平成19(ワ)31984 損害賠償請求

裁判年月日・裁判所
平成22年3月4日 東京地方裁判所 その他
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判決文本文36,586 文字)

- 1 -平成22年3月4日判決言渡平成19年(ワ)第31984号損害賠償請求事件判決主文 被告は,原告Aに対し,4581万1680円及びこれに対する平成17年1月31日から支払済みまで年5分の割合による金員を支払え。 被告は,原告Bに対し,330万円及びこれに対する平成17年1月31日から支払済みまで年5分の割合による金員を支払え。 被告は,原告Cに対し,330万円及びこれに対する平成17年1月31日から支払済みまで年5分の割合による金員を支払え。 原告らのその余の請求をいずれも棄却する。 訴訟費用はこれを4分し,その3を原告らの負担とし,その余は被告の負担とする。 この判決は,第1項ないし第3項に限り,仮に執行することができる。 事実及び理由 第1請求 被告は,原告Aに対し,1億6554万9789円及びこれに対する平成17年1月31日から支払済みまで年5分の割合による金員を支払え。 被告は,原告Bに対し,550万円及びこれに対する平成17年1月31日から支払済みまで年5分の割合による金員を支払え。 被告は,原告Cに対し,550万円及びこれに対する平成17年1月31日から支払済みまで年5分の割合による金員を支払え。 第2事案の概要本件は,被告が開設するD病院(以下「被告病院」という)において,E。 医師らの診療を受けていた原告Aが,水頭症により,高次脳機能障害を負ったことについて,原告らが,E医師には,平成17年1月8日から同月29日ま- 2 -でに,原告Aの状態や原告Cの訴えなどから,脳腫瘍の存在を疑い,CTやMRI撮影をし,ドレナージなどの適切な治療を行う義務があるのに,それを怠った過失があるなどと主張し,被告に対し,不法行為(使用者責任)又は診療契約上の債務不履行に基づき,損害賠償及 を疑い,CTやMRI撮影をし,ドレナージなどの適切な治療を行う義務があるのに,それを怠った過失があるなどと主張し,被告に対し,不法行為(使用者責任)又は診療契約上の債務不履行に基づき,損害賠償及びこれに対する平成17年1月31日から支払済みまで民法所定の年5分の割合による遅延損害金の支払を求める事案である。 前提となる事実(証拠を掲げていない事実は,当事者間に争いがない事実である)。 (1)当事者等ア原告A(平成9年3月13日生)は,平成9年6月4日,被告病院を受診し,翌5日に,結節性硬化症に伴うてんかんの合併と診断され,その後も継続して被告病院で診察を受けていたが,平成17年1月30日,被告病院で,頭部CT検査を行ったところ,水頭症になっている状態であり,脳室ドレナージ術などが行われたが,高次脳機能障害が残り,同年6月28日,東京都から身体障害程度等級1級の認定を受けた(甲C1。 )イ原告Bは,原告Aの父である。 ウ原告Cは,原告Aの母である。 エ被告は,被告病院を開設している。 オE医師は,被告病院において,原告Aの診察を担当していた医師である。 (2)診療経過の概要本件の診療経過の概要は以下のとおりである。 ア平成9年6月4日,原告Aは,1か月前より,げっぷをする時,眼球上転しながら強む感じのけいれんが1日1回くらいあるなどと訴え,被告病院小児科を受診した(乙A1,A3。 )イ同月5日,被告病院は,原告Aに対し,頭部レントゲン検査,頭部CT検査,脳波検査及び心エコー検査を実施したところ,その結果から,原告- 3 -Aが,結節性硬化症の疑いが強いと診断した(乙A3。 )ウ同年7月1日,被告病院は,原告Aに対し,頭部MRI検査を実施したところ,結節性硬化症の病変として矛盾しないとの所見が得られた(乙A -Aが,結節性硬化症の疑いが強いと診断した(乙A3。 )ウ同年7月1日,被告病院は,原告Aに対し,頭部MRI検査を実施したところ,結節性硬化症の病変として矛盾しないとの所見が得られた(乙A1。 )エ同年10月1日,原告Aは,被告病院において,脳波検査を受け,同月2日,その検査結果から,E医師は,原告Aが,結節性硬化症,ウエスト症候群であると診断した(乙A1。 )オ平成17年1月8日,原告Aは,最近あまり歩かない,左足が震えるなどの訴えで,被告病院を受診した(乙A1。 )カ同月15日,原告Aは,歩いていて左足に傾く傾向があるような感じがする,座るときも左足をかばうような感じがする,左手を握って歩くこともあるなどの訴えで,被告病院を受診した(乙A1。 )キ同月27日,原告Aは,左足が歩くとき内反傾向にあるような感じがする,左足を引きずるような感じがする,昨朝より嘔吐があり,昨日2回,本日1回の嘔吐があったなどの訴えで,被告病院を受診した(乙A1。 )ク同月29日,原告Aは,昨日2回嘔吐し,本日も1回嘔吐したなどの訴えで被告病院を受診した(乙A1。 )ケ同月30日,原告Aは,朝気付いた時,だらんとしており,四肢に力が入らない状態であったので,原告Cは,原告Bとともに,原告Aを被告病院に連れて行った。被告病院は,原告Aに対し,頭部CT検査を実施したところ,脳室上衣腫が,第3脳室を圧迫して水頭症になっている状態であり,対光反射がみられなかった。被告病院脳外科では,脳室ドレナージ術,オンマイヤ留置術を行った(乙A1,A4の1,A5)。 コ同年2月2日,被告病院は,原告Aに対し,頭部MRI検査を行ったところ,右側脳室内モンロー孔に近傍から発育する境界明瞭な腫瘍を認め,腫瘍の大きさは,60×55×39㎜であった(甲A3。 5)。 コ同年2月2日,被告病院は,原告Aに対し,頭部MRI検査を行ったところ,右側脳室内モンロー孔に近傍から発育する境界明瞭な腫瘍を認め,腫瘍の大きさは,60×55×39㎜であった(甲A3。 )- 4 -サ同年6月28日,東京都は,原告Aに対し,身体障害程度等級1級とする身体障害者手帳を交付した(甲C1。 )シ原告Aは,現在,回復困難な高次脳機能障害を負っており,四肢麻痺,硬直しており,寝たきりの状態であり,嚥下困難のため,胃チューブで経管栄養を施行中であり,失認,失語の状態で,両眼については失明している。 争点 本件の争点は,次の3点である。 (1)平成17年1月8日から同月29日までに,脳腫瘍の存在を疑い,CTやMRIを撮影するなどして,ドレナージなどの適切な治療を行う義務を怠った過失の有無(2)因果関係の有無(3)損害額 争点に関する当事者の主張は,次のとおりである。 (1)争点(1(平成17年1月8日から同月29日までに,脳腫瘍の存)在を疑い,CTやMRIを撮影するなどして,ドレナージなどの適切な治療を行う義務を怠った過失の有無)について(原告らの主張)ア平成17年2月2日の時点において,原告Aの右側脳室内には,巨大な腫瘍性病変(6×6×4cm)が存在したことが認められる。この腫瘍は緩徐に増大する性質のものであり,数日間のうちに巨大化するものではない。 平成17年1月に入った時点で,原告Aには,歩行障害(左片麻痺)など,腫瘍による脳の圧迫に基因する異常が多く発現していた。すなわち,同月8日には「最近あまり歩かない「左足がふるえる,同月15日,」,」には「歩いていて左足に傾く傾向? 「すわる時も左足をかばう?,,」,」- 5 -「左手をにぎって歩くことも「時に左足をふるわせ 近あまり歩かない「左足がふるえる,同月15日,」,」には「歩いていて左足に傾く傾向? 「すわる時も左足をかばう?,,」,」- 5 -「左手をにぎって歩くことも「時に左足をふるわせる?,同月27日」,」には「左足が歩くとき内反傾向? 「左足を引きずる?」などとの訴え,」,があったほか,同月27日,同月29日には,嘔吐の訴えもあった。 イ以上のとおり,原告Aには,遅くとも平成17年1月に入った時点で,右側脳室内に巨大な腫瘍が存在した。そのことを強くうかがわせる症状も頻発していた。E医師は,原告Aに左片麻痺の症状等が発現していたことを認識していたが,それに対する解答(原因の究明)が何らなされていない。被告病院が,腫瘍の存在に気付いたのは,原告Aが意識を失った平成17年1月30日であり,この時期に至ってようやく腫瘍に気付いたことは,遅きに失する。 甲B第11号証及び証人F医師の証言から明らかなように,原告Aに発症していた左片麻痺の諸症状は,頭蓋内病変によって惹起されているものと強く疑われたのである。しかし,E医師は,脳腫瘍を含む頭蓋内病変の可能性を全く疑わなかった。そのため,水頭症,ひいては,その原因であった腫瘍の存在が見落とされていたのである。そして,手遅れになったのである。 E医師は原告Aの主治医であったところ,結節性硬化症の患者には,脳腫瘍が発症することは一般的に知られていることである。一般の小児患者よりも,より一層,E医師は原告Aに頭蓋内病変が発症していることを疑うべきであった。 被告病院にとって,腫瘍の存在は容易に予見できたのであり,それに気付かなかった被告病院の過失は,重大な過失というべきである。 ウF医師が証言するように,遅くとも平成17年1月27日の時点で,被告病院は,頭蓋内病変の可能性を疑い,M に予見できたのであり,それに気付かなかった被告病院の過失は,重大な過失というべきである。 ウF医師が証言するように,遅くとも平成17年1月27日の時点で,被告病院は,頭蓋内病変の可能性を疑い,MRI撮影又はCT撮影による画像診断を行うべきであった。 腫瘍を発見した後,直ちにドレナージを行うなどして意識のある状態を- 6 -保たなければならなかった。本件において「呼吸の止まる寸前の画像」,ととらえてもおかしくなかったのであるから,経過観察という選択肢はあり得なかったのである。実際にも,被告病院は,原告Aが意識のない状態で被告病院に運ばれた際,直ちにCT検査を行い,そして,脳室ドレナージを行っている。このような被告病院のとった措置が正に本件において直ちになされるべき措置だったのである。 エF医師が証言するように,意識のある患者に対する脳腫瘍摘出手術と意識のない患者に対する脳腫瘍摘出手術とでは,術後の経過について大きな違いをもたらすのである。 本件において,原告Aが意識のある状態で脳腫瘍摘出手術に臨んでいれば,原告Aが寝たきりになる確率は5%以下だったのである。 (被告の主張)ア結節性硬化症の患者には,上衣下巨細胞性星細胞腫が発生することがあるが,その確率は,6ないし14%程度であり,さらに,当該腫瘍がモンロー孔を閉鎖することにより引き起こされる頭蓋内圧亢進の症状は,5%以下とされているところであり,結節性硬化症ということで,水頭症の発症を具体的に予測することは難しい。 イ頭蓋内圧亢進症状の具体的な症状は,意識障害,頭痛,嘔気・嘔吐,視覚障害とされている。これらは,非特異的な症状であり,これらの症状から頭蓋内圧亢進症状と判断することは困難である。 ウ本件では,一貫して,水頭症の症状として典型的な頭痛の訴えは見られない。水頭症の 覚障害とされている。これらは,非特異的な症状であり,これらの症状から頭蓋内圧亢進症状と判断することは困難である。 ウ本件では,一貫して,水頭症の症状として典型的な頭痛の訴えは見られない。水頭症の症状として,典型的な水頭症の症状がみられないことは,逆に水頭症を否定する方向に考えられるものである。 エ排便排尿障害・嘔吐について(ア)平成16年12月15日の訴え原告Aは,排便が不規則で,嘔吐,元気がない,紙(新聞紙)を食べ- 7 -ているとの主訴で受診しているが,紙を食べているとの訴えは,異食症の訴えであり,排便の不規則性と併せると,嘔吐・排便が不規則との訴えは,便秘に伴ってしばしば認められる小児の消化器症状の一つと考えられる。 (イ)平成17年1月8日の訴え原告Aは,最近あまり歩かない,ころころしたウンチが出るとの訴えで受診しているが「コロコロウンチ」は,小児の便秘症によくみる所,見であり,12月15日の所見と併せると,小児の消化器症状であると考えるのが合理的である。 (ウ)平成17年1月15日の訴えラキソベロン処方後,排便するようになり,食べるようになり,嘔吐なしとの訴えであり,この訴えから,これまでの排便障害については,消化器症状であることが明らかである。 (エ)平成17年1月27日の訴え昨朝より嘔吐があり,昨日2回,本日1回の嘔吐があったものの,その後,お茶を飲んでも嘔吐はない等の訴えがあるが,この時点においては,前日から嘔吐が3回あったとの訴えにすぎず,しかも,この日にはその後お茶を飲んでも嘔吐がないとのことであり,症状の進行増悪がみられていない。しかも,他の頭痛,意識障害,視覚障害などの頭蓋内圧亢進症状がみられていない。また,心電図上,徐脈の所見も見られていない。これらの所見からすれば,この時点では,頭蓋内 状の進行増悪がみられていない。しかも,他の頭痛,意識障害,視覚障害などの頭蓋内圧亢進症状がみられていない。また,心電図上,徐脈の所見も見られていない。これらの所見からすれば,この時点では,頭蓋内圧亢進症状とは考えることはできない。 (オ)平成17年1月29日の訴えこの時点では,前日に2回,今朝1回嘔吐があるとの主訴であったが,進行性に嘔吐症状が出現している所見はなく,頭痛の訴えがないこと,頭蓋内圧亢進症状は否定的に考えられる一方,感染に伴う嘔吐と脱水の- 8 -症状と考えることが最も合理的である。 オ局所的な神経症状について本件では,1月8日に「あまり歩かない」との訴えがあり,1月15,日に「歩いていて左足に傾く傾向があるような感じである,座るときも左足をかばうような感じである,左手をにぎって歩くこともある,時に左手足をふるわせる感じがする」との訴えがある。1月27日には「左足が,歩くとき内反傾向な感じで,左足をひきずる感じである。心配なときやくすりトイレなど嫌がっているときに右手右足が時にふるえる」といった訴えがなされている。 しかし,これら時点においては,主訴はあるものの,実際に,診察時には,歩行に異常がみられず,座位立位保持が可能であったり,腱反射に異常がないなどであって,神経学的所見は出現していない。 そのため,これら訴えについては,全くそのような症状が存在しないという可能性のほか,心理的な要因である可能性や,てんかん発作に伴う一時的な症状である可能性を考えることが妥当である。 実際に,1月17日に実施した脳波検査においては,てんかん性の所見がみられており,運動異常についても説明ができる状態であった。また,結節性硬化症において,神経の局所症状として,運動麻痺が出現した例が報告されている文献によっても,脳腫瘍の局所 は,てんかん性の所見がみられており,運動異常についても説明ができる状態であった。また,結節性硬化症において,神経の局所症状として,運動麻痺が出現した例が報告されている文献によっても,脳腫瘍の局所症状としてではなく,いずれもてんかん発作が原因となって生じた片麻痺であることからも,症状がみられている場合には,てんかんによるものと考えるのが合理的である。 また,訴えが「左側に傾く「左手足の震え「右手足の震え」など,,」,」,態様や部位が様々である点も,てんかん性の局所症状に合致し,中枢性麻痺によるものと一元的に理解することは困難である。 さらに,通常,脳腫瘍に脳実質が圧迫されることによって,局所的な神経症状が出現している場合には,継続した症状となるところ,そのような- 9 -外来時に全く神経学的所見がないということは,それ自体,脳腫瘍の存在は否定的に考えられる。 本件では,腱反射を確認したところ,腱反射異常が認められなかったのであり,この一点からのみでも,脳腫瘍による局所症状の可能性は極めて低いと判断されるのである。 カ以上のような各症状の評価からすれば,本件において平成17年からの診察時において,緊急で頭部画像検査をすべき義務がないことは明らかである。 (2)争点(2(因果関係の有無)について)(原告らの主張)被告病院では,水頭症の疑いがあると診断してから,数時間内でCTやMRI撮影をすることは十分に可能であった。水頭症の診断の遅れは,重篤な後遺障害や死亡という重大な結果にもつながる可能性の高い疾患なのであって,特に緊急な対応が求められる。したがって,仮に他の検査予約があったとしても,優先的に検査すべきであったのであり,それが可能であった。本件では,直ちに,CTやMRI撮影をした上で,緊急脳室ドレナージをして,脳圧を が求められる。したがって,仮に他の検査予約があったとしても,優先的に検査すべきであったのであり,それが可能であった。本件では,直ちに,CTやMRI撮影をした上で,緊急脳室ドレナージをして,脳圧を下げる措置を行っていれば,脳に不可逆的な損傷が生じることを回避できた。 (被告の主張)平成17年1月以降の外来時に画像検査をオーダーしていたとしても,急変が生じた同年1月30日以前に,頭部画像の撮影ができている可能性は極めて低い。仮に検査がスムーズになされて,すぐにCT,MRI撮影された場合でも,同年1月27日の時点では,頭蓋内圧が亢進している所見は得られていなかったものと考えられ,その場合,経過観察することになる。他方,撮影が同年1月27日以降であっても,本件では,頭蓋内圧の亢進が軽度であるか存在しないと考えられるので,当日すぐに緊急脳室ドレナージ及び緊- 10 -急手術が行われることは考えにくい。 (3)争点(3(損害額)について)(原告らの主張)ア原告Aの損害1億6554万9789円(ア)逸失利益5178万4513円原告Aは,平成17年1月30日以降,自発開眼はあるものの,従命なく,四肢は麻痺硬直しており,完全な寝たきりであり,失認,失語の状態であり,中枢性麻痺(重度)の状態である。また,両目は失明している。これは,神経系統の機能又は精神に著しい障害を残し,常に介護を要するものに該当し,労働能力喪失率は100%であり,労働能力喪失期間は49年(ライプニッツ係数10.6229)であることから,平成17年度の賃金センサス第1巻第1表の全労働者の平均賃金である487万4800円を基礎収入とすると,原告Aの逸失利益は次式により算出される。なお,原告Aは,結節性硬化症を患っているが,結節性硬化症の患者がすべて寝たきりの状態に 1表の全労働者の平均賃金である487万4800円を基礎収入とすると,原告Aの逸失利益は次式により算出される。なお,原告Aは,結節性硬化症を患っているが,結節性硬化症の患者がすべて寝たきりの状態になっているという事実は存在せず,特に介護を必要としない例もあり,その予後は,多くが合併症の影響を受けるのであって,本件では,原告Aは,平成16年夏ころまでは,心身ともに元気に成長していたのであり,脳腫瘍について適切な時期に発見し,脳室ドレナージや手術などの適切な対応がとられていれば,原告Aについては,腎腫瘍,肺腫瘍などは合併していないのであるから,予後は大きな影響を受け,従前どおり,元気に活発に活動し,他人の介助を必要とすることなく,就学を続けることができ,さらに将来的には就職を果たすことができたのである。 487 万4800 円× 1 × 10.6229 =5178 万4513 円(イ)将来介護費用5716万2796円原告Aは,今後生活の全般にわたって介護が必要な状態であり,1日- 11 -当たりの介護費用は8000円を下らない。7歳児の平均余命が78. 79歳(ライプニッツ係数19.5763)であることからすると,原告Aの将来介護費用は次式により算出される。なお,原告Aは,結節性硬化症を患っているが,特に介護を必要とするものでないことは,上記(ア)逸失利益で述べたとおりである。 8000 円× 365 × 19.5763 =5716 万2796 円(ウ)後遺障害慰謝料4000万円(エ)入院雑費155万2500円平成17年1月30日から本訴提起日である平成19年11月30日までの入院期間は1035日となるので,1日当たりの入院雑費を1500円とすると,原告Aの入院雑費は次式により算出される。 1500 円× 1035 =15 から本訴提起日である平成19年11月30日までの入院期間は1035日となるので,1日当たりの入院雑費を1500円とすると,原告Aの入院雑費は次式により算出される。 1500 円× 1035 =155 万2500 円(オ)弁護士費用1504万9980円イ原告Bの損害550万円(ア)慰謝料500万円(イ)弁護士費用50万円ウ原告Cの損害550万円(ア)慰謝料500万円(イ)弁護士費用50万円(被告の主張)原告Aの原疾患は結節性硬化症であり,脳の器質的な形成異常が存在している疾患である。そして,生後早期からのてんかん発症がみられた上に,ウエスト症候群(症候性ウエスト症候群)をきたし,その後も継続して,てんかん発作がみられる状態であった。予後について,結節性硬化症は,多くの場合,40歳までに死亡しており(甲B1の6頁,てんかん発症の時期が)早期であればあるほど,知的障害,発達障害が強く認められるところ(甲B- 12 -2の3頁,原告Aは生後早期からてんかんがみられており,平成16年当)時からも既に発達障害がみられていた。さらに,症候性ウエスト症候群は,発達予後,発作予後,生命予後はいずれも不良であって,これらのことを考慮すると,原告Aの発達予後,発作予後,生命予後はいずれも不良であるといえる。機能予後としても,生活介助が不要になることはなく,生活介助が部分的に必要となるにとどまる可能性も高いものではなく,むしろ,全生活介助ないしかなりの生活介助が必要となる可能性の方が高い。このような結果から,健常者であれば,就労可能な年齢に達した場合でも,その8割以上は就労が難しいとされる。 したがって,水頭症の急性増悪さえなければ労働し得たとはいえないし,水頭症の急性増悪がなかった場合と実際とを比較して,将来的 ば,就労可能な年齢に達した場合でも,その8割以上は就労が難しいとされる。 したがって,水頭症の急性増悪さえなければ労働し得たとはいえないし,水頭症の急性増悪がなかった場合と実際とを比較して,将来的な介護の程度に差があるとは考えにくいし,実際の将来的な要介護の期間が長期にわたると推測することもできない。 よって,原告らの主張は争う。 第3争点に対する判断 診療経過等前記前提となる事実並びに証拠及び弁論の全趣旨によれば,本件の診療経過等について,次の事実が認められる。 (1)平成9年6月4日,原告Aは,1か月前より,げっぷをする時,眼球上転しながら強む感じのけいれんが1日1回くらいあり,4日前より,口を開け,舌を出しながら右上方視で,左手を伸ばし右手は強直し,下肢は伸ばしたままという1回2分程度のけいれんが1日4回くらいあり,今日は8回くらいみられたとのことで,被告病院小児科を受診し,同日より,被告病院に入院した(乙A1の4頁,A3の6頁。 )(2)同月5日,被告病院では,原告Aに対し,頭部レントゲン検査,頭部CT検査,脳波検査及び心エコー検査を行ったところ,レントゲン検査では,- 13 -石灰化等異常所見は認められなかったが,CT検査では,脳実質内に石灰化像がみられ,特に側脳室周囲に多発性と思われる石灰化像が認められた。脳波検査では,右側にfocus(焦点)が認められ,皮質下に腫瘍(tumor),塊(mass)のようなものがあると考えられた。心エコー検査では,左心室流出路,右室,心央部に3つのmass(塊)が認められた。これら一連の検査により,被告病院では,原告Aが,結節性硬化症である疑いが強いと診断した。 (乙A1の8頁,A3の8,9,32頁)(3)同月6日よりフェノバールによる抗けいれん治療が開始され,同月20日,原 検査により,被告病院では,原告Aが,結節性硬化症である疑いが強いと診断した。 (乙A1の8頁,A3の8,9,32頁)(3)同月6日よりフェノバールによる抗けいれん治療が開始され,同月20日,原告Aは,被告病院を退院した(乙A1の8頁,A3の1頁。 )(4)同年7月1日,原告Aは,被告病院を受診し,被告病院で頭部のMRI検査を受けた。その結果,両側尾状核周囲脳室側及び側脳室体部周囲に数㎜大の病変が認められ,石灰化を伴う上衣下小結節と考えられ,両側白質には非対称性に病変が散在し,結節性硬化症の病変として矛盾しないとの所見が得られた(乙A1の9,340頁)。 (5)同月22日,原告Aは,同月21日及び22日に眼球上転し,左側に舌を出すというけいれんが出たということで,被告病院の救急外来を受診した(乙A1の9頁。 )(6)同月26日,原告Aは,首が右の後ろにがくっとなり,舌を左に出すけいれんが,毎日昼寝前,夜寝る前及び眠い時に1日に1,2回起きるとのことで,被告病院を受診し,E医師の診察を受けた。E医師は,フェノバールを増量し,脳波検査の予約をし,MRIは半年後に行う予定とした(乙。 A1の10頁)(7)同月31日,原告Aは,被告病院で脳波検査を受けた。その結果,右中側頭,時に左中側頭,その他,後頭部,左前頭部にも棘波(spike)がみられた(乙A1の11,13ないし18頁)。 (8)同年9月25日,原告Aは,2日前に3回,上肢が屈曲し,下肢も少- 14 -し上げるように1ないし2秒ほど強直性けいれんがみられたとのことで,被告病院を受診した(乙A1の23頁。 )(9)同年10月1日,原告Aは,被告病院において,脳波検査を受けた(乙A1の24頁。 )(10)同月2日,前記脳波検査の結果,変形のヒプスアリスミアが確認さ 院を受診した(乙A1の23頁。 )(9)同年10月1日,原告Aは,被告病院において,脳波検査を受けた(乙A1の24頁。 )(10)同月2日,前記脳波検査の結果,変形のヒプスアリスミアが確認され,高度の異常が認められた。また,原告Aは,1分で7回繰り返す四肢けいれんを11分間,その後,7,8分間のけいれんを4回起こしたとのことで,E医師は,結節性硬化症,ウエスト症候群であると診断し,同日より,原告Aは,被告病院に入院した(乙A1の25ないし28頁,証人E医。 師)(11)平成10年3月2日,原告Aは,被告病院を退院した(乙A1の31頁。 )(12)同年7月16日,原告Aは,同日午後2時30分ころ,ミルクを飲んだ後,顔つきがおかしくなり,けいれんが始まったとのことで,被告病院を受診した。原告Aには,左手を握りしめ,間代性のけいれんがみられ,そのようなけいれんが40分ほど持続したことなどから,同日より被告病院に入院となった(乙A1の42頁)。 (13)同月24日,原告Aは,被告病院を退院した(乙A1の44頁。 )(14)原告Aは,以後,1か月に2回前後の割合で被告病院に通院し,治療を受けたが,エコー検査,脳波検査,MRI検査の予約をしても,度々キャンセルし,E医師らは,検査を受けるように繰り返し指導したが,本人や家族の病気等を理由に,十分には改善されなかった(乙A1,A7。 )(15)平成11年3月16日,原告Aは,被告病院で,頭部MRI検査を受けた。その結果,両側皮質下から皮質に非対称性に結節性病変がみられ,両側脳室内に,T1強調にて白質と同じ信号を,T2強調で低信号を呈する結節が認められた(乙A1の301頁)。 - 15 -(16)同年10月15日,原告Aは,被告病院で脳波検査を受けた。その結果,Oに棘波, T1強調にて白質と同じ信号を,T2強調で低信号を呈する結節が認められた(乙A1の301頁)。 - 15 -(16)同年10月15日,原告Aは,被告病院で脳波検査を受けた。その結果,Oに棘波,Fに鋭波がみられた(乙A1の74,76ないし78。 頁)(17)平成12年5月17日,原告Aは,被告病院で頭部MRI検査を受けた。その結果,大脳皮質に大小のT1強調で低信号,T2強調が高信号を呈する病変が散在しているのが確認され,結節性硬化症の所見として矛盾せず,今後も経過観察を行うとした(乙A1の84,297頁)。 (18)同年11月8日,原告Aは,被告病院で脳波検査を受けた。その結果,F,C,Oに鋭波,棘波がみられた(乙A1の87,89,90 頁。 )(19)同月24日,原告Aは,被告病院を受診し,2週間前に,けいれんが2日間みられ,1日に1回数秒程度のけいれんが12回みられたとのことだった(乙A1の87頁。 )(20)平成13年1月25日,原告Aは,被告病院を受診し,1日に2,3回,複雑部分発作様のものがあるとのことだった(乙A1の92頁。 )(21)同年3月8日,原告Aは,被告病院を受診し,寝ている時に発作があるようであるとのことだった。E医師は,心エコー検査を3ないし4月に,腎CT検査を4ないし5月に実施する計画とした(乙A1の92頁)。 (22)同年4月11日,被告病院は,原告Aに対し,エコー検査を実施した(乙A1の93,285頁。 )(23)同月18日,原告Aは,被告病院を受診し,同月15日から発熱があり,咳嗽が出現し,軽快が見られなかったことから,担当医師が,右肺を聴診したところ,ラ音が聴取でき,レントゲン画像にて肺炎像が確認されたことから,被告病院に入院し,同月26日,退院した(乙A1 があり,咳嗽が出現し,軽快が見られなかったことから,担当医師が,右肺を聴診したところ,ラ音が聴取でき,レントゲン画像にて肺炎像が確認されたことから,被告病院に入院し,同月26日,退院した(乙A1の94,95頁。 )(24)同年8月14日,被告病院は,原告Aに対し,脳波検査を実施した- 16 -ところ,Fでは,速波がみられ,しかも振幅も高く,鋭波もみられた(乙 A1の99,104頁。 )(25)同年10月2日,被告病院は,原告Aに対し,腎エコー検査を実施したところ,前回の同年4月の検査と比較して著変はみられず,右腎盂が目立った(乙A1の100,262頁。 )(26)平成14年4月17日,被告病院は,原告Aに対し,心エコー検査を実施したところ,左心室内に高輝度部分が1箇所あることが確認された(乙A1の112,230頁。 )(27)同年11月19日,被告病院は,原告Aに対し,腎エコー検査を実施したところ,前回と同様の所見であった(乙A1の118,222ないし229頁。 )(28)平成15年10月4日,原告Aは,被告病院を受診し,1週間前に少しぼーっとすることがあり,原告Cを凝視(1分以内)することがあるとのことだったので,E医師は,まず脳波検査を行い,その後に,MRI検査やCT検査を行えればよいと考え,服薬を忘れないようにすることを指導し,てんかん指導も行った(乙A1の124頁。 )(29)平成16年1月7日,被告病院は,原告Aに対し,脳波検査を実施したところ,広範囲に鋭波がみられ,Fp,Fに8ないし9ヘルツの鋭波, C,Cに鋭波がみられた(乙A1の126,129ないし133頁。 ) (30)同年3月31日,被告病院は,原告Aの体重を量ったところ,26. 0kg であった(乙A1の134頁。 )(3 C,Cに鋭波がみられた(乙A1の126,129ないし133頁。 ) (30)同年3月31日,被告病院は,原告Aの体重を量ったところ,26. 0kg であった(乙A1の134頁。 )(31)同年4月1日,原告Aは,被告病院皮膚科を受診した(乙A1の138頁。 )(32)同年8月21日,原告Aは,被告病院を受診し,原告Cによれば,原告Aは,夏休みになってから,11時から12時に起きるようになり,薬も遅くなり,夜寝るのも遅くなっている,食欲不振があるかもしれないとの- 17 -ことであったが,E医師が診察したところ,けいれんや吐き気などはみられず,元気な様子であった。E医師は,腎エコーをとりましょうと述べ,同年9月17日に予約した。原告Aの体重を量ったところ,24.35kgであった(乙A1の143頁)。 (33)同年9月17日,被告病院は,原告Aに対し,腎エコー検査を実施する予定であったが,キャンセルとなった(乙A1の144頁。 )(34)同年10月28日,原告Aは,被告病院を受診し,E医師が診察したところ,原告Cによれば,原告Aは,怒ることがあり,相手もいないところで「おとうさんだめでしょ」とかひとりで言っている,学校で友達の真,似をしているようである,参観日は自分のところに来てしまう,対人関係は悪くない,喜んで登校している,学校でのことを覚えているとのことであった。原告Aの体重を量ったところ,24.85kgであった(乙A1の1。 45頁)(35)同月25日,原告Aは,被告病院を受診し,診察時に,E医師に対し「おはようございます」と言った。原告Cによれば,原告Aは,学校に,喜んで行っている,他の子供の真似をする,2週間前に起きてぼーっと立っていたことがある,呼んだらすぐ反応する,眼がとろんとしていた,顔色 ようございます」と言った。原告Cによれば,原告Aは,学校に,喜んで行っている,他の子供の真似をする,2週間前に起きてぼーっと立っていたことがある,呼んだらすぐ反応する,眼がとろんとしていた,顔色は普通とのことだった(乙A1の146頁)。 (36)同年12月15日,原告Aは,被告病院を受診し,原告Cによれば,原告Aは,排便が不規則で,嘔吐があり,元気がなく,新聞紙を食べているとのことであった。胸部,腹部,咽頭部には異常はみられなかったが,舌は舌苔がみられた。原告Aの体重を量ったところ,23.9kgであった。 (乙A1の147頁)(37)平成17年1月8日,原告Aは,被告病院を受診し,原告Cによれば,原告Aは,最近あまり歩かない,左足が震える,ころころうんちをしているとのことであった。G医師が診察したところ,心,肺には問題なく,腹- 18 -部も柔軟であった。尿検査でも問題はなかったが,排便がうまくコントロールできていない様子であった。G医師は,ラキソベロン液,セレニカR顆粒,アデロキザール散,フェノバール散を処方した。(乙A1の148頁)(38)同月15日,原告Aは,被告病院を受診し,原告Cによれば,原告Aは,歩いていて左足に傾く傾向があるような感じがする,座るときも左足をかばうような感じがする,左手を握って歩くこともある,発熱はなく,食事は普通にとっている,時に左足や手を震わせることがある,あぐら位で座ることはできる,ラキソベロン処方後は排便するようになり,食べるようになってからは嘔吐はない,妹に嫉妬することがあるとのことであった。E医師が診察したところ,下肢の被動痛や圧痛はなく,関節も正常で,意識状態も問題なかった。E医師は,原告Aが診察を終え,診察室を出た後,廊下を5ないし6メートルほど歩行するのを背後から確認したが 。E医師が診察したところ,下肢の被動痛や圧痛はなく,関節も正常で,意識状態も問題なかった。E医師は,原告Aが診察を終え,診察室を出た後,廊下を5ないし6メートルほど歩行するのを背後から確認したが,特に異常は感じられなかった(乙A1の149頁,証人E医師)。 なお,原告Cは,本人尋問において,右に傾く傾向があったと供述しているが,診療録(乙A1)には「左足に傾く傾向?」などと記載され,医師,が,患者の訴えとは逆の部位について診療録に記載するとは考え難いので,原告Cの供述は採用できない。また,原告Cは,本人尋問において,被告病院の小児科の小さい廊下で,E医師が歩く先4メートルぐらいの所に立って,原告Aを呼んで,歩かせてみたが,原告Aが1,2歩,歩いたところで,原告Cが抱き上げたと供述しているが,E医師は,単に原告Aが診察の後,外来の廊下を歩いていくところを後ろから見ていたと供述しており,診療録にも,原告が主張するような歩行検査が行われた様子はうかがわれないことからすると,原告Cの供述は採用できない。 (39)同月17日,被告病院は,原告Aに対し,脳波検査を実施したところ,Fp,F,Fに鋭波がみられ,特にF,Fに優位にみられた。心 電図でも異常が認められて心室期外収縮が疑われ,右手足の震えとの関連が- 19 -あるのではないかと疑われた(乙A1の149,152ないし154頁)。 (40)同月21日,被告病院は,原告Aの体重を量ったところ,23.3kg であった(乙A1の150頁。 )(41)同月27日,原告Aは,被告病院を受診し,同月21日実施された腎エコー検査の結果では,明かな嚢胞はなく,左腎で腎盂壁の肥厚が疑われるが,結節性硬化症の特有の所見ではなかった。原告Cによれば,原告Aは,左足が歩くとき内反傾向 病院を受診し,同月21日実施された腎エコー検査の結果では,明かな嚢胞はなく,左腎で腎盂壁の肥厚が疑われるが,結節性硬化症の特有の所見ではなかった。原告Cによれば,原告Aは,左足が歩くとき内反傾向にあるような感じがする,左足を引きずるような感じがする,左膝の痛みがある,心配な時や薬・トイレを嫌がっている時に,右手・右足が時に震える,昨朝より嘔吐があり,昨日2回,本日1回の嘔吐があったが,その後,お茶を飲んでも嘔吐はない,昼夜逆転気味であり,2日間排便がなく,本日は排尿がまだとのことであった。E医師が,原告Aを診察したところ,腱反射は正常であり,咽頭部もそれほど充血しておらず,心や肺は正常で,腹部も柔軟かつ平らであった。運動失調や眼振はみられず,座位,立位保持可であった。E医師は,原告Aに対し,グリセリン浣腸を行ったほか,心電図検査を行ったが,心電図上,特に異常は認められなかった。 E医師は,整形外科的疾患も疑って,整形外科に紹介した。被告病院整形外科のH医師は,原告Aを診察したところ,膝関節水腫や腫脹はなく,原告Aの両側下肢全長及び両股関節のレントゲンを撮影したが,骨に異常はみられ。 ,なかった(乙A1の150,208頁,A2の2頁,A4の1の245頁A7)なお,原告Cは,本人尋問において,原告Aは,車椅子に乗った状態のままで,診察を受けたと供述しているが,E医師は,そのような記憶はないと供述しており,診療録にも,原告Aが,車椅子に乗った状態のままで診察を受けたことをうかがわせる記載が見られないことからすると,原告Cの供述は採用できない。 (42)同月29日,原告Aは,被告病院を受診し,原告Cによれば,原告- 20 -Aは,昨日2回嘔吐し,本日も1回嘔吐した,尿量も低下したとのことであった。E医師が,原告Aを診察したところ,咽 (42)同月29日,原告Aは,被告病院を受診し,原告Cによれば,原告- 20 -Aは,昨日2回嘔吐し,本日も1回嘔吐した,尿量も低下したとのことであった。E医師が,原告Aを診察したところ,咽頭は充血していたが,心や肺は正常であり,腹部も柔軟かつ平らで,腸音も正常で,筋性防御も陰性だった。口唇や舌は乾いており,苔舌がみられた。意識は清明であった。胸部レントゲン検査では,問題はなかった。腹部レントゲン検査では,原告Aは立位がとれなかったので,仰臥のみで撮影したが,大腸ガスはみられたが,小腸拡張はみられなかった。血液検査の結果,WBCは15700であった。 同日午前10時15分,原告Aに対し,ダイアップ挿肛を行った。同日午前11時,原告Aに対し,ソリタT500ml,20%ブドウ糖溶液25 0ml毎時による点滴が開始された。同日午前11時30分ころ,原告Aは,けいれんが5分間続き,口をかたかたさせ,眼が右を向き,四肢に力が入らない状態であった。点滴終了時,原告Aに排尿がみられた。同日午後1時50分から,原告Aに対し,ソリタT200mlの点滴の投与を開始した。 点滴終了後,E医師は,原告Aが帰宅可能と判断して,原告Aを帰宅させた。 (乙A1の156,157頁)(43)同月30日,原告Cは,原告Aが,朝気づいた時,だらんとしており,四肢に力が入らない状態であったので,被告病院に電話したところ,すぐに連れてくるように言われたので,原告Bとともに,原告Aを連れて,被告病院に向かった。 同日午前7時15分ころ,原告Aは,被告病院の救急外来を受診したが,来院時の原告Aの体温は,38.1℃であり,瞳孔は4×4(-/-,呼)吸数は30,血圧は136/78であった。原告Aは,対光反射がみられず,痛みの刺激にも反応しなかった。被告病院では,原告Aに ,来院時の原告Aの体温は,38.1℃であり,瞳孔は4×4(-/-,呼)吸数は30,血圧は136/78であった。原告Aは,対光反射がみられず,痛みの刺激にも反応しなかった。被告病院では,原告Aに対し,頭部CT検査を実施したところ,放射線科から,脳室上衣腫が,第3脳室を圧迫して水頭症になっている状態であり,対光反射がないのは中脳レベルを障害しているからであろうとの所見が得られたため,小児科入院後,脳外科に転科する- 21 -方針とし,同日,脳外科に転科となった。同日,被告病院脳外科では,原告B及び原告Cに対し,原告Aは,脳脊髄液の流れがつまってしまったので,水がたまって水頭症になったこと,脳腫瘍があるようであること,本日の手術は脳腫瘍の手術ではなく,水を抜く(外へ出す)ことをすること,オンマイア留置といって,管を入れてゆっくり抜くことになること,脳神経外科に入院して経過をみていくこと,急性水頭症に対する手術を行うこと,意識がどこまで戻るかはわからないこと,腫瘍が原因になっているかもしれないので,意識の状態がよくなるかはわからないことなどを説明し,原告Aに対し,脳室ドレナージ術(右側脳室後角穿刺,オンマイヤ留置術を行った。 )(甲A4,A6の1,乙A1の158ないし160頁,A4の1の14,15頁,A5の1頁)(44)同年2月1日,被告病院脳外科では,同年1月30日にオンマイヤ留置を行ったが,流出低下となってきたことから,脳室ドレナージのチューブを入れ替える手術を行った(乙A4の1の16頁,A5の2頁。 )(45)同月2日,被告病院脳外科では,原告Aに対し,左側脳室前角穿刺による脳室ドレナージ術を行った。また,同日,被告病院では,原告Aの頭部MRIを撮影したところ,右側脳室内モンロー孔に近傍から発育する境界明瞭な腫瘍を認め, 外科では,原告Aに対し,左側脳室前角穿刺による脳室ドレナージ術を行った。また,同日,被告病院では,原告Aの頭部MRIを撮影したところ,右側脳室内モンロー孔に近傍から発育する境界明瞭な腫瘍を認め,腫瘍の大きさは,60×55×39㎜と認められた。 (甲A3,乙A4の1の16頁,A5の3頁,A6)(46)同月5日,被告病院脳外科では,原告Aに対し,右側脳室後角穿刺による脳室ドレナージ術を行い,チューブの交換を行った(乙A4の1の18頁,A5の4頁。 )(47)同月7日,被告病院脳外科では,原告Aに対し,腫瘍全摘出術を行った(乙A5の5頁。 )(48)同月15日,被告病院脳外科では,原告Aに対し,両側のドレナージチューブを抜去した(乙A4の1の20頁。 )- 22 -(49)同月25日,被告病院耳鼻科では,原告Aに対し,気管切開術を行った(乙A4の1の23,24頁。 )(50)同月28日,被告病院脳外科では,原告Aに対し,左側脳室前角穿刺による脳室ドレナージ術,オンマイア留置術を行った(乙A5の6頁。 )(51)同年3月30日,被告病院脳外科は,原告Aに対し,両側脳室腹腔シャント術を行った(乙A5の7頁。 )(52)同年4月14日,被告病院脳外科は,原告Aに対し,左側脳室後角シャントのチューブを交換した(乙A5の8頁。 )(53)同月28日,被告病院脳外科では,原告Aに対し,脳室腹腔シャント抜去術,両側脳室ドレナージ術を行った(乙A5の9頁。 )(54)同年6月15日,被告病院のI医師は,原告Aについて,現在意識としては,自発開眼はあるものの,従命なく,四肢麻痺,硬直している状態であり,完全な寝たきりである,経管栄養下での管理が必要であるとの所見を記載した身体障害者診断書・意見書を作成した(甲C2。 )(55) 自発開眼はあるものの,従命なく,四肢麻痺,硬直している状態であり,完全な寝たきりである,経管栄養下での管理が必要であるとの所見を記載した身体障害者診断書・意見書を作成した(甲C2。 )(55)同月28日,東京都は,原告Aに対し,身体障害程度等級1級とする身体障害者手帳を交付した(甲C1。 )(56)原告Aは,現在も,回復困難な高次脳機能障害を負っており,四肢麻痺,硬直しており,寝たきりの状態であり,嚥下困難のため,胃チューブで経管栄養を施行中であり,失認,失語の状態で,両眼については失明している。 医学的知見証拠(甲B1ないしB7,B9,B10)によれば,結節性硬化症及び水頭症について,以下の医学的知見が認められる。 (1)結節性硬化症についてア意義甲B第1号証及び同B第2号証によれば,結節性硬化症とは,プリング- 23 -ル病とも呼ばれ,全身に過誤腫と呼ばれる良性の腫瘍ができる病気のことをいうとされ,主に皮膚と神経系に異常がみられるとされている。 イ症状甲B第1号証及び同B第2号証によれば,結節性硬化症は,全身の過誤腫を特徴とするため,その症状も脳神経系,皮膚,腎,心,肺等全身にわたり,年齢や患者により問題となる症状やその程度が異なり,多くの患者にみられる症状もあれば,一部の人にしかみられない症状もあるとされている。 多くの人にみられる症状として,皮膚症状,精神神経学的症状などがあり,精神神経学的症状は,結節性硬化症の最も重要な症状の一つとされ,約80%の結節性硬化症患者にけいれん発作がみられるとされている。乳),児早期には,頭をかくんとたれるタイプのけいれん発作(点頭てんかん乳幼児期には,意識がなくなり,手足の一部がけいれんするタイプのけいれん発作(複雑部分発作)の頻度が多くみられるとされている。山浦晶総 児早期には,頭をかくんとたれるタイプのけいれん発作(点頭てんかん乳幼児期には,意識がなくなり,手足の一部がけいれんするタイプのけいれん発作(複雑部分発作)の頻度が多くみられるとされている。山浦晶総編集『脳神経外科学大系13小児脳神経外科(2004(平成16)』年8月20日発行,甲B3)には「古典的にはてんかん(80%,知,)的障害(約60%,顔面血管線維腫(85%以上)を3徴とするが,年)齢特異的に多臓器に分化異常,過誤腫形成を認めることが特徴的である」と記載されている。 一部の人にみられる症状として,10歳前後に,脳に腫瘍ができることがあるとされ「大部分が良性の腫瘍ですが急速に大きくなったり,正常,組織を障害して何らかの症状がでたり,脳の中の水の流れを悪くしたり,腫瘍による圧迫症状がでたりすると,手術が必要になります」と記載されている(甲B2。また,本症例では,SubependymalGiantCellAstrocy)toma(SEGA)が特徴的で,結節性硬化症患者の6%以上がSEGAを持っており,側脳室壁に好発し,小児期から思春期にかけて急速に増大す- 24 -ることが多い,腫瘍自体は,良性であるが,腫瘍の増大に伴い,しばしば,頭痛,嘔吐,両側性の乳頭浮などの腫脳圧亢進症状やモンロー孔の閉塞による水頭症の症状をみるとされている(甲B1。前掲『脳神経外科学大)系13小児脳神経外科(甲B3)には「約5~10%に脳室周囲の』,腫瘍(subependymalgiantcellastrocytoma)がみられる。乳幼児期に発生することもあるが,10歳前後で見つかることが多い。Monro 孔周囲に発生し,髄液の流通障害を起こす場合が多い」と記載されている。甲B。 第6号証によれば「良性の脳腫瘍が結節性硬化 乳幼児期に発生することもあるが,10歳前後で見つかることが多い。Monro 孔周囲に発生し,髄液の流通障害を起こす場合が多い」と記載されている。甲B。 第6号証によれば「良性の脳腫瘍が結節性硬化症の6-14%で認めら,れます。良性ですが,早期発見できればよりいいと考えられます」と記。 載されている。太田富雄監訳『グリーンバーグ脳神経外科ハンドブック』(2000(平成12)年2月10日発行,甲B4)によれば,結節性硬化症患者の7ないし23%に,巨細胞性星状細胞腫(giantcellastrocytoma)がみられるとされている。 甲B第1号証によれば「腫瘍の増大傾向がない場合は6か月から1年,に1回フォローを」と記載されている。甲B第5号証には,結節性硬化症を有している場合,以下の定期的経過観察が薦められるとして「小児期,より学童期,1年から3年おきの脳CTあるいはMRI」と記載されている。 ウ予後甲B第1号証(情報更新日平成19年3月16日)によれば,結節性硬化症では年齢により問題となる症状が異なり,予後も個々の患者の臨床症状によって全く異なる。15年ほど前のMayoClinic の予後調査で,結節性硬化症の患者40人のうち,15%(なお,乙B1文献11によれば10%)が0~9歳の間に,30%が10~19歳,20%が20~29歳,23%が30~39歳,5%が40~49歳の間に死亡し,13%が50歳以上生存したとの報告があるが,その後軽症例の増加に伴い,現時点で- 25 -は,生存率は大幅に増加している,と記載されている。 (2)水頭症についてア意義山浦晶ら編集『標準脳神経外科学第8版(1999(平成11)年』4月1日第8版発行,甲B9)には,水頭症とは,脳脊髄液(髄液)が頭蓋腔内に過剰に貯留した状態のこ (2)水頭症についてア意義山浦晶ら編集『標準脳神経外科学第8版(1999(平成11)年』4月1日第8版発行,甲B9)には,水頭症とは,脳脊髄液(髄液)が頭蓋腔内に過剰に貯留した状態のことであるとされている。前掲『脳神経外科学大系13小児脳神経外科(甲B3)には,結節性硬化症が,水頭』症の原因疾患の一つとして挙げられている。 イ症状』,前掲『脳神経外科学大系13小児脳神経外科(甲B3)には,幼児,,学童にみられる症状として「頭痛,嘔気,嘔吐,視力低下,うっ血乳頭眼位異常(外転神経麻痺,易刺激性,機嫌不良,意識障害,傾眠,歩行)障害,内分泌障害,症状進行時にみられる症状として「運動麻痺,発」,)。 達退行,呼吸障害,全身痙攣,意識障害(昏睡状態」が挙げられている前掲『グリーンバーグ脳神経外科ハンドブック(甲B4)には「症状』,は頭蓋内圧亢進症状:乳頭浮腫,頭痛,嘔気・嘔吐,歩行変化,上方注視麻痺,外転神経麻痺がある。徐々に脳室が拡大する場合は,初期には無症状である」と記載されている。馬場元毅著『絵でみる脳と神経しくみ。 と障害のメカニズム第2版(2001(平成13)年6月15日第2』版発行,甲B7)によれば,乳児期から学童期(10歳)までの小児で,「早期に頭痛や嘔吐を訴えたり,歩くのが下手になったりした時は水頭症の有無を確かめ,脳腫瘍を疑ってCTを撮ることをお勧めします」と記。 載されている。前掲『標準脳神経外科学第8版(甲B9)には,幼児』期以降の小児期の水頭症の症状は「頭蓋内圧亢進に基づくもので,自覚,的には頭痛,嘔吐を訴える。眼底にはうっ血乳頭あるいは二次性視神経萎縮が見られることが多い。外転神経麻痺も出現する。運動機能の低下が見- 26 -られ,動作が拙劣になることで気付か ので,自覚,的には頭痛,嘔吐を訴える。眼底にはうっ血乳頭あるいは二次性視神経萎縮が見られることが多い。外転神経麻痺も出現する。運動機能の低下が見- 26 -られ,動作が拙劣になることで気付かれることも多く,下肢の腱反射は一般に亢進する「この時期の水頭症は脳腫瘍,血管障害,炎症による閉。」,塞性水頭症が多いので,原因病変による局所巣症状が加わることが多い」と記載されている。東儀英夫編集『よくわかる頭痛・めまい・しび。 れのすべて‐鑑別診断から治療まで‐ (2003(平成15)年10月』1日発行,甲B10)には,水頭症を伴いやすい特徴的な症状の一つとして,歩行障害が挙げられている。 ウ診断前掲『脳神経外科学大系13小児脳神経外科(甲B3)には「近』,年の画像診断の進歩により,CT,MRI,超音波エコーなど,さまざまな形態学的診断が可能になった」と記載されている。 エ治療前掲『脳神経外科学大系13小児脳神経外科(甲B3)には「治』,療方法としては種々の短絡(シャント)術が行われるが,この目的は過剰な髄液を髄液腔以外の体腔に誘導し,そこから髄液を体循環に戻すことにより髄液循環を生理的範囲に維持することにある」と記載されている。 。 前掲『絵でみる脳と神経しくみと障害のメカニズム第2版(甲B』7)には「水頭症と診断がついた場合,その原因を取り除くと同時に,,上昇した頭蓋内圧を下げなければなりません。例えば脳腫瘍の患者さんで,頭蓋内圧亢進が顕著で脳ヘルニアが迫っているような重篤な状態であれば,腫瘍を摘出する前に脳室に細いカテーテルを挿入し,これを介して髄液を体外に排出して脳圧を下げる手術(脳室ドレナージ)を行ってから本手術に入ります」と記載されている。 。 オ予後前掲『標準脳神経外科学第8版(甲B9)に 細いカテーテルを挿入し,これを介して髄液を体外に排出して脳圧を下げる手術(脳室ドレナージ)を行ってから本手術に入ります」と記載されている。 。 オ予後前掲『標準脳神経外科学第8版(甲B9)には「脳に不可逆的損』,傷が起こる前に適切な治療を行うことによって,脳外套は修復され,脳に- 27 -形成不全や炎症などによる一次的損傷がない限り,機能的にも正常な発達が期待できる病態である」と記載されている。 。 争点(1(平成17年1月8日から同月29日までに,脳腫瘍の存在を疑)い,CTやMRIを撮影するなどして,ドレナージなどの適切な治療を行う義務を怠った過失の有無)について前記1の事実及び前記2の医学的知見等に基づいて,平成17年1月8日から同月29日までに,脳腫瘍の存在を疑い,CTやMRIを撮影するなどして,ドレナージなどの適切な治療を行う義務を怠った過失があるか否かについて検討する。 (1)脳腫瘍の存在時期前記1(45)のとおり,平成17年2月2日,被告病院で撮影された原告Aの頭部MRI画像では,右側脳室内モンロー孔に近傍から発育する境界明瞭な腫瘍が確認され,その腫瘍の大きさは,60×55×39㎜であったことが認められる。この腫瘍は,結節性硬化症の一部分症として発生する上衣下巨細胞性星細胞腫であると認められる(甲B11。 )そして,この上衣下巨細胞性星細胞腫は,一般的に緩徐に増大するとされ(甲B11,乙B1,証人J医師,E医師自身,いつごろから,腫瘍が前)記程度の大きさになっていたと考えるかという質問に対し「29日とか2,7日とか,その近くにはその大きさになっていたのではないかと思いますが,例えば1週間,2週間という短い間にということでは,恐らくないのではないでしょうか」と証言し,J医師も,原告Aの歩行に関する ,7日とか,その近くにはその大きさになっていたのではないかと思いますが,例えば1週間,2週間という短い間にということでは,恐らくないのではないでしょうか」と証言し,J医師も,原告Aの歩行に関する訴えは,平成17年1月30日に撮影された頭部CT画像からして,脳腫瘍の症状として考えておかしくない旨証言し,F医師も,平成17年1月8日の時点では既に同年2月2日とほぼ同様の大きさ(あるいはごくわずかに小さい)であり,閉塞性水頭症を併発していたことは明らかであるとの意見を述べていることからすると(甲B12,原告Aには,平成17年2月2日に頭部MRI画)- 28 -像で確認された脳腫瘍の大きさと,ほぼ同程度の大きさの脳腫瘍が,同年1月8日の時点で存在した可能性が高いと認められ,遅くとも,同月29日の時点では,同程度の大きさの脳腫瘍が存在していたものと認められる。また,前記2(1)イ及び同2(2)アの医学的知見にあるとおり,脳腫瘍により髄液の流通障害を起こし,頭蓋内圧亢進症状や水頭症の症状を起こすことが認められることからすると,同年1月8日の時点で,既に水頭症が発症していた可能性が高く,遅くとも同月29日の時点では,水頭症を発症していたと認められる(証人F医師。 )(2)脳腫瘍の存在を疑うべき症状原告らは,原告Aらの訴えや症状から,E医師は,脳腫瘍の存在を疑うべきだったと主張するので,以下検討する。 ア結節性硬化症),),,原告Aは,前記1(2(4(10)にあるとおり,生後間もなく被告病院において,結節性硬化症であると診断されている。そして,前記2(1)イの医学的知見によれば,文献によって,多少のばらつきはあるけれども,結節性硬化症の患者の中には,10歳前後に,脳腫瘍が見つかることが多く,その割合は,一番低い文献(甲B3) 。そして,前記2(1)イの医学的知見によれば,文献によって,多少のばらつきはあるけれども,結節性硬化症の患者の中には,10歳前後に,脳腫瘍が見つかることが多く,その割合は,一番低い文献(甲B3)で,約5ないし10%,一番高い文献(甲B4)で,7ないし23%であることが認められる。 また,証人J医師が,結節性硬化症で脳腫瘍ということは,脳神経外科医の立場からすると,当然,2つで1つのようにして出てくるような話である旨証言していること,E医師自身,平成17年1月の診察当時,結節性硬化症の患者は,幼児期から年齢が進むに連れて,脳腫瘍が出来てくる場合があることを認識していたことが認められること(証人E医師,前記)2(1)イの医学的知見にあるとおり,定期的な脳CTやMRIによる経過観察が推奨されていることなどからすると,結節性硬化症の患者で脳腫瘍が発生する割合は,決して低いものとはいえず,結節性硬化症の患者を- 29 -診察するに当たっては,脳腫瘍の存在の可能性も念頭に入れた上で,診察をすべきであり,特に,脳腫瘍の存在を疑うべき訴えや症状がみられた場合には,より慎重に診察すべきであるといえる。 なお,実際に,本件では,前記2(1)イの医学的知見において,脳腫瘍はモンロー孔周囲に発生することが多いと指摘されているとおり,原告Aの脳腫瘍は,モンロー孔の近傍に存在していた(前記1(45。 ))イ歩行に関する訴え原告Aについて,原告Cは,平成17年1月8日には「最近あまり歩,かない「左足が震える(前記1(37,同月15日には「歩いて」,」)),いて左足に傾く傾向があるような感じがする「座るときも左足をかば」,うような感じがする「左手を握って歩くこともある(前記1(3」,」 ,同月27日には「左足が歩くとき内反傾向に )),いて左足に傾く傾向があるような感じがする「座るときも左足をかば」,うような感じがする「左手を握って歩くこともある(前記1(3」,」 ,同月27日には「左足が歩くとき内反傾向にあるような感じがす)),る「左足を引きずるような感じがする「左膝の痛みがある(前記1」,」,」(41)などと訴えている。また,原告Cは,平成16年の夏ころから)原告Aが元気がなくなって,あまり歩かなくなった旨供述し,実際に同年9月の原告Aの小学校の欠席日数が17日,同年10月の欠席日数が11日,同年11月の欠席日数が7日,同年12月は一度も登校せず,平成17年1月は1日だけ出席していること(甲A1,原告C,原告Cは,原)告Aの上記欠席の理由について,原告Aが歩けなくなってきたことを挙げていること(甲A4,原告C,原告Cは,原告Aが,平成16年12月)ころには,トイレまでうまく歩くこともできなくなったので,おむつをさせるようになった旨供述していること(甲A4,原告C)などを総合考慮すれば,原告Aは,実際にも,平成17年の1月の時点では,歩行に支障が生じるようになっていたものと認められる。 前記2(2)イの医学的知見によれば,水頭症の症状として,歩行障害,運動麻痺,歩行変化などが認められ,証人F医師の証言によれば,平成1- 30 -7年2月2日に撮影された頭部MRI画像(乙A6の4)では,脳腫瘍により,右の内包が圧排されて,正常な位置が特定できず,見えないほどまで変位しており,これだけ高度の圧排を受けると,右とは逆である左側の上下肢の運動麻痺が出る旨証言していることからすると,前述した原告Aについての歩行に関する訴えは,これら脳腫瘍に伴う症状とよく整合する。 この点,被告は,平成17年1月15日,E医師は,原告Aの歩行状態 肢の運動麻痺が出る旨証言していることからすると,前述した原告Aについての歩行に関する訴えは,これら脳腫瘍に伴う症状とよく整合する。 この点,被告は,平成17年1月15日,E医師は,原告Aの歩行状態を確認したが,特に異常は感じられず,実際にそのような歩行障害はなかった可能性があると主張する。 しかし,前記1(38)のとおり,E医師が観察したのは,原告Aが診察を終え,診察室を出た後,廊下を5ないし6メートルほど歩行するのを背後から確認したという程度のものであり,診療録の記載もその後付記されたものであって,この程度の観察で,歩行状態を正確に判断できるのか疑問であるし,E医師は,前記1(41)のとおり,原告Aの歩行に関する訴えについて,整形外科的疾患を疑って,平成17年1月27日,原告Aを整形外科に紹介しているが,骨に異常はないとの診断を受けているのであるから,なおさら,原告Aの歩行に関する訴えについて,整形外科的疾患以外の他の原因を探索すべきだったといえる。特に,平成17年に入ってからは,原告Cは診察の度に,原告Aの歩行に障害がある旨を訴えており,その原因が判明していないのであるから,前記の歩行の確認だけで,十分な観察がなされているとはいえない。よって,被告の主張は採用できない。 ウ嘔吐原告Aについて,原告Cは,平成17年1月27日に「昨日2回,本,日1回の嘔吐があった(前記1(41,同月29日に「昨日2回嘔」)),吐し,本日も1回嘔吐した(前記1(42)などと訴えている。平成」)16年12月15日の診察時も,原告Aには嘔吐がみられるとの訴えがな- 31 -されている(前記1(36。 ))このように,原告Aには,平成16年末ころから,反復して嘔吐が見られ,特に,平成17年1月26日からは,4日間連続して嘔吐がみられて れるとの訴えがな- 31 -されている(前記1(36。 ))このように,原告Aには,平成16年末ころから,反復して嘔吐が見られ,特に,平成17年1月26日からは,4日間連続して嘔吐がみられている。そして,前記2(2)イの医学的知見によれば,水頭症の症状として嘔吐が認められ,頭蓋内圧亢進症状としても嘔吐が認められ(証人E医師,証人F医師,証人J医師,原告Aが嘔吐するという訴えは,これら)脳腫瘍に伴う症状とよく整合する。 この点,被告は,嘔吐は,脳腫瘍に伴う頭蓋内圧亢進症状として典型的なものではなく,平成17年1月15日の受診時には,ラキソベロン処方後は,排便するようになり,食べるようになってからは嘔吐もないと訴えていることからすると,ラキソベロン処方により改善する消化器症状であると考えたと主張する。 たしかに,嘔吐自体は,脳腫瘍に伴う頭蓋内圧亢進症状の典型的な所見ではなく,消化器症状としても見られるものであると認められるが(証人F医師,証人J医師,診療録上(乙A1,原告Aの嘔吐について,い))つ,どのような状況で嘔吐があったのかなどについて,記載がなく,当時,原告Aの嘔吐について,慎重に検討していた形跡がなく,少なくとも,平成17年1月26日から連続して嘔吐が見られることからすると,原因不明の嘔吐を,単純に,消化器症状として済ませたのは,適切であったとはいえない。J医師も,後方視的にみれば,同月27日からの嘔吐の訴えは,頭蓋内圧亢進症状の一つとして解釈できるとの見解を示している(乙B1。 )エ排尿排便障害原告Aについて,原告Cは,平成16年12月15日「排便が不規,則」と訴え(前記1(36,平成17年1月8日の診察では「排便が)),うまくコントロールできていない様子」であり(前記1(37,同月))- Cは,平成16年12月15日「排便が不規,則」と訴え(前記1(36,平成17年1月8日の診察では「排便が)),うまくコントロールできていない様子」であり(前記1(37,同月))- 32 -27日の診察では「2日間排便がなく,本日は排尿がまだ」と訴えてい,る(前記1(41。 ))証人F医師によれば,これら排尿排便障害は,中枢性の神経症状として脳腫瘍による症状として出てくることがあり,症候性てんかん以外の新たな病変を示唆する所見の一つであることが認められ,これら排尿排便障害も,脳腫瘍を疑い,CTやMRI撮影をすべき義務を基礎付ける事実の一つであるといえる。 オ体重減少原告Aの体重は,平成16年3月31日には,26.0kg であったのが(前記1(30,同年8月21日には,24.35kg(前記1(3)) ,同年12月15日には23.9kg(前記1(36,平成17年))))1月21日には,23.3kg と減少している(前記1(40。このよ))うに,原告Aは,平成16年3月31日当時,7歳であるが,1年足らずの間に,体重が約3kg 減少していることが認められる。 この体重減少が,脳腫瘍に伴う症状と,どう関係するかは必ずしも明らかではないが,本来成長期にあるはずの原告Aの体調を慮る事情の一つにはなるといえ,少なくとも,症候性てんかん以外の新たな病変を示唆する所見の一つであると認められる(甲B11。 )カ性格変化等原告Aについて,原告Cによれば,平成16年10月28日「原告A,は怒ることがあり,相手がいないところで「おとうさんだめでしょ」と,かひとりで言っている(前記1(34,同年11月25日の診察時に」))は「2週間前に起きてぼーっと立っていたことがある,呼んだらすぐ反,応する,眼がとろんと で「おとうさんだめでしょ」と,かひとりで言っている(前記1(34,同年11月25日の診察時に」))は「2週間前に起きてぼーっと立っていたことがある,呼んだらすぐ反,応する,眼がとろんとしていた(前記1(35,平成17年1月15」))日の診察時には「妹に嫉妬することがある(前記1(38,同月2,」))7日の診察時には「昼夜逆転気味(前記1(41)などといった訴え,」)- 33 -があることが認められる。 これら訴えも,脳腫瘍に伴う症状との関連性は必ずしも明らかではないが,前記2(2)イの医学的知見によれば,水頭症の症状として,機嫌不良が挙げられていることもあり,やはり,従前の原告Aには見られなかった症状であり,症候性てんかん以外の新たな病変を示唆する所見の一つであると認められる(甲B11。 )(3)小括以上のとおり,原告Aは,結節性硬化症を患い,結節性硬化症の患者には,一定割合で,10歳前後に上衣下巨細胞性星細胞腫が確認され,水頭症を併発することが知られていること,原告Aは,平成17年に入ってから診察の度に,歩行に異常があるように感じられることなどを訴えていること,平成17年1月27日,同月29日には嘔吐を訴えていること,その他にも排便排尿障害や体重減少,性格変化など,従前原告Aに見られたてんかん以外の新たな病変を示唆する所見が多く見られ,特に,水頭症の症状の一つである歩行障害と嘔吐を継続的に訴えており,これら訴えから脳腫瘍の存在を疑うことが困難であるとも思われないことなどからすると,E医師には,脳腫瘍の存在の可能性を除外するに足る所見が見られるなど特段の事情がない限り,遅くとも平成17年1月29日には,脳腫瘍の存在を疑い,頭部CT検査やMRI検査を行う義務があったというべきである。 (4)脳腫 存在の可能性を除外するに足る所見が見られるなど特段の事情がない限り,遅くとも平成17年1月29日には,脳腫瘍の存在を疑い,頭部CT検査やMRI検査を行う義務があったというべきである。 (4)脳腫瘍の存在の可能性を除外するに足る所見の有無そこで以下,脳腫瘍の存在の可能性を除外するに足る所見があり,頭部CTやMRIを撮影しなかったことが医療水準を逸脱するものではなかったといえるか検討する。 ア頭痛の訴え被告は,脳腫瘍の存在を疑う症状として一般的なものとして,頭痛があるが,原告Aは,一貫して頭痛を訴えたことはないと主張している。 - 34 -たしかに,前記2(2)イの医学的知見にあるとおり,頭痛は,水頭症の症状としても認められ,頭蓋内圧亢進症状として典型的なものであると認められる(証人E医師,同F医師,同J医師。そして,少なくとも,)診療録(乙A1)上,原告Aが,診察時に頭痛を訴えた事実は認められない。 しかし,証人F医師及び同E医師の証言によれば,小児の場合は,脳腫瘍がある場合も,必ずしも,頭痛を訴えるものではないことが認められ,E医師も,原告Aに頭痛がないか確認している様子もうかがわれないことからすると,原告Aが頭痛を訴えていないことをもって,脳腫瘍やそれに伴う頭蓋内圧亢進症状を疑うべき義務が否定されることにはならない。 なお,平成17年1月30日の被告病院小児科の診療録(乙A4の1の14頁)には「平成16年12月頃より調子わるかったとのこと頭痛,嘔吐」旨の記載もみられるところであり,原告Aには,診察時に被告病院に伝えていたかは別として,頭痛の症状がみられていたものと考えるのが合理的である。 イ脳波被告は,原告Aの訴える歩行に関する症状は,てんかん発作に伴う一時的な症状であると考え,平成17年1月17日に脳波検査を行った して,頭痛の症状がみられていたものと考えるのが合理的である。 イ脳波被告は,原告Aの訴える歩行に関する症状は,てんかん発作に伴う一時的な症状であると考え,平成17年1月17日に脳波検査を行ったところ,てんかんの所見がみられたことから,これで説明できると考えたと主張する。 たしかに,被告が主張するように,てんかん発作後に麻痺を残す場合があることは認められる(乙B1の添付文献7,証人F医師。 )しかし,前記1(1)にあるとおり,原告Aには,生後間もなく,けいれん発作がみられ,脳波検査でも異常波形が見られるなど,もともと,てんかんを持った患児であったのであるから,脳波検査で,異常波形がみられるのは,ある意味当然であるといえ,これを根拠に,原告Aの訴える症- 35 -状をてんかんとして処理するのは適切であったとはいえない。そもそも,脳波検査で判明するのは,あくまでも,てんかんがあるか否かであって,原告Aの訴える歩行障害の原因まで,診断がつくものでもない(証人E医師。また,E医師は,てんかん発作に伴う歩行障害というのは,数秒と)いう場合もあれば,1,2時間ということもあると証言しているが,原告Aは,平成17年1月に入ってからは,診察の度に歩行に関する障害を訴えており,一時的な症状というよりは,継続的な症状として捉えるのが自然であるといえる。さらに,てんかん発作後の麻痺と考えたのであるなら,てんかん発作について,いつ,どのような形で出現したかなどを当然,原告Cに尋ね,診療録に記載したり,抗けいれん薬の調整を行うなどすべきであるにもかかわらず,診療録には,原告Aのてんかん発作症状に関する記述は何ら記載されておらず,E医師は,原告Aの歩行障害の原因が,てんかんで説明できるのか,あるいは,脳腫瘍等他の原因は考えられないのかなどについて十分 診療録には,原告Aのてんかん発作症状に関する記述は何ら記載されておらず,E医師は,原告Aの歩行障害の原因が,てんかんで説明できるのか,あるいは,脳腫瘍等他の原因は考えられないのかなどについて十分検討したとはいえず,被告の主張は採用できない。 ウ腱反射被告は,平成17年1月27日の診察時,原告Aの腱反射をみたところ,正常であったことからして,麻痺があったとは考え難いと主張する。 前記1(41)のとおり,E医師は,平成17年1月27日,原告Aの腱反射をみたところ,正常であった。 証人J医師によれば,原告Aのように,歩行に関する異常が訴えられた場合,まず,それが麻痺とみるかどうかが問題となり,麻痺であるか否かは,神経学的な検査で判断し,手や足の動き,反射などをみると証言している。したがって,腱反射をみて,異常がなければ,麻痺ではないと考えることも,必ずしも不合理であるとはいえない。 しかし,E医師は,この時,どのような方法で腱反射をみたかについては記憶がない旨証言し,F医師は,平成17年2月2日のMRI画像(乙- 36 -A6の4)の数日前に腱反射が正常だということがあれば,これは専門家としては少しびっくりする事実だと思う旨証言しており,診療録上(乙A1)も,どこまで腱反射をみたのかの記載もないこと,腱反射自体は,客観的な検査ではなく,被験者の主観が少なからず介在する検査であることなどに照らせば,原告Aの歩行障害に関する訴えが,平成17年1月以降,継続しているのであるから,腱反射の所見のみで,麻痺を否定することはできないというべきで,むしろ,麻痺でないと考えるのであれば,なおさら,その原因を速やかに探索すべきであったというべきである。 エなお,前記1(14)のとおり,原告Aには,度重なる診療や検査のキャンセルが認められるけれども,原告 痺でないと考えるのであれば,なおさら,その原因を速やかに探索すべきであったというべきである。 エなお,前記1(14)のとおり,原告Aには,度重なる診療や検査のキャンセルが認められるけれども,原告Aに脳腫瘍を疑う症状が出ている以上,直ちに検査すべきは当然で,キャンセルの事実は,前記認定に何らの影響を及ぼすものでないことは当然である。 オ以上のとおり,いずれも,脳腫瘍の存在の可能性を否定する所見としては乏しいというべきで,前記認定を覆すに足りない。 (5)以上によれば,E医師は,遅くとも平成17年1月29日の時点で,脳腫瘍の存在を疑い,特に水頭症の予後は意識消失前に腫瘍摘出手術を行うか否かによって,大きく異なることからすれば(前記医学的知見2(2)オ,証人F医師,同J医師,直ちに,頭部CT検査,MRI検査などを行うべ)き義務があり,E医師が,この義務に違反したことは明らかである。 争点(2(因果関係の有無)について)(1)上記3で述べたとおり,E医師には,遅くとも平成17年1月29日には,脳腫瘍の存在を疑い,頭部CT検査,MRI検査などをすべき義務があるというべきであり,前述したとおり,証拠(甲B11,B12,乙B1)によれば,上衣下巨細胞性星細胞腫は緩徐に増大するとされ,平成17年1月29日の時点では,平成17年2月2日に撮影されたMRI(甲A3)で確認される腫瘍と同程度の腫瘍が存在していたと考えられることから- 37 -すると,この時点でCTやMRIを撮影していれば,当然,ドレナージ術が行われたというべきで,前記2(2)オの医学的知見,証人F医師の証言及び証人J医師の証言によれば,患者の意識消失前の状態で開頭による腫瘍摘出手術が行われていれば,極めて高い確率で,意識のある状態を維持することができたと認められるところ, 学的知見,証人F医師の証言及び証人J医師の証言によれば,患者の意識消失前の状態で開頭による腫瘍摘出手術が行われていれば,極めて高い確率で,意識のある状態を維持することができたと認められるところ,前記1(42)のとおり,原告Aは,平成17年1月29日の時点で,意識は清明であったと認められるから,この時点で,ドレナージ術,腫瘍摘出術など水頭症に対する適切な治療が行われていれば,少なくとも,原告Aは,意識状態を消失することはなかったというべきである。 (2)この点に関し,被告は,平成17年1月30日以前に画像撮影がなされていた可能性は低いであるとか,たとえ画像を撮影できたとしても,頭蓋内圧が亢進している所見は得られなかったと思われるので経過観察になったはずであるなどと反論する。 しかし,そのように主張する具体的根拠が不明である上,緊急に画像検査すべきは当然であり,前記1(43)のとおり,平成17年1月30日には,被告病院にて,原告AのCT検査を撮影し,即日,緊急で脳室ドレナージ術を行っており,同月29日の腫瘍の大きさは既に同月30日と同程度の大きさになっていたと考えられることからすると,甲B第12号証及び証人F医師の証言にもあるとおり,被告の主張するような経過観察にとどまっていたなどということは,およそ考え難いといわざるを得ない。 よって,被告の主張は採用できない。 (3)以上からすると,被告病院が,平成17年1月29日までに,CTやMRIを撮影して,直ちに脳室ドレナージ術等を行っていれば,少なくとも,原告Aに現在生じている意識障害については避けられたというべきである。 被告の損害賠償責任E医師の前記過失は,民法709条の不法行為を構成し,これが被告の事業- 38 -の執行について行われたものであることは明らかであるから,被告は, けられたというべきである。 被告の損害賠償責任E医師の前記過失は,民法709条の不法行為を構成し,これが被告の事業- 38 -の執行について行われたものであることは明らかであるから,被告は,民法715条に基づいて,原告らに生じた損害を賠償する責任があるというべきである。 争点(3(損害額)について)(1)原告Aの損害についてア逸失利益0円原告Aは,前記1認定事実のとおり,平成17年1月30日以降,自発開眼はあるものの,従命なく,四肢麻痺で,硬直しており,完全な寝たきり状態であり,嚥下困難のため,胃チューブで経管栄養を施行中で,失認,失語の状態で,両眼については失明しており,東京都から身体障害程度等級1級とする身体障害者手帳が交付されていることが認められる。かかる状態を総合考慮すれば,原告Aは,平成17年1月30日以降,常時,介護を必要とする状態であり,労働能力を100%喪失したものと認められる。 しかし,原告Aは,結節性硬化症を患い,生後早期からてんかん発作がみられ,ウエスト症候群との診断もなされている。この点に関し,被告は,結節性硬化症の患者は,多くの場合,40歳までに死亡しており,てんかん発症の時期が早期であればあるほど,知的障害,発達障害が強く認められるところ,原告Aは,生後早期からてんかんがみられ,平成16年当時からも,すでに発達障害がみられ,さらに,症候性ウエスト症候群は,発達予後,発作予後,生命予後はいずれも不良であって,これらのことを考慮すると,原告Aの発達予後,発作予後,生命予後はいずれも不良であると主張する。 そこで,原告Aの生命予後,就労可能性等について検討する。 前記2(1)ウの医学的知見によれば,結節性硬化症の患者の生命予後について,平成4年ころの統計として,15%(乙B1文献11では1 主張する。 そこで,原告Aの生命予後,就労可能性等について検討する。 前記2(1)ウの医学的知見によれば,結節性硬化症の患者の生命予後について,平成4年ころの統計として,15%(乙B1文献11では10- 39 -%)の患者が0ないし9歳の間に,30%が10歳ないし19歳の間に,20%が20ないし29歳の間に,23%が30ないし39歳の間に,5%が40ないし49歳の間に死亡し,13%が50歳以上生存したとの報告があることが認められる(但し,現在,生存率は大幅に増加しているとの記載もある。また,E医師は,結節性硬化症の患者の生命予後に関。)する自身の理解も甲B第1号証と同様である旨証言し,結節性硬化症の患者で,てんかんを起す時期が早いほど,予後が不良であり,ウエスト症候群を発症すれば,それだけでも予後が不良であり,自身が診た結節性硬化症の患者で最も長生きした患者は40歳であったと証言している。 原告Aは,前述したとおり,結節性硬化症を患い,生後2か月ほどから,けいれんがみられ,生後約半年後である平成9年10月2日には,ウエスト症候群であると診断されている(前記1(10。そうすると,たし))かに,現在では,生存率が大幅に増加しているとの記載もあるが(甲B1,約40ないし45%の患者が19歳までに亡くなっているという前)記統計報告や,原告Aが,生後間もなく,けいれん発作を起こし,ウエスト症候群を発症していることなどからすると,原告Aは,結節性硬化症の患者の中でも,生命予後は,悪いと認められ,本件不法行為がなくても,原告Aが18歳から就労することが可能であったと認めるに足りる証拠はない。 したがって,原告Aの逸失利益は認められない。 イ将来介護費用1515万9180円原告Aは,平成15年8月28日,遊園地の遊具に一人で乗り遊んで ることが可能であったと認めるに足りる証拠はない。 したがって,原告Aの逸失利益は認められない。 イ将来介護費用1515万9180円原告Aは,平成15年8月28日,遊園地の遊具に一人で乗り遊んでおり(甲C5,同年11月27日,K幼稚園の遊戯会にて他の園児と共に)演技をし(甲C6,平成16年3月17日,幼稚園の通園バスから一人)で降り(甲C8,同月19日,幼稚園の卒園式に出席し(甲C9の1,)2,同年4月6日,L小学校の入学式に出席し(甲10の1,2,同))- 40 -),月7日,家族と共にレストランで食事をし(甲C11,同年5月22日小学校の運動会に出席し(甲C12の1ないし3,同年7月28日,自)転車型の遊具に一人で乗り遊んでいる事実が認められるが,本件不法行為後,四肢麻痺,硬直しており,寝たきりの状態であり,嚥下困難のため,胃チューブで経管栄養を施行中であり,失認・失語の状態で,両眼については失明しており,常時介護が必要な状態であると認められる。 甲C第16号証によれば,IQが20以下であれば,全生活の介助が必要になり,20から34未満では,かなりの生活介助が必要になり,35から49未満では,生活介助が部分的に必要であり,50から69未満では,生活介助は必要なくなるが,社会生活上の問題はあること,アンケート調査で結節性硬化症の患者でウエスト症候群を持つ者に対して,IQ検査がなされた結果,20未満が33.3%(6例,20から34未満が)27.7%(5例,35から49未満が39%(7例,50以上が0))%であったことが認められる。 これによれば,原告Aは,前述したとおり,結節性硬化症を患い,生後間もなく,ウエスト症候群との診断もされているところ,前記統計報告によれば,結節性硬化症の患者でウエスト症候群を持つ とが認められる。 これによれば,原告Aは,前述したとおり,結節性硬化症を患い,生後間もなく,ウエスト症候群との診断もされているところ,前記統計報告によれば,結節性硬化症の患者でウエスト症候群を持つ者の60%以上がIQ34未満であり,IQ34未満では,全生活ないしかなりの生活介助が必要とされている。 そうすると,原告Aの病状及び上記の統計的資料等,並びに前記6(1)アのとおり結節性硬化症の患者の約40ないし45%の患者が19歳までに亡くなっているとの統計報告等を併せて考慮し,本件事案に即して一般的に考えれば,原告Aは,本件脳腫瘍について適切な対応がなされておれば,平成16年夏以前の状態近くに回復し,しばらくは,同様の状態が続くことが期待できるものの,その後,介助を要する程度が高まり,18歳ころには全面的な介助を要する状態に至ったであろうと推認するこ- 41 -とが相当であり,これらの事実にかんがみると,本件により原告Aに生じた介護費用は,原告Aが18歳に達するまでの11年間(ライプニッツ係数8.3064)を通じて総体的にみれば,1日当たり5000円として次式により算定した1515万9180円と評価することが相当というべきである。 5000 円× 365 × 8.3064 =1515 万9180 円ウ後遺障害慰謝料2500万円原告Aは,本件不法行為により,平成17年1月30日以降,自発開眼はあるものの,従命なく,四肢麻痺,硬直している状態であり,完全な寝たきり状態であり,嚥下困難のため,胃チューブで経管栄養を施行中であり,失認,失語の状態で,両眼については失明している状態であることが認められる。他方,原告Aは,もともと結節性硬化症を患い,早期からてんかん発作やウエスト症候群との診断がなされ,予後が不良であることなど,本件におけ 態で,両眼については失明している状態であることが認められる。他方,原告Aは,もともと結節性硬化症を患い,早期からてんかん発作やウエスト症候群との診断がなされ,予後が不良であることなど,本件における一切の事情をかんがみれば,原告Aの後遺障害慰謝料として,2500万円を相当と認める。 エ入院雑費155万2500円弁論の全趣旨によれば,原告Aは,平成17年1月30日から平成19年11月30日まで,1035日入院している事実が認められ,1日当たりの入院雑費は1500円と認めるのが相当であるから,入院雑費は,次式により,155万2500円と認められる。 1500 円× 1035 =155 万2500 円オ弁護士費用410万円本件訴訟の態様,訴訟活動等を総合考慮して,本件における弁護士費用として,410万円を本件不法行為と因果関係のある損害と認める。 カ合計以上アないしオを合計すると,原告Aの損害額は,4581万1680- 42 -円と認められる。 (2)原告Bの損害についてア慰謝料300万円原告Bの慰謝料は,本件に顕れた一切の事情を考慮して,300万円を相当と認める。 イ弁護士費用30万円本件訴訟の態様,訴訟活動等を総合考慮して,本件における弁護士費用として,30万円を本件不法行為と因果関係のある損害と認める。 ウ合計以上ア及びイを合計すると,原告Bの損害額は,330万円と認められる。 (3)原告Cの損害についてア慰謝料300万円原告Cの慰謝料は,本件に顕れた一切の事情を考慮して,300万円を相当と認める。 イ弁護士費用30万円本件訴訟の態様,訴訟活動等を総合考慮して,本件における弁護士費用として,30万円を本件不法行為と因果関係のある損害と認める。 ウ合計以上ア及びイを合計すると,原告Cの損害額 弁護士費用30万円本件訴訟の態様,訴訟活動等を総合考慮して,本件における弁護士費用として,30万円を本件不法行為と因果関係のある損害と認める。 ウ合計以上ア及びイを合計すると,原告Cの損害額は,330万円と認められる。 以上によれば,原告Aの被告に対する請求は,不法行為に基づく損害賠償請求として,4581万1680円及びこれに対する平成17年1月31日から支払済みまで民法所定の年5分の割合による遅延損害金を求める限度,原告B及び原告Cの被告に対する請求は,不法行為に基づく損害賠償請求として,各330万円及びこれらに対する平成17年1月31日から支払済みまで民法所- 43 -定の年5分の割合による遅延損害金を求める限度でそれぞれ理由があるからこれを認容し,その余は理由がないからこれを棄却することとし,訴訟費用の負担につき,民事訴訟法64条本文,61条を適用して,主文のとおり判決する。 なお,仮執行免脱宣言の申立については,相当でないからこれを付さないこととする。 東京地方裁判所民事第35部裁判長裁判官浜秀樹裁判官上田哲裁判官味元厚二郎

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