平成28(わ)229 船舶職員及び小型船舶操縦者法違反,重過失致死傷

裁判年月日・裁判所
平成29年3月30日 岐阜地方裁判所
ファイル
hanrei-pdf-86718.txt

判決文本文3,009 文字)

- 1 - 主文 被告人を禁錮2年及び罰金10万円に処する。 未決勾留日数中110日をその禁錮刑に算入する。 その罰金を完納することができないときは,金5000円を1日に換算した期間被告人を労役場に留置する。 理由 (犯罪事実)被告人は,第1 特殊小型船舶操縦士の操縦免許証を受有せず,かつ,法定の除外事由がないのに,平成28年6月12日午後2時45分頃,岐阜県羽島市〔以下省略〕東方約380メートル先木曽川内(以下「本件場所」という。)において,特殊小型船舶(水上オートバイ)に特殊小型船舶操縦者として乗船し,第2 前記操縦免許証を受有せず,これまで特殊小型船舶の操船経験がほとんどなく,その操船特性に関する知識もないなど,同船舶に係る操船技術及び知識が極めて未熟であったのであるから,周囲に船舶等が存在するなど他人に危害を及ぼすおそれのある河川上では,特殊小型船舶を操船することは厳に差し控えるべきはもとより,あえて操船するからには,ハンドル及びスロットルレバーを的確に操作し,他の船舶等との衝突を未然に防止すべき注意義務があるのにこれを怠り,前記日時頃,あえて本件場所の北方の川岸から前記第1記載の特殊小型船舶の操船を開始することとした上,本件場所の南西で同船舶を左に旋回させるに際し,過剰にスロットルレバーを引き,同船舶を急加速させた重大な過失により,同船舶が急加速したことに驚愕し,同船舶を減速しようとして誤って更にスロットルレバーを引き,同船舶を時速約70キロメートルで下流から上流に向けて暴走させ,本件場所付近において,折から前記河川を上流から下流に向けて進行してきて岐阜県側川岸から愛知県側川岸方向へと左折を開始していたA操船の水上オートバイにロープで曳航されていたゴムボートに乗- 2 - 場所付近において,折から前記河川を上流から下流に向けて進行してきて岐阜県側川岸から愛知県側川岸方向へと左折を開始していたA操船の水上オートバイにロープで曳航されていたゴムボートに乗- 2 -船していたB(当時35歳),C(当時8歳),D(当時10歳)及びE(当時3歳)に自船を衝突させ,よって,前記Bに加療約4か月間を要する骨盤骨折等の傷害を,前記Cに加療約28日間を要する左大腿骨顆部骨折等の傷害を,前記Dに脳幹部損傷等の傷害を,前記Eに多発損傷等の傷害をそれぞれ負わせ,同日午後4時12分頃,同県大垣市〔以下省略〕所在のF病院において,前記Dを前記脳幹部損傷により死亡させ,同日午後6時55分頃,愛知県一宮市〔以下省略〕所在のG病院において,前記Eを前記多発損傷により死亡させたものである。 (証拠の標目)略(法令の適用)略(量刑の理由) 1 事件そのものに関する事情⑴ 本件は,被告人が,河川において水上オートバイを無免許で運転していたところ,その操作を誤った重大な過失により水上オートバイを暴走させた結果,ゴムボートに乗船していた4人に水上オートバイを衝突させて傷害を負わせ,そのうち2人を死亡させた事案である。 ⑵ 本件事故により,当時10歳と3歳であった2人の幼い命が奪われるという取り返しのつかない結果が生じている上に,ゴムボートに同乗していた父親も加療約4か月間を要する骨盤骨折等を,その娘も加療約28日間を要する左大腿骨顆部骨折等をそれぞれ負うなど傷害の程度も重いものであって,生じた結果は誠に重大である。 とりわけ死亡した2人の肉体的苦痛が大きかったことは想像に難くなく,その将来を絶たれた無念さは計り知れない。また,突然家族を失った遺族の悲しみが大きいことは当然であり,家族を失うとともに自らも重傷 とりわけ死亡した2人の肉体的苦痛が大きかったことは想像に難くなく,その将来を絶たれた無念さは計り知れない。また,突然家族を失った遺族の悲しみが大きいことは当然であり,家族を失うとともに自らも重傷を負った父親が,- 3 -法廷において,水上オートバイの事故の再発防止を訴えるとともに,被告人に対し最大の厳しい処罰を求めているのも十分に理解できる。 ⑶ また,被告人は,無免許で水上オートバイに乗ったというだけではなく,本件事故を起こす日まで水上オートバイを操船した経験自体もなく,その操船技術は極めて未熟であった。水上オートバイの無免許運転自体は,厳格な規制がされている自動車の無免許運転などと同列には考えられないにしても,水上オートバイで衝突事故などを起こせば重大な結果が生じるであろうことは容易に想定できることからすれば,多数の利用者で混雑している木曽川において,無免許でかつ未熟な操船技術しか持たない被告人が水上オートバイに乗船すること自体,相当に危険な行為である。それにもかかわらず,自らの楽しみを優先して水上オートバイに乗船し,その操船技術の未熟さゆえに,運転操作を誤って本件事故を惹起した被告人の過失の程度は重く,かかる行為を行った被告人に対する非難の程度も軽いものではない。 弁護人は,本件事故の発生等につき,被害者側の事情も寄与している旨主張する。しかしながら,本件事故は,上記のとおり,未熟な操船技術しか持たない被告人が水上オートバイの操作を誤りこれを暴走させてしまった結果,まさに被害者らの乗るゴムボートに直接衝突して起きたものである。被害者らの乗るゴムボートを曳航していた水上オートバイの運転状況や,被害者らのゴムボートへの乗船状況のいかんにかかわらず,被害者側としてはそもそもが避けようのない事故であって,弁護人が主張す ある。被害者らの乗るゴムボートを曳航していた水上オートバイの運転状況や,被害者らのゴムボートへの乗船状況のいかんにかかわらず,被害者側としてはそもそもが避けようのない事故であって,弁護人が主張する点は,本件事故の発生や結果の拡大とは関連しないものであり,その主張は理由がない。 ⑷ 以上の事情,とりわけ本件被害結果の重大性に照らせば,本件は重過失致死傷等の事案としては重い部類に属するものといえ,実刑が相当な事案である。 2 事件そのもの以外に関する事情他方において,被告人は,本件各事実をいずれも認めるとともに,被害者遺族に対し謝罪の手紙を綴り,本公判廷においても同様に謝罪の言葉を述べるなど反- 4 -省と後悔の態度を示している。 また,被告人の夫は,自分自身も二度と水上オートバイは運転しないと述べるとともに,今後,被告人が違法行為を行わないよう監督し,協力し合っていくと述べており,被告人の更生に当たっては,夫の協力を期待することもできる。 その他,被告人には前科前歴もない。 このように,被告人のために酌むべき事情もある。 3 そこで,上記1の事件そのものに関する事情に加え,上記2の事件そのもの以外に関する事情をも併せて考慮し,被告人を禁錮2年及び罰金10万円に処するのが相当であると判断した。 よって,主文のとおり判決する。 (求刑禁錮3年6月及び罰金10万円)平成29年3月30日岐阜地方裁判所刑事部 裁判長裁判官鈴木芳胤 裁判官森香太 裁判官溝田泰之は転補のため署名押印することができない。 - 5 -裁判長裁判官鈴木芳胤 裁判官溝田泰之は転補のため署名押印することができない。 裁判長裁判官鈴木芳胤

▼ クリックして全文を表示

🔍 類似判例を検索𝕏 でシェア← 一覧に戻る