昭和22(れ)156 強盗

裁判年月日・裁判所
昭和22年12月24日 最高裁判所第二小法廷 判決 棄却 大阪高等裁判所 0
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【DRY-RUN】主    文      本件上告を棄却する。          理    由 弁護人井出甲子太郎上告趣意書は、右強盗被告事件ニ付上告趣意ヲ左ノ如ク上申ス ル  原判決ハ証拠トスル事ノ出来ナイ資料ヲ罪証

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判決文本文5,138 文字)

主文 本件上告を棄却する。 理由 弁護人井出甲子太郎上告趣意書は、右強盗被告事件ニ付上告趣意ヲ左ノ如ク上申スル原判決ハ証拠トスル事ノ出来ナイ資料ヲ罪証ニ供シタ違法ガアリ又刑事訴訟法ノ応急的措置ニ関スル法律第十二条ニ違反シタ違法ガアル一、刑事訴訟法ノ応急的措置ニ関スル法律第十二条ニ依レバ「証人其他ノ者(被告人ヲ除ク)ノ供述ヲ録取シタ書類又ハ之ニ代ルベキ書類ハ被告人ノ請求ガアル時ハ其ノ供述者又ハ作成者ヲ公判期日ニ於テ訊問スル機会ヲ与ヘナケレバ之ヲ証拠トスル事が出来ナイ」ト定メテアル。其ノ趣旨ハ被告人不知ノ間ニ作成サレタ供述ヲ録取シタ書類又ハ之ニ代ルヘキ書類ヲ採ツテ以テ直チニ有罪認定ノ証拠トスル事ガ出来ルトスレバ憲法第三十七条第二項ニ保障サレタ「被告人カ証人ヲ充分ニ訊問スル権利」ハ結局実効ガ無イ事ニナルト共ニ尚又被告人立会ノ下ニ作成サレタ供述録取書類デアツテモ其レカ公判期日外テ作成サレタモノテアル限リ被告人ノ訊問権ハ公判期日ニ於ケル公開法廷ニ於テ許サレテ初メテ充分ト謂ヒ得ル(憲法第三十四条後段第三十七条第一項第八十二条)ノテアルカラ、被告人ノ訊問権ハ尚充分ニ満タサレタモノト謂ヒ得ナイノテアル。 此ノ故ニ右第十二条第一項ハ被告人ニ対シテ供述録取書類又ハ之ニ代ルヘキ書類ニ付テ其ノ供述者又ハ作成者ヲ公判期日ニ於テ訊問スル機会ヲ与へ之ニ依ツテ憲法カ被告人ニ認メタ訊問スル権利ヲ保障シタモノデアル。 二、而シテ右同条ニ所謂証人其他ノ者ノ供述ヲ録取シタ書類ノ意義ニ付テハ当該事件係属審級ノ公判期日外ニ於ケル証人鑑定人ノ訊問調書、事件関係人ノ聴取書等ヲ指称スル事ハ明カナトコロテアルガ、供述ヲ録取シタ書類ニ代ルベキ書類所謂代替- 1 -書類ノ意義其ノ範囲カ明カテハナイ然シ新憲法カ被告人ニ対シテ「充分ニ訊問スル権 訊問調書、事件関係人ノ聴取書等ヲ指称スル事ハ明カナトコロテアルガ、供述ヲ録取シタ書類ニ代ルベキ書類所謂代替- 1 -書類ノ意義其ノ範囲カ明カテハナイ然シ新憲法カ被告人ニ対シテ「充分ニ訊問スル権利」ヲ認メタ趣旨ハ其ノ人権擁護ノ立前カラ不利益ナ証拠ニ付反証ヲ挙ケ得ル機会ヲ与へ因テ以テ其ノ防禦方法ニ遺憾ナカラシメルニ在ルコトハ疑ヒノナイトコロテアリ此ノ見地カラ右代替書類ノ意義範囲ハ少ナク共当該事件ニ付テ作成サレタ書類テアツテ有罪ノ言渡ニ付テ証拠トシテ援用シ得ル書類テアツテ前記ノ供述録取書類以外ノ一切ノ書類ヲ指称スルモノト謂ハサルヲ得ナイ。則チ盗難始末書モ亦代替書類ニ含マレテイルモノト信スル。 三、次ニ応急措置法第十二条第一項ト刑事訴訟法第三百四十条乃至第三百四十七条トノ関係ヲ見ルト右刑事訴訟法ノ規定ハ応急措置法ノ実施ニ依ツテ効力ヲ失ツタモノテハナイ事ハ論ヲ俟タナイ処テアル。則チ一面ニ於テ従来ノ証拠調ニ関スル手続規定ヲ存置シナガラ尚且ツ応急措置法第十二条ノ規定ヲ設ケタ趣旨ハ証拠調ニ付テハ単ニ各個ノ証拠ニ付キ取調ヲ終ヘタル毎ニ被告人ニ意見アリヤ否ヤヲ問フ以外ニ更ニ被告人ニ対シテ積極的ニ供述録取書類又ハ代替書類ニ付テ反対訊問ヲ為シ得ベキコトヲ告ケル事カ必要テアリ然モ此レカ記録上明カニサレテイナケレバナラナイ。 或ハ右措置法第十二条ノ規定カ「被告人ノ請求カアルトキハ」ト規定シテアツテ請求ノ無イ場合ニハ従来ノ証拠調ノ手続丈ケテ足ルト言フ見解ガアルカモ知レナイカ之レハ全ク字義ノ末節ニ拘泥シタ議論テアツテ憲法及措置法ノ精神ヲ解シナイ謬論テアル。被告人モ亦裁判確定スル迄自己ノ潔白ヲ証明スル権利ガアリ充分ナル防禦方法ヲ認メル事カ立法ノ精神テアル以上其ノ裁判手続ニ於テハ被告人モ権利ヲ行使シ得ル機会ヲ与ヘタ事ヲ明確ニ記録スル必要カアル事ハ当然テアル。 四、此ノ意 スル迄自己ノ潔白ヲ証明スル権利ガアリ充分ナル防禦方法ヲ認メル事カ立法ノ精神テアル以上其ノ裁判手続ニ於テハ被告人モ権利ヲ行使シ得ル機会ヲ与ヘタ事ヲ明確ニ記録スル必要カアル事ハ当然テアル。 四、此ノ意味カラ原判決ヲ観ルト原判決ハ被告人ノ第一審第一回公判調書中ノ供述記載、被告人ニ対スル司法警察官ノ聴取書中ノ供述記載、A作成ノ盗難被害始末書中ノ記載、原審証人Aノ証言ヲ援用シテ居ル。而シテ原審第一回公判調書中証拠ニ関スル部分ニ依レハ「裁判長ハ被告人ニ対シ各種始末書、司法警察官ノ検証調書及- 2 -各聴取書検事ノ聴取書原審公判調書ノ各要旨ヲ告ケ押収品ヲ示シテ各個ノ証拠調ヲ終ル毎ニ意見弁解ノ有無ヲ問ヒ且ツ利益ノ証拠カアレハ提出スル事カ出来ル旨及右書類中ノ証人其他ノ供述者又ハ其ノ書類ヲ作成シタ者ノ訊問ヲ請求スル事カ出来ル」旨ヲ告ケテ居ル。 然シ其ノ後ノ第二回公判期日ニ於テ公判手続ヲ更新シテ居リ尚又第三回公判期日ニ於テモ亦更新シテ居ルカ其ノ更新手続ニ於ケル証拠調ニ当ツテハ「右書類中ノ証人其他ノ供述者又ハ其ノ書類ヲ作成シタ者ノ訊問ヲ請求スル」事カ出来ル旨ニ付テハ何等更新サレナイ。更新サレテイナイ以上原審ニ於テハ被告人ニ応急措置法第十二条第一項ノ規定ニヨリ被告人ニ訊問スル機会ヲ与ヘテイナイト言フ事ニ帰着シ此ノ点ニ於テ原判決援用証拠中Aノ盗難始末書ハ証拠ニ供スル事カ出来ナイノテアル。 則チ原判決ハ冒頭ノ違法ガアル。と云ふのであるが、日本国憲法の施行に伴う刑事訴訟法の応急的措置に関する法律第十二条に規定しておる供述者又は作成者の訊問を請求する権利のあることを公判において被告人に知らせてその注意を喚起することは、右法律が新に施行せられた際でもあるから裁判所として親切で望ましい措置ではあるがこれを法律上の義務と解することはできない又法律上の義務がないのであるから て被告人に知らせてその注意を喚起することは、右法律が新に施行せられた際でもあるから裁判所として親切で望ましい措置ではあるがこれを法律上の義務と解することはできない又法律上の義務がないのであるからこれを公判調書に記載する必要もない本件において原審第一回公判調書中の証拠調に関する部分には所論の如き記載があつて被告人に供述者又は作成者の訊問を請求し得る旨を告げておるに拘らず第二回及第三回公判の更新手続に於ける証拠調の際には右の訊問請求権のあることについて何等更新しなかつたことは所論の通りであるが、前記説明の如く右の訊問請求権のあることを被告人に告げることが法律上の義務でない以上原審には毫も前記応急措置法第十二条違反の廉なく従つて原判決がAの盗難始末書を証拠に採用したことは正当で論旨は理由がない。 被告人上告趣意書は、- 3 -私は事件の当日午後七時頃何気なく卓球が好きなので時々行く卓球場へ行きますと、其の前で私の友人B君とC及びDの友人某の三人が何かを話をして居りました。 私が行つて何の話をして居るのかと聞くと強盗に行く話をして居りました。其の時の話は、Dの友人某がCに向つて昨夜強盗に行く約束をして、なぜ来なかつたか、Dが大へんおこつて居たぞ、とにかく今夜やるから九時頃にa通のE教会の前で集ると言ふ約束をしてDの友人某は帰つて行きました。私は其の時そばで聞いてみただけで何の相談も受けず又別に一しよに行く気は有りませんでした。卓球場で八時半頃までピンポンをしてあそんで居りましたが、B君が帰らうと言つたのでぶらぶらぶらと帰りかけました。私は全然知りませんでしたが、家へかへるとちゆうB君に先にE教会の前へ行つて見て来ると言つて出て行つたC君が帰つて来るのに出会いました。CはまだD等来て居ないから帰つて来たと言つて私たち二人に一しよにも一度行 ませんでしたが、家へかへるとちゆうB君に先にE教会の前へ行つて見て来ると言つて出て行つたC君が帰つて来るのに出会いました。CはまだD等来て居ないから帰つて来たと言つて私たち二人に一しよにも一度行つて見ようと言ふので私とB君は帰る方向も同じだしCと三人でぶらぶらE教会の所まで来るとB君は僕はもう帰ると言つて帰つてしまひました。其の時Dと其の友人某の二人が或るコーヒ屋から出て来ながらオーイ今来たのかおそいなあ永い事まつたぞと言つて居りました。そして私が別れを告げて帰りがけるとDが私に何だF帰るのか三人だと手も足りないし一しように行つて呉れなあおい、お前そんな気かと言つて頼まれましたのでつい悪いと知りつゝ一しように行く気になりました。誠に申しわけ御座居ません。ひがい者の家の前まで来るとこの家へはいるからと、私に初めて教へて呉れました。はいる前にDはCに向つてお前一番先にはゐれ、おれたち三人は後からすぐにはゐるからと命じながらCから紙につゝんださしみぼうちようを受け取りました。私は知りませんがひがい者の家からCの家は大変近いのでいつの間にかCがもつて来た物と思ひます。Cが一番先にはゐつたあとDが紙のつゝみをほどいてさしみぼうちようを取り出しCがはゐつた別の入口からはゐりつゞいてDの友人某も後からはゐりました。私はDがさしみぼうちようをもつ- 4 -てはゐるのを見たしゆんかんたちまちはゐるのがこはくなりようはゐらずにおもてに居りました。其の時の私の気持はたゞおそろしさが一ぱいで何も考える事もできず家の前を行つたり来たりうろうろするばかりで御座居ました決して見張などはしては居りませんでした。長い時間の様に思ひましたが今考へますと約十分位したと思ふ頃Dの友人某が出て来て何だお前はゐらなんだのかこれを持つてG商業学校の前まで行つてまつてみて来れと 決して見張などはしては居りませんでした。長い時間の様に思ひましたが今考へますと約十分位したと思ふ頃Dの友人某が出て来て何だお前はゐらなんだのかこれを持つてG商業学校の前まで行つてまつてみて来れと言つて私に風呂敷づゝみを一つくれましたので私は其れを受取り学校の前へ行つてまつて居りますと私の後すぐにD、C、Dの友人某がやつて来ました。そしてDがCに明日の晩七時半頃卓球場の前でまつて居てくれと言つてCをかへし私に風呂しきづゝみをもつてH君の家まで行つてくれと言われましたのでDと其友人某と私の三人はH君の家へ行きました。私が両親が心配するから、もう帰ると言ふとH君がもうだいぶおそいしとまつて行けとしきりに進めましたしDがもう十時だし帰り道でどの様な事があるかも知れないからとまつて行けと言ひましたので其の夜はH君の家にとまりました。明くる日の朝早く私は両親が心配するので家へ帰りました。其の晩七時半頃卓球場の前へ行きますとH君とB君が居りました。B君はCが用事が出来てこられないからかわりに来たと言つて居りました。しばらくピンポンをしてあそんで居りましたがB君がDもこないしもう家へかへろうと言ひましたのでかへりかけるとH君が私にDに四百円渡す御金があるが今朝百円もつて行つたから参百円のこつている君からこの御金をDに会つたら渡してくれと言つてことづかつた御金をもつてB君と帰りました。 Dに会つたら渡すつもりでしたが其の後一度も会はず其の御金は或る時物を買ふのに御金が足りずにつかつてしまいました。がDに会つたら親にでももらつてかへすつもりでした。一年近くの拘禁生活をいたし静かにすぎ去つた事を考へますと現在自分のおかした罪にたいし私は心から申わけないと思つて居ります。ひがい者にたいしましても何て御わびの申上様も御座居ません。私の両親妹弟たちも一日も早 禁生活をいたし静かにすぎ去つた事を考へますと現在自分のおかした罪にたいし私は心から申わけないと思つて居ります。ひがい者にたいしましても何て御わびの申上様も御座居ません。私の両親妹弟たちも一日も早- 5 -く真面目に罪を精算し一家そろつて楽しくくらす日をまつて居ります。私も今度社会に出た暁は一しようけんめい体を粉にして働き両親妹弟たちを安心させ又社会のためにもつくす決心で居りますから何とぞ今度の事は御情によりましてかるい御裁きを裁判長様けん事様判事様に御願申上げます。と言ふのであるが、原審の援用した証拠によりて優に原判示の事実を認定することが出来るのであつて所論は結局事実の誤認又は量刑の不当を主張する趣旨に帰着するから適法の上告理由として採用することはできない。 仍つて本件上告は理由がないから刑事訴訟法第四百四十六条により主文の如く判決する。 この判決は裁判官全員一致の意見によるものである。 検察官十蔵寺宗雄関与昭和二十二年十二月二十四日最高裁判所第二小法廷裁判長裁判官塚崎直義裁判官霜山精一裁判官栗山茂裁判官小谷勝重裁判官藤田八郎- 6 -

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