令和2(行ヒ)283 相続税更正処分等取消請求事件

裁判年月日・裁判所
令和4年4月19日 最高裁判所第三小法廷 判決 棄却 東京高等裁判所 令和1(行コ)239
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判決文本文4,864 文字)

- 1 -令和2年(行ヒ)第283号 相続税更正処分等取消請求事件令和4年4月19日 第三小法廷判決主 文本件上告を棄却する。 上告費用は上告人らの負担とする。 理 由上告代理人増田英敏、上告復代理人大山勉、上告補佐人戸井敏夫の上告受理申立て理由について1 本件は、共同相続人である上告人らが、相続財産である不動産の一部について、財産評価基本通達(昭和39年4月25日付け直資56、直審(資)17国税庁長官通達。以下「評価通達」という。)の定める方法により価額を評価して相続税の申告をしたところ、札幌南税務署長から、当該不動産の価額は評価通達の定めによって評価することが著しく不適当と認められるから別途実施した鑑定による評価額をもって評価すべきであるとして、それぞれ更正処分(以下「本件各更正処分」という。)及び過少申告加算税の賦課決定処分(以下「本件各賦課決定処分」という。)を受けたため、被上告人を相手に、これらの取消しを求める事案である。 2 原審の適法に確定した事実関係等の概要は、次のとおりである。 相続税法22条は、同法第3章で特別の定めのあるものを除くほか、相続等により取得した財産の価額は当該財産の取得の時における時価により、当該財産の価額から控除すべき債務の金額はその時の現況による旨を規定する。 評価通達1は、時価とは課税時期(相続等により財産を取得した日等)においてそれぞれの財産の現況に応じ不特定多数の当事者間で自由な取引が行われる場合に通常成立すると認められる価額をいい、その価額は評価通達の定めによって評価した価額による旨を定める。他方、評価通達6は、評価通達の定めによって評価することが著しく不適当と認められる が行われる場合に通常成立すると認められる価額をいい、その価額は評価通達の定めによって評価した価額による旨を定める。他方、評価通達6は、評価通達の定めによって評価することが著しく不適当と認められる財産の価額は国税庁長官の指示を受けて評価する旨を定める。 - 2 -A(以下「被相続人」という。)は、平成24年6月17日に94歳で死亡し、上告人らほか2名(以下「共同相続人ら」という。)がその財産を相続により取得した(以下、この相続を「本件相続」という。)。 被相続人の相続財産には、第1審判決別表1記載の土地及び同別表2記載の建物(以下、併せて「本件甲不動産」という。)並びに同別表3記載の土地及び建物(以下、併せて「本件乙不動産」といい、本件甲不動産と併せて「本件各不動産」という。)が含まれていたところ、これらについては、被相続人の遺言に従って、上告人らのうちの1名が取得した。なお、同人は、平成25年3月7日付けで、本件乙不動産を代金5億1500万円で第三者に売却した。 本件各不動産が被相続人の相続財産に含まれるに至った経緯等は、次のとおりである。 ア 被相続人は、平成21年1月30日付けで信託銀行から6億3000万円を借り入れた上、同日付けで本件甲不動産を代金8億3700万円で購入した。 イ 被相続人は、平成21年12月21日付けで共同相続人らのうちの1名から4700万円を借り入れ、同月25日付けで信託銀行から3億7800万円を借り入れた上、同日付けで本件乙不動産を代金5億5000万円で購入した。 ウ 被相続人及び上告人らは、上記ア及びイの本件各不動産の購入及びその購入資金の借入れ(以下、併せて「本件購入・借入れ」という。)を、被相続人及びその経営していた会社の事業承継の過程の一つと位置付けつつも、本件購入・借入れが近い将来発 イの本件各不動産の購入及びその購入資金の借入れ(以下、併せて「本件購入・借入れ」という。)を、被相続人及びその経営していた会社の事業承継の過程の一つと位置付けつつも、本件購入・借入れが近い将来発生することが予想される被相続人からの相続において上告人らの相続税の負担を減じ又は免れさせるものであることを知り、かつ、これを期待して、あえて企画して実行したものである。 エ 本件購入・借入れがなかったとすれば、本件相続に係る相続税の課税価格の合計額は6億円を超えるものであった。 本件各更正処分及び本件各賦課決定処分の経緯は、次のとおりである。 ア 上告人らは、本件相続につき、評価通達の定める方法により、本件甲不動産- 3 -の価額を合計2億0004万1474円、本件乙不動産の価額を合計1億3366万4767円と評価した上(以下、これらの価額を併せて「本件各通達評価額」という。)、平成25年3月11日、札幌南税務署長に対し、本件各通達評価額を記載した相続税の申告書を提出した。上記申告書においては、課税価格の合計額は2826万1000円とされ、基礎控除の結果、相続税の総額は0円とされていた。 イ 国税庁長官は、札幌国税局長からの上申を受け、平成28年3月10日付けで、同国税局長に対し、本件各不動産の価額につき、評価通達6により、評価通達の定める方法によらずに他の合理的な方法によって評価することとの指示をした。 ウ 札幌南税務署長は、上記指示により、平成28年4月27日付けで、上告人らに対し、不動産鑑定士が不動産鑑定評価基準により本件相続の開始時における本件各不動産の正常価格として算定した鑑定評価額に基づき、本件甲不動産の価額が合計7億5400万円、本件乙不動産の価額が合計5億1900万円(以下、これらの価額を併せて「本件各鑑定評価額」という る本件各不動産の正常価格として算定した鑑定評価額に基づき、本件甲不動産の価額が合計7億5400万円、本件乙不動産の価額が合計5億1900万円(以下、これらの価額を併せて「本件各鑑定評価額」という。)であることを前提とする本件各更正処分(本件相続に係る課税価格の合計額を8億8874万9000円、相続税の総額を2億4049万8600円とするもの)及び本件各賦課決定処分をした。 3 原審は、上記事実関係等の下において、本件各不動産の価額については、評価通達の定める方法により評価すると実質的な租税負担の公平を著しく害し不当な結果を招来すると認められるから、他の合理的な方法によって評価することが許されると判断した上で、本件各鑑定評価額は本件各不動産の客観的な交換価値としての時価であると認められるからこれを基礎とする本件各更正処分は適法であり、これを前提とする本件各賦課決定処分も適法であるとした。所論は、原審の上記判断には相続税法22条等の法令の解釈適用を誤った違法があるというものである。 4相続税法22条は、相続等により取得した財産の価額を当該財産の取得の時における時価によるとするが、ここにいう時価とは当該財産の客観的な交換価値をいうものと解される。そして、評価通達は、上記の意味における時価の評価方法を定めたものであるが、上級行政機関が下級行政機関の職務権限の行使を指揮する- 4 -ために発した通達にすぎず、これが国民に対し直接の法的効力を有するというべき根拠は見当たらない。そうすると、相続税の課税価格に算入される財産の価額は、当該財産の取得の時における客観的な交換価値としての時価を上回らない限り、同条に違反するものではなく、このことは、当該価額が評価通達の定める方法により評価した価額を上回るか否かによって左右されないというべきである。 時における客観的な交換価値としての時価を上回らない限り、同条に違反するものではなく、このことは、当該価額が評価通達の定める方法により評価した価額を上回るか否かによって左右されないというべきである。 そうであるところ、本件各更正処分に係る課税価格に算入された本件各鑑定評価額は、本件各不動産の客観的な交換価値としての時価であると認められるというのであるから、これが本件各通達評価額を上回るからといって、相続税法22条に違反するものということはできない。 ア 他方、租税法上の一般原則としての平等原則は、租税法の適用に関し、同様の状況にあるものは同様に取り扱われることを要求するものと解される。そして、評価通達は相続財産の価額の評価の一般的な方法を定めたものであり、課税庁がこれに従って画一的に評価を行っていることは公知の事実であるから、課税庁が、特定の者の相続財産の価額についてのみ評価通達の定める方法により評価した価額を上回る価額によるものとすることは、たとえ当該価額が客観的な交換価値としての時価を上回らないとしても、合理的な理由がない限り、上記の平等原則に違反するものとして違法というべきである。もっとも、上記に述べたところに照らせば、相続税の課税価格に算入される財産の価額について、評価通達の定める方法による画一的な評価を行うことが実質的な租税負担の公平に反するというべき事情がある場合には、合理的な理由があると認められるから、当該財産の価額を評価通達の定める方法により評価した価額を上回る価額によるものとすることが上記の平等原則に違反するものではないと解するのが相当である。 イ これを本件各不動産についてみると、本件各通達評価額と本件各鑑定評価額との間には大きなかい離があるということができるものの、このことをもって上記事情があるということはでき するのが相当である。 イ これを本件各不動産についてみると、本件各通達評価額と本件各鑑定評価額との間には大きなかい離があるということができるものの、このことをもって上記事情があるということはできない。 もっとも、本件購入・借入れが行われなければ本件相続に係る課税価格の合計額- 5 -は6億円を超えるものであったにもかかわらず、これが行われたことにより、本件各不動産の価額を評価通達の定める方法により評価すると、課税価格の合計額は2826万1000円にとどまり、基礎控除の結果、相続税の総額が0円になるというのであるから、上告人らの相続税の負担は著しく軽減されることになるというべきである。そして、被相続人及び上告人らは、本件購入・借入れが近い将来発生することが予想される被相続人からの相続において上告人らの相続税の負担を減じ又は免れさせるものであることを知り、かつ、これを期待して、あえて本件購入・借入れを企画して実行したというのであるから、租税負担の軽減をも意図してこれを行ったものといえる。そうすると、本件各不動産の価額について評価通達の定める方法による画一的な評価を行うことは、本件購入・借入れのような行為をせず、又はすることのできない他の納税者と上告人らとの間に看過し難い不均衡を生じさせ、実質的な租税負担の公平に反するというべきであるから、上記事情があるものということができる。 ウ したがって、本件各不動産の価額を評価通達の定める方法により評価した価額を上回る価額によるものとすることが上記の平等原則に違反するということはできない。 5 以上によれば、本件各更正処分において、札幌南税務署長が本件相続に係る相続税の課税価格に算入される本件各不動産の価額を本件各鑑定評価額に基づき評価したことは、適法というべきである。所論の点に関する原審の によれば、本件各更正処分において、札幌南税務署長が本件相続に係る相続税の課税価格に算入される本件各不動産の価額を本件各鑑定評価額に基づき評価したことは、適法というべきである。所論の点に関する原審の判断は、以上の趣旨をいうものとして是認することができる。論旨は採用することができない。 よって、裁判官全員一致の意見で、主文のとおり判決する。 (裁判長裁判官 長嶺安政 裁判官 戸倉三郎 裁判官 宇賀克也 裁判官林 道晴 裁判官 渡惠理子)

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