令和1(ワ)161 中央新幹線工事差止等請求事件

裁判年月日・裁判所
令和6年5月28日 甲府地方裁判所
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判決文本文43,101 文字)

令和元年第161号中央新幹線工事差止等請求事件主文 1 原告らの請求をいずれも棄却する。 2 訴訟費用は原告らの負担とする。 事実及び理由 第1 請求 1 被告は、別紙2差止を求める工事等の目録記載の工事をしてはならない。 2 被告は、原告Aに対し304万2500円及びうち100万円に対する令和元年6月11日から、うち204万2500円に対する令和元年11月20日から各支払済みまで年5分の割合による金員を支払え。 3 被告は、原告Bに対し374万円及びうち100万円に対する令和元年6月11日から、うち274万円に対する令和元年11月20日から各支払済みまで年5分の割合による金員を支払え。 4 被告は、原告Cに対し416万4250円及びうち100万円に対する令和元年6月11日から、うち316万4250円に対する令和元年11月20日から 各支払済みまで年5分の割合による金員を支払え。 5 被告は、原告Dに対し228万2200円及びうち100万円に対する令和元年6月11日から、うち128万2200円に対する令和元年11月20日から各支払済みまで年5分の割合による金員を支払え。 6 被告は、原告Eに対し132万8890円及びうち100万円に対する令和元 年6月11日から、うち32万8890円に対する令和元年11月20日から各支払済みまで年5分の割合による金員を支払え。 7 被告は、原告Fに対し820万4800円及びうち100万円に対する令和元年6月11日から、うち720万4800円に対する令和元年11月20日から各支払済みまで年5分の割合による金員を支払え。 第2 事案の概要 本件は、被告が計画する中央新幹線事業(以下「本事業」という。)の工事につき、山梨県 元年11月20日から各支払済みまで年5分の割合による金員を支払え。 第2 事案の概要 本件は、被告が計画する中央新幹線事業(以下「本事業」という。)の工事につき、山梨県南アルプス市内の同工事の工事区間のうち、別紙2差止を求める工事等の目録記載の工事禁止を求める区間(以下「本件区間」という。)近傍に住居又は農地、工場等の不動産を有している原告らが、同工事計画の具体化及び進行によって、原告らの人格権又は財産権が侵害されるとして、人格権又は財産権に基 づく妨害予防請求として本件区間における同工事の差止めを求めると共に、不法行為に基づく損害賠償として、原告各自の所有不動産の資産価値減少という財産的損害及び工事計画の具体化等による精神的苦痛に対する慰謝料並びにこれに対する平成29年法律第44号による改正前の民法所定の年5分の割合による遅延損害金の支払を求める事案である。 1 前提事実(争いのない事実並びに掲記の証拠及び弁論の全趣旨により容易に認められる事実)⑴ 当事者ア被告は、旅客鉄道事業等を行う株式会社であり、平成26年10月17日、工事区間を品川・名古屋間とする中央新幹線の工事実施計画(平成30年3 月2日付で認可を受けた「中央新幹線品川・名古屋間工事実施計画(その2)」による計画の追加及び変更を含み、以下「本件工事計画」といい、本件工事計画が目的とする工事を「本件工事」という。)について全国新幹線鉄道整備法(以下「全幹法」という。)9条1項に基づく国土交通大臣の認可を受け、現在、本件区間において本件工事計画に従い本体工事に着手している。 イ原告らは、いずれも山梨県南アルプス市の住民であり、本件区間の近傍に住居又は農地、工場等の不動産を有している。 件区間において本件工事計画に従い本体工事に着手している。 イ原告らは、いずれも山梨県南アルプス市の住民であり、本件区間の近傍に住居又は農地、工場等の不動産を有している。 なお、本件訴訟には、別紙1当事者目録記載のとおり、原告側に複数の補助参加人が参加しているが、同参加人らも原告らと同様、本件区間の近傍に不動産を所有している者である。 ⑵ 本件工事計画の概要等 ア目的及びルート被告が計画している中央新幹線は、超電導リニア方式 (超伝導磁気浮上方式)を前提とする超高速鉄道である。 旅客鉄道事業を行う被告において、東京・名古屋間は、現在東海道新幹線が輸送の動脈を担っているところ、被告の計画する中央新幹線の目的とする ところは、以下の3点である。 上記輸送の動脈を二重系列にして、南海トラフなどの巨大地震発生に備える(東海道新幹線のバイパス)。 東京・名古屋間に続いて、大阪まで延伸することにより、三大都市圏を最大時速505kmの高速鉄道で結び、それによって、一体化した巨大経 済圏を創成することができ、日本経済全体に大きな波及効果が期待できる。 さらに、沿線地域の経済の発展にも寄与する。 先端技術としての超電導リニア方式を採用することで、世界の鉄道技術をリードすることができる。それによる関連した裾野産業への波及効果が大きい。 イ工事の予定等被告は、既に本件工事に着手しており、中央新幹線の品川・名古屋間の開業時期を令和9年と予定していた。 また、被告は、中央新幹線の名古屋・大阪間の開業時期を令和27年と予定していた。 ウ工事計画の内容等中央新幹線に採用された超電導リニア方式は、超高速走行性能を有し、これ また、被告は、中央新幹線の名古屋・大阪間の開業時期を令和27年と予定していた。 ウ工事計画の内容等中央新幹線に採用された超電導リニア方式は、超高速走行性能を有し、これを踏まえ中央新幹線の路線はできる限り直線とする必要があることから、本件工事計画において路線の最小曲線半径が原則8000mとされている。また、上記の直線走行に限りなく近づけるという要請は、必然的 にトンネル区間を増大させることになり、トンネル区間は全体の86%に 及ぶ。このトンネル区間の掘削工事による発生土の推計値は、約5680万㎥である。 上記トンネル区間以外の部分については「明かり区間」と呼ばれるところ、本件区間は、この明かり区間に当たる。 明かり区間においては、その大半の区間で、リニア路線全体を覆う形状 の防音防災フードが設けられることが予定されている。 もっとも、明かり区間においては、防音防災フード内における空気との摩擦熱を換気するため、防音防災フードではなく、リニア路線の左右に防音壁のみの設置を予定している防音壁区間も存在する。本件区間を含む甲府盆地においては、概ね4kmごとにこの防音壁区間が設けられることが 予定されており、本件区間においても、別紙3のとおり、Gグラウンド(南アルプス市(住所省略))付近の約200mにわたり、防音防災フードのない防音壁区間が設けられることが予定されている。 ⑶ 原告らの各所有地原告らは、いずれも本件区間の近傍に不動産を所有しているところ、その内 容は以下のとおりである。 ア原告A(以下「原告A」という。)原告Aは、平成3年12月21日から、山梨県南アルプス市(住所省略)(471㎡)及び(住所省略)(696㎡)の農地(以下、総 のとおりである。 ア原告A(以下「原告A」という。)原告Aは、平成3年12月21日から、山梨県南アルプス市(住所省略)(471㎡)及び(住所省略)(696㎡)の農地(以下、総称して「本件土地(A)」という。)を所有している(甲75の1、75の2)。 同土地のうちの一部は、リニア予定地として買収対象となっているところ、本件土地(A)と本事業に必要な土地(以下「事業用地」という。)との位置関係は、概ね別紙4-1のとおりである。 イ原告D(以下「原告D」という。)原告Dは、平成25年5月28日から、南アルプス市(住所省略)(以下 「本件土地(D)」という。)に170.96㎡の宅地、その上に、延べ床面 積85.80㎡の2階建ての居宅を所有している(以下「本件建物(D)」という。甲76の1、76の2)。 本件土地(D)と中央新幹線との位置関係は、概ね別紙4-2のとおりである。 ウ原告E(以下「原告E」という。) 原告Eは、平成12年5月25日から、山梨県南アルプス市(住所省略)の土地(236.31㎡。以下「本件土地(E)」という。)の、同年6月26日から、同土地上の2階建て居宅(延べ床面積101.02㎡。以下「本件建物(E)」といい、本件土地(E)と総称して「本件土地建物(E)」という。)の共有持分者であり、その持分割合はいずれも5分の1である(甲7 8の1、78の2)。 原告Eが住居としている本件土地建物(E)と事業用地との位置関係は、概ね別紙4-3のとおりである。 エ原告F(以下「原告F」という。)原告Fは、昭和49年8月28日から、南アルプス市(住所省略)に98 0.84㎡の工場用 の位置関係は、概ね別紙4-3のとおりである。 エ原告F(以下「原告F」という。)原告Fは、昭和49年8月28日から、南アルプス市(住所省略)に98 0.84㎡の工場用地(以下「本件土地(F)という。」を所有しており、その上に、建築面積254㎡の工場建物を所有している(甲79、弁論の全趣旨)。 本件土地(F)と事業用地との位置関係は、概ね別紙4-4のとおりである。 オ原告B(以下「原告B」という。)原告Bは、平成19年10月19日から、南アルプス市(住所省略)に1296㎡の田(以下「本件土地(B)」という。)を所有している(甲80)。 本件土地(B)と事業用地との位置関係は、概ね別紙4-5のとおりである。 カ原告C(以下「原告C」という。) 原告Cは、南アルプス市(住所省略)に836㎡の土地(以下「本件土地(C)」という。)を所有し、その土地を、Gグラウンドの駐車場用地として、南アルプス市に貸与していた(甲81、原告C・1、2頁)。 本件土地(C)と事業用地との位置関係は、概ね別紙4-6のとおりである。 ⑷ 調停申立て原告Aは、平成30年4月、被告を相手方として、本件区間の沿線住民に対する、住宅の移転補償、金銭補償、事業用地買収における残地の買取り、防音防災フード設置等による騒音対策、日陰補償、土地の価値下落に対する補償等を求める民事調停を申し立てたが、不成立となった(甲96、原告A・11頁)。 2 争点⑴ 人格権に基づく妨害予防請求権としての差止めの可否⑵ 財産権に基づく妨害予防請求権としての差止めの可否⑶ 不法行為に基づく損害賠償請求の可否⑷ 原告らの損害額 争点 ⑴ 人格権に基づく妨害予防請求権としての差止めの可否⑵ 財産権に基づく妨害予防請求権としての差止めの可否⑶ 不法行為に基づく損害賠償請求の可否⑷ 原告らの損害額 3 争点に関する当事者の主張⑴ 人格権に基づく妨害予防請求権としての差止めの可否(原告らの主張)ア原告らが受ける人格権侵害の内容原告らは、中央新幹線の建設工事開始前、工事開始から工事終了まで、本 件明かり区間の工事終了後から営業運転開始まで及び営業運転開始後の各段階において、以下の具体的態様により、人格権(身体権及び平穏生活権)の侵害を受ける。 騒音、振動、低周波音、高周波音(モスキート音)眺望の喪失、景観の破壊(眺望と景観は異なるものである。) 電界、磁界、電磁波 地盤沈下、不等沈下大気汚染生活妨害(窓を開けられない。電話が聞き取れない。会話ができない。テレビが視聴できないなど。)身体的、精神的被害(巨大構造物が眼前にそびえることによる強い圧迫 感なども含まれる。)日照阻害、通風による被害その他の被害(例として、周辺水路、河川等の枯渇、水質悪化、土壌汚染の拡散等がある。)イ騒音被害について 微気圧波による騒音被害上記アの騒音に関して、明かり区間における高架橋の路線部分には、最低限度の対策として全て防音防災フードを被せるべきであるが、被告は本件区間において防音防災フードを被せない部分を設けることを予定している(前提事実⑵ウ)。 そして、この防音防災フードの出入口では微気圧波が発生すると考えられるところ、これにより、列車速度500km/hにおいて、微気圧波の放射地点から20m、50m及び80mの距離 実⑵ウ)。 そして、この防音防災フードの出入口では微気圧波が発生すると考えられるところ、これにより、列車速度500km/hにおいて、微気圧波の放射地点から20m、50m及び80mの距離で、それぞれ、126dB、123dB及び119dBという通常経験し得ない恐ろしい騒音レベルが予想される。 当面、本事業は、品川~名古屋間の計画であるが、大阪まで延伸して品川~大阪間までとならなければ、本事業の目的は達成できない。その場合、毎時8本の、往復では毎時16本の列車が走行するところ、午前6時から午後12時までに18時間営業する場合には、1日当たり288回の微気圧波による爆発音が発生することになる。 その結果、別紙3のGグラウンド付近の約200mにわたる防音防災フ ードの欠落部分(防音壁区間)では、その近隣住民の生活が破壊され、身体への重大な傷害を余儀なくされる。 特定建設機械の騒音規制基準について工事開始から工事終了までの間、建設機械等による騒音被害が予想されるところ、原告らの各所有地について、被告がその規制基準として掲げる 基準に基づくと、騒音の規制基準が85dBとなる上、工事期間も被告の工事工程表によれば7年間が見込まれており、相当長期間にわたると考えられることからすると、工事期間中に原告らの受ける騒音被害は大きい。 新幹線鉄道騒音に係る環境基準(以下「新幹線環境基準」という。)について 被告は、営業運転開始後に見込まれる騒音被害に関し、新幹線環境基準に基づく対策を採る旨主張するものの、そもそもこの新幹線環境基準自体、環境基本法16条に基づくものではなく、法的根拠を欠くことに加え、政策的緩和(地域類型及び時間帯)を入れた一般的な騒音環境基 基準に基づく対策を採る旨主張するものの、そもそもこの新幹線環境基準自体、環境基本法16条に基づくものではなく、法的根拠を欠くことに加え、政策的緩和(地域類型及び時間帯)を入れた一般的な騒音環境基準(同基準値自体、環境基本法16条の趣旨に反する)との比較においても、新幹線 環境基準は昼間で最大15dB、夜間では25dBも高く設定されており、到底、通常の生活が維持、保全できるレベルではなく、特に夜間の騒音は直接的に死に至る危険がある。 ウ日照被害について本件工事によって建設される構造物を原因とする原告ら各所有地への日 影時間は、冬至において8時間前後にわたるものと考えられる。 エ原告ら各自の人格権侵害について 原告Aについて本件における原告らの身体権及び平穏生活権の侵害は、中央新幹線の橋桁構造物及びその上部構造物(ガイドウェイ、防音壁、防音防災フード)(以 下、高架橋、その基礎部分、上部構造物等の一体化したものを「新幹線構 造物」という。)による眺望の喪失、強い圧迫感、日照・通風被害、さらに重要なのは、6分間隔で走行する新幹線の騒音であるところ、原告Aにおいて、本件土地(A)での作業については、これら全ての被害が現実的なものとなる。 原告Dについて 仮にも、原告Dが本件建物(D)に居住し続けるとすると、住居地の南側にルートが計画されているので、日照の著しい阻害(8時~16時まで)が生じ、冬至における日照は、僅か1時間という過酷な状況が予想され、さらに、前述の騒音による生活被害、健康被害は、絶大なものになる。 高さ30mに及ぶ新幹線構造物により、居住地からの眺望が著しく悪化 するため、原告Dの眺望喪失は 状況が予想され、さらに、前述の騒音による生活被害、健康被害は、絶大なものになる。 高さ30mに及ぶ新幹線構造物により、居住地からの眺望が著しく悪化 するため、原告Dの眺望喪失は、極めて顕著である。 原告Dの場合には、居住空間が直接的に侵害され、生活の場所が根こそぎ奪われようとしている。 原告Eについて仮にも、原告Eが本件建物(E)に住み続けるとすると、以下のような 生命、身体への被害、平穏生活権の侵害が確実である。 まず、日照被害については、南東側の直近にリニアの巨大構造物が建つ上、冬至の日照は僅か1時間と予想されている。 次に、騒音被害について、本件土地(E)と新幹線構造物との離隔距離はほとんどなく、単なる生活被害、生活妨害にとどまらない、恐るべき事 態が予想される。 さらに、眺望喪失、強い圧迫感、不安感の点では、原告Eの場合、新幹線構造物との離隔距離が著しく小さい、という点に特徴がある。 原告Fについて原告Fは、昭和49年4月に、電気機器製造を営む会社を設立し、本件 土地(F)上に工場建物を所有しているところ、平成28年12月には若 い経営者に工場を貸与する形で経営を引き継いでいる。本件土地(F)の南東約4mにリニア路線が通る予定であり、これによる騒音被害、眺望、景観の悪化は、単にその土地建物の経済的価値を喪失させるだけでなく、その場所で働く従業員、原告F本人の健康被害をもたらすことになる上、電磁波、低周波音による健康被害も強く懸念される。 原告Bについて本件土地(B)は田であるものの、農地転用による宅地化が可能であり、宅地としての資産価値を有しているが、仮にこれを宅地として利用 害も強く懸念される。 原告Bについて本件土地(B)は田であるものの、農地転用による宅地化が可能であり、宅地としての資産価値を有しているが、仮にこれを宅地として利用しようとすると、心身に極めて大きな影響を及ぼす騒音・低周波音被害、眺望の喪失、日照被害、強い圧迫感、電磁波等による被害など、深刻な被害の懸 念は間違いなく現実のものになる。 原告Cについて本件土地(C)は事業用地により東西に分断されることになるところ、日照・通風阻害、眺望の悪化、高さ30mという巨大な新幹線構造物の直下で最悪の土地となり、アパートの建設、分譲などができないことは当然 であるが、仮にそのような使用に供すれば、そこに住む人の健康被害を招くことも確実である。 リニアのもたらす公害が、分断された土地の資産価値を喪失させるだけでなく、そこに居住する人、その近辺の人、さらには、そこに出入りするだけの人に対しても、その身体の健全を害し、平穏な生活を奪う結果にな る。 オ本件工事の差止めの是非については、原告らが受ける被害と本事業(本件区間に限らずリニア事業全体)の工事差止めによる公共的、公益的不利益との比較考量によって決せられるべきところ、以下のとおり、本事業はおよそ実現不能なものであり、反公益的である。 本事業は、次のとおり、その経済的側面からみても必然的に破綻が見込 まれる。 a 中央新幹線に対する明白な過大需要予測がなされている。 b 東海道新幹線からの需要転移を62%も見込んでいるが、仮に実現すれば、中央新幹線と東海道新幹線の総合的な収支において、大幅な赤字は不可避である。 c 中央新幹線の建設コストが当初計画で b 東海道新幹線からの需要転移を62%も見込んでいるが、仮に実現すれば、中央新幹線と東海道新幹線の総合的な収支において、大幅な赤字は不可避である。 c 中央新幹線の建設コストが当初計画でも他の整備新幹線の2~3倍が見込まれる。 d 営業開始後は、維持管理費(ランニングコスト)が高騰する。また、電力費は、東海道新幹線の約3倍であり、原発数個分を前提にしないと、到底成り立たない。 e 営業開始後も多額の資本費、減価償却費により経営が著しく圧迫され、リニアのみならず、東海道新幹線のサービス低下、保守管理の手抜きによるリスクの増大なども必然である。 また、被告の財政状況は、本事業により疲弊しており、加えて、ドル箱である東海道新幹線の営業収支の悪化と相俟って、本事業は、早晩、計画 自体廃止の運命を辿らざるを得ない。 トンネル工事に伴う自然破壊中央新幹線工事においては、東京~名古屋間のみで、247kmのトンネル掘削が予定されており、さらに多数の非常口のために地下数十メートルの立坑が掘られる。 上記全ての現場において、地下水帯水層の破壊による地下水の流出、湧水の枯渇、さらには表流水(河川水、湖沼)の枯渇という現象が必然的に生ずる。 また、地下水帯水層の地下水が失われると、地盤の収縮が起こり地盤沈下を招き、さらに、毛管現象による地上への水分補給が絶たれて、土地の 乾燥化と植生の変化など生態系にも甚大な影響を与えることがある。 本事業で採用されている超電導リニア方式(超電導磁気浮上方式)は、技術的に停止や故障、急加速や急停止等の異常が発生しやすく、顕著にリスクが大きいシステムである。 本事業の全線にわたる難工事、無謀な工事計画a 南アルプストンネル工事は、断層砕石帯や崩壊し 、技術的に停止や故障、急加速や急停止等の異常が発生しやすく、顕著にリスクが大きいシステムである。 本事業の全線にわたる難工事、無謀な工事計画a 南アルプストンネル工事は、断層砕石帯や崩壊しやすい地質部分を通 すものであること、工事に伴う地下水の流出による山体の崩壊などの危険があることなど、問題が大きい。 また、南アルプストンネルの掘削に伴い、大井川水系について枯渇の問題が生ずるところ、これによって被害を受ける静岡県に及ぼす影響は大きく、被告の対応策についても問題が大きい。 b 本事業の工事については、南アルプストンネル静岡工区において、静岡県知事が同工事の問題点を指摘するなどしている、いわゆる静岡問題に見られるように、現に当初の予定との比較において、未着工であったり、着工の遅れが生じている。 c また、被告は、南アルプストンネルの掘削工事に必要な地質調査(立 坑によるボーリング調査)を一切していない。 d 被告は、品川~名古屋間において、大深度法適用区間を、直径約14mの大型のシールドマシンで掘削する計画だが、同様に直径16mのシールドマシンによるトンネル掘削工事(東京外環道トンネル工事)が、地盤の陥没、地中空洞の形成、低周波音・振動による被害など で、工事の停止を余儀なくされており、同様の事態が本件工事でも予想され、品川~名古屋間で約50kmに及ぶシールドマシンによるトンネル掘削は、挫折することが確実である。 地震対策が全くなされていないこと中央新幹線は、首都圏直下地震、東海地震、東南海地震、南海トラフ地 震の各地震帯上をルートとしている。これらの地震は「何時起きても不思 議ではない」という状況にある。中央新幹線は、大部分が地下を走行し、地上部分では高架橋を走行 地震、南海トラフ地 震の各地震帯上をルートとしている。これらの地震は「何時起きても不思 議ではない」という状況にある。中央新幹線は、大部分が地下を走行し、地上部分では高架橋を走行するところ、時速500kmで走行中に地震が起きたときの乗客の安全は到底守られていない。本事業は、地震時の安全対策を欠き、それだけでも高速鉄道としての存在を否定されなければならない。 カ以上のとおり、原告らが本件工事によって受ける人格権侵害の大きさ(上記アないしエ)に比して、本事業自体が実現不能なものであって反公益的であること(上記オ)を踏まえれば、原告らの被告に対する、人格権に基づく本件工事の差止請求権が認められる。 (被告の主張) アそもそも、現時点では、原告ら各所有地の用地測量が未了であること、及び、リニア路線の高架橋の詳細な設計が決定していないことから、本事業によって原告らの各所有地にどの程度の影響が生じるのかは明らかではない。 また、実際、原告らは、各被害の内容や程度について何ら具体的な主張、立証を行っておらず、原告らによる「人格権(身体権、平穏生活権)」の侵 害を理由とする本件工事の差止請求が認められる余地は全くない。 イ微気圧波による騒音について 微気圧波とは、列車がトンネル等に突入する際に形成される圧縮波がトンネル等の出口(坑口)まで伝搬され、出口からその周囲に放射されるパルス状の圧力波である。 その周波数の主成分は20Hz以下で、人の可聴範囲(20Hz~20kHz)を下回っている上、パルス状の圧力波であり継続時間が極めて短いことから、そもそも環境への影響は小さい。また、このような性質から、微気圧波については、騒音レベルを示すdBではなく、圧力レベ kHz)を下回っている上、パルス状の圧力波であり継続時間が極めて短いことから、そもそも環境への影響は小さい。また、このような性質から、微気圧波については、騒音レベルを示すdBではなく、圧力レベルを示すPaにより評価するのが適切とされている。 したがって、原告らが主張するように、微気圧波を騒音レベル(dB) で評価することは、微気圧波の性質を根本的に見誤るものであり、それ自体不適切と言わざるを得ない。 実際、山梨リニア実験線(笛吹市(住所省略)~上野原市(住所省略))においては、長年にわたり走行試験が行われているが、緩衝工の設置により、同実験線のトンネル等の出口の周囲において原告らが主張するような 騒音が発生したことはない。 また、被告においては、今後建設予定のトンネル等の出口においても、実験線と同様に緩衝工を設置するなど、適切に環境対策工を実施する予定である。 往復の車両がすれ違う際の騒音について、一般に、2つの同程度の音が 合成された場合に増加する音圧レベル(dB)が最大でも約3dBであること、及び、中央新幹線は、超高速性能を有することから、ある地点(計測地点)において車両が通過する際の騒音のピークレベルが計測されるのは僅か数秒にすぎないところ、当該地点の付近で上下線がすれ違う際に、両車両の通過時の騒音のピークレベルが丁度重なる機会は極めて少ない と考えられることから、上下線の車両がすれ違うことによる騒音に対する影響は非常に小さいものと考えられる。 加えて、本件区間のうち、防音壁を設置する予定の区間(別紙3)につき、現状、防音壁の仕様は未確定であるところ、同区間の周辺には、本件土地(C)、本件土地(F)及び本件土地(B)が所在しているが、その 用途は、順に、駐車場用地、工場 予定の区間(別紙3)につき、現状、防音壁の仕様は未確定であるところ、同区間の周辺には、本件土地(C)、本件土地(F)及び本件土地(B)が所在しているが、その 用途は、順に、駐車場用地、工場敷地及び農地であり、いずれも居住地ではない。 ウ騒音レベルについて原告らが指摘する音圧レベル(dB)とは、音の強さ(W/㎡)又は音圧(Pa)から機械的に算出される数値であるが、これ自体は、騒音の大きさ を正確に示すものではない。騒音の大きさ(人の音の感じ方)は、騒音レベ ル(dB)により測定するのが常識であるところ、騒音レベル(dB)とは、人の音の感じ方が周波数によって異なる(例えば低周波帯では周波数が低くなればなるほど感覚量が低下する)ことを踏まえて、音圧レベル(dB)に周波数を考慮した補正を行うことにより得られる値である 。 エ本事業の公共性、公益性 上記のとおり、本件工事によって原告らの受ける被害について、具体的な主張立証はなく、微気圧波や騒音レベルについての主張も失当であるのに対し、本事業については、以下のとおり公共性、公益性が認められる。 被告は、全幹法8条に基づく路線建設指示を受けていることから、同法14条1項により中央新幹線に関して鉄道事業法3条1項に定める第一 種鉄道事業者の認可を受けたものとみなされる。 そのため、被告による中央新幹線の路線建設や車両運行に関する事業(本事業)は、「鉄道事業法(中略)による鉄道事業者(中略)がその鉄道事業(中略)で一般の需要に応ずるものの用に供する施設」に関する事業に当たり、土地収用法3条柱書に定める「公共の利益となる事業」に該 当する。 本事業の公益性について本事業に関しては、全国的な鉄道網の整備により「 用に供する施設」に関する事業に当たり、土地収用法3条柱書に定める「公共の利益となる事業」に該 当する。 本事業の公益性について本事業に関しては、全国的な鉄道網の整備により「国民経済の発展及び国民生活領域の拡大並びに地域の振興に資することを目的とする」全幹法に基づく事業であること(全幹法1条)、及び、土地収用法に定める「公 共の利益となる事業」に該当する事業であることからすれば、公益性を有する事業であることについて疑いの余地はない。 また、本事業に関しては、交通政策審議会陸上交通分科会鉄道部会中央新幹線小委員会による平成23年5月12日付の答申において、本事業の「国民的・国家的意義」が確認されているように、本事業は、極めて重要 性の高い国家的事業であって、高度な公益性を有する事業である。 本件工事計画における路線の選定について本件工事計画においては、南アルプスルートが採用されているところ、これは、超電導リニアの技術的制約条件(高速走行を可能とするため、できる限り直線に近い線形とすること等)、地形・地質等の制約条件、及び、環境要素による制約条件(生活環境、自然環境への影響を最小限度とする こと等)を踏まえたものである。 山梨県内における路線については、山梨リニア実験線(笛吹市(住所省略)~上野原市(住所省略))を活用すること、曽根丘陵断層を回避すること、点在する古墳群を回避すること、甲府盆地の地質上、トンネルの施工が難しいため地上部に路線を建設すること等の、山梨県固有の制約条件 についても考慮の上で路線を決定しており、その中で、南アルプス市については、市街地中心部、市南東部のまとまった集落、工業団地を可能な限り回避する等、地域の生活環境に最大限留意した結果、本 件 についても考慮の上で路線を決定しており、その中で、南アルプス市については、市街地中心部、市南東部のまとまった集落、工業団地を可能な限り回避する等、地域の生活環境に最大限留意した結果、本件区間のとおり決定するに至った。 オ被告が予定する補償及び対策 また、被告は本事業に関し、沿線住民らに対し、以下の各補償及び対策を講じる予定である。 事業用地の取得に伴う補償a 補償の内容事業用地の取得に伴って土地所有者等に生じる損失の補償は、「土地 収用法その他の法律により土地等を収用(中略)することができる事業に必要な土地等の取得(中略)に伴う損失の補償の基準の大綱を定め、もってこれらの事業の円滑な遂行と損失の適正な補償の確保を図ることを目的」とする「公共用地の取得に伴う損失補償基準要綱」(昭和37年6月29日閣議決定。以下「損失補償基準要綱」という。乙4)、 当該要綱に基づく具体的な補償内容を定める「公共用地の取得に伴う損 失補償基準」(昭和37年10月12日用地対策連絡会決定。以下「損失補償基準」という。乙5)及び「公共用地の取得に伴う損失補償基準細則」(昭和38年3月7日用地対策連絡会決定。以下「細則」という。 乙6)に従って行い、主として以下の補償項目につき正当かつ公平な補償を行うことになる。 ① 取得する事業用地についての正常な取引価格による補償② 事業用地上の工作物等に関する移転補償③ 事業用地上の農業の廃止、休止、経営規模縮小等に関する補償④ 残地の面積の狭小化、不整形地化等による価格下落等の損失に対する補償 b 用地補償の手順用地補償については、概要、①事業説明、②中心線測量、設計協議(用地幅杭設置)、③用地測量、物件調査、④土地調書 形地化等による価格下落等の損失に対する補償 b 用地補償の手順用地補償については、概要、①事業説明、②中心線測量、設計協議(用地幅杭設置)、③用地測量、物件調査、④土地調書、物件調書の作成、⑤補償金額の算定、⑥補償内容及び補償金額の説明、⑦土地売買契約書の締結、⑧土地の引渡し、物件の移転、⑨補償金の支払いという手順に よって行われる。 仮に、上記手順により事業用地に関する土地売買契約を締結できない場合、被告においては、最終手段として、やむを得ず、土地収用法に基づく土地収用手続を執ることになる。 日照被害に対する補償 日照被害に関しては、その事前賠償の基準を定めた「公共施設の設置に起因する日陰により生ずる損害等に係る費用負担について」(昭和51年2月23日建設省事務次官通知。以下「日陰損害通知」という。乙9)、及び「公共施設の設置に起因する日陰により生ずる農作物に対する損害等に係る事務処理指針(案)について」(平成16年6月23日中央用地対 策連絡協議会通知。以下「日陰農作物損害指針」という。乙10)が存在 する。 本事業によって原告ら各所有地の日照にどの程度の影響が生じるのかについては、用地測量が未了であり、また、高架橋の詳細な設計が決定していない現状においては明らかではないが、実際に高架橋が設置された後の日陰時間に照らし、原告らに日陰損害通知又は日陰農作物損害指針に定 める「費用負担の要件」を満たす損害の発生が認められる場合には、被告としては、これらの通知又は指針に従い適切に対応する予定である。 騒音対策についてa 新幹線鉄道騒音の環境基準中央新幹線の運行により生じる騒音については、環境基本法16条1 項に基づき策定された新幹線環境 従い適切に対応する予定である。 騒音対策についてa 新幹線鉄道騒音の環境基準中央新幹線の運行により生じる騒音については、環境基本法16条1 項に基づき策定された新幹線環境基準(乙1)が適用される。 そのため、被告においては、中央新幹線の運行により生じる騒音に関し、総合的な騒音対策を実施し、新幹線環境基準「第1」の項に定められた基準を遵守できるよう最大限努力することとしている。また、騒音対策を講じても新幹線環境基準「第2」の項に定められた達成目標期間 内に基準を達成することが困難と考えられる区域に関しては、被告は、同項に従い、基準が達成された場合と同等の屋内環境が保持されるよう、家屋の防音工事等の措置を講じる予定である。 なお、新幹線環境基準は、新幹線鉄道騒音に関する行政上の政策目標を定めるものにすぎず、人にとっての騒音の最大許容限度や受忍限度を 示すものではなく、また、事業者に対して当該基準の遵守を法的に義務付けるものでもない。 b 高架橋工事中の騒音への対策被告は、本件工事について、必要な環境保全措置を講じた上で、騒音及び振動に関する次の各基準に従い実施する予定である。 ⒜ 建設機械の稼働にかかる騒音及び振動について 特定建設作業に伴って発生する騒音の規制に関する基準(昭和43年11月27日厚生省・建設省告示第1号)振動規制法施行規則別表第1に定める特定建設作業の規制に関する基準⒝ 資材及び機材の運搬に用いる車両の運行にかかる騒音及び振動に ついて騒音に係る環境基準について(平成10年9月30日環境庁告示第64号)振動規制法施行規則別表第2に定める道路交通振動の限度自然環境保全について 本件工事によって生じ ついて騒音に係る環境基準について(平成10年9月30日環境庁告示第64号)振動規制法施行規則別表第2に定める道路交通振動の限度自然環境保全について 本件工事によって生じる自然環境への影響について、被告は、平成26年4月に、環境影響評価法に基づく環境影響評価書を国土交通大臣に提出し、これについて同大臣及び環境大臣の意見を得て、さらに、平成26年8月に、国土交通大臣らの意見を踏まえて補正した環境影響評価書を同大臣に提出、公表しているところであり、被告においては、かかる環境影響 評価の結果及び国土交通大臣らの意見に従い、本事業を推進するに当たって適切な環境保全措置を講じる予定である。 カまた、原告らは、本件工事が困難であって事業自体実現不能であるとするが、以下のとおり、原告らの主張は失当である。 南アルプスにおける地質調査について 南アルプスについては、被告は本件工事に先立ち、国鉄時代より実施してきた地表踏査、ボーリング調査及び弾性波探査の結果を踏まえ、水平ボーリング調査を実施し、その内部の地質を直接的に把握し、その上で、学識経験者やトンネル掘削工事の専門家を構成員とする委員会等において、調査結果の評価や施工方法について検証を行い、本件トンネル工事の施工 は可能と判断している。 地震対策について本件工事においては、最新の耐震基準等を踏まえて構造物が設計、建設される他、車両については、強固なガイドウェイ側壁で挟まれ、地震が発生しても脱線しない構造となっており、また、強力な磁気ばねの作用により、車両は、常にガイドウェイの中心に来るよう保持され、かつ、約10 cm浮上するよう確保されており、地震時の揺れ等に対処できるよう ても脱線しない構造となっており、また、強力な磁気ばねの作用により、車両は、常にガイドウェイの中心に来るよう保持され、かつ、約10 cm浮上するよう確保されており、地震時の揺れ等に対処できるようになっている。加えて、本事業においては、地震発生時に、地震動の主要動が到達するまでの間に列車を減速させ、早期に停止させることができる早期地震警報システムも採用される。 これらの措置により地震時の安全確保が可能であることは、交通政策審 議会陸上交通分科会鉄道部会中央新幹線小委員会の答申においても確認されているところであり、本事業において、十分な地震対策が講じられていることは明らかである。 シールド工事について被告は、本件シールド工事の対象となる大深度地下の地質調査に当たっ ては、自ら実施したボーリング調査のみならず、他の事業者等が行ったボーリング調査結果等の地形・地質に関する既存資料も含めて総合的に調査を行っており、かかる被告の地質調査については、大深度法に基づく認可手続の際、同法20条及び土地収用法22条に基づく意見聴取の対象となった学識経験者の全員(3名)が、その調査手法及び調査密度等を「妥当」 と評価している。 キ以上のとおり、原告らは、各被害の内容や程度について何ら具体的な主張、立証を行っていない一方、本事業の公共性、公益性が認められることや、被告において、将来的に原告らに生じ得る被害に対する補償や対策を取ることを踏まえれば、原告らの被告に対する人格権に基づく妨害予防請求としての 差止請求権は認められない。 ⑵ 財産権に基づく妨害予防請求権としての差止めの可否(原告らの主張)ア原告らは、中央新幹線の工事計画が具体化し、その路線予定地が明確になった は認められない。 ⑵ 財産権に基づく妨害予防請求権としての差止めの可否(原告らの主張)ア原告らは、中央新幹線の工事計画が具体化し、その路線予定地が明確になった段階で、既に土地、建物等の資産価値(交換価値)の減少という財産的被害を受けている。 現に、本件訴訟を提起した令和元年5月時点で、既にリニア路線の中心部には赤色の鋲が、路線用地幅員22mの両側には黄色の鋲が打たれているところ、これによって、鋲から50mから80m離れた土地建物についても、買手がつかない状態となっている。 イ原告ら各自の損害 原告Aについて本件土地(A)に関し、幅22mのリニア予定地だけでなく高架橋の上を走行するリニア列車とその防音壁(又は防音防災フード)による日照阻害、騒音・振動などの被害が農地全体に及び、また、分断されることになる三角残地は高さ30mにも及ぶ新幹線構造物の真下となり、農地として の利用価値は全くない。同土地は、農地転用により容易に宅地へ転用することができ、その場合の売却価格は、農地の場合とは比べものにならず、経済的な価値は大きい。しかし、リニア予定地となっただけで、それも不可能となり、既に相当の財産的価値の減少が生じている。 原告Dについて 本件土地(D)上の建物は、原告Dの居宅であるところ、リニア路線が近傍を通ることにより、買手がつかないことは確実であり、居住用財産としての価値が全く失われ、その交換価値・使用価値はゼロとなる。 原告Eについて原告Eは、本件土地(E)を宅地として使用しているところ、高架橋に より本件土地(E)の日照がほとんど失われるなど、絶大な公害被害が確 となる。 原告Eについて原告Eは、本件土地(E)を宅地として使用しているところ、高架橋に より本件土地(E)の日照がほとんど失われるなど、絶大な公害被害が確 実となり、家族と共に居住するに堪えないものとなる一方、売却するにも買手が見つからず、その経済的損失は大きい。 原告Fについて原告Fは、本件土地(F)上に工場建物を所有し、同工場を若い経営者に引き継いでいるところ、高架橋によって日照阻害や騒音による絶大な被 害、眺望の悪化が生じることにより、工場用地、工場建物のいずれに関してもその交換価値が失われる。 原告Bについて原告Bは、本件土地(B)を田として所有し、毎年収穫を行っているが、同土地は中央新幹線の計画がなければ宅地としての資産価値があったに もかかわらず、宅地としての価値が失われると共に、事業用地として切り取られることによって残地部分の資産価値はほとんど失われる。 原告Cについて原告Cは、本件土地(C)につき、Gグラウンドの駐車場用地として南アルプス市に貸与していたところ、事業用地により土地が分断されること がなければ、一体の土地として分譲又はアパート建設等で活用する予定であったものであるが、東西に分断される結果、極めて利用しにくく、かつ、利用価値の乏しい残地となってしまう。 ウ以上のとおり、原告らには財産権上の被害が生じるのに対し、前記のとおり被告の本事業はおよそ実現不能なものであり、反公益的であることからす ると、原告らの財産権に基づく妨害予防請求として差止請求が認められるべきである。 (被告の主張)ア 「財産権」侵害については、そもそも原告らが、工事差止 、反公益的であることからす ると、原告らの財産権に基づく妨害予防請求として差止請求が認められるべきである。 (被告の主張)ア 「財産権」侵害については、そもそも原告らが、工事差止請求権の根拠たる財産権として、いかなる権利を主張するのか自体が、およそ明らかではな い。財産権に関する具体的な主張、立証はなく、ただ、経済的価値が減少す るなどと抽象的に述べられているにすぎず、およそ失当である。 イ前記のとおり、被告による事業用地の取得については、任意の交渉により土地売買契約を締結した上で、損失補償基準等に基づく補償のもとに行うものであり、万一、交渉が不調に終わった場合でも、被告は、土地収用法に基づき正当な補償の下に事業用地を収用することになる。前者については任意 の合意に基づくものである以上、そもそも原告らの財産権を侵害するものではないし、また、後者についてもおよそ違法と評価されるものではないのであって、これらの点に鑑みても、本事業によって、原告らの財産権が違法に侵害されることはない。 ウしたがって、原告らの被告に対する財産権なるものに基づく差止請求は認 められない。 ⑶ 不法行為に基づく損害賠償請求の可否(原告らの主張)ア被告の本事業によって、原告Dを除く原告らの所有土地は事業用地と残地に分断されるところ、事業用地の取得に伴う補償に関し、土地全体につき補 償するのではなく、事業用地についてのみ補償するという被告の対応は悪魔の補償基準とも言うべきものであって、かかる土地補償に関する被告の対応は、不法行為に当たる。 また、リニア路線の至近に土地を所有する原告Dに対して補償をしないとの対応も、同様に不法行為に当たる。 イまた、被告の本件工 償に関する被告の対応は、不法行為に当たる。 また、リニア路線の至近に土地を所有する原告Dに対して補償をしないとの対応も、同様に不法行為に当たる。 イまた、被告の本件工事の着手により、原告らの各所有地の交換価値はゼロとなり、原告らの財産的損害は現実化しているものであって、本件工事の着工は原告らに対する不法行為に当たる。 (被告の主張)本事業(本件工事も含まれる。)には、何ら違法性(又は違法とすべき原告 らの権利若しくは利益の侵害)が認められない。 また、被告は、事業用地の取得に関し、損失補償基準要綱等による補償を予定しているところ、同要綱等に基づく補償は、原告らに対する適正かつ公平な補償を図ることを目的とするものであって、かかる補償を予定することが違法とされるはずがない。 なお、用地測量及び物件調査の結果、残地について、面積の狭小化、不整形 地化等による価格下落等の損失が生じると認められる場合は、損失補償基準要綱41条(乙4)に基づきこれに対して補償を行うことも可能である。また、同要綱42条の2第1項又は2項のいずれかに当たると認められる場合には取得の対象ともなり得る。 ⑷ 原告らの損害額 (原告らの主張)ア慰謝料原告らは、被告から突き付けられた不当な補償基準によって精神的苦痛を被っているところ、その精神的苦痛に対する慰謝料としては原告各自につき100万円を下ることはない。 イ経済的損害また、本件工事が着工されて以降、その所有不動産に関する財産権侵害による損害が生じているところ、予想される本件区間に係る工事期間は最低7年間と長期にわたり、その間、工事の騒音・振動等の耐え難い被害に晒されること、 着工されて以降、その所有不動産に関する財産権侵害による損害が生じているところ、予想される本件区間に係る工事期間は最低7年間と長期にわたり、その間、工事の騒音・振動等の耐え難い被害に晒されること、高架橋による日照阻害が生じること、開業後は微気圧波による爆発 音や低周波音による被害を受けること、さらに本件区間に隣接する地域においてすでに高架橋工事が進められている状況などを踏まえれば、不動産鑑定評価基準における最有効使用を前提にした正常価格を検討し得る余地はない。その上、周辺地には他の空き地も多く存在するような地域性などからすると、原告ら各所有地はいずれも、資材置場や駐車場としての利用可能性も 含め、およそ市場性はないというべきである。 以上を踏まえると、各原告における所有不動産に関する損害額は以下のとおりである。 原告Aについて本件土地(A)は田であるものの、宅地転用可能な土地であるところ、このうち、被告による補償対象となる事業用地を除いた残地(817㎡) につき、当該残地は市場性のない無価値の土地となるから、同残地の宅地としての評価額1225万5000円(=1.5万円/㎡×817㎡)が財産上の損害となる。なお、請求額はその一部の204万2500円である。 原告Dについて 本件土地(D)については、リニア予定地に直接かからないものの、リニア路線の至近距離にあり、同土地全体(170.96㎡)が市場性のない無価値の土地となることから、宅地評価額512万8800円(=3万円/㎡×170.96㎡)が財産上の損害となる。なお、請求額はその一部の128万2200円である。 原告Eについて本件土地(E)から、被告による補償対象となる事 0円(=3万円/㎡×170.96㎡)が財産上の損害となる。なお、請求額はその一部の128万2200円である。 原告Eについて本件土地(E)から、被告による補償対象となる事業用地を除いた残地(215.85㎡)につき、当該残地は市場性のない無価値の土地となるところ、同残地の宅地評価額は647万5000円(≒3万円/㎡×215.85㎡)となり、原告Eの持分5分の1に相当する129万5000 円が財産上の損害となる。なお、請求額はその一部の32万8890円である。 原告Fについて本件土地(F)から、被告による補償対象となる事業用地を除いた残地(960㎡)につき、当該残地は市場性のない無価値の土地となるところ、 同残地の評価額は2880万0000円(=3万円/㎡×960㎡)とな り、これが財産上の損害となる。なお、請求額はその一部の720万4800円である。 原告Bについて本件土地(B)は田ではあるものの、宅地転用可能な土地であるところ、被告による補償対象となる事業用地を除いた残地(1096㎡)につき、 当該残地は市場性のない無価値の土地となることから、同残地の宅地としての評価額は1644万0000円(=1.5万円/㎡×1096㎡)となり、これが財産上の損害となる。なお、請求額はその一部の274万円である。 原告Cについて 本件土地(C)から、被告による補償対象となる事業用地を除いた残地(426㎡)につき、当該残地は市場性のない無価値の土地となるところ、同残地の評価額は1278万0000円(=3万円/㎡×426㎡)となり、これが財産上の損害となる。なお、請求額はその一部の316万4250円である。 (被告の主張) るところ、同残地の評価額は1278万0000円(=3万円/㎡×426㎡)となり、これが財産上の損害となる。なお、請求額はその一部の316万4250円である。 (被告の主張)ア慰謝料につき否認する。 イ本件土地に関する経済的損害について、原告らに具体的かつ確定的な損害は全く発生していない。 また、原告らの主張する宅地につき3万円/㎡、農地につき1.5万円/ ㎡との評価の具体的根拠も不明である。 仮に、本事業に起因して原告らに本件残地等の価値の下落という損害が発生するとしても、本事業が極めて高度な公共性、公益性を有していること、及び、被告が被害防止に関する措置等の対応を行う予定であることに照らせば、本事業に関して、不法行為に基づく損害賠償請求を認めるに足りる違法 性が存するとはいえず、この点においても、原告らの損害賠償請求が認めら れる余地はない。 原告Aについて原告らの主張する残地の範囲を前提にしても、本件土地(A)の残地の面積は817㎡あり、このような一定の面積を有する土地の交換価値がゼロになることはない。 原告Dについて本件土地(D)の面積は170.96㎡あり、このような一定の面積を有する土地の交換価値がゼロになることはない。 また、本件土地(D)は事業用地に含まれないため、損失補償基準等に基づく補償等の対象とはならないが、新幹線環境基準に基づく対応及び日 陰損害通知等に基づく対応の対象となり得ることに照らせば、仮に、本事業に起因して原告Dに財産的損害が発生するとしても、他の原告による損害賠償請求と同様、本事業に関し、不法行為に基づく損害賠償請求を認めるに足りる違法性は存在しない。 原告Eについて 起因して原告Dに財産的損害が発生するとしても、他の原告による損害賠償請求と同様、本事業に関し、不法行為に基づく損害賠償請求を認めるに足りる違法性は存在しない。 原告Eについて 原告らの主張する残地の範囲を前提にしても、本件土地(E)の残地の面積は215.85㎡あり、このような一定の面積を有する土地の交換価値がゼロになることはない。 原告Fについて原告らの主張する残地の範囲を前提にしても、本件土地(F)の残地の 面積は960.84㎡あり、このような一定の面積を有する土地の交換価値がゼロになることはない。 原告Bについて原告らの主張する残地の範囲を前提にしても、本件土地(B)の残地の面積は1096㎡あり、このような一定の面積を有する土地の交換価値が ゼロになることはない。 原告Cについて原告らの主張する残地の範囲を前提にしても、本件土地(C)の残地の面積は426㎡あり、このような一定の面積を有する土地の交換価値がゼロになることはない。 第3 争点に対する当裁判所の判断 1 認定事実争いのない事実、上記前提事実並びに掲記の証拠及び弁論の全趣旨によれば、以下の事実が認められる。 ⑴ 本事業の内容等ア本事業の意義 中央新幹線小委員会は、平成22年2月24日、国土交通大臣から交通政策審議会に対する「中央新幹線の事業主体及び建設主体の指名並びに整備計画の決定」についての諮問を受け、交通政策審議会陸上交通分科会鉄道部会の下に設置された。中央新幹線小委員会は、審議と検討を重ねた結果につき、平成23年5月12日に答申をまとめ、中央新幹線整備の意義について、要 諮問を受け、交通政策審議会陸上交通分科会鉄道部会の下に設置された。中央新幹線小委員会は、審議と検討を重ねた結果につき、平成23年5月12日に答申をまとめ、中央新幹線整備の意義について、要 旨、以下の指摘がなされた(乙3の1)。 三大都市圏を高速かつ安定的に結ぶ幹線鉄道路線の充実中央新幹線の整備は、主として東海道新幹線が担ってきた三大都市圏の大動脈の機能強化に加え、二重系化による災害リスクへの備えとなるものであり、三大都市圏間の高速かつ安定的な旅客輸送を中長期的に維持・強 化するものである。 三大都市圏以外の沿線地域に与える効果中央新幹線の整備は、三大都市圏以外の沿線地域においても、三大都市圏とのアクセス利便性を向上させ、地域が主体的かつ戦略的な活性化方策を実施することと相まって、地域振興に寄与することが期待される。 東海道新幹線の輸送形態の転換と沿線都市群の再発展 中央新幹線の整備により、東海道新幹線の「のぞみ」型の旅客輸送が担っているニーズの多くが中央新幹線に転移することにより、東海道新幹線のサービスも相対的に「ひかり」「こだま」型を重視した輸送形態へと変革することが可能となり、東海道新幹線利用者の利便性向上や沿線地域の活性化に寄与する。 三大都市圏を短時間で直結する意義中央新幹線の整備により、三大都市圏は相互に約1時間で結ばれ、日本の人口の約半数(6000万人)が含まれる巨大な都市集積圏域が形成され、三大都市圏それぞれの地域活性化方策と相まって、日本の国土構造の変革や、国際競争力を向上させる好機をもたらす。 世界をリードする先進的な鉄道技術の確立及び他の産業への波 成され、三大都市圏それぞれの地域活性化方策と相まって、日本の国土構造の変革や、国際競争力を向上させる好機をもたらす。 世界をリードする先進的な鉄道技術の確立及び他の産業への波及効果日本が独自に開発して来た高速鉄道技術である超電導リニア方式の導入による中央新幹線の整備は、高速鉄道のイノベーションとして、世界的に日本の鉄道技術を発信するとともに、周辺産業の活性化にも大きく寄与する。 イ本事業に係る工事実施計画本事業は、全幹法9条に基づく国土交通大臣の認可を受けたものであるところ、具体的には品川・名古屋間の工事実施計画(その1)については、平成26年10月17日に、同工事実施計画(その2)については、平成30年3月2日に、それぞれ認可を受けたものである(甲36、前提事実⑴ア)。 そして、同工事実施計画(その1)の概要は、品川駅と名古屋駅の間に、神奈川県、山梨県、長野県及び岐阜県にそれぞれ駅を設けること、線路延長285.6kmのうち、トンネル部分が246.6kmと全体の約86%を占めること、完成予定時期を平成39年(令和9年)とすることなどである(甲36)。 ウ本事業の総工事費等 本事業のうち、品川・名古屋間の総工事費は、工事実施計画(その2)の時点で5.52兆円の見込みであったが、難工事への対応、地震対策の充実、発生土の活用先の確保等の理由により工事費が増加したとして、令和3年4月の時点で7.04兆円が見込まれるものとされた。被告は、その工事資金の確保及び健全経営のための方策につき再確認し、令和10年度中には、増 加した総工事費を賄う資金を確保できるとの見通しを明らかにした。(甲121)エ本事業における地震への対応 金の確保及び健全経営のための方策につき再確認し、令和10年度中には、増 加した総工事費を賄う資金を確保できるとの見通しを明らかにした。(甲121)エ本事業における地震への対応本件工事で建設が予定されている新幹線構造物は、最新の耐震基準等を踏まえて設計、建設される。また、超電導リニア方式では、車両がガイドウェ イ側壁に囲まれていることから脱線しない構造である上、強力な磁気ばねの作用で常にガイドウェイの中心に車両を保持するとともに、浮上の空隙を約10cm確保することで、地震時の揺れとガイドウェイのずれに対処することができる。加えて、地震発生の際には、東海道新幹線において実績のある早期地震警報システムにより早期に列車を原則停止させることが予定され ている。(乙17)オ本事業における自然環境保全への対応被告は、本事業ないし本件工事による自然環境への影響に関し、平成26年8月「中央新幹線(東京都・名古屋市間)環境影響評価書」として取りまとめるなどした上で、自然環境の保全措置を講じるとしている(乙33、弁 論の全趣旨)。 ⑵ 本事業ないし本件工事にかかる現状等ア静岡県による問題提起等本件工事に関しては、リニア路線が通過する静岡県において、従前から大井川の水資源への影響等についての問題が提起されているところ、同県中央 新幹線対策本部は、令和元年6月6日付け「中央新幹線建設工事における大 井川水系の水資源の確保及び水質の保全等に関する中間意見書」を取りまとめ、被告に対し、南アルプストンネル工事に伴って生じる可能性のある湧水や、減少する河川流量への対応を求めるなどした。これに対し、被告から静岡県に、その対応策等についての回答がなされ、 書」を取りまとめ、被告に対し、南アルプストンネル工事に伴って生じる可能性のある湧水や、減少する河川流量への対応を求めるなどした。これに対し、被告から静岡県に、その対応策等についての回答がなされ、それ以後も、静岡県と被告との間で工事内容や方法の是非についての議論がなされている。(甲7、2 9、30、83、90、100)イ本件工事の進捗等 本件工事については、複数の地域で既に着工がなされているが、神奈川県内に設置が予定されている駅の周辺において、工事の前提となる用地交渉が難航しているとの報道がなされたり、平成31年、工事が着工された 岐阜県中津川市内の中央アルプストンネル山口工区において、土砂の崩落が生じるなどしている(甲12、13、101)。 山梨県内においては、本件区間の東側に隣接する地域において、令和2年の時点で、リニア路線の高架橋等を新設する請負工事契約が締結され、工事が開始されている(甲157)。 本件工事については、上記アの静岡県の対応等による静岡工区での着工が遅れていることなどから、令和3年の時点で、被告の役員から、工事実施計画で予定された時期の完成、開業は困難である旨の発言がなされるなどしている(甲167)。 ⑶ 超電導リニア方式の技術開発等 ア本事業において導入が予定されている超電導リニア方式(超電導磁気浮上方式)については、山梨実験線において走行試験が繰り返されているところ、超電導磁気浮上式鉄道実用技術評価委員会による平成17年3月11日時点の技術評価において、車輪走行及び浮上走行での等速走行試験、2組の3両編成車両によるすれ違い走行試験(明かり区間では相対1003km/h、 トンネル区間では相対900km/h)、試乗走行試験、信 技術評価において、車輪走行及び浮上走行での等速走行試験、2組の3両編成車両によるすれ違い走行試験(明かり区間では相対1003km/h、 トンネル区間では相対900km/h)、試乗走行試験、信頼性・耐久性能に 関わる高性能確認試験、異常時対応(特殊)試験、耐久性試験等が行われたのに対し、輸送システム性能評価として500km/hでの走行安定性、高レベルな加減速性能・走行制御精度、定時運転性、複数列車の運行制御性能及び走行安定性、超高速大量輸送システムとして成立していくに必要な安全性等が確認されたとの評価がなされている(乙32)。 イまた、平成29年2月17日に開催された超電導磁気浮上式鉄道実用技術評価委員会において、営業線に必要な技術開発が完了したとの評価がなされた上、それ以後も確立した実用技術について、より一層の保守の効率化や快適性の向上等を目指した技術開発が進められている(乙12)。 ウ現在においても、山梨実験線において、午前9時から午後6時にかけて、 1時間当たり2往復から3往復程度の走行試験が行われている(甲138、174)。 ⑷ 本件区間における工事についてア本件区間における新幹線構造物被告が本件区間において建設を予定している新幹線構造物につき、標準的 な高架橋の概要は以下のとおりである(甲86、126)。 防音防災フード設置区間事業用地の幅 21.6m防音防災フードの幅 13.6m防音防災フードの壁面から事業用地の端まで 4m 高架橋の設置スパン約40m高架橋の高さ約20m 防音壁設置区間事業用地の幅 21.6m防音壁間 地の端まで 4m 高架橋の設置スパン約40m高架橋の高さ約20m 防音壁設置区間事業用地の幅 21.6m防音壁間の距離 16m 防音壁の壁面から事業用地の端まで 2.8m 高架橋の設置スパン約40m高架橋の高さ約20mイ本件区間における工事工程本件区間において予定されている新幹線構造物の建設工事にかかる工程は、完成までに約7年を要するとされており、基礎工、下部工及び上部工に ついては3年目まで、フード架設工及びガイドウェイ設置工については2年目から4年目まで、電気機械設備工については3年目から7年目まで行われることが予定されている(甲141)。 ⑸ 本事業による本件区間沿線の騒音についてア本件区間において、リニア走行時に予想される騒音レベルは以下のとおり である(甲66、95)。 防音防災フードが設置された区間高架橋高さが約15mないし20mであることを前提に、車両が走行するガイドウェイの中心から25mの地点で65dB、50mの地点で62dB。 防音壁区間高架橋高さが約15mであることを前提に、ガイドウェイの中心から約25m、50m、70m離れた各地点でいずれも79dB。200m離れた場所で74dB以下。 イ新幹線環境基準 新幹線環境基準(昭和50年7月29日環境庁告示第46号)は、公害対策基本法9条の規定に基づく騒音に係る環境上の条件であり、環境基本法16条1項の規定に基づく騒音に係る環境上の条件につき、生活環境を保全し、人の健康の保護に資する上で維持す 告示第46号)は、公害対策基本法9条の規定に基づく騒音に係る環境上の条件であり、環境基本法16条1項の規定に基づく騒音に係る環境上の条件につき、生活環境を保全し、人の健康の保護に資する上で維持することが望ましい新幹線鉄道騒音に係る基準として以下のとおり告示された(乙1)。 a 地域の類型Ⅰ(主として住居の用に供される地域) 70dB以下b 地域の類型Ⅱ(商工業の用に供される地域等Ⅰ以外の地域であって通常の生活を保全する必要がある地域)75dB以下 被告は、前記のとおり、本件区間における騒音対策として、新幹線環境 基準を遵守し、これを踏まえた家屋の防音工事等の措置を講じる予定であるとしている(甲126)。 ウ微気圧波について 微気圧波とは、列車のトンネル突入により生じた圧縮波がトンネル内を音速で伝播し、反対側の坑口などからパルス状の圧力波となって放射され る現象である。微気圧波が大きくなると、トンネル坑口(出口)等で衝撃音(ドン音)が聞こえたり、周辺家屋の窓枠や戸が振動したりすることが知られている。 微気圧波の主成分は20Hz以下であり、低周波音の一つに分類される。 また、微気圧波の大きさは坑口に到達した圧縮波の波面圧力勾配にほぼ比 例することから、その低減には圧力勾配を小さくする必要があるとされ、そのためには、トンネルの列車突入側坑口に緩衝工を設置したり、列車先頭部の延伸・形状の最適化などにより圧力勾配を小さくすることが効果的であるとされる。 (以上につき、乙13、14) 微気圧波はパルス状の圧力波であり、継続時間が極めて短いことも勘案し、騒音レベルであるdB表示とするより、圧力レベルであるPa表示 あるとされる。 (以上につき、乙13、14) 微気圧波はパルス状の圧力波であり、継続時間が極めて短いことも勘案し、騒音レベルであるdB表示とするより、圧力レベルであるPa表示とすることが適切であるとされる(乙14)。 被告は、防音防災フードの切れ目に当たる防音壁区間において生じる微気圧波について、必要な箇所には緩衝工等を設置するなどとした上で、実 験線での実績をもとに、列車の走行によって生じる微気圧波は、緩衝工端 部中心から20mの距離で42Paと予測され、基準値(坑口中心から20m地点で原則50Pa以下)との整合が図られるとしている(甲126、乙33)。 ⑹ 本事業又は本件工事による本件区間沿線における騒音以外の影響についてア振動 列車走行に係る振動基準については、「新幹線鉄道振動に係る指針値(昭和51年環大特第32号)」において「70dBを超える地域について、振動源及び障害防止対策を講ずること。」との指針が示され、70dBが基準値とされているところ、振動の目安として、70dBとは「大勢の人に感じる程度のもので、戸、障子がわずかに動く」程度のものであり、以下、60d Bは「静止している人だけ感じる」、50dBは「人体に感じない程度」のものとされている(甲126)。 本件区間における、16両編成によるリニア走行時に予測される振動レベルは、62dB以下である(甲95、126)。 また、リニア車両は、浮上走行時において、列車荷重が高架橋等の構造物 全体に分散し、構造物に伝わる振動が小さくなる上、車体重量も軽いことから、在来型新幹線よりも地盤振動が小さくなるとされる(甲126)。 イ眺望・景観本件区間のうち、原告ら各所有地の 全体に分散し、構造物に伝わる振動が小さくなる上、車体重量も軽いことから、在来型新幹線よりも地盤振動が小さくなるとされる(甲126)。 イ眺望・景観本件区間のうち、原告ら各所有地の近傍は、南北に走る中部横断自動車道の高架が存在するものの、それ以外は概ね田畑や住宅地が広がる地域であり、 甲府盆地を囲む山地を見渡すことが可能である(甲128ないし132、162)。 ウ磁界リニア走行時に予想される磁界については、国際的なガイドラインであるICNIRPのガイドラインの基準値が1.2mTであるのに対し、本件区 間においては、地表1.5mの地点で0.002mTである(甲126)。 エ日影時間本件区間における高架橋建設後の日影時間の予測は、南アルプス市(住所省略)においては、リニア路線の直近で7時間、南アルプス市(住所省略)においては、リニア路線から20m北西の地点で8時間などと予測されている(甲66)。 ⑺ 被告による地域住民に対する説明状況等ア被告は、南アルプス市内の本件区間近傍の住民等に対し、本件工事に関する説明会等を実施し、その中で工事着手までの流れや事業用地の用地取得までの流れ、具体的な工事の概要、工程、施工手順、工事に伴う環境保全措置、補償の内容などについての説明や意見交換等を行っている(甲86、95、 126)。 イ被告は、上記説明会等において沿線住民に対する補償や各種被害への対策を行う意向であることを明らかにしているところ、原告らに対しても、本件訴訟における前記被告の主張のとおり、以下のように、各基準に基づいた補償等を行っていく旨を明らかにしている(弁論の全趣旨)。 事業用地の取得に伴う補償 しても、本件訴訟における前記被告の主張のとおり、以下のように、各基準に基づいた補償等を行っていく旨を明らかにしている(弁論の全趣旨)。 事業用地の取得に伴う補償損失補償基準要綱、損失補償基準及び細則に基づく補償 日照被害に対する補償日陰損害通知及び日陰農作物損害指針に基づく補償 列車走行時の騒音対策 新幹線環境基準の遵守及び家屋の防音工事等の措置 高架橋工事中の騒音・振動対策特定建設作業に伴って発生する騒音の規制に関する基準(昭和43年11月27日厚生省・建設省告示第1号)、振動規制法施行規則別表第1に定める特定建設作業の規制に関する基準、騒音に係る環境基準について (平成10年9月30日環境庁告示第64号)及び振動規制法施行規則別 表第2に定める道路交通振動の限度の遵守⑻ 原告らの各所有地に関する状況等ア原告ら各所有地の近傍地の取引状況 本件土地(D)の西方、リニア路線の北方約20mに位置する宅地が令和元年9月に中古住宅付きで売りに出されたものの、現在まで、買手がつ いていない(甲18、原告D・8、9頁)。 本件土地(F)の北側の造成地につき、平成25年から4区画の宅地の販売が開始され、事業用地としてポイント杭が打たれる前には3区画が売買されたが、残りの1区画(南アルプス市(住所省略))についてはポイント杭が打たれた後、買手がキャンセルするなどしたが、現在は、宅地とし て販売され住居が建築されている(甲20、48、原告A・14、15頁、原告F・8、9頁)。 イ原告ら各自が求めている事項原告らは、原告本人尋問において、被 は、宅地とし て販売され住居が建築されている(甲20、48、原告A・14、15頁、原告F・8、9頁)。 イ原告ら各自が求めている事項原告らは、原告本人尋問において、被告に対し、各所有地に関して、それぞれ以下の対応等を求めている。 原告Aは、平成30年頃から、本件区間の近傍の住民らにより構成されるリニア対策協議会の代表として活動しているところ、被告が予定している事業用地の幅につき、21.6mではなく、それ以上の緩衝帯を設けた上で、住民に対する移転補償等を行うことを求めている(原告A・9、10頁)。 原告Dは、その所有する本件土地(D)の南東10m弱の地点に新幹線構造物が位置することになるところ、列車の走行音等による騒音、日照被害、土地の資産価値の下落、構造物による圧迫感等に対する不安を抱いており、被告に対しては被害が発生した場合の正当な補償を求めている(原告D・5、6、8頁)。 原告Eは、新幹線構造物が建設されることにより、日中、ほぼ日照が望 めなくなることや風通しが悪くなること、騒音や振動、それに伴う健康被害に不安を抱いており、被告が提示する本件土地(E)南東の三角地部分だけの買取りではなく、転居を前提にした土地全体についての補償を求めている(原告E・2、3、6、8、9頁)。 原告Fは、本件土地(F)上で若い経営者に貸与している工場において、 半導体製造装置関連の業務が行われているところ、本件工事等による振動によって、その製造工程に影響が生じることや、振動、電磁波、低周波等によって従業員の健康被害が生じること、列車走行による微気圧波の発生等を危惧しており、被告に対し、リニア路線から離れた場所への工場移転のための補 製造工程に影響が生じることや、振動、電磁波、低周波等によって従業員の健康被害が生じること、列車走行による微気圧波の発生等を危惧しており、被告に対し、リニア路線から離れた場所への工場移転のための補償を求めている(原告F・1ないし8頁)。 原告Bは、新幹線構造物が建設されることにより、本件土地(B)が日陰となることで耕作が困難になることや、騒音等によって宅地転用を前提にした資産価値が減少することなどに不安を抱いており、被告に対し、Gグラウンド付近の防音壁設置区間に防音防災フードを設けることや、土地全体について買取することを求めている(原告B・3、4、9頁)。 原告Cは、事業用地によって本件土地(C)が東西に分断され、従前は駐車場として貸していたものが、駐車場として利用することも困難になったなどとした上で、近傍のGグラウンド付近が防音壁区間になることにつき、工事先行ではなく、周辺住民に対する十分な事前説明を行い、理解を得た上で工事を開始することを求めている(原告C・2ないし4、7頁)。 ウ原告ら各所有地につき、平成31年度の固定資産評価額はそれぞれ以下のとおりである。 本件土地(A) 17万1549円(甲39) 本件土地(D) 270万7562円(甲42) 本件土地(E) 391万8555円(甲45) 本件土地(F) 1447万0768円(甲44) 本件土地(B) 14万9040円(甲40) 本件土地(C) 417万0663円(甲41) 2 争点⑴(人格権に基づく妨害予防請求権としての差止めの可否)について⑴ 人格権に基づく妨害予防請求権としての差止めが認められるためには、原告らにお 土地(C) 417万0663円(甲41) 2 争点⑴(人格権に基づく妨害予防請求権としての差止めの可否)について⑴ 人格権に基づく妨害予防請求権としての差止めが認められるためには、原告らにおいて、原告らが受ける具体的被害の危険性が存在することを前提に、侵 害行為の態様、侵害の程度、被侵害利益の性質と内容、侵害行為の持つ公共性ないし公益性の内容と程度を比較衡量し、さらに被害の防止に関し採り得る措置の有無、内容、効果等の事情を考慮することによって、当該被害を避けるために、差止めによって生じる侵害者側の損失ないし社会的損失を踏まえても、なお工事自体を差し止める必要があると認めるのが相当であると判断される 程度の違法性が存在することが必要であると解される。 そして、認定事実⑴アのとおり、本事業には、国際競争力の向上や災害対策等も見据えた、国家レベルの大きな社会経済上の意義があると言え、本事業及び本件工事には、高度な公共性、公益性が存在するものと認められる。 ⑵ このことを踏まえ、以下、本事業ないし本件工事によって原告らが受けると 主張する被害項目ごとに、原告らの被告に対する差止請求が認められるかにつき、検討する。 ア騒音 微気圧波による騒音被害原告らは、別紙3のGグラウンド付近に設けられる予定の、防音防災フ ードの欠落部分において、微気圧波が生じ、これによって119dBから126dBという通常経験し得ないレベルの騒音が発生する旨主張するところ、確かに、食品微生物学者である秋田大学名誉教授Hによる「リニア中央新幹線の騒音問題」(甲22)には、山梨実験線で測定された微気圧波の予測値(トンネル出口20mで42Pa、50mで28Pa、80m で18Pa)をもとに、これを音圧レベル(dB)へ換 ニア中央新幹線の騒音問題」(甲22)には、山梨実験線で測定された微気圧波の予測値(トンネル出口20mで42Pa、50mで28Pa、80m で18Pa)をもとに、これを音圧レベル(dB)へ換算した上で、11 9dBから126dBという前記数値が算出されていることが認められる。 しかし、証拠(経済産業省産業技術環境局監修「三訂公害防止の技術と法規騒音編」(甲70))によれば、音圧の単位であるPaについて対数を用いた換算式によって得られる音圧レベル(dB)は、人の耳に聞こ える音の周波数を踏まえて補正を加える形で得られる騒音レベル(dB)とは異なるものであることからすると、微気圧波の予測値であるPaから換算した音圧レベル(dB)の数値をもって、上記防音防災フードの欠落部分における、騒音被害の根拠とすることはできないと言うべきである。 また、認定事実⑸ウ及びのとおり、微気圧波はその性質上、継続時 間が極めて短く、これによって騒音が生じるとしても、単発的なものにとどまると考えられることも踏まえると、微気圧波による騒音被害の程度は必ずしも大きいとは言えない。 これらのことからすると、上記防音防災フードの欠落部分で生じる微気圧波に伴う騒音が生じるとしても、本件工事につき、工事自体を差し止め る必要があると認めるのが相当であると判断される程度の違法性が存在するとは認められない。 リニア走行時における騒音について原告らは、原告らの各所有地において、リニア走行時、通常の生活が維持、保全できるレベルではない程度の騒音、特に夜間については直接的に 死に至る危険がある程度の騒音が生じる旨主張するところ、具体的にどの程度の騒音被害が生じるのか、現時点では必ずしも明ら が維持、保全できるレベルではない程度の騒音、特に夜間については直接的に 死に至る危険がある程度の騒音が生じる旨主張するところ、具体的にどの程度の騒音被害が生じるのか、現時点では必ずしも明らかではないものの、原告らの各所有地がリニア路線の直下又は至近に位置することを踏まえれば、何らかの騒音被害が生じることが予想される。 もっとも、上記認定事実によれば、被告は、新幹線環境基準を遵守する 形での騒音対策を講じるとしているところ(認定事実⑸イ)、本件区間 については上記Gグラウンド付近を除いて防音防災フードを設置するものとしており、この防音防災フードの設置区間において、その騒音レベルは新幹線環境基準を下回ると予想されていることに加え(認定事実⑸ア)、防音防災フードのない区間についても防音壁を設置した上で、個別の対策として家屋の防音工事等の措置を講じるとしている(認定事実⑸イ )。 このように、本件区間において予想されるリニア走行時の騒音について、被告において相応の対策がなされることが予定されていることからすると、本件工事につき、リニア走行時の騒音を原因とする工事自体を差し止める必要があると認めるのが相当であると判断される程度の違法性が存 在するとは認められない。 本件工事による騒音について原告らは、本件工事の際に重機等によって長期にわたり大きな騒音被害を受ける旨主張するところ、上記認定事実のとおり、本件区間における新幹線構造物の建設工事に要する期間は約7年間と比較的長期であること (認定事実⑷イ)や、建設する新幹線構造物の規模(認定事実⑷ア)に照らせば、本件工事に伴って、何らかの騒音被害が生じることが想定される。 もっとも、上記認定事実のとおり、被 あること (認定事実⑷イ)や、建設する新幹線構造物の規模(認定事実⑷ア)に照らせば、本件工事に伴って、何らかの騒音被害が生じることが想定される。 もっとも、上記認定事実のとおり、被告において、本件工事に伴う騒音に関しても、各種の規制基準に従って、工事を実施するとしていること(認定事実⑺イ)や、工事の内容についても、7年間につき異なる工程が順 次実施されるものであって(認定事実⑷イ)、騒音の程度も工程によって異なるものと考えられることからすると、本件工事における騒音を踏まえても、本件工事自体を差し止める必要があると認めるのが相当であると判断される程度の違法性が存在するとは言えないというべきである。 イ振動 原告らは、本件工事の際や、本事業によるリニア走行時において、本件 区間近傍の土地に一定の振動による被害が生じる旨主張するところ、これらの際に何らかの振動が生じることは被告もこれを認めているところである。 もっとも、原告らにおいて、本件工事やリニア走行によって生じる振動被害の具体的な程度に関する立証がなされているとは言えず、原告らに具 体的被害の危険性が存在すると認めるに足りる証拠はない。 そして、上記認定事実によれば、被告は、リニア走行時に生じることが予想される振動レベルにつき、16両編成による走行での予測値を62dB以下としているところ、かかる予測値は、列車走行に係る振動基準における指針の基準値(70dB)を下回るものである上、その程度も「静止 している人だけに感じる」とされる60dBに近い程度のものである(認定事実⑹ア)。 このような、被告が予測値として設定する振動レベルに加え、上記認定事実のとおり、リニア車両が在来型新幹線よりも地盤振動が じる」とされる60dBに近い程度のものである(認定事実⑹ア)。 このような、被告が予測値として設定する振動レベルに加え、上記認定事実のとおり、リニア車両が在来型新幹線よりも地盤振動が小さくなるという特徴を有していること(認定事実⑹ア)も併せれば、リニア走行時に、 原告らが受ける可能性のある振動による被害の程度は、大きいとは言えないと解される。 したがって、本件工事の際や、本事業によるリニア走行時における振動を踏まえても、本事業の前提となる本件工事自体を差し止める必要があると認めるのが相当であると判断される程度の違法性が存在するとは言え ないというべきである。 また、本件工事の際に重機等によって生じる振動についても、上記認定事実のとおり、本件区間における工事期間は約7年間と比較的長期ではあるものの(認定事実⑷イ)、被告は、各種の規制基準に従って、工事を実施するとしていること(認定事実⑺イ)からすると、やはり、本件工事自 体を差し止める必要があると認めるのが相当であると判断される程度の 違法性が存在するとは言えないというべきである。 したがって、本事業又は本件工事に伴って生じる振動被害を理由とする本件工事の差止請求は、認められない。 ウ低周波音、高周波音上記ア及びイのとおり、本事業及び本件工事に際して、工事そのものや列 車の走行によって何らかの騒音や振動が生じることからすると、それに伴い、低周波音や高周波音が発生する可能性があることは否定できない。 もっとも、本事業や本件工事によって、具体的に生じる低周波音や高周波音の内容、程度を示す証拠はなく、これらによって原告らに具体的な健康上の被害が生じると認めるに足りる証拠はない。 エ景観 本事業や本件工事によって、具体的に生じる低周波音や高周波音の内容、程度を示す証拠はなく、これらによって原告らに具体的な健康上の被害が生じると認めるに足りる証拠はない。 エ景観 景観利益は、これが侵害された場合に被侵害者の生活妨害や健康被害を生じさせるという性質のものではないこと、景観利益の保護は、一方において当該地域における土地・建物の財産権に制限を加えることとなり、その範囲・内容等をめぐって周辺の住民相互間や財産権者との間で意見の対 立が生ずることも予想されるのであるから、景観利益の保護とこれに伴う財産権等の規制は、第一次的には、民主的手続により定められた行政法規や当該地域の条例等によってなされることが予定されているものということができることなどからすれば、ある行為が景観利益に対する違法な侵害に当たるといえるためには、少なくとも、その侵害行為が刑罰法規や行 政法規の規制に違反するものであったり、公序良俗違反や権利の濫用に該当するものであるなど、侵害行為の態様や程度の面において社会的に容認された行為としての相当性を欠くことが求められると解するのが相当である(最高裁判所平成18年3月30日第一小法廷判決・民集60巻3号948頁)。 原告らは、本件工事によって、本件土地周辺の景観が破壊される旨主張 するところ、上記認定事実によれば、本件区間に新幹線構造物が建設された場合、防音防災フード又は防音壁を伴う高さ20m程度の高架橋(認定事実⑷ア)が、北東から南西に向かって横断することとなるから(別紙2)、その直下又は近傍に位置する原告ら所有の各土地周辺の景観に一定の変化又は影響が生じることは確かである。 しかし、本件工事が何らかの刑罰法規や行政法規の規制に違反すると認 (別紙2)、その直下又は近傍に位置する原告ら所有の各土地周辺の景観に一定の変化又は影響が生じることは確かである。 しかし、本件工事が何らかの刑罰法規や行政法規の規制に違反すると認めるに足りる証拠はない。また、上記認定事実のとおり、本事業及び本件工事は、全幹法9条に基づく国土交通大臣の認可を受けたものであること(認定事実⑴イ)などからすると、それが公序良俗違反や権利の濫用に該当するものであるとは言えない。 したがって、本件工事は、その態様や程度の面において社会的に容認された行為としての相当性を欠くと言うことはできず、違法な権利侵害行為に当たるとは認められない。 よって、景観利益に対する侵害を理由とする差止請求は認められない。 オ眺望 居宅等からの眺望上の利益は、個人が居住することで得られる一つの生活利益ではあるが、不動産自体について有する排他的、独占的な支配と同じ意味において支配、享受できる利益とは異なり、周辺の客観的状況の変化によっておのずから変容、制約を受けざるを得ないものであって、一定時点において享受できていた眺望利益が当然に法的保護の対象となるも のではないというべきである。 したがって、眺望の利益は、特定の場所がその場所からの眺望の点で格別の価値をもち、当該場所からの眺望利益の享受が社会通念上客観的に独自の生活利益として承認されるべき重要性を有するものと認められる場合に限り法的保護の対象となるというべきであり、差止請求権が認められ るか否かは、かかる観点を踏まえた比較衡量により判断すべきものと解さ れる。 原告らは、本件工事によって原告らの各所有地からの眺望が喪失する旨主張するところ、上記認定事実のとおり、原告ら各所有地からは、遠くに 較衡量により判断すべきものと解さ れる。 原告らは、本件工事によって原告らの各所有地からの眺望が喪失する旨主張するところ、上記認定事実のとおり、原告ら各所有地からは、遠くに甲府盆地を囲む山地を見渡すことができ(認定事実⑹イ)、特に居宅を構える原告D及び原告Eについては、その各所有地が、上記の眺望を得られ る土地であり、また、証拠(原告E・2頁)によれば、原告Eは本件建物(E)の東側出窓から見える富士山を毎朝の楽しみにしていることが認められる。 もっとも、本件土地(D)及び本件土地(E)はいずれも住宅が立ち並ぶ地域における宅地であり、それぞれの居宅の周囲にも複数の住宅が隣接 していること(甲128、129)などからすると、それらの土地からの眺望が、法的保護の対象となると言えるまでの、格別の価値ないし当該利益の享受が社会通念上客観的に独自の生活利益として承認されるべき重要性を有する、とまでは言えないというべきである。 よって、原告らが主張する眺望を理由とする差止請求は、認められない。 カ電界、磁界、電磁波原告らは、リニアの走行に伴って電磁波等の被害が生じる旨主張するところ、上記認定事実のとおり、本事業には超電導リニア方式の導入が予定されていること(前提事実⑵ア)に照らせば、車両走行に際し、リニア路線の周辺にも一定の磁界が生じることが認められる。 もっとも、認定事実⑹ウのとおり、車両走行時に予想される磁界については、国際的なガイドラインの基準値を大きく下回るものとされており、山梨実験線における走行試験においても、磁界等の影響による人体等への被害が現に生じていることをうかがわせる結果は確認されておらず、原告らが主張するような、電界、磁界、電磁波によって、原 されており、山梨実験線における走行試験においても、磁界等の影響による人体等への被害が現に生じていることをうかがわせる結果は確認されておらず、原告らが主張するような、電界、磁界、電磁波によって、原告らに具体的被害の危険が生 じると認めるに足りる証拠はない。 キ地盤沈下、不等沈下原告らは、本件工事によって、地盤沈下や不等沈下等の被害が生じる旨主張するところ、上記認定事実のとおり、本件区間において建設が予定されている新幹線構造物は、高架橋の高さが約20mという規模の大きなものであり(認定事実⑷ア)、工事の規模自体も相応に大きいものであることなどか らすれば、本件工事が実施される地盤の性質等によっては、地盤沈下等が生じる可能性は抽象的には有り得る。 しかし、原告らの各所有地において、本件工事がなされることにより、地盤沈下等が生じる具体的な危険があると認めるに足りる証拠はない。 ク日照阻害 原告らは、本件工事によって新幹線構造物が建設された場合、原告らの各所有地への日影時間は、冬至において8時間前後にわたるなど、日照阻害の被害が生じる旨主張するところ、認定事実⑹ウのとおり、本件区間における新幹線構造物が建設された場合、原告らの各所有地近隣の地域において、リニア路線からの距離や位置関係に応じて、長ければ1日あたり7時間から8 時間程度の日影時間が生じることが認められる(認定事実⑹エ)。 しかし、上記認定事実のとおり、本件工事計画では、最大時速505kmでの走行という目的のため、直線走行に限りなく近づけるという技術上の要請があるところ(前提事実⑵ウ)、これを実現させるためには、明かり区間において高架橋を建設し、既存の住宅地やその至近に路線を設けることは不 可避である 走行に限りなく近づけるという技術上の要請があるところ(前提事実⑵ウ)、これを実現させるためには、明かり区間において高架橋を建設し、既存の住宅地やその至近に路線を設けることは不 可避であると言わざるを得ない。 そうすると、原告らの各所有地のように、リニア路線の直下又は至近の土地に対し、相当程度の日照阻害が生じることはやむを得ないというべきところ、上記認定事実のとおり、被告がそれらの被害に対し、基準に基づいた相応の補償を講じるとしていること(認定事実⑺イ)に照らせば、原告らが 主張する日照阻害の点を踏まえても、本件工事が、工事自体を差し止める必 要があると認めるのが相当であると判断される程度の違法性が存在するとは認められないというべきである。 ケ通風原告らは、本件工事によって通風の被害が生じる旨主張するところ、上記認定の本件区間において建設が予定されている新幹線構造物の規模に照ら せば、リニア路線の直下ないし近傍に位置する原告らの各所有地につき、建設の前後において風向きや風量に一定の変化が生じる可能性は否定できない。 もっとも、本件工事において、原告らに何らかの具体的被害が生じる程度の通風の変化が生じると認めるに足りる証拠はない。 コその他の被害(圧迫感等の身体的・精神的被害、大気汚染、周辺水路、河川等の枯渇、水質悪化、土壌汚染の拡散等)上記アないしケの各被害項目のほか、本件工事によって、原告らの人格権を侵害する具体的な危険が生じると認めるに足りる証拠はない。 ⑶ア加えて、原告らは、被侵害利益との比較衡量という点において、本事業自 体が実現不能であり、かつ反公益的であるとの理由から、人格権に基づく差止請求権が認められるべきである旨主張する。 イ ア加えて、原告らは、被侵害利益との比較衡量という点において、本事業自 体が実現不能であり、かつ反公益的であるとの理由から、人格権に基づく差止請求権が認められるべきである旨主張する。 イ上記認定事実⑵ア、イ及びによれば、本件工事は、静岡県によって水資源への影響等についての問題提起がなされていることや、工事着工の前提となる用地交渉が難航しているなどの事情が認められ、工事実施計画で予定 された時期の完成は不透明な状況にある。また、上記認定事実のとおり、本件工事は、トンネル部分が全体の約86%を占めるなど、難工事が予想されることについては、被告自身も認めているところである(認定事実⑴ウ)。 しかし、上記認定事実のとおり、本件工事については、本件区間の東側に隣接する地域など、既に複数の地域で着工が開始している上(認定事実⑵イ )、被告においては、かかる状況のもと、工事実施計画(その2)における 総工事費の見込額が増加することを踏まえて、これに対する資金確保等を行うなど、本件工事の完成に向けた具体的対応を取っていることなどからすれば、本事業自体が実現不能であると言うことはできない。 原告らは、他にも本事業が経済的側面から見て破綻が見込まれること、被告の企業としての財政的悪化により、計画自体廃止の運命にあるなどと主張 し、かかる主張を支える内容の証拠(甲28)を提出するものの、それらの内容はあくまで将来予測の一つにとどまると言うべきであり、このことをもって本事業自体が実現不能であると認めることはできず、原告らの主張は採用できない。 ウさらに、本件工事の大半を占めるトンネル工事が自然環境に一定の影響を 及ぼし得るものであること、超電導リニア方式は、これまでにない鉄道旅客システムであ 、原告らの主張は採用できない。 ウさらに、本件工事の大半を占めるトンネル工事が自然環境に一定の影響を 及ぼし得るものであること、超電導リニア方式は、これまでにない鉄道旅客システムであって、従来とは異なる安全上の技術的課題が想定されること、リニア路線が地震帯を通ることから、発生が予想される首都直下型地震や東海地震等による被害を受ける可能性があることは否定できない。 しかし、上記認定事実のとおり、被告は、本事業を進めるに当たり、「中央 新幹線(東京都・名古屋市間)環境影響評価書」として取りまとめるなど、自然環境保全への対応を行っていること(認定事実⑴オ)、超電導リニア方式については、山梨実験線における走行試験によって段階的に技術開発が進められ、安全性についての評価を得た現在も、継続的な走行試験によって技術的課題の改善又は向上が図られていること(認定事実⑶)、将来確実に起 こるであろう大地震を踏まえた地震への具体的対応策が図られていること(認定事実⑴エ)が認められることからすれば、原告らが主張する事実をもって、本事業が反公益的であると言うことはできず、原告らの主張は採用できない。 ⑷ 以上のとおり、原告らの被告に対する人格権に基づく妨害予防請求権として の差止請求には理由がない。 3 争点⑵(財産権に基づく妨害予防請求権としての差止めの可否)について⑴ 原告らは、本件工事計画が具体化し、リニアの路線予定地が明確になった段階で、原告らの所有不動産の資産価値(交換価値)の減少という財産的被害が生じている旨主張し、財産権に基づく妨害予防請求権としての本件工事の差止めを求めている。 そして、本事業ないし本件工事によって、リニア路線の直下又は近傍に位置することとなる原告らの 生じている旨主張し、財産権に基づく妨害予防請求権としての本件工事の差止めを求めている。 そして、本事業ないし本件工事によって、リニア路線の直下又は近傍に位置することとなる原告らの各所有地につき、将来的に予想される騒音や日照阻害の影響等により、その資産価値がある程度低下する事実は否定できず、現に、認定事実⑻アのとおり、原告らの各所有地近傍の宅地の取引に影響が生じている事実が認められる。 このことを踏まえ、以下、所有権に基づく妨害予防請求権としての差止めの可否及び不動産の交換価値の下落を理由とする差止めの可否につき、それぞれ検討する。 ⑵ 所有権に基づく妨害予防請求権としての差止めの可否物権的請求権である所有権に基づく妨害予防請求権としての差止めが認め られるためには、所有権に対する違法な侵害がなされるおそれがあることを要するものと解される。 そして、上記認定事実のとおり、被告は、原告らの各所有地(ただし、本件土地(D)を除く。)につき、それぞれその一部をリニア路線の事業用地として取得しようとしているものの、被告による原告らの各所有地に対する買収は、 1次的には損失補償基準要綱、損失補償基準及び細則に定められた一定の基準を踏まえ、原告ら各自との間の任意の交渉による合意に基づいてなされ、仮に合意が得られない場合には、2次的に土地収用法に基づく収用手続によってなされることが予定されている。 このように、被告の原告らの各所有地に対する買収が、合意又は法律に基づ きなされるものであることからすると、原告らの各所有地にかかる所有権(物 権)に対し、被告による違法な侵害のおそれがあるとは認められない。 したがって、原告らの被告に対する所有権に基づく妨害予防請求権としての差止め すると、原告らの各所有地にかかる所有権(物 権)に対し、被告による違法な侵害のおそれがあるとは認められない。 したがって、原告らの被告に対する所有権に基づく妨害予防請求権としての差止めは認められないというべきである。 ⑶ 不動産の交換価値の下落を理由とする差止めの可否不動産の交換価値の下落を理由とする差止めが認められるか否かは、 前記同様、被侵害利益と、侵害行為の持つ公共性ないし公益性との比較衡量により、差止めによって生じる侵害者側の損失や社会的損失を踏まえても、なお工事自体を差し止める必要があるかによって判断すべきであると解される。 そして、上記認定事実のとおり、本件工事の着手等によって、原告らの各所有地の交換価値が下落しているものの、それらは金銭的賠償ないし補償等を通 じて回復され得る性質のものであるのに対し、本事業又は本件工事には、前記のとおり国家レベルの大きな社会経済上の意義が認められ、公共性ないし公益性のあることが明らかであることからすると、被告による本件工事の着手について、原告らが所有する不動産の交換価値の下落を理由とする工事自体を差し止める必要がある程度の違法性があるとは認められない。 よって、不動産の交換価値の下落を理由とする差止めは認められない。 ⑷ 小括以上から、原告らの被告に対する財産権に基づく妨害予防請求権としての差止請求には、理由がない。 4 争点⑶(不法行為に基づく損害賠償請求の可否)について ⑴ 事業用地についてのみ用地取得に伴う補償をするという被告の対応が、不法行為に当たるかア原告らは、被告が事業用地についてのみ用地取得に伴う補償をするという対応をしており、かかる対応が不法行為に当たる旨主張するところ、認定事実⑻イに するという被告の対応が、不法行為に当たるかア原告らは、被告が事業用地についてのみ用地取得に伴う補償をするという対応をしており、かかる対応が不法行為に当たる旨主張するところ、認定事実⑻イによれば、原告らがその各所有地につき、被告が事業用地として取得 するにあたって、土地の一部ではなく、全部を取得する形での補償や移転補 償を求めている事実が認められるのに対し、弁論の全趣旨によれば、被告が予定している事業用地の取得に伴う補償は、事業用地の範囲でのみの取得となる可能性や、残地部分が生じる可能性がある。 イしかし、被告による事業用地の取得に伴う補償の提示は、あくまで取得予定地の所有者との間での任意の交渉により、合意に基づいて土地を買い受け ることを念頭になされる条件提示であるから、それ自体が違法であるとは認められない。 そして、目的物の売主である土地所有者は、かかる条件提示に対し、これに応じるか否かを任意に選択するものであることに加え、提示された条件をそのまま強制的に受け入れることが義務付けられているわけでもなく、かつ、 提示された条件に対して再検討を求めたり、対案を提示することが不可能とされているわけでもないことからすると、事業用地の取得に係る被告の対応は、原告らの何らかの法的利益を侵害するものとも言えない。 したがって、被告における対応が、一方的かつ断定的であり、原告らにおいて、被告が提示する条件を受け入れなければならないと誤信するような対 応に終始したというのであれば格別、条件提示にとどまるような用地取得に関する被告の対応が、原告らに対する不法行為に当たるとは認められない。 ⑵ 被告の本件工事の着手が、原告らの各所有地の交換価値下落という財産的損害を生ぜしめるものとして、不法行為 うな用地取得に関する被告の対応が、原告らに対する不法行為に当たるとは認められない。 ⑵ 被告の本件工事の着手が、原告らの各所有地の交換価値下落という財産的損害を生ぜしめるものとして、不法行為に当たるかア本事業又は本件工事のような公共性、公益性のある侵害行為によって、何 らかの法的利益が侵害された場合に、それが違法な権利侵害として不法行為に基づく損害賠償請求の対象となるかは、侵害行為の態様、侵害の程度、被侵害利益の性質と内容、侵害行為の持つ公共性ないし公益性の内容と程度を比較衡量し、被侵害者の受忍限度を超えるものであるか否かによって決せられるべきであると解される。 イこの点、原告らは、被告が本件工事に着手したことによって、原告らの各 所有地はいずれもその交換価値がゼロとなり、原告らの財産的損害が現実化している旨主張するところ、認定事実⑻アのとおり、原告らの各所有地近傍の宅地につき、買手がつきにくいなどの不動産取引上の影響が生じていることなどからすると、本件工事の着手に伴い、原告らの各所有地にかかる財産的価値もある程度下落している可能性があるものと認められる。 もっとも、原告らの各所有地にかかる価値下落の一要因であると考えられる、本事業及び本件工事による将来の騒音や日照被害等に関しては、具体的な被害が生じるに至った場合に、別途、原告らに対し、各種の補償基準に基づいた被告による一定の補償がなされる可能性があることや、交換価値自体、社会経済情勢等によって変動し得るものである一方、本事業又は本件工事に は、前記のとおり高度な公共性、公益性が認められることからすると、本件工事の着手に伴う各所有地の財産上の交換価値の下落という不利益は、原告らの受忍限度の範囲にとどまるというべ 又は本件工事には、前記のとおり高度な公共性、公益性が認められることからすると、本件工事の着手に伴う各所有地の財産上の交換価値の下落という不利益は、原告らの受忍限度の範囲にとどまるというべきである。したがって、原告らの各所有地の交換価値の下落を理由とする損害賠償請求についても、違法な権利侵害の事実があるとは言えず、認められない。 よって、原告らの被告に対する不法行為に基づく損害賠償請求には理由がない。 第4 結論 以上より、その余の点を判断するまでもなく、原告らの請求にはいずれも理由がない。 甲府地方裁判所民事部 裁判長裁判官新田和憲 裁判官岡部拓也 裁判官八槇朋博は、転補のため署名押印できない。 裁判長裁判官新田和憲 別紙1当事者目録(当事者の記載は省略) (別紙2)差止を求める工事等の目録 1 国土交通大臣が2014年10月17日に為した中央新幹線工事実施計画の認可に係る工事区間中上図「工事禁止を求める区間」(図中、釜無川右岸から南アルプス市と富士川町との行政境に至る区間)の中央新幹線に係る工事 2 上記工事に係る基礎地盤整備工事、高架構造物建設工事、ガイドウエイ工事、電気機械設備工事等の一切の関連工事 別紙3防音壁設置部分 (地図省略) 別紙4-1 本件土地(A)と事業用地との位置関係 (地図省略) 別紙3 防音壁設置部分 (地図省略) 別紙4-1 本件土地(A)と事業用地との位置関係 (地図省略) 別紙4-2 本件土地(D)と事業用地との位置関係 (地図省略) 別紙4-3 本件土地(E)と事業用地との位置関係 (地図省略) 別紙4-4 本件土地(F)と事業用地との位置関係 (地図省略) 別紙4-5 本件土地(B)と事業用地との位置関係 (地図省略) 別紙4-6 本件土地(C)と事業用地との位置関係 (地図省略)

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