令和7(わ)220 詐欺被告事件

裁判年月日・裁判所
令和7年10月8日 福岡地方裁判所
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判決文本文3,636 文字)

- 1 -令和7年10月8日宣告令和7年(わ)第220号、第419号、第469号詐欺被告事件 主文 被告人Aを懲役4年に、被告人B、被告人C及び被告人Dをそれぞれ懲役3年に処する。 被告人Aに対し、未決勾留日数中60日をその刑に算入する。 被告人B、被告人C、被告人Dに対し、この裁判が確定した日から5年間、それぞれその刑の執行を猶予する。 訴訟費用のうち、国選弁護人Eに関する分は被告人Bの、国選弁護人Fに関する分は被告人Cの負担とする。 理由 【罪となるべき事実】被告人Aは、結婚式場及びレストラン経営等を業とする株式会社Gの当時の代表取締役社長として株式会社Gの業務全般を統括していたもの、被告人Bは、株式会社Gの当時の総務部長として人事業務等を統括していたもの、被告人C及び被告人Dは、株式会社Gの当時のエリアマネージャーとして株式会社Gが経営する結婚式場等の運営等を管理していたものであるが、被告人4名は、新型コロナウイルス感染症の影響により事業活動の縮小を余儀なくされた事業主が従業員の雇用維持を図るために従業員を休業させて支払った休業手当の一部を助成する制度である雇用調整助成金制度の特例措置を利用し、株式会社G各従業員に休業させた日数を水増しして、国から同助成金の名目で現金をだまし取ろうと考え、共謀の上、第1 令和4年10月8日頃、福岡県久留米市HI丁目J番K号の株式会社G又はその周辺において、被告人Aが、インターネットに接続されたパーソナルコンピュータを使用して、厚生労働省が開設した同助成金のオンライン申請システムに接続し、別表1記載のとおり、真実は、株式会社G従業員111名のうち別表1「労働者」欄に記載のLほか57名について、株式会社Gが同年9月1日から同月- 2 -30日までに ンライン申請システムに接続し、別表1記載のとおり、真実は、株式会社G従業員111名のうち別表1「労働者」欄に記載のLほか57名について、株式会社Gが同年9月1日から同月- 2 -30日までに休業させた延べ休業日数が多くとも393日であったのに、これを延べ1043日に水増しして、前記「労働者」欄記載の各労働者を含む申請対象労働者合計111名について月間休業等延日数を2020日と記載した内容虚偽の「雇用調整助成金(休業等)支給申請書(緊急事態宣言等対応特例/業況特例)」等を送信して同助成金の支給を申請し、同年10月31日頃、福岡労働局職業安定部長Mらに、同申請が正当な助成金の支給申請である旨誤信させて同助成金の支給を決定させ、よって、同年11月2日、株式会社N銀行O支店に開設された前記株式会社G名義の普通預金口座に現金2701万7500円を振込送金させ、第2 同月6日頃、前記第1記載の場所所在の株式会社G又はその周辺において、被告人Aが、前同様に同助成金のオンライン申請システムに接続し、別表2記載のとおり、真実は、株式会社G従業員106名のうち別表2「労働者」欄に記載のLほか67名について、株式会社Gが同年10月1日から同月31日までに休業させた延べ休業日数が多くとも430日であったのに、これを延べ1178日に水増しして、前記「労働者」欄記載の各労働者を含む申請対象労働者合計106名について月間休業等延日数を1948日と記載した内容虚偽の「雇用調整助成金(休業等)支給申請書(業況特例)」等を送信して同助成金の支給を申請し、同年11月21日頃、前記Mらに、同申請が正当な助成金の支給申請である旨誤信させて同助成金の支給を決定させ、よって、同月24日、株式会社N銀行O支店に開設された前記株式会社G名義の普通預金口座に現金2337万600 頃、前記Mらに、同申請が正当な助成金の支給申請である旨誤信させて同助成金の支給を決定させ、よって、同月24日、株式会社N銀行O支店に開設された前記株式会社G名義の普通預金口座に現金2337万6000円を振込送金させ、第3 同年12月11日頃、前記第1記載の場所所在の株式会社G又はその周辺において、被告人Aが、前同様に同助成金のオンライン申請システムに接続し、別表3記載のとおり、真実は、株式会社G従業員104名のうち別表3「労働者」欄に記載のLほか67名について、株式会社Gが同年11月1日から同月30日までに休業させた延べ休業日数が多くとも422日であったのに、これを延べ1149日に水増しして、前記「労働者」欄記載の各労働者を含む申請対象労働者合計104名について月間休業等延日数を1835日と記載した内容虚偽の「雇用調整助成金- 3 -(休業等)支給申請書(業況特例)」等を送信して同助成金の支給を申請し、令和5年2月7日頃、前記Mらに、同申請が正当な助成金の支給申請である旨誤信させて同助成金の支給を決定させ、よって、同月9日、株式会社N銀行O支店に開設された前記株式会社G名義の普通預金口座に現金2202万円を振込送金させ、もってそれぞれ人を欺いて財物を交付させたものである。 (別表省略)【証拠の標目】省略【法令の適用】省略【量刑の理由】本件は、結婚式場及びレストラン経営等を業とする株式会社Gの代表取締役社長であった被告人A、株式会社Gの総務部長であった被告人B、株式会社Gのエリアマネージャーであった被告人C及び被告人Dが共謀の上、3回にわたり、雇用調整助成金制度を悪用し、株式会社G従業員の休業日数を水増しした内容虚偽の支給申請をして国から同助成金として約7200万円をだまし取った詐欺の事案である。 そ 告人Dが共謀の上、3回にわたり、雇用調整助成金制度を悪用し、株式会社G従業員の休業日数を水増しした内容虚偽の支給申請をして国から同助成金として約7200万円をだまし取った詐欺の事案である。 その犯行は、新型コロナウイルス感染症の影響により事業活動の縮小を余儀なくされた事業者に対し国が休業手当等を助成することにより事業者が従業員を解雇することを防ぎ雇用の安定を図るための制度である雇用調整助成金制度を悪用し、株式会社G従業員の休業日数について現実の日数から水増しをした支給申請をするという、同制度を根底から揺るがしかねない悪質な手口による犯行であり、約7200万円にのぼる被害額や、水増しではない部分を除いても約2600万円にのぼる実質的被害額はいずれも多額であって、法益侵害の程度も看過できるものではない。 もとより本件のような犯罪が横行してしまうならば、政策的理由に基づく簡易迅速な公的な給付が阻害されてしまうのであって、一般予防の見地からも厳正な処罰が要請されることはいうまでもない。 - 4 -被告人4名はいずれも株式会社Gにおいて要職を占めていただけではなく、本件犯行においてそれぞれ重要な役割を果たしているが、特に被告人Aは代表取締役社長の地位にあり、また、虚偽内容の支給申請を自ら行っていたのであって、被告人Aの刑責は他の共犯者との比較において一等重いものがあるといえる。 他方で、被告人4名はいずれも事実を認めて反省と更生の態度を示し、それぞれ親族や雇用申出者等が今後の監督を誓約していること、被告人らはいずれも前科がなく、本件を除けば犯罪に親和的な傾向も見られないことが認められる。また、被害弁償金の受領はなされていないものの、合計2929万円余りの金銭が被害弁償の原資として弁護人に預託されるなど、本件の実質的被害額の範囲での被害 罪に親和的な傾向も見られないことが認められる。また、被害弁償金の受領はなされていないものの、合計2929万円余りの金銭が被害弁償の原資として弁護人に預託されるなど、本件の実質的被害額の範囲での被害弁償の準備もなされている。本件詐取金は株式会社Gの従業員の給与を含む運転資金に用いられたと推察されるところ、被告人4名は、株式会社Gの他の従業員らと同様に株式会社Gから給与を得ていたものの、これら給与以外に他の従業員の得ていない経済的利益を得るなど私腹を肥やした形跡は見られない。これらの事情はいずれも、被告人4名のために有利に考慮すべき事情といえる。 上述の諸事情を総合考慮して検討するに、被告人Aについては、上記の被害弁償準備金の大部分を同被告人が金策をしたことを含めて同被告人に有利な事情を最大限有利に考慮してもなお、同被告人の刑事責任はまことに重く主文のとおりの懲役刑の実刑で臨まざるを得ない。被告人B、被告人C及び被告人Dの3名については、被告人らのために考慮すべき事情も併せると実刑で臨むのはわずかに躊躇され、主文のとおりの刑期を定めた上、その執行を猶予することとした。 (求刑懲役6年〔被告人A関係〕、懲役4年〔被告人B・同C・同D関係〕)令和7年10月8日 福岡地方裁判所第3刑事部 裁判官岡本康博

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