主文 1 被告の原告に対する平成13年8月9日付け療養補償給付不支給処分,平成14年1月11日付け休業補償給付不支給処分及び同年6月5日付け障害補償給付不支給処分をいずれも取り消す。 2 訴訟費用は被告の負担とする。 事実及び理由 第1 請求主文同旨第2 事案の概要 1 事案の要旨本件は,甲工業株式会社(以下「甲」という。)に勤務していた原告が,平成12年1月21日,「グループ改善活動全社発表会」(以下「全社発表会」という。)での発表中に突然昏倒し,以後,意識障害が全く回復しなくなったことが,業務に起因する疾病(くも膜下出血)によるものであるとして,被告に対し,労働者災害補償保険法(以下「労災保険法」という。)に基づく療養補償給付,休業補償給付及び障害補償給付の各給付を請求したところ,被告が,それぞれ,平成13年8月9日,平成14年1月11日及び同年6月5日,原告のくも膜下出血は業務に起因して発症したものとは認められないとして,原告の各請求につき不支給処分をなしたため,原告が,審査請求及び再審査請求を経た上,被告に対し,前記各不支給処分の取消しを求めた事案である。 2 争いのない事実等以下の事実は,当事者間に争いがないか,各項末尾掲記の証拠によって容易に認められる。 (1) 原告の経歴,健康状態,性格等ア原告は,昭和a年b月c日に出生し,京都大学工学部に入学し,同学部の大学院合成科学科で修士課程を修めたのち,平成5年4月1日に甲に入社した。 (争いがない)原告は,甲では,入社時から平成8年1月31日までは同社のメディカル研究所で研究員としてテープ医薬の研究,開発に従事し,同年2月1日に同社尼崎工場メディカル製造部に配転された後は,もっ 原告は,甲では,入社時から平成8年1月31日までは同社のメディカル研究所で研究員としてテープ医薬の研究,開発に従事し,同年2月1日に同社尼崎工場メディカル製造部に配転された後は,もっぱらテープ医薬の生産現場で技術職として勤務していた。(争いがない)イ原告の通常の健康状態原告は,被災当時,32歳であり,身長157.3㎝,体重61.6㎏で,やや肥満気味であったが,血圧は被災前3年を見ても正常値内であった。平成11年の検査ではGOP,GPT,トリグリセライドの値が少し高く,再検査経過観察となっていた。また,平成9年,10年と心電図で軽度の変化や異常Q波を指摘されたものの,平成11年の検査の際には,その所見はない。(争いがない)(2) 原告の従事していた業務ア甲の営業内容,組織形態甲は,大阪市北区西天満d丁目e番f号gビルに本社を置き,住宅事業のほか,住宅資材,管工機材,化学品,テクノマテリアル,ライフグッズ,医薬品等を製造販売する事業等を目的とする株式会社である。(争いがない)原告が被災した当時,同社は,社長が7つの事業本部を統轄する事業本部制を敷くと同時に,各製造工場についても,社長直轄という組織形態をとっていた。(争いがない)イ原告の所属部署の概要等甲尼崎工場(以下「尼崎工場」という。)は,240名余りの従業員を抱える商品製造工場の1つであり,工場長の下に,「テープ製造部」,「フォーム製造部」,「メディカル製造部」,「企画管理部」など,各部門ごとに組織されている。(争いがない)原告が所属していたメディカル製造部は約20名が所属している部門であり,狭心症用や美容用,腰痛用 ディカル製造部」,「企画管理部」など,各部門ごとに組織されている。(争いがない)原告が所属していたメディカル製造部は約20名が所属している部門であり,狭心症用や美容用,腰痛用の各種貼り薬の製造を行い,社長から工場長,そして製造部という指揮系統で統括されるとともに,メディカル事業本部から同製造部という指揮系統のもとに置かれているという組織構造の中にあった。(争いがない)メディカル製造部は,さらに,部長の下に,「医薬品製造課」,「医薬品開発課」,「医薬品品質管理課」の3つの部門で組織されており,原告が直接所属していたのは,医薬品の生産を行う医薬品製造課であり,同課において技術職として医薬品の生産に従事していた。(争いがない)ウ原告の通常業務原告は,尼崎工場での医薬品製造工程のうち,薬剤の混合液を塗布して乾燥させたテープ薬剤の元となる原反を最終的な商品の形に打ち抜いた上で,商品包装用の袋に密封包装する工程に従事していたが,原告が具体的に遂行していた業務は,製品を密封する前に検査する工程や,密封後に検査する工程で行われるコンピュータ画像検査システムの管理,改善,設計であり,画像検査に用いるカメラや照明の設定,検査ソフトのプログラムの設計や変更,製品包装のデザインの提案,包装の変更に応じた検査ソフトの設計,画像検査につき新設備を導入した際の設計,生産ライン回転中の画像検査システムに関するトラブルへの対処等であった(以下「本件通常業務」という。)。(甲4,弁論の全趣旨)エ本件通常業務以外の原告の活動原告は,本件被災当時,本件通常業務の他に,甲において実施されている全社的な「グループ改善活動」への取組みや,毎年1回開催される業務成果発表 エ本件通常業務以外の原告の活動原告は,本件被災当時,本件通常業務の他に,甲において実施されている全社的な「グループ改善活動」への取組みや,毎年1回開催される業務成果発表会である専門職登録員研さん発表会(以下「専門職発表会」という。)への取組みに関する活動も行っていた。(争いがない)グループ改善活動とは,各工場内の各部門において,半年を区切りとして,数人程度のチームをいくつか編成し,それぞれの業務で携わる分野に関して,チームそれぞれに独自のテーマを設定して(4月と10月),生産の効率化や商品の品質の向上,生産ラインのトラブルの低減等を実現するための研究,実践を行うものであり,多数の従業員が参加する取組みである。グループ改善活動の成果は,各工場で年に2回行われる発表会(3月と10月)において発表され,上位チームについては表彰がなされ,各工場の最優秀賞を受賞したチームは,工場代表として翌年1月に行われる全社レベルでの発表会にてさらに発表(以下「全社発表」という。)を行い,そこでの審査において上位であったチームが表彰を受けることができた。(争いがない)専門職発表会とは,会社の事業本部内で組織される「専門職委員会」が統括,主催する発表会で,各工場の部署や研究所から発表者が選抜され,発表者が一技術者として取り組んでいるテーマについて発表(以下「専門職発表」という。)を行うものであり,毎年6月に発表者が正式に登録され,発表者は3か月ごとに進捗状況をレポート及び小発表によって専門職委員会等に報告し,最終的な専門職発表会が翌年1月下旬に実施されるものである。(争いがない)なお,専門職登録員は,社令規定で資格が定められており,原告はその資格を有していた。(乙3の2 に報告し,最終的な専門職発表会が翌年1月下旬に実施されるものである。(争いがない)なお,専門職登録員は,社令規定で資格が定められており,原告はその資格を有していた。(乙3の2,28)(3) 原告の発症及び現在の症状原告は,平成12年1月21日午後2時53分ころ,京都技術センターで開催された全社発表会での発表中に突然昏倒して京都九条病院に搬送され,内頚動脈瘤の破裂による「くも膜下出血」と診断されたが,同病院に搬送された時点では既に心肺停止状態であった。原告は,現在まで同病院に入院しているが,その症状は,遅くとも平成14年1月20日ころには,意識障害が遷延し意思表示が全く不可能な状態のまま症状固定と判断される状態に至った(以下「本件疾病」という。)。(乙82,100の2,102,103,弁論の全趣旨)(4) 本件処分等の経緯ア療養補償給付の請求原告は,平成12年2月21日,本件疾病の発症は業務に起因する災害であるとして,被告に対し,労災保険法12条の8第1項1号に基づく療養補償給付金の請求をしたが,被告は,平成13年8月9日,本件疾病は業務上の事由によるものと認められないため,労災保険法施行規則別表第1の2第9号に定める業務上疾病とは認められないとしてこれを支給しない旨の処分をし,同月21日,同処分の通知が原告に到達した。(争いがない)そこで,原告が,前記不支給処分を不服として,同年9月27日,兵庫労働者災害補償保険審査官に対し,その取消しを求めて労災保険法38条1項に基づく審査請求をしたところ,平成14年2月5日,同審査官Aは,同審査請求を棄却する旨の決定をし,翌6日,同決定の通知が原告に到達した。(争いがない)原告は 災保険法38条1項に基づく審査請求をしたところ,平成14年2月5日,同審査官Aは,同審査請求を棄却する旨の決定をし,翌6日,同決定の通知が原告に到達した。(争いがない)原告は,同年2月20日,前記決定を不服として,労働保険審査会に対し,労働保険再審査請求をしたが,3か月が経過したにもかかわらず裁決がないので,本件訴えに及んだ。(争いがない)イ休業補償給付の請求原告は,平成14年1月8日,同じく本件疾病の発症は業務上の災害であるとして,被告に対し労災保険法12条の8第1項2号に基づく休業補償給付金の請求をしたが,被告は,同月11日,前記アと同様の理由によりこれを支給しない旨の処分をし,同月15日,同処分の通知が原告に到達した。(争いがない)そこで,原告が,同不支給処分を不服として,同月23日,兵庫労働者災害補償保険審査官に対し,その取消しを求めて労災保険法38条1項に基づく審査請求をしたところ,同年2月5日,同審査官Aは,前記療養補償給付不支給処分に対する審査請求と併合して審査した上,休業補償給付不支給処分に対する審査請求についても棄却する旨の決定をし,翌日,同決定の通知が原告に到達した。(争いがない)原告は,同月20日,前記決定を不服とし,前記療養補償給付不支給処分に対する審査請求の棄却決定と合わせて,労働保険審査会に対し,労働保険再審査請求をしたが,3か月が経過したにもかかわらず裁決がないので本件訴えに及んだ。(争いがない)ウ障害補償給付の請求原告は,平成14年5月14日,原告の意識障害が業務に起因するくも膜下出血によるものであるとして,労災保険法12条の8第1項3号に基づく障害補償給付金の請求をした 補償給付の請求原告は,平成14年5月14日,原告の意識障害が業務に起因するくも膜下出血によるものであるとして,労災保険法12条の8第1項3号に基づく障害補償給付金の請求をしたが,被告は,同年6月5日,原告の障害は業務上の事由によるものと認められないとしてこれを支給しない旨の処分をし,同月7日,同処分の通知が原告に到達した。(争いがない)そこで,原告が,同不支給処分を不服として,同月25日,兵庫労働者災害補償保険審査官に対し,その取消しを求めて審査請求をしたところ,同年9月30日,同審査官Bは,同審査請求を棄却する旨の決定をし,同年10月7日,同決定の通知が原告に到達した。(争いがない)原告は,同月21日,前記決定を不服として,労働保険審査会に対し,労働保険再審査請求をしたが,3か月が経過したにもかかわらず裁決がないので本件訴えに及んだ。(争いがない)・その他労災保険法に基づく保険給付の対象となる業務上の疾病は,労働基準法75条2項に基づいて定められた同法施行規則35条により同規則の別表第1の2に列挙されているところ,本件疾病が保険給付の対象となるためには,本件疾病が同別表第9号の「その他業務に起因することの明らかな疾病」に該当することが必要である。(顕著な事実)平成13年10月9日,奈良家庭裁判所は原告につき後見を開始する審判を行い,成年後見人として原告の父Nを選任した。(甲11)第3 争点本件疾病は業務に起因するものか否か。 第4 当事者の主張 1 業務遂行性(1) 原告の主張原告は,本件通常業務に加え,グループ改善活動及び専門職発表への取組み及び発表活動,あるいは,それらの発表のため か。 第4 当事者の主張 1 業務遂行性(1) 原告の主張原告は,本件通常業務に加え,グループ改善活動及び専門職発表への取組み及び発表活動,あるいは,それらの発表のための自宅での準備作業を,甲での業務として行った。 アグループ改善活動への取組み及び各発表の準備作業の業務遂行性グループ改善活動は甲のような大企業においてはどこでも行われているが,同社では,各グループが通常業務に携わる分野に関して研究,実践を行い,「グループ改善」と称して全社的に意識して実践している点で,各部署の通常業務に準じた性質を有しており,実際のところ,同社内に存在する2つの労働組合の一方である全乙労働組合は,「業務の過重性が増す」との理由で組合員を同活動に加入させない方針を貫くなどしている。 原告の取組み及びその発表の内容も,GTNと呼ばれるテープ医薬の2次加工工程内のトラブルで頻繁に発生する生産ラインの一時停止現象の発生頻度を減らし,設備稼働時間ロスの低減に成功した改善活動をアピールするものであり,原告の通常業務と密接に関連していたし,部長や課長,係長等との打ち合わせを経たものであるから,通常業務の一環としての性格を有するものであった。 したがって,原告が従事していたグループ改善活動には,業務遂行性が認められる。 イ専門職発表準備作業の業務遂行性専門職発表会は,実際には,社内の専門技術者育成システム,昇進システムの一環として,大学卒技術者が一定の年次の経過後にほぼ全員が受ける昇進試験としての意味を持つ審査会であり,技術者個人の能力そのものが審査され,審査に合格すれば,社内で「副主任」と呼ばれる係長級の肩書きが付されることになる。 定の年次の経過後にほぼ全員が受ける昇進試験としての意味を持つ審査会であり,技術者個人の能力そのものが審査され,審査に合格すれば,社内で「副主任」と呼ばれる係長級の肩書きが付されることになる。 しかも,専門職発表会は,実質的には昇進試験でありながら,事実上,従業員各自が個人的な意思で登録員として登録するか否かを決定できるものではなく,これに参加しなければ,幹部候補生になれないという人事考課上の不利益があり,また,発表内容も,通常業務の中で担当している専門的技術についての研究成果であり,さらに,直前には準備作業のために業務時間中に通常業務を離れて,発表に必要な資料作成等に没頭することも当然のように承認されているから,専門職発表の準備を進めることは,それ自体業務性を有するものであることが明らかである。 原告が専門職発表のため選択したテーマも,原告の通常業務であるテープ医薬の製造過程における画像検査について,いかに効率よく,かつ,高精度に実現するかという問題であった。 したがって,原告が従事していた専門職発表準備作業には,業務遂行性が認められる。 ウ自宅作業の業務遂行性原告が,前記アの業務の全社発表大会への準備作業として行っていた自宅での作業及び前記イの発表への準備作業として行っていた自宅での作業には,いずれも以下の事情が認められるから,甲での業務遂行性が認められる。 (ア) 労働基準法36条規定の時間外及び休日労働に関する労使協定尼崎工場では,遅くとも午後9時までに仕事を終え,午後10時までに工場を出るという協定(以下「三六協定」という。)が労働組合と会社との間に存在していたため,原告は,午後9時以降は工場内で 尼崎工場では,遅くとも午後9時までに仕事を終え,午後10時までに工場を出るという協定(以下「三六協定」という。)が労働組合と会社との間に存在していたため,原告は,午後9時以降は工場内で発表準備作業をすることができず,上司からの指示に応じた修正をするためには自宅での作業をせざるを得なかった。 (イ) 上司による黙示の指示上司からの指導の内容及び分量が明らかとなる原告のメモ(甲23ないし35)によると,原告は膨大な課題を与えられており,自宅作業を当然の前提とした黙示の指揮監督により,発表資料の修正を命じられていたのが実態である。 原告は,発表内容を自由な裁量で決定できる立場にはなく,原告の上司である工場長,部長ほかが,繰り返し指導し,その都度,発表内容,方法を改善する必要があったのであり,原告が極限まで睡眠時間を削って作業していたことを考慮しても,原告の修正や改善作業は決して本人の趣味の世界のようなものではなく,上司の意向を反映させるための業務であった。 (ウ) 厳格な締切日の存在全社発表は,社内の高位にある管理職が全国から参加することを前提に,それぞれ厳格に期日が定められているものであるから,原告は締切りに間に合わせるよう心理的圧力を受けていた。 (エ) 労働時間の意義使用者の指揮監督の下にある時間は全て労働時間であるところ,指揮監督とは具体的指揮命令の有無にかかわるものではないから,本件のように,使用者が具体的に指示した仕事が客観的に見て正規の勤務時間内ではなされ得ないものであって,超過勤務の黙示の指示によって法定労働時間を超えて勤務したと認められる場合には,時間外労働となる。 そうすると,原告は,発表の迫った時期 見て正規の勤務時間内ではなされ得ないものであって,超過勤務の黙示の指示によって法定労働時間を超えて勤務したと認められる場合には,時間外労働となる。 そうすると,原告は,発表の迫った時期においても複数の上司から度重なる指示を受け,次回の指導までに発表内容,方法に反映させることが当然の前提とされていたのであるから,このような指示に対応するために原告が自宅で行った作業は,使用者の指揮監督の下にある労働時間内の作業とみるべきである。 (2) 被告の主張原告が指摘する通常業務が甲における業務であったことは認める。しかし,全社発表会及び専門職発表会の各準備作業については,以下の点から,その一部又は全部について業務遂行性が認められない。 アグループ改善活動への取組み等の業務遂行性についてグループ改善活動,同活動の尼崎工場での発表及び全社発表が,いずれも甲における原告の通常業務の一環であったことは認める。 しかし,過去に全社発表を経験した者が,発表準備に必要であったと供述した時期・日数は,「15日間」(乙52),「1月初めから10日程度で修正と手直し」(乙56),「1日当たり3時間で合計4週間」(乙59),「作成日数:約10日」(乙60),「12月上旬(12/9)~15日間程度」(乙63)であるところ,発症前1か月間の総労働時間が389時間46分に及んだという原告の主張どおりの作業が実際に行われたとすると,超過部分の原告の準備作業については,不必要な労力が投入されたものであると推認されるから,そのような部分についての業務遂行性は認められない。 イ専門職発表準備作業の業務遂行性について専門職発表会の発表準備作業は,原告にとっての昇進試 ると推認されるから,そのような部分についての業務遂行性は認められない。 イ専門職発表準備作業の業務遂行性について専門職発表会の発表準備作業は,原告にとっての昇進試験ないし自己研さんであって,原告の業務とは認められない。専門職発表の準備のために残業や休日出勤をした場合にその旨の申告をしても,当該作業は業務ではないという指導がなされていたし,そのような申告がなされた事例自体想定しにくい。 ウ自宅作業の業務遂行性について自宅作業については,明示又は黙示の業務命令が存在し,かつ,持ち帰って行うべき必然性が認められる場合にのみ業務遂行性が認められると解すべきところ,本件で原告が主張する自宅作業は,以下に指摘するとおり,これらの要件を満たすものではないので,業務遂行性は認められない。 (ア) 明示又は黙示の業務命令がなかったことa 指導の内容,分量原告のメモは膨大な課題が与えられたことを示すものではない。すなわち,上司のアドバイスが記されたものと原告が自ら気付いた事項をメモしたものの区別がつかない。 b 要求水準上司らの指導に拘束力はなかったから,要求水準を問題にする必要はない。仮に問題となったとしても,要求内容が抽象的であればあるほど,原告の裁量の範囲は広くなる。画面構成といったパソコン表現の細部については,基本的に上司は指導していなかった。 c 指導スケジュール指導日程は予め定められていたものではなく,アドバイスを入れて修正するとすればどの程度の時間が必要であるかを,その場で原告と上司が相談して,次の指導日時を決めていたのであ 指導日程は予め定められていたものではなく,アドバイスを入れて修正するとすればどの程度の時間が必要であるかを,その場で原告と上司が相談して,次の指導日時を決めていたのであり,指導者が一方的に決めていたものではない。 締切りは厳格なものではなく,次の指導日までに修正されていなくても,苦言が呈されるようなことはなかった。 d 上司らの認識D尼崎工場長(以下「D工場長」という。)は,原告が,全社発表及び専門職発表の各準備作業を,所定労働時間内でできるとは思っていなかったものの,自宅に持ち帰るまでの必要はなく,工場に残って作業をすれば足りる,つまり,三六協定で認められた時間外勤務の範囲で行えるものと認識していた。 また,Eメディカル製造部長(以下「E部長」という。)は,年末までは原告が無理をしているという認識はなく,また,全社発表の準備作業については,長時間の残業を要するものではなかったとし,ただ,平成12年1月5,6日ころはかなり遅くまで専門職発表の準備作業をしていたのではないかと述べるにとどまる。 e まとめ原告の上司は,原告に対し,スケジュールを厳しく管理した上で,指導に応じた修正を行うよう命じたものではなく,スケジュール自体,原告との相談の上で設定されており,指導はアドバイスにとどまっていて,その採否は原告に任されていたこと,指導の内容・分量とも原告に過重な負担を課すものではなかったことなどを考えあわせると,原告の上司は原告に対し,明示的にも黙示的にも自宅作業を行うよう業務命令を出していたとみることはできない。 (イ) 持帰り残業の必要性がなかったこと なかったことなどを考えあわせると,原告の上司は原告に対し,明示的にも黙示的にも自宅作業を行うよう業務命令を出していたとみることはできない。 (イ) 持帰り残業の必要性がなかったことa 事業運営上の必要性専門職発表は昇進試験であるから,事業運営上の必要性はない。 b 持帰りの必要性過大な負担ではなかったのであるから,持ち帰る必要はなかった。 三六協定を考慮して少なくとも月30時間までは事業場内での時間外勤務が可能であったにもかかわらず,本件発症前の時期は午後6時ないし8時には退勤しており,会社内での時間外勤務をそれほど行っていない。 2 業務の過重性(1) 原告の主張ア本件通常業務の過重性原告は,上司らからも同僚からも,高いスキルを要する専門的業務を担い,高度な問題意識をもって製造業務をリードしていくことを期待されており,生産現場の業績に直ちに影響を与えるという面で責任の重い生産ラインや画像検査の管理の業務に従事していた。この業務は,他の者によっては代替できない性質のものであった。 前記業務に基づく原告の負担は,当初,同僚のF(以下「F」という。)が,原告と同等の立場で同じ業務を担当していたため緩和されていたが,平成11年4月にFが転勤した後は後任が補充されなかったため原告の負担は重くなり,また,誰にも相談できない状況に陥ったことから心理的負担も増していた。 被告は,平成11年12月ころから原告が本件通常業務から外れていたというが,そのようなことはなく,原告は,同月以降も,通常業務であるトラブル発生に対する対処を行っていたことは,同僚の証言からも明らかであ は,平成11年12月ころから原告が本件通常業務から外れていたというが,そのようなことはなく,原告は,同月以降も,通常業務であるトラブル発生に対する対処を行っていたことは,同僚の証言からも明らかである。 イグループ改善活動の過重性(ア) 全社発表の特殊性グループ改善活動の成果の一部は全社発表会において報告されるが,同発表会は個別具体的な生産技術の提供や特定の事務システムの改善成功例を社内に広めるという目的というよりも,むしろ,企業活動における一般的なノウハウや有効な発想法を広めるという総合研さんの目的を有するとともに,優秀な改善活動は発表会において表彰され栄誉を得られるという目標を設定することにより,高いレベルのものを目指そうという目的意識を持たせることを目的としている。 そのような意味から大きなイベントとして位置づけられている全社発表会は,社長以下,役員の多くや乙グループの各企業の責任者が聴衆として参加し,各発表者も高度の発表を準備して競うため,発表者にとってはかなりの緊張感を強いられるとともに,12分間の発表時間に改善活動及びその成果についての十分な情報量を盛り込んでまとめ,緻密かつアピール度の高いストーリーを組み立てる発表準備にも相当に労力を費やさなければならない。 (イ) 発表準備作業に対する特別な要因原告は,平成11年10月18日に行われた尼崎工場での発表で金賞を獲得し,全社発表会に出場することとなったが,全社発表のために,発表内容を一から練り直し,管理職や工場長の指導を何度も受けながらさらに発展させるとともに,発表資料の改訂を繰り返し,上司らの指示に従って準備を完成させ,平成12年1月21日の全社発表会に臨んだ ,発表内容を一から練り直し,管理職や工場長の指導を何度も受けながらさらに発展させるとともに,発表資料の改訂を繰り返し,上司らの指示に従って準備を完成させ,平成12年1月21日の全社発表会に臨んだが,原告の行った当該準備作業は,以下の点で特に過酷であった。 a 所属部内の状況,改善活動の実態等にも現れているとおり,実施した改善活動の成果を全般的に理解しつつ,発表内容を組み立てて一定レベルのプレゼンテーションにまで仕上げられる能力を有し,かつ,それができる立場にいたのが原告だけであったため,発表内容を考え,資料を作成する工程まで全てを原告が行わなければならなかった。 b 原告が発表を準備する段階において,工場長や管理職の指導がなされており,平成11年12月13日以降,E部長,D工場長により延べ9回の指導が実施された。 c 原告は,発表内容をプレゼンテーション用ソフト「パワーポイント」(マイクロソフト社製)のデータにまとめ,コンピュータ画面を次々と映写しつつ原告が口頭で内容を説明していくという方式を採用していたところ,上司の指導内容に対応させて発表資料を作り替えていく負担が極めて重く,また,複数の上司の指示が統一されていなかったり,手直しに要する膨大な手間を考えずに指示がなされたりした。 d 原告の発表内容は,原告及び原告の所属部署の管理職の人事評価を左右する要素であり,上司らによる指導も熱心なものとなり,また,原告としても,上司らの期待に応えその評価を下げることのないような発表を準備しなければならないという意識となっていた。 ウ専門職発表準備作業の過重性(ア) 活動の性質に伴う心理的物理的負荷専門職発表会は うな発表を準備しなければならないという意識となっていた。 ウ専門職発表準備作業の過重性(ア) 活動の性質に伴う心理的物理的負荷専門職発表会は,平均すると1割から2割が不合格となるもので,発表内容も発表形式も相当高い水準のものが要求され,発表準備に大きな労力を必要とし,発表直前及び発表行為時に相応の緊張を強いられることとなるという点で,心理的・物理的に負担のかかるものである。 (イ) 準備作業における特別な要因専門職発表の準備としては,平成11年12月初めころに,原告とE部長が話し合い,同部長の指導の下,原告は発表資料の基礎部分の作成,内容の発展,修正を重ねたが,同月28日にD工場長から内容が分かりにくいとの指摘を受けたため,発表のストーリーを確定したのは翌29日のことであった。平成12年1月4日からは,発表資料の作成を本格的に進め,E部長の指導,メディカル事業本部の医薬・診断薬開発グループ長の直接指導などを交えながら,全社発表の準備と並行して進行させていった。管理職による原告に対する指導は,平成11年12月14日から平成12年1月17日まで,延べ13回に及んだ。 エ自宅作業の過重性原告は,平成11年12月23日から平成12年1月21日まで,別紙「労働時間一覧表(12月23日~1月21日まで)」及び同「労働時間集計表(12月23日~1月21日)-原告」に記載のとおり,自宅で長時間の作業を行っており,睡眠時間もわずか数時間という生活を継続せざるを得なかったものであり,同様の過酷な自宅作業を,平成11年12月中旬以降,継続していたから,その過重性は明らかである。 原告は,平成11年10月ころから,寝不足で疲れ気味で 活を継続せざるを得なかったものであり,同様の過酷な自宅作業を,平成11年12月中旬以降,継続していたから,その過重性は明らかである。 原告は,平成11年10月ころから,寝不足で疲れ気味であったが,自宅作業を始めるようになった同年11月から12月にかけては睡眠時間が1日4,5時間程度になり,さらに,同月から本件疾病を発症した翌年1月の間は,午前3時前後まで自宅でパソコン作業を行い,さらに朝6時ころに起床して1時間程度パソコン作業をして出社するなどしていたため,睡眠時間は3時間ほどという状態にまでなっていた。原告は,土曜,日曜にも深夜まで仕事をしていたため,常時疲労回復のない状態と睡眠不足であり,家ではいらいらした状態が続いていた。 原告は極めて勤勉で,職人気質ともいえる完璧主義者であり,責任感が強く,手を抜かない性格であり,極度の疲労を自覚しながらも,専門職発表が終われば1週間休養をとると家族に話しながら,最後の力を振り絞って自宅での準備作業に全力を注いでいた。 (2) 被告の主張ア本件通常業務の過重性について当初,原告が所属していたメディカル製造部医薬品製造課には,同僚としてFがいたが,Fが異動した平成11年4月ころには画像検査システムを含む生産設備全体がほぼ完成するに至っており,トラブル発生も減少しており,Fの後任が配属されなかったことによる原告の業務の増加は生じていない。原告は,Fや元医薬品製造課にいたG(以下「G」という。)の供述を根拠として,量的,質的な業務負担の増大を指摘するが,F及びGの憶測ないし感覚的なものにすぎない。実際のところ,Fが転勤した前後の原告のタイムカード及び時間外・休日勤務報告書を検討しても,原告の時間外労働時間が増大した傾向は見られな 増大を指摘するが,F及びGの憶測ないし感覚的なものにすぎない。実際のところ,Fが転勤した前後の原告のタイムカード及び時間外・休日勤務報告書を検討しても,原告の時間外労働時間が増大した傾向は見られない。 また,原告は,平成11年12月から約2か月間,本件通常業務から離れることができており,本件通常業務には代替性があったものであるし,作業負担も減少した。 さらに,本件通常業務は,人命等に影響を与えるような緊急かつ重大なものではなく,次々と新しい技術を習得しなければならないものでもなく,原告は,同課に以前在籍していたGに対し,相談や協力依頼をしていたし,係長でさえなかった原告は管理職としての職責を全く負っていなかった。 したがって,本件通常業務によって原告に物理的・心理的負担は生じていなかった。 イグループ改善活動の過重性について(仮に業務遂行性が認められた場合の予備的主張)前記のとおり,グループ改善活動の一部には業務遂行性が認められないが,業務遂行性が認められる部分についても,また,仮に同活動の全部につき業務遂行性が認められたとしても,以下に示すとおり,同活動には業務の過重性が認められない。 (ア) 肉体的負荷前記の業務はいずれもそれ自体過酷なものではない。過酷であると原告が主張する根拠となっている過去の経験者の供述は,いずれも通常業務を免除されることなく,通常業務と準備作業とを並行して行う場合のものである。また,経験者の中には,準備作業について,さほど負担感を訴えていない者も少なからず存在する。 また,1人で作業をした方が負担が少ないと感じたと供述する者も多く,1人で準備作業をしたから 者の中には,準備作業について,さほど負担感を訴えていない者も少なからず存在する。 また,1人で作業をした方が負担が少ないと感じたと供述する者も多く,1人で準備作業をしたからといって直ちに負担が重いということはできない。 (イ) 精神的負荷過去の発表経験者の中には精神的負荷を感じなかった者も多いし,とりわけ,原告はD工場長から高い評価を受けていたことから,強いプレッシャーを受けてはいなかった。 ウ専門職発表準備作業の過重性について(仮に業務遂行性が認められた場合の予備的主張)専門職発表準備作業に業務遂行性は認められないから,その過重性を判断する必要がないが,仮に業務遂行性が認められたとしても,以下に指摘するとおり,長期間にわたる過重負荷及び短期間の過重負荷のいずれも認められず,発症に近接した時期における異常な出来事も存在しなかったから,同業務に過重性は認められない。 (ア) 活動の性質に伴う心理的・物理的負荷について原告は,専門職発表準備について,発表内容の質が悪ければ合格しないという心理的圧力や,大変な発表は2度としたくないという意識,上司からの際限のない指導などから,発表前まで資料の質の向上を迫られ続けるのが実態であると主張するが,最後の点を除いてはあらゆる昇進試験に共通するものであるし,最後の点についても,むしろ,上司であるE部長は,素材の良さを指摘し,そのまま発表しても大丈夫であるので注力する必要はないと指摘していたのであるから,原告には当てはまらない。そもそも,専門職発表の準備作業は,それ自体として過酷なものではない。 (イ) 精神的負荷について原告の発表はE部長からも高い評価を受けており, るから,原告には当てはまらない。そもそも,専門職発表の準備作業は,それ自体として過酷なものではない。 (イ) 精神的負荷について原告の発表はE部長からも高い評価を受けており,原告の精神的負荷は少なかった。また,通常業務と並行しての準備作業に負担を感じる者はいても,原告は,本件通常業務を離れているので問題はない。原告の発表は既に十分な成果が得られていたものであり,発表方法の工夫のみが残されている段階であった。 (ウ) 通常業務からの離脱原告は,平成11年12月2日以降,通常業務を離れ,その勤務時間のほとんどを両発表準備作業に充てることができたのであるから,発表準備作業は過重ではなかった。このことは,全社発表と専門職発表の時期が近接し,準備作業を並行して行わなければならなかったとしても同じことであり,並行しての準備作業は過重な負担とはならない。 エ自宅作業の業務過重性について(業務遂行性が認められた場合の予備的主張)(ア) 自宅作業時間について仮に自宅作業の業務遂行性が認められるとした場合,労働時間が最大限どの程度になるかを以下のaからeまでの条件に基づいて算定したところ,別紙「労働時間及び自宅作業時間推定一覧表(12月23日~1月21日)」及び同「労働時間集計表(12月23日~1月21日)-被告」に記載のとおりであり,発症前1か月間(平成11年12月23日~平成12年1月21日)における時間外労働時間は,最大でも会社内時間外労働時間8時間42分,自宅作業76時間07分の合計84時間49分となるし,発症前1週間の時間外労働時間(平成12年1月14日から同月20日まで)は,出勤時刻から退勤時刻までの時間から所定労働時間である7時間30分を控除した 業76時間07分の合計84時間49分となるし,発症前1週間の時間外労働時間(平成12年1月14日から同月20日まで)は,出勤時刻から退勤時刻までの時間から所定労働時間である7時間30分を控除した合計として計算しても,会社内時間外労働時間13時間10分,自宅作業20時間04分の合計33時間14分となる。 a 起床時刻は,元妻の申立書(乙4)及び陳述書(乙5の11頁11項3行目)に基づき,午前6時と設定し,出勤前作業開始は午前6時30分と設定した。 b 通勤時間は,自宅と会社との距離並びに平成12年1月19日のパソコン更新記録(乙32の39)及びタイムカード(乙95)等に基づき,自転車(乙5の2頁3項)で片道約20分と設定した。 c 始業タイムカード打刻から就業タイムカード打刻までの時間から1時間の休憩時間を除いたものを会社内労働時間とした。 d 休日の作業開始時刻は,元妻の申立書(乙4)に基づき,午前11時と設定した。 e 自宅作業時間は,タイムカード(乙14,95)とパソコン更新記録から推定した。 (イ) 前記自宅作業時間を前提とした過重性について以上のようにして認められる自宅作業を含む作業時間を前提とすると,発症前1か月間に特に著しいと認められる長時間労働に継続して従事したものとはいえない。 加えて,自宅作業は,事業主の管理下での作業と比較して精神的緊張や労働密度が低減することも考え合わせると,原告の自宅作業が,長期間にわたる過重負荷であるとか,発症に近接した時期における短期間の過重負荷にも該当しない。 したがって,原告の自宅作業を含む業務は過重負荷とは認められない。 作業が,長期間にわたる過重負荷であるとか,発症に近接した時期における短期間の過重負荷にも該当しない。 したがって,原告の自宅作業を含む業務は過重負荷とは認められない。 (ウ) 原告の算定が根拠を欠くこと原告は,パソコンのデータ更新日時,元妻の供述等を根拠として,自宅作業時間を含む労働時間を算定している。しかし,データ更新日時が示すのは,その日時においてデータが更新されたという事実のみであり,それ以上のものではない。また,元妻が原告の作業時間を毎日把握していたとは考えがたく,仮に元妻が原告の就寝時間を認識できていたとしても,原告がその時間まで作業を続けていたと把握することはできないのであるから,根拠がない。 また,原告は,作業終了時刻を一律に午前3時30分としているが,恣意的な算定である。仮に元妻の供述を前提とし,平成11年12月も翌1月と同様に午前6時ころに起床していたとしても,元妻は,深夜2時,3時まで作業することが続いていたことや,平成11年12月の睡眠時間が約3時間から約4時間であることを述べているのであるから,同月の自宅作業時間の終了時刻は,午前2時か午前3時ころになるはずである。 3 業務起因性(1) 原告の主張ア発症前1か月を中心とした過重負荷自宅での作業時間を労働時間に含めると,コンピュータのファイルの更新時間のログ,元妻の記憶及び発表準備作業の成果物などから,原告は発症前1か月間で,延べ389時間46分もの間労働に従事し,時間外労働時間は延べ212時間51分にも達する。業務の過重性の判断基準ないし目安について,被告は「発症前1か月間に概ね100時間を超える時間外労働がなされた場合には,脳 間46分もの間労働に従事し,時間外労働時間は延べ212時間51分にも達する。業務の過重性の判断基準ないし目安について,被告は「発症前1か月間に概ね100時間を超える時間外労働がなされた場合には,脳・心臓疾患の発症との強い関連性が疑われる」と主張するところ,これに則って判断しても,原告の時間外労働が1か月間で212時間以上であるから,自宅作業の労働密度が事業所内労働と比べて若干低いことを考慮しても,原告の本件疾病と業務の関連性は明らかである。 イ発症当日の過重負荷原告は,発症当日,役員が聴衆として並ぶ全社発表会において,工場を代表する発表をしていたのであり,経験の乏しい発表によって相当の精神的な緊張を余儀なくされていたし,全社発表と専門職発表をほぼ同時に準備せざるを得なかったため,原告の疲労はピークに達していた。 ウ結論原告の本件疾病の原因は,発症前に従事していた職務が自宅での作業を必要とするなど著しく肉体的,精神的に負荷の大きいものであり,かつ,当日の極度の緊張感が重大な精神的負荷であったことにあり,睡眠不足と体内に蓄積された疲労が原告の血圧の上昇と自然的経過を超えた血管病変等の著しい増悪をもたらし,原告の深夜労働が生理的な生活リズムの崩壊を招いた結果,発表時の緊張による一時的な血圧上昇がくも膜下出血の発症に繋がったのであるから,原告の発症は業務上の事由によるものであることは明らかである。とりわけ,原告が長時間にわたって従事していたコンピュータ作業は,脳の中枢神経を常時刺激するとともに,眼精疲労をもたらすなど独特の精神的・肉体的疲労をもたらすものであり,厚生労働省が作成した「VDT作業における労働衛生管理のためのガイドライン」においても,過度な作業を防止する旨の指導がされて に,眼精疲労をもたらすなど独特の精神的・肉体的疲労をもたらすものであり,厚生労働省が作成した「VDT作業における労働衛生管理のためのガイドライン」においても,過度な作業を防止する旨の指導がされているところである。 以上によれば,本件疾病が業務起因性を有することは明らかであるから,これに反する被告の前記各処分はいずれも違法である。 (2) 被告の主張アくも膜下出血の業務起因性の判断基準労災保険法の趣旨及び同法による各給付が使用者から徴収する保険料によってまかなわれていることからすると,労災保険法における業務起因性は,事実的因果関係の存在を前提としつつ,発症と業務の間に法的に見て労災補償を認めるのを相当とする関係があることが必要である。 加えて,脳動脈瘤の成長に関する業務起因性については,どの程度の高血圧がどの程度の期間持続すれば相当因果関係を認められるのかを判断することは医学的には極めて困難であり,単に業務上の理由により高血圧が持続したことを脳動脈瘤の成長の根拠として業務起因性を判断することは慎重にしなければならない。 また,くも膜下出血誘発要因としての業務起因性についても,血管疾患の性質から血管破裂の切迫状態に至る過程は個々の例で異なるとされているし,未破裂の脳動脈瘤が発見された場合でも,その後破裂に至る要因は明らかにされていないことから,それらの医学的経験則からしても安易な業務起因性の認定は慎まなければならない。 以上によると,くも膜下出血の発症に関する業務起因性の判断は,長期間にわたる過重負荷の評価,短期間の過重負荷の評価,発症に近接した時期における異常な出来事等の有無,基礎疾患の状況等を総合的に判断して行うべきである くも膜下出血の発症に関する業務起因性の判断は,長期間にわたる過重負荷の評価,短期間の過重負荷の評価,発症に近接した時期における異常な出来事等の有無,基礎疾患の状況等を総合的に判断して行うべきであるところ,本件では,以下のように判断される。 イ長期間にわたる過重負荷の評価長時間にわたる業務の過重性は,労働時間,勤務の不規則性,拘束性,交替制勤務,作業環境などの諸要因の関わりや業務に由来する精神的緊張の諸要素を考慮して,総合的に評価することが妥当である。具体的には,第一に,疲労蓄積の最も重要な要因である労働時間に着目し,その他就労の具体的態様も加味して,総合的に判断する。 (ア) 労働時間について労働時間は発症日の前日までの直近の1か月の期間(30日単位)から,順次30日間を基本として,タイムカード等労働時間把握が可能な客観的資料に基づき,6か月前までを検討し,総拘束時間から1日の労働時間に対して就業規則上の休憩時間(1時間)を控除して総労働時間を算出し,それを1週間(7日間)ごとに労働時間から1週間40時間の労働時間(1日8時間)を控除して時間外労働時間を算出する。その際,1か月を30日とするため,1週7日間で4週あり,2日間が残ることになるが,これは,その2日間の直前5日間の休日取得状況により時間外労働時間を算出する。そして,残り2日間の時間外労働の算出方法は,その直前5日間の内で,1日の休暇取得があれば2日間の労働時間から8時間を控除し,2日以上の休暇取得があれば16時間を控除する。なお,この計算で1週間に40時間の労働時間を下回る場合は,基本計算である40時間の控除が行えないので,時間外労働時間は0とする。 a 通常勤務原告の基本的な勤務時間は,次のとおりであり,過重 週間に40時間の労働時間を下回る場合は,基本計算である40時間の控除が行えないので,時間外労働時間は0とする。 a 通常勤務原告の基本的な勤務時間は,次のとおりであり,過重性は認められない。 所定労働時間午前8時30分から午後5時まで実労働時間 7時間30分所定休憩時間午後0時から午後1時まで実休憩時間 1時間所定休日年間125日(完全週休二日制・祝祭日)勤務体制常昼勤務生産ライン稼働時間午前9時から午後5時までb 時間外労働発症前1か月間ないし6か月間における時間外労働時間,平均時間外労働時間数は,それぞれ次のとおりであるところ,いずれにせよ,長期間にわたる過重労働の評価対象となる,発症前1か月間に特に著しいと認められる長時間労働(概ね100時間を超える時間外労働)に継続して従事した場合,あるいは発症前2か月間ないし6か月間にわたって,著しいと認められる長時間労働(1か月あたり概ね80時間を超える時間外労働時間)に継続して従事した場合のいずれにも該当しない。 (時間外労働時間)平成11年 7月26日から同年 8月24日まで 9時間13分同年 8月25日から同年 9月23日まで 12時間24分同年 9月24日から同年10月23日まで 15時間37分同年10月24日から同年11月23日まで 18時間35分同年11月24日から同年12月22日まで 28時間50分同年12月23日から翌年 1月21日まで 8時間42分(平均時間外労働時間) 時間35分同年11月24日から同年12月22日まで 28時間50分同年12月23日から翌年 1月21日まで 8時間42分(平均時間外労働時間)発症前2か月平均時間外労働時間数 18時間46分発症前3か月平均時間外労働時間数 18時間42分発症前4か月平均時間外労働時間数 17時間56分発症前5か月平均時間外労働時間数 16時間50分発症前6か月平均時間外労働時間数 15時間34分(イ) 不規則勤務・出張等原告の発症前6か月前の出張は以下のとおりであるところ,これらは全て日帰り出張で打ち合わせや研修であったから必ずしも負担の大きなものであったとはいえない。 平成11年 8月18日大阪同月27日玉出同年10月 6日大阪同月20日新大阪同月29日大阪同年11月 4日大阪府山崎同月17日新富士平成12年 1月 6日大阪府山崎同月14日大阪府山崎(ウ) 作業環境原告が本件通常業務や発表会の資料作りを行っていた作業場(二次加工室中央)で温度環境を測定したところ,平成11年2月は摂氏23度,同年8月は摂氏26度であり,騒音環境を測定したところ,平成11年3月16日には,測定平均値79.5デシベル,測定最大値80.0デシベル,同年9月22日には測定平均値72.2デシベル,測定最大値74.4デシベルであった。したがって,原告の作業環境に問題は認められない。 (エ) 均値79.5デシベル,測定最大値80.0デシベル,同年9月22日には測定平均値72.2デシベル,測定最大値74.4デシベルであった。したがって,原告の作業環境に問題は認められない。 (エ) 精神的緊張(心理的緊張)を伴う業務原告の平成8年2月以降の通常業務は,主として,ニトログリセリンテープの二次加工設備の画像処理プログラムの新規構築と改良であるところ,基本的に画像検査装置は平成11年の時点で一定の水準に達していたため,大きな仕様変更を伴う負担などなく,原告の責任で大きなトラブルが発生することもなかった。また,トラブルそのものに平成11年4月まで対処していたのは主にFであって,原告ではなかった。 また,発表準備作業においても,特段の精神的緊張を伴う業務であったということはできない。なお,発表行為そのものの精神的緊張については,後述のとおりである。 (オ) 持帰り残業について原告の自宅作業が労働時間に該当しないことは前記のとおりであるから,労働時間の過重性の判断においては考慮を要しない。 また,原告の自宅作業は,交替制勤務・夜間勤務・緊急を要する勤務などの不規則勤務ということもできないため,いずれにせよ,考慮する必要がない。 ウ短期間の過重負荷の評価(ア) 労働時間数発症前1週間(平成12年1月14日~同月20日)における時間外労働時間は,会社内時間外労働13時間10分,自宅作業20時間04分の合計33時間14分であり,日常業務に比較して特に過重な身体的負荷を生じさせたとは認められない。 また,同期間における業務,すなわち,各発表準備作業及び発表行為は,特段の精神的緊張を伴う業務ではないし,前記時 に比較して特に過重な身体的負荷を生じさせたとは認められない。 また,同期間における業務,すなわち,各発表準備作業及び発表行為は,特段の精神的緊張を伴う業務ではないし,前記時間外労働33時間14分の6割を占める自宅作業の特殊性については,前記2(2)エ(イ)に記載したとおりである。 したがって,原告の本件疾病の発症に近接した時期における短期間の過重負荷が生じていたとは認められない。 (イ) その他原告においては,勤務に不規則性もなく,拘束時間も長くなく,交代制でも深夜勤務でもなく,作業環境においても特に問題はなかった。 エ発症に近接した時期における異常な出来事異常な出来事とは,突発的又は予測困難な異常な事態をいうところ,原告は,既に工場内におけるグループ改善発表を終えており,全社発表のため,通常業務を離れ,発表準備に専念できる状態にあり,開催日,開催場所,聴衆者の参加者数も認識しており,再三,全社発表に向けて練習や指導を受けてきたものであり,緊張した様子もなく,発表の最中もミスをすることなく,スムーズに発表を行っていたものであるから,多少の精神的緊張はあったものの,精神的緊張を伴う具体的業務又は出来事に該当する事項は見当たらず,原告に著しい精神的負荷を生じさせる程の異常な出来事があったとは認められない。 オ基礎疾患等の状況原告にはくも膜下出血に関連する治療歴や健康診断における所見がなく,血圧値も高血圧というほどの値ではない状態が継続していた。しかるに,原告の脳動脈瘤が破裂したということであれば,その原因は,原告が先天的に不完全な血管壁構造を有しており,継続的な高血圧状態がなくても瘤状態に膨れるような先天的な血管異常を有していたためとい かるに,原告の脳動脈瘤が破裂したということであれば,その原因は,原告が先天的に不完全な血管壁構造を有しており,継続的な高血圧状態がなくても瘤状態に膨れるような先天的な血管異常を有していたためといわざるを得ない。また,原告が高血圧であった等の事情もなかったことからしても,破裂に至る原因は先天的な血管異常にあったとみるのが相当である。 カ結論以上を総合考慮すれば,本件疾病は原告の業務に起因するものであるとは認められないから,これと同旨の本件各処分は違法ではない。 第5 争点に対する判断 1 認定事実前記争いのない事実等に加え,証拠(甲4,9,10,12,14,17の1ないし3,18ないし35,45ないし48,乙1の1及び2,3の1,4,5,7,9,11,12,14ないし17,18ないし26,28,31,32の1ないし29,33,34,36,37の1ないし4,乙39ないし44,46ないし51,81ないし86,91,93,95,96,97の1及び2,98,99,102ないし106,証人E,証人G)並びに弁論の全趣旨によれば,以下の事実が認められる。 (1) 原告の経歴,健康状態,生活状況,治療歴,勤務形態,性格等ア経歴原告は,昭和a年b月c日に出生し,乙高等学校を卒業後,京都大学工学部に進み,同学部の大学院合成科学科で修士課程を修めたのち,平成5年4月1日に甲に入社した。 甲では,入社時から平成8年1月31日までは大阪府高槻市所在の同社のメディカル研究所で研究員としてテープ医薬の研究,開発に従事し,同年2月1日に尼崎工場メディカル製造部医薬品製造課に配転された後は,もっぱらテープ医薬の生産現場で技術職として勤務した。 イ原告の通常の健康状態 てテープ医薬の研究,開発に従事し,同年2月1日に尼崎工場メディカル製造部医薬品製造課に配転された後は,もっぱらテープ医薬の生産現場で技術職として勤務した。 イ原告の通常の健康状態原告は,被災当時,31歳であり,身長157.3㎝,体重61.6㎏で,やや肥満気味であったが,血圧は被災前3年を見ても正常値内であった。平成11年の検査ではGOP,GPT,トリグリセライドの値が少し高く,再検査経過観察となっていた。また,平成9年,10年と心電図で軽度の変化や異常Q波を指摘されたものの,平成11年の検査の際には,その所見はない。 原告は,たばこを吸わず,飲酒も職場の飲み会で飲む程度で,たまに自宅で晩酌をする場合でも缶ビール1本程度であった。食べ物の好き嫌いは特になかった。 ウ生活状況原告は,被災当時,尼崎工場から自転車で10数分のところに,元妻(被災後に離婚。)と2人で暮らしていた。原告と元妻は,元妻が平成8年ころに派遣会社から尼崎工場へ派遣され,原告の所属部署で稼働していたことから知り合い,平成10年4月から同棲を始め,同年5月に元妻が退職した後,同年12月に入籍した。 エ治療歴原告は,平成10年7月ころ,目眩の症状を訴えてK病院耳鼻咽喉科と脳外科に受診し,聴力検査・簡易平衡機能検査・頭部CT検査を受けたが,異常は認められなかった。 原告は,元妻との間に子供をもうけようと相談しており,平成11年8月ころ,乏精子症につきL産婦人科病院に受診し,陰萎でM泌尿器科に受診したことがある。原告には,同年8月ころから本件発症まで,勃起不全の症状が出ており,月に1度ほど,処方された薬を服用するなどしていた。 につきL産婦人科病院に受診し,陰萎でM泌尿器科に受診したことがある。原告には,同年8月ころから本件発症まで,勃起不全の症状が出ており,月に1度ほど,処方された薬を服用するなどしていた。 オ被災当時の原告の勤務形態被災当時,原告は,所定労働時間が午前8時から午後5時,所定休憩時間が午後零時から午後1時,実労働時間7時間30分,休憩時間1時間であり,所定休日は土・日曜日,祝祭日であった。 カ性格等原告は,温厚で,まじめ,勤勉で,責任感が強く,辛抱強く,思いやりがある人物であり,社内における信頼も厚く,優秀でまじめな人との評価を受けていた。 (2) 甲に関連する出来事等ア通常業務(ア) 人員配置など原告は,テープ医薬の製造ラインを管理する業務に従事しており,主に画像検査システムの管理,改善,設計を行っていたが,本件被災当時,高い技術レベルを要求される同業務を分担したり,代替する従業員はおらず,生産ラインに問題が発生した際の対応などは実質的に原告が1人で行っていた。 本件被災の前年である平成11年3月末までは,原告と同程度の技術及び能力を有するFが原告の同僚として勤務していたため,通常業務の負担は本件被災当時より軽かったが,同年4月にFが異動した後,同程度の技術及び能力を有する従業員が補充されなかったため,原告の事務負担は増加した。また,Fは,原告よりも入社時期が早く,異動前は同課の管理職のような仕事に従事していたが,Fの異動に伴い,原告が,実質的な責任者としてのFの立場も引き継いだ。 そもそも,原告が所属していた部署では,原告の他に,F,Gの3名が業務にあたっており,Fが設備の いたが,Fの異動に伴い,原告が,実質的な責任者としてのFの立場も引き継いだ。 そもそも,原告が所属していた部署では,原告の他に,F,Gの3名が業務にあたっており,Fが設備のトラブルを少なくする改善活動の業務を,原告が同じ設備に付いている自動検査装置のメンテナンス及び性能アップの業務や,それ以外の新規商品導入に際しての設備の検討の業務を,副主任技術員の資格を有するGが原告とFの仕事のまとめや生産管理の業務,課長職の手伝いをそれぞれ行っていたが,平成10年7月1日にGが異動し,平成11年4月にFが異動したため,被災当時は,原告が従前の3名分の業務を単独でほぼ全面的に行っていた。 (イ) 原告が通常業務に従事していたこと生産ラインが長時間停止するという重大なトラブルは同年4月以降はそれ以前に比べて減少したが,原告が専門職発表と全社発表の各準備作業を開始した同年12月以降も,トラブルは数度にわたって発生しており,その都度,発生したトラブルに対応していたのは原告であった。それは,原告以外にトラブルに対応できる能力を有する者がいなかったためであるが,その回数は多くはなく,また比較的短時間で処理することができたほか,同月以降は,E部長により,原告が勤務時間の8割から9割を発表準備にあてることができるような人的手当てが講じられていた。 また,原告は,同年11月24日,同月29日,同年12月12日,同月15日,同月17日においては,ISDNと呼ばれる医薬品の改良品を平成13年に導入するための技術検討をそれぞれ半日ほどかけてH医薬品製造課長(以下「H課長」という。)との間で行うなどの業務にあたっていたほか,平成11年12月20日には,勤務時間外に2時間にわたって,コンピ に導入するための技術検討をそれぞれ半日ほどかけてH医薬品製造課長(以下「H課長」という。)との間で行うなどの業務にあたっていたほか,平成11年12月20日には,勤務時間外に2時間にわたって,コンピュータのいわゆる2000年問題に対応する画像処理関係の確認テストも行い,同月27日には,勤務時間外に2時間半にわたって生産ライン等のメンテナンスの立会業務を行っていた。 (ウ) 本件通常業務の甲内での位置づけ本件通常業務は,その結果によって直ちに会社の事業そのものに大きな影響が出たり,対外的な納期のような厳格な期限があるという業務ではない。目標を設定して期間内にそれを達成できたかどうかという成果を求められる業務ではあるが,社内的な取扱いとしては,達成できなかった場合に特別のペナルティのようなものは想定されておらず,成果があった場合に賞与等に反映される類の部署である。 イグループ改善活動(ア) 概要甲では,全社的品質管理活動を全員参加で推進する目的で,通常業務に関連する諸問題の発見,改善に関する少人数での取組みを全社員に奨励しており,同社内の少数派労働組合の組合員を除き,大半の従業員が同活動に参加していた。 グループ改善活動は,問題の発見,改善,発表等に伴う作業を,少人数で分担して行うのが通常であるが,原告の所属するグループでは,問題の発見,改善の成果が一定程度明らかになった段階にある題材を取り上げることになっており,同じグループのK医薬品製造課製造係長の助言は得られるものの,資料作りから発表までの大半の仕事は原告が実質的に1人で行わなければならない状況にあった。この状況は,尼崎工場での発表の時点でも,全社発表に向けての準備作業 薬品製造課製造係長の助言は得られるものの,資料作りから発表までの大半の仕事は原告が実質的に1人で行わなければならない状況にあった。この状況は,尼崎工場での発表の時点でも,全社発表に向けての準備作業の時点でも変化することはなかった。原告の全社発表は,パソコン上でプレゼンテーション資料を作成し,スクリーンに投影する方法を用いて行われた。 全社発表では,各事業所で第1位を獲得した発表が多数集まるため,発表のレベルも必然的に高くなり,また,経営に携わる者が聴衆として多数参加していることから,各事業所の成果をアピールする場としての側面もあり,発表者に対する内外の期待も大きい。さらに,発表時間が12分間と限られている一方,一事業所での問題やその改善内容を,全国から参加する技術的知識のない聴衆にも分かる内容にするという工夫が要求され,尼崎工場での発表を修正して行う必要があった。 (イ) 他の発表者の供述等原告と同じ日に全社発表を行った者らは,その準備作業について,工場内発表に比べ資料が増え,その内容を理解し,言葉使いや言回しについての練習も必要となるなど苦労する点が多かったと述べ,自宅でも練習などの作業を行ったこと,それらの準備によって,年明けからは通常業務を1とした場合に3割増しの負担,自宅での作業を含めると5割増し程度の負担であったと述べている。また,発表前日からかなり緊張し,発表開始から1~2分間は特に緊張したと述べている。 (ウ) 原告の発表に対する助言等a 概要原告は,平成11年10月18日に行われた尼崎工場での発表準備を,本件通常業務の合間の時間を使って実質的に1人で行い,発表直前の数日間は,通常業務から離れ a 概要原告は,平成11年10月18日に行われた尼崎工場での発表準備を,本件通常業務の合間の時間を使って実質的に1人で行い,発表直前の数日間は,通常業務から離れて集中的に発表準備を行い,自宅でも直前1週間ほどの間,午前3時ころまでかかって準備を完成させたが,その際,所属部署の管理者であるE部長,H課長及びD工場長から発表内容について明確な指示,助言がなされたことはなかった。 これに対し,同年12月から翌年1月にかけて行われた全社発表の準備作業においては,原告に対し,E部長,D工場長からの指示が多数回にわたって行われた。原告は,尼崎工場での発表内容を根本的に見直した上,E部長やD工場長による前記指示をほぼ全面的に受け入れ,指摘を受ける都度その指示内容を実行するという形で,発表内容の準備,改変作業を1か月半程度継続した。 原告のE部長,D工場長らに対する相談と,同人らによる指示が本格的に開始されたのは,平成11年12月2日からであり,全社発表前日である翌年1月20日までに延べ13回にわたって,水無瀬研究所や尼崎工場などにおいて模擬発表や反省会が行われた。具体的には,平成11年12月2日(E部長指導),同月7日(同),同月8日(D工場長指導),同月10日(E部長指導),同月13日(同),同月22日(D工場長指導),同月24日(E部長指導),同月28日(同),翌年1月6日(水無瀬研究所),同月12日(D工場長指導),同月18日(同),同月19日(E部長指導),同月20日(D工場長指導)であり,それぞれE部長からは1時間程度の指導,それ以外の場合は45分程度の指導が行われた。なお,E部長以外の指導の場合もE部長が同席したほか,D工場長指導の場合は,尼崎工場 20日(D工場長指導)であり,それぞれE部長からは1時間程度の指導,それ以外の場合は45分程度の指導が行われた。なお,E部長以外の指導の場合もE部長が同席したほか,D工場長指導の場合は,尼崎工場の各製造部長,管理部長,課長クラスの責任者が同席し,水無瀬研究所で行われた場合は,事業部長の他に管理職クラスが数名同席した。指導にあたる者は,様々な視点や新鮮な着想を与えるという観点から,それぞれ独自の判断により自由に問題点等を指摘,助言していた。 とりわけ,平成11年12月20日以降は,専門職発表に対応する指示等も並行して行われるようになり,E部長,D工場長等は,原告に対して頻繁に指導,指示をするようになり,各出席者が個別に述べた意見について,E部長と原告が,どの点について,どのように取り入れるかを協議し,原告が,最終的に示されたE部長の指示に合わせて修正を毎回必ず行った上,次回の反省会に臨むという様子であった。 bE部長の指導E部長の指導は,主として,毎回原告が準備,改善してきた発表案を見て,さらに改善すべき点の指摘を行い,D工場長を含む複数の従業員の意見を求め,それらの上司,同僚からの指摘をどのように次回までに反映させるべきかを協議し,指示するものであった。 E部長は,発表内容について,成果は既に評価の得られるものが出ていると認識しており,それがいかに素晴らしい改善であるかをどのようにアピールするか,という点に重点をおいて指導しており,パワーポイントで作成した資料の修正を含む,それらの改善作業が大変なものであることは認識していたが,仕事納めの日(平成11年12月29日)に次回指導日(平成12年1月4日)の打ち合わせの約束をするなど,原 イントで作成した資料の修正を含む,それらの改善作業が大変なものであることは認識していたが,仕事納めの日(平成11年12月29日)に次回指導日(平成12年1月4日)の打ち合わせの約束をするなど,原告が協議した修正作業を正月休み中に自宅で行ってくることを前提とした指導を行っていた。E部長は,パワーポイントの作成に習熟しているとはいえず,原告よりも理解度は低かった。 cD工場長の指導D工場長は,原告の発表内容について,成果としては非常に良いものが出ていると理解しており,尼崎工場と異なる全社発表に向けて,誰が聞いても分かりやすい発表にすることを重点的に指導した。具体的には,「GTN」の意味を説明したり,改善後に発生するトラブルの原因について前の工程に問題があることを分かりやすく説明する,などというものである。後述のとおり,D工場長は,専門職発表についても平成11年12月28日に原告の発表案を見たが,1テーマに絞って,より分かりやすくまとめるようにとだけ述べ,後は,全社発表の方に注力するようにと述べたが,指導日までにD工場長が指摘したことが改善,反映されていなくても,そのことに対して,指摘をすることはなかった。 D工場長は,同日ころ,原告が非常に疲れている様子であり,また,2つの発表が重なった時期に予定されていたことから原告の精神的負担があり疲労しているものと察し,年末年始はゆっくり休んで体調を整え,年明けから頑張るように原告に声をかけた。 また,D工場長個人としては,原告の発表内容が不完全だと言うとプレッシャーになると考え,発表会が近づくにしたがって何も言わないようにし,最後の2回くらいは,原告を安心させるため,「これぐらいでいいんじゃないですか,十分できたから。」と励まして 完全だと言うとプレッシャーになると考え,発表会が近づくにしたがって何も言わないようにし,最後の2回くらいは,原告を安心させるため,「これぐらいでいいんじゃないですか,十分できたから。」と励ましていた。 d その他の指摘原告が指導を受ける際に使用した原稿には,それぞれに,指摘した者が分かるマークとともに,かなりの書き込みがなされているが,主なものは,「区分を明確に」(甲23の6頁),「このテーマの寄与を示す」(甲23の7頁),「なくす」(甲23の18頁),「おかしいラインで示す」(甲23の24頁)など,パワーポイント画像や説明文に関する指摘であり,これらは,いずれも,次回の原稿(甲24)で改善されている。 また,その後の原稿(甲24ないし29)においても,「ここまで4分は長い」,「なくして」,「見えにくい」(甲24の7頁),「ようしどおり1カ月」(甲24の10頁),「ワクがめだつように」,「ここでじわじわ赤い□が現れる方がよい」(甲24の13頁),「何枚もあるイメージ」,「なし」,「何がよいかわかりにくい」,「別のグラフでせつめいする」(甲24の14頁),「難しいわかりにくい」「しゃべりで工夫してみなさい」(甲24の15頁),「わかりにくい」,「発現機構をもっとわかりやすく」(甲24の19頁),「結論のインパクトを出す」(甲25の14頁),「わかりにくい」,「たいへん」,「除く」,「とりつけ手順風にする」(甲25の19頁),「かんたんにする」,「わからん」,「いいがけっきょくわかりにくいので模式化する方がよい」,「事実すぎてわかりにくい」,「断面図にする」,「4つに統一も図でかくこと」(甲25の20頁),「思想なしとゴカイされる→思想をかけ」,「方針を強調」,「 わかりにくいので模式化する方がよい」,「事実すぎてわかりにくい」,「断面図にする」,「4つに統一も図でかくこと」(甲25の20頁),「思想なしとゴカイされる→思想をかけ」,「方針を強調」,「もっと単純化思想はとにかく初期を下げる」(甲25の21頁),「ワークプールの絵出す」(甲25の24頁),「かんれんづけてもう少しうまくしゃべってほしい」,「ぬいた方がよい,能力あるやん」(甲27の7頁),「おかしい」(甲27の21頁)など,細部にわたり多数の指摘がなされたことの記載がある。 ウ専門職発表(ア) 概要専門職登録員研さん制度は,甲の資格等級制度上,一般上級社員5級以上の者(大学院卒の場合,通常入社6年目に該当する。)で技術系の職務に従事する者が,業務中のテーマを通して能力を向上させる過程として位置づけられており,1年を通して行われる数回のレポート提出と上司による指導などの研さん活動の結果,合格と認められると,甲内で中間管理職的立場となる資格を取得することができるという人事評価上の側面を有している。同研さんにおいて行う取組み及び発表については,担当の専門業務に精通する上司が自らの業務の一環として日常的,継続的に指導を行うこととされ,同制度は,登録員の能力向上を図り,管理職の職務を全うするに足る人材を育成する制度として,被災当時甲内で定着していた(なお,平成13年度から新人事制度が導入されたため,平成12年度から専門職登録員の募集は行われていない。)。 登録員の選定は各事業部単位で行われ,大学院卒業の場合は入社6年目の従業員を目安として事業部内の管理職らが候補者を推薦した上で,本人と協議し,最終的には自己申告によって登録する仕組みとなっているが,同研さん 選定は各事業部単位で行われ,大学院卒業の場合は入社6年目の従業員を目安として事業部内の管理職らが候補者を推薦した上で,本人と協議し,最終的には自己申告によって登録する仕組みとなっているが,同研さんは,1年間にわたって行われるが,平均すると1割から2割は不合格となる。不合格となると,もう1度,1年間を通じた研さん活動に登録して活動,発表をしなければならないこととなっており,2度不合格となるわけにはいかないとのプレッシャーや,もう2度と発表準備をしたくないという気持ちから多少辛くともがんばって合格しようという暗黙の認識が登録員間で共有されている。 研さんの中で選択するテーマは,登録員の通常業務の中から選ばれ,登録員は一般的には,成果を挙げつつ,レポート等によって上司から指導を受け,最終的にはその成果や成果に至る過程をまとめて発表することとされ,その発表によって社内的に成果を共有することとされ,その発表準備のために通常業務から離れることが甲内では承認されており,登録員は,資料作成などを通常業務の勤務時間内に行うことが暗黙のうちに承認されている。 また,発表準備に際して,第三者の視点からアドバイスをする必要があるため,上司や先輩社員が業務として指導を行うのが通例であった。 (イ) 他の発表者の供述等専門職発表を経験した尼崎工場の同僚の1人は,専門職登録員研さんの発表資料作りは12月に入ってから始め,12月中は通常業務と資料作りを並行して行い,翌年1月から資料作りに専念していたが,同月からは午後9時ころまで残業して準備をし,土曜日,日曜日も出勤して資料作りを行った旨述べ,資料作りが最も大変であったと述べた。 別の同僚も,12月初めから準備 していたが,同月からは午後9時ころまで残業して準備をし,土曜日,日曜日も出勤して資料作りを行った旨述べ,資料作りが最も大変であったと述べた。 別の同僚も,12月初めから準備を進め,同月内は通常業務と並行して作業を行い,翌年1月から準備に専念したが,正月休みは自宅で準備作業をし,平日も午後9時ころまで準備作業を続けたと述べた。 (ウ) 原告の取組内容と発表への助言a 概要原告は,平成11年度の専門職登録員となり,通常業務である生産ラインの画像検査をいかに効率よく,かつ,高精度で実現するか,という問題に取り組むこととした。具体的には,不良品を100%検出するために製品に対する検査システムの感度を向上させると,不良品でないものまで不良品と認識され,生産効率が低下するという問題に対する改善についての取組みがテーマとされた。 原告は,年度を通じての取組みの発表に際し,発表のおよそ2か月前から準備作業に取りかかった。原告は,当初は,E部長と相談の上でテーマを2つに絞って準備作業を開始していたが,後に,D工場長の指摘に応じて,テーマをさらに1つに絞って発表する方向で内容を修正した。具体的には,平成11年12月初めころ,原告は,E部長と話し合った上,画像検査に関する2点をテーマとして取り上げることとし,以降,発表資料の基礎部分の作成に着手し,その後も,E部長の指摘を受けて,内容の発展,修正を進めていたが,発表まで1か月足らずとなった同月28日にD工場長の助言を求めたところ,同工場長は,原告の発表内容について,ボリュームが多く分かりづらいと指摘したため,原告は再度E部長と協議した上,テーマを1つに絞り込んで発表を行うよう方針を転換した。原告 工場長の助言を求めたところ,同工場長は,原告の発表内容について,ボリュームが多く分かりづらいと指摘したため,原告は再度E部長と協議した上,テーマを1つに絞り込んで発表を行うよう方針を転換した。原告の選択したテーマは,平成11年12月初めまでには,既に成果が得られていたことから,それ以降は,いかにアピール性の高い発表にするか,という点について集中的に指導が行われた。 原告は,平成12年1月4日から,前記全社発表の準備と並行して専門職発表の資料作成を本格的に行い,同月6日及び同月14日に,甲の水無瀬研究所において,同社メディカル事業本部の医薬・診断薬事業部長及び診断薬開発グループ長の直接指導を受け,同日,ほぼ発表内容を固め,最終的に同月17日にE部長と打ち合わせを行って発表内容を確定させた。平成11年12月14日から平成12年1月17日まで,E部長らとの打ち合わせは延べ13回に及んだ。具体的には,平成11年12月14日(E部長指導),同月20日(同),同月24日(同),同月27日(同),同月28日(D工場長指導),同月29日(E部長指導),翌年1月4日(同),同月5日(同),同月6日(医薬・診断薬事業部長指導,水無瀬研究所),同月7日(E部長指導),同月10日(同),同月14日(医薬・診断薬事業部長指導,水無瀬研究所),同月17日(E部長指導)であり,それぞれE部長の指導の場合は,1時間程度の指導,それ以外の場合は45分程度の指導が行われた。なお,E部長以外の指導の場合もE部長は同席した。 bE部長の指導E部長は,全社発表と同様の形式で指導していたが,平成11年12月14日,原告に対し,「グループ改善活動の発表に注力し専門職の方は,素材が良いので極端に言えばそのまま出しても大丈夫だ。私 E部長は,全社発表と同様の形式で指導していたが,平成11年12月14日,原告に対し,「グループ改善活動の発表に注力し専門職の方は,素材が良いので極端に言えばそのまま出しても大丈夫だ。私が保障するのではないが成果も出ているのでそんなに注力する必要はない。」と述べるなどしていた。 原告は,平成11年12月後半ころは,全社発表についての準備を集中的に行っていたため,専門職発表の準備についてはあまり進んでいなかった。 しかし,平成12年1月24日に行われる専門職発表のため,事業部長を含めた指導会が同月6日に予定されていたことから,E部長は,平成11年12月29日,原告が正月休みの間に大量の準備を原告がせざるを得ない状況にあることを認識した上で,原告との間で,翌月4日に発表の打ち合わせをする旨の確認をするなどした。 同月4日にE部長は原告の発表案を見たが,同月6日に予定された指導会で事業部長の指導を受ける段階には達してしないと判断し,原告と協議した上,同月5日に,再度指導を行うこととした。E部長は,同月6日に事業部長の指摘などを受けた後,同月7日午後4時から再度原告に対する指導を行い,土曜日,日曜日を挟んだ同月10日の午前9時からさらに指導を行うなどしており,原告が休日に自宅で改善作業をすることを前提とした指導を行った。 cD工場長の指導D工場長は,専門職発表についても平成11年12月28日に発表案を見たが,1テーマに絞って,より分かりやすくまとめるようにとだけ述べ,後は,全社発表の方に注力するようにと述べていた。 d その他の指摘等Gは,平成11年12月18日か19日ころに原告の家で行われた忘年会の際,原告が疲れている様子を見せていたので,「専門職の方へ力を するようにと述べていた。 d その他の指摘等Gは,平成11年12月18日か19日ころに原告の家で行われた忘年会の際,原告が疲れている様子を見せていたので,「専門職の方へ力を入れて,グループ改善の方はそこそこにしとかないと。」と述べたところ,原告は「まぁ何とかやりますよ。」と答えていた。 原告が指導の際に使用した原稿は,「どこが変わったのかのポイントがわかりにくい」(甲31の6頁),「内容多い」(甲33の2頁),「私がやったことを強調せよ。前提ではないのだ」(甲33の4頁),「省くとスケジュールもっとせつめいできる」(甲33の6頁),「もう1枚つくってでもご利益をしっかりつたえる」,「削ってもよい」(甲33の10頁),「同じことばが出るところがごちゃごちゃしている」(甲34の4頁),「これをりかいしてもらうのがもっとも重要。ここさえとっぱしたら入るで」(甲34の5頁),「流れに背く→いらんのでは?」(甲34の8頁)など,原告が出席者から受けた指摘が原告によって記載されている。 エ自宅での準備作業時間の推定(ア) 発症前1か月における自宅作業の実態原告は,平成11年12月20日ころから,出勤日は概ね午前6時ころに起床し,朝食は摂ったり摂らなかったりと不定であったが,起床後30分位から午前8時ころまで自宅のパソコンに向かって2つの発表に向けての準備作業を行い,自宅から約15分かけて午前8時30分に出勤した。 原告は,午後7時か同8時ころまで残業した後,退社し,自宅で夕食を摂った後,少し休憩して午後8時ないし同9時ころから自宅作業を開始し,入浴時間30分程度を挟みつつ,翌日午前3時ころまで作業をして就寝した。 時か同8時ころまで残業した後,退社し,自宅で夕食を摂った後,少し休憩して午後8時ないし同9時ころから自宅作業を開始し,入浴時間30分程度を挟みつつ,翌日午前3時ころまで作業をして就寝した。 全社発表の前日ころには,原告は,深夜まで準備を続け,全社発表で話す内容を,自分でテープに録音してチェックするなどしていた。 (イ) E部長,D工場長らによる指示内容E部長は,次回の打ち合わせまでに改善すべき点を原告に指摘し,原告はその指示に応じていたところ,D工場長や事業部長からの助言を受けた後,原告がE部長と協議して修正を加えた箇所は,プレゼンテーション用ソフトであるパワーポイントを用いた資料に対するものが大半であった。 (ウ) 原告が準備作業に用いていたリムーバブルディスクに保存されたファイルの内容a 全社発表の準備作業① 平成12年1月12日(12:39)と同月17日(1:46)との比較画面1,3,4,8-15,17~27の22画面は変更なし。 変更された5画面の内訳は,全て画面構成の変更で,半分程度の変更が2画面,一部変更が3画面であった。 ② 同日(1:46)と同月18日(17:24)の比較22画面が変更され,そのうち画面構成を大幅に変更したのが3画面,半分程度の変更が1画面,一部変更が6画面,動画を新たに作成した箇所が5か所ある。説明文の大幅な変更は4画面,半分程度の変更が2画面,一部変更が15画面である。 ③ 同日(17:24)と同月19日(7:51)との比較画面13,17, 幅な変更は4画面,半分程度の変更が2画面,一部変更が15画面である。 ③ 同日(17:24)と同月19日(7:51)との比較画面13,17,19,22,23,25~27の8画面は変更なし。変更された19画面の内訳は,画面構成が4画面,説明文が18画面で,いずれも一部変更されている。 ④ 同日(7:51)と同日(11:12)との比較1~5,8~11,14,17,18,21,23の14画面は変更なし。変更された13画面のうち,3画面は画面構成の変更,12画面が説明文の変更,動画が新たに1か所作成されている。 ⑤ 同日(11:12)と同日(19:03)との比較1,9,11~18,21~26,28の17画面は変更なし。 変更された11画面の内訳は,画面構成が4画面,説明文が8画面であり,全て一部変更である。 ⑥ 同日(19:03)と同月20日(1:01)との比較1~11,16,23~26の16画面は変更なし。変更された12枚は全て説明文で,1枚が半分程度変更され,その他は一部変更であった。 ⑦ 同日(1:01)と同日(11:32)との比較1~5,7~15,17~28の26画面は変更なし。 変更された2画面は画面構成の変更であり,2画面とも一部変更である。 b 専門職発表の準備作業平成12年1月14日(10:55)と同月17日(15:28)を比較すると,画面1,7に変更はなく,変更された11画面の内訳は,画面構成 b 専門職発表の準備作業平成12年1月14日(10:55)と同月17日(15:28)を比較すると,画面1,7に変更はなく,変更された11画面の内訳は,画面構成の変更が10画面,説明文の変更が11画面である。変更の程度は,画面構成の大幅な変更が6画面,半分程度の変更が1画面,一部変更が3画面である。説明文は新規作成と同様のものが6画面,半分程度の変更が1画面,一部変更が4画面である。 同月14日午後から専門職発表会の指導を受けるため水無瀬研究所へ出張しており,その後,資料の修正等が行われたものと推認でき,同日が金曜日で,翌日,翌々日が所定休日であることからすると,前記変更は,自宅で行われたものである。 c ファイルの保存時刻原告のリムーバブルディスクに保存されていたファイル一覧表によれば,ファイルの保存時刻につき,平成11年12月22日に午前1時4分の記録があるほか,平成12年1月3日も午前1時5分の,同月5日には午前1時22分,同月9日には午前2時46分,同月13日には午前3時22分,同月16日には午前1時46分,翌日には午前1時52分,同月19日には午前1時1分の記録があり,その他にも,休日における更新記録や午前0時台の更新記録がある。 (エ) 原告の元妻の記憶原告の元妻は,原告の生活について,要旨以下のように述べている。 a 平成11年4月にFが転勤すると,原告は仕事を持ち帰るようになり,夕食後,自宅で仕事をするようになった。 b 同年10月18日にグループ改善活動の尼崎工場での発表会が行われたが,その1週間ほど前から原告は,夕食後,午前2時から3時ころま なり,夕食後,自宅で仕事をするようになった。 b 同年10月18日にグループ改善活動の尼崎工場での発表会が行われたが,その1週間ほど前から原告は,夕食後,午前2時から3時ころまで,自宅のパソコンを用いて,発表資料作りを行い,睡眠時間は3時間程度であった。そのうちの1日は,徹夜で資料作りを行った。 c 原告は,H課長とE部長の2人の指導者を持ち,それぞれ言い分が異なるので悩んでいたが,ある時期からE部長の指導が中心となった。 d 平成11年12月以降,原告の睡眠時間は,平日で3~4時間であった。休日は出勤しないものの,朝少しゆっくり寝てから深夜まで発表の準備作業を行っていた。 e 同月29日,原告は昼間で仕事を終え,その後は,自宅でパソコンに向かって作業していた。翌日,翌々日も,ほとんど,自宅でのパソコン作業をして過ごした。元旦も,レンタカーを借りるために出かけた程度で,パソコン作業を続けていた。翌日は,原告の実家に帰省したが,翌々日(平成12年1月3日)は,レンタカーを返しに行った程度で,それ以外の時間は,パソコン作業をしていた。その翌日には,会社は休みであったが,E部長との打ち合わせが予定されていたため,早朝からパソコン作業を続けていた。 f 平成12年1月14日から同月20日までの間,原告は,午前6時に起床し,同7時50分ころまでには出社し,午後7時から午後8時ころに帰宅して,夕食,入浴の時間を挟みつつ,自宅でもパソコン作業を続け,作業午前3時30分ころに就寝していた。 g 原告は,パソコン作業をしながら,「しんどい,寝たい,こんなんできるかっちゅーねん。」などの言葉を発していた。 オ被災当日の原告の勤務 0分ころに就寝していた。 g 原告は,パソコン作業をしながら,「しんどい,寝たい,こんなんできるかっちゅーねん。」などの言葉を発していた。 オ被災当日の原告の勤務状況原告は,平成12年1月21日,全社発表会に参加するため午前6時30分ころ自宅を出て,午前8時ころ発表会場である京都技術センターに到着した。 発表会は午前9時15分から始まり,社長挨拶,大学教授による基調講演,グループ紹介,特別事例発表を経て,午前11時10分から部門別に2会場に分かれ,午前11時25分から各グループの発表が始まった。同発表会には,D工場長も聴衆として出席していた。 原告は,昼食休憩時間中も発表資料のチェックを行うなど,緊張した様子であったが,発表は8グループ中7番目であったので,練習しながら控え室で待機するなどしていた。発表会場は講堂であるが,発表者は壇上で発表し,会場には会社の社長を含め幹部及び関連企業の社長等,乙グループの幹部も聴衆として参加して行われた。 原告の発表は午後2時48分から始まったが,5分ほどが経過したところで,突然言葉に詰まり,ふらつきながら前向きに倒れ,直ぐに鼾をかき始めた。 直ちに産業医が駆け付けて気道確保等の処置が行われ,救急車で京都九条病院へ搬送された。 発症当日の京都市における外気温は平均摂氏0.8度(最高3.8度,最低-0.9度)であったが,全社発表会は室内で行われており,適温が保たれていた。 カ両発表会の準備作業原告は,全社発表と専門職発表をいずれも,パワーポイントを用いて,文字・グラフ等を組み合わせて分かりやすい資料を作成,投影して行う方式をとっていた。このようにして作成されたも 業原告は,全社発表と専門職発表をいずれも,パワーポイントを用いて,文字・グラフ等を組み合わせて分かりやすい資料を作成,投影して行う方式をとっていた。このようにして作成されたものは,主に文字列であるテキストボックス,数値を視覚化したグラフ,矢印や吹出し等の図面であるオートシェイプなどであるが,これらを更に組み合わせるには,積み重ねの作業が必要となり,いったん積み上げた作業に修正を加える際にも,それらの図形などが互いに関連し合って表示されていることから,相当の熟練を要するほか,作業時間もそれなりのものが要求される。 キ不規則勤務・出張等原告の発症前6か月間の出張は以下のとおりであるところ,これらは全て日帰り出張であり,いずれも打合わせや研修であった。 平成11年 8月18日大阪同月27日玉出同年10月 6日大阪同月20日新大阪同月29日大阪同年11月 4日大阪府山崎同月17日新富士平成12年 1月 6日大阪府山崎同月14日大阪府山崎ク作業環境原告が本件通常業務や発表会の資料作りを行っていた作業場(二次加工室中央)で温度環境を測定したところ,平成11年2月は摂氏23度,同年8月は摂氏26度であり,騒音環境を測定したところ,平成11年3月16日には,測定平均値79.5デシベル,測定最大値80.0デシベル,同年9月22日には測定平均値72.2デシベル,測定最大値74.5デシベルであった。 (3) 家庭に関連する出来事等原告は元妻と話し合い,平 デシベル,測定最大値80.0デシベル,同年9月22日には測定平均値72.2デシベル,測定最大値74.5デシベルであった。 (3) 家庭に関連する出来事等原告は元妻と話し合い,平成12年1月ころ,自動車を購入しようと計画しており,主として元妻が乗用自動車のパンフレットを集めてきたり,近所の駐車場につき契約するため具体的な交渉を進めるなどしていた。 家庭や近所との人間関係におけるトラブルは特にない。 (4) 被災前の原告の言動等ア平成11年12月13日原告は,「しんどい」と元妻にメールを送った。 イ同月ころ原告は,睡眠不足によって,「寝たい!死にそう!ボク死ぬかも!」等という言動をなすようになっており,専門職発表(平成12年1月24日)が終われば,1週間程度の休暇を取る旨を元妻に話し,気力を振り絞って,発表準備作業を続けていたが,原告が自宅ではパソコン作業等ばかりに従事していたため,元妻が不機嫌になると,よく「ごめんな。」と言っていた。全社発表会については,「社長が来るし,緊張する。」と元妻に話していた。 また,家に帰ってパソコン作業をしながら,「むかつくわー,はーっ!」,「簡単に言うけど,直すんは時間もかかるし大変なんや!」,「こんなんできるか!」と言い,荒れたりムスッとしたりしていたことがあった。 ウ同月28日原告は,「おわった。たおれそう」と元妻に携帯電話でメールを送った。 エ平成12年1月1日原告は,自宅でパソコン作業を続けており,別の部屋から元妻が送った応援のメールに対して,「いつもありがとうボクがんばるよ」とのメールを返信した。 オ同月7日原告は 日原告は,自宅でパソコン作業を続けており,別の部屋から元妻が送った応援のメールに対して,「いつもありがとうボクがんばるよ」とのメールを返信した。 オ同月7日原告は,「よかったねボク疲れてきたよ。もしかしたら日曜か月曜に休出かも今日はあまりおそくならんようにする」と元妻に携帯電話でメールを送った。 カ同月11日原告は,「今日はおそくなりそうしんどいわ」と元妻に携帯電話でメールを送った。 キ同月ころGが所属していた課の従業員が食堂で原告を見て,かなり疲れていたけど大丈夫かなとGに告げたので,Gが翌日,食堂で原告に会ったところ,原告は,「いっぱい直されて大変だ。しんどいなぁ。」,「死にそうだなぁ。」と言っていた。また,このころ,原告は顔色も悪く,目の下のくまがかなり濃くなっているなど疲労している様子が明らかであり,疲れなどを口に出さない性格であったにもかかわらず,「本当にしんどいです。」とGに話していた。 原告は,自宅では3時間ほどしか寝る時間がとれず,「しんどい」,「寝たい」等と繰り返しており,大変辛そうな様子を見せ,深夜まで仕事をしながら,「こんなん,できるかっちゅーねん!」などと口に出してカリカリしたり,プリンターの調子が悪く印刷ができないときなど,紙を丸めてプリンターにぶつけたりするなど,いらいらしていたほか,修正点について深夜まで悩むこともあった。 (5) 医学的知見アくも膜下出血くも膜下出血とは,頭蓋内血管の破綻により血液がくも膜下腔中に出血を来す病態であり,脳動脈瘤,脳動静脈奇形,脳出血,頭部外傷,脳腫瘍などの頭蓋内疾患,血小板減少症や凝固異常などの出血性素因が原因とされるが,原因の75%は脳動脈瘤の破 より血液がくも膜下腔中に出血を来す病態であり,脳動脈瘤,脳動静脈奇形,脳出血,頭部外傷,脳腫瘍などの頭蓋内疾患,血小板減少症や凝固異常などの出血性素因が原因とされるが,原因の75%は脳動脈瘤の破裂であるとされる。脳動脈奇形の発症年齢は20~40歳代である。患者は,発症に先行して頭痛を経験している場合がある。 くも膜下出血における出血血管は,くも膜下腔の脳表面にある血管であり,血管壁も厚く強靱であるとされていることから,機械的な損傷を起こす外傷以外の原因で破綻するのは,何らかの血管病変が存在し,脳動脈瘤の成長など血管壁に局所的な脆弱部位が存在したためであるとされる。 脳を潅流する血液は,左右の内頚動脈の先端部,左右の前大脳動脈の起始直後の部分,前交通動脈,左右の後交通動脈がリング状に連結して円を描くロータリー状に数本の道路が連結して全ての道路が連結したのと同様の状態となっているウィリス動脈輪と呼ばれる部分を流れているが,ウィリス動脈輪を形成する血管群は胎生期に別々に形成され,その後吻合していくため,他の部位と比べて血管構築に形成不全が発生しやすく,正常な動脈壁であれば,血管内壁を被う内皮細胞とその下にある弾力繊維で形成された内弾性板までの組織である血管内膜,内弾性板の外側にある平滑筋層である血管中膜及びその外側に接する弾力繊維で形成された外弾性板から外側の組織である血管外膜の3層の構造を持つのに対し,血管が吻合する際に,吻合部にこの3層構造が形成されないことがあることから,吻合が多発するウィリス動脈輪では,不完全な動脈壁が形成されやすくなる。そして,そのような部分は,血管壁にかかる張力に対する耐用力が極めて弱く,局所的な脆弱部になるとされている。 その結果,そのような脆弱部の血管 不完全な動脈壁が形成されやすくなる。そして,そのような部分は,血管壁にかかる張力に対する耐用力が極めて弱く,局所的な脆弱部になるとされている。 その結果,そのような脆弱部の血管壁が内圧によって伸展され,次第に瘤状に膨れたものが動脈瘤であり,したがって,動脈瘤の形成,成長は血管形成上の特異性による先天的な血管構造の形成不全に起因するとされている。 イ脳動脈瘤の成長に関する問題以上からすると,脳動脈瘤は血管内圧の高い状態が持続すると成長が促進されると考えられるため,先天的血管構造の問題に加えて高血圧症などがある場合,破裂時期が早まると考えられているが,先天的な異常形成の程度は個体による差異が大きいため,破裂切迫状態に至る期間,高血圧の程度などの一般的な閾値の設定は極めて困難であるとされ,低年齢で脳動脈瘤の破裂があったからといって,直ちに過剰な負荷があったと推測することに対しては慎重であるべきと考えられている。 加えて,くも膜下出血の発症については,談笑中,テレビ鑑賞中,自宅でくつろいでいるときなど,身体活動が活発でないときの発症が最も多く,日常生活上の行動に伴った発症率が高いという報告や,ストレスや血圧と無関係に起こりうるという報告なども存在する。 (6) 厚生労働省による判断指針の策定とその内容ア専門検討会による報告書(ア) 厚生労働省は,脳・心臓疾患の成因に関連して,疲労の蓄積が生体に与える影響に関する研究が国内外で広く行われたことや,くも膜下出血に係る労災請求事件の判決で最高裁判所が慢性の疲労や過度のストレスを考慮すべきであるとの判断を示したこと等を契機として,従来の業務上外認定の判断基準であった近接時期の業務量,業務内容から も膜下出血に係る労災請求事件の判決で最高裁判所が慢性の疲労や過度のストレスを考慮すべきであるとの判断を示したこと等を契機として,従来の業務上外認定の判断基準であった近接時期の業務量,業務内容から業務の過重性を評価するという考え方からの転換を模索することとし,脳・心臓疾患の業務上外が問題となる労災請求に対し,迅速かつ適正に対処するための判断のよりどころとなる一定の基準を明確化するべく,医学,法律学等の研究者などに,脳・心臓疾患に係る労災認定について専門的見地からの検討を依頼し,これを受けた受けた脳・心臓疾患の認定基準に関する専門検討会は,平成13年11月16日,その結果を脳・心臓疾患の認定基準に関する専門検討会報告書(乙96,以下「報告書」という。)としてとりまとめた。 (イ) 報告書の要旨は,次のとおりである。 a 過重負荷脳・心臓疾患は,血管病変等の形成,進行及び増悪によって発症するが,それらの過程には,主に加齢,食生活,生活環境等の日常生活における諸要因や遺伝等の個人に内在する要因が密接に関連している。 業務は血管病変等の形成の直接要因とはならないが,業務の中には自然経過を超えて著しく血管病変等を増悪させるものがあり,医学的経験に照らして,脳・心臓疾患の発症の基礎となる血管病変等をその自然経過を超えて著しく増悪させ得ることが客観的に認められる負荷を過重負荷と呼ぶ。 b 過重負荷の評価基準となる労働者過重負荷か否かの判断は,労災保険法の趣旨に照らして,発症した労働者のみならず,当該労働者と同程度の年齢,経験等を有する健康な状態にある者のほか,基礎疾患を有するものの,日常生活を支障なく遂行できる労働者にと 否かの判断は,労災保険法の趣旨に照らして,発症した労働者のみならず,当該労働者と同程度の年齢,経験等を有する健康な状態にある者のほか,基礎疾患を有するものの,日常生活を支障なく遂行できる労働者にとっても,特に過重な業務であるか否かで評価を行うことが妥当である。 c 長期間にわたる疲労の蓄積の考え方どのような業務も,それを遂行することによって生体機能に一定の変化を生じさせる負荷要因が存在し,その負荷要因による反応をストレス反応と呼ぶ。ストレス反応は,休憩・休息,睡眠,その他の適切な対処により回復し得るものであるが,恒常的な負荷が長期間にわたって作用した場合には,持続されて過大となり,ついには回復し難いものとなることが知られており,この状態を疲労の蓄積と呼ぶ。これによって,生体機能は低下し,血管病変等が増悪することが知られている。もっとも,負荷要因が消退した場合には,疲労も回復するものとされており,蓄積度合の評価にあたっては,発症前の一定期間の就労態様を十分に考察する必要がある。 d 就労態様による疲労への影響① 長時間労働長時間労働が健康に及ぼす影響について調査した報告は多くないが,睡眠が十分にとれない結果,疲労の回復が困難となることにより生ずる疲労の蓄積が原因となるため,脳血管疾患をはじめ虚血性心疾患,高血圧症,血圧上昇などの心血管系への影響があるものと考えられ,自然経過を上回る血管病変等の原因となり得る。 疫学的にみて,血管病変等への影響が現れるのは,1日6時間程度の睡眠を確保できない場合であるが,日本人の平均的な生活時間を調査した結果によると,これは4時間程度の時間外労働を行っ 疫学的にみて,血管病変等への影響が現れるのは,1日6時間程度の睡眠を確保できない場合であるが,日本人の平均的な生活時間を調査した結果によると,これは4時間程度の時間外労働を行った場合に相当し,これが1か月継続した状態は,概ね80時間を超える時間外労働が行われている状況に相当するとされる。また,同様に,1日5時間以下の睡眠となった場合につき調査すると,疫学的に,脳・心臓疾患の発症との関連性があるとの結果が得られ,この状態は1日5時間の時間外労働を行った場合に相当し,1か月継続した場合1日100時間を超える時間外労働があった場合に相当する。 別の調査によると,1か月概ね45時間を超える時間外労働に従事していない場合には疲労の蓄積は生じないものと考えられ,また,それ以前の長時間労働によって生じた疲労の蓄積も徐々に解消されていくものと考えられている。 ② 不規則な勤務不規則な勤務は,覚醒のリズムを障害するため,不眠,睡眠障害,昼間の眠気などの愁訴を高め,完全な休息を得られない可能性が指摘される。 不規則な勤務の過重性については,予定業務の変更の頻度,程度,事前の通知状況,予測の度合,業務内容の変更の程度等の観点から検討し,評価すべきである。 ③ 拘束時間の長い勤務拘束時間の長い勤務の過重性は,拘束時間数,実労働時間数だけでなく,拘束時間中の実態,具体的には,労働密度(実作業時間と手待時間との割合等),業務内容,休憩・仮眠時間数,休憩・仮眠施設の状況などを検討し,評価すべきである。 ④ 出張の多い業務過度の出張などが循環器疾患の発症 合等),業務内容,休憩・仮眠時間数,休憩・仮眠施設の状況などを検討し,評価すべきである。 ④ 出張の多い業務過度の出張などが循環器疾患の発症に関与するとの報告もあるが,その過重性については,出張中の業務内容,出張の頻度,交通手段,移動時間,移動時間中の状況,宿泊の有無,宿泊施設の状況,睡眠を含む休憩,休息の状況,出張中の疲労を回復できる状態の有無などから検討し,評価すべきである。 ⑤ 交替制勤務,深夜勤務交替制勤務,深夜勤務が直接的に脳・心臓疾患の発症の要因となるものではないものの,生体リズムと生活リズムの位相のずれが生じ,その修正の困難さから疲労がとれにくいということがいわれている。交代制勤務や深夜勤務の過重性については,勤務シフトの変更度合,勤務と次の勤務までの時間,交替制勤務における深夜時間帯の頻度などを検討し,評価すべきである。 ⑥ 作業環境作業環境と脳・心臓疾患の発症との関連性は必ずしも強くないと考えられるから,付加的要因として検討し,評価すべきであるが,温度環境については,寒冷地においては過重性が考慮され得るし,騒音環境については,75デシベル程度で一時的な血圧上昇が,80デシベル以上で,収縮期血圧や拡張期血圧の上昇傾向,高血圧症の罹患率の上昇が見られ,時差環境については,5時間以上の時差がある地域を移動する業務か否かを,それぞれ検討すべきである。 ⑦ 精神的緊張を伴う業務仕事の要求度が高く,裁量性が低く,周囲からの支援がない職務などでは脳・心臓疾患の危険性が高くなるとされ,決められた納期どおりに遂行しな ⑦ 精神的緊張を伴う業務仕事の要求度が高く,裁量性が低く,周囲からの支援がない職務などでは脳・心臓疾患の危険性が高くなるとされ,決められた納期どおりに遂行しなければならないような困難な業務などでは,阻害要因の大きさ,達成の困難性,ペナルティの有無,納期等の変更の可能性や,業務量,経験,適応能力などを検討し,評価すべきである。 e 発症に近接した時期における異常な出来事生体が突発的又は予測困難な異常な事態等の異常な出来事に遭遇した場合や日常業務に比較して特に過重な精神的,身体的負荷を生じさせたと客観的に認められる業務に就労した場合には,直接的に脳・心臓疾患発症の原因となり得る。 また,単一の出来事が特に過重な負荷と評価できなくとも,それに近い状況の出来事が重複して同時に,あるいは相前後して反復して発生した場合には,身体的,精神的負荷が特に過重で発症の原因となり得るか検討し,評価すべきである。 f 業務の過重性の評価期間1~6か月前の就労状況を調査すれば発症と関連する疲労の蓄積が判断され得ることから,評価期間を発症前6か月間とすることは現在の医学的知見に照らし,無理なく,妥当である。なお,脳・心臓疾患の発症は,日常生活と密接に関連しているものであり,発症から遡るほど業務以外の諸々の要因が発症に関わり合うことから,疲労の蓄積を評価するに当たって,発症前6か月より前の就労実態を示す明確で評価できる資料がある場合には,付加的な評価の対象となり得る。 (ウ) 業務の過重性の総合評価業務の過重性は,労働時間のみによって評価するものではなく,就労態様の諸要 きる資料がある場合には,付加的な評価の対象となり得る。 (ウ) 業務の過重性の総合評価業務の過重性は,労働時間のみによって評価するものではなく,就労態様の諸要因も含めて総合的に評価すべきとするものであり,具体的には,労働時間,勤務の不規則性,拘束性,交替制勤務,作業環境などの諸要因の関わりや業務に由来する精神的緊張の要因を考慮して,当該労働者と同程度の年齢,経験を有する同僚労働者又は同種労働者であって日常業務を支障なく遂行できる労働者にとっても,特に過重な身体的,精神的負荷と認められるか否かという観点から,総合的に評価することが妥当である。 おおよその目安は以下のとおりである。 a 長時間にわたる過重負荷① 業務と脳・心臓疾患の発症との関連性が強いと判断される場合発症前1か月間に特に著しいと認められる長時間労働に継続的に従事した場合は,業務と発症との関連性は強い。具体的には,1日5時間程度の時間外労働が継続し,発症前1か月前に概ね100時間を超える時間外労働が認められる場合である。 また,発症前2か月間ないし6か月間にわたって,著しいと認められる長時間労働に継続的に従事した場合は,業務と発症との関連性は強いと判断される。具体的には,1日4時間程度の時間外労働が継続し,発症前2か月間ないし6か月間にわたって,1か月当たり概ね80時間を超える時間外労働が認められる状態が想定される。 なお,前記のごとき,長時間労働が認められるものの監視・断続労働のような原則として一定の部署にあって監視するのを本来の業務とし,常態として身体又は精神的緊張の少ない場合 なお,前記のごとき,長時間労働が認められるものの監視・断続労働のような原則として一定の部署にあって監視するのを本来の業務とし,常態として身体又は精神的緊張の少ない場合や作業自体が本来間歇的に行われるもので,休憩時間が少ないが手待時間が多い場合等労働密度が特に低いと認められる場合は,労働時間のみをもって業務の過重性を評価することは適切でなく,このような場合は,他の諸要因も十分考察し,総合的に判断する必要がある。 ② 業務と脳・心臓疾患発症との関連性が低いと判断される場合睡眠等でその日の疲労が回復し,疲労の蓄積が生じない場合には関連性は低いと判断される。具体的には,1日の労働時間が2時間程度であって,発症前1か月間ないし6か月間にわたって,1か月当たり概ね45時間を超える時間外労働が認められない状態が想定される。 ③ 前記①と②の中間的な場合発症前1か月間ないし6か月間にわたって,1か月当たり概ね45時間を超えて時間外労働時間が長くなるほど,業務と発症との関連性が徐々に強まると判断される。 b 異常な出来事や短期間の過重負荷異常な出来事及び短期間の過重負荷については,①事故の大きさ,加害の程度,②恐怖感・異常性の程度,③作業環境の変化等について十分調査し,ⅰ遭遇した業務に関連する出来事やⅱ作業環境の変化が急激な血圧変動や血管収縮を引き起こし,血管病変等の著しい増悪や,脳・心臓疾患の発症を生じさせ得る程度のものであったか,労働時間の長さ,就労態様等を考慮し,同僚等であって日常業務を支障なく遂行できる労働者にとっても特に過重な身体的,精神的負荷と認められるか否かという 臓疾患の発症を生じさせ得る程度のものであったか,労働時間の長さ,就労態様等を考慮し,同僚等であって日常業務を支障なく遂行できる労働者にとっても特に過重な身体的,精神的負荷と認められるか否かという観点から,総合的に評価し,判断すべきである。 c その他のリスク要因脳・心臓疾患等は,長い年月の生活の営みの中で潜行的に形成,進行,増悪するという自然経過をたどって発症するので,高血圧,飲酒,喫煙等のリスク要因を有する場合には,それらの要因と発症との関連が指摘されており,基礎疾患の内容,程度等も業務起因性の判断において考慮すべきである。 (7) 医証ア医師Iは,本件被災後の原告を診察し,脳動脈瘤があったところに,血圧上昇,精神的興奮状態が加わり,破裂を促し,くも膜下出血を発症した旨の意見書を被告に提出した。 イ兵庫労働基準局地方労災医員Jは,原告の発症について,昇進試験を控えていた他,社内の発表会において発表することになっており,精神的な緊張があったと考えられること,高血圧症も認められず,本件被災の原因は発表時の一時的な血圧上昇が原因であること等を述べながらも,出勤形態と就労時間の調査からは業務による過重負荷は証明されなかったと報告されているので業務と本件発症との相当因果関係は認めにくい旨の意見書を提出した。 2 労災請求の判断基準(1) 労災保険法に基づく補償は,労働者の業務上の災害に対して行われるものであり,労働基準法75条2項に基づき定められた同法施行規則35条,同規則別表第1の2にいう「その他業務に起因することの明らかな疾病」とは,労働者が業務に基づく肉体的,精神的負荷によって疾病に至った場合をいい,その肉体的,精神的負荷と疾病との間には相当因果関係があることが 表第1の2にいう「その他業務に起因することの明らかな疾病」とは,労働者が業務に基づく肉体的,精神的負荷によって疾病に至った場合をいい,その肉体的,精神的負荷と疾病との間には相当因果関係があることが必要と解される(最高裁昭和51年11月12日第2小法廷判決・裁判集民事119号189頁参照)。 ところで,前記認定のとおり,くも膜下出血は先天的血管の奇形が根本的な原因をなしている場合が大半であるとされており,当該労働者の性格傾向及び生活歴などの個体側の要因,その他環境的要因等が複合的,相乗的に影響し合った上,自然的経過によって発症に至ることもあるから,当該業務とくも膜下出血との間に労災保険法に基づく給付要件としての相当因果関係が肯定されるためには,単に業務が具体的発症を導く要因となったと認められるだけでは足りず,当該業務自体に,社会通念上,脳・心臓疾患増悪の潜在的,自然的経過を超えた増悪を伴う相当程度の危険性が存することが必要であると解するのが相当である。 (2) もっとも,前記認定のとおり,ある出来事によって生じる肉体的,精神的緊張等に基づく心身的負荷の蓄積は,くも膜下出血を代表とする潜在的な脳・心臓疾患を増悪させる要因の1つであることは明らかであるものの,他方,心身的負荷の発生要因たる出来事は様々であって,業務上のもののみならず業務以外のものも考えられるほか,特に精神的負荷については,ある出来事をどの程度の心身的負荷として受け止めるかという個々人の心身的負荷に対する受容の程度によっても左右されうることは明らかであり,くも膜下出血の発生機序及び増悪の経過,心身的負荷と脳・心臓疾患増悪との因果関係等については,医学上もいまだ完全には解明されていない分野であるところ,その発症要因となる出来事の全てを特定すること自体が困難 出血の発生機序及び増悪の経過,心身的負荷と脳・心臓疾患増悪との因果関係等については,医学上もいまだ完全には解明されていない分野であるところ,その発症要因となる出来事の全てを特定すること自体が困難な場合も多く,さらに現在の医学水準においては心身的負荷の蓄積というものを客観的,定量的に数値化することが困難であることを併せ考慮すれば,くも膜下出血の発症と業務に伴う心身的負荷との相当因果関係を完全に医学的に証明することは困難な場合があることは否定できない。 しかしながら,法的概念としての因果関係の立証は,一点の疑義も許されない自然科学的証明ではなく,経験則に照らして全証拠を総合検討し,特定の事実が特定の結果発生を招来した関係を是認し得る高度の蓋然性を証明することであり,その判定は,通常人が疑いを差し挟まない程度に真実性の確信を持ち得るものであることを必要とし,かつ,それで足りると解するのが相当である(最高裁昭和50年10月24日第2小法廷判決・民集29巻9号1417頁参照)。 したがって,業務とくも膜下出血の発症との相当因果関係を判断するに当たっても,発症前の業務内容及び生活状況並びにこれらが労働者に与える心身的負荷の有無,程度,さらには当該労働者の基礎疾患等の身体的要因や,その他の個体側の要因を具体的かつ総合的に判断した上,これをくも膜下出血の発症・増悪の要因等に関する医学的知見に照らし,社会通念上,当該業務が労働者の心身に過重な負荷を与える態様のものであり,これによって当該業務につき,自然的増悪の経過を超えてくも膜下出血を発症させる相当程度の危険性が存在すると認められる場合に,他に有力な危険因子が存するなどの特段の事情がない限り,当該業務と発症との間の相当因果関係を肯定するのが相当である。 (3) と 出血を発症させる相当程度の危険性が存在すると認められる場合に,他に有力な危険因子が存するなどの特段の事情がない限り,当該業務と発症との間の相当因果関係を肯定するのが相当である。 (3) ところで,労災保険法に基づく補償給付は,給付の原因である発症が業務に内在ないし通常随伴する危険の現実化として発生したと認められた場合になされるものと解されるから(労災保険法1条参照),発症の原因となる出来事は,労働者と事業主との労働関係の下に発生したこと,すなわち,労働者が労働関係に基づき事業主の支配下にある状態で発生したものであると認められること,すなわち業務遂行性を必要とすると解するのが相当である。 そして,業務遂行性の有無の判断基準は,業務がなければ当該作業を行わなかったという,いわゆる条件関係の有無のみでは足りず,労務提供の実態をも考慮した上,法的観点に即して,当該作業の遂行が事業者の支配下において行われていたものといえるか否かを基準として行うべきである。 3 争点1(業務遂行性の有無)(1) グループ改善活動前記認定事実によれば,甲では生産効率等の業務性向上の目的で全社的にグループ改善活動への取組みが呼びかけられており,一部労働組合の方針によって取組みに参加しない労働者は存在するものの,同取組みにおける発表準備のために通常業務の勤務時間をあてることが認められ,同取組みにおいて扱うテーマも,甲における通常業務に関するものであることからすると,グループ改善活動は事業者の指揮監督の下に通常業務の一環として行われていた実態が認められ,問題発見や成果をあげるための活動,発表準備作業及び発表行為の全般につき業務遂行性が認められる。 したがって,原告が従事していた尼崎工場及び全社発表会での発表 れていた実態が認められ,問題発見や成果をあげるための活動,発表準備作業及び発表行為の全般につき業務遂行性が認められる。 したがって,原告が従事していた尼崎工場及び全社発表会での発表準備作業及び発表行為は,いずれも原告が業務として行っていたものと認められる。 (2) 専門職発表ア前記認定事実によれば,甲における専門職登録員研さん制度は,登録員の通常業務に関する問題をテーマとし,数回のレポート提出と上司による指導を通じて,登録した従業員の職務能力の向上を図り,その成果を発表によって社内的に共有し,個々の従業員の向上意識を啓発する役割を有することも期待されていること,登録員を指導する上司にとっては業務であることが認められる。 もっとも,前記認定事実によれば,登録員はレポートや最終報告の内容を審査されることで研修の成果を従業員個人の立場として評価され,社内におけるより重要な職務を担うに足る人材であるかどうかを問われるのであるから,いわゆる昇進試験と同様の側面を有するものであることは否定できない。 しかしながら,同登録員研さん制度は,業務に直接関連しない内容を求められたり,評価されたりするわけではなく,登録員が通常業務に関する問題をテーマとする研さんに励み,その成果を発表することによって,通常業務の効率性向上を実現し,社内啓発にも資することが制度上も当然に予定され,期待されているものであるとみることができるから,同研さん制度は,純然たる昇進試験とは性質を異にし,甲内部での人材育成制度として業務に密接に関連したものと考えるのが相当である。また,登録員研さんの登録は任意ではあるものの,社内の資格・等級において,一般上級社員5級以上の者であるなど登録条件が存在し,現場の管理職の判断によって,その に関連したものと考えるのが相当である。また,登録員研さんの登録は任意ではあるものの,社内の資格・等級において,一般上級社員5級以上の者であるなど登録条件が存在し,現場の管理職の判断によって,その年度の登録者が事実上決定され,辞退する者が事実上存在しないことなどの事情は,同研さん制度が年間を通じた研修により人材育成を図る制度として確立していることを如実に示すものと解される。 また,最終的な発表内容の決定権が登録員の個人にあるとされていながらも,最終発表の内容及び方法は,年間を通じた研修の成果として,一定の水準以上のものであるべきことが暗黙のうちに求められ,その水準に達するよう上司の指導助言がなされるのであり,本件でE部長が,水無瀬研究所での指導会を企画し,それに向けての準備を原告に促し,合計13回の指導会を主催したことや,D工場長が原告の発表を事前に検討し,内容が分かりにくいから発表テーマを2つから1つにするようにと助言したことは,その趣旨に出たものであると解される。 イこれに対し,被告は,同制度が,甲内の技術職の従業員が中間管理職的な地位に就く資格を得るために行われている年間を通じた研修,評価の仕組みであり,甲内における昇格試験の1つであると主張する。しかしながら,通常業務からの離脱が当然のように黙認され,準備に伴う指導会のために,通常業務を離れた出張までが承認されていること等前記認定の事実に照らすと,同研さん制度における発表が,単なる昇進試験であったと認めることはできない。 なお,前記認定事実によれば,E部長が,専門職発表については原告が準備した内容のままでもいいと原告に伝えていたことは認められる。しかし,前記発言は,E部長が本件訴訟において証言するように,登録員研さん制度での原告の発表 れば,E部長が,専門職発表については原告が準備した内容のままでもいいと原告に伝えていたことは認められる。しかし,前記発言は,E部長が本件訴訟において証言するように,登録員研さん制度での原告の発表内容は既に成果があがっているものであり,既にアピールする部分があることから,全社発表の準備作業に重点を置くようにとの趣旨でなされたたものと認められるから,これをもって,原告の発表内容について,一定の水準が使用者によって要求されていたことを否定する理由とすることはできない。 ウ以上によると,専門職登録員研さん制度における最終発表の準備作業は,いずれも原告が業務として行っていたものと認められる。 (3) 自宅作業ア前記認定事実によれば,平成11年12月中旬以降,原告は,全社発表及び専門職発表の各準備作業を並行して進めることを余儀なくされ,特に全社発表の準備に関しては,いかに分かりやすい発表にするかが指導のテーマとされ,それに沿って,アニメーションや図表の作成,改変についての具体的な指示,指導が繰り返しなされ,E部長から次回の指導期日を告げられては,次回までにレベルアップするようにと指示され,自宅での準備作業を当然の前提としたパワーポイントのデータの改善や発表における説明の工夫が求められていたこと,尼崎工場では三六協定が厳格に守られており,原告は,工場内で遅くまで準備作業をすることができず,自宅のパソコンで修正作業を行わざるを得なかったこと,E部長から指示された事項について自宅で改善作業が行われ,また,分かりやすい発表にするための練習行為が自宅においてなされていることなどが明らかであるところ,全社発表及び専門職発表の準備については,その作業の膨大さ及びそれに見合う勤務時間が労働時間内に確保されていなかったことをも考慮すると, 習行為が自宅においてなされていることなどが明らかであるところ,全社発表及び専門職発表の準備については,その作業の膨大さ及びそれに見合う勤務時間が労働時間内に確保されていなかったことをも考慮すると,自宅作業によって補完することにつき,事業主による黙示の業務命令があったものと認められる。他方,尼崎工場の発表準備については,直前のころ,午前3時ころまで原告が自宅で作業をしていたことが認められるものの,上司からの明確な指示は何もなされておらず,この期間の自宅での作業は業務とは解しがたい。 以上により,平成11年12月から本件発症までに行われた全社発表や専門職発表の準備のために自宅で行われた作業には業務遂行性が認められる。 イこれに対し,被告は,上司によるスケジュール管理がなされていなかったと主張するが,原告は,平成12年1月19日の全社発表会までに,D工場長,E部長をはじめ尼崎工場の上司,同僚らを失望させることのない内容と質を実現しなければならないという究極的な課題を負わされており,それを達成するまでは,E部長との協議で定まる修正作業を繰り返さなければならなかったものであり,このような課題の設定が原告に対し自宅での作業を含む時間外労働を実質的に余儀なくするものであったことは,原告に対する指導の日程や要求された修正内容に照らしても明らかであるから,被告の主張に理由はない。また,被告は,専門職発表の準備作業について業務遂行性を争うものであり,そのための自宅作業についても,業務遂行性を当然に争うものであるが,全社発表と並行しての指導に対応する準備のために,原告が時間外労働への従事を余儀なくされたことは,全社発表の準備作業と同様であるから,専門職発表の準備のための自宅作業についても,業務遂行性が認められることは既に説示 の指導に対応する準備のために,原告が時間外労働への従事を余儀なくされたことは,全社発表の準備作業と同様であるから,専門職発表の準備のための自宅作業についても,業務遂行性が認められることは既に説示のとおりである。 更に,被告は,画面構成といったパソコン表現の細部については基本的に指導がなかったと主張する。しかし,E部長がそれらの作業についての直接的な指示をしなかったことは,E部長がパワーポイントなどに習熟しておらず,具体的な指示を出せなかったことに由来するとも考えられるし,少なくとも,E部長は,他の指導者らによる指摘を踏まえ,改善点についての抽象的な指示をしていたことは明らかであり,かつ,このような抽象的な指摘であっても,原告がこれに対応せざるを得なかったことは明らかであるから,被告の主張は失当である。 4 争点2(作業及び業務の過重性)(1) 通常業務前記認定事実によれば,原告に対しては,平成11年12月以降,通常業務から離脱しても問題がない人的手当てがE部長によって取られ,原告は,2つの発表の発表準備作業に主として従事することができるようになっていたことが認められる。 もっとも,原告の所属部署では,生産ラインにおける画像検査における問題が発生したとき等への対処については,技術的,能力的に見て,原告以外に対応できる者が他におらず,尼崎工場に出勤している原告がその作業に従事することがあったが,その回数自体は多くなく,トラブルへの対処も比較的短時間に処理できるものであった。 また,原告は,原告にしか対応できない類の業務としてコンピュータのいわゆる2000年問題への対策や新商品導入に向けての画像検査ソフトの開発などの業務を行っていたが,それに要したのは数日であり, また,原告は,原告にしか対応できない類の業務としてコンピュータのいわゆる2000年問題への対策や新商品導入に向けての画像検査ソフトの開発などの業務を行っていたが,それに要したのは数日であり,いずれも半日から数時間以内に終了するものであった。 以上からすると,通常業務に伴う心身的負荷が大きいものであったとは認められない。 (2) グループ改善活動ア全社発表前記認定事実に照らすと,全社発表会は,甲の社長以下,グループ傘下の社長等が一同に出席し,各事業所の代表者が発表内容を競う催しであり,各事業所の評価にも密接に関わるものとして受け止められることは明らかであるから,所属工場の工場長も出席している中で,事業所を代表して1人で発表行為を行う精神的負荷は多大なものであり,原告がそのような発表作業に慣れていたと思われる事情もなく,むしろ僅かのミスも許されないとの思いを抱き,それが強い心理的圧力となっていたであろうことをも考慮すると,原告の緊張は日常まれにしか経験することのない重大なものであったことは容易に推認される。 イ全社発表準備作業(自宅作業を含む。)前記認定事実によれば,原告は,平成11年12月中旬以降,パワーポイントを使用した発表のための準備作業を深夜まで続けており,同作業の特性として,外見上は些細な修正であっても,データ上は莫大なプログラムの実行を必要とし,その都度,他のデータへ生じる影響についても対処する必要があることなどからすれば,原告は予期せぬ修正指示に対処する必要から,複雑な修正作業を自宅で行うことを余儀なくされていたと推認されるので,午前3時ころまでパソコン作業を続けていたとの元妻の供述も信用できる。したがって,パソコン作業を自宅で行 正指示に対処する必要から,複雑な修正作業を自宅で行うことを余儀なくされていたと推認されるので,午前3時ころまでパソコン作業を続けていたとの元妻の供述も信用できる。したがって,パソコン作業を自宅で行っていたために,睡眠時間が3時間程度になった日が,平成11年12月中旬から本件発症の前日にかけて相当日数あったことが認められる。 そして,原告は,そのような自宅作業を,翌日や翌々日の発表指導を受ける準備のために指示されて行っていたこと,専門職発表のための指導が平成12年1月17日を最後に発症当日まで行われていないこと,全社発表の当日が同月21日で,同月18日から3日連続で工場長を含む指導会が行われていることを考え合わせると,遅くとも同月17日ころから,発症前日までの間は,全社発表のために自宅で指示された修正作業を行い,睡眠時間が3時間程度しか確保できない日が継続していたものと認められ,短時間の睡眠によっては疲労は回復されず,疲労は蓄積されていたものと認められる。その結果,前記認定のとおり,D工場長は,精神的負荷を緩和するための発言を原告に対し行ったが,E部長からの指示等は継続して行われ,実質的に原告の精神的負荷が緩和されることはなかった。 これに対し,被告は,自宅での作業は,事業者の直接の監督はないから,業務の過重性は相対的に乏しいと主張するところ,確かに,原告は,自宅では作業中に居眠りをしたり,食事を摂るなどで,家族とともに過ごす時間があり,会社の作業と異なる側面は認められる。しかし,翌日等の指導のために必要な準備作業を完了しなければならないとの負荷は自宅であっても勤務先であっても同様であるし,自宅での居眠りについても原告の疲労を回復させるに十分なものでなかったことは明らかであるから,被告の主張に理由は 備作業を完了しなければならないとの負荷は自宅であっても勤務先であっても同様であるし,自宅での居眠りについても原告の疲労を回復させるに十分なものでなかったことは明らかであるから,被告の主張に理由はない。 また,被告は,午前3時まで原告が準備作業をしていたことの立証はないとするが,原告がプリントアウトしたパワーポイントの原稿を用いて推敲を重ねていたことは,証拠(甲24ないし33)からも明らかである。確かに,パソコンの更新時間のみで作業時間を特定することは困難であるが,元妻の供述内容は時刻などの点が大雑把ではあるものの,具体的で信用できるものであることに照らすと,概ね午前3時まで作業をしていたと認めて差し支えなく,被告の主張は失当である。 ウその他前記認定事実に照らすと,原告は,尼崎工場の発表の直前においても,午前3時ころまで自宅で作業を続けており,この期間においても,疲労は蓄積されていたものと認められるが,上司からの指示はなく,また,全社発表の準備と異なり,尼崎工場の評価にかかわるような性質のものでもなく,精神的負荷は重大ではなかったと認められる。なお,尼崎工場の発表準備については,前述のとおり,業務遂行性は認められない。 また,その他のグループ改善作業について,問題を発見し,改善,工夫によって成果を出すという過程においては,原告らのグループは既に成果をあげていたことから,それによる荷重な負荷は認められない。 (3) 専門職登録員研さん前記認定事実によれば,専門職登録員研さんは,甲内で昇格試験としての性質を有しているものであり,不合格となる者は1割から2割程度であること,不合格であれば再度1年を通じた研さん活動を続けなければならないこと,その よれば,専門職登録員研さんは,甲内で昇格試験としての性質を有しているものであり,不合格となる者は1割から2割程度であること,不合格であれば再度1年を通じた研さん活動を続けなければならないこと,そのため,原告も,1年で確実に合格して通常業務に専念することが望ましいと原告が考えていたこと等が認められる。 そして,原告は,専門職発表の準備と並行して全社発表の準備をすることとなり,後者の準備作業に相当の時間を取られてしまい,また,全社発表を指導していたE部長からも,専門職発表についてはそのまま出してもいいと言われていたこともあって,平成11年の年末又は翌年の年始ころにおいても,未だ発表に耐え得る段階に達していなかったこと,年末にD工場長の助言によって方針を大きく変更し,平成12年1月4日から連日にわたって指導が行われ,それなりに助言の成果を反映させる作業を行ったと推認されることから,同月4日ころから同月10日ころまでの間は,午前3時ころまで自宅で発表準備作業を続けていたと認められ,この間の心身的負荷は,相当なものであったと認められる。 5 争点3(業務起因性)(1) そこで,業務起因性につき検討するに,前記認定説示に照らすと以下の事実が認められる。 ア原告は,発症前1週間程度の期間に,睡眠時間3時間程度の生活を続けており,全社発表の期日が近づくことの緊張とともに蓄積される肉体的疲労からその心身的負荷は重大であった。 イ原告は,発症前1か月間を通じても,全社発表の準備に加え,同じく期日の差し迫った専門職発表の準備もあって,相当の心身的負荷を受けていた。 ウ原告は,元妻と結婚した後,1年余りであり,家庭内に問題はなく,健康状態も良好で,脳血管等の異常が指摘されたことはなかった。 表の準備もあって,相当の心身的負荷を受けていた。 ウ原告は,元妻と結婚した後,1年余りであり,家庭内に問題はなく,健康状態も良好で,脳血管等の異常が指摘されたことはなかった。 エ原告の本件疾病の発症につき,医学的な因果関係は十分に解明されていないものの,睡眠時間が5時間を下回る作業に従事した場合には,疫学的調査結果から,高血圧症などの脳・心臓疾患等に対する増悪の危険が指摘されている。 オ原告は,全社発表会における発表の最中に本件疾病を発症し,その程度は発症後しばらくのうちに心肺停止に至ったと考えられるほどの重篤なものであった。 カ尼崎工場における原告の作業環境は,温度環境,騒音環境とも特段問題はなく,原告は水無瀬研究所への出張などを行っているものの,前記自宅作業以外の不規則勤務はない。 (2) 以上によれば,原告の過重な業務による心身的負荷は,社会通念上,くも膜下出血発症に至る自然的経過を超えて増悪させる相当程度の危険性を有するものであったと認められる一方,他に有力な要因も認められないから,前記の判断基準に照らし,原告の本件疾病の発症と甲における原告の業務との間の相当因果関係を肯定することができ,本件疾病は「業務に起因することの明らかな疾病」に該当するものと認められる。 (3) 医証について前記認定事実によれば,兵庫労働基準局地方労災医員Jは,原告の発症について,結論として,業務と本件発症との相当因果関係は認めにくいとする意見書を提出しているが,同医師は,原告について,昇進試験を控えていた他,社内の発表会において発表することになっており,精神的な緊張があったと考えられること,高血圧症も認められず,本件疾病の原因は発表時の一時的な血圧上昇が原因であること ついて,昇進試験を控えていた他,社内の発表会において発表することになっており,精神的な緊張があったと考えられること,高血圧症も認められず,本件疾病の原因は発表時の一時的な血圧上昇が原因であること等を述べながら,出勤形態と就労時間の調査からは業務による過重負荷は証明されなかったと報告されていることを主な理由として相当因果関係の存在を否定しており,出勤形態と就労時間についての前提を異にする当裁判所の判断を左右するものではない。 6 結論以上によれば,本件疾病が原告の業務に起因するものと認めなかった被告の判断は誤りであるから,本件各処分は違法であり,原告の請求は理由があるのでこれを認容し,訴訟費用の負担につき行政事件訴訟法7条,民事訴訟法61条を適用して,主文のとおり判決する。 神戸地方裁判所第6民事部 裁判長裁判官田中澄夫 裁判官大藪和男裁判官三宅知三郎
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