主 文 1 被告株式会社新潮社は,原告に対し,330万円及びこれに対する平成20年7月31日から支払済みまで年5分の割合による金員を支払え。 2 原告の被告株式会社新潮社に対するその余の請求及び被告亡A訴訟承継人Bに対する請求をいずれも棄却する。 3 訴訟費用は,これを10分し,その8を原告の負担とし,その2を被告株式会社新潮社の負担とする。 4 この判決は,第1項に限り,仮に執行することができる。事実及び理由第1 請求 1 被告株式会社新潮社は,原告に対し,1100万円及びこれに対する平成20年7月31日から支払済みまで年5分の割合による金員を支払え。 2 被告亡A訴訟承継人Bは,原告に対し,366万6666円及びこれに対する平成20年7月31日から支払済みまで年5分の割合による金員を支払え。 3 被告株式会社新潮社は,原告に対し,週刊新潮に,別紙1記載の謝罪広告を,同別紙記載の掲載条件で,1回掲載せよ。第2 事案の概要 1 事案の要旨被告株式会社新潮社(以下「被告会社」という。)は,A(以下「亡A」という。)の情報提供により取材し作成した記事(以下「本件記事」という。)を,同社が発行する「週刊新潮」の2008年8月7日号(以下,当該週刊誌を「本件週刊誌」という。に掲載した。本件は,その当時,参議院議員であった原告が,本件記事が本件週刊誌に掲載されたことによって,名誉を棄損され,精神的損害を被ったと主張して,不法行為に基づく損害賠償として,本件週刊誌の発行主体である被告会社に対し,その損害額1100万円(慰謝料1000万円と弁護士費用相当額100万円の合計額)及びこれに対する本件週刊誌を発行した日の翌日である平成20年7月31日から支払 誌の発行主体である被告会社に対し,その損害額1100万円(慰謝料1000万円と弁護士費用相当額100万円の合計額)及びこれに対する本件週刊誌を発行した日の翌日である平成20年7月31日から支払済みまで民法所定の年5分の割合による遅延損害金の支払を求め,本件記事の情報提供者である亡Aを3分の1の割合で相続した被告亡A訴訟承継人B(以下「被告B」という。)に対し,上記損害額の法定相続分割合(3分の1)である366万6666円及びこれに対する上記同日の平成20年7月31日から支払済みまで年5分の割合による金員の支払を求めるほか(被告らは被告Bの損害賠償債務の限度で連帯責任を負う。),民法723条に基づき,被告会社に対し,謝罪広告の掲載を求める事案である(なお,本件訴訟は,亡Aを被告として,同人に被告会社と同額の損害賠償を請求して提起されたが,同人が本件訴訟係属中の平成24年3月1日に死亡したことから,亡Aに対する訴訟は,相続人であるC,D及び被告Bに各自3分の1の割合で承継され,その後,被告B以外の相続人らに対する訴えは取り下げられて終了した。)。 2 前提事実(当事者間に争いがないか又は弁論の全趣旨及び後掲の証拠により容易に認定できる事実) 当事者ア原告は,本件記事が掲載された「週刊新潮」(本件週刊誌)が発行された平成20年7月30日当時,参議院議員であって,与党であるR党に所属し,同党では副代表を務め,また,参議院文教科学委員会の委員長を務めたこともある者である。 イ被告会社は,平成20年7月30日,本件週刊誌を発行した出版社である。 ウ亡Aは,原告による裏口入学詐欺の被害にあったとして原告を東京地方検察庁に告訴した者であり,本件記事中においては「E」という仮名で掲載されている。 週刊誌を発行した出版社である。 ウ亡Aは,原告による裏口入学詐欺の被害にあったとして原告を東京地方検察庁に告訴した者であり,本件記事中においては「E」という仮名で掲載されている。なお,亡Aは,本件訴訟係属中の平成24年3月1日に死亡し,同人を子である被告Bのほか,C及びDが各自3分の1の割合で相続した。 本件記事は,分量的には週刊誌の5段組の記事が3頁(本件週刊誌の24頁から26頁)にわたるものであるが,冒頭の2頁分が見開きとなって上2段分のほぼ全部が原告の顔写真や大見出しで埋められている。また,本件記事には,以下のような記載がある。ア大見出し「2億円『裏口入学詐欺』で訴えられたR党『F』副代表」なお,本件記事の大見出しスペースには,原告の顔写真,告訴状を扇状に開いたところを撮影した写真,原告の地元事務所の入口を撮影した写真等が,大見出し文と併せて掲載されている。大見出しの右横には,原告を説明するように「N大学医学部には顔が利く?」との記載があり,また大見出しの下欄には,上記写真を説明する形で,小さなポイントの字で「司法はどう裁くか(告訴状と,現金授受の舞台となった地元事務所)」との文章も掲載されている。イ本件週刊誌24頁4段から5段(24頁から25頁にかけての見開きの中央部分)にかけてのリード文「秘書が国会議員の名を騙り,裏口入学を持ちかける詐欺話はままあるが,党の要職に就く議員本人が直接関与したとするなら前代未聞。先頃,R党の副代表・F参議院議員(74)が,被害者から2億円の『裏口入学詐欺』で東京地検に刑事告訴されていた。」ウ本件週刊誌25頁3段から4段にかけての小見出し部「僕に直接手渡してくれ」エ本件 74)が,被害者から2億円の『裏口入学詐欺』で東京地検に刑事告訴されていた。」ウ本件週刊誌25頁3段から4段にかけての小見出し部「僕に直接手渡してくれ」エ本件週刊誌26頁2段から3段にかけての小見出し部「一切金を受け取っていない」オ本件週刊誌24頁の1段目の1行目から6行目「告訴状が東京地方検察庁に提出されたのは,7月22日である。訴えたのは広島市内にある内科医院の元院長夫人。仮に名前をEさん(79)とする。」カ本件週刊誌24頁の3段目の12行目から19行目「F議員は,<院長亡き後の病院経営の心配と家族への同情を寄せ,「何かあったら何でも相談しなさい」と,優しい言葉で語り掛け告訴人(Eさん)を信用させた>」キ本件週刊誌24頁3段目の22行目から31行目「<「やっと,長男がその気になった。N大学医学部に再チャレンジする」と告訴人が話すと,つママかさず被告訴人(F議員)は,「N大学のG総長(以下,引用部はママ)をよく知っているから僕に任せなさい」と,告訴人に安心感と期待感そして信頼感を与えた>」ク本件週刊誌24頁4段目の6行目から18行目「F議員は重ねて言った。<「ワシノ,どうしょうもない息子がおってな,これもGに頼んだ」と,身内話を持ち出し告訴人に語りかけた。告訴人は(中略),G総長との強いパイプを感じ益々被告訴人を信頼し,被告訴人に期待を込め,「内ママの息子もどうぞ宜しくお願いいたします」とN大学医学部合格の便宜を依頼した>」ケ本件週刊誌24頁5段目の1行目から17行目「翌6月25日,F議員はさっそく,<「G総長に相談に行ってくる。手ぶらでは行けな します」とN大学医学部合格の便宜を依頼した>」ケ本件週刊誌24頁5段目の1行目から17行目「翌6月25日,F議員はさっそく,<「G総長に相談に行ってくる。手ぶらでは行けないので二,三百万円程度用意して貰えるか」と告訴人に電話で指示を行う。そこで告訴人は,同年7月8日(月)に現金300万円を茶封筒に入れて被告訴人の地元事務所に届けた>」「<その後,被告訴人は,何十回も告訴人に電話を掛け,「G総長に持って行くから」という同様の手口で告訴人にお金を出させ続け>た」コ本件週刊誌25頁3段目の5行目から4段目の3行目「結局,平成17年までの4年間に騙し取られた金は総額1億7425万円にのぼり,他にもEさんが医院から借用する形で用立てて,F議員に渡した金が総額で3910万円あるという。合計で2億円超。」サ本件週刊誌25頁5段目の6行目から26頁1段目の29行目「Eさんは語る。『最初に300万円を地元の事務所に持って行った時には,午後2時と言われていたのにF先生は留守でした。それでお菓子と一緒に事務所の人に預けたら,その晩,先生から電話がかかってきて,“金銭的なことは絶対に事務所の者に言ったらいけない”と言う。“何でです?”と聞いたら,“あんたも大人じゃろうから,わかっとるでしょう。僕に直接手渡してくれ”と言われました。この時,“そんなにたびたびお金を持って行かないけんのですか”と聞きました。先生は,“それはそうじゃないか,考えてみんさいや”と言われて。“ああ,そうですね”って,私,電話を切ったんですよ』」「それ以後は,密室での受け渡しになったという。『お金を持って来てくれという連絡は,朝でも夜でも来ました。突然朝8時に“もうとにかく,東京に帰ったら会わな ,私,電話を切ったんですよ』」「それ以後は,密室での受け渡しになったという。『お金を持って来てくれという連絡は,朝でも夜でも来ました。突然朝8時に“もうとにかく,東京に帰ったら会わないけんのや”と電話がかかってきて,お金を出すのに困って医院の事務長をやっていた弟に借りたこともある。私は,たいてい事務所に行って先生のいる奥の部屋に入ってドアを閉めます。1回行くとだいたいいつも30分ぐらい。渡してサッと10分ぐらいで帰る時もある。先生は,“はい,はい。分かりました,それじゃ”言うて受け取る。息子のことはあまり喋らなかった。私が“先生,よろしくお願いします”と言うだけ。金額が大きい時は,“先生,この中に入っています”って言って紙袋を私が広げて,“お菓子があるから先生,食べてください”と。先生は,冗談めかして“お前のお菓子やなんか要らんよ”と言いよった。大きいお金はみんな抽斗に。小っちゃいお金は,こう内ポケットへ入れる癖があって,今でもお金を取りよった時の先生の顔が目の前に浮かびますよ』」 3 争点及びこれに関する当事者の主張 本件記事による名誉棄損の有無【原告の主張】本件記事は,大見出しやリード文などの本件記事を構成する各部分及び本件記事全体のいずれについても,一般読者に対し,原告が亡Aに対して裏口入学詐欺を働いたとの印象又は裏口入学詐 欺を働いた疑いが濃厚であるかのような印象を抱かせるから,原告の社会的評価を低下させるものであって名誉を棄損するものといえる。【被告の主張】名誉棄損の有無の判断は,本件記事全体を一般読者の通常の読み方に従って読んだ場合に,原告の社会的評価を低下させるものであるか否かという観点から行うべきである。そして,本件記事全体を読んだ一般読者は,亡Aが本件記 の判断は,本件記事全体を一般読者の通常の読み方に従って読んだ場合に,原告の社会的評価を低下させるものであるか否かという観点から行うべきである。そして,本件記事全体を読んだ一般読者は,亡Aが本件記事に引用された告訴状の内容で原告を告訴しているが,原告の言い分は亡Aの言い分と大きく食い違っているのであり,いずれの主張が正しいかは,司法の判断を待たなければならない,という理解をするから,本件記事が原告の社会的評価を一方的に低下させる印象を与えるものではない。 名誉棄損の免責事由の有無【被告の主張】ア公共性及び公益目的 本件記事を掲載した週刊誌が発行された当時,原告は参議院議員であり,またR党の副代表という要職にあったから,本件記事により摘示された事実は公共の利害に関する事実であり,報道の目的は国民の知る権利に応えるものとして,専ら公益を図る目的に出たものである。イ本件記事が真実であること,真実であると信じたことにつき相当な理由があること原告が亡Aに対して裏口入学詐欺を働いた事実,又は少なくとも働いた疑いが濃厚であることは真実であるし,仮に真実と認められないとしても,本件記事に関する取材等により,明ら かになった以下の事実により真実であると信じたことについて相当の理由がある。 亡Aは,原告を被告訴人とし,裏口入学詐欺を被疑事実として告訴状を東京地方検察庁に提出し,同告訴状は,同庁に受理され,原告は同庁に赴いて事情聴取も受けていること。 亡Aが原告に金員を交付した日時を記録した書き込みのあるカレンダーや通帳といった,亡Aの主張を裏付ける資料が存在していること。 亡Aの弟であるHは,本件記事に関して取材を行った被告会社所属 原告に金員を交付した日時を記録した書き込みのあるカレンダーや通帳といった,亡Aの主張を裏付ける資料が存在していること。 亡Aの弟であるHは,本件記事に関して取材を行った被告会社所属のI記者(以下「I記者」という。)に対し,亡AがKクリニックの口座から度々金銭を引き出していたこと及びホテルVで原告に現金を渡したところを事務職員のLが現認していたことを話したこと。 原告は詐欺を否定していたものの,ホテルVで亡Aと会ったことは認めていること,その後,N大学に亡Aと同行しG学主に引き合わせたことも認めていること,さらには,その際300万円を亡Aから預かったが,後に返金した事実も認めていること。 原告が提示してきた日程表を検証した結果,必ずしも全ての日程で原告と亡Aが会う時間がないわけではなく,亡Aが金銭を交付したと主張した日時に,金銭を交付することが不可能ではないこと。以上の事実のうち,亡Aが東京地方検察庁に告訴状を提出し,しかも同庁からの事情聴取を受けたという事実は非常に重く受け止めるべきであり,そのほかの客観的な裏付け証拠の存在やHからの上記取材結果及び原告自身が亡Aの主張を一部認 めていることからすると,亡Aの主張する事実は主要な部分において裏付けられているというべきである。他方,原告の提示してきた日程表によっても亡Aの主張が否定されるものではないから,原告が亡Aに対して裏口入学詐欺を働いたという事実が真実でないとしても,I記者は原告と亡Aとの間の金銭授受などの経緯を詳細に取材して上記の事実関係を明らかにしたのであるから,被告会社がこれを真実であると信じたことには相当な理由があるというべきである。【原告の主張】仮に,本件記事が公共性を有し,本件記事の掲載が公益目的 の事実関係を明らかにしたのであるから,被告会社がこれを真実であると信じたことには相当な理由があるというべきである。【原告の主張】仮に,本件記事が公共性を有し,本件記事の掲載が公益目的でなされたものであるとしても,本件記事は真実ではなく,そのことは,亡Aが原告を被告として提起した,裏口入学詐欺を働いたことが不法行為であるとして1億円の損害賠償を請求した訴訟(東京地方裁判所平成20年第S号)において,亡Aの請求を全部棄却する判決がなされ,亡Aが控訴したものの,控訴を取り下げたために同判決が確定していることからも裏付けられている。また,被告会社の亡Aからの取材内容に「客観的な裏付け」があったとはいえないし,原告の反論についての裏付け取材は質量共に著しく不足していたから,被告会社が亡Aからの取材内容を真実であると信じたことについて相当な理由はない。 亡Aの責任【原告の主張】雑誌記事が名誉棄損にあたるとき,①情報提供者が提供した内容に従った記事が掲載される蓋然性が高く,②情報提供者がそのことを予測し認容していた場合には,記事による名誉棄損との間に相当因果関係が認められ,情報提供者にも不法行為責任が生じるところ,本件では上記①,②のいずれも肯定されるから,亡Aは原告に対する名誉棄損行為について被告会社と共同不法行為責任を負う。【被告の主張】雑誌記事に関する情報を提供した者が不法行為責任を負うのは,①同人が自ら提供した情報をそのまま報道することについてあらかじめ報道機関と合意した上で情報を提供している場合や,②自己の提供した情報がそのまま記事になることを承諾していた場合などに制限されるところ,本件では上記いずれの場合にも該当しないから,亡Aは不法行為責任を負わない。 上で情報を提供している場合や,②自己の提供した情報がそのまま記事になることを承諾していた場合などに制限されるところ,本件では上記いずれの場合にも該当しないから,亡Aは不法行為責任を負わない。 損害額及び謝罪広告の要否【原告の主張】ア損害額本件記事により,原告は,社会的地位及び評価を大きく傷つけられ,さらに,参議院議員選挙への立候補を断念せざるを得なくなった。このことにより原告が被った精神的苦痛を慰謝するために必要な金額は,1000万円を下らず,また,本件訴訟を提起せざるを得なかったことにより生じた弁護士費用のうち,少なくとも100万円は被告会社及び亡Aの不法行為と相当因果関係がある。イ謝罪広告の必要性原告の棄損された名誉及び信用を回復するためには,謝罪広告を掲載する必要がある。【被告の主張】ア損害額原告は,本件記事が原因で参議院議員選挙への立候補を断念せざるを得なくなったものではないから,本件記事による名誉棄損と原告の損害との間には因果関係はない。イ謝罪広告の必要性原告の主張は争う。第3 当裁判所の判断 1 本件記事による名誉棄損の有無 本件記事により摘示された事実ア本件記事が原告の名誉を棄損するものであるかについて検討するに,本件記事を一見すると,「2億円『裏口入学詐欺』で訴えられた」との大見出しや,本件記事の「東京地検に刑事告訴されていた」との記載があるリード文,さらには本件週刊誌25頁の「僕に直接手渡してくれ」との小見出しの記載,同26頁の「一切金を受け取っていない」との小見出しが目につくから,これに接した一般読者は,それらの情報から,原告は自身が裏口入学詐欺 件週刊誌25頁の「僕に直接手渡してくれ」との小見出しの記載,同26頁の「一切金を受け取っていない」との小見出しが目につくから,これに接した一般読者は,それらの情報から,原告は自身が裏口入学詐欺を働いた事実を否定しているものの,原告が当該被擬事実で東京地方検察庁に告訴されたと理解するものと認められる。そして,さらに本件記事の内容を読み進んでいくと,記事本文は,原告が告訴を受けたという事実から記述が始められているものの,全体で3頁にわたる本件記事の最初の2頁目の末段までは,告訴状の記載内容,亡Aから取材した内容,原告に関わる客観的事実が,いずれが亡Aの言い分であり,いずれが確かな事実であるかを区別せずに混在して記載されている。それに続く本件記事2頁目末段から3頁目3段目分までは,亡Aに直接取材した際の亡Aの言い分が,亡Aの言い分であると分かる形式で記載されているが,結局,ここまでの記述は,すべて亡Aの一方的言い分を否定することなく伝えているだけの記載内容となっている。さらに,それに引き続き,亡Aの言い分を裏付ける医院関係者の証言に加え,裏口入学を否定するN大学のG学主からの取材内容が本件記事の1段分程度を使って記載されているから,そこまでの記載内容を一読する限り,一般読者の通常の読み方であれば,先に見た大見出しや小見出し部分からの理解と合わせて,東京地方検察庁に告訴されたという本件記事で摘示されている裏口入学詐欺はむしろ真実存在したであろうとの印象を受けるものと認められる。なお,本件記事は,上記部分に引き続き,裏口入学詐欺を否定し,亡Aとの関係や同人の言い分の矛盾点を指摘する原告の言い分を,原告の発言内容を引用する形で2段分足らずの分量で紹介している。しかし,それに引き続いて,本件記事の末段部分で ,裏口入学詐欺を否定し,亡Aとの関係や同人の言い分の矛盾点を指摘する原告の言い分を,原告の発言内容を引用する形で2段分足らずの分量で紹介している。しかし,それに引き続いて,本件記事の末段部分で,告訴状を届け出たとするM氏からの発言という体裁をとりながら,東京地方検察庁に告訴状が受理され,手続が「粛々と」進められている事実を伝えていること,及び本件記事の末文が「Eさんは,同時に返還請求の民事訴訟も起こす予定。F議員の弁明を,司法はどう裁くか。」と結ばれていることによる印象も併せて考慮すると,結局,一般読者は,本件記事によって,原告自身は裏口入学詐欺の事実を否定しているとはいえ,東京地方検察庁は告訴に基づいて原告に対する捜査を進め,いずれは刑事事件として立件するであろうとの印象を受け,さらに,刑事立件するということは,亡Aが訴えている裏口入学詐欺の事実は真実であり,そうでなくとも刑事立件に値するだけの疑いが濃厚であろうとの印象を受けるものと認められる。イこれに対し,被告は,本件記事を読んだ一般読者は,亡Aが,引用された告訴状の内容で原告を告訴しているものの,原告の言い分は亡Aのそれと大きく食い違っているのであり,いずれの主張が正しいかは,司法の判断を待たなければならない,という理解をするのであって,原告の社会的評価を一方的に低下させる印象を与えるものではないと主張する。そして,その理由として,本件記事中,①亡Aからの取材に基づく部分については,鉤括弧(「 」)を用い,告訴状の内容を引用した部分については山括弧(〈 〉)を用いてそれぞれ特定をしており,告訴人である亡Aの主張部分であることを明らかにした上で,記事が構成されており,告訴人が主張する事実が真実であるという印象を読者に与えないように工夫がされて 〉)を用いてそれぞれ特定をしており,告訴人である亡Aの主張部分であることを明らかにした上で,記事が構成されており,告訴人が主張する事実が真実であるという印象を読者に与えないように工夫がされていること,②原告の主張については,「一切金を受け取っていない」という見出しを掲げた上で,原告の主張が亡Aと真っ向から対立していることを詳細に明らかにしていること,③本件記事の本文は,「Eさんは,同時に返還請求の民事訴訟も起こす予定。F議員の弁明を司法はどう裁くか。」として本件記事を締めくくっていること,を挙げる。しかしながら,亡Aの発言の体裁をとっている本件記事中の鉤括弧中の部分はともかく,山括弧中の部分については,これが何を意味するかの説明はないから,それが告訴状の記載内容であると推認することは困難である。加えて,本件記事の本文は,前記アのとおり,特に告訴状の記載内容を紹介する部分の間に亡Aからの取材により得られた内容や原告に関わる客観的事実が混在して記載されている。そうすると,一般読者の印象としては,告訴状の記載内容が記載された部分とそれ以外の部分を判別することができず,取材により得られた客観的事実のような誤解を与えられる体裁になっているといえるから,これにより原告の社会的評価が低下させられないような工夫がなされているとはいえない。また,裏口入学詐欺を否定する原告の主張も記載されているが,上述したとおり,わずかに2段分足らずであり,亡Aの主張と対比すれば,その分量は極めて少ないというべきであるし,またそればかりか,「『私は一切金を受け取っていないし,事実無根』と,ご本人は力説する。」,原告は「広島市内のホテル(前出)でEさんに会ったことは認めるが,『何か受け取ったなどという記憶はありません』」 ればかりか,「『私は一切金を受け取っていないし,事実無根』と,ご本人は力説する。」,原告は「広島市内のホテル(前出)でEさんに会ったことは認めるが,『何か受け取ったなどという記憶はありません』」との記載部分には,「力説」であるとか「記憶はありません」などの,原告の主張をやや揶揄し,不自然・不合理であるかのような印象を抱かせる表現が用いられていることが,むしろ指摘できる。さらに,本件記事の本文末尾の「司法はどう裁くか」という記載に接した一般読者は,裁く場となる司法とは,その直前に記述された民事訴訟だけを意味するのではなく,本件記事が取り上げてきた刑事事件をも意味するものと理解するから,当該記載により,原告が亡Aの告訴によって公訴提起されるであろうとの印象を強く受け,ひいては,亡Aが訴えている裏口入学詐欺は少なくとも刑事立件できるだけの濃厚な疑いがあるとの印象をも受けると認められるから,一般読者が,これとは反対に,当該記載により,原告による裏口入学詐欺の事実が真偽不明であるとの印象を受けるものとはいえない。そうすると,被告らが指摘する,本件記事が原告の社会的評価を一方的に低下させるものではないとの主張及びその理由は失当であって,その主張は採用できない。 以上によれば,本件記事は,直接的には原告が亡Aに対して裏口入学詐欺を働いた事実により東京地方検察庁に告訴された事実を摘示するものであるが,一般読者に対して,その裏口入学詐欺が真実あった,又は少なくともその疑いが濃厚であるとの認識あるいは少なくともその印象を与えるものであるから,本件記事が原告の社会的評価を低下させることは明らかである。よって,本件記事の本件週刊誌への掲載は名誉棄損に当たるということができる。 2 名誉 ともその印象を与えるものであるから,本件記事が原告の社会的評価を低下させることは明らかである。よって,本件記事の本件週刊誌への掲載は名誉棄損に当たるということができる。 2 名誉棄損の免責事由の有無 民事上の不法行為たる名誉棄損については,その行為が公共の利害に関する事実に係り専ら公益を図る目的に出た場合には,摘示された事実が真実であることが証明されたときは,その行為には違法性がなく,不法行為は成立しないものと解するのが相当である。また,摘示された事実が真実であることが証明されなくても,その行為者において当該事実を真実と信ずるについて相当の理由があるときには,その行為には故意若しくは過失がなく,結局,不法行為は成立しないものと解するのが相当である。 公共性,公益目的本件週刊誌が発売された当時,原告は現職の参議院議員であって,その当時の与党であるR党では副代表を務めており,しかも参議院において文教科学委員会の委員長を務めたこともあるところ,原告が亡Aに対して裏口入学詐欺を働いた事実により東京地方検察庁に告訴された事実を摘示する本件記事は,国民の選挙権の行使などに密接に関連するから,公共の利害に関する事実に係るものということができる。また,本件記事は,原告の参議院議員や政党の副代表としての資質,適性に関する問題提起を含んでいるという点で,専ら公益を図る目的に出たものであることも了解できる。 真実性についてア次いで,原告が裏口入学詐欺を働いた事実が真実であるか検討するに,被告らは,原告と亡Aが知り合ったきっかけについて別紙2のとおり主張するとともに,亡Aが原告に現金を手渡した日時・場所については別紙3のとおりであると主張するところ,確かに,亡Aが用いていた るに,被告らは,原告と亡Aが知り合ったきっかけについて別紙2のとおり主張するとともに,亡Aが原告に現金を手渡した日時・場所については別紙3のとおりであると主張するところ,確かに,亡Aが用いていたカレンダー(乙4の1ないし4)には,上記日時についてのメモが残されており,また亡Aの預金通帳(乙5)には,亡Aがその一部整合する日に金銭を引き出していた事実が記録されていることが認められる。また,亡Aが,原告から裏口入学詐欺に遭ったことを不法行為として,原告に対し,その主張に係る2億2550万円の損害のうち1億円の損害賠償を求めて訴訟提起した別件訴訟東京地方裁判所平成20年第S号損害賠償請求事件に提出された亡A作成の陳述書(乙1ないし3)にも,被告らの主張に沿った事実が記載されており,さらに,同訴訟において証言したLは,亡Aが原告に金銭を交付した場面を見たと証言している(乙20)。そのほか,証拠(乙7の1及び2,原告本人)によれば,亡Aの夫は原告の後援会の会員であり,その夫が亡くなった後も亡Aは原告に毎年,ワイシャツや,ビール,松茸などの数万円単位の贈答をしていた事実も認められるし,何より,原告自身,亡Aを被告Bの医学部再入学問題に絡んで,旧知であるN大学のG学主に引き合わせる機会を設け,その場で亡AがG学主に渡そうとした現金300万円を一旦預かり,後日,返還した事実を本人尋問において供述している。イそうすると亡Aと原告とは,被告BのN大学医学部入学問題を巡っての接点が全くなかったわけではないといえるが,それにしても,上記で認定した事実以外に,原告が亡Aに対して,被告BをN大学医学部に裏口入学させることを約して金銭を交付させたことを推認させるような具体的な事実を認めるに足りる証拠は全くない。 ,それにしても,上記で認定した事実以外に,原告が亡Aに対して,被告BをN大学医学部に裏口入学させることを約して金銭を交付させたことを推認させるような具体的な事実を認めるに足りる証拠は全くない。そればかりか,そもそも上記の亡Aが残したカレンダーの記載の問題は後記のイのとおりであるし,そのほか証拠(甲2,甲4)及び弁論の全趣旨によれば,亡Aが同行為を不法行為であるとして提起した前掲の損害賠償請求訴訟において,亡Aは敗訴し,その判決は控訴取下げにより確定していることが認められる。そうすると,原告が亡Aに裏口入学詐欺を働いたと認めることはできず,またその疑いが濃厚であるということも当たらないから,摘示された事実の真実性の証明はないといわなければならない。ウしたがって,本件記事を本件週刊誌に掲載したことが違法性を欠くとはいえない。 真実であると信じるについて相当の理由があるかについてアそこで,被告会社が,原告が亡Aに裏口入学詐欺を働いたとの事実を真実と信じるについて相当の理由があるかについて検討すると,被告らは,亡Aが原告を東京地方検察庁に告訴し,その告訴が受理され,亡Aが同庁から事情聴取を受けた事実に重みがあるように主張している。しかしながら,告訴自体は,犯罪被害を受けたとする者の一方的言い分であるし,検察官は適法な告訴を受けたときは,これを受理して処理すべき法的義務を負っているから,それが虚偽である場合に,告訴者は虚偽告訴罪に問われるおそれがあるとしても,告訴が東京地方検察庁に受理されて手続が執られたこと自体に被告らのいうような重みを置くことはできない。イまた,証拠(乙4の1ないし5,乙17,乙18,証人I,証人J)によれば,本件記事を担当したI記者及び担当デスクのJ(以下「Jデスク」という。)は 告らのいうような重みを置くことはできない。イまた,証拠(乙4の1ないし5,乙17,乙18,証人I,証人J)によれば,本件記事を担当したI記者及び担当デスクのJ(以下「Jデスク」という。)は,亡Aが原告に金銭を交付した日を記録したカレンダーの記載に信頼を置いて本件記事を作成した様子がうかがえるが,同人らが,取材過程において原告から日程表の提供を受け確認したところによっても,別紙4(乙15)のとおり,亡Aが金銭交付をしたと記録したとされる日のうち金銭交付が不可能である日が相当数あり,また不可能とまでは断定できないとしても,可能であるかにつき疑問が残る日も相当数あることが認められる。そして,原告が被告会社に提供した日程表は,原告が現職の参議院議員である以上,一般的に厳格に管理され正確性があるものと考えるのが相当であるから,別紙4(乙15)のとおり,原告の行動日程と亡Aが金銭を交付したと主張する日の不整合を多く発見できた時点で,通常人であれば亡Aの裏口入学詐欺被害の訴えの真実性に疑問を入れるべきものと考えられる。しかし,別紙4(乙15)における亡Aの主張と原告の行動日程との不整合について,I記者は,原告から交付された日程表があくまで予定表であり,実際の行動とは違う点もあるのではないかと考えた旨供述し,他方,Jデスクは,亡Aの原告に対する金銭交付が不可能である日は,亡Aの記憶がずれているのかなと思った旨供述するにとどまっているから,被告会社において,不整合が生じている理由を真摯に検討したとはいえず,むしろ,ことさらに原告の主張を軽視して不整合の事実を無視したことさえうかがえるところである。ウまた,そもそも亡Aのいう裏口入学詐欺被害は,亡Aが原告に対し,入試年度にして3年間にわたり,年間を通じて,多数回,多額 主張を軽視して不整合の事実を無視したことさえうかがえるところである。ウまた,そもそも亡Aのいう裏口入学詐欺被害は,亡Aが原告に対し,入試年度にして3年間にわたり,年間を通じて,多数回,多額の金員を交付していたというものであるところ,裏口入学詐欺である以上,裏口入学のための資金需要は入試時期と関連するはずであるが,亡Aの主張に係る金銭交付の時期からはそのような関連性がうかがわれないという点でも不自然である。加えて,入学試験の合格を保証することによって金銭を交付させるのが一般的な裏口入学詐欺の手口と考えるならば,その初めの年度に合格できなければ,裏口入学のために金銭を交付しても入学試験の合格が得られないことが明らかになるはずであるから,その翌年度も,翌々年度も裏口入学詐欺が続けられるということも,常識に照らして不自然である。そうすると,被告会社としては,亡Aを取材して,その主張に係る詐欺態様を確認した段階で,亡Aの主張する詐欺被害に疑いの目を持つべきものであろうと考えられる。エさらにいえば,裏口入学詐欺は入試合格がなければ詐欺であることがすぐに判明する詐欺類型であるし,公人である国会議員は,詐欺を働いた後に被害者から逃げ隠れすることは不可能であるから,本件記事のリード文にもあるとおり,「秘書が国会議員の名を騙り,裏口入学を持ちかける詐欺話はままある」との点の真偽はさておくとしても,少なくとも,「党の要職に就く議員本人が直接関与したとするなら前代未聞」と考えるのが一般的な常識というべきである。そのため,そのような詐欺被害を訴える被害者がいた場合には,まず,その主張が真実であるのかについて疑いの目を向けて,その裏付け調査には一層の慎重さが要求されるべきといえる。しかし,上記イで認定したとおり,本件記事作成のた 被害を訴える被害者がいた場合には,まず,その主張が真実であるのかについて疑いの目を向けて,その裏付け調査には一層の慎重さが要求されるべきといえる。しかし,上記イで認定したとおり,本件記事作成のために取材を担当したI記者及びJデスクは,取材過程で判明した亡Aの主張の矛盾点をことさらに無視し,さらに証拠(乙17,乙18,証人J)によれば,I記者が原告への取材を行ったのが平成20年7月28日午後8時から午後10時までであり,翌日である同月29日午前11時には記事が印刷に回されたことが認められるところ,これは本件記事の内容を考慮すれば極めて短期間で記事としてまとめて本件週刊誌への掲載へと進んでいるといわざるを得ないから,これでは被告会社が,原告が亡Aに裏口入学詐欺を働いたとの事実を真実と信ずるについて相当の理由があるとはおよそいうことができない。オなお,I記者は,確かにその取材過程において,原告自身から,原告が亡AをG学主に引き合わせたことや,金銭を一時預かった上で返還した事実も聞き出している。しかし,証拠(乙14)によれば,原告がI記者に対して,亡Aに必死に頼まれたためG学主に引き合わせた,その際,亡Aが300万円をN大学関係者に渡そうとしたが,同大学関係者は受け取りを拒み,他方で亡Aも全く引かなかった,そのため,300万円については同大学関係者が預かることにして,被告Bが合格すればそれを大学への寄付金にするということにしたところ,結局,被告Bが不合格となったために同大学関係者から原告に金銭が送られてきて,原告はそれを亡Aに返還した,と述べた事実が認められる。そうすると,原告がその過程についても合理的な説明をしている以上,他の事実関係に照らしても,上記の事実により同人が裏口入学詐欺を働いたとの推認はできないとい に返還した,と述べた事実が認められる。そうすると,原告がその過程についても合理的な説明をしている以上,他の事実関係に照らしても,上記の事実により同人が裏口入学詐欺を働いたとの推認はできないというべきである。また被告らは,I記者が亡Aの弟であるHに取材して得られた情報により,亡Aの主張する事実が主要な部分において裏付けられると主張するものの,亡AがKクリニックの口座から金銭を引き出したという事実については,その使途が不明であるし,また,亡Aが原告に現金を交付した事実については,そもそもLを介してHが聞いた話にすぎず,加えて,交付した金銭がどのような趣旨の金銭かさえ不明であるから,仮にHが話したことが真実であるとしても,そのことをもって,原告が亡Aに対して裏口入学詐欺を働いたことが真実であるとは判断できないはずである。そうすると,これらの事実により,原告が亡Aに対して裏口入学詐欺を働いたとの事実が真実であると信じるについて相当な理由があるということはできない。カしたがって,本件記事において摘示された事実を真実であると信じるにつき相当な理由があるとは認められないから,本件記事を掲載したことについて,被告会社に故意又は過失がないとはいえない。 小括以上によれば,被告会社が本件記事を掲載した週刊誌を発行したことは,原告に対する不法行為を構成するから,被告会社は,原告に対して損害を賠償すべき責任がある。 3 亡A及び被告Bの責任 ある者の情報提供に基づいて記事が作成され,当該記事の発表が名誉棄損行為となる場合,当該記事の作成・編集・発表は当該記事が掲載された雑誌などを発行する会社が行うものであるから,原則として,情報提供行為と名誉棄損行為による損害の発生との間には因果関係が認 が名誉棄損行為となる場合,当該記事の作成・編集・発表は当該記事が掲載された雑誌などを発行する会社が行うものであるから,原則として,情報提供行為と名誉棄損行為による損害の発生との間には因果関係が認められないが,提供された情報がそのまま記事になる場合には,情報提供行為と名誉棄損行為による損害の発生との間に因果関係が認められ,かつ,情報提供者がそのことを予見し,または予見し得たときには,当該情報提供者も不法行為責任を負うというべきである。 ところで本件においては,亡Aは,I記者から取材を受け,原告の亡Aに対する裏口入学詐欺があったとの情報提供行為を行っている。しかしながら,証拠(乙17,乙18)によれば,そもそも,そのようなI記者による亡Aへの取材が行われたのは,本件記事中にも現れるMなる人物の関係者が,Jデスクに情報をもたらし,JデスクがMなる人物に接近したことがきっかけであったと認められる。そして,本件記事の主な内容は,亡Aへの取材前にMを介して得られる情報や資料に基づき取材されたものと認められる(とりわけ本件記事中において重要視されている告訴状の記載内容そのものは,Mから提供された告訴状の写しによっていることが認められる。)。そして,本件記事には,そのほか被告会社が独自に調査・取材した内容やMなる人物の発言,原告の反論が含まれているのであって,亡Aは取材対象となり,その発言が要約引用されて記載されているが,同人が提供した情報がそのまま記載されているわけではない。そうすると,以上のような事実関係のもとでは,亡Aの情報提供行為と本件記事の発表による原告の損害の間には因果関係は存しないというべきである。また,仮に因果関係が存するとしても,情報提供者としては,本件記事が現職の参議院議員で,与党の副代表という 為と本件記事の発表による原告の損害の間には因果関係は存しないというべきである。また,仮に因果関係が存するとしても,情報提供者としては,本件記事が現職の参議院議員で,与党の副代表という地位にある人物の犯罪行為に関するものであるから,被告会社において亡Aの提供した情報をそのまま記載することはおよそ考えられず,適切な裏付け取材などを経た上で発表されると考えるのが通常である。そうすると,亡Aが自己の提供した情報がそのまま掲載されることを予見し,または予見し得たとはいえない,というべきである。 以上によれば,亡Aは本件記事の発表により生じた原告の損害について責任を負わないというべきであり,亡Aの子であり相続人である被告Bも,原告の損害について責任を負わないというべきである。 4 損害額及び謝罪広告の要否 原告の損害額ア原告は,本件記事が本件週刊誌に掲載されたことによって社会的地位及び評価を大きく傷つけられ,さらに,参議院議員選挙への立候補を断念せざるを得なくなった旨を主張し,以上を前提に1000万円の慰謝料を損害として主張している。イそこで,本件記事によって原告が受けた影響について見ると,証拠(原告本人)及び弁論の全趣旨によれば,原告は,平成20年7月末に本件週刊誌が発行された後,すぐに広島のホテルに後援会の会員を集めて文書によって説明をしたことが認められるが,それ以上に本件記事による混乱が生じたり,対外的な対応を余儀なくされたりした事実を認めるに足りる証拠はない。また,前掲証拠によれば,原告が参議院議員選挙に立候補しない旨を決断する経緯について,①原告は,平成22年7月の参議院議員選挙に3期目の立候補を予定して,平成21年11月30日に励ます会を開催し, また,前掲証拠によれば,原告が参議院議員選挙に立候補しない旨を決断する経緯について,①原告は,平成22年7月の参議院議員選挙に3期目の立候補を予定して,平成21年11月30日に励ます会を開催し,その会には1500名くらいの参加者があったこと,②原告は,平成22年3月末頃に同年7月の参議院議員選挙用のポスター撮影をしたこと,③同年4月1日に参議院議員選挙への立候補を表明する記者会見を予定していたが,急遽,同日になって立候補しない旨を表明したこと,④原告が立候補しない旨の報道において,本件週刊誌の影響に触れたものはなかったこと,⑤原告が立候補しない真意については,R党の同僚議員も推測出来ておらず,多くは原告が高齢故に立候補を断念したのであろうと考えていたこと,以上の事実が認められるだけであって,本件記事による影響が原告の参議院議員立候補の客観的な阻害事由になった様子をうかがわせる事実は認められない。むしろ,原告の供述からは,原告は,参議院議員として文教方面に力を注ぎクリーンなイメージを保持してきた自負があることから,選挙戦で相手方陣営から,本件記事のコピーが配布されるなどして誹謗されることをおそれていたことがうかがえ,また東京地方裁判での民事訴訟が係属中であって選挙までに身の潔白をはらすことが出来ないと考えていた様子もうかがえるところである。しかし,参議院議員選挙への立候補断念についての原告の真意がそのような自己のイメージの崩壊をおそれたことであれば,本件記事によって原告が参議院議員選挙への立候補を断念したとしても,そのことをもって損害額(慰謝料)の判断において重要な要素として斟酌することはできない。ウしたがって,以上にみた事実のほか,本件週刊誌が全国に相当数販売される雑誌であること(公知の事実 そのことをもって損害額(慰謝料)の判断において重要な要素として斟酌することはできない。ウしたがって,以上にみた事実のほか,本件週刊誌が全国に相当数販売される雑誌であること(公知の事実),その他,本件訴訟記録に現れた一切の事情を総合すると,本件記事によって原告が受けた精神的苦痛を慰謝するに足りる相当額は300万円と判断するのが相当であり,また本件訴訟と因果関係のある弁護士費用は30万円と認定するのが相当である。 謝罪広告の要否上記認定の本件記事掲載後の状況等を考慮すると,原告が受けた精神的損害は金銭支払による賠償がされることで回復が図られるものというべきであるから,謝罪広告の掲載までも命ずることは適当でないというべきである。 5 結論以上によれば,原告の請求は,被告会社に対し,330万円及びこれに対する不法行為の日の後である平成20年7月31日から支払済みまで年5分の割合による遅延損害金を支払うよう求める限度で理由があり,被告会社に対するその余の請求及び被告Bに対する請求はいずれも理由がないから棄却すべきである。 よって,訴訟費用の負担につき民事訴訟法64条,61条を,仮執行の宣言につき同法259条1項を,それぞれ適用して,主文のとおり判決する。広島地方裁判所民事第2部 裁判長裁判官森崎英二 裁判官山口格之 裁判官土 山 雅 史 別紙2亡Aの夫であるTは,広島でKクリニックを経営していた。平成14年4月10日にTが死去し,同月12 別紙2亡Aの夫であるTは,広島でKクリニックを経営していた。平成14年4月10日にTが死去し,同月12日の葬儀が行われた後,亡Aは,葬儀の参列者の中に原告の名前があったため,同年6月15日,原告の広島事務所(P)にお礼に行った。事務所において,原告から「病院の跡取りは?」と問われたため,長男がN大学医学部に入って医者になって後を継ぐ約束をしてくれた,という話しをした。すると,原告は,「(N大学学主の)G先生はよく知っている,うちのバカ息子もお金をようけ使ってからNに入れてもらった。息子様の面倒も見させてもらう,俺に任せておけば大丈夫だ。」と言った。亡Aは「よろしくお願いします」と言った。別紙3 1 平成14年①9月5日,②9月26日・28日,③11月2日,④11月5日,⑤12月2日,⑥12月23日,⑦12月24日 2 平成15年①1月8日,②1月14日,③2月5日,④2月7日,⑤2月21日,⑥2月25日,⑦3月14日,⑧3月20日,⑨4月30日,⑩5月23日,⑪6月6日,⑫8月11日,⑬9月20日,⑭10月4日,⑮10月17日,⑯11月15日,⑰11月28日,⑱12月19日,⑲12月26日 3 平成16年①1月5日11時ころ,②1月10日午後1時,③1月23日,④1月26日,⑤1月31日,⑥3月2日午前10時,⑦4月26日昼頃,⑧5月7日午後1時,⑨5月10日午後1時頃,⑩5月28日,⑪6月5日,⑫6月26日午後2時以降,⑬8月25日午後4時とそれより前にさらに1回,⑭9月6日,⑮9月25日,⑯10月30日,⑰11月4日,⑱12月3日,⑲12月4日 4 平成17年①1月5日午前11時30分 26日午後2時以降,⑬8月25日午後4時とそれより前にさらに1回,⑭9月6日,⑮9月25日,⑯10月30日,⑰11月4日,⑱12月3日,⑲12月4日 4 平成17年①1月5日午前11時30分,ホテルVロビー②1月17日午前11時55分,広島駅新幹線改札口ロビー③1月22日午後4時30分,Wホテルロビー④2月2日午前11時30分に参議院議員会館6階U号室なお,場所の記載がない日は,全て原告の広島県の事務所で渡したという主張である。
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