料(訴訟費用の明細を含む」の情報公開請求をした(以)下,道路課に関する情報公開請求を「本件公開請求1」といい,下水道課に関する情報公開請求を「本件公開請求2」といい,包括して「本件各公開請求」という。甲第1号証の1,2。 )イ本件公開請求1について,被控訴人は,控訴人に対し,同月20日付けで,対象となる情報としては,①訴訟代理人選任起案,②弁護料支払起案,③同支出負担行為書,④同支出命令書,⑤資料提出起案,⑥準備書面,⑦答弁書,⑧証拠資料が存在するとした上,上記①,②,⑤の各情報は,本件条例第6条第1号に該当し,上記③ないし⑧の各情報は,本件条例第6条第5号に該当する- 4 -,(「」。 )。 として情報非公開決定をした別表1の1-1参照甲第2号証の1本件公開請求2についても,被控訴人は,控訴人に対し,同日付けで,対象となる情報としては,①訴訟代理人選任起案,②弁護料支払起案,③同支出負担行為兼支出命令書,④資料送付起案,⑤準備書面,⑥答弁書が存在するとした上,上記①,②,④の各情報は,本件条例第6条第1号に該当し,上記③ないし⑥の各情報は,本件条例第6条第5号に該当するとして,情報非 兼支出命令書,④資料送付起案,⑤準備書面,⑥答弁書が存在するとした上,上記①,②,④の各情報は,本件条例第6条第1号に該当し,上記③ないし⑥の各情報は,本件条例第6条第5号に該当するとして,情報非公開決定をした(別表2の「2-1」参照。甲第2号証の2。 )ウ控訴人は,上記各処分を不服として,平成14年1月11日,被控訴人に対し,本件条例第13条第1項に基づいて異議を申し立てた。 被控訴人は,同日,同条第2項に基づき,上福岡市情報公開・個人情報保護審査会に諮問し,同審査会の同年4月22日付け答申を受けて,同年5月13日付けで,本件第1事件に関し,訴訟代理人の選任起案,弁護料支払起案,支出負担行為書及び支出命令書を非公開とした処分の一部を取り消し(甲第3号証の1,本件第2事件に関し,訴訟代理人選任起案,弁護料支払起案,支出)負担行為兼支出命令書を非公開とした処分の一部を取り消す旨の各決定をした(甲第3号証の2。 )エ被控訴人は,上記各異議決定を踏まえて,平成14年5月13日付けで,控訴人に対し,本件公開請求1について別表1の「1-2」の内容の情報非公開決定をし(乙第6号証,本件公開請求2について別表2の「2-2」の内容)の情報非公開決定をした(乙第7号証。そして,上福岡市は,同月15日,)控訴人に対し,上記各決定に基づく部分公開を実施し,写しを交付した(乙第1号証の1ないし3,第2号証の1ないし3。 )オ取下事件の情報部分公開について控訴人は,上記エの各処分後も,上福岡市に対し,下水道課において取下げで終了した訴訟(以下「取下事件」という)に関する情報についても公開す。 るよう申し出た。そこで,被控訴人は,別表3の「3-3」の内容で当該情報を部分公開することを約し,同年7月1日,控訴人に対し,その写し(乙第3号証の1ない 」という)に関する情報についても公開す。 るよう申し出た。そこで,被控訴人は,別表3の「3-3」の内容で当該情報を部分公開することを約し,同年7月1日,控訴人に対し,その写し(乙第3号証の1ないし10)を交付した(弁論の全趣旨。 )(3)本件において控訴人が公開を求めている情報の範囲本件訴訟の口頭弁論終結当時,公開されていない情報は,別表3の「3-1」ないし「3-3」の非公開部分に記載されているとおりである。控訴人は,非公開とされた部分中,根拠条文第6条第1号,第5号を掲げたもの全部の公開を求めている(控訴人は,別表3の文書中,非公開根拠事由が本件条例第6条第2号とされた訴訟代理人の口座情報については,公開を求めていない。 。) 当事者の主張(1)本件条例第6条第1号該当性についてア被控訴人別表3において非公開の根拠条文として「第6条第1号」又は「第6条第1号,第5号」を掲げた文書は,以下のとおり,いずれも本件条例第6条第1号ただし書アに該当せず,イ及びウにも該当しないから,本件条例第6条第1号- 5 -の非公開事由に該当する。 (ア)民事訴訟法第91条,第92条は,憲法第82条の裁判公開の原則を維持しながら,一定の要件の下に個人や法人の情報等の保護が認められるとするものであり,何人も無条件に訴訟記録を閲覧謄写できるとは規定していない。訴訟記録全部の閲覧及び謄写は,最終的には裁判所により,裁判公開の原則と,個人情報及び法人情報等プライバシー保護とのバランスをとりながら,裁判所の執務状況等も踏まえ,独自に判断されることとなる。 控訴人は,訴訟記録は,民事訴訟法第91条により何人も閲覧できる情,,報であることから本件情報は本件条例第6条第1号ただし書アに該当し保護の対象となる個人情報に該当しないと主張するが,訴訟 る。 控訴人は,訴訟記録は,民事訴訟法第91条により何人も閲覧できる情,,報であることから本件情報は本件条例第6条第1号ただし書アに該当し保護の対象となる個人情報に該当しないと主張するが,訴訟記録において,,も民事訴訟法第91条第2項以下において公開を禁止した弁論の場合は当事者及び利害関係を疎明した第三者以外に閲覧できず,訴訟記録の写しの請求も当事者及び利害関係を疎明した第三者以外に認められていないこ,。 ,とからすればすべて全面的に公開されているというわけではないまた民事訴訟法第91条以下の条文は,憲法第82条による裁判公開の原則を受けて制定されたものであるが,この裁判公開の原則も,裁判官全員一致によって公開が公序良俗に反すると決定された場合には非公開とされており,裁判の公開により個人の尊厳ないしプライバシー権の侵害が回復不可能な場合には,裁判の公開が後退すると解されており,民事訴訟法第91条第2項以下,同法第92条も同様に,他の法益(プライバシー権その他法益)との調整のために設けられた規定である。 (イ)裁判所での訴訟記録の閲覧及び謄写の可否は,裁判所が裁判公開の原則と個人情報等プライバシー保護の見地から独自の判断で行うものであるが,本件条例による個人情報の公開・非公開の決定は,同条例第1条の目的,趣旨と,個人のプライバシーよりさらに広い範囲の個人情報の保護との間の調整規定としての,同条例第6条第1号に該当するか否かで判断されるものであり,それぞれの制度趣旨を異にするものである。 なお,本件条例第6条第1号本文の原則は,一度侵害されたプライバシーの回復は困難であり,侵害された個人は計り知れない損害を被ることから,情報公開においてプライバシー保護の規定が必要であるが,何をもってプライバシーであるかを確定することは困難 侵害されたプライバシーの回復は困難であり,侵害された個人は計り知れない損害を被ることから,情報公開においてプライバシー保護の規定が必要であるが,何をもってプライバシーであるかを確定することは困難であることから,より客観的な基準として定められたものである。 (ウ)また,市と市民との裁判において,民事訴訟法第91条に基づき,利害関係がある者に訴訟記録の写しを交付することは甘受できるであろうが,情報公開条例に基づき,市が利害関係のない者に対し訴訟記録の写しまで交付することについては,それに伴い個人情報ないしプライバシーの開示がなされることに照らせば,市民感情にも反するというべきである。 (エ)本件条例において,法令上の閲覧可能情報が,開示することができる情報として取り扱われているのは,法令等により何人も閲覧等をすること- 6 -ができると定められた公簿(不動産登記簿,商業登記簿,著作権登録原簿等)の謄本等が公文書の一部である場合等においては,その情報は何人も容易に入手できる個人情報であるからであり,そのため,法令上閲覧可能とされていても,閲覧等を利害関係人に限定しているものや,一定期間のみ認めているものについては「法令上の閲覧可能情報」に含まれないと,解される。また,法令等に「何人も」と規定されていても,閲覧請求の目的が法令又は運用等により制限され,実質的に閲覧を認めるという趣旨でないときは「法令上の閲覧可能情報」に該当しないというべきである。 ,(オ)本件条例による情報公開とは,情報を閲覧に供し,又はその写しを交付することをいう(本件条例第2条第3号)が,民事訴訟法第91条第2項においては,写しの交付には,利害関係事由の疎明という要件の具備が必要であり,何人にも訴訟記録の写しの交付を許しているわけではない。 以上の事情に照らせ 条例第2条第3号)が,民事訴訟法第91条第2項においては,写しの交付には,利害関係事由の疎明という要件の具備が必要であり,何人にも訴訟記録の写しの交付を許しているわけではない。 以上の事情に照らせば,訴訟当事者の住所,氏名等の個人に関する情報を含む当該訴訟記録は,裁判所から現に閲覧制限を受けているか否かにかかわらず,本件条例第6条第1号アに該当しないというべきである。 イ控訴人(ア)被控訴人が本件条例第6条第1号に該当するとして非公開とした情報は,上福岡市の訴訟相手方の住所・氏名等であり,訴訟記録に記載された情報であるところ,民事訴訟法第91条第1項は「何人も,裁判所書記,,。」,,官に対し訴訟記録の閲覧を請求することができるとしておりまた同条第2項及び同法第92条は訴訟記録の閲覧制限を設けているものの,本件請求に関する訴訟記録では,上記条項により閲覧が制限されている事実もない。更に,起案書等に記載された個人情報は,訴訟記録から容易に知ることが可能な情報であり,保護すべき個人情報ともいい難い。 したがって,本件情報は,本件条例第6条第1号ただし書アに該当する情報であるから,これを非公開とした本件各処分は違法である。 (イ)被控訴人は,民事訴訟法第91条第1項の閲覧については,それを制限する規定(同法第92条等)が存在することを理由に,本件文書は本件条例第6条第1号ただし書アに該当しないと主張する。 しかしながら,情報を公開すべきか否かの判断は,対象となる情報について個別になされるべきである。そのため,一般の訴訟記録中に民事訴訟法第91条第2項又は第92条によって閲覧制限がなされるものがあるということは,本件条例第6条第1号ただし書アに該当しない訴訟記録が一,,部存在するということを示すにすぎず上記の閲覧制限規定 訟法第91条第2項又は第92条によって閲覧制限がなされるものがあるということは,本件条例第6条第1号ただし書アに該当しない訴訟記録が一,,部存在するということを示すにすぎず上記の閲覧制限規定を根拠にして本件訴訟記録のように閲覧が制限されていないものをも含めたすべての訴訟記録の情報が,同号ただし書アに該当しないとすることはできない。実際にも,訴訟記録について閲覧が制限されることは例外中の例外であり,そのような極端な例外を根拠として,すべての訴訟記録について本件条例第6条第1号ただし書アの該当性を否定することは,合理性を欠き,到底許されない。 - 7 -本件のように何ら閲覧制限がされていない訴訟記録に記載された本件情報については,何人も閲覧することができるのであるから,本件条例第6条第1号ただし書アに該当することは明白であり,同号を根拠としてなされた本件各処分は違法である。 (ウ)憲法第82条により裁判公開の原則が定められた趣旨は,訴訟過程を公開し,公衆の監視下におくことにより,裁判の公正さを担保することにあると解され,民事訴訟法第91条第1項において訴訟記録の閲覧等を定めたのも,上記憲法の趣旨に基づくものである。したがって,その目的を達するには,公開窓口を裁判所に限定する必然性はなく,むしろ多くの行政機関に広げることが望ましいというべきである。その意味で,本件条例のもとで訴訟記録を含む訴訟関連資料を公開することは,憲法が定める裁判公開原則の趣旨・目的に合致するものであり,一概に裁判公開制度と本件条例の制度の目的が異なるとはいえない。仮に本件条例による情報公開制度と裁判公開制度の趣旨・目的が異なるとしても,本件条例のもとで公開請求がなされた情報の公開・非公開の判定は,本件条例に基づいて行われなければならないのであり,そうする 仮に本件条例による情報公開制度と裁判公開制度の趣旨・目的が異なるとしても,本件条例のもとで公開請求がなされた情報の公開・非公開の判定は,本件条例に基づいて行われなければならないのであり,そうすると,本件情報が本件条例の非公開事由に該当しない場合には,すべて公開されるべきである。 (エ)他の法令等により何人についても閲覧が保障され,自由にメモを取ることが許されている公知の情報にあっては,プライバシーの保護のため情報公開条例で非開示とするだけの法的利益がない。 訴訟記録については,後記(2)のように閲覧の上メモを取ることも可能とされているのであるから,その情報は,訴訟の相手方当事者の住所,氏名部分を含め,公知の情報と認められるべきであり,非公開とすべき個人情報には当たらない。 (オ)なお,被控訴人は,民事訴訟法による訴訟記録については,閲覧に止まらず写しの交付を求めるためには,利害関係事由の疎明が必要であるとされているのに対し,本件条例では,公開される情報について,請求者が要求すれば,実施機関は写しを交付しなければならない点が異なるとの主張をするが,市を当事者とした訴訟の帰趨は,市の財政状態や行政運営能力に影響を及ぼすのであり,住民に直接影響を及ぼすものであるから,控訴人は,民事訴訟法第91条第2項の利害関係を有し,同法によっても写しの交付を受けることができるというべきである。 (2)本件条例第6条第5号該当性についてア控訴人(ア)第1事件及び第2事件の文書のうち,裁判所に提出されていない文書を公開することは,訴訟の一方当事者である市の訴訟活動の重要な秘密を明らかにすることになり,現在係属中の市の訴訟追行に著しい障害を及ぼすことは明らかである。 (),,,イまた裁判所に提出済みの準備書面答弁書及び証拠資料につい の訴訟活動の重要な秘密を明らかにすることになり,現在係属中の市の訴訟追行に著しい障害を及ぼすことは明らかである。 (),,,イまた裁判所に提出済みの準備書面答弁書及び証拠資料についてもこれらは訴訟活動中に作成された書面であることから,これらが作成され- 8 -た意図,訴訟上の請求の趣旨及び原因,その他争点との論理的関係を理解した上でなければ,それらの文書の正確な趣旨を理解することができず,これらをそのまま公開することは,相手方当事者以外の住民等において誤解を生ずるおそれが十分にあり,その結果,市と訴訟代理人との信頼関係及び協力関係を損なうなど,市の訴訟追行に著しい支障をきたすおそれがある。 (ウ)したがって,上記文書は,本件条例第6条第5号に規定する,市が行う争訟に関する情報であって,その性質上,公開することにより当該事務事業の公正かつ適正な執行を著しく困難にするおそれがあると認められるものに該当する。 (エ)控訴人は,市が裁判所に提出済みの答弁書,準備書面については,裁判所による閲覧制限もなされておらず,何人も閲覧できることから,本件条例第6条第5号に該当しないと主張するが,裁判所での閲覧には一定の限度があること,裁判所での閲覧等と情報公開条例による閲覧謄写とはそれぞれ別の制度であることからすれば,控訴人の主張は理由がない。 イ控訴人(ア)本件条例第6条第5号に該当するとされている情報のうち,資料提出起案と資料送付起案を除く各文書は,いずれも裁判所に提出され,当該訴訟の記録として裁判所に保管されているところ,訴訟記録については,民事訴訟法第91条第1項により何人も閲覧することができる情報であるから,これを本件条例に基づき公開したとしても,当該事務事業の執行に著しい支障を及ぼすおそれはない。したがって,本 記録については,民事訴訟法第91条第1項により何人も閲覧することができる情報であるから,これを本件条例に基づき公開したとしても,当該事務事業の執行に著しい支障を及ぼすおそれはない。したがって,本件文書の公開は,本件条例第6条第5号に該当しない。 また,裁判所に提出されていない資料提出起案及び資料送付起案についても,起案の対象となった資料が既に裁判所に提出されていることを担当職員が認めているのであって,これらの起案書はその対象となった資料が訴訟記録として提出され当該裁判所において「何人も」閲覧することが可能であることからすれば,上福岡市において,当該情報を非公開とする法的利益は認められない。 (イ)本件請求は,写しの交付による情報公開を求めるものであるが,そのことが,民事訴訟法により訴訟記録の閲覧のみを求める場合に比べて,特に係属中の訴訟に混乱を与えるということはない。 ,,すなわち民事訴訟法第91条第1項に基づく訴訟記録の閲覧においてはメモを取ることが認められており,閲覧時間や回数の制限もないため,複雑な図面や写真等を除いては,複写が許されるのと実質的に同様の状態にある。また,裁判所における訴訟記録の公開制度が,地方自治体の情報公開制度に比べて利用しにくいということもない。したがって,民事訴訟法により何人にも閲覧が認められている訴訟記録については,情報公開制度により請求者にその写しが交付されたとしても,その間に実質的な違いがなく,写しの交付が係属中の訴訟や被控訴人の訴訟事務の適正な遂行に著- 9 -しい困難を及ぼすおそれはない。 第3当裁判所の判断 別表3の「3-1」番号1ないし4「3-2」番号1「3-3」番号3ないし,,5,7ないし9の文書(非公開部分を相手方当事者の住所,氏名部分とする文書)の本件条例第6条第1 当裁判所の判断 別表3の「3-1」番号1ないし4「3-2」番号1「3-3」番号3ないし,,5,7ないし9の文書(非公開部分を相手方当事者の住所,氏名部分とする文書)の本件条例第6条第1号該当性について(1)前記第2,2のとおり,本件条例においては,上福岡市の情報公開の実施機関である被控訴人らが,その作成,取得,管理に係る情報を住民等の請求により公開する旨が定められているところ,そのうち「個人に関する情報であって,,特定の個人が識別され,又は識別されうるもの(同第6条第1号。以下「個人」識別情報」という)については,公開を要しないとされ,更に,個人識別情報。 が「法令又は条例の規定により,何人でも閲覧することができるとされている,情報」に当たる等の場合には,公開を要しない情報から除外される(公開を要する)と定められている(同第6条第1号ア。 )(2)そして,本件文書は,前記第2,3のとおり,第1,第2事件及び取下事件について作成,取得されたものと認められるが,それらに記載された訴訟の相手方当事者の住所,氏名部分は,公開を要しないとされる個人識別情報に該当することは明らかである。 (3)これに対し,控訴人は,本件における個人識別情報が,本件条例第6条第1号ただし書アにおける「法令の規定により,何人でも閲覧することができると,されている情報」に該当する旨主張する。 そこで検討するに,ア裁判所に係属した訴訟事件の記録の閲覧については,民事訴訟法第91条第1項において「何人も,裁判所書記官に対し,訴訟記録の閲覧を請求するこ,とができる」と定められている。 。 ,(,),,そうすると本件の個人識別情報相手方当事者の住所氏名は何人も同法第91条第1項に基づいて第1,第2事件及び取下事件の各訴訟記録 ,とができる」と定められている。 。 ,(,),,そうすると本件の個人識別情報相手方当事者の住所氏名は何人も同法第91条第1項に基づいて第1,第2事件及び取下事件の各訴訟記録を閲覧することにより,了知可能な情報であると認めざるを得ず,本件個人識別情報は,本件条例第6条第1号ただし書アに該当すると解する以外にない。 イなお,民事訴訟法第91条第2項においては,公開を禁止した口頭弁論に係る訴訟記録の閲覧は,当事者及び利害関係を疎明した第三者に限り請求し得ると定められ,同法第92条においては,秘密保護のための訴訟記録の閲覧の制限が定められているが,同法第91条第2項の措置が取られる事件はほとんどなく,同法第92条の措置が取られる事件もごく少数であることは,当裁判所に顕著な事実であり,現に第1,第2事件及び取下事件のいずれについてもそれらの措置が取られていないことは,弁論の全趣旨により明らかである。 そうであれば,上記の各規定が存在することを理由に,本件個人識別情報が本件条例第6条第1号ただし書アに該当しないと解することは,民事訴訟法に基づく訴訟記録の公開の原則及び実態にそぐわないものであり,相当でないというべきである。 また,本件条例による情報公開は「閲覧」のみでなく「写しの交付」の,,- 10 -方法によることも可能とされており(本件条例第2条第3号,他方,民事訴)訟法においては,当事者以外の第三者が訴訟記録の謄写,謄抄本の交付等を求めるためには,利害関係の疎明を要すると定められている(同法第91条第3項)が,このような公開方法の違いをもって,本件条例第6条第1号ただし書アが本件個人識別情報に適用されないと解することも適当でない。 (4)以上によると,本件個人識別情報は,非公開とすることができる情報には当た うな公開方法の違いをもって,本件条例第6条第1号ただし書アが本件個人識別情報に適用されないと解することも適当でない。 (4)以上によると,本件個人識別情報は,非公開とすることができる情報には当たらず,本件条例に従い公開を要するものといわざるを得ない。 ,,,,したがって上記文書について第1第2事件及び取下事件の相手方の住所氏名を非公開とした被控訴人の処分は,違法なものというべきである。 別表3の「3-1」番号6ないし8「3-2」番号4②ないし④,5,6の文書,(非公開部分を「全て」とする文書のうち,訴訟記録と同一内容のもの(訴訟記録文書の控え,写し等)の本件条例第6条第5号,第1号該当性について)(1)被控訴人は,上記文書が本件条例第6条第5号及び第1号に該当するから,非公開とすることが相当である旨主張する。 しかしながら,上記文書と同一の文書(原本等)等を含む訴訟記録は,前記1(3)アのとおり,民事訴訟法に基づき何人にも閲覧可能なものとして公開されているところである。 したがって,上記文書については,本件条例により公開されても,それ以前に既に訴訟記録として公開されている以上「争訟」である「事務事業の性質上,,公開することにより,当該事務事業の公正かつ適正な執行を著しく困難にするおそれがある(本件条例第6条第5号)と認めることは困難であり,同条号に定」める非公開事由には当たらないというべきである。 また,上記文書中における相手方当事者の住所,氏名部分も非公開事由に当たらないことは,前記1のとおりであり,更に,本件における控訴人の公開請求の方法が写しの交付であることをもって,上記文書の公開を制限できないことも,前記1のとおりである。 (2)したがって,上記文書を非公開とした被控訴人の処分も違法なものといわざるを得ない の公開請求の方法が写しの交付であることをもって,上記文書の公開を制限できないことも,前記1のとおりである。 (2)したがって,上記文書を非公開とした被控訴人の処分も違法なものといわざるを得ない。 別表3の「3-3」番号1,6の文書(非公開部分を「相手方当事者の住所,氏名等」とする文書のうち,訴訟記録と同一の文書(写し等)が添付されているもの)の本件条例第6条第1号該当性について上記についても,前記1及び2と同一の理由により,相手方当事者の住所,氏名その他の部分が非公開事由に当たらないものというべきであるから,上記部分を非公開とした被控訴人の処分も違法というべきである。 「」,「」,(「」 別表3の3-1番号53-2番号4①⑤の文書非公開部分を全てとする文書のうち,前記2の文書を除いたもの)の本件条例第6条第5号,第1号該当性について弁論の全趣旨によると,上記文書は,訴訟準備のため上福岡市の代理人となった弁護士の依頼により同市が作成した資料及び起案文書であることが認められる。 上記文書については,裁判所に提出されない,上福岡市の内部資料に止まるもので- 11 -あることが明らかであり,このような内部的な打ち合わせのための資料を公開することは,訴訟の一方の当事者である上福岡市の訴訟活動の方針,対応,訴訟準備の内容等に関し重大な影響と支障を与えるおそれがあるというべきである。そうすると,上記文書については,これらを公開することにより訴訟事務の適正な執行を著しく困難にするおそれがあるから,本件条例第6条第5号に該当するものというべきである。 したがって,上記文書を非公開とした被控訴人の処分については違法はなく,その処分は適法というべきである。 また,上記文書の性質からみて,部分公開を相当とする理由もないとい 当するものというべきである。 したがって,上記文書を非公開とした被控訴人の処分については違法はなく,その処分は適法というべきである。 また,上記文書の性質からみて,部分公開を相当とする理由もないというべきである。 第4 結論 以上によれば,控訴人の本訴請求のうち,別表3の「3-1」の番号1,2(ただし「訴訟代理人の口座情報」部分を除く,3,4,6ないし8の各文書の各「非,。)公開部分,同「3-2」の番号1,4②ないし④,5,6の各文書の各「非公開部」分,同「3-3」の番号1,3ないし9の各文書の各「非公開部分」に対する非公」開決定の取消しを求める部分は理由があるから認容し,その余は失当であるから棄却すべきである。 よって,本件控訴は一部理由があるから,これと異なる原判決を上記判断と抵触する限度で変更することとし,訴訟費用の負担について行政事件訴訟法第7条,民事訴訟法第67条第2項,第61条,第64条を適用して,主文のとおり判決する。 東京高等裁判所第五民事部裁判長裁判官根本眞裁判官持本健司裁判官竹内努は,転補につき,署名,押印することができない。 裁判長裁判官根本眞

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