- 1 -主文 本件各控訴並びに一審原告らの当審における請求の拡張及び訴訟の承継に基づき,別紙当事者等目録記載の原告番号104P1,同229P2,同230P3,同231P4及び同245P5の各一審原告並びに被控訴人P6の請求に関する部分を除き,原判決を次のとおり変更する。 (1)一審被告は,別紙認容金額一覧表の「氏名」欄記載の一審原告らに対し,同別紙の「認容金額」欄記載の各金員及びこれらに対する昭和62年4月1日から支払済みに至るまで年5分の割合による金員を支払え。 (2)別紙当事者等目録記載の原告番号13P7,同85P8,同146P9,同210P10及び同261P11の各一審原告の各請求並びに別紙認容金額一覧表の「氏名」欄記載の一審原告らのその余の請求をいずれも棄却する。 別紙当事者等目録記載の原告番号104P1,同229P2,同230P3,同231P4及び同245P5の各一審原告の各控訴(当審において拡張した請求を含む。)及び一審被告の被控訴人P6に対する控訴をいずれも棄却する。 別紙原状回復目録の「氏名」欄記載の各一審原告は,一審被告に対し,同別紙の「返還金額」欄記載の金員及びこれに対する平成17年9月16日から支払済みまで年5分の割合による金員を支払え。 訴訟費用(民事訴訟法260条2項に基づく申立てに関する費用を含む。)は,第1,2審を通じてこれを20分し,その1を一審被告の,その余を一審原告ら及び被控訴人P6の各負担とする。 この判決は,1項(1)及び3項に限り,仮に執行することができる。 事実及び理由 第1控訴の趣旨 一審原告ら(1)原判決中,一審原告ら敗訴部分を取り消す。 (2)主位的請求- 2 -ア別紙当事者等目録記載の原告番号1ないし46,48ないし72,74ないし115,117, 訴の趣旨 一審原告ら(1)原判決中,一審原告ら敗訴部分を取り消す。 (2)主位的請求- 2 -ア別紙当事者等目録記載の原告番号1ないし46,48ないし72,74ないし115,117,119ないし125,127ないし152,154ないし167,169ないし246,248ないし265,267ないし279,281ないし285,288ないし290の各一審原告らと一審被告との間にそれぞれ雇用関係の存在することを確認する。 イ一審被告は,別紙当事者等目録記載の原告番号1ないし46,48ないし72,74ないし115,119ないし125,127ないし138,140ないし152,154ないし167,169ないし246,248ないし265,267ないし279の各一審原告らに対し,それぞれ別紙未払賃金目録1「請求金額」欄記載の各金員に1000万円を加えた各金員及び平成2年5月から同14年1月までの間に弁済期の到来した同目録「基本給」欄記載の各金員に対する各弁済期の翌日(毎月21日)から各支払済みまで年5分の割合による金員を支払え。 ウ一審被告は,別紙当事者等目録記載の原告番号117,139,281ないし285の各一審原告らに対し,それぞれ別紙未払賃金目録2「請求金額」欄記載の各金員及び平成2年5月から同15年9月までの間に弁済期の到来した同目録「基本給」欄記載の各金員に対する各弁済期の翌日(毎月21日)から各支払済みまで年5分の割合による金員を支払え。 エ一審被告は,別紙当事者等目録記載の原告番号288ないし290の各一審原告らに対し,それぞれ別紙未払賃金目録3「請求金額」欄記載の各金員及び平成2年5月から同15年10月までの間に弁済期の到来した同目録「基本給」欄記載の各金員に対する各弁済期の翌日(毎月21日)から各支払済みまで年5分の 紙未払賃金目録3「請求金額」欄記載の各金員及び平成2年5月から同15年10月までの間に弁済期の到来した同目録「基本給」欄記載の各金員に対する各弁済期の翌日(毎月21日)から各支払済みまで年5分の割合による金員を支払え。 オ一審被告は,別紙当事者等目録記載の原告番号1ないし46,48ないし72,74ないし115,119ないし125,127ないし138,140ないし152,154ないし167,169ないし246,248- 3 -ないし265,267ないし279の各一審原告らに対し,平成14年2月以降毎月20日限り,同117,139,281ないし285の各一審原告らに対し,同15年10月以降毎月20日限り,同288ないし同290の各一審原告らに対し,同年12月以降毎月20日限り,それぞれ別紙未払賃金目録1ないし3「基本給」欄記載の各金員を支払え。 カ一審被告は,別紙当事者等目録記載の原告番号280-1ないし4の各一審原告らに対し,それぞれ別紙未払賃金目録4「請求金額」欄記載の各金員に同目録「慰謝料及び弁護士費用の内金」欄記載の金員を加えた各金員及び平成2年5月から同6年6月までの間に弁済期の到来した同目録「基本給相続分」欄記載の各金員に対する各弁済期の翌日(毎月21日)から各支払済みまで年5分の割合による金員を支払え。 キ一審被告は,別紙当事者等目録記載の原告番号286-1ないし3の各一審原告らに対し,それぞれ別紙未払賃金目録5「請求金額」欄記載の各金員及び平成2年5月から同4年11月までの間に弁済期の到来した同目録「基本給相続分」欄記載の各金員に対する各弁済期の翌日(毎月21日)から各支払済みまで年5分の割合による金員を支払え。 ク一審被告は,別紙当事者等目録記載の原告番号287-1ないし3の各一審原告らに対し,それぞれ別紙未払 各金員に対する各弁済期の翌日(毎月21日)から各支払済みまで年5分の割合による金員を支払え。 ク一審被告は,別紙当事者等目録記載の原告番号287-1ないし3の各一審原告らに対し,それぞれ別紙未払賃金目録5「請求金額」欄記載の各金員及び平成2年5月から同10年7月までの間に弁済期の到来した同目録「基本給相続分」欄記載の各金員に対する各弁済期の翌日(毎月21日)から各支払済みまで年5分の割合による金員を支払え。 ケ一審被告は,別紙当事者等目録記載の原告番号47-1ないし3の各一審原告らに対し,それぞれ別紙未払賃金目録6「請求金額」欄記載の各金員及び平成2年5月から同16年7月までの間に弁済期の到来した同目録「基本給相続分」欄記載の各金員に対する各弁済期の翌日(毎月21日)から各支払済みまで年5分の割合による金員を支払え。 - 4 -コ一審被告は,別紙当事者等目録記載の原告番号118-1及び2の各一審原告らに対し,それぞれ別紙未払賃金目録6「請求金額」欄記載の各金員及び平成2年5月から同15年4月までの間に弁済期の到来した同目録「基本給相続分」欄記載の各金員に対する各弁済期の翌日(毎月21日)から各支払済みまで年5分の割合による金員を支払え。 サ一審被告は,別紙当事者等目録記載の原告番号73-1ないし3の各一審原告らに対し,それぞれ別紙未払賃金目録7「請求金額」欄記載の各金員及び平成2年5月から同19年1月までの間に弁済期の到来した同目録「基本給相続分」欄記載の各金員に対する各弁済期の翌日(毎月21日)から各支払済みまで年5分の割合による金員を支払え。 シ一審被告は,別紙当事者等目録記載の原告番号153-1ないし3の各一審原告らに対し,それぞれ別紙未払賃金目録7「請求金額」欄記載の各金員及び平成2年5月から同19年3月までの間に弁 員を支払え。 シ一審被告は,別紙当事者等目録記載の原告番号153-1ないし3の各一審原告らに対し,それぞれ別紙未払賃金目録7「請求金額」欄記載の各金員及び平成2年5月から同19年3月までの間に弁済期の到来した同目録「基本給相続分」欄記載の各金員に対する各弁済期の翌日(毎月21日)から各支払済みまで年5分の割合による金員を支払え。 ス一審被告は,別紙当事者等目録記載の原告番号168-1及び2の各一審原告らに対し,それぞれ別紙未払賃金目録7「請求金額」欄記載の各金員及び平成2年5月から同20年1月までの間に弁済期の到来した同目録「基本給相続分」欄記載の各金員に対する各弁済期の翌日(毎月21日)から各支払済みまで年5分の割合による金員を支払え。 セ一審被告は,別紙当事者等目録記載の原告番号247-1及び2の各一審原告らに対し,それぞれ別紙未払賃金目録7「請求金額」欄記載の各金員及び平成2年5月から同19年6月までの間に弁済期の到来した同目録「基本給相続分」欄記載の各金員に対する各弁済期の翌日(毎月21日)から各支払済みまで年5分の割合による金員を支払え。 ソ一審被告は,一審原告らに対し,それぞれ原判決別紙謝罪文を交付する- 5 -とともに,横1.5メートル,縦2.0メートルの用紙に同謝罪文を見やすく記載して,一審被告事業所入口の見やすい場所に1か月間掲示せよ。 タ一審被告は,別紙当事者等目録記載の原告番号1ないし46,48ないし72,74ないし115,117,119ないし125,127ないし138,140ないし152,154ないし167,169ないし228,281の各一審原告らについて北海道旅客鉄道株式会社に対し,同229ないし231の各一審原告らについて東日本旅客鉄道株式会社に対し,同139,232ないし246,248ないし26 69ないし228,281の各一審原告らについて北海道旅客鉄道株式会社に対し,同229ないし231の各一審原告らについて東日本旅客鉄道株式会社に対し,同139,232ないし246,248ないし265,267ないし279,282ないし285,288ないし290の各一審原告らについて,九州旅客鉄道株式会社に対し,それぞれ原判決別紙要請書を交付して各一審原告らの採用を要請せよ。 (3)予備的請求一審被告は,一審原告らに対し,別紙原告別損害賠償請求額一覧表の「請求金額」欄記載の各金員及びこれに対する昭和62年4月1日から各支払済みまで年5分の割合による各金員を支払え。 (4)訴訟費用は,第1,2審とも,一審被告の負担とする。 (5)(2)イないしセ及び(3)につき,仮執行宣言。 一審被告(1)原判決中一審被告敗訴の部分を取り消す。 (2)上記取消部分に係る一審原告ら及び被控訴人P6の請求並びに一審原告らが当審において拡張した請求をいずれも棄却する。 (3)訴訟費用は,第1,2審を通じて一審原告ら及び被控訴人P6の負担とする。 (4)民事訴訟法260条2項の申立てア別紙原状回復申立目録の「氏名」欄記載の各一審原告ら及び被控訴人P6は,一審被告に対し,それぞれ同目録の各氏名欄対応の元本,損害金及- 6 -び執行費用の「合計額」欄記載の金員並びにこれに対する平成17年9月16日から支払済みまで年5分の割合による金員を支払え。 イアにつき,仮執行宣言第2事案の概要等 本件は,いわゆる国鉄分割民営化の過程において,国鉄労働組合に所属する一審原告らが,日本国有鉄道による不当労働行為があったために分割民営化後に設立された新会社に採用されず,日本国有鉄道から移行した日本国有鉄道清算事業団の職員となった後でそこを解雇されるに至ったな る一審原告らが,日本国有鉄道による不当労働行為があったために分割民営化後に設立された新会社に採用されず,日本国有鉄道から移行した日本国有鉄道清算事業団の職員となった後でそこを解雇されるに至ったなどとして,同事業団を承継した一審被告を相手に地位確認や損害賠償等を請求する事案である。事案の概要,争いのない事実等及び争点は,次項以下のとおり付加訂正するほか,原判決「事実及び理由」の「第2事案の概要」(以下「原判決『事案の概要』」という。)記載のとおりであるから,これを引用する。 原判決「事案の概要」中の事案の概要部分(原判決3頁25行目冒頭から同5頁14行目末尾まで)の末尾に,行を改めて次のとおり付け加える。 「原審裁判所は,原判決において,一審原告らの主位的請求をいずれも棄却し,予備的請求については,原告番号104P1,同229P2,同230P3,同231P4及び同245P5の各請求を棄却しつつ,他の一審原告らの請求については各一審原告につき500万円(相続人である一審原告らについては,その法定相続分)及びこれに対する平成2年4月1日から支払済みまで年5分の割合による金員の支払いを命ずる限度でこれを認容した。 そして,原判決の仮執行に基づき,平成17年9月16日,一審被告は上記各一審原告らに対し,別紙原状回復申立目録の各氏名欄対応の元本,損害金及び執行費用の「合計額」欄記載の各金員を支払った。 原判決に対しては,双方当事者が控訴したが,このうち一審原告らは,一審原告ら敗訴部分を取り消して,原審におけるとおおむね同じ内容の請求を認容するよう求めている(その詳細については,後記1(4)で述べる。)。 - 7 -他方,一審被告は,一審被告敗訴部分を取り消して,同取消部分に係る一審原告ら及び被控訴人P6の請求を棄却するよう求めるとともに,原 めている(その詳細については,後記1(4)で述べる。)。 - 7 -他方,一審被告は,一審被告敗訴部分を取り消して,同取消部分に係る一審原告ら及び被控訴人P6の請求を棄却するよう求めるとともに,原判決中一審被告敗訴部分を取り消すに当たって,原判決に基づき仮執行された金額につき民事訴訟法260条2項に基づき原状回復を命ずるよう求めている(なお,一審被告は,当審で同申立てをした後に生じた一部一審原告らの死亡を踏まえての原状回復申立内容の変更を明示的に行っていないが,一審被告が上記死亡に基づく一審原告らの請求の変更につき異議を述べていないことに照らし,一審被告の申立てについてもこれに応じて当然にその内容を変更する趣旨であったものと解する。)。」 原判決「事案の概要」1(1)ウ(イ)中(原判決7頁21行目から22行目にかけて)の「原告番号104P1」を「原告番号13P7,同85P8,同104P1及び同146P9(以下,これらの者を合わせて「一審原告P1ら4名」という。)と改める。また,以後,本判決において引用する原判決本文中の「原告番号104P1」はいずれも「一審原告P1ら4名」と改める。 原判決「事案の概要」1(1)ウ(カ)を次のとおり改める。 「(カ)原告番号47-0P12は平成▲年▲月▲日死亡し,妻子である同番号47-1ないし47-3の一審原告らがその地位を相続した。 原告番号73-0P13は平成▲年▲月▲日死亡し,妻子である同番号73-1ないし73-3の一審原告らがその地位を相続した。 原告番号118-0P14は平成▲年▲月▲日死亡し,妻子である同番号118-1及び118-2の一審原告らがその地位を相続した。 原告番号153-0P15は平成▲年▲月▲日死亡し,妻子である同番号153-1ないし153-3の一審原告らがその地位を相続し 子である同番号118-1及び118-2の一審原告らがその地位を相続した。 原告番号153-0P15は平成▲年▲月▲日死亡し,妻子である同番号153-1ないし153-3の一審原告らがその地位を相続した。 原告番号168-0P16は平成▲年▲月▲日死亡し,妻子である同番号168-1及び168-2の一審原告らがその地位を相続した。 原告番号247-0P17は平成▲年▲月▲日死亡し,妻と母である- 8 -同番号247-1及び247-2の一審原告らがその地位を相続した。 原告番号280-0P18は平成▲年▲月▲日死亡し,妻子である同番号280-1ないし280-4の一審原告らがその地位を相続した。 原告番号286-0P19は平成▲年▲月▲日死亡し,妻子である同番号286-1ないし286-3の一審原告らがその地位を相続した。 原告番号287-0P20は平成▲年▲月▲日死亡し,妻子である同番号287-1ないし287-3の一審原告らがその地位を相続した。 (以上,各訴訟手続受継の申立書添付の戸籍謄本及び弁論の全趣旨)」 原判決「事案の概要」1(4)を次のとおり改める。 「(4)本訴提起及びその後の経緯一審原告らは,平成14年1月28日(原審甲事件),同15年10月20日(原審乙事件),同年12月12日(原審丙事件),それぞれ主位的請求に関し本件訴えを提起し,同16年4月19日予備的請求において訴えの追加的変更をした。 原判決に対する控訴提起後,一審原告らは,不服申立ての範囲につき,平成18年6月19日付け「控訴の趣旨の訂正申立書」により,予備的請求のうち慰謝料を除いた逸失利益等の賠償請求を当初請求額の7割に訂正し,同年11月20日付け「控訴状訂正および請求原因の変更申立書」により,主位的請求及び予備的請求について慰謝料だけでなく弁護士費用をもその損害費目 いた逸失利益等の賠償請求を当初請求額の7割に訂正し,同年11月20日付け「控訴状訂正および請求原因の変更申立書」により,主位的請求及び予備的請求について慰謝料だけでなく弁護士費用をもその損害費目として追加し,同20年12月4日付け「訴えの変更申立書」により,予備的請求に係る損害賠償の遅延損害金起算時を平成2年4月1日から昭和62年4月1日に変更して請求を拡張した。また,一審原告らに新たに相続(上記(1)ウ(カ)参照)が発生する都度,訴えを変更した。他方,原告番号116及び同266の元一審原告らは,原審の時点で訴えを取り下げていたが,同126の被控訴人P6も,当審で控訴を取り下げた(ただし,被控訴人P6については,一審被告の提起した控訴- 9 -の被控訴人でもあるので,当審における訴訟当事者としての地位を失わない。)。以上の結果,当審における一審原告らの請求の概要は次のとおりとなっている。 ア雇用関係存在確認請求(控訴の趣旨1(2)ア。なお,解雇された本人が死亡した原告番号47,73,118,153,168,247,280,286及び287,訴え取下げのあった原告番号116,266,控訴取下げがあった被控訴人P6が除かれている。)イ雇用関係があることを前提に,平成2年5月以降の未払賃金等請求(3度に分けられた各提訴時点までの未払賃金と遅延損害金の支払いを求めるものとして,控訴の趣旨1(2)イないしエ,各提訴後に支払いを受けるべき賃金と遅延損害金の支払いを求めるものとして同オ。また,既に死亡した者についての未払賃金等の支払いを求めるものとして,同カないしセ。いずれも,慰謝料等の支払いも求めている。)ウ名誉回復のための謝罪文の交付及び掲示請求(控訴の趣旨1(2)ソ)エJR北海道,JR東日本,JR九州に対する一審原告らの採用 として,同カないしセ。いずれも,慰謝料等の支払いも求めている。)ウ名誉回復のための謝罪文の交付及び掲示請求(控訴の趣旨1(2)ソ)エJR北海道,JR東日本,JR九州に対する一審原告らの採用要請請求(控訴の趣旨1(2)タ。なお,同請求の請求者は上記アと同様である。)オ雇用関係の存在を前提とする請求が認められなかった場合の予備的請求として,不当労働行為等を原因とする採用差別によって希望するJRに採用されなかったことにより被った損害賠償の請求(控訴の趣旨1(3)。なお,慰謝料及び弁護士費用については,2000万円と原判決認容額との差額を請求しており,採用年齢基準に該当しなかった原告番号230並びに本訴提起前に本人が死亡した原告番号280,286及び287については慰謝料及び弁護士費用額を1000万円とし,これと原判決認容額との差額を請求している。)」- 10 -第3争点に対する当事者の主張の要旨これについては,原判決「事実及び理由」の「第3争点に対する当事者の主張の要旨」記載のとおり(ただし,原審更正決定による更正後のもの)であるからこれを引用する。ただし,当審における当事者の主張の要旨を,引用した原判決記載の各争点毎に,次のとおり付加する。 「争点1(本件解雇の効力)について」について,次のとおり付加する。 【一審原告らの当審における主張】国鉄改革関連法は国労を崩壊させるための国家的不当労働行為を狙うものであって,憲法28条等に違反するものであったし,仮に法令違憲とまでいえなくとも,国労差別のための同法運用は憲法に違反するものであった。したがって,このような違憲の法律に基づく解雇は無効である。 また,一審原告らは不当労働行為によって採用候補者名簿(以下,単に「名簿」ということもある。)に記載されなかったのであるから ものであった。したがって,このような違憲の法律に基づく解雇は無効である。 また,一審原告らは不当労働行為によって採用候補者名簿(以下,単に「名簿」ということもある。)に記載されなかったのであるから,このような立場の一審原告らが,再就職促進法にいう再就職必要職員にあたるとはいえず,国鉄は,一審原告らをそのような立場に置いた上,事業団において再就職あっせんを懈怠したまま解雇したものである。原判決は,一審原告らが名簿不記載という不当労働行為によりJRに採用されなかったことと,その後事業団を解雇されたことを別個のものと捉えているが,本件解雇は,国鉄ないし事業団が行った一連の不当労働行為の完成行為というべきであり,近時の下級審裁判例に照らしても,無効とされるべきである。 さらに,一連の経緯に照らせば,本件解雇は解雇権の濫用に当たるというべきであるし,しかも,本件解雇は実質的には整理解雇というべきところ,これを正当化するだけの要件は具備されていない。 【一審被告の当審における主張】国鉄改革関連法は民主的過程において,当初反対していた勢力も賛成に回る中で成立したものであり,国労つぶしのための国家的不当労働行為な- 11 -どとの批判は的はずれであって,これまでの最高裁判決に照らしても,国鉄改革関連法の合憲性についての判断は確立している。また,一審原告らがいうような,国労差別目的での運用もなく,違憲の主張は失当である。 原判決は,国鉄改革関連法の構造を踏まえ,再就職促進法の失効に伴って,事業団が一審原告らを解雇したのは無効でないとしたが,この判断は正当である。もともと,名簿不記載は不当労働行為ではないし,仮に不当労働行為であったとしても,それが本件解雇の効力に影響を与えるものではない。一審原告らは,一審被告が一審原告らを地元JRに就職させる義務が る。もともと,名簿不記載は不当労働行為ではないし,仮に不当労働行為であったとしても,それが本件解雇の効力に影響を与えるものではない。一審原告らは,一審被告が一審原告らを地元JRに就職させる義務があるというが,そのような根拠はない。一審原告らは,本件は実質整理解雇であるなどと主張するが,独自の見解というべきであるし,本件解雇が解雇権の濫用となるような事情もない。 「争点2(不法行為の有無)について」のうち「(1)国鉄が,一審原告らを希望するJR北海道,JR東日本,JR九州の各採用候補者名簿に記載せず,前記JR各社をして不採用とさせ,事業団に振り分けた行為」について,次のとおり付加する。 【一審被告の当審における主張】ア大量観察方式の妥当性の有無原判決は大量観察方式に基づき,国鉄に不当労働行為があったと判断した。しかし,大量観察方式が認められるのは労働組合法7条3号該当事由の有無が問題となる不当労働行為救済申立事案に限定され,個々の組合員の不利益取扱いが問題となる場合には,個々の組合員毎に不利益取扱いが検討されるべきである。 また,大量観察方式を用いる前提として,比較対照される二集団の等質性については差別を主張する側が立証すべきところ,原判決は,この立証責任を一審被告に転嫁したのみならず,国鉄分割民営化に強硬に反対した国労等の組合と,これに協力的であった動労等の組合に所属する- 12 -各組合員の勤務成績には顕著な違いがあるにもかかわらず,これに等質性があることを前提にして不法行為の成立を認めたものである。本件についての中労委の命令でさえも,大量観察方式による立証の限界から,各組合員の個別救済を命じていないのに,以上のような判断をしたのは不当である。 イ名簿記載における差別の有無国労は,国家的政策である分割民営化に反対して さえも,大量観察方式による立証の限界から,各組合員の個別救済を命じていないのに,以上のような判断をしたのは不当である。 イ名簿記載における差別の有無国労は,国家的政策である分割民営化に反対して,違法な抗議ストを敢行し,国鉄破綻の原因とされた職場規律問題についても既得権益を主張して是正に応じないばかりか,現場管理者に対して暴言を吐いたり,集団抗議行動を実施するなどして指示に従わなかった。また,余剰人員対策にも「三ない運動」を展開するなどして協力せず,企業人教育も拒否するなどしたのであり,動労等の組合が国鉄の施策に協力したのと顕著に異なる行動を取っていた。希望者数に比して採用人員数に限りがあるJR九州と同北海道の採用候補者名簿に記載する者を選別するにあたって,分割民営化の趣旨を理解して職務に精励していたかを考慮するのは当然のことであり,その結果,以上のような国労の闘争に盲従した一審原告らは名簿に記載されないこととなったものである。国鉄分割民営化が成功したのは衆目の一致するところであり,これが当時国是とされていた以上,その趣旨を理解しているかどうかは個人の思想の問題に留まるものではなく,非協力な態度に出た者が劣位に評価されたのは当然の結果である(国労は,分割民営化がされた後になっても,就業規則が自己啓発義務等を定めることについて企業意識を植え付けるものであるとか,規律確保は会社施策への服従を強いるものであり不当であるなどと主張していたものである。これは分割民営化の趣旨を理解しないものであって,このような組合の方針に盲従した勤務ぶりしか示さない者は,自ずと,仕事の成果,知識・技能,協調性,会社への貢献度等において- 13 -も劣るものと容易に想定される。)。 このように,一審原告らが採用候補者名簿に記載されなかったのは,その勤務成 い者は,自ずと,仕事の成果,知識・技能,協調性,会社への貢献度等において- 13 -も劣るものと容易に想定される。)。 このように,一審原告らが採用候補者名簿に記載されなかったのは,その勤務成績等に照らしJRに採用するにふさわしい者と考えられなかったからであり,結果的に組合により名簿記載率が違ったとしても,それが不当労働行為に当たるものではない。 また,一審原告らには,懲戒処分を受けた者が多数含まれるが,国鉄の職場規律問題が破綻の重要な要因であったことからして,JRでは職場秩序の維持確立が重要だったのであり,懲戒処分を受けていることの一事をもって採用基準に合致しないことは明らかである。 ウ個別の一審原告らに係る事情懲戒処分のうち,特に停職処分については,これを受けたこと自体,勤務成績が不良であることを顕著に示すものであり,そのような者を名簿に記載しなかったことは違法とならない。原判決は,名簿不記載の基準である停職6か月以上の処分を受けている一部の一審原告らについては名簿不記載は不当労働行為とならないとしているが,原告番号210P10及び同261P11も停職6か月以上の処分を受けているから,同様に扱われるべきである。 なお,当該基準に該当するものであっても,その後の改悛の情が著しい者は,新会社にふさわしい者と考えられるから,そのような者を名簿に記載したからといって何ら問題はない。 【一審原告らの当審における主張】ア大量観察方式の妥当性の有無紅屋商事事件についての最高裁判決(最高裁判所昭和61年1月24日第二小法廷判決・労働判例467号6頁)は,不利益取扱いによる不当労働行為についても大量観察方式を是認したものと解されているし,不当労働行為審査手続における大量観察方式は,証拠が偏在する状況下- 14 -で労使双方に合理的に立 6頁)は,不利益取扱いによる不当労働行為についても大量観察方式を是認したものと解されているし,不当労働行為審査手続における大量観察方式は,証拠が偏在する状況下- 14 -で労使双方に合理的に立証負担を負わせるというその趣旨からして,訴訟における立証にあたっても当然に採用されるべきである。 国労と鉄産労は,集団的比較をするに十分なほどの集団をなしているし,比較対象となる集団の鉄産労は国労とも等質といえる。そして,両者間では採用候補者名簿に記載された所属組合員の比率に明確な差があり,また国鉄において組合嫌悪の意思も認められるのであるから,大量観察方式をするだけの前提要件を具備しているというべきである。 イ名簿記載における差別の有無一審被告は,国鉄分割民営化に賛成するか否かは,一審原告らの具体的な勤務態度に反映されたのであり,一審原告らが劣位に評価されたのは当然であると主張するが,これは,勤務態度ではなく一審原告らの思想を差別したものである。 もともと,列車を毎日安全に運行させるという業務の基本はJRへの移行後も何ら変化はないのであり,分割民営化への賛否と,日々の業務とは無関係であって,分割民営化に反対していたからといって,一審原告らがJRで業務をすることに何の支障はなかった。そして,国労組合員は動労等の組合員と比較しても高い業務遂行能力を持っていたし,JRに採用された国労組合員は,差別に遭うなどしながらも誠実に業務を遂行し,実績を上げているのであり,こういった事実は国労組合員がJRに採用されるにふさわしい者であることを示している。 ところが,勤務態度評価の基礎資料となった職員管理調書は,具体的な勤務態度ではなく,国鉄分割民営化に賛成するか否かという思想そのものを評価する仕組みとなっており,その記載対象となる処分の該当年度が,動労組 ,勤務態度評価の基礎資料となった職員管理調書は,具体的な勤務態度ではなく,国鉄分割民営化に賛成するか否かという思想そのものを評価する仕組みとなっており,その記載対象となる処分の該当年度が,動労組合員が記載対象とならないよう動労がストを止めた後の昭和58年以降の通告に限る形で設定されてもいた。また,国鉄は,早期退職者が予想より多くなりすぎたために本州のJR会社に採用される見- 15 -込みの人数が計画を下回ることになったが,不足分につき国労組合員を採用することに改革労協からの反発があったために,6か月以上の停職処分を受けた者は採用候補者名簿に記載しないといった新たな採用基準を設定したりもした。そして,実際の運用を見ても,職員が国労を脱退するなどすればすぐに評価が変更され,重い労働処分を受けた者であっても,国労を脱退すればJRに採用される一方,北海道においては,事故や非違行為を起こしたり勤務態度が不良であるなど,不採用となった者と比較して明らかに劣位におかれるべき者が動労組合員の中に多数含まれていたにもかかわらず,同組合員は100パーセントJRに採用されているのであって,その運用の実態からみても,思想差別が行われたのは明らかである。 国鉄は,雇用確保という利益誘導をてこに動労等の労働組合を民営化に協力させるという支配介入を行ったものであり,このような違法行為と闘う国労等の労働組合の行為が不当視されるべきではない。一審原告らはもともと職場での協調には配慮してきたところ,それが国鉄側の経営姿勢の変化を前に闘わざるを得なくなってしまったものである。一審被告は,一審原告らが既得権益にしがみついたかのような主張をするが,労使の合意のもとに認められてきた時間内身体洗浄等を一方的に破棄するのが不当であることは明らかである。分割民営化に賛成する組 。一審被告は,一審原告らが既得権益にしがみついたかのような主張をするが,労使の合意のもとに認められてきた時間内身体洗浄等を一方的に破棄するのが不当であることは明らかである。分割民営化に賛成する組合と反対する組合がある場合において,反対するが故に当該組合を不利益取扱いをすることは,過去の判例に照らしても許されない。もともと,国鉄破綻の原因や再建方策については様々な見解があったのであり,分割民営化は国是といえるようなものではなかったし,JR発足後の事故多発等からしても分割民営化は成功であったと評価できるようなものではない。 一審被告は,一審原告らに懲戒処分を受けた者が多数含まれることを- 16 -もって,劣位の評価を受けた事情であると主張するが,職場規律問題の是正が完了した後の分割民営化直前に一審原告らに対して処分を集中させる理由はなかったのであり,懲戒処分は一審原告らをJRに不採用とするための不当労働行為というべきである。 また,闘争の実態を見ても,国鉄全体から見れば現場での労働者の抵抗はささやかなものであったし,職場を放棄しての抗議行動などはなかった。ワッペン着用闘争は,職務専念義務にも服務規程にも違反したわけでもないし,順法闘争は業務の正常な運営を阻害する行為にはあたらず,一審原告らが行ったストライキも短時間で列車運行にほとんど影響を与えなかった。そして,組合運動は組合の統制の下に行われるものであるから,これを個人の責任に帰着させるべきものではない。したがって,これらを職員管理調書上不利益に評価することは違法である。また,過去の処分を採用にあたって考慮することは二重処分にあたるし,労働基準法22条4項は組合運動に関するブラックリストの作成を禁じているところ,職員管理調書は労働処分歴を記載していたのであって,労働基準法の脱法 を採用にあたって考慮することは二重処分にあたるし,労働基準法22条4項は組合運動に関するブラックリストの作成を禁じているところ,職員管理調書は労働処分歴を記載していたのであって,労働基準法の脱法行為がされたというべきである。 さらに,採用の結果をみると,名簿不記載の基準に該当するにもかかわらずJRに採用されている者もいるのであって,処分があったから採用しないという基準の適用は恣意的というほかない。 ウ個別の一審原告らに係る事情一審原告らのうち,JR東日本への採用を希望していた原告番号229P2,同231P4,同245P5は,6か月以上の停職処分を受けたとして名簿不記載になったとされているが,中労委は,審理の上でこれらの者に不当に重い処分がされたことを認定しており,積極的な反証もないのに当該処分を前提に同人らについての不採用を適法とした原判決は不当である。国鉄の処分は私法上の行為と解されるところであり,- 17 -処分の取消訴訟によって取り消されない限りその効力があるということにはならない。 また,昭和61年度末において55歳未満の者しか採用候補者名簿に記載しないとの基準は,国鉄における定年を一方的に引き下げるもので合理性を欠くから,原告番号230P3も名簿記載と採用を求め得る立場にあったというべきである。 「争点3(本件不法行為による損害賠償の範囲,損害回復方法)について」について,次のとおり付加する。 【一審原告らの当審における主張】(1)不当労働行為と不採用の因果関係原判決は,一審原告らが組合差別により名簿不記載となったことを認めつつも,当該差別がなければ採用されたことの立証がないとして,一審原告らに対する賃金相当額等の賠償を認めなかった。しかし,不当労働行為救済制度による原状回復が原則であることからすれば,不当労働 認めつつも,当該差別がなければ採用されたことの立証がないとして,一審原告らに対する賃金相当額等の賠償を認めなかった。しかし,不当労働行為救済制度による原状回復が原則であることからすれば,不当労働行為がなければ採用されたであろうことが擬制されるべきであるし,一審被告は,一審原告らが採用されなかったであろうことについて個別立証ができたはずであるのにこれをせず,職員管理調書が存在しないなどとしてその立証を妨害しているから,立証妨害に関する民事訴訟法の規定を類推して因果関係の存在を推定すべきである。また,本件が故意に基づく不法行為であることからすれば,事実的因果関係のある損害すべてについて賠償が認められるべきであり,そうすると,賃金相当額等についても賠償が認められるべきである。仮にそうでないとしても,差別がなければ少なくとも一審原告らは平均的採用率程度の割合で名簿に記載され,採用されていたはずであるから,確率的因果関係論に基づきその割合に応じた賠償がされるべきである。 原判決は,公正な選考がされれば一審原告らが採用されたとまではい- 18 -えないとする事情の一つとして,一審原告らが国鉄分割民営化に一貫して反対し,違法なストライキを含む種々の運動を展開していたことを挙げる。しかし,組合による強い反対運動があったことを踏まえた上で,公正な職員採用を前提とする国鉄改革関連法が成立したという立法の経緯,一審原告ら個々人の具体的行為についての立証がないこと,一審原告らの中でのスト参加者が限られていたこと等に照らして,原判決指摘の事情を考慮することは許されないというべきである。また,原判決が不当労働行為と不採用との間に相当因果関係を認めなかったのは,JRによる採用が新規採用であるとの考えも前提にあると考えられるが,本件は純然たる新規採用とは異 されないというべきである。また,原判決が不当労働行為と不採用との間に相当因果関係を認めなかったのは,JRによる採用が新規採用であるとの考えも前提にあると考えられるが,本件は純然たる新規採用とは異なり,採用の自由は妥当しない。 (2)期待権と賠償額等原判決は国鉄の不当労働行為による一審原告らの期待権侵害を認めたが,期待権の侵害はこれまでも裁判実務上認められてきたものであり,過去の裁判例に照らしても,本件では十分に認め得るものである。そして,本件では,国鉄改革関連8法についての国会審議において,1人も路頭に迷わせないといった答弁が政府側からされており,同法成立にあたり,雇用と生活の安定を図るべきとの付帯決議もされていることや,再就職対策期間を2年延長する旨の念書(甲18)があったことなどにも照らせば,本件解雇についても,解雇回避に係る期待権侵害が認められるべきである。 そして,期待権侵害に対する損害賠償額については,不当労働行為に対する救済は原状回復が原則であるから,原状回復に匹敵するものとして賃金相当額等の損害まで賠償されるべきであり,仮にそこまでいかずとも,確率的心証の考えを踏まえ,平均採用率に相当する程度の逸失利益の賠償等が認められるべきである。また,この他に,採用差別以外の不法行為による慰謝料も認められるべきであるし,団結権侵害に対する- 19 -回復措置として,謝罪文の交付やJR北海道等に対する採用要請まで命じられるべきである。 (3)個別一審原告の損害原判決は,第2志望のJR東日本への採用辞退をした原告番号104P1には賠償を要するほどの損害が生じたとはいえないとした。しかし,同一審原告については,むしろJR北海道採用候補者名簿に不記載であったことそれ自体が差別であるから,賠償が認められるべきである。また,一審被 償を要するほどの損害が生じたとはいえないとした。しかし,同一審原告については,むしろJR北海道採用候補者名簿に不記載であったことそれ自体が差別であるから,賠償が認められるべきである。また,一審被告は,一審原告らが追加的広域採用に応じればJR東日本等に採用されたのに,これを活用しなかった以上自ら現在の状況を作り上げたに等しく,賠償の必要性はないとか賠償額を減額すべきと主張するが,一審原告らに追加的広域採用に応じるべき義務はない以上,減額すべき事情とはならない。さらに,一審被告は,追加的広域採用に応募し,採用されたにもかかわらずこれを辞退した者が一審原告らの中にいるとして,これらの者については,法的保護に値する損害はないなどと主張するが,広域採用に応じなければならない義務があるわけではなかったし,出向が条件となるなど労働条件等も曖昧なままであったから,これに応じなかったとしてもやむを得ないのであり,賠償の減額等をすべき事情とはならない。 【一審被告の当審における主張】(1)不当労働行為と不採用の因果関係原判決は一審原告らが採用候補者名簿不記載により精神的損害を被ったとするが,原判決がいう精神的損害は,換言すれば,地元JR不採用による損害と解さざるを得ない。原判決が,採用候補者名簿不記載と不採用との間に因果関係がないとしているにもかかわらず,このような損害につき賠償を認めたのは論理矛盾である。 (2)期待権と賠償額等- 20 -原判決は,正当な評価を受けるという期待権が侵害されたとする。しかし,これまでの裁判実務上,期待権侵害が認められるのは,条件付権利が侵害された場合,エストペルの法理を適用しうる場合及び医療過誤の場合に限られており,これを認める事例が安易に拡大されるべきでないところ,本件においては以上のいずれの場合にも当た るのは,条件付権利が侵害された場合,エストペルの法理を適用しうる場合及び医療過誤の場合に限られており,これを認める事例が安易に拡大されるべきでないところ,本件においては以上のいずれの場合にも当たらないのであって,期待権侵害が認められるとの判断は誤りである。一審原告らがいう期待権は,合理的根拠のない主観的願望の域を出るものではない。 そもそも,本件では,JR北海道及び同九州のいずれにも採用定員枠に厳しい限界があり,分割民営化に賛成していた職員でも希望どおりに採用される状況にはなかった。勤務成績を劣位とする行動を繰り返していた一審原告らについては,仮に選考をやり直したとしても全員が採用候補者名簿に記載されることはあり得ず,昭和62年4月時点における名簿記載と同じような状況になっていたはずである。期待権侵害を強調する原判決は,このような事情を無視し,JR北海道や同九州への採用の期待を保護しようという誤りを犯すものである。 仮に期待権侵害を想定しうるとしても,以上の事情からすれば,原判決が認容した500万円もの慰謝料は高額にすぎるものである。一審原告らとしては,厳しい採用枠を直視して他のJRへの採用を希望すれば採用される可能性はあったし,事業団職員についてはJR東日本等への追加的広域採用の機会もあり,応募者は基本的に採用されるようにJR側において対応していたにもかかわらず,一審原告らはJR北海道ないし同九州への採用に固執して現在に至ったものである。多くの職員が家庭の事情等を抱えながらも広域採用に応じていったのであり,広域採用に応じられなかった事情をいう一審原告らの主張は身勝手で,真摯に再就職を果たそうという姿勢に欠けていたとしかいい難い。このような一審原告らに多額の慰謝料支払いを命じるのは不当である。また,原判決- 21 -は,JR東 をいう一審原告らの主張は身勝手で,真摯に再就職を果たそうという姿勢に欠けていたとしかいい難い。このような一審原告らに多額の慰謝料支払いを命じるのは不当である。また,原判決- 21 -は,JR東日本に採用されながらこれを辞退した原告番号104P1について賠償を認めていないが,結果的にJR北海道採用に固執した同一審原告に対して賠償を認めない一方で,実質的にこれと同様の態度を取る他の一審原告らに対して多額の賠償を認めるのは均衡を失するというべきである。 (3)個別一審原告の損害第二希望先に採用されながら辞退した者は,原判決が挙げる原告番号104P1以外にも,同13P7,同85P8及び同146P9の各一審原告がいる。また,追加的広域採用に応募して,採用されたにもかかわらず辞退した者として,同79P21,同106P22,同169P23,同196P24,同203P25及び同238P26の各一審原告がいる。 これらの一審原告らには賠償に値するほどの損害はないというべきである。 「争点4(時効消滅及びその援用の可否)について」について,次のとおり付加する。なお,原判決44頁15行目の「継続中」を「係属中」に改める。 【一審被告の当審における主張】(1)時効起算点原判決が,一審原告らの国鉄又はこれから移行した事業団に対する本件不法行為①に基づく損害賠償請求権に係る消滅時効の起算点を平成15年12月22日に本件最判が言い渡された時点としたのは,誤りである。 原判決が慰謝料支払いの対象としたのは,採用候補者名簿に記載されなかったことと当該名簿作成で差別を受けたことによる精神的損害であるところ,このような精神的損害は五感により体感して生じるものである。そして,一審原告らが本件での精神的損害を知るに至ったのは,昭和62年2月16日に設立委員からの を受けたことによる精神的損害であるところ,このような精神的損害は五感により体感して生じるものである。そして,一審原告らが本件での精神的損害を知るに至ったのは,昭和62年2月16日に設立委員からの採用通知を受けず,同年3月18日以降に「再就職を必要とする職員に指定」された旨の事前通知を受け,- 22 -次いで同年4月1日には,その各希望する地元JRの各採用候補者名簿に記載されなかったため,事業団職員となったことによってであり,このことは事態の推移から明らかである。したがって,一審原告らのいずれもが,上記の精神的損害を受けたこと及びその加害者なる者が国鉄であること並びに加害行為なるものが一審原告ら主張の不当労働行為であることを知ったのは,遅くも事業団職員となった日というべきである。 なお,これらの精神的損害は,いずれも,JR北海道又は同九州に採用される余地がなくなったことに伴う損害とは全く性質の異なる損害であるから,採用される余地がなくなったかどうかにつき裁判所の判断が出ていなかったという事情は,消滅時効の起算点をどの時点とするかに影響を与えるものではない。 一審原告らが採用候補者名簿に記載されなかったことが国鉄の不当労働行為意思に基づくものであれば,それが一審原告らに対して不法行為を構成することは明らかであり,上記のとおり一審原告らが損害を知っていたことからすれば,一審原告らとしては直ちに国鉄ないし事業団に対して損害賠償請求をすることが可能であった。従来の判例は,一貫して,民法724条にいう被害者が「損害及び加害者を知った」と認定するためには,確定判決等の公的判断を要しないとしているが,本件でも,裁判所が改革法23条の解釈適用をすれば,本件最判のような結論に至るであろうことは,当然に予想し得たところであり,また,予想すべきであっ には,確定判決等の公的判断を要しないとしているが,本件でも,裁判所が改革法23条の解釈適用をすれば,本件最判のような結論に至るであろうことは,当然に予想し得たところであり,また,予想すべきであったものである。仮に公的判断がないと損害等を知ったといえなかったとしても,一審原告らは,遅くとも改革法について解釈した本件地裁判決が出された平成10年5月28日当時においては,損害及び加害者についての認識を確実に有するに至っていたものである。 一審原告らは,JR北海道又は同九州に対する不当労働行為責任を追及していたから,一審原告らが国鉄又は事業団に対して本件不法行為①- 23 -に基づく損害賠償請求を行うことは法律上も事実上も困難であったというが,JR北海道又は同九州に対する不当労働行為責任の追及と,国鉄又は事業団に対する本件不法行為①に基づく損害賠償請求とを同時的に行っても一向に差し支えなかったのであり,現に係る請求を行った例も存在する。一審原告らは,JRに対する採用請求とJRに採用されなかった場合に生じる一審被告に対する損害賠償請求を法律上両立して請求し得るとはいえない旨主張するが,たとえ両請求が共に認容されるという結果はあり得ないとしても,上記のように,未行使の請求権の消滅時効の進行を阻止するためにこれに基づく訴えを提起することは何ら妨げられるものではない。一審原告らが自らの主張を根拠づけるものとして援用する判例は,極めて特殊な事案について判断を示した判例であり,その考えが本件において妥当するものではない。 (2)権利濫用等原判決は,一審被告による時効の援用は信義則に反し,権利の濫用として許されないともいうが,これも誤りである。 判例の趣旨に照らせば,消滅時効の援用が信義則違反又は権利濫用に当たるとされるのは,債務者が債権者による時 告による時効の援用は信義則に反し,権利の濫用として許されないともいうが,これも誤りである。 判例の趣旨に照らせば,消滅時効の援用が信義則違反又は権利濫用に当たるとされるのは,債務者が債権者による時効中断を妨害するなど時効援用が社会的な許容の限界を超えた場合に限定されるべきである。ところが,原判決は,被害者において適時の権利行使又は時効中断を講ずることが不可能若しくは著しく困難にさせる客観的な事情が認められるような場合であれば,消滅時効の援用が信義則違反又は権利濫用に当たるとしているのであり,これは上記のような判例の趣旨を逸脱するものであって不当である。また,上記(1)で述べたとおり,もともと本件では権利行使が困難であったという事情も認められない。 【一審原告らの当審における主張】(1)時効起算点- 24 -一審原告らが地元JR復帰を求めたのは,改革法の立法過程において,採用候補者名簿を作成する国鉄は,設立委員の「補助者」「代行」ないし「準委任」であるという政府からの説明がされ,この説明からは,当然JRが労働組合法7条にいう使用者として責任を取るべき地位にあると考えられたからである。そして,この点についての判断を示した最高裁判決においても,3名の裁判官による多数意見はこの考えを否定したものの,2名の裁判官は,この考えを支持する反対意見を述べている。 つまり,原判決が述べるように,本件最判に至るまでは,JRの採用候補者名簿に記載されなかった国労組合員について,JRに採用したものと扱えなどとする救済命令が是認される可能性が多分にあったというべきであり,そうである以上,JRに採用される余地がなくなったという損害が現に発生し,国鉄を加害者としてその承継者である一審被告に賠償を求める余地が生じたのは,同判決によってというべきである。実際 きであり,そうである以上,JRに採用される余地がなくなったという損害が現に発生し,国鉄を加害者としてその承継者である一審被告に賠償を求める余地が生じたのは,同判決によってというべきである。実際にも,前提となる争点等に係る別事件の判決の確定をもって時効の起算点とする様々な判例が存在している。また,JRは,本来,一審原告らの採用についての再選考を命ずる中労委命令の公定力に基づき,これを履行しなければならない行政上の義務があったから,本件の場合,これが取り消されるまでは一審原告らについて損害が発生していなかったと法的にも評価できる。 なお,一審被告は,JRに対する関係での救済を求めることと,国鉄又は事業団に対して損害賠償請求をすることは両立可能であり,この観点から,消滅時効は一審原告らがJRに不採用となった時点から起算されるべきである旨主張する。しかし,このような解釈は,消滅時効の起算点については事実上の権利行使可能性があったかどうかという観点から柔軟に判断するという従前判例が採ってきた姿勢と相反するものである。すなわち,民法166条1項は,消滅時効の起算点の原則として- 25 -「権利を行使することができる時」と規定しているところ,その解釈として,判例は,単にその権利の行使につき法律上の障害がないというだけではなく,さらに権利行使が現実に期待できるものであることを要すると判示している。そして,債権者が消滅時効に係る権利を行使しようとすると別件訴訟における自己の主張の撤回と解されるおそれがある場合等には,権利行使を期待するのが難きを強いるものになるなどとして,当該別件訴訟での判決の確定時から消滅時効が進行する旨判示している判例もあるところであり,本件においても,一方でJRへの職場復帰を求める訴訟を追行しながら,他方でJRに採用され のになるなどとして,当該別件訴訟での判決の確定時から消滅時効が進行する旨判示している判例もあるところであり,本件においても,一方でJRへの職場復帰を求める訴訟を追行しながら,他方でJRに採用されないことを前提とする逸失利益の賠償請求を国鉄又は事業団に対して行うことは,職場復帰を求める訴訟において相手方の主張を認めて自己の主張を撤回したものと解されるおそれがあるものであり,そのようなおそれのある権利行使をするのは事実上不可能であったというべきである。 (2)権利濫用等一審被告は,消滅時効の援用が権利の濫用となるのは,債務者において,債権者の消滅時効中断措置の行使を妨害したような特別な場合に限る旨主張するが,裁判例に照らすとそのように限定されるべきではないし,仮にそうでないとしても,本件では,国鉄が,改革法23条というJRの使用者責任を問うことを困難にする法律を意図的に立法させ,同条に関して国会で運輸大臣らが国鉄による名簿作成を「代行」「準委任」と答弁するに任せてその責任の所在を不明とするなどの二枚舌的行為を行って原状回復を不可能にしたこと,事業団が,いわゆる「四党合意」に係る協議,交渉等の過程で,国労を屈服・変質させて法的手段を放棄させようとしてきたことなどからすれば,一審原告らが権利を行使しなかったことについて国鉄ないし事業団に責むべき事由があるというべきである。 - 26 -第4争点に対する判断 争点1(本件解雇の効力),争点2(本件不法行為④,⑤の成否)についてこの点についての当裁判所の判断は,原判決「事実及び理由」の「第4争点に対する判断」(以下「原判決『争点に対する判断』」という。)1記載のとおりであるからこれを引用する。 上記争点に関する一審原告らの当審における主張は,実質的に原審における主張を繰り返すもの 争点に対する判断」(以下「原判決『争点に対する判断』」という。)1記載のとおりであるからこれを引用する。 上記争点に関する一審原告らの当審における主張は,実質的に原審における主張を繰り返すものであり,これに対する当裁判所の判断は引用した原判決説示のとおりである。付言すると,一審原告らは,種々の事情を挙げて,国鉄改革関連法は憲法28条等に違反するなどと主張するが,最高裁判所による累次の裁判の結果(乙259ないし263)等に照らし,採用できない。また,一審原告らは不当労働行為によって採用候補者名簿に記載されなかったのであるから,このような立場の一審原告らが,再就職促進法にいう再就職必要職員に指定されたことは無効であり,同職員にあたるとはいえないとか,本件解雇は国鉄ないし事業団が行った一連の不当労働行為の完成行為であるなどとして,解雇の無効を主張する。しかしながら,JRに応募しても同社に採用されなかった職員については,国鉄が事業団に移行した後は,再就職必要職員に指定されるものとされており,そのこと自体は憲法違反でも無効でもないところ,後記説示のとおり,国鉄による不当労働行為がなかったと仮定しても,一審原告らが希望する地元JRに採用されたはずであるとの証明がされていないのであり,国鉄による不当労働行為があったため,地元JRに採用されるべきところを再就職必要職員に指定されたということもできないから,国鉄の不当労働行為の故に同指定が無効となるものではない。そして,一審原告らは,再就職必要職員に指定され,当該職員として3年間事業団に勤務した後,事業団就業規則22条4号に基づき解雇されたのであり,不当労働行為がなければ本件解雇もなかったということはできないから,不当労働行為それ自体についての損害賠償請求はともかく,解雇の無効に係る主張は前提を欠 業規則22条4号に基づき解雇されたのであり,不当労働行為がなければ本件解雇もなかったということはできないから,不当労働行為それ自体についての損害賠償請求はともかく,解雇の無効に係る主張は前提を欠くというべきである。 - 27 -一審原告らが自らの主張を根拠づけるものとして挙げる裁判例は本件と事案を異にしており,以上の判断を左右しない。 争点2及び4(本件不法行為①及びこれに基づく損害賠償請求権等の時効消滅の成否)について(1)認定事実等争点2及び4に関する一審原告らの主張の概要及び本件不法行為①に関して当裁判所が認定する事実は,次のとおり付加訂正するほか,原判決「争点に対する判断」2(1)及び(2)のとおりであるからこれを引用する。ただし,同(2)キ(ウ)を次のとおり改める。 「(ウ)一審原告らの個別事情a原告番号210P10原告番号210P10は,昭和60年8月17日付で,同年7月18日,A勤務を失念かつ管理者の指示命令に服さず,当該勤務を欠務し,また日常において職員として著しく不都合な行為があったことを理由に停職8か月の処分を受けた。上記停職処分は,違法,不当等を理由に取り消されていない(乙128,弁論の全趣旨)。 b原告番号229P2原告番号229P2は,昭和58年8月1日付で,同年3月から同年7月までの間,α駅において再三にわたり管理者の業務指示に従わず,また,業務妨害等により職場規律を乱したことが職員として著しく不都合であったとして,停職12か月の処分通告を受けた(なお,懲戒の基準に関する協約に基づく弁明弁護手続が行われた結果,命令発令日は同年11月24日となった。)。上記停職処分は,違法,不当等を理由に取り消されていない(甲29,829の1及び2,乙129,弁論の全趣旨)。 c原告番号231P4- が行われた結果,命令発令日は同年11月24日となった。)。上記停職処分は,違法,不当等を理由に取り消されていない(甲29,829の1及び2,乙129,弁論の全趣旨)。 c原告番号231P4- 28 -原告番号231P4は,昭和58年9月2日付で,同年6月23日の業務命令拒否,点呼時における管理者に対する暴言及び脅迫,青年部抗議行動の組織責任を理由に,停職6か月の処分を受けた。上記停職処分は,違法,不当等を理由に取り消されていない(甲831の1,乙130,弁論の全趣旨)。 d原告番号245P5原告番号245P5は,昭和59年8月1日付で,同58年6月1日,2日,3日,同年8月2日,同年9月7日,29日,同年10月14日にβ保線区において職員として著しく不都合な行為があったことを理由に,停職6か月の処分を受けた。上記停職処分は,違法,不当等を理由に取り消されていない(甲141,142,845の1,乙131,一審原告原田【1頁】,弁論の全趣旨)。 e原告番号261P11原告番号261P11は,昭和62年3月31日付で,同年2月19日長崎市<以下略>において職員として著しく不都合な行為があったことを理由に停職10か月の処分を受けた。上記停職処分は,違法,不当等を理由に取り消されていない(乙132,弁論の全趣旨)。 f原告番号230P3原告番号230P3は,昭和61年12月当時,57歳であった(甲830,弁論の全趣旨)。 gそれ以外の一審原告ら一審原告P10,同P2,同P4,同P5及び同P11を除く一審原告らは,昭和58年4月以降,停職6か月以上又は停職2回分以上の処分を受けていない(弁論の全趣旨)。」(2)本件不法行為①の成否に関する当裁判所の判断ア改革法23条は,承継法人の職員の採用手続について,設立委員が,国- 停職6か月以上又は停職2回分以上の処分を受けていない(弁論の全趣旨)。」(2)本件不法行為①の成否に関する当裁判所の判断ア改革法23条は,承継法人の職員の採用手続について,設立委員が,国- 29 -鉄を通じ,労働条件及び採用基準を提示して職員の募集を行い(1項),これを受けて,国鉄が,職員の意思を確認し,採用の基準に従い採用候補者の選定及び採用候補者名簿の作成を行い(2項),設立委員が,採用候補者名簿に記載された者の中から職員として採用すべき者を決定し,採用する旨を通知する(3項)と規定している。そうだとすると,国鉄は,設立委員が提示した採用基準に反しない限り,その職員のうち採用候補者名簿に記載する者の選定について一定の裁量が認められていたといえる。もっとも,使用者は,労働者が労働組合の組合員であること,労働組合の正当な行為をしたことなどを理由にその労働者に対して不利益な取扱いをすることは許されない(労働組合法7条1項)から,裁量行為に藉口して,主として,一審原告らが国労組合員であったことや国労の指示に従い正当な組合活動をしたことを嫌悪し,同不記載を行ったとすれば,同行為は不利益取扱い禁止に反する違法な行為であり,不法行為に当たるというべきである。 イこの点,まず,設立委員が国鉄に提示した本件採用基準自体は,昭和61年度末において年齢満55歳未満であること(本件採用基準①),国鉄在職中の勤務の状況からみて,JR各社の業務にふさわしい者であること,なお,勤務の状況については,職務に関する知識技能及び適性,日常の勤務に関する実績等を国鉄における既存の資料に基づき,総合的かつ公正に判断すること(本件採用基準③)を含め,組合差別を目的としたもの又はこれを容認したものであるとは認められず,上記国鉄改革に至る経緯に照らして,いずれ 国鉄における既存の資料に基づき,総合的かつ公正に判断すること(本件採用基準③)を含め,組合差別を目的としたもの又はこれを容認したものであるとは認められず,上記国鉄改革に至る経緯に照らして,いずれも合理的なものであったと認めるのが相当である。 ところで,国鉄は,本件採用基準③について,国鉄在職中の勤務の状況からみて,JR各社の業務にふさわしい者との基準を具体化し,昭和58年4月以降,非違行為により停職6か月以上の処分又は2回以上の停職処分を受けた者は明らかに承継法人の業務にふさわしくない者として採用候- 30 -補者名簿に記載しないこととしたところ,上記引用に係る原判決「争点に対する判断」2(2)ウのとおり,動労がストライキ等の闘争を実施したのは,昭和57年12月までであり,同58年4月以降,同組合の指令による組合活動で処分通告を受けた動労組合員はいなかったことに照らしてみると,かかる基準自体,国鉄の分割・民営化に賛成する組合の組合員を有利に取り扱おうとしたものとみる余地もないではない。しかし,同基準は,職場規律の総点検がある程度浸透してきた昭和58年4月の時点から勤務態度を評価する形になることをも考慮すると,これをもって不合理であり,不当労働行為意思に基づくものと認めるだけの事情があるとはいえない。そして,同基準自体は明確なものであり,同基準を適正かつ公平に適用する限りでは合理性を有すると解するのが相当である。そうだとすると,国鉄において,設立委員の示した本件採用基準に従い,昭和61年度末において年齢満55歳以上の者及び昭和58年4月以降,非違行為により停職6か月以上の処分又は2回以上の停職処分を受けた者を採用候補者名簿に記載しないことは,上記停職処分が取り消された等の特段の事情がない限り,適法なものというべきである。 ウ以上 ,非違行為により停職6か月以上の処分又は2回以上の停職処分を受けた者を採用候補者名簿に記載しないことは,上記停職処分が取り消された等の特段の事情がない限り,適法なものというべきである。 ウ以上の基準に照らし,本件をみてみるに,上記訂正後の2(2)キ(ウ)のaないしeで認定したとおり,原告番号210P10,同229P2,同231P4,同245P5及び同261P11は,いずれも昭和58年4月以降,非違行為により停職6か月以上の処分を受け,当該処分は取り消されていないことが認められ,本件全証拠を検討するも,特段の事情を認めるに足りる証拠は見当たらない。また,原告番号230P3は,昭和61年12月当時既に57歳であったことが認められる。そうだとすると,これら一審原告6名を採用候補者名簿に記載しなかった国鉄の行為は相当であったというべきであり,当該判断を覆すに足りる証拠は存在しない。 - 31 -なお,一審原告らは,原告番号210P10,同229P2,同231P4,同245P5に対する処分は不当処分であり,同261P11の処分は昭和62年2月の行為に係るものであるから名簿不記載の参考たり得ないと主張するので付言すると,一審原告らの主張を考慮しても,前4者に対する処分やこれを理由に名簿不記載としたことが不当であると認めるだけの事情があるとはいい難い。もっとも,昭和58年4月以降,非違行為により停職6か月以上の処分又は2回以上の停職処分を受けた者は明らかに承継法人の業務にふさわしくない者として採用候補者名簿に記載しないとの基準が設けられたという一方で,そのような基準に該当する者であっても採用されている者がおり,例えばJR東日本においては同基準に該当する者のうち9名は採用されていることが認められる(乙121)。そうすると,同基準該当者につい で,そのような基準に該当する者であっても採用されている者がおり,例えばJR東日本においては同基準に該当する者のうち9名は採用されていることが認められる(乙121)。そうすると,同基準該当者についてそのような扱いをしないまま名簿不記載としたことについて裁量逸脱があれば,不法行為の成立する余地がないとはいえない。しかしながら,同扱いの具体的状況は証拠上必ずしも判然とせず,また,上記9名のうち3名は国労組合員であったと認められること(乙121)からすると,同扱いについて所属組合による差別的取扱いがあったとまでは直ちにいい難く,したがって,前4者が同扱いをされなかったことにつき,所属組合に着目した差別があったともいい難い。また,後1者(原告番号261P11)が処分を受けたのは,昭和62年2月19日の行為についてであり,同人の名簿不記載に当たって当該処分は考慮されていなかったと考えられるが,10か月もの停職処分を受けていたことからすれば,仮に名簿に記載されていたとしても,同年4月時点でJRに採用がされたとはにわかに考えがたいし,また中労委が命じたような採用候補者の再選考がされたとしても採用されなかった可能性が非常に高いというべきであるから,同人は賠償を求め得る立場にないというべきである。 - 32 -さらに,一審原告らは,原告番号230P3を名簿に記載しなかったことの違法をいうが,同一審原告については,昭和61年度末時点で55歳未満の者しか名簿に記載しないという設立委員提示の基準に照らし,名簿記載は困難であったというべきである。一審原告らは,そのような基準自体が違法であるとも主張するところであるが,事業団に再就職のために最長3年間勤務し得ることを参酌すれば,そのようにいえるか疑問であるのみならず,当該基準策定の権限は設立委員にあるところ ような基準自体が違法であるとも主張するところであるが,事業団に再就職のために最長3年間勤務し得ることを参酌すれば,そのようにいえるか疑問であるのみならず,当該基準策定の権限は設立委員にあるところであり,これに従った国鉄に直ちに責任があるとすることもできない。 以上によれば,本件不法行為①については,原告番号210P10,同229P2,同230P3,同231P4,同245P5,同261P11(以下,これらの者を合わせて「一審原告P2ら6名」という。)の各請求は,その余の点を判断するまでもなく理由がないというべきである(なお,一審原告P2ら6名以外にも,賠償が認められない一審原告らがいるが,これについては後に述べる。)。 エそこで次に,国鉄が,一審原告P2ら6名を除く一審原告らをJR北海道,JR九州の採用候補者名簿に記載しなかった点につき検討する。一審原告P2ら6名を除く一審原告らは,いずれも昭和61年12月時点では年齢は55歳未満であり,昭和58年4月以降,非違行為により停職6か月以上の処分又は2回以上の停職処分を受けていないところ,これらの一審原告らをJR北海道,JR九州の各採用候補者名簿に記載しなかった国鉄の行為は適法であったか,それとも違法であったかがここでの問題となる。この点に関し,一審原告らは,いずれも国労の組合員であったところ,国鉄はこのことを嫌悪して,採用基準を恣意的に運用し,JR北海道又は同九州の各採用候補者名簿に記載しなかったのであり,かかる行為は不当労働行為であり違法であると主張し,一審被告はこれを否定するので,以下,この点について判断する。 - 33 -(ア)上記イのとおり,本件採用基準及び国鉄による本件選定基準は,一応合理的なものと認められるところ,4月採用における北海道地区の所属組合別の職員の採用率は この点について判断する。 - 33 -(ア)上記イのとおり,本件採用基準及び国鉄による本件選定基準は,一応合理的なものと認められるところ,4月採用における北海道地区の所属組合別の職員の採用率は,上記引用に係る原判決「争点に対する判断」2(2)キ(ア)のとおり,承継法人全体でみれば,国鉄の分割・民営化に賛成していた鉄道労連が99.4%,北海道鉄産労が79.1%であったのに対し,これに反対していた国労は48.0%,同じく全動労は28.1%であった。また,4月採用における九州地区の所属組合別の職員の採用率は,承継法人全体でみれば,国鉄の分割・民営化に賛成していた九州鉄産労が84.4%,鉄労が100%,動労が99. 9%であったのに対し,これに反対していた国労は43.1%,同じく全動労は32%であった。このように4月採用においては,北海道,九州いずれの地区においても国鉄の分割・民営化に賛成していた組合に所属していた者とこれに反対していた組合に所属していた者との間で採用率に顕著な差がみられる。 (イ)一審原告らはこのような差が生じていることが所属組合による差別を裏付けるものである旨主張する一方,一審被告は,国鉄分割民営化に反対し,当局の施策に非協力的であった一審原告らの勤務成績が劣位に評価されたことを反映するにすぎない旨主張するところである。 そこで検討すると,上記イのとおり,本件採用基準は,国鉄在職中の勤務の状況から見てJR各社の業務にふさわしい者を採用するというもので,これについては知識技能及び適性だけでなく日常の勤務に関する実績等を基に判断するとされており,また,判断資料となった職員管理調書の評価項目には,業務知識,技能といった職員の基本的な執務能力に係る事項だけでなく,職場の規律維持,現状認識等に係る事項も含まれていた。そうする するとされており,また,判断資料となった職員管理調書の評価項目には,業務知識,技能といった職員の基本的な執務能力に係る事項だけでなく,職場の規律維持,現状認識等に係る事項も含まれていた。そうすると,国鉄が,これを踏まえて採用候補者名簿作成へ向けた職員の評価を実施するに当たり,分割民営化に対して国鉄が推し- 34 -進めていた施策に対する協力の度合いや,違法な争議行為への参加の有無等,分割民営化への反対闘争の中で個々の職員が取った行動の如何が,国鉄の当該職員に対する評価に影響することは十分あり得ることであり,したがって,分割民営化反対を掲げて国鉄当局の施策への非協力姿勢を鮮明にしていた国労に所属する組合員に対する評価が,JR採用の観点からすれば,結果的に低いものになったであろうことは否定できない。 なお,一審原告らの主張の中には,このような評価手法それ自体が不当労働行為を目的としたものであるとして,その公正性に疑問を呈する部分もある。しかしながら,職員管理調書の評価項目は多岐にわたるもので,それ自体に不当な内容のものが含まれているとはいえないし,また職場の規律維持や現状認識等に係る事項が相当程度含まれていることについては,臨調,再建監理委員会の答申やこれを受けた閣議決定によって定められた政府方針の中に,職場規律の確立や民間的経営の導入等が唱われ,最終的には国会における国鉄改革関連8法の成立により分割民営化が成るという一連の過程の中で,国鉄もこれに沿った形で施策を進め,人事評価の観点もこの動きを踏まえたものになったと認められるところであり,上記の評価手法によったことそれ自体が不当であるとはいえない。したがって,分割民営化に反対する組合とこれに協力する組合のいずれに所属するかにより採用率に差が生じているからといって,それが組合に着目 上記の評価手法によったことそれ自体が不当であるとはいえない。したがって,分割民営化に反対する組合とこれに協力する組合のいずれに所属するかにより採用率に差が生じているからといって,それが組合に着目した不利益取扱いを推認させると即断することはできない。 もっとも,このようにいえるのは,評価があくまで個々の職員の勤務状況等を踏まえ,公正かつ客観的に行われていることを当然の前提とするものであるから,実際の評価の運用において組合に着目した不利益取扱いが紛れ込んでいると認められる場合には,上記のような格差についての捉え方も自ずから違ったものになり得るものというべきである。そ- 35 -して,本件においては,職員管理調書の評価項目が,分割民営化に対する態度が相当程度反映し得るものとなっており,その運用の如何によれば,個々の職員の勤務実態それ自体というよりも,所属する組合の如何によって評定が相当程度左右されるような運用を許す余地がないともいい難い。のみならず,同調書は分割民営化実施のわずか1年前に導入され,適正な運用の在り方が固まっていたとまではいい難く,また公正で客観性のある運用を確保するためにどのような措置が執られていたのかも明らかでない(例えば,一審被告の主張中には,分割民営化反対の態度を取っていた職員につき,改悛の情が著しいのか,それとも非協力の行動を取り続けるのかが重視されて名簿記載の結果が異なったという趣旨の部分があるが,そういう二者択一的な観点が実際には大きな比重を占めていたのだとすると,もともとの多岐にわたる評価項目等が実際はどのように運用されていたのかが疑問にならざるを得ないし,さらにそのような観点の用いられ方如何によれば,それは分割民営化に反対する組合に所属しているか否かが大きな比重を占めていたというのと実質的に異ならな に運用されていたのかが疑問にならざるを得ないし,さらにそのような観点の用いられ方如何によれば,それは分割民営化に反対する組合に所属しているか否かが大きな比重を占めていたというのと実質的に異ならないとされる余地も出てくるであろう。)。 このような事情をも踏まえると,本件で,個々の職員に対する評価及びその結果である採用候補者名簿記載にあたり,所属組合に着目した不利益取扱いが紛れ込んでいないかについて,具体的な運用の状況を検討してみる必要がある。そこで以下,項を改めて順次検討する。 (ウ)名簿記載状況の検討a脱退組合員昭和61年半ばころから国労からの脱退者が顕著に増加し(原判決別表2),鉄労や動労に加入したり,昭和62年1月には国労から脱退した組合員によって北海道鉄産労や九州鉄産労が結成されたが,承継法人全体で見た場合の国労の採用率が上記のとおり,43.1%な- 36 -いし48.0%であったのに対して,鉄労や動労はほぼ100%の採用率となっており,鉄産労も79.1%ないし84.4%の採用となっている。このように,国労組合員が国労に残ったか,他の組合に移ったかによって,その採用率には大きな差がついている。 このことは,特に組合役員クラスでは,より顕著である(上記引用に係る原判決「争点に対する判断」2(2)キ(イ))。 すなわち,札幌地区においては,国労札幌地方本部在籍専従者であった7名のうち,昭和62年1月に北海道鉄産労に移った5名は,数度にわたる処分を受けながら(うち3名は減給2回,戒告2回の各処分歴があり,他も減給と戒告の双方の処分歴がある。減給の期間も6か月や3か月などにわたる。),4月採用において全員JR北海道に採用された。他方,国労に残った2名は,これらの5名よりも処分の数も程度も軽かった(1名は戒告1回のみ,1名は減給 ある。減給の期間も6か月や3か月などにわたる。),4月採用において全員JR北海道に採用された。他方,国労に残った2名は,これらの5名よりも処分の数も程度も軽かった(1名は戒告1回のみ,1名は減給1か月を1回のみ)にもかかわらず,いずれも不採用となっている(甲154)。 また,国労門司地方本部の役員をしていた者で職員として在籍していた者のうち,昭和62年1月に国労を脱退して九州鉄産労に移った者と引き続き国労に残った者の数及びそれぞれの中で採用された者の数(後記括弧内)を比較してみると,①同地方本部で鉄産労に移った者が3名(全員採用),国労に残った者が3名(全員不採用),以下同じく,②北九州支部で鉄産労5名(全員採用),国労9名(全員不採用),③小倉工場支部で鉄産労2名(全員採用),国労2名(全員不採用),なお車労6名(全員採用),④博多支部で鉄産労8名(全員採用),国労2名(1名採用),⑤佐賀県支部で鉄産労0名,国労11名(1名採用),⑥長崎県支部で鉄産労0名,国労9名(全員不採用)と極端に採用率が異なることが認められるし,門司地方本部傘下の分会役員だった者の採用状況についてみても,鉄産労ないし他の- 37 -組合に移籍した者の採用率が全体で9割程度であるのに対し,国労に残った者のそれは1割程度と著しい差が生じていることが認められる(以上,甲165)。 ところで,一般的にいって国労の役員はその闘争を中心的に担ってきた者であり,その意味で一審被告がいう職場規律の問題等については一般の組合員以上に責任を有していたはずの者であるから,勤務成績の評価に当たってこの点がマイナス要因として考慮されたとすれば,上記のように国労に残った役員の採用率が低い状況にあるのも,それなりに理解できないわけではない。しかしながら,名簿作成の直前まで,共に の評価に当たってこの点がマイナス要因として考慮されたとすれば,上記のように国労に残った役員の採用率が低い状況にあるのも,それなりに理解できないわけではない。しかしながら,名簿作成の直前まで,共に国労の闘争を中心的に担ってきており,その意味で国労に残留した役員と同程度に評価されても良いはずであった(札幌地区については,処分歴から見て,より劣位に評価されてもおかしくなかった)役員らが,国労を脱退して他の組合に入るや,むしろ,国労や鉄産労所属の組合員の一般的採用率よりも高い割合で採用されているというのは,以上の理解からはにわかに説明し難いものがある。また,これらの役員が鉄産労に移ったのは昭和62年の1月であるが,その時期は,国鉄が職員から出された意思確認書をとりまとめた上,選考作業を行い,同年2月7日に設立委員に対して採用候補者名簿を提出するまで1か月を切ろうかという,名簿記載が決定される直前の時期である。もともと,設立委員から示された本件採用基準においては,JR各社の業務にふさわしい者か否かについては国鉄在職中の勤務の状況からみて判断するとされているところ,上記のように名簿記載決定直前の時期に脱退し,その意味で一審被告のいう改悛の情を示した役員らについて,その勤務状況を実際に判断するだけの状況にあったのかについては疑問が残らざるを得ない。 以上の事情を考慮すると,国労に残った役員と脱退した役員との間- 38 -で採用率にここまで著しい差がついたのは,つまるところ,国労を脱退したかどうかという点に決定的な原因があったものと推認するほかない。 b鉄労と動労の取扱い先にも認定したとおり,設立委員が示したJRの採用基準は,「国鉄在職中の勤務の状況からみて,JR各社の業務にふさわしい者」というものであったが,ここにいう勤務の状況について b鉄労と動労の取扱い先にも認定したとおり,設立委員が示したJRの採用基準は,「国鉄在職中の勤務の状況からみて,JR各社の業務にふさわしい者」というものであったが,ここにいう勤務の状況については,「職務に関する知識技能及び適性,日常の勤務に関する実績等」を「総合的かつ公正に判断すること」とされており,また,職務遂行に支障のない健康状態であることも採用基準の一つとされていた。そして,職務に関する知識技能及び適性,日常の勤務に関する実績等を判断する資料となった職員管理調書は,業務知識,技能等の職員の基本的な執務能力に係る事項から職場の規律維持,服装の乱れ等に係る事項に至るまで計20項目にわたる評価項目が列挙されてもいた。 ところで,数千人規模にのぼる多人数の職員の集団がある場合,その平均的能力等は自ずから一定のレベルに収斂していくとは考えられるものの,当該集団における個々の職員について見れば,その能力や執務態度,非違行為の有無等は一定程度の広がりのある範囲で分布するのが通常であって,その中には適切に業務を遂行するだけの能力や態度が備わっていないと評価されたり,心身の健康状態が十分でないなどと評価されたりする者が含まれるのが,むしろ通常見受けられる事態と考えられる。したがって,このような集団を対象として上記のような多岐にわたる評価項目を踏まえつつ個別的に職員を評価していった場合,当該評価の対象となる職員の中には,知識技能及び適性,日常の勤務に関する実績等に照らして,JR各社の業務にふさわしいとはいい難い者が含まれたり,あるいは健康状態に難のある者が含ま- 39 -れたりすることになるのが自然であろう。そうすると,これらの評価項目によって劣位に評価された職員の中から,一定数の者が名簿に記載されない結果となることも,通常は避けられな ある者が含ま- 39 -れたりすることになるのが自然であろう。そうすると,これらの評価項目によって劣位に評価された職員の中から,一定数の者が名簿に記載されない結果となることも,通常は避けられないものと考えられる。 そこで本件における九州地区職員の採用率についてみると,承継法人全体で見た場合,原判決別表4記載のとおり,鉄労所属の組合員は,採用希望者が4540人であるのに対し採用者数も4540人であって,100%,すなわちこれだけの人数の者が1人残らず採用されていることが認められ,また動労所属の組合員は,採用希望者が3244人であるのに対し採用者数は3242人であって,わずか2名を除いてはすべて採用されており,その割合は99.9%にのぼっている。 このように8000人にもなろうとする対象者について,上記のような多角的かつ個別的な評価をした結果,採用基準の各観点から判断して,ほぼその全員がことごとくJRの業務にふさわしいとされて名簿に記載され,採用されたというのは,鉄労や動労の所属組合員の中に国鉄の政策に協力した者が多く,JR採用の観点からすれば,相対的に成績が優位にあるとされた者が多かったであろうことを考慮に入れても,首肯し難いものがある。しかも,国労を脱退して他の組合に移籍した者も多数存在するところ,これらの者のうち,鉄労や動労に移籍した者は上記のとおり100%(ないしほぼ100%)採用されているのに対し,鉄産労に移籍した者の採用率は原判決別表4のとおり,84.4%となっているのであって,同じ元国労組合員であっても移籍後の組合によって採用率に差が生じるという結果となっている。このような結果に加え,後に検討するように,国鉄当局が鉄労や動労とは緊密な協力関係を築く一方で,鉄労や動労が採用候補者名簿記載に際して自組合所属職員を有利に取 率に差が生じるという結果となっている。このような結果に加え,後に検討するように,国鉄当局が鉄労や動労とは緊密な協力関係を築く一方で,鉄労や動労が採用候補者名簿記載に際して自組合所属職員を有利に取り扱うよう国鉄に強く申し入れるなどしていた経緯にも照らすと,鉄労や動労に所属する組合員について- 40 -は,設立委員の示した本件採用基準にもかかわらず,よほどの事情でもない限り,基本的に全員を採用候補者名簿に記載するという運用がされていたのではないかとの疑いを否定できないところである。そして,これは逆にいえば,国労に所属した者についてはそのような扱いがされなかったということであり,国労所属の組合員にとっては不利益取扱いになったということができる。 そして,以上の検討は,九州地区職員の採用状況を踏まえたものであるが,北海道地区職員についても,鉄労と動労を含む鉄道労連の承継法人全体での採用率は,原判決別表3のとおり99.4%にのぼっており,九州地区のように100%にまでは達していないものの,極めて高率であるのは同様であって,九州地区職員の採用状況等を踏まえた上記のような疑問と同様の疑問が生じざるを得ない。 c全動労所属組合員の採用率との比較一審被告は,国労に所属した組合員が,国労の闘争方針に従い,国鉄当局の施策に協力せず,むしろこれを妨害する闘争をしていたが故に,その勤務成績が劣位に評価されたものであると主張する。この主張は,分割民営化に協力していた組合と反対していた組合とに所属する組合員の取扱いの差について説明するに当たっては,一応の説明となり得るものである。ところで,国鉄分割民営化に反対し,国鉄当局の施策に非協力な態度を取り続けていたという点では,全動労もまた国労と同様であるから,両組合間については,一審被告が主張するような採用率 り得るものである。ところで,国鉄分割民営化に反対し,国鉄当局の施策に非協力な態度を取り続けていたという点では,全動労もまた国労と同様であるから,両組合間については,一審被告が主張するような採用率の差に係る説明は妥当しないものである。そこで,国労と全動労との採用率を承継法人全体で見た場合,北海道地区の職員については,前者が48.0%,後者が28.1%,九州地区の職員については,前者が43.1%,後者が32.0%となっており,北海道と九州のいずれにおいても前者と後者との間では採用率に相当程度の- 41 -差が生じている。 ところで,国労も全動労も,国鉄分割民営化について反対の立場を取り,これに対する反対闘争を進めていた点では変わりがないだけでなく,両者に所属する組合員は,昭和61年12月1日時点で,国労が9万4435人,全動労が2085人(甲1425の15)と,いずれも相当大規模な組織であって,一般的な能力や勤務態度等において後者の方が前者よりも劣位な職員によって構成された集団であると評価するだけの事情も認められない。 そこでさらに,昭和58年以降の両組合の争議行為の状況をみると,これらの各組合は,独自にあるいは共にスト等の争議行為を行い,所属組合員が処分されるなどしてきたものであるが,順法闘争も含めれば全動労よりも国労の方が争議行為の回数は多かったことが認められるし(甲1428),争議行為による影響については,昭和58年3月の国労の順法闘争では329本の列車が運休し,同59年7月の国労の順法闘争では312本の列車が運休している(甲1425の6,9)のに対し,全動労の闘争によって列車の運休等が発生した事実は認められないなど,国労の闘争の方がより影響は大きかったことが窺える。また,両者が共に行った昭和60年8月5日のストライキに対 の6,9)のに対し,全動労の闘争によって列車の運休等が発生した事実は認められないなど,国労の闘争の方がより影響は大きかったことが窺える。また,両者が共に行った昭和60年8月5日のストライキに対する処分についてみると,被処分者総数は,国労所属の者が6万4126人,全動労所属の者が205人となっており,処分通告がされた直前の同年10月1日時点での組合員数(国労18万5908人,全動労2592人)と比較すると,処分された者が組合員中に占める割合は国労の方が相当程度高かったことが認められる(甲1425の11,12)。さらに,ワッペン着用闘争についてみると,その中には,両組合の組合員が処分されているものもある(甲1425の10)が,昭和60年5月の闘争(被処分者2万9089人)や同61年4月の- 42 -闘争(被処分者2989人)など,国労組合員のみが処分されているものもある(甲1425の14,15)。以上の状況をみる限り,全動労所属組合員の争議行為の方が,国労所属組合員のそれに比べて職場規律に対しより悪影響を与えていたといえる事情はないように思われる。 ところで,一審被告は,国鉄分割民営化に反対する組合が様々な違法な争議行為を行い,多数の被処分者を出していることを挙げて,そのような行為を行ったり処分を受けたりした職員が低い評価を受けるのは当然のことであると主張しており,一般論としてはそれは理解できるところである。しかし,以上のとおり,争議行為の態様や処分状況等からして,全動労所属組合員の方が国労所属組合員よりも低く評価されるべき事情があるともいい難いように考えられるにもかかわらず,現実の採用結果は,全動労所属組合員の方が国労所属組合員よりも明らかに採用率が低くなっている。加えて,全動労組合員らがJR採用における不当労働行為を理由に もいい難いように考えられるにもかかわらず,現実の採用結果は,全動労所属組合員の方が国労所属組合員よりも明らかに採用率が低くなっている。加えて,全動労組合員らがJR採用における不当労働行為を理由に損害賠償を求めている事件では,それらの者の多くがストに参加していなかったことも窺われるところである(甲1448)。もちろん,個々の職員の評価に当たっては,処分歴等だけでなく,能力や勤務態度等様々な事情を考慮に入れるものであろうが,一審被告自身が処分歴は重要な考慮要素である旨主張している中で,以上のような処分の状況と実際の採用とに全体的に見て乖離があることについては疑問が生じざるを得ず,また何故にこのような違いが生じているかを明らかにする証拠もない。そうすると,このような差がついた理由としては,当局側にとって全動労が国労よりもより嫌悪すべき組合であって,これに所属する職員についてはその評価が劣位になっていたのではないかとの疑いが拭いきれないところである。 - 43 -d小括以上検討してきたところによれば,名簿記載を判断するにあたり,個々の職員の勤務状況だけでなく,その所属する組合の如何が考慮されたことを推認させ得る事情があるというべきであり,採用率についてこれだけ顕著な差がついた理由の一端は,個々の職員の成績だけでなく所属組合による不利益扱いがあったことにあるのではないかと推認し得るところである。 (エ)不当労働行為の意思そこでさらに,国鉄当局が,国労に対して嫌悪感を抱き,その弱体化を図る意図を持っていたと認め得るような事情があったかどうかについて検討すると,次の点を指摘することができる。 a国鉄と鉄労,動労との関係先に認定したとおり,鉄労と動労は分割民営化に協力する姿勢を示し,昭和61年7月には全施労等と共に改革労協を結成した について検討すると,次の点を指摘することができる。 a国鉄と鉄労,動労との関係先に認定したとおり,鉄労と動労は分割民営化に協力する姿勢を示し,昭和61年7月には全施労等と共に改革労協を結成したが,その直前に国鉄総裁をも招いて開催された鉄労全国大会における大会宣言には,「不安におののく国労に所属する多くの真面目な職員についても,『鉄労に入れば雇用が守れる』との理解を求める」とか「新事業体移行までには国労組織を壊滅状況に追い込む」といった内容があり,来賓として出席した動労や全施労等の委員長らも,国労打倒,国労崩壊のために闘おうという趣旨の挨拶をしている。その前後に発行されたこれらの組合の機関誌等には,国労に所属していては雇用は守れない,国労から組合員を脱退させ,自組合に加盟させようといった趣旨の記事等が繰り返し掲載されている(甲477の1ないし33)。 また,国鉄も,先に認定したとおり,改革に協力的な鉄労,動労と労使共同宣言や雇用安定協約を結んだり,動労に対しては202億円の賠償を求める訴訟を取り下げただけでなく,総裁をはじめとする幹- 44 -部がこれらの組合の集会や懇親会等にしばしば顔を出して,激励の挨拶をするなどしていたが,他方で,分割民営化に反対する国労,全動労との間ではこのような対応は何ら執っていない。 そして,鉄労や動労等によって構成される改革労協は,国鉄の設立委員に対する採用候補者名簿提出が目前に迫った昭和62年1月29日,国鉄当局との間で労使協議会を開き,「何も努力しない者や,妨害する者が居座れば職場は乱れる。」,「労使共同宣言にもとづき,まじめに努力してきた正直者がバカをみるようなことが絶対にあってはならない。」などと主張し,これに対して国鉄当局側は,「労使共同宣言は労使関係の基本であり,国鉄改革の原動力である 同宣言にもとづき,まじめに努力してきた正直者がバカをみるようなことが絶対にあってはならない。」などと主張し,これに対して国鉄当局側は,「労使共同宣言は労使関係の基本であり,国鉄改革の原動力である。鉄道労連が新しい事業体の中核である。」,「共同宣言の精神に則って努力した職員は,当然報われる。」などと対応した(甲477の33)。 以上のとおり,国鉄が鉄労及び動労の協力を得る一方で,これらの組合は協力に応じている以上自組合所属職員の有利な扱いをするよう国鉄に対して求めていたものと認められるが,国鉄が分割民営化を実現するためには鉄労や動労との協力関係を維持することが不可欠であったことからすれば,国鉄当局においてはこれらの組合の上記のような意向を正面から無視しにくい状況にあったと推認される。国鉄当局内部においても,職員局が動労とのしがらみに足を取られているとの評価が一部にあったこと(甲1083,164頁),昭和62年1月の上記申入れが改革労協内で決定された直後に,国鉄当局内部において,採用候補者名簿記載につき①改革労協,②共同宣言調印組合(改革労協を除く。),③その他(国労を含む。)に大分けした上で,組合種別の記載者数を報告するよう指示する書面が人事担当者宛に出されていること(乙20,339頁,359頁)等もこのような推認に沿う事情ということができる。 - 45 -b幹部の言動先に認定したとおり,国鉄の幹部は,分割民営化に協力的な鉄労,動労の大会に参加して挨拶をするなどし,また,良い子と悪い子に職場を二分化する必要があるいった内部書面を出したり,会議等において,不当労働行為をやらないということはうまくやるということであるとか,国鉄分割民営化に協力的な組合に所属する職員からJRへの採用者が多く生まれる可能性があるといった内容の発言をす り,会議等において,不当労働行為をやらないということはうまくやるということであるとか,国鉄分割民営化に協力的な組合に所属する職員からJRへの採用者が多く生まれる可能性があるといった内容の発言をするなどしていた。また,P27職員局次長は,昭和62年1月20日付「○○」のインタビュー記事で,「一つの企業体に一つの組合というものを目ざしていく方向であってほしいと思います。この期待感から見ておりますと,流動化しそして組織の状況が急速に変動していく過程で,一方は減っていくと共に,改革労組協は完全に多数派を握ったということになります。」,「4月1日で(中略)会社との関係では一企業一組合というのが実現される形になるということで,これは我々としては朗報でありたいへん結構だと考えているところです。」などと発言している(甲476)。 さらに,甲1083(P27職員局次長のJR東海会長就任後の著作物)によれば,第二次労使共同宣言締結と動労に対する202億円損害賠償訴訟の取下げについて,国鉄はこれを状況の主導権を引き続き握るための最後の一手と位置づけ,国労が第二次労使共同宣言締結に応じず迷走し,国労の組合員は失望して自律的に行動するようになるであろうと予想した上で行ったものであること,その実行方法は,国鉄において,鉄労,動労,政府,与党の主要人物に対して秘密裏の根回しをすべて終え,鉄労,動労らを含む改革労協との間で先に第二次労使共同宣言を締結し,同宣言発表の記者会見も終えた上で,国労に対して同宣言の締結を申し入れたというものであり,結局,国労は- 46 -これに応じられなかったことが認められる。また,同証拠によれば,昭和61年12月,希望退職が計画数を上回っており,このまま希望退職者が増加すると新会社が引き受ける要員枠との関係で当局が国労を選別で これに応じられなかったことが認められる。また,同証拠によれば,昭和61年12月,希望退職が計画数を上回っており,このまま希望退職者が増加すると新会社が引き受ける要員枠との関係で当局が国労を選別できなくなる旨国労が宣伝し始めるであろうから,希望退職募集を打ち切り,少しでも国労排除の余地を残すべきではないかとの考えを総裁が示すことがあったことも認められる(なお,P27証人は,当該部分は総裁が外部の者からそのように言われて迷っていたというものである旨証言するが,甲1083の186頁はそのようには読めない。)。 以上のような国鉄幹部の言動を総合すれば,国鉄幹部においては国労を嫌悪し,これを弱体化させる意思があった疑いが濃厚というほかない。そこで,さらに現場における管理者の言動等について検討する。 c現場における管理者の行動中労委の救済命令では,駅長等の現場管理者が,国労にいては新会社への採用は難しいとして国労所属の職員に対して同組合からの脱退を勧める例が各地であった旨認定している(甲6,7,278等)。 これらは,主として国労組合員の審問結果等を基礎とするものと考えられるところであり,それらの審問結果の客観的裏付けの程度や,これらの動きが現場管理者個人の意向によってではなく,国鉄当局の意向を踏まえたものであったと認定するだけの証拠があるのかについては,なお検討の余地がないではない。 しかしながら,当時,地方の鉄道管理局の部長を務めた人物が,国労に所属していては新会社に採用されないと陰に陽に思わせることで国労の地方組織を切り崩していった旨自認していること(甲1075の1),国鉄職員局の職員が,昭和61年5月にいったん同局を出て鉄労の幹部となり,国鉄のいわゆる若手キャリア職員の協力も得つつ- 47 -各地の国労組合員に対して脱退の働きかけ ること(甲1075の1),国鉄職員局の職員が,昭和61年5月にいったん同局を出て鉄労の幹部となり,国鉄のいわゆる若手キャリア職員の協力も得つつ- 47 -各地の国労組合員に対して脱退の働きかけを行うなどし,一定の成果を上げた後,同年12月になって再び国鉄に復帰していること(甲1446),先に認定したとおり,良い子と悪い子に職場を二分化する必要があるという趣旨の書面が国鉄本社の課長から各機関区所長宛に出ていたことがそれぞれ認められるところであり,これらの諸事情をも考慮すると,細部まで救済命令で認定されたとおりであったかはともかくとして,各地の現場における管理者の言動中には,国労を脱退すれば新会社に採用されるという趣旨のものがあったことは事実と認められ,またそのような現場管理者の言動は個々の者が自己の信念に基づいて勝手に行っていたというものではなく,国鉄当局の意を体して行っていたものと推認することができる。 d小括以上検討したところによれば,国鉄当局は,国鉄分割民営化に協力的な鉄労及び動労との間で良好な関係を保ちながら諸施策を展開し,分割民営化実現後もこれらの組合を中心とした労使関係とすることで分割民営化後の円滑な経営を目指していた一方,国労の解体と自組合の組織拡大を目指すこれらの組合からは,採用においてこれらの組合所属の組合員が有利な取扱いを受けるよう求められていたものであり,国鉄の幹部も,国鉄分割民営化に反対して非協力を続ける国労に対して,その勢力の弱体化を目指すような言動をしていたことが本社レベルでもまた現場レベルでも存在したというべきである。以上の状況をみるならば,国鉄は,国労嫌悪ないし国労弱体化の意思を持っていたものと推認されるところであり,このような意思に基づくと考えられる行動を取りながら,採用候補者名簿作成の段 いうべきである。以上の状況をみるならば,国鉄は,国労嫌悪ないし国労弱体化の意思を持っていたものと推認されるところであり,このような意思に基づくと考えられる行動を取りながら,採用候補者名簿作成の段になってはこのような意思を一切働かせることなく選考をしたとは考えにくく,また実際にも,採用状況を検討すると,先に見たとおり,選考にあたり所属組合- 48 -の如何を考慮したと推認し得る事情の存在が認められるところである。 このような事情を総合すると,国鉄には,採用候補者名簿記載者の選考にあたり,不当労働行為の意思があったものと推認される。 (オ)まとめ以上のとおり,本件の各組合毎の採用比率に顕著な格差があり,そのような差がついた事情について,単に個々の職員の成績だけでは説明できず,むしろ職員の所属する組合が考慮されたことを推認させる事情があることに加えて,国鉄においては不当労働行為の意思を有していたと推認されることからすれば,各組合毎の採用比率の違いには,職員の成績だけではなく,国労所属それ自体が不利益に取り扱われていたことが背景にあり,これもまた名簿記載者の選考に影響していたものと推認することができるというべきである。 (カ)一審被告の主張についてところで,一審被告は,いわゆる大量観察方式は本件には妥当せず,不利益取扱いについては個別立証によるべきと主張するので,この点について付言する。 既に検討してきたところから明らかなとおり,当裁判所としては,国労の所属組合員は,鉄労や動労の所属組合員に比して,一般的執務能力等についてはともかく,国鉄の政策への協力を含む勤務状況等に照らした場合,JR採用の観点からみて低めに評価されていたであろうことを否定するものではなく,したがって,国労所属の職員集団と鉄労や動労所属の職員集団とが同質であるこ 政策への協力を含む勤務状況等に照らした場合,JR採用の観点からみて低めに評価されていたであろうことを否定するものではなく,したがって,国労所属の職員集団と鉄労や動労所属の職員集団とが同質であることを前提として採用率を比較しているわけではない。しかしながら,採用状況を子細に検討した場合に一審被告の主張からは十分に説明できず,むしろ所属組合に着目した取扱いがあったことを窺わせる事情がある場合には,当該採用率の格差の少なくとも一端は所属組合による不利益取扱いとして生じたものではないかと- 49 -推認することが可能というべきである。この場合,このような推認を否定するための説明の負担を一審被告に求めることにはなるが,主張,立証及び反証の必要性は事案の如何によっても変わるというべきであり,既に述べた事実関係の下では,人事評価に関する資料を所持している一審被告側に反証の必要性が生じ,反証が功を奏しない場合は,上記推認のとおり事実認定されてもやむを得ないものであり,それが不当とはいい難い。 もっとも,本件の一審原告それぞれについて,勤務成績や不利益取扱いの程度がどのようなもので,公正な選考がされれば採用候補者名簿に記載されていたか否かを個別的に明らかにするだけの立証は,これまで検討してきたところからしても十分尽くされているとはいえず,これを明らかにするためには,より個別的な事情についての立証が必要になるのは一審被告主張のとおりである。しかしながら,そのような個別的事情まで隈無く明らかにするのではなく,一審原告らの選考に当たって所属組合に着目した不利益取扱いが一般的にされていたか否かということに立証の対象を絞るならば,それは必ずしも個別立証によるまでもなく認定し得るというべきである。そして,そのような不利益取扱いがあった場合,ことの性質上, 益取扱いが一般的にされていたか否かということに立証の対象を絞るならば,それは必ずしも個別立証によるまでもなく認定し得るというべきである。そして,そのような不利益取扱いがあった場合,ことの性質上,そのような扱いは個々の組合員に着目してされるものではなく,所属組合の如何という当該組合に所属する者に共通した属性に着目してなされるものであるから,当該組合に所属した職員についてはおしなべて選考にあたり所属組合の如何が考慮されたものと推認することが可能である。本件では,先に検討したとおり,国鉄が国労所属の事実を選考にあたり一般的に不利益に取り扱っていたと認められる以上,国労に所属していた一審原告らについてもそのような取扱いがされたと推認し得るというべきである。なお,国労組合員からも少なからぬ者がJR北海道や同九州に採用されていることは事実であるが,こ- 50 -れらの者については,その勤務状況等を考慮した結果,所属組合が国労であることによる不利益を考慮しても採用候補者名簿に記載してよいと判断されたものと考えられるところであり,以上の推認を左右するものではない。 (キ)以上の認定を踏まえた上で,次項において,消滅時効完成の有無について検討し,その後,後記4において損害の範囲等につき検討する。 (3)本件不法行為①に基づく損害賠償請求権等の時効消滅の成否ア一審被告は,本件不採用は昭和62年4月1日に行われたところ,本件訴えは,一審原告らが加害者及び損害を知った時から既に3年以上を経過して提起されたものであることは明らかであるとして,一審原告らのJR北海道,JR九州の各採用候補者名簿への不記載にかかる不法行為①に基づく損害賠償請求権等は一審被告の時効援用により既に時効消滅していると主張する。そこで,以下,この点について判断する。 イ消滅時 北海道,JR九州の各採用候補者名簿への不記載にかかる不法行為①に基づく損害賠償請求権等は一審被告の時効援用により既に時効消滅していると主張する。そこで,以下,この点について判断する。 イ消滅時効の起算点について検討するにあたっては,まず,本件において賠償が認められる損害の内容を明らかにする必要があるところ,その詳細は後記4で検討するとおり,本件においては,一審原告らが,国鉄による不公正な選考に基づく採用候補者名簿不記載によって,採用手続上,4月採用の可能性が断たれたことにつき,当該可能性侵害による精神的損害が賠償の対象になるものというべきである。したがって,名簿不記載がいかなる結果を招くのかについての認識の如何によって損害の認識の如何も左右されることとなる。 なお,この点,一審被告は,名簿に記載されなかったことによる精神的損害は,JR北海道等に採用される余地がなくなったことに伴う損害とは性質の異なる損害であり,当該精神的損害は採用候補者名簿不記載が判明したころに既に認識されていたから,その時点から消滅時効が進行する旨主張する。しかし,当裁判所は,不採用を招くという結果と切り離された,- 51 -採用候補者名簿に記載されなかったことそれ自体による精神的損害について賠償すべきと考えるものではない。仮に名簿に記載されなくても4月採用の余地があったというのであれば,不記載について慰謝料の支払いを命じるほどの精神的損害があったとは解されないのであるが,本件では,名簿不記載により不採用という結果を制度上不可避的に招くからこそ,それにより慰謝料支払いの対象となるほどの精神的損害が生じるというべきである。そうすると,損害発生を認識するにあたっては,採用候補者名簿不記載により不採用という結果が確定してしまうことの認識が当然に必要となるというべ いの対象となるほどの精神的損害が生じるというべきである。そうすると,損害発生を認識するにあたっては,採用候補者名簿不記載により不採用という結果が確定してしまうことの認識が当然に必要となるというべきであり,この点の認識如何とは関係なく消滅時効が進行を開始するという一審被告の主張は採用できない。 ウしたがって,本件において,一審原告らが,一審被告に対する賠償請求が事実上可能な状況の下に,その可能な程度に損害及び加害者を知った時とはどの時点であったかについて判断するに当たっては,名簿不記載により不採用という結果が確定してしまうという点の認識の如何が問題になるというべきであるところ,本件では,これは改革法23条の解釈の如何と関わることになる。そして,この点につき,本件では以下の事実が認められる。 ①改革法23条の解釈に関する国会答弁において,当時の運輸大臣等が,国鉄当局が行う名簿の作成など新会社に移行する職員の選定は,国鉄が設立委員の補助者として行う行為であり,その法律関係は準委任に近いものであるから,どちらかといえば代行と考えるべきであるなどと答弁している(甲992,964の2)。 ②国労が名簿不記載につき国鉄を被申立人として,不採用についてJRを被申立人としてそれぞれ不当労働行為救済命令を申し立てたところ,前者につき国労委は,改革法23条の解釈によれば国鉄が不当労働行為の当事者ではないとしてその申立てを却下する一方で,後者につき各地- 52 -の地労委及び中労委は,いずれも同条の解釈によればJRが不当労働行為の当事者であるとして,一審原告らについての選考やり直し等を命じたが,これにつき提起された救済命令取消訴訟において,同条に関しこれらと異なった解釈をした東京地方裁判所は,JRは労働組合法7条の「使用者」にあたらないとの理由で 告らについての選考やり直し等を命じたが,これにつき提起された救済命令取消訴訟において,同条に関しこれらと異なった解釈をした東京地方裁判所は,JRは労働組合法7条の「使用者」にあたらないとの理由で当該救済命令を取り消し,平成15年の本件最判でその判断が確定するに至った(これらの詳細は,原判決「争点に対する判断」2(4)イ(ア)に記載のとおりであるから,これを引用する。)。 ③上記②の取消訴訟においては,中労委の救済命令を取り消す旨の地方裁判所の結論が,高等裁判所及び最高裁判所の各段階でも維持されているものではあるが,平成14年の東京高等裁判所の判決においては,一審の結論を維持したものの,理由中においては,改革法23条を踏まえるとJRが労働組合法7条にいう「使用者」にあたるとの判断が示され(乙18),また本件最判においても,5人中2人の裁判官が同様の観点から反対意見を述べている(甲997。ちなみに,本件最判は,国鉄が採用候補者の選定等に当たり組合差別をした場合は,国鉄は使用者としての責任を免れないと判示する。)。 これらの事実からすると,仮に上記②の救済命令が維持されていたならば,一審原告らには依然としてJRに採用される可能性があったこととなるが,これが取り消された以上,名簿不記載により一審原告らが希望するJR会社への採用可能性が絶たれたという法的効果は,民事実体法上,名簿不記載になった時点で確定していたといわざるを得ない。しかし,一審原告らにおいて当然にそのことを認識し得たかについてみると,改革法が前例のない新たな立法であることに加え,上記のとおり,政府の同法23条に関する国会答弁の内容がJRの使用者性を認めるものとも解釈可能であったこと,国労委及び労働委員会の判断が同条の解釈からしてJRには- 53 -労働組合法上の使用者性 記のとおり,政府の同法23条に関する国会答弁の内容がJRの使用者性を認めるものとも解釈可能であったこと,国労委及び労働委員会の判断が同条の解釈からしてJRには- 53 -労働組合法上の使用者性が認められると判断し,JRに対して選考やり直し等を命じていること,これに対する取消訴訟においても,JRの使用者性についての裁判所ないし裁判官の意見は必ずしも一致したものでなかったことに照らして,改革法23条の解釈とこれを踏まえたJRの使用者性判断が一義的に導かれ得るような容易なものであったとはいい難い。そうすると,結果的に名簿不記載の時点で不採用の結果が確定していたことになるとしても,一審原告らにおいて当然にその旨を認識し得たとまではいい難い。 もちろん,そのような場合であっても,消滅時効の進行を止めるために一審原告らは別途国鉄又は事業団を相手に早い段階で訴訟を提起しておくべきであったとの議論も成り立ち得ないではない。しかし,一審原告らの所属する国労は,不当労働行為からの救済と所属組合員のJR採用を目指して労働委員会に救済命令を申し立てており,その申立てを一定程度認容する内容の救済命令が出た後は,JR側から提起された救済命令取消訴訟で救済命令の維持を図るべく活動していたのであって,このように一審原告らにおいて,まず労働委員会の救済命令による解決を考え,ことに国労の申立てを認める救済命令が出された場合に,国労による訴訟活動を通じてその維持を図ろうとするのは,労働委員会が設けられた趣旨やその権限等に照らすと自然な成り行きということができる。そして,このように救済命令の維持を通してJRへの採用を求める訴訟を追行しながら,他方においてJRに採用されないことを前提とする損害賠償請求を一審被告に対して別途請求することは,相矛盾する態度を指摘されるなど ように救済命令の維持を通してJRへの採用を求める訴訟を追行しながら,他方においてJRに採用されないことを前提とする損害賠償請求を一審被告に対して別途請求することは,相矛盾する態度を指摘されるなどして,最大の目的であるJR採用を求める取消訴訟において,国労ひいては一審原告らに不利益を与えるおそれがあることも否定はできなかったというべきである。このような事情に加えて,改革法23条についての解釈が簡単なものでなく,一審原告らの同条についての解釈にもそれなりの根拠があったこ- 54 -とをも考慮すると,救済命令が裁判所によって最終的に取り消される可能性に備えて時効中断のための措置を執っておくべきことが,一審原告らに当然に期待できたとまではいい難い。 以上検討してきたところによれば,平成15年の本件最判で救済命令の取消が確定するまでは,一審原告らが,一審被告に対する損害賠償請求が事実上可能な状況の下に,その可能な程度に損害及び加害者を知っていたとはいい難いというべきである。 エなお,これについて,一審被告は,従来の判例は,一貫して,被害者が損害及び加害者を知ったと認定するためには確定判決等の公的判断を要しないとしている旨主張するが,一審被告がその主張を裏付けるものとして援用する判例(最高裁判所第一小法廷昭和43年6月27日判決・訟務月報14巻9号1003頁)が,「不法行為であることは,被害者が加害行為の行われた状況を認識することによって容易に知ることができる場合もありうるのであって,その行為の効力が別訴で争われている場合でも,別訴の裁判所の判断を常に待たなければならないものではない」旨説示していることからしても,事情の如何によっては別訴の裁判所の判断がなされた時点から時効が進行する場合のあることは当然の前提となっているものというべきで を常に待たなければならないものではない」旨説示していることからしても,事情の如何によっては別訴の裁判所の判断がなされた時点から時効が進行する場合のあることは当然の前提となっているものというべきである。そして,具体的な事案において,別訴での判断確定後に時効の進行を認めた裁判例(最高裁判所大法廷昭和45年7月15日判決・民集24巻7号771頁,最高裁判所第二小法廷昭和58年11月11日判決・判例タイムズ515号124頁)に照らしても,本件の事実関係の下では,平成15年の本件最判が言い渡された時点から,本件の不法行為①に係る損害賠償請求についての時効が進行するものと解される。 また,一審被告は,一審原告らが本件最判前の時点で本件訴えを提起していることや,国鉄にも不当労働行為責任がある旨国労が見解を示していたこと等を指摘して,一審原告らは早い段階から一審被告に対する損害賠- 55 -償請求が可能な程度に加害者及び損害を知っていた旨主張するところでもあるが,これに対する当裁判所の判断は,既に説示したところに加えて,原判決95頁15行目冒頭から25行目末尾まで及び同96頁1行目冒頭から24行目末尾までに記載のとおりであるから,これを引用する。 オ以上検討したところによれば,一審被告の消滅時効の主張は理由がない。 したがって,消滅時効主張が権利濫用に該当するか否かについては判断しない。 争点2及び4(本件不法行為②③及びこれらに基づく損害賠償請求権の時効消滅の成否)についてこれについての当裁判所の判断は,原判決「争点に対する判断」3に記載のとおりであるから,これを引用する。一審原告らは,当審において,本件不法行為②③に基づく損害賠償請求権は時効消滅していない旨種々主張するが,これらの主張を考慮しても,上記引用に係る判断は左右されない。 あるから,これを引用する。一審原告らは,当審において,本件不法行為②③に基づく損害賠償請求権は時効消滅していない旨種々主張するが,これらの主張を考慮しても,上記引用に係る判断は左右されない。 争点3(本件不法行為①と相当因果関係のある損害賠償の範囲,損害回復方法)について(1)賃金相当額等の損害賠償請求についてア一審原告らは,国鉄から組合差別を受けることなくJR北海道,JR九州の各採用候補者名簿に記載されていれば,前記JR各社に採用されていたはずであるとし,予備的請求として,別紙原告別損害賠償請求額一覧表記載のとおり,これら一審原告らが前記JR各社に採用されていたら得られたであろう定年まで働いた場合の賃金相当額等の支払を請求する。 イしかし,仮に,一審原告らについて,勤務評定を恣意的に低く行い不利益に取り扱うという不当労働行為(本件加害行為)が行われなかったと仮定しても,同原告ら全員が希望する地元JRであるJR北海道,JR九州に採用されたはずであるとの証明はいまだされていないというべきである。 (ア)すなわち,一審原告らは,いずれもJR北海道又はJR九州への入- 56 -社を希望していたものであるが,両社においては,入社希望者が本件基本計画に定められた要員数を大きく上回っており,一審原告ら全員の国鉄在職中の勤務成績について正当な評価が行われたとしても,一審原告ら全員が,入社希望者全体の中で上位に位置しJR各社の採用候補者名簿に記載されるべきであったと認めるに足る証拠はない。このことは,前記引用に係る原判決「争点に対する判断」2(2)キのとおり,国鉄の分割・民営化に賛成していた労働組合所属の職員全員がJR各社の採用候補者名簿に記載されたわけではなく,同2(2)アのとおり,国労が一貫して国鉄の分割・民営化に反対し,違法なス 2)キのとおり,国鉄の分割・民営化に賛成していた労働組合所属の職員全員がJR各社の採用候補者名簿に記載されたわけではなく,同2(2)アのとおり,国労が一貫して国鉄の分割・民営化に反対し,違法なストライキを含む種々の運動を展開していたことからも明らかである。 (イ)この点,一審原告らは,当審において,積極的因果関係として,自らが採用候補者名簿に記載されるべき資質を有していたこと,及び消極的因果関係として,JRに採用された職員の中には勤務成績不良の者がいたこと,それ故に,一審原告らが採用候補者名簿に記載されるべきであったことを,実例を挙げて主張し,その証拠として,一審原告らの陳述書(甲1101ないし1215,1217ないし1225,1227ないし1365,1367ないし1390)等を提出する。しかしながら,一審原告らの主張どおりの事実が認められたとしても,それらの事実は断片的なものであって,これのみにより,一審原告らがJRに採用された職員よりもはるかに優良であって,前認定の不当労働行為がなければ,その職員の代わりに一審原告らが採用候補者名簿に記載されるべきであったということができない。この点,JRに採用された国労組合員が職場で信頼を勝ち得ていることも立証するために一審原告らが申請した証人P28の証言及び同証人の陳述書(甲1401)によれば,同証人は,国労の所属組合員であるところ,追加採用によりJR東日本に採用された後は,乗客の安全確認等に配慮しながら勤務していることが- 57 -認められるが,他方,同証言によれば,同証人は,同社が推奨する自己啓発や業務改善のための少集団活動や増収活動には一切参加せず,また,これに関する意見も提出していないことも認められる。一審原告らの主張内容や本件証拠関係(証人P29の証言,乙105等)に照らす 自己啓発や業務改善のための少集団活動や増収活動には一切参加せず,また,これに関する意見も提出していないことも認められる。一審原告らの主張内容や本件証拠関係(証人P29の証言,乙105等)に照らすと,採用候補者名簿作成当時の国労組合員の多くは,証人P28の証言から窺われるのと同様の執務に対する姿勢を有していたものと推認されるところであるが,これは民間会社の職員としての執務姿勢をも求めるJR側の観点からすれば望ましいものとはいえなかったであろうと考えられる。そうすると,一審原告らが採用候補者名簿に当然に記載され得たはずであるとはいえず,他に,一審原告らの上記主張を認めるに足りるべき証拠はなく,その主張には理由がない。 (ウ)なお,一審原告らは,本件で個別立証が可能であれば一審原告ら全員が地元JRに採用されたことを証明し得るところ,一審被告がそれに必要となる職員管理調書を証拠として提出せず,立証を妨害しているとして,民事訴訟法224条の趣旨を踏まえ,不利益取扱いがなければ地元JRに採用されていたという一審原告らの主張を真実と認めるべきである旨主張する。しかし,仮に同条についての一審原告らの主張を前提にしたとしても,裁判所としては一審原告らの主張を真実と認めることができるかどうかについて裁量権を有するところ,本件において,一審原告らの勤務成績が他の組合所属の職員と同等のレベルであると認めるだけの事情はなく,むしろ先にも述べたとおり,JR採用の観点からすれば,平均的な勤務成績としては低めであった可能性が十分あると推測されるのであり,一審原告らが主張するような認定をすることは相当でないというべきである。 また,一審原告らは,不当労働行為からの救済に当たっては原状回復が原則であるから,不当労働行為がなければ一審原告らが希望するJR- 主張するような認定をすることは相当でないというべきである。 また,一審原告らは,不当労働行為からの救済に当たっては原状回復が原則であるから,不当労働行為がなければ一審原告らが希望するJR- 58 -会社に採用されたであろうことが擬制されるべきであるとか,故意に基づく不法行為である以上,採用されたら得たであろう逸失利益等をも賠償の対象とし得るなどと主張するが,損害賠償に係る民事実体法の解釈としてそのように解する根拠があるとはいい難い。さらに,一審原告らは,いわゆる確率的心証ないし割合的因果関係論に基づき,本件においても職員全体の平均的な採用率を乗じた形での逸失利益についての損害賠償が認められるべきであるとも主張する。一審原告らのこの主張は,個々の一審原告毎に確率的心証の程度を検討するというのではなく,一審原告ら全体についていわば包括的な確率的心証を得た上で財産的損害の一律割合での賠償を命じるべきという趣旨のものと解されるが,これは不法行為における相当因果関係論の考え方を大きく超えるものといわざるを得ず,にわかにこのような考えを採用し得るとはいい難いし,そもそも採用可能性の確率が本件証拠上明らかであるともいえず,したがって一審原告らのこの主張も採用できない。 ウよって,一審原告らがJR北海道又は同九州に採用されたであろうことを前提とする賃金相当額等の損害賠償請求は,いずれも理由がない。 (2)慰謝料請求についてア以上のとおり,国鉄の不当労働行為とJR不採用との間に相当因果関係があるとして賃金相当額等の損害賠償を認めることはできない。しかし,本件の事実関係の下では,相当因果関係を認めるに足りるほど高いレベルのものではなかったにせよ,公正な選考がされれば一審原告らが採用候補者名簿に記載される可能性があったこともまた否定できない。こ し,本件の事実関係の下では,相当因果関係を認めるに足りるほど高いレベルのものではなかったにせよ,公正な選考がされれば一審原告らが採用候補者名簿に記載される可能性があったこともまた否定できない。このことは,上記2(2)エで検討したとおり,様々な観点から見て,組合所属の如何が名簿登載の結果に影響を与えていたと認められること,ことに採用候補者名簿作成の直前になって国労を脱退し,JRに採用された者が相当程度いたと認められることなどからも推認されるところである。したがって,- 59 -一審原告らには希望するJRに採用される相当程度の可能性はなおあったというべきところ,本件では,不公正な選考に基づく採用候補者名簿不記載により,そのような可能性が断たれたことになる。このような場合,不公正な選考に基づく名簿不記載によって採用の可能性が侵害されたことについて,一審原告らはその精神的損害の賠償を求めることができるというべきである(最高裁判所第二小法廷平成12年9月22日判決・民集54巻7号2574頁参照)。 この点,一審被告は,JR北海道及び同九州のいずれにも採用定員枠に厳しい制限があり,仮に選考をやり直したとしても全員が採用候補者名簿に記載されることはあり得ず,昭和62年2月時点における名簿記載と同じような状況になっていたはずであり,いわゆる期待権侵害を強調するのはこのような事情を無視したものであるとか,判例上,期待権侵害による損害賠償が認められている類型は限られており,それ以外の場合に認められるべきではないなどと主張するところである。しかし,前者については,既に検討したところに照らしてその主張は採用できないし,また,後者については,①名簿記載の有無に生命等の重大な法益が関係するわけではないものの,それは,長年にわたり従事してきた地元での鉄道業 ては,既に検討したところに照らしてその主張は採用できないし,また,後者については,①名簿記載の有無に生命等の重大な法益が関係するわけではないものの,それは,長年にわたり従事してきた地元での鉄道業務に引続き従事できるかどうかという,一審原告らの人生設計や家族の生計等に直接影響を与える事柄に関わるものであり,そこで問題となる法益は重要なものということができること,②一審原告らが採用候補者名簿に記載されるか否かは制度上もっぱら国鉄の判断に依存しており,一審原告らは地元JRに採用されるためには,まず国鉄による名簿記載を待つ以外に選択肢がない立場に置かれていたこと,③不当労働行為の形で不法行為が行われた場合,それはことの性質上故意の不法行為というべきであり,それによる精神的損害が生じているのが明らかなのに,結果との相当因果関係までは認められないことを理由に行為者を無責とするのが衡平の見地から見て相- 60 -当とはいい難いと考えられること等を指摘でき,これらの事情を考慮すると,本件においては上記のような採用可能性が侵害されたことについての損害賠償が認められるというべきである。 イそこで次に損害額について検討する。 原判決は,当裁判所が上記アで検討したものと実質的には同様の考えのもとに,一審原告1人あたり500万円の損害賠償を一審被告に対して命じたものと解されるところ,これについて,一審被告は,一審原告らが地元以外のJRへの採用を希望すれば4月採用で採用される可能性はあったし,その後のJR東日本等への追加的広域採用に応募すれば基本的に採用されていたはずであるにもかかわらず,一審原告らはJR北海道又は同九州への採用に固執して現在に至っているが,多くの職員が家庭の事情等を抱えながらも地元以外のJRに採用されていったことに照らして,その主張は たはずであるにもかかわらず,一審原告らはJR北海道又は同九州への採用に固執して現在に至っているが,多くの職員が家庭の事情等を抱えながらも地元以外のJRに採用されていったことに照らして,その主張は身勝手であり,慰謝料を命じる余地はないし,仮にそうでないとしても原判決が命じた500万円もの慰謝料は高額にすぎる旨主張する。 そこで,まず,4月採用についてみると,一審原告らの大半はJR北海道又は同九州への採用のみを希望していたところ,これらの会社では採用枠を大幅に超える採用希望があったため不採用になる者が相当程度生じることが予想される一方で,そのような事情がない本州のJR会社を希望すればより採用が認められ易かった可能性があることは否定できない。しかしながら,分割民営化へ向けた動きが始まるまで,一部の幹部クラスの職員はともかく,国鉄の職員一般において地元を遠く離れた全国的異動が行われていたとは認められず,P27職員局次長自身,地域指向性が非常に強いのが国鉄職員の特徴であると述べているところであり(甲474),分割民営化実施前の時点で広域異動を申し込んだ職員のうち少なからぬ者が家族の事情等から結果的に異動を辞退していること(乙41の2,258)にも照らすと,採用される可能性がより高いと予想される他地域のJ- 61 -R会社への採用を希望せず,あくまで地元のJR会社への採用を望んだとしても,それが身勝手とまでいうことはできない。 また,昭和62年4月以降の追加的広域採用についてみると,昭和62年5月から平成2年3月にかけてJR北海道と同九州以外のJR各社において4回にわたり追加的広域採用を募集し,初回の募集では,国鉄在職中の勤務状況等から見て各社の業務にふさわしいことという条件が付されていたが,その後の募集からはこの条件が撤廃され,各社の指定す において4回にわたり追加的広域採用を募集し,初回の募集では,国鉄在職中の勤務状況等から見て各社の業務にふさわしいことという条件が付されていたが,その後の募集からはこの条件が撤廃され,各社の指定する地域で各社の指定する業務に就く意思のあること等が求められるだけとなっており(乙17の1ないし5),このような条件の下では,就業する地域や業務等にこだわらなければ地元外のJR会社において勤務することが可能であって,実際にもこれに応募して採用された者も合計2300名いたことが認められる(乙17の6)。しかしながら,地元を離れやすいかどうかは職員の個別的事情にもよるところであって,追加的広域採用に応じた者が多数いたからといって一審原告らも同様に応じられたはずであるとも直ちにはいい難いし,また,追加的広域採用に応じないことをもって賠償を否定する事情とすることは,不公正な選考を受け入れた上でこれを前提とした対応を一審原告らに求めることにつながりかねない。これに加えて,その後取り消されたとはいえ,当時,各地の地労委において,不採用となった国労の組合員を地元のJRに採用したものとして取り扱うよう命じる救済命令が出ていたこと(甲276ないし290等)をも考慮すると,一審原告らが追加的広域採用に応じるなどしなかったからといって,これを直ちに身勝手とまでいうことはできない。したがって,一審被告主張の事情によって,慰謝料を認める程の損害がないとか,原判決が認めた額よりも減額すべきとはいえない。 他方,一審原告らは,慰謝料額を原判決認容額よりもさらに増額すべきであるとも主張するが,上記の一審被告指摘に係る事情も含め,これまで- 62 -に検討した諸事情に照らすと,原判決認容額よりも慰謝料額を増額させるべきともいい難い。このように,本件における諸事情を総合すれ も主張するが,上記の一審被告指摘に係る事情も含め,これまで- 62 -に検討した諸事情に照らすと,原判決認容額よりも慰謝料額を増額させるべきともいい難い。このように,本件における諸事情を総合すれば,慰謝料額としては一審原告P2ら6名を除く各一審原告につき(ただし後記(3)の一審原告らを除く。),原判決どおり500万円とするのが相当である。なお,一審原告らのうち日ごろの勤務状況からみて公正な選考がされれば名簿に記載される可能性が高かった者と必ずしもそうでない者とがいるとも考えられ,厳密にいえばそれぞれの程度に合わせて慰謝料額が異なるのが相当と考える余地もあるが,仮にそうであるとしても,本件では一審原告ら個々人の成績に係る書証がほとんど提出されていないこと(処分状況については証拠が出ているが,既に検討したとおり,実際の結果をみると,処分の有無が名簿記載にあたりどの程度の比重を持つのか判然としないところがあり,処分を受けた者を慰謝料額算定にあたり類型的に劣位に扱うのも難しい。)及び各人の精神的損害にことの性質上さほどの大小があるとも考えにくいことに照らすと,慰謝料額は各一審原告において同程度と考えるほかなく,また民事訴訟法248条によればそのような判断も許されるものと解する。 ウ以上,一審原告らについて述べてきたところは,不当労働行為による不法行為の成立及び消滅時効の未完成の点も含め,被控訴人P6についても同様に妥当するものであり,同人も不当労働行為に対する慰謝料として500万円の支払いを求め得る立場にあるというべきである。 (3)第一希望でないJR会社に採用されていた一審原告ら及び追加的広域採用に応募していた一審原告らの各損害についてア原判決が,第一希望でないJR会社に採用されたにもかかわらずこれを辞退した原告番号104P1に でないJR会社に採用されていた一審原告ら及び追加的広域採用に応募していた一審原告らの各損害についてア原判決が,第一希望でないJR会社に採用されたにもかかわらずこれを辞退した原告番号104P1につき賠償を認めなかったことについて,同一審原告は,第一希望であったJR北海道に採用されなかったことが差別であるなどとして賠償を認めるべき旨主張する。他方,一審被告は,この- 63 -点に関する原判決の判断を正当としつつ,第一希望以外のJR会社に採用されたがこれを辞退した一審原告が他にもおり,これらの一審原告については賠償を要する損害がないと主張する。 また,一審被告は,一審原告らのうちの一部の者が,追加的広域採用に応募して採用されていながらこれを辞退しているとして,これらの者については法的保護に値するほどの損害はないと主張し,これに対して一審原告らは,追加的広域採用に応じる義務はないし,その採用を辞退したことにはやむを得ない理由があるから,これらの者についても損害賠償が認められるべきであると主張する。 イそこでまず,意思確認書においてJR北海道以外のJR会社でもよいとの意思を示し,その結果当該JR会社に採用されながら,その採用を辞退した一審原告について検討すると,これらの一審原告は,第一希望以外でも応じる姿勢を示しながら(これが詐欺強迫等に基づくと認めるだけの事情はない。),採用の段になって結局自らの意思で採用を断ったのであるから,JRに採用されなかったことによる不利益は自ら引き受けるのもやむを得ないというべきである。これについて,一審原告らは,第一希望であったJR北海道に採用されなかったこと自体が所属組合に着目した不利益取扱いであるから賠償を求め得る旨主張するのであるが,確かにJR北海道に採用された人員の組合別状況(原判決別紙3)によ 第一希望であったJR北海道に採用されなかったこと自体が所属組合に着目した不利益取扱いであるから賠償を求め得る旨主張するのであるが,確かにJR北海道に採用された人員の組合別状況(原判決別紙3)によれば国労所属職員の同社採用率は鉄労や動労所属職員よりも顕著に低いから,そのような主張にも根拠がないわけではないものの,他方で,JR北海道とそれ以外のJRへの振分けがどのような事情を考慮して行われたのか,これについて国鉄がどのように関与したのか,上記組合別状況以外に不利益取扱いを窺わせる事情としていかなるものがあるのか等については,本件証拠上必ずしも明らかではない。そうすると,一審原告らのうちの一部の者が第一希望であるJR北海道に採用されず,第二希望以下のJRに採用となった- 64 -ことが所属組合に着目した不利益取扱いであるとまで認定するのは困難である。したがって,採用を辞退した者も損害賠償を求め得るという一審原告らの主張は前提を欠き,採用し難いというほかない。 そして,一審原告P1ら4名はこれらに該当するものと認められる(甲613の1,685,704の1,746)から,これらの一審原告については,損害賠償に値するほどの損害はないものというべきである。 ウ次に,追加的広域採用に応募しながら,結局これを辞退した一審原告らについて検討する。追加的広域採用に応募して採用されれば,地元JRでないとはいえ,出向期間を経るなどしながらもJR会社で執務できることになるのであるから,その意味では,第二希望を出してそのJR会社に採用されたのと結果的には同様の地位を確保できるものといえる。そして,追加的広域採用に応募して採用されつつ,これを辞退した一審原告らは,このような地位を自ら一旦は確保しながら,結局は自らの意思でこれを放棄したのであるから,このことに 確保できるものといえる。そして,追加的広域採用に応募して採用されつつ,これを辞退した一審原告らは,このような地位を自ら一旦は確保しながら,結局は自らの意思でこれを放棄したのであるから,このことによる不利益は自ら引き受けるべき側面があるのは否定できない。もっとも,これらの一審原告らは,上記イの一審原告らとは異なり,4月採用において名簿に記載されなかったがゆえに,それによる損害を回避するために追加的広域採用に応じたものの,家庭の事情等から結局はこれを辞退することになったものと認められる(後記各証拠)。このように,追加的広域採用に応募したこと自体,不公正な選考に基づく採用候補者名簿不記載が背景にあることを考慮すると,自らの意思で辞退したことを強調するあまり法的保護に値する精神的損害が全くないとするのも相当ではない。そして,以上の事情を総合すると,これらの一審原告については,それぞれ250万円の慰謝料額とするのが相当である。 原告番号79P21,同106P22,同169P23,同196P24,同203P25,同238P26はこれらに該当するものと認められ- 65 -る(甲48,679-1,706,769,796,803-1,838,999)から,これらの一審原告については,それぞれ250万円の損害賠償が認められるというべきである。 (4)弁護士費用及び遅延損害金について一審原告らは,平成18年11月20日付け「控訴状訂正および請求原因の変更申立書」により,予備的請求について慰謝料だけでなく弁護士費用をもその損害費目として追加しているところ,認容すべき慰謝料額,本件訴訟に至る経緯,法的困難性その他諸般の事情を斟酌すれば,上記(2)イのとおり500万円の慰謝料が認められる一審原告らについては各50万円,上記(3)ウのとおり250万円の慰 容すべき慰謝料額,本件訴訟に至る経緯,法的困難性その他諸般の事情を斟酌すれば,上記(2)イのとおり500万円の慰謝料が認められる一審原告らについては各50万円,上記(3)ウのとおり250万円の慰謝料が認められる一審原告らについては各25万円をもって,賠償されるべき弁護士費用と認める。 また,一審原告らは,平成20年12月4日付け「訴えの変更申立書」で,予備的請求に係る損害賠償の遅延損害金起算時を平成2年4月1日から昭和62年4月1日に変更しているところ,先に検討した本件不法行為①の時期からすれば,これには理由があるというべきである。 (5)謝罪文,採用要請について一審原告らは,本件不法行為①について,損害賠償を求めるほか,これにより名誉を侵害ないし毀損されたとして,一審被告に対し,謝罪文の交付・掲示及びJR北海道,JR九州に対する同一審原告らの採用要請を求める。 しかし,これまでの検討により損害賠償が認められない一審原告らについてはその請求に理由はないし,また損害賠償が認められる一審原告らについても,その名誉の回復は,金銭による損害賠償を命ずることにより図られるものと認めるのが相当であり,一審被告に対し,金銭賠償に加え,謝罪文の交付・掲示及びJR北海道,JR九州に対する一審原告らの採用要請まで命じなければその損害が回復できないとの証明はいまだされていないというべきであって,当該判断を覆すに足りる証拠は存在しない。よって,この点に関- 66 -する一審原告らの主張は採用することができない。 第5 結論 以上検討したところによれば,一審原告らの請求についての理由の有無は次のとおりとなる。 (1)主位的請求関係については,一審原告らの請求にはいずれも理由がない。 (2)予備的請求関係については,次のとおりである。 ア停職処分の基準 らの請求についての理由の有無は次のとおりとなる。 (1)主位的請求関係については,一審原告らの請求にはいずれも理由がない。 (2)予備的請求関係については,次のとおりである。 ア停職処分の基準に該当する原告番号210,229,231,245,261及び年齢基準に該当する230の各一審原告ら並びに第二希望に採用されながらこれを辞退した原告番号13,85,104及び146の各一審原告ら請求にはいずれも理由がない。 イ追加的広域採用に採用されながらこれを辞退した原告番号79,106,169,196,203及び238の各一審原告らの請求は275万円及びこれに対する昭和62年4月1日から支払済みまで民法所定の年5分の割合による遅延損害金を求める限りにおいてそれぞれ理由がある。 ウ上記ア,イ以外の一審原告らの請求は,550万円及びこれに対する昭和62年4月1日から支払済みまで民法所定の年5分の割合による遅延損害金を求める限りにおいてそれぞれ理由がある(ただし,相続人である一審原告らについては,それぞれ法定相続分の割合によるもの。また,原告番号126の被控訴人P6は,平成18年2月9日に控訴を取り下げており,一審被告による控訴についてのみ当審における審理の対象となっているところ,原判決どおり,500万円及びこれに対する平成2年4月1日から支払済みまで民法所定の年5分の割合による遅延損害金を求める限りにおいて,その請求には理由がある。)。 そうすると,原告番号104,229,230,231及び245の各一審原告の控訴(当審で請求を拡張した分を含む。)はいずれも理由がないから,同一審原告らの控訴は棄却すべきである。また,一審被告の被控訴人P6に対- 67 -する控訴も理由がないから棄却すべきである。他方,その余の一審原告ら及び一審被告の各 )はいずれも理由がないから,同一審原告らの控訴は棄却すべきである。また,一審被告の被控訴人P6に対- 67 -する控訴も理由がないから棄却すべきである。他方,その余の一審原告ら及び一審被告の各控訴には,それぞれ一部理由があり,一審原告らが当審において拡張した請求にも一部理由がある。また,一審原告らの一部には相続による訴訟承継があるから,各承継人が法定相続分に基づき相続したことを前提とする主文の変更を要することとなる。そして,原告番号13,85,146,210及び261の一審原告については,原判決において認められた請求のすべてが認められないこととなり,また原告番号79,106,169,196,203及び238の一審原告については,原判決において認められた請求のうちの一部が認められないことになるから,原判決に基づく仮執行によりこれらの各一審原告が取得した金銭のうち当審において請求が一部理由がないとされた部分に対応する額(仮執行により取得した金額から当審認容額〔遅延損害金については仮執行日までの分〕を控除した額。具体的には別紙原状回復目録記載のとおり。)を,民事訴訟法260条2項の申立てにより,一審被告に返還すべきこととなる。 よって,上記各控訴を棄却した一審原告ら及び被控訴人P6の請求に関する部分を除き,原判決を主文のとおり変更することとし,一審被告の民事訴訟法260条2項の申立てについては,その一部を認容することとして主文のとおり判決する。 東京高等裁判所第17民事部裁判長裁判官南敏文裁判官安藤裕子裁判官小林宏司- 68 -- 69 -(別紙)認容金額一覧表(単位:円)(単位:円)原告番号氏名認容金額原告番号氏名認容金額5,500,0005,500,000原告1P30原告5 - 68 -- 69 -(別紙)認容金額一覧表(単位:円)(単位:円)原告番号氏名認容金額原告番号氏名認容金額5,500,0005,500,000原告1P30原告51P815,500,0005,500,000原告2P31原告52P825,500,0005,500,000原告3P32原告53P835,500,0005,500,000原告4P33原告54P845,500,0005,500,000原告5P34原告55P855,500,0005,500,000原告6P35原告56P865,500,0005,500,000原告7P36原告57P875,500,0005,500,000原告8P37原告58P885,500,0005,500,000原告9P38原告59P895,500,0005,500,000原告10P39原告60P905,500,0005,500,000原告11P40原告61P915,500,0005,500,000原告12P41原告62P925,500,0005,500,000原告14P42原告63P935,500,0005,500,000原告15P43原告64P945,500,0005,500,000原告16P44原告65P955,500,0005,500,000原告17P45原告66P965,500,0005,500,000原告18P46原告67P975,500,0005,500,000原告19P47原告68P985,500,0005,500,000原告20P48原告69P995,500,0005,500,00 P975,500,0005,500,000原告19P47原告68P985,500,0005,500,000原告20P48原告69P995,500,0005,500,000原告21P49原告70P1005,500,0005,500,000原告22P50原告71P1015,500,0005,500,000原告23P51原告72P1025,500,0002,750,000原告24P52原告73-1P1035,500,0001,375,000原告25P53原告73-2P1045,500,0001,375,000原告26P54原告73-3P1055,500,0005,500,000原告27P55原告74P1065,500,0005,500,000原告28P56原告75P1075,500,0005,500,000原告29P57原告76P1085,500,0005,500,000原告30P58原告77P1095,500,0005,500,000原告31P59原告78P1105,500,0002,750,000原告32P60原告79P215,500,0005,500,000原告43P71原告91P1215,500,0005,500,000原告44P72原告92P1225,500,0005,500,000原告45P73原告93P1235,500,0005,500,000原告46P74原告94P1242,750,0005,500,000原告47-1P75原告95P1251,375,0005,500,000原告47-2P76原告96P1261,375,0 原告94P1242,750,0005,500,000原告47-1P75原告95P1251,375,0005,500,000原告47-2P76原告96P1261,375,0005,500,000原告47-3P77原告97P1275,500,0005,500,000原告48P78原告98P1285,500,0005,500,000原告49P79原告99P1295,500,0005,500,000原告50P80原告100P130- 70 -(別紙)認容金額一覧表(単位:円)(単位:円)原告番号氏名認容金額原告番号氏名認容金額5,500,0005,500,000原告101P131原告151P1775,500,0005,500,000原告102P132原告152P1785,500,0002,750,000原告103P133原告153-1P1795,500,0001,375,000原告105P134原告153-2P1802,750,0001,375,000原告106P22原告153-3P1815,500,0005,500,000原告107P135原告154P1825,500,0005,500,000原告108P136原告155P1835,500,0005,500,000原告109P137原告156P1845,500,0005,500,000原告110P138原告157P1855,500,0005,500,000原告111P139原告158P1865,500,0005,500,000原告112P140原告159P1875,500,0005,500,000 00,0005,500,000原告111P139原告158P1865,500,0005,500,000原告112P140原告159P1875,500,0005,500,000原告113P141原告160P1885,500,0005,500,000原告114P142原告161P1895,500,0005,500,000原告115P143原告162P1905,500,0005,500,000原告117P144原告163P1912,750,0005,500,000原告118-1P145原告164P1922,750,0005,500,000原告118-2P146原告165P1935,500,0005,500,000原告119P147原告166P1945,500,0005,500,000原告120P148原告167P1955,500,0002,750,000原告121P149原告168-1P1965,500,0002,750,000原告122P150原告168-2P1975,500,0002,750,000原告123P151原告169P235,500,0005,500,000原告124P152原告170P1985,500,0005,500,000原告125P153原告171P1995,500,0005,500,000原告127P154原告172P2005,500,0005,500,000原告128P155原告173P2015,500,0005,500,000原告129P156原告174P2025,500,0005,500,000原告130P157原告175P20 P155原告173P2015,500,0005,500,000原告129P156原告174P2025,500,0005,500,000原告130P157原告175P2035,500,0005,500,000原告131P158原告176P2045,500,0005,500,000原告132P159原告177P2055,500,0005,500,000原告133P160原告178P2065,500,0005,500,000原告134P161原告179P2075,500,0005,500,000原告135P162原告180P2085,500,0005,500,000原告136P163原告181P2095,500,0005,500,000原告137P164原告182P2105,500,0005,500,000原告138P165原告183P2115,500,0005,500,000原告139P166原告184P2125,500,0005,500,000原告140P167原告185P2135,500,0005,500,000原告141P168原告186P2145,500,0005,500,000原告142P169原告187P2155,500,0005,500,000原告143P170原告188P2165,500,0005,500,000原告144P171原告189P2175,500,0005,500,000原告145P172原告190P2185,500,0005,500,000原告147P173原告191P2195,500,0005,500,000原告148 5,500,000原告145P172原告190P2185,500,0005,500,000原告147P173原告191P2195,500,0005,500,000原告148P174原告192P2205,500,0005,500,000原告149P175原告193P2215,500,0005,500,000原告150P176原告194P2225,500,000原告195P2232,750,000原告196P245,500,000原告197P2245,500,000原告198P2255,500,000原告199P2265,500,000原告200P227- 71 -(別紙)認容金額一覧表(単位:円)(単位:円)原告番号氏名認容金額原告番号氏名認容金額5,500,0005,500,000原告201P228原告251P2725,500,0005,500,000原告202P229原告252P2732,750,0005,500,000原告203P25原告253P2745,500,0005,500,000原告204P230原告254P2755,500,0005,500,000原告205P231原告255P2765,500,0005,500,000原告206P232原告256P2775,500,0005,500,000原告207P233原告257P2785,500,0005,500,000原告208P234原告258P2795,500,0005,500,000原告209P235原告259P2805,500,0005,500,000原告211P236原告260 原告208P234原告258P2795,500,0005,500,000原告209P235原告259P2805,500,0005,500,000原告211P236原告260P2815,500,0005,500,000原告212P237原告262P2825,500,0005,500,000原告213P238原告263P2835,500,0005,500,000原告214P239原告264P2845,500,0005,500,000原告215P240原告265P2855,500,0005,500,000原告216P241原告267P2865,500,0005,500,000原告217P242原告268P2875,500,0005,500,000原告218P243原告269P2885,500,0005,500,000原告219P244原告270P2895,500,0005,500,000原告220P245原告271P2905,500,0005,500,000原告221P246原告272P2915,500,0005,500,000原告222P247原告273P2925,500,0005,500,000原告223P248原告274P2935,500,0005,500,000原告224P249原告275P2945,500,0005,500,000原告225P250原告276P2955,500,0005,500,000原告226P251原告277P2965,500,0005,500,000原告227P252原告278P2975,500,0005,500,000原告 5,500,000原告226P251原告277P2965,500,0005,500,000原告227P252原告278P2975,500,0005,500,000原告228P253原告279P2985,500,0002,750,000原告232P254原告280-1P2995,500,000916,667原告233P255原告280-2P3005,500,000916,667原告234P256原告280-3P3015,500,000916,666原告235P257原告280-4P3025,500,0005,500,000原告236P258原告281P3035,500,0005,500,000原告237P259原告282P3042,750,0005,500,000原告238P26原告283P3055,500,0005,500,000原告239P260原告284P3065,500,0005,500,000原告240P261原告285P3075,500,0002,750,000原告241P262原告286-1P3085,500,0001,375,000原告242P263原告286-2P3095,500,0001,375,000原告243P264原告286-3P3105,500,0002,750,000原告244P265原告287-1P3115,500,0001,375,000原告246P266原告287-2P3123,666,6671,375,000原告247-1P267原告287-3P3131,833,3335,500,000原告247-2P268原告 P266原告287-2P3123,666,6671,375,000原告247-1P267原告287-3P3131,833,3335,500,000原告247-2P268原告288P3145,500,0005,500,000原告248P269原告289P3155,500,0005,500,000原告249P270原告290P3165,500,000原告250P271- 72 -(別紙)原状回復目録(単位:円)原告番号氏名仮執行日において請求可能であった額返還金額元本損害金執行費用合計 8,876,568P7 2,750,0002,538,66411,5005,300,1643,576,404P21 8,876,568P8 2,750,0002,538,66411,5005,300,1643,576,404P22 8,876,568P9 2,750,0002,538,66411,5005,300,1643,576,404P23 2,750,0002,538,66411,5005,300,1643,576,404P24 2,750,0002,538,66411,5005,300,1643,576,404P25 8,876,568P10 2,750,0002,538,66411,5005,300,1643,576,404P26 8,876,568P11(注)①損害金の額は,元本に対する昭和62年4月1日から仮執行日である平成17年9月16日までの間における年5 3,576,404P26 8,876,568P11(注)①損害金の額は,元本に対する昭和62年4月1日から仮執行日である平成17年9月16日までの間における年5パーセントの割合による金員である。 ②執行費用は,執行官に対する手数料であり,元本と損害金との合計額が300万円を超え1000万円以下の場合には,債権者1人当たり1万1500円とされている。 ③返還金額は,仮執行に基づく強制執行のされた額から仮執行日において請求可能であった額の合計額を差し引いた額である。
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