平成14(わ)1418 競売入札妨害,加重収賄被告事件

裁判年月日・裁判所
平成15年9月18日 神戸地方裁判所
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判決文本文7,299 文字)

主文 被告人を懲役3年に処する。 この裁判が確定した日から4年間その刑の執行を猶予する。 訴訟費用は被告人の負担とする。 理由 (犯罪事実)被告人は,平成7年7月15日から平成14年12月17日までの間,兵庫県A郡B町の町長として,第1 地方公営企業であるB町水道事業が発注する公共工事に関する指名入札業者の選定,予定価格の決定及び請負契約の締結等の職務権限を有していたものであるが,B町水道事業が発注する「上第4号県道C線配水管布設替工事(第1工区)」の指名競争入札に関し,平成11年10月16日ころ,B町Da番地のbにある被告人方において,その入札業者であったE共同企業体の代表者であるF建設株式会社代表取締役(当時)Wに対し,同工事の歩切率を変更し,予定価格から消費税を除いた価格である入札書比較予定価格を教示するなど職務上不正な行為をし,その謝礼として,同人をして,同月22日ころ,B町Gc番地にある当時G町内会長であったH方において,同人に対し,現金100万円を交付させ,もって,自己の上記の職務上不正な行為をしたことに関し,第三者に賄賂を供与させた。(平成15年1月17日付け起訴状記載の公訴事実)第2 B町が競争入札により締結する契約について予定価格の決定等の職務を担当していたものであるが,B町が発注する「農地等災害復旧工事」(100件)の各指名競争入札に関し,同工事の一部について指名を受けたI建設株式会社の代表取締役J,K建設株式会社(現在のL建設株式会社,代表取締役M)の実質的経営者N及びO建設株式会社の代表取締役Pと共謀の上,平成12年1月31日ころ,上記被告人方において,Jに対し,同工事の指名競争入札に関する工事番号,設計 現在のL建設株式会社,代表取締役M)の実質的経営者N及びO建設株式会社の代表取締役Pと共謀の上,平成12年1月31日ころ,上記被告人方において,Jに対し,同工事の指名競争入札に関する工事番号,設計価格,指名業者等を記載した一覧表を手渡して,その設計価格(予定価格)から消費税を除いた価格である入札書比較予定価格等を内通し,よって,同年2月3日,B町Qd番地にあるB町民センター大会議室で行われた同工事の各指名競争入札に際し,J,N及びPをして,それぞれ,別紙一覧表(省略)番号1ないし17記載のとおり,各工事の入札書比較予定価格又は同価格をわずかに下回る金額で入札させて,I建設株式会社,K建設株式会社及びO建設株式会社にそれぞれ落札させ,もって,偽計を用いて公の入札の公正を害すべき行為をした。(平成14年12月27日付け起訴状記載の各公訴事実)第3 B町水道事業が競争入札により締結する契約について予定価格の決定等の職務を担当していたものであるが, 1 B町水道事業が発注する「上第12号石綿セメント管更新事業管路布設替工事(14-3工区)」の指名競争入札に関し,その入札業者であったR建設株式会社代表取締役Sと共謀の上,平成14年8月9日ころ,B町Qe番地にあるB町役場町長室において,Sに対し,同工事の予定価格から消費税を除いた価格である入札書比較価格が9776万5000円である旨を内通し,よって,同月12日,上記B町民センター視聴覚室で行われた同工事の指名競争入札に際し,同人をして,同工事の入札書比較価格9776万5000円をわずかに下回る9750万円で入札させて,R建設株式会社に同工事を落札させ,もって,偽計を用いて公の入札の公正を害すべき行為をした。(平成14年12月6日付け起訴状記載の公訴事実第1) 2 B町水道事業が発注す 50万円で入札させて,R建設株式会社に同工事を落札させ,もって,偽計を用いて公の入札の公正を害すべき行為をした。(平成14年12月6日付け起訴状記載の公訴事実第1) 2 B町水道事業が発注する「上第11号石綿セメント管更新事業管路布設替工事(14-2工区)」の指名競争入札に関し,その入札業者であったT建設株式会社代表取締役Uと共謀の上,同月10日ころ,上記被告人方から,B町Qf番地のgにあるUの実父方に電話をかけ,Uに対し,同工事の入札書比較価格が約9300万円である旨を内通し,よって,同月12日,上記B町民センター視聴覚室で行われた同工事の指名競争入札に際し,同人をして,同工事の入札書比較価格9385万6000円をわずかに下回る9300万円で入札させて,T建設株式会社に同工事を落札させ,もって,偽計を用いて公の入札の公正を害すべき行為をした。 (平成14年12月6日付け起訴状記載の公訴事実第2) 3 B町水道事業が発注する「上第13号石綿セメント管更新事業管路布設替工事(14-4工区)」の指名競争入札に関し,その入札業者であったF建設株式会社代表取締役W及び同社取締役Vと共謀の上,同月10日ころ,上記被告人方において,Vに対し,同工事の入札書比較価格が約7600万円である旨を内通し,よって,同月12日,上記B町民センター視聴覚室で行われた同工事の指名競争入札に際し,Wをして,同工事の入札書比較価格7607万円をわずかに下回る7600万円で入札させて,F建設株式会社に同工事を落札させ,もって,偽計を用いて公の入札の公正を害すべき行為をした。(平成14年12月6日付け起訴状記載の公訴事実第3)(証拠の標目)省略(事実認定の補足説明)第1 判示第1の加重収賄の事実について 1 弁護人の主張等弁護人は,被告人が た。(平成14年12月6日付け起訴状記載の公訴事実第3)(証拠の標目)省略(事実認定の補足説明)第1 判示第1の加重収賄の事実について 1 弁護人の主張等弁護人は,被告人が,F建設代表者のWに対し,当該工事の入札書比較予定価格を教示するなどし,同人からG町内会長であったHに100万円を交付するよう依頼したことや,WがHに100万円を交付したこと自体は認めながらも,これは,F建設がG町内会と関係が深いことから,その代表者のWに100万円の寄附を依頼したものであって,被告人が予定価格を教示したことなどへの見返りや謝礼ではないし,被告人には,そのような意図や認識も一切なかったのであるから,被告人は無罪である旨主張し,被告人も公判廷においてこれに沿う供述をする。 また,弁護人は,刑法197条の3第2項にいう「第三者」の意義について,公務員等と第三者の間に,当該第三者が賄賂を収受することにより当該公務員等が実質上利益を得たのと同視しうる関係にあることが必要であると解すべきであって,「第三者」とは,公務員等と法律上又は事実上の利害関係のある第三者に限定すべきであるとも主張する。 2 検討(1) 対価関係及び賄賂性の存否について証人Wの公判廷及び捜査段階における各供述を含む関係各証拠によると,被告人は,第1ないし第3工区については条件等の面がほぼ同一であるにもかかわらず,知人のWが代表者を務めるE共同企業体が本命業者として落札予定である第1工区に関してのみ,特段の事情もないのに,歩切率を10パーセントから5パーセントへ半分に設定し直し,Wに対して同工区の予定価格等を詳細に教示するというE共同企業体だけに有利になるような職務上不正な行為をした直後,公職選挙法上の制約から自分自身では行うこ セントから5パーセントへ半分に設定し直し,Wに対して同工区の予定価格等を詳細に教示するというE共同企業体だけに有利になるような職務上不正な行為をした直後,公職選挙法上の制約から自分自身では行うことが許されていないG町内会への100万円の寄附をWに依頼していること,第1工区について歩切率を下げることによって,WにG町内会へ寄附するよう依頼した100万円を上回る約170万円の利益がF建設側に余分に入ることになり,被告人自身このような歩切率の操作によってE共同企業体に有利となることを知っていたこと,W自身,被告人から依頼されたからこそ100万円をG町内会へ持参したことなどの事実が認められる。 このような事実関係を総合すると,本件において,Wが被告人の依頼により100万円を第三者である権利能力なき社団としてのG町内会へ寄附した行為は,被告人がその職務権限内で行った職務上不正な行為との対価関係を有し,被告人自身ではなしえないG町内会への寄附の代替的行為として被告人の意に沿うものであることから,賄賂であると認められる。そして,被告人及びWの両名が,これら一連の事実関係を認識していた以上,対価関係及び賄賂性を認識していたことは明らかである。本件犯行を認める内容の被告人の捜査段階における供述は,この推認と合理的に符合するものであって十分信用することができる。 これに対し,対価関係及び賄賂性を認識していたことを否認する被告人の公判廷における供述は,上記の事実関係に照らすと,不自然,不合理であって信用することができない。なお,被告人が弁解するとおり,G町内会と関係の深いF建設代表者だからWに寄附を依頼したという経緯があったとしても,対価関係や賄賂性に関する上記判断を左右しない。 (2) 「第三者」(刑法197条の3 人が弁解するとおり,G町内会と関係の深いF建設代表者だからWに寄附を依頼したという経緯があったとしても,対価関係や賄賂性に関する上記判断を左右しない。 (2) 「第三者」(刑法197条の3第2項)の意義について公務員等が第三者に賄賂を供与させた場合,当該公務員等が直接その賄賂によって利益を受けないとしても,これにより公務員等の職務の公正を害し,それに対する社会一般の信頼を失わせるものであることは明らかであること,同法197条の3第2項の文理上,第三者については何らの限定も付されていないことなどからすると,同条項にいう「第三者」とは,公務員等及びその共同正犯者以外の者をいうと解するのが相当であるから,弁護人の主張は採用することができない。 3 結論そうすると,判示第1の加重収賄の事実は,これを優に認めることができる。 第2 判示第3の1の競売入札妨害の事実について 1 弁護人の主張等弁護人は,被告人が,Sに対し,入札書比較価格を教示した日時及び場所は,平成14年8月9日ころ,B町役場町長室ではなく,同月10日の午前8時ころ,被告人の自宅庭先においてであったと主張し,被告人も公判廷においてこれに沿う供述をする。 2 検討被告人から入札書比較価格の教示を受けた建設業者で,本件の共犯者であるSは,日時及び場所について判示第3の1の事実に沿う供述をするところ,このS供述は,被告人から入札書比較価格の教示を受けた経緯やその際の被告人の言動等をも含め,具体的かつ詳細であって,特段不自然,不合理な点は認められないこと,平成14年8月9日の時点で社長のSからいったん9300万円と決めていた入札金額を,それよりも高い9700万円というずばりの金額にするように指示されたというXの供述 ,不合理な点は認められないこと,平成14年8月9日の時点で社長のSからいったん9300万円と決めていた入札金額を,それよりも高い9700万円というずばりの金額にするように指示されたというXの供述によっても相応に裏付けられていること,被告人自身,捜査段階においてこのS供述と符合する供述をしていることなどから,十分信用することができる。 これに対し,異なる日時及び場所を供述する被告人の公判廷における供述は,このS供述と対比して,信用することができない。 3 結論そうすると,判示第3の1の競売入札妨害の事実も,これを優に認めることができる。 第3 結論以上のとおりであって,判示第1の加重収賄及び判示第3の1の競売入札妨害の各事実は,これらを優に認定することができる。 (法令の適用)被告人の判示第1の所為は刑法197条の3第2項,1項に,判示第2(別紙一覧表番号1ないし17の各競売入札妨害の点)及び第3の各所為はいずれも同法60条,96条の3第1項にそれぞれ該当するところ,判示第2は1個の行為が17個の罪名に触れる場合であるから,同法54条1項前段,10条により1罪として犯情の最も重い判示第2別紙一覧表番号7の競売入札妨害罪の刑で処断し,各所定刑中判示第2及び第3の各罪についていずれも懲役刑を選択し,以上は同法45条前段の併合罪であるから,同法47条本文,10条により最も重い判示第1の罪の刑に同法14条の制限内で法定の加重をした刑期の範囲内で被告人を懲役3年に処し,情状により同法25条1項を適用して,この裁判が確定した日から4年間その刑の執行を猶予し,訴訟費用については,刑事訴訟法181条1項本文により被告人に負担させることとする。 (量刑の理由) 1 事案の概要本件は,当時現 て,この裁判が確定した日から4年間その刑の執行を猶予し,訴訟費用については,刑事訴訟法181条1項本文により被告人に負担させることとする。 (量刑の理由) 1 事案の概要本件は,当時現職の兵庫県B町長であった被告人が,知人が代表を務める共同企業体が落札予定業者となった公共工事について,歩切率を下げ,予定価格等を内通するなどのその職務上不正な行為をしたことに関し,町内の一町内会に100万円を寄附させたという加重収賄の事実(判示第1)及び合計20件の公共工事の指名競争入札に関し,落札予定業者の地元建設業者数社に対して,各工事の入札書比較価格等を内通したという競売入札妨害の各事実(判示第2及び第3)からなる事案である。 2 量刑上考慮した事情(1) 不利な事情被告人は,本件各犯行当時,町民の信任を受けた現職の町長として,一般の公務員にもまして職務執行の公正さや廉潔性が求められる役職にあったにもかかわらず,予定価格調書を決裁する町長としての立場や職務権限を悪用して各犯行を行ったものであり,公務に対する町民の信頼をないがしろにしたばかりか,町長職の権威までも失墜させたものであって,まことに悪質である。 また,被告人と町内建設業者との間においては,以前から当選祝い等の授受や接待が横行するなど,両者の癒着には甚だしいものがあり,このような癒着が本件各犯行の背景にあることを考慮すると,その犯情は悪い。 そして,被告人は,贈賄者である知人の建設業者に対して,当該業者が落札予定業者となった工事に関してのみ歩切率を低く設定し直した上,予定価格等を内通するなどのそれ自体公共の利益を損ねる職務上不正な行為を行い,被告人がかねてより何とかして解決したいと考えていた神社の建替えに関する問題について,公職選挙法上の 低く設定し直した上,予定価格等を内通するなどのそれ自体公共の利益を損ねる職務上不正な行為を行い,被告人がかねてより何とかして解決したいと考えていた神社の建替えに関する問題について,公職選挙法上の制約により自らはすることができない寄附を当該業者に肩代わりさせたものであって,このような行為によって町長職の公正さに対する社会の信頼が大きく害されたことは明らかであって,本件犯行の違法性も大きい。にもかかわらず,被告人は,公判廷で本件の寄附は賄賂ではなく,その認識もなかったなどと不合理な弁解に終始し,自己の犯した犯罪行為に対する十分な自覚,反省をしているとは認め難い。 加えて,判示第2及び第3の競売入札妨害の各犯行において,被告人は,起訴されているだけでも合計20件の公共工事について,自ら積極的に入札書比較価格等を建設業者に教示するなどしたものであり,その犯行態様は悪質であるのみならず,被告人は,平成7年7月に町長に就任した後,起訴された工事以外にも相当数の公共工事について同様に入札書比較価格等の内通行為に及んだことを自供していることからすると,判示第2及び第3の各犯行は常習的犯行の一環であることがうかがわれ,被告人のこの種事犯に対する規範意識は欠如していたというほかない。そして,各犯行により,入札制度は形骸化し,建設業者は不当に高額な請負額で落札しており,B町は不必要な経済的負担を負うことになったもので,被告人の各犯行は,B町ひいては自らを信任したB町民に対する背信的行為であるというべきである。 以上の事情に照らすと,被告人の刑事責任は重いといわざるを得ない。 (2) 有利な事情しかしながら,他方,被告人は,判示第1の加重収賄の犯行によって,自ら利得したものではないこと,判示第2及び第3の競売入札妨害の 刑事責任は重いといわざるを得ない。 (2) 有利な事情しかしながら,他方,被告人は,判示第1の加重収賄の犯行によって,自ら利得したものではないこと,判示第2及び第3の競売入札妨害の各事実をおおむね認め,自己のこれまでの行為の違法性を改めて認識し,反省・悔悟の情を示していること,被告人の恩師らを中心として3485名もの町民から被告人に対する寛大な処分を求める旨の嘆願書が寄せられていること,被告人には禁錮刑以上に処せられた前科がないことに加え,被告人は,これまで,B町議会議員やB町長として長年公務に携わり,相応の社会生活を送ってきたこと,競売入札妨害罪により逮捕された後,自ら町長職を辞し,一定の政治的・社会的責任を果たしたと評価できることなど被告人にとって有利な事情も認められる。 3 結論そこで,以上諸般の事情を総合して考慮すると,被告人に対して,主文の刑に処し,その刑事責任を明確にした上,社会内での更生の機会を与えることが相当であると考え,4年間その刑の執行を猶予することとした。 (求刑・懲役3年)平成15年9月18日神戸地方裁判所第4刑事部裁判長裁判官笹野明義裁判官浦島高広裁判官谷口吉伸

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