平成24(ワ)21035 職務発明対価請求事件

裁判年月日・裁判所
平成28年4月28日 東京地方裁判所
ファイル
hanrei-pdf-86087.txt

キーワード

判決文本文57,295 文字)

平成28年4月28日判決言渡同日原本領収裁判所書記官平成24年(ワ)第21035号職務発明対価請求事件口頭弁論終結日平成28年1月21日判決 原告 A 被告株式会社リコー(以下「被告リコー」という。) 被告リコーインダストリー株式会社(以下「被告リコーインダストリー」という。)上記2名訴訟代理人弁護士竹田稔同長谷川卓也同服部謙太朗 主文 1 原告の請求をいずれも棄却する。 2 訴訟費用は原告の負担とする。 事実 及び理由第1 請求 1 被告リコーは,原告に対し,下記2の限度で被告リコーインダストリーと連帯して,2億円及びうち1億円に対する平成24年8月16日から,うち1億円に対する平成27年5月1日から,それぞれ支払済みまで年5分の割合による金員を支払え。 2 被告リコーインダストリーは,原告に対し,被告リコーと連帯して,2億円及びうち1億円に対する平成24年8月21日から,うち1億円に対する平成 27年5月1日から,それぞれ支払済みまで年5分の割合による金員を支払え。 第2 事案の概要本件は,日立工機株式会社(以下「日立工機」という。)等に勤務していた原告が,勤務期間中に職 27年5月1日から,それぞれ支払済みまで年5分の割合による金員を支払え。 第2 事案の概要本件は,日立工機株式会社(以下「日立工機」という。)等に勤務していた原告が,勤務期間中に職務発明を行い,同発明に係る特許を受ける権利を同社に譲渡したところ,被告らにおいて同社の譲渡対価支払義務を承継した旨主張して,被告らに対し,平成16年法律第79号による改正前の特許法(以下,単に「特許法」という。)35条3項に基づき,譲渡対価2億円及びうち1億円に対する訴状送達日の翌日(被告リコーにつき平成24年8月16日,被告リコーインダストリーにつき同月21日)から,うち1億円に対する平成27年4月27日付け「訴えの変更申立書」送達日の翌日(平成27年5月1日)から,それぞれ支払済みまで民法所定の年5分の割合による遅延損害金の支払を求める事案である。 なお,原告は,当初,日立工機も被告としていたが,平成25年3月18日,日立工機に対する訴えを取り下げた。また,当初,被告であったリコープリンティングシステムズ株式会社(以下「リコープリンティングシステムズ」という。)は,同年4月1日,被告リコーインダストリーに吸収合併され,同被告が被告たる地位を承継した。 1 前提事実(証拠を掲記した事実以外は当事者間に争いがない。)(1) 当事者ア原告は,昭和46年4月に,株式会社日立製作所(以下「日立製作所」という。)に研究者として入所し,平成2年2月に,その系列会社である日立工機の開発研究所に転属し,平成14年10月には,日立工機の会社分割により設立された日立プリンティングソリューションズ株式会社(丙2。以下「日立プリンティングソリューションズ」という。)に転属し(なお,後記エのとおり,同社は,平成16年10月,リコープリンティングシステ 立された日立プリンティングソリューションズ株式会社(丙2。以下「日立プリンティングソリューションズ」という。)に転属し(なお,後記エのとおり,同社は,平成16年10月,リコープリンティングシステムズと名称変更された。),平成18年10月,リコープリン ティングシステムズを定年退職した者である。 イ被告リコーは,事務機器,光学機器等の製造を行う株式会社である。 ウ被告リコーインダストリーは,光学機器,事務用機器などの製造並びに販売等を行う株式会社である。 エ日立プリンティングソリューションズは,平成14年10月1日,日立工機の会社分割により設立された(丙2)。同社は,平成16年10月,被告リコーの子会社となったことに伴い,リコープリンティングシステムズと名称変更された。 被告リコーは,平成20年10月1日付けで,被告リコーを承継会社,リコープリンティングシステムズを分割会社とする吸収分割を行い,リコープリンティングシステムズのIT戦略室,事業統括本部,営業統括本部,開発センター,第一開発設計本部,第二開発設計本部,CSセンター,CLPエンジニアリング部,知的財産権部に係る事業を承継した。これに伴い,被告リコーは,リコープリンティングシステムズの上記各部門に係る事業に関する資産,負債及び契約を承継した(甲15)。 被告リコーインダストリーは,平成25年4月1日,リコープリンティングシステムズを吸収合併した(以下,日立工機,日立プリンティングソリューションズ,リコープリンティングシステムズ及び被告リコーを「日立工機ら」と総称することもある。)。 (2) 原告の職務発明に係る各特許原告は,日立工機に在籍中,以下の各特許に係る特許発明を,単独で,又は他者と共同して,職務発明として発明した上で,各特許を受ける と総称することもある。)。 (2) 原告の職務発明に係る各特許原告は,日立工機に在籍中,以下の各特許に係る特許発明を,単独で,又は他者と共同して,職務発明として発明した上で,各特許を受ける権利を各特許出願日以前に日立工機に譲渡した。日立工機は,各特許につき特許出願をして特許権を取得した。その後,平成14年に日立プリンティングソリューションズ(平成16年にリコープリンティングシステムズと名称変更)が,平成20年に被告リコーが,それぞれこれらの特許権を承継した。 なお,原告は特許第1430005号(以下「本件特許1」という。)に係る譲渡対価請求については訴えを取り下げた。 ア特許第3214162号(以下「本件特許2」といい,この特許に係る特許権を「本件特許権2」という。)(ア) 発明の名称光走査装置(イ) 出願日平成5年6月4日(ウ) 出願人日立工機(エ) 登録日平成13年7月27日(オ) 特許料不納による消滅日平成21年7月27日(カ) 発明者原告イ特許第3345970号(以下「本件特許3」といい,この特許に係る特許権を「本件特許権3」という。)(ア) 発明の名称偶数多ビーム発生素子及び光記録装置(イ) 出願日平成5年7月29日(ウ) 出願人日立工機(エ) 登録日平成14年9月6日(オ) 登録満了日平成25年7月29日(カ) 発明者原告ウ特許第3216399号(以下「本件特許4」といい,この特許に係る特許権を「本件特許権4」という。)(ア) 発明の名称多ビーム走査光記録装置(イ) 出願日平成6年3月11日( 16399号(以下「本件特許4」といい,この特許に係る特許権を「本件特許権4」という。)(ア) 発明の名称多ビーム走査光記録装置(イ) 出願日平成6年3月11日(ウ) 出願人日立工機(エ) 登録日平成13年8月3日(オ) 登録満了日平成26年3月11日(カ) 発明者原告 エ米国特許第5578819号(以下「本件特許5」といい,この特許に係る特許権を「本件特許権5」といい,本件特許2ないし5を併せて「本件各特許」という。)(ア) 発明の名称(和訳) 信号分離回路とFIFOメモリ回路をもった光記録装置(イ) 米国出願日平成7年6月22日(ウ) 出願人日立工機(エ) 米国特許登録日平成8年11月26日(オ) 登録満了日平成27年6月22日(カ) 発明者原告,B,C,D,E,F,G,H,I,J(3) 本件各特許に係る特許請求の範囲の記載ア本件特許2の特許請求の範囲の記載は以下のとおりである(以下,これらの発明を「本件特許発明2」という。)。 (ア) 請求項1レーザ光源から出射したレーザビームを複数本のレーザビームに分岐するレーザ光分岐手段と,前記複数本のレーザビームを変調するマルチチャネル音響光学変調手段と,変調された複数本のレーザビームを走査媒体上に走査する偏向手段とを備えた光走査装置において,前記マルチチャネル音響光学変調手段と前記偏向手段との間にダブプリズムを配置したことを特徴とする光走査装置。 (イ) 請求項2レーザ光源から出射したレーザビームを音響光学変調手段へ入射し,多重周波数で前記音響光学変調手段を駆動することにより複数本のレーザ ズムを配置したことを特徴とする光走査装置。 (イ) 請求項2レーザ光源から出射したレーザビームを音響光学変調手段へ入射し,多重周波数で前記音響光学変調手段を駆動することにより複数本のレーザビームを形成し,偏向手段により走査媒体上に複数本のレーザビームを走査する光走査装置において,前記マルチチャネル音響光学変調手段と前記偏向手段との間にダブプリズムを配置したことを特徴とする光走 査装置。 (ウ) 請求項3前記ダブプリズムに,光の進行方向を回転軸としてダブプリズムを回転させるダブプリズム回転調整機構を付加したことを特徴とする請求項1または2記載の光走査装置。 (エ) 請求項4前記レーザ光分岐手段がグレーティングであることを特徴とする請求項1記載の光走査装置。 イ本件特許3の特許請求の範囲の記載は以下のとおりである(以下,これらの発明を「本件特許発明3」という。)。 (ア) 請求項1基準位相パターンを繰り返し配置したグレーティングにおいて,前記基準位相パターンはそれぞれ不均等幅で単一の位相高さをもつ矩形パターンを多層に重ね合わせた構造を持ち,前記グレーティングに入射し透過する0次回折光に対し,回折光を非対称に発生させることにより,等間隔をなす偶数本のビームを発生させることを特徴とする偶数多ビーム発生素子。 (イ) 請求項2基準位相パターンが2層に重ね合わせた構造を持ち,第1層は2部分の矩形パターンからなり,その矩形パターンの幅をy(1),y(2),位相高さをayとし,第2層は4部分の矩形パターンからなり,その矩形パターンの幅をz(1),z(2),z(3),z(4),位相高さをazとすると,グレーティングの格子ピッチをpとして,0.254<y(1)/p<0.4750.477<y(2)/p<0.7 矩形パターンの幅をz(1),z(2),z(3),z(4),位相高さをazとすると,グレーティングの格子ピッチをpとして,0.254<y(1)/p<0.4750.477<y(2)/p<0.760.167<z(1)/p<0.34 0.264<z(2)/p<0.5540.046<z(3)/p<0.280.105<z(4)/p<0.23また,位相高さは2πの整数倍の加減は許容するとして,1.34<|ay|<2.120.67<|az|<1.59であり,4本のビームを発生させることを特徴とする請求項1記載の偶数多ビーム発生素子。 (ウ) 請求項3基準位相パターンが2層に重ね合わせた構造を持ち,第1層は4部分の矩形パターンからなり,その矩形パターンの幅をy(1),y(2),y(3),y(4),位相高さをayとし,第2層は4部分の矩形パターンからなり,その矩形パターンの幅をz(1),z(2),z(3),z(4),位相高さをazとすると,グレーティングの格子ピッチをpとして,y(1)/p<0.159y(2)/p<0.1330.212<y(3)/p<0.3680.504<y(4)/p<0.6130.313<z(1)/p<0.4470.180<z(2)/p<0.3170.142<z(3)/p<0.2710.148<z(4)/p<0.218また,位相高さは2πの整数倍の加減は許容するとして,1.05<|ay|<1.711.44<|az|<1.97であり,6本のビームを発生させることを特徴とする請求項1記載の 偶数多ビーム発生素子。 (エ) 請求項4基準位相パターンが2層に重ね合わせた構造を持ち,第1層は6部分の矩形パターンからなり,その矩形パターンの幅をy(1),y とする請求項1記載の 偶数多ビーム発生素子。 (エ) 請求項4基準位相パターンが2層に重ね合わせた構造を持ち,第1層は6部分の矩形パターンからなり,その矩形パターンの幅をy(1),y(2),y(3),y(4),y(5),y(6),位相高さをayとし,第2層は4部分の矩形パターンからなり,その矩形パターンの幅をz(1),z(2),z(3),z(4),位相高さをazとすると,グレーティングの格子ピッチをpとして,0.233<y(1)/p<0.3590.086<y(2)/p<0.2420.086<y(3)/p<0.2290.101<y(4)/p<0.2400.015<y(5)/p<0.1490.098<y(6)/p<0.1780.236<z(1)/p<0.3650.071<z(2)/p<0.2220.059<z(3)/p<0.1830.38<z(4)/p<0.453また,位相高さは2πの整数倍の加減は許容するとして,1.181<|ay|<1.5831.191<|az|<1.59であり,8本のビームを発生させることを特徴とする請求項1記載の偶数多ビーム発生素子。 (オ) 請求項5請求項1記載の偶数多ビーム発生素子を備え,該偶数多ビーム発生素子から出射させた多ビームをマルチチャネル音響光学変調器に入射させ, 光強度変調された多ビームの配列方向の角度を斜めにして光走査器で走査させることを特徴とする光記録装置。 (カ) 請求項6前記光強度変調された多ビームの配列方向の角度が,前記マルチチャネル音響光学変調器に対しビーム進行方向下流側に配置されたダブプリズムの回動によって制御可能であることを特徴とする請求項5記載の光記録装置。 ウ本件特許4の特許請求の範囲の記載は以下のと チチャネル音響光学変調器に対しビーム進行方向下流側に配置されたダブプリズムの回動によって制御可能であることを特徴とする請求項5記載の光記録装置。 ウ本件特許4の特許請求の範囲の記載は以下のとおりである(以下,これらの発明を「本件特許発明4」という。)。 (ア) 請求項1ビームを発生させる光源と,前記ビームを複数本のビームに分岐する偏光素子と,前記複数本ビームの光強度変調を行うマルチチャネル変調器と,前記マルチチャネル変調器によって変調された複数本ビームの配列方向の角度を調節するダブプリズムと,前記ダブプリズムから出射した複数本ビームを走査させる走査手段とを備えたことを特徴とする多ビーム走査光記録装置。 (イ) 請求項2前記偏光素子が,入射ビームから偏光方向の異なる複数本のビームを角度をなして出射させる偏光プリズムであることを特徴とする請求項1記載の多ビーム走査光記録装置。 (ウ) 請求項3前記マルチチャネル変調器が,マルチチャネル音響光学変調器であることを特徴とする請求項1記載の多ビーム走査光記録装置。 (エ) 請求項41本のビームを発生させる光源と,前記光源から発せられた1本のビームから偏光方向が異なる2本のビームを互いに角度をなして出射させ る偏光素子と,前記2本ビームの光強度変調を行うマルチチャネル音響光学変調器とを備えた多ビーム走査光記録装置であって,前記偏光素子と前記マルチチャネル音響光学変調器との間にレンズを設けるとともに,前記偏光素子を前記レンズの前側焦点位置に配置し,前記マルチチャネル音響光学変調器を前記レンズの後側焦点位置に配置したことを特徴とする多ビーム走査光記録装置。 (オ) 請求項5前記偏光素子がウォラストンプリズムであることを特徴とする請求項4記載の多ビーム走査光記 光学変調器を前記レンズの後側焦点位置に配置したことを特徴とする多ビーム走査光記録装置。 (オ) 請求項5前記偏光素子がウォラストンプリズムであることを特徴とする請求項4記載の多ビーム走査光記録装置。 (カ) 請求項6前記マルチチャネル音響光学変調器に対しビーム進行方向下流側に,前記マルチチャネル音響光学変調器によって変調された2本ビームの配列方向の角度を調節するダブプリズムを設けたことを特徴とする請求項4記載の多ビーム走査光記録装置。 エ本件特許5の特許請求の範囲の記載は以下のとおりである(以下,これらの発明を「本件特許発明5」といい,本件特許発明2ないし5を「本件各特許発明」と総称する。)。 (ア) 請求項1(ここでは,構成要件に分説したものを記載する。)a. 感光体,b. 列をなして形成されている複数のレーザ光線を発生するための手段,c. 走査方向に対して斜めに配置されている前記複数のレーザ光線によって前記感光体上を走査するための手段,d. 前記複数のレーザ光線のそれぞれの走査位置を検知するための手段,e. 前記検知手段からの検知結果に基づいて前記複数のレーザ光線の走査位置を制御するための制御手段,f. 前記検知手段によって検知したレーザ光線で時系列に発生した信号 の集合を,それぞれのレーザ光線に対応する信号に分離するための光検知信号分離回路,g. 前記それぞれの分離した信号に対応して同期クロックを発生するための同期クロック発生回路,h. 各レーザ光線に対応する光記録を行うためのデータ信号を一時的に記憶し,対応する同期クロックに同期して記憶させた前記データ信号の順番に,前記データ信号を出力するFIFOメモリ回路素子,i. 前記FIFOメモリ回路素子から出力した各データ信号と前記レ 一時的に記憶し,対応する同期クロックに同期して記憶させた前記データ信号の順番に,前記データ信号を出力するFIFOメモリ回路素子,i. 前記FIFOメモリ回路素子から出力した各データ信号と前記レーザ光線で前記検知器を照射するための各信号とに対しOR演算を行うためのOR回路とから構成されている光記録装置。 (イ) 請求項2該検知手段は単一の光検知器からなる請求項1の光記録装置。 (ウ) 請求項3該複数のレーザ光を発生する手段は半導体レーザアレイからなる請求項1記載の光記録装置。 (エ) 請求項4該複数のレーザ光を発生する手段は,単一のレーザ光源と該レーザ光源からのレーザ光を複数のレーザ光に分割する手段からなる請求項1記載の光記録装置。 (4) 日立工機らによる本件特許2,4の実施日立工機らは,本件特許発明2(請求項1,3及び4)及び本件特許発明4(請求項1又は4)を実施してきた。 (5) 日立工機らによる製品販売等日立工機らないし米国の関連会社は,本件各特許発明を実施していると原告が主張する以下の製品(以下「被告製品」と総称する。)を製造・販売してきた(なお,被告らは,本件特許発明2及び4の実施は認める(上記 (4))が,本件特許発明3の実施,及び少なくとも連続紙レーザプリンタにおける本件特許発明5の実施を争っている。)(被告製品の通称と具体的な機種の対応関係は別紙のとおり)。 ア本件特許2関係(ア) 4ビーム回折格子を用いたレーザプリンタLB16(通称,以下同様。)(イ) 5ビーム回折格子を用いたレーザプリンタ(LB16,LB250)(ウ) 偏光プリズムを用いたレーザプリンタ(LB16)イ本件特許3関係 以下同様。)(イ) 5ビーム回折格子を用いたレーザプリンタ(LB16,LB250)(ウ) 偏光プリズムを用いたレーザプリンタ(LB16)イ本件特許3関係4ビーム回折格子を用いたレーザプリンタ(LB16)ウ本件特許4関係偏光プリズムを用いたレーザプリンタ(LB16)エ本件特許5関係(米国の関連会社)(ア) 2ビーム半導体レーザアレイを用いたレーザプリンタ(DDP70,DDP90)(イ) 4ビーム回折格子を用いたレーザプリンタ(LB16)(ウ) 5ビーム回折格子を用いたレーザプリンタ(LB250)(エ) 偏光プリズムを用いたレーザプリンタ(LB16)(オ) 赤色半導体レーザの光ファイバアレイを用いたレーザプリンタ(LB07)(カ) 紫色半導体レーザの光ファイバアレイを用いたレーザプリンタ(LB250)(キ) EMP156(6) 日立工機らによる被告製品の売上高ア日立工機らは,本件特許2ないし4に関し,前記(5)のアないしウ記 載の各製品を以下のとおり売り上げた。 (ア) 本件特許21994年ないし2006年 596億1445万4000円平成19年以降 2億2170万円(イ) 本件特許31994年ないし2006年 54億5275万円平成19年以降 5000万円(ウ) 本件特許41994年ないし2006年 457億2001万4000円平成19年以降 1億6380万円イ日立工機らは,米国における関連会社を通じて,本件特許5に関し,前記(5)エ(ア)及 2006年 457億2001万4000円平成19年以降 1億6380万円イ日立工機らは,米国における関連会社を通じて,本件特許5に関し,前記(5)エ(ア)及び(キ)のカット紙用レーザプリンタを以下のとおり売り上げた。 (ア) DDP70,90 50億0300万円(イ) EMP156 32億7660万円(7) 日立プリンティングソリューションズないしリコープリンティングシステムズの原告に対する報償ア日立工機においては,平成3年9月21日,発明考案等に関する補償規程(乙80,以下「本件規程」という。)及び発明考案等取扱規則(乙81,以下「本件規則」という。)が定められており,「(日立工機が)出願権を承継した発明等であって,…この規程および別に定める細則に基づき,…出願補償,登録補償もしくは実績補償または一時金補償を行う」(本件規程3条)とされ,補償額については後記のとおりとされた。 なお,その後,日立工機においては,平成13年12月1日に本件規程が改訂された(乙82)が,補償金額等については,実施料収入にかかる 実績補償分以外には変更がなかった。 他方で,本件特許権2ないし5を承継した日立プリンティングソリューションズ,リコープリンティングシステムズ,被告リコー等は,上記内容とは異なる職務発明に関する補償規程等を有しているが,いずれも出願補償,登録補償,実績補償をするとされている点は同じである(乙84ないし89)。 記出願補償金額国内出願1件につき ●(省略)●円 ●(省略)●円外国出願1件につき ●(省略)●円 ●(省略)●円(ただし,国内出願補償金額を 記出願補償金額国内出願1件につき ●(省略)●円 ●(省略)●円外国出願1件につき ●(省略)●円 ●(省略)●円(ただし,国内出願補償金額を含む。)登録補償金額国内登録1件につき●(省略)●円 ●(省略)●円●(省略)●円●(省略)●円実績補償金額社内実施と実施料収入に応じて,ランク別に金額が定められている。 イ原告の本件各特許発明に係る特許を受ける権利は,各特許出願よりも前に日立工機に承継された。 日立プリンティングソリューションズないしリコープリンティングシステムズは,その後,原告に対し,本件特許2ないし5に関し,以下のとおり報奨金を支払った。 (ア) 本件特許2・出願補償 1993年度下期 ●(省略)●円・登録補償 2001年度下期 ●(省略)●円 ・実績補償 2002年12月 39万円2003年12月 3万円2011年5月 1万1660円・表彰(2等) 2002年度 ●(省略)●円・対応米国特許(本件特許3との併合特許)出願補償 1994年度下期 ●(省略)●円登録補償 1997年度下期 ●(省略)●円・対応ドイツ特許(本件特許3との併合特許)実績補償 2002年度下期 2万円2003年度下期 2万円(イ) 本件特許3・出願補償 1993年度下期 ●(省略)●円・登録補償 2002年度下期 ●(省略)●円・実績補償なし(ウ) 本 円(イ) 本件特許3・出願補償 1993年度下期 ●(省略)●円・登録補償 2002年度下期 ●(省略)●円・実績補償なし(ウ) 本件特許4・出願補償 1995年度上期 ●(省略)●円・登録補償 2001年度下期 ●(省略)●円・実績補償 2002年12月 12万円2012年4月 1万2500円(エ) 本件特許5・出願補償 1995年度下期 ●(省略)●円・登録補償 1997年度上期 ●(省略)●円・実績補償なし 2 争点(1) 本件各特許を受ける権利の譲渡対価を支払うべき立場にある者は誰か(2) 日立工機らは本件特許発明3及び5を自ら実施し又は第三者に実施許 諾したか(3) 本件各特許を受ける権利の譲渡対価相当額はいくらか 3 争点に関する当事者の主張(1) 争点(1)(本件各特許を受ける権利の譲渡対価を支払うべき立場にある者は誰か)についてア原告の主張特許法35条4項の「その発明により使用者等が受けるべき利益」は,平成14年10月1日の承継以前は日立工機が取得しているから,同社が同承継前の発明の対価を支払うべきである。 他方で,製品の売上げは,会社分割前は日立工機において,同分割後は日立プリンティングソリューションズ及び被告らにおいて発生しており,同分割後のそれに基づく職務発明の対価の支払債務は,被告らにおいて発生している。なぜなら,被告らは日立プリンティングソリューションズの業務全てを承継しているからである。 イ被告らの主張本件での相当対価支払債務は,日立工機と日立プリンティング て発生している。なぜなら,被告らは日立プリンティングソリューションズの業務全てを承継しているからである。 イ被告らの主張本件での相当対価支払債務は,日立工機と日立プリンティングソリューションズの新設会社分割にかかる平成14年5月21日付け分割計画(丙2)において承継の対象として記載されておらず,また日立プリンティングソリューションズの原告に対する報奨金相当額の金員の支払も,上記相当対価支払債務の承継の自認を意味するものでもない。 よって,新設分割において日立工機から日立プリンティングソリューションズへの上記相当対価支払債務の承継はされていない。 (2) 争点(2)(日立工機らは本件特許発明3及び5を自ら実施し又は第三者に実施許諾したか)についてア原告の主張(ア) 本件特許発明3の実施について 本件特許発明3における各層の基準位相パターンは,全て不均等幅の矩形パターンからなっている。そして,本件特許3の「発明の詳細な説明」内に,製品に採用された4ビーム発生用回折格子の設計結果が示されている。 回折格子は,基準位相パターンが格子周期で繰り返し配置されたものである。すなわち,乙51の5の2枚目に記載されたパターンGの基本パターンは,2個の矩形パターンからなり,それぞれ12.3μmと7. 2μmの不均等な幅を持っている。この基本パターンの全幅は19.5μmであり,回折格子はこの基本パターンが格子周期19.5μmで繰り返し並んで配置されている。 以上からすれば,被告製品においては本件特許発明3が実施されている。 (イ) 本件特許発明5の実施についてa 被告リコーは,平成19年に米国IBMのプリンティングシステム事業部をグループ企業に併合し, 品においては本件特許発明3が実施されている。 (イ) 本件特許発明5の実施についてa 被告リコーは,平成19年に米国IBMのプリンティングシステム事業部をグループ企業に併合し,インフォプリント・ソリューションズ・カンパニー(以下「IPS」という。)を米国に設立し,営業を開始している。 IPSが全世界に販売した,マルチビーム斜め走査を用いた連続紙レーザプリンタは,コントローラ付きであることが明らかであり,少なくとも,平成19年6月のIPS設立後は,コントローラ付き連続紙レーザプリンタを米国から世界中に販売しており,本件特許発明5を実施している。 被告らが主張する「IBM代替特許」は,本件特許発明5の代替技術となり得ない。すなわち,同特許発明は,非印刷時(オフライン時)に採用できるものであり,また,被告製品では,IBM代替特許に必要な2個の光検知器などは用いていない。 なお,印刷速度が高速になる連続紙レーザプリンタにおいては,本件特許発明5がより必須になる。すなわち,本件特許発明5では,画像クロックより10倍近い高速クロック信号を採用する必要がなく,同期精度を向上させることが可能となるため,高速レーザプリンタには同特許発明が必須である。 b 半導体レーザアレイを用いたカット紙レーザプリンタについては,被告らの子会社である米国のデータプロダクト社(以下「DPC」という。)でコントローラが製造され,DPC経由で製品が出荷された。 したがって,半導体レーザアレイを用いたカット紙レーザプリンタが本件特許発明5を使用していることは明らかである。 なお,被告らが本件特許発明5に代わる手段として提示したものは,全て本件特許発明5の範囲内のものか,被告らも採用していない実用不可能なものであ が本件特許発明5を使用していることは明らかである。 なお,被告らが本件特許発明5に代わる手段として提示したものは,全て本件特許発明5の範囲内のものか,被告らも採用していない実用不可能なものである。 c 連続紙レーザプリンタ及びカット紙レーザプリンタにおいて,レーザプリンタ製作の過程で,レーザプリンタ本体を調整するとき,コントローラ(制御回路)の動作をシミュレーション(模擬動作)するためにテスター(試験回路)が必要である。 そして,甲56に示したテスター回路(原告がマルチビーム斜め走査光学系を最初に実証するために開発したもの)は,本件特許発明5の構成要件である光検知信号分離回路,同期クロック発生回路,FIFOメモリ回路素子,OR回路から構成されたものである。 レーザプリンタの製造,組立て,調整の過程で使用されるテスターは,レーザプリンタのコントローラ部と顧客コンピュータシステムの両方の機能を持っている。このテスターに本件特許発明5が採用されているので,コントローラ部にも本件特許発明5が採用されているのは当然である。 d 本件特許5の請求項1の構成要件hにおいて「対応する同期クロック」と記載されているが,構成要件gの「同期クロック」と同一周期のものとは記載されていない。被告らが,実施例と異なると主張するのは不当であり,請求項で厳密に判断しなければならない。 e 原告が仕事に関する打合せ内容などを記載したノート(甲61の1)の平成6年2月9日の欄に,「インターフェース仕様の提出」「Dualbeamのコントロール方法を教えてほしい」と記載されており,これは,IBMが,新しいマルチビーム斜め走査光学系を搭載したレーザプリンタに対応したコントローラを自作するために,本件特許5の内容の概略 eamのコントロール方法を教えてほしい」と記載されており,これは,IBMが,新しいマルチビーム斜め走査光学系を搭載したレーザプリンタに対応したコントローラを自作するために,本件特許5の内容の概略を伝えるよう求めたことを意味し,日立工機らがIBMに対して本件特許権5を実質的にライセンス供与していたことに相当する。 イ被告らの主張(ア) 本件特許発明3を実施していないこと被告製品において,偶数多ビームを発生する回折格子を用いるものとしては,4本のビームを用いるものが数機種ある。それらの回折格子は全て同一である。 これらの回折格子は,基準位相パターンが等幅の矩形パターンを含む矩形パターンを多層に重ね合わせた構造であるところ,この構造は,本件特許3の請求項に文言上該当しない。 すなわち,「矩形パターン」とは,凸部のみを指すものであり,各凸部が「不均等幅」であるのが本件特許発明3である。他方で,被告製品の図面(乙51の5)では,12.3μmの等幅のパターン(凸部)が7.2μmの間隔(凹部)で繰り返されており,基準位相パターンが等幅の矩形パターンを含む矩形パターンを多層に重ね合わせた構造であるため,本件特許発明3にいう「不均等幅で単一の位相高さをもつ矩形パ ターン」という要件を充足しない。 そして,被告製品において,偶数多ビームを発生する回折格子は,上記の回折格子以外には存在しない。よって,本件特許発明3は,被告製品において実施されていない。 (イ) 本件特許発明5を実施していないことa 本件特許5は制御に関する米国特許である。本件特許権5の効力が及ぶ製品は,米国内で製造販売された製品であるが,平成19年以前は,IBMが連続紙レーザプリンタLB16,LB250,LB07シリーズのコントローラを製 に関する米国特許である。本件特許権5の効力が及ぶ製品は,米国内で製造販売された製品であるが,平成19年以前は,IBMが連続紙レーザプリンタLB16,LB250,LB07シリーズのコントローラを製作していたものであり,同年6月にIPSが設立された後も,コントローラはIBMが採用していた方式で製造し続けていた。よって,本件特許発明5は,被告製品において実施されていない。 連続紙レーザプリンタは,IBM向けに製造・販売されており,コントローラはIBMが製造しているところ,IBMはコントローラについて技術的蓄積があり,本件特許発明5の代替技術となる特許権(乙66,67)も有しているため,このようなIBM独自技術を用いていると解される。 なお,連続紙レーザプリンタは,カット紙レーザプリンタよりも高速の印刷を行う際などに用いられるため,印刷速度の違い等から,連続紙レーザプリンタとカット紙レーザプリンタとでは,コントローラによる制御方法が変わってくる。このため,仮に日立工機らがカット紙レーザプリンタにおいて本件特許発明5を実施しているとしても,印刷速度の異なる連続紙レーザプリンタにおいて本件特許発明5を実施しているとは限らない。 b 日立工機らのカット紙レーザプリンタに関して,本件特許発明5が用いられたことを示す証拠は存在しない。 また,本件特許発明5の構成によらずとも,①複合光検知信号の最初又は最後のビームのみから,所定の演算によって複数ビームの間隔を計算し,同期クロックを発生させる技術,②複合光検知信号から,分離光検知信号を発生させずに,直接に複合光検知信号に対応する同期クロックを発生させる技術,③FIFOメモリを用いず一般的メモリで制御を行う方法,④乙21記載の方法などの方法を用いることにより,本件特許発明5同様の技 させずに,直接に複合光検知信号に対応する同期クロックを発生させる技術,③FIFOメモリを用いず一般的メモリで制御を行う方法,④乙21記載の方法などの方法を用いることにより,本件特許発明5同様の技術課題を解決することが可能である。 c テスターは試験回路であって,最終製品に搭載されるコントローラではない。甲56及び57に示されたテスターにいかなる技術が搭載されていたとしても,それを用いて開発された日立工機らの最終製品のコントローラに同一の技術が採用されていることの立証にはならない。 また,上記テスターを用いて開発された日立工機らの最終製品と,原告が実施製品として特定した被告製品に,同一の技術が採用されていることの立証はない。 d 本件特許発明5の構成要件においては,FIFOメモリ回路素子からの出力に用いられるクロック信号(構成要件hの「対応する同期クロック」)は,画像クロック信号(構成要件gの「同期クロック」)と同じ周期のものでなければならない。しかし,上記テスターでは,FIFOメモリ回路素子からの出力に用いられるクロック信号は,画像クロック信号の4倍の周期のクロック信号である。したがって,上記テスターが本件特許発明5を実施していないことは明らかである。むしろ,上記テスターは,本件特許発明5の先行技術である乙21記載の構成を用いている。 e 原告の実験ノート(甲61の1)における「インターフェース仕様の提出」「DualBeamのコントロール方法を教えて欲しい」との 記載から,直ちに,被告らがIBMに本件特許権5のライセンス供与をしたことにはならない。とりわけ,同要求が平成6年2月9日にされており,これはまだ本件特許5の出願前であることからすれば,たとえ顧客に対してであっても,先に出願されるリスクを冒し ライセンス供与をしたことにはならない。とりわけ,同要求が平成6年2月9日にされており,これはまだ本件特許5の出願前であることからすれば,たとえ顧客に対してであっても,先に出願されるリスクを冒してまで,日立工機がIBMに本件特許5の内容を開示したはずがない。 (3) 争点(3)(本件各特許を受ける権利の譲渡対価相当額はいくらか)についてア原告の主張(ア) 被告製品の売上高について被告らが開示した被告製品の売上高(前記第2,1(6))については,基本的には争わない。しかし,機種別生産台数リスト(甲12の2~8)には,被告らがY値と称する機種価格が掲載されている。このY値は工場出荷価格であり,流通経費,営業経費及び営業利益が含まれていない。したがって,実際は,顧客には,このY値以上の価格で販売されている。 市販価格がY値の●(省略)●倍となっていること,実売価格が市販価格の●(省略)●%以下ではないことからすれば,カット紙レーザプリンタの売上高は,Y値の●(省略)●倍×●(省略)●%=1. 8倍とするのが相当であり,連続紙レーザプリンタについても同様である。 (イ) 本件各特許の価値等についてa 本件各特許は,レーザプリンタの基本特許であり,日立工機らに多大な利益をもたらした。日立工機らのレーザプリンタは印刷速度の高速性に優位な点がある。 印刷速度の高速化に必須であるマルチビーム走査を利用したレーザ プリンタでは,連続紙レーザプリンタの全ての機種,半導体レーザアレイを用いたカット紙レーザプリンタの全ての機種に,マルチビーム斜め走査に関する本件各特許発明が採用されている。 マルチビーム斜め走査光学系の採用により,常にLEDアレイプリンタの性能を凌駕するレーザプリンタを提供できた。 なお,連続紙 に,マルチビーム斜め走査に関する本件各特許発明が採用されている。 マルチビーム斜め走査光学系の採用により,常にLEDアレイプリンタの性能を凌駕するレーザプリンタを提供できた。 なお,連続紙レーザプリンタには,現像,定着の技術も採用されているが,採用された技術が他社を凌駕する発明に基づくものかが問題であり,現像・定着に関して,日立工機らにおいて独占的な製品の販売に寄与する特許権があったとは認められない。日立工機らは,被告製品に関し,光学系以外の技術に関する特許に対して実績補償金を支払っていないと解され,光学系以外の現像,定着系などで開発された技術は,独占的な利益を獲得するものではない。 b なお,「マルチビーム斜め走査光学系」は,本件特許発明1ないし5を総称するために創作した造語であって,その定義は「列状に配列したマルチビームが像面に形成する光スポット列の間隔は,光スポットの大きさより相当大きく,マルチビームが形成する光走査線の走査線間隔を密接したものとするために,マルチビームの配列方向を光走査方向に対して斜めに傾けて走査する光学系」であり,本件特許発明2ないし5は,いずれもこれに関するものである。 c 被告の主張する代替技術に関して,LEDアレイは赤外波長に限定されているのに対し,マルチビーム斜め走査光学系は,レーザ光源の選択により,青色波長から赤色波長まで任意の波長を選択でき,特に青色で高感度な感光ドラムを使用でき,更に,光出力の大きいレーザ光源を使用できた。さらに,LEDアレイでは,数千個からなるLED素子の発光強度を一様にするため,定期的に光強度を測定し,光強度を調整することが必要である。また,LEDアレイは,感光ドラム の近傍に配置する必要があり,装置内でトナー及び用紙高速搬送に伴う紙粉などの粉じん にするため,定期的に光強度を測定し,光強度を調整することが必要である。また,LEDアレイは,感光ドラム の近傍に配置する必要があり,装置内でトナー及び用紙高速搬送に伴う紙粉などの粉じんが舞うため,頻繁に清掃する必要があり,その都度運転停止が必要となり,これはLEDアレイプリンタの大きな欠点である。このほか,LEDアレイプリンタでは,発光部が固定されているため,印刷ドット密度変換が原理的に不可能であるのに対し,本件各特許発明の光学系ではこれが可能であるところ,顧客であるIBMは,この印刷ドット密度変換機能を付加することを要求していた。 以上のとおり,LEDアレイプリンタは,メンテナンス及び印刷機能において,レーザプリンタよりも不利であって,本件特許発明2ないし5に係るマルチビーム斜め走査光学系を搭載したレーザプリンタの優位性は明らかである。 また,2ビーム合成方式に関しては,本件特許発明2ないし4が被告製品に採用された期間は青色波長を出射する半導体レーザが存在せず,半導体レーザ光源を用いるという代替技術は存在しなかった。仮に感光ドラムを赤色波長に感度のある材料に代えることができたとしても,2ビーム走査に限られ,2個の半導体レーザからのレーザ光を所定の精度で配置し,長期に精度を維持して感光ドラム上をマルチビーム走査することは困難である。 また,日立工機らの高速プリンタに適用可能な「青色波長のLEDアレイ」が出現したとは考えられない。 このほか,光源にガスレーザを使用する場合,本件特許発明2ないし4の代替技術は存在せず,半導体レーザアレイではない「複数の半導体レーザ光源」を用いる方式は,十分な代替技術といえるものではない。 被告らが主張する公知の像回転素子は,ダブプリズムを採用することに比較して特性が劣 ,半導体レーザアレイではない「複数の半導体レーザ光源」を用いる方式は,十分な代替技術といえるものではない。 被告らが主張する公知の像回転素子は,ダブプリズムを採用することに比較して特性が劣り,優位性がない。 また,乙18の音響光学変調器では高速に光変調できず,AO変調方式は,複数の周波数間の干渉,及び高速光変調ができないため,本件特許で実現したような高速レーザプリンタは不可能である。 なお,乙72記載の発明は,マルチビーム光変調光学系部分に関するものであるが,本件特許発明2とでは回折格子の機能が異なっており,乙72記載の発明はマルチビーム間の光強度均一性,光利用効率の性能面で著しく劣り,また実施可能な光学系を提案していない。 このほか,乙75記載の発明は,異なる波長で動作する2枚の回折格子をコンパクトにするために重ね合せたものであるのに対し,本件特許発明3の回折格子は高性能化するために複数の位相パターンを重ね合せたものであり,目的・手段が異なる。 本件特許発明5は,従来の方式に比べて,制御回路で用いるクロック信号の周波数が数十倍低いものでよく,高速レーザプリンタでは実質的に必須である。乙21記載の発明では,走査方向の印刷ずれを抑えるためには,画像クロック信号よりP倍高周波なクロック信号が必要となり,高速プリンタでは不適当な方式であるのに対し,本件特許発明5では,光検知信号との同期においてP倍高周波なクロックを用いる必要はない。 d 原告が日立工機に転属後に行った本件特許発明2ないし5は,原告が個人的に所属している光学技術に関する学会での情報,及び原告が以前に獲得した光学技術に関する知識などから着想を得て,会社及び自宅のパソコンで理論検討を繰り返し,考案したものである。 日立工機らにおいて光 属している光学技術に関する学会での情報,及び原告が以前に獲得した光学技術に関する知識などから着想を得て,会社及び自宅のパソコンで理論検討を繰り返し,考案したものである。 日立工機らにおいて光学技術情報の蓄積はなく,本件各特許発明において,日立工機ら保有の技術情報で参考になったものはなかった。 また,原告は,本件より以前から本件特許発明1によるマルチビーム化を提案しており,日立工機らから課題を付与されたことはない。 研究開発本部の自発研究は,研究者の発案で提案し,研究開発本部で承認され,行うものである。本件特許発明2ないし5のマルチビーム斜め走査光学系に関する特許は,原告提案の自発研究を遂行する過程で生じたものである。 e 原告は,電気回路に関してもある程度経験はあり,本件特許発明5に関して,共同発明者であるHからは,既に市販されていた他社のカット紙レーザプリンタで採用されていた公知技術の教示を受けたのみである。 f 本件特許発明2ないし5に基づくマルチビーム斜め走査光学系は,日立工機らや学会から表彰を受け(甲18の1ないし3,甲45の3),権威ある学会雑誌に論文掲載されている(甲25,19の4,43の1及び2,44の1及び2,58の1及び2)。そして,原告が発明したマルチビーム斜め走査光学系は,数年にわたり,被告製品の約90%に採用され,IBMやゼロックスに販売された。 (ウ) 超過売上高,実施料率,寄与率等についてa 本件特許2~4の総売上げに対する超過売上げへの寄与については,法定通常実施権分として50%,代替・競合技術分として100%が相当であるが,実際には日立工機らが●(省略)●及び●(省略)●からライセンス供与を受けており,2社への●(省略)●ことを考慮して,代替・競合技術分につき100%- 代替・競合技術分として100%が相当であるが,実際には日立工機らが●(省略)●及び●(省略)●からライセンス供与を受けており,2社への●(省略)●ことを考慮して,代替・競合技術分につき100%-2×5%=90%の因子を乗じるのが相当である。 以上からすれば,本件特許2~4による超過売上率は,50%×90%=45%である。 b マルチビーム斜め走査光学系に関する本件各特許は突出しており,これがなければレーザプリンタの売上が大きく減少していたこと,プリンタに関する実施料率は5%が最頻値であること等からすれば, 仮想実施料率は5%を下らない。 なお,被告らが仮想実施料率の算定に当たって記載する特許が,対象製品に採用されているかどうかは不明である。 また,本件特許2ないし5は,除外特許(製品の差別化に有意義な技術に関するため,実施許諾対象から除外される特許)と認定されるべきであり,実施料率において別の扱いを受けるべきものである。 このほか,日立工機らから実績補償金が支払われていない現像・定着・搬送に関しては,日立工機らの特許に有意なものはない。 なお,包括ライセンスは,特許の採用,非採用にかかわらず,全ての製品に課すライセンス料であり,総合した売上額は大きな金額となるため,包括ライセンス料は低く抑えられている。これに対し,本件では,本件特許発明2ないし5を採用した製品のみを対象としており,包括ライセンスとは異なる。 c 関連発明間の寄与率(仮想実施料率を獲得するために本件各特許発明が寄与した割合)については,まず4ビーム発生用回折格子を用いたマルチビーム斜め走査光学系には,本件特許発明2及び3の両方を採用しているから,これを採用した製品の売上分には,本件特許発明2及び3のそれぞれに係る関連発明間寄与率は50% ム発生用回折格子を用いたマルチビーム斜め走査光学系には,本件特許発明2及び3の両方を採用しているから,これを採用した製品の売上分には,本件特許発明2及び3のそれぞれに係る関連発明間寄与率は50%である。しかし,この4ビーム発生用回折格子を用いたマルチビーム斜め走査光学系は2件の特許を採用しているから,関連発明間寄与率は1.5倍した50%×1.5倍=75%とするのが相当である。そして,2ビーム発生用偏光プリズムを用いたマルチビーム斜め走査光学系にも,本件特許発明2及び4の両方を採用しているから,上記同様,関連発明間寄与率は75%となる。 他方で,5ビーム発生用回折格子を用いたマルチビーム斜め走査光学系には,本件特許発明2のみを採用しているから,関連発明間寄与 率は100%である。 なお,被告らが行ったプリンタ分野において使用可能な特許件数の集計は,著しく信頼性が低いため,これを本訴において適用することは不当である。また,本件特許発明2ないし5の対象製品は単色カラー(モノクロ)レーザプリンタであり,カラーシステムは無関係であるから,「カラーシステム」に関する特許件数は除外すべきである。 そして,「感光体」や「現像剤(トナー,キャリア)」,「露光」に関しては外部から部品を購入したので,これらに関する特許件数も除外すべきである。さらに,小規模のオフィスや家庭で使われる小型カット紙レーザプリンタの要素技術は,本件特許発明2ないし4の対象製品とはほぼ無関係である。 d 本件特許発明2~4は原告の単独発明であるから,共同発明者間の寄与率は100%である。 e 特許法35条4項の定めからすれば,発明が完成されるまでの期間における発明者あるいは使用者の貢献度を考慮することになる。そして,本件各特許発明は,原告が研究者とし の寄与率は100%である。 e 特許法35条4項の定めからすれば,発明が完成されるまでの期間における発明者あるいは使用者の貢献度を考慮することになる。そして,本件各特許発明は,原告が研究者としての職責で行った職務発明ではあるが,特に上司の具体的指示はなく,独力で発明したものである。また,発明に当たり,原告が被告らに蓄積された経験を利用することはなく,発明に至る上で使用したのは職場及び家庭のパソコンのみであり,特許明細書の執筆等は発明者(原告)が行っており,日立工機らの特許部門は提出された明細書を校正し,特許庁に出願するだけで,発明に関する特別な貢献はない。また,本件各特許発明について,日立工機らはその経費を一部負担したが,製品販売で得た利益に比べると無視できる程度であり,本件各特許発明はパソコンによるシミュレーションで行ったため,研究開発費の消費はほとんどない。以上からすれば,発明が完成するまでの期間における原告の(発明者) 貢献度は90%である。 f 本件特許5に関しても,基本的には上記aないしe同様であるが,仮想実施料率については,製品構成比率や発明の質からして本件特許発明2~4(光学系)の5分の1である1%が相当である。 なお,本件特許発明5の発明及びこれに伴う特許出願の執筆は原告が単独で行っており,共同発明者間の原告の貢献度は実質的に100%である。 また,マルチビームを利用するレーザプリンタは高速機種であり,画像クロック信号は高周波なものとなるところ,この状況で,光検知信号に同期した画像クロック信号を得るために更に数倍(好適には10倍程度)の高周波信号を必要とするのは不利益である。日立工機らのカット紙レーザプリンタの印刷速度は高速であり,本件特許発明5のマルチビーム斜め走査制御方式を適用するこ るために更に数倍(好適には10倍程度)の高周波信号を必要とするのは不利益である。日立工機らのカット紙レーザプリンタの印刷速度は高速であり,本件特許発明5のマルチビーム斜め走査制御方式を適用することが不可欠である。 (エ) 相当の対価の具体的な計算a 本件特許発明2の実施製品は前記1(5)アのとおりであり,4ビーム回折格子,5ビーム回折格子,偏光プリズムの,それぞれを用いたレーザプリンタが関与している。 (a) 4ビーム回折格子光学系の場合発明の対価相当額=製品売上高×超過売上率45%×仮想実施料率5%×関連発明間の寄与率(本件特許3に対して)75%×(1-日立工機らの貢献度10%)×発明者間に占める原告の寄与割合100%=(54億5275万円×1.8+5000万円)×0. 45×0.05×0.75×0.9×1=1億4982万円となる。 ⒝ 5ビーム回折格子光学系の場合発明の対価相当額=製品売上高×超過売上高の割合45%×仮想実施料率5%×関連発明間の寄与率100%×(1-日立工機らの 貢献度10%)×発明者間に占める原告の寄与割合100%=(84億4169万円×1.8+790万円)×0.45×0.05×1×0.9×1=3億0786万円となる。 ⒞ 偏光プリズム光学系の場合発明の対価相当額=製品売上高×超過売上高の割合45%×仮想実施料率5%×関連発明間の寄与率(本件特許4に対して)75%×(1-日立工機らの貢献度10%)×発明者間に占める原告の寄与割合100%=(457億2001万円×1.8+1億6380万円)×0.45×0.05×0.75×0.9×1=12億5236万円となる。 ⒟ 本件特許発明2に係る対価の合計額1億498 457億2001万円×1.8+1億6380万円)×0.45×0.05×0.75×0.9×1=12億5236万円となる。 ⒟ 本件特許発明2に係る対価の合計額1億4982万円+3億0786万円+12億5236万円=17億1004万円b 本件特許発明3の実施製品は前記1(5)イのとおりであり,4ビーム回折格子を用いたレーザプリンタが関与している。 発明の対価相当額=(54億5275万円×1.8+5000万円)×0.45×0.05×関連発明間の寄与率(本件特許2に対して)0.75×0.9×1=1億4982万円となる。 c 本件特許発明4の実施製品は前記1(5)ウのとおりであり,偏光プリズムを用いたレーザプリンタが関与している。 発明の対価相当額=(457億2001万円×1.8+1億6380万円)×0.45×0.05×関連発明間の寄与率(本件特許2に対して)0.75×0.9×1=12億5236万円となる。 d 本件特許発明5の実施製品は前記1(5)エのとおりである。同特許は米国で登録された特許であるため,米国で販売された同特許権の実施製品に限られるところ,4ビーム回折格子,5ビーム回折格 子,偏光プリズム,赤色半導体レーザの光ファイバアレイ,紫色半導体レーザの光ファイバアレイ,半導体レーザアレイの,それぞれを用いたレーザプリンタが関与している。 主位的には,被告らから開示されたカット紙レーザプリンタの売上高(全期間分)に加え,原告が集計した連続紙レーザプリンタの平成19年3月までの売上高(Y値)に,同年4月以降の予測売上高を加えて相当対価を算出すると,発明の対価相当額=(82億7960万円(カット紙レーザプリンタの実売 紙レーザプリンタの平成19年3月までの売上高(Y値)に,同年4月以降の予測売上高を加えて相当対価を算出すると,発明の対価相当額=(82億7960万円(カット紙レーザプリンタの実売額)+503億8016万円(連続紙レーザプリンタのY値)×1.8)×0.45×0.01×0.9×1=4億0080万円となる。 予備的には,被告らから開示されたカット紙レーザプリンタの売上高(全期間分)に加え,連続紙レーザプリンタの平成19年3月までの売上高(Y値)を基に,本件特許5に係る発明に対する相当の対価を算出すると,発明の対価相当額=(82億7960万円+329億4500万円×1.8)×0.45×0.01×0.9×1=2億7370万円となる。 e なお,被告らから支給された補償金のうち,「相当の対価」に相当するのは実績補償金のみであり,出願補償金や登録補償金などは製品の売上げと無関係に支給されるものであるから,「相当の対価」に含めるべきでない。 イ被告らの主張(ア) 被告製品の売上高について原告は,Y値という概念を用いて,日立工機らの売上げに一定の係数を掛けて「実売価格」を求めているが,被告らが開示した売上高は,ま さに日立工機らが対象製品を顧客に販売した金額の総額であり,これにY値を掛ける必要などない。 (イ) 本件各特許の価値等についてa 電子写真プリンタは,「感光体」「現像剤(トナー,キャリア)」「帯電」「露光」「現像」「転写」「定着」「クリーニング」「用紙搬送」「プロセス制御」「画像信号処理」「カラーシステム」といった要素からなり,それぞれが電子写真プリンタに欠くことのできない要素技術である。そして,それぞれの要素技術ごとに様々な技術的課題が存在する。 画像信号処理」「カラーシステム」といった要素からなり,それぞれが電子写真プリンタに欠くことのできない要素技術である。そして,それぞれの要素技術ごとに様々な技術的課題が存在する。 日立工機のレーザプリンタは,高速・高解像度現像技術,高速定着技術,粗面紙定着技術などの他の技術があって,初めて高速・高機能化が実現したのである。 すなわち,本件各特許発明は,連続紙レーザプリンタの高速化という課題を解決するための発明であるところ,日立工機は,当時既に世界最高速度の連続紙レーザプリンタを技術的に完成して製品化しており,本件各特許発明はその改良をするための発明であった。 そして,連続紙レーザプリンタの高速化は,当時の日立工機においては,光学系のマルチビーム化のみならず,現像や定着の技術が開発されることによって,初めて可能になったものであり,光学系のマルチビーム化のみが連続紙レーザプリンタの高速化を実現したわけではない。 b 本件特許1については,被告らは承継していない上,同特許に関する請求に係る訴えは取り下げられているため,本件特許1がどれだけ製品に寄与したかは,本件訴えとは関係がない。 また,「光束の配列を走査線方向に対して斜めに配置することにより,走査線垂直方向の密度を高める」という意味での「マルチビーム 斜め走査光学系」の技術思想は,原告のオリジナルではなく,本件特許1の出願前に,公知技術も先願も存在した。 本件特許発明1は,マルチビーム斜め走査光学系の技術を,「1列の半導体レーザアレイを光源とし,その光源そのものを走査線垂直方向に対して斜めに傾ける」との方法で実現した実現方法の一つにすぎず,マルチビーム斜め走査光学系の技術そのものとはいえない。 また,本件特許発明1にも開示さ を光源とし,その光源そのものを走査線垂直方向に対して斜めに傾ける」との方法で実現した実現方法の一つにすぎず,マルチビーム斜め走査光学系の技術そのものとはいえない。 また,本件特許発明1にも開示されているマルチビーム斜め走査光学系の技術は,本件特許発明2ないし5との関係では公知技術である(本件特許2,本件特許4の請求項1ないし3,本件特許5)か,又は技術的に無関係である(本件特許3,本件特許4の請求項4及び5)ため,原告が「マルチビーム斜め走査光学系」の技術を独自に開発したとの主張は,意味がない。 いずれにしろ,本件特許2ないし5が対象となっている本件訴えにおいては,「マルチビーム斜め走査光学系」の技術の連続紙レーザプリンタに対する寄与に関する原告の主張は意味がない。 c 本件特許発明2ないし4は,上記の技術の露光(光学系)のうちマルチビーム技術に関連する。露光技術としては,LEDアレイ方式とレーザ走査光学系に大別され,レーザ走査光学系は光源としてガスレーザ方式と半導体レーザを使用する方式に分けられる。更に,マルチビームに関する方式にも1本のレーザビームを分岐する方法と複数のレーザ光源を合成・集積する方法があり,本件特許発明2ないし4は光源としてガスレーザを利用した上で1本のレーザビームを分岐する方法に関連するものにすぎない。なお,本件特許発明2ないし4が発明された後,青色発光ダイオードが発明され,青色の半導体レーザが光源としてレーザプリンタに実用化されると,ガスレーザは用いられなくなっている。このため,本件特許発明2ないし4は,いずれも過 渡的な一時期の技術であるといえる。 本件特許発明2を構成する,ガスレーザとその分岐方法,AO変調器,偏向器,ダブプリズムのそれぞれは,本件特許2の出願 し4は,いずれも過 渡的な一時期の技術であるといえる。 本件特許発明2を構成する,ガスレーザとその分岐方法,AO変調器,偏向器,ダブプリズムのそれぞれは,本件特許2の出願時の公知技術である。 また,ダブプリズムを使って斜め配置を実現する技術としては,特開昭62-226118号(乙17)が,集積化した半導体レーザアレイ方式による複数ビームの発光体を用いた走査光学系について,全く同様にダブプリズムを用いて斜め配置を実現している。さらに,本件特許発明2の先行技術(特許法29条の2)として,特開平05-297323号(乙18)において,AO変調方式で分岐された複数ビームをイメージローテータ―で回転させる技術の開示がある。 本件特許発明2の代替技術としては,LEDアレイ光学系を採用する方法,複数の半導体レーザ光源を用いる方法(2ビーム合成方式,ファイバーアレイ方式,半導体レーザアレイ方式),ダブプリズムと同様の機能を有する別の光学素子(イメージローテータープリズム,ペチャンプリズム,ミラー及びこれらの組合せ)を用いる方法が存在する。 本件特許発明4は,本件特許発明2の構成に,ウォラストンプリズムが追加されているだけであり,ウォラストンプリズムは1800年前後から存在する公知技術である。 また,本件特許発明4の代替技術としては,LEDアレイ光学系を採用する方法,複数の半導体レーザ光源を用いる方法(2ビーム合成方式,ファイバーアレイ方式,半導体レーザアレイ方式),ウォラストンプリズム方式以外の分岐手段(回折格子方式,AO変調方式)を採用する方法,ダブプリズムと同様の機能を有する別の光学素子(イ メージローテータープリズム,ペチャンプリズム,ミラーの組合せ)を リズム方式以外の分岐手段(回折格子方式,AO変調方式)を採用する方法,ダブプリズムと同様の機能を有する別の光学素子(イ メージローテータープリズム,ペチャンプリズム,ミラーの組合せ)を用いる方法が存在する。 このほか,本件特許発明3の代替技術としては,LEDアレイ光学系を採用する方法,複数の半導体レーザ光源を用いる方法(2ビーム合成方式,ファイバーアレイ方式,半導体レーザアレイ方式),回折格子方式以外の分岐手段を採用する方法(ウォラストンプリズム方式,AO変調方式),0次回折光に対し対称のビームに分岐する光学系(乙11),奇数のレーザビームに分岐する方法が存在する。 そして,ダブプリズムは公知技術であり,かつ日立製作所中央研究所においては,原告の独自の知見ではなく,日立工機及び日立製作所(以下「日立製作所グループ」という。)の共有の知見として,ダブプリズムを用いて複数レーザを回転して配置する技術が蓄積されていた。 同様に,回折格子及びウォラストンプリズムは公知技術であり,日立製作所中央研究所においては,原告の独自の知見ではなく,日立製作所グループの共有の知見として,回折格子やウォラストンプリズムを用いてレーザを分岐する技術が蓄積されていた。なお,実験に用いるスパッタ装置などのリソースは日立工機内に存在した。 回折格子及びマルチチャンネル音響光学変調器という基本素子を組み合わせた高速変調光学系は,本件特許2よりも前から特開昭59-19921号(乙72)により公知であり,また,矩形パターンを複数枚重ね合わせて構成する方法は,本件特許3の出願前から公知である(乙75)。 このほか,本件特許発明5には,固有の代替技術として,特開昭57-67375号公報(乙21)が挙げられる。 ね合わせて構成する方法は,本件特許3の出願前から公知である(乙75)。 このほか,本件特許発明5には,固有の代替技術として,特開昭57-67375号公報(乙21)が挙げられる。 d 連続紙レーザプリンタの高速化という課題は,日立工機から付与さ れたものであって,原告が問題意識を持って見出したものではない。 発明の当時,日立工機では,本件各特許発明の前提となる技術情報が十分に取得・蓄積され,研究者に提供されていた。 本件特許発明2ないし4は,連続紙レーザプリンタの高速化の課題を日立工機から与えられ,必然的に青色ガスレーザを分岐する方法でマルチビーム化を検討する中で,原告が,日立製作所グループにおいて得た知見を適用して発明されたものであり,原告のみならず日立工機の光学技術者が原告の地位にいれば誰でも,発明に至ったものであった。 e 本件特許発明5は,当業者内での共通課題であった「複数レーザビームを斜め配置にした際の書き出し位置の問題」に,原告の専門分野外の電気回路(FIFO)に関する知見を,共同発明者であるHより得て,原告が発明として申し出たものであった。 f 学会での評価や表彰と,本件特許発明2ないし4の被告製品における技術的位置付けや寄与率とは全く別の問題である。また,被告らがIBMから受注できたのは,本件特許2ないし4の存在ではなく,これらの特許出願前からIBMと次世代プリンタを共同開発していたという関係があったためである。被告リコーの世界一商品賞は,LB250Aシリーズに対して与えられたものであり,本件特許2ないし4に対して与えられたものではない。 (ウ) 超過売上高,仮想実施料率,寄与率等a 競業他社は本件特許発明2 LB250Aシリーズに対して与えられたものであり,本件特許2ないし4に対して与えられたものではない。 (ウ) 超過売上高,仮想実施料率,寄与率等a 競業他社は本件特許発明2ないし4につき別の光源を使用することにより被告製品と同性能の製品を販売し続けていることや,光源にガスレーザを使用する場合であっても,本件特許発明2ないし4については,それぞれ固有の代替技術により他社はこれらを容易に回避可能であるため,排他権の範囲は狭く,技術的優位性は低いことからする と,「競業他社が実施品を製造,販売することを禁止することによって得られた利益」(=超過売上高)は存在しない。 また,仮にそうでないとしても,超過売上率は10%にとどまる。 b 仮想実施料率に関しては,キャノン職務発明控訴事件(知財高裁平成21年2月26日判決,判例タイムズ1315号198頁参照)において,レーザビームプリンタ(LBP)について仮想実施料率を2. 4%としているところ,キャノンと日立工機らでは有する特許数が異なるため,1974年から2006年の各年に実施可能な特許件数の平均値について,「日立製作所,日立工機,日立プリンティングソリューションズ及びリコープリンティングシステムズ」とキャノンとの比率をかけると,2.4%×1089件/8428件=約0.31%となる。 c 電子写真プリンタは,光学系だけでなく,感光体や現像剤,帯電,露光,現像,転写,定着,クリーニング,用紙搬送,プロセス制御,画像信号処理,カラーシステムといった複数の構成要素からなり,どれも欠くことのできない要素である。そして,被告らや日立製作所グループは,これらの各要素について大量の特許出願を行っており,本件特許2ないし4はその一部でしかない。 った複数の構成要素からなり,どれも欠くことのできない要素である。そして,被告らや日立製作所グループは,これらの各要素について大量の特許出願を行っており,本件特許2ないし4はその一部でしかない。 本件特許発明2ないし4は先行技術・公知技術をガスレーザに応用したものにすぎず,代替技術が多数存在し,他社がこれを採用することにより被告と同等の製品を生産していること及び容易に回避可能であるため技術的優位性がないこと等からすれば,寄与率は件数分の1にすぎない。そして,1994年から2006年までの期間につき,各年に日立工機らが対象製品に実施可能な特許の平均件数は約1086件である(乙57)から,平均寄与率は0.092%である。 仮に,特許の実施の有無を考慮に入れるならば,被告らも属する情 報通信機械器具製造業の保有特許に対する平均的な自社実施率(各企業の実施特許件数総数を特許所有総数で除した値である「平均値A」)24.7%を考慮しても,上記寄与率を4倍した0.368%にすぎない。 なお,日立工機のプリンタ製品には,日立工機のみならず,日立製作所グループが関与していた。そして,技術や特許についても,日立工機は,自社のプリンタ製品に,自社で開発して保有する技術及び特許のみならず,日立製作所グループが開発して保有する技術及び特許を用いることができた。したがって,日立工機のプリンタ製品における特許の寄与度は,日立工機の保有するプリンタ関連の特許のみならず,日立製作所グループの保有するプリンタ関連の特許をも併せて計算すべきである。 d 本件特許発明2ないし4は単独発明であるため,共同発明者間の貢献度は100%である。 e 前記(イ)a,d,eの諸事情に加え,日立工機ではプリンタ分野に関して多額の すべきである。 d 本件特許発明2ないし4は単独発明であるため,共同発明者間の貢献度は100%である。 e 前記(イ)a,d,eの諸事情に加え,日立工機ではプリンタ分野に関して多額のハード面での投資をするとともに人件費や研究費等の予算を投入してきたこと,日立製作所グループでは,先行のプリンタの開発により技術を蓄積し,高いブランドイメージを築いてきたこと,日立工機の製品に対する高い評価の結果,日立製作所とIBMはプリンタの次世代機種を共同開発することになり,日立工機とIBMが共同して生産したプリンタはIBMブランドで全世界で販売されたが,営業に際してはIBMブランドの貢献が大きく,それによって被告製品の売上げが伸び,このような技術提携は原告単独では不可能であること,被告製品の売上げが伸びたのは,原告以外の日立工機らの発明者らの貢献も大きいことといった本件での諸般の事情を考慮すると,被告らの貢献度は95%を下らず,発明者 貢献度は高くとも5%にすぎない。 なお,会社の貢献度の認定に当たっては,発明完成までのみならず,その後の製品化,販売に当たっての事情も含めて考慮すべきである。 f 本件特許発明5には代替技術(乙21記載の発明)がある上,IBMが保有する特許に係る発明(乙66,67参照)もまた本件特許発明5の代替技術といえる。また,本件特許5の対応日本出願は乙21を先行技術として進歩性なしと判断された。以上からすれば,競業他社は,本件特許5に無効理由があることを容易に把握し得るから,本件特許5には排他権は事実上なく,超過売上率はゼロである。 本件特許発明5の共同発明者間の貢献度については,同特許発明が10人の共同発明とされていることに加え,届出代表者として原告本人の捺印がされた出願依頼書兼譲渡証( く,超過売上率はゼロである。 本件特許発明5の共同発明者間の貢献度については,同特許発明が10人の共同発明とされていることに加え,届出代表者として原告本人の捺印がされた出願依頼書兼譲渡証(乙70)及び配分申請書(乙71)上の記載からしても,原告を含む各発明者の貢献度は10%とされるべきである。 (エ) 相当の対価の具体的な計算a 以上からすると,本件特許2ないし4に係る相当の対価は主位的にはゼロであり,仮に超過売上率を10%とした場合には約1583円となるところ,日立工機らが既に原告に対して本件特許2ないし4の報償金として総額71万2160円を支払っていることからすれば,原告の請求は棄却されるべきである。 b 本件特許5に関しては,そもそも超過売上率がゼロであるため,相当の対価もゼロである。 第3 当裁判所の判断 1 争点(1)(本件各特許を受ける権利の譲渡対価を支払うべき立場にある者は誰か)について (1) 前記第2,1(2)のとおり,原告は,日立工機に在籍中,本件各特許発明を,単独で,又は他者と共同して,職務発明として発明した上で,本件各特許を受ける権利を各特許出願日以前に日立工機に譲渡し,日立工機が本件各特許につき特許出願をして本件各特許を受けたものである。 (2) そして,前記第2,1(1)エのとおり,平成14年10月1日,日立プリンティングソリューションズが日立工機の会社分割により設立されたところ,その会社分割計画書(丙2)には以下の記載がある。 ア日立工機は日立プリンティングソリューションズを設立し,本件営業(日立工機のプリンティングシステム事業に係る営業)を日立プリンティングソリューションズに承継させる。(第1条)イ本件新設分割の分割期日は,平成14年10月1 ーションズを設立し,本件営業(日立工機のプリンティングシステム事業に係る営業)を日立プリンティングソリューションズに承継させる。(第1条)イ本件新設分割の分割期日は,平成14年10月1日とする。(第2条)ウ日立プリンティングソリューションズは,第2条に定める分割期日において,別紙2乃至4に記載する日立工機の財産,知的財産権等,債権債務及び契約上の地位に関する一切の権利義務並びに別紙5に記載する日立工機の従業員との間の雇用契約その他一切の権利義務…を日立工機より承継する。(第7条1項)エ前項に定めるもののうち,併存的債務引受をすることとされた債務…については,日立プリンティングソリューションズの最終的な負担とする。 (第7条2項)オ日立プリンティングソリューションズが日立工機から承継する知的財産権等(別紙3)「1.特許権(共有にかかる権利については共有持分)(1) 別紙3-1に記載する登録された特許権(2) 別紙3-2に記載する出願及び審査中の特許を受ける権利(3) 上記以外で,プリンティングシステム事業部門に属する従業員が分割期日前日までにした発明にかかる特許を受ける権利」 (別紙3,第1項)(判決注:別紙3-1には本件特許2,4及び5が,別紙3-2には本件特許3に係る出願番号(特願平5-188408号)が,それぞれ記載されている。)カ日立プリンティングソリューションズが日立工機から承継する債権債務及び契約上の地位(別紙4)「2.債務併存的に承継する債務分割期日前日におけるプリンティングシステム事業部門にかかる買掛金,未払金,未払費用及び預り金(プリンティングシステム事業部門が管理する預り保証金及び預り有価証券 存的に承継する債務分割期日前日におけるプリンティングシステム事業部門にかかる買掛金,未払金,未払費用及び預り金(プリンティングシステム事業部門が管理する預り保証金及び預り有価証券を含む。)」(別紙4,第2項)「3.契約上の地位分割期日前日におけるプリンティングシステム事業部門が行う取引等に関する次に掲げる契約の契約上の地位(中略)(11) 日立工機から日立プリンティングソリューションズに承継される動産,有価証券等,知的財産権等及び債権債務に関する一切の契約」(別紙4,第3項)キ日立プリンティングソリューションズが日立工機から承継する従業員(別紙5)「1.プリンティングシステム事業部門平成14年5月21日現在プリンティングシステム事業部門に在籍する従業員(傷病・育児・介護等による長期欠勤,出向等の理由で休職中の者を含む。)」 (別紙5,第1項)(3) 以上のとおり,平成14年10月1日に日立工機の会社分割により設立された日立プリンティングソリューションズは,同会社分割により,日立工機から知的財産権(本件各特許を含む。)等の債権債務及び契約上の地位に関する一切の権利義務を承継するとされ(上記(2)ウ,オ及びカ),また,日立プリンティングソリューションズは,日立工機から,同年5月21日当時,プリンティングシステム事業部門に在籍する従業員(原告を含む。甲16参照)及びその承継する従業員との間の雇用契約その他一切の権利義務を日立工機から承継するとされている(上記(2)ウ,カ及びキ)。 そして,原告が本件訴えにおいて主張する特許法35条に基づく相当対価請求権は,会社分割計画書(丙2)7条1項により,日立プリンテ 日立工機から承継するとされている(上記(2)ウ,カ及びキ)。 そして,原告が本件訴えにおいて主張する特許法35条に基づく相当対価請求権は,会社分割計画書(丙2)7条1項により,日立プリンティングソリューションズの承継対象とされたもののうち,別紙3に記載された「知的財産権等…に関する一切の権利義務」に含まれるものと解され,仮にそうでないとしても「別紙5に記載する日立工機の従業員との間の雇用契約その他一切の権利義務」に含まれる。これらは,同計画書の別紙4の「2.債務」に記載された「併存的に承継する債務」とは別個に定められており,その別紙4の「2.債務」には,職務発明対価の支払債務が含まれるべき勘定科目も存在しないから,これらは,同計画書7条2項に定められた「併存的債務引受をすることとされた債務」にも該当しない。 したがって,原告が本件訴えにおいて主張する特許法35条に基づく相当対価支払請求権は,上記会社分割において日立プリンティングソリューションズに承継されており,これは併存的債務引受の対象でもない。 (4) そして,前記第2,1(1)エのとおり,平成16年10月,日立プリンティングソリューションズは,リコープリンティングシステムズと名称変更されたところ,被告リコーは,平成20年10月1日付けで,同社を承継会社,リコープリンティングシステムズを分割会社とする吸収分割を行い,これに 伴い,リコープリンティングシステムズの知的財産権部に係る事業に関する資産,負債及び契約を承継している。したがって,被告リコーは,本件において,原告に対して職務発明の対価を支払うべき地位にあった日立プリンティングソリューションズ(リコープリンティングシステムズと名称変更)から特許権を承継するに伴い,職務発明の相当対価支払義務を承継 いて,原告に対して職務発明の対価を支払うべき地位にあった日立プリンティングソリューションズ(リコープリンティングシステムズと名称変更)から特許権を承継するに伴い,職務発明の相当対価支払義務を承継したといえるから,本件において,原告に対して職務発明の対価を支払うべき者は被告リコーであると認められる。 2 争点(2)(日立工機らは本件特許発明3及び5を自ら実施し又は第三者に実施許諾したか)について(1) 本件特許3については,自社実施に係る相当の対価のみが問題となっている。他方,本件特許5(米国特許)については米国内での実施が問題となるところ,日立工機らが米国での関連会社を通じて被告製品を販売しているか,又は,同特許を米国のIBMに実施許諾しているかが問題となる。 (2) 本件特許3についてア被告は,本件特許発明3における「矩形パターン」とは,凸部のみを指すものであり,各凸部が「不均等幅」であるのが本件特許発明3であるのに対し,被告製品では,12.3μmの等幅のパターン(凸部)が7.2μmの間隔(凹部)で繰り返されているから,本件特許発明3を実施していない旨主張するので,検討する。 イ前記第2,1(3)イのとおり,本件特許3の特許請求の範囲(請求項1)の記載は以下のとおりである。 基準位相パターンを繰り返し配置したグレーティングにおいて,前記基準位相パターンはそれぞれ不均等幅で単一の位相高さをもつ矩形パターンを多層に重ね合わせた構造を持ち,前記グレーティングに入射し透過する0次回折光に対し,回折光を非対称に発生させることにより,等 間隔をなす偶数本のビームを発生させることを特徴とする偶数多ビーム発生素子。 ウ本件特許3に係る明細書(甲3の1)には以下の記載がある。 【実施例】「以下,本 ことにより,等 間隔をなす偶数本のビームを発生させることを特徴とする偶数多ビーム発生素子。 ウ本件特許3に係る明細書(甲3の1)には以下の記載がある。 【実施例】「以下,本発明の実施例を図1から説明する。グレーティングは基準位相パターンが格子ピッチpで,繰り返し配置されているものとする。本発明の基準位相パターン10は位相パターン8,9を重ねて構成されているもので,位相パターン8,9はそれぞれが単一の位相高さをもち,不均等な幅の矩形パターンからなっている。この例では位相パターン8はM部分の矩形パターンからなり,y(1)からy(M)で表される不均等な幅をもっている。また,位相高さはayとしている。 一方,位相パターン9もK部分の矩形パターンからなり,z(1)からz(K)で表される不均等な幅をもっている。位相高さはazとしている。」(段落【0009】)エ本件特許3の請求項1の「基準位相パターン」とは,「基準位相パターンを繰り返し配置したグレーティング」との記載からして,周期構造における単位構造(10)(格子ピッチp)を意味するものと解される。 また,「基準位相パターン」は,「それぞれ不均等幅で単一の位相高さをもつ矩形パターンを多層に重ね合わせた構造を持つ」から,「不均等幅で単一の位相高さをもつ矩形パターン」からなる「それぞれの層」(8,9)を多層に重ね合わせることで得られる構造を意味するものと解される。 そして,上記ウのとおり,本件特許3に係る明細書の段落【0009】には,図1の「位相パターン8はM部分の矩形パターンからなり,y(1)からy(M)で表される不均等な幅をもっている。また,位相高さはayとしている。」との記載があり,図1においてy(1)及びy(3)はくぼんだ部分(以下「凹部」という の矩形パターンからなり,y(1)からy(M)で表される不均等な幅をもっている。また,位相高さはayとしている。」との記載があり,図1においてy(1)及びy(3)はくぼんだ部分(以下「凹部」という。)であって,位相の高さayはゼ ロであるにもかかわらず,明細書上,y(1)及びy(3)についても「矩形パターン」として扱われていることは明らかである。したがって,本件特許発明3における「矩形」という文言は,「凹部」を除外しないものと解される。 また,y(2)及びy(4)を含めて「単一の位相高さ」といえるかも問題となるが,明細書上の記載を合理的に解釈すれば,ここでいう「単一の位相高さをもつ」とは,位相高さがゼロではない部分の「矩形パターン」の位相の高さが「単一」という意味であると解される。 これに対し,被告らは,明細書の段落【0009】では,矩形パターンの位相高さをayとしているから,出張った部分(以下「凸部」という。)のみが矩形パターンであり,「凹部」をも矩形パターンとすると「単一の位相高さをもつ」ことにならない旨主張する。 しかし,前記のとおり,明細書上,「凹部」も矩形パターンとして扱われていることからすれば,段落【0009】の「位相高さはayとしている」との記載は「凸部の位相高さはayとしている」ことを意味し,同段落の「単一の位相高さをもつ」との記載は「単一の凸部の位相高さをもつ」ことを意味するものと解するのが合理的である。 オ被告製品におけるパターンGといわれる構成(乙51の5参照)は,ピッチ19.5μmで,凹部が7.2μm,凸部が12.3μmの「不均等幅」であり,凸部が単一の位相高さである(これらの点に争いはない。)から,「不均等幅で単一の位相高さをもつ矩形パターン」に該当するといえる。 そして, 7.2μm,凸部が12.3μmの「不均等幅」であり,凸部が単一の位相高さである(これらの点に争いはない。)から,「不均等幅で単一の位相高さをもつ矩形パターン」に該当するといえる。 そして,この点以外に構成要件充足性について特に争いはないから,被告製品において本件特許発明3(請求項1)が実施されているものと認められる。 (3) 本件特許5について 以下のとおり,カット紙レーザプリンタについては本件特許発明5の実施が認められる一方,連続紙レーザプリンタについては同発明の実施は認められない。 アカット紙レーザプリンタについて(ア) 原告は,カット紙レーザプリンタにつき,被告らの子会社である米国のDPCでコントローラが製造され,同社経由で製品が米国内で出荷された旨主張する。これに対し,被告らは,カット紙レーザプリンタにおいては,本件特許発明5の実施は必須ないし不可欠ではなく,本件特許発明5には代替技術があるなどと主張するものの,実施の事実を明確に否認してはいない。 仮に,本件特許発明5について代替技術があるとしても,日立工機らが,自らが本件特許権5を保有しているにもかかわらず,本件特許発明5を実施せずにあえて別の技術を使用するということは特段の理由がない限り不合理というべきであり想定し難い。 (イ) また,原告は,日立工機らがテスター(レーザプリンタの機構部の調整を行うための印刷テストに用いられる試作品。甲56及び57)において本件特許発明5(請求項1,以下同様)を使用していたとし,テスターに使用した以上,製品にも使用したはずであると主張する。 そこで検討すると,以下のとおり,甲56記載のテスター(以下「本件テスター」という。)においては,本件特許発明5が採用されていたものと認められる( した以上,製品にも使用したはずであると主張する。 そこで検討すると,以下のとおり,甲56記載のテスター(以下「本件テスター」という。)においては,本件特許発明5が採用されていたものと認められる(一方,甲57のテスターについては,光検知信号分離回路を備えているか否かが不明であるため,本件特許発明5の採用の有無は不明である。)。なお,テスター及びレーザプリンタの機構部を併せたものについて,本件特許発明5を実施しているかどうかが問題となるのであり,テスター自体は,本件特許発明5の構成要件の一部である感光体等を含まず,テスターのみによって本件特許発明5を実施して いるとはいえないため,「実施」の語は用いず,「採用」の語を用いることとする。 すなわち,本件特許発明5(請求項1)の構成要件gは,「前記それぞれの分離した信号に対応して同期クロックを発生する…」,構成要件hは,「…対応する同期クロックに同期して記憶させた前記データ信号の順番に,前記データ信号を出力する」のであるから,構成要件gにおいて発生する同期クロックや構成要件hにおいてデータ信号を出力させるための同期クロックは,いずれも水晶等から発生するクロックと周期が同じである必要はないものと解される。以上からすれば,本件テスターにおける「水晶発振器のクロック信号」,「同期クロック発生回路から発生する同期クロック」,「データ読み出しに用いられる同期クロック」が同周期である必要はなく,これらのクロックや同期クロックが発生している以上は,構成要件g及びhを充足するものといえる。 また,本件テスターが光検知信号分離回路,同期クロック発生回路,FIFOメモリ回路素子,OR回路を備えていることからすれば,本件テスター(甲56)においては本件特許発明5が採用されており,ひいては本件テス 件テスターが光検知信号分離回路,同期クロック発生回路,FIFOメモリ回路素子,OR回路を備えていることからすれば,本件テスター(甲56)においては本件特許発明5が採用されており,ひいては本件テスターとレーザプリンタの機構部を併せたものが,本件特許発明5(請求項1に係るもの)を実施していると解するのが合理的である。 (ウ) 上記(ア)及び(イ)の事情によれば,被告らの子会社である米国のDPC経由で販売された製品にも,本件テスター同様に本件特許発明5が採用されていたとみるのが合理的であり,カット紙レーザプリンタについては,日立工機らは本件特許発明5を実施していたものと認められる。 (エ) なお,被告らは,本件特許5の構成要件gの「同期クロック」と構成要件hの「…対応する同期クロック」とが同じ周期であるのに対し,本件テスターでは構成要件gの「同期クロック」がFCLK1-Pに該当し, 構成要件hの「対応する同期クロック」が1/2CLK1-Nに当たり,これはFCLK1-Pの周波数の4分の1の周波数であり,両者の周波数が異なる,すなわち両者の周期が異なるから,本件テスターは本件特許発明5を採用していないと主張する。しかし,前記(イ)で検討したとおりであって,周波数の違いは構成要件充足性に影響を及ぼすものではなく,上記主張は採用できない。 イ連続紙レーザプリンタについて(ア) 原告は,平成19年以降,日立工機らが,米国での関連会社であるIPSを通じて,米国のIBMに被告製品を販売している旨主張する。 これに対し,被告らは,連続紙レーザプリンタはIBM向けに製造・販売されており,コントローラはIBMが製造しているところ,IBMにはコントローラについて技術的蓄積があり,本件特許発明5の代替技術となる特許権も有しているため, レーザプリンタはIBM向けに製造・販売されており,コントローラはIBMが製造しているところ,IBMにはコントローラについて技術的蓄積があり,本件特許発明5の代替技術となる特許権も有しているため,IBMはこのようなIBM独自技術を用いているものと解されるとして,連続紙レーザプリンタについて本件特許発明5の実施を否認する。 (イ) 確かに,IBMは,マルチビーム方式の画像信号の処理に関する米国特許第4978849号(乙66)を有するところ,その対応日本特許出願(発明の名称「画素位置を修正する方法」)の特許出願公告公報(乙67)には,「従来の技術」として「さらに,レーザアレイチップは非走査方向で正確なビーム位置合わせを提供するため通常傾けられる。 しかしながら,傾けられることにより走査方向においてビーム間でのオフセットを発生させることになり画素の位置決めの問題を発生させる。」(3頁左欄22~27行),「発明が解決しようとする課題」として「本発明の目的は電気的伝播遅れ並びに機械的位置合わせ誤りによるエラーを修正するために,複数ビーム走査レーザ装置と共に用いる電子的修正方法を提供することである。」(3頁右欄1~4行),「課題 を解決するための手段」として「画素位置を修正する方法は,基準レーザビームがオンとされる位置を検出し,その位置を希望する点に対して調整することを含む。次いで,一時に1個ずつ非基準レーザビームがオンとされ,それが基準ビームと同じ位置に来るまで前記のオンする点を調整する。こうして,機械的かつ電気的スキューがあったとしてもビームが画素を行間で整合して書き込みできるようにする。」(3頁右欄26~32行)との記載がある。 このように,IBMは,本件特許5と同様,複数(マルチ)ビーム走査レーザ装置における画素位置の ームが画素を行間で整合して書き込みできるようにする。」(3頁右欄26~32行)との記載がある。 このように,IBMは,本件特許5と同様,複数(マルチ)ビーム走査レーザ装置における画素位置の修正に関する課題を解決するための特許権,すなわち本件特許発明5に代替し得る特許権を有していたものといえる。 そして,日立工機らがIBMに対して本件特許権5を実施許諾したとの事実や,IBM製品において本件特許発明5が実施されている事実を認めるに足りる証拠はない。カット紙レーザプリンタの場合(前記ア)と異なり,連続紙レーザプリンタについてはIBMがコントローラ部分を製造していたことからすれば,日立工機の社内で本件テスター製作に当たり本件特許発明5を採用していても,IBMについてまでこれと同様に考えるのは合理的ではなく,IBMにおいては,本件特許発明5ではなくIBM自身が保有する同等の技術を用いたと解するのが合理的である。 (ウ) 原告は,平成19年以降は,被告リコーが米国IBMの事業部を併合し,IPSを設立して営業を開始しているから,それ以降は本件特許発明5を実施しているとも主張する。 しかし,これはあくまで原告の憶測にすぎず,かかる事実を認めるに足りる証拠はない。なお,IBMは,平成19年以前は自らの技術を使用してコントローラを製作していたと解されるところ,被告リコーによ る事業部の併合があったとしても,以前から製作を継続してきているコントローラをあえて別の構成に変更すべき理由はないものと解される。 (エ) 原告は,自らの実験ノート(甲61の1)上の平成6年2月9日の欄の記載を根拠として,IBMが日立工機に対し,プリンタ本体とコントローラを連結する「インターフェース仕様」の提出及び「2ビーム(Dua 原告は,自らの実験ノート(甲61の1)上の平成6年2月9日の欄の記載を根拠として,IBMが日立工機に対し,プリンタ本体とコントローラを連結する「インターフェース仕様」の提出及び「2ビーム(DualBeam)のコントロール方法」の教示を依頼した旨主張する。しかし,原告のノートのこのような記載のみを根拠として,日立工機・IBM間の本件特許権5に関するライセンス契約の存在を認定するのはおよそ困難であるといわざるを得ない。 (オ) 以上からすれば,日立工機らが,連続紙レーザプリンタに関して本件特許発明5を実施した,又は第三者(IBM)にこれを実施許諾したとの事実は認められず,この点に関する原告の主張は採用できない。 3 争点(3)(本件各特許を受ける権利の譲渡対価相当額はいくらか)について(1) 証拠(甲1ないし4,乙2ないし7,11ないし17,19,21,22,24ないし29,52,53,56ないし60,68,72,75)(いずれも枝番を含む。)及び弁論の全趣旨によれば,以下の事実が認められる。 ア本件特許発明2ないし4は,いずれも電子写真プリンタの技術のうち,露光に関する技術であり,その中でもレーザ走査光学系に関する技術である。 そして,本件特許発明2及び4は,いずれもAO変調器と偏光器の間に「ダブプリズム」を置く技術である。 本件特許発明2は,レーザビームを分岐して複数本ビームを発生させ,AO変調器で変調し(請求項1),又はレーザビームをAO変調器で分岐と同時に変調する(請求項2)光学系に関する技術である。 また,本件特許発明4は,レーザビームを分岐して複数本ビームを発生 させ,かつ複数本ビームをAO変調器で変調する光学系に関する技術であり,そのレーザビームの分岐にはウォラストンプリズム また,本件特許発明4は,レーザビームを分岐して複数本ビームを発生 させ,かつ複数本ビームをAO変調器で変調する光学系に関する技術であり,そのレーザビームの分岐にはウォラストンプリズム(結晶軸が直交する2個の水晶を貼り合わせて作られ,偏光方向の混合した光を入射させると,直交した偏光が分離して出射してくる光学素子)を用いる技術である。 他方で,本件特許発明3は,レーザビームを分岐して複数本ビームを発生させ(請求項1),又は複数本ビームをAO変調器で変調する光学系に関する技術(請求項5)であり,そのレーザビームの分岐には回折格子(基準となるパターンが繰り返し形成された格子状のパターンにより,光の回折を利用して干渉縞(回折光)を作るために使用される透過型の光学素子)を用い,かつ0次回折光に対し非対称の偶数ビームに分岐するものである。 イ日立製作所及び日立工機が有していた本件特許1(特許第1430005号,発明者は原告及びB,発明の名称「光記録装置」,出願日昭和53年6月5日,公告日昭和60年7月31日,登録日昭和63年3月9日,登録満了日平成10年6月5日)に係る明細書(甲1の1ないし4参照)には,以下の記載がある(以下,この発明を「本件特許発明1」という。)。 ・[発明の詳細な説明]「本発明の目的は,複数本の光束を用いた高速,高品質に記録する光記録装置を提供することにある。 上記目的を達成するために,本発明では上記半導体レーザの列状に複数個並べられた半導体レーザ光出力部を傾けて配置することを特徴とし,したがつて感光体材料上を走査される列状の複数本の光束は感光体材料上で走査方向に対し,走査方向と同方向あるいは直角方向と異なる斜め方向に配置し結像させることを特徴とする。」(公報(甲1の1)2頁左欄1 がつて感光体材料上を走査される列状の複数本の光束は感光体材料上で走査方向に対し,走査方向と同方向あるいは直角方向と異なる斜め方向に配置し結像させることを特徴とする。」(公報(甲1の1)2頁左欄1~10行) ウ乙52(特開昭51-100742号公報,公開日昭和51年9月6日,発明の名称「レーザ情報記録装置」)には,半導体レーザが斜めに配置されることが記載されており,乙53(特開昭54-38130号公報,公開日昭和54年3月22日,発明の名称「走査装置」)の「特許請求の範囲」には「…前記光照射部材上に照射される前記複数の光ビームの隣接するものが該光ビームの走査方向に対して直交せざる如く配列したことを特徴とする走査装置」,「…集光スポットを走査方向に対して非直角となる如く構成して成るものであるので複数の集光スポットにより形成された記録スポット間にすき間がなく,極めて高品質の記録を行うことが出来るものである。」(5ページ右上欄7~11行)との記載がある。 エレーザプリンタの分野において,露光だけが重要というわけではなく,その他の技術(現像,定着など)も不可欠である。 日本において,電子写真プリンタ分野における,出願日が平成5年6月4日から平成25年1月9日までで登録された特許権の件数は合計5万5294件であり,このうち「露光」に係る同期間の特許権の件数は4386件である。また,上記プリンタ分野における特許権には,露光に関するもののほか,感光体,現像剤(トナー,キャリア),帯電,現像,転写,定着,クリーニング,用紙搬送,プロセス制御及び画像信号処理,カラーシステムに関するものなど,多くの種類の特許権が存在する。(乙2)オ沖データ株式会社,富士通株式会社,日本オセ株式会社,富士ゼロックス株式会社は,いずれもL プロセス制御及び画像信号処理,カラーシステムに関するものなど,多くの種類の特許権が存在する。(乙2)オ沖データ株式会社,富士通株式会社,日本オセ株式会社,富士ゼロックス株式会社は,いずれもLEDアレイ光学系を用いた電気写真プリンタを製品化してきた。(乙3~6)また,三菱電機株式会社は1985年(昭和60年)に,富士通株式会社は1990年(平成2年)に,それぞれLEDアレイ光学系を用いた電子写真プリンタを製品化している。(乙7) このほか,日立工機が平成8年3月ころに作成した研究報告(乙24)には,「高精細化のための主要技術である多ビーム走査技術に関しては,回折格子やウオラストンプリズム等の光分岐素子を用いた多ビーム発生技術及び多ビーム斜め走査方式を考案し,600dpiを実現した。これは当社オリジナルの技術であり,競合他社であるシーメンスや富士通はLEDアレイヘッドを用いている。LEDアレイは,高精細になるほど各発光素子の出力のバラツキや欠陥の対策が必要になると予想される。」「高速機はシーメンスや富士通とも,310ppmクラスを同時期の1995年に製品化しており,デッドヒートの状態にある。総合的には,他社と同等かそれ以上のレベルにあると考える。高速連続紙プリンタは当社,ジーメンスや富士通の3社のマシーンが世界市場をリードしており,今後,ますます技術開発競争が激しくなると予想される。」(25頁の7項参照)との記載がある。 カレーザ走査光学系において複数ビームを発生させる方法のうち,複数のレーザ光源を合成・集積する方法としては,①2ビーム合成方式,②ファイバーアレイ方式,③半導体レーザアレイ方式などが存在する。 1990年(平成2年)の日立工機製のH-6286,1995年(平成7年)のコニカ社製の7050, 法としては,①2ビーム合成方式,②ファイバーアレイ方式,③半導体レーザアレイ方式などが存在する。 1990年(平成2年)の日立工機製のH-6286,1995年(平成7年)のコニカ社製の7050,1998年(平成10年)のミノルタ製のDi620では,いずれも複数の半導体レーザ光源からのレーザビームを,プリズムなどの合成素子を用いて合成し,隣接した複数の光源を得る方式(2ビーム合成方式)が採用されていた。(乙13ないし15)また,日立工機製のプリンタにおいて,複数の半導体レーザ光源からのレーザビームを,光ファイバーにより導きアレイ状に並べることによって隣接した複数の光源を得る方式(ファイバーアレイ方式)が採用されたものがあった。 このほか,日立工機製のプリンタにおいて,複数の半導体レーザ光源を 同一の半導体基板上に形成して集積化した半導体レーザアレイを光源として,複数ビームを発生させる方式(半導体レーザアレイ方式)が採用されたものがあり,同様の方式は,1995年(平成7年)の富士ゼロックス株式会社製のDocuStationDP300でも採用されていた。(乙16)キレーザ走査光学系において複数ビームを発生させる方法のうち,1本のレーザビームを分岐する方法としては,半透鏡方式,多重反射方式,ウォラストンプリズム方式,回折格子方式,AO変調方式などが存在する。 そして,日立工機製のプリンタにおいて,ウォラストンプリズムを用いた方式が採用されたものがあった。 また,回折格子を用いる製品としては,0次回折光に対して非対称な4ビーム回折格子を用いたもの(日立工機製品),5ビーム回折格子を用いたもの(日立工機製品)が,それぞれ存在するほか,0次回折光を分岐してトータルで偶数のビームに分岐する方法が,特開平7-225 な4ビーム回折格子を用いたもの(日立工機製品),5ビーム回折格子を用いたもの(日立工機製品)が,それぞれ存在するほか,0次回折光を分岐してトータルで偶数のビームに分岐する方法が,特開平7-225305号公報(乙11,公開日平成7年8月22日,発明の名称「偶数多ビーム発生素子及び光記録装置」)に開示されている。なお,乙11には,1本のガスレーザからビームを分岐させること,及びマルチチャネル音響光学変調器を用いることも記載されている。 このほか,1本のレーザビームを,音響光学素子によって偏向させて複数のレーザビームに分割させて複数ビームを発生させるAO変調方式は,特開平10-148778号公報(乙12,公開日平成10年6月2日,発明の名称「マルチビーム発生装置」)において採用されている。 ク特開昭62-226118号公報(乙17,公開日昭和62年10月5日,発明の名称「走査光学装置」)は,半導体レーザアレイを用いた複数ビームの走査光学系において,プリズムを配置することによりビーム間隔を狭くする技術を開示している。 また,特開平5-289018号公報(乙19,公開日平成5年11月 5日,発明の名称「インナードラム走査型記録装置」)には,像回転プリズム42(ダブプリズムに相当する。)に代えて,イメージローテータープリズム74(図4,段落【0022】),ペチャンプリズム80(図5,段落【0023】)を用いる方法が記載されている。 そして,特開昭59-19921号公報(乙72,公開日昭和59年2月1日,発明の名称「多ビーム音響光学変調装置」)には,回折格子と音響光学媒体とを有する多ビーム音響光学変調装置が開示されている。 このほか,特開昭61-204601号公報(乙75,公開日昭和61年9月10日,発明の名称「デイジ 装置」)には,回折格子と音響光学媒体とを有する多ビーム音響光学変調装置が開示されている。 このほか,特開昭61-204601号公報(乙75,公開日昭和61年9月10日,発明の名称「デイジタル位相格子」)には,光ビームスプリッタに関する二進位相格子G1(第1図)及び二進位相格子G2(第2図)の構造を幾何学的に重ね合わせて第3図に示す重合せ格子が得られることが記載されている。 ケ日立製作所,日立工機,日立プリンティングソリューションズ,リコープリンティングシステムズがプリンタ分野に関して1974年(昭和49年)から2006年(平成18年)までの間に出願し,公開され,後に特許査定がされた特許件数についての調査の結果,1994年(平成6年)から2006年(平成18年)までの間に,上記4社において実施可能であった特許件数の年平均値は,1086件(小数点以下四捨五入)であった。 他方で,キャノン株式会社がプリンタ分野に関して上記同時期に出願し,公開され,後に特許査定された特許件数についての調査の結果,同社において,1994年(平成6年)から2006年(平成18年)までの間に,実施可能であった特許件数の年平均値は,8428件(小数点以下四捨五入)であった。(乙57)このほか,平成26年度における情報通信機械器具製造業における保有特許に対する平均的な自社実施率(各企業の実施件数総数を特許所有総数 で除した値(平均値Aとされるもの))は24.7%であった。(乙68)コ業務用プリンタに関しては高速化という課題があり,日立工機らの従業員(原告を含む。)は,その課題解決のために,日立工機らのパソコンなどの設備を用いて研究を行った。他方で,日立工機らは,人件費や研究開発費にも一定の金銭を投じるなど,通常の会社が ,日立工機らの従業員(原告を含む。)は,その課題解決のために,日立工機らのパソコンなどの設備を用いて研究を行った。他方で,日立工機らは,人件費や研究開発費にも一定の金銭を投じるなど,通常の会社が行うべき金銭的負担をしてきた。 また,原告は,日立工機らにおいて様々な経験を積み,知識を得た上で,同知識・経験を用いて本件特許発明2ないし5を完成させた。なお,原告は,本件特許発明2を完成させるに当たり,日立工機におけるスパッタを使用して回折格子を作成した。 このほか,日立工機社内では,高速プリンタの開発に関する知識や技術が蓄積され,研究報告(乙24ないし29)という形で共有化されていた。このうち,乙24には,プリンタの高速化を実現するために開発された基幹技術として,光学系の技術のほか,現像技術,定着技術,印写プロセス,粗面紙定着技術が記載されている。 サ日立工機は,平成2年ころ,研究所を開設し,また研究者を増やすなどして,研究開発部門を強化してきた。(乙58,59)米国のIBMは,昭和63年ころ,日立工機に対し,IBMの高速連続紙レーザプリンタの後継機として日立工機の製品を採用したいと述べた。この当時,日立工機では,製品を世界的に納入しており,その機能や信頼性は高く評価されていたため,IBMから上記依頼があったものである。 日立工機は,平成2年から,製品をIBMに対して納入することになり,平成4年には,両者がプリンタの次世代機種を共同開発することになり,開発された製品は,IBMブランドを冠して全世界で販売された。(乙5 6,60)その後,日立工機では,競合他社の新製品投入等により,シェアが減少しつつあったが,両面印刷機能の付加,高精細機,一層の高速化などを強化し,平成7年におけるシェアは世界の約半分となっ 6,60)その後,日立工機では,競合他社の新製品投入等により,シェアが減少しつつあったが,両面印刷機能の付加,高精細機,一層の高速化などを強化し,平成7年におけるシェアは世界の約半分となった。(乙56)シ特開昭57-67375号公報(乙21,公開日昭和57年4月23日,発明の名称「マルチビーム記録装置」)には,以下の記載がある。 (ア) 【特許請求の範囲】「複数のビームにより記録媒体上を走査して,該記録媒体上に情報の記録を行うマルチビーム記録装置に於いて,前記複数のビームが所定位置に到来したことを検出し検出信号を出力するビーム検出器と,前記ビーム検出器へ前記複数のビームの1つが入射せしめるように設けられたビーム選択部材と,前記検出信号を分配する分配器とを有し,前記分配されたビーム検出信号により前記複数のビームの夫々の記録開始を制御することを特徴とするマルチビーム記録装置。」(イ) 「これに対し第1図Bに示す如く,ビームを走査方向と直角な直線L-L´に対してθだけ傾けると,画素間隔PSよりも広いビーム間隔Peを得ることが出来るものである。この場合は,前述した様にビーム間隔Peにかかわらず,任意の画素間隔PSが得られるが,走査方向のビームの走査,開始位置を夫々のビームについて変えなければならない。 このために記録媒体外にビーム検出器を設け走査に先だち,このビーム検出器へ第1のビームを入射することによつて得られた信号を第1のビームの走査開始信号とし,それに続くビームの走査開始信号は第1のビームの走査開始信号により起動されるタイマによつて得る如くの方法が考えられる。しかし,このタイマを用いた走査開始信号はタイマの精度等が,走査開始位置を左右してしまい,信頼性に欠ける点がある。 本発明はこの様に複数のビーム 起動されるタイマによつて得る如くの方法が考えられる。しかし,このタイマを用いた走査開始信号はタイマの精度等が,走査開始位置を左右してしまい,信頼性に欠ける点がある。 本発明はこの様に複数のビームの配列方向を走査方向と非直角となる 如く配列したときの各ビームの位置信号の検出を簡単かつ確実と成したビーム記録装置を提供するものである。」(2枚目の左上10行~右上10行)ス本件特許5(米国特許)の対応特許の日本国での出願は拒絶され,その後,乙21を主引例として,同対応特許出願の発明が進歩性を欠く旨の審決(乙22)がされた。 (2) 本件特許2ないし4に係る相当の対価についてア本件特許2ない4の位置付け(ア) 本件特許2ないし4の特徴は前記(1)アのとおりであり,いずれもプリンタにおける露光に関する技術で,マルチビーム斜め走査光学系(光束の配列を走査線方向に対して斜めに配置することにより,走査線垂直方向の密度を高めることを目的とする光学系)に関連する特許であるところ,前記(1)イ及びウのとおり,それらの出願時であった平成5年ないし6年には,マルチビーム斜め走査光学系自体は,既に本件特許1の公報等で開示されていたものである上,それ以前から,マルチビーム斜め走査光学系に関する技術は公知になっていたものである。また,前記(1)エのとおり,レーザプリンタの分野において,露光だけが重要なわけではなく,現像や定着などの技術も重要であって,露光以外の分野における特許も多数存在すること,前記(1)オのとおり,マルチビーム斜め走査光学系ではなくLEDアレイ光学系の技術を用いたプリンタを販売する会社も多く,平成8年当時,日立工機も,LEDアレイ光学系の技術を用いたプリンタを生産する競合他社と激しく競っていたこと,前記(1)カの 系ではなくLEDアレイ光学系の技術を用いたプリンタを販売する会社も多く,平成8年当時,日立工機も,LEDアレイ光学系の技術を用いたプリンタを生産する競合他社と激しく競っていたこと,前記(1)カのとおり,レーザ走査光学系において複数ビームを発生させる方法のうち,複数本のレーザビームの出射の代替手段(分岐する代わりの手段)としては,2ビーム合成方式,ファイバーアレイ方式,半導体レーザアレイ方式などが存在するところ,日立工機自身がファイバー アレイ方式や半導体レーザアレイ方式を採用した製品をも販売しており,半導体レーザアレイ方式や2ビーム合成方式を採用した製品を販売する他社も存在したこと,前記(1)キのとおり,レーザ走査光学系において複数ビームを発生させる方法のうち,1本のレーザビームを分岐する方法としては半透鏡方式,多重反射方式やウォラストンプリズム方式,回折格子方式,AO変調方式などが存在するところ,日立工機ではウォラストン方式を採用した製品をも販売しており,また音響光学素子を用いる方法も公知であったこと,前記(1)クのとおり,角度調整手段としてダブプリズムに代わる方法としてイメージローテータプリズムやペチャンプリズムなどを用いる方法などがあり,光ビームスプリッタとして矩形パターンを複数重ね合わせる方法が公知であったことが,それぞれ認められる。 (イ) 原告は,本件特許2ないし4につき,マルチビーム斜め走査光学系それ自体に関する特許であると主張するようであるが,前述のとおり,本件特許2ないし4に対する関係で公知技術となる本件特許1は,マルチビーム斜め走査光学系に関する技術を開示しており,本件特許2ないし4は,本件特許1等で開示されたマルチビーム斜め走査光学系の技術を前提とした特許という位置付けになるから,原告の上記主 許1は,マルチビーム斜め走査光学系に関する技術を開示しており,本件特許2ないし4は,本件特許1等で開示されたマルチビーム斜め走査光学系の技術を前提とした特許という位置付けになるから,原告の上記主張は採用できない。なお,半導体レーザが斜めに配置されること自体は,既に乙52,53に開示されていたものである。 また,原告は,LEDアレイ光学系については赤外波長に限定されており,頻繁に清掃する必要があるなどの欠点があるため,マルチビーム斜め走査光学系の代替技術とはならない旨主張する。しかし,前記のとおり,LEDアレイ光学系の技術を用いた製品を販売する他社が複数存在し,日立工機も,そのような競合他社と激しく競っていた以上,LEDアレイ光学系は,性能の違い等はあるとしても,マルチビーム斜め走 査光学系の代替技術に該当するというべきである。 なお,原告は,代替技術につき,被告製品の一定の部材を他の部材に変更してもなお製品として作動するかという観点から論じるようであるが,異なる技術を用いることで同程度の機能を有する製品が製造できるかという観点から論じるべきであり,代替技術に関する原告の主張は誤りである。 このほか,原告は,複数の半導体レーザ光源を用いる方法(2ビーム合成方式,ファイバーアレイ方式,半導体レーザアレイ方式)についても,十分な代替技術とはいえない旨主張する。しかし,日立工機自身や第三者が,これらの方法を採用していたことからすれば,本件特許発明2ないし4と同等の効果・機能を有するかはともかく,少なくともこれらの特許を回避する手段として上記の各方法があったということはできる。 原告は,被告らが指摘するそのほかの方法についても,るる主張するが,少なくとも,これらの方法が本件特許2ないし4を回避する手段となり得ること自体は として上記の各方法があったということはできる。 原告は,被告らが指摘するそのほかの方法についても,るる主張するが,少なくとも,これらの方法が本件特許2ないし4を回避する手段となり得ること自体は認められる。 また,原告は,本件特許2ないし4に関して,社内で表彰されたり,論文に掲載されたこと,これらの特許発明が全て被告製品に用いられていることを指摘する。しかし,社内表彰や論文掲載の有無は,直ちに本件特許2ないし4の実用的な価値に直結するものとはいえない。また,被告製品においては極めて多数の特許発明が実施されているものと解されるから,本件特許発明2ないし4が被告製品全てにおいて実施されていたとしても,これらの特許の優位性が直ちに認められるわけでもない。 (ウ) 以上によれば,本件特許2ないし4はマルチビーム斜め走査光学系における基本特許ではなく,他の特許と比較して特に必要性が高いとはいえない。 イ本件特許2ないし4に係る相当対価の具体的算出(ア) 前記第2,1(6)のとおり,本件特許2に係る被告製品の売上高は合計598億3615万4000円であり,本件特許3に係る被告製品の売上高は合計55億0275万円であり,本件特許4に係る被告製品の売上高は合計458億8381万4000円である。 なお,原告は,「Y値」なる概念を持ち出して,Y値は工場出荷価格であるからこれを1.8倍した値が実際の売上高である旨主張する。 原告の主張の趣旨は明らかではないが,日立工機ら作成の資料(甲12の2ないし13)に「Y値」なる記載が存在するからといって,被告らが本訴訟手続内で開示した売上高が実際の数値とは異なることを疑わせる事情があるとは到底認められず,原告が主張するように,被告ら開示の数字を1.8倍すべき合理的根拠はないから,この点に いって,被告らが本訴訟手続内で開示した売上高が実際の数値とは異なることを疑わせる事情があるとは到底認められず,原告が主張するように,被告ら開示の数字を1.8倍すべき合理的根拠はないから,この点に関する原告の主張は採用できない。 (イ) 超過売上率について,原告は0.45であると主張し,被告らは0.1であると主張する。 この点に関し,被告製品において本件特許発明2ないし4がいずれも実施されている(前記第2,1(4),前記2参照)ことに加え,被告らは,本件特許2ないし4の有効性については特段争っていない。 このように有効かつ実施されている特許については,一定程度の価値があるものと認められ,これらの特許発明の実施は,日立工機らのプリンタの売上げに一定程度は貢献したものと認められる。 そして,本件特許2ないし4を含め,前記(1)ケのとおり,日立製作所,日立工機,日立プリンティングソリューションズ,リコープリンティングシステムズが,プリンタ分野に関し,1994年(平成6年)から2006年(平成18年)までの間に実施可能であった特許件数の年平均値は1086件(なお,同数値は2006年(平成18 年)までの統計値であり,それ以降の統計値は不明であるが,それ以前の数値と大きく変わらないものとして扱うのが合理的である。この点は,後記(ウ)(エ)の統計値についても同様である。)に上り,情報通信機械器具製造業における保有特許に対する平均的な自社実施率(24.7%)を考慮しても,これらの特許が全体として日立工機らのプリンタの売上げに相当程度貢献したものと認められる。 以上の事情を総合すると,本件特許2ないし4を含め,日立工機らの有する一連のプリンタ関連特許権全体による超過売上率は0.45と認めるのが相当である。 なお,原告及び被告ら したものと認められる。 以上の事情を総合すると,本件特許2ないし4を含め,日立工機らの有する一連のプリンタ関連特許権全体による超過売上率は0.45と認めるのが相当である。 なお,原告及び被告らは,超過売上率に関して本件特許2ないし4の価値に係る主張をするが,この点は,むしろ後記の本件特許発明2ないし4の寄与度の項目で考慮すべきである。 このほか,原告は,被告らが行ったプリンタ分野において利用可能な特許件数の集計は著しく信頼性が低いと主張するが,被告らがこの点に関して不誠実な集計を行ったと認めるに足りる証拠もなく,原告の上記主張は採用できない(被告らが行ったその他の集計についても同様である。)。 (ウ) 仮想実施料率について,被告らは,別件であるキャノン職務発明相当対価支払請求控訴事件(知財高裁平成21年2月26日判決,判例タイムズ1315号198頁参照)において,レーザビームプリンタについて仮想実施料率が2.4%と認定されていること(同事実については,当事者間に特段争いがない。)を前提として,日立製作所,日立工機,日立プリンティングソリューションズ及びリコープリンティングシステムズにおいてプリンタ分野で1994年(平成6年)から2006年(平成18年)において利用可能であった特許件数の年平均値と,キャノン株式会社において同じ時期に利用可能であったプリンタ分野での特 許件数の年平均値の比率を掛けて,約0.31%をもって仮想実施料率であると主張するところ,この被告の主張内容は基本的に合理的なものというべきである。 一方,原告は仮想実施料率につき5%と主張するが,前記(1)エのとおり,我が国において,電子写真プリンタ分野で平成5年6月4日から平成25年1月9日までに出願・登録された特許件数が5万5294件に及び,そ 告は仮想実施料率につき5%と主張するが,前記(1)エのとおり,我が国において,電子写真プリンタ分野で平成5年6月4日から平成25年1月9日までに出願・登録された特許件数が5万5294件に及び,そのうち露光に関するものだけでも4386件に及ぶところ,企業間においてライセンスされる場合でも,極めて多くの特許をまとめても数%程度の実施料率にしかならないことからすれば,本件特許2ないし4について実施料率を5%などと評価することはできない。 この点に関し,原告は,本件特許2ないし4の価値は極めて高いため,仮に他社にライセンスされる場合でも,価値の低い多くの特許とは別の「除外特許」として扱われるべきで,多数の特許を一括してライセンスする際の実施料率を参考にすべきではない旨主張するが,前記アのとおり,本件特許2ないし4は,本件特許1等のマルチビーム斜め走査光学系の存在を前提とした特許にすぎず,基本特許ではないから,その価値が極めて高いとは認められない。 このほか,原告は,「カラー」に関する特許は被告製品に用いられておらず,また,小規模のオフィスや家庭で使われる小型カット紙レーザプリンタの要素技術は,本件特許2ないし4の対象製品とはほぼ無関係であり,使用可能特許数から除外すべき旨主張するところ,確かに,被告製品の特徴を考慮すれば,原告の上記主張の内容には合理性があるといえる。 他方で,原告は,「感光体」や「現像剤(トナー,キャリア)」,「露光」に関しては外部から部品を購入したと主張するが,この点に関しては証拠がなく,採用できない。 このほか,原告は,日立工機の関連会社の特許は日立工機において利用可能ではない旨主張する。しかし,日立工機が依頼すれば,日立製作所その他の関連会社の特許は実施可能であると考えるのが合理的であ このほか,原告は,日立工機の関連会社の特許は日立工機において利用可能ではない旨主張する。しかし,日立工機が依頼すれば,日立製作所その他の関連会社の特許は実施可能であると考えるのが合理的であって,原告の上記主張は採用できない。 以上の諸事情を考慮すると,被告らの上記主張は基本的に合理的であるところ,原告の主張のうち採用可能な部分も考慮して,仮想実施料率を0.5%と認定することとする。 (エ) 次に,本件特許2ないし4の被告製品における寄与度についてであるが,前記アのとおり,本件特許2ないし4はマルチビーム斜め走査光学系における基本特許ではなく,他の特許と比較して特に必要性が高いとはいえないため,被告製品における寄与率については,前記(1)ケのとおり,日立製作所,日立工機,日立プリンティングソリューションズ,リコープリンティングシステムズが,プリンタ分野に関し,1994年(平成6年)から2006年(平成18年)までの間に実施可能であった特許件数の年平均値1086件及び情報通信機械器具製造業における保有特許に対する平均的な自社実施率(24. 7%)を考慮した上で,0.5%と認める。 原告は,日立工機らがプリンタ分野に関して保有する特許に係る発明が全て被告製品において実施されているわけではないとする。確かに,被告製品において具体的にどのような特許発明が実施されているかは不明であるが,プリンタにおいて多種多様な特許発明が実施されていることは容易に推測できる。そして,前記(1)コのとおり,プリンタの高速化を実現するためには,光学系の技術のほか,現像,定着等多くの技術が必要とされていることからしても,本件特許2ないし4のみを特別扱いすることを正当化する根拠はない。 このほか,原告は,日立工機らにおいて,光学系以外に有意な特許は ほか,現像,定着等多くの技術が必要とされていることからしても,本件特許2ないし4のみを特別扱いすることを正当化する根拠はない。 このほか,原告は,日立工機らにおいて,光学系以外に有意な特許は 存在しない(社内で表彰された特許はない)ため,本件特許2ないし5以外の特許の被告製品への寄与度を考慮する必要はないとも主張するが,前記のとおり表彰の有無が特許の実用的な価値に直結するわけではなく,日立工機内において光学系以外に有意な特許がないとはいえないため,原告の上記主張は採用できない。 以上からすれば,前記のとおり,プリンタ分野において被告製品に使用可能な特許の件数,及び被告らを含む情報通信機械器具製造業における保有特許に対する平均的な自社実施率を前提として寄与度を算定することが合理的である。 (オ) 共同発明者間の寄与率が1であることは当事者間に争いがない。 (カ) 発明者(原告)の貢献度については,前記(1)コ及びサの事実等を考慮して,0.05と認めるのが相当である。 被告らは,日立工機の連続紙レーザプリンタの光学系分野において,高速化の課題が与えられさえすれば,日立工機の光学技術者であれば誰でも,青色ガスレーザを分岐する方法のマルチビーム化を検討したのは必然であった旨主張するが,原告の個人的知識や経験が生かされて本件特許発明2ないし5の完成に至った部分もあると解され,被告らの上記主張をそのまま採用することはできない。 他方で,原告は,自らの研究は「自発的な」研究であり,日立工機から課題を与えられたわけではないとも主張する。この点に関し,研究課題一覧表(甲42の1,2)において,原告の研究が「自発」と記載されているとしても,原告は,あくまで日立工機の職務として,同社の設備等を利用して研究を行っていたものであり する。この点に関し,研究課題一覧表(甲42の1,2)において,原告の研究が「自発」と記載されているとしても,原告は,あくまで日立工機の職務として,同社の設備等を利用して研究を行っていたものであり,日立工機が研究開発費等を負担していたのであるから,原告が指摘する上記事実は,原告の貢献度を特に高めるものではない。 このほか,原告は,自らの貢献度が高い旨をるる主張するが,日立 工機らは,会社として通常期待される程度の従業員(研究者)への支援はしていたものと認められ,また,原告も,日立工機らの設備等を一定程度利用して発明に至ったものであって,原告の貢献度が特に高いといえるほどの特段の事情があるとは認められない。 また,原告は,日立工機らの貢献については発明完成時までのものに限って考慮すべきと主張するが,平成16年法律第79号による改正前の特許法下でも,発明完成後における使用者の貢献についても考慮すべきものと解されているから,原告の上記主張は採用できない。 以上によれば,上記のとおり,発明者(原告)の貢献度を0.05と認めるのが相当である。 (キ) 原告は,関連発明間の寄与率について0.75と主張するが,上記(エ)(被告製品における本件特許2ないし4の寄与度)において,既に他の特許が被告製品に実施可能であったことを根拠に減額したため,この項目で更に減額することはしない。 (ク) 以上からすれば,本件特許2ないし4についての相当の対価額は,下記の合計である6万2563円となる。 ① 本件特許2に係る相当の対価 3万3658円598億3615万4000円×0.45×0.005×0.005×1×0.05=3万3658円(小数点以下四捨五入)② 本件特許3に係る相当の対価 3095円55億0275万円×0.45×0.0 98億3615万4000円×0.45×0.005×0.005×1×0.05=3万3658円(小数点以下四捨五入)② 本件特許3に係る相当の対価 3095円55億0275万円×0.45×0.005×0.005×1×0. 05=3095円(小数点以下四捨五入)③ 本件特許4に係る相当の対価 2万5810円458億8381万4000円×0.45×0.005×0.005×1×0.05=2万5810円(小数点以下四捨五入)(3) 本件特許5に係る相当の対価について ア前記(1)シ,スのとおり,本件特許5については,我が国においても対応特許が出願されたものの,先行技術(特開昭57-67375号,乙21)の存在により拒絶査定されたものである。 そして,乙21の記載事項からすれば,複数レーザビームを斜め配置にした際の書き出し位置のずれの問題は,当業者の共通の課題であったといえる。 イ本件特許発明5(ここでは請求項1記載のものを意味する。)と乙21記載の発明(以下「乙21発明」という。)とを対比すると,両発明は,「複数本のレーザ光によって形成される光スポット列を走査方向に対し傾斜させて設けるとともに前記レーザ光により感光体上を走査して前記感光体上に光記録を行う光記録装置において,前記複数本のレーザ光を時系列に検知するとともに,該時系列に検知された信号の集合からなる複合光検知信号を発生させる光検知手段と,前記光検知手段から出力される前記複合光検知信号をそれぞれのレーザ光に対応した信号に分離し,それぞれのレーザ光に対応する光検知信号を形成する光検知信号分離回路と,予め設定されたクロック信号と前記光検知信号分離回路からの前記光検知信号とに基づき,前記クロック信号と同期し,かつ前記光検知信号に同期した同期ク に対応する光検知信号を形成する光検知信号分離回路と,予め設定されたクロック信号と前記光検知信号分離回路からの前記光検知信号とに基づき,前記クロック信号と同期し,かつ前記光検知信号に同期した同期クロックを発生させる同期クロック発生回路と,複数本のレーザ光それぞれに対応する光記録を行うためのデータ信号を一時的に記憶するとともに,前記データ信号を,対応する前記同期クロックに同期させて記憶した順番に出力するFIFO回路素子と,を備えたことを特徴とする光記録装置。」である点で一致し,少なくとも「本件特許発明5は,FIFO回路素子から出力したそれぞれのデータ信号及び前記光検知手段に光を照射するための信号に対しOR演算を行うOR回路を有するのに対して,乙21発明ではこのような回路について規定していない点」(相違点1)で相違する。 このほか,仮に,本件特許発明5においては,同期クロック発生回路が,クロック信号と同一の周期を有する同期クロックを発生させるものと解すれば(本件特許5の特許請求の範囲ではこのような限定は付されていないが,少なくとも原告は,この点をもって本件特許発明5の本質と解するようである。),「同期クロック発生回路が,本件特許発明5では,クロック信号と同一の周期を有する同期クロックを発生するのに対し,乙21発明では,クロック信号を1/Pに逓降した同期クロックを発生する点」(相違点2)についても上記両発明の相違点となる。 ウ上記相違点1に関して,乙21発明は,FIFO回路素子から出力したそれぞれのデータ信号及び光検知手段に光を照射するための信号に対しOR演算を行う点について規定していないが,前記光検知手段に光を照射するための手段が備わっていることは,同発明の目的からしても,当業者には明らかである。すなわち,乙21発 を照射するための信号に対しOR演算を行う点について規定していないが,前記光検知手段に光を照射するための手段が備わっていることは,同発明の目的からしても,当業者には明らかである。すなわち,乙21発明においても,FIFO回路素子の出力が供給されるレーザ光源変調駆動回路には,光記録中に発生するFIFO回路素子の出力がレーザ光源変調駆動回路に供給されるとともに,光記録に先立つデータ信号が存在しない期間すなわちFIFO回路素子の出力が存在しない期間に,光検知手段にレーザ光を供給するための信号が前記レーザ光源変調駆動回路に供給されなければ,乙21発明の目的を達することができないのは当業者にとって明らかである。ここで,レーザ光源変調駆動回路に供給されるのは,前記出力と前記信号との論理和,すなわちOR演算の結果である。 以上からすれば,乙21発明の光検知手段に光を照射するための信号と,データ信号に基づくFIFO回路素子から出力信号との論理和をレーザ光源変調駆動回路に供給することは,当業者が容易に想到できた事項である。 また,仮に上記相違点2が存在すると解した場合でも,同期クロックとクロック信号の周期の関係は,使用するクロック信号の速さ等,装置 に使用する回路要素の仕様に応じて,設計上適宜設定できる事項である。 そして,同期クロックとクロック信号の周期を同一としたことによる格別の技術的意義も認められないから,乙21発明の同期クロックの周期を,逓降することなくクロック信号の周期と同一とすることは,当業者が容易に想到できた事項というべきである。 以上からすれば,本件特許発明5は進歩性を欠くから,本件特許5は無効とされるべきものである。 なお,原告は,相違点2に関して,本件特許発明5の本質が同相違点にあり,この点は容易想到ではないと 。 以上からすれば,本件特許発明5は進歩性を欠くから,本件特許5は無効とされるべきものである。 なお,原告は,相違点2に関して,本件特許発明5の本質が同相違点にあり,この点は容易想到ではないとも主張するが,前記のとおり,そもそも本件特許5の請求項1の構成要件gにおいては,「前記それぞれの分離した信号に対応して同期クロックを発生するための同期クロック発生回路」と定めるのみであり,「同期クロック発生回路が,クロック信号と同一の周期を有する同期クロックを発生する」とは記載されていないのであるから,本件特許発明5はこの点を構成として含まないというべきであり,仮に含まれるとしても,前記のとおり,この点に格別の技術的意義を見出すことはできず,当業者が容易に想到できた事項というべきである。 エなお,米国においては,日本での対応特許出願と同時期に本件特許5が出願され,日本での拒絶査定に先行して特許登録されたが,米国の審査において上記先行技術が考慮されたか否かは不明である。 オ以上のとおり,本件特許5は,進歩性を欠き無効とされるべき特許というべきである。そして,ある職務発明に係る特許が無効であることによって,直ちに独占の利益(当該特許の寄与度を考慮したもの)が否定されるわけではないが,本件特許5のように,進歩性を欠くために無効というべきであるにとどまらず,日本では対応特許出願が拒絶されたが,外国ではかろうじて特許化されたような事例では,第三者にとっても, 代替技術を利用することで当該特許を回避することは極めて容易であったものと解され,このような特許を承継した会社においては,何ら独占の利益(当該特許の寄与度を考慮したもの)を取得できないというべきである。 以上からすれば,被告らは,本件特許5を承継したことにより,何ら ,このような特許を承継した会社においては,何ら独占の利益(当該特許の寄与度を考慮したもの)を取得できないというべきである。 以上からすれば,被告らは,本件特許5を承継したことにより,何ら独占の利益(本件特許5の寄与度を考慮したもの)を受けていないというべきである。 カ仮に,本件特許5の承継により,被告らが何らかの独占の利益(本件特許5の寄与度を考慮したもの)を得たとしても,既に検討した事情からすれば,その程度は低いというべきであり,寄与度はせいぜい0.1%である。 このほか,本件特許5に関しては,発明者は原告を含め10名とされているから,共同発明者間の原告の貢献度は10分の1である。この点に関し,原告は,発明者とされた者のうち原告以外の者の実質的貢献はないとも主張するが,これを認めるに足りる証拠はなく,むしろ,原告も署名押印した配分申請書(乙71)において,本件特許5の補償金の配分につき原告が10%とされていることからすれば,原告の貢献度は10分の1と認定するのが合理的である。 以上からすれば,仮に本件特許5によって被告らが一定程度の独占の利益(寄与度を考慮したもの)を得たと解する場合には,相当の対価は93円となる(被告製品の売上高,本件特許5の寄与度,共同発明者間の原告の貢献度以外の数字は本件特許2ないし4と同じとして計算した。)。 82億7960万円(前記第2,1(6)イ参照)×0.45×0.005×0.001×0.1×0.05=93円(小数点以下四捨五入)(4) 小括前記第2,1(7)イのとおり,日立工機らは,原告に対し,本件特許2な いし4の報償金として合計71万2160円(外国特許分5万6000円を除外すると65万6160円)を支払っており,これは,上記(2)で )イのとおり,日立工機らは,原告に対し,本件特許2な いし4の報償金として合計71万2160円(外国特許分5万6000円を除外すると65万6160円)を支払っており,これは,上記(2)で算定した原告の職務発明に対する相当の対価額を上回っているから,本件特許2ないし4に係る原告の請求は理由がないことになる。 なお,原告は,「相当の対価」に相当するのは実績補償金のみであり,出願補償金や登録補償金などは製品の売上げと無関係に支給されるものであるから「相当の対価」に含めるべきでないと主張するが,独自の見解であり,採用できない。 また,本件特許5に関しては,そもそも被告らにおいて独占の利益(本件特許5の寄与度を考慮したもの)が生じたとは認められないから,相当の対価はゼロであり,仮に被告らにおける独占の利益を肯定した場合であっても,前記第2,1(7)イのとおり,被告らは原告に対し,本件特許5の報償金として合計1万6000円を支払っているところ,これは上記(3)で算定した原告の職務発明に対する相当の対価額を上回るから,いずれにしても,本件特許5に係る原告の請求もまた理由がない。 第4 結論以上によれば,原告の請求はいずれも理由がないからこれらを棄却することとし,主文のとおり判決する。 東京地方裁判所民事第47部 裁判長裁判官沖中康人 裁判官矢口俊哉 裁判官宇野遥子は,差支えのため署名押印することができない。 裁判長裁判官沖中康人 ない。 裁判長 裁判官 沖中康人

▼ クリックして全文を表示

🔍 類似判例を検索𝕏 でシェア← 一覧に戻る