平成6(わ)257 関税法違反

裁判年月日・裁判所
平成13年9月14日 神戸地方裁判所
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判決文本文5,173 文字)

判決平成13年9月14日神戸地方裁判所平成6年(わ)第257号関税法違反被告事件 主文 被告人株式会社Aを罰金1000万円に処する。 理由 (犯罪事実)被告人株式会社Aは,旧商号を株式会社Bとし,その当時,本店を群馬県伊勢崎市a町b番c号に置き,生糸及び繭の卸売業等を営んでいたものであるが,被告人会社の代表取締役としてその業務全般を統括していたC(平成9年6月21日死亡)が,Eと共謀の上,被告人会社がホンコンから輸入する繭及び生糸の関税を免れようと企て,被告人会社の業務に関し,第1 輸入貨物を積載したコンテナーの扉に近い部分に輸入申告品名である骨粉を積み,その奥に袋詰めした繭を積み込んで,輸入貨物すべてが関税のかからない骨粉であるかのように装った上,別表1記載のとおり,平成3年1月28日ころから同年2月4日ころまでの間,合計3回にわたり,神戸市d区ef丁目c番の神戸税関H出張所で,事情を知らない通関業者であるF株式会社従業員を介し,株式会社B名義で,同出張所長に対し,コンテナーの奥に積み込んで隠匿した繭合計4万948.9キログラムを除外して,輸入貨物すべてが関税のかからない骨粉のみである旨の内容虚偽の輸入申告書を提出する等し,その都度,輸入許可を受けて前記輸入貨物を保税地域である同区gc丁目h番株式会社GH保税上屋から引き取り,もって,不正の行為により関税合計573万2700円を免れた。 第2 被告人会社の取締役であったDと共謀の上,輸入貨物を積載したコンテナーの扉に近い部分に輸入申告品名である骨粉を積み,その奥に袋詰めした繭及び生糸を積み込んで,輸入貨物すべてが関税のかからない骨粉であるかのように装った上, 1 別表2 を積載したコンテナーの扉に近い部分に輸入申告品名である骨粉を積み,その奥に袋詰めした繭及び生糸を積み込んで,輸入貨物すべてが関税のかからない骨粉であるかのように装った上, 1 別表2記載のとおり,同年2月12日ころから同年11月27日ころまでの間,合計27回にわたり,前記神戸税関H出張所で,事情を知らないF株式会社従業員を介し,株式会社E名義で,同出張所長に対し,コンテナーの奥に積み込んで隠匿した繭合計39万660.8キログラム及び同様にコンテナーの奥に積み込んで隠匿した生糸合計15万5138.3キログラムを除外して,輸入貨物すべてが関税のかからない骨粉のみである旨の内容虚偽の輸入申告書を提出する等し,その都度,輸入許可を受けて前記輸入貨物を保税地域である前記株式会社GH保税上屋から引き取り,もって,不正の行為により関税合計1億4041万2200円を免れた。 2 別表3記載のとおり,同年12月9日ころから平成4年3月5日ころまでの間,合計13回にわたり,前記神戸税関H出張所で,事情を知らないF株式会社従業員を介し,I名義で,同出張所長に対し,コンテナーの奥に積み込んで隠匿した繭合計15万9360.1キログラム及び同様にコンテナーの奥に積み込んで隠匿した生糸合計3万9741.31キログラムを除外して,輸入貨物すべてが関税のかからない骨粉のみである旨の内容虚偽の輸入申告書を提出する等し,その都度,輸入許可を受けて前記輸入貨物を保税地域である前記株式会社GH保税上屋から引き取り,もって,不正の行為により関税合計4309万3500円を免れた。 3 別表4記載のとおり,同年4月18日ころ,前記神戸税関H出張所で,事情を知らない前記F株式会社従業員を介し,I名義で,同出張所長に対し,コンテナーの奥に積み込んで隠匿した繭1万68 免れた。 3 別表4記載のとおり,同年4月18日ころ,前記神戸税関H出張所で,事情を知らない前記F株式会社従業員を介し,I名義で,同出張所長に対し,コンテナーの奥に積み込んで隠匿した繭1万6895キログラム及び同様にコンテナーの奥に積み込んで隠匿した生糸2万2724.06キログラムを除外して,輸入貨物すべてが関税のかからない骨粉のみである旨の内容虚偽の輸入申告書を提出する等し,もって,不正の行為により関税合計1402万1700円を免れようとしたが,同税関係員に発見されたため,その目的を遂げなかった。 (証拠)なお,かっこ内の番号は,証拠等関係カードの検察官請求番号を示す。 (省略)(争点に対する判断)第1 本件犯行の共謀について 1 弁護人は,被告人会社(旧商号株式会社B当時)の代表取締役であったCが,(1)第1,第2・1から3の事実について,Eと共謀したことはない旨,(2)第2・1から3の事実について,被告人会社の取締役であったDと共謀したことはない旨主張する。 2 しかし,前掲証拠,ことにCの検察官調書,大蔵事務官調書,Dの検察官調書によれば,(1) 被告人会社は,昭和28年9月に設立され,本件当時,商号を株式会社Bとし,Cが代表取締役を,その長男Dが取締役をそれぞれして,生糸及び繭の輸出入及び売買等の卸売業を営む株式会社であったが,その実質は,病弱なCをDが補佐し,互いに協力し合って業務を行い,他に経理担当の女性事務員1名がいるだけの個人企業であったこと,(2) Eは,ホンコン在住の総合貿易商を営む者であり,Cは,Eとは,本件までに生糸,繭等の輸入等の営業上の取引を通じて30年以上の付き合いをしてきており,DもEの経営する貿易商社に勤務して,貿易商になるための修業をしたことがあったこと,(3) 本件当時, は,本件までに生糸,繭等の輸入等の営業上の取引を通じて30年以上の付き合いをしてきており,DもEの経営する貿易商社に勤務して,貿易商になるための修業をしたことがあったこと,(3) 本件当時,被告人会社では,大衆の着物離れ等に伴う絹織物業界の停滞等により,多額の負債を抱える状況にあったところ,平成2年12月ころ,ホンコン在住のEからCに電話があり,Cは,東京銀座のKホテルのEが宿泊する部屋でEと会ったこと,Eは,Cに対し,繭や生糸をコンテナーに積んでホンコンから送るので,株式会社Bでその輸入手続,輸入貨物の搬送等をすること,コンテナーの入口付近には骨粉を積み,コンテナーに積んである貨物全部が骨粉であるかのように見せかけ,その奥に繭や生糸を積み,繭や生糸が税関検査で発見されないようにすること,骨粉のみの輸入申請手続をして,有税品の繭や生糸の関税を免れること等を話し,本件密輸入を持ちかけたが,Cとしては,Eの話が,生糸や繭を輸入許可を得ないで,しかも,関税を支払わないで,違法に密輸入する話であったことから,すぐにこれに応じることには躊躇し,その日は,Eに対し返事をしなかったこと,(4) そのしばらく後,EからCに再度電話があり,Cは,前記KホテルでEと再度会い,Eから,繭1キログラムにつき150円,生糸1キログラムにつき300円の手数料を支払うので,前記密輸入の話を引き受けてほしいと頼まれたこと,そこで,Cは,多額の手数料を得て,これにより被告人会社が抱える多額の負債を減らし,息子のDに会社経営を引き継ぐことができると考え,Eが持ちかけた前記密輸の話を承諾したこと,そして,EとCは,コンテナーの輸入手続は,被告人会社が,輸入貨物は骨粉のみであるとして申請し,被告人会社が貨物全てを引き取って倉庫へ搬入し,同倉庫で貨物を区分 前記密輸の話を承諾したこと,そして,EとCは,コンテナーの輸入手続は,被告人会社が,輸入貨物は骨粉のみであるとして申請し,被告人会社が貨物全てを引き取って倉庫へ搬入し,同倉庫で貨物を区分けし,被告人会社が生糸,繭を購入者へ配送すること,Eの指示で配送した生糸や繭の代金は,配送先に,Cが開設した架空名義の銀行口座へ振込入金させ,CからEに現金で交付すること等を取り決めたこと,(5) こうして,Cは,被告人会社の業務に関し,被告人会社が,コンテナーの輸入申請手続をし,通関を終えたコンテナーを引き取ってJへ搬入し,同倉庫で貨物を区分けし,生糸,繭の購入者へ配送して,Eとの間で取り決めたとおり本件密輸入を行っていたこと,なお,Cは,Eの指示を受けて,通関手続は全部F株式会社に依頼し,また,搬入倉庫としてJ株式会社にそれぞれ依頼,手配したこと,Cは,株式会社B名義及びI名義の輸入申告書の作成を通関業者のF株式会社に依頼して,これを作成させたこと,なお,Cが輸入申告書の名義人を株式会社BからIに変えたのは,株式会社B名義による本件密輸入の発覚を恐れたためであり,従前からの生糸卸売仲間であるIの名義だけを借りたものであること,(6) そして,平成3年2月ころ,Cは,前記のとおり,当時,密輸入した貨物を区分けしにJに行っていたが,体調が悪かったことから,息子Dに本件密輸入を手伝うように依頼したところ,Dは,当初,これを断っていたが,病弱な父Cが,その健康状態を押して貨物の区分け作業を続け,被告人会社の多額の負債等による窮状を打開した上で息子Dに対し被告人会社を引き継がせようとしている父親の心情を察知,理解し,Cを助けようと考え,Cに対し,Cと共に本件密輸入をすることを承諾したこと,それ以来,Dは,Jで貨物の区分け作業をし,密輸入した Dに対し被告人会社を引き継がせようとしている父親の心情を察知,理解し,Cを助けようと考え,Cに対し,Cと共に本件密輸入をすることを承諾したこと,それ以来,Dは,Jで貨物の区分け作業をし,密輸入した生糸,繭の発送依頼をする等,本件密輸入全般にわたってCを補佐していたこと,等の事実が認められる。 加えて,Cは,第1回公判(平成6年9月19日)における罪状認否でも,内容虚偽の輸入申告書を提出する等し,その都度,輸入許可を受けて輸入貨物を保税地域から引き取ったことは間違いない旨述べて,本件密輸入の実行行為をしたことは認めているのである。 以上の事実によれば,Cは,第1,第2・1から3の事実について,Eとの間で,また,第2・1から3の事実について,Dとの間で,それぞれ共謀を遂げていたことは明白である。 3 よって,弁護人の前記1の主張は,理由がない。 第2 本件犯行の可罰的違法性について 1 弁護人は,被告人会社の本件行為は,実質的には関税法違反に該当する行為ではなく,当時のわが国政府による一律の生糸・繭の輸入制限措置に反する行為にすぎないところ,そもそも,この生糸・繭の輸入制限措置は,被告人会社等一般の生糸・繭の輸入卸売業者ら(や国内の絹,生糸織物業者ら)に対する何らの代替的救済措置もなく,国内の絹,生糸生産業者のみの一方的な保護を目的としたものであって,憲法22条1項の職業選択の自由や営業の自由に反するものというべきであるから,被告人会社の本件行為は,違法なものとはいえず,少なくとも関税法違反の可罰的違法性はないというべきである旨主張する。 2 しかし,前記の生糸・繭の輸入制限措置は,これに関して判示した最高裁判所判決(最高裁第3小法廷平成2年2月6日判決。訟務月報36巻12号2242ページ参照)が,「 いうべきである旨主張する。 2 しかし,前記の生糸・繭の輸入制限措置は,これに関して判示した最高裁判所判決(最高裁第3小法廷平成2年2月6日判決。訟務月報36巻12号2242ページ参照)が,「積極的な社会経済政策の実施の一手段として,個人の経済活動に対し一定の合理的規制措置を講ずることは,憲法が予定し,かつ,許容するところである」から,憲法に違反しないとしていることに徴し,弁護人の前記1の主張は,その前提を欠いているといわなければならない。 そして,前掲証拠によれば,被告人会社が第1,第2・1,2の事実により免れた関税は,合計1億8923万8400円もの巨額にのぼるのであるから,被告人会社の本件関税ほ脱行為は可罰的違法性がないとは,到底いうことができない。 3 よって,弁護人の前記1の主張は,理由がない。 (法令の適用)罰条第1の別表1・番号1から3,第2・1の別表2・番号1から27,第2・2の別表3・番号1から13の行為いずれも平成6年法律第118号附則7条により同法による改正前の関税法117条1項,110条1項1号第2・3の別表4の行為前記改正前の関税法117条1項,110条3項,1項1号併合罪加重平成7年法律第91号附則2条1項により同法による改正前の刑法45条前段,48条2項訴訟費用の不負担刑訴法181条1項ただし書平成13年9月14日神戸地方裁判所裁判官白神文弘

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