令和5(わ)439 営利誘拐、威力業務妨害

裁判年月日・裁判所
令和5年10月13日 名古屋地方裁判所
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判決文本文2,140 文字)

- 1 -主文 被告人を懲役3年に処する。 この裁判が確定した日から5年間その刑の執行を猶予する。 理由 (罪となるべき事実)被告人は、第1 【令和5年4月18日付け起訴状記載の公訴事実】A(当時15歳。)を営利の目的で誘拐しようと考え、令和4年12月頃、東京都内において、携帯電話機を使用して、同人に対し、「家出て、俺とどっか行く。」「名古屋なら援交して稼げば生活できる。」などと言って、同年12月11日、Aを東京都新宿区a町b丁目c 番B広場に呼び出した上、同月12日頃、高速バスを利用して、同人を東京都内から名古屋市内まで連れて行き、その頃から令和5年3月8日までの間、愛知県内、福岡県内及び広島県内のホテルに同人を宿泊させるなどして自己の支配下に置き、もって営利の目的で同人を誘拐し、第2 【令和5年3月28日付け起訴状記載の公訴事実】Cと共謀の上、令和5年2月3日午後8時43分頃、名古屋市d区ef丁目g番h号D店において、被告人が同店21番テーブル上に置かれていた醤油差しを左手で持ち、自己の口を開けて、その注ぎ口を自己の口に極めて近づけ、あたかも注ぎ口に直接口を付けて醤油を飲んだかのような動作を2回にわたり取った上、同醤油差しをそのまま卓上に戻し、その状況を前記Cが手に持った携帯電話機を使用して動画撮影した上、同日、同市内のいずれかの場所において、同人が前記動画をソーシャルネットワーキングサービス「ツイッター」上に投稿して、同「ツイッター」を利用する不特定多数の者が閲覧可能な状態におき、これらの行為により、前記D店を運営するE株式会社に、お客様相談室に寄せられるクレームの対応等の業務に従事することを余儀なくさせ、同社従業員らの正常な業務の遂行に支障を生じさせ、もっ な状態におき、これらの行為により、前記D店を運営するE株式会社に、お客様相談室に寄せられるクレームの対応等の業務に従事することを余儀なくさせ、同社従業員らの正常な業務の遂行に支障を生じさせ、もって威力を用いて人の業務を妨害したものである。 - 2 -(量刑の理由)本件は、被告人が、未成年の被害者を営利目的で誘拐した(判示第1)ほか、共犯者と共謀の上、回転寿司店において行った迷惑行為の動画をSNSに投稿してその運営会社の業務を妨害した(判示第2)という事案である。 まず、重い営利誘拐の点(判示第1)について見ると、被告人は、自身に好意を寄せる被害者から家出をしたいなどと申し向けられたのを受け、判示のとおり援助交際をして稼げば2人で生活できるなどと言って同女を誘い出すと、その後約3か月弱にわたり、同女に売春をさせて当座の生活費等を稼がせながら、各地を連れ回していたものである。未成年である被害者の浅慮に乗じ、同女を食い物にした誠に卑劣な犯行である。この間、被害者の母は被害者本人と連絡を取ることもままならないなど、その監護権が大きく侵害されただけでなく、売春を重ねた被害者自身についても、その心身の健全な成長への悪影響が懸念される。被害者の母の処罰感情が厳しいのは当然である。 また、被告人は、このように被害者を連れ回す中、SNS上で炎上していた別の回転寿司店での迷惑行為に関する動画に触発されて、かねて不良交遊を通じて知り合った共犯者とともに、回転寿司店で醤油差しを直接口につけるような素振りをした迷惑行為の動画をSNSに投稿し、同店の運営会社の業務を妨害した(判示第2)。 顧客に安心して食事をしてもらおうという同社の努力を無にしかねない、あまりに無分別な犯行である。このような動画が配信されたことにより、同社は、醤油の廃棄、入れ 運営会社の業務を妨害した(判示第2)。 顧客に安心して食事をしてもらおうという同社の努力を無にしかねない、あまりに無分別な犯行である。このような動画が配信されたことにより、同社は、醤油の廃棄、入れ替えや店舗の消毒作業等のために少なくとも57万円余りの支出を余儀なくされているだけでなく、多数の苦情等への対応を求められるなど、その業務に多大な負担が生じるに至った。しかるに、被告人からは現時点までに被害弁償はなされておらず、その具体的な見込みも立っていない。 以上によれば、被告人の刑事責任は重い。 他方、被告人はいずれも事実を認めた上で、営利誘拐の被害者に対して謝罪の言葉を述べるとともに、今後は同女とは関係を断ち、上記運営会社に対してもできる - 3 -限り損害を賠償していきたいなどと、被告人なりの反省の態度を示している。さらに、父が監督を誓約しているほか、現在の雇用主も引き続き支援する意向を示しており、被告人の更生に向けた環境も整備されつつある。このほか、被告人が若年であり、前科がないこと等も考慮すると、被告人に対しては主文の刑に処してその刑事責任を明らかにした上で、今回に限りその刑の執行は猶予し、社会内での更生を図らせるのが相当であると判断した。 (検察官の求刑:懲役3年弁護人の科刑意見:執行猶予付きの判決)令和5年10月13日名古屋地方裁判所刑事第5部 裁判長裁判官大村陽一 裁判官遠藤圭一郎 裁判官田中彩友美

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