平成14(行ケ)508

裁判年月日・裁判所
平成15年2月19日 東京高等裁判所
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判決文本文4,838 文字)

平成14年(行ケ)第508号審決取消請求事件(平成14年12月25日口頭弁論終結)判決原告株式会社地域情報システム研究所訴訟代理人弁理士金澤邦武被告株式会社地域情報システム研究所訴訟代理人弁理士板谷康夫同松阪正弘同田口勝美 主文 原告の請求を棄却する。 訴訟費用は原告の負担とする。 事実及び理由 第1 請求特許庁が無効2001-35196号事件について平成14年8月26日にした審決を取り消す。 第2 当事者間に争いのない事実 1 特許庁における手続の経緯被告は,下記ア記載の登録商標(以下「本件商標」という。)の商標権者,原告は,本件商標の商標登録の無効審判請求人であり,その経緯は下記イのとおりである。 ア登録第4296772号商標構成 「地域情報システム研究所」の文字を横書き指定役務別表第42類「自治体等の行政に関する情報管理のための調査又は研究の代行,自治体等の情報管理のための機械化の設計又は開発」登録出願平成 9年7月 3日登録査定平成11年5月 6日設定登録同年7月23日イ平成13年5月 7日無効審判請求(無効2001-35196号)平成14年8月26日請求不成立審決同年9月 5日原告への審決謄本送達 2 審決の理由審決は,別添審決謄本写し記載のとおり,本件商標の登録出願時に,請求人 6号)平成14年8月26日請求不成立審決同年9月 5日原告への審決謄本送達 2 審決の理由審決は,別添審決謄本写し記載のとおり,本件商標の登録出願時に,請求人(原告)の名称の略称である「地域情報システム研究所」が請求人を表示するものとして著名であったと認めることはできないから,本件商標は,商標法4条1項8号にいう他人(請求人・原告)の著名な略称を含む商標に該当せず,同法46条1項の規定によりその登録を無効とすることはできないとした。 第3 原告主張の審決取消事由審決は,株式会社がその商号から「株式会社」の文字を除いた部分からなる商標の登録を受けるためには,当該部分が著名であることを要するというべきであるのに,本件商標について,この点の審理を尽くすことなく審判請求を不成立とした違法があり(取消事由1),また,原告の略称の著名性の認定を誤り(取消事由2),さらに,原告(請求人)に,被告(被請求人)提出の審判事件答弁書(第2回)に対する反論の機会を与えなかった違法がある(取消事由3)から,取り消されるべきである。 1 取消事由1(審理不尽)(1) 最高裁昭和57年11月12日第二小法廷判決・民集36巻11号2233頁は,「株式会社の商号から株式会社の文字を除いた部分は商標法4条1項8号にいう『他人の名称の略称』にあたり,右のような略称を含む商標は,右略称が当該株式会社を表示するものとして『著名』であるときに限り,商標登録を受けることができない」と判示するところ,このことは,裏を返せば,株式会社の商号から「株式会社」の文字を除いた部分からなる商標は,当該部分が著名であるときに限って,商標登録を受けることができるということである。すなわち,商法においては,他人の登記した商号であっても,同一市町村 ら「株式会社」の文字を除いた部分からなる商標は,当該部分が著名であるときに限って,商標登録を受けることができるということである。すなわち,商法においては,他人の登記した商号であっても,同一市町村外においては,これと同一の商号登記が認められており,これを排除するためには,自己の商号が著名であることが必須の要件となっている(大阪地裁昭和48年(ワ)第5607,5609,6760号昭和53年6月20日判決等)にもかかわらず,商標法においては,いったん設定登録されてしまうと,全国にわたって登録商標と同一又は類似のものを排除するという強い権利となる。また,商標法4条1項8号の規定により他人の商標を排除するためには,自己の略称の著名性が要求されることは上記のとおりであるのに,株式会社の商号から「株式会社」の文字を除いた部分をもって商標登録出願した者は,その著名性の有無にかかわらず登録を受けることができることになり,商標登録を出願する側と,他人の商標登録を排除する側とで,著名性の取扱いにおいて不平等が生ずる。この不平等を解消するためには,株式会社がその商号から「株式会社」の文字を除いた部分からなる商標の登録を受けるためには,当該部分が著名であることを要するものと解すべきである。 (2) ところが,被告の商号から「株式会社」の文字を除いた部分からなる本件商標につき,その出願手続において,当該部分の著名性を立証する証拠が提出された形跡はなく,本件の審判手続においても,審決は,この点を何ら審理することなく,審判請求を不成立としたものであるから,審理不尽の違法があるというべきである。 2 取消事由2(原告の略称の著名性の認定の誤り)審決は,原告(請求人)がその略称の著名性を立証する趣旨で審判において提出した証明書(審判・本訴とも甲12の1~5 があるというべきである。 2 取消事由2(原告の略称の著名性の認定の誤り)審決は,原告(請求人)がその略称の著名性を立証する趣旨で審判において提出した証明書(審判・本訴とも甲12の1~50)を,「証明事項をあらかじめ不動文字で記載した書面に,請求人の業務を行っていることを知った年月及び証明の日付を記入し,その書面の下部に証明者が記名押印するという形式のものであり・・・その証明内容は極めて信憑性に乏しいものといわざるを得ない」(審決謄本5頁(3)の項の第3段落)としてこれを排斥し,その著名性を認めなかったが,誤りである。他人に証明を書面で依頼する場合,あらかじめ証明してもらう事項を書面に記載して依頼することは普通の方法であり,証明者はその記載事項を確認し,相違のあるときは修正し,又は依頼者に訂正を求めることも可能である。したがって,上記の審決の理由で上記証明書の信ぴょう性を否定することは許されないというべきである。 3 取消事由3(反論の機会を与えなかった違法)本件の審判手続において,被告(被請求人)提出の審判事件答弁書(第2回)は,審決謄本とともに原告に送達された。すなわち,原告には,同答弁書に対する反論の機会は与えられなかったのであるから,その手続は違法というべきである。 第4 被告の反論審決の認定判断は正当であり,原告主張の取消事由は理由がない。 1 取消事由1(審理不尽)について商標法4条1項8号は,商標の不登録事由を規定するものであって,登録要件について原告の主張するような反対解釈は生じない。また,たとえ自己の名称を含む商標が他人に商標登録されても,自己の名称の著名な略称を普通に用いられる方法で表示する商標には当該他人の商標権の効力が及ばない(同法26条1項1号)のであるから,原告主張のような え自己の名称を含む商標が他人に商標登録されても,自己の名称の著名な略称を普通に用いられる方法で表示する商標には当該他人の商標権の効力が及ばない(同法26条1項1号)のであるから,原告主張のような著名性の取扱いにおける不平等は生じない。 2 取消事由2(原告の略称の著名性の認定の誤り)について原告提出の証明書は信ぴょう性が乏しいとした審決の判断に何ら問題はない。 3 取消事由3(反論の機会を与えなかった違法)について商標法は,審判請求人に反論の機会を付与しなければならないと規定するものではないから,本件の審判手続に原告主張の違法はない。 第5 当裁判所の判断 1 取消事由1(審理不尽)について原告は,株式会社がその商号から「株式会社」の文字を除いた部分からなる商標の登録を受けるためには,当該部分が著名であることを要するものと解すべきである旨主張し,その根拠として,① 最高裁昭和57年11月12日第二小法廷判決・民集36巻11号2233頁の判示事項からの推論,② 商法上の商号の取扱いとの均衡,③ 商標登録を出願する側と,他人の商標登録を排除する側との,著名性の取扱いにおける不平等を指摘する。 しかし,① 上記最高裁判決は,あくまでも商標法3条1項8号に規定する「他人の名称の略称」の解釈を示すものであることが明らかであり,同号の規定及びこれに関する上記最高裁判決の判示事項は,当該「他人」の立場からいえば,自己の名称を含む商標の登録を阻止するための要件に関するものであって,自己の名称を含む商標の登録を受けるための要件に関するものではない。そして,このような適用場面を全く異にする上記各要件が一致しなければならない何らの必然性も見いだせないから,原告の主張する上記解釈が,同号の規定や上記最高裁判決の判示事項から導かれ るものではない。そして,このような適用場面を全く異にする上記各要件が一致しなければならない何らの必然性も見いだせないから,原告の主張する上記解釈が,同号の規定や上記最高裁判決の判示事項から導かれるとは到底解し得ない。また,② 商標法上の商標の取扱いと,商法上の商号の取扱いとが異なること,③ 商標登録を出願する場合の登録要件と,他人の商標登録を排除する場合に必要とされる要件とで,自己の商標の著名性について取扱いが異なることは,その制度趣旨と規律する対象の違いから,むしろ当然というべきであって,原告の主張するような上記解釈を何ら基礎付けるものとはいえない。 原告の取消事由1の主張は,独自の見解に基づき審決の審理不尽をいうものであって,その前提において失当というべきである。 2 取消事由2(原告の略称の著名性の認定の誤り)について甲12の1~50の証明書には,原告の取引先計50社が,原告を「地域情報システム研究所」の略称で認識していることを証明する旨が記載されているものであるところ,これを文字どおりに採用したとしても,原告の略称を認識する取引先が50社を下らないという,大半の中小企業にもそのまま妥当するような事実が導かれるにすぎず,原告の略称の著名性を立証するには到底足りないというほかない。そして,上記証明書のほか,原告の略称の著名性を立証する趣旨の証拠としては,原告の会社案内(甲13の1)及び計9社の取引先との間の契約書(甲13の2~10)が提出されているにすぎず,この程度の証拠により,原告の略称の著名性を基礎付けることはおよそできないというべきであるから,上記証明書の信ぴょう性について論ずるまでもなく,原告の取消事由2の主張は理由がない。 3 取消事由3(反論の機会を与えなかった違法)について原告は,審判手続におい ないというべきであるから,上記証明書の信ぴょう性について論ずるまでもなく,原告の取消事由2の主張は理由がない。 3 取消事由3(反論の機会を与えなかった違法)について原告は,審判手続において被請求人(被告)が提出した審判事件答弁書(第2回)に対する反論の機会を与えられなかった違法を主張するが,商標法には,審判長が,被請求人に対して審判請求書の副本を送達し,答弁書を提出する機会を与えるべきことを定める規定(同法56条1項,特許法134条1項)はあるものの,請求人側に原告の主張する上記反論の機会を保障する明示の規定はなく,また,そのような手続的保障が条理上要求されるような実質的根拠も見いだせないから,取消事由3の主張はそれ自体失当である。 4 以上のとおり,原告主張の取消事由は理由がなく,他に審決を取り消すべき瑕疵は見当たらない。 よって,原告の請求は理由がないから棄却することとし,主文のとおり判決する。 東京高等裁判所第13民事部裁判長裁判官篠原勝美裁判官長沢幸男裁判官宮坂昌利

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