平成27年10月14日判決言渡平成27年(行コ)第130号所得税更正処分取消等請求控訴事件(原審・東京地方裁判所平成25年(行ウ)第689号)主文 1 本件控訴を棄却する。 2 控訴費用は控訴人の負担とする。 事実 及び理由第1 控訴の趣旨 1 原判決を取り消す。 2 中野税務署長が,控訴人に対し,平成24年1月31日付けでした,平成22年分の所得税の更正処分のうち,株式等に係る譲渡所得等の金額(未公開分)マイナス314万6500円,納付すべき税額570万1700円を超える部分及び過少申告加算税賦課決定処分を取り消す。 第2 事案の概要(以下,特に注記しない略語は原判決の例による。) 1 本件は,控訴人が,平成22年10月20日に保有していたA銀行株式会社(本件銀行)の株式(本件株式)3100株を1株1円(合計3100円)で譲渡したこと(本件株式譲渡)により,株式等に係る譲渡所得等の金額(未公開分)の計算上損失が生じたとして,同年分の所得税の確定申告及び修正申告を行ったところ,中野税務署長から,本件株式譲渡を株式等に係る譲渡所得等の金額(未公開分)の計算の基礎に含めることはできないとの見解に立って,平成24年1月31日付けで更正(本件更正処分)及び過少申告加算税賦課決定(本件賦課決定処分)を受けたことから,本件更正処分のうち修正申告額を超える部分及び本件賦課決定処分の取消しを求める事案である。 2 原判決は,本件株式譲渡の時点において,本件株式は,所得税法33条1項の規定する譲渡所得の基因となる「資産」には該当せず,本件株式譲渡は,株式等に係る譲渡所得等の金額の計算の基礎に含まれないことになるから,本件 各処分は適法であるとして,控訴人の請求をいずれも棄却した。 これに対し,控訴人が控訴を 該当せず,本件株式譲渡は,株式等に係る譲渡所得等の金額の計算の基礎に含まれないことになるから,本件 各処分は適法であるとして,控訴人の請求をいずれも棄却した。 これに対し,控訴人が控訴をして,第1記載のとおりの判決を求めた。 3 関係法令の定め,前提事実,争点及び争点に関する当事者の主張は,次項において当審における控訴人の主張を加えるほかは,原判決「事実及び理由」欄の「第2 事案の概要」の1項から4項に記載のとおりであるから,これを引用する。 4 当審における控訴人の主張本件株式譲渡の時点では,本件銀行の株主は,本件銀行に対し,会計帳簿の閲覧請求権(会社法433条1項),計算書類等の閲覧請求権(同法442条3項),責任追及等の訴えの提起権(同法847条)等の株主権を行使することが可能であった。また,当該時点では,本件銀行は,未だほかの受け皿金融機関への業務承継や合併等による事業再生の道も残されていた。したがって,本件株式譲渡の時点では,本件株式の自益権や共益権の行使不能が確定していたとはいえず,本件株式は,所得税法33条1項の規定する譲渡所得の基因となる「資産」に該当する。 金融庁長官が本件銀行に対し,平成22年9月10日,金融整理管財人による管理を命ずる処分を行っているが,だからといって,直ちに本件銀行の株主の地位・権利に変動が生じたわけではない。また,株式会社について破産手続開始決定がなされても,直ちに自益権や共益権に変更が生じないのであるから(大阪高裁平成6年12月26日決定判時1535号90頁参照),民事再生手続開始決定によってはなおさらであり,本件株式譲渡の時点では,本件株式について,自益権や共益権に変更が生じていない。本件株式が経済的価値を失うのは,本件株式が無償消滅した時点と解すべきであり,上記各 開始決定によってはなおさらであり,本件株式譲渡の時点では,本件株式について,自益権や共益権に変更が生じていない。本件株式が経済的価値を失うのは,本件株式が無償消滅した時点と解すべきであり,上記各時点においては,未だ所得税法33条1項の規定する譲渡所得の基因となる「資産」に該当するというべきである。 第3 当裁判所の判断 1 当裁判所も,控訴人の請求はいずれも理由がないと判断する。その理由は,次のとおり訂正し,次項において当審における控訴人の主張に対する判断を加えるほかは,原判決「事実及び理由」欄の「第3 当裁判所の判断」の1項及び2項に記載のとおりであるから,これを引用する。 原判決21頁17行目「必要であることをを」を「必要であることを」と改める。 2 当審における控訴人の主張に対する判断 本件株式譲渡の時点で,本件銀行の株主が,本件銀行に対し,会計帳簿の閲覧請求権(会社法433条1項),計算書類等の閲覧請求権(同法442条3項),責任追及等の訴えの提起権(同法847条)等の株主権を行使することが法律上可能ではあった。しかし,本件株式譲渡の前後を通じて剰余金の配当や残余財産の分配を行う余地がなく(上記1で引用する原判決,また,一般的に株主総会における議決権等の共益権を現実に行使しうる余地を失っていた上(上記1で引用する原判決第3の1ウ),本件銀行が一部事業譲渡の後解散して清算されることが予定されていた状況においては(上あるとは認められず,また,後にこれらの権利を現実に行使し得るようになる蓋然性も認められないから,上記株主権の行使が法律上可能であるからといって,その点に経済的価値が見いだされ,本件株式が取引の対象とされるということは考えられない。そうすると,本件株式譲渡の時点で,既に本件株式は,経済的 ら,上記株主権の行使が法律上可能であるからといって,その点に経済的価値が見いだされ,本件株式が取引の対象とされるということは考えられない。そうすると,本件株式譲渡の時点で,既に本件株式は,経済的価値を喪失していたことには変わりない。したがって,上記時点において,上記のとおり本件株式につき一部の株主権の行使が法律上可能であるという点を考慮しても,本件株式は,所得税法33条1項の規定する譲渡所得の基因となる「資産」には該当しないものと認めるのが相当である。 金融庁長官が金融整理管財人による管理を命ずる処分を行ったり,民事再生手続開始決定がなされたからといって,本件株式の株主としての法的地位や法 的権利そのものの存否が直ちに変動するものではない。しかし,法的に自益権や共益権を有していることと現実にそのような権利を行使し得ることとは別であり,ウ),現実には本件株式について,将来にわたって自益権や共益権を行使し得る余地がなくなっていた以上,本件株式に経済的価値は認められず,本件株式は,所得税法33条1項の規定する譲渡所得の基因となる「資産」には該当しない。 第4 結論以上によれば,控訴人の請求をいずれも棄却した原判決は相当であって,本件控訴は理由がないから,これを棄却することとして,主文のとおり判決する。 東京高等裁判所第23民事部 裁判長裁判官夫 裁判官若林辰繁 裁判官新谷晋司
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