平成30(ワ)40314 商標権侵害行為差止等請求事件

裁判年月日・裁判所
令和2年1月22日 東京地方裁判所
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令和2年1月22日判決言渡同日原本領収裁判所書記官平成30年(ワ)第40314号商標権侵害行為差止等請求事件口頭弁論終結日令和元年11月6日判決 原告有限会社サクラホテル(以下「原告サクラホテル」という。) 原告有限会社さくら亭(以下「原告さくら亭」という。) 上記2名訴訟代理人弁護士川上邦久渡辺惺之上記2名補佐人弁理士村木清司川端佳代子 被告株式会社みずほ同訴訟代理人弁護士遠藤直哉村谷晃司中村智広佐々木健一 同訴訟代理人弁理士福田伸一水﨑慎同補佐人弁理士高橋克宗 主文 1 原告らの請求をいずれも棄却する。 2 訴訟費用は原告らの負担とする。 事実及び理由 第1 請求 1 原告ら被告は,別紙物件目録記載1の建 1 原告らの請求をいずれも棄却する。 2 訴訟費用は原告らの負担とする。 事実及び理由 第1 請求 1 原告ら被告は,別紙物件目録記載1の建物における宿泊施設及びその営業活動について別紙被告標章目録記載1ないし3の各標章を,別紙物件目録2記載の建物における 宿泊施設及びその営業活動について別紙被告標章目録記載1,2及び4の各標章をそれぞれ使用してはならない。 2 原告サクラホテル被告は,原告サクラホテルに対し,平成30年11月2日から別紙被告標章目録記載1ないし3の各標章の使用を停止するまでの間,1か月当たり300万円の割 合による金員を支払え。 第2 事案の概要本件は,別紙商標権目録記載1ないし3の商標権(以下,順に「原告商標権1」などといい,その登録商標を「原告商標1」などという。)を有する原告サクラホテル及び同目録記載4の商標権(以下「原告商標権4」といい,その登録商標を「原 告商標4」という。また,原告商標1ないし4を併せて「原告商標」と,原告商標権1ないし4を併せて「原告商標権」とそれぞれいう。)を有する原告さくら亭が,被告において,別紙被告標章目録記載1ないし3の各標章(以下,順に「被告標章1」などという。)を別紙物件目録記載1の建物における宿泊施設(以下「被告宿泊施設1」という。)及びその営業活動について使用する行為並びに被告標章1,2及 び別紙被告標章目録記載4の標章(以下「被告標章4」という。また,被告標章1ないし4を併せて「被告標章」という。)を別紙物件目録記載2の建物における宿泊施設(以下「被告宿泊施設2」といい,被告宿泊施設1と併せて「被告宿泊施設」という。)及びその営業活動について使用する行為について,いずれも商標法37条 いう。)を別紙物件目録記載2の建物における宿泊施設(以下「被告宿泊施設2」といい,被告宿泊施設1と併せて「被告宿泊施設」という。)及びその営業活動について使用する行為について,いずれも商標法37条1号に該当し,原告商標権を侵害するものとみなされる旨を主張して,被告に対し, 同法36条1項に基づき,被告宿泊施設1及びその営業活動について被告標章1な いし3を,被告宿泊施設2及びその営業活動について被告標章1,2及び4をそれぞれ使用することの差止めを求めるとともに,原告サクラホテルが,被告による上記の原告商標権1ないし3の各侵害行為について,それぞれ1か月当たり300万円の損害が生じていると主張して,被告に対し,選択的に民法709条による各損害賠償請求権に基づき,不法行為の日(原告商標1ないし3の登録日)である平成 30年11月2日から被告において被告標章1ないし3の使用を停止するまでの間,1か月当たり300万円の損害金の支払を求める事案である。 1 前提事実(当事者間に争いがない事実又は後掲の証拠(以下,書証番号は特記しない限り枝番を含む。)及び弁論の全趣旨により容易に認められる事実)当事者 ア原告サクラホテルは,ホテルの経営及び飲食業等を目的とする特例有限会社である。 イ原告さくら亭は,飲食店の経営等を目的とする特例有限会社である。 ウ被告は,ホテル,旅館等の宿泊施設及びレストラン,喫茶店等の飲食施設の経営等を目的とする株式会社である。 原告らによる原告商標権の保有原告サクラホテルは,原告商標権1ないし3を,原告さくら亭は,原告商標権4をそれぞれ有している。 原告サクラホテルによるホテルの営業原告サクラホテルは,現在,東京都内の池袋,日暮里,神保町及び幡ヶ谷の4か 原告商標権1ないし3を,原告さくら亭は,原告商標権4をそれぞれ有している。 原告サクラホテルによるホテルの営業原告サクラホテルは,現在,東京都内の池袋,日暮里,神保町及び幡ヶ谷の4か 所において,「サクラホテル」や「SAKURAHOTEL」の名称を用いて,訪日外国人客を主なターゲットとするホテルを営業している(以下,原告サクラホテルの営業するホテルを併せて「原告宿泊施設」という。)。 被告の行為等ア被告は,平成29年9月15日からホテルである被告宿泊施設1を,平成3 0年8月15日からホテルである被告宿泊施設2をそれぞれ営業している。被告に よる被告宿泊施設の提供は,いずれも原告商標権の指定役務である第43類の「宿泊施設の提供」に含まれる。 イ被告は,現在,被告宿泊施設1における役務の提供に関し被告標章1ないし3を,被告宿泊施設2における役務の提供に関し被告標章1,2及び4を使用している。 被告による被告標章の使用状況は次のようなものである(甲9,10)。 被告宿泊施設1について被告標章1が被告宿泊施設1を紹介する被告のウェブサイトにおいて,被告標章3が被告宿泊施設1の入口に掛けられたのれん,入口両側に掛けられた提灯,被告施設1の外周に設けられた店頭幕及び被告施設1の外壁においてそれぞれ使用され ている。 被告宿泊施設2について被告標章1が被告宿泊施設2のパンフレット及び被告宿泊施設2を紹介する被告のウェブサイトにおいて,「KASHIWA」との表示が下部に付加された態様の被告標章2が被告宿泊施設2の袖看板において,被告標章4が被告宿泊施設2の外壁, 入口に掛けられたのれん,入口ドア及び上記パンフレット中の被告宿泊施設2の入口を撮影した写真に写ったのれんにおい 告標章2が被告宿泊施設2の袖看板において,被告標章4が被告宿泊施設2の外壁, 入口に掛けられたのれん,入口ドア及び上記パンフレット中の被告宿泊施設2の入口を撮影した写真に写ったのれんにおいてそれぞれ使用されている。 2 争点原告商標と被告標章とは類似するか(争点1)ア原告商標1と被告標章とは類似するか(争点1-1) イ原告商標2と被告標章とは類似するか(争点1-2)ウ原告商標3と被告標章とは類似するか(争点1-3)エ原告商標4と被告標章とは類似するか(争点1-4)原告商標2及び3は商標登録無効審判により無効とされるべきものか(争点2) 原告サクラホテルにおける損害の発生の有無及びその額(争点3) 第3 争点に対する当事者の主張 1 争点1(原告商標と被告標章とは類似するか)について 争点1-1(原告商標1と被告標章とは類似するか)について【原告サクラホテルの主張】ア原告商標1と被告標章の対比 外観について原告商標1のうち,上下に配された「SAKURA」の文字部分と「さくら」の文字部分は,外観上容易に区分可能である上,上段に大きく記載された「SAKURA」の文字部分が目を引くことから,原告商標1は「SAKURA」の文字部分から成る外観を有する。 これに対し,被告標章においては,桜の赤い花びらの図形部分が最も目を引く部分であり,これと相まって,その直後に記載された文字部分の冒頭部分であり,かつ上記図形部分と意味としても共通する「SAKURA」の文字部分が目に入りやすくなること,「SAKURA」の文字部分のみが被告宿泊施設において提供される役務の種類や性質と何ら関係がなく,宿泊施設の提供の役務に関する限り強い自他 識別力を有 A」の文字部分が目に入りやすくなること,「SAKURA」の文字部分のみが被告宿泊施設において提供される役務の種類や性質と何ら関係がなく,宿泊施設の提供の役務に関する限り強い自他 識別力を有する出所標識であるのに対し,「SKY」の文字部分は,高層建物の宿泊施設の名称に一般に用いられており,被告宿泊施設において提供される役務の性質を示すものであり,「HOTEL」及び被告標章4の「KASHIWA」の文字部分は,それぞれ被告宿泊施設において提供される役務の種類及び所在を示すものであり,いずれも自他識別力が低いこと,特に,被告標章2では,最も目を引く上記図 形部分の真横に「SAKURA」の文字部分が配されており,被告標章3及び4では,最も目を引く上記図形部分の真下に「SAKURA」の文字部分が配され,それ以外の文字部分が改行して配されているため,「SAKURA」の文字部分が一層目を引くことになることからすれば,被告標章は,「SAKURA」の文字部分から成る外観を有する。 以上によれば,原告商標1と被告標章とは,外観において同一又は類似である。 観念について原告商標1は,日本文化の象徴としてのバラ科モモ亜科スモモ属の落葉樹及びその花との観念を生じる。 これに対し,被告標章からも,日本文化の象徴としてのバラ科モモ亜科スモモ属の落葉樹及びその花との観念を生じる。 以上によれば,原告商標1と被告標章とは,観念において同一又は類似である。 イ取引の実情被告による標章選択の動機原告サクラホテルは,平成11年から「サクラホテル」の登録商標及び「SAKURAHOTEL」の標章(以下,これらを併せて「原告基本商標等」という。) を使用してホテルの営業を開始し,平成29年9月までは,需要者である都 年から「サクラホテル」の登録商標及び「SAKURAHOTEL」の標章(以下,これらを併せて「原告基本商標等」という。) を使用してホテルの営業を開始し,平成29年9月までは,需要者である都内近郊の宿泊施設を利用しようとする外国人観光客にとって,「SAKURA」の名称を用いて宿泊施設を提供しているのは原告サクラホテルのみであった。また,原告サクラホテルは,平成11年以降,多額の広告宣伝費を投じるなどし,その結果,外国人観光客が宿泊先等を選定するに当たり最も参考にするとされるインターネットサ イトにおいて高評価で取り上げられるに至るなどしており,同月までには,原告基本商標等は上記需要者の間で高い識別力を獲得していた。 被告は,平成29年9月15日から「桜ホテル」との名称で被告宿泊施設1の営業を開始し,同年11月28日頃,原告サクラホテルから上記名称の使用が商標権侵害に当たる旨の警告を受け,同年12月22日,原告サクラホテルの担当者から 「SAKURA」の文字を含む標章を使用すると原告基本商標等と混同のおそれが残るという説明をも受けたにもかかわらず,被告宿泊施設1の名称を「桜スカイホテル」と変更したものである。このように,被告は,原告基本商標等の存在を明確に認識し,かつ,上記の警告及び説明を受けたにもかかわらず,原告基本商標等の信用になおフリーライドすることができ,かつ被告において原告サクラホテルの商 標権を侵害しないと判断したにすぎない被告標章を選択して使用しているのである。 このような事情は,当業者が,役務の出所について誤認混同を生ずるおそれがあると認識することを推知させるものであるから,商標の類否の判断に当たって取引の実情として考慮されるべきものである。 インターネットによる予約の特徴 の出所について誤認混同を生ずるおそれがあると認識することを推知させるものであるから,商標の類否の判断に当たって取引の実情として考慮されるべきものである。 インターネットによる予約の特徴 にある。 近時,インターネットの予約サイトを通じてホテルの予約がされることがほとんどであり,特に,ほぼ全ての外国人観光客がインターネットの予約サイトを通じて予約をしている。そして,インターネットの予約サイト上で,宿泊日と東京といった大まかな宿泊地を指定して検索したり,「SAKURA」又は「SAKURAH OTEL」などと指定して検索すると,検索結果として,原告宿泊施設のみならず,被告宿泊施設も表示される。需要者は,宿泊施設を直接見て決めることはできないし,刻一刻と予約が埋まっていく状況で,比較検討に時間を掛けることもできないということもあるため,価格帯や立地が一定の範囲内に収まっていれば,最後は受けた印象等から決断してしまうことになる。その際に,聞き覚え,見覚えのある宿 泊施設と類似した標章を使用する宿泊施設があれば,それは需要者の受ける印象等に強く影響する反面,需要者が標章の細部の差異に注意を払うことはまれである。 このような取引の実情に照らすと,本件における商標の類否判断において,称呼についてはそれほど重要ではなく,外観及び観念が重視されるべきである。 被告の主張について a 立地が異なることについて原告宿泊施設と被告宿泊施設1は,いずれも東京23区内に立地しており,特定の駅又は地域に宿泊する必要性がない外国人観光客にとって宿泊場所として検討対象となる範囲内であるから,被告の主張する点は原告宿泊施設と被告宿泊施設とで需要者層が異なることを根拠付けるものではない。 b 宿泊料金が異なることについて にとって宿泊場所として検討対象となる範囲内であるから,被告の主張する点は原告宿泊施設と被告宿泊施設とで需要者層が異なることを根拠付けるものではない。 b 宿泊料金が異なることについて 被告の主張を前提としても,原告宿泊施設と被告宿泊施設とで宿泊料金が全く異なるとはいえない上に,宿泊料金は変動するものであるから,原告宿泊施設と被告宿泊施設とで宿泊料金が異なるとはいえない。 c サービス内容が異なることについて被告宿泊施設も外国人観光客をターゲットにしている。また,原告宿泊施設でも ダブル,ツイン,スーペリアダブルといった部屋を用意している。したがって,原告宿泊施設と被告宿泊施設とでサービス内容が異なるとはいえない。 ウまとめ前記アのとおり,原告商標1と被告標章は,外観及び観念のいずれも同一又は類似であり,前記イの取引の実情を踏まえれば,両者は類似する。 【被告の主張】原告サクラホテルの主張は争う。 ア原告商標1と被告標章の対比外観について原告商標1は,上段に明朝体風の「SAKURA」のローマ字を配し,下段に明 朝体風の「さくら」の平仮名を配して成るものである。 他方,被告標章1及び2は,5枚の花弁風の図形部分から成り,それぞれの花弁風の図形の間隔が広く設定された図形部分とその右側又は下側に「SAKURASKYHOTEL」のローマ字を配して成るものである。被告標章3は,上記図形部分とその下側に「SAKURA」,「SKY」,「HOTEL」の各ローマ字を三 段に配して成るものである。被告標章4は,上記図形部分とその下側に「SAKURA」,「SKY」,「HOTEL」,「KASHIWA」の各ローマ字を四段に配して成るものである。 原告商標1と被告標章を対比する て成るものである。被告標章4は,上記図形部分とその下側に「SAKURA」,「SKY」,「HOTEL」,「KASHIWA」の各ローマ字を四段に配して成るものである。 原告商標1と被告標章を対比すると,原告商標1と被告標章の文字部分とでは「SKY」の有無において差異がある。 観念について 原告商標1は,バラ科サクラ属の落葉高木の総称で,日本の代表的な花である「桜」の観念のみが生じる。 他方,被告標章は特定の意味合いが生じない造語であるから,被告標章から特定の観念は生じない。 称呼について 前記原告商標1からは「サクラ」の称呼のみが生じる。 他方,前記サクラスカイホテル」の称呼のみが生じる。 原告サクラホテルの主張について原告サクラホテルは,被告標章の「SKY」及び「HOTEL」の文字部分並び に被告標章4の「KASHIWA」の文字部分につきそれぞれ自他識別力が低く,「SAKURA」の文字部分が外観及び観念を生じさせる旨主張する。 しかし,被告標章の各文字部分は,いずれも平易な語で構成され,原告サクラホテルが需要者であると主張する外国人観光客がこれらの文字部分を同列に理解するということができ,「桜」,「サクラ」又は「SAKURA」の文字は宿泊施設の提供 の役務において好んで使用されるものであることも踏まえれば,「SAKURA」の文字部分のみが取引者,需要者に対して強く支配的な印象を与えるものではない。 したがって,原告サクラホテルの上記主張は理由がない。 イ取引の実情原告宿泊施設と被告宿泊施設の需要者が異なること 利用者が宿泊施設を選択する際に主な考慮要素となる立地,宿泊料金及びサービス内容のいずれの要素においても,原告宿泊施設と被告宿泊施設では大きく異なるか 設と被告宿泊施設の需要者が異なること 利用者が宿泊施設を選択する際に主な考慮要素となる立地,宿泊料金及びサービス内容のいずれの要素においても,原告宿泊施設と被告宿泊施設では大きく異なるから,両宿泊施設の需要者層は全く異なる。 a 立地が異なること利用客が特定の観光スポットを訪れる目的で特定の駅又は地域に宿泊するのはよ くあることに照らすと,原告宿泊施設と被告宿泊施設1は全く立地が異なっている といえ,原告宿泊施設の利用者が被告宿泊施設1を利用しようとする契機がない。 また,原告宿泊施設と被告宿泊施設2は全く立地が異なっているといえ,原告宿泊施設の利用者が被告宿泊施設2を利用しようとする契機がない。 b 宿泊料金が異なること原告宿泊施設の宿泊料金は,外国人訪日客を対象として安価に設定されており, シングルタイプの個室の客室でも,1泊4000円ないし7000円であり,相部屋タイプの客室では,1泊2000円ないし4000円である。 これに対し,被告宿泊施設の宿泊料金は,日本人観光客,日本人ビジネスマン,カップル及びファミリーを対象とするもので,被告宿泊施設1において,個室タイプの客室で一泊9000円ないし15000円,被告宿泊施設2においても,個室 タイプの客室で1泊4500円ないし7500円である。 以上のとおり,原告宿泊施設と被告宿泊施設とでは,宿泊料金が全く異なる。 c サービス内容が異なること原告宿泊施設は,外国人観光客を主な需要者として想定しているのに対し,被告宿泊施設は,日本人観光客,日本人ビジネスマン,カップル及びファミリーを対象 としており,被告宿泊施設に実際に宿泊した利用客のうち,外国人が占める割合は非常にわずかである。さらに,原告宿泊施設では相部屋を用意しているが 日本人ビジネスマン,カップル及びファミリーを対象 としており,被告宿泊施設に実際に宿泊した利用客のうち,外国人が占める割合は非常にわずかである。さらに,原告宿泊施設では相部屋を用意しているが,被告宿泊施設では相部屋は存在しない。 以上のとおり,原告宿泊施設と被告宿泊施設とでは,実際の利用者層の点からも,宿泊形態の点からも,サービス内容が全く異なる。 原告サクラホテルの主張についてa 被告による標章選択の動機について原告サクラホテルの主張は,どのような根拠に基づき標章選択の動機を商標の類否の判断において考慮するべきであるのか不明である上に,原告基本商標等及び原告商標は需要者の間で周知ではないため,被告が原告商標の信用にフリーライドす る動機で被告標章を選択するということ自体あり得ない。 b インターネットによる予約の特徴についてホテルの予約方法には,インターネット上の予約サイト以外にも,電話,旅行代理店窓口での予約など複数の方法が存在する。また,利用者は,いずれの予約方法であっても,ホテル名だけを見て予約するのではなく,通常は,ホテルの立地,宿泊代金及びサービス内容を最低限確認して検討した上で予約をするものである。 したがって,原告サクラホテルの主張するように,インターネットの予約サイト上で,「SAKURA」又は「SAKURAHOTEL」などと指定して検索した際に,検索結果として,原告宿泊施設のみならず被告宿泊施設の名称である「SAKURASKYHOTEL」も表示されるとしても,利用者がそれだけで被告宿泊施設を予約することはあり得ない。 ウまとめ以上によれば,原告商標1と被告標章とは類似しない。 争点1-2(原告商標2と被告標章とは類似するか)について 者がそれだけで被告宿泊施設を予約することはあり得ない。 ウまとめ以上によれば,原告商標1と被告標章とは類似しない。 争点1-2(原告商標2と被告標章とは類似するか)について【原告サクラホテルの主張】ア原告商標2と被告標章の対比 外観について桜の花びらの図形部分が文字部分と分離して配されていることからすれば,原告商標2は,桜の花びらの図形部分から成る外観を有する。また,上下に配された「SAKURA」の文字部分と「サクラ」の文字部分は,外観上容易に区分可能である上,上段に大きく記載された「SAKURA」の文字部分が目を引くことから すれば,原告商標2は,「SAKURA」の文字部分又は桜らの花びらの図形部分及び「SAKURA」の文字部分から成る外観を有するともいうことができる。 これに対し,被告標章については,桜の赤い花びらの図形部分が最も目を引く部分であり,かつ花びらの図形部分が文字部分と分離して表示されていることからす 「SAKURA」の文字部分も目を引く部分であ るということができ,したがって,被告標章は,「SAKURA」の文字部分又は桜の花びらの図形部分及び「SAKURA」の文字部分から成る外観を有するということもできる。 そして,原告商標2の図形部分と被告標章の図形部分の外観を対比すると,両者は,桜の花びらの図形部分の形状がやや異なっているが,花びらが5つに分かれて おり,花びらの先の切れ目が鋭く,上方の1つの花びらの中心線が全体の中心線上にあるという点で共通しているから,両者の外観は,極めて類似性の高いものである。 以上によれば,原告商標2と被告標章とは,外観において同一又は類似である。 観念について 原告商標2と被告標章は,いずれ 通しているから,両者の外観は,極めて類似性の高いものである。 以上によれば,原告商標2と被告標章とは,外観において同一又は類似である。 観念について 原告商標2と被告標章は,いずれも日本文化の象徴としてのバラ科モモ亜科スモモ属の落葉樹及びその花との観念を生じる。 以上によれば,原告商標2と被告標章とは,観念において同一又は類似である。 イまとめ 以上のとおり,原告商標2と被告標章とは,外観及び観念のいずれも同一又は類は類似する。 【被告の主張】原告サクラホテルの主張は争う。 ア原告商標2と被告標章の対比 外観について原告商標2は,5枚の花弁から成り,その中心に雌しべ様と雄しべ様の図形が描かれた山桜風の図形部分とこの図形部分の右側に上段に明朝体風で「SAKURA」のローマ字が,下段に明朝体風の「サクラ」の片仮名を配し,上記「SAKURA」 及び「サクラ」の文字部分は,上記山桜風の図形の高さと等しくしたものである。 他方,被告標章は,被告の主張】ア これらの外観を対比すると,原告商標2の文字部分と被告標章の文字部分とでは「SKY」の有無において差異があるほか,被告標章の図形部分は,それぞれの花弁風の図形の間隔を広くして配されているのに対して,原告商標2の図形部分は,それぞれの花弁が重なり合い,かつ,その中心に雌しべ様と雄しべ様の図形が描か れていることから,被告標章の図形部分と原告商標2の図形部分の外観は,一見して明らかに相違している。 観念について原告商標2からは,バラ科サクラ属の落葉高木の総称で,日本の代表的な花の「桜」の観念のみが生じる。 他方,被告標章は,特定の意味合いを生じない造語であるから,被告標章からは特定の観念は 原告商標2からは,バラ科サクラ属の落葉高木の総称で,日本の代表的な花の「桜」の観念のみが生じる。 他方,被告標章は,特定の意味合いを生じない造語であるから,被告標章からは特定の観念は生じない。 称呼について前記2からは「サクラ」の称呼のみが生じる。 他方,被告標章からは,被告の主張】ア「サクラスカイホテ ル」の称呼のみが生じる。 イまとめ以上に加え,被告の主張】イの取引の実情を踏まえると,原告商標2と被告標章とは類似しない。 争点1-3(原告商標3と被告標章とは類似するか)について 【原告サクラホテルの主張】ア原告商標3と被告標章の対比外観について桜の花びらの図形部分が目を引く上,「SAKURAHOTEL&CAFE」の文字部分との大きさの違いに照らせば,原告商標3は,桜の花びらの図形部分から 成る外観を有する。原告商標3の図形部分と文字部分とを一体としてとらえたとし ても,「SAKURA」の文字部分が文字部分の冒頭に記載されていること,「HOTEL & CAFE」の文字部分が提供される役務の種類を示すもので自他識別力が低いことからすれば,原告商標3は,桜の花びらの図形部分及び「SAKURA」の文字部分から成る外観を有する。 これに対し,被告標章も,前記【原告 により,桜の花びらの図形部分又は同図形部分及び「SAKURA」の文字部分から成る外観を有する。 そして,原告商標3の図形部分と被告標章の図形部分の外観が極めて類似性の高いものであることは前記【原告サクラホテルの主張】。 以上によれば,原告商標3と被告標章とは,外観において同一又は類似である。 観念について3と被告標章は,いずれも日本文化の象徴とし のであることは前記【原告サクラホテルの主張】。 以上によれば,原告商標3と被告標章とは,外観において同一又は類似である。 観念について3と被告標章は,いずれも日本文化の象徴としてのバラ科モモ亜科スモモ属の落葉樹及びその花との観念を生じる。 以上によれば,原告商標3と被告標章とは,観念において同一又は類似である。 イまとめ以上のとおり,原告商標3と被告標章とは,外観及び観念のいずれも同一又は類は類似する。 【被告の主張】 原告サクラホテルの主張は争う。 ア原告商標3と被告標章の対比 外観について原告商標3は山桜風の図形部分とその下側にゴシック体風の「SAKURAHOTEL&CAFE」のロ ーマ字を配して成るものである。 他方,被告標章は,被告の主張】ア 観念について原告商標3は,特定の意味合いを生じない造語であることから,原告商標3からは特定の観念は生じない。 他方,被告標章も,特定の意味合いを生じない造語であるから,被告標章からは 特定の観念は生じない。 称呼について前記は「サクラホテルアンドカフェ」の称呼のみが生じる。 他方,被告標章からは,被告の主張】ア「サクラスカイホテ ル」の称呼のみが生じる。 イまとめ以上に加え,被告の主張】イの取引の実情を踏まえると,原告商標3と被告標章とは類似しない。 争点1-4(原告商標4と被告標章とは類似するか)について 【原告さくら亭の主張】ア原告商標4と被告標章の対比外観について原告商標4は,桜の花びらの図形から成る。 そして,被告標章が桜の花びらの図形部分から成る外観を有すること及び原告商 標4と被告標章 】ア原告商標4と被告標章の対比外観について原告商標4は,桜の花びらの図形から成る。 そして,被告標章が桜の花びらの図形部分から成る外観を有すること及び原告商 標4と被告標章の外観が極めて類似性の高いものであることは,前記【原告サクラホテルの主張】。 観念について原告商標4は,日本文化の象徴としてのバラ科モモ亜科スモモ属の落葉樹及びその花との観念を生じる。 被告 標章は,いずれも日本文化の象徴としてのバラ科モモ亜科スモモ属の落葉樹及びその花との観念を生じる。 以上によれば,原告商標4と被告標章とは,観念において同一又は類似である。 イまとめ以上のとおり,原告商標4と被告標章とは,外観及び観念のいずれも同一又は類 は類似する。 【被告の主張】原告さくら亭の主張は争う。 ア原告商標4と被告標章の対比 外観について原告商標4は,5枚の花弁から成り,その中心に雌しべ様と雄しべ様の図形が描かれた山桜風の図形である。 他方,被告標章は,被告の主張】ア これらを対比すると,原告商標4の図形部分は,それぞれの花弁が重なり合い, かつ,その中心に雌しべ様と雄しべ様の図形が描かれているに対して,被告標章の図形部分は,それぞれの花弁風の図形の間隔を広くして配されていることから,原告商標4と被告標章の図形部分とは,一見して明らかに相違している。 観念について原告商標4は,図形のみから成るものであることから,原告商標4からは特定の 観念は生じない。 他方,被告標章も,特定の意味合いを生じない造語であるから,被告標章からは特定の観念は生じない。 称呼について前記は特定の称呼は生じない。 他方,被告標章から は生じない。 他方,被告標章も,特定の意味合いを生じない造語であるから,被告標章からは特定の観念は生じない。 称呼について前記は特定の称呼は生じない。 他方,被告標章からは,被告の主張】ア「サクラスカイホテ ル」の称呼のみが生じる。 イまとめ以上に加え,被告の主張】イの取引の実情を踏まえると,原告商標4と被告標章とは類似しない。 2 争点2(原告商標2及び3は商標登録無効審判により無効とされるべきもの か)について【被告の主張】 原告商標2について原告サクラホテルは,平成30年1月24日,原告商標2に係る商標登録出願をしているが,原告さくら亭は,これに先立つ平成29年11月24日,原告商標4 の商標登録出願をしている。 そして,原告商標2の外観は,前記【るが,原告商標2の図形部分と文字部分とは分離できないものではないから,原告商標2の図形部分と文字部分とは分離して看取されるものである。 他方で,原告商標4の外観は,前記【のとおりのものであ る。 原告商標2の図形部分と原告商標4の外観を対比すると,いずれも先端が凹んだ5枚の花弁から成る山桜風に表した図形という点で共通しており,外観が類似する。 また,原告商標2の図形部分及び原告商標4からは,いずれも特定の称呼及び観念が生じないから,称呼及び観念においてこれらを明確に区別することができない。 以上によれば,原告商標2と原告商標4を同一又は類似の役務に使用した場合は,取引者及び需要者がその出所について混同を生ずるおそれがあるといえる。 そして,原告商標2と原告商標4の各指定役務は同一又は類似である。 そうすると,原告商標2は,商標法4条1項11号に違反して登録されたものであるから, 所について混同を生ずるおそれがあるといえる。 そして,原告商標2と原告商標4の各指定役務は同一又は類似である。 そうすると,原告商標2は,商標法4条1項11号に違反して登録されたものであるから,同法46条1項1号に基づき,商標登録無効審判により無効とされるべ きものである。 原告商標3について原告サクラホテルは,平成30年1月26日,原告商標3に係る商標登録出願をしているが,原告さくら亭は,これに先立つ平成29年11月24日,原告商標4の商標登録出願をしている。 そして,原告商標【被告の主張】アのものであ るが,原告商標3の図形部分と文字部分とは分離できないものではないから,原告商標3の図形部分と文字部分とは分離して看取されるものである。 他方で,原告商標4の外観は,前記【被告の主張】アる。 原告商標3は,商標登録無効審判によ り無効とされるべきものである。 【原告サクラホテルの主張】被告の主張は争う。 商標法4条1項11号にいう「他人」には,出願人の支配下にある者は含まれないと解するべきである。 原告商標4の出願人である原告さくら亭は,原告商標2及び3の出願人である原告サクラホテルの完全子会社であって,その支配下にある者である。 したがって,原告商標2及び3が商標法4条1項11号の規定に違反して登録されたものであるとはいえない。 3 争点3(原告サクラホテルにおける損害の発生の有無及びその額)について 【原告サクラホテルの主張】被告が被告標章1ないし3を使用する被告宿泊施設1の利益は1か月当たり300万円である。したがって,被告による原告商標権1ないし3の各侵害により原告サクラホテルが被った損害の額は,商標法38条2項により,各商標権の侵 いし3を使用する被告宿泊施設1の利益は1か月当たり300万円である。したがって,被告による原告商標権1ないし3の各侵害により原告サクラホテルが被った損害の額は,商標法38条2項により,各商標権の侵害につき,それぞれ1か月当たり300万円と推定される。 原告サクラホテルは,被告に対し,原告商標1ないし3の登録日である平成30 年11月2日から被告が被告標章1ないし3の使用を停止するまでの間の上記の各損害について選択的に請求する。 【被告の主張】原告サクラホテルの主張は争う。 被告標章1ないし3の使用により原告商標1ないし3との混同が生じるおそれは なく,原告サクラホテルには損害が発生していない。 第4 当裁判所の判断 1 商標の類否の判断基準商標の類否は,対比される商標が同一又は類似の商品又は役務に使用された場合に,その商品又は役務の出所につき誤認混同を生ずるおそれがあるか否かによって 決すべきであるが,それには,使用された商標がその外観,観念,称呼等によって取引者に与える印象,記憶,連想等を総合して全体的に考察すべきであり,かつ,その商品又は役務に係る取引の実情を明らかにし得る限り,その具体的な取引状況に基づいて判断するのが相当である(最高裁昭和39年(行ツ)第110号同43年2月27日第三小法廷判決・民集22巻2号399頁,最高裁平成6年(オ)第 1102号同9年3月11日第三小法廷判決・民集51巻3号1055頁参照)。 この点に関し,複数の構成部分を組み合わせた結合商標と解されるものについて,商標の構成部分の一部を抽出し,この部分のみを他人の商標と比較して商標そのものの類否を判断することは,原則として許されないが,商標の構成部分の一部が取引者,需要者に対して商品又は役務の出 について,商標の構成部分の一部を抽出し,この部分のみを他人の商標と比較して商標そのものの類否を判断することは,原則として許されないが,商標の構成部分の一部が取引者,需要者に対して商品又は役務の出所識別標識として強く支配的な印象を与え るものと認められる場合や,それ以外の部分から出所識別標識としての称呼,観念が生じないと認められる場合などには,その部分のみを要部として取り出し他人の商標と比較して商標そのものの類否を判断することも許されるものというべきである(最高裁昭和37年(オ)第953号同38年12月5日第一小法廷判決・民集17巻12号1621頁,最高裁平成3年(行ツ)第103号同5年9月10日第 二小法廷判決・民集47巻7号5009頁,最高裁平成19年(行ヒ)第223号 同20年9月8日第二小法廷判決・集民228号561頁参照)。 2 原告商標及び被告標章の外観,称呼及び観念についての事実認定原告商標についてア原告商標1について 原告商標1は,上段に「SAKURA」のローマ字6字を,下段に上記文字 よりもやや小さめの「さくら」の平仮名3字を二段に横書きして成る結合商標である(甲7の1,13の1)。 そして,原告商標1の上記構成からして,上段及び下段とも「サクラ」の称呼を生ずるものをローマ字,平仮名表記としたものであると自然に認識することができる。 そうすると,原告商標1全体から「サクラ」の称呼が生ずると認められる。 また,原告商標1からは,「桜」の観念が生ずると認められる。 イ原告商標2について原告商標2の図形部分においては,同一形状の5枚の花弁様の図形がそれぞれ一方の先端を近接させ,そこを中心に均等に放射状に密接して配され,上方の1 つの花弁様の図 イ原告商標2について原告商標2の図形部分においては,同一形状の5枚の花弁様の図形がそれぞれ一方の先端を近接させ,そこを中心に均等に放射状に密接して配され,上方の1 つの花弁様の図形の上下の中心線が図形全体の上下の中心線上にあり,各花弁様の図形については,赤色で,外側先端部に鋭角の切れ込みがあり,長手方向の一方の外郭が外側に膨らむ形状で弧を描き,他方の外郭が先端部分のおおむね半分は上記の一方の外郭と同様の弧を描き,中心部までの半分は内側に膨らむ形状で弧を描いており,各花弁様の図形には,中心部から先端部の切れ込み部分に向けて先端が丸 い形状の雄しべ様の白色の図形が描かれている(以下,この形状の図形部分を「原告商標図形部分」という。)。その右側には,いずれも原告商標図形部分の約半分の縦幅,約2倍の横幅で,上段にいずれもほぼ同一の大きさの「SAKURA」のローマ字6字,下段にいずれもほぼ同一の大きさの「サクラ」の片仮名3字を二段に横書きした文字部分がある。原告商標2は,原告商標図形部分及び上記文字部分の 外側を太線の枠で囲って成る結合商標である(甲7の2,13の2)。 そして,原告商標2の上記構成からして,文字部分については上段及び下段とも「サクラ」の称呼を生ずるものをローマ字,片仮名表記としたものであると自然に認識することができる。また,原告商標図形部分は,同部分自体の外観及び文字部分と共に太線の枠で囲われているという原告商標2の外観に照らすと,同文字部分を図形で表示したものと認識し得るものである。 そうすると,原告商標2全体から「サクラ」の称呼が生ずると認められる。 また,原告商標2からは,「桜」の観念が生ずると認められる。 ウ原告商標3について原告商標3は,原告商標図形部分 そうすると,原告商標2全体から「サクラ」の称呼が生ずると認められる。 また,原告商標2からは,「桜」の観念が生ずると認められる。 ウ原告商標3について原告商標3は,原告商標図形部分とその下側に原告商標図形部分の約10分の1の縦幅,同図形部分よりやや長い横幅で,「SAKURAHOTEL & C AFE」のローマ字及び記号合計16字を,「SAKURA」,「HOTEL」,「&」,「CAFE」それぞれの間に1文字分程度の間隔をあけ,「&」の部分を他の文字よりやや小さく,その他の文字はほぼ同一の大きさで横書きに配した赤色の文字部分から成る結合商標である(甲7の3,13の3)。 原告商標3のうち「HOTEL & CAFE」の文字部分は,原告商標権 3の指定役務の内容からして,提供される役務の内容を表示するにすぎないものであるから,これらの文字部分から出所識別標識としての称呼は生じないと認められる。 そして,原告商標図形部分の外観に照らすと,原告商標図形部分は,原告商標3の文字部分のうち「SAKURA」の文字部分を図形で表示したものと認識し得る ものである。 そうすると,原告商標3全体から「サクラ」の称呼が生ずると認められる。 原告商標3のうち「HOTEL &と同様の理由により,出所識別機能としての観念は生じないというべきである。そうすると,原告商標3からは,「桜」の観念が生ずると認められる。 エ原告商標4について 原告商標4は,原告商標図形部分のうちの雄しべ様の図形の先端部分の形状を丸状ではなく五角形状とした図形から成る商標である(甲7の4,13の4)。 そして,原告商標4の外観に照らすと,原告商標4からは,「桜」の観念が生じ得る。 また,原告商標4の上記外観及びこ を丸状ではなく五角形状とした図形から成る商標である(甲7の4,13の4)。 そして,原告商標4の外観に照らすと,原告商標4からは,「桜」の観念が生じ得る。 また,原告商標4の上記外観及びこれから生ずる観念に照らすと,原告商標 4からは,「サクラ」との称呼が生じ得る。 被告標章についてア被告標章の外観被告標章1について被告標章1の図形部分については,同一形状の5枚の花弁様の図形が,それぞれ 一方の先端を中心に間隔をあけて均等に放射状に配され,上方の1つの花弁様の図形の上下の中心線が図形全体の上下の中心線上にあり,各花弁様の図形については赤色で,外側先端部に鋭角の切れ込みがあり,長手方向の外郭は,いずれも,先端側から3分の2程度は外側に膨らむ形状の,残部は内側に膨らむ形状の弧を描き,長手方向に左右対称である(以下,この形状の図形部分を「被告標章図形部分」と いう。)。その下側には,被告標章図形部分の約5分の1の縦幅,約3倍の横幅で,いずれもほぼ同一の大きさの「SAKURASKYHOTEL」のローマ字14字を,「SAKURA」,「SKY」,「HOTEL」それぞれの間に1文字分程度の間隔をあけ,「SKY」の文字部分がおおむね被告標章図形部分の直下となるように横書きに配した文字部分がある。被告標章1は,被告標章図形部分及び上記文字部 分から成る結合商標である(甲9,10)。 被告標章2について被告標章2は,被告標章図形部分とその右側に被告標章図形部分の約4分の1の縦幅,約4倍の横幅で,いずれもほぼ同一の大きさの「SAKURASKYHOTEL」のローマ字14字を,「SAKURA」,「SKY」,「HOTEL」それぞ れの間に1文字分程度の間隔をあけ横書きに配した文字部分から成る もほぼ同一の大きさの「SAKURASKYHOTEL」のローマ字14字を,「SAKURA」,「SKY」,「HOTEL」それぞ れの間に1文字分程度の間隔をあけ横書きに配した文字部分から成る結合商標であ る(甲9,10)。 被告標章3について被告標章3は,被告標章図形部分とその下側にいずれもほぼ同一の大きさの「SAKURA」のローマ字6字,「SKY」のローマ字3字及び「HOTEL」のローマ字5字を,三段で縦幅を被告標章図形部分の約5分の1,横幅を「SAKURA」 の文字部分につき被告標章図形部分とおおむね同程度,その余の文字部分につき上記「SAKURA」の文字部分よりも短い横幅で横書きに配した文字部分から成る結合商標である(甲9,10)。 被告標章4について被告標章4は,被告標章3のさらに下側に,被告標章3の文字部分とほぼ同一の 文字の大きさ,「SAKURA」の文字部分とほぼ同一の横幅で「KASHIWA」のローマ字7字を横書きに配した結合商標である(甲9,10)。 イ被告標章から生ずる称呼及び観念被告標章の文字部分についてa 被告標章のうち「HOTEL」の文字部分は,被告標章の用いられる本件被 告宿泊施設において提供される役務の性質を表示するにすぎないものである。また,被告標章4のうち「KASHIWA」の文字部分は,役務を提供する場所を表示するにすぎないものである。したがって,これらの文字部分から出所識別標識としての称呼,観念は生じないと認められる。 b 被告標章1及び2の文字部分から生ずる称呼は,横書きされた「SAKUR A」の文字と「SKY」の文字の間にスペースが存するものの,ローマ字表記においては,一体として理解すべき複数の単語であったとしても,単語ごとにスペ 分から生ずる称呼は,横書きされた「SAKUR A」の文字と「SKY」の文字の間にスペースが存するものの,ローマ字表記においては,一体として理解すべき複数の単語であったとしても,単語ごとにスペース章全体が被告宿泊施設の名称を表示するものであることが認識できるような態様で使用されていることに照らすと,「サクラスカイ」の一連のものであると認められる。 被告標章3及び4の文字部分から生ずる称呼は,横書きされた「SAKURA」 の文字と「SKY」の文字が上下に配されているものの,これらは比較的まとまり体が被告宿泊施設の名称を表示するものであることが認識できるような態様で使用されていることに照らすと,「サクラスカイ」の一連のものであると認められる。 c そして,被告標章の文字部分からは,「桜と空」の観念が生じるものと認めら れる。 被告標章の被告標章図形部分について被告標章の構成や被告標章図形部分の外観に照らすと,被告標章図形部分は,被告標章の文字部分のうちの「SAKURA」の文字部分を図形で表示したものと認識し得るものであると認められる。 以上からすれば,被告標章全体から「サクラスカイ」の称呼が生じ,「桜と空」の観念が生じるものと認められる。 3 原告商標と被告標章の類否判断において比較する部分前記2において認定したところによれば,原告商標1,2及び4の全体並びに原告商標3のうち原告商標図形部分及び「SAKURA」の文字部分で成る要部 と,被告標章のうち被告標章図形部分並びに「SAKURA」及び「SKY」の文字部分で成る要部とを比較して,原告商標と被告標章の類否を判断すべきである。 原告らの主張について原告らは,被告標章においては,被告標章図形部分が最も目を引く部分であり,これ び「SKY」の文字部分で成る要部とを比較して,原告商標と被告標章の類否を判断すべきである。 原告らの主張について原告らは,被告標章においては,被告標章図形部分が最も目を引く部分であり,これと相まって,その直後に記載された文字部分の冒頭部分であり,かつ被告標章 図形部分と観念を共通にする「SAKURA」の文字部分が目に入りやすくなること,被告標章の「SKY」の文字部分も,高層建物の宿泊施設の名称に一般に用いられているものであって,被告標章の「HOTEL」及び被告標章4の「KASHIWA」の各文字部分と同様に提供される役務の性質,場所を示すものであり,自他識別力が低いこと,被告標章2では,最も目を引く上記図形部分の真横に「SA KURA」の文字部分が配されており,被告標章3及び4では,最も目を引く上記 図形部分の真下に「SAKURA」の文字部分が配され,それ以外の文字部分が改行して配されていることからして,「SAKURA」の文字部分が一層目を引くことになることなどを指摘して,被告標章の要部は,「SAKURA」の文字部分,被告標章図形部分又は「SAKURA」の文字部分及び被告標章図形部分である旨主張する。 しかしながら,証拠(甲25)によっても,比較的高層の建物の宿泊施設のみならず,建物の階数が数階程度にとどまる低層の宿泊施設においても「スカイ」の文字を含む名称が用いられていることが認められる上に,他に高層建物の宿泊施設の名称において「スカイ」ないしは「SKY」の文字が用いられることが一般的であることを裏付ける的確な証拠もないから,「SKY」の文字が,高層建物の宿泊施設 の名称に一般に用いられる,宿泊施設の建物の高さという提供される役務の性質を表示するとは直ちには認め難く,被告標章の「SKY」の る的確な証拠もないから,「SKY」の文字が,高層建物の宿泊施設 の名称に一般に用いられる,宿泊施設の建物の高さという提供される役務の性質を表示するとは直ちには認め難く,被告標章の「SKY」の文字部分から出所識別標識としての称呼,観念が生じないということはできない。 上記の点に加え,前記において判示したとおり,被告標章2ないし4の要部の「SAKURA」の文字部分と「SKY」の文字部分 とが一体のものとして認識し得るものであることのほか,「SAKURA」の文字部分と「SKY」の文字部分につき,共にほぼ同一の大きさの文字により構成され,かつ全体の大きさにもさほど差はないことにも照らすと,被告標章図形部分が目を引く部分であり,「SAKURA」の文字部分が被告標章2ないし4において被告標章図形部分の真横又は真下に配されていることをもって,「SKY」の文字部分が被 告標章2ないし4の要部に含まれないということはできない。 よって,原告らの上記主張は採用することができない。 4 争点1(原告商標と被告標章とは類似するか)について争点1-1(原告商標1と被告標章とは類似するか)についてア外観,観念及び称呼の対比 前記同イにおいて判示したところに照らすと,原告商標1 と被告標章の要部はその外観,観念及び称呼のいずれもが相違する。 イ取引の実情について被告の標章選択の動機について原告サクラホテルの主張する事情は,被告が被告標章を採用した意図を推測して論難するものにすぎず,原告商標1の指定役務における取引の具体的な状況につい て明らかにする事実であるとも,被告標章の使用により役務の出所につき誤認混同を生ずるおそれがあることを根拠付ける事実であるともいえないから,原告商標1と被告標章 おける取引の具体的な状況につい て明らかにする事実であるとも,被告標章の使用により役務の出所につき誤認混同を生ずるおそれがあることを根拠付ける事実であるともいえないから,原告商標1と被告標章の類否判断に影響を及ぼす事情であるとはいえない。 インターネットによる予約の特徴について原告サクラホテルは,インターネットの予約サイトにおける予約の特徴に照らす と,聞き覚えや見覚えのある宿泊施設と類似した商標を持つ宿泊施設があれば,それは需要者の受ける印象等に強く影響する上,需要者が商標の細部の差異に注意を払うことはまれであり,このような取引の実情に照らすと,本件における商標の類否判断において,称呼についてはそれほど重要ではなく,外観及び観念が重視されるべきである,などと主張する。 しかしながら,原告らの提出する証拠(甲19)によっても,インターネットの予約サイトの検索結果において,原告商標1や被告標章がそのまま表示されるものではないと認められ,他にインターネットの予約サイトの検索結果において,原告商標1や被告標章がそのまま表示されることを認めるに足りる証拠もないから,原告サクラホテルの主張に係る事情が,原告商標1と被告標章の類否の判断に当たっ て考慮すべき取引の実情に該当するとはいえない。 また,原告サクラホテルの主張するように,原告商標1と被告標章の類否の判断に当たり,両者の外観及び観念の対比を重視すべきであると解したとしても,これらが類似しないことは前記アにおいて判示したとおりである。 その他,本件全証拠によっても,被告標章が原告商標1と同一の宿泊施設の 提供の役務に使用された場合に,その役務の出所につき誤認混同を生ずるおそれが あることを根拠付けるような取引の実情が存在するとはうかがわ ,被告標章が原告商標1と同一の宿泊施設の 提供の役務に使用された場合に,その役務の出所につき誤認混同を生ずるおそれが あることを根拠付けるような取引の実情が存在するとはうかがわれない。 ウ結論以上によれば,原告商標1と被告標章とが類似するということはできない。 争点1-2(原告商標2と被告標章とは類似するか)についてア外観,観念及び称呼の対比 前記及びにおいて判示したところを前提に,原告商標2と被告標章の要部である被告標章図形部分並びに「SAKURA」及び「SKY」の文字部分の外観を対比すると,原告商標2の文字部分と被告標章の文字部分は相違する。 原告商標図形部分と被告標章図形部分の外観についてみると,両者は,全体として赤色の花様の図形であり,5つの花弁様の図形を有し,これらの先端に鋭角の切 れ込みがあり,上方の1つの花弁様の図形の上下の中心線が図形全体の上下の中心線上にあるという点で共通する。しかしながら,前記イのとおり,原告商標図形部分においては,5枚の花弁様の図形は,長手方向の一方の外郭が外側に膨らむ形状で弧を描き,他方の外郭が先端部分のおおむね半分は上記の一方の外郭と同様の弧を描き,中心部までの半分は内側に膨らむ形状で弧を描いく形状である上に, それぞれ一方の先端を近接させ,そこを中心に均等に放射状に密接して配されていることから,原告商標図形部分は,全体として5枚の花弁様の図形が中心部で重なり合うような一体的な印象を与える。これに対し,前記のとおり,被告標章図形部分においては,5枚の花弁様の図形は,長手方向の外郭については,いずれも,先端側から3分の2程度は外側に膨らむ形状の,残部は内側に膨らむ形 状の弧を描き,長手方向に左右対称の形状である上に,それぞれ いては,5枚の花弁様の図形は,長手方向の外郭については,いずれも,先端側から3分の2程度は外側に膨らむ形状の,残部は内側に膨らむ形 状の弧を描き,長手方向に左右対称の形状である上に,それぞれ一方の先端を中心に間隔をあけて均等に放射状に配されていることから,被告標章図形部分は,各花弁様の図形が重なり合わないような印象を与えるということができ,原告商標図形部分と被告標章図形部分とでは,個々の花弁様の図形の形状及びその配置が異なることにより異なった印象を与えるものとなっている。さらに,原告商標図形部分に は,5枚の花弁様の図形には,中心部から先端部の切れ込み部分に向けて先端が丸 い形状の雄しべ様の白色の図形が含まれるが,被告標章図形部分にはそのような図形は含まれない。そうすると,原告商標図形部分と被告標章図形部分とが需要者に与える印象はそれぞれ異なるというべきである。 以上によれば,原告商標2と被告標章の要部はその外観が相違する。 そして,前記において判示したところに照らすと,原告 商標2と被告標章の要部はその称呼及び観念のいずれも相違する。 イ結論上記ア判示の点に加え,前記に判示したところにも照らすと,原告商標2と被告標章とが類似するということはできない。 争点1-3(原告商標3と被告標章とは類似するか)について ア外観,観念及び称呼の対比前記ウ,同イ並びに前記において判示したところに照らすと,原告商標3の要部と被告標章の要部はその外観,観念及び称呼のいずれも相違する。 イ結論 上記ア判示の点に加え,前記に判示したところにも照らすと,原告商標3と被告標章とが類似するということはできない。 争点1-4(原告商標4と被告標章とは類似するか)についてア外 上記ア判示の点に加え,前記に判示したところにも照らすと,原告商標3と被告標章とが類似するということはできない。 争点1-4(原告商標4と被告標章とは類似するか)について ア 外観,観念及び称呼の対比及びにおいて判示したところに照らすと,原告商標4と被告標章の要部はその外観,観念及び称呼のいずれも相違する。 イ 結論 上記ア判示の点に加え,前記に判示したところにも照らすと,原告商標4と被告標章とが類似するということはできない。 第5 結論 以上によれば,その余の点につき判断するまでもなく,原告らの請求には理由がないから,いずれも棄却することとして,主文のとおり判決する。 東京地方裁判所民事第29部 裁判長裁判官 山田真紀 裁判官 神谷厚毅 裁判官 西山芳樹 (別紙物件目録は省略)

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