主文 1 被告は、Aに対し、2090万円及びこれに対する令和2年8月20日から支払済みまで年3%の割合による金員を請求せよ。 2 訴訟費用は被告の負担とする。 事実及び理由 第1 請求主文同旨第2 事案の概要 1 本件は、山口県の住民である原告が、山口県がC株式会社山口店(以下「C」という。)との間で貴賓車としてトヨタセンチュリーを代金2090万円で購 入する旨の売買契約(以下「本件契約」という。)を締結・履行して公金の支出(以下「本件支出」という。)をしたことには、山口県知事A(以下「A知事」という。)の裁量権の逸脱又は濫用の違法があると主張して、山口県の執行機関である被告に対し、地方自治法242条の2第1項4号本文に基づき、違法な本件契約の締結・履行をし、かつ、違法な本件支出を阻止すべき指導監 督義務を負っていたA知事に対して、不法行為に基づき2090万円及びこれに対する本件支出の日である令和2年8月20日から支払済みまで民法所定の年3%の割合による遅延損害金の損害賠償請求をすることを求める住民訴訟である。 2 前提事実(当事者間に争いのない事実並びに後掲証拠及び弁論の全趣旨によ り容易に認められる事実)⑴ 当事者等ア原告は、山口県の住民である。 イ被告は、執行機関としての山口県知事である。 ウ A知事は、本件契約の締結及び本件支出の当時から現在まで、山口県知 事の職にある者である。 エ山口県会計管理局物品管理課(以下「物品管理課」という。)は、山口県の物品の取得、管理、保管及び処分等を担当する部署であるところ、B(以下「B課長」という。)は、同課の課長として、本件契約に係るトヨタセンチュリーの 品管理課(以下「物品管理課」という。)は、山口県の物品の取得、管理、保管及び処分等を担当する部署であるところ、B(以下「B課長」という。)は、同課の課長として、本件契約に係るトヨタセンチュリーの購入の決裁を行った者である(乙12)。 ⑵ 本件契約の締結等 ア山口県の本庁の各課において共通に所掌される知事の権限に属する事務のうち、物品の購入の決裁権者は、各課の課長とされ(山口県事務決裁規程(乙9)15条1項、別表第1の2「8 物品規則の施行に関する事務」⑿)、物品管理課において個別に所掌される知事の権限に属する事務のうち各課の課長から購入の請求を受けた物品の購入(予定価格が600万円 以上のもの)の決裁権者は、会計管理局長とされている(同規程(乙9)15条3項、別表第3の10の物品管理課「1 物品規則の施行に関する事務」⑶)。なお、決裁とは、知事若しくは会計管理者又はこれらの補助機関が法令の規定又は委任若しくは専決権の授与によりその権限に属する事務の処理について最終的にその意思を決定することをいう(同規程2 条1号)。 イ物品管理課は、公用車の更新時期について、「更新対象車両は、原則として、10月1日現在で11年以上経過し、かつ12万km以上の走行距離があり、新年度に車検更新となる車両であること。」との基準(以下「更新基準」という。)を定めている(乙1)。 ウ山口県は、令和元年9月当時、トヨタセンチュリー(以下、単に「センチュリー」という。)を3台(議会事務局が保管する議長用公用車及び副議長用公用車並びに物品管理課が保管する貴賓車各1台)所有していたところ、B課長は、いずれも物品管理課が保管する来賓対応可能な公用車(貴賓車)とした上で、これを3台から2台に削減し、更新基準を満たす副 長用公用車並びに物品管理課が保管する貴賓車各1台)所有していたところ、B課長は、いずれも物品管理課が保管する来賓対応可能な公用車(貴賓車)とした上で、これを3台から2台に削減し、更新基準を満たす副議 長用公用車(平成19年購入。乙2の1・2)と、更新基準を満たさない ものの、購入から約17年が経過していた貴賓車(平成14年購入。乙2の3・4)の計2台を処分して、センチュリーを1台新車で購入することとし、同購入の決裁をした(乙12、証人B)。 上記購入の決定に至る車種の選定及び調達方法に係る検討内容は、おおむね以下のとおりである(乙4、5、12、証人B)。 車種の選定山口県は、長年にわたりセンチュリーを貴賓車として使用してきたが、安全に運用してきた実績と信頼、同車種に品格があることから、他の車種については全く検討せず、センチュリーと決定した。 調達方法の検討 センチュリーの各調達方法を検討した結果は別紙のとおりであるところ、①更新基準に従い11年間リースした場合、トータルコストが新車購入よりも高額になり、②レンタカー及びカーシェアリングは、山口県内でセンチュリーの取扱いがなく、必要な時期に借りることが出来ない可能性やセキュリティ面で問題があり、③中古車購入は安全面での問題 がある一方、④新車購入は、トータルコストがリースによる場合よりも安価であって、処分による売却益(下取り価格20万円)があるため、新車購入が妥当であると判断した。 エ会計管理局長は、令和2年4月1日、山口県がCから、令和2年式のセンチュリー(以下「本件センチュリー」という。)を代金2090万円(税 込)で購入する本件契約の締結について決裁し、山口県とCは、同日、本件契約を 2年4月1日、山口県がCから、令和2年式のセンチュリー(以下「本件センチュリー」という。)を代金2090万円(税 込)で購入する本件契約の締結について決裁し、山口県とCは、同日、本件契約を締結した(甲1、2、乙12)。 ⑶ 本件支出等ア山口県知事は、予算を執行しようとするときは、支出負担行為をし、経費の支出をしようとするときは、会計管理者にその支出命令をするものと されているところ(山口県会計規則(乙10)47条、56条1項)、支 出負担行為及び支出命令の決裁権者は、各課の副課長とされている(山口県事務決裁規程(乙9)15条1項、別表第1の2「4 会計規則の施行に関する事務」⑽及び⑾)。 イ物品管理課の副課長が、本件契約に係る売買代金2090万円の支出について、支出負担行為及び支出命令の決裁をしたため、山口県の会計管理 者は、令和2年8月20日、本件支出を行った(甲3、乙12)。 ⑷ 住民監査請求ア原告は、令和2年11月26日、山口県監査委員に対し、本件センチュリーの購入が不当な支出であるとして、A知事が山口県に2090万円を返還するよう求める住民監査請求をした(甲1)。 イ山口県監査委員は、令和3年1月22日、本件センチュリーの購入は不当とは認められず、財務会計上の手続にも違法・不当な点は認められないとして、上記住民監査請求を棄却する一方で、山口県に対し、本件センチュリーに関し、経済的、効率的かつ効果的な予算や事務事業の執行の観点を念頭に、その運用等に努めるとともに、今後の備品購入その他の経費支 出の節減合理化等については、これまで以上に、前例に捉われない不断の見直しに努め、予算や事務事業の適切な執行を図られたい旨付言した(甲1)。 ⑸ 本件 に、今後の備品購入その他の経費支 出の節減合理化等については、これまで以上に、前例に捉われない不断の見直しに努め、予算や事務事業の適切な執行を図られたい旨付言した(甲1)。 ⑸ 本件訴訟の提起原告は、令和3年2月18日、本件訴訟を提起した(顕著な事実)。 3 争点及び当事者の主張争点は、本件契約の締結・履行及び本件支出がそれぞれ財務会計上の違法行為であって、A知事が不法行為責任を負うか否かである。 ⑴ 原告の主張①本件契約の締結は、以下の事情からすれば、地方自治法1条の2第1項 及び2条14項の趣旨に照らし、知事の裁量権を逸脱又は濫用した財務会計 行為として違法であって、A知事は、本件契約の違法を知り又は知り得たのに、その違法を是正せずに本件契約を締結・履行したことに関し、不法行為に基づく損害賠償責任を負う上、②違法な本件契約に基づく違法な本件支出を阻止すべき指導監督義務を負っているにもかかわらず、これに違反したことに関しても、損害賠償責任を負う。 すなわち、山口県の財政はひっ迫しており、職員削減や給与・手当の引下げ、子ども医療費助成の削減等の様々な歳出削減をし、さらには、新型コロナウイルス感染症の感染拡大が起こりつつあって、厚生労働省からも医療提供体制の整備をするよう通知されている中で、代金約2000万円の最高級の国産車である本件センチュリーを貴賓車としての使用目的で購入したが、 従前の貴賓車の利用実績に乏しく、今後利用頻度が大きく向上するとも見込まれない状況にあるところ、山口県は貴賓車(センチュリー)を既に3台有し、更新基準を満たさないセンチュリー1台を処分してまで、さらに同車種の新車購入(更新)をする必要はなかった。また、宮内庁が 見込まれない状況にあるところ、山口県は貴賓車(センチュリー)を既に3台有し、更新基準を満たさないセンチュリー1台を処分してまで、さらに同車種の新車購入(更新)をする必要はなかった。また、宮内庁が各都道府県に車種の希望を伝えたことはなく、平成21年における山口県議会の定例会でも 当時の会計管理局長は、時代の変化に対応し、必要な見直しを検討する旨答弁していたのであるから、貴賓への対応を要するにしても、より安価な車種を選定するか、ハイヤーやレンタカーで対応することで経費を抑えることも考えられた(山口県内に業者が存在しないなら、隣接県の業者を調べるべきであった。)。 そうであるにもかかわらず、物品管理課は、購入する車種をセンチュリーとする前提で、不十分な検討しかしておらず、県議会や知事による実質的なチェックもされていない。なお、他の都道府県においてセンチュリーを貴賓車として常備するところはわずかしかなく、本件契約に係る購入価格は、同じセンチュリーを有する徳島県に次いで、全国で2番目に高額である。本件 センチュリーは、実質的には、貴賓車としてではなく、日常的に山口県議会 の議長や副議長が使用することが想定されており、被告が説明するような貴賓車としての品格までは必要がなかった(なお、被告が説明する物品管理課での「一元管理」がどれだけ車両の運用の効率化や経費削減につながるかは明らかでない。むしろ、一元管理を名目に、更新基準を満たす副議長用公用車に代わる新車(センチュリー)の購入予算を議会事務局ではなく物品管理 課で計上するための方便であったと考えられる。)。 ⑵ 被告の主張①本件契約の締結には、A知事の裁量権の逸脱又は濫用の違法はなく、②本件支出に関し、本件契約を私法上無効としなければ法令の趣旨 するための方便であったと考えられる。)。 ⑵ 被告の主張①本件契約の締結には、A知事の裁量権の逸脱又は濫用の違法はなく、②本件支出に関し、本件契約を私法上無効としなければ法令の趣旨を没却する結果となる特段の事情もないから、私法上有効な本件契約に基づく本件支出 にも違法はない。 山口県では、平成21年にマツダのMPVを知事用公用車として購入し、それまで知事用公用車として使用していたセンチュリーを貴賓車として物品管理課が管理することになったほか、議会事務局が議長用公用車及び副議長用公用車としてセンチュリーを2台有し、皇室対応の際には、貴賓車として のセンチュリーのみならず議長用公用車及び副議長用公用車であるセンチュリー2台も予備車両として使用していたところ、副議長用公用車が令和2年7月に更新時期を迎えるため、令和元年9月以降、行財政改革の観点から来賓対応可能な公用車に対する管理方法を見直すべく会計管理局(物品管理課)で検討の上、来賓対応可能な3台の公用車(センチュリー)を物品管理課で 一元管理することで、運用の効率化を図り、その台数を2台に減らし、将来的な維持管理費及び車両更新の際の購入費用を削減することとし、さらに、更新基準を満たすセンチュリーの更新については、前提事実⑵ウ、の検討を経て、センチュリーの新車を購入することに決定した。なお、更新基準を満たさないセンチュリーの処分については、同車が購入から約18年・走 行距離約7万8000km超という社会通念上の買換時期を迎えた状態であ って、仮に使用を継続したとしても、近い時期に買換えが必要となったものであり、将来的な維持管理費や車両更新に要する経費を削減するためのものである。 貴賓車の車種選択等は、山口県の皇室への敬意の表 って、仮に使用を継続したとしても、近い時期に買換えが必要となったものであり、将来的な維持管理費や車両更新に要する経費を削減するためのものである。 貴賓車の車種選択等は、山口県の皇室への敬意の表し方、外国の要人をどのようにもてなし、インバウンド招致、県内の商品の売り込みにつなげるか 等、政策的な側面が極めて強いから、知事の広範な裁量に委ねられており、その裁量権に逸脱又は濫用が生じることはない。 また、本件契約に係る入札公告日(令和2年3月16日)の段階では、新型コロナウイルス感染症のその後の拡大の状況を想定することは困難であったし、平成21年以降、物品管理課が保有する公用車(特に高級車)につい て見直し、保有台数は減少しており、本件センチュリーの使用実態についても、来賓対応での使用がないときに、議長及び副議長が本件センチュリーを公用車として使用しているにすぎない。 第3 当裁判所の判断 1 本件契約の締結に係るA知事の責任についての判断枠組み ⑴ 地方自治法242条の2第1項4号に基づく原告の請求は、山口県の代表者として本件契約を締結したA知事の判断が、「地方公共団体は、その事務を処理するに当つては、住民の福祉の増進に努めるとともに、最少の経費で最大の効果を挙げるようにしなければならない。」と定める同法2条14項等に違反することを前提とするものであるところ、地方公共団体の長がその 代表者として物品を購入する契約を締結することは、当該物品を購入する目的やその必要性、契約の締結に至る経緯、契約の内容に影響を及ぼす社会的、経済的要因その他の諸般の事情を総合考慮した合理的な裁量に委ねられており、地方公共団体の長の判断が裁量権の範囲を逸脱し又はこれを濫用するものと評価されるときでなければ、当該契約の締結が地方自 会的、経済的要因その他の諸般の事情を総合考慮した合理的な裁量に委ねられており、地方公共団体の長の判断が裁量権の範囲を逸脱し又はこれを濫用するものと評価されるときでなければ、当該契約の締結が地方自治法2条14項等 に反し違法となるものではないと解するのが相当であり(最高裁判所平成2 3年(行ヒ)第452号同25年3月28日第一小法廷判決・裁判集民事243号241頁参照)、補助職員が専決権の授与等により処理した場合についても、異なるところはない。 ⑵ そして、地方公共団体の長である知事の権限に属する財務会計上の行為を補助職員が専決権の授与等により処理した場合には、知事は、補助職員が財 務会計上の違法行為をすることを阻止すべき指揮監督上の義務に違反し、故意又は過失によりこれを阻止しなかったときに限り、当該地方公共団体に対し、当該補助職員がした財務会計上の違法行為により当該地方公共団体が被った損害につき賠償責任を負うものと解するのが相当である(最高裁判所平成2年(行ツ)第137号同3年12月20日第二小法廷判決・民集45巻 9号1455頁参照)。 2 検討⑴ 本件契約の締結の違法性についてア被告は、来賓対応可能な3台の公用車(センチュリー)を物品管理課で一元管理することで、運用の効率化を図り、その台数を2台に減らし、将 来的な維持管理費や車両更新に要する経費を削減する趣旨から、本件センチュリーの購入に際しては、上記3台の公用車のうち更新基準を満たす1台のほか、更新基準を満たさないものの、社会通念上の買換時期を迎え、近い時期に買換えが必要となる状態にある1台を併せて処分したものであるし、また、貴賓車の更新に係る車種選択等は、山口県の皇室への敬意 の表し方、外国の要人をどのように 通念上の買換時期を迎え、近い時期に買換えが必要となる状態にある1台を併せて処分したものであるし、また、貴賓車の更新に係る車種選択等は、山口県の皇室への敬意 の表し方、外国の要人をどのようにもてなし、インバウンド招致、県内の商品の売り込みにつなげるか等、政策的な側面が極めて強いから、知事の広範な裁量に委ねられており、本件において裁量権の逸脱又は濫用が生じることはない旨主張する。 この点、要人が山口県を訪問する目的等との関係で、政策的な側面から、 当該要人をもてなすのにふさわしい安全性や品格等を備えた一定程度の 高級車を選定する必要性があることを否定することはできず、貴賓車の車種については、知事の一定の合理的裁量に委ねられているということができる。そこで、本件において、諸般の事情を総合的に考慮してもなお合理的な裁量権の範囲を逸脱又は濫用したと評価すべきかにつき、以下検討する。 イまず、前提事実⑵ウのとおり、物品管理課は、同課がセンチュリー3台(貴賓車、議長用公用車、副議長用公用車各1台)を来賓対応可能な公用車(貴賓車)として管理した上、2台に減らす決定をしているところ、更新基準を満たした車両を当然に新車に買い換えなければならないというものでもなく、むしろ、貴賓車を1台減らすという目的は、単に更新基準を 満たした1台を処分することで達成され、次の更新時期に、貴賓車としてセンチュリーを2台保有することの必要性を検討することも可能であったといえる。 確かに、新車購入と旧車処分(下取り)とを併せて行うことで費用が抑えられる面もあるものの、更新基準を満たさない車両をも併せて下取りに 出し、本件センチュリーを購入したことで、どれだけの費用が削減されたかは定かでなく、単に、新車(本件センチュリ とで費用が抑えられる面もあるものの、更新基準を満たさない車両をも併せて下取りに 出し、本件センチュリーを購入したことで、どれだけの費用が削減されたかは定かでなく、単に、新車(本件センチュリー)の更新時期が早まったにすぎないとの見方もあり得るところである。そうすると、少なくとも、本件契約時において、更新基準を満たさない車両を処分してまで新たに本件センチュリーを購入すべき目的や高い必要性があったとはいい難い。 ウまた、山口県では公用車としてセンチュリー以外の車種(クラウン、センティア、ティアナ、アテンザ)も現実に使用されており(乙3)、被告が車種の選定に当たって考慮したとする実績と信頼及び品格が、ひとりセンチュリーのみによって満たされ、他の車種では賄えないことが明らかということもできないし、さらに、山口県は、本件契約後、本件センチュリ ー以外にも貴賓車としてセンチュリー1台を保有しているところ、宮内庁 が各都道府県に車種の希望を伝えたことはないこと(甲8)からしても、皇室対応の際の予備車両までもが同車種であるべき必要がどの程度あるのかも明らかでない。 なお、被告の主張・説明によれば、本件契約に係る車種をセンチュリーと当然決めていたことを前提に、調達方法(主にリースか新車購入か)を 比較検討したとのことであるが、そもそもリースとの比較では購入の場合の方がトータルコストは安価となるのが通常である上に(乙5参照)、新車の購入価格が高いほど、リース料も高くなることが当然に想定されるのであるから、仮に、センチュリーの価格が本件以上に高額であったとしても、やはり新車の購入に至ったものとも推察されるのであって(なお、後 記エのとおり、本件センチュリーの購入価格は相当に高額であった。)、こ に、センチュリーの価格が本件以上に高額であったとしても、やはり新車の購入に至ったものとも推察されるのであって(なお、後 記エのとおり、本件センチュリーの購入価格は相当に高額であった。)、この点でも、被告の検討手法には論難される余地があるといえる。 エちなみに、証拠(甲4、5、10~45〔いずれも枝番号含む〕)及び弁論の全趣旨によれば、令和2年度当初の山口県の財源不足見込額は276億円にも上り、歳出の各種見直し等がされていたこと、山口県がこれま でに購入したセンチュリーは、平成14年には1061万円、平成19年には1139万円、平成25年には1260万円であったが、同車種は、平成30年6月の全面改良により価格が約700万円値上がりしており、本件センチュリーの購入価格(2090万円)は、直近に購入した際の価格の1.6倍以上となっていること、他の都道府県において、センチュリ ーを貴賓車として常備するところはわずかしかなく、本件契約に係る購入価格は、山口県同様にセンチュリーを所有する徳島県に次いで、全国で2番目に高額であることが認められる。 オ以上によれば、山口県として、歳出削減の観点を踏まえた新たな公用車の要否や車種が考慮されてしかるべき状況にあったところ(前記エ)、物 品管理課においては、本件センチュリーの購入に当たって、他の車種につ いては全く検討せず、本件契約に係る車種を当然にセンチュリーと決めた上で、その調達方法については主にリースと新車購入とを比較検討したにとどまるのであって(前記ウ)、歳出削減の観点から、本件契約の締結に係る検討過程において、当然考慮すべき事項(本件契約時点で新たに貴賓車(2台目)を購入すべき必要性(前記イ)やそれがセンチュリーである べき必要性(前記ウ 、歳出削減の観点から、本件契約の締結に係る検討過程において、当然考慮すべき事項(本件契約時点で新たに貴賓車(2台目)を購入すべき必要性(前記イ)やそれがセンチュリーである べき必要性(前記ウ)等)につき、あまりにも検討が不十分であったといわざるを得ない。 カしたがって、A知事の補助職員であるB課長が本件契約の締結を決定したことは、考慮すべき事情を全く考慮せずなされたものであって、契約締結の本来的な権限を有するA知事の裁量権を逸脱又は濫用したものと評価 するのが相当であり、その余の被告の主張を踏まえても、地方自治法2条14項等の趣旨に反する財務会計上の違法行為というべきである。 ⑵ A知事の故意又は過失による指揮監督上の義務違反についてア普通地方公共団体の長は、地方自治法上、当該普通地方公共団体を統轄し、これを代表する地位にあり(147条)、その執行機関として、当該 普通地方公共団体の事務を、自らの判断と責任において、誠実に管理し及び執行する職務上の義務を負う(138条の2)のであって、たとえ財務会計上の行為に係る権限が内部的には専ら決裁を任された補助職員に委ねられていたとしても、当該財務会計上の行為の性質・内容等に照らし、県政運営上重要な事項にかかわるものについては、当該普通地方公共団体の 事務を自らの判断と責任において誠実に管理・執行すべき職務上の義務を果たしたと評価するに値する指揮監督を適切に行うべきである。 イ証拠(甲6、8、49)及び弁論の全趣旨によれば、A知事は、本件契約について、予算編成過程で会計管理局や物品管理課との間で個別の協議をしたことはなく、本件センチュリー購入の段階で物品管理課から報告を 受けたものの、その金額を知ったのは、本件契約締結後、納品前の時点で 成過程で会計管理局や物品管理課との間で個別の協議をしたことはなく、本件センチュリー購入の段階で物品管理課から報告を 受けたものの、その金額を知ったのは、本件契約締結後、納品前の時点で あると認められ、本件契約締結までに、物品管理課の検討状況を詳細には知らなかった可能性がある。 しかし、被告が主張するように、貴賓車にいかなる車種を用いるかには政策的な側面があること、物品管理課が一元管理するという新たな運用に関わること(なお、今までは同課が管理する来賓対応可能な公用車(貴賓 車)が1台であったところ、これからはその台数が増加することになる。)などからすれば、本件センチュリーの購入は、単に各課が使用する備品に関する内部経費の支出というにとどまらず、県政運営にも関わる重要な事項であるといえる。そうすると、A知事は、購入の段階で物品管理課から報告を受けるにとどまらず、本件契約の締結までに同課との間で適宜協議 を持つべきであった。また、山口県の貴賓車には従前から1000万円を超える高額なセンチュリーが使用されており、本件契約の内容としても、購入金額が高額になることが予想できたのであるから、A知事が適切に指揮監督を行っていれば、本件契約の内容を容易に知り得たものといえる。 ウそうすると、A知事は、補助職員が権限に基づいて前記⑴のとおり違法 な本件契約の締結の決定を行うことを阻止すべき指揮監督上の義務に違反した過失により、当該違法行為を阻止しなかったものといわざるを得ない。 ⑶ 小括よって、本件契約の締結は、本来的な権限を有するA知事の裁量権を逸脱又は濫用した財務会計上の違法行為であって、A知事がこれを阻止しなかっ たことにつき、指揮監督上の義務に違反した過失も認められるから、これによって山口県に生じ 権限を有するA知事の裁量権を逸脱又は濫用した財務会計上の違法行為であって、A知事がこれを阻止しなかっ たことにつき、指揮監督上の義務に違反した過失も認められるから、これによって山口県に生じた損害(本件センチュリーの売買代金2090万円)につき、不法行為に基づく損害賠償責任を負う。 第4 結論以上によれば、その余の点(本件契約の履行ないし本件支出が財務会計上の 違法行為であって、A知事が不法行為責任を負うか否か)について判断するま でもなく、原告の請求は理由があるから、主文のとおり判決する。 山口地方裁判所第1部裁判長裁判官山口格之 裁判官足立賢明 裁判官土岐あすか
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