昭和46(ネ)1838 新株発行無効請求事件

裁判年月日・裁判所
昭和47年4月18日 東京高等裁判所
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【DRY-RUN】主    文      本件控訴を棄却する。      控訴費用は控訴人の負担とする。          事    実  控訴代理人は「原判決を取消す。被控訴人の請求を棄却する。訴訟費用は第一、 二審

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判決文本文3,066 文字)

主    文      本件控訴を棄却する。      控訴費用は控訴人の負担とする。          事    実  控訴代理人は「原判決を取消す。被控訴人の請求を棄却する。訴訟費用は第一、 二審とも被控訴人の負担とする。」との判決を求め、被控訴代理人は控訴棄却の判 決を求めた。  当事者双方の事実上の主張ならびに証拠の関係は、以下に付加するもののほか原 判決事実摘示のとおりであるから、これを引用する。  (控訴人)  一 本件株式の発行は商法二八〇条の三の二の規定に違反する無効のものではな い。すなわち  本件増資前の株主は、被控訴人、A、B、C、D、E、Fの七名であつたとこ ろ、被控訴人に対しては増資について事前の相談をし本人自らよく事情を知つてお り、また当時病気療養中であつたことから同人に対しては通知をしなかつたことに 相当の理由があり、また本件の実質的株主は被控訴人およびAであつて他の株主は 名義上のものにすぎないからこれらの者に対して通知、公告を欠いたとしても被控 訴人の新株引受権を害したことにならないから本件新株の発行は無効ではない。  二 本件株金の払込みは会社資金を流用したものではない。もつともGの場合は 金一〇万円のうち金五万円は会社資金から立替えてもらつたが、同人はこれを昭和 四四年五月八日会社に返済している。  (被控訴人)  本件新株発行当時の株主が控訴人主張のとおりであることを認める。  (証拠関係)(省略)          理    由  一 請求原因第一、二項の各事実は当事者間に争いない。  二 成立に争いない甲第四号証の一ないし五、同第五号証、証人Gの証言、被控 訴本人(但し後記措信しない部分を除く)および原審ならびに当審における控訴会 社代表者本人(但し後記措信しない部分を除く)尋問の結果を総合すれば、つぎの 事実が認められる。   号証、証人Gの証言、被控 訴本人(但し後記措信しない部分を除く)および原審ならびに当審における控訴会 社代表者本人(但し後記措信しない部分を除く)尋問の結果を総合すれば、つぎの 事実が認められる。  被控訴人は昭和四二年四月二〇日Aらと控訴会社を設立し、代表取締役に、右A は取締役にそれぞれ就任し、被控訴人は外交を主として担当、右Aは内にあつて被 控訴人から控訴会社代表者印を預つて同会社の経理事務などを担当してきたもので あること、しかしながら昭和四四年二月ころ増資の必要が生じたので被控訴人が資 金を調達してきて増資をすることとなつたが同人が病に倒れたために資金の調達が できなかつたこと、そこで右Aはやむを得ず昭和四四年三月一五日ころ当時控訴会 社の代表取締役であつた被控訴人には無断で、同人名義を冒用して同年四月三〇日 を払込期日とする額面株式一、〇〇〇株(発行価額五〇〇円)を発行することと し、同年四月三〇日うち四〇〇株を右Aが、うち各二〇〇株をG及びHが、うち各 一〇〇株をI及びJがそれぞれ引受け、同人ら名義をもつて株式の払込みがなされ ていること(もつとも右Gの払込金一〇万円のうち五万円は同人が一時借入金名義 でその頃控訴会社の資金のうちから流用したが、その後一、二ケ月のうちに返済し た。)が認められる。  右認定に反する被控訴本人および原審並に当審における控訴会社代表者各尋問の 結果は措信せず、他に右認定を左右するに足る証拠はない。  三 しかして右新株発行について、新株発行に関する取締役会の議決を経ていな いことは当事者間に争がないけれども、この場合における取締役会の議決なるもの は会社の内部意思決定に止まるから取引安全の見地を考慮すれば、その議決の欠缺 という違法の故をもつて新株発行を直ちに無効ならしめることは相当でない。  (最高裁判所昭和三六年三月三日判決民 議決なるもの は会社の内部意思決定に止まるから取引安全の見地を考慮すれば、その議決の欠缺 という違法の故をもつて新株発行を直ちに無効ならしめることは相当でない。  (最高裁判所昭和三六年三月三日判決民集一五巻三号六四五頁)  但し、このことはあくまでも外部的には会社を代表する正当な権限を有する者に よつてその新株発行の手続が会社の行為として適法に履賎されたことを前提とす る。しかるに前段認定のように本件新株発行手続は、控訴会社の代表取締役であつ た被控訴人には無断で同人名義を冒用した平取締役のAによつて履賎されたのであ るから、外部に対する関係で有効な新株発行手続が履まれているとはいえないので あつて、この点において既に本件新株発行はこれを無効であると断ぜざるを得な い。  <要旨>のみならず本件新株発行について新株発行事項の公告または株主に対する 通知がなされていないことは当</要旨>事者間に争がなく、この欠缺もまた本件の新 株発行を無効ならしめるものである。けだしこの通知公告を欠くときは株主の新株 発行差止請求権を不当に奪うことになるからである。控訴会社は控訴会社の実質的 株主は被控訴人とAだけであつて他の数名の者は名義上の株主であるに過ぎない し、また被控訴人に対しては増資について事前に相談し被控訴本人自からよく事情 承知していたから本件新株発行については公告または通知を要しないという。しか したとえ名義上の株主にすぎないものであつても、いやしくも法律上株主の地位に ある者の法律上の権利義務はこれを全く無視することはできないし、またたとえ新 株発行の公告または通知は事前にその発行事項を承知していた株主に対してはその 必要性がないと解し得るとしても、そのためにはその株主において、予め商法二八 〇条ノ三ノ二に定める各公示事項について具体的に承知せしめられていることを要 し その発行事項を承知していた株主に対してはその 必要性がないと解し得るとしても、そのためにはその株主において、予め商法二八 〇条ノ三ノ二に定める各公示事項について具体的に承知せしめられていることを要 し、単に抽象的にその増資の必要性ないし計画について知らされていたというだけ では公告または通知の欠缺を正当ならしめる理由としては不充分であると解すべき ところ、原審における証人Gの証言および原審における被控訴人本人、原審ならび に当審における控訴会社代表者の各尋問の結果によれば被控訴人は本件新株発行に ついて予め或る程度抽象的には控訴会社の増資の必要性ないし計画について知らさ れていたところがある事実はこれを認めることができるけれども、それ以上に前記 法条の公示事項について具体的に、すなわち新株発行の種類発行数等について具体 的に知らしめられていた事実はこれを認めるに足りないところである。そうである とすれば本件新株発行に関する公告または通知の欠缺を正当化せしめるものとして 控訴会社の主張するところはこれを採用することができない。  以上の理由によつて結局本件新株発行はこれを無効とすべくこれが無効であるこ との確認を求める本訴請求はこれを正当として認容すべきである。  四 してみれば、これと同趣旨の原判決は相当であつて本件控訴は理由がないか らこれを棄却することとし、控訴用の負担につき民訴法八九条、九五条を適用し て、主文のとおり判決する。  (裁判長裁判官 菅野啓藏 裁判官 渡辺忠之 裁判官 中平健吉)

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