昭和23(れ)1167 有毒飲食物等取締令違反

裁判年月日・裁判所
昭和24年3月17日 最高裁判所第一小法廷 判決 棄却 札幌高等裁判所
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【DRY-RUN】主    文      本件上告を棄却する。          理    由  被告人B弁護人大塚守穂、同大塚重親、同木戸口久治上告趣意について。  被告人Bは、本件アルコールがメタノールであると確実

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判決文本文2,790 文字)

主文本件上告を棄却する。 理由被告人B弁護人大塚守穂、同大塚重親、同木戸口久治上告趣意について。 被告人Bは、本件アルコールがメタノールであると確実に知つていたという事実を否認していることは、所論のとおりである。しかしながら、原判決の挙げている各証拠を総合して考察すれば原審の事実認定を肯認することができる。被告人が本件アルコールをAに売渡す当時には、これがメタノールであることは、知つていたものと認められ得るし、少くとも弁護人のいわゆる未必の認識は、存在したものと認めるに十分であるということができる。被告人Bか本件アルコールを買入れた時には、仮りにメタノールと知らなかつたとしても(しかも、売主蛯名がこのアルコールは、元来軍の航空燃料として工業用に製造されたもので、飲料に適するかどうかは、その試験が済んでいないので判らないと話したことは、被告人Bもこれを認めている。)、同被告人がこれをAに売つたのは、共同買受人Dの死亡後であり、同人の死因はメタノール中毒だと噂されていることは被告人Bも知つており、なお又警察官から家捜しを受け本件アルコールを封印された事実あるに拘わらず、これをAに売渡したのである。されば本件で被告人Bが本件アルコールをAに売渡した時には、少くともメタノールであることの未必の認識があつたと認められるのは当然である。この点に関する論旨は、それ故に理由がない。又原判決は、不可分の供述の一部だけを抜き採つて、事実を認定したものではないから、この点について採証の違法と認むべきものはない。又証拠の取捨選択に対する非難の点は、法律審適法の上告理由と認め難いのである。 最後に、同被告人に対する科刑は、従来の法律眼から見れば、弁護人指摘のとおり相当重いようである。しかし、現時の社会情勢の下に の取捨選択に対する非難の点は、法律審適法の上告理由と認め難いのである。 最後に、同被告人に対する科刑は、従来の法律眼から見れば、弁護人指摘のとおり相当重いようである。しかし、現時の社会情勢の下においては、本件の犯罪性は、- 1 -一般に重要視すべき価値があり(昭和二三年(れ)第一〇三三号、同年一二月一五日大法廷判決参照)、且つ具体的にいつて本件では種々悪い情状があつたことは、否めない案件であつた。それは兎も角、かかる量刑不当に対する非難は、矢張り法律審適法の上告理由とはならない。 被告人B同A弁護人大橋弘利上告趣意第一点について。 しかし原判決の事実摘示を、証拠説明と併せ読めば、被告人が販売した液体は、証第二号の斗瓶入の一立方センチメートル中二九、五ミリグラム乃至三二ミリグラムのメタノールを含有するアルコール液一斗であることは明白であるからこの点につき所論のごとき理由不備その他の違法はない。次に、有毒飲食物等取締令第一条第一項は、「メタノールを含有する飲食物(一立方センチメートル中一ミリグラム以下のメタノールを含有するものを除く)は、之を販売……することを得ず」と規定し、同第二項は、「メタノールは飲食に供する目的を以て、之を販売……することを得ず」と規定している。メタノールを含む飲食物は、当然飲食に供せられる関係上一定量以上を含む場合には、人間の生命、身体、健康に害があるから、有毒物として取締をなしその販売等の行為を処罰するのである。そして、メタノールを工業用に使用することを妨ぐべき理由は、毛頭ないのであるが、「飲食に供する目的を以て」販売する場合には、やがて当然飲食に供せられる関係上、生命健康に害毒を及ぼすに至る虞れがあるから、前同様これを処罰する必要があるのである。一定量以上含まれてさえおれば、その保持されている形態は、敢て 販売する場合には、やがて当然飲食に供せられる関係上、生命健康に害毒を及ぼすに至る虞れがあるから、前同様これを処罰する必要があるのである。一定量以上含まれてさえおれば、その保持されている形態は、敢て問うところでないことは、立法の趣旨に照らし明らかである。また第二項は、百パーセント又はこれに近いメタノールの販売等を対象とする処罰規定でないことも疑いの余地はない。本件アルコールは、前述のごとく社会通念上飲食物というに足る外観形態を与えられたものではないから、前記第一項を適用すべき場合に該当しない。そして、「飲用に供する目的を以て」販売した事実を認定し、右第二項を適用したのは正当であつ- 2 -て所論のごとき違法はない。 されば、論旨は、何れもその理由がないと言わねばならない。 同第二点について。 原審において、過失を認定するための基本とした注意義務の内容は、当該具体的事案の客観的状態において社会通念上通常一般的に要求されると考えられる程度の注意であつた。そして被告人は、その注意義務を怠つたものとして、過失罪に問うたものである。特別の判示がない限り、被告人は普通人(平均人)として取扱われ従つて被告人は普通人としての注意義務を有することが判決上認められている。されば本件過失罪の判示としては、これで十分であると考えられる。論旨は、なお右の外に、被告人Aの諸事情「少くとも被告人Aがかかる注意義務を認識し得たかどうか、認識し得たとしてもその義務を履行するために適当な手段をとることが可能であるかどうか等が併せ判示せられねばならぬ」と主張する。しかしかかる事情は、旧刑訴第三六〇条第二項にいわゆる犯罪(過失犯)の成立を阻却すべき原由の範疇に該当するものと考えるを相当とする。従つて、原審において被告人又は弁護人から、これについて主張があつた場合に限つて 情は、旧刑訴第三六〇条第二項にいわゆる犯罪(過失犯)の成立を阻却すべき原由の範疇に該当するものと考えるを相当とする。従つて、原審において被告人又は弁護人から、これについて主張があつた場合に限つて判断が示さるべきものである。しかるに、原審においては、かかる主張がなされた形跡は、記録上見ることができない(又論旨もかかる主張が原審でなされたとまでは言つているのではない)から、原判決がこの点について特に判断を示さなかつたことは、何等理由不備の違法となるものではない。論旨は、それ故に理由なきものである。 同第三点について。 所論メタノールの鑑別が素人には困難であることは、原審裁判所に顕著な事実というばかりでなく、むしろ公知の事実というべきものであるから、証拠によつて証明する必要がないものである。論旨は、理由がない。 よつて旧刑訴第四四六条に従い主文の通り判決する。 - 3 -この判決は裁判官全員の一致した意見である。 検察官安平政吉関与昭和二四年三月一七日最高裁判所第一小法廷裁判長裁判官真野毅裁判官沢田竹治郎裁判官斎藤悠輔裁判官岩松三郎- 4 -

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