平成13(ワ)27336 報酬金請求

裁判年月日・裁判所
平成14年12月26日 東京地方裁判所
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判決文本文24,021 文字)

平成14年12月26日判決言渡同日原本領収裁判所書記官平成13年(ワ)第27336号報酬金請求事件 主文 1 被告は,原告らに対し,それぞれ金9929万1500円及びこれに対する平成14年1月19日から支払済みまで年5分の割合による金員を支払え。 2 原告らのその余の請求をいずれも棄却する。 3 訴訟費用はこれを2分し,その1を原告らの負担とし,その余を被告の負担とする。 4 この判決は,第1項に限り,仮に執行することができる。 事実及び理由 第1 請求被告は,原告らに対し,それぞれ金1億9858万3000円及びこれに対する平成14年1月19日から支払済みまで年5分の割合による金員を支払え。 第2 事案の概要本件は,被告から訴訟の提起及びその追行を委任されてこれを行った弁護士である原告らが,被告に対し,委任契約に基づき,それぞれ報酬金1億9858万3000円及びこれに対する弁済期の経過した後である平成14年1月19日から支払済みまで年5分の割合による遅延損害金の支払を求める事案である。 1 争いのない事実(1) 当事者ア原告A及び原告Bは東京弁護士会に,原告Cは第一東京弁護士会に所属する弁護士である。 イ被告は,地方公務員等共済組合法により設立され,組合員の相互救済による給付事業及び福祉事業を行い,もって組合員及びその遺族の生活の安定と福祉の増進を図るとともに,公務の能率的運営に資することを目的とする共済組合である。 (2) 事実経過ア被告は,D信託銀行株式会社(平成13年10月1日にE信託銀行株式会社に吸収合併され,その権利義務は同銀行に承継された。以下,合併前については「D信託銀行」という。)との間で,共済年金資金の運用のために特定金銭信託契約を締結した上で,さらに,F株式会社との間で,前記信託資金の運用に その権利義務は同銀行に承継された。以下,合併前については「D信託銀行」という。)との間で,共済年金資金の運用のために特定金銭信託契約を締結した上で,さらに,F株式会社との間で,前記信託資金の運用についての投資一任契約を締結したところ,F株式会社が日経平均株価指数連動債による運用をD信託銀行に指図したことにより,多額の損失を被った。 イ原告Cは,平成10年6月1日,被告との間で,月額顧問料を15万円とする法律顧問契約を締結し,被告の顧問弁護士を務めていた。 ウ原告Cは,同年8月,被告から前記株価連動債による資金運用に基づく損失について相談を受け,原告Bに対し,その処理に関し検討を依頼した。 エ原告らは,同年10月19日,被告に対し,前記案件について訴訟を提起した場合の弁護士報酬に関し,大要,本件については原告ら3名が訴訟の準備を行ってきたところ,原告らの所属する東京弁護士会及び第一東京弁護士会の定める弁護士報酬規則(以下「本件各弁護士報酬規則」という。)による着手金の標準額は,訴額が約114億円であることから,2億3000万円強となるが,着手金については,その性格上規則どおりに請求することは困難と認められるので,原告ら1人につき1000万円(消費税別途。以下,特に断らない限り同じ。)で合計3000万円とし,なお,請求の拡張に際しては改めて着手金を請求することはせず,また,報酬金については,以上の事情を踏まえ,本件各弁護士報酬規則を参考としつつ,その段階で請求する旨記載した文書(以下「本件第1文書」という。)を送付した。 オ被告は,同月22日,原告らとの間で,F株式会社及びD信託銀行に対し,損害賠償請求訴訟を提起し,一切の訴訟行為をすることを委任する旨の契約(以下「本件委任契約」という。)を締結した。 カ原告らは,同月28日,被告の ,原告らとの間で,F株式会社及びD信託銀行に対し,損害賠償請求訴訟を提起し,一切の訴訟行為をすることを委任する旨の契約(以下「本件委任契約」という。)を締結した。 カ原告らは,同月28日,被告の訴訟代理人として,F株式会社及びD信託銀行に対し,114億9358万2247円の債務不履行に基づく損害賠償金及びこれに対する商事法定利率年6分の割合による遅延損害金を請求する訴訟を提起した(東京地方裁判所平成10年(ワ)第24639号事件として係属。以下,この訴訟を「前訴」という。)。 キ原告らは,同月29日,被告に対し,着手金各1000万円(合計3000万円)の請求書を発送したところ,被告は,同年11月20日,原告らに対し,着手金として各1000万円(合計3000万円)を支払った。 ク F株式会社は,平成11年1月19日,被告に対し,投資顧問報酬3312万4150円の支払を求める反訴(東京地方裁判所平成11年(ワ)第1030号事件)を提起した。 ケ原告らは,同年2月18日,前訴について,損害賠償金額を288億3040万4175円とする請求の拡張申立てをし,さらに,平成13年6月14日,その金額を277億9919万6852円とする請求の減縮申立てをした。 コ前訴における審理は,結審までに2年9か月,19回の口頭弁論を要したが,その争点は,①F株式会社がD信託銀行に対して運用を指図した前記株価連動債(以下「本件株価連動債」という。)が信用ある格付機関からA以上の格付けを取得していたか否か,②本件株価連動債が前記のような社債に該当しないとして,被告の担当者がF株式会社においてその運用を指図することについて同意したか否か,また,そのことは平成10年3月の前後で異なるか否か,③被告の担当者に前記同意があったとして,F株式会社又はD信託銀行に債務不履 当者がF株式会社においてその運用を指図することについて同意したか否か,また,そのことは平成10年3月の前後で異なるか否か,③被告の担当者に前記同意があったとして,F株式会社又はD信託銀行に債務不履行が成立するか否か,また,そのことは前記時点の前後で異なるか否か,④債務不履行が成立するとして,被告の過失はどの程度認められるか,⑤被告の損害額はいくらか,以上の諸点であった。 サ金融監督庁は,同年7月29日,F株式会社に対し,投資一任契約に基づく投資の対象として認められていない商品を取り扱ったことなどを理由に,行政処分を課した。 シ前訴の受訴裁判所は,平成13年7月24日に弁論を終結し,判決言渡期日を同年10月30日と指定した。 ス原告Cは,同年9月26日,被告に対し,前訴の最終の請求額が約277億円となったこと,提訴後3年を経過していること,被告の勝訴が見込まれていること,これに伴い強制執行手続を行うことになること,F株式会社の控訴及びこれに伴う被告の附帯控訴が見込まれることなどを勘案し,報酬金(中間金)として原告ら1人につき3000万円(合計9000万円)を請求したい旨記載した文書を送付した。 セ原告Cは,同年10月22日,前訴の控訴審及び強制執行の着手金として前記シと同様の金額を請求する旨の文書を送付した。 ソ原告らと被告は,同月24日,前訴の弁護士報酬について話し合い,その結果,被告は,原告らに対し,控訴審の着手金として,各1500万円を第一審判決後請求があり次第速やかに支払い,報酬金については,控訴審判決の内容及び実回収額が不確定であるため,現時点でその金額を確定させることは不適当であるから,判決確定後,弁護士報酬規則,実勢価格,実回収額等を総合勘案しつつ,相互に誠意をもって協議した上で算定した額を報酬金として支払うことと であるため,現時点でその金額を確定させることは不適当であるから,判決確定後,弁護士報酬規則,実勢価格,実回収額等を総合勘案しつつ,相互に誠意をもって協議した上で算定した額を報酬金として支払うこととする旨記載した文書(以下「本件第2文書」という。)を作成した。 タ前訴の受訴裁判所は,同日,判決言渡期日を同年11月27日に変更したが,その後,F株式会社からの申出に基づき和解による解決が検討され,受訴裁判所は,当事者双方に対し,和解案を提示した。 チ原告らは,同月12日,被告に対し,前訴の報酬金について,前記和解案を受諾した場合に被告の受ける利益は140億円であり,本件各弁護士報酬規則により算定した報酬金の標準額は5億6738万円となるが,原告らとしては,従前からの被告の意向を踏まえ,この標準額から20パーセント強減額し,落着に伴う報酬金として4億5000万円(原告ら1人につき1億5000万円)を請求額とするので,和解案を受諾するか否かを検討するに当たっては,この報酬金額を差し引いた金額が実質的に年金資産に戻し入れられることをも十分に勘案の上結論を出すように願いたい旨記載した文書を送付した。 ツ被告は,同月16日,原告らに対し,前訴の報酬金について,第一審の着手金額相当の3000万円に原告ら及び被告間で合意した控訴審の着手金額4500万円を加算した額である7500万円(原告ら1人につき2500万円)を支払う旨回答したところ,原告らは,被告の上記回答に応じることを拒否した。 テ前訴において,同月30日,大要次の内容の和解(以下「本件和解」という。)が成立した。 (ア) F株式会社は,被告に対し,和解金140億円の支払義務があることを認め,これを同日限り100億円,平成14年4月末日限り40億円支払う。 (イ) 被告は,E信託銀行株式会社(D )が成立した。 (ア) F株式会社は,被告に対し,和解金140億円の支払義務があることを認め,これを同日限り100億円,平成14年4月末日限り40億円支払う。 (イ) 被告は,E信託銀行株式会社(D信託銀行承継人)に対する訴えを取り下げ,E信託銀行はこれに同意する。 (ウ) 被告とF株式会社及びE信託銀行との間には,当該事件に関し,和解条項に定めるほか他に何ら債権債務がないことを相互に確認する。 ト原告Cは,同年12月10日,被告に対し,被告との間の法律顧問契約を同年11月末日をもって解除するとの内容証明郵便を発信した。 ナ原告らは,同年12月11日,被告に対し,前訴により被告が受けた利益140億円についての報酬金として,前記チの標準額5億9574万9000円(原告ら1人につき1億9858万3000円。消費税を含む。)を請求する内容の請求書を送付し,翌12日に被告に到達した。 2 争点及び当事者の主張(1) 原告らの主張ア平成10年10月の原告ら及び被告間の合意原告らは,平成10年10月19日,前訴の報酬金について,本件各弁護士報酬規則を参考にして落着時に請求する旨被告に説明し,被告がこれを了解したので,本件委任契約における報酬の定めについてはこれと同様の合意が成立した。 そして,後記ウの各事情に照らせば,前記合意に基づく報酬金額は,140億円に対する本件各弁護士報酬規則に基づく標準額である5億9574万9000円(消費税を含む。)を下回ることはない。 なお,被告が主張するような前訴の報酬金を本件各弁護士報酬規則どおりとはしない旨の明示の合意が成立したことはなく,その基礎となる事実関係は存しない。また,報酬金についても着手金と同額か,これに若干の増額をした金額とする旨の黙示の合意が成立したことはなく,その基礎となる事実関係も存しない 意が成立したことはなく,その基礎となる事実関係は存しない。また,報酬金についても着手金と同額か,これに若干の増額をした金額とする旨の黙示の合意が成立したことはなく,その基礎となる事実関係も存しない。原告らはそのような事実を知らないし,原告Cが関与した被告の広島宿泊所の閉鎖に伴う労務問題は,本件とは性質の異なる案件であるから,これを本件に援用することに合理性はない。 イ平成13年10月の原告ら及び被告間の合意原告らと被告は,平成13年10月24日,前訴の報酬金について,弁護士報酬規則,実勢価格,実現回収額等を総合勘案しつつ,相互に誠意をもって協議した上で算定した額を被告が原告らに対して支払う旨合意したので,これが本件委任契約における報酬の定めとなる。そして,後記ウの各事情に照らせば,この合意に基づく報酬金額は,140億円に対する本件各弁護士報酬規則に基づく標準額である5億9574万9000円(消費税を含む。)を下回ることはない。 なお,被告の主張するような報酬に関する合意が成立したことがないことは前同様である。 ウ弁護士報酬規則に基づく報酬金額の算定仮に本件委任契約において報酬金額が具体的に定められていなかったとしても,本件第1文書及び同第2文書の作成経緯,弁護士による訴訟の提起及び追行の受任の性質及び内容に照らすと,その報酬金額を算定するに当たっては弁護士報酬規則によることが合理的であるところ,次の各事情を総合勘案すれば,その金額は,140億円に対する本件各弁護士報酬規則に基づく標準額である5億9574万9000円(消費税を含む。)を下回ることはない。 (ア) 前訴における被告の請求金額(本訴関係)は277億9919万6852円であり,これに対する着手金標準額は5億5967万3937円であるところ,原告らは,被告に対し,3名合計で ることはない。 (ア) 前訴における被告の請求金額(本訴関係)は277億9919万6852円であり,これに対する着手金標準額は5億5967万3937円であるところ,原告らは,被告に対し,3名合計で3000万円しか請求しなかった。 原告らが,本件第1文書において,報酬金については,前記の事情を踏まえ,弁護士報酬規則を参考としつつ,その段階で請求するものとすると記載したのは,着手金額を低くした事情を踏まえ,減額要因がない場合には本件各弁護士報酬規則に基づいて報酬金を請求するという趣旨である。 (イ) 原告らは,前訴においてF株式会社から提起された反訴については弁護士報酬を一切請求していない。また,前訴は原告ら3名で共同して受任したところ,原告ら各人は被告に対してそれぞれ弁護士報酬を請求することができるのに,原告らはそのような請求をしていない。 (ウ) 被告は,前訴により,実際に140億円の経済的利益を得た。 (エ) 原告らは,和解成立までの係属期間3年を要した前訴を実質的には判決直前まで追行したところ,その争点は,前記1(2)コのとおり,株価連動債の性質,F株式会社の債務不履行の有無などであり,高度な主張立証,反論反証を要する難易度の高い訴訟であった。 なお,訴訟追行に当たって被告の職員の協力があったとしても,主張書面の起案等実際の訴訟活動を行ったのは原告らであり,被告が基本方針を決定していたものではないから,このことは減額要因とはならない。 (オ) 原告らは,被告に対し,報酬金について弁護士報酬規則によることを具体的に説明し,被告においてもこのことを知悉していたから,原告らの請求が信義に反することはない。 (カ) 原告らは,平成10年10月当時,被告の事務局長であったXから弁護士報酬規則どおりの支払は難しいとの説明を受けていないし,これを了承し 悉していたから,原告らの請求が信義に反することはない。 (カ) 原告らは,平成10年10月当時,被告の事務局長であったXから弁護士報酬規則どおりの支払は難しいとの説明を受けていないし,これを了承したこともない。原告らの行った中間金等の請求は弁護士報酬規則に則ったものであり,和解の打診に対する対応については従前から被告と打ち合わせていた方針に従ったにすぎず,本件訴訟の提起についても,従前の経緯に照らして話合いによる解決が見込まれなかったからであり,いずれも信義に反するものではない。 (キ) さらに,被告が公益目的の法人であることは,原告らの報酬額決定に影響を及ぼすものではないし,原告らが被告の主張するような報酬金と着手金を同額にすることが多いなどという説明を受けたことはなく,原告Cにおいてもそのようなことを知らない。 また,被告の示す着手金と報酬金の例をみても,報酬金の額は定額ではないばかりか,各事件について弁護士報酬規則を適用して算出した額の範囲内又はこれを超えて支払われているものが多い。 (ク) 原告Cが被告の顧問弁護士を務めていたことは,原告A及び原告Bの報酬額決定に関係するものではない。 (2) 被告の主張ア平成10年10月の合意について原告らの主張する合意は,弁護士報酬規則どおりに報酬金を支払うという内容ではない。 被告の事務局長であったXは,平成10年8月,原告Cに対して代理人を紹介するよう依頼した際,また,同月10日に原告Bに対して前訴の受任を依頼した際,両名に対し,弁護士報酬規則どおりの報酬金を支払うことは難しいのでその点を十分に理解してほしい旨説明し,これを受けて,原告Cは,Xに対し,電話により着手金は原告ら1人当たり各1000万円ずつ請求したい旨連絡した上で,本件第1文書を送付したのであるから,これにより遅くとも平 に理解してほしい旨説明し,これを受けて,原告Cは,Xに対し,電話により着手金は原告ら1人当たり各1000万円ずつ請求したい旨連絡した上で,本件第1文書を送付したのであるから,これにより遅くとも平成10年10月19日までに前訴の報酬金を弁護士報酬規則どおりとはしない旨の明示の合意が成立したもので,これは,当然に弁護士報酬規則に従って算定された金額よりもかなりの程度低額のものとすることを前提としている。 また,国や地方公共団体を当事者とする訴訟については,結果にかかわらず定型的に着手金と報酬金とを同額とする場合が多く,このことは,国及び地方公共団体のみならず,これに準ずる公益法人から訴訟を受任する弁護士においては事実たる慣習になっているということができる。被告においても,訴訟を弁護士に委任するときには,弁護士報酬規則によらず,着手金と報酬金を定型的に定めることが一般的であり,実際に同額にした事例も数件存在する。そして,被告の顧問弁護士であった原告Cは,このことを熟知し,被告の広島宿泊所の閉鎖に伴う労務問題の件について着手金及び報酬金をいずれも50万円とする提示を行った。これらのことから,被告は,本件第1文書が送付された段階で報酬金についても着手金と同額か,これに若干の増額をした金額となると認識し,原告Cも同様の認識を有していたから,同文書が送付された平成10年10月19日に,原告らと被告の間で,報酬金についても着手金と同額か,これに若干の増額をした金額とする旨の黙示の合意が成立した。 したがって,原告らの主張する合意が本件委任契約における報酬の定めとなることはない。 イ平成13年10月の合意について原告らが平成13年10月24日に被告との間で合意したと主張するその内容は,弁護士報酬規則どおりに報酬金を支払うというものではない。 また, めとなることはない。 イ平成13年10月の合意について原告らが平成13年10月24日に被告との間で合意したと主張するその内容は,弁護士報酬規則どおりに報酬金を支払うというものではない。 また,前記アのとおり,遅くとも平成10年10月19日までに,前訴の報酬金を弁護士報酬規則どおりとはしない旨の明示の合意が成立したばかりでなく,同日に,原告らと被告との間で,報酬金についても着手金と同額か,これに若干の増額をした金額とする旨の黙示の合意が成立したから,原告らの主張する平成13年10月24日になされた合意が本件委任契約における報酬に関する定めとなることはない。 ウ弁護士報酬規則に基づく報酬金額の算定について被告の主張する前記ア及びイの各合意が成立していなかったとしても,次の各事情に照らせば,前訴の報酬金を決定するに当たって弁護士報酬規則によることが合理的であるとはいえない。 (ア) 原告らと被告は,着手金について弁護士報酬規則を大幅に下回る合計3000万円とすることで合意したから,報酬金についても弁護士報酬規則による金額を大幅に減額すべきである。 原告らが,本件第1文書において,報酬金については,前記の事情を踏まえ,弁護士報酬規則を参考としつつ,その段階で請求するものとすると記載したのは,報酬金についても弁護士報酬規則どおりには報酬を請求しないとの趣旨である。 (イ) 弁護士報酬規則によれば,報酬金は最大でも着手金の2倍であり,多くの場合においては実際の回収額は請求額を下回るため,着手金と報酬金には大きな違いが生じないことが多いから,前訴の報酬金も,和解金額が請求額の約50パーセントであったので,着手金と同額となるべきである。 (ウ) 原告らは,被告に対し,報酬金についての説明を行うべき委任契約上の義務を負っているところ,事前に前訴の報酬 も,和解金額が請求額の約50パーセントであったので,着手金と同額となるべきである。 (ウ) 原告らは,被告に対し,報酬金についての説明を行うべき委任契約上の義務を負っているところ,事前に前訴の報酬金について具体的に説明しなかったから,信義則上弁護士報酬規則どおりの報酬金を請求することはできず,大幅な減額がされるべきである。 (エ) 原告らは,平成10年10月当時,Xからの弁護士報酬規則どおりの支払は難しいとの説明を了承したかのような言動をし,判決言渡を目前に控えて原告らを解任することができない時期になって事前の合意にない9000万円を中間金と称して請求し,被告がこれを断ると,控訴審着手金等の名目でやはり9000万円を請求し,同年11月7日に裁判所から和解の打診があったにもかかわらず被告に対する報告を怠り,被告の意思を確認することなく100億円の和解案の提示を独断で断って150億円との対案を出し,被告理事からの2度にわたる話合いの申入れに対して理事長又は代理人弁護士としか話をしないとしてこれをいずれも拒否して本件訴訟を提起するなど,信義に反する行動を取ってきたから,原告らの請求は信義則上認められるべきではない。 (オ) 被告は,公益目的の法人であり,予算の適正な執行の確保の観点から,弁護士報酬規則によらず,着手金と報酬金を定型的に定めることが一般的であり,実際に同額にした例もあり,原告Cもそのことを知悉している。 (カ) 原告Cは被告の顧問弁護士であり,顧問弁護士が訴訟を担当する場合には弁護士報酬規則で定める額より報酬金を大きく減額するのが一般的な社会通念である。 (キ) なお,前訴の審理期間は標準的なものであり,その難易度についても,被告が金融専門家との勉強会の開催,損害額の算定,金融監督庁からの情報収集,F株式会社の財務状況調査を行う 社会通念である。 (キ) なお,前訴の審理期間は標準的なものであり,その難易度についても,被告が金融専門家との勉強会の開催,損害額の算定,金融監督庁からの情報収集,F株式会社の財務状況調査を行うなどしてその主張立証の重要部分を担い,基本方針を決定していたし,争点自体も特段複雑ではなかったから,これらの点に照らしても報酬金額は着手金額と同額とするのが相当である。 (ク) また,前訴の和解成立には前記1(2)サの金融監督庁によるF株式会社に対する行政処分が大きく寄与したのであって,原告らの訴訟活動によるものではないから,この観点からも報酬金額は減額されるべきである。 第3 当裁判所の判断 1 前判示第2の1の各事実のほか,証拠(甲第6号証の1の2,5,2の3,第8,第9号証,乙第3,第4号証,第9号証,第12ないし第18号証,第21号証,証人X,証人Y,原告C本人)及び弁論の全趣旨によれば,次の各事実が認められる。 (1) 原告Cは,前訴に先立つ平成9年8月1日,被告の広島宿泊所の閉鎖に伴う労務問題について,被告が同原告に対して着手金として50万円,報酬金として50万円を支払うことを内容とする報酬契約を締結した。 (2) 原告Cは,前判示第2の1(2)エの本件第1文書の送付に際し,当時被告の事務局長であったXら職員に対し,同文書中の本件各弁護士報酬規則を参考とすることの意味について,本件各弁護士報酬規則では報酬金が確保した経済的利益に一定の割合を乗じて算出されることとされており,これに従えば前訴の報酬金が4億ないし5億円程度になることもあり得ることを含めて詳細な説明をしておらず,報酬契約書を別に作成することもしなかったが,Xは,弁護士報酬規則について,弁護士報酬が訴額に一定の割合を乗じて算出されること自体は知っており,X及び当時被告の総務 を含めて詳細な説明をしておらず,報酬契約書を別に作成することもしなかったが,Xは,弁護士報酬規則について,弁護士報酬が訴額に一定の割合を乗じて算出されること自体は知っており,X及び当時被告の総務部総務課課長補佐であったYやその他の被告の職員において,同原告に対し,本件第1文書や弁護士報酬規則の内容について質問をしたり,意見を述べることもなかった。 (3) 原告らは,平成10年12月22日の前訴の第1回口頭弁論期日後,被告の職員と打合せを行い,被告に対し,金融商品の専門家に株価連動債のレクチャーをしてもらいたい旨要請した。 これを受けて,被告は,平成11年1月19日,同年3月1日及び同月18日に,金融商品に関する専門家を招き,原告らに対する株価連動債についての説明会を実施した。 (4) 被告の職員は,同年2月ころ,前判示第2の1(2)ケの請求の拡張申立てのための損失額を計算して一覧表を作成し,原告らはこの一覧表を請求の趣旨拡張申立書に添付して前訴の受訴裁判所に提出した。 (5) 被告は,同年3月10日,F株式会社の準備書面(一)に対する検討会を開催し,原告らに対し,被告において作成した「F株式会社準備書面に対する反論」と題する書面に基づき説明を行い,その後,原告らからの質問に答えた。 (6) 原告Bは,同年4月19日,被告に対し,準備書面(二)の案を送付し,被告の資産運用の方法である自家運用と委託運用との区別の根拠となる通達があれば教えてほしい旨及び株価連動債に対する格付けというものがあるのかという点について金融商品に関する専門家に聞いてほしい旨要請した。 (7) 前訴の受訴裁判所は,平成13年3月ころ,F株式会社による被告に対する和解金100億円ないし150億円の支払を内容とする和解案を提示した。 被告は,同年4月,原告らに対し,同月27日 請した。 (7) 前訴の受訴裁判所は,平成13年3月ころ,F株式会社による被告に対する和解金100億円ないし150億円の支払を内容とする和解案を提示した。 被告は,同年4月,原告らに対し,同月27日の期日に臨むに当たり,和解について,請求額(請求の減縮申立前)の2分の1である144億円以上とすることが被告の希望であり,裁判所からさらに譲歩を求められた場合には,144億円と100億円の間の金額である122億円以上とすることまでは譲歩してもよく,上記の案で合意できない場合であっても,和解を不調とすることはせず,持ち帰って検討することとされたい旨記載したメモを交付した。 (8) 原告Cは,前判示第2の1(1)スの同年9月26日付けの文書送付後の同年10月10日,被告を訪れ,同文書記載の中間金の趣旨について説明したが,同月19日,被告から,前記中間金の支払には応じられない旨の回答を受けた。 (9) そこで,原告Cは,前判示第2の1(2)セの同年10月22日付け文書において,被告の前記回答については遺憾であること,本件各弁護士報酬規則によれば,弁護士報酬は1件ごとに定めるものとし,裁判上の事件は審級ごとに1件とするが,民事事件について同一弁護士が引き続き上訴審を受任したときの報酬金については,特に定めのない限り,最終審の報酬金のみを受けるとされていること,この定めによれば,控訴審を受任する際には,同規則の定めに従い,訴額が3億円を超えることから訴額に2パーセントを乗じた額に369万円を加算した額(30パーセントの範囲内で増減することができる。)を控訴審の着手金として請求することになること,第一審判決を受けて強制執行を受任する場合には,同規則によれば,民事執行事件の着手金及び報酬金は本案事件に引き続き受任したときでも本案事件の着手金及び報酬金とは別に 金として請求することになること,第一審判決を受けて強制執行を受任する場合には,同規則によれば,民事執行事件の着手金及び報酬金は本案事件に引き続き受任したときでも本案事件の着手金及び報酬金とは別に受けることができるが,着手金は経済的利益の額を基準として算出された額の3分の1とするとされていることから,これに基づいて請求することになること,同年9月26日の原告らの提案は,上記の本件各弁護士報酬規則を踏まえて第一審の着手金と同様に極めて低額の報酬額を設定したものであるが,正式に原告ら1人当たり3000万円を請求すること,落着時の報酬金の額は,同規則により,確保した経済的利益の額に4パーセントを乗じた額に738万円を加算した額(30パーセントの範囲内で増減することができる。)であることを確認したいことを併せ記載し,これを被告に送付した。 (10) 原告Cと当時被告の財務部資産運用課長であったYは,報酬金について話し合い,Yにおいて前判示第2の1(2)ソの本件第2文書の原案を作成して同原告に送付したところ,同原告においてもこれを確認した上,同文書中の実勢価格という文言の意味についてYに尋ね,Yから一般的に弁護士が前訴において請求するであろう報酬金額であるとの答えを受けて,原告らと被告間で同文書が作成された。 このとき,原告Cは,Yら被告の職員に対し,弁護士報酬規則に基づく報酬のおおよその額を示すなどして具体的に説明することはしなかったが,Yから原告Cに対して前訴の報酬金を本件各弁護士報酬規則による標準額を上限として定めるとか,これよりも大幅に低い額とするなどといった話がされたことはなく,Yにおいても本件各弁護士報酬規則が前訴の報酬金の額を定めるに当たっての勘案要素となることは認識していた。 (11) 原告らは,同年11月7日,前訴の受訴裁判所から などといった話がされたことはなく,Yにおいても本件各弁護士報酬規則が前訴の報酬金の額を定めるに当たっての勘案要素となることは認識していた。 (11) 原告らは,同年11月7日,前訴の受訴裁判所から出頭を求められて赴いたところ,F株式会社から同年3月に裁判所案として提示された金額のうち100億円であれば受諾する用意があるとの申入れがあったこと,この和解案を受諾する余地があるか否かについて原告らの見解を確認したいことを裁判所から告げられ,裁判所案の上限金額であり被告から了解を得ている額でもある150億円での和解を裁判所に申し入れた。 前訴の受訴裁判所は,同年11月9日,原告Bに対し,裁判所案として和解金140億円の支払をF株式会社に提示したところ,受諾するとの回答があったので,被告においても検討するように求めた。 原告Bは,同日,電話により被告にこれを伝えた上,原告らにおいて,同月12日に被告に対して上記の経緯及び裁判所の和解案は合理的なものであると考える旨書面で報告するとともに,前判示第2の1(1)チの文書を送付した。 (12) 被告は,同年12月12日及び同月18日,原告らに対し,前訴の報酬金について話し合うために面談を申し入れたが,原告らは,被告の理事長又は代理人弁護士との面談でなければ応じられないとしてこれを断った。 2 以上の各事実及び前判示第2の1の各事実に基づいて,本件委任契約における報酬に関する当事者間の合意の存否及びその内容について検討する。 (1) 本件委任契約における報酬の定めについては,当事者間で,金額を明示した合意や,本件各弁護士報酬規則による標準額とするなど,金額の決定方法を確定した合意がされていないことは,前判示の各事実及び弁論の全趣旨に照らして明らかであって,原告らの主張も,平成10年10月に本件各弁護士報酬規則 護士報酬規則による標準額とするなど,金額の決定方法を確定した合意がされていないことは,前判示の各事実及び弁論の全趣旨に照らして明らかであって,原告らの主張も,平成10年10月に本件各弁護士報酬規則を参考にして落着時に請求する旨の合意が成立した,あるいは平成13年10月24日に弁護士報酬規則,実勢価格,実現回収額等を総合勘案しつつ,相互に誠意をもって協議した上で算定した額を被告が原告らに対して支払う旨の合意が成立したというものである。 そこで,報酬金額を定める基準に関する合意内容について検討するに,原告らが平成10年10月19日に前訴の報酬金については本件各弁護士報酬規則を参考としつつ落着時に請求する旨の本件第1文書を被告に送付したこと,その際,被告の担当者であったXにおいて,本件各弁護士報酬規則の内容について,訴額を基準として弁護士報酬を算出するものであることを漠然としてではあるが理解した上で,X及びY並びにその他の被告の職員において,本件第1文書について異議を述べることはなく,被告が原告らとの間で本件委任契約を締結したことからすれば,平成10年10月19日ころ,原告らと被告との間で,前訴の報酬金について本件各弁護士報酬規則を参考としつつ両者協議の上で定める旨の合意が成立したと認めることができる。 そして,平成13年10月24日に原被告間で前訴の報酬金については判決確定後に弁護士報酬規則,実勢価格,実回収額等を総合勘案しつつ,相互に誠意をもって協議した上で算定した額を報酬金として支払うこととする旨の本件第2文書が作成されたことは,原被告間で同日にその旨の合意が成立したことを示すものであり,原告Cがこれに先立つ同月22日に本件各弁護士報酬規則によれば前訴の報酬金が確保した経済的利益の額に4パーセントを乗じた額に738万円を加算した額(3 日にその旨の合意が成立したことを示すものであり,原告Cがこれに先立つ同月22日に本件各弁護士報酬規則によれば前訴の報酬金が確保した経済的利益の額に4パーセントを乗じた額に738万円を加算した額(30パーセントの範囲内で増減することができる。)となる旨の書面を被告に送付したこと,本件第2文書は被告の担当職員であるYが原案を作成したものであること,同文書作成時に,Yから原告Cに対して前訴の報酬金を本件各弁護士報酬規則によりも低額とするなどの話が出なかったこと,Yにおいても本件各弁護士報酬規則が前訴の報酬金の額を定めるに当たっての勘案要素となること自体は理解していたことなどを併せ考慮すれば,平成13年10月24日に,原告らと被告との間で,前訴の報酬金に関する従前の合意をより具体化し,本件各弁護士報酬規則,実勢価格,実回収額等を総合勘案しつつ定める旨の合意が成立したと認めることができる。 (2) この点に関し,被告は,Xが原告らに対して弁護士報酬規則どおりの報酬金を支払うことは難しいのでその点を十分に理解してほしい旨説明し,これを受けて,原告Cが本件第1文書を送付したのであるから,遅くとも平成10年10月19日までに前訴の報酬金を弁護士報酬規則どおりとはしない旨の明示の合意が成立し,同規則に従って算定された金額よりもかなり低額のものとすることが前提とされている旨主張し,Xの証言及び陳述書(乙第20号証)にはこれに副う部分もある。 しかし,原告Cは,本人尋問及び陳述書(甲第9号証)において,Xからそのような発言があったことを否定しており,その供述内容には不自然,不合理な点は見当たらない。また,格別詳しい知識がなくとも前訴の訴額に照らして相当高額になることが考えられる弁護士報酬金額に関することであるのに,Xの供述を裏付けるような書面は当事者間で作 不自然,不合理な点は見当たらない。また,格別詳しい知識がなくとも前訴の訴額に照らして相当高額になることが考えられる弁護士報酬金額に関することであるのに,Xの供述を裏付けるような書面は当事者間で作成されていない。そして,本件第1文書の文言は,Xの供述するような依頼内容と異なって理解されるにもかかわらず,Xは,前判示のとおり本件第1文書送付後に原告Cに対して異議を述べていない上,証人尋問において,この異議を述べなかったことについて合理的な説明をしていないばかりでなく,報酬の定めについて本件各弁護士報酬規則によらないことを理事長,担当理事,後任者等に説明や申し送りをしておらず,内部的な記録にとどめてもいないというのであるから,前判示の原告Cの供述を排斥してXの供述のみを信用することは到底できず,他に被告が主張するような前訴の報酬金を弁護士報酬規則どおりとはしない旨の明示の合意があったことを認めるに足りる証拠はない。 また,被告は,平成10年10月19日に,原告らと被告との間で,報酬金についても着手金と同額か,これに若干の増額をした金額とする旨の黙示の合意が成立した旨主張し,Xの証言及び陳述書(乙第20号証)にはこれに副う部分もある。 しかし,被告が援用する公益法人としての特殊性に関しては,弁護士が地方公共団体から受任した訴訟において着手金と報酬金を同額に定めた事例が1件存することは証拠(乙第22号証)により認められるものの,これのみをもって国や地方公共団体を当事者とする訴訟について着手金と報酬金を同額とすることが一般化されているとすることはできないし,このことが被告のような公益法人から訴訟を受任する弁護士において事実たる慣習となっていると認めることもまた困難である。また,被告が弁護士に委任した訴訟の着手金と報酬金に関する証拠(乙第11号証) ,このことが被告のような公益法人から訴訟を受任する弁護士において事実たる慣習となっていると認めることもまた困難である。また,被告が弁護士に委任した訴訟の着手金と報酬金に関する証拠(乙第11号証)によっても,着手金と報酬金を同額ないし近似した額としているものばかりではない上,訴額や確保した経済的利益の額との関係からみて弁護士報酬規則による標準額を下回る額が定められている事例が多いとみることもできないから,被告において弁護士報酬規則によらずに着手金と報酬金を定型的に又は同額にすることが一般的であると認めることもできない。さらに,原告Cが被告の広島宿泊所の閉鎖に伴う労務問題について着手金と報酬金を同額とする報酬契約を締結したことは前判示のとおりであるが,これは,訴訟に関する委任契約ではないし,同原告の本人尋問の結果によれば,同原告が被告との間で顧問契約を締結した後に訴訟を受任したのは前訴のみであるというのであるから,原告Cと被告との間で訴訟の着手金と報酬金を同額にすることが原則化されていたとすることはできず,原告Cがそのように認識していたとすることもまたできない。加えて,報酬金を着手金と同額とする旨の書面が作成されていないばかりか,原告Cの本人尋問の結果及びXの証言によれば,Xは,報酬金についても着手金と同額の3000万円とする旨の会話を原告Cとの間でしたことはなく,被告の理事長,担当理事,後任者に報告や申し送りをしたことや,内部の記録にとどめたこともなく,原告CがX以外の被告の職員からそのような話をされたこともないと認めることができる。 以上の諸点にかんがみれば,被告が主張する黙示の合意の基礎となる事実を認めることはできず,他にこのような事実があることを認めるに足りる証拠はないから,原告ら及び被告間で平成10年10月19日に報酬金について 点にかんがみれば,被告が主張する黙示の合意の基礎となる事実を認めることはできず,他にこのような事実があることを認めるに足りる証拠はないから,原告ら及び被告間で平成10年10月19日に報酬金についても着手金と同額か又はこれに若干の増額をした金額とする旨の黙示の合意が成立したとの被告の主張を採用することはできない。 (3) よって,原告らと被告との間で,本件委任契約における報酬の定めについて,平成10年10月19日ころ,本件各弁護士報酬規則を参考としつつ定める旨の合意が成立し,さらに,平成13年10月24日に,本件各弁護士報酬規則,実勢価格,実回収額等を総合勘案しつつ定める旨の合意が成立したものと認められ,この認定を妨げるような事実関係は存しない。 3 次に,以上の認定事実を前提として,本件における具体的な報酬金額について判断する。 (1) 原告ら及び被告間の前判示の報酬の定めに関する合意に照らせば,前訴の報酬金の相当額を算定するに当たって,本件各弁護士報酬規則が重要な勘案要素となることはいうまでもない。しかしながら,他方,前判示のとおり報酬金額を本件各弁護士報酬規則による標準額そのものとするとの合意はされていないのであるから,本件各弁護士報酬規則によって求められる標準額を第一次的指標としつつも,前判示の合意の内容となっている実勢価格,実回収額をも勘案し,さらには,事件の難易,訴額,前訴のために費やした労力の程度,委任者との従前からの職務上の関係,受任の経緯,事件の進行状況,事件終結時のてんまつ等諸般の事情も斟酌してこれを定めることが相当である(最高裁判所昭和37年2月1日第一小法廷判決・民集16巻2号157頁参照)。 (2) そこで,このような観点から,本件において斟酌すべき諸事情について検討する。 ア弁護士報酬規則によって求められる 最高裁判所昭和37年2月1日第一小法廷判決・民集16巻2号157頁参照)。 (2) そこで,このような観点から,本件において斟酌すべき諸事情について検討する。 ア弁護士報酬規則によって求められる標準額については,証拠(甲第4,第5号証)によれば,本件各弁護士報酬規則においては,民事事件の報酬金は委任事務処理により確保した経済的利益の額を基準として算定するものとされていること,経済的利益が300万円以下の部分についてはその16パーセント,300万円を超え3000万円以下の部分についてはその10パーセント,3000万円を超え3億円以下の部分についてはその6パーセント,3億円を超える部分についてはその4パーセントと定められていること,上記により算定された金額について事件の内容により30パーセントの範囲内で増減額することができるとされていることがそれぞれ認められる。 また,被告は,本件和解により和解金140億円の債務名義を取得していることから,これを原告らの委任事務処理により確保した経済的利益とみることができる。 そうすると,本件各弁護士報酬規則によれば,この140億円についての報酬金の標準額は,5億6738万円であると算出されることとなり,これに消費税相当額を加算すれば5億9574万9000円となる。 そこで,本件においては,上記金額を基準としつつ,これを増減すべき事情について検討する。 イ原告らと被告との合意において勘案要素とされている実勢価格については,原告CとYの間では,前判示のとおり,これが一般的に弁護士が前訴において請求するであろう報酬金額を指すものと認識していたとみることができる。 そして,Xの証言並びにYの証言及び陳述書(乙第21号証)によれば,同人らが一般的に弁護士報酬は弁護士報酬規則よりも低額になることが多いと認識していた 額を指すものと認識していたとみることができる。 そして,Xの証言並びにYの証言及び陳述書(乙第21号証)によれば,同人らが一般的に弁護士報酬は弁護士報酬規則よりも低額になることが多いと認識していたことが窺われる。もっとも,同人らがこのように認識していたことの具体的な根拠は何ら説明されていない。 他方,原告Cは,本人尋問において,弁護士報酬を弁護士報酬規則に定める額より低額にしていることが多いという話は聞いていないし,本件における請求額は本件各弁護士報酬規則に基づくものであって,一般的に弁護士が請求するであろう報酬金額であると認識していると述べているほか,前判示の被告が弁護士に委任した訴訟の着手金と報酬金に関する証拠(乙第11号証)その他本件において提出された全証拠に照らしても,弁護士が弁護士報酬規則により算出される額よりも低額の報酬金を請求することが一般的であるとまで認めることは困難であるから,実勢価格という観点からは,本件各弁護士報酬規則による標準額が高額にすぎるとまでいうことはできない。 ウ前同様合意において勘案要素とされている実回収額については,被告が本件和解において和解金140億円の債務名義を得ていることは前判示のとおりであり,弁論の全趣旨によれば,被告が実際にその支払を受けたと認められるので,実回収額は,前判示アにおいて本件各弁護士報酬規則による算定の基準とした額である140億円と同額であるということができるから,この点で本件各弁護士報酬規則による標準額が高額にすぎるとすることもできない。 エ次に,事件の難易,訴額及び原告らが費やした労力の程度等についてみるに,前判示第2の1(2)の各事実に照らせば,前訴は,株価連動債という金融商品に関連する損害賠償請求事件であり,その訴額は最終的に約277億円となり,争点も多岐にわたり, た労力の程度等についてみるに,前判示第2の1(2)の各事実に照らせば,前訴は,株価連動債という金融商品に関連する損害賠償請求事件であり,その訴額は最終的に約277億円となり,争点も多岐にわたり,訴え提起から弁論終結まで約2年9か月を要し,判決言渡期日の指定がされた後に本件和解が成立したものであるから,事件として平易なものであったとすることはできないし,原告らの前訴に費やした労力を少なかったとみることもできない。 他方,被告において,原告らの要請に応じて金融商品に関する専門家を招いて数度の説明会を実施し,請求の拡張のために損失額を計算して一覧表を作成し,F株式会社提出の準備書面に対する反論の素案を提示するなどして,訴訟活動の一翼を担う作業を行ったことは前判示の各事実から明らかであって,これにより原告らが前訴に割くべき労力を相当程度軽減できたことは否定し難いところであるから,この点は,前訴の報酬金相当額を算定するに当たっての減額要素として考慮するのが相当である。 なお,金融監督庁がF株式会社に対して行政処分を課したことは前判示のとおりであるが,このことが本件和解の成立に寄与したか否かは不明というほかなく,和解の成立が原告らの訴訟活動によるものではないとみることはできないから,これを報酬金相当額の減額要素として斟酌することはできない。 オさらに,委任者との従前からの職務上の関係,受任の経緯,事件の進行状況,事件終結時のてんまつ等についてみることとする。 (ア) まず,原告Cが前訴提起より前から被告との間で法律顧問契約を締結し,その顧問弁護士を務めていたことは前判示のとおりであるが,証拠(乙第8号証,原告C本人)及び弁論の全趣旨によれば,原告Cが同契約により被告から受託したのは人事及び労務に関する法律相談に限られており,その範囲を超えて法律上 いたことは前判示のとおりであるが,証拠(乙第8号証,原告C本人)及び弁論の全趣旨によれば,原告Cが同契約により被告から受託したのは人事及び労務に関する法律相談に限られており,その範囲を超えて法律上の処理を受任するときはその都度委任契約を締結するものとされていたことが認められるから,同契約が前訴のような訴訟の処理を包含するものとすることはできず,他に顧問弁護士が訴訟を担当する場合には弁護士報酬規則に定める額より報酬金を大幅に減額するのが一般的な社会通念であると認めるに足りる証拠はないから,報酬金相当額の算定に影響するものではなく,これを減額要素とすることはできない。 (イ) 次に,前訴提起に際して,原告らが本件各弁護士報酬規則に基づく標準額よりはるかに低額な着手金(原告ら3人合計で3000万円)しか請求しなかったことは前判示のとおりであるところ,原告Cは,陳述書(甲第9号証)及び本人尋問において,原告らとしては,訴え提起段階においては訴訟の成行きが不明であることから着手金を低額にし,その代わりに報酬金については原則として本件各弁護士報酬規則により算出される額を請求する意図であった旨述べており,本件第1文書は,文脈からすればそのような趣旨を表したものとみることもできる。 他方,被告は,着手金について本件各弁護士報酬規則により算出される額よりはるかに低額なものとされたのであるから,報酬金についてもこれと同額とするか,大幅に減額すべきであると主張するところ,そのような合意が当事者間に成立したと認めることができないことは前判示のとおりであるが,X及びYの各陳述書(乙第20,第21号証)及び各証言からは,少なくとも被告において着手金が低額であったことから報酬金についても低額にしてもらえるとの期待があったことは否定できないところである。 このように, 陳述書(乙第20,第21号証)及び各証言からは,少なくとも被告において着手金が低額であったことから報酬金についても低額にしてもらえるとの期待があったことは否定できないところである。 このように,着手金の額が報酬金の額を定めるに当たってどのように影響するかについては,当事者それぞれの立場の違いに起因する認識のそごがあることは否めず,そのいずれの考え方を妥当であるとすることもできないので,この点をもって前訴の報酬金相当額を算定するに当たっての増額要素とすることも減額要素とすることも相当でないといわざるを得ない。 そして,前判示の事実経過及び弁論の全趣旨によれば,原告らが反訴についての弁護士報酬を請求していないこと及び各人それぞれに標準額全額を請求することをしていないことが認められるが,この点の評価についても着手金について判示したところと異なるところはないから,報酬金相当額の算定に当たって斟酌するのは相当でない。 (ウ) 次いで,原告らの報酬金に関する説明の過程についてみるに,原告Cが受任の際の本件第1文書送付時にXらに対して本件各弁護士報酬規則を参考とすることの意味や本件各弁護士報酬規則の内容及び効果について具体的に説明しなかったこと,報酬契約書も作成しなかったこと,本件第2文書作成時にもYら被告の職員に対して弁護士報酬規則に基づく報酬額について具体的に説明しなかったことは前判示のとおりであり,報酬金額を本件各弁護士報酬規則に基づき算定することは示しているものの,考え得る数値を示すなどして被告が具体的なイメージを持つことができるような形での説明を行っていない。証拠(乙第11号証)によれば,被告は従前何回か弁護士に委任した上での訴訟を経験していることが認められるけれども,被告の担当者らが弁護士報酬規則について詳しい知識を有していたと認めるこ 行っていない。証拠(乙第11号証)によれば,被告は従前何回か弁護士に委任した上での訴訟を経験していることが認められるけれども,被告の担当者らが弁護士報酬規則について詳しい知識を有していたと認めることはできないのであって,しかも,前訴はその訴額が極めて高額であり,それに対応して弁護士報酬も相当高額になることが予想されるのであるから,それだけ被告に対して慎重に対応することが要求されるものというべきであり,原告らの被告に対する説明が不十分であったことは否めない。 他方,原告Cは,本件第2文書作成に先立つ平成13年10月22日に,報酬金の額が本件各弁護士報酬規則によって確保した経済的利益の額に4パーセントを乗じた額に738万円を加算した額(30パーセントの範囲内で増減することができる。)となる旨通知していること,原告らは,同年11月12日に,前記和解案を受諾した場合の本件各弁護士報酬規則により算定した報酬金の標準額は5億6738万円となるが,20パーセント強減額して4億5000万円(原告ら1人につき1億5000万円)を請求する旨通知し,その後,被告が本件和解に応じたこともまた前判示のとおりであるが,この時期は,弁論終結後かつ判決言渡日の直前,又は,和解成立直前であって,被告において原告らに不満を抱いたとしても,解任等の対応をすることが困難な時期であることは明らかであるから,この時点における説明をもって前判示の説明の不十分さを補えるものではない。 以上のような原告らの報酬金についての説明の状況に照らせば,本件各弁護士報酬規則による標準額そのものを請求することは被告にとって酷であるといい得るから,この点は前訴の報酬金相当額を算定するに当たっての減額要素として考慮すべきである。 (エ) そして,当事者間の報酬金額に関する交渉経緯についてみるに,前判示 ことは被告にとって酷であるといい得るから,この点は前訴の報酬金相当額を算定するに当たっての減額要素として考慮すべきである。 (エ) そして,当事者間の報酬金額に関する交渉経緯についてみるに,前判示のとおり,原告らが一度は標準額から20パーセント強減額した4億5000万円(原告ら1人につき1億5000万円)を請求していることからすれば,被告においてこれ以上の額の請求を受けることはないと考えたであろうと推認するに難くないから,前訴の報酬金相当額を算定するについては,この金額を上限としてみるのが当事者間の交渉経緯に照らして妥当である。 (オ) なお,被告は,原告らによる平成10年10月当時の言動,中間金の請求,控訴審着手金等の請求,和解に関する対応,話合いの拒否,本件訴訟の提起などの経過について,信義則に反するとして,これが相当報酬額の算定に影響すると主張する。 しかし,平成10年10月当時にXが弁護士報酬規則どおりの報酬金の支払は難しいと原告らに伝えたこと自体を認めることができないことは前判示のとおりであるから,この点に関する原告らの言動についての主張は理由がない。 また,中間金の請求及び控訴審着手金等の請求については,前訴の第一審判決を目前にし,控訴や強制執行について検討すべき時期において,原告らがこのような事項を確定しておく必要があると考えたことを不当とすることはできず,前記説明の不十分さからして被告において突然の請求との印象を受けたことも想像できなくはないが,この点をもって減額要素となるほどの不誠実さの徴表とすることも相当でない。 さらに,和解に関する対応については,原告Cの本人尋問の結果によれば,平成13年11月7日に前訴の受訴裁判所から受けた連絡は,代理人限りでとの条件が付されていたというのであって,前判示の事実経過からすれば,原 解に関する対応については,原告Cの本人尋問の結果によれば,平成13年11月7日に前訴の受訴裁判所から受けた連絡は,代理人限りでとの条件が付されていたというのであって,前判示の事実経過からすれば,原告らの対応も従前の被告の意向に副うものであるということができるし,被告に対する報告が遅延したとみることもできないから,ここで不適切な点があったとすることはできない。 加えて,原告らによる話合いの拒否と本件訴訟の提起については,やや性急に事を運んだ感もないではないが,前判示の事実経過からは,双方の言い分に大きな隔たりがあり,被告の態度も頑なであったことが窺えるから,原告らの対応が不当であるとはいえない。 以上のように,被告の主張する経過をもって信義に反するものと評価することはできないから,これらの点をもって前訴の報酬金相当額を減額すべき要素として斟酌することはできない。 カなお,被告は公益目的の法人であることを報酬金相当額を算定するに当たって考慮すべきであると主張するが,このような法人について,報酬金を定型的又は着手金と同額とする一般的慣行が認められないことは前判示のとおりであり,訴訟委任とはいっても,その実体法的側面においては私法上の契約の一つであって,何ら特殊性を有するものではないから,契約相手が利潤の追求を目的とする企業でないとしても,報酬金を算定するに際して異なる取扱いをする合理性はないというべきである。 (3) 以上の諸点を総合すると,被告が取得した和解金140億円に対する本件各弁護士報酬規則による報酬金標準額5億6738万円を参考としつつも,当事者間の交渉経緯にかんがみて,原告らが従前提示した標準額から20パーセント強減額した4億5000万円を上限とすることとし,さらに,原告らの訴訟活動に対する被告の協力による労力の軽減,原告らの具 当事者間の交渉経緯にかんがみて,原告らが従前提示した標準額から20パーセント強減額した4億5000万円を上限とすることとし,さらに,原告らの訴訟活動に対する被告の協力による労力の軽減,原告らの具体的報酬金額についての説明の不十分さなどを報酬金相当額を算定するに当たっての減額要素として考慮し,前記標準額から5割減額した2億8369万円をもって前訴の報酬金とするのが相当である。 そうすると,被告は,原告らに対し,これに消費税相当額を加算した2億9787万4500円を前訴の報酬金として支払うべきであるところ,原告らの請求は,原告ら1人につき報酬金相当額の3分の1を支払うことを求めるものであるから,原告ら1人につき9929万1500円を支払うべきこととなる。 4 以上の次第で,原告らの請求は,被告に対し,それぞれ9929万1500円及びこれに対する平成14年1月19日から支払済みまで民法所定の年5分の割合による遅延損害金を支払うことを求める限度で理由があるから,上記部分を認容し,その余は失当としていずれも棄却することとし,訴訟費用の負担につき民事訴訟法61条,64条本文,65条1項を,仮執行の宣言につき同法259条1項をそれぞれ適用して,主文のとおり判決する。 東京地方裁判所民事第49部裁判長裁判官齋藤隆裁判官古財英明裁判官溝口理佳

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