主文 1 原告の請求を棄却する。 2 訴訟費用は原告の負担とする。 事実及び理由 第1 請求平成13年10月14日執行の入善町長選挙における選挙の効力に関する審査の申立てについて,被告が平成14年2月26日付けでした裁決を取り消す。 第2 事案の概要 1 平成13年10月14日に執行された入善町長選挙(以下「本件選挙」という。)に立候補して8票差で落選した訴外A(以下「A」という。)は,特別養護老人ホームN(以下「N」という。)での不在者投票及び代理投票は入所者の意思に基づかずに行われたもので,本件選挙は無効であるとして,入善町選挙管理委員会(以下「町選管」という。)に異議の申出をしたが,町選管はこれを棄却する決定をしたことから,被告に審査を申し立てたところ,被告は,Aの主張を認めて,前記決定を取り消した上,本件選挙を無効とする裁決(以下「本件裁決」という。)をした。 本件は,本件選挙で当選とされた原告が,本件裁決の取消しを求めて提訴した事案である。 2 争いのない事実等(1) 本件選挙の結果原告は,本件選挙に立候補して当選したが,その選挙結果は以下のとおりである。 ア投票者数 2万0119人(うち不在者投票者数1658人)イ有効投票総数 1万9828票ウ無効投票総数 291票エ候補者の得票数 B(原告) 9918票(当選)A 9910票(2) Nの不在者投票の実施状況ア NについてNは,公職選挙法施行令(以下,公職選挙法を「法」といい,同法施行令を「施行令」という。)55条2項及び3項に規定する都道府県の選挙管理委員会が指定する特別養護老人ホームであり,Nに入所する者が不在者投票を行う場合には,同施設長が不在者投票管理者となる。本件 行令を「施行令」という。)55条2項及び3項に規定する都道府県の選挙管理委員会が指定する特別養護老人ホームであり,Nに入所する者が不在者投票を行う場合には,同施設長が不在者投票管理者となる。本件選挙当時の施設長は,C(乙7,15。以下「C」という。)であった。 イ投票用紙及び投票用封筒の請求について(ア) N入所者がNにおいて不在者投票を希望する場合,当該入所者は,選挙の期日の前日までに,登録されている選挙人名簿の属する市町村の選挙管理委員会の委員長に対し,投票用紙及び不在者投票用封筒(以下「投票用紙等」という。)の交付を請求し,かつ,Nで投票する旨を申し立てなければならない(施行令50条1項,2項)。Nの施設長(不在者投票管理者)は,選挙人である入所者から依頼を受けた場合には,その入所者に代わり文書をもって投票用紙等の交付請求及びNでの投票の申立てを行うことができる(同条4項)。 (イ) Nの施設長であるCは,平成13年10月9日,本件選挙に関し,施行令50条4項に基づき,入所者から依頼があったとして,町選管の委員長に対し,当時の入所者全員に相当する109名分の投票用紙等の交付の請求(以下「本件投票用紙等の交付請求」という。)をした(乙1の2,乙2の1から6,乙9)。 もっとも,投票用紙等請求依頼書(施設長に投票用紙等の請求を依頼する文書)に自署したのは,入所者109名中53名であり,残りは,Nの職員が代筆した(乙3の1から6,弁論の全趣旨)。 (ウ) 本件投票用紙等の交付請求に先立ち,109名の入所者に対して同請求の前提となる不在者投票をする意思の有無を確認したのは,Nの職員である主任生活相談員のD(以下「D」という。)及び事務職員のE(以下「E」という。)であり,総介護長のF(以下「F」という。)もこれに関与した(甲7,乙9, をする意思の有無を確認したのは,Nの職員である主任生活相談員のD(以下「D」という。)及び事務職員のE(以下「E」という。)であり,総介護長のF(以下「F」という。)もこれに関与した(甲7,乙9,16)。 ウ不在者投票の場所,担当者等について(ア) 本件選挙の不在者投票(以下「本件不在者投票」という。)は,平成13年10月11日午前10時から午後0時30分ないし40分ころまでにかけて,施設長(不在者投票管理者)のCの立会のもとに,N2階ホールで行われた(乙9)。 (イ) C以外に本件不在者投票に関与したのは,不在者投票の立会人であるF及び栄養係長のG(以下「G」という。),後述する代理投票の補助者としてあらかじめ決められていた介護係長のH(以下「H」という。)及び看護師のI(以下「I」という。)並びに投票用紙交付係1名の合計6名であり,いずれもNの職員であった(甲7,乙7,9,15)。 (ウ) 本件不在者投票においては,入所者109名全員が不在者投票を行ったが,このうち5名の入所者は体調等の都合により自室で不在者投票を行った(乙7,9,15)。 エ代理投票について(ア) 選挙人は,投票所において,投票用紙に候補者一人の氏名を自書して,投票箱に投函しなければならないが(法46条1項),選挙人が,身体の故障又は文盲により自ら候補者の氏名を記載することができない場合には,投票管理者に申請し,代理投票をさせることができる(法48条1項)。この場合,選挙人の申請を受けた投票管理者は,投票立会人の意見を聴いて投票補助者2名をその承諾を得て定め,その一人に当該選挙人の指示する候補者の氏名を投票用紙に記載させ,他の一人にこれを立ち会わせなければならない(同条2項)。 (イ) Nで本件不在者投票を行った入所者109名のうち,代理投票によって投票( 一人に当該選挙人の指示する候補者の氏名を投票用紙に記載させ,他の一人にこれを立ち会わせなければならない(同条2項)。 (イ) Nで本件不在者投票を行った入所者109名のうち,代理投票によって投票(以下「本件代理投票」という。)を行った者は前記ウ(ウ)の5名を含む90名であった(乙4,9)。これらの者に対し,代理投票を申請する意思の有無を確認し,かつ,その補助をしたのは,代理投票の補助者としてあらかじめ定められていたH及びIであった(乙7,15,18,19)。 (3) Aの異議の申出と町選管の決定(甲3,乙12)ア本件選挙で8票差で落選したAは,平成13年10月25日,町選管に対し,Nでの本件不在者投票及び本件代理投票が入所者の意思に基づかずに行われたから選挙規定に違反し,かつ,その規定違反が本件選挙の結果に影響を及ぼすものであると主張し,本件選挙の無効を求めて異議の申出をした(法202条1項)。 イこの異議の申出を受けた町選管は,事実関係を確認するためにNの関係者の証人尋問を行ったほか,平成13年11月20日には,Nの入所者109名のうち,投票用紙等請求依頼書に自署した者,既に死亡した者及び当日病状等により面接不能だった者を除く45名につき,その意思能力及び意思表示等について調査(検証)を行った。 調査方法は,N職員を通して声を掛けてその意思表示を検証するものであった。 ウ同調査において,町選管は,前記45名のうち,40名については声による返事や体の動作によって応答(意思表示)を確認できたとしたが,5名についてはそれを確認できなかった。しかし,町選管は,職員の証言を基に,職員が表情,手の反応等日常の介護業務の中でなされる平素のコミュニケーションの方法によって,その5名の不在者投票手続の依頼の意思を確認したと認定し,また,この5名以外 し,町選管は,職員の証言を基に,職員が表情,手の反応等日常の介護業務の中でなされる平素のコミュニケーションの方法によって,その5名の不在者投票手続の依頼の意思を確認したと認定し,また,この5名以外にも,「見方を変えれば……自らの意思表示が不能と感じる入所者もいると判断することもできるが,これは,痴呆性の症状の軽重,時期等により判断も異なってくるということを考慮すると,これにより直ちに意思表示ができないとは言えない。」として,結局,調査対象者である入所者45名全員について,不在者投票手続の依頼の意思があったと認定した。 エまた,代理投票の申請の意思確認についても,職員の証言を採用して,あらかじめ決められた代理投票補助者が代理投票を行った90名の入所者の意思を確認し,挙手で不在者投票管理者に申請し,同管理者が立会人に確認して代理投票の手続を遂行させていたと認定した。 オ町選管は,平成13年11月26日,以上を理由に,Aの異議の申出を棄却した。 (4) Aの審査の申立てと被告の裁決(甲2,乙9)ア Aは,町選管の前記棄却決定を不服として,平成13年12月14日,被告に対して審査を申し立てた(法202条2項)。 イ前記審査の申立てを受けて,被告は,Nの関係者の証人尋問を行うとともに,平成14年1月31日,本件不在者投票をした入所者109名のうち既に死亡した15名(当日死亡した者1名を含む。)を除く94名を対象に質問調査(以下「本件調査」という。)を実施した。 ウ被告は,平成14年2月26日,本件調査の結果等をもとに,後述する「被告の主張」欄(後記3の(1)から(3)の各ア)記載のとおり,① 本件不在者投票を行った109名の入所者のうち少なくとも18名については,本件投票用紙等の交付請求の依頼及び本件代理投票の申請を,その意味を認識した上 記3の(1)から(3)の各ア)記載のとおり,① 本件不在者投票を行った109名の入所者のうち少なくとも18名については,本件投票用紙等の交付請求の依頼及び本件代理投票の申請を,その意味を認識した上で自らの意思によってしたものとは認められず,法及び施行令の規定に違反している,② 本件選挙の得票差が8票であることに照らせば,この規定違反は本件選挙の結果に異動を及ぼす虞がある場合に該当する,と判断して,町選管の前記決定を取り消し,本件選挙を無効とする本件裁決をした。 3 争点(1) 本件投票用紙等の交付請求の手続の違法性ア被告の主張(ア) Nの施設長であるCが町選管に不在者投票の投票用紙等の交付請求をするためには,選挙人たる入所者が選挙の趣旨を理解した上で自らの意思によってC(施設長)に当該請求を依頼することが必要である(施行令50条4項)。 (イ) ところで,本件調査によれば,「氏名,年齢及び場所のいずれについても認識が不正確で,選挙又は投票についての認識もないと思われる者」が12名,「質問,問いかけに反応のない者」が6名確認された。これらの合計18名(以下「本件18名」という。)の入所者は,いずれも本件不在者投票を代理投票によって行っている。 (ウ) 以上によれば,少なくとも,本件18名の入所者については,その意味を認識した上で自らの意思によって本件投票用紙等の交付請求をCに依頼したとは認められない。仮に,それらの入所者がNの職員の問い掛け等に対して何らかの言葉や動作を示したとしても,それは,意思確認の趣旨を認識し得ないまま職員からの問い掛けに対し漫然となされた返答や反応,動作に過ぎない。しかるに,職員は,それを入所者が本件投票用紙等の交付請求の依頼の意思を自ら示したものと独自の基準によって判断していたのである。 したがって,少な けに対し漫然となされた返答や反応,動作に過ぎない。しかるに,職員は,それを入所者が本件投票用紙等の交付請求の依頼の意思を自ら示したものと独自の基準によって判断していたのである。 したがって,少なくとも本件18名の入所者に関する本件投票用紙等の交付請求の手続は,選挙人の意思に基づかない違法なものであり,これが違法である以上,これらの者のした本件不在者投票それ自体も違法である。 イ原告の主張(ア) 本件選挙に当たり,Nでは,平成13年10月8日ころ,D及びEが入所者の不在者投票の意思確認を行い,前記両名がその意思いかんを判断しにくい場合にはFがこれに関与した。そして,この意思確認では,入所者全員が不在者投票をすることを希望した。 (イ) Dらは日頃入所者の状態を把握し,意思疎通を行っている現場の職員であり,入所者との間で言葉によって意思確認できない場合には,目を見開く,手を握り返す,手を挙げる等の反応によってその意思を確認した。したがって,本件投票用紙等の交付請求の手続には違法性も不当性もない。 (2) 本件代理投票の手続の違法性ア被告の主張(ア) 代理投票制度は,身体の故障又は文盲のために自書することができない者に投票の機会を与える,自筆投票の原則(法46条1項)の例外であり,そのような選挙人が投票管理者に申請した場合に2名の補助者が定められ,そのうちの一人が当該選挙人の指示する候補者の氏名を投票用紙に記載し,他の一人がこれに立ち会うことになっている(法48条1項,2項)。 (イ) 前記(1)ア(イ)の本件18名の入所者については,自らの意思によって代理投票の申請を行ったとは認められない。 したがって,本件代理投票の手続は,前記入所者の意思に基づかない違法なものである。 (ウ) また,Cらは,代理投票補助者であるH及びIが入所者に 思によって代理投票の申請を行ったとは認められない。 したがって,本件代理投票の手続は,前記入所者の意思に基づかない違法なものである。 (ウ) また,Cらは,代理投票補助者であるH及びIが入所者に対して投票したい候補者を3回程度尋ねても返答のない場合,その者の投票を白票として投票用封筒に入れて投票者自身に投票箱に投函させていた。 しかし,投票したい候補者が明確でない場合,選挙人たる入所者は投票せずに改めて別の日に不在者投票を行ったり,選挙当日に家族等の援助を受けて自ら属する投票区の投票所で改めて投票をしたりすることができるのであって,白紙投票以外にも複数の選択肢が存在するのである。しかるに,Hらは,これを考慮せず,かつ,入所者に他の投票方法を示すことなく,白票として処理した。また,そもそも,代理投票補助者には選挙人の指示する候補者氏名を記載する以上の権限はなく,このような行為はその職務権限を逸脱するものである。 したがって,本件代理投票の手続は,この点においても違法である。 イ原告の主張前記(1)イの方法と同様に,代理投票補助者であるH及びIは,入所者の代理投票申請の意思確認を適正に行っており,本件代理投票の手続には違法性も不当性もない。また,入所者に3回程度尋ねても,候補者の指示がない場合に,白票として投票させたことは,当然の措置であって,非難されることではない。 (3) 本件選挙の結果に異動を及ぼす虞がある可能性ア被告の主張本件不在者投票及び本件代理投票が少なくとも本件18名の入所者の意思に基づかずに行われており,かつ,本件選挙における原告とAとの得票差が8票である以上,本件選挙の結果に異動を及ぼす虞がある。 イ原告の主張Nの本件不在者投票及び本件代理投票は,入所者全員につき適法に行われており,被告の主張するような における原告とAとの得票差が8票である以上,本件選挙の結果に異動を及ぼす虞がある。 イ原告の主張Nの本件不在者投票及び本件代理投票は,入所者全員につき適法に行われており,被告の主張するような違法な点は存在しないが,仮に本件18名の投票が無効であったとしても,この入所者18名のうち14名は白票を投じている。そうすると,本件選挙の結果に影響を及ぼすのは4票にとどまるのであるから,本件18名の投票の無効は,得票差が8票であった本件選挙の結果に異動を及ぼす虞はない。 第3 当裁判所の判断 1 争点(1)及び(2)についてこれらの争点の判断の前提となる事実は,帰するところ,被告の主張する本件18名の入所者に関する本件投票用紙等の交付請求の依頼及び本件代理投票の申請がその趣旨を理解した同人らの意思に基づいてなされたものと認められるか否かである。そこで,この点について,検討する。 (1) N入所者の痴呆の状態ア Nが富山県に提出した平成13年度特別養護老人ホームに係る指導監査事前提出資料の写し(乙5)によれば,平成13年4月1日現在のN入所者110人の痴呆の程度区分は,重度44名,中度48名,軽度15名,正常3名であったことが認められる。そして,ここにいう重度とは,痴呆の症状が「自分の名前がわからない」,「寸前のことも忘れる」,「自分の部屋がわからない」,「簡単な会話も不可能」(「簡単な会話も必要」とあるが,誤記と認める。),「全面的介助が必要」の項目に該当する場合であるとされている(乙5)。 イ本件不在者投票が実施された同年10月11日時点でのNの入所者は109名であったが,同年4月1日以前から入所している者は100名である(乙8の1)。このことからすると,同年4月1日時点の入所者110名からいなくなった10名が全て重度の痴呆の者であった 入所者は109名であったが,同年4月1日以前から入所している者は100名である(乙8の1)。このことからすると,同年4月1日時点の入所者110名からいなくなった10名が全て重度の痴呆の者であったとしても,本件不在者投票が行われた時点で,Nには少なくとも34名の重度の痴呆症の入所者が存在していたことになる。 (2) 本件調査の実施と結果ア被告は,平成14年1月31日,本件不在者投票をしたNの入所者109名のうち既に死亡した15名を除く94名を対象に,本件調査を実施した(前記第2の2,(4),イ)。 イ本件調査は,Nにおける検証(法216条2項,行政不服審査法29条1項,31条)の一環として,N2階ホールにおいて,入所者に対してその氏名,年齢及び場所(居所)に関する認識の状況並びに選挙・投票についての認識の有無などを質問する形で行われたが,その結果は,次のとおりであった(乙9)。 (ア) 氏名,年齢及び場所のいずれについても認識が正確で,かつ,選挙又は投票について何らかの認識があると思われる者【27名】(イ) 氏名についての認識は正確であるが,年齢若しくは場所のいずれか又はその両方についての認識が不正確である者で,選挙又は投票についての何らかの認識はあると思われる者【22名】(ウ) 氏名,年齢及び場所のいずれについても認識は正確であるが,選挙又は投票についての認識はないと思われる者【4名】(エ) 氏名についての認識は正確であるが,年齢若しくは場所のいずれか又はその両方についての認識が不正確である者で,選挙又は投票についての認識もないと思われる者【15名】(オ) 氏名,年齢及び場所のいずれについても認識が不正確で,選挙又は投票についての認識もないと思われる者【12名】(カ) 質問,問いかけに反応のない者【6名】(キ) 氏名について る者【15名】(オ) 氏名,年齢及び場所のいずれについても認識が不正確で,選挙又は投票についての認識もないと思われる者【12名】(カ) 質問,問いかけに反応のない者【6名】(キ) 氏名についての認識は正確であるが,その余の事項は回答内容が特定不能,体調変動の可能性がある,等の事由で不明である者【4名】(ク) 氏名についての認識が不正確で,かつ,その余の事項は回答内容が特定不能,体調変動の可能性がある,等の事由で不明である者【2名】(ケ) 調査不能又は調査拒否の者【2名】ウ被告が本件投票用紙等の交付請求の依頼及び本件代理投票の申請が入所者の意思に基づくものとは認められないと判断した少なくとも本件18名の入所者とは,前記(オ)の「氏名,年齢及び場所のいずれについても認識が不正確で,選挙又は投票についての認識もないと思われる者」12名と(カ)の「質問,問いかけに反応のない者」6名の者である。 (3) 本件調査の方法乙第9号証,証人Jの証言及び弁論の全趣旨によれば,本件調査の方法は,次のとおりであったことが認められる。 ア本件調査は,被告代表者委員長K(以下「K」という。)ほか6名の委員や事務局職員が2班に分かれて行ったものであるが,これには,調査の適正を期すため富山医科薬科大学精神神経科の医師が同席した。調査は,Kらが入所者に直接質問するのではなく,入所者の日常生活の世話をしているNの職員に被告が用意した質問をさせ,その質問と入所者の答えのやりとり,そのときの入所者の挙動や緊張の様子などをKらが確認する方法によって行われた。 イ入所者に対する質問の項目と手順などは,あらかじめ被告において,富山医科薬科大学精神神経科の教授の助言を受けて定めていたものであるが,その具体的内容は,まず,質問する職員が「こちらにいる人たちが聞きたいこと 対する質問の項目と手順などは,あらかじめ被告において,富山医科薬科大学精神神経科の教授の助言を受けて定めていたものであるが,その具体的内容は,まず,質問する職員が「こちらにいる人たちが聞きたいことがあるというので,少し教えて上げてください。」と被告の調査者を紹介した後,「ご自分の名前を言ってください。」等と,名前,年齢,居場所などを聴き,「自分の名前を書いてみてください。」と自分の氏名を書くことができるかを確かめ,「最近,選挙があったのを知っていますか。」と選挙の話題に移って,何時,どこの選挙であったか等を問い,さらに,投票の有無,場所を質問した後,「ここで投票できるよう,誰かにお願いしたことはありますか。」,「投票は自分で書きましたか。それとも,誰か他の人に書いてもらいましたか。」,「投票したい人を,どうやって,書くのを頼んだ人に,教えてあげましたか。」などと,不在者投票手続の依頼をしたかどうか,自筆投票をしたか又は代理投票したか,投票したい候補者をどのように指示したのかなどについて問うものとなっていた。 ウまた,質問に当たって留意すべき事項が別途定められていたが,それは,質問の内容を変えない範囲で方言等の入所者と日常使用している言葉を使ったり,必要に応じて繰り返して尋ねたりすることを許容する一方,答えを示して同意を求める形での質問(いわゆる誘導質問)を禁じ,また,身体動作等の言葉以外による方法で回答があったと判断される場合には,直ちにその意味するところを入所者に代わって補足説明させる,というものであった。 (4) 本件調査の評価ア前記認定の事実によれば,本件調査での質問項目と手順は,精神神経科の大学教授の助言を受けて定められたこと,調査には,精神神経科の医師が立ち会っていること,質問は,入所者の日常生活の世話をしているNの職員 認定の事実によれば,本件調査での質問項目と手順は,精神神経科の大学教授の助言を受けて定められたこと,調査には,精神神経科の医師が立ち会っていること,質問は,入所者の日常生活の世話をしているNの職員に行わせ,その内容も,難解なものではなく,平易な言葉で語りかけるように工夫され,方言の使用も認めていること,入所者が言葉以外の身体動作で回答した場合は,職員にその意味を説明させていることなどが認められ,本件調査は,適切かつ妥当な方法により行われたものということができる。なお,本件調査に立ち会った各医師も,本件調査は「概ね適切に行われており,特に問題はない。」との所見を述べている(乙9)。 原告は,本件裁決が本件18名の入所者につき選挙権の行使を制限するものであるとして,選挙権を有しない成年被後見人の例を引き,本件調査が成年被後見人の審判の審理のような厳格な手続を踏んでいないことを非難するが,本件調査は,本件不在者投票とその際の本件代理投票が入所者の意思に基づくものであるかどうかを確認するためのものであって,意義,目的を異にする事例と対比しようとする原告の主張は失当である。 イ原告は,本件調査が本件不在者投票の時点から3か月以上経過して行われており,本件調査時において本件不在者投票をした入所者が15名死亡していることからも分かるように,痴呆の進行は早く,その意味で,本件不在者投票時により近接して行われた町選管の調査の結果の方が信頼性が高いと主張する。 しかし,痴呆症が時間の経過とともに進行することは否定できないとしても,入所者の死亡の原因については,身体的疾患の悪化やその他様々な要因が考えられるところであり,15人の死亡の事実から,直ちに痴呆の進行の程度を推し量ることはできない。むしろ,次の事実は,本件調査の信頼性を裏付けるものということが ,身体的疾患の悪化やその他様々な要因が考えられるところであり,15人の死亡の事実から,直ちに痴呆の進行の程度を推し量ることはできない。むしろ,次の事実は,本件調査の信頼性を裏付けるものということができる。すなわち,前記認定のとおり,Nにおいては,平成13年4月1日以前から入所していた者で,既に痴呆の程度が重症であった者が,本件不在者投票の行われた同年10月11日時点で少なくとも34名存在していたのであるから,その後死亡した15名が仮に全員重度の痴呆の者であったとしても,本件調査時には,どんなに少なく見積もっても19名の重度の痴呆の者が存在していたということができる。そうすると,本件18名の入所者を重度の痴呆の者と認めても決して矛盾することはなく,むしろ,本件調査の結果は,重度の痴呆の者の数を概ね正確に反映しているものと認めることができる。 一方,町選管の入所者に対する調査は,本件不在者投票の日から43日後の平成13年11月20日に行われ(前記第2の2,(3),イ),本件調査よりも72日早く実施されている。そして,その調査の対象者,調査の方法などは,前記第2の2,(3)のイないしエ記載のとおりであるが,町選管が作成した検証結果書(乙12)には,質問に対して入所者がどのような返答や対応を示したのかの記述がなく,町選管の委員が40名の入所者の意思表示を確認できたとする具体的根拠が明らかでない。したがって,町選管の調査結果は,その信頼性を客観的に検討することができず,本件の証拠として採用するには由ないものである。 ウ以上のことからすれば,本件調査の結果は信頼するに足るものということができる。そして,その調査結果を記述した検証結果書(乙9)には,調査対象者94名全員につき,質問に対する回答内容が特記事項とともに記載されており,これを検討すれ 結果は信頼するに足るものということができる。そして,その調査結果を記述した検証結果書(乙9)には,調査対象者94名全員につき,質問に対する回答内容が特記事項とともに記載されており,これを検討すれば,被告が本件調査結果として分類して示した判定(前記第3の1,(2))は,相当として是認することができる。 (5) 本件調査の結果から得られる結論本件調査の結果に基づき,被告は,12名を「氏名,年齢及び場所のいずれについても認識が不正確で,選挙又は投票についての認識もないと思われる者」と,6名を「質問,問いかけに反応のない者」と判定しているが,これらの者に関する検証結果書(乙9)の記述を見れば,これら18名の入所者はいずれも入所者の中でも痴呆の程度が特に重篤であると認められる。そして,先に認定したN入所者の平成13年4月1日時点の痴呆の区分の実状からすると,これら18名の入所者は,その全員が重度の痴呆の状態にあると認めるのが相当であるから,これらの者が選挙や不在者投票の意味を理解して,自らの意思によって本件投票用紙等の交付請求の依頼をしたとは,到底認めることができない。また,本件18名は,その全員が本件不在者投票において代理投票をしているが(乙4),これもまた,自己の意思に基づいて代理投票の申請をしたり,候補者の氏名を指示等したりしたとは認め難い。 (6) 前記認定に反する証拠の検討ア L医師の所見(ア) 証人Lは,医師であり,平成9年までNの理事長を務め,現在も嘱託医としてNの入所者の健康管理に関与している者であるが,被告の検証結果書の写しの余白に,個人ごとにその病名,症状及び意思疎通の方法などを記入した甲第4号証を作成し,これに基づき,特に本件18名の入所者を中心に,その精神的能力や意思疎通の可能性などについて証言した。そして,L証人 白に,個人ごとにその病名,症状及び意思疎通の方法などを記入した甲第4号証を作成し,これに基づき,特に本件18名の入所者を中心に,その精神的能力や意思疎通の可能性などについて証言した。そして,L証人は,本件18名の者は,結論として,痴呆の程度は軽度か中度の域に止まっており,選挙をするかどうかの判断能力はあり,その意思を言葉などによって伝達することも可能であって,言葉が出ない者であっても,手の握り方などにより,日頃から接している職員であれば,その意思を理解することができると証言する。 (イ) しかしながら,被告は,本件の審査の申立てを受けて,Nに対し入所者の入所時の診断書の提出を求め,Nは,一部の入所者の診断書を被告に提出しているところ,この中には,本件18名のうち7名の入所時の診断書が含まれている(枝番号を含む乙75ないし82)。そして,この診断書によれば,前記7名の入所者は,入所時(平成4年9月5日から平成11年4月17日まで)において,いずれも痴呆の程度が中度以上であったことが認められる。しかも,甲第4号証の整理番号4番の入所者について,L証人は,痴呆の程度が軽度であると証言するが,診断書(乙76の1)によれば,平成9年7月2日の時点において,その程度は重度(長谷川式スケール0点)であったこと,また,L証人が痴呆の程度が中度であると証言した前記整理番号12番の入所者は,平成6年4月19日付けの診断書(乙78の1)ではその程度が重度と診断されていることが認められる。そして,被告が入手した前記診断書(乙77,79の各1)によれば,L証人が痴呆の程度が軽度と証言した入所者2人(甲4の整理番号11と45の者)が平成4年9月5日(甲4の整理番号11の者)と平成8年8月21日(甲4の整理番号45の者)の時点で既にその程度が中度であったことが認め 度が軽度と証言した入所者2人(甲4の整理番号11と45の者)が平成4年9月5日(甲4の整理番号11の者)と平成8年8月21日(甲4の整理番号45の者)の時点で既にその程度が中度であったことが認められる。 (ウ) 以上の事実からすると,L証人は,実態に即して正直に証言をしたとは認められず,本件18名が選挙をするか否かの判断能力を有し,それを伝達する能力もあるという証言は,到底措信できるものではない。そして,L証人作成の「被告第1準備書面に関する回答」と題する書面(甲14の1ないし5)も前記判断を左右するものではない。 イ N職員の証言の検討(ア) Nの職員であるF,I,D及びMは,当裁判所の審理において,いずれも証人として,入所者に対する本件不在者投票の意思確認,本件代理投票の際の意思確認及び本件検証の状況について証言をした。そして,その証言は,甲第12号証(原告代理人作成の証拠説明書によれば,その作成者は,前記各証人の他,同じNの職員であるE,Hであり,その作成時期は,平成14年5月である。)に基づく具体的なものであった。 そこで,甲第12号証を検討するに,これは,本件18名の一人ひとりにつき,① 平成13年10月当時の普段の様子,② 同月8日の意思確認時の様子,③同月11日の本件不在者投票時の様子,④ 平成14年1月31日の本件検証時の様子を記載したものであることが認められる。また,これらの記載は,そのときの入所者が発した言葉の内容や動作の仕草,白票を投じたか否などに及ぶ極めて具体的な内容となっている。 そして,この甲第12号証と前記各証人の証言によれば,本件18名の入所者は,いずれも自己の意思により本件不在者投票を望み,かつ,投票したというのである。 (イ) しかし,甲第12号証が少なくとも前記②③当時の入所者の様子を正しく 各証人の証言によれば,本件18名の入所者は,いずれも自己の意思により本件不在者投票を望み,かつ,投票したというのである。 (イ) しかし,甲第12号証が少なくとも前記②③当時の入所者の様子を正しく記載したものとは認め難い。けだし,本件投票用紙等の交付請求をした入所者は109名であり,本件代理投票をした入所者は90名であって,その意思確認に関与したのは,前者についてはD,E,Fであり,後者についてはH,Iというのであるが,かかる多数の入所者の意思確認に関与しながら,そして,その時から既に半年以上も経過しているにもかかわらず,特定された18名の意思確認時の様子を具体的な言葉の内容や動作の仕草に至るまで記憶しているとは,到底信じ難いことであるからである。証人F,同Iは,甲第12号証を作成するについては,処遇日誌を参考にしたと証言するが,同証言によれば,処遇日誌には入所者の症状や体調などは記載されているものの,意思確認の際の状況や様子は記載されていないことが認められるのであるから,仮に処遇日誌を参考にしたとしても,実質的には記憶に頼って作成したのと同じである。また,甲第12号証によれば,同号証の番号⑦の入所者は,代理投票ではなく,自筆投票をした旨の記載があることが認められ,証人Iも同旨の証言をするけれども,Nの施設長C作成の「投票の送致について」と題する書面(乙4)によれば,前記番号の入所者は,代理投票をしていることが明らかであって,このことは,甲第12号証とこれに基づく前記N職員の証言がいかに真実とは懸け離れたものであるかを物語るものである。 (ウ) 以上のことからすれば,甲第12号証及び前記N職員の各証言は,到底措信できるものではなく,本件調査の結果の信用性を何ら左右するものではない。 ウ被告の審査手続におけるN職員の証言の検討(ア) ) 以上のことからすれば,甲第12号証及び前記N職員の各証言は,到底措信できるものではなく,本件調査の結果の信用性を何ら左右するものではない。 ウ被告の審査手続におけるN職員の証言の検討(ア) 被告は,Aが申し立てた審査の審理をするため,本件調査後の平成14年2月5日,N施設長Cの他,職員のE,D,I,H,G,Fを証人として尋問した(乙15ないし21)。 この証人尋問は,入所者に対する不在者投票をすることの意思確認の方法,本件不在者投票の実状,本件代理投票の手続や意思確認の方法,これらを担当した職員の氏名の確認などに関するもので,入所者個々人を特定して,その意思確認の方法や回答の具体的内容を尋問したものではない(乙15ないし21)。したがって,本件18名の意思確認がどうであったかは,これらの証人の証言では明らかでない。 しかし,これらの職員は,入所者に対する本件不在者投票の意思確認,本件代理投票の申請意思とその場合の指示された候補者の確認を,いずれも現実に行ったと証言する。そして,例えば,本件不在者投票に参加するかどうかの意思確認では,言葉による返事ができない入所者については,日頃の意思疎通の積み重ねから,その入所者の承諾を示す動作や反応は分かっていたので,問い掛けに対し,こちら側を振り返ったり,閉じていた目を開いたりするなどの動作,反応によって,その意思を確認した旨証言する(乙16,17)。また,本件代理投票については,3回程度,投票したい候補者の名前を尋ねても返答しない入所者には,白票のまま投票することを確認して,本人に投票させた旨証言する(乙15,18,19)。 (イ) しかし,次の事実に照らせば,N職員の前記証言のように,本件不在者投票が入所者全員の自発的意思によって行われたと見るには,重大な疑念を抱かざるを得ない。 す 言する(乙15,18,19)。 (イ) しかし,次の事実に照らせば,N職員の前記証言のように,本件不在者投票が入所者全員の自発的意思によって行われたと見るには,重大な疑念を抱かざるを得ない。 すなわち,本件選挙については,N入所者109名全員につき,不在者投票のための投票用紙等の交付請求がなされているが,被告が調査したところによれば,Nにおいては,本件選挙の前に行われた3回の選挙(平成12年6月25日執行の衆議院議員総選挙,同年10月9日執行の富山県知事選挙,平成13年7月29日執行の参議院議員通常選挙)においても,いずれも入所者全員分の不在者投票のための投票用紙等の交付請求がなされている(乙56の1ないし4)。これは,Nが特別養護老人ホームであることを考えると,極めて異例なことといわなければならない。現に,被告の調査によれば,被告が施行令55条2項,3項の規定に基づき指定した富山県下の47の特別養護老人ホームのうち,前記3回の選挙につき,不在者投票を実施した施設は43あるが,これらの施設で3回の選挙のいずれについても入所者全員の投票用紙等の交付請求をしたのは,N以外には存在しないのである(枝番号を含む乙22ないし72)。 また,本件選挙の投票用紙等請求依頼書に自署し(乙3の2),かつ,自筆で投票した入所者で,本件調査の結果,「氏名,年齢及び場所のいずれについても認識が正確で,かつ,選挙又は投票について何らかの認識があると思われる者」と判定された者の一人(乙9の整理番号73の者)は,本件調査の際に,尋ねられた選挙の種類について「町長選挙」と正しく回答するとともに,投票したことについて「投票すらもせんがもない。あこで,こいがに書けと言われた。こいがに書けと言われたがで書いてきたが。」と述べている(乙9)。このように痴呆の程度をほとん 正しく回答するとともに,投票したことについて「投票すらもせんがもない。あこで,こいがに書けと言われた。こいがに書けと言われたがで書いてきたが。」と述べている(乙9)。このように痴呆の程度をほとんど考慮する必要のないと認められる入所者がこのような発言をしているということは,Nにおける不在者投票が必ずしも入所者の自発的意思に委ねられず,施設側の指示又は影響力の行使によって,半ば強制的に行われていることを窺わせるものである。 (ウ) そうだとすると,被告の審査段階での前記職員の証言は,これもまた,たやすく措信できるものではないが,仮に証言どおりの意思確認がなされたとしても,それは,入所者全員が不在者投票をすることを当然の前提として形式的に行われたに過ぎず,少なくとも本件18名の入所者については,問い掛けに漫然と返答又は反応した行為を全て承諾と見なし,以後の手続を進めていたものと推認せざるを得ない。また,代理投票についても,3回程度投票したい候補者の名前を尋ねても答えない入所者がいたということは,それらの者は,どの候補者に投票してよいか分からないか,又は投票の意味を理解していないということであって,かかる入所者が投票の直前になって自らの意思により代理投票の申請をしたというのは,それ自体,誠に不自然であり,このことは,本件代理投票の申請が必ずしも入所者の任意の意思によってなされていないことを推認させるものである。原告は,白票を投じるのも,選挙人の権利の行使の一種であり,N職員の措置は至極妥当であると主張するが,代理投票というのは,身体の故障又は文盲により,候補者の氏名を自ら記載できない者が補助者に指示して候補者の氏名を記載させることを認める制度であり,白票を投じるのであれば,何も代理投票を申請する必要はないのであるから,原告の主張は,当を得な り,候補者の氏名を自ら記載できない者が補助者に指示して候補者の氏名を記載させることを認める制度であり,白票を投じるのであれば,何も代理投票を申請する必要はないのであるから,原告の主張は,当を得ないものである。 (7) 争点(1),(2)の検討の総括以上検討したところによれば,Nの職員の前記各証言(被告の審査の審理手続のものも含む。)及び甲第12号証は,いずれも本件調査の結果を覆すに足るものではなく,むしろ,前記認定に係るNの不在者投票の実態からすれば,本件18名以外にも,相当数の入所者が自己の意思とは関わりなく本件選挙に参加させられていた疑いが濃厚であるけれども,少なくとも,重度の痴呆の状態にあると認められる本件18名は,選挙や不在者投票の意味を理解して,自らの意思によって本件投票用紙等の交付請求の依頼をしたとは認められないし,本件不在者投票においては,自らの意思によって,本件代理投票の申請をしたり,候補者の氏名を指示等したりしたとも認めることができない。 そうすると,本件18名の本件選挙における投票は,不在者投票及び代理投票に関する法令に違反していたといわなければならない。 2 争点(3)について前記認定の事実によれば,本件18名の入所者の本件不在者投票は,自らの意思によってなされたとは認められず,また,これらの入所者がした本件代理投票の申請及び候補者の指示等についても,これらの者の意思によるものとは認められない。そうすると,少なくとも18票が選挙人の意思に基づかない投票であったことになるところ,本件選挙においては,前記認定のとおり,当選人の原告と落選したAの得票差が8票であったのであるから,本件18名に関する選挙の規定に違反する事実は,本件選挙の結果に異動を及ぼす虞のあることが明らかである(法205条1項)。 原告は,本 当選人の原告と落選したAの得票差が8票であったのであるから,本件18名に関する選挙の規定に違反する事実は,本件選挙の結果に異動を及ぼす虞のあることが明らかである(法205条1項)。 原告は,本件18名中14名は白紙投票をしたので,本件選挙の結果に異動を及ぼすのは4票に止まり,8票差の本件選挙の結果に影響は及ばないと主張する。しかし,本件18名の入所者のうち14名が白紙投票をしたというのは,甲第12号証及びこれに基づく証人Iの証言によるものであるところ,これらが信用できないことは,既に説示したとおりであるが,そもそも,個々の選挙人の具体的な投票内容(白票であるか否かを含む。)を公的に判定することは許されないのであって,原告の主張は失当である。 3 結論よって,本件選挙を無効とした被告の裁決は相当であり,原告の請求は理由がないから,これを棄却することとして,主文のとおり判決する。 名古屋高等裁判所金沢支部第1部裁判長裁判官川崎和夫裁判官榊原信次裁判官渡邉和義
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