令和4(ワ)22512 国家賠償請求事件

裁判年月日・裁判所
令和6年10月25日 東京地方裁判所
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判決文本文17,346 文字)

令和6年10月25日判決言渡同日原本領収裁判所書記官令和4年(ワ)第22512号国家賠償請求事件口頭弁論終結日令和6年7月5日判決 主文 1 被告は、原告に対し、55万円及びうち50万円に対する令和4年3月11日から、うち5万円に対する同年10月8日から、各支払済みまで年3分の割合による金員を支払え。 2 原告のその余の請求を棄却する。 3 訴訟費用は、これを35分し、その1を被告の負担とし、その余を原告の負担とする。 4 この判決は、第1項に限り、本判決が被告に送達された日から14日を経過したときは、仮に執行することができる。ただし、被告が35万円の担保を供するときは、その仮執行を免れることができる。 事実 及び理由第1 請求被告は、原告に対し、1892万円及びうち1720万円に対する令和4年3月11日から、うち172万円に対する同年10月8日から、各支払済みまで年3分の割合による金員を支払え。 第2 事案の概要本件は、原告が、東京拘置所長が平成19年10月11日から令和4年3月1日までの間、必要性がないにもかかわらず、原告を監視カメラが設置されている居室(以下「テレビ室」という。)に漫然と収容しこれを継続したことが違法な公権力の行使に当たるもので、これにより、原告のプライバシー権が侵害 され、精神的苦痛を被ったと主張して、被告に対し、国家賠償法(以下「国賠 法」という。)1条1項に基づき、慰謝料1720万円及びこれに対する違法行為後の日である令和4年3月11日(慰謝料の支払を求めた日の翌日)から支払済みまで民法所定の年3分の割合による遅延損害金並びに弁護士費用 。)1条1項に基づき、慰謝料1720万円及びこれに対する違法行為後の日である令和4年3月11日(慰謝料の支払を求めた日の翌日)から支払済みまで民法所定の年3分の割合による遅延損害金並びに弁護士費用172万円及びこれに対する違法行為後の日である令和4年10月8日(訴状送達の日の翌日)から支払済みまで民法所定の年3分の割合による遅延損害金の支払 を求めた事案である。 1 関係法令等の定め本件に関係する法令等の定めは別紙「関係法令等」記載のとおりである(甲1、10、弁論の全趣旨)。 2 前提事実(当事者間に争いのない事実及び後掲各証拠(証拠番号については、 特に断りのない限り枝番を含む。)等により容易に認められる事実。証拠等の掲記のない事実は、当事者間に争いがない。)(1) 当事者ア原告は、現在、死刑確定者として、東京拘置所に収容されている者である。 イ被告は、東京拘置所の設置者である。 (2) 原告に係る刑事被告事件の経過ア原告は、平成19年5月21日、千葉地方裁判所において、合計4名の被害者に係る殺人、傷害致死、死体遺棄、逮捕監禁致傷、逮捕監禁及び監禁の罪により、死刑判決を言い渡された(以下「第一審死刑判決」という。)。 なお、以下、原告に係る裁判について言及する場合は、特に断りのない限り、当該刑事被告事件における審級や判決等のことを指す。 イ原告は、第一審死刑判決に対し、事実誤認及び量刑不当を理由として控訴したが、東京高等裁判所は、平成21年8月28日、原告の控訴を棄却する旨の判決(以下「控訴棄却判決」という。)を言い渡した。 さらに、原告は、同月31日、控訴棄却判決を不服として上告したが、 最高裁判所は、平成25年2月 、原告の控訴を棄却する旨の判決(以下「控訴棄却判決」という。)を言い渡した。 さらに、原告は、同月31日、控訴棄却判決を不服として上告したが、 最高裁判所は、平成25年2月28日、原告の上告を棄却する旨の判決(以下「上告棄却判決」という。)を言い渡し、同年3月16日、原告の死刑判決が確定した。 (3) 原告のテレビ室への収容の経過ア原告は、第一審死刑判決の言渡しを受けた後である平成19年10月1 1日、未決拘禁者として、千葉刑務所から東京拘置所に入所し(以下、単に「入所」という。)、東京拘置所長は、同日、要注意者等処遇細則(東京拘置所長平成19年3月15日付け達示第10号(同平成26年5月1日付け達示第13号により一部改正)。以下「本件達示」という。)7条1項に基づき、原告を自殺・自傷の要注意者(同2条3項2号)に指定した上 で、テレビ室に収容した(乙1。以下、東京拘置所長が、平成19年10月11日から後記ウの令和4年3月2日までの間、原告をテレビ室に収容したことを「本件収容」という。)。 イ原告は、平成25年3月27日、東京拘置所職員から判決確定の言渡しを受け、同日以降、死刑確定者としての処遇が開始された。 ウ原告については、令和4年3月2日、テレビ室から監視カメラの設置されていない居室に転室となった。 (4) 東京拘置所のテレビ室の構造等東京拘置所に在所する死刑確定者は、別紙「図面」の三畳半(5.4平方メートル)程度の居室に収容される。そして、その居室がテレビ室の場合、別 紙「図面」の中央部の丸印(●)が付された箇所の天井に監視カメラが設置されているほか、高さ約83cm、幅約73cmの可動式の衝立(以下、単に「衝立」という。)が備え付けられ レビ室の場合、別 紙「図面」の中央部の丸印(●)が付された箇所の天井に監視カメラが設置されているほか、高さ約83cm、幅約73cmの可動式の衝立(以下、単に「衝立」という。)が備え付けられている。(乙20、弁論の全趣旨)(5) 本件訴訟の提起に至る経緯等ア原告は、令和4年3月10日、東京拘置所長による本件収容は違法なプ ライバシー侵害であると主張して、被告に対し、国賠法1条1項に基づき、 1730万円の損害賠償の支払を求めたが、被告は、同支払をしなかった(甲5、6、弁論の全趣旨)。 イ原告は、令和4年9月3日、本件訴訟を提起し、本件訴状は、同年10月7日、被告に対し送達された(当裁判所に顕著な事実)。 3 争点及びこれに関する当事者の主張 (1) 本件収容の国賠法上の違法性の有無(争点1)(原告の主張)以下のとおり、東京拘置所長は、原告についてその未決拘禁者としての収容期間及び死刑確定者としての期間を通じて、必要性を十分検討することなく、原告をテレビ室に収容し、それを漫然と継続したものであって、職務上 通常尽くすべき注意義務を尽くさなかったものである。したがって、本件収容は、国賠法上、違法であるとの評価を免れない。 ア東京拘置所長が原告をテレビ室に収容するための要件東京拘置所長が原告を適法にテレビ室に収容するためには、①原告が要注意者(本件達示2条3項2号ア)に該当し、かつ、②原告をテレビ室に 収容する具体的な必要性(同5条)が認められなければならない。 イ未決拘禁者としての平成19年10月11日から平成25年3月27日までの期間(以下「未決拘禁者期間」という。)におけるテレビ室への収容について未決拘禁者期間の原告には、同期間の原告 イ未決拘禁者としての平成19年10月11日から平成25年3月27日までの期間(以下「未決拘禁者期間」という。)におけるテレビ室への収容について未決拘禁者期間の原告には、同期間の原告の面接における発言や処遇担 当者が観察した動静、外部交通や物品制限の状況、宗教教誨の実施等に照らすと、「特に視察の必要がある」とは認められないし(上記ア①)、テレビ室に収容することを「必要と認める場合」でもない(上記ア②)。 ウ死刑確定者としての平成25年3月27日から令和4年3月2日まで(以下「死刑確定者期間」という。)のテレビ室への収容について 死刑確定者期間の原告は、死刑判決が確定している以上、「無期懲役刑以 上の求刑があった者」でも「無期懲役以上の判決が予想され(中略)る者」でもないから、本件達示2条3項2号アに基づき、要注意者に該当するということはあり得ない(上記ア①)。 その上、死刑確定者期間の原告には、上記イと同様に、同期間の原告の面接における発言等に照らすと、「特に視察の必要がある」とは認められな いし(上記ア①)、テレビ室に収容することを「必要と認める場合」でもない(上記ア②)。 (被告の主張)以下のとおり、本件収容について、東京拘置所長に裁量権の逸脱等はなく、職務上の注意義務違反はないから、国賠法上の違法は認められない。 ア原告の収容に関する東京拘置所長の裁量の程度等東京拘置所のような刑事施設においては、被収容者の収容を確保し、その処遇のための適切な環境及びその安全かつ平穏な生活を確保するため、規律及び秩序の維持の妨げとなる行為を未然に防止し、あるいは早期に発見することが最重要であり、被収容者の動静を確認する必要性が高い。 めの適切な環境及びその安全かつ平穏な生活を確保するため、規律及び秩序の維持の妨げとなる行為を未然に防止し、あるいは早期に発見することが最重要であり、被収容者の動静を確認する必要性が高い。 一方、被収容者は、一般社会と異なり、行動が相当程度制限されており、その制限に違反すれば懲罰等の対象にもなるため、その動静は基本的に常に巡回視察の対象となり、一般国民と比較してプライバシーの保護の要請が後退することもやむを得ない。 そして、刑事施設の職員による巡回視察には、人員的な側面からの限界 があり、カメラによる視察は、視認の態様が間接的であり、被収容者に与える心理的負担が格段に増大するものではないことに鑑みても、その限界を補完するものとして有用である。 そうすると、東京拘置所の被収容者である原告をテレビ室に収容することについては、東京拘置所長の合理的な裁量判断に委ねられており、その 判断が重要な事実の基礎を欠くか、又は社会通念に照らし著しく妥当性を 欠くものと認められる場合に限って、裁量権の逸脱又は濫用として、国賠法上違法となると解すべきである。 イ未決拘禁者期間のテレビ室への収容について第一審で死刑判決を受け、事実誤認及び量刑不当を理由に控訴をしていたという入所時の原告の状況からすると、原告が自身の前途を悲観して心 情不安定に陥るなどして突発的に自殺・自傷行為等に及ぶことが危惧されていたのであり、このような状況に関する当時の原告の発言等をも踏まえると、東京拘置所長が未決拘禁者期間に原告をテレビ室に収容してその動静を綿密に視察する必要があると判断したことは、必要かつ合理的な措置であり、裁量権の逸脱又は濫用は認められない。 ウ死刑確定者期間のテレビ 拘禁者期間に原告をテレビ室に収容してその動静を綿密に視察する必要があると判断したことは、必要かつ合理的な措置であり、裁量権の逸脱又は濫用は認められない。 ウ死刑確定者期間のテレビ室への収容について死刑確定者は、一般的に、いずれ生命を絶たれることなどによる絶望感にさいなまれて自暴自棄となったり、極度に不安定な精神状態を招来したりし、自己の身体・生命を賭して逃亡を試みるなどのおそれがあり、実際、過去に自殺事案が複数件発生しているなど、一般受刑者や未決拘禁者と比 較して高度な警戒が必要となるところ、これは、事実誤認や量刑不当を理由として上訴により死刑判決を争い、判決確定後ほどなくして、弁護士と再審請求の打ち合わせを行ったり、減刑を求める恩赦出願をしたりしていた原告にも当てはまる。 その上で、元婚約者の存在や同人との外部交通の状況、死刑確定者期間 における面接時の原告の発言、宗教教誨の頻度等に照らすと、東京拘置所長が死刑確定者期間に原告をテレビ室に収容してその動静を綿密に視察する必要があると判断したことは、必要かつ合理的な措置であり、裁量権の逸脱又は濫用は認められない。 (2) 原告の損害の有無及びその額(争点2) (原告の主張) ア慰謝料原告は、本件収容により、約14年4か月にもわたって、厳重な監視体制に置かれ、プライバシー権を侵害され続けたものであり、これによって多大な精神的苦痛を被った。このような原告の精神的苦痛を慰謝するに足りる金額は1720万円を下らない。 イ弁護士費用原告は、被告が任意で慰謝料を支払わなかったため、弁護士に委任して本件訴えを提起せざるを得なくなった。このような原告の弁護士費用のうち、前 万円を下らない。 イ弁護士費用原告は、被告が任意で慰謝料を支払わなかったため、弁護士に委任して本件訴えを提起せざるを得なくなった。このような原告の弁護士費用のうち、前記アの慰謝料額の1割に相当する172万円は、被告の違法行為と相当因果関係のある損害である。 (被告の主張)いずれも否認ないし争う。 本件収容による原告のプライバシー権に対する侵害は、テレビ室以外の居室に収容された他の被収容者と比較して特別なものではなかったし、その程度も殊更大きいものではなかった。 第3 当裁判所の判断 1 認定事実前提事実及び後掲各証拠等によれば、以下の事実が認められる。 (1) 原告の収容状況等ア本件収容中の原告の動静 (ア) 東京拘置所における原告の動静の観察状況東京拘置所においては、2か月ごとに、平成28年12月頃までは「自殺要注意者判定表」を、平成29年2月頃からは「自殺危険性判定表」を用いて、原告の動静を観察し、その把握に努めていた(弁論の全趣旨)。 なお、自殺危険性判定表に関し、法務省矯正局長は、同表が医学や心 理学の専門家でなくても、自殺の危険性について初期の見立てができる よう考案されたものであり、自殺の危険性を低く見積もって実際に事故が起きるよりも、高く見積もって事故を防ぐ方が、被収容者及び施設に与える影響ははるかに小さいことを常に理解するよう促している(甲9)。 (イ) 原告に係る自殺要注意者判定表の記載(乙2)原告に係る自殺要注意者判定表には、要旨、以下の記載がある。 a 平成19年10月頃第一審判決が死刑判決であり、施設環境 殺要注意者判定表の記載(乙2)原告に係る自殺要注意者判定表には、要旨、以下の記載がある。 a 平成19年10月頃第一審判決が死刑判決であり、施設環境の変化や控訴審の進行等から、突発的な自殺・自傷の異常行動に及ぶことが憂慮される。 b 平成19年12月頃から同20年10月頃までの間特異動静等は見受けられず、落ち着いて生活を送っている。 c 平成20年12月頃から同25年2月頃までの間特異動静等は見受けられないが、権利意識が強い点に注意を要する。 d 平成25年4月頃から同28年12月頃までの間死刑判決が確定したものの、特異動静等は見受けられない。しかし、権利意識が強く、厳正な処遇が必要である。 (ウ) 原告に係る自殺危険性判定表の記載(乙3)原告に係る自殺危険性判定表には、要旨、以下の記載がある。 a 平成28年12月16日精神障害・症状、自殺未遂、自傷行為、喪失体験はいずれもなく、観察結果としても、「自殺したがっている・自殺したいと言う(口頭 /文面)」、「自殺のことを考えている」、「悲観/絶望している」といった様子はないが、偏屈で権利意識が強い。 ただし、死刑確定者であり、将来を悲観して突発的に自殺・自傷行為に及ぶおそれが顕著に認められ、現在もそのおそれが解消していないため、最高度の「レベル3(危険度高)自殺の危険性が非常に高い」 ものとして処遇する必要がある。 b 平成29年2月頃から令和4年2月頃までの間権利意識が強く、厳正な処遇が必要である。 イテレビ室収容中の面接に ものとして処遇する必要がある。 b 平成29年2月頃から令和4年2月頃までの間権利意識が強く、厳正な処遇が必要である。 イテレビ室収容中の面接における原告の様子(ア) 東京拘置所における原告との面接の実施状況東京拘置所においては、おおむね数か月から1年に1回の頻度で原告 と面接を実施し、その心情等の把握に努めていた(弁論の全趣旨)。 (イ) 具体的な面接状況a 平成19年10月11日(乙4・1頁)原告は、平成19年10月11日(入所の当日)に実施された面接において、入所した感想として、裁判を頑張っていきたい旨の発言を し、面接実施者にも、落ち着いた態度で質問等に答え、大人しさを感じると評価されている。ただし、面接実施者は、今後の公判状況による心情の変化等の突発的な異常行動も憂慮されるとも評価している。 b 平成19年12月19日(乙4・2頁)原告は、平成19年12月19日(控訴審の係属中)に実施された 面接において、不安などはなく、心配事も裁判や洗濯などのつまらないことばかりであるといった趣旨の発言をしている。面接実施者には、穏やかに面接に対応していたと評価されている。 c 平成20年10月頃(乙4・3頁)原告は、平成20年10月頃(控訴審の係属中)に実施された面接 において、裁判で頭がいっぱいでやる事が多く大変である旨の発言をしている。面接実施者には、読書、筆記に専念しており、落ち着いて生活していると評価されている。 d 平成21年12月16日(乙4・4頁)原告は、平成21年12月16日(控訴棄却の約3か月後)に実施 読書、筆記に専念しており、落ち着いて生活していると評価されている。 d 平成21年12月16日(乙4・4頁)原告は、平成21年12月16日(控訴棄却の約3か月後)に実施 された面接において、精神的に安定しており、宗教教誨の機会が設け られることに関し東京拘置所に感謝している旨の発言をしている。面接実施者にも、受け答え等は普通で、上告審に専念し、心情は安定していると思われると評価されている。 e 平成22年12月10日(乙4・5頁)原告は、平成22年12月10日(上告審の係属中)に実施された 面接において、裁判が心配であるといった趣旨の発言をしている。また、面接実施者には、裁判に対する不満を長々と述べていた、権利意識が強く、自分本位な発言をすると評価されている。 f 平成23年12月2日(乙4・6頁)原告は、平成23年12月2日(上告審の係属中)に実施された面 接において、裁判が心配であるといった趣旨の発言をしている。また、自らの裁判に関し、自らのことを良く書いておいてほしいと述べ、面接実施者には、何事も自分の都合のいいように考えると評価されている。 g 平成24年12月19日(乙4・7頁) 原告は、平成24年12月19日(上告審の係属中)に実施された面接において、心情は良好で、心配事も特にないといった趣旨の発言をしている。面接実施者には、上告審に向けて心情的に安定していると評価されている。 h 平成25年3月1日(乙4・8頁) 原告は、平成25年3月1日(上告棄却の翌日)に実施された面接において、上告棄却は覚悟していたからあまりショックはなく、控訴棄却の方がシ h 平成25年3月1日(乙4・8頁) 原告は、平成25年3月1日(上告棄却の翌日)に実施された面接において、上告棄却は覚悟していたからあまりショックはなく、控訴棄却の方がショックだった旨の発言をしている。面接実施者には、動揺は見受けられないが、内心は動揺していると思料されるので、今後も突発行為には注意していきたいと評価されている。 i 平成25年12月16日(乙4・9頁) 原告は、平成25年12月16日(判決確定後)に実施された面接において、死刑確定者として悩み事や心配事はたくさんあるものの、これといって改めて言うべき心情はない旨の発言をしている。面接実施者には、判決確定直後と比べると落ち着いていると評価されている。 j 平成26年12月頃から令和3年12月13日まで(乙4・10な いし17頁)原告は、平成26年12月頃以降(判決確定後)に実施された面接において、現在の心情について特に変わりはない、心配事や悩み事について特にない旨の発言をしている。面接実施者には、一貫して、自己中心的で権利意識が強いほか、屁理屈が多いなどと評価されている。 ウ原告による再審請求及び恩赦出願等原告は、平成25年5月17日、弁護士と再審請求に関する打合せを行った(乙5)。 その後、原告は、平成25年10月7日、減刑を求める恩赦を出願し、同年12月5日、中央更生保護審査会委員長に恩赦を上申した。しかし、 中央更生保護審査会は、恩赦不相当の議決をし、東京拘置所の職員が同議決の内容を原告に告知した。(乙6)エ原告の外部交通の状況(ア) 婚約者原告が平成25年から令和4年までの間に、同 、恩赦不相当の議決をし、東京拘置所の職員が同議決の内容を原告に告知した。(乙6)エ原告の外部交通の状況(ア) 婚約者原告が平成25年から令和4年までの間に、同人の元婚約者(以下、 単に「元婚約者」という。)との間で実施した外部交通の件数は、別紙「外部交通件数」記載のとおりである。 原告は、元婚約者に対し、手紙をくれず、面会もできず、心通じ合える相手もいなくて精神的にかなりまいっている旨(平成26年7月24日)、こっちはボロボロである旨(同年10月9日)、恩赦不相当などあ れこれも全然うまくいかなくて精神的にまいってきているが、何とか頑 張るしかない旨(平成27年2月6日)、明日にはどうなるか何の保障もないような、そんな状況・状態だから、すぐに逢いに来てほしい旨(平成29年1月18日)、昨日2名の死刑執行があった、すぐに逢えないのはわかっていても、今は無性に逢いたくてたまらない、でも早く逢いに来てくれようと元婚約者が必死に頑張ってくれているから我慢して頑 張ろうと思う、来年もよろしく、などと(平成30年12月28日)記載した信書を送付している。その他、原告は、元婚約者との間で、互いの心情を吐露した信書のやり取りをしている。 (甲7、14ないし16、18、19、乙7、13、14、24)。 (イ) 家族及び支援者 原告は、家族や支援者との間でも外部交通を実施しているところ、支援者との間では、支援者から、死刑廃止をスタッフが話し合わないと非難する原告は勘違いをしているなどと批判されたのに対し、自分の言動を当該支援者に非難されるのは承服できないなどと反発する態度を示す(平成28年6月)などしている(乙4、17)。 オ原告に対する物品の をしているなどと批判されたのに対し、自分の言動を当該支援者に非難されるのは承服できないなどと反発する態度を示す(平成28年6月)などしている(乙4、17)。 オ原告に対する物品の貸出状況原告は、衣類の修繕のために複数回、縫い針の貸与を求めており、これが不許可とされたことは一度もない。これらの時点において、原告に貸し出された縫い針は、太さが0.71ミリメートル、長さが39.4ミリメートルのものであった。 なお、本件訴訟における原告からの求釈明に応じて被告から提出された当時の処遇担当者作成に係る報告書によれば、針の貸与日時及び回数については、針の貸与に当たってこれらを記録しておらず、不明である旨記載されている。 (甲20、乙16、弁論の全趣旨) カ原告に対する宗教教誨の実施状況 原告は、平成19年10月29日から令和4年1月7日までの間、別表の「教誨実施日」欄記載の各年月日において、「キリスト教・仏教の別」欄記載の宗教の教誨を受けた(乙28)。 (2) テレビ室における監視状況東京拘置所のテレビ室に設置された監視カメラ(約30万画素)は、テレ ビ室の全体を映すことができる。そのため、被収容者が排泄時にテレビ室の角に設置された便器を利用する際、被収容者の姿勢次第では、その陰部が映し出されることとなる。なお、このとき、衝立を便器の真横に設置したとしても、テレビ室の全体を真上から映し出す監視カメラに陰部が映し出されるのを妨げることはできない。(乙20) (3) 原告がテレビ室から同カメラの設置されていない居室に転室した経緯等前提事実(3)ウのとおり、原告は、令和4年3月2日、テレビ室から監視カメラのない居室に転室になったところ、当時の処遇担当者 (3) 原告がテレビ室から同カメラの設置されていない居室に転室した経緯等前提事実(3)ウのとおり、原告は、令和4年3月2日、テレビ室から監視カメラのない居室に転室になったところ、当時の処遇担当者の報告書によれば、原告について上記のとおり転室となったのは、原告が令和4年1月に元婚約者と約10年ぶりの面会を果たし、同月頃から同人との信書のやり取りを再 開したこと、その信書の記載内容や近年の面接状況、日頃の動静等を総合的に判断した結果、原告に対する自殺・自傷の要注意者の指定は継続したまま、テレビ室への収容の必要まではないと判断されたことによる旨記載されている(乙15)。 (4) 収容中の死刑囚等の自殺に関する事案 ア昭和52年5月21日、東京拘置所に収容されていた死刑確定者(昭和46年5月20日確定)が独居房の窓ガラスを割り、破片を首に突き刺して自殺した(乙22)。 イ平成11年11月頃、札幌拘置支所に収容されていた死刑確定者(平成5年12月頃確定)が入浴時に貸し出された安全かみそりを用いて自殺し た(乙18)。 ウ平成13年2月23日、第一審で死刑判決を言い渡され、福岡拘置所に収容されていた控訴中の未決拘禁者が大量の精神安定剤と睡眠導入剤を同時に摂取して自殺した(乙19)。 エ令和2年1月26日、東京拘置所に収容されていた死刑確定者(平成26年4月頃確定)が頸部を切って自殺した(甲12、乙8、9)。 オ令和4年5月24日、東京拘置所に収容されていた死刑確定者が自殺を企図し、同拘置所職員により未然に防止される事案が発生した(乙23)。 2 争点1(本件収容の国賠法上の違法性の有無)について(1) テレビ室への収容が国賠法上違法となる場合 殺を企図し、同拘置所職員により未然に防止される事案が発生した(乙23)。 2 争点1(本件収容の国賠法上の違法性の有無)について(1) テレビ室への収容が国賠法上違法となる場合ア国賠法1条1項は、国又は公共団体の公権力の行使に当たる公務員が個 別の国民に対して負担する職務上の法的義務に違背して当該国民に損害を加えたときに、国又は公共団体がこれを賠償する責任を負うことを規定するものである(最高裁平成13年(行ツ)第82号、第83号、同年(行ヒ)第76号、第77号同17年9月14日大法廷判決・民集59巻7号2087頁参照)。したがって、刑事施設の長の被収容者に対する行為が同項にい う違法であるというためには、当該刑事施設の長が当該被収容者に対して負担する職務上の法的義務に違背したことが必要である。 そして、刑事施設の長が被収容者に対して負担する職務上の法的義務に違背したということができるのは、当該刑事施設の長が職務上通常尽くすべき注意義務を尽くすことなく漫然と当該行為をしたと認め得るような事 情がある場合に限られる(最高裁平成元年(オ)第930号、第1093号同5年3月11日第一小法廷判決・民集第47巻4号2863頁参照)。 イところで、刑事施設は、刑事訴訟法の規定により勾留される者や死刑の言渡しを受けて拘置される者などを収容して必要な処遇を行う施設である(刑事収容施設法3条)ところ、その規律・秩序は、適正に維持されなけ ればならず(同法73条1項)、刑事施設の長は、被収容者の収容を確保す る等のため必要な限度で一定の措置を執ることができる(同条2項)。そして、被収容者の収容の確保には、当然、被収容者による自殺又は自傷を防止することも含まれており、被収容者が主として休 確保す る等のため必要な限度で一定の措置を執ることができる(同条2項)。そして、被収容者の収容の確保には、当然、被収容者による自殺又は自傷を防止することも含まれており、被収容者が主として休息及び就寝のために使用する場所である居室は、刑事施設の長が指定することとされている(同法4条3項)。しかるところ、同法は、未決拘禁者又は死刑確定者の居室に 関し、その形態として、未決拘禁者につき同法35条2項、死刑確定者につき同法36条2項を定め、そのほかに保護室への収容につき同法79条を定める以外に、何らの定めも置いていないことからすると、同法は、以上の定めに反しない限り、被収容者の居室の指定を刑事施設の長の合理的な裁量に委ねる趣旨であると解される。 とりわけ、死刑判決の言渡しを受けた未決拘禁者や死刑確定者については、死刑の執行により生命を絶たれることの恐怖感等から自暴自棄になるなど精神的に不安定な状態をきたしたり、極度に不安定な精神状態を招来したりする可能性も否定できないことから、このような被収容者を処遇すべき立場にある刑事施設の長としては、その他の被収容者と比較して、そ の心情の安定をはかるべく必要な措置をとるのみならず、居室内におけるその動静をよりつぶさに観察することが求められるというべきであって、そのような観点から、自殺や自傷行為を防止すべく、必要な措置として、かかる被収容者をテレビ室に収容することについても合理的な裁量として認められるというべきである。他方で、前提事実(4)及び認定事実(2)のとお り、東京拘置所のテレビ室は、三畳半程度の狭い居室の中央部に監視カメラが設置されており、当該被収容者に24時間体制で日常生活の全てを監視されていると感じさせ、不快感や不安感等の心理的負担を与えるのみならず、被 所のテレビ室は、三畳半程度の狭い居室の中央部に監視カメラが設置されており、当該被収容者に24時間体制で日常生活の全てを監視されていると感じさせ、不快感や不安感等の心理的負担を与えるのみならず、被収容者の排泄時の姿勢等によっては、その陰部が映し出されるのを回避することができないのであるから、この点において、被収容者のプ ライバシーの制約の程度としては、極めて強いものであるといわざるを得 ない。 そうすると、このようなテレビ室への収容については、死刑判決の言渡しを受けた未決拘禁者や死刑確定者に対するものであっても、刑事施設の長の裁量が無制約に認められるものではないというべきであって、刑事施設の長のテレビ室収容に対する必要性の判断が重要な事実の基礎を欠くか、 又は社会通念に照らし著しく妥当性を欠くものと認められる場合においては、当該刑事施設の長が裁量権を逸脱又は濫用し、もって職務上通常尽くすべき注意義務を尽くすことなく漫然と当該被収容者に損害を加えたものとして、国賠法上、違法となると解するのが相当である。 (2) 本件収容の国賠法上の違法性について 上記(1)の説示を踏まえて、本件収容の国賠法上の違法性について検討する。 ア本件収容の開始の違法性まず、東京拘置所長は、原告が東京拘置所に入所した平成19年10月11日に、原告をテレビ室に収容しているところ(前提事実(3)ア)、原告は、当時、第一審で死刑判決を言い渡され(同(2)ア)、事実誤認及び量刑 不当を理由として控訴していた(同イ)のであり、生命の断絶を内容とする究極の刑罰というべき死刑判決を受けたことによる衝撃ないし絶望感、死への恐怖については、想像を絶するものがあり、原告が第一審死刑判決を受けて未だ日が浅く いた(同イ)のであり、生命の断絶を内容とする究極の刑罰というべき死刑判決を受けたことによる衝撃ないし絶望感、死への恐怖については、想像を絶するものがあり、原告が第一審死刑判決を受けて未だ日が浅く、その衝撃等が癒えたことを窺わせる事情が認められないことからすれば、原告が面接実施者から落ち着いた態度で大人しい と評価されていた(認定事実イ(イ)a)としても、原告については、精神的に不安定な状態に陥りやすく、突発的な自殺・自傷の異常行動に及ぶことが憂慮される状況にあったというべきである。 このような原告の状況からすると、上記(1)のとおり、本件収容が原告のプライバシーにつき極めて強い制約を伴うものであることを踏まえても、 本件収容の必要性は否定できず、東京拘置所長が本件収容を開始したこと につき、重要な事実の基礎を欠くとはいえないし、社会通念に照らし著しく妥当性を欠くともいえないから、裁量権を逸脱又は濫用したとは認められない。 よって、東京拘置所長が本件収容を開始したことが、国賠法上違法であるとは認められない。 イ本件収容の継続の違法性東京拘置所長は、原告が東京拘置所に入所した平成19年10月11日以降、令和4年3月2日まで、原告のテレビ室への収容を継続している(前提事実(3))ため、本件収容の継続につき、国賠法上の違法性を検討する。 (ア) 未決拘禁期間について 第一審死刑判決については、平成21年8月28日に控訴棄却となり、同25年2月28日には上告棄却となって、同年3月16日に判決確定に至っているところ(前提事実(2)イ)、このような死刑判決を言い渡された未決拘禁期間中の原告については、第一審で死刑判決を言い渡され、上記イのとおり生命 上告棄却となって、同年3月16日に判決確定に至っているところ(前提事実(2)イ)、このような死刑判決を言い渡された未決拘禁期間中の原告については、第一審で死刑判決を言い渡され、上記イのとおり生命の断絶を内容とする刑罰である死刑が確定するか否 かの瀬戸際にあり、死刑に処せられる恐怖感等にさらされ続けていた立場にあったもので、実際に、面接実施者に対し、複数回にわたり裁判が心配である旨の発言をしていたものであるから(認定事実(1)イ(イ)e、f)、同期間中の原告に関し、2か月ごとに行われる動静観察において特異な動静等が見受けられず(認定事実(1)ア(イ)aないしc)、おおむね1年ご とに行われる面接においても心情的に安定し落ち着いていると評価されていたこと(同(1)イ(イ)bないしg)、頻繁に宗教教誨が行われていたこと(同(1)カ)を踏まえても、なお、依然として精神的に不安定な状態に陥りやすく、突発的な自殺・自傷等の異常行動に及ぶことが憂慮される状況にあったといわざるを得ない。 このような未決拘禁期間中の原告の状況に加えて、第一審で死刑判決 を受けた未決拘禁者が拘置所内で自殺した実例が過去に存在すること(同(4)ウ)からすると、上記(1)のとおり、本件収容が原告のプライバシーにつき、極めて強い制約を伴うものであることを踏まえても、本件収容の継続の必要性は未だ否定できず、東京拘置所長が未決拘禁期間中、本件収容を継続したことにつき、重要な事実の基礎を欠くとはいえない し、社会通念に照らし著しく妥当性を欠くともいえないから、裁量権を逸脱又は濫用したとは認められない。 よって、東京拘置所長が未決拘禁期間中、本件収容を継続したことにつき、国賠法上、違法であるとは認められない。 (イ もいえないから、裁量権を逸脱又は濫用したとは認められない。 よって、東京拘置所長が未決拘禁期間中、本件収容を継続したことにつき、国賠法上、違法であるとは認められない。 (イ) 死刑確定期間について 続いて、死刑確定期間における本件収容の継続につき、その違法性の有無を検討する。 原告については、平成25年2月28日に上告棄却判決が言い渡されて、同年3月16日に判決確定に至り(前提事実(2)イ)、原告は、同月27日に東京拘置所職員から判決確定の言渡しを受けたところ(同(3)イ)、 死刑判決の確定は、死刑の執行によりいずれ生命が断絶されるのが確定したことを意味するのであって、これにより、社会復帰はもとより生への希望も失われるのであるから、死刑確定者に与える衝撃、絶望感が想像を絶するものであることは推察するに難くない。実際、原告は、平成26年の元婚約者との信書において精神的につらい心情を吐露したり (認定事実(1)エ(ア))、平成28年には支援者から批判された際に反発する態度を示すなど、他者と衝突する状況もうかがわれる(同(1)エ(イ))。 このような死刑確定直後における死刑確定者の一般的な心情や、上記の実際の原告の言動等を踏まえると、死刑が確定して日が浅い時期における原告については、精神的に不安定な状態に陥り、あるいは自暴自棄と なって、突発的な自殺・自傷等の異常行動に及ぶことが憂慮される状況 にあったといわざるを得ない。そして、以上に加えて、死刑判決の確定から数年が経過した後に死刑確定者が自殺をした事案が過去に3件も存在すること(同(4)ア、イ、エ)からすると、処遇担当者の立場からは、かような死刑確定者の動静を慎重に観察する必要があったということができる。 死刑確定者が自殺をした事案が過去に3件も存在すること(同(4)ア、イ、エ)からすると、処遇担当者の立場からは、かような死刑確定者の動静を慎重に観察する必要があったということができる。 しかしながら、原告は、東京拘置所に入所した平成19年10月11日以降、本件収容期間中、一貫して特異な動静等をすることがなかった(認定事実(1)ア(イ))のであり、判決確定後の面接においても、悩み事や心配事はたくさんあるといった死刑確定者として当然のことを述べるだけで、予期せぬ行動に及ぶことを仄めかすような言動は全く見当たらず、 それ以降の面接においては、特に変わりがないと述べるだけであった(同(1)イ(イ)i、j)。また、原告自身、元婚約者、家族等と自発的に外部交通を行うことや、頻繁に宗教教誨を受けたりすること(同(1)エ、カ)により、継続的に心情の安定に努めていたのであるから、死刑確定期間中の原告については、精神的に不安定な状態に陥り、突発的な自殺・自傷 の異常行動に及ぶことが憂慮される状況が徐々に解消されつつあったということができる。さらに、東京拘置所における原告の処遇担当者の認識としても、太さが0.71ミリメートル、長さが39.4ミリメートルというサイズで、飲み込むなどすれば生命や身体に重大な支障を及ぼし得るような縫い針を複数回にわたって原告に貸与していたこと(同(1) オ)からすると、原告が突発的な自殺・自傷の異常行動に及ぶ可能性をさほど大きく評価していなかったことが窺える(なお、上記(1)オのとおり、本件訴訟における原告からの求釈明に対し、提出された処遇担当者作成の報告書において、針の貸与が記録されているわけではないなどとして、具体的な貸与の年月日や回数については不明であるとされている ところ、 おける原告からの求釈明に対し、提出された処遇担当者作成の報告書において、針の貸与が記録されているわけではないなどとして、具体的な貸与の年月日や回数については不明であるとされている ところ、真に原告に自殺や自傷の危険性があると認識していたならば、 これらの針の貸与に当たっては、少なくとも年月日等を記すなど慎重な対応をすると思われるところであって、これらの対応をしていないこと自体が、被告において、原告につき自殺・自傷の危険性がないと考えていたことを裏付けるものである。)。 以上の説示に照らして、本件収容が、原告のプライバシーにつき極め て強い制約を伴うものであること(上記ア)を踏まえると、東京拘置所において、原告に対する死刑確定者としての処遇が開始された平成25年3月27日から、遅くとも5年が経過した平成30年4月の時点では、本件収容の継続の必要性が失われたと認めるのが相当であり、東京拘置所長が死刑確定期間中、同月以降も本件収容を継続したことについては、 重要な事実の基礎を欠き、又は社会通念に照らし著しく妥当性を欠くというべきで、裁量権を逸脱又は濫用し、もって職務上通常尽くすべき注意義務に反して原告に損害を与えたと認められる。他方で、平成30年3月末日までについては、本件収容の継続の必要性が失われたとまではいえないというべきであるから、東京拘置所長が、同日まで本件収容を 継続したことについて、裁量権の逸脱又は濫用があったということはできない。 (3) 小括以上のとおり、本件収容期間のうち、東京拘置所長が平成30年4月以降も本件収容を継続したことについては、国賠法上違法であると認められるが、 それ以前の期間については、国賠法上違法であるとは認められない。 3 争点2(原 ち、東京拘置所長が平成30年4月以降も本件収容を継続したことについては、国賠法上違法であると認められるが、 それ以前の期間については、国賠法上違法であるとは認められない。 3 争点2(原告の損害の有無及びその額)について(1) 慰謝料上記2(1)イで説示したとおり、本件収容は、それ自体、極めて強い原告のプライバシー制約を伴うものであり、そのような本件収容を約4年間も違法 に継続したこと(同(2)イ(イ))、原告本人が陳述書において、本件収容によるス トレスを原因として複数の身体的・精神的な不調が生じたと訴えていること(甲17、20)、他方で、既に説示したとおり、その開始当初本件収容が違法であったとはいえず、その後も平成30年3月まではその継続が違法であったとはいえないことなど、本件に顕れた一切の事情を考慮すると、被告の違法行為によって原告が受けた精神的苦痛に対する慰謝料額は、50万円と 認めるのが相当である。 (2) 弁護士費用本件事案の内容及び前記慰謝料相当額に照らすと、被告の違法行為と相当因果関係のある弁護士費用は、5万円と認めるのが相当である。 第4 結論 以上によれば、原告の請求は、主文第1項の限度で理由があるからこれを認容し、その余の請求は理由がないから棄却することとして、主文のとおり判決する。 東京地方裁判所民事第4部 裁判長裁判官西村康一郎 裁判官君島直之 裁判官篠原優斗 裁判官篠原優斗

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