判決平成13年9月27日神戸地方裁判所平成13年(わ)第619号傷害被告事件 主文 被告人を懲役1年2月に処する。 未決勾留日数中30日をその刑に算入する。 この裁判が確定した日から3年間その刑の執行を猶予する。 被告人をその猶予の期間中保護観察に付する。 理由 (罪となるべき事実)被告人は,平成13年5月29日午後4時ころ,神戸市a区bc丁目d番e号所在の株式会社A神戸店本館3階南側従業員専用エレベーターホールにおいて,V(当時33歳)に対し,その顔面を両手拳で数回殴打して仰向けに転倒させるなどの暴行を加え,よって,同女に加療約10日間を要する上口唇挫創,顔面挫傷(鼻出血を伴う),後頭部挫傷等の傷害を負わせたものである。 (証拠の標目)―かっこ内は検察官請求証拠等関係カード甲乙の番号(省略)(弁護人の主張に対する判断) 1 弁護人は,被告人が被害者を手拳で殴打したのは1回であり,被害者が転倒したのも,被告人と被害者がもみ合っていたときであるなどと主張し,被告人もこれに沿う供述をしている。 しかしながら,被害者や目撃者は,被告人が被害者に対しその顔面を両手拳で数回殴打して仰向けに転倒させるなどの暴行を加えた旨明確に述べるものであるところ,被害者の後頭部挫傷は,被害者や目撃者のいうように,被害者が被告人に殴打されて仰向けに転倒した際に負ったものであれば,合理的に説明できるのに対し,被告人のいうように,被告人と被害者がもみ合って転倒した際に負ったものとしては,合理的な説明は困難である上,そもそも,被害者は被告人から突然殴りかかられたものであって,若い女性である被害者が,被告人のいうように,被告人につかみかかって み合って転倒した際に負ったものとしては,合理的な説明は困難である上,そもそも,被害者は被告人から突然殴りかかられたものであって,若い女性である被害者が,被告人のいうように,被告人につかみかかっていきもみ合いになるとも考え難く,被告人の上記の供述は信用性に乏しいから,被害者や目撃者のいうように,被告人が被害者に対しその顔面を両手拳で数回殴打して仰向けに転倒させるなどの暴行を加えたことは,間違いがないと認めることができる。 2 弁護人は,本件犯行当時,被告人が不安神経症のため,心神喪失ないしは心神耗弱の状態にあった旨主張する。 なるほど,被告人は,平成7年4月から平成10年12月まで及び平成12年8月から本件犯行当時に至るまで,不安神経症(パニック障害)のため通院治療を受けていたことが認められるが,被告人の不安神経症(パニック障害)は,発作性の全身硬直,手足の脱力・しびれ,動悸と予期不安を具体的な症状とするもので,責任能力に直接影響を及ぼすようなものではないのに加え,被告人は,本件犯行直後逃走し,逮捕された後は,虚実を取り混ぜながら,自己の刑事責任を軽減するための供述を繰り返しているのであって,そこからは,被告人が自己の行為の意味を理解し,それに従って行動する能力を有していることが窺われる上,起訴前の精神保健診断によっても,被告人は,衝動性人格障害を含む自律神経症であって,本件犯行は,若い女性の態度に感情を害したのが継続し,それが衝動的な行為となったものと理解でき,本件犯行当時,被告人の是非を弁識しそれに従って行動する能力はやや障害されていたものの,それに止まっていたというのであるから,被告人は,心神喪失ないしは心神耗弱の状態には至っておらず,なお完全責任能力を有していたものと認めるのが相当である。 弁護人の上記主張は採用でき たものの,それに止まっていたというのであるから,被告人は,心神喪失ないしは心神耗弱の状態には至っておらず,なお完全責任能力を有していたものと認めるのが相当である。 弁護人の上記主張は採用できない。 (法令の適用)罰条刑法204条刑種の選択懲役刑宣告刑懲役1年2月未決勾留日数の算入刑法21条(30日)刑の執行猶予刑法25条1項(3年間)保護観察刑法25条の2第1項前段訴訟費用の不負担刑事訴訟法181条1項ただし書(量刑の理由)本件は,被告人が,たまたま出会った被害者に対し,暴行を加えて傷害を負わせたという事案であるが,被告人は,別の若い女性の態度に感情を害し,それを全く無関係な被害者に向けて発散させたものであって,犯行に至る経緯に酌むべき点がないこと,被告人は,いきなり被害者の顔面を両手拳で数回殴打し仰向けに転倒させるなどの暴行を加えたものであって,暴行の態様は軽いものではなく,その結果被害者に負わせた傷害の程度も決して軽微なものではないこと,被告人の側から被害者に対する損害賠償等はなされていないことなどを考え併せると,被告人の刑事責任は重いというべきである。 しかしながら,本件犯行は,被告人が,衝動性人格障害を含む自律神経症のため,若い女性の態度に感情を害したのが継続し,それが衝動的な行為となったものと理解でき,本件犯行当時,被告人の是非を弁識しそれに従って行動する能力がやや障害されていたと認められること,被害者の負った傷害の程度は,決して軽微なものではないとはいえ,比較的軽いものに止まっていること,被告人も一応は本件を反省していること,被告人には業務上過失傷害罪による罰金以外に前科がないこと,被告人が本件で約4か月間身柄拘 決して軽微なものではないとはいえ,比較的軽いものに止まっていること,被告人も一応は本件を反省していること,被告人には業務上過失傷害罪による罰金以外に前科がないこと,被告人が本件で約4か月間身柄拘束を受けていることなどの,被告人のために酌むべき事情もあるので,被告人に対し,今回は,保護観察に付した上で,その刑の執行猶予の言渡しをすることとする。 (検察官の科刑意見・懲役1年6月)よって,主文のとおり判決する。 平成13年9月27日神戸地方裁判所第12刑事係甲裁判官森岡安廣
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