- 1 -平成21年5月26日判決言渡同日原本領収裁判所書記官平成21年(行ケ)第10005号審決取消請求事件口頭弁論終結日平成21年4月16日判決原告末廣精工株式会社同訴訟代理人弁理士角田嘉宏古川安航三上真毅足立ゆかり被告特許庁長官同指定代理人安達輝幸田村正明小林由美子森山啓主文原告の請求を棄却する。 訴訟費用は原告の負担とする。 事実及び理由 第1請求特許庁が不服2008-19709号事件について平成20年11月27日にした審決を取り消す。 第2事案の概要本件は,原告が,下記1のとおりの商標登録出願に対する拒絶査定不服審判の請求について特許庁が同請求は成り立たないとした別紙審決書写しの本件審決そ()(の理由の要旨は下記2のとおり)には下記3の取消事由があると主張して,その取消しを求める事案である。なお,以下において「知財高裁20年判決」というの,- 2 -は,本件審決で引用されている知財高裁平成20年(行ケ)第10142号同年9月17日判決である。 特許庁における手続の経緯(1)原告は,平成19年6月21日「末廣精工株式会社」の文字を横書きし,,指定商品を第7類「チェーンソー並びにその部品及び附属品,その他の製材用・木工用又は合板用の機械器具,ヘッジトリマー,ヘッジトリマー用刃その他のヘッジトリマーの部品及び附属品芝刈機並びにその部品及び附属品耕うん機械器具手,,(持ち工具に当たるものを除く,栽培機械器具,収穫機械器具」とする商標登録。)出願(商願2007-63965号)をしたが(甲59,拒絶査定を受けたので)(甲63,平成20年8月4日付けで不服の審判請求をした(甲64。 ))(2)これに対し, 器具」とする商標登録。)出願(商願2007-63965号)をしたが(甲59,拒絶査定を受けたので)(甲63,平成20年8月4日付けで不服の審判請求をした(甲64。 ))(2)これに対し,特許庁は,原告の請求を不服2008-19709号事件として審理し,平成20年11月27日に「本件審判の請求は,成り立たない」と。 する本件審決をし,同年12月12日,その謄本は原告に送達された。 本件審決の理由の要旨本件審決の理由は,要するに,本願商標は,その表示態様からして,法人の名称を表示したものであるところ,本願商標登録出願時にも存在し,実在するA所在の「末廣精工株式会社」の名称と同一の名称からなる商標であって,かつ,同社(以下,本件審決に倣って「引用会社」という)の承諾を得ているものとは認められ。 ないから,商標法(以下「法」という)4条1項8号に規定する「他人の名称」。 を含む商標に当たるので,登録を受けることができない,というものである。 取消事由(1)取消事由1(法4条1項8号に係る法令解釈の誤り)(2)取消事由2(知財高裁20年判決の誤解及び特許庁における過去の判断との相違)(3)取消事由3(知財高裁20年判決の射程が本件事案に及ばないこと)第3当事者の主張- 3 - 取消事由1(法4条1項8号に係る法令解釈の誤り)について〔原告の主張〕(1)立法趣旨に基づく法令の解釈本件審決は「法4条1項8号の)立法趣旨が,氏名,名称等を,承諾なく商,(標に使われることがないという人格的利益を保護することにあるとしても,…同号の規定上,他人の氏名,名称等を含む商標が,当該他人の人格的利益を侵害するおそれのある具体的な事情(客観的事情)が存在することは,同号適用の要件とされているものではない(2頁37行~3頁2 …同号の規定上,他人の氏名,名称等を含む商標が,当該他人の人格的利益を侵害するおそれのある具体的な事情(客観的事情)が存在することは,同号適用の要件とされているものではない(2頁37行~3頁2行)とする。 。」しかしながら,条文上具体的に要件が明示されておらず,また,抽象的な文言で法令が規定されている場合であっても,その立法趣旨に立ち返って法令を解釈することは,無体財産である特許や商標等を対象とする知的財産権に関する法律の分野においても,最高裁の判決によって支持されている。単に条文上,要件とされていないことをもって,同号の適用を判断すべきであるとした本件審決の判断は,同号にいう「他人の名称を含む」に係る解釈を誤ったものであるし「他人の名称を含,む」の解釈に関して,立法趣旨に立ち返って判断すべきことを支持する学説も多くあるのであって(甲1,3~5,このように解釈することが最高裁の判断にも適)したものといえる。下級審の裁判例でも「氏名,名称等を承諾なく商標に使われ,ることがないという人格的利益」の内容につき「人格権侵害は,法人の場合につ,いていえば,当該商標から『他人』である法人が自然に想起され,そのことによって当該法人が社会的,経済的に何らかの有形,無形の不利益を蒙る可能性があるという点にその被侵害利益の実質が存すると考えられる」とする東京高裁平成14年(行ケ)第150号同年9月24日判決(甲58)もみられるところであるが,特に法人の場合には,民法34条の規定により,法令の規定に従い,定款その他の基本約款で定められた目的の範囲内において,権利を有し,義務を負い,その法人に形成される人格の範囲にも制限が加わる点において,本来的に自然人との差異が認められることから「他人の氏名」と「他人の名称」とでは,その解釈及び適用範,- いて,権利を有し,義務を負い,その法人に形成される人格の範囲にも制限が加わる点において,本来的に自然人との差異が認められることから「他人の氏名」と「他人の名称」とでは,その解釈及び適用範,- 4 -囲が異なるべきこと,また,他人の「略称」であるか「名称」であるか問わず,同号の趣旨が「人格的利益の保護」であることからすると「他人の名称」を含む,,商標についても「略称」の場合と同様に,当該商標から「他人」である法人が想,起され,そのことによって当該法人が社会的,経済的に何らかの有形,無形の不利益を被る可能性があるという点に被侵害利益の実質があることも,同号の適否に際して,考慮されるべきものである。 以上,要するに,本件における「他人の名称を含む」に関する法令の解釈として,,「,,は本件審決のような文言解釈ではなく同号の立証趣旨である氏名名称等を承諾なく商標に使われることがないという人格的利益を保護することにある」に即した条理解釈によって判断されるべきものなのである。 (2)本件事案において考慮されるべき事情以上のような条理解釈によれば,本件においては,以下のとおり,引用会社と原告の事業内容が明らかに異なる上,取引の実情においても,本願商標から引用会社が想起される具体的な事情も存在しないことが考慮さるべきであって,本願商標から引用会社が想起されることはなく,引用会社が社会的,経済的に何らかの有形,無形の不利益を被る可能性も全くないことから,法4条1項8号の立証趣旨に基づき,本願商標は同号に該当しないものと判断されるべきである。 ア原告の事業とその取扱商品及び取引先原告は,刃物・金物の街として全国的に有名なBにおいて,大正12年5月1日に「津村末廣鋸製作所」の名称にて創業し,昭和42年5月30日に組織変更して「 ある。 ア原告の事業とその取扱商品及び取引先原告は,刃物・金物の街として全国的に有名なBにおいて,大正12年5月1日に「津村末廣鋸製作所」の名称にて創業し,昭和42年5月30日に組織変更して「末広精工株式会社」を設立(甲36)した後,設備の増強を図りながら,事業拡大に取り組み,平成2年9月5日,名称中の「末広」の文字を創業時に用いていた「」,「」(),末廣に改め現在の名称である末廣精工株式会社へと変更して甲37現在に至っている。 原告の製造する主な商品として,ガイドバー(ラミネートバー,ソリッドハードノーズバー,ソリッドスプロケットノーズバー,チェーンソーアート用カービング- 5 -バー(甲32,生垣剪定用バリカン刃(ヘッジトリマー(甲32,チェーン))))(ソーチェーン,レスキュー用チェーン(甲34)があるが,これら刃物製品の)性能・品質が高く評価され,長年にわたり広く業界内において認知されているところであって,原告の売上高は,平成20年が6億2800万円,平成19年が5億8800万円であり,過去6年間,安定した売上高を維持している。 本願商標に係る「末廣精工株式会社」は,以上のとおり,昭和42年5月30日に法人として設立し,平成2年9月5日に「末広精工株式会社」から改称した原告の現在の名称に該当するものであり,創業以来約85年間,播州「三木金物」の伝統と技術を継承する原告の業としての継続使用により,刃物・金物の本場兵庫県三木市に限らず,機械用刃物をはじめ本願商標の指定商品を取り扱う業界において,原告を指称するものとして既に認知されているところである。 イ引用会社の事業とその取扱商品及び取引先これに対し,引用会社は,昭和25年2月創業,昭和54年3月設立の株式会社であって,自動車用冷間圧造ナット 称するものとして既に認知されているところである。 イ引用会社の事業とその取扱商品及び取引先これに対し,引用会社は,昭和25年2月創業,昭和54年3月設立の株式会社であって,自動車用冷間圧造ナット,精密圧造パーツ,冷間鍛造ボルト,切削精密加工品,精密プレス加工品,自動車用・建築用ファスナーの製造・販売をその事業内容としている(甲43。 )同社の製品情報である「六角ナット,フランジナット,丸ナット,テンロックナ,,,,,,ットカラー・ローラー特殊ナット特殊パーツ六角ボルトウエルトボルトローレットボルト,特殊ボルト,ピン・リベット,切削ナット,切削ボルト,切削精密加工品,複合加工品」や,引用会社が日本ねじ工業協会及び関西ねじ協同組合に加入していることを考慮すると,引用会社の業務は「汎用的な)金具の製造,(業及びこれらの加工業」である。 また,引用会社の履歴事項全部証明書(甲44)には,引用会社が行っている業務が「自動車部品の製造並びに販売」であることが確認されることから,引用会社製品の主な納入先・取引業者は,自動車製造業者である。 ウ原告と引用会社の取扱商品及び事業の対比- 6 -原告の業務に係る本願商標の指定商品と,引用会社の業務とは,それぞれの取扱商品が全く非類似の関係にある(因みに,本願指定商品は,ニース国際分類第7類,,,,に属し類似群コード:09A0909A4109G54が付されるのに対し引用会社の取扱商品は,第6類「金属製金具(類似群コード:13C01)又は」第12類「自動車の部品(類似群コード:12A05)に属するものであり,特」許庁の「類似商品・役務審査基準(甲54)によれば,類似群コードが異なる商」品は類似商品と推定されることはないため,両商品は明らかに非類似といえる)。 だ :12A05)に属するものであり,特」許庁の「類似商品・役務審査基準(甲54)によれば,類似群コードが異なる商」品は類似商品と推定されることはないため,両商品は明らかに非類似といえる)。 だけでなく,流通経路や業界,需要者・取引者等,取引の形態を全く異にしているのであって,このように,引用会社と原告の事業内容が明らかに異なり,原告は業界内において一定の認知度を有しており,さらには,取引の実情において,本願商標から引用会社が想起される具体的な事情も何ら存在しないことからすれば,原告による本願商標の登録及びその指定商品についての使用は,引用会社の人格的利益を侵害するおそれを全く有しないというべきである。 〔被告の主張〕(1)法4条1項8号の要件及び趣旨等本号は「他人の肖像又は他人の氏名若しくは名称若しくは著名な雅号,芸名若,しくは筆名若しくはこれらの著名な略称」を含む商標については,その他人の承諾を得ているものを除き,商標登録を受けることができないことを規定しており,それ以上に何らの要件も規定していないところ,同号の趣旨については「商標法4,条1項は,商標登録を受けることができない商標を各号で列記しているが,需要者の間に広く認識されている商標との関係で商品又は役務の出所の混同の防止を図ろうとする同項10号,15号等の規定とは別に,8号の規定が定められていることからみると,8号が,他人の肖像又は他人の氏名,名称,著名な略称等を含む商標は,その他人の承諾を得ているものを除き,商標登録を受けることができないと規定した趣旨は,人(法人等の団体を含む。以下同じ)の肖像,氏名,名称等に対。 する人格的利益を保護することにあると解される。すなわち,人は,自らの承諾な- 7 -しにその氏名,名称等を商標に使われることがない利益を保護されてい を含む。以下同じ)の肖像,氏名,名称等に対。 する人格的利益を保護することにあると解される。すなわち,人は,自らの承諾な- 7 -しにその氏名,名称等を商標に使われることがない利益を保護されているのである」とする最高裁平成16年(行ヒ)第343号平成17年7月22日第二小法。 ,,廷判決・裁判集民事217号595頁があるほか知的財産高等裁判所においても同旨を判示する知財高裁20年判決のほか,平成20年(行ケ)第10309号平成21年2月26日判決がある。 法4条1項8号の立法趣旨は,他人の商品又は役務との出所の混同の防止を図る,,,,,ことにあるのではなく他人の氏名名称等に対する人格的利益すなわち人は自らの承諾なしにその氏名,名称等を商標に使われることがないという利益を保護することにあるのであって,同号の規定上,他人の氏名,名称等を含む商標が,当該他人の人格的利益を侵害するおそれのある具体的な事情が存在することは,同号適用の要件とされているわけではなく,他人の名称を含む商標については,そのこと自体によって人格的利益の侵害のおそれを認め,商標登録を受けることができないのであり,出願人と他人との間で事業内容が競合するとか,いずれが著名あるいは周知であるといったことは考慮する必要がない,ということができる。 (2)本願商標と同一の名称からなる他人の存在本願商標に係る「末廣精工株式会社」と同一の名称からなる他人である引用会社が,Aに存在する。そして,引用会社は,本願の登録出願時(平成19年6月21日)においても存在していた(甲44。 )(3)小括本願商標は,他人の名称を含む商標であって,かつ,原告は,その「他人」である引用会社の承諾を得ていないから,法4条1項8号に該当することが明らかである。 取消事由2(知 44。 )(3)小括本願商標は,他人の名称を含む商標であって,かつ,原告は,その「他人」である引用会社の承諾を得ていないから,法4条1項8号に該当することが明らかである。 取消事由2(知財高裁20年判決の誤解及び特許庁における過去の判断との相違)について〔原告の主張〕(1)本件審決は,知財高裁20年判決を引用した上で,本願商標が法4条1項- 8 -8号に該当するとしているが,知財高裁20年判決は,同号該当性の判断に当たっては,同号の趣旨である人格的保護が業務上の信用という取引社会における経済的利益に係るものであることから,①「他人の氏名,名称等を含む商標については,そのこと自体によって,氏名,名称等を,承諾なく商標に使われることがないという人格的利益の侵害のおそれを認め,商標登録を受けることができない」こと,②「,,当該他人の人格的利益を侵害するおそれが全くない場合には同号の適用がなく当該商標の登録を受けることができる」ことの両方の判断を十分に考慮すべきことを示したものであり,出願人又は商標権者の主張立証によって,その他人の人格的利益を侵害するおそれがない事実を裏付けるに足りる証拠が提出され,十分立証された場合には,同号の該当性が否定されるべきことを判示している。 (2)特許庁においても,出願人の自己(会社法人)の名称(商号)に関する商標について同号の適用が争われた数多くの審決において,○引用された同一商号のア他人の会社の事業内容と出願に係る指定商品(指定役務)との関係,○出願商標をイ使用する業界内における自己の法人名称の認知度,○その商標から他人が想起されウるか否かの客観的事情という3つの事情を考慮して「人格的利益を侵害するおそ,れが全くないこと」を認定し(甲6~11,また,本願商標と同様に,会社の種 名称の認知度,○その商標から他人が想起されウるか否かの客観的事情という3つの事情を考慮して「人格的利益を侵害するおそ,れが全くないこと」を認定し(甲6~11,また,本願商標と同様に,会社の種)類を表す「株式会社」の文字に「精工」及び他の文字を一体的に結合した構成からなる商標につき,他人の人格的利益を侵害するおそれを認めるに足る事情は何ら見いだすことができないとして,商標登録を認めている(甲12~30)ほか「精,工」の文字よりも法人名称中に一般的に使用される「工業」や「産業」の文字からなる商号商標を含めると,その登録件数は,枚挙にいとまがない(甲52。 )(3)したがって,本件においても,知財高裁20年判決の判示内容を踏まえ,上記(1)①及び②の両方の判断に照らし,特に,同②の判断につき,特許庁が過去に一貫して示してきた上記(2)○ないし○までの事情を考慮して,同号の適用の有アウ無を判断すべきであって,原告による本願商標の登録及びその指定商品についての使用が,引用会社の人格的利益を侵害するおそれは全くないから,本願商標は,法- 9 -4条1項8号に該当せず,本件審決は取り消されるべきである。 〔被告の主張〕(1)知財高裁20年判決について原告の指摘する判示は,仮定的な判断を示したものにすぎないし,本件審決は,知財高裁20年判決の判断のみをもって同号を適用すべきことを判示したものでもない。 (2)さらに,特許庁においては,登録出願に係る商標が商号商標であって,かつ,同一商号の他人が存在する場合の法4条1項8号の適用においては,その他人の承諾を得ていない限り拒絶しているのであって,拒絶査定不服審判においても,同号を適用して原査定を維持する審決を行っている(乙1~7。原告が指摘する)登録商標(甲52)は,審査時に「他人の の他人の承諾を得ていない限り拒絶しているのであって,拒絶査定不服審判においても,同号を適用して原査定を維持する審決を行っている(乙1~7。原告が指摘する)登録商標(甲52)は,審査時に「他人の名称」の存在を発見することができな,かったことなどから,登録されたものと考えられるが,登録出願された商標が登録され得るものであるか否かの判断は,個々の商標ごとに個別的に検討,判断されるべきものであり,本願商標が法4条1項8号に該当するか否かの判断が原告指摘の登録例に拘束されるべき理由はない。 取消事由3(知財高裁20年判決の射程が本件事案に及ばないこと)について〔原告の主張〕(1)仮に,知財高裁20年判決が原告主張の趣旨を判示したものでなかったとしても,本件事案は,知財高裁20年判決の事案とは顕著な差異があるもので,知財高裁20年判決の射程は,本件事案には及ばない。 (2)したがって,知財高裁20年判決を根拠として本願商標が法4条1項8号に該当するとした本件審決は,失当であって,取り消されるべきである。 〔被告の主張〕本件審決は,知財高裁20年判決を参考判決として引用したものであって,知財高裁20年判決を判断の根拠としているわけではない。 また,知財高裁20年判決が示した同号の解釈は,一般的な条文解釈であって,- 10 -当該判決の事案に限定して理解されなければならない理由はない。 第4当裁判所の判断 取消事由1(法4条1項8号に係る法令解釈の誤り)について(1)本願商標は,引用会社の商号と同一の名称であること,原告が引用会社から本願商標登録の承諾を得ていないことは当事者間に争いがない。 なお,引用会社の商号(甲44)の第2字目「廣」は「廣」の異体文字と認められるから,本願商標は,引用会社の商号と同一というべきである。 (2) 願商標登録の承諾を得ていないことは当事者間に争いがない。 なお,引用会社の商号(甲44)の第2字目「廣」は「廣」の異体文字と認められるから,本願商標は,引用会社の商号と同一というべきである。 (2)原告は,法4条1項8号の立法趣旨などにかんがみると,本願商標が引用会社の名称を含むものであって,かつ,原告が同社の承諾を得ていないとしても,同社の人格的利益を侵害しない場合には,同号に違反するものではなく,本願商標の登録が認められるべきであるとるる主張するが,同号は「その括弧書以外の部,,,,分に列挙された他人の肖像又は他人の氏名名称その著名な略称等を含む商標は括弧書にいう当該他人の承諾を得ているものを除き,商標登録を受けることができないとする規定である。その趣旨は,肖像,氏名等に関する他人の人格的利益を保護することにあると解される(最高裁平成15年(行ヒ)第265号平成16。」年6月8日第三小法廷判決・裁判集民事214号373頁)上,また「法4条1,項は,商標登録を受けることができない商標を各号で列記しているが,需要者の間に広く認識されている商標との関係で商品又は役務の出所の混同の防止を図ろうとする同項10号,15号等の規定とは別に,8号の規定が定められていることからみると,8号が,他人の肖像又は他人の氏名,名称,著名な略称等を含む商標は,その他人の承諾を得ているものを除き,商標登録を受けることができないと規定した趣旨は,人(法人等の団体を含む。以下同じ)の肖像,氏名,名称等に対する。 人格的利益を保護することにあると解される。すなわち,人は,自らの承諾なしにその氏名,名称等を商標に使われることがない利益を保護されているのである。略称についても,一般に氏名,名称と同様に本人を指し示すものとして受け入れられている場合には,本人 ち,人は,自らの承諾なしにその氏名,名称等を商標に使われることがない利益を保護されているのである。略称についても,一般に氏名,名称と同様に本人を指し示すものとして受け入れられている場合には,本人の氏名,名称と同様に保護に値すると考えられる(前掲。」- 11 -最高裁平成17年7月22日第二小法廷判決)のである。 法4条1項8号は「他人の肖像又は他人の氏名若しくは名称」を含む商標につ,いては,括弧書きによる「その他人の承諾を得ているもの」を除き,商標登録を受けることができないと規定するにとどまるが,そこには,前記最高裁判例に判示されているとおりの意味があるのであって,原告の主張するように,同号の規定上,人格的利益の侵害のおそれがあることなどのその他の要件を加味して,その適否を考える余地はないというべきである。 要するに,同号は,出願人と他人との間での商品又は役務の出所の混同のおそれの有無,いずれかが周知著名であるということなどは考慮せず「他人の肖像又は,他人の氏名若しくは名称」を含む商標をもって商標登録を受けることは,そのこと自体によって,その氏名,名称等を有する他人の人格的利益の保護を害するおそれがあるものとみなし,その他人の承諾を得ている場合を除き,商標登録を受けることができないする趣旨に解されるべきものなのである。 (3)そうすると,本件においては,本願商標の登録出願時である平成19年6月21日及び拒絶査定に対する不服の審判請求に対する審決時である平成20年11月27日のいずれにおいても,本願商標と同一の商号である引用会社が存在しており,かつ,原告は,引用会社から本願商標の登録の承諾を得ていないものであることが明らかであるから,本願商標は,他人の名称を含む商標として,法4条1項8号により商標登録を受けることができないもの ており,かつ,原告は,引用会社から本願商標の登録の承諾を得ていないものであることが明らかであるから,本願商標は,他人の名称を含む商標として,法4条1項8号により商標登録を受けることができないものであるといわざるを得ない。 取消事由2(知財高裁20年判決の誤解及び特許庁における過去の判断との相違)について原告は,知財高裁20年判決につき,出願人又は商標権者によって,他人の人格的利益を侵害するおそれがない事実が十分立証された場合には,法4条1項8号の該当性が否定されるべきことを判示したものであると理解した上,本件審決が知財高裁20年判決を誤って引用しているなどと主張するが,本件審決は,その説示するところから明らかなとおり,知財高裁20年判決を参考にしたにすぎず,知財高- 12 -,,裁20年判決が存在することをもって同号を適用すべきとしたものではなくまたそもそも,原告の指摘する知財高裁20年判決の判示は,当該事案における原告の主張にかんがみ,仮定的に,当該商標の使用が他人の人格的利益を侵害するおそれが全くないとの事実を認めることもできないことを付言したものにすぎず,知財高裁20年判決との関係で本件審決を取り消すべきとする原告の主張を何ら根拠付け得るものではない。 また,原告は,本件審決が特許庁における過去の判断と相違しているとも主張するが,仮に,これまでに他人の名称を含む商標の出願登録が認められた例があったとしても,被告の主張するとおり,当該他人の名称の存在を特許庁が把握していなかったために,本来であれば拒絶されるべき出願に係る商標が登録されてしまったか,あるいは,その出願に係る商標が誤って登録されてしまったというにすぎず,本願商標が同号に該当するか否かの判断に際して,そのような登録例に拘束されるべき理由はなく,原告の主張は採 録されてしまったか,あるいは,その出願に係る商標が誤って登録されてしまったというにすぎず,本願商標が同号に該当するか否かの判断に際して,そのような登録例に拘束されるべき理由はなく,原告の主張は採用の限りでない。 取消事由3(知財高裁20年判決の射程が本件事案に及ばないこと)について本件審決は,前記説示のとおり,知財高裁20年判決を参考にしたにすぎず,知財高裁20年判決が存在することをもって同号を適用すべきとしたものではないから,取消事由3に係る原告の主張は,その前提において失当である。 結論 以上の次第であるから,原告主張の取消事由はいずれも理由がなく,原告の請求は,その主張する「本願商標による引用会社の人格的利益の侵害のおそれの有無」について判断する必要もない以上,失当として,棄却されるべきものである。 知的財産高等裁判所第4部裁判長裁判官滝澤孝臣- 13 -裁判官本多知成裁判官浅井憲
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