平成11(行ウ)96 更正処分等取消請求事件

裁判年月日・裁判所
平成12年5月30日 東京地方裁判所 租税
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判決文本文22,589 文字)

主文 一原告の請求をいずれも棄却する。 二訴訟費用は原告の負担とする。 事実及び理由 第一当事者の求めた裁判一原告の請求 1 被告が原告に対し平成九年八月二九日付けでした原告の平成七年分の所得税の更正処分のうち純損失額六二六七万七四五九円、還付金の額に相当する税額四五万七〇四一円を超える部分及び過少申告加算税賦課決定処分(但し、いずれも異議決定により一部取り消された後のもの)を取り消す。 2 被告が原告に対し平成九年八月二九日付けでした原告の平成八年分の所得税の更正処分のうち総所得金額〇円、還付金の額に相当する税額七〇万〇四五〇円を超える部分及び過少申告加算税賦課決定を取り消す。 二被告の答弁主文第一項と同旨第二事案の概要本件は、被告が、原告の平成七年分の不動産所得の金額の計算上、建物賃借人に支払った解約損害金、建物の解体工事代金、建物除却損を必要経費に算入することができないとして、原告の平成七年分及び平成八年分の所得税について更正処分及び過少申告加算税賦課決定処分を行ったのに対し、原告が、右各処分を不服として、右各処分(平成七年分については、平成一〇年一月二七日付けの異議決定により一部取り消された後のもの。以下同じ。)は違法であるとして、その取消しを求めた事案である。 一前提となる事実(当事者間に争いがない。) 1 物納に至る経緯(一) 原告は、業として不動産貸付けを行っている者である。原告は、原告の父であるAが所有する中野区α六一七番一、同番二及び同番五所在の土地(以下、併せて「本件土地」という。)を使用貸借し、本件土地上に建物を建築して所有し(以下、この建物を「本件建物」という。)、これを株式会社デニーズジャパン(以下「デニーズ」という。)に賃貸していた(以下、原告とデニーズとの間の本件建物 用貸借し、本件土地上に建物を建築して所有し(以下、この建物を「本件建物」という。)、これを株式会社デニーズジャパン(以下「デニーズ」という。)に賃貸していた(以下、原告とデニーズとの間の本件建物に係る賃貸借契約を「本件賃貸借契約」という。)。 (二) Aは、平成五年九月三日に死亡し、原告は本件土地を相続により取得した(以下、この相続を「本件相続」という。)。 (三) 原告は、Aに係る相続税の納付につき、公認会計士であるBを介して、被告所部の係官に対し、本件土地を含む原告所有の土地の物納を予定しているとして、物納申請書の書き方についての相談をした。その際、B会計士は、被告所部の係官に対し、相続税の納期限までに金銭による納付が困難であること、本件土地上の建物はデニーズに賃貸していることを説明した。これに対し、被告所部の係官は、B会計士に対し、金銭納付が困難である旨の理由書を提出するように指示した。 (四) 平成六年四月四日、原告は、被告に対し、相続税の申告書を提出するとともに、本件土地及び練馬区β四七八番二所在の土地(C、D及びEと原告との共有地。以下「別件土地」という。)を物納する旨の申請をした。この際、原告は、本件土地の評価については、本件土地を更地にすることを前提とした自用地価額により申請をした。 (五) 原告とデニーズは、平成六年八月三日付けで、概略次の事項を内容とする建物賃貸借契約解約合意書(以下「本件解約合意書」という。)を取り交わした。 (1) 本件解約合意書の内容は、原告に生じた相続に伴う相続税の支払のため、原告の要請をデニーズが了解して合意されたものである。 (2) 原告及びデニーズは、本件賃貸契約を平成七年一月三一日をもって合意解約する。 (3) デニーズは、原告に対し本件建物を原状に復し、平成七年二月六日限り明け渡す。 して合意されたものである。 (2) 原告及びデニーズは、本件賃貸契約を平成七年一月三一日をもって合意解約する。 (3) デニーズは、原告に対し本件建物を原状に復し、平成七年二月六日限り明け渡す。 (4) 原告は、デニーズに対し敷金五〇〇万円の返還義務があることを認める。 (5) 原告は、平成七年二月六日にデニーズに対し本件賃貸借契約を解除する損害金として八三七一万円を支払う。本件建物の明渡しと右損害金の支払は同時履行とする。 (6) 万一、デニーズの明渡し遅滞によって、原告において物納手続に遅延を生じ、物納されなかったときは、デニーズは、原告に対し、それによって原告の被る税法上の一切の損失を賠償するものとする。 (六) 平成六年一〇月六日、被告所部の係官であるFは、原告、B会計士及び同人の母であるGの立会いのもとで、原告が物納申請した本件土地に対する実地調査を実施し、本件賃貸借契約に係る契約書及び本件解約合意書の写しの提出を指示した。 同月二八日、関東財務局職員は、B会計士及びF係官の立会いのもとで、本件土地に対する現地調査を実施した。 (七) 平成七年一月三一日、原告は、本件解約合意書に基づき本件賃貸借契約を解約し、平成七年二月六日、デニーズに対し、解約に係る損害金(以下「本件解除損害金」という。)として八三七一万円及び敷金の返還として五〇〇万円の合計額八八七一万円を支払った。 (八) 平成七年三月八日、原告は、デニーズからの明渡しを受けて本件建物を取り壊し、取壊費用(以下「本件取壊費用」という。)として梶山建設株式会社に対し、五二五万三〇〇〇円を支払った。なお、本件建物の取壊しによる建物の除却損(以下「本件資産損失」という。)は、一六〇七万七〇〇〇円であった。 (九) 平成七年五月一一日、原告は、別件土地について、被告に対し物納申請取 円を支払った。なお、本件建物の取壊しによる建物の除却損(以下「本件資産損失」という。)は、一六〇七万七〇〇〇円であった。 (九) 平成七年五月一一日、原告は、別件土地について、被告に対し物納申請取下げ書を提出し、物納申請を取り下げた。 (一〇) 本件土地は、平成七年一二月一二日に、物納許可額一〇億六一七二万八三〇〇円として被告の許可を受け、同月一五日に収納された。 2 所得税の更正処分等に関する経緯平成七年分及び平成八年分(以下「本件係争各年分」という。)の所得税について、①原告がした確定申告、②被告が原告に対してした右各所得税についての更正処分ないし過少申告加算税賦課決定(以下、被告の原告に対する平成七年分及び平成八年分の所得税に係る更正処分を併せて「本件各更正処分」といい、被告の原告に対する平成七年分及び平成八年分の所得税に係る過少申告加算税賦課決定処分を併せて「本件各賦課決定処分」といい、本件各更正処分と本件各賦課決定処分を併せて「本件各更正処分等」という。)、③原告がした異議申立てとそれに対する被告の決定、及び④原告がした国税不服審判所長に対する審査請求とそれに対する国税不服審判所長の裁決の経緯及びそれらの内容は、別表一及び二の各欄記載のとおりである。 原告は、平成七年分の所得税の確定申告において、本件解除損害金、本件取壊費用及び本件資産損失(以下、これらを併せて「本件費用等」という。)を不動産所得に係る必要経費として算入し、また、平成八年分の所得税の確定申告においては、本件費用等から繰越し損失が生じたものとしてそれぞれ申告をしたが、被告は、原告の不動産所得の金額の計算上本件費用等を必要経費に算入することは認められないとして、本件各更正処分等をしたものである。 二本件各更正処分等の適法性に関する被告の主張 1 平成七年分の 、被告は、原告の不動産所得の金額の計算上本件費用等を必要経費に算入することは認められないとして、本件各更正処分等をしたものである。 二本件各更正処分等の適法性に関する被告の主張 1 平成七年分の所得税の総所得金額及び納付すべき税額の算出根拠は、それぞれ次のとおりである。 (かっこ内に「争いがない。」と表記したものは、その金額等について当事者間に争いがないものである。以下同じ。)(一) 総所得金額四一九〇万六五三一円右金額は、次の(1)ないし(4)の金額の合計額である。 (1) 不動産所得の金額三四九九万〇九〇一円右金額の算出過程は、次表のとおりである。 項目金額ア総収入金額一億一八九四万七一二〇円イ租税公課一〇二一万一八〇〇円ウ減価償却費二七六四万一〇〇五円エその他の経費一〇九万八七〇七円オ右以外の経費四四九〇万四七〇七円カ青色申告特別控除一〇万〇〇〇〇円キ不動産所得の金額(アーイーウーエーオーカ) 三四九九万〇九〇一円右の各項目の算出根拠は、次のとおりである。 ア総収入金額(争いがない。) 一億一八九四万七一二〇円イ租税公課(争いがない。) 一〇二一万一八〇〇円ウ減価償却費(争いがない。) 二七六四万一〇〇五円なお、右金額は、原告が平成七年度分所得税青色申告決算書(以下「平成七年分決算書」という。)に記載した金額二七五六万四五〇五円に本件建物に係る減価償却費相当額七万六五〇〇円を加算した金額である。 エ お、右金額は、原告が平成七年度分所得税青色申告決算書(以下「平成七年分決算書」という。)に記載した金額二七五六万四五〇五円に本件建物に係る減価償却費相当額七万六五〇〇円を加算した金額である。 エその他の経費一〇九万八七〇七円右金額は、原告が平成七年度分決算書に記載した金額一一七万九七九七円のうち次の①ないし⑥の本件土地を物納するために要した費用及び家事費と認められる支出の合計額八万一〇九〇円を減算した金額である。 ① 平成七年二月六日支払の司法書士登記料一万七〇〇〇円② 平成七年五月一日支払のタクシー代三六九〇円③ 平成七年六月八日支払の登記印紙一六〇〇円④ 平成七年一〇月四日のH司法書士に対する支払一万四四〇〇円⑤ 平成七年一〇月一一日支払の建物抹消登記費用四万二〇〇〇円⑥ 平成七年一二月二七日支払の登記印紙代二四〇〇円オ右以外の経費四四九〇万四七〇七円右金額は、次の①ないし③の金額の合計額である(なお、①ないし③記載の金額は、原告が平成七年分決算書に記載した金額と同額である。)。 ① 損害保険料五六万八四五〇円② 修繕費一二七万七〇〇九円③ 借入金利子四三〇五万九二四八円カ青色申告特別控除一〇万〇〇〇〇円右金額は、租税特別措置法二五条の二第一項に基づく金額である。(2) 配当所得の金額(争いがない。) 一一万三二〇五円(3) 給与所得の金額(争いがない。) 一〇万〇〇〇〇円右金額は、租税特別措置法二五条の二第一項に基づく金額である。(2) 配当所得の金額(争いがない。) 一一万三二〇五円(3) 給与所得の金額(争いがない。) 六八〇万二四二五円(4) 一時所得の金額(争いがない。) 〇円(二) 分離長期譲渡所得の金額(争いがない。) 〇円(三) 所得控除の額二三四万九八〇三円右金額は、原告が平成七年分の所得税の確定申告書(以下「平成七年分確定申告書」という。)に添付した平成七年分給与所得の源泉徴収票に記載された所得控除の額の合計額二七二万九八〇三円から配偶者特別控除の額三八万円を控除した金額である。配偶者特別控除は、所得税法八三条の二第二項の規定により合計所得金額(所得税法二条一項三〇号において、総所得金額、退職所得金額及び山林所得金額の合計額と定義されている。)が一〇〇〇万円を超える場合、適用はないところ、原告の平成七年分の総所得金額は前記(一)のとおり四一九〇万六五三一円であり、一〇〇〇万円を超えているから、右規定の適用はない。 (四) 課税総所得金額三九五五万六〇〇〇円右金額は、前記(一)の総所得金額四一九〇万六五三一円から前記(三)の所得控除の額二三四万九八〇三円を控除した金額(国税通則法一一八条一項により一〇〇〇円未満の端数を切り捨てたもの。以下同じ。)である。 (五) 課税分離長期譲渡所得の金額(争いがない。) 〇円(六) 納付すべき税額一三二三万五二〇〇円右金額は、次の(1)と(2)の金額の合計額から次の(3)ないし(5)の金額の合計額を控除した金額(国税通則法一一九条一項により一〇〇円未満の端数を切り捨てたもの。以下同じ。 一三二三万五二〇〇円右金額は、次の(1)と(2)の金額の合計額から次の(3)ないし(5)の金額の合計額を控除した金額(国税通則法一一九条一項により一〇〇円未満の端数を切り捨てたもの。以下同じ。)である。 (1) 課税総所得金額に対する税額一三七四万八〇〇〇円右金額は、前記(四)の課税総所得金額三九五五万六〇〇〇円に所得税法八九条一項の税率を乗じて算出した金額である。 課税分離長期譲渡所得金額に対する税額(争いがない。)〇円右金額は、前記(5)の課税分離長期譲渡所得の金額に対する税額である。 (3) 配当控除五六六〇円右金額は、所得税法(平成一〇年法律一〇六号改正前のもの。)九二条一項の規定により原告が平成七年分確定申告書に配当所得として記載した金額一一万三二〇五円に一〇〇分の五を乗じて算出した金額である。 (4) 特別減税額五万〇〇〇〇円右金額は、平成七年分所得税の特別減税のための臨時措置法四条の規定により算出した金額である。 (5) 源泉徴収税額(争いがない。) 四五万七〇四一円 2 平成八年分の所得税の総所得金額及び納付すべき税額の算出根拠は、それぞれ次のとおりである。 (一) 総所得金額五二二七万四〇二五円右金額は、次の(1)ないし(4)の金額の合計額である。 なお、原告は、平成八年分の所得税の確定申告書(以下「平成八年分確定申告書」という。)において平成七年分までに引ききれなかった損失額を六二六七万七四五九円としているところ、前記1記載のとおり平成七年分においては右損失の額は生じていない。 (1) 不動産所得の金額(争いがない。) 四三五一 成七年分までに引ききれなかった損失額を六二六七万七四五九円としているところ、前記1記載のとおり平成七年分においては右損失の額は生じていない。 (1) 不動産所得の金額(争いがない。) 四三五一万九二七〇円(2) 配当所得の金額(争いがない。) 一万二二五〇円(3) 給与所得の金額(争いがない。) 八〇四万九三〇五円(4) 雑所得の金額(争いがない。) 五八万三二〇〇円(二) 所得控除の額二三八万八八五八円右金額は、原告が平成八年分確定申告書に添付した平成八年分給与所得の源泉徴収票に記載された所得控除の額の合計額二七六万八八五八円から配偶者特別控除の額三八万円を控除した金額である。前記1(三)記載のとおり、配偶者特別控除は、合計所得金額が一〇〇〇万円を超える場合、適用はないところ、原告の平成八年分の総所得金額は前記(一)のとおり一〇〇〇万円を超えているから、右規定の適用はない。 (三) 課税総所得金額四九八八万五〇〇〇円右金額は、前記(一)の総所得金額五二二七万四〇二五円から前記(二)の所得控除の額二三八万八八五八円を控除した金額である。 (四) 納付すべき税額一八一五万五九〇〇円右金額は、次の(1)の金額から次の(2)ないし(4)の金額の合計金額を控除した金額である。 (1) 課税総所得金額に対する税額一八九一万二五〇〇円右金額は、前記(三)の課税総所得金額四九八八万五〇〇〇円に所得税法八九条一項の税率を乗じて算出した金額である。 (2)配当控除六一一二円右金額は、所得税法(平成一〇年法律一〇六号改正前のもの。)九二条一項の規定により原告が平成八年分確定申告書に配当所得 金額である。 (2)配当控除六一一二円右金額は、所得税法(平成一〇年法律一〇六号改正前のもの。)九二条一項の規定により原告が平成八年分確定申告書に配当所得として記載した金額一二万二二五〇円に一〇〇分の五を乗じて算出した金額である。 (3) 特別減税額五万〇〇〇〇円右金額は、平成八年分所得税の特別減税のための臨時措置法四条の規定により算出した金額である。 (4) 源泉徴収税額(争いがない。) 七〇万〇四五〇円 3 本件各更正処分の適法性について被告が本訴において主張する本件係争各年分の納付すべき税額は、前記1及び2記載のとおりであり、本件各更正処分に係る納付すべき税額と一致するから、本件各更正処分は適法である。 4 本件各賦課決定処分の根拠及び適法性について(一) 本件各賦課決定処分の根拠について被告が本訴において主張する本件係争各年分の過少申告加算税の額は、次のとおりである。 (1) 平成七年分二〇二万八五〇〇円右金額は、右年分に係る更正処分により、原告が新たに納付すべきこととなった税額一三六九万円(国税通則法一一八条三項により一万円未満を切り捨てた金額。 以下同じ。)に、国税通則法六五条一項の規定に基づき一〇〇分の一〇の割合を乗じて算出した金額一三六万九〇〇〇円に同条二項の規定に基づき、右一三六九万円のうち五〇万円を超える部分に相当する金額一三一九万円に一〇〇分の五を乗じて算出した金額六五万九五〇〇円を加算した金額である。 (2) 平成八年分二八〇万二五〇〇円右金額は、右年分に係る更正処分により、原告が新たに納付すべきこととなった税額一八八五万円に、国税通則法六五条一項の規定に基づき一〇 (2) 平成八年分二八〇万二五〇〇円右金額は、右年分に係る更正処分により、原告が新たに納付すべきこととなった税額一八八五万円に、国税通則法六五条一項の規定に基づき一〇〇分の一〇の割合を乗じて算出した金額一八八万五〇〇〇円に同条二項の規定に基づき、右一八八五万円のうち五〇万円を超える部分に相当する金額一八三五万円に一〇〇分の五を乗じて算出した金額九一万七五〇〇円を加算した金額である。 (二) 本件各賦課決定処分の適法性について被告が本訴において主張する本件係争各年分の過少申告加算税の額は、前記(一)の(1)及び(2)記載のとおりであり、本件各賦課決定処分に係る納付すべき税額と一致するから、本件各賦課決定処分は適法である。 三争点及び争点に対する当事者の主張本件の争点は、本件費用(本件解除損害金、本件取壊費用及び本件資産損失)が原告の平成七年分の不動産所得の金額の計算上必要経費に算入されるか否かであり、右争点に対する当事者の主張は次のとおりである。 (被告の主張) 1 物納の意義等について原告は、相続税の納付に際し、本件土地の物納により収納する方法を採ったものであるが、収納とは、納税者が国税等の納付義務の履行の手段として収納機関に現金等を提供し、当該収納機関がこれを領収する行為を意味し、その効果として収納機関が領収した日に納税義務が消滅することになる。そして、物納とは、相続税法四一条一項の規定により、納付すべき相続税額を金銭で納付することを困難とする事由がある場合において、本来の金銭納付に代えて物納の許可を受けた物納財産により当該許可を受けた相続税額を納付するものであるから、公法上の代物弁済ということができる。 ところで、原告は、相続税の申告に際し、本件土地上には本件建物が存しているものの、被相続 けた物納財産により当該許可を受けた相続税額を納付するものであるから、公法上の代物弁済ということができる。 ところで、原告は、相続税の申告に際し、本件土地上には本件建物が存しているものの、被相続人から本件土地を使用貸借により借り受けていたことから、使用貸借に基づく使用権の価額を〇円として扱い、右土地の評価に際しては、借地権をしん酌せず自用地評価(更地評価)で行ったものであるが、相続税法四三条一項ただし書きの規定によれば、土地を収納するに当たっては、収納価額は収納時の現況によるものとされており、本件のように物納に係る土地上に相続財産ではない建物が存在する場合、本件賃貸借の解約及び本件建物の取壊しがなければ、収納価額は、更地価額から借地権に相当する額を差し引いた、いわゆる底地価額により評価されることとなり、更地として物納する場合に比して、収納価額が低く定められることになる。 すなわち、本件の場合、当時の右土地の自用地価額(更地価額)が一〇億六一七二万八三〇〇円、右土地上の借地権割合が七〇パーセントであったことからすると、本件賃貸借の解約及び本件建物の取壊しがなければ、底地価額は、右金額の三〇パーセント相当額である三億一八五一万八四九〇円となり、収納価額は、自用地価額(更地価額)に比し、七億円余り低く評価される状況であったといえるのであり、後述するとおり、原告が物納に先立って本件賃貸借契約を解除し、本件建物を取り壊したのは、自用地価額(更地価額)による収納を実現するためであったと認められる。 2 物納における譲渡費用について(一) 譲渡所得とは、資産の譲渡による所得をいう(所得税法三三条一項)が、一般に、「譲渡」とは所有権その他の権利の移転を広く含む概念であり、売買のほかに、交換、代物弁済、競売、公売、収用、法人に対する現物出資等による 、資産の譲渡による所得をいう(所得税法三三条一項)が、一般に、「譲渡」とは所有権その他の権利の移転を広く含む概念であり、売買のほかに、交換、代物弁済、競売、公売、収用、法人に対する現物出資等による資産の移転が含まれる。 そして、物納は、前記のとおり公法上の代物弁済であるから、所得税法三三条に規定する「資産の譲渡」の一態様にほかならない。 なお、租税特別措置法四〇条の三は、政策的配慮から、個人がその財産を相続税法四一条一項の許可を受けて物納した場合には、所得税法三三条の規定の適用については、当該財産の譲渡がなかったものとみなすと規定しており、物納に係る譲渡所得について、所得税は課税されないこととされている。 (二) ところで、譲渡所得の金額は、当該所得に係る総収入金額から当該所得の基因となった資産の取得費及びその資産の譲渡に要した費用(以下「譲渡費用」という。)の額の合計額を控除し、その残額の合計額から譲渡所得の特別控除の額を控除した金額である(所得税法三三条三項)。 (1) 右資産の取得費とは、別段の定めがあるものを除き、その資産の取得に要した金額並びに設備費及び改良費の額の合計額をいう(所得税法三八条一項)。 (2) また、譲渡費用とは、譲渡に関してなした出捐のうち譲渡のために支出する周旋料、登録料など譲渡を実現するために直接必要な支出を意味するものと解すべきであり、当該資産の登記・登録費用、仲介手数料、運搬費など譲渡のために直接要した費用や譲渡価額を増加するための費用(例えば、既に締結した売買契約を解除してほかに有利な条件で譲渡した際、右売買契約を解除したことに伴って支出した違約金等)を意味するものと解される。さらに、立退料についても、「納税者は、早期に賃借人の立ち退きを実現した上で本件建物を取り壊し、その敷地である本件土地を更地 買契約を解除したことに伴って支出した違約金等)を意味するものと解される。さらに、立退料についても、「納税者は、早期に賃借人の立ち退きを実現した上で本件建物を取り壊し、その敷地である本件土地を更地にして引き渡すことにより、その対価を取得するために、立退料を支払ったものと認められるから、本件立退料は、その性質上、本件土地を譲渡するために要した費用であると認められ、その金額は、譲渡所得に係る必要経費に算入すべきである」(大阪地裁平成三年五月七日判決・税務訴訟資料一八三号六二六頁)とされており、右の趣旨に照らすと、土地等を譲渡するために当該土地上に存する建物を取り壊した場合、その建物の取壊しに要した費用についても、土地等を譲渡するために支出したものと認められるから、譲渡費用に該当すると解すべきである。 すなわち、その譲渡を実現するために直接必要な支出として、右判示で例示されている費用及び譲渡価額を増加するための費用のほか、その支出の原因が資産の譲渡による対価を得るためであることが明らかなものは譲渡費用に含まれるというべきである。 (3) また、資産損失については、「当該建物が売却地の譲渡に先立ち、売買契約上の引渡し債務の履行として取り壊されたことは当事者間に争いがないから、当該建物の取壊しにより当該建物について生じた資産損失は譲渡費用に当たると解される」(東京地裁昭和六三年四月二〇日判決・税務訴訟資料一六四号八七頁)のであり、土地の譲渡に際しその土地上にある建物を取り壊した場合、その取壊しが当該譲渡のために行われたことが明らかであるときは、その建物の取壊しにより建物について生じた資産損失は譲渡費用に当たると解される。 すなわち、その損失の原因が資産の譲渡の実現のために発生したものであることが明らかなとき、その資産損失は譲渡費用となるのであ の取壊しにより建物について生じた資産損失は譲渡費用に当たると解される。 すなわち、その損失の原因が資産の譲渡の実現のために発生したものであることが明らかなとき、その資産損失は譲渡費用となるのである。 3 本件費用等についてそこで、以上を本件についてみると、次のとおりである。 (一) 本件解除損害金及び本件取壊費用原告は、前記一の1(三)ないし(一〇)記載のとおり、平成六年四月四日、被告に対し、金銭による納付が困難であるとして、本件土地の評価につき、更地にすることを前提とした自用地価額(更地価額)により物納申請を行い、その後の同年八月三日付けで、原告が本件土地を物納することを前提とした本件解約合意書をデニーズとの間で作成し、右合意書に基づき本件賃貸借契約を解除した上で本件建物を取り壊し、平成七年一二月一五日本件土地を物納するに至ったのであり、かかる事実経過及び前記1で述べたところに照らせば、本件解除損害金及び本件取壊費用は、本件土地の物納を前提とし、一〇億六一七二万八三〇〇円という更地価額での収納を実現するために支払われたものであることは明らかであり、前記2の(二)で述べたところの、譲渡価額を増加するための費用であり、かつ、その支出の原因が資産の譲渡の対価を得るためのものと認められる。 したがって、本件解除損害金及び本件取壊費用は、所得税法三三条三項に規定する譲渡費用に該当することが明らかである。 (二) 本件資産損失本件資産損失についても、右(一)の本件解除損害金及び本件取壊費用と一体となって発生するものであり、物納のために本件建物を取り壊して生じた除却損にほかならず、その損失の原因が当該譲渡のために発生したことが明らかであるから、本件建物について生じた本件資産損失は、所得税法三三条三項に規定する譲渡費用及び同法五一条一項 を取り壊して生じた除却損にほかならず、その損失の原因が当該譲渡のために発生したことが明らかであるから、本件建物について生じた本件資産損失は、所得税法三三条三項に規定する譲渡費用及び同法五一条一項かっこ書に該当するというべきである。 4 原告は、本件費用等は物納のために要したものではない旨主張する。 しかし、税務署長は、相続税法四二条二項ただし書の規定により、相続税物納申請に係る物納財産が管理又は処分をするのに不適当であると認める場合においては、その変更を求め、当該申請者が同条四項の規定による申請書を提出するのを待って当該申請の許可又は却下をすることができるとされているところ、本件土地については、右管理又は処分の適否を調査した結果に基づき、平成六年二月二四日付けで、被告から原告に対し、更地として収納するのに必要な補完事項等を指摘した、「物納申請不動産に関する書類の補完等の通知書」(以下「補完等の通知書」という。)を送付し、原告から、右補完事項に関する必要書類が提出されたことから、被告において本件土地は物納不動産として適当であると判断し、平成七年一二月一五日に物納許可額一〇億六一七二万八三〇〇円で収納したのである。すなわち、本件土地は、「建物、工作物を全て撤去する。」という補完事項が履行されなければ物納申請が却下される可能性があったのであり、相続税の納付につき、延納によることが可能な状況にならない限り物納によるしかなかった原告としては、本件土地を更地にして、物納の許可を得られる状態とする必要があったというべきである。 したがって、本件費用等は物納のために要した費用と認められ、物納が所得税法三三条に規定する「資産の譲渡」の一態様であることは前記2(一)記載のとおりであるから、本件費用等は譲渡費用に該当するものであるというべきである。 ま 納のために要した費用と認められ、物納が所得税法三三条に規定する「資産の譲渡」の一態様であることは前記2(一)記載のとおりであるから、本件費用等は譲渡費用に該当するものであるというべきである。 また、仮に、原告が本件土地上に建物を新築し、その賃貸収入により延納の方法を採ることを希望し、その可能性をも検討した事実があったとしても、右原告の主観的意図は、本件費用等が譲渡費用に該当すると認められることの妨げとなるものではない。そして、結果的にも本件土地は何ら貸付けの用に供されることなく物納され、譲渡所得が生じているのであるから、このことからしても、原告の主張は理由がないと言わざるを得ない。 5 以上からすれば、本件費用等は、その支出及び損失の原因からみて、その資産の譲渡に要した費用、すなわち譲渡費用と認められるものであって、不動産所得の金額の計算上必要経費に算入すべきものでないことは明らかである。 (原告の主張) 1 本件解除損害金及び本件取壊費用は、所得税法三七条一項の(不動産)所得を生ずべき業務について生じた費用に該当し、平成七年分の不動産所得の金額の計算上必要経費に算入することが認められるべきである。また、本件資産損失は、同法五一条一項により、平成七年分の不動産所得の金額の計算上必要経費に算入することが認められるべきである。 2 不動産所得とは、不動産、不動産の上に存する権利、船舶又は航空機(以下、「不動産等」という。)の貸付け(地上権又は永小作権の設定その他他人に不動産等を使用させることを含む。)による所得(事業所得又は譲渡所得に該当するものを除く。)をいい、不動産所得の金額は、その年中の不動産所得に係る総収入金額から必要経費を控除した金額であると定められている(所得税法二六条)。そして、必要経費については、その年分の不動産所得の金額、 除く。)をいい、不動産所得の金額は、その年中の不動産所得に係る総収入金額から必要経費を控除した金額であると定められている(所得税法二六条)。そして、必要経費については、その年分の不動産所得の金額、事業所得又は雑所得の金額の計算上必要経費に算入すべき金額は、別段の定めがあるものを除き、これらの所得の総収入金額に係る売上原価その他当該総収入金額を得るために直接に要した費用の額及びその年における販売費、一般管理費その他これらの所得を生ずべき業務について生じた費用(償却費以外の費用でその年において債務の確定しないものを除く。)の額とすると定められている(所得税法三七条一項)。 本件で問題になっているのは①本件解除損害金八三七一万円、②本件取壊費用五二五万三〇〇〇円、③本件資産損失一六〇七万七〇〇〇円であるが、右①の本件解除損害金の内訳は、逸失利益補償費五五〇七万円、デニーズの持ち込み資産に係る未償却残高二五六四万円、移転費用三〇〇万円である。 (一) 本件解除損害金について原告は、デニーズとの契約により、本件土地上に本件建物を建築し、これを昭和五四年末から二〇年の約定で賃貸していたものであるが、このような賃貸借契約において、賃料を定めるに当たっては、建物の建築費はもちろん、賃借人側の予想される将来の利益、持ち込み資産の償却費等種々の要素がすべて勘案されて、交渉の上、合意に至っているのが一般的であり、このことから考えても、途中解約により、原告がデニーズに支払った本件解除損害金(逸失利益補償費、持ち込み資産に係る未償却残高、移転費)は、過去の賃料収入の修正という意味合いをも含んでおり、すべて、本件建物の賃貸により得られていた不動産所得と密接な関連をもつものであって、まさに不動産所得に対応する費用である。 したがって、本件解除損害金は不動産所得 修正という意味合いをも含んでおり、すべて、本件建物の賃貸により得られていた不動産所得と密接な関連をもつものであって、まさに不動産所得に対応する費用である。 したがって、本件解除損害金は不動産所得を生ずべき業務について生じた費用として、所得税法三七条一項により、不動産所得の金額の計算上必要経費に算入することが認められるべきである。 一般的に、建物の賃貸借契約の解約・建物明渡し費用は、その敷地の譲渡と直接に結びつくものではない。なぜなら、右賃貸借契約の解約等は、他に賃貸する場合、建物を取り壊して新たに建物を建築してこれを賃貸する場合、更地のまま駐車場等に利用する場合など様々な目的で行われるからである。本件においても、結果的に本件土地は物納されているが、本件解除損害金の支払を約定した時点やその支払を行った時点においては、本件土地の物納申請を取り下げることは可能であり、本件土地の物納は決定されていなかった。そもそも、更地にして物納すること自体何ら強制されるものではなく、原告は本件土地を更地にして物納する義務を履行するためにデニーズとの賃貸借契約を解約したものではないのであるから、本件解除損害金は、不動産所得の金額の計算上必要経費に算入することが認められるべきである。 (二) 本件取壊費用について本件建物は原告の不動産所得の基因となっていたものに他ならないから、本件取壊費用は、本件解除損害金及び本件資産損失と一体として、所得税法三七条一項に定められている、(不動産)所得を生ずべき業務について生じた費用に該当し、したがって、不動産所得の金額の計算上必要経費に算入することが認められるべきである。 なお、本件土地の物納との関係においては、本件建物の取り壊しは、前記(一)記載のとおり、物納の準備段階の行為にすぎず、物納と直接の関係に立つものでは 必要経費に算入することが認められるべきである。 なお、本件土地の物納との関係においては、本件建物の取り壊しは、前記(一)記載のとおり、物納の準備段階の行為にすぎず、物納と直接の関係に立つものではない。 (三) 本件資産損失について(1) 所得税法五一条は、不動産所得等の必要経費に関する原則規定である同法三七条の「別段の定め」に当たり、同法五一条一項は、不動産所得等を生ずべき事業の用に供される固定資産等の資産について、取り壊しなどにより生じた損失の金額は、その損失の生じた日の属する年分の不動産所得等の金額の計算上必要経費に算入する旨定めている。 (2) 本件において、不動産所得を生ずべき事業の用に供されていた資産は本件建物であり、この資産について、取り壊しにより損失が生じている。したがって、その損失については、所得税法五一条一項本文により、原告の平成七年分の不動産所得の金額の計算上必要経費に算入することが認められるべきである。本件建物の取り壊し時点での簿価は金一六一五万三五〇〇円であったが、このうち、平成七年分の減価償却費として被告も認めている金七万六五〇〇円を差し引いた金一六〇七万七〇〇〇円が資産損失として必要経費に算入すべき金額となる。 (3) 被告は、本件建物の資産損失は、所得税法三三条三項に規定する譲渡費用及び同法五一条一項かっこ書きに該当する旨主張している。 同項かっこ書きは、「資産の譲渡により又はこれに関連して生じたものを除く」としているが、この「資産」とは、本文の「資産」すなわち「不動産所得等を生ずべき事業の用に供される資産で、取りこわし等により損失の生じた資産」と同一の資産を指しているとしか解されないから、結局、同項かっこ書きの部分は、資産損失がその資産損失が生じた資産の譲渡により又はこれに関連して生じた場合を除く 、取りこわし等により損失の生じた資産」と同一の資産を指しているとしか解されないから、結局、同項かっこ書きの部分は、資産損失がその資産損失が生じた資産の譲渡により又はこれに関連して生じた場合を除く旨を定めた規定ということになる。 本件においては、不動産所得を生ずべき事業の用に供され、取り壊しにより資産損失が生じた資産は、本件建物であるところ、本件建物が譲渡されていないことはもちろんである。したがって、本件において、所得税法五一条一項かっこ書きが適用になる余地はなく、本文が適用になり、本件資産損失は、不動産所得の金額の計算上必要経費に算入することが認められるべきである。 3 被告は、本件費用等は譲渡所得に該当し、不動産所得の金額の計算上必要経費に算入することができない旨主張する。 (一) しかし、譲渡所得とは、資産の譲渡による所得をいう(所得税法三三条一項)ところ、原告は相続税の納付に際し、本件土地を物納しており、租税特別措置法四〇条の三において、物納をした場合には、所得税法三三条の規定の適用においては、当該財産の譲渡がなかったものとみなされるのであるから、譲渡所得の発生する余地はない。 このように、本件において譲渡所得は発生していない以上、本件では譲渡費用は全く問題にすることはできないはずである。被告の主張は、仮に譲渡所得が発生したとすれば本件費用等は譲渡費用に該当するという全くの仮定論にすぎないものである。 (二) また、本件費用等はそもそも譲渡費用には該当しないものである。 一般に、立退料が譲渡に関する必要経費として認められるためには、法律上譲受人に対抗することができる賃借人に対して支払われたものであることを要するとするのが裁判例であるところ、原告は、本件土地をAから使用貸借により借り受け、その上に本件建物を建築して所有し、これを 上譲受人に対抗することができる賃借人に対して支払われたものであることを要するとするのが裁判例であるところ、原告は、本件土地をAから使用貸借により借り受け、その上に本件建物を建築して所有し、これをデニーズに賃貸していたものであり、建物の賃借人であるデニーズは、建物の所有者である原告以上に本件土地に対する権限を取得することはないから、デニーズは、本件土地については、本件土地の譲受人に法律上対抗することのできる賃借人には該当しないというべきである。 そして、本件において原告がデニーズに支払ったのは、本件解除損害金であるが、一般に立退料と呼ばれるものと性質において差異のあるものではない。また、本件取壊費用及び本件資産損失は、本件解除損害金と一体となって発生したものであるから、本件解除損害金と同様に扱われるべきものである。 そうすると、本件費用等が譲渡費用であるとして、不動産所得の金額の計算上必要経費に算入することを否定する被告の主張は失当なものというべきである。 第三当裁判所の判断一不動産所得とは、不動産、不動産の上に存する権利、船舶又は航空機の貸付による所得をいい(所得税法二六条一項)、その額は、その年中の不動産所得に係る総収入金額から必要経費を控除した金額である(同条二項)。また、不動産所得の金額の計算上必要経費に算入すべき金額は、別段の定めがあるものを除き、所得の総収入金額に係る売上原価その他当該総収入金額を得るため直接要した費用の額及びその年における販売費、一般管理費その他これらの所得を生ずべき業務について生じた費用の額とするとされている(同法三七条一項)。 そして、右の別段の定めとして、所得税法五一条一項があり、同規定は、居住者の営む不動産所得、事業所得又は山林所得を生ずべき事業の用に供される固定資産等について、取り壊し、除 る(同法三七条一項)。 そして、右の別段の定めとして、所得税法五一条一項があり、同規定は、居住者の営む不動産所得、事業所得又は山林所得を生ずべき事業の用に供される固定資産等について、取り壊し、除却、滅失(当該資産の損壊による価値の減少を含む。)その他の事由により生じた損失の金額(保険金、損害賠償金その他これに類するものにより補てんされる部分の金額及び資産の譲渡により又はこれに関連して生じたものを除く。)は、その者のその損失の生じた日の属する年分の不動産所得の金額の計算上、必要経費に算入することができる旨規定している。 二本件においては、前記第二の一1記載のとおり、本件土地は、本件建物を取り壊して更地とした上で、原告の納付すべき相続税のために物納されている。 ところで、物納とは、納付すべき相続税額を金銭で納付することを困難とする事由がある場合において、本来の金銭の納付に代えて、許可を受けた物納財産により相続税を納付するものであり(相続税法四一条一項)、代物弁済に類似した公法上の契約であると考えられるところ、譲渡所得について規定している所得税法三三条一項にいう「譲渡」とは、所有権その他の権利の移転を広く含む概念で、売買のほかに、交換、代物弁済、競売、公売、収用、法人に対する現物出資等による資産の移転が含まれるものと解され、したがって、物納も右の「譲渡」に該当するというべきである。この点に関し、租税特別措置法四〇条の三は、個人がその財産を相続税法四一条一項の許可を受けて物納した場合には、所得税法三三条の規定の適用については、当該財産の譲渡がなかったものとみなすと規定しているが、右は、物納が所得税法三三条一項にいう「譲渡」に該当することを前提とした上で、政策的配慮から、物納に係る譲渡所得については所得税を課さないとする趣旨のものであり、物 たものとみなすと規定しているが、右は、物納が所得税法三三条一項にいう「譲渡」に該当することを前提とした上で、政策的配慮から、物納に係る譲渡所得については所得税を課さないとする趣旨のものであり、物納が一般的に譲渡所得の発生を観念できない性質のものであるとしてそのことを確認する趣旨の規定でないことは明らかというべきである。 三本件についてみるに、前記第二の一1記載のとおり、原告は、Aが所有していた本件土地を使用貸借により借り受けて、本件土地上に本件建物を建築した上でデニーズに賃貸していたこと、本件相続により本件土地を相続し、その相続税を納付する必要があることから、本件土地について物納の申請をした上で、デニーズとの間で本件解約合意書を取り交わし、それに基づいて、本件賃貸借契約を解除したこと、デニーズから本件建物の明渡しを受けて、本件建物を取り壊して本件土地を更地とした上で、本件土地を物納したこと、原告は、本件解約合意書に基づいて、本件解除損害金として八三七一万円をデニーズに対して支払ったこと、本件取壊費用は五二五万三〇〇〇円であり、本件建物に係る本件資産損失は一六〇七万七〇〇〇円であったこと、原告が本件土地について物納の申請をした際には、本件土地の評価については、本件土地を更地にすることを前提とした自用地価額により申請をしたことには争いがない。 右のとおり、原告は、本件土地を更地にして物納するために、本件建物の賃借人であったデニーズと本件解約合意書を取り交わして本件解除損害金を支払ったものであり、また、本件土地を更地にして物納するために、本件建物を取り壊したものであることが認められる。そして、原告が本件土地について物納の申請をした際には、本件土地の評価については、本件土地を更地にすることを前提とした自用地価額により申請をしているところ、 を取り壊したものであることが認められる。そして、原告が本件土地について物納の申請をした際には、本件土地の評価については、本件土地を更地にすることを前提とした自用地価額により申請をしているところ、本件建物を取り壊して更地にした場合には、本件建物が存在することにより本件土地が貸家建付地であるとして評価される場合と比較して、本件土地の収納価額が大幅に高額になることは明らかであるから、本件解約合意書の取り交わし、本件解除損害金の支払及び本件建物の取り壊しはいずれも本件土地を物納するために行われたものであるというべきである。そうすると、本件解除損害金及び本件取壊費用は、いずれも、本件土地を物納するために要した譲渡費用に該当するというべきであり、所得税法三七条に規定されている不動産所得を得るために直接に要した費用ないし不動産所得を生ずべき業務について生じた費用ということはできず、不動産所得の金額の計算上必要経費に算入することはできないものというべきである。 また、本件資産損失についても、右の本件解除損害金及び本件取壊費用と一体となって発生するものであり、本件土地を物納するために本件建物を取り壊したことによって生じた損失というべきであるから、所得税法五一条一項かっこ書きの「資産の譲渡により又はこれに関連して生じたもの」に該当し、不動産所得の金額の計算上必要経費に算入することはできないものというべきである。 四1 原告は、賃貸借契約において賃料を定めるに当たっては、建物の建築費はもちろん、賃借人側の予想される将来の利益、持ち込み資産の償却費等種々の要素がすべて勘案されて、交渉の上、合意に至っているのが一般的であり、このことから考えても、途中解約により、原告がデニーズに支払った本件解除損害金(逸失利益補償費、持ち込み資産に係る未償却残高、移転費)は、 べて勘案されて、交渉の上、合意に至っているのが一般的であり、このことから考えても、途中解約により、原告がデニーズに支払った本件解除損害金(逸失利益補償費、持ち込み資産に係る未償却残高、移転費)は、過去の賃料収入の修正という意味合いをも含んでおり、すべて、本件建物の賃貸により得られていた不動産所得と密接な関連をもつものであるから、不動産所得の金額の計算上必要経費に算入されるべきであると主張する。 しかし、仮に、賃料を定めるに当たって、原告の主張する右のような要素が勘案されているものとしても、賃料は、あくまでもそれに対応する期間の使用の対価にとどまるものであり、本件解除損害金が過去の賃料の修正という意味合いを含むということはできない。本件解除損害金は、原告がデニーズとの間の賃貸借契約の条件に反して契約終了前に解約を求め、デニーズが条件に反して解約を余儀なくされることによる損害を補填する趣旨で支払われる性質のものであると解されるのであって、まさに、原告が本件土地を更地にして物納するため支出する必要が生じた費用とみるべきものである。したがって、本件解除損害金は、本件土地の譲渡費用に該当するものであり、所得税法三七条一項にいう不動産所得を得るために直接に要した費用ないし不動産所得を生ずべき業務について生じた費用であるということはできない。 また、右に関連して、原告は、本件解除損害金の支払を約定した時点やその支払を行った時点においては、本件土地の物納は決定されていなかったのであり、原告は、本件土地を物納することが強制されていたわけではなく、本件土地を更地にして物納する義務を履行するためにデニーズとの賃貸借契約を解約したものではないから、本件解除損害金は不動産所得の金額の計算上必要経費に算入されるべきである旨主張するが、本件土地が物納された事実 地にして物納する義務を履行するためにデニーズとの賃貸借契約を解約したものではないから、本件解除損害金は不動産所得の金額の計算上必要経費に算入されるべきである旨主張するが、本件土地が物納された事実経過に照らせば、原告は、本件土地を物納するためにデニーズとの賃貸借契約を解除したものであるとみるべきであり、このことは、本件解約合意書においても、本件解約合意書の内容は、原告に生じた相続に伴う相続税の支払のため、原告の要請をデニーズが了解して合意されたものである旨、また、デニーズの明渡しの遅滞によって、原告において物納手続に遅延を生じ、物納されなかったときは、デニーズは、原告に対し、それによって原告の被る税法上の一切の損失を賠償するものとする旨の定めがされたこと(前記第二の一1(五))からも明らかである。原告は、本件解除損害金を支払った時点において、物納の申出を取り下げることも可能であったとして、右のとおり主張をするが、右主張は、本件土地を物納するに至る全体の事実経過を無視した失当なものである。 2 原告は、本件取壊費用について、本件建物は原告の不動産所得の起因となっていたものにほかならないから、本件取壊費用は、不動産所得を生ずべき業務について生じた費用に該当すると主張するが、既に説示したとおり、本件建物は、本件土地の物納という譲渡に該当する行為のために取り壊されたものであるから、本件取壊費用は、本件土地の譲渡費用に該当するものであり、所得税法三七条一項にいう不動産所得を得るために直接に要した費用ないし不動産所得を生ずべき業務について生じた費用であるということはできない。 3 原告は、本件資産損失について、所得税法五一条一項は、不動産所得等を生ずべき事業の用に供される固定資産等の資産について、取り壊しなどにより生じた損失の金額は、その損失の生 ということはできない。 3 原告は、本件資産損失について、所得税法五一条一項は、不動産所得等を生ずべき事業の用に供される固定資産等の資産について、取り壊しなどにより生じた損失の金額は、その損失の生じた日の属する年分の不動産所得等の金額の計算上必要経費に算入する旨定めているところ、不動産所得を生ずべき事業の用に供されていた本件建物について取り壊しにより損失が生じているのであるから、本件資産損失について、不動産所得の金額の計算上必要経費に算入することが認められるべきである旨主張する。 しかし、前記一記載のとおり、所得税法五一条一項は、不動産所得を生ずべき事業の用に供される固定資産等について、取り壊し等の事由に生じた損失の金額は、その者のその損失の生じた日の属する不動産所得の金額の計算上必要経費に算入する旨規定する一方、そのかっこ書きで「資産の譲渡により又はこれに関連して生じたもの」を除く旨規定しているところ、本件建物は、本件土地の物納という譲渡に該当する行為のため取り壊されたものであるから、本件資産損失は、まさに右のかっこ書きに規定する場合に該当し、したがって、本件資産損失は、不動産所得の金額の計算上必要経費に算入することが認められていないものというべきである。 右に関連して、原告は、右かっこ書きにいう「資産」とは、本文の「資産」すなわち「不動産所得等を生ずべき事業の用に供される資産で、取りこわし等により損失の生じた資産」と同一の資産を指すものというべきところ、本件の場合、本件建物自体が譲渡されたわけではないので、右かっこ書きの規定が適用になることはない旨主張する。しかしながら、右かっこ書きの規定が、資産の譲渡により又はこれに関連して生じた資産損失を、不動産所得の金額の計算上必要経費に算入される費用から除外した趣旨は、資産の譲渡ないし譲 ことはない旨主張する。しかしながら、右かっこ書きの規定が、資産の譲渡により又はこれに関連して生じた資産損失を、不動産所得の金額の計算上必要経費に算入される費用から除外した趣旨は、資産の譲渡ないし譲渡に関連して生じた資産損失は、譲渡費用として譲渡所得から控除されるからであると解されるところ、かかる譲渡費用は、必ずしも譲渡される資産自体から生じた資産損失には限定されないというべきである(所得税基本通達三三―八参照)から、右かっこ書きの規定により除外される損失を譲渡に供された資産自体から生じたものだけをいうと解すべき必然性はない。このことは、同項が、不動産所得を生ずべき固定資産等について、滅失により生じた損失の金額は、不動産所得の金額の計算上必要経費に算入するものとし、右の滅失には「当該資産の損壊による価値の減少を含む。」と規定しているのに対し、不動産所得の金額の計算上必要経費に算入する損失の金額から除外するものをかっこ書きで規定する場合には、「資産の譲渡により又はこれに関連して生じたものを除く。」と規定し、「当該資産」という文言を使用せず単に「資産」という文言を使用していることからも明らかである。 4 原告は、本件では、租税特別措置法四〇条の三の規定によって、所得税法三三条の規定の適用においては、当該財産の譲渡がなかったものとみなされるのであるから、譲渡所得の発生する余地はなく、譲渡所得が発生していない以上、譲渡費用を問題にすることはできないと主張する。 しかし、前記二記載のとおり、物納も、所得税法三三条にいう資産の「譲渡」に該当し、したがって、物納による譲渡所得及びこれに対応する譲渡費用の発生は観念することができるのであり、ただ、租税特別措置法四〇条の三の規定によって、政策的に、物納に係る譲渡所得に対しては課税関係が生じないこととされて 物納による譲渡所得及びこれに対応する譲渡費用の発生は観念することができるのであり、ただ、租税特別措置法四〇条の三の規定によって、政策的に、物納に係る譲渡所得に対しては課税関係が生じないこととされているにすぎない。 そして、物納による譲渡所得について課税がされない以上、物納という譲渡のために生じた費用が原告の所得の計算上控除の対象とはならないことは当然であって、右課税がされないからといって、右費用が不動産所得の金額の計算上必要経費になるということにはならないというべきである。 5 さらに、原告は、法律上譲受人に対抗できない賃借人に対して支払われた立退料は譲渡費用には該当しないから、本件費用等も譲渡費用には該当しない旨主張するが、法律上譲受人に対抗できない賃借人に対して支払われた立退料であっても、資産の譲渡をするために生じたものであると認められる限りにおいては譲渡費用に該当するというべきである(所得税基本通達三三―七及び三七―二三参照)から、原告の主張はその前提を欠き、失当である。 五したがって、原告の不動産所得の金額の計算上、本件費用等を必要経費に算入することはできないとしてされた本件各更正処分等には違法性はないというべきである。 第四結論以上の次第で、原告の請求はいずれも理由がないからこれを棄却することとし、訴訟費用の負担につき、行政事件訴訟法七条、民事訴訟法六一条を適用して、主文のとおり判決する。 東京地方裁判所民事第三部裁判官谷口豊裁判官加藤聡裁判長裁判官青柳馨は転補のため署名押印することができない。 裁判官谷口豊

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