平成23(ワ)16885 特許権侵害差止等請求事件

裁判年月日・裁判所
平成26年2月14日 東京地方裁判所
ファイル
hanrei-pdf-84198.txt

キーワード

判決文本文110,023 文字)

平成26年2月14日判決言渡同日原本領収裁判所書記官平成23年(ワ)第16885号特許権侵害差止等請求事件口頭弁論終結日平成25年11月11日判決東京都千代田区<以下略>原告株式会社ニコン同訴訟代理人弁護士深井俊至同山口裕司同補佐人弁理士宮前徹同鐘ヶ江幸男川崎市<以下略>被告株式会社シグマ同訴訟代理人弁護士小杉丈夫同西村光治同髙橋慶彦同田中健夫同補佐人弁理士小林武 主文 1 被告は,原告に対し,金15億6804万4322円及び内金10億1972万6293円に対する平成23年5月1日から,内金5億4831万8029円に対する平成24年11月1日から各支払済みまで年5分の割合による金員を支払え。 2 原告のその余の請求を棄却する。 3 訴訟費用は,これを8分し,その7を原告の負担とし,その余は被告の負担とする。 4 この判決は,1項に限り,仮に執行することができる。 事実及び理由 第1 請求 を8分し,その7を原告の負担とし,その余は被告の負担とする。 4 この判決は,1項に限り,仮に執行することができる。 事実及び理由 第1 請求被告は,原告に対し,金124億3312万円及び内金80億2105万円に対する平成23年5月1日から,内金44億1207万円に対する平成24年11月1日から各支払済みまで年5分の割合による金員を支払え。 第2 事案の概要 1 概要本件は,発明の名称を「超音波モータと振動検出器とを備えた装置」とする特許権(特許第3269223号。以下「本件特許権」という。)を有する原告が,別紙被告製品目録記載の各製品(以下,併せて「被告製品」という。)が本件特許権を侵害している旨主張して,不法行為に基づく損害賠償請求として124億3312万円(附帯請求として内金80億2105万円に対する不法行為の後である平成23年5月1日から,内金44億1207万円〔弁護士・弁理士費用5億円を含む。〕に対する不法行為の後である平成24年11月1日から支払済みまで民法所定の年5分の割合による遅延損害金)の支払を求めた事案である。 なお,本件は,発明の名称を「像シフトが可能なズームレンズ」とする特許権(特許第3755609号)に係る請求と併合審理されていたが,当該特許権に係る請求については分離して判決済みである。 2 前提事実(後記(6)を除いて当事者間に争いがない。)(1) 当事者原告は,光学機械器具等の製造,販売等を目的とする株式会社であり,デジタル一眼レフカメラ用レンズを製造,販売等している。 被告は,光学機械器具等の製造,販売等を目的とする株式会社であり,デジタル一眼レフカメラ用レンズを製造,販売等している。 (2) ジタル一眼レフカメラ用レンズを製造,販売等している。 被告は,光学機械器具等の製造,販売等を目的とする株式会社であり,デジタル一眼レフカメラ用レンズを製造,販売等している。 (2) 本件特許権 原告は,本件特許権を有している。本件特許権は,次のとおりである(本件特許権に係る特許公報〔甲4〕を末尾に添付し,これを「本件明細書」という。)。 登録番号特許第3269223号発明の名称超音波モータと振動検出器とを備えた装置出願日平成5年10月15日出願番号特願平5-281843登録日平成14年1月18日(3) 特許発明ア本件特許権に係る請求項6の発明(以下「本件第2特許発明」といい,これに係る特許を「本件第2特許」という。)は,次のとおりである。 「超音波モータと励振された振動検出素子を用いて振動を検出する振動検出器とを備えた装置であって,前記超音波モータの周波数制御範囲を前記振動検出素子の1次の共振の半値幅帯域と2次の共振の半値幅帯域との間に設定したことを特徴とする超音波モータと振動検出器とを備えた装置。」イ本件特許権に係る請求項2の発明(以下,「本件第3特許発明」といい,これに係る特許を「本件第3特許」という。また,本件第2特許発明と本件第3特許発明を併せて「本件特許発明」といい,本件第2特許と本件第3特許を併せて「本件特許」という。)は,次のとおりである。 「超音波モータと励振された振動検出素子を用いて振動を検出する振動検出器とを備えた装置であって,前記振動検出素子の共振の半値幅帯域と前記超音波モータの周波数制御範囲とを別の帯域に設定したことを特徴とする超音波モータ 検出素子を用いて振動を検出する振動検出器とを備えた装置であって,前記振動検出素子の共振の半値幅帯域と前記超音波モータの周波数制御範囲とを別の帯域に設定したことを特徴とする超音波モータと振動検出器とを備えた装置。」(4) 構成要件の分説 ア本件第2特許発明の構成要件を分説すると,次のとおりである(以下「構成要件G」などという。)。 G 超音波モータと励振された振動検出素子を用いて振動を検出する振動検出器とを備えた装置であって,H 前記超音波モータの周波数制御範囲を前記振動検出素子の1次の共振の半値幅帯域と2次の共振の半値幅帯域との間に設定したI ことを特徴とする超音波モータと振動検出器とを備えた装置。 イ本件第3特許発明の構成要件を分説すると,次のとおりである。 G 超音波モータと励振された振動検出素子を用いて振動を検出する振動検出器とを備えた装置であって,J 前記振動検出素子の共振の半値幅帯域と前記超音波モータの周波数制御範囲とを別の帯域に設定したI ことを特徴とする超音波モータと振動検出器とを備えた装置。 (5) 被告の行為被告は,業として被告製品を製造,販売,輸出及び販売の申出(販売のための展示を含む。)をしている。 (6) 被告製品説明原告は,別紙被告製品説明書(原告)記載のとおり被告製品を説明する。 他方で,被告は,別紙被告製品説明書(被告)記載のとおり被告製品を説明し,原告も当該説明を争うものではない。 3 争点(1) 被告製品が本件特許発明の技術的範囲に属するか(争点1)ア構成要件Gの充足性(争点1-1)イ構成要件Hの充足性(争点1-2) うものではない。 3 争点(1) 被告製品が本件特許発明の技術的範囲に属するか(争点1)ア構成要件Gの充足性(争点1-1)イ構成要件Hの充足性(争点1-2)ウ構成要件Iの充足性(争点1-3)エ構成要件Jの充足性(争点1-4) (2) 本件特許が特許無効審判により無効にされるべきものであるか(争点2)ア明細書の要旨変更の有無(争点2-1)イ記載不備の有無(争点2-2)ウ進歩性要件違反の有無(争点2-3)(3) 原告の損害額(争点3)第3 争点に関する当事者の主張 1 被告製品が本件特許発明の技術的範囲に属するか(争点1)(1) 構成要件Gの充足性(争点1-1)(原告の主張)ア 「振動を検出する振動検出器」の意義(ア) 「振動」の意義a 本件明細書【0019】には,「撮影レンズ3のブレを検出する振動検出素子8」と記載されており,一実施例としての圧電振動ジャイロ型の振動検出素子が撮影者によるブレを検出するものであることを述べている。ここで,「ブレ」の中には,撮影者が撮影対象にカメラを向けたときに発生する,撮影対象方向の回りの角度の揺らぎ(角度ブレ)が含まれている。角度の揺らぎは角速度を生じさせる。本件特許発明の一実施例の振動検出素子は,この角速度を検出することにより,「ブレ」を検出するものである。 以上のとおり,角速度の変化を検出する圧電振動ジャイロ型の振動検出素子を用いる検出器は,本件明細書において「振動を検出する振動検出器」とされている。 b 一般に,振動工学などの分野においては,「振動」との語は,正弦波のような一定の周期で繰り返す規則的な運動(狭義の 出器は,本件明細書において「振動を検出する振動検出器」とされている。 b 一般に,振動工学などの分野においては,「振動」との語は,正弦波のような一定の周期で繰り返す規則的な運動(狭義の振動)のみを指すのではなく,周期性のない複雑な形状の波形や,あるいは1発で 終わるような衝撃のような不規則現象なども含むもの(広義の振動)と定義されている(甲41)。 被告は,本件特許発明の「振動」との語を狭義に解して,「振動」とカメラの手振れのような「変動」を厳密に区別しようとするが,カメラの手振れ補正やジャイロセンサなどの技術分野においては,検出される装置の「振動」を広義の振動と解することが一般に受け入れられており,当業者にもそう理解されている(甲21,22,乙17)。 特開昭63-285408号(甲42),特開平3-107768号(甲43)においても,検出される「振動」を広義にとらえて,カメラの手振れに関する変位もしくは動きを得るための,又は変化量を求める「振動検出装置」について記載している。 本件特許権の請求項9には,「…前記振動検出素子は,手振れの検出用のセンサであることを特徴とする超音波モータと振動検出器とを備えた装置。」と記載されている。請求項9は,請求項7又は請求項8の従属項,請求項8は請求項7の従属項,請求項7は請求項1~6の従属項とされている。よって,請求項6(本件第2特許発明)及び請求項2(本件第3特許発明)における「振動検出素子」にも「手振れの検出用のセンサ」を含み,「振動検出器」における「振動」が「手振れ」を含むことは,特許請求の範囲の記載から明らかといえる。 (イ) 「振動を検出する振動検出器」の意義角速度を検出することによって振動を検出することができる 「振動」が「手振れ」を含むことは,特許請求の範囲の記載から明らかといえる。 (イ) 「振動を検出する振動検出器」の意義角速度を検出することによって振動を検出することができることは当業者の技術常識であるから,ジャイロセンサで角速度を検出するものであれば,「振動を検出する振動検出器」といえる。 イ 「励振された振動検出素子」の意義(ア) 「励振」は,振動系に振動を起こさせることであり(甲33),電圧を印加することにより駆動アームに振動を起こさせることは「励振」 に該当する。 被告は,「励振」とは,外力により振動を起こすことをいうと主張し,乙25号証(「励振」の項には,「系に作用する外力又は入力。」との記載がある。)を提出する。乙25号証にいう「外力又は入力」による振動とは,外からのエネルギーによる振動である。電圧の印加により水晶にひずみが生じ,このひずみによって水晶が振動することから,電圧の印加も外力又は入力なのであり,乙25号証によっても,電圧を印加することにより駆動アームに振動を起こさせることは「励振」に該当する。 当業者も,電圧を印加することにより水晶に振動を起こさせることを当然のように「励振」と呼んでいる(甲35~39)。 (イ) 被告は,本件特許発明の出願に係る意見書(乙24)において,「本願発明においては,「超音波モータ」と「振動検出素子」とは,いずれも自ら振動するものである」と主張し,原告も「振動検出素子」を自ら振動する検出素子としていた旨主張する。 「超音波モータが振動する」とは,超音波モータの中の振動する部分が振動するということであり,「振動検出素子が振動する」とは,振動検出素子の中の振動する部分が振動するということである 。 「超音波モータが振動する」とは,超音波モータの中の振動する部分が振動するということであり,「振動検出素子が振動する」とは,振動検出素子の中の振動する部分が振動するということであるから,原告の主張に何の齟齬もない。 (ウ) 「励振された振動検出素子」は,励振された部分を用いて振動を検出する素子である。すなわち,励振された部分と振動を検出する部分を備える素子が「励振された振動検出素子」である。 本件明細書【0021】には,以下の記載がある。 「図4は,本実施例の装置に用いられる振動検出素子を示す斜視図である。振動検出素子8は,圧電振動ジャイロ型と呼ばれるものであり,励振用圧電素子8aが三角柱8cを励振させ,検出用圧電素子8bに より,コリオリの力を利用して,被検出物の変動を検出するものである。振動検出素子8の詳しい構造は,…に記載されているので,説明は省略する。なお,本発明において対象にしている振動検出素子の形式は,この例のような圧電振動ジャイロ型に限定されるものではない。」以上のとおり,励振用圧電素子8aにより励振される三角柱8cと,検出用圧電素子8bを備える素子として「振動検出素子8」という用語が用いられている。 検出する素子が励振される必要はない。 ウその他被告は,本件明細書の発明の課題の記載を引用して,本件特許発明は,振動検出素子が共振したときに正確な振動検出ができなくなるものを対象とすると主張するが,否認する。 エ充足性被告製品は,超音波モータとジャイロセンサを備えており,ジャイロセンサは水晶結晶の素子を用いて振動を検出する。該素子の駆動アームは,所定の周波数によって振動しており,当該振動 エ充足性被告製品は,超音波モータとジャイロセンサを備えており,ジャイロセンサは水晶結晶の素子を用いて振動を検出する。該素子の駆動アームは,所定の周波数によって振動しており,当該振動は,該駆動アームに電圧を印加することによって起こされる。よって,該駆動アームは励振されるものである(甲33参照)。 被告は,自動車の車体姿勢検出用途向けのジャイロセンサ「XV-9000シリーズ」の説明書(乙59)を引用して,ダブルT型の素子が共振することがあったとしても,振動検出に影響が生じないと主張する。 乙59号証は,被告製品のジャイロセンサである「XV-3500CB」とは別の製品についての説明であるし,用途としても乙59号証の「XV-9000シリーズ」は自動車の車体姿勢検出用途向けの製品である。そして,被告が根拠とする,乙59号証に記載されている振動は,超 音波の振動ともジャイロセンサの素子の共振周波数とも全く関係のないものである。 したがって,該ジャイロセンサは,「励振された振動検出素子を用いて振動を検出する振動検出器」に相当し,被告製品は,構成要件Gを充足する。 (被告の主張)ア 「振動を検出する振動検出器」の意義について(ア) 「振動」の意義a 本件明細書の発明の詳細な説明には,「振動を検出する振動検出器」については,何も記載されていない。そして,振動検出素子8の検出対象として,【0019】には,「図2は,本発明による超音波モータと振動検出素子とを備えた装置の実施例を示す構成図である。」として,「撮影レンズ3のブレを検出する振動検出素子8」と記載され,【0021】には,「振動検出素子8は,…被検出物の変動を検出するものである。」と記載されている。 実施例を示す構成図である。」として,「撮影レンズ3のブレを検出する振動検出素子8」と記載され,【0021】には,「振動検出素子8は,…被検出物の変動を検出するものである。」と記載されている。 この記載からすれば,振動検出素子は,「超音波モータと振動検出素子とを備えた装置」の「変動」を検出するものであり,その装置が撮影レンズである場合は,「撮影レンズのブレ」を検出するものであると理解されるが,「変動」も「撮影レンズのブレ」もいずれも「振動」とは異なる概念であるから,これらの記載から「振動を検出する振動検出器」が「撮影レンズのブレを検出する」装置を含む概念であるということはできない。 「振動を検出する振動検出器」は,特許請求の範囲にのみ記載されており,発明の詳細な説明には,振動を検出することの説明が何も記載されていないから,一般的な技術用語として解釈すべきである。 b 「振動」とは,「ある座標系に関する量の大きさが,その平均値ま たは基準値よりも大きい状態と小さい状態とを交互に繰り返す変化」をいうものである(乙25)。 よって,「振動」が「変動」の概念に含まれるということはできるかもしれないが,「振動を検出する振動検出器」とは,被検出物の「振動」のみを検出するものをいうのであるから,振動の上位概念である,被検出物の「変動」を検出する機器であるということはできない。 c 甲41号証1頁8-14行目には,「振動といえば,誰でも直ちに正弦波(サイン波)を連想する。しかし,実際の振動現象は正弦波のようなきれいな繰り返しとはかけ離れた複雑な波形が多い。それどころか,1発で終わる衝撃や2度と同じ波形を繰り返さない不規則現象も振動に入れている。これは4章で説明するように, 際の振動現象は正弦波のようなきれいな繰り返しとはかけ離れた複雑な波形が多い。それどころか,1発で終わる衝撃や2度と同じ波形を繰り返さない不規則現象も振動に入れている。これは4章で説明するように,これらの動的現象がすべて正弦波の積み重ねで表現できることがわかっているからである。したがって,正弦運動さえ勉強しておけば,すべての振動現象を理解することができる。」と記載されている。1発で終わる衝撃や2度と同じ波形を繰り返さない不規則現象であっても,これらの動的現象がすべて正弦波の積み重ねで表現できるから,「振動」に入れて扱っていると記載されているのであって,原告が定義しようとする「広義の振動」と「狭義の振動」などを説明しているものではない。 さらに,カメラの分野において,手振れのような変動を「振動」と呼ぶことがあるとしても,本件特許発明は,カメラの発明ではなく,用途が特定されない「装置」の発明であるから,本件特許発明の用語を解釈するにあたって,カメラの分野の用語の使用法のみを参酌することは適当ではない。 本件特許権に係る請求項9には,「振動検出素子は,手振れの検出用のセンサである」との限定はあるが,手振れを「振動検出器」で検 出するとは記載されていない。出願当初の明細書においても,特許後の明細書においても,振動検出素子は,被検出物の「変動」を検出するものであり,手振れは「変動」の下位概念として記載されていたのである(本件明細書【0019】【0021】参照)。 (イ) 「振動を検出する振動検出器」の意義a 振動ジャイロは,角速度を検出しこれを出力するものであるが,その用途に応じて出力された出力信号の処理が変わる。例えば,移動方向を検出するセンサに用いられる場合には,検出された角速 義a 振動ジャイロは,角速度を検出しこれを出力するものであるが,その用途に応じて出力された出力信号の処理が変わる。例えば,移動方向を検出するセンサに用いられる場合には,検出された角速度を積分して角変位とし,基準となる方向に対して現在何度の方向にあるかを出力する(乙29)。振動検出器は,振動が時間の関数であることから(乙25),角速度の信号から時点ごとの変位を求め,その時点と変位の対の信号として出力する必要がある。 また,本件明細書には「振動を検出する振動検出器」が角速度センサであるとされる根拠もない。被告製品は,手振れにより傾いたことを角速度センサによって検知すると,この検知信号に対応する所定量だけシフトレンズ群をシフトさせるものであり(乙38),角速度センサを角変位計として用い,所定量の角変位の増分を検出してシフトレンズ群を駆動制御しているものであり,時点と角変位を対で出力するものではないから,「振動を検出する振動検出器」ではない。 仮に,手振れの現象が振動と呼ばれる特許文献等の例があるとしても,被告製品の角速度センサは,「振動を検出する振動検出器」として用いられているものではない。 b 本件特許発明は,圧電振動ジャイロが搭載され得る「装置」全般を対象とするものであるから,そのような「装置」の製造者(設計者)が当該技術分野の当業者となる。本件特許発明の解釈は,そのような当業者が「振動を検出する振動検出器」の「振動」の用語をどのよう に解釈するかによって判断されるべきである。 一般的な「装置」全般を発明の対象とする本件特許発明において,「振動を検出する振動検出器」により検出される「振動」は,JIS用語辞典(乙25)に定義されるように,基準値よりも大きい状 一般的な「装置」全般を発明の対象とする本件特許発明において,「振動を検出する振動検出器」により検出される「振動」は,JIS用語辞典(乙25)に定義されるように,基準値よりも大きい状態と小さい状態を交互に繰り返す変化,すなわち,機器又は装置に加わる周期的な運動と解されるのである。 イ 「励振された振動検出素子」の意義について(ア) 本件明細書【0021】には,「励振用圧電素子8aが三角柱8cを励振させ」と記載されている。このように,本件明細書においては,「励振」は,系に作用する外力の意味で用いられている。 (イ) 「振動検出素子」は,振動をする検出素子と解することもできるから,励振された部分を用いて検出する素子というのであれば,励振された部分と振動を検出する部分は同じ部分である。「励振された振動検出素子」は,文言上,「振動検出素子」そのものが励振されると理解されるのであって,「励振された部分」と「振動を検出する部分」が別の部分を含むものと解する余地はない。本件明細書【0021】には,三角柱8cを励振するとともに,同じ三角柱8cを検出に使用するものが記載されている。特許請求の範囲には,このように励振される素子であるとともに,同じ励振された部分で検出をも行う素子を「励振された振動検出素子」と表記したのである。 仮に,「励振された振動検出素子」が素子の一部が励振されるものを含むとしても,「振動検出素子」とは,検出機能を持った部材なのであるから,「励振された」は,検出機能を持った部分に係るのである。 「励振された部分を用いて振動を検出する素子」とは,検出する部分が励振される検出素子としか解されないのである。 (ウ) 原告は,本件特許の出願に係る意見書(乙24)において,「引用 る。 「励振された部分を用いて振動を検出する素子」とは,検出する部分が励振される検出素子としか解されないのである。 (ウ) 原告は,本件特許の出願に係る意見書(乙24)において,「引用 文献の共振周波数制御の対象は,それぞれは自ら振動しないものであり,例えば,引用文献1では『可動子』であり,引用文献2では『駆動体及びこれらの伝達系』である。これに対して,本願発明は,構成要件Aに示すように,『超音波モータ』と『励振された振動検出素子』というように,2つの振動するものの関係を規定しており,発明の技術思想が全く異なるものである。」(第3頁下から6行目-末行)と主張しているから,振動検出素子が自ら振動していることが前提となっている。 原告は,出願当初の特許請求の範囲の「超音波モータと振動検出素子とを備えた装置であって」の記載(乙16参照)を,平成13年9月28日付けの手続補正書(乙15)により「超音波モータと励振された振動検出素子を用いて振動を検出する振動検出器とを備えた装置において」と補正するとともに,意見書にて,「本願発明においては,『超音波モータ』と『振動検出素子』とは,いずれも自ら振動するものである。」(乙24の4頁11行目-12行目)と主張している。原告も「振動検出素子」を自ら振動する検出素子としていたのである。 以上より,「励振された振動検出素子」とは,振動検出素子自体が振動されることを意味する。「励振された振動検出素子」は,文言上,「振動検出素子」そのものが励振されると理解されるのであって,「励振された部分」と「振動を検出する部分」とに分割して解する余地はない。 ウその他本件特許発明は,「超音波モータの振動によって振動検出素子が共振して,正確な振動検出がで 励振された部分」と「振動を検出する部分」とに分割して解する余地はない。 ウその他本件特許発明は,「超音波モータの振動によって振動検出素子が共振して,正確な振動検出ができなくなるという」(本件明細書2頁右欄3-5行目)という問題点を「発明が解決しようとする課題」とした発明であるから,振動検出素子が共振したとき正確な振動検出ができなくなるものを対象とすると解すべきである。 エ構成要件Gの非充足(ア) 被告製品の角速度センサは,撮影レンズに生ずる角速度から撮影レンズの手振れを検出するものであるが,撮影レンズの手振れは,シャッターが開放されているわずかな時間の撮影レンズの変動であるから,基準値よりも大きな状態と小さな状態とを交互に繰り返すような運動,すなわち「振動」のみに限られるものではない。 したがって,被告製品の角速度センサ(ジャイロセンサ)は,振動を検出するものではない。 また,被告製品のダブルT型の素子の駆動アームは,励振されていない。本件明細書においては,「励振」の用語は,系に作用する外力の意味で用いられている。さらに,被告製品は,交流電圧が印加されることにより駆動アームのみが屈曲振動をするのみであって,角速度を検出する素子である検出アーム等を含む素子全体が励振され,振動することはない。 以上によれば,被告製品は,「振動を検出する振動検出器」といえないし,「励振された振動検出素子」の構成を備えていない。 (イ) 被告製品のダブルT型の素子は,その構造上,超音波モータの振動(往復の直線運動)が外力として加わって,仮に,ダブルT型の素子が共振することがあったとしても,振動検出に影響が生じないものである(乙59)。そうすると,被 の素子は,その構造上,超音波モータの振動(往復の直線運動)が外力として加わって,仮に,ダブルT型の素子が共振することがあったとしても,振動検出に影響が生じないものである(乙59)。そうすると,被告製品のダブルT型の素子は,共振しても正確な振動検出ができるから,本件特許発明の技術的範囲に属さない。 (ウ) したがって,被告製品は,構成要件Gを充足しない。 (2) 構成要件Hの充足性(争点1-2)(原告の主張)ア(ア) 「前記振動検出素子の1次の共振,2次の共振」は,振動検出素子の中の励振された部分の1次の共振,2次の共振を意味する。被告製品 において,励振されるのは駆動アームであり,駆動アームの1次共振,2次共振がこれに該当することを当業者は当然に理解できる。 半値幅は,以下の計算式で求めることができる(甲13,14)。 半値幅=ピークの周波数(共振周波数)/Q値Q値は,共振の特性を表す無次元量である。 (イ) 上記(ア)の主張は,駆動アーム以外の部分が全く振動しないという主張をしているのではない。 本件特許発明の技術的範囲に属するかを判断するにあたり,ほとんど振動しない基部12,連結アーム13,14及び検出アーム16A,16Bの部分をあえて取り上げる必要がないため,触れていないだけである。 ほとんど振動しないは,全く振動しないことではないので,わずかに振動することも取り上げるとしても,重心位置Gを通るY軸で線対称の振動を行っている駆動アーム15A,15Bと駆動アーム15C,15Dの振動と共に振動するのであるから,同じ共振周波数である。よって,わずかに振動することも取り上げて表現するなら,「駆動アームの共振周波数」との部分 駆動アーム15A,15Bと駆動アーム15C,15Dの振動と共に振動するのであるから,同じ共振周波数である。よって,わずかに振動することも取り上げて表現するなら,「駆動アームの共振周波数」との部分は,「駆動アーム(及びその振動と共に僅かに振動する該水晶結晶の部分)の共振周波数」と表現すればよいので,「駆動アームの共振周波数」と従前表現していた部分は,「駆動アーム(及びその振動と共にわずかに振動する該水晶結晶の部分)の共振周波数」と予備的に主張する。 イ被告は,本件特許発明の出願に係る意見書(乙24)の記載をもって,出願時に認識していた振動検出素子の1次の共振周波数とより高次の共振周波数との関係が,被告製品のダブルT型の素子の駆動アームの共振周波数に当てはまらない旨主張するが,「振動検出素子の1次の共振周波数と2次の共振周波数の間隔は,より高次の共振周波数の間隔に比べて広い」 かどうかは,補正とは何の関係もなく,具体的な引例を回避するために上記のような記載を意見書において行ったわけでもなく,原告は特許が認められた際の発明の要旨より広く発明の技術的範囲を解釈しようとしているわけでもないから,包袋禁反言の主張は成り立たない。 ウ充足性(ア) 被告製品において,該駆動アームの共振周波数は,Aタイプ(46. 5kHz品)においては,1次が約47kHz,2次が約400kHz,Bタイプ(50.3kHz品)においては,1次が約50kHz,2次が約431kHzである(甲34)。 被告製品において,水晶結晶のQ値は少なくとも20,000である(甲15)。 よって,被告製品において,該駆動アームの1次の共振の半値幅帯域と2次の共振の半値幅帯域は,以下の範囲内にある。 Aタイプ は少なくとも20,000である(甲15)。 よって,被告製品において,該駆動アームの1次の共振の半値幅帯域と2次の共振の半値幅帯域は,以下の範囲内にある。 Aタイプ1次共振周波数 (47kHz-2.35Hz)~(47kHz+2.35Hz)2次共振周波数 (400kHz-20Hz)~(400kHz+20Hz)Bタイプ1次共振周波数 (50kHz-2.5Hz)~(50kHz+2.5Hz)2次共振周波数 (431kHz-21.55Hz)~(431kHz+21.55Hz)被告製品において,超音波モータの周波数制御範囲は,58.5kHz~62.5kHz又は64.5kHz~68.5kHzである(別紙被告製品説明書(被告)記載h―1)。 (イ) そうすると,問題とする共振態様(甲34の原告実験,甲47の3頁図3,図4,4頁図5,図6,甲56スライド23~26,乙40の被告実験,乙51の38頁)において,被告製品の水晶結晶の素子(振動検出素子に相当)の共振周波数は,Aタイプにおいては,1次が約4 7kHz,2次が約400kHz,Bタイプにおいては,1次が約50kHz,2次が約431kHzであるといえるから,被告製品において,該水晶結晶の素子の1次の共振の半値幅帯域と2次の共振の半値幅帯域は,上記(ア)に記載の範囲内にある。 (ウ) 被告は,ダブルT型の素子がパッケージ内部において基部107で吊り上げられるように支持されており,基部107の運動によって生じる振動形態のみを「外力による振動形態」とし,これが「励振による振動形態」と異なると主張しているものと思われる。当該「外力による振動形態」は,乙59号証の 持されており,基部107の運動によって生じる振動形態のみを「外力による振動形態」とし,これが「励振による振動形態」と異なると主張しているものと思われる。当該「外力による振動形態」は,乙59号証の6頁写真3の「直線運動」であって,乙59号証によると,この「直線運動」が加わっても異常出力を出さないと記載されているので,ダブルT型の素子が共振することにはならないと主張しているようである。 被告は,超音波の振動とは全く関係のない運動を取り上げて,それが「励振による振動形態」と異なると主張しているにすぎない。超音波モータが発生させる振動は,乙59号証の6頁写真3の「直線運動」の図に記載されているように,素子の側方からのみ,つまり,ある一方向からのみ運動が伝達されるものではない。超音波モータからの振動がいろいろな方向からダブルT型の素子に伝わる以上,共振周波数に一致ないしほぼ一致する振動によりダブルT型の素子は共振する。 被告製品は,振動検出素子の共振の半値幅帯域と超音波モータの周波数制御範囲とを別の帯域に設定し,また,別の帯域に設定という場合に,超音波モータの周波数制御範囲を振動検出素子の1次の共振の半値幅帯域と2次の共振の半値幅帯域との間に設定している以上,本件特許発明の技術的範囲に属する。被告製品は,当該構成により共振の問題点を回避し,本件特許発明の作用効果を享受しており,技術的範囲に属さない理由はない。 (エ) よって,被告製品は,前記超音波モータの周波数制御範囲を前記水晶結晶の素子の1次の共振の半値幅帯域と2次の共振の半値幅帯域との間に設定しているから,構成要件Hを充足する。 (被告の主張)ア原告は,被告製品のダブルT型の素子全体が「振動検出素子」に該当するとしているか 半値幅帯域と2次の共振の半値幅帯域との間に設定しているから,構成要件Hを充足する。 (被告の主張)ア原告は,被告製品のダブルT型の素子全体が「振動検出素子」に該当するとしているから,「振動検出素子」の「共振の半値幅帯域」とは,素子全体の振動による共振の現象をいうのであって,駆動アームのみの共振の現象ではない。 イ本件特許発明は,振動検出素子を支持する部材を介して外力が加えられ,これによって振動検出素子が共振することにより誤検出が起こることを防止することを目的としているものであるから(本件明細書2頁右欄1-5行目参照),振動検出素子の共振周波数は,振動検出素子を支持する部材を介して外力が加えられた際に生ずる振動形態の共振周波数でなければならない。 したがって,本件特許発明の振動検出素子の共振周波数とは,振動検出素子を支持する部材を介して振動が加えられた際に生ずる振動形態における共振周波数と解すべきである。本件特許発明の対象である「装置」について全く考慮せず,振動検出素子と超音波モータのそれぞれの単体における特定の共振特性のみに着目する原告の主張は成り立たない。 本件特許発明の作用効果は,励振による振動形態が外力(超音波モータの振動)により引き起こされ,励振による振動形態における共振周波数と外力による振動形態における共振周波数とが等しくなる振動検出素子を対象としたとき,初めて生ずる作用効果なのである。 したがって,本件特許発明は,正三角形音片型振動ジャイロのように,超音波モータの振動により振動検出素子の励振による振動形態が引き起こされ(励振による振動形態と外力による振動形態が一致する),励振によ る振動形態における共振周波数と外力による振動形態における共振周波数が等し より振動検出素子の励振による振動形態が引き起こされ(励振による振動形態と外力による振動形態が一致する),励振によ る振動形態における共振周波数と外力による振動形態における共振周波数が等しくなる振動検出素子を対象とするものに限られるべきである。 ウ本件第2特許発明は,文言上,構成要件Hに関して3次以上のより高次の共振周波数についての限定はされていない。 しかしながら,本件特許発明の出願に係る意見書(乙24)で,振動検出素子の1次の共振の半値幅帯域と2次の共振の半値幅帯域との間に超音波モータの周波数制御範囲を設定した点について,「振動検出素子の1次の共振周波数と2次の共振周波数の間隔は,より高次の共振周波数の間隔に比べて広いために,超音波モータの共振周波数帯域や周波数制御範囲を広く設定することができる」(4頁末行-第5頁3行目)と主張し,特許となったものである。 したがって,構成要件Hは,1次の共振周波数と2次の共振周波数との間隔が,より高次にある少なくとも2次の共振周波数と3次の共振周波数との間隔よりも広いものに限定して解釈されるべきである。 エ構成要件Hの非充足(ア) 被告製品において,水晶結晶素子の駆動アームの駆動モード(駆動モードとは,甲47の3頁4行目に用いられている用語と同じ意味,すなわち2頁図1のXY平面内で駆動アームの先端が振動する態様をいう。)における共振周波数が,Aタイプ(46.5kHz品)につき1次共振点が約47kHz,2次共振点が約400kHzであり,Bタイプ(50.3kHz品)につき1次共振点が約50kHz,2次共振点が約431kHz,であることは認める。 また,Aタイプ(46.5kHz品)の3次共振点は約1831kHzであり,Bタイプ( 50.3kHz品)につき1次共振点が約50kHz,2次共振点が約431kHz,であることは認める。 また,Aタイプ(46.5kHz品)の3次共振点は約1831kHzであり,Bタイプ(50.3kHz品)の3次共振点は約1849kHzである(乙40)。 (イ) 別紙被告製品説明書(被告)記載のとおり,ダブルT型の素子は, パッケージ内部において基部107で吊り上げられるように支持されているから,仮に,超音波モータの振動がパッケージに伝わってダブルT型の素子が振動されるとすれば,その振動の形態は,基部107の運動によって生ずる振動形態となる(外力による振動形態)。 ダブルT型の素子の駆動アーム101a,101bが励振された状態で,ダブルT型の素子の面内で,基部107に連結アーム105a,105bと平行な方向の振動が加えられると,駆動アーム101a,101bは励振状態が維持されているので元の振動が維持されるが,検出アーム102は基部107に加えられた振動方向とは反対方向に振動する。 この振動の形態は,駆動アームが励振された場合の振動形態(励振による振動形態)とは異なる(励振による振動形態では,検出アーム102は振動しない。乙59の6頁写真3参照)。 (ウ) 「振動検出素子の共振周波数」とは,励振された振動形態における素子の共振周波数と解されるが,本件特許発明の目的は,超音波モータによってその共振周波数と等しい振動が素子に生ずることを防ぐことにあると解されるところ,被告製品では外力による振動形態が励振による振動形態と一致することはないから,超音波モータによって生ずる振動の周波数が,励振による振動形態の共振周波数と一致したとしても,ダブルT型の素子が共振することにはならない。 (エ) による振動形態と一致することはないから,超音波モータによって生ずる振動の周波数が,励振による振動形態の共振周波数と一致したとしても,ダブルT型の素子が共振することにはならない。 (エ) 被告製品のダブルT型の素子では,ダブルT型の素子の励振自体が,4つの駆動アームのそれぞれに振動を加えるものであって,基部,連結アーム及び検出アームはほとんど振動しないという,それ自体自然には起こりえない特別な振動形態であり(甲17の5頁13-18行目参照),一方で,ダブルT型の素子の支持部材に加速度が加わった場合には,乙59号証6頁の写真3の直線運動に示されるような振動形態となるのであるから,両者の振動形態における共振周波数は異なるのである。 (オ) 被告製品のダブルT型の素子は,励振による振動形態が外力による振動形態と一致せず,励振による振動形態における共振周波数と,外力による振動形態における共振周波数とが異なるものなのであるから,本件特許発明の技術的範囲に属さない。 (カ) 被告製品のダブルT型の素子の駆動アームでは,Aタイプ及びBタイプのいずれにおいても,2次の共振周波数と3次の共振周波数との間隔の方が,1次の共振周波数と2次の共振周波数との間隔よりも広い。 以上のとおり,包袋禁反言の法理より構成要件Hを充足しない。 (キ) したがって,被告製品は,構成要件Hを充足しない。 (3) 構成要件Iの充足性(争点1-3)(原告の主張)被告製品は,超音波モータと振動検出器に相当するジャイロセンサとを備えた装置であるから,構成要件Iを充足する。 以上のとおり,被告製品は,本件第2特許発明の全ての構成要件(構成要件G~I)を充足するから,本件第2特許発明の技術的範囲に ジャイロセンサとを備えた装置であるから,構成要件Iを充足する。 以上のとおり,被告製品は,本件第2特許発明の全ての構成要件(構成要件G~I)を充足するから,本件第2特許発明の技術的範囲に属する。 (被告の主張)被告製品の角速度センサ(ジャイロセンサ)は,手振れにより撮影レンズに生ずる角速度を検出するものであって,振動を検出するものではないから,「振動検出器」ではない。 したがって,被告製品は,「振動検出器」など備えておらず,構成要件Iを充足しない。 (4) 構成要件Jの充足性(争点1-4)(原告の主張〔予備的主張〕)上記(2)(原告の主張)のとおり,被告製品は,前記振動検出素子の共振の半値幅帯域と前記超音波モータの周波数制御範囲とを別の帯域に設定しているから,構成要件Jを充足する。 以上のとおり,被告製品は,本件第3特許発明の全ての構成要件(構成要件G,J及びI)を充足するから,本件第3特許発明の技術的範囲に属する。 (被告の主張)原告主張の共振の半値幅帯域の値は,駆動アームの駆動方法の共振の半値幅帯域の値であって,「振動検出素子」の共振の半値幅帯域の値ではない。 (5) その他(原告の主張)原告は,被告の従前の主張の繰り返しや侵害論の蒸し返しの主張について,逐一,これに反論することはしない。被告の主張は全て争う。 (被告の主張)別紙被告準備書面18(平成25年8月30日付け)における主張記載のとおり。 2 本件特許が特許無効審判により無効にされるべきものであるか(争点2)(1) 明細書の要旨変更の有無(争点2-1)(被告の主張)ア本件第2特許について(ア) 平成1 本件特許が特許無効審判により無効にされるべきものであるか(争点2)(1) 明細書の要旨変更の有無(争点2-1)(被告の主張)ア本件第2特許について(ア) 平成13年9月28日付け手続補正書(乙15)による補正(以下「本件補正」という。)は,特許請求の範囲の記載を補正するものであって,補正がされた特許請求の範囲請求項6の記載は,本件第2特許発明のとおりのものである。 a 本件補正は,請求項6について,発明の対象となる装置を「超音波モータと励振された振動検出素子を用いて振動を検出する振動検出器とを備えた装置であって,」と補正するものであるが,「励振された振動検出素子を用いて振動を検出する振動検出器」は,出願の願書に最初に添付された明細書又は図面に記載されていないし,出願当初の明細書の記載から自明な事項ということもできないから,本件補正は, 明細書の要旨を変更するものである。 すなわち,出願当初の明細書(乙16)の【0021】には,振動検出素子8は被検出物の変動を検出すると記載されているのみで,振動を検出するとは記載されていない。したがって,出願当初の明細書において検出器が振動検出器であることが自明とはいえない。 また,出願当初の明細書の【0004】の「振動検出素子が共振して,正確な振動検出ができなくなる。」との記載は,振動検出素子自体の振動を意味するものである。 b 本件補正は,出願当初の明細書の請求項6の記載のうち「前記振動検出素子の共振の半値幅帯域以外の帯域に前記超音波モータの周波数制御範囲を設定した」との記載を「前記超音波モータの周波数制御範囲を前記振動検出素子の1次の共振の半値幅帯域と2次の共振の半値幅帯域との間に設定した」と補正す 域以外の帯域に前記超音波モータの周波数制御範囲を設定した」との記載を「前記超音波モータの周波数制御範囲を前記振動検出素子の1次の共振の半値幅帯域と2次の共振の半値幅帯域との間に設定した」と補正するものである。「超音波モータの周波数制御範囲を振動検出素子の1次の共振の半値幅帯域と2次の共振の半値幅帯域との間に設定した」発明は,出願当初の明細書には記載されておらず,かつ,当該明細書の記載から自明な事項でもないから,本件補正は,明細書の要旨を変更するものである。 以上のとおり,本件補正は出願当初の明細書の要旨を変更するものであるから,本件特許に係る出願は,平成5年法律第26号による改正前の特許法40条の規定により,本件補正に係る手続補正書が提出された平成13年9月28日にしたものとみなされる。 (イ) 上記により本件特許の出願日とみなされる平成13年9月28日前に頒布された本件第2特許の公開公報である特開平7-115781号公報(乙16,以下「刊行物1」という。)には,以下の発明が記載されている(以下「刊行物1発明」という。)。 「撮影レンズとカメラボディが着脱可能なカメラシステムにおいて,撮 影レンズに撮影レンズの焦点整合用の駆動源として撮影レンズに超音波モータを設け,手振れの検出用のセンサとして振動検出素子を撮影レンズに設け,振動検出素子は,圧電振動ジャイロ型と呼ばれるものであり,励振用圧電素子が三角柱を励振させ,検出用圧電素子によりコリオリの力を利用して被検出物の変動を検出するものであり,振動検出素子の共振特性並びに超音波モータの共振特性及び周波数制御範囲の関係について,超音波モータの周波数制御範囲が振動検出素子の1次の共振の半値幅帯域と2次の共振の半値幅帯 であり,振動検出素子の共振特性並びに超音波モータの共振特性及び周波数制御範囲の関係について,超音波モータの周波数制御範囲が振動検出素子の1次の共振の半値幅帯域と2次の共振の半値幅帯域との間に設定されたカメラシステム」(ウ) 本件第2特許発明と刊行物1発明とは,本件第2特許発明が「励振された振動検出素子を用いて振動を検出する振動検出器」を備えているのに対し,刊行物1発明は,励振された振動検出素子は用いているが,その振動検出素子が振動を検出する振動検出器の構成要素とはされていない点(相違点1)でのみ相違する。 相違点1についてみると,本件第2特許発明の振動検出素子も刊行物1発明の振動検出素子も,いずれも実施例としてはコリオリの力を利用して被検出物の変動を検出するものと記載されている(本件明細書【0021】及び乙16の3頁右欄25-35行目参照)。そして,本件(特許の出願当初の)明細書には,振動検出素子を用いて検出した装置の振動からどのように装置の変動を求めるかの記載もなく,また,装置の変動を検出する際に振動を検出した上でこれを変動に変換することの技術的意義も記載されていないから,相違点1は,当業者が適宜行う設計的事項にすぎない。 したがって,本件第2特許発明は,刊行物1発明と実質的に同一である。また,実質的に同一といえないとしても,少なくとも,刊行物1発 明から当業者が容易に発明をすることができたものである。 よって,本件第2特許発明は,刊行物1発明であるから特許法29条1項3号に該当し,本件第2特許は特許法第29条1項に違反する。また,本件第2特許発明は,少なくとも刊行物1発明に基づいて当業者が容易に発明をすることができたものであるから,本件第2特許は特許法 1項3号に該当し,本件第2特許は特許法第29条1項に違反する。また,本件第2特許発明は,少なくとも刊行物1発明に基づいて当業者が容易に発明をすることができたものであるから,本件第2特許は特許法29条2項に違反する。 (エ)a 本件第2特許発明は,「超音波モータと振動検出素子とを備えた装置」の発明であって,カメラシステムに限定されない一般的な装置を発明の対象とするものであるから,実施例にカメラシステムの手振れに関する記載があるからといって,「振動」が「カメラの手振れ」に限定して解釈されるものではない。一般的な装置の発明について「振動」の語が用いられているのであるから,この「振動」は一般的な装置に生ずる「振動」と解すべきである。「振動」は,技術用語であるからその技術用語の意味として解釈されるべきである。 出願当初の明細書にはカメラシステムの手振れを検出するものが記載されているが,これは,出願当初の明細書の請求項10~12に記載されているように,「装置」の一態様としてカメラシステムを選択した場合に,【0021】の「被検出物の変動」がカメラの手振れに対応することを意味するのであって,【0021】の「被検出物の変動」がカメラの手振れのみを意味するというものではない。 カメラの手振れ補正の技術分野において,手振れの現象を「振動」と表現することが一般的であるとしても,出願当初の明細書においては,カメラの手振れは,「被検出物の変動」の下位概念とされていたのである。 「振動」は,「変動」とは異なる概念であり,本件明細書には,「振動」と「変動」の2つの用語が用いられているのであって,出願 当初の明細書においてはカメラの手振れ補正は「被検出物の変動」の下位概念とされていたのであるから,「 であり,本件明細書には,「振動」と「変動」の2つの用語が用いられているのであって,出願 当初の明細書においてはカメラの手振れ補正は「被検出物の変動」の下位概念とされていたのであるから,「振動」がカメラの手振れのような「変動」を含む概念のものであると解釈する余地はない。 b 出願当初の明細書【0021】には,「励振された振動検出素子」が励振された部分を用いて「振動」を検出する素子であるなどということは記載されていない。【0021】には,励振される三角柱8cに設けられた「検出用圧電素子8bによりコリオリの力を利用して,被検出物の変動を検出するものである。」と記載されているのであって,装置の振動を検出するものとは記載されていない。【0019】には,実施例としてカメラシステムが記載され,振動検出素子8が撮影レンズ3のブレを検出する旨の記載はあるから,当業者は「撮影レンズのブレ」が「変動」の一態様であると理解をするが,「撮影レンズのブレ」は物理現象としては振動に限定されるものではないから,【0021】の「変動」の語を「振動」を意味するものであると理解することはない。 本件補正後の「振動」の語は,一般的な装置の動きを表したものであって,かつ,本件明細書には「振動」の定義付けはされていないから,「振動」は一般的な技術用語として解釈するほかない。 「振動」とは,「ある座標系に関する量の大きさが,その平均値又は基準値よりも大きい状態と小さい状態とを交互に繰り返す変化」をいうものであって(乙25),「励振された振動検出素子を用いて振動を検出する振動検出器」とは,そのような振動のみを検出するものであるから,出願当初の明細書には,「励振された振動検出素子を用いて振動を検出する振動検出器」は記載されていな た振動検出素子を用いて振動を検出する振動検出器」とは,そのような振動のみを検出するものであるから,出願当初の明細書には,「励振された振動検出素子を用いて振動を検出する振動検出器」は記載されていなかったのである。 c 前記1(1)(被告の主張)ア(ア)cと同じ。 d 本件明細書【0004】の「振動検出素子が共振して,正確な振動 検出ができなくなる」の「振動検出」は,甲17号証の「コリオリ力によって生じた検出振動を検出する検出部」の「検出振動」と同様,(振動)検出素子自体の振動を検出することを意味するものである。 これに対して,平成13年9月28日付けの手続補正書で追加された「振動を検出する振動検出器」において検出される振動は,被検出物の振動である。本件明細書【0004】の「振動検出」については,出願当初の明細書に記載されたとおりであるが,被検出物の振動を検出することは,出願当初の明細書において,その文言どおりの記載はなかったのである。 (オ) 出願当初の明細書【0022】には,「図1は,本発明による超音波モータと振動検出素子とを備えた装置の実施例の共振特性の関係を表す図である。」と記載されているのみであって,それ以外に,図1がどのような意図で記載されたものであるかについて何も記載されていない。 発明の詳細な説明には,超音波モータの周波数制御範囲を振動検出素子の1次の共振の半値幅帯域と2次の共振の半値幅帯域との間に設定したことについて何も記載されていないのであるから,図1を見た当業者はこの図から1次の共振の半値幅帯域と2次の共振の半値幅帯域との間の技術的意義を認識することはできない。 出願当初の明細書には,「③ 超音波モータ5の周波数制御範囲Δf2を,振動検出素子8の1次(基本振動モー 半値幅帯域と2次の共振の半値幅帯域との間の技術的意義を認識することはできない。 出願当初の明細書には,「③ 超音波モータ5の周波数制御範囲Δf2を,振動検出素子8の1次(基本振動モード)の共振の半値幅帯域Δf1から離す。」(【0023】参照)及び「⑥ 超音波モータ5の周波数制御範囲Δf2を,振動検出素子8の2次の共振の半値幅帯域Δf3から離す。」(【0024】参照)と記載されている。このようなΔf1,Δf2及びΔf3の関係を図示するとき,周波数制御範囲Δf2を真ん中に置き,その両側に1次の共振の半値幅帯域Δf1及び2次の共振の半値幅帯域Δf3を配置して表現することは,簡潔な表示方法と して採用されやすいのであるから,図1から,振動検出素子の1次の共振の半値幅帯域Δf1,2次の共振の半値幅帯域Δf3及び超音波モータの周波数制御範囲Δf2との関係に関して,当業者が何らかの技術的意義を認識することが必然であるともいえない。 出願当初の明細書の【0004】の記載は,出願当初の請求項6の「振動検出素子の共振の半値幅帯域以外の帯域に超音波モータの周波数制御範囲を設定した」発明が解決しようとした問題点の記載であって,「超音波モータの周波数制御範囲を振動検出素子の1次の共振の半値幅帯域との間に設定した」発明についての固有の技術的意義は記載されていないのである。 原告は,振動検出素子の2次の共振周波数が,1次の共振周波数の2倍以上となる根拠について,被告製品の共振周波数の数値以外に挙げていないが,被告製品のようなジャイロセンサにおけるダブルT型素子は,本件特許の出願当時には存在しなかったのであるから(甲40),被告製品のようなタイプのジャイロセンサにおける1次と2次の共振周波数の関係が本件特許出願当 うなジャイロセンサにおけるダブルT型素子は,本件特許の出願当時には存在しなかったのであるから(甲40),被告製品のようなタイプのジャイロセンサにおける1次と2次の共振周波数の関係が本件特許出願当時に当業者の自明な事項であることを示しているとはいえない。被告製品のようなタイプのジャイロセンサにおける2次の共振周波数が,1次の共振周波数の8倍以上になるということについても同様である。 また,超音波モータは,超音波モータ自体の共振周波数の近傍で使用するように仕様が定められており,駆動効率が低下するような範囲で使用されるものではない。超音波モータの駆動周波数が,振動検出素子の2次の共振周波数より低い場合,別の超音波モータや振動検出素子を選択すればよいのであって,超音波モータの駆動効率は,振動検出素子の2次の共振の半値幅帯域とは何ら関係がない。 したがって,「超音波モータの周波数制御範囲を振動検出素子の1次 の共振の半値幅帯域と2次の共振の半値幅帯域との間に設定した」発明が必然的に認識できるとはいえない。 イ本件第3特許について本件補正は,明細書の要旨を変更するものであるから,本件第3特許に係る出願の出願日は,当該補正書が提出された平成13年9月28日とみなされる。 そして,上記アのとおり,本件第3特許発明は,みなし出願日以前に公開された刊行物1発明と同一,又は刊行物1発明に基づいて当業者が容易に発明をすることができたものであるから,本件第3特許は,特許法29条1項又は2項に違反する。 (原告の主張)ア本件第2特許について(ア) 「励振された振動検出素子を用いて振動を検出する振動検出器」の補正本件補正後の「励振された振動検出素子を る。 (原告の主張)ア本件第2特許について(ア) 「励振された振動検出素子を用いて振動を検出する振動検出器」の補正本件補正後の「励振された振動検出素子を用いて振動を検出する振動検出器」は,出願当初の明細書(乙16)から自明な事項であり,何ら要旨変更に当たらない。 まず,「振動を検出する振動検出器」の「振動」とは,「装置」の振動であり,出願当初の明細書に記載された実施例においては,「撮影レンズのブレ」(【0019】,【0028】),「被検出物の変動」(【0021】)のような具体例で示されている。また,振動型ジャイロの技術分野あるいはカメラの手振れ補正の技術分野においては,手振れの現象を「振動」と表現することが一般に受け入れられており,また当業者にそう理解されている(甲21,22,乙17)。 次に,「励振された振動検出素子」は,出願当初の明細書【0021】等から,励振された部分を用いて振動を検出する素子であることが 理解される。 そして,「振動検出器」とは,「励振された振動検出素子」を用いて手振れのような「振動」を検出するための機器のことであり,典型的には振動型ジャイロセンサのことである。出願当初の明細書の発明の詳細な説明においては,「励振された振動検出素子を用いて振動を検出する振動検出器」と完全に一致する文言はない。しかし,出願当初の明細書【0019】,【0021】,【0028】には,撮影レンズのブレを検出するために,「振動検出素子」が用いられることが明示されている。 一般に,振動検出素子単体で手振れ等の振動を検出するものではなく,入出力機構や必要な信号処理回路などとともに手振れのような「振動」を検出する機器,すなわち「振動検出器」を構成し,こ 明示されている。 一般に,振動検出素子単体で手振れ等の振動を検出するものではなく,入出力機構や必要な信号処理回路などとともに手振れのような「振動」を検出する機器,すなわち「振動検出器」を構成し,これを所望の装置に組み込んで利用することは当然に理解されることである。したがって,「振動検出素子」だけでなく必要な入出力機構や信号処理回路などを含めた「振動検出器」の存在は,出願当初の明細書から自明である。 (イ) 超音波モータの周波数制御範囲についての補正本件第2特許発明の出願当初の請求項6と補正後の請求項6を対比すると,以下のとおりである(下線は補正箇所)。 出願当初の請求項6「【請求項6】超音波モータと振動検出素子とを備えた装置であって,前記振動検出素子の共振の半値幅帯域以外の帯域に前記超音波モータの周波数制御範囲を設定したことを特徴とする超音波モータと振動検出素子とを備えた装置。」補正後の請求項6「【請求項6】超音波モータと励振された振動検出素子を用いて振動を検出する振動検出器とを備えた装置であって,前記超音波モータの周波数制御範囲を前記振動検出素子の1次の共振の半値幅帯域と2次の共振 の半値幅帯域との間に設定したことを特徴とする超音波モータと振動検出器とを備えた装置。」本件補正は,「願書に最初に添付した明細書」の一部である出願当初の請求項6に記載した事項の範囲内において請求項6の範囲を減少したものである。すなわち,出願当初の請求項6においては,「超音波モータの周波数制御範囲」は,「振動検出素子の共振の半値幅帯域以外の帯域」に設定されており,本件補正により,請求項6において「超音波モータの周波数制御範囲」は,出願当初の請求項6の「振動 ,「超音波モータの周波数制御範囲」は,「振動検出素子の共振の半値幅帯域以外の帯域」に設定されており,本件補正により,請求項6において「超音波モータの周波数制御範囲」は,出願当初の請求項6の「振動検出素子の共振の半値幅帯域以外の帯域」をさらに限定して,「前記振動検出素子の1次の共振の半値幅帯域と2次の共振の半値幅帯域との間に設定した」のである。かかる補正は,出願当初の請求項6の範囲を減少したものであるから,平成5年法律第26号による改正前の特許法41条により,明細書の要旨を変更しないものとみなされる。 (ウ) なお,出願当初の明細書(乙16)の【図1】は,超音波モータの周波数制御範囲Δf2を振動検出素子の1次の共振の半値幅帯域Δf1と2次の共振の半値幅帯域Δf3との間に設定したものを示している(【0022】も参照)。そして,当業者は,この構成により,超音波モータの振動によって,振動検出素子が振動して,正確な振動検出ができなくなるという問題点(【0004】)を回避できることを認識できる。 1次の共振の半値幅帯域と2次の共振の半値幅帯域との間に設定することの技術的意義について付言する。振動素子の2次の共振周波数は,1次の共振周波数の2倍以上(被告製品のようなタイプのジャイロセンサでは8倍以上)となる。よって,超音波領域においては,1次の共振周波数以下の領域と比べて,1次の共振の半値幅帯域と2次の共振の半値幅帯域との間の領域の方が領域が広くなり,超音波モータの周波数制 御範囲を設定できる比較的広い範囲を確保することができる。一方,超音波モータをあまりに高い周波数で駆動すると,エネルギーは振動に変換されず,熱に変換される率が高まり,温度上昇を招くので,駆動周波数を高くすればするほどよい,ということにはならな ができる。一方,超音波モータをあまりに高い周波数で駆動すると,エネルギーは振動に変換されず,熱に変換される率が高まり,温度上昇を招くので,駆動周波数を高くすればするほどよい,ということにはならない。超音波モータの周波数制御範囲を振動検出素子の1次の共振の半値幅帯域と2次の共振の半値幅帯域との間に設定するとの構成は,これらの要請を満たした好ましい装置とすることができる構成なのである。 (エ) それゆえ,平成5年法律第26号による改正前の特許法第41条の規定によらなくても,本件補正は,そもそも出願当初の明細書及び図面(乙16)に開示された明細書の要旨を変更するものではない。 (オ) 以上のように,本件補正は要旨変更に当たらないので,要旨変更による出願日の繰り下がりはなく,これによる新規性・進歩性欠如の主張も前提を欠くことになる。 (カ) 「振動」の意義については,前記1(1)(原告の主張)ア(ア)と同じ。 イ本件第3特許について上記アと同じ。 (2) 記載不備の有無(争点2-2)(被告の主張)ア本件第2特許について上記(1)(被告の主張)ア(ア)のとおり,「振動」と「変動」は異なる概念である。特許請求の範囲では振動検出素子が振動を検出する振動検出器であるとされ,発明の詳細な説明においては,同じ振動検出素子が被検出物(装置)の変動を検出するものであるとされているのであるから,本件第2特許発明は振動検出器で検出した「振動」から装置の「変動」を求めるものであると解さざるを得ない。 本件明細書には,振動検出器がいかなる「振動」を検出するかも記載されておらず,かつ検出された「振動」から装置の「変動」を求める手段も記載されていないのであるか さざるを得ない。 本件明細書には,振動検出器がいかなる「振動」を検出するかも記載されておらず,かつ検出された「振動」から装置の「変動」を求める手段も記載されていないのであるから,当業者は容易に第2特許発明を実施することができない。 この点をより具体的に説明すると,次のとおりである。 本件第2特許発明は,「超音波モータと励振された振動検出素子を用いて振動を検出する振動検出器とを備えた装置」を構成要件とする。一方,「変動」とは異なる「振動を検出する振動検出器」は,本件明細書にも,図面にも記載がされていない。 本件明細書【0019】に「図2は,本発明による超音波モータと振動検出素子とを備えた装置の実施例を示す構成図である。カメラボディ1には,ファインダ2と撮影レンズ3が取り付けられ,カメラシステムを構成している。撮影レンズ3は,焦点整合用レンズ4と,その焦点整合用レンズ4を駆動する超音波モータ5と,像ブレを補正する補正光学系6と,その補正光学系6を駆動するアクチュエータ7と,撮影レンズ3のブレを検出する振動検出素子8と,超音波モータ5の駆動制御範囲を設定する設定回路9を有している。」と記載され,【0021】に「図4は,本実施例の装置に用いられる振動検出素子を示す斜視図である。振動検出素子8は,圧電振動ジャイロ型と呼ばれるものであり,励振用圧電素子8aが三角柱8cを励振させ,検出用圧電素子8bによりコリオリの力を利用して,被検出物の変動を検出するものである。」と記載されている。 上記記載からすると,「励振された振動検出素子」に対応する実施例の構成は,励振用圧電素子8a,三角柱8c及び検出用圧電素子8cを備えており,検出用圧電素子の出力から被検出物の変動を検出するものであり, 記載からすると,「励振された振動検出素子」に対応する実施例の構成は,励振用圧電素子8a,三角柱8c及び検出用圧電素子8cを備えており,検出用圧電素子の出力から被検出物の変動を検出するものであり,その被検出物の変動は,カメラシステムの撮影レンズ3のブレに対応すると解される。 ところで,「振動検出器」は何らかの対象物の振動を検出するものであるが,「振動検出器」は何の振動を検出するか,その対象物が特定されていない。本件第2特許発明の実施例は,「振動」とは概念的に異なる装置の「変動」を検出するものであるから,振動検出器は,「装置」の振動を検出するものではない。そうすると,本件第2特許発明は,請求項6には明記されていないが,「励振された振動検出素子を用いて振動を検出する振動検出器」によって「装置」を構成する何らかの部材の振動を検出し,これによって「装置」の変動を検出するものと解されることとなる。 しかしながら,本件明細書又は図面には,「装置」を構成する部材の振動を検出して「装置」の変動を検出することについて何らの記載もないのであるから,当業者は,本件第2特許発明を容易に実施することができない。 したがって,本件明細書は,当業者が容易に発明を実施することができる程度に発明の目的,構成及び効果を記載したものということはできない。 以上のとおり,本件第2特許に係る出願は,平成6年法律第116号による改正前の特許法36条4項に規定する要件を満たしていない。 イ本件第3特許について上記アのとおり,本件第3特許発明について,発明の詳細な説明には当業者が容易に当該発明を実施することができる程度に発明の目的,構成及び効果が記載されていないから,本件第3特許に係る出願は,平成6年法律 アのとおり,本件第3特許発明について,発明の詳細な説明には当業者が容易に当該発明を実施することができる程度に発明の目的,構成及び効果が記載されていないから,本件第3特許に係る出願は,平成6年法律第116号による改正前の特許法36条4項の要件を満たさない。 (原告の主張)ア本件第2特許について上記(1)(原告の主張)ア(ア)のとおり,「振動を検出する振動検出器」を当業者が利用できることは本件明細書から明らかであって,当業者が本件第2特許発明を理解することは容易であるから,本件明細書は,当 業者が容易に本件第2特許発明の実施をすることができる程度に発明の目的,構成及び効果を記載したものである。それゆえ,平成6年法律第116号による改正前の特許法36条4項の要件を欠くものではない。 イ本件第3特許について上記アと同じ。 (3) 進歩性要件違反の有無(争点2-3)(被告の主張)ア本件第2特許について(ア) 主引例本件第2特許の出願前に発行された刊行物である乙17号証(以下「刊行物2」という。)には,「超音波モータと,カメラの回転方向のぶれの角速度を検出するための角速度検出部とを備えたカメラシステム。」の発明(以下「刊行物2発明」という。)が記載されている。 (イ) 対比本件第2特許発明と刊行物2発明とを対比すると,刊行物2発明の「カメラシステム」は,本件第2特許発明の「装置」に相当する。 本件第2特許発明は,文言上特定していないが,その「励振された振動検出素子」は,カメラシステムの手振れの検出用のセンサを下位概念に含むものであり(請求項7及びこれに従属する請求項9参照),一方,刊行物2発明の「角速 ,文言上特定していないが,その「励振された振動検出素子」は,カメラシステムの手振れの検出用のセンサを下位概念に含むものであり(請求項7及びこれに従属する請求項9参照),一方,刊行物2発明の「角速度検出部119a,119b」もカメラシステムの回転方向のぶれの角速度を検出するためのものであるから,本件第2特許発明の「励振された振動検出素子」と刊行物2発明の「角速度検出部119a,119b」とは,カメラシステムの手振れの検出用のセンサである点で一致する。 したがって,両者は,「超音波モータとカメラシステムの手振れの検出用のセンサとを備えたカメラシステム」の点で一致し,本件第2特許 発明の手振れの検出用のセンサが「励振された振動検出素子を用いて振動を検出する振動検出器」からなるのに対して,刊行物2発明は角速度検出部の具体的な構成が特定されていない点(相違点1),本件第2特許発明が「前記超音波モータの周波数制御範囲を前記振動検出素子の1次の共振の半値幅帯域と2次の共振の半値幅帯域との間に設定した」構成を備えているのに対し,刊行物2発明においては,そのような構成が特定されていない点(相違点2)で相違する。 (ウ) 刊行物2発明及び刊行物3~5に基づく進歩性違反a 刊行物の記載本件第2特許の出願前に発行された刊行物である乙18号証(以下「刊行物3」という。)の記載からすれば,刊行物3には,「励振される振動子を備え所定の軸回りの角速度を検出する振動ジャイロは,小型ビデオカメラの画面のブレを補正するために用いられること」及び「振動ジャイロは,他の振動ジャイロの振動に影響されて誤検出の問題が生ずること」が記載されている。 本件第2特許の出願前に発行された刊行物である乙19号証 るために用いられること」及び「振動ジャイロは,他の振動ジャイロの振動に影響されて誤検出の問題が生ずること」が記載されている。 本件第2特許の出願前に発行された刊行物である乙19号証(以下「刊行物4」という。)の記載からすれば,刊行物4には,「振動ジャイロを含む,カメラの像振れ補正装置に用いられる振れ検知装置がビデオカメラのモータ走行振動により誤信号を出力してしまうこと」が記載されている。 本件第2特許の出願前に発行された刊行物である乙20号証(以下「刊行物5」という。)の記載からすれば,刊行物5には,「ビデオカメラの画振れ防止に用いられる回転角速度を検出する振動ジャイロが,励振された振動検出素子を用いて角速度を検出するものであること」及び「超音波モータは,励振された振動体により移動体を移動させるものであり,そのため,外部の機械系と接続すると機械系に不要 な振動を励振する場合があり,これに対する対応策が必要であること」が記載されている。 b 相違点1についてカメラシステムのブレ防止のための検出器として励振された振動子を用いた圧電振動ジャイロで角速度を検出することは,刊行物3~5に記載されているように,本件第2特許の出願時において周知の技術であるから,刊行物2発明の角速度検出部として,励振された振動検出素子を用いた圧電振動ジャイロを用いることは,当業者が適宜選択する設計的事項にすぎない。 c 相違点2について刊行物3及び4に記載されているように,励振された振動検出素子を用いた圧電振動ジャイロが外部からの振動によって,ジャイロ特性が劣化したり,誤信号を出力したりすることが知られており,また,刊行物5に記載されているように,超音波モータは,接 振された振動検出素子を用いた圧電振動ジャイロが外部からの振動によって,ジャイロ特性が劣化したり,誤信号を出力したりすることが知られており,また,刊行物5に記載されているように,超音波モータは,接続された他の機械系に不要な振動を与えることがあることが知られていたのであるから,超音波モータと励振された振動素子を用いた圧電振動ジャイロとを同じ装置に搭載するときには,そのための対策を採ることは当業者として当然のことである。 そして,物体の固有振動数と同じ振動が外部から与えられると,共振を起こして物体の振動の振幅が大きくなること,固有振動数と大きく異なる振動が与えられた場合には振動の振幅が大きくならないことは,乙21号証(以下「刊行物6」という。),乙22号証に記載されているように共振現象として一般に知られていたのであるから,圧電振動ジャイロに外乱となる振動として影響を与える可能性が高い超音波モータから生ずる振動の周波数を圧電振動子の共振周波数(固有振動数)に近づけないことは,当業者であれば普通に考えることであ る。 超音波モータに印加される交流電界の周波数(制御周波数)は,超音波モータから出される不要な振動の周波数の原因であるから,制御周波数と振動検出素子の共振周波数とを離すことは,当業者が容易に想到することができるものである。 超音波モータの制御周波数は,ある1つの範囲で連続的に変わるように設定するものであるから,超音波モータの周波数制御範囲を振動検出素子の共振周波数と離すように設定しようとすれば,一般的な選択肢としては,1次の共振周波数よりも小さな周波数範囲,1次の共振周波数と2次の共振周波数との間,2次の共振周波数と3次の共振周波数との間等となる。また,超音波モータの周波数制 とすれば,一般的な選択肢としては,1次の共振周波数よりも小さな周波数範囲,1次の共振周波数と2次の共振周波数との間,2次の共振周波数と3次の共振周波数との間等となる。また,超音波モータの周波数制御範囲を振動検出素子の共振周波数と十分に離すように設定しようとすれば,共振周波数の半値幅をはずれることも当然である。 また,本件明細書には,振動検出素子の共振の半値幅帯域よりも超音波モータの周波数制御範囲を離すことの技術的意義も,その技術的意義の根拠も記載されていないのであるから,超音波モータの周波数制御範囲が振動検出素子の共振の半値幅帯域にかからないようにすることは単なる設計的事項にすぎない。 そうすると,本件第2特許発明の「前記超音波モータの周波数制御範囲を前記振動検出素子の1次の共振の半値幅帯域と2次の共振の半値幅帯域との間に設定した」構成は,励振された振動検出素子を用いた圧電振動ジャイロに対し超音波モータから生ずる振動の影響を小さくしようとするときに当然に設計する超音波モータの周波数制御範囲の1つを含むものにすぎない。 したがって,相違点2は,刊行物3~5の記載及び共振に関する技術常識に基づいて当業者が容易に想到することができたものである。 d 効果について本件第2特許発明の効果も刊行物2~5の記載及び共振に関する技術常識から予測し得る程度のものであって,格別のものではない。 e 以上のとおり,本件第2特許発明は,刊行物2発明及び刊行物3~5に基づいて当業者が容易に発明をすることができたものであるから,特許法29条2項に違反する。 f 原告の主張に対する反論(a) 刊行物2発明の角速度センサと刊行物3~5に記載され いて当業者が容易に発明をすることができたものであるから,特許法29条2項に違反する。 f 原告の主張に対する反論(a) 刊行物2発明の角速度センサと刊行物3~5に記載された振動型ジャイロは,いずれも,カメラの手振れを検出するセンサであって,カメラの手振れ防止という同一の技術分野に属し,角速度を検出するという同じ機能を有するものであるから,刊行物2発明の角速度センサに振動型ジャイロを用いることには十分な動機付けがある。 さらに,甲26号証,27号証,29号証には,各種のセンサも振動型ジャイロと代替可能なものとして記載されているのであるから,振動型ジャイロ以外のセンサがあるからといって,刊行物2発明の角速度センサとして振動型ジャイロを使用しないという理由とはならない。 刊行物2発明の角速度センサとして,圧電振動型ジャイロ及び原告が挙げた各種センサのうちいずれを使用するかは,当業者が自由に選択できるのである。 (b) 圧電振動ジャイロが誤信号を出力する可能性があるからといって,機械系に不要な振動を励起する可能性がある超音波モータを用いた刊行物2発明の角速度センサとして圧電振動型ジャイロを適用することが困難であるというものではない。 刊行物4に記載されているように,カメラには,フォーカス用の 駆動モータの他にも,一眼レフレックスカメラのクリックミラー,シャッタ,絞り機構等の作動による衝撃等,角速度センサに対して有害な振動が生ずるものである。刊行物4にはそのような有害な振動が生ずるものであっても圧電振動型ジャイロを使用することが記載されているのである。 また,有害振動に対して,振動型ジャイロより有利なセンサがあるという理由 にはそのような有害な振動が生ずるものであっても圧電振動型ジャイロを使用することが記載されているのである。 また,有害振動に対して,振動型ジャイロより有利なセンサがあるという理由だけで,振動型ジャイロが一切使用されないというものでもない。角速度センサには種類によってそれぞれの特性があり,当業者はそれぞれの特性に応じて種々のセンサを選択して使用するのである。 (c) 刊行物5には,「超音波モータは弾性振動を駆動源として使っている。したがって,超音波モータを外部の機械系と接続すると,機械系に不要な振動を励振する場合がある。」と記載されており,超音波モータの駆動周波数は,周波数制御範囲内にあるのだから,超音波モータの振動による共振を防止しようとするのであれば,周波数制御範囲に着目するのは当然のことである。 さらに,乙41~43号証に記載されているように,振動検出素子が,その共振周波数とほぼ等しい周波数又はその共振周波数の高調波の周波数の外部振動によって共振することは,当業者にすでに知られていたことであり,これが格別に新たな発見というものでもない。 (エ) 刊行物2発明及び刊行物7,8に基づく進歩性違反a 刊行物の記載本件第2特許の出願前に発行された刊行物である乙31号証(以下「刊行物7」という。)には,「恒弾性金属材料(エリンバ材)を素材とした正3角形音片型振動子を備えたカメラ用の角速度を検出する 振動ジャイロであって,共振周波数を24.0kHzとするもの」の発明が記載されている。 本件第2特許の出願前に発行された刊行物である乙32号証(以下「刊行物8」という。)には,「カメラの焦点調節部材を駆動する超音波モータであって,駆動 もの」の発明が記載されている。 本件第2特許の出願前に発行された刊行物である乙32号証(以下「刊行物8」という。)には,「カメラの焦点調節部材を駆動する超音波モータであって,駆動周波数を35~45kHzとしたもの」の発明が記載されている。 b 相違点1について上記(ウ)bと同じ。 c 相違点2について刊行物7に記載された振動ジャイロの発明はカメラ用の角速度センサとして設計されたものであり,また,刊行物8に記載された超音波モータの発明はカメラの焦点調節用部材を駆動するためのものであるから,これらの発明を刊行物2発明の角速度検出部及び超音波モータとして採用することに特段の困難性はない。 この場合,刊行物7に記載された振動ジャイロにおいて,1次の共振周波数が24.0kHzの場合,2次の共振周波数を,仮に2倍の48.0kHzとしても,超音波モータの駆動周波数(周波数制御範囲)35~45kHzは,振動ジャイロの1次の共振周波数24.0kHzと2次の共振周波数48.0kHzの間にあることになる。共振周波数の半値幅は,刊行物7には記載されていないが,半値幅は振動ジャイロを構成する材料によって決まる。甲14号証(以下「刊行物11」という。)の記載から半値幅=共振周波数/Q値で近似的に求められるが,エリンバ材は,乙33号証(以下「刊行物9」という。)及び乙34号証(以下「刊行物10」という。)に記載されているようにQ値が5000以上のものがある。一般に振動子に使われる材料はQ値が高いものが使われる。仮にQ値が100程度のもので あっても刊行物7に記載された恒弾性金属材料(エリンバ材)を用いた振動ジャイロの2次の共振周波数の半値幅は,0.48kHz程度 材料はQ値が高いものが使われる。仮にQ値が100程度のもので あっても刊行物7に記載された恒弾性金属材料(エリンバ材)を用いた振動ジャイロの2次の共振周波数の半値幅は,0.48kHz程度にしかならないのであるから,刊行物2発明の角速度センサ及び超音波モータにそれぞれ刊行物7記載の振動ジャイロ及び刊行物8記載の超音波モータを適用したものにおいては,超音波モータの駆動周波数(周波数制御範囲)が振動ジャイロの1次と2次の共振の半値幅帯域に重なることはない。 刊行物7の正三角形音片振動ジャイロでは,1次の共振周波数が24.0kHzであるが,これに一般的な梁の両端自由の振動モードに当てはめると2次の共振周波数は66.1kHzとなり(甲46参照),より高次の共振周波数の間隔では,更に大きな帯域となる。したがって,上記の主張とは別に,この算定に基づいて検討すると,次のとおりとなる。この場合,刊行物7の振動ジャイロに対して,カメラ用に選択した超音波モータを組み合わせたときには,超音波モータの周波数制御範囲が振動ジャイロの共振の半値幅帯域と重なる場合よりも,重ならない場合の蓋然性の方が高い。任意の共振周波数を有する超音波モータを選択した場合に,刊行物8の記載により周波数制御範囲が10kHzの超音波モータを想定し,どの程度の割合で,振動ジャイロの共振周波数と超音波モータの周波数制御範囲が重なるかを検証すると,振動ジャイロの1次の共振周波数と2次の共振周波数の間隔である24.0kHz~66.1kHzの帯域において,超音波モータの周波数制御範囲の中央値が24.0kHz~29.0kHz及び61.1kHz~66.1kHzの領域にある超音波モータは,超音波モータの周波数制御範囲が振動ジャイロの共振の半値幅帯域と重なるが,それ以外の2 制御範囲の中央値が24.0kHz~29.0kHz及び61.1kHz~66.1kHzの領域にある超音波モータは,超音波モータの周波数制御範囲が振動ジャイロの共振の半値幅帯域と重なるが,それ以外の29.0kHz~61.1kHzの32.1kHz幅の領域にある超音波モータは,超音波モータの周波数制御範囲 が振動ジャイロの共振の半値幅帯域と重なることはないのである。振動ジャイロの共振の半値幅帯域は非常に狭いので無視することができる。 d 以上のとおり,本件第2特許発明は,刊行物2発明及び刊行物7,8に基づいて当業者が容易に発明をすることができたものであるから,特許法29条2項に違反する。 イ本件第3特許について上記アのとおり,本件第3特許発明は,刊行物2発明及び刊行物3~5に基づいて当業者が容易に発明をすることができたものであり,また,刊行物2発明及び刊行物7,8に基づいて当業者が容易に発明をすることができたものであるから,特許法29条2項に違反する。 (原告の主張)ア本件第2特許について(ア) 刊行物2発明及び刊行物3~5に基づく進歩性違反についてa 相違点1について刊行物2発明では,角速度検出部が,本件第2特許発明のような「励振された振動検出素子を用いて振動を検出する振動検出器」とされておらず,具体的な構成が特定されていない。 しかし,刊行物3~5は,圧電振動ジャイロでカメラの角速度を検出できることを開示しているものの,このカメラには本件第2特許発明のような「超音波モータ」とともに使用されることが記載されていない。 カメラの手振れ検出に用いられる角速度を検出する装置としては,本件第2特許の出願前に,圧電振動ジ 本件第2特許発明のような「超音波モータ」とともに使用されることが記載されていない。 カメラの手振れ検出に用いられる角速度を検出する装置としては,本件第2特許の出願前に,圧電振動ジャイロに限らず,光ファイバージャイロ(甲25,甲26)ないし光レートジャイロ(甲27),オートジャイロ(甲28),ハイドロスタティックセンサ(甲29)な いし流体慣性型角変位計(甲27)等が知られていた。そのため,当業者が刊行物2の角速度検出部として,圧電振動ジャイロを使用するとは限らない。つまり,当業者が刊行物2の角速度検出部として,圧電振動ジャイロを使用したはずであるという動機付けないし示唆等はない。 むしろ,被告の主張や刊行物4,5の記載からすれば,当業者は圧電振動型ジャイロの使用を避けるのが常識的である。振動を発生させる超音波モータと振動を検出する圧電振動ジャイロを一緒に使用すると,圧電振動ジャイロが誤信号を出力する可能性があるのであるから,当業者は,検出素子として圧電素子のような励振された振動検出素子を用いる振動型ジャイロではなく,励振された振動検出素子を利用しない他の形式のジャイロセンサ(例えば,光ファイバージャイロセンサ,オートジャイロセンサ,ハイドロスタティックセンサなど)を使用するのが常識的である。 また,刊行物5は,超音波モータが外部の機械系に不要な振動を励振する場合があることを指摘している。そうすると,当業者は,超音波モータと圧電振動型ジャイロのような励振された振動検出素子を同時に使用することを避けようとするので,刊行物2の角速度検出部として,圧電振動型ジャイロではなく励振された振動検出素子を利用しない他の形式のジャイロセンサ(例えばオートジャイロセンサ,ハイドロスタティック することを避けようとするので,刊行物2の角速度検出部として,圧電振動型ジャイロではなく励振された振動検出素子を利用しない他の形式のジャイロセンサ(例えばオートジャイロセンサ,ハイドロスタティックセンサ,光ファイバージャイロなど)を使用するのが常識的である。 よって,刊行物2発明の角速度検出部として,励振された振動検出素子を用いた圧電振動ジャイロを用いることは,当業者が適宜選択する設計的事項にすぎない旨の被告の主張は失当である。 b 相違点2について 超音波モータと励振された振動検出素子とを一緒に用いないのが常識的であるが,仮に超音波モータと圧電振動型ジャイロを同時に使用するのであれば,刊行物4,5に記載されているような対策が必要となる。 刊行物4の対策は,いずれも圧電振動型ジャイロの励振された振動検出素子に他の振動源からの振動が伝搬しないように,機械的な振動を減衰させるように圧電振動型ジャイロをカメラ等に取り付けている。 また,刊行物4記載の発明自体も,弾性部材15p,15yにより筺体に加わる振動(手振れ)以外の振動を吸収し,振動型ジャイロの励振された振動検出素子に伝達されないようにするものである(【0022】,【0025】,【0047】)。刊行物5においても,超音波センサが発生させる振動を,他の機械系(振動型ジャイロなど)へ伝達させないように,緩衝効果の大きい減衰要素を構成するなどして振動伝達を小さくする対策が示唆されている。 以上によれば,仮に当業者が超音波センサと励振された振動検出素子を用いる圧電振動型ジャイロを同時に使用するならば,超音波モータが発生させる振動を減衰させるための部材を設けて,超音波モータが発生させる振動が圧電振動型ジャイロの励 波センサと励振された振動検出素子を用いる圧電振動型ジャイロを同時に使用するならば,超音波モータが発生させる振動を減衰させるための部材を設けて,超音波モータが発生させる振動が圧電振動型ジャイロの励振された振動検出素子に伝搬しないようにするように対策するはずである。つまり,刊行物4,5には,本件第2特許発明とは,別の方法により問題を解決することが示唆されているのである。 刊行物3~5のいずれにも,超音波モータと圧電振動型ジャイロを敢えて一緒に使用した上で,さらに超音波モータの周波数駆動範囲を圧電振動型ジャイロの励振された振動検出素子の共振周波数から離すことで超音波モータと励振された振動検出素子とを一緒に用いることの問題点を解決することを示唆する記載はない。 (イ) 刊行物2発明及び刊行物7,8に基づく進歩性違反についてa 相違点1について上記(ア)aと同じ。 b 相違点2について刊行物7は,カメラ用の角速度センサとして設計された振動ジャイロを開示しているが,刊行物7に,そのような振動ジャイロを超音波モータと一緒に使用することを示唆する記載はない。また,刊行物8は,カメラレンズの駆動に利用できる超音波モータを開示しているが,刊行物8に,そのような超音波モータを振動ジャイロと一緒に使用することを示唆する記載はない。むしろ,刊行物4,5や被告主張の技術常識からは,超音波モータを振動ジャイロと一緒に使用するべきでないことが導かれる。よって,カメラに採用することができる超音波モータ,圧電振動ジャイロがそれぞれ単独で開示されているからといって,当業者がこれを同一の装置内に組み込んだはずであるという動機付けないし示唆等となるものではない。 ができる超音波モータ,圧電振動ジャイロがそれぞれ単独で開示されているからといって,当業者がこれを同一の装置内に組み込んだはずであるという動機付けないし示唆等となるものではない。 また,刊行物8に駆動周波数35~45kHzの超音波モータが開示されていたとしても,超音波モータの共振周波数をジャイロセンサの1次共振点を下回るような低い値に設定することも,2次共振点を上回るような高い値に設定することもあり得るのである。なぜならば,超音波モータの駆動周波数は35~45kHzに限られるわけではないからである。刊行物8は単に駆動周波数35~45kHzの超音波モータの存在を開示するにすぎないのであり,本件第2特許発明の構成に至る何らの示唆も与えない。 イ本件第3特許について上記アと同じ。 3 原告の損害額(争点3) (原告の主張)(1) 原告の本件特許発明の実施ア原告製品(以下,併せて「原告製品」という。)は,別紙原告製品説明書記載のとおりである(甲91)。 イ原告製品は,本件特許発明の実施品である。被告製品と原告製品は,同じくエプソントヨコム社(平成23年の会社分割によりセイコーエプソンが承継)製ジャイロセンサ(XV-350CB)を使用しており,本件特許発明の各構成要件の対比において,被告製品と原告製品は,超音波モータの周波数制御範囲が異なるのみである。本件特許発明と原告製品との対比は,別紙本件特許発明と原告製品との対比記載のとおりである。 ウ原告製品が本件特許発明の実施品であることは,侵害論において被告製品について主張したことが全て当てはまる。 被告は,原告製品の励振による駆動振動モードと外力による振動モードは異なり,共振周波数も異なるなど 発明の実施品であることは,侵害論において被告製品について主張したことが全て当てはまる。 被告は,原告製品の励振による駆動振動モードと外力による振動モードは異なり,共振周波数も異なるなどと主張するが,本件特許発明が,カメラシステムの「シャッタ」開放時のみを対象とするという誤った前提に立つものであって,失当である。 エなお,特許法102条2項を主張する場合に特許発明の実施品である必要はない。 (2) 被告製品と原告製品の競合ア被告製品の各販売開始月は,別紙被告製品目録に記載の順に,平成20年5月,平成19年8月,平成21年4月,同年12月,平成22年6月,平成21年4月,同年5月である。 原告は,原告製品を製造,販売(国内及び国外向け)しており(甲74~91),原告製品と被告製品は市場において競合する。 イニコン以外向け対象製品は,例えば,A社のカメラ本体に装着して可能なA社純正レンズの互換性のあるレンズとして販売されているものである。 需要者は,カメラ本体とレンズを一緒に購入することが多い。「ニコンカメラ本体とニコンレンズ」は,「A社カメラ本体とA社レンズ」と競合しており,例えば,ニコンレンズの方がより高機能であれば,ニコンレンズとともにニコンカメラ本体の需要も伸び,逆に,A社レンズの方がより高機能であれば,A社レンズとともにA社カメラ本体の需要も伸びるということが当然ある。よって,ニコンレンズとA社レンズは競合関係にあるのであり,それはカメラ本体の需要にも影響するのである。仮に原告がある特許を実施したより高機能のレンズを製造,販売し,A社が当該原告の特許発明を無断で実施して同様の高機能のレンズを製造,販売して追随すれば,特許権侵害であり,その損害額の算定に特許法102 原告がある特許を実施したより高機能のレンズを製造,販売し,A社が当該原告の特許発明を無断で実施して同様の高機能のレンズを製造,販売して追随すれば,特許権侵害であり,その損害額の算定に特許法102条2項が適用されてしかるべきである。ここで,被告が原告の特許発明を無断で実施した高機能のA社レンズと互換性のあるレンズを製造,販売することを考えれば,ニコンレンズが当該被告レンズと競合関係に立つことは容易に理解できる。 手振れ補正機能はデジタル一眼レフカメラ用レンズにおいて極めて重要な機能であって,手振れ補正機能が高機能であることは,デジタル一眼レフカメラ用レンズの選択に当たって極めて重要であり,本件特許発明の実施により高機能化された原告製品の製造,販売は,ニコンカメラ本体の需要をも伸ばすものである。そのような中で,被告が他社メーカー向けの本件特許発明実施の高機能レンズを製造,販売することになれば,レンズである原告製品とともにニコンカメラ本体の需要をも減少することにつながるのである。 ウ以上のとおり,ニコン以外向け対象製品についても,被告製品と原告製品が競合関係にあることを否定できるものではなく,特許法102条2項の適用は否定されない。 (3) 被告製品の売上及び利益 ア被告製品の売上被告は,別紙被告主張売上額記載のとおり,被告製品の販売により,販売開始から平成23年4月30日までの期間において,合計●(省略)●円(1万円未満は四捨五入する。以下,原告の主張につき同じ。)の売上,平成23年5月1日から平成24年10月31日の期間において,合計●(省略)●円の売上を得たことを認めている。 財務諸表等規則72条1項は,「売上高」について,「総売上高」と,控除科目としての「戻 5月1日から平成24年10月31日の期間において,合計●(省略)●円の売上を得たことを認めている。 財務諸表等規則72条1項は,「売上高」について,「総売上高」と,控除科目としての「戻り高」をもって掲記することを妨げないとしているだけであって,特許法102条2項の限界利益を算定する際に,財務諸表上の「戻り高」が当然に売上から控除されるべき費用となるわけではない。 「会計制度委員会研究報告第13号我が国の収益認識に関する研究報告(中間報告)-IAS第18号「収益」に照らした考察-」(乙74の22~23頁)においても,リベートの契約条件(算定根拠)は多様であるため,個々の売上取引や部門に関連付けて売上高から控除することは実務上困難な場合があることが指摘されている。そして,上記報告書は,顧客に対する販売促進費等の経費の補填であることが明らかな場合には,売上高から控除できないことを認めている。被告主張の売上割戻は,それを根拠づける証拠の提出も全く不十分であり,被告と顧客間の取り決めの内容も不明確であり,その費用額も立証されているとはいえず,費用として売上高から控除されるべきものとは認められない。 イ被告製品の利益(ア) 限界利益特許法102条2項の「利益」とは「限界利益」であり,ここでいう「限界利益」は,「侵害者の製品の売上額から,侵害製品の追加的製造,販売のために要した変動経費のみを控除した額」をいうと解すべきである。 原告は,被告製品の売上高から控除すべき費用として,売上高の40%を上限として認めるが,それを超える費用は,被告がその具体的説明と金額の計算過程を説明して立証すべきである。しかし,以下に述べるとおり,その説明や立証はない。 (イ) て,売上高の40%を上限として認めるが,それを超える費用は,被告がその具体的説明と金額の計算過程を説明して立証すべきである。しかし,以下に述べるとおり,その説明や立証はない。 (イ) 材料費被告は,棚卸資産管理システムにおける各月の販売数量を用いて年間合計額を一旦算出しながら,年間販売数量で除し,また販売管理システムの年間販売数量を乗じるという計算方法をとる。要約すれば,被告が設定した「標準材料費」に対して,「原価差異」を配賦した金額を計算するという方法で費用の主張をしている。しかし,実際の材料原価が問題なのであり,このような計算をする合理性がない。「原価差異」を算出したというのであるから,被告製品の材料の構成とその量を主張・立証し,その材料原価を主張・立証すればよいのに,その証拠提出はない。 しかしながら,原告は,別紙被告主張限界利益(第1)記載の材料費について,その80%を限度に争わないこととし,限界利益の計算において,その限度で被告製品の売上高から控除することを認める。 (ウ) 外注加工費外注加工費については,その外注の内容が不明であり,原価表(乙78)も,被告の主張書面と同等なもので,被告の主張を立証する証拠とはいえない。 (エ) 変動社内加工費変動社内加工費のうち電力料,ガス,水道費について,原告は,別紙被告主張限界利益(第2)記載の電力料,ガス,水道費を争わず,限界利益の計算において,被告製品の売上高から控除することを認める。 変動社内加工費のうちの社内労務費について,被告は,販売状況を踏まえて必要に応じて生産調整を適宜実施しており,生産調整時には社内 労務費はこれに対応して変動すると主張している。販売状況に応じて 動社内加工費のうちの社内労務費について,被告は,販売状況を踏まえて必要に応じて生産調整を適宜実施しており,生産調整時には社内 労務費はこれに対応して変動すると主張している。販売状況に応じて,製品の生産量の調整があることは,どこのメーカーでも同じであり,社内労務費はこれに対応して変動するとの主張は,単に,その製造に携わる従業員の労働量が変動することでしかない。結局,社内労務費は,常時存在する従業員の賃金等にすぎない。なお,被告ウェブサイト及びインターネットアーカイブに保存された被告ウェブサイトの情報によれば,従業員は894名(平成23年8月31日現在),893名(平成24年8月末現在)であって(甲98,99),ほとんど変動がない。 変動社内加工費のうちの構内外注に係る業務委託費について,被告は,委託にかかる費用及び派遣会社への労働者派遣料等と説明しているが,内容が不明である。派遣会社からの派遣労働者は,被告の正規従業員と比較して,実際の労務態様は変わらないと考えられ,派遣労働者を,被告製品の製造,販売量の多寡に応じて,自由に増やしたり,減らしたりできないと考えられる。変動費率算定表(乙85)は,被告の主張書面と同等なもので,被告の主張を立証する証拠とはいえない。乙83,84号証も,その内容自体,派遣業務や請負業務が被告製品に関連することを裏付ける証拠といえない。 変動社内加工費のうち間接外注加工費については,被告が何を主張しているか理解できない上,ユニット品等の修理・解体作業が一定割合で不可避的に生じる理由も,その再利用をしなければならない理由も分からない。しかも再利用された分がどう生かされてコストに反映させているかも分からない。間接外注加工費は,被告の主張によれば,侵害品たる最終製品(完成品)へ も,その再利用をしなければならない理由も分からない。しかも再利用された分がどう生かされてコストに反映させているかも分からない。間接外注加工費は,被告の主張によれば,侵害品たる最終製品(完成品)への組立作業の委託の範囲外の作業なのであるから,侵害品の追加的製造,販売のために要する変動経費とは認めるべきものではない。乙135,136号証も,被告の主張と同等のものであって,実質的な証拠ではない。 (オ) 特許権使用料特許権使用料については,別紙被告主張限界利益(第1)記載の特許権使用料を争わず,限界利益の計算において,被告製品の売上高から控除することを認める。 (カ) 専用製造設備費特許法102条2項の利益の算定において,売上から控除すべきは「侵害品の追加的製造,販売のために要した変動経費のみ」と解すべきであり,被告製品以外の製造に転用が利かない金型,治工具その他の専用設備があったとしても,それは固定費であって,変動経費ではないので,控除すべき費用とは認められない。 乙72,90及び乙91号証は,被告の主張書面と同等のものである。 その内容も,乙72及び90号証では,具体的に何が被告製品の専用設備であるかが不明である。乙91号証には,「物件正式名称」として,物件の名称が記載されているが,その名称の物件は,被告製品に限らず,レンズ製造に一般的に使用される物件ばかりである。よって,被告製品に専用される設備の費用を立証するものとは到底いえない。 ある製品名の製品を製造する製造設備があったとしても,その製造設備を構成する各物件の取得価額の全てが,損害賠償対象期間という一定の期間の限界利益の算定において,費用として控除されることになるわけではない。 (キ る製造設備があったとしても,その製造設備を構成する各物件の取得価額の全てが,損害賠償対象期間という一定の期間の限界利益の算定において,費用として控除されることになるわけではない。 (キ) 一般製造設備費被告は,一般製造設備費は,減価償却費,工場消耗品費等の固定費であると説明する。しかし,減価償却費は,実際にその年度で支出された費用ではなく,被告の製造,販売する全製品に関しても変動費ではない。 また,工場消耗品費等は,被告の主張する専用製造設備費以上に,被告製品の追加的製造によって必要となる費用とはいえない。 (ク) 棚卸資産評価損棚卸資産評価損は,会計上の処理にすぎない。実際,費用支出があったのではない。被告製品の追加的製造によって必要となる費用とはいえない。 (ケ) 個別広告宣伝費被告の証拠は,被告の主張書面と同等なもので,被告製品の個別広告宣伝費を立証するものとは到底いえない。 また,被告の主張によれば,個別広告宣伝費は,被告製品に係る雑誌への掲載料,カタログの作成費用等の費用であるから,被告製品の追加的製造,販売のために要した変動経費といえない。 (コ) 一般広告宣伝費被告主張する個別広告宣伝費が被告製品の追加的販売によって必要となる費用とはいえない以上,一般広告宣伝費は被告製品の追加的販売によって必要となる費用とはいえない。 被告が発行したレンズカタログ(甲103~106)を見ると,大きなイメージ写真や被告のレンズ製品の共通する性能の説明に多くの頁を割いており,これらや被告製品以外の製品の広告・説明部分は,個別広告部分とはいえない。一般広告宣伝費とその実質は変わらない。 (サ) 見本費 被告のレンズ製品の共通する性能の説明に多くの頁を割いており,これらや被告製品以外の製品の広告・説明部分は,個別広告部分とはいえない。一般広告宣伝費とその実質は変わらない。 (サ) 見本費被告の証拠は,被告の主張書面と同等なもので,被告製品の見本費を立証するものとは到底いえない。 また,被告は,売上高は,見本費の金額に応じて比例的に増加していくと考えられる旨主張している。しかし,乙101号証によれば,見本費の支出は,平成19年8月期に比べ,平成24年8月期は2倍以上の額に増加しているのに対し,被告の売上高は,平成24年8月期は平成19年8月期より下回っているから,全く根拠のない主張である。 (シ) 販売手数料被告主張の販売仲介は,特に被告製品について行われた販売仲介というわけではなく,被告製品一般について行われた販売仲介であるから,被告製品の追加的販売に要した費用ということはできない。販売手数料は,乙105号証の電子メールを根拠とするようなものであり,当事者間の取り決めの内容が不明確なまま支払われているものであって,支払根拠を立証する契約内容と証拠が提出されているともいえない。 (ス) 運搬費運搬費については,別紙被告主張限界利益(第2)記載の運搬費を争わず,限界利益の計算において,被告製品の売上高から控除することを認める。 (セ) 営業部門費営業部門費の内容自体が曖昧である。営業部門は,被告の製造,販売する製品一般についての営業活動を行っていると考えられるから,被告製品の追加的販売によって必要となる費用ともいえない。 (ソ) 本社費本社費は,その内容自体が曖昧である。本社部門は,被告の製造, の営業活動を行っていると考えられるから,被告製品の追加的販売によって必要となる費用ともいえない。 (ソ) 本社費本社費は,その内容自体が曖昧である。本社部門は,被告の製造,販売する製品一般の業務を行っていると考えられるから,被告製品の追加的販売によって必要となる費用ともいえない。 (タ) 研究開発費被告製品が製品化され,本件特許権侵害を行っていた期間において,被告によって行われた研究開発の費用が被告製品の製造又は販売に必要な費用となるわけがない。もし,仮に被告製品に関する研究開発費があったとしても,被告製品の追加的製造,販売によって必要となる費用ではないから,控除されるべき費用ではない。 (チ) 為替差損 簡単に言えば,外貨(外貨債権でも外貨預金でも同じことである)資産が,為替変動により,後に資産価値が下がったということにすぎない。 そのような為替差損は,被告製品の追加的製造,販売によって必要となる費用ではないから,控除されるべき費用ではない。 (4) 寄与率等についてア寄与率について(ア) 本件特許発明は,手振れ補正機能に関わるものである。手振れ補正機能は,デジタルカメラ用レンズ,特に高品質の撮影機能が必要なデジタル一眼レフカメラ用レンズの販売において極めて重要な機能というべきものである(甲92~94)。 被告製品の品名中,「OS」は「OpticalStabilizer」の略で「手振れ補正機能」のことである(甲95の2~3枚目)。被告は,被告製品の個々の説明中でもこれを説明し(乙1),これを「売り」としている。 なお,被告製品の品名中,「HSM」は「Hyper-SonicMotor」の略で「超音波モータ」のこと 3枚目)。被告は,被告製品の個々の説明中でもこれを説明し(乙1),これを「売り」としている。 なお,被告製品の品名中,「HSM」は「Hyper-SonicMotor」の略で「超音波モータ」のことである(甲95の2枚目)。乙62号証でも,「ニコンVR対シグマOS高倍率手ぶれ補正対決」と題して原告製品(別紙原告製品目録記載1の製品)と被告製品(別紙被告製品目録記載2の製品)が比較されており,手振れ補正が重要ポイントとして比較されている。このほか,甲103~106号証,甲109~116号証,甲124~137号証をみても,被告製品において,手振れ補正機能及び超音波モータが特徴として位置付けられ,広告及び販売がされてきたことは明らかである。 被告製品は,本件特許発明の実施品であり,「手振れ補正機能」と「超音波モータ」を品名にも入れて宣伝の上,販売されているもので,本件特許発明の寄与を100%受けて販売されているといっても過言ではない。 以上のとおり,手振れ補正機能は,デジタル一眼レフカメラ用レンズにおいて,極めて重要な機能であり,特に,これを「売り」にしている被告製品にあっては手振れ補正機能がなくとも販売ができたとはいえない。 (イ) 被告は,超音波モータからの物理的振動の大小をもって振動検出素子に悪影響を与えるかのような議論をしているが,全く失当である。侵害論で説明したとおり,超音波モータからの振動によって振動検出素子が共振してしまい,正確な振動検出ができなくなることが問題となるのであり,物理的振動の大小の問題ではない。 被告は,乙64号証を提出して,被告製品においては,超音波モータの振動はダブルT型の素子を含むジャイロセンサには伝達されていないと主張するが,超音波モータからの の大小の問題ではない。 被告は,乙64号証を提出して,被告製品においては,超音波モータの振動はダブルT型の素子を含むジャイロセンサには伝達されていないと主張するが,超音波モータからの振動がいろいろな方向からダブルT型の素子に伝わる以上,共振周波数に一致ないしほぼ一致する振動によりダブルT型の素子は共振する。被告は,侵害論での議論の蒸し返しをしようとしており,その点で失当である上,乙64号証の実験もその実験方法も不適当であり,超音波モータからの振動によってはダブルT型の素子が共振しないという立証になっていない(甲96)。超音波振動は,機械系に対し,拡散性をもっていろいろな方向に,装置を構成する部材や空気をも介して伝わるのである(甲100,101)。 被告は,原告自身が本件特許発明の手振れ補正機能に寄与している部分は少ないことを説明していると主張し,乙65号証を提出しているが,そのようなことは述べていない。超音波モータと振動ジャイロを同時にレンズに搭載する場合には,超音波モータからの振動による悪影響に対して対策をとることが何よりも前提である(甲96)。超音波モータと振動ジャイロを搭載した被告製品において,本件特許発明の実施により,その悪影響を排除することは不可欠であったのである。 (ウ) 被告製品には,角速度センサとして圧電振動ジャイロと,超音波モータが搭載されている。 圧電振動ジャイロは,超音波モータの振動の影響を受けると,角速度を正確に検出できなくなる。そして,角速度センサの検出結果に応じてシフトレンズ群の光軸に略直交する方向への駆動量が決まるため,角速度を正確に検出できないと,シフトレンズ群を正確に駆動することができない。その結果,シフトレンズ群が実際に生じている手振れの に応じてシフトレンズ群の光軸に略直交する方向への駆動量が決まるため,角速度を正確に検出できないと,シフトレンズ群を正確に駆動することができない。その結果,シフトレンズ群が実際に生じている手振れの補正のための動きとは全く異なる動きをしてしまい,正常に像ブレを補正できないという問題が生じる。このように,角速度センサによって角速度が正確に検出できないと,手振れ補正機能を正常に発揮することができない。 よって,角速度センサが正常に機能して正しく角速度を検出することは,手振れ補正機能のみならず,被写体の光学像を正確に結像するという交換レンズの機能を達成するための大前提である。 角速度センサは,光ファイバージャイロ,ガスレートジャイロ等様々なタイプのものがあるが,その中でも圧電振動ジャイロは,小型で安価かつ高性能である(甲121,122)。これらの利点は,交換レンズにおいて望まれる小型化,低価格化を達成する上で極めて重要である。 また,交換レンズに搭載されるモータとしては,DCモータやステッピングモータやボイスコイルモータ等様々なタイプがあるが,その中でも超音波モータは,静粛性や応答性に優れる(甲121,123)。これらの利点は,交換レンズにおいて望まれる合焦時の静音化,高速化を達成する上で極めて重要である。 このように,圧電振動ジャイロと超音波モータには,それぞれ交換レンズに搭載する上での優れた利点を有しているが,従来技術では,共振の問題があり,角速度センサとしての圧電振動ジャイロによって角速度 が正確に検出できない事態となることから,両者を単純に組み合わせることはできなかった。 本件特許発明は,このような問題を解決し,圧電振動ジャイロと超音波モータを両方搭載してそ が正確に検出できない事態となることから,両者を単純に組み合わせることはできなかった。 本件特許発明は,このような問題を解決し,圧電振動ジャイロと超音波モータを両方搭載してそれぞれの利点を最大限に活かした交換レンズを実現するとともに,高機能な手振れ補正機能を実現することができる極めて重要な発明である(甲121)。 (エ) 被告は,超音波モータの振動が外部に伝達されることがあったとしても,ジャイロセンサの設置位置まで振動が伝播されることはないとか,被告製品に採用された超音波モータは,圧電素子が発生させた振動をステータ以外の他の部材に直接伝わることがない構造をしているから,超音波モータから外部に伝わる振動もほとんどないなどと主張をしている。 しかしながら,原告が,乙64号証と同様の実験をしたところ,超音波モータからの振動がジャイロセンサに伝播していることが確認された(甲121)。乙64号証は,振動の伝播が生じている事実が分からないように測定画面のレンジ設定をした測定結果を示したものにすぎず,何ら証拠価値を有するものではない。 超音波振動は,機械系に対し,拡散性をもっていろいろな方向に,装置を構成する部材や空気をも介して伝わるのである(甲100,101)。また,超音波モータの振動により鏡筒のパッケージ固定部に伝わった振動はパッケージを振動させ,パッケージ内に固定されたダブルT型素子の基部が振動することにより,ダブルT型の素子に振動が生ずることになるから,超音波モータからの超音波振動がダブルT型の素子に伝わることは自明である。 超音波モータからジャイロセンサに伝播している振動は,減衰していても,本件特許発明の寄与率を低減させる事由にはなり得ない。ジャイロセンサ部のパッケ 型の素子に伝わることは自明である。 超音波モータからジャイロセンサに伝播している振動は,減衰していても,本件特許発明の寄与率を低減させる事由にはなり得ない。ジャイロセンサ部のパッケージ表面における変位が,仮にレーザー変位計では 観測できないような非常に小さなものであっても,パッケージ内部に配置された振動検出素子には共振現象により非常に大きな影響を及ぼす。 本件特許発明が奏する効果は,ジャイロセンサ位置における振幅の大きさとは無関係である。 (5) その他についてア間接侵害について被告は,本件における損害論として,間接侵害を主張しているが,意味不明の主張である。本件特許発明の侵害品は,被告製品であり,被告製品を組み込んだカメラシステムではない。原告は,間接侵害の主張をしていない。 イニコン向け対象製品の市場における競合について被告は,被告製品の販売がなかったと仮定した場合,少なくとも平成21年6月以降は,被告製品の数量の半分は原告ではなくタムロンが販売していたと考えるべきであると主張するが,失当である。 タムロンの「AF18-270mmF/3.5-6.3 DiIIVCPZD」は,同社が特に力を入れて販売した,タムロン製品の中の特に売れ筋の商品であった(甲120)のであり,乙70号証の2枚目「交換レンズキヤノン(キヤノンEFマウント)機種別販売本数シェアトップ10」でも,タムロンの「AF18-270mmF/3.5-6.3 DiIIVCPZD キヤノン用」が2位を占めている。 しかし,タムロンの他の製品が,同様に多く売れているわけではなく,乙70号証の4枚目の「交換レンズニコン(ニコンFマウント)機種別販売本数シェアトップ10」から明 ヤノン用」が2位を占めている。 しかし,タムロンの他の製品が,同様に多く売れているわけではなく,乙70号証の4枚目の「交換レンズニコン(ニコンFマウント)機種別販売本数シェアトップ10」から明らかなように,タムロンの「AF18-270mmF/3.5-6.3 DiIIVCPZD ニコン用」以外のレンズは,いずれも10位の販売本数シェア2.5%に届いていない。 被告の主張は,タムロン製品の1機種のみに着眼している点において失当というほかない。乙70号証の5枚目冒頭にも「ニコンFマウントは, 純正が売れている。」旨の記載がされ,また,乙70号証の4枚目の「交換レンズニコン(ニコンFマウント)機種別販売本数シェアトップ10」のうち9つを原告の製品が占めていると記載されているとおり,原告カメラ本体(ニコンFマウント採用)に装着可能なレンズのシェアは,(原告の推計によれば)約90%である(甲120)。 タムロン製品に搭載されるジャイロ(EWTS9P)では,振動子はダブルT型の形状ではなく,かつ,シリコンを振動子として採用するものであり,被告製品や原告製品に搭載されるジャイロとは格段に性能が異なり,タムロン製品では高機能の手振れ補正機能を実現することはできない。また,被告製品や原告製品に搭載されている超音波モータは,「進行波型」超音波モータであるのに対し,タムロン製品は,それとは異なるタイプの超音波モータである「PDZ(PiezoDrive)」である(乙67の1の3枚目)。かかる「PDZ(PiezoDrive)」では,異なる2つの振動(縦振動と曲げ振動)を用いているため,性能のバラツキが生じる事態が不可避である。 被告の主張は,何らの根拠にも基づくことのない単なる被告の願望を述べたもの e)」では,異なる2つの振動(縦振動と曲げ振動)を用いているため,性能のバラツキが生じる事態が不可避である。 被告の主張は,何らの根拠にも基づくことのない単なる被告の願望を述べたものにすぎない。 ウタイの洪水による原告工場の被災の影響について原告は,タイ以外にも工場を有しており,さらに,タイの洪水の影響は一時的なものであって,市場において原告製品が欠品したということはない。タイの洪水は損害論に影響はない。 (6) 特許法102条3項に基づく損害算定(予備的主張)ア特許法102条2項に基づく損害算定の予備的主張として,同条3項に基づく損害算定を主張する。 これは,①特許法102条2項が適用されたとしても,寄与率により否定された部分,②ニコン以外向け対象製品について,仮に特許法102条 2項が適用されない場合,③特許法102条2項による損害算定に比較して同条3項による損害算定の方が多額になる場合の予備的主張である。 イ本件特許発明は,手振れ補正機能に関わるもので,その高機能化はデジタル一眼レフカメラの販売にとって極めて重要である。特に,被告製品は,その品名に,「OS」(手振れ補正機能)と「HSM」(超音波モータ)と入れ,かつカタログでもこの点を重要部分として説明している(甲95の2~3枚目)。まさに,本件特許発明を実施することで可能になったもので,被告自身その部分が顧客吸引力を有することを自認しているに等しい。 一般に公表されている実施料率に関する資料によれば(甲97),本件は,精密機械器具のカメラの分野に属する。この技術分野は,「実施料率の平均値は,他の技術分野と比較して高めであり,特にイニシャル無しでは高い」とされている(甲97の129頁)。本件 (甲97),本件は,精密機械器具のカメラの分野に属する。この技術分野は,「実施料率の平均値は,他の技術分野と比較して高めであり,特にイニシャル無しでは高い」とされている(甲97の129頁)。本件特許発明の重要性を考えれば,高率の実施料が適用されてしかるべきである。様々な特許実施契約条件の下で誠実にライセンスを受けた場合においても,実施料率は8%を下ることはないと考えるべきである。 そして,特許法102条3項の「その特許発明の実施に対し受けるべき金銭の額に相当する額の金銭」の認定においては,様々な条件の下で誠実にライセンスを受けた者の実施料率と同様に考えるのは適当ではなく,それより高い料率が認定されるべきである。 以上により,本件において,被告製品の売上高の10%をもって,特許法102条3項の「その特許発明の実施に対し受けるべき金銭の額に相当する額の金銭」と認定するのが妥当である。 ウ被告は,原告と被告との間の特許実施許諾契約に言及するが,当該特許実施契約は交換レンズについての包括的な特許実施契約ではない。●(省略)●という経緯もある。よって,被告主張の実施料率は,本件の参考とはならない。 (7) 損害額被告製品の売上高を前提とすれば,原告は,被告に対し,以下の損害賠償請求権を有する。 ① 各製品販売開始から平成23年4月30日までの被告製品の販売分●(省略)●円×60%=●(省略)●円② 平成23年5月1日から平成24年10月31日の被告製品の販売分●(省略)●円×60%=●(省略)●円③ 本件訴訟に係る相当な弁護士・弁理士費用●(省略)●円よって,原告は,被告に対し,●(省略)●円(①~③ ●(省略)●円×60%=●(省略)●円③ 本件訴訟に係る相当な弁護士・弁理士費用●(省略)●円よって,原告は,被告に対し,●(省略)●円(①~③の合計)及び内金●(省略)●円(①)に対する平成23年5月1日から,内金●(省略)●円(②,③の合計)に対する平成24年11月1日から,各支払済みまで年5分の割合による金員の損害賠償請求権を有する。 (被告の主張)(1) 原告製品についての本件特許発明の非実施原告製品は本件特許発明の技術的範囲に属しないから,本件特許発明の実施品ではない。 ア原告製品のダブルT型素子は,超音波モータにより発生する外力による振動モードと駆動振動モードが異なる。その結果,超音波モータからどのような周波数の振動が加えられても写真撮影時の手振れ信号の検出信号に影響を与えることはないから,本件特許発明の「振動検出素子」とはいえない(構成要件G,H)。 イ本件特許の出願時には,防振制御(像ブレ補正)は露光時のみに行われていたのであるから,フォーカシングが終了した後に手振れの補正が行われていたのである(乙17)。すなわち,本件特許発明は,フォーカシング用の超音波モータによって生じた共振が,超音波モータ停止後に振動検 出素子に与える影響を課題をとしていたものであり,振動検出素子が超音波モータとの共振の状態から減衰する自由振動の状態を問題にしているのである。 したがって,本件特許発明は,写真撮影時の振動検出素子を励振する振動のモードがフォーカシングの時に加えられた外力による振動(超音波モータの振動)のモードと一致し,かつ,自由減衰状態にある中で写真撮影時に励振される振動検出素子の共振周波数と超音波モータの共振周波数 動のモードがフォーカシングの時に加えられた外力による振動(超音波モータの振動)のモードと一致し,かつ,自由減衰状態にある中で写真撮影時に励振される振動検出素子の共振周波数と超音波モータの共振周波数が一致するときにのみ適用されるものであり,そのような状況下で振動を検出する素子を「振動検出素子」といっているものと解される。 ところが,原告製品の励振による振動モードは別紙原告製品説明書記載【図2】のとおりであるのに対し,外力による振動モードは同説明書記載【図1】の4つの駆動アーム及び2つの検出アームの全てが同じ方向に振動するモードであるから,振動モードが異なる。また,励振による駆動振動モードと外力による振動モードは,振動のモードが全く異なるから異なる。 ウよって,原告製品は,本件特許発明の「振動検出素子」とはいえない(構成要件G,H)。 原告製品におけるダブルT型素子は,水晶結晶で構成され,水晶の圧電性を利用して素子自体に振動を起こさせるものであり,外力により励振されたものではないから,「励振された振動検出素子」に当たらない(構成要件G)。 原告製品のダブルT型素子が「振動を検出する振動検出器」であることは,何ら立証されていない(構成要件G)。 別紙原告製品説明書記載h-1に示された周波数は,本件特許発明の構成要件H,Jの振動検出素子の1次及び2次の共振周波数に対応するものではない(構成要件H,J)。 原告製品は,レンズであって,装置であるカメラシステムの一部を構成する付属品にすぎないから,「装置」の構成要件を充足しないし,「振動検出器」も備えていない(構成要件I)。 (2) 被告製品と原告製品の競合についてア以下のとおり,原告は,ニコン向け対象製 属品にすぎないから,「装置」の構成要件を充足しないし,「振動検出器」も備えていない(構成要件I)。 (2) 被告製品と原告製品の競合についてア以下のとおり,原告は,ニコン向け対象製品以外の製品市場においてレンズを販売できない事情があり,また,その結果,被告のようなサードパーティーレンズが主として対象とする2本目以降のレンズ購入の市場において,原告製品と被告製品は競合しない。 (ア) 原告がニコン以外向け対象製品の市場においてレンズを販売できない事情被告製品のうち,ニコン向け対象製品は,原告製品と市場において競合することは認めるが,被告製品の全てが原告製品と市場において競合するものではない。 原告は,本件損害賠償の対象期間中を含め,ニコン製カメラ以外のカメラ本体に装着することを対象とする交換レンズを販売していないし,将来においてもこれを販売しないものと思われる。これは,営業政策上,原告は,まずはカメラ本体をエンドユーザーに購入させることが目的であり,他社製カメラ本体の利用の便宜のために他社製カメラ本体に互換性のある交換レンズを製造販売することはあり得ない,という理由であると考えられる。したがって,ニコン以外向け対象製品の市場においては,原告は,参入できない事情があると理解される。 (イ) 2本目以降のレンズ購入の際の市場における非競合カメラメーカーである原告やキヤノン等は,カメラと標準的に使用するレンズをセットにして,カメラ単体,レンズ単体で購入する場合よりも割安な価格で販売しているから,レンズメーカー(サードパーティー)のレンズを購入することを決めた上でカメラを選択するということ は少ない。カメラメーカー同士の「純正レンズ」が競合するにすぎない。 価格で販売しているから,レンズメーカー(サードパーティー)のレンズを購入することを決めた上でカメラを選択するということ は少ない。カメラメーカー同士の「純正レンズ」が競合するにすぎない。 したがって,仮に,レンズメーカーが高機能のレンズを販売していたとしても,それは2本目,3本目のレンズを購入する際の購入の動機付けになるのであって,カメラを選択する際の動機付けにはならない。 2本目以降のレンズを購入する場合には,需要者が所有するカメラに装着可能なレンズの範囲内で購入を検討するほかないから,カメラメーカーが原告のように自社カメラ用のレンズしか販売しないとすれば,そのカメラの「純正レンズ」と「サードパーティーレンズ」が競合する市場となる。この場合,交換レンズの市場は,カメラメーカーごとに別の市場となるのである。 イ以上によれば,ニコン製カメラ以外のカメラ本体に装着することを対象とする交換レンズについては,被告の販売がなかったとしても,原告がこれに代わって販売できるものではない。 そうすると,ニコン以外向けの被告製品の損害額の算定には,特許法102条2項は適用できないと考えるべきである。 (3) 被告製品の売上及び利益についてア被告製品の売上について被告製品の売上は,別紙被告主張売上額記載のとおりである。 財務諸表等規則72条は,売上高は,売上高を示す名称を付した科目をもって掲記しなければならないが,売上高を,総売上高とその控除項目としての売上値引及び戻り高に分けて掲記することを妨げないと規定している。そして,財務諸表等規則ガイドライン72-1-2(乙73)において,売上割戻は,一定期間に多額又は大量の取引をした得意先に対する売上代金の返戻額等であり,売上値引 することを妨げないと規定している。そして,財務諸表等規則ガイドライン72-1-2(乙73)において,売上割戻は,一定期間に多額又は大量の取引をした得意先に対する売上代金の返戻額等であり,売上値引に準じて取り扱うと規定している。 また,「会計制度委員会研究報告第13号我が国の収益認識に関する研究報告(中間報告)-IAS第18号「収益」に照らした考察(最終改 正平成21年12月8日日本公認会計士協会)」のⅠ.7.(4)リベートの会計処理においても,リベートが顧客との販売条件の決定時に考慮されていれば,実質的に販売価額の一部減額,売上代金の一部返金という性格を有すると考えられるため,売上高から控除することが適切と考えられる旨が述べられている(乙74)。 さらに,特許法102条2項の限界利益算定上,総売上高から売上割戻を控除しないと規定した条文もなく,実態としても,売上代金の返戻額である売上割戻を控除した金額が,製品販売に係る正味の収入額を示すものであることから,財務会計上の取扱いと特許法上の取扱いを分ける積極的な理由も存在しない。 以上より,売上割戻は売上高の構成要素の一つであり当然に売上高から控除されるべきものであることは明らかである。 イ被告の利益について(ア) 限界利益について特許法102条2項の「利益」において,これを「限界利益」と解する場合には,「侵害品の売上高から侵害品の製造又は販売と相当因果関係にある費用を控除した利益」をいうのであって,変動費に限られるものではない。固定費であるという理由だけで,侵害品の製造又は販売と相当因果関係にないとはいえない。 控除対象の費用項目及びその額は,別紙被告主張限界利益(第1)及び被告主張限界利益 ものではない。固定費であるという理由だけで,侵害品の製造又は販売と相当因果関係にないとはいえない。 控除対象の費用項目及びその額は,別紙被告主張限界利益(第1)及び被告主張限界利益(第2)記載のとおりである。 被告は,原価計算基準(昭和37年11月8日企業会計審議会)に基づき,いわゆる標準総合原価計算制度(製品単位当たりの標準原価を設定し,これに製品数量を乗じることで製品原価を算定するとともに,実際原価と標準原価との差額である原価差異を把握し,これを当年度の売上原価と期末棚卸資産に配賦することで,標準原価を実際原価に修正す る手法)を採用している。上記製品単位当たりの標準原価は「原価表」上で,材料費,外注加工費,社内加工費ごとに設定されている。したがって,以下の各費用の算定のうち,材料費,外注加工費,変動社内加工費は,この制度に基づいて算出しているものである。 (イ) 材料費材料費は被告製品の製造に直接必要な費用であり限界利益算定上売上高から控除されるのは当然である。 材料費の算出方法は,被告製品1本当たりの材料費に被告製品の販売量を乗じたものである。1本当たりの材料費は,仕入先からの納品書等に基づき計上された年間材料費発生金額等を,年間の生産数量で除して算定した金額に相当する。 材料費の具体的な計算プロセスは以下のとおりである。被告製品ごとに,各月の棚卸資産管理システムにおける販売数量に,その時々の「原価表」に基づく製品単位当たり標準材料費を乗じた標準売上原価(材料費)の年間合計額を年間販売数量合計で除して算定した,単位当たり年間平均標準材料費に,販売管理システムの年間販売数量を乗じて年間標準売上原価(材料費)を算定し,これに原価差異を配賦した 上原価(材料費)の年間合計額を年間販売数量合計で除して算定した,単位当たり年間平均標準材料費に,販売管理システムの年間販売数量を乗じて年間標準売上原価(材料費)を算定し,これに原価差異を配賦した金額である。 原価差異は,「原価差異配賦表」において算定された各会計年度の標準売上原価に対する原価差異配賦額の比率を,上記年間標準売上原価(材料費)に乗じて算定している。原価差異金額を把握する過程において,「原価差異配賦表」上で,主要材料費勘定及び補助材料費勘定の年間実際仕入額は集計されており,これらは会計システムの金額に基づくものである。 (ウ) 外注加工費外注加工費は,被告製品について,ズームリング,保持筒等の各種部品の加工,及び各最終製品の組立て作業の外部業者への委託費用である (乙82参照)。よって,被告製品の実際の製造に直接関連して発生・変動する費用であり,限界利益算定上売上高から控除すべきである。 1本当たり外注加工費は,委託先からの納品書等に基づき計上された外注加工費金額等を年間の生産数量で除して算定した金額に相当する。 外注加工費の具体的な計算プロセスは,材料費と同様に,被告製品ごとに,各月の棚卸資産管理システムにおける販売数量に,その時々の「原価表」に基づく製品単位当たり標準外注加工費を乗じた標準売上原価(外注加工費)の年間合計額を年間販売数量合計で除した,単位当たり年間平均外注加工費に,販売管理システムの年間販売量を乗じて年間標準売上原価(外注加工費)を算定し,これに原価差異を配賦した金額である。原価差異の算定方法は上記材料費と同じであり,原価差異の把握に当たっては,「原価差異配賦表」上で,会計システムに基づく外注加工費勘定の年間実際取引額が集計されている。 (エ) 額である。原価差異の算定方法は上記材料費と同じであり,原価差異の把握に当たっては,「原価差異配賦表」上で,会計システムに基づく外注加工費勘定の年間実際取引額が集計されている。 (エ) 変動社内加工費変動社内加工費は,被告製品の製造に応じて発生及び増減する費用である。 販売状況に応じて生産調整が実施されれば,これに応じて賞与等の労務費の支給額の調整の他,人員調整の実施も検討される。総従業員数と製品製造に携わる従業員の配分や手配は別の問題であり,生産量に応じた労働力の調達や調整を行うのはメーカーであれば当然のことであり,それに応じて被告製品の製造に関連した労務費は変動するものである。 よって,社内労務費は被告製品の製造に直接必要な変動費であり,限界利益算定上売上高から控除すべきである。 また,被告は,被告工場の製造過程における,レンズの研磨,金属部品等の加工,最終製品の組立等一部の作業を外部業者に委託しており,業務委託費は,当該委託にかかる費用及び派遣会社への労働者派遣料等 である。業務委託費は,委託量や労働時間に応じて変動するためこれも被告製品の製造に直接必要な変動費である(乙83,84参照。なお,乙84は,業務委託費が変動費であるという内容を立証するために提出した証拠であり,そこに記載された数値と「添付別表(再提出)」の業務委託費金額との間での直接的な関連性はない。)。 被告が外注先に対して委託したユニット部品等の組立等の作業において,当該ユニット品等に不具合がある場合について,これを解体して使用できる部分を利用している。その解体作業のため,別途外注先に支払う費用を間接外注加工費として処理している。被告から外注先へ支給するユニット部品の不良率を0%にすることは について,これを解体して使用できる部分を利用している。その解体作業のため,別途外注先に支払う費用を間接外注加工費として処理している。被告から外注先へ支給するユニット部品の不良率を0%にすることは不可能であることから,間接外注加工費は,被告製品の組立作業を委託する中で一定割合で不可避的に生じる解体作業費であり,かかる間接外注加工費も変動費として扱われるべきである。 電力料,ガス,水道費は,被告製品を製造している工場が利用している各電力,ガス,水道料金について上記記載の算定方法により算出した金額であり,被告製品の製造と関係のない本社その他施設の光熱費等は除外してある。 変動社内加工費の具体的計算プロセスは以下のとおりである。被告製品の変動社内加工費は,単位当たり年間平均標準社内加工費(固定費も含まれる。)に,「変動費率算定表」(乙85)において算定した,各会計年度の被告の全社ベースの変動費率を乗ずることで,単位当たり年間平均標準変動社内加工費を算定し,これに販売管理システムの各年間販売量を乗じて年間標準売上原価(変動社内加工費)を算定し,これに原価差異配賦額を加減したものであり,「限界利益算定表」(乙72)においてそれぞれ計算されている。 そして,変動社内加工費として計上されている各費用項目について, 変動社内加工費として認識されている費用総額のうちの割合を求めた(乙135)。 次に,「被告製品(2)変動社内加工費分割表」(乙136)において,被告製品の変動社内加工費の会計年度別合計金額に,「変動社内加工費構成割合表」(乙135)で算定した会計年度別の各科目の構成割合を乗じて,科目別金額を算定した。各科目の構成割合の算定に当たっては,「変動費率算定表」(乙85)の数値を用 計金額に,「変動社内加工費構成割合表」(乙135)で算定した会計年度別の各科目の構成割合を乗じて,科目別金額を算定した。各科目の構成割合の算定に当たっては,「変動費率算定表」(乙85)の数値を用いており,これは会計システムから出力される被告全社ベースの「製造原価報告書」(乙80)に基づいている。 (オ) 特許権使用料特許権使用料は,被告製品に係る他社特許の利用料であり,原告及び他社との間でそれぞれ契約が締結されている。特許権使用料も被告製品の販売によって変動する費用であり,限界利益算定上売上高から控除すべきである。 特許権使用料は,被告製品ごとに,被告の特許権使用料算定システムデータを利用し表計算ソフトで算定した特許権使用料を期間ごとに集計し,限界利益算定表に転記したものである。 (カ) 専用製造設備費特許法102条2項の限界利益には,変動費のみならず対象製品の製造に関連する個別固定費も含まれると解すべきであるから,被告製品の製造にのみ用いられる個別固定費である専用製造設備費は,限界利益算定において売上高から控除するべきである。 専用製造設備費は,すべての製造設備費のうち,被告製品ごとに,その性質上他の製品製造に転用が利かない金型,治工具(レンズ研磨用の皿等)及びこれらの修繕費を,会計システムの固定資産台帳及び総勘定元帳から,被告製品の製品コード等を基に「専用設備費集計表」(乙9 0)に集計した上で,これを限界利益算定表上で,特定マウント専用の設備費は当該マウントの国内/輸出売上の構成比で按分,同一機種で複数マウント共通の専用設備費は,各マウント間の売上構成比で按分した上で,按分後のマウント別専用設備費を国内/輸出売上の構成比で按分することで算定 マウントの国内/輸出売上の構成比で按分,同一機種で複数マウント共通の専用設備費は,各マウント間の売上構成比で按分した上で,按分後のマウント別専用設備費を国内/輸出売上の構成比で按分することで算定している(乙72,162)。 金型等の費用のうち,被告製品以外の製造にも共通して使用できる物件(被告製品専用を示す3ケタコードの入っていないもの)の費用については,予め除外している。金型は被告製品の専用の部品ごとに設計製造するものであるし,レンズ部品の形状寸法は機種ごとに異なるものであるため,それぞれを生産するための専用の加工治具が必要となる。また,工具(チェッカー)は,レンズに搭載される電子部品が正しく実装され,正常作動しているかを確認する検査工具であり,電装部品のレイアウトは被告製品のそれぞれ及びマウントごとに異なるため,専用設備として準備することになる。 (キ) 一般製造設備費一般製造設備費は,減価償却費,工場消耗品費等の固定費であるが,被告製品の販売量は被告全製品の販売量の●(省略)●%相当にも達し,その期間も6年と長期にわたるものであるから,被告製品製造に向けた相応の設備投資が必要である。よって,被告が販売した全製品のうち被告製品の販売額相当分の割合で比例配分換算したものは,実質的に個別固定費と解し,限界利益算定上は売上高から控除することが実態に即し相当である。 一般製造設備費は,「一般製造設備費集計表」(乙92)において,会計システムから出力した各年度の製造原価報告書の製造経費の実際発生額合計から専用設備費を控除した残額に,訴訟対象期間の期首である平成19年8月期の期首と平成24年10月末の在庫金額を加減するこ とで算定した一般製造設備費の売上原価相当額の総合計金額を, 生額合計から専用設備費を控除した残額に,訴訟対象期間の期首である平成19年8月期の期首と平成24年10月末の在庫金額を加減するこ とで算定した一般製造設備費の売上原価相当額の総合計金額を,「限界利益算定表」(乙72)において,被告全製品の売上高計(国内+輸出)で除し,各被告製品の各売上高計(国内+輸出)を乗じ,これを更に当該機種の国内/輸出の売上高構成比でそれぞれ按分したものである。 (ク) 棚卸資産評価損棚卸資産評価損は,製造コスト(費用)そのものである。 このような棚卸資産評価損は,市場需要の予想を必要とする被告の属する業界においては製造又は販売のボリュームに応じて一定割合が不可避的に発生するといえるため,被告製品の製造又は販売に直接必要な変動費といえる。よって,これも限界利益算定上売上高から控除すべきである。 棚卸資産評価損は,主に,被告の棚卸資産管理システムから,被告製品に係る平成24年10月末現在の棚卸資産データ,及び被告の同年8月末本決算で利用した,販売管理システムデータを基に算定した正味売却価額を表計算ソフトにダウンロードした上で,被告製品の各マウントに,製品原価が正味売却価額を上回る製品について,当該超過額を棚卸資産評価損として算定し(仕掛品については,仕掛品原価に製品評価損÷評価損計上前製品原価の比率を乗じて算定),これを「限界利益算定表」上で,国内/輸出の売上割合で按分している。 (ケ) 個別広告宣伝費個別広告宣伝費は,被告製品に係る雑誌への掲載料,カタログの作成費用等の費用である。雑誌への掲載回数やカタログの配布部数を増やせば増やすほど,顧客は被告製品の性能や価格等を認識し購入を検討する機会を増やすことができる。よって,売上高は の掲載料,カタログの作成費用等の費用である。雑誌への掲載回数やカタログの配布部数を増やせば増やすほど,顧客は被告製品の性能や価格等を認識し購入を検討する機会を増やすことができる。よって,売上高は個別広告宣伝費の金額に応じて,比例的に増加していくと考えられる。さらに,被告製品の販売がなければ,被告製品の広告をする必要もなかったのであるから,この 点からも個別広告宣伝費は,被告製品を販売するために追加的に発生した変動費というべきものである。 以上より,個別広告宣伝費は被告製品の販売に直接必要な変動費であり,限界利益算定上売上高から控除すべきものである。 個別広告宣伝費は,被告のマーケティング部における広告宣伝費の管理ファイルから,被告製品への雑誌掲載料等を個別に集計し,「個別広告費集計表」(乙96)にまとめ,これを「限界利益算定表」上で,各被告製品の売上割合(マウント間,国内/輸出間)でそれぞれ按分している。 (コ) 一般広告宣伝費一般広告宣伝費は,集計に時間を要するために個別広告宣伝費に含めなかった被告製品に関するものを含む,被告の全製品及び被告の企業ブランド価値向上のために要した広告費用である。 被告製品の売上,ひいてはその限界利益が相当の規模にあるのは,被告が幅広い製品ラインナップを有するとともに,長年にわたる広告宣伝活動を行った結果,構築された企業ブランド価値の貢献による部分も大きい。このため,これらのための費用を,被告の全売上高のうち,被告製品の売上高の割合で按分した金額については,被告製品を販売するために直接必要な個別固定費と扱うのが実態に即しており,限界利益算定上売上高から控除するべきである。 一般広告宣伝費は,「一般広告費集計表」(乙 分した金額については,被告製品を販売するために直接必要な個別固定費と扱うのが実態に即しており,限界利益算定上売上高から控除するべきである。 一般広告宣伝費は,「一般広告費集計表」(乙99)上で,会計システム上の各広告宣伝費関連勘定を集計し,ここから上記の個別広告宣伝費を控除した残額を,「限界利益算定表」上で,各被告製品の売上割合でそれぞれ按分している。 (サ) 見本費被告が,見本費をかければかけるほど,顧客は店頭で被告製品を実際 に手に取ってその外観,重さ,使用感等を直接確認でき,顧客の購買意欲を直接刺激することができるし,逆に,見本費を全くかけないのであればこれほどの売上高,ひいては限界利益を獲得することはできないと考えられる。よって,売上高は,見本費の金額に応じて比例的に増加していくと考えられる。さらに,被告製品の販売がなければ,被告製品の見本を製作する必要もなかったのであるから,この点からも見本費は,被告製品を販売するために追加的に発生した変動費というべきものである。 したがって,見本費も個別広告宣伝費と同じく,被告製品の販売に直接必要な変動費であり,限界利益算定上売上高から控除すべきものである。 見本費は,「見本費集計表」(乙101)において,サンプル品集計システムから集計した,被告製品ごとの年間サンプル品使用額(見本費以外の研究開発等への利用を含む金額)を,総勘定元帳の製品他勘定振替高の補助コード01サンプル品の合計額に対する,製品他勘定振替高の補助コード01サンプル品のうち,見本費に相当するマガジンテスト・店頭サンプル・EXPO出品の各区分の合計額の比率を乗じて,被告製品ごとの年間見本費相当額を算定し,これを「限界利益算定表」上で,各被告製品の 01サンプル品のうち,見本費に相当するマガジンテスト・店頭サンプル・EXPO出品の各区分の合計額の比率を乗じて,被告製品ごとの年間見本費相当額を算定し,これを「限界利益算定表」上で,各被告製品の国内と輸出の売上割合でそれぞれ按分している。 (シ) 販売手数料販売手数料は,被告の販売代理店が,被告製品の在日アメリカ米軍基地内売店への販売仲介を行い,その対価として,被告が仲介した在日アメリカ米軍基地内売店への売上金額の●(省略)●%を手数料として支払っているものである(乙105)。よって,被告製品の販売に直接必要な変動費であり,限界利益算定上売上高から控除すべきである。 販売手数料は,月次で送付されてくる請求書に基づき計上された総勘 定元帳の販売手数料年間計上額を,当該期間の被告製品の全国内売上高で除し,各被告製品の国内売上高を乗じて計算したものである。 (ス) 運搬費運搬費は,被告製品の出荷に係る運送業者への委託費用であり,製品の販売に直接関係し販売数量に変動する費用である。よって,被告製品の販売に直接必要な変動費として限界利益算定上売上高から控除すべきである。 「限界利益算定表」(乙72)各欄に記載の運搬費は,国内分と輸出分に分けて以下のように計算したものである。まず,国内運搬費は,会計年度ごとに,被告製品(OEM製品を除く。)の国内販売及びOEM製品の販売に係る個々の運送委託費用が記録されている総勘定元帳の運搬費年間計上額合計を,当該期間の国内販売量とOEM製品等の販売量の割合で按分することで算定した,被告製品の国内売上に対応する国内運搬費相当額を,被告製品の国内全販売量に対する各被告製品の国内販売量の比率で按分することで計算している。次に,輸出運 製品等の販売量の割合で按分することで算定した,被告製品の国内売上に対応する国内運搬費相当額を,被告製品の国内全販売量に対する各被告製品の国内販売量の比率で按分することで計算している。次に,輸出運搬費は,会計年度ごとに,被告製品の輸出販売に係る個々の運送委託費用が記録されている総勘定元帳の運搬費年間計上額合計を,被告製品の輸出全販売量に対する各被告製品の輸出販売量の比率で按分することで計算している。 (セ) 営業部門費営業部門費は,被告製品の販売活動を担当する,被告の国内営業部,及び国際部に係る労務費及び経費のうち,被告製品の販売活動に相当する金額である。通常,営業部門費を多くかければ,これに応じて売上高も増えていくと考えられ,逆に,売上規模が減少すれば,給与や賞与の水準,営業マンの人数等は調整され,これに伴い営業部門費は減少していくものであるから,営業部門費の発生と売上高の発生との間には比例的な相関関係が存在すると考えられる。このため,営業部門費は被告製 品の販売に直接必要な変動費であり,限界利益算定上売上高から控除すべきである。 労務費は,従業員基準賃金,賞与,退職給付費用,法定福利費等から構成され,また,経費は,水道光熱費,通信費,交際費,旅費交通費,営業出張費,建物減価償却費等から構成されており,「営業部門費集計表」(乙117)において,各会計年度別に部門別の発生費用として計算している。そして,これを「限界利益算定表」において,国内営業部の部門費については,被告製品の全国内売上高に対する各被告製品の国内売上高の比率で按分し,国際部の部門費については,被告製品の全輸出売上高に対する各被告製品の輸出売上高の比率で按分することで各被告製品の営業部門費を算定している。 (ソ) 各被告製品の国内売上高の比率で按分し,国際部の部門費については,被告製品の全輸出売上高に対する各被告製品の輸出売上高の比率で按分することで各被告製品の営業部門費を算定している。 (ソ) 本社費本社費は,被告の総務部,経理部,電算部,マーケティング部等被告製品の製造及び販売を支援する本社機能を有する各部門に係る労務費及び経費のうち,被告製品の販売活動に相当する金額である。被告では長期間にわたる相当量の製品の製造販売を行っており,その実現は上記本社機能を有する各部の支援なしには不可能である。このため,本社費のうち,被告製品の販売活動に相当する金額は,被告製品の製造販売に直接必要な個別固定費と解し,限界利益上売上高から控除することが相当である。 労務費及び経費の範囲は,上記の営業部門費と同様である。本社費は,「営業部門費集計表」(乙117)において,各会計年度別の本社費発生額を,販売部門(国内営業,国際部,OEM・経営企画室)の人数比で国内営業部等にそれぞれ配賦し,そして,これを「限界利益算定表」において,国内営業部への本社費配賦額については,被告製品の全国内売上高に対する各被告製品の国内売上高の比率で按分し,国際部への本 社費配賦額については,被告製品の全輸出売上高に対する各被告製品の輸出売上高の比率で按分することで各被告製品の本社費を算定している。 (タ) 研究開発費研究開発費は,被告の研究開発部門の労務費及び経費のうち,特に被告製品の製品化開発のために要した部分である。被告は,研究開発部門の労務管理において,各担当者が各プロジェクトに研究開発に費やした時間を個別に管理し,どのプロジェクトにいかなる費用が発生したのかを把握している。研究開発費は被告製品の販売に直 被告は,研究開発部門の労務管理において,各担当者が各プロジェクトに研究開発に費やした時間を個別に管理し,どのプロジェクトにいかなる費用が発生したのかを把握している。研究開発費は被告製品の販売に直接必要な変動費であり,限界利益算定上売上高から控除すべきである。 研究開発費は,月次で,被告の研究開発部門の労務費及び経費の実際発生額を当該部門の総就業時間で除し,各被告製品の開発プロジェクトに要した時間を乗じて算定した,被告製品ごとの研究開発費の合計金額を,各被告製品のマウント間の売上構成割合でマウントごとに按分し,これを更に各マウントの国内・輸出の売上構成比で按分した金額である。 (チ) 為替差損被告は日本にのみ工場を有し,日本で製造した製品を国内外に販売し,円貨による売上代金を回収することで事業活動を行っており,被告にとって実質的な売上代金とは,為替差損益を加味した円貨による回収額にほかならない。このため,為替差損は,売上高の構成要素の1つといえるものであり,売上高から当然に控除されるべきものである。 「限界利益算定表」各欄に記載の為替差損は,個々の取引に係る為替差損が記録されている各会計年度の年間計上額(為替差益と相殺後の正味の為替差損)を当該期間の被告の全輸出売上高に対する各被告製品の輸出売上高の比率で按分したものである。 (4) 寄与率ア交換レンズの販売利益に対する手振れ補正機能自体の寄与率 (ア) 交換レンズ購入の際に考慮される要素交換レンズは,光学性能を主として,大きさ・重量,オートフォーカス機能,手振れ補正機能,露光機能などが製品購入の際の考慮項目となる。 被告製品は,製品カタログ(乙1)に,「シグマ独自の手ブレ ンズは,光学性能を主として,大きさ・重量,オートフォーカス機能,手振れ補正機能,露光機能などが製品購入の際の考慮項目となる。 被告製品は,製品カタログ(乙1)に,「シグマ独自の手ブレ補正OS(OpticalStabilizer)機構を搭載したコンパクトなデジタル一眼レフカメラ専用高倍率ズームレンズ。約4段分の手ブレ軽減効果を発揮します。」と記載するように,高機能な手振れ補正機能を備えていることをうたっている。手振れ補正機能は,ごく一部のメーカーを除き,交換レンズには標準的に装備されるものであり,約4段分の手振れ軽減効果を奏する手振れ補正機能も,他社製品が通常装備する手振れ補正機能と同程度のものである。したがって,高性能な手振れ補正機能を有することが,ユーザーにおける購入動機となって他社製品との差別化の要素とはなり難い。 一方,被告製品の交換レンズの光学性能については,業界内で高い評価を得ている(乙62)。ユーザーがカメラ本体購入時若しくは後にカメラ本体メーカによって当初より用意された交換レンズでなく,あえて被告製品の交換レンズを購入しようとする場合に最も重視するのは交換レンズ自体の光学性能であり,これが利用者の購入際に優先的に考慮する機能・要素である(乙62)。 (イ) 手振れ補正システムの構成要素a 被告製品の手振れ補正システムの原理及び具体的な構成要素の詳細は,乙137号証のとおりである。 被告製品の手振れ補正システムの構成要素は,①一部のレンズ群を光軸に垂直な平面上でシフト可能なレンズ光学系,②手振れを検出する角速度センサ,③シフトレンズ群の駆動機構(ボイスコイルモータ 〔VCM〕と位置検出センサ),④手振れ補正制御システムで構成される。 シフト可能なレンズ光学系,②手振れを検出する角速度センサ,③シフトレンズ群の駆動機構(ボイスコイルモータ 〔VCM〕と位置検出センサ),④手振れ補正制御システムで構成される。 b シフトレンズ群については,光軸に垂直な平面上でシフトされることによるレンズ光学系全体の諸収差の変化,レンズ光学系全体における配置,駆動制御するアクチュエータの性能に見合った重量等を十分に考慮した設計がされる。また,レンズ光学系は各レンズ群が光軸に垂直な方向には移動しないという前提で設計されているので,一部のレンズ群を光軸に垂直な方向に移動させると諸収差の変動が生じ画質が劣化する(甲2の4頁23~24行,乙2の4頁右欄13~20行)。したがって,手振れ補正システムを採用する場合には,レンズ系全体の光学設計が必要となる。 角速度センサはカメラの手振れを検出するために,カメラシステムに生じた回転運動による角速度を検出するものである。カメラシステムに生ずる運動の中から,補正すべき手振れを正確に検出するためには,適切な周波数範囲の角速度センサの出力値を精確に検出するものでなければならない。角速度センサについては,センサメーカーが販売している製品の中から,要求される仕様を満たすセンサを選択して購入している。 シフトレンズ群の駆動機構は,角速度センサの検出値に応じて光軸に垂直な平面上でシフトレンズ群を駆動制御するためのものである。 乙38号証の資料2~6に示されるように,被告製品のレンズ光学系におけるシフトレンズ群は,手振れによりカメラが0.15度振れると,μm単位で数百μm移動するように設計されている。このように,手振れ補正制御の際のシフトレンズ群の移動量は微小なものであって,微小な動き(数百μm)を正確に(μm単 よりカメラが0.15度振れると,μm単位で数百μm移動するように設計されている。このように,手振れ補正制御の際のシフトレンズ群の移動量は微小なものであって,微小な動き(数百μm)を正確に(μm単位で),かつ高い応答性能で(約800マイクロ秒ごとに)駆動することが要求される。 位置検出センサには個体ごとに出力値のバラツキがあり,また,レンズ光学系によってシフトレンズ群の重量が異なるので,高性能の手振れ補正システムとするためには,正確な調整が必要となる。 手振れ補正制御システムは,角速度センサにより角変位を算出したり角変位に応じてボイスコイルモータを駆動制御したりするコンピュータシステムである。角速度センサは,カメラシステムに加わるいろいろな角速度を検出するので,その検出値をそのまま用いて手振れ補正制御を行うと適切に行うことができない。角速度センサの出力値の高周波成分や低周波成分は,ローパスフィルタやハイパスフィルタを用いて除去する必要があるが,どの範囲の周波数成分をどの段階で除去するかは,各社それぞれのノウハウから決定している。また,シフトレンズ群の可動範囲には制限があるが,その限界近くにおいては手振れ補正制御を行う際の可動範囲が小さくなってしまう。被告製品では,シフトレンズ群が可動範囲の限界に行き難くなるように工夫をしている。被告製品には,シフトレンズ群の駆動制御を3つのボイスコイルモータにより行っているものもある。その場合においては,平面上において2軸座標で特定できる目標位置を3軸座標で特定できる目標位置に変換する必要がある。この変換は,計算が複雑となることから手振れ補正制御の応答速度に影響を及ぼすので,実用的な応答速度を確保することができるよう工夫を要する。 c 手振れ補正 目標位置に変換する必要がある。この変換は,計算が複雑となることから手振れ補正制御の応答速度に影響を及ぼすので,実用的な応答速度を確保することができるよう工夫を要する。 c 手振れ補正システムにおいては,手振れを検出するための角速度センサのほかに,レンズ光学系,シフトレンズ群の駆動機構,手振れ補正制御システムが適切に設計されることによって,はじめて高機能の手振れ補正システムを達成することができるのである。本件特許発明の実施によって他社製品と差別化できるのは,フォーカシングモータとして超音波モータを採用した際に,手振れ補正機能が誤作動しない という点にすぎない。よって,本件特許が手振れ補正制御システム自体に寄与する割合は非常に低いものといわざるを得ない。 (ウ) このような事情を考慮すると,被告製品において,手振れ補正機能自体が販売に及ぼす寄与率は20%程度である。 イ手振れ補正機能の効果向上に対する本件特許発明の寄与率(ア) 本件明細書の【発明の効果】の記載からすれば,本件特許発明の「装置」は,それぞれ,超音波モータの周波数制御範囲を振動検出素子の1次の共振の半値幅帯域と2次の共振の半値幅帯域との間に設定した場合,振動検出素子の共振の半値幅帯域と超音波モータの周波数制御範囲を別の帯域に設定した場合に,それ以外の場合と比較して,正確な振動検出が可能となるという効果を有することになる。 ところで,上記効果を奏するためには,本件特許発明の「装置」に上記課題が存在することが大前提となる。すなわち,本件明細書の【発明が解決しようとする課題】の記載からすれば,本件特許発明の課題は,「超音波モータの振動によって,振動検出素子が共振」するということにあるから,本件特許発明の効果を奏するた なわち,本件明細書の【発明が解決しようとする課題】の記載からすれば,本件特許発明の課題は,「超音波モータの振動によって,振動検出素子が共振」するということにあるから,本件特許発明の効果を奏するためには,超音波モータの振動が振動検出素子に伝達されることが大前提となる。そして,その超音波モータの振動の振動検出素子への伝達の度合いによって,本件特許発明の効果の大きさが変わることになる。 (イ) 被告製品において,超音波モータの振動がジャイロセンサに伝わらない理由は,大きく2つある。1つは,超音波モータとジャイロセンサが設置される構造の特徴による理由であり,他の1つは,超音波モータの構造の特徴による理由である。すなわち,被告製品は,超音波モータの設置部材とダブルT型の素子を含むジャイロセンサの設置部材を同一部材とせず,異なるものとすることによって,ジャイロセンサの設置位置まで振動が伝播しないようにしている。また,超音波モータ中の進行 波を発生させる圧電素子をステータ以外に直接接触しないようにし,圧電素子が発生させた振動がステータ以外の他の部材へ直接伝わることのないようにすることによって,超音波モータ自体,外部に振動を伝播させない構成を採用している。現に被告製品においては,超音波モータの振動はダブルT型の素子を含むジャイロセンサには伝達されていない(乙64)。 同じ課題を解決するために異なる手段が存在することはごく普通のことであり,異なる解決手段を採用したり,複数の解決手段を併用したりすることもある。複数の解決手段を採用した場合には,一つの解決手段は課題の解決にごく僅かしか寄与しないことはもちろん,異なる解決手段を採用した場合には,それ以外の解決手段は課題の解決には全く寄与していない。 被告製 採用した場合には,一つの解決手段は課題の解決にごく僅かしか寄与しないことはもちろん,異なる解決手段を採用した場合には,それ以外の解決手段は課題の解決には全く寄与していない。 被告製品の構成が形式的に本件特許発明の構成要件に該当するとしても,被告製品においては,それ以外の被告製品の独自の構成により,ダブルT型の素子を含むジャイロセンサには超音波モータの振動がそもそも伝播されていないのであって,本件特許発明による課題の解決はされていないと評価できる。 被告製品は,約4段分の手振れ軽減効果をうたっているが,本件特許発明の手振れ軽減効果に及ぼす影響は仮にあったとしても,微々たるものである。原告も同様に,4段分の効果のある手振れ補正機能を搭載した交換レンズを新たに開発・販売したが,その際,本件特許発明の手振れ補正機能に寄与している部分は少ないことを説明している。乙65号証では,原告の手振れ補正機能開発の担当技術者の談話として,「一番大きく変わったのはセンサですね。非常に安定した性能で遅い動きまで逃さず感知する。」と述べられている。したがって,原告製品の手振れ補正機能の効果向上は,手振れの検出用のセンサに振動子に水晶を使っ たデバイスを採用したことによるところが大きいのであって,本件特許発明による効果は微々たるものである。 (ウ) 振動検出への影響は,共振による振動の振幅が大きくなるほど大きくなるのであって,共振による振幅が小さければ小さいほど検出誤差は小さくなるのである。超音波モータが常に駆動されていれば,超音波モータから伝わる振動が小さくても共振の振動の振幅は大きくなる可能性はあるが,超音波モータはフォーカシングを行っている間だけ駆動され,それ以外のときは停止しているのであるから,超音波モータ ,超音波モータから伝わる振動が小さくても共振の振動の振幅は大きくなる可能性はあるが,超音波モータはフォーカシングを行っている間だけ駆動され,それ以外のときは停止しているのであるから,超音波モータから伝わる物理的な振動が小さければ,共振による振動の振幅も小さく,手振れを検出する素子の検出誤差も小さいのである。 超音波モータからの振動がダブルT型の素子に伝わるとすれば,レンズの鏡筒を介してまずダブルT型の素子のパッケージに伝わりパッケージと一体の基部12を伝わる。被告製品の鏡筒は多くの部材で構成されており,同じ部材上に,超音波モータとダブルT型の素子が配置されているものではない。したがって,超音波モータの振動がダブルT型の素子まで伝わるには,多くの部材を介して伝わらなければならない。被告製品においては,超音波モータの振動の伝達経路は,鏡筒内部の何か所かで中断されている(乙139)。 仮に,被告製品において,超音波モータの振動によってダブルT型の素子に共振の現象が起きたとしても,シフトレンズ群の移動量にバラツキが生じ,その結果,手振れ補正の精度が落ちるという程度の減少にすぎない。 甲121号証によれば,別紙被告製品目録記載の製品において,ジャイロセンサ部の振動変位量は,約6nmであり,これは超音波モータの振動変位量664nmの0.9%にすぎない。また,超音波モータによるフォーカシングは僅かな時間(長くても1秒程度)で終了するから, 超音波モータが駆動されている時間も短い。このように,加えられる外部振動の振幅も小さく,加振される時間も短いのであるから,振動によってダブルT型素子に与えられるエネルギーはわずかなものである。 さらに,そもそも,被告製品においては,超音波モータの振動 部振動の振幅も小さく,加振される時間も短いのであるから,振動によってダブルT型素子に与えられるエネルギーはわずかなものである。 さらに,そもそも,被告製品においては,超音波モータの振動がジャイロセンサ部に伝播したときは,振幅が非常に減衰させるだけでなく,周波数のバラツキが20数キロヘルツにわたる不安定な振動となってしまうのであるから,水晶結晶のダブルT型素子の駆動アームに共振が生じることはない。 これらを考慮すると,手振れ補正機能全体における手振れ補正機能の効果向上に対する本件特許発明の技術的な寄与率は10%程度である。 ウ以上のとおり,手振れ補正機能自体の寄与率及びその手振れ補正機能全体に対する本件特許発明の技術的な寄与率は,それぞれ20%及び10%であるから,ニコン向け被告製品に基づく損害額の算定に関する寄与率としては,20%×10%=2%とするのが相当である。 エ一般にレンズの製品名は,レンズの機能を表すものであることが多い。 被告もレンズの製品名には,レンズの機能を表記している。例えば,別紙被告製品目録記載1の製品は,「18-125mmF3.8-5.6 DCOSHSM」というものであるが,「18-125mm 」は,変倍する焦点距離の範囲を示し,「F3.8-5.6」は,変倍時のレンズの開放F値を示し,「DC」は,どのようなイメージサークルに対応して設計されたレンズかを表す(甲95の2枚目)。「OS」及び「HSM」も,レンズの機能を表したものであって,それ以上の意味はない。購入者も,「OS」及び「HSM」の表記を他の標記と同様レンズの機能を示すものとしか認識しない。 (5) その他ア間接侵害本件特許発明の「振動」に対応するものがカメラシステムの(使用者に 及び「HSM」の表記を他の標記と同様レンズの機能を示すものとしか認識しない。 (5) その他ア間接侵害本件特許発明の「振動」に対応するものがカメラシステムの(使用者に よる)手振れを意味するというのであれば,「装置」は,手振れが生ずるカメラシステムとなる。カメラシステムの手振れは,カメラシステム全部について生ずるものであり,レンズ交換可能なカメラシステムにおいて,交換レンズがそれ単体で振動されたとしてもその振動は振動検出素子が検出する手振れと呼ばれるものではなく,またその振動は検出されるものでもない。被告製品のデジタル一眼レフカメラ用レンズ(交換レンズ)は,それ単体で手振れを検出するものではなく,カメラ本体に装着され,カメラ本体のレリーズボタンの押し下げ動作に応じて生成される信号を受けてダブルT型の素子がカメラシステムの手振れを検出するものであるから,振動検出器が検出する振動がカメラシステムの手振れを含むものであったとしても,被告製品単体(交換レンズ自体)で「振動を検出する振動検出器」を備えた「装置」であるとすることはできない。 よって,被告製品は,本件特許発明の「装置」ではなく,その「装置」を構成する部品というべきものである。本件明細書においても,「振動検出素子は,手振れの検出用のセンサである」とする請求項9は,「装置」が「撮影レンズとカメラボディとが一体又は着脱可能なカメラシステム」(請求項9が引用する請求項7)であることを前提としているのであって,「装置」を交換レンズとはしていない。 以上より,被告製品は,デジタル一眼レフカメラ用レンズ,すなわち交換レンズであるから,本件特許発明の「装置」がカメラシステムに対応するとしても,特許法101条1項1号の「その物の生産にの 以上より,被告製品は,デジタル一眼レフカメラ用レンズ,すなわち交換レンズであるから,本件特許発明の「装置」がカメラシステムに対応するとしても,特許法101条1項1号の「その物の生産にのみ用いる物」に相当することとなる。したがって,被告製品が装着されたカメラシステムが本件特許発明の技術的範囲に属することになるのであれば,本件特許発明を間接的に侵害することになるのであるが,「その物の生産にのみ使用する物」という要件が予定する「生産」は,日本国内における生産を意味するものと解釈すべきである。 被告製品のうち,国外向け被告製品は,外国において初めてカメラシステムとして使用されるものであって,日本国内におけるカメラシステムのための生産に使用されるものではないから,特許法101条1号の「その物の生産にのみ使用する物」に当たるということはできない。 イニコン向け対象製品の市場における競合平成21年6月以降は,ニコン向け対象製品の市場においては,原告製品及び被告製品並びにこれらと同等の機能を有するタムロン製の製品とが競合していたのである。平成23年2月のBCNランキングによれば,原告製品である「AF-SDXNIKKOR 18-200mmF3.5-5.6GEDVRII」と同じ高変倍ズームレンズのカテゴリに属するタムロンの「AF18-270mmF/3.5‐6.3 DiIIVCPZD ニコン用」のシェアは,それぞれ3.7%及び4.7%とほぼ拮抗している(乙70)。そうすると,被告製品が販売されなかった場合には,被告製品を購入した需要者については,そのほぼ半分が,原告製品を購入し,残り半分が競合するタムロン製のレンズを購入したと推測される。少なくとも同月以降においては,被告が被告製品の れなかった場合には,被告製品を購入した需要者については,そのほぼ半分が,原告製品を購入し,残り半分が競合するタムロン製のレンズを購入したと推測される。少なくとも同月以降においては,被告が被告製品の販売により得た利益がそのまま原告の逸失利益であるとの推定はできないのである。 被告製品の販売がなかったと仮定した場合の原告の逸失利益について,少なくとも平成21年6月以降は,被告製品の数量のほぼ半分は,原告でなくタムロンが販売していたと考えるべきであり,そのタムロンが販売したであろう数量については原告の逸失利益でなく実施料相当額として損害額の算定がされるべきである。 ウタイの洪水による原告工場の被災の影響平成23年にタイで洪水が起こり,原告のタイ工場は,平成23年10月6日より操業停止となり,通常の生産に戻ったのは,平成24年3月31日である(乙68の1~3参照)。 原告のタイ工場は,原告の主力工場であり,レンズの生産についても66%程度を生産する工場である(乙69)。原告製品も原告のタイ工場で生産されていたものが多くある。 原告が,仮に,被告製品の販売台数に対応するに十分な製造能力を有していたとしても,洪水は偶発的なものであるから,タイ工場において洪水により操業ができなかった期間中は,原告は,原告製品を製造販売することができなかったとするべきである。当該期間中に原告が製造販売できなかった販売台数は,被告製品が製造販売されていなかったとしても,タムロンなど他のレンズメーカーが販売することになったのであって,被告製品が販売されていたことにより原告が製造販売できなかった台数とはならない。 したがって,特許法102条2項の対象となる製品からは,その分の販売台数は除かれ ことになったのであって,被告製品が販売されていたことにより原告が製造販売できなかった台数とはならない。 したがって,特許法102条2項の対象となる製品からは,その分の販売台数は除かれるべきである。 (6) 特許法102条3項に基づく損害算定について原告と被告では,既に交換レンズにつき包括的な特許実施許諾契約が締結されている。 当該特許実施許諾契約においては,●(省略)●に関する実施料率は●(省略)●である。そして,●(省略)●本件特許発明の技術的意義が,手振れの軽減効果に及ぼす影響はごくわずかである。そして,被告製品も別の解決方法・構成によって超音波モータの振動がジャイロセンサ等の各部へ伝播されるという問題を解決しており,事実上,本件特許発明を実施しているとは評価できない。 以上のような事情を考慮すれば,本件特許発明の実施料率は0.1%を超えるものではないとするのが相当である。 第4 当裁判所の判断 1 被告製品が本件特許発明の技術的範囲に属するか(争点1)について (1) 構成要件Gの充足性(争点1-1)についてア 「振動」の意義について被告は,「振動」の意義について,「ある座標系に関する量の大きさが,その平均値または基準値よりも大きい状態と小さい状態とを交互に繰り返す変化」であり,不規則な変化を含む上位概念である「変動」を含まない旨主張する。 本件特許権の特許請求の範囲の「振動」について,請求項6(本件第2特許発明)の記載からは,その意義は明らかではない。しかし,請求項7には,撮影レンズとカメラボディとが一体又は着脱可能なカメラシステムに使用される振動検出器が記載され,請求項9には,請求項7又は8の装置において,振動検出 その意義は明らかではない。しかし,請求項7には,撮影レンズとカメラボディとが一体又は着脱可能なカメラシステムに使用される振動検出器が記載され,請求項9には,請求項7又は8の装置において,振動検出素子が手振れ検出用のセンサであることを特徴とする超音波モータと振動検出器とを備えた装置が記載されている。そして,各請求項に使用される「振動」の意義が異なることをうかがわせる記載は,本件明細書の発明の詳細な説明には見当たらない。 そうすると,「振動」の意義は,各請求項に共通のものと理解されるべきであり,撮影レンズやカメラボディに生じる振動とは撮影者の身体の動きによって生じる振動と解されるから,不規則な変化を含むものと解するのが相当であり,被告のいう上位概念である「変動」を含むものと解される。 また,本件明細書【0019】には,実施例に関する記載として,「撮影レンズ3のブレを検出する振動検出素子8」との記載がある。この記載も,「振動検出素子」が,被告のいう「変動」に当たる撮影レンズのブレを検出するものであることを前提としているといえる。 この点は,一般的な技術用語としての「振動」について,甲41号証(「モード解析入門」本件特許出願前の平成5年7月20日発行)において,「振動」が周期性のない複雑な形状の波形や1発で終わる衝撃のよう な不規則現象なども含むものとして使用されていることからも裏付けられる。被告は,同書において,上記のような不規則現象も「すべて正弦波の積重ねで表現できる」とされていることから,同書ではこれらの不規則現象も「振動」に入れて扱っていると主張するが(正弦波の積重ねである以上,規則的なものとして扱っているとの趣旨と解される。),不規則現象を分析して正弦波の積重ねで表現できることは,変化が らの不規則現象も「振動」に入れて扱っていると主張するが(正弦波の積重ねである以上,規則的なものとして扱っているとの趣旨と解される。),不規則現象を分析して正弦波の積重ねで表現できることは,変化が不規則であることを否定するものではなく,むしろこれを前提とするものであるから,「すべて正弦波の積重ねで表現できる」ことを根拠として,振動が変動を含まないとする被告の主張は採用できない。 イ 「振動を検出する振動検出器」の意義について被告は,振動は時間の関数であるから,振動検出器は,角速度の信号から時点ごとの変位を求め,その時点と変位の対の信号として出力するものであることが必要である旨主張するが,その根拠は明らかでなく,次に述べるとおり,振動検出器は,振動を「検出」するものであれば足り,その時点と変位の対の信号として「出力」するものである必要があるとは解されない。 「振動検出素子」としては,その実施例として圧電振動ジャイロが挙げられており(本件明細書【0021】),少なくとも圧電振動ジャイロを含むものである。そして,圧電振動ジャイロは,被検出物の角速度を検出するものであり(甲56,乙51),「振動を検出する振動検出器」は「振動検出素子を用いて」振動を検出するものであるから,角速度の検出により振動を検出するものを含むと解される。そして,被告の主張するように,振動が時間と関係づけられたものであるとしても,角速度自体が時間と関係づけられて用いられるものであるから(乙31),角速度の検出をもって振動を検出しているとみることに問題はない。 また,被告は,本件特許発明は「装置」全般についての振動検出をその 内容とするものであるから,装置の分野の当業者の理解に従って解釈されるべきであり,「振動を検出する振 題はない。 また,被告は,本件特許発明は「装置」全般についての振動検出をその 内容とするものであるから,装置の分野の当業者の理解に従って解釈されるべきであり,「振動を検出する振動検出器」における「振動」は周期的な運動を意味する旨主張する。 しかし,本件特許発明が手振れのような周期的でない運動を含むことは,本件特許発明の効果についての記載である本件明細書【0028】の「また,超音波モータが焦点整合用レンズを駆動し,振動検出素子が撮影レンズのブレを検出する装置の場合には,正確なブレ防止が可能になる。」の記載から明らかであり,被告の主張は採用できない。 ウ 「励振された振動検出素子」の意義について(ア) 被告は,本件明細書において,「励振」は系に作用する外力の意味で用いられている旨主張する。 確かに,本件明細書の発明の詳細な説明では,実施例として機械的外力により振動するものが記載されているが(【0021】),「励振」がこの実施例の場合に限定される根拠はない。 「励振」の一般的技術的意義は,「振動系に振動を起こさせること」(甲33)とされており,その一般的技術的意義と異なる解釈をする根拠は本件明細書には見当たらない。 したがって,「励振」とは,機械的外力により振動するものに限定されないと解するのが相当である。 (イ) 被告は,励振される対象として,「振動検出素子」そのものが励振されることをいい,仮にそうでないとしても,振動検出素子のうち,検出機能を持った部分が励振される旨主張する。 被告は,ここでも本件明細書【0021】の実施例に関する記載を根拠とするが,【0021】において,励振されているのは三角柱8cであり,三角柱8cは振動検出 部分が励振される旨主張する。 被告は,ここでも本件明細書【0021】の実施例に関する記載を根拠とするが,【0021】において,励振されているのは三角柱8cであり,三角柱8cは振動検出素子の一部にすぎないから,【0021】の記載に基づいて,「振動検出素子」の全体が励振される必要があると は解されない。 また,特許請求の範囲は「励振された振動検出素子」としているのであって,励振の対象を振動検出素子の全体であるとも特定の一部であるとも限定していない。検出機能を有しない部分が励振するとしても,それが「振動検出素子」の構成に含まれるものである限り,「振動検出素子」が励振されたものと解して妨げない。特許請求の範囲の解釈としては,少なくとも振動検出素子の一部が励振されれば足り,励振する部分が検出機能を持った部分であると解する根拠はない。むしろ,上記のとおり,本件明細書【0021】の記載によれば,励振されるのは三角柱8cであって,検出用圧電素子8bは励振されるものではないと解される。 以上のとおり,励振される対象について,「振動検出素子」の全体又は検出機能を持った部分に限定されると解することはできないから,被告の主張は採用できない。「振動検出素子」のいずれかの部分が励振されれば足りると解するのが相当である。 (ウ) 被告は,「振動検出素子」について,「検出素子」自体が振動するものである旨主張する。 a そこで,本件明細書の発明の詳細な説明の記載をみると,【0004】には【発明が解決しようとする課題】として「超音波モータの振動によって,振動検出素子が共振して,正確な振動検出ができなくなる」との記載,【0018】には【作用】として「超音波モータの振動によって,振動検出素子が共振する とする課題】として「超音波モータの振動によって,振動検出素子が共振して,正確な振動検出ができなくなる」との記載,【0018】には【作用】として「超音波モータの振動によって,振動検出素子が共振することがなくなり,正確な振動検出が可能になる。」との記載,【0027】には【発明の効果】として「超音波モータの振動によって振動検出素子が共振することがなくなり,正確な振動検出が可能になる」との記載がある。 以上の記載によれば,「振動検出素子」とは振動を検出する素子と 解するのが相当である。 被告の主張は,本件明細書【0021】の実施例に関する記載を根拠とするものと解されるが,「振動検出素子」の意義を実施例の記載に即して解釈しなければならない根拠は見当たらない。 b 被告は,本件特許発明の出願に係る意見書(乙24)の「本願発明においては,『超音波モータ』と『振動検出素子』とは,いずれも自ら振動するものである。」との記載等から,原告も自ら「振動検出素子」を「自ら振動する検出素子」としていた旨主張する。 しかしながら,乙24号証3頁下から3~2行には,「本願発明は,構成Aに示すように,『超音波モータ』と『励振された振動検出素子』というように,2つの振動するものの関係を示しており」と記載されており,「振動検出素子」が「励振された」ものであることを捉えて「自ら振動する」と記載したにすぎないのであって,検出機能をもった素子が振動することまで主張しているとは解されないから,被告の主張は採用できない。 (エ) 以上をまとめると,「振動検出素子」とは,変動を含む振動を検出できる素子であれば足りるものと解される。 エその他被告は,本件特許発明は,超音波モータの振動によ (エ) 以上をまとめると,「振動検出素子」とは,変動を含む振動を検出できる素子であれば足りるものと解される。 エその他被告は,本件特許発明は,超音波モータの振動によって振動検出素子が共振して,正確な振動検出ができなくなるものを対象とするべきであると主張する。本件特許発明が,超音波モータの振動により振動検出素子が共振することを防ぐために,超音波モータの周波数制御範囲と振動検出素子の半値幅帯域を一定に設定するものであることは明らかであるから,被告の主張は,振動検出素子に共振が生じても正確な振動検出ができる場合の振動検出素子は,本件特許発明の振動検出素子(構成要件G,H,J)とはいえないものであるとの趣旨と解される。 この点については,被告製品が振動検出素子を有するといえるかという充足性において判断する。 オ充足性について別紙被告製品説明書(被告)に基づいて,構成要件充足性を検討する。 (ア) 「超音波モータと」被告製品が超音波モータを備えていることについては,当事者間に争いがない。 (イ) 「励振された振動検出素子を用いて」被告製品は,角速度センサを備えており,これにより振動を検出できるから振動検出素子ということができる(別紙被告製品説明書(被告)記載g-2)。 「振動検出素子」は,「コリオリの力を利用して,被検出物の変動を検出する」(本件明細書【0021】)態様を含むのである。被告製品は,駆動アームが励振され,その状態で角速度が加わると,連結アームの振動に連動して検出アームが屈曲して角速度を検出するから,「コリオリの力を利用して被検出物の変動を検出」するものであり,「振動検出素子」であるといえる。 ,その状態で角速度が加わると,連結アームの振動に連動して検出アームが屈曲して角速度を検出するから,「コリオリの力を利用して被検出物の変動を検出」するものであり,「振動検出素子」であるといえる。 また,被告製品の角速度センサを構成するダブルT型素子の駆動アームは,駆動周波数の交流電圧が与えられると屈曲運動をするから,振動検出素子が励振されたものといえる(別紙被告製品説明書(被告)記載g-4②,g-6①)。 「振動検出素子」とは,振動検出に必要な機能を持つ部材を「素子」と評価できる範囲において含むものであるから,駆動アーム,連結アーム,検出アームの全体を捉えて「振動検出素子」とみるべきものである。 以上のとおり,被告製品は,「励振された振動検出素子」を備える。 (ウ) 「振動を検出する振動検出器」 被告製品は,手振れを検出するものであるから(別紙被告製品説明書(被告)記載g-2),変動を含む振動を検出するものといえ,振動を検出する振動検出器といえる。 (エ) そして,被告製品は,デジタル一眼レフカメラ用レンズであるから装置といえる。 したがって,被告製品は,構成要件Gを充足する。 (オ) これに対し,被告は,被告製品のダブルT型の素子は,その構造上,超音波モータの振動(往復の直線運動)が外力として加わって,仮に,ダブルT型の素子が共振することがあったとしても,振動検出に影響が生じない(乙59)などと主張する。 しかしながら,乙59号証の6頁下から7~末行において,直線運動が加わっても,異常出力を出さないメカニズムとして着目されているのは検出アームに関する部分であり,駆動アームが共振した場合についても異常出力を出さないとは記 証の6頁下から7~末行において,直線運動が加わっても,異常出力を出さないメカニズムとして着目されているのは検出アームに関する部分であり,駆動アームが共振した場合についても異常出力を出さないとは記載されていない。そして,励振された部位である駆動アームが共振してしまうと,振動検出に一定の影響が生じると解されるから(乙59の7頁にも,「低衝撃感度,低振動感度特性」と記載され,衝撃や振動の影響が完全になくなるとまでは記載されていない。),被告の主張は採用できない。 (2) 構成要件Hの充足性(争点1-2)についてア 「振動検出素子」共振の半値幅帯域の意義について(ア) 被告は,「振動検出素子」の「共振の半値幅帯域」とは,素子全体の振動による共振の現象である旨主張する。 本件明細書の発明の詳細な説明をみると,【0018】には【作用】として「…超音波モータの振動によって,振動検出素子が共振することがなくなり,正確な振動検出が可能になる。」との記載があり,【0027】には【発明の効果】として同様の記載がある。これらの記載から すると,構成要件Hの技術的意義は,構成要件Hの構成を採用することによって,正確な(撮影レンズのブレなどの)振動検出を可能とするために振動検出素子が共振することを防ぐことにあるといえる。 そして,「励振された振動検出素子」がその振動周波数に近い周波数成分の外乱が加わることにより誤動作することは技術常識である(乙41の2頁左上欄15~20行,乙42の3頁右上欄3~6行,乙43の5頁左下欄1~8行)。 以上に照らすと,本件第2特許発明では,「励振された振動検出素子」に,1次の共振の半値幅帯域と2次の共振の半値幅帯域に相当する周波数成分を持つ外乱が加えられると 5頁左下欄1~8行)。 以上に照らすと,本件第2特許発明では,「励振された振動検出素子」に,1次の共振の半値幅帯域と2次の共振の半値幅帯域に相当する周波数成分を持つ外乱が加えられると,「励振された振動検出素子」が共振することによって「振動」の状態が変化してしまうので,正確な(撮影レンズのブレなどの)振動検出ができなくなるとの課題を解決するために,超音波モータが当該外乱となるのを避けるべく構成要件Hの構成を採用したものであることを当業者は理解できる。 上記の「振動」の状態の変化は,振動検出素子の励振によって振動する部位について問題となることは明らかであるから,構成要件Hの「振動検出素子」共振の半値幅帯域とは,振動検出素子の励振によって振動する部位の共振の半値幅帯域を意味する。 したがって,被告の主張は採用できない。 (イ) 被告は,本件特許発明は,振動検出素子を支持する部材を介して外力が加えられ,これによって振動検出素子が共振することにより誤検出が起こることを防止することを目的としているから,振動検出素子の周波数は,振動検出素子を支持する部材を介して外力が加えられた際に生ずる振動形態の共振周波数でなければならない旨主張する。 構成要件Hの技術的意義は,上記(ア)のとおりであり,構成要件Hは,超音波モータの振動による振動検出素子の振動を問題としているのであ るから,超音波モータの振動によって励振された振動検出素子の共振を広く問題としていると解するのが自然な解釈である。被告が主張するところの外力が加えられた際に生ずる振動形態の共振周波数に限定して解する根拠はない。 したがって,被告の主張は採用できない。 (ウ) 被告は,本件特許発明の出願に係る意見 するところの外力が加えられた際に生ずる振動形態の共振周波数に限定して解する根拠はない。 したがって,被告の主張は採用できない。 (ウ) 被告は,本件特許発明の出願に係る意見書(乙24)の記載から,構成要件Hは,1次の共振周波数と2次の共振周波数の間隔が,より高次にある少なくとも2次の共振周波数と3次の共振周波数の間隔よりも広いものに限定して解釈されるべきである旨主張する。 当該意見書には,「振動検出素子の1次の共振周波数と2次の共振周波数の間隔は,より高次の共振周波数の間隔に比べて広いために,超音波モータの共振周波数帯域や周波数制御範囲を広く設定することができる。」(4~5頁)という記載がある。しかし,この記載は,超音波モータの周波数制御範囲を振動検出素子の1次の共振の半値幅帯域と2次の共振の半値幅帯域との間に設定した場合の一般的な効果を述べたものにすぎないから,被告の主張するように本件第2特許発明の構成を限定する趣旨とみることはできない。 したがって,被告の主張は採用できない。 イ充足性について被告製品のダブルT型素子Aタイプ(46.5kHz品)の駆動アームの1次共振点が47kHzであり,その半値幅帯域が47±2.35kHzの範囲内にあること,2次共振点が400kHzであり,その半値幅帯域が400±20kHzの範囲内にあることは当事者間に争いがない。また,被告製品のダブルT型素子Bタイプ(50.3kHz品)の駆動アームの1次共振点が50kHzであり,その半値幅帯域が50±2.5kHzの範囲内にあること,2次共振点が431kHzであり,その半値幅帯 域が431±21.55kHzの範囲内にあることは当事者間に争いがない。そして,被告製品の超音波モータの周 0±2.5kHzの範囲内にあること,2次共振点が431kHzであり,その半値幅帯 域が431±21.55kHzの範囲内にあることは当事者間に争いがない。そして,被告製品の超音波モータの周波数制御範囲は,58.5kHz~62.5kHz又は64.5kHz~68.5kHzである(別紙被告製品説明書(被告)記載h-1)。 以上を前提として,被告製品の充足性について検討すると,被告製品の超音波モータの周波数制御範囲は,58.5kHz~62.5kHz又は64.5kHz~68.5kHzである。そして,被告製品の振動検出素子の1次の共振の半値幅帯域は,Aタイプにつき47±2.35kHz,Bタイプにつき50±2.5kHzの範囲内にある。さらに,被告製品の振動検出素子の2次の共振の半値幅帯域は,Aタイプにつき400±20kHz,Bタイプにつき431±21.55kHzの範囲内にある。 そうすると,被告製品は,Aタイプ,Bタイプとも,超音波モータの周波数制御範囲を振動検出素子の1次の共振の半値幅帯域と2次の共振の半値幅帯域との間に設定したものといえるから,構成要件Hを充足する。 (3) 構成要件Iの充足性(争点1-3)について上記(1)及び(2)によれば,被告製品は,構成要件G及びHの特徴を有する超音波モータと振動検出器とを備えたカメラレンズであり,カメラ本体と一体となった場合にはその一部を成すものであるが,1つのまとまりのある機能をもった装置といえるから,構成要件Iを充足する。 したがって,被告製品は,構成要件G~Iの全てを充足するから,本件第2特許発明の技術的範囲に属する。 (4) 構成要件Jの充足性(争点1-4)について原告は,予備的に主張しているものであるが,念のため判断する。 件G~Iの全てを充足するから,本件第2特許発明の技術的範囲に属する。 (4) 構成要件Jの充足性(争点1-4)について原告は,予備的に主張しているものであるが,念のため判断する。 本件第3特許発明の構成要件Jは,本件第2特許発明の構成要件Hを含むものであるから,上記(2)のとおり被告製品が構成要件Hを充足する以上,構成要件Jも充足する。 そして,被告製品は,上記(1)のとおり構成要件Gを充足する。 そうすると,被告製品は,構成要件G及びJの特徴を有する超音波モータと振動検出器とを備えた装置といえるから,構成要件Iを充足する。 したがって,被告製品は,構成要件G,J及びIの全てを充足するから,本件第3特許発明の技術的範囲に属する。 (5) 小括以上のとおり,被告製品は,本件特許発明の技術的範囲に属する。 (6) その他被告は,①被告製品のダブルT型の素子は,外部から加えられる振動による共振の現象が,角速度の検出中には生じないから,本件特許発明が対象とする振動検出素子ではない,②被告製品のダブルT型の素子は,仮に外部から加えられる振動によって共振しても振動検出素子の振動の検出に影響を与えないから,本件特許発明が対象とする振動検出素子ではない,③被告製品は,本件特許発明の「装置」ではないから,構成要件G及びIを充足しない,④被告製品は,超音波モータの振動がダブルT型の素子に伝わらないから,本件特許発明が対象とする超音波モータと励振された振動検出素子を用いて振動を検出する振動検出器とを備えた装置ではないと主張する(別紙被告準備書面18(平成25年8月30日付け)における主張参照)。 しかしながら,被告は,平成24年8月28日の弁論準備手続期日におい 出する振動検出器とを備えた装置ではないと主張する(別紙被告準備書面18(平成25年8月30日付け)における主張参照)。 しかしながら,被告は,平成24年8月28日の弁論準備手続期日において,充足論及び無効論について他に主張立証はない旨の陳述をしながら(第9回弁論準備手続調書参照),平成25年9月9日の弁論準備手続期日において,上記各主張をしたものである。上記各主張が時機に後れたものであることは明らかである上,上記各主張を審理するならば訴訟の完結を遅延させることも明らかである。 したがって,上記各主張は,時機に後れた攻撃防御方法として却下する。 2 本件特許が特許無効審判により無効にされるべきものであるか(争点2)に ついて(1) 明細書の要旨変更の有無(争点2-1)についてア本件第2特許について(ア) 被告は,出願当初の明細書には,振動検出素子や被検出物の「変動」を検出するものと記載されているのみで,振動を検出する振動検出器とは記載されていないから,「励振された振動検出素子を用いて振動を検出する振動検出器」として特許請求の範囲の請求項6を補正したのは要旨変更に当たる旨主張する。 被告の主張は,「変動」と「振動」が異なるとの前提に立つものであるが,前記1(1)アのとおり,「振動」は「変動」を含むものと解されるから,被告の主張は理由がない。 また,被告は,出願当初の明細書【0004】には,振動検出素子自体の振動を検出することしか記載されていなかったのに,平成13年9月28日付けの手続補正書で追加された「振動を検出する振動検出器」において検出される振動は,被検出物の振動である旨主張する。 被告の主張は,当初明細書の請求項6の「振動検出素子」にお 月28日付けの手続補正書で追加された「振動を検出する振動検出器」において検出される振動は,被検出物の振動である旨主張する。 被告の主張は,当初明細書の請求項6の「振動検出素子」における「振動」は,振動検出素子自体の振動を意味していたのに対し,本件補正後の「振動」は,振動検出素子自体の振動と被検出物(装置)の振動の2つを含むものになったと主張するものと解される。 しかし,出願当初の明細書(乙16)【0028】には,「振動検出素子が撮影レンズのブレを検出する装置の場合には,正確なブレ防止が可能になる。」との記載があり,出願当初の明細書において,被検出物の振動を検出することが記載されていたから,被告の主張は理由がない。 (イ) 被告は,出願当初の請求項6の「前記振動検出素子の共振の半値幅帯域以外の帯域に前記超音波モータの周波数制御範囲を設定した」の記載を「前記超音波モータの周波数制御範囲を前記振動検出素子の1次の 共振の半値幅帯域と2次の共振の半値幅帯域との間に設定した」と補正したのは,出願当初の明細書に記載のない事項であり,要旨変更であると主張する。 しかしながら,補正後の事項は,出願当初の明細書(乙16)【0023】【0024】及び図1から読み取ることができるし,その技術的意義も当初明細書【0027】に「超音波モータの振動によって振動検出素子が共振することがなくなり,正確な振動検出が可能になる」との記載から把握可能であるから,被告の主張は理由がない。 (ウ) 以上のとおり,本件補正は,明細書の要旨を変更するものではないから,その余について判断するまでもなく,明細書の要旨変更を理由とする新規性・進歩性要件違反の主張は理由がない。 イ本件第3特許について 本件補正は,明細書の要旨を変更するものではないから,その余について判断するまでもなく,明細書の要旨変更を理由とする新規性・進歩性要件違反の主張は理由がない。 イ本件第3特許について被告は,本件第3特許について,本件第2特許と同様に明細書の要旨変更を主張するが,上記アのとおり,本件補正は,明細書の要旨を変更するものではないから,その余について判断するまでもなく,明細書の要旨変更を理由とする新規性・進歩性要件違反の主張は理由がない。 (2) 記載不備の有無(争点2-2)についてア本件第2特許について被告は,「振動を検出する振動検出器」は,願書に添付された明細書にも図面にも記載がなく,当業者が容易に発明を実施することができる程度に発明の目的,構成及び効果が記載されていない旨主張する。 被告の主張の趣旨は,本件明細書【0019】には「ブレ」についての記載,【0021】には「変動」についての記載があるが,これらによっては「振動検出器」が装置の振動を検出するものではなく,装置を構成する何らかの部材の振動を検出し,これを前提として「変動」を検出するものと解するしかないが,その検出のメカニズムが明らかでないとするもの と解される。 しかし,前記1(1)ア及びイのとおり,「振動」は「変動」を含むものであり,振動検出器は装置の変動を検出するものと解されるから,記載不備があるとはいえない。 したがって,記載不備の主張は理由がない。 イ本件第3特許について被告は,本件第3特許について,本件第2特許と同様に記載不備を主張するが,上記アのとおり,記載不備の主張は理由がない。 (3) 進歩性要件違反の有無(争点2-3)についてア本件 被告は,本件第3特許について,本件第2特許と同様に記載不備を主張するが,上記アのとおり,記載不備の主張は理由がない。 (3) 進歩性要件違反の有無(争点2-3)についてア本件第2特許について(ア) 刊行物2発明a 刊行物2(乙17)は,平成4年5月8日に公開された公開特許公報であるから,本件特許の出願前に頒布された刊行物である。 b 刊行物2には,次の記載がある。 「次に,第1図に示した防振装置13について,詳細に説明する。第11図および第12図は,かかる防振装置13の構成を概略的に示すものであり,…両図において,101はカメラの本体,102は撮影レンズである。撮影レンズ102は,撮影光学系103,第4図に示したy軸の回転方向に対する振動を検知するための第1の加速度センサ119a,第4図に示したx軸の回転方向に対する振動を検知するための第2の加速度センサ119b,軸110aを中心に回転できるように構成されたyz平面内の振動を補正するための第1の補正光学素子108,軸111aを中心に回転できるように構成されたxz平面内の振動を補正するための第2の補正光学素子109,第1の補正光学素子108を駆動させるためのディスク型超音波モータ112,第2の補正光学素子109を駆動させるためのディスク型超音波モー タ113,第1の補正光学素子108の回転状態を検出するためのエンコーダ114,第2の補正光学素子109の回転状態を検出するためのエンコーダ115,ディスク型超音波モータ112および113の駆動を行うための電気回路部120,カメラの本体101と撮影レンズ102との信号のやり取りを行うための撮影レンズ側接点116により構成されている。」(7頁右上欄末行~右下欄6行 112および113の駆動を行うための電気回路部120,カメラの本体101と撮影レンズ102との信号のやり取りを行うための撮影レンズ側接点116により構成されている。」(7頁右上欄末行~右下欄6行)「また,カメラの本体101には,カメラの機械的なぶれ量を検出するために,y軸角速度検出部119aとx軸角速度検出部119bが搭載されている。ここで,カメラのx軸方向およびy軸方向を第13図のように定める。y軸角速度検出部119aは,カメラのy軸回りの回転方向のぶれの角速度を検出するためのものである。このy軸回りの回転方向のぶれは,フィルム105上でのx軸方向の像ぶれを発生させる要因となる。また,x軸角速度検出部119a(注記:原文のまま)は,カメラのx軸回りの回転方向のぶれの角速度を検出するためのものであり,このx軸回りの回転方向のぶれは,フィルム105上でのy軸方向の像ぶれを発生させる要因となる。y軸角速度検出部119aおよびx軸角速度検出部119bにより検出されたぶれ情報は,カメラ本体101の電気回路部118内に具備されたCPU5に転送される。」(8頁左上欄7行~右上欄3行)c 以上によれば,刊行物2には,被告の主張のとおり,「超音波モータと,カメラの回転方向のぶれの角速度を検出するための角速度検出部とを備えたカメラシステム」が記載されていると認められる。 (イ) 本件第2特許発明と刊行物2発明との一致点及び相違点刊行物2発明の「超音波モータ」及び「カメラシステム」は,本件第2特許発明のディスク型を含む「超音波モータ」及び「装置」に相当し,刊行物2発明の「カメラの回転方向のぶれの角速度を検出するための角 速度検出部」は,本件第2特許発明の「振動検出素子を用いて振動を検出す スク型を含む「超音波モータ」及び「装置」に相当し,刊行物2発明の「カメラの回転方向のぶれの角速度を検出するための角 速度検出部」は,本件第2特許発明の「振動検出素子を用いて振動を検出する振動を検出する振動検出器」に相当する。 したがって,本件第2特許発明と刊行物2発明とは,「超音波モータと振動検出素子を用いて振動を検出する振動検出器を備えた装置」である点で一致する。 他方で,①「振動検出素子」が,本件第2特許発明では「励振された」ものであるのに対し,刊行物2発明では「励振された」ものであるか否かが不明である点(相違点1),②超音波モータの周波数制御範囲を,本件第2特許発明では「前記振動検出素子の1次の共振の半値幅帯域と2次の共振の半値幅帯域との間に設定した」のに対し,刊行物2発明ではそうしたのか不明である点(相違点2)で相違する。 (ウ) 相違点1の容易想到性について刊行物3(乙18)は平成5年5月14日に公開された公開特許公報,刊行物4(乙19)は同年4月30日に公開された公開特許公報,刊行物5(乙20)は平成3年10月20日発行の書籍であるから,いずれも本件特許の出願前に頒布された刊行物である。 そして,刊行物3には,「近年,振動体に圧電素子を貼着した振動子を具える振動ジャイロが種々提案されている。かかる振動ジャイロは,小型,軽量にできることから,最近では異なる軸回りの角速度を検出する複数の振動子を具える振動ジャイロを,小型機器,例えば小型ビデオカメラに搭載し,これにより上下,左右等の複数の軸回りの角速度を検出して画面のブレを補正する試みがなされている。」(【0002】)との記載が,刊行物4には,振れ検知装置への有害な振動による誤信号出力に対する従来技術 れにより上下,左右等の複数の軸回りの角速度を検出して画面のブレを補正する試みがなされている。」(【0002】)との記載が,刊行物4には,振れ検知装置への有害な振動による誤信号出力に対する従来技術における対策に関して,「1)特開60-185110号では,音叉を用いた所謂振動ジャイロのケースを弾性部材を介して挟持し,有害振動の電播を阻止する。」(【0003】),「2) 特開2-163612号では,振動ジャイロをダイヤフラムを介して取付け,振れ検知感度軸回りの取付け剛性は低下せずに他の方向の取付け剛性を弱くして,有害振動の電播を阻止する。」(【0004】)との記載がある。また,刊行物5では,「回転角速度を検出するこの角速度センサは,最近,研究開発が盛んに進められており,振動ビーム型,振動片型,音叉振動型など,さまざまなタイプのセンサが開発されている。 なかでも,音叉振動型は小型軽量にできることから,広い分野への応用が期待されている。」(116頁)とされ,圧電振動ジャイロに関して,「振動ジャイロとは,音片型や音叉型などの振動子に圧電セラミックスを貼り合わせ,圧電セラミックスにて振動子に振動(x軸)を与える。 振動している振動子の中心軸(z軸)に回転速度(Ω0)が加わると,もとの振動(x軸)に対し直角方向(y軸)にコリオリ力が生じる。このコリオリ力をy軸に設けた圧電セラミックスにて検出する方式で,GEタイプを基本型とする音片型振動ジャイロやスペリータイプ,ワトソンタイプを基本型とする音叉型振動ジャイロが代表的である。」(121頁)との記載がある。 以上の刊行物3~5(乙18~20)の記載によれば,カメラシステムのブレ防止のための振動検出素子として,励振された振動検出素子を用いることは周知技術と認めるのが相当である。 ある。 以上の刊行物3~5(乙18~20)の記載によれば,カメラシステムのブレ防止のための振動検出素子として,励振された振動検出素子を用いることは周知技術と認めるのが相当である。 したがって,刊行物2発明の振動検出素子として,励振されたものを用いることは容易であり,相違点1に係る構成は当業者に容易に想到できたものである。 (エ) 刊行物3~5等に基づく相違点2の容易想到性についてa 文献の記載(a) 刊行物3(乙18)には,被告が主張するように,「励振される振動子を備えた所定の軸回りの角速度を検出する振動ジャイロは, 小型ビデオカメラの画面のブレを補正するために用いられること」(【0002】)及び「振動ジャイロは,他の振動ジャイロの振動に影響されて誤検出の問題が生じること」(【0004】~【0006】)が記載されていると認められる。 (b) 刊行物4(乙19)には,手振れを検知する角速度計が,手振れ以外の有害な振動(例えば,一眼レフフレックスカメラのクリックターンミラー,シャッタ,絞り機構等の作動による衝撃,ビデオカメラのモータの走行振動)により,正規の手振れ信号以外の誤信号を出力してしまうという欠点があり,これらの有害な振動を除去するため,音叉を用いた振動ジャイロのケースを弾性部材を介して挟持し,有害振動の伝播を阻止する方法,緩衝機能を有する両面接着テープやゴム等の弾性シートを用いる方法等の様々な方法が記載されている(【0002】~【0007】,【0021】~【0043】)と認められる。 (c) 刊行物5(乙20)には,被告が主張するように,「ビデオカメラの画振れ防止に用いられる回転角速度を検出する振動ジャイロが,励振された振動 21】~【0043】)と認められる。 (c) 刊行物5(乙20)には,被告が主張するように,「ビデオカメラの画振れ防止に用いられる回転角速度を検出する振動ジャイロが,励振された振動検出素子を用いて角速度を検出するものであること」(121~127頁)及び「超音波モータは,励振された振動体により移動体を移動させるものであり,そのため,外部の機械系と接続すると機械系に不要な振動を励振する場合があり,これに対する対応策が必要であること」(174,181~182頁)が記載されていると認められる。 (d) 刊行物6(乙21)は,平成4年3月1日に発行された書籍であるから,本件特許の出願前に頒布された刊行物である。刊行物6には,圧電体に加える電圧の周波数が,圧電体の機械的な固有振動数に一致すると,非常に強力な共振現象を起こす一方,加える電圧 の周波数がごくわずかでもずれると共振はたちまち減衰してしまうこと(169頁)が記載されていると認められる。 (e) 乙41号証は,平成3年5月8日に公開された公開特許公報であるから,本件特許の出願前に頒布された刊行物である。乙41号証には,「しかし,この様な支持方法では筐体の振動や衝撃がセンサ本体に伝わることを防ぐことはできない。音叉構造振動型の角速度センサは外部からの振動や衝撃によって出力が変動するという欠点があり,特に検知用バイモルフのたわみ方向の振動や衝撃に弱くかつ,音叉振動の周波数付近の振動や音叉振動の周波数成分の高調波を含む衝撃に対して弱いという問題点があった。」(「発明が解決しようとする課題」の欄)と記載されていることが認められる。 (f) 乙42号証は,平成3年1月8日に公開された公開特許公報であるから,本件特許の出願前に頒布さ あった。」(「発明が解決しようとする課題」の欄)と記載されていることが認められる。 (f) 乙42号証は,平成3年1月8日に公開された公開特許公報であるから,本件特許の出願前に頒布された刊行物である。乙42号証には,「しかしながら,この種の音叉構造の振動型角速度センサは,素子を一定周波数で振動させているため,この周波数に近い周波数成分を含む外乱振動が加わると,誤作動してしまう。」(「発明が解決しようとする課題」の欄)と記載されていることが認められる。 (g) 乙43号証は,平成3年12月12日に公開された公開特許公報であるから,本件特許の出願前に頒布された刊行物である。乙43号証には,「加振信号に対する振動機構61の振動振幅の最も効率のよいのは,振動駆動部64の共振周波数で振動機構61を振動させることである」(3頁左下欄4~7行),「しかし,従来の角速度計として用いられている例えば振動ジャイロは,衝撃に対して極めて大きな誤差を出力するという欠点を持っている。例えば,第6図(a)で説明した振動ジャイロの振動駆動部64がある特定の 周波数nで振動成分を含む衝撃が支持手段62から伝わってきた場合を考えると,この周波数nの振動成分が振動駆動部64の振動振幅を変化させたり,あるいは振動片65a,65bを歪ませて,誤差出力を生じる。」(5頁右上欄下から3行~左下欄8行),「しかし,このようなサーボ角加速度センサを用いたブレ検出手段では,例えばレリーズ時の衝撃が入力したとき,衝撃の続く間はシーソ79は大きく振れ,衝撃が無くなってシーソ79がもとの位置に戻ったとき,…シーソ79の位置が初めの位置からズレて,出力に誤差を生じてしまうという欠点がある。」(6頁左下欄2行~11行)と記載されていることが認められ 衝撃が無くなってシーソ79がもとの位置に戻ったとき,…シーソ79の位置が初めの位置からズレて,出力に誤差を生じてしまうという欠点がある。」(6頁左下欄2行~11行)と記載されていることが認められる。 b そこで,上記の文献の記載により,相違点2に係る構成を容易に相当できたものといえるかを検討する(乙22は出願後の文献であるから,検討の対象から除外する。)。 上記aの文献のうち,刊行物4を除く文献には超音波モータを含む駆動手段によって生じる振動検出器の誤検出の問題の解決という課題の開示がなく,したがって,また,その課題の解決手段として,駆動手段の駆動制御範囲と振動検出素子の共振の半値幅帯域との関係を適切に設定するという課題解決手段についての開示もない。 刊行物4については,駆動手段の振動によって生じる振動検出素子の誤検出防止という広い意味での課題は開示されているといえるものの,その解決手段として緩衝機能を有した両面接着テープの採用等,もっぱら物理的手段により振動伝達防止が検討されており,駆動手段の駆動制御範囲と振動検出素子の共振の半値幅帯域の関係を適切に設定するという方向での課題解決手段の設定についての動機付けも示唆もない。 そうすると,刊行物2発明に上記aの文献を適用することによって, 相違点2に係る構成を容易に想到できたものとはいえない。 c 被告は,超音波モータと励振された振動素子を用いた圧電振動ジャイロを同じ装置に搭載するときには,超音波モータによる振動によって圧電振動ジャイロが誤信号を出力することが知られており,当業者がそのための対策を採ることは当然のことであり,共振に関する技術常識に照らせば,超音波モータの制御周波数と振動検出素子の共振周波数 って圧電振動ジャイロが誤信号を出力することが知られており,当業者がそのための対策を採ることは当然のことであり,共振に関する技術常識に照らせば,超音波モータの制御周波数と振動検出素子の共振周波数を離すことは,当業者が容易に想到できることであると主張する。 被告は,誤信号を出すことが知られていたことの根拠として,刊行物3及び4を挙げるが,刊行物3には,振動ジャイロ同士の振動の影響に注目しているにとどまるし,刊行物4には,正規の手振れ信号以外の誤信号の原因が,駆動手段の振動によって生じる角速度計の共振によるとの記載はない。また,乙41~43号証には,振動検出素子の振動が駆動手段によるものとの開示はないし,駆動手段の駆動制御範囲と振動検出素子の共振の半値幅帯域との関係を適切に設定することについての開示はない。 したがって,本件証拠上,本件特許の出願当時,超音波モータを含む駆動手段から生じる振動の周波数によって振動検出素子が共振することにより誤検出をするという課題は知られていなかったし,その解決手段として,超音波モータを含む駆動手段から生じる振動の周波数を圧電振動素子の周波数に近づけないようにするということも知られていなかったものと解されるから,被告の主張は理由がない。 (オ) 刊行物7,8等に基づく相違点2の容易想到性について被告は,刊行物7,8に基づいて,本件第2特許発明と刊行物2発明の相違点2についての容易想到性を主張するものと解されるから,以下,その点について判断する。 a 文献の記載 (a) 刊行物7(乙31)は,平成4年8月1日に発行された書籍であるから,本件特許の出願前に頒布された文献である。刊行物7には,被告が主張するように,恒弾性金 文献の記載 (a) 刊行物7(乙31)は,平成4年8月1日に発行された書籍であるから,本件特許の出願前に頒布された文献である。刊行物7には,被告が主張するように,恒弾性金属材料(エリンバ材)を素材とした正3角形音片型振動子を備えたカメラ用の角速度を検出する振動ジャイロであって,共振周波数を24.0kHzとするものが記載されていることが認められる(572,574頁)。 (b) 刊行物8(乙32)は,平成5年5月7日に公開された公開特許公報であるから,本件特許の出願前に頒布された文献である。刊行物8には,カメラの焦点部材を駆動する棒状超音波モータであって,駆動周波数を35~45kHzとしたものが記載されていることが認められる(【0048】【0059】【0106】等)。なお,被告は,刊行物8の記載について,超音波モータの形状が「棒状」である点を除いているが,刊行物8は【発明が解決しようとする課題】における「ところで,棒状超音波モータは,…」との記載や【作用】における「上記した超音波モータは,棒状の弾性体の2組の屈曲運動を利用し,この二組の振動は,軸を含む直交する2つの面方向のものである。」との記載をみても,「棒状」超音波モータに関するものであることが明らかであるから,「棒状超音波モータ」と認定する。 (c) 刊行物9(乙33)は昭和61年12月18日に公開された公開特許公報,刊行物10(乙34)は昭和63年5月10日に公開された特許公報,刊行物11(甲14)は平成4年5月20日に発行された書籍であるから,本件特許の出願前に頒布された刊行物である。 刊行物9~11には,共振回路のよさを表す量であって,共振の鋭さと自由運動の減衰時間に比例するとされるQ値(甲14・45 籍であるから,本件特許の出願前に頒布された刊行物である。 刊行物9~11には,共振回路のよさを表す量であって,共振の鋭さと自由運動の減衰時間に比例するとされるQ値(甲14・45 7頁)が5000以上のエリンバ材の存在(乙33・1頁右欄,乙34・2頁右欄)が記載されていることが認められる。 b 被告は,刊行物2発明に,刊行物7の24.0kHzの1次共振周波数を持つ振動ジャイロ及び刊行物8の35~45kHzの周波数制御範囲を持つ超音波モータを適用すれば,相違点2の構成を満足する旨を主張するものである。 具体的には,被告は,まず,刊行物7には,1次共振周波数が24. 0kHzの振動ジャイロが記載されていることを根拠に,そのジャイロの2次の共振周波数を甲46号証の160頁表6.3に基づいて66.1kHzと推定した上で,次に,刊行物8の記載から,周波数制御範囲が10kHzの超音波モータを想定し,これらの推定,想定を前提として,超音波モータの周波数制御範囲の中央値が24.0~29.0kHz及び61.1~66.1kHzの領域にある超音波モータの周波数制御範囲は振動ジャイロの共振の半値幅帯域と重なるが,それ以外の29.0~61.1kHzの帯域の超音波モータの周波数の制御範囲は振動ジャイロの共振の半値幅帯域と重なることはなく,振動ジャイロの半値幅帯域が重なる範囲は非常に狭いから無視することができると主張する。 しかしながら,刊行物8の超音波モータは棒状のものであって,かつ,ブレ防止ではなくカメラの焦点調節部材を駆動するものであるから,これをディスク型超音波モータであり,かつ,ブレ防止を目的とする刊行物2発明に適用することが容易であるとはいえない。しかも,被告の算定によっても,超音 カメラの焦点調節部材を駆動するものであるから,これをディスク型超音波モータであり,かつ,ブレ防止を目的とする刊行物2発明に適用することが容易であるとはいえない。しかも,被告の算定によっても,超音波モータの周波数制御範囲と振動ジャイロの共振の半値幅帯域に重なる部分があるというのであるから,刊行物2発明に刊行物7,8を適用して,相違点2に係る構成を容易に想到できたものとはいえない。 また,被告は,刊行物7の振動ジャイロに使用されるエリンバ材のQ値を100程度と推定した上で,一般に振動子に使われる材料がよりQ値の高いものが使われるなどとも主張するが,本件特許の出願時において,モータや振動を検出するセンサには様々な態様のものが存在しており,そのような状況の中で,刊行物2発明に刊行物7の振動ジャイロと刊行物8の超音波モータをともに適用することが,当業者にとって容易に想到し得ることであるとは認められない。 そうすると,刊行物2発明に上記aの文献を適用することによって,相違点2に係る構成を容易に想到できたものとはいえない。 (カ) 以上のとおり,本件第2特許発明は,進歩性要件に違反するものとは認められない。 イ本件第3特許について本件第3特許発明と刊行物2発明を対比すると,①「振動検出素子」が,本件第3特許発明では「励振された」ものであるのに対し,刊行物2発明では「励振された」ものであるか否かが不明である点(相違点1),②超音波モータの周波数制御範囲を,本件第3特許発明では「前記振動検出素子の共振の半値幅帯域と前記超音波モータの周波数制御範囲とを別の帯域に設定した」のに対し,刊行物2発明ではそうしたのか不明である点(相違点2)で相違する。 被告は,本件第3特許について 素子の共振の半値幅帯域と前記超音波モータの周波数制御範囲とを別の帯域に設定した」のに対し,刊行物2発明ではそうしたのか不明である点(相違点2)で相違する。 被告は,本件第3特許について,本件第2特許と同様に進歩性要件違反を主張するが,上記アと同様の理由により相違点2に係る構成を容易に想到できたものとはいえないから理由がない。 3 原告の損害額(争点3)について(1) 特許法102条2項の適用についてア特許法102条2項は,「特許権者…が故意又は過失により自己の特許権…を侵害した者に対しその侵害により自己が受けた損害の賠償を請求す る場合において,その者がその侵害の行為により利益を受けているときは,その利益の額は,特許権者…が受けた損害の額と推定する。」と規定する。 特許法102条2項は,民法の原則の下では,特許権侵害によって特許権者が被った損害の賠償を求めるためには,特許権者において,損害の発生及び額,これと特許権侵害行為との間の因果関係を主張,立証しなければならないところ,その立証等には困難が伴い,その結果,妥当な損害の塡補がされないという不都合が生じ得ることに照らして,侵害者が侵害行為によって利益を受けているときは,その利益額を特許権者の損害額と推定するとして,立証の困難性の軽減を図った規定である。この規定が,特許権者が特許の実施品を製造,販売している場合に適用されることは明らかであるから,以下,原告製品が本件特許発明の実施品であるかについて判断する。 イ原告が原告製品を製造,販売していること及び原告製品の構成が別紙原告製品説明書記載のとおりであること自体は,被告も争うものではなく(被告は,原告製品はレンズであって装置でないと主張するが,これは,原告製品のカメラレン ,販売していること及び原告製品の構成が別紙原告製品説明書記載のとおりであること自体は,被告も争うものではなく(被告は,原告製品はレンズであって装置でないと主張するが,これは,原告製品のカメラレンズを構成要件Iの「装置」と評価することを争っているものと解される。),弁論の全趣旨により,原告の主張を認めることができる(レンズを「装置」と評価できるかについては後に述べる。)。 そうすると,被告は,原告製品が本件特許発明の特許請求の技術的範囲に属するものであることを争っているものと解されるから,この点について判断する。 (ア) 原告製品がデジタル一眼レフカメラ用レンズであること及び構成g-1~g-4は,「超音波モータと励振された振動検出子を用いて振動を検出する振動検出器を備えた装置」といえるから,構成要件Gを充足する。 被告は,原告製品のダブルT型素子は,①外力による振動モードと駆 動振動モードが異なるから「振動検出素子」とはいえない,②外力により励振されたものではないから「励振された振動検出素子」に当たらない,③「振動を検出する振動検出器」であることが立証されていない,と主張するが,前記の被告製品の構成要件G~I充足性で判断したとおり,被告の主張はいずれも理由がない。 また,被告は,本件特許発明は励振による駆動振動モードと外力による振動モードが一致し,かつ,その共振周波数が一致する場合に適用されるところ,原告製品は,それらの振動モードが一致せず,共振周波数も一致しないから,原告製品の素子は「振動検出素子」とはいえないと主張する。 被告は,乙17号証に記載された内容,すなわちオートフォーカスのための超音波モータによる振動が終了した後に,防振装置の駆動が開始されるという内容(12頁 子」とはいえないと主張する。 被告は,乙17号証に記載された内容,すなわちオートフォーカスのための超音波モータによる振動が終了した後に,防振装置の駆動が開始されるという内容(12頁右上欄12行~13頁右下欄3行)の記載が当時の技術水準を示すものであり,本件特許発明もその技術水準を前提とするとして,主張するものである。 しかし,本件特許発明の請求項の記載に,超音波モータの駆動と振動検出素子の励振について,それが同時に起こるのか,順次起こるのかについて,これを限定して示したような記載はなく,また,本件明細書中にもそのような記載はない。かえって,本件明細書中の作用についての記載である【0018】には,「本発明においては,…超音波モータの振動によって,振動検出素子が共振することがなくなり,正確な振動検出が可能になる。」との記載があり,この記載は,超音波モータの駆動時に振動検出を行うことをも記載しているものとみるのが自然である。 このように,被告の主張はその前提が成り立たないものであるから,採用することができない。 (イ) 原告製品の構成h-1~h-3は,構成要件H及びJを充足する。 被告は,原告製品の構成h-1は,本件特許発明の構成要件H,Jの振動検出素子の1次及び2次の共振周波数に対応しないとするが,前記の被告製品の構成要件H充足性で判断したとおり,被告の主張には理由がない。 (ウ) 原告製品の構成i及び原告製品がデジタル一眼レフカメラレンズであることは,構成要件Iを充足する。 被告は,「装置」の要件及び「振動検出器」の要件を充足しないと主張するが,デジタル一眼レフカメラレンズである原告製品は「装置」といえるし,「振動検出器」の要件を充足することは,上記( 被告は,「装置」の要件及び「振動検出器」の要件を充足しないと主張するが,デジタル一眼レフカメラレンズである原告製品は「装置」といえるし,「振動検出器」の要件を充足することは,上記(ア)のとおりである。 (エ) 以上によれば,原告製品は,本件特許発明の構成要件を充足し,本件特許発明の実施品であるといえる。 (2) 被告製品の売上についてア被告製品の総売上高について,被告製品の販売開始から平成24年10月31日までの間●(省略)●円(被告製品の販売開始から平成23年4月30日までの間●(省略)●円,同年5月1日から平成24年10月31日までの間●(省略)●円)であることに当事者間に争いはない。 なお,被告製品の販売開始時期について,弁論の全趣旨により,原告が主張するとおり,別紙被告製品目録記載の順に,平成20年5月,平成19年8月,平成21年4月,同年12月,平成22年6月,平成21年4月,同年5月と認められる。 しかし,被告は,総売上高から売上割戻を控除した額を売上であると主張するのに対し,原告は当該控除を争うものである。 イそこで検討するに,財務諸表等の用語,様式及び作成方法に関する規則(昭和38年11月27日大蔵省令第59号)72条1項は,以下のとおり規定する。 「売上高は,売上高を示す名称を付した科目をもつて掲記しなければならない。ただし,第一号の項目を示す名称を付した科目及びその控除科目としての第二号の項目を示す名称を付した科目をもつて掲記することを妨げない。 一総売上高(半製品,副産物,作業くず等の総売上高及び加工料収入その他の営業収益を含む。)二売上値引及び戻り高」当該規定について,平成2 ことを妨げない。 一総売上高(半製品,副産物,作業くず等の総売上高及び加工料収入その他の営業収益を含む。)二売上値引及び戻り高」当該規定について,平成23年8月金融庁総務企画局作成の財務諸表等規則ガイドライン(乙73)72-1-2によれば,一定期間に多額又は多量の取引をした得意先に対する売上代金の返戻等の売上割戻は,売上値引に準じて取り扱うとされている。 そして,証拠(乙76の1及び2)及び弁論の全趣旨によれば,被告の売上割戻は,得意先に対するリベートであると認められるから,売上値引に準じて総売上高から控除するのが相当である。また,弁論の全趣旨によれば,被告主張の売上割戻の額は,請求書綴りから対象期間の被告製品の割戻額を手作業で集計したものであると認められ,その個別データ(乙75)をみても,特に不自然な点はないから,当該額の控除を認めるのが相当である。 ウそうすると,被告製品の売上は,別紙被告主張売上額の差引売上高欄記載のとおり,被告製品の販売開始から平成24年10月31日までの間●(省略)●円(被告製品の販売開始から平成23年4月30日までの間●(省略)●円,同年5月1日から平成24年10月31日までの間●(省略)●円)と認められる。 (3) 被告の限界利益についてア特許法102条2項の利益について特許法102条2項の侵害者が受けた利益とは,限界利益をいい,侵害 者の売上から変動費を控除した額であると解され,原則として,設備投資や一般管理費は控除されない。 そこで,以下は,被告主張の控除項目について検討する。 イ材料費について材料費は,被告製品の追加的な製造・販売に必要な費用であるから,変動費と 理費は控除されない。 そこで,以下は,被告主張の控除項目について検討する。 イ材料費について材料費は,被告製品の追加的な製造・販売に必要な費用であるから,変動費として控除を認めるのが相当である。 そして,証拠(乙78,79)及び弁論の全趣旨によれば,被告は,会計処理において標準原価計算を採用し,製品1単位を製造するための標準的な原価を設定し,これに製品数量を乗じることで製品原価を算定していること,製品単位当たりの標準原価は,棚卸資産管理システムの単価マスターを表す「原価表」(乙78)に記載されており,個々の材料単価は,会計年度の期首に,その時の実際の仕入先との取引価格に基づき設定し,会計年度中の仕入取引は機械的に会計システムに入力し,会計年度末に年度中に集計した実際の仕入額と標準仕入額との差額を原価差異として把握し,これを「原価差異配賦表」(乙79)等において売上原価と期末棚卸資産にそれぞれの標準原価の割合で配賦することで,標準原価を実際原価に修正していることが認められる。 弁論の全趣旨によれば,被告主張の材料費の額についても同様に計算されたものと認められるから,当該額の控除を認めるのが相当である。 ウ外注加工費について証拠(乙82)及び弁論の全趣旨によれば,外注加工費は,被告製品について,ズームリング,保持筒等の各種部品の加工及び各最終製品の組立て作業の外部業者への委託費用であることが認められる。 そうすると,外注加工費は,被告製品の追加的な製造・販売に必要な費用であるから,変動費として控除を認めるのが相当である。 そして,弁論の全趣旨によれば,被告主張の外注加工費の額については, 上記イの材料費と同様に計算されたものと認め 必要な費用であるから,変動費として控除を認めるのが相当である。 そして,弁論の全趣旨によれば,被告主張の外注加工費の額については, 上記イの材料費と同様に計算されたものと認められるから,当該額の控除を認めるのが相当である。 エ変動社内加工費について(ア) 被告は,変動社内加工費として,①社内労務費,②業務委託費,③間接外注加工費,④電力料,ガス,水道費を主張する。そのうち,④電力料,ガス,水道費の控除及び被告主張の控除額については,当事者間に争いはない。 (イ) 社内労務費については,被告の主張によっても従業員の賃金等をいうにすぎないと解されるから,被告製品の追加的な製造・販売に必要な費用とは認められない。 (ウ) 証拠(乙83,84,152)及び弁論の全趣旨によれば,被告は,被告工場の製造過程において,レンズの研磨,金属部品等の加工,最終製品の組立等一部の作業を外部業者に委託していること,業務委託費は,当該委託費用,労働者派遣料等であることが認められる。 そうすると,業務委託費は,被告製品の追加的な製造・販売に必要な費用であるから,変動費として控除を認めるのが相当であるが,乙84,85号証の記載内容に照らせば,業務委託費は被告製品に対応するものとして特定して記載されてはおらず,業務委託費のうちには,被告製品以外の被告の製造する製品のための費用もあると認めるのが相当であるから,甲103~106号証の被告の販売する製品に対する被告製品の比率を考慮し,被告の主張立証する業務委託費の6分の1の額を,被告製品の追加的な製造・販売に必要な費用である変動費として控除するのが相当である。 そして,弁論の全趣旨によれば,被告主張の業務委託費の額については,上記 務委託費の6分の1の額を,被告製品の追加的な製造・販売に必要な費用である変動費として控除するのが相当である。 そして,弁論の全趣旨によれば,被告主張の業務委託費の額については,上記イの材料費と同様に計算されたものと認められるから,被告の主張する額の6分の1の額である●(省略)●円(1円未満切捨て)の 控除を認めるのが相当である。 (エ) 間接外注加工費については,被告の主張によってもユニット品等に不具合がある場合の解体作業のため別途外注先に支払う費用であるから,被告製品の追加的な製造・販売に必要な費用とは認められない。 (オ) 以上のとおり,変動社内加工費のうち,②業務委託費について,その控除と被告主張の6分の1の控除額が認められ,④電力料,ガス,水道費について,その控除と被告主張の控除額が認められる。 オ特許権使用料について特許権使用料の控除及び被告主張の控除額については,当事者間に争いはない。 カ専用製造設備費について被告は,専用製造設備費として,金型,治工具(レンズ研磨用の皿等)及びこれらの修繕費を主張するが,専用製造設備である点は,会計システムにおいて被告製品の製品コードに関連付けられている以外に根拠はなく,その立証が十分であるとはいい難い。 そして,上記アのとおり,限界利益の算定において,原則として設備投資は控除されないのであるから,被告主張の理由がない。 キ一般製造設備費について被告は,一般製造設備費の控除を主張するが,上記アのとおり,限界利益の算定において,原則として設備投資は控除されないのであるから,被告の主張は理由がない。 ク棚卸資産評価損について被告は,棚卸資産評価損の控除 するが,上記アのとおり,限界利益の算定において,原則として設備投資は控除されないのであるから,被告の主張は理由がない。 ク棚卸資産評価損について被告は,棚卸資産評価損の控除を主張するが,棚卸資産評価損は会計上の処理にすぎないのであって,被告製品の追加的な製造・販売に必要な費用とは認められない。 ケ個別広告宣伝費について 被告は,個別広告宣伝費として,被告製品に係る雑誌への掲載料,カタログの作成費用等の費用の控除を主張する。これらの費用は,被告製品の追加的な製造・販売に伴うものとは必ずしもいえないから,厳密な意味での変動費には該当しないが,被告製品の販売のために要した費用として,これを費用として控除するのが相当である。 乙96号証によれば,その額は被告の主張する額であると認められる。 コ一般広告宣伝費について一般広告宣伝費は,被告製品の追加的な製造・販売に必要な費用とは認められない。 サ見本費について被告は,見本費の控除を主張するが,被告製品の発売開始当初において見本が必要であるとはいえても,被告製品の追加的な製造・販売に伴って見本が更に必要になるとは必ずしもいえないから,被告の主張は理由がない。 シ販売手数料について証拠(乙105)及び弁論の全趣旨によれば,販売手数料は,在日アメリカ米軍基地内売店に対する販売を仲介した手数料として,仲介者に対して売上金額の●(省略)●%を支払うものであることが認められるから,被告製品の追加的な製造・販売に必要な費用であると認められる。 そして,証拠(乙106)及び弁論の全趣旨によれば,被告主張の販売手数料の額は,総勘定元帳の販売手数料年間計上額を,当該期間の 被告製品の追加的な製造・販売に必要な費用であると認められる。 そして,証拠(乙106)及び弁論の全趣旨によれば,被告主張の販売手数料の額は,総勘定元帳の販売手数料年間計上額を,当該期間の被告製品の全国内売上高で除し,各被告製品の国内売上高を乗じて計算したものであることが認められるから,当該額の控除を認めるのが相当である。 ス運搬費について運搬費の控除及び被告主張の控除額については,当事者間に争いはない。 セ営業部門費,本社費及び研究開発費について 営業部門費,本社費及び研究開発費は,被告製品の追加的な製造・販売に必要な費用とは認められない。 ソ為替差損について為替差損は,被告の主張によれば,売上代金の為替変動による差損であるから,被告製品の追加的な製造・販売に必要な費用とは認められない。 タ小括以上のとおり,被告製品の売上から控除すべき変動費としては,材料費,外注加工費,電力料,ガス,水道費,業務委託費,特許使用料,個別広告宣伝費,販売手数料,運搬費が認められる(ただし,業務委託費については,被告主張の6分の1の額の控除を認める。)。 そして,変動費の合計額は,別紙認定損害額記載の変動費合計欄のとおり,●(省略)●円であるから,これを売上●(省略)●円から控除すると,限界利益は,別紙認定損害額記載の限界利益欄のとおり,●(省略)●円となる。 なお,原告は,限界利益の算定に関し,①被告の平成19年8月決算期から平成24年8月決算期までの各貸借対照表,損益計算書及び附属明細書,②材料費,電力料,ガス,水道費及び運搬費に関する文書について,文書提出命令を申し立てる(当庁平成25年(モ)第917号,同年(モ)第 4年8月決算期までの各貸借対照表,損益計算書及び附属明細書,②材料費,電力料,ガス,水道費及び運搬費に関する文書について,文書提出命令を申し立てる(当庁平成25年(モ)第917号,同年(モ)第1186号)。しかしながら,①については,被告は準備書面の別紙として当該文書を提出済みであり,②については,電力料,ガス,水道費及び運搬費の額について当事者間に争いがなく,材料費もその余の証拠で認定が可能である。したがって,文書提出命令の申立ては,証拠調べの必要性がないから却下する。 (4) 寄与率についてア寄与率検討につき前提となる事情は以下のとおりである。 (ア) 被告製品の手振れ補正と本件特許発明 被告製品の手振れ補正は,レンズシフト方式によるものである(手振れ補正には他に撮影素子シフト方式があるが,この方式では手振れ補正機構がカメラ本体にある。)。その制御の概要は,①角速度センサ(ジャイロセンサ)により角速度を検出して角変位を取得し,②シフトレンズ群の目標位置を決定し,③位置検出センサによりシフトレンズ群の現在位置を取得し,④シフトレンズ群の目標位置と現在位置の差分がゼロになるようにボイスコイルモータを駆動制御するというものである。被告製品の超音波モータは,フォーカシングレンズ群を駆動制御させるためのものであり,手振れ補正の制御とは無関係である(以上につき乙137)。 本件特許発明は,超音波モータと励振された振動検出素子を用いて振動を検出する振動検出器とを備えた装置において,超音波モータの周波数制御範囲を前記振動検出素子の1次の共振の半値幅帯域と2次の共振の半値幅帯域との間に設定する(本件第2特許発明),あるいは,振動検出素子の共振の半値幅帯域と前記超音波モータの周波数制 モータの周波数制御範囲を前記振動検出素子の1次の共振の半値幅帯域と2次の共振の半値幅帯域との間に設定する(本件第2特許発明),あるいは,振動検出素子の共振の半値幅帯域と前記超音波モータの周波数制御範囲とを別の帯域に設定(本件第3特許発明)するという構成を採用することによって,超音波モータの振動によって振動検出素子が共振することを防いで正確な振動検出が可能になるという効果をもたらすものである(本件明細書【0027】参照)。 このような本件特許発明の効果に照らすと,被告製品は,その手振れ補正を機能させる前提として,角速度センサ(ジャイロセンサ)による角速度の検出を妨げないように,本件特許発明の構成を採用したものと評価できる。 (イ) 被告製品のカタログ記載等被告のレンズカタログ(平成24年8月現在のもの〔甲106〕。以下,被告のレンズカタログは原則として同月現在のものを指す。)では, 被告製品は,被告の一眼レフカメラ用レンズのうち,「DCレンズ」シリーズの製品である。被告のレンズカタログでは,「DCレンズ」は,「APS-Cサイズデジタル一眼レフ専用高性能レンズ」であり,「イメージサークルをAPS-Cサイズ相当の撮像素子に合わせて設計した,デジタル一眼レフ専用レンズです。…デジタルに最適な光学性能を実現。レンズのパワー配置やコーティング設計など,永年にわたる一眼レフカメラ用交換レンズの開発で蓄積してきた技術やノウハウを融合した,高性能レンズシリーズです。イメージサークルを小径化することで,レンズの小型・軽量化も達成,撮影時のフットワークの良さにも大きく貢献しています。」と記載されている。そして,①別紙被告製品目録記載1の製品(18-125mm F3.8-5.6 DCOSHSM)は,「 小型・軽量化も達成,撮影時のフットワークの良さにも大きく貢献しています。」と記載されている。そして,①別紙被告製品目録記載1の製品(18-125mm F3.8-5.6 DCOSHSM)は,「シグマ独自の手ブレ補正OS(OpticalStabilizer)機構搭載の,コンパクトなデジタル一眼レフカメラ専用高倍率ズームレンズ。約4段分の手ブレ軽減効果を発揮します。最短撮影距離35cm,最大撮影倍率1:3.8の高倍率ズームは,風景やスナップ,接写などさまざまなシーンに対応します。SLD(特殊低分散)ガラス,非球面レンズの採用により諸収差を補正,ズーム全域で優れた描写性能を発揮。HSM搭載により,AFスピードの高速化と静粛性を実現しています。」,②別紙被告製品目録記載2の製品(18-200mm F3.5-6.3 DCOSHSM )は,「独自の手ブレ補正OS (OpticalStabilizer)機構を搭載した,デジタル専用高倍率ズームレンズ。室内や夕景の撮影,望遠側での撮影で生じやすい手ブレを気にすることなく撮影が楽しめます。SLD(特殊低分散)ガラス,非球面レンズの採用により,ズーム全域で高画質。スーパーマルチレイヤーコートを採用し,フレア・ゴーストの発生を軽減しました。最短撮影距離はズーム全域で45cm,最大撮影倍率は1:3.9。インナーフォーカスの採用で,遮光効率にすぐれた花形フードの装着が可能,円偏光フィルターの使用 も容易です。」(ただし,平成22年12月現在のカタログ〔甲104〕の記載である。),③別紙被告製品目録記載3の製品(18-250mmF3.5-6.3 DCOSHSM)は,「手持ちで望遠撮影が楽しめる,デジタル専用13.8倍高倍率ズームレンズ。…独自の手ブレ補正OS(OpticalSta 録記載3の製品(18-250mmF3.5-6.3 DCOSHSM)は,「手持ちで望遠撮影が楽しめる,デジタル専用13.8倍高倍率ズームレンズ。…独自の手ブレ補正OS(OpticalStabilizer)機構を搭載。約4段分の手ブレ補正効果を発揮します。最短撮影距離はズーム全域で45cm,最大撮影倍率は1:3.4を達成,近接撮影にも威力を発揮します。SLD(特殊低分散)ガラスと非球面レンズを採用し,全撮影距離で高画質を実現。フレア・ゴーストの発生を軽減するスーパーマルチレイヤーコートを採用し,高い描写力を実現します。」,④別紙被告製品目録記載4の製品(17-70mm F2.8-4 DCMACROOSHSM)は,「手ブレ補正OS機構を搭載し,開放F値2.8(17mm側)を実現した「寄れる」大口径標準ズームレンズ。使用頻度の高い画角をカバーし,スナップ,ポートレート,マクロ等,様々なシーンに対応します。近接能力に優れ,被写体に約4.7cmまで近づくことが可能です。ELD(特殊低分散)ガラスと非球面レンズを採用,諸収差を良好に補正し,ズーム全域での高画質を実現。スーパーマルチレイヤーコートの採用により,フレア・ゴーストの発生を軽減。HSM搭載によりAFスピードの高速化と静粛性を実現します。」,⑤別紙被告製品目録記載5の製品(17-50mm F2.8 EXDCOSHSM)は,「広角17mmをカバーする,手ブレ補正OS機構搭載の大口径標準ズームレンズ。約4段分の手ブレ補正効果を発揮し,全長91.8mmのコンパクトサイズを実現。携帯性に優れ,旅先などで機動力を発揮します。蛍石と同等の性能をもつFLD(超低分散)ガラス2枚と非球面レンズ3枚を採用し,諸収差を良好に補正。フレア・ゴーストの発生を軽減するスーパーマルチレイヤーコ 性に優れ,旅先などで機動力を発揮します。蛍石と同等の性能をもつFLD(超低分散)ガラス2枚と非球面レンズ3枚を採用し,諸収差を良好に補正。フレア・ゴーストの発生を軽減するスーパーマルチレイヤーコート採用,AFスピードの高速化と静粛性を実現するHSM搭載。周辺光量も豊富で開放からシャープでコンストラクトの高い描写を 実現しています。」,⑥別紙被告製品目録記載6の製品(18-50mmF2.8-4.5 DCOSHSM)は,「室内や夕景など,光量が足りない場面でも手持ち撮影が可能な,手ブレ補正OS(OpticalStabilizer)機構搭載のデジタル専用標準ズームレンズ。広角18mm側でF2.8の大口径を実現。SLD(特殊低分散)ガラスと非球面レンズの採用で諸収差を良好に補正。スーパーマルチレイヤーコートの採用で,フレア・ゴーストの発生を軽減,ズーム全域での高画質を実現しています。インナーフォーカス,インナーズームの採用により,良好なホールディング性を実現。 AFスピードの高速化と静粛性を実現するHSMを搭載しています。」,⑦別紙被告製品目録記載7の製品(50-200mm F4-5.6 DCOSHSM)は,「独自の手ブレ補正OS(OpticalStabilizer)機構を搭載。最大径74. 6mm,全長102.2mmのコンパクト化に成功し,望遠の手持ち撮影も容易に行えます。優れた携行性は,旅先での撮影にも機動力を発揮します。SLD(特殊低分散)ガラスとインナーフォーカスの採用によりズーム全域での高画質を実現。スーパーマルチレイヤーコートの採用により,フレア・ゴーストの発生を低減,全撮影距離でコンストラストの高い描写が可能に。AFスピードの高速化と静粛性を実現するHSMも搭載しています。」と記載されている。また,被告製 ヤーコートの採用により,フレア・ゴーストの発生を低減,全撮影距離でコンストラストの高い描写が可能に。AFスピードの高速化と静粛性を実現するHSMも搭載しています。」と記載されている。また,被告製品に関するプレスリリース(甲109~116)や広告(甲124~131)も,上記各記載とおおむね同旨の内容となっている。 (ウ) 手振れ補正機能搭載の推移等「デジタルカメラマガジン(2004年9月号)」(甲92)では,「『手ぶれ補正』は次世代カメラの必須条件」との表題の記事において,「ただ,デジタル一眼レフカメラに関していえば,レンズ交換できることがその最大の魅力であるのに,手ぶれ補正機構が搭載されているレンズは圧倒的に少ない。手ぶれ補正の重要性を実感し,ユーザーのレンズ システムをすべてそれに対応させようにも,選択肢が限られていて思うように手が出せないといった現状だ。今後は望遠ズームレンズだけでなく,すべての焦点域のズームレンズや単焦点レンズでの手ぶれ補正対応がのぞまれる。」と記載されている。「交換レンズ2008」(甲94)では,「一眼レフシステムとしては,キヤノンが1995年9月に発売した望遠ズームの『キヤノンEF75~300ミリF4-5.6ISUSM』が手ブレ補正機能を搭載した世界初のレンズで,その機能と威力は画期的なものだった。その後ニコンが2000年に『AFVRニッコールED80~400ミリF4.5-5.6D』を発売し,シグマも2003年に『シグマAFアポ80~400ミリF4.5-5.6EXOS』と手ブレ補正機能搭載レンズを発売するが,長い間,手ブレ補正はキヤノンEOSの独壇場だった。」「キヤノンからは現在,手ブレ補正機能搭載のISレンズが19本,ニコンからは手ブレ補正機能搭載のVRレンズが15本 正機能搭載レンズを発売するが,長い間,手ブレ補正はキヤノンEOSの独壇場だった。」「キヤノンからは現在,手ブレ補正機能搭載のISレンズが19本,ニコンからは手ブレ補正機能搭載のVRレンズが15本,シグマからは手ブレ補正機能搭載のOSレンズが3本,タムロンからも手ブレ補正機能搭載のVCレンズが1本発売されている。これらのレンズを使うことで手持ち撮影の領域は確実に広がり,多くの撮影シーンで手ブレの目立たない撮影が可能となる。」と記載されている。 原告の平成24年10月24日付けのカタログ(甲81)では,手振れ補正機構が搭載されたレンズは23製品(全製品は64製品)である。 被告のカタログ(甲106)では,手振れ補正機構が搭載されたレンズは18製品(全製品は42製品〔ミラーレスカメラ専用レンズを除く。〕)である。 インターネットサイト(スタジオグラフィックス)の平成20年10月8日付け記事(甲117)は,被告の従業員をインタビューしたもので,被告従業員は,「全く同じ性能のレンズで,手ぶれ補正機構を付けたものと付けないものを作ったと仮定した場合,手振れ補正をするため にレンズが偏芯することによる若干の性能低下があります。ただ,レンズ性能が低下するということではなく,手ぶれ補正するために移動した結果として,画質にとっては最適なレンズ部分を使わない場合があるからです。」「レンズを偏芯させることによる画質低下に比べれば,手振れによる画質低下の方が数倍大きいため,光学系の一部を偏芯させても,その偏芯による画質への影響は少なくなっています。また手ぶれ補正機能付きのレンズ製品は,光学性能を従来レンズと比べ全体的に底上げしておりますので,お客様に安心して手振れ補正レンズをご使用いただけるよう開発しております。」と回 少なくなっています。また手ぶれ補正機能付きのレンズ製品は,光学性能を従来レンズと比べ全体的に底上げしておりますので,お客様に安心して手振れ補正レンズをご使用いただけるよう開発しております。」と回答し,「Q:例えばブツ撮りのときも,手ぶれ補正機能はオフにして撮った方が(理屈上は)良い画質になるわけですね。」との質問に対しては,「はい,特に三脚に付けてカメラを固定して撮影する場合は,手ぶれ補正はオフにすることをお勧めします。 また,1000分の1秒以上などの高速シャッターが使える場合もオフにした方が良いですね。ただ,これは,別の理由からですが…」「三脚に固定しても厳密にはぶれますし,高速シャッターでも手ぶれは起こりますが,手ぶれ補正は万能ではなく,“手に持って撮影したときのぶれに対して”でプログラムされていますので,逆効果になることもあり得るからです。」と回答している。 イ以上に基づいて,寄与率について検討する。 確かに,近年において手振れ補正機能の搭載が要望され,手振れ補正機能を搭載した交換レンズが増加していることに照らせば,手振れ補正機能の搭載は需要者に対して訴求力があるものといえ,被告も被告製品の手振れ補正機能をうたっている。しかしながら,交換レンズにおいては,あくまでもレンズの光学性能が主要な性能であり,これは被告のカタログの記載をみても明らかである。また,手振れ補正機能は,撮影条件(例えば三脚使用の場合やシャッタースピードを高速に設定できる場合)によっては 不要である場合もあるし,いまだ手振れ補正機能を搭載しない交換レンズが販売されていることに照らしても,交換レンズにおいて必須の機能であるとまではいい難い。 また,被告製品は,その手振れ補正を機能させる前提として,角速度センサ(ジャイ 載しない交換レンズが販売されていることに照らしても,交換レンズにおいて必須の機能であるとまではいい難い。 また,被告製品は,その手振れ補正を機能させる前提として,角速度センサ(ジャイロセンサ)による角速度の検出を妨げないように,本件特許発明の構成を採用したものである。本件特許発明は,超音波モータと角速度センサを備える装置において,手振れ補正を機能させる前提として重要な発明ではあるが,それだけでは手振れ補正機能を実現できるものではなく,被告製品をみても手振れ補正機能の実現には,前記ア(ア)のとおり,様々な制御が必要である。 以上の事情を考慮すると,本件特許発明の被告製品に対する寄与としては15%を認めるのが相当である。 これに対し,被告は,被告製品は,超音波モータの設置部材とダブルT型の素子を含むジャイロセンサの設置部材を異なるものとするとともに,超音波モータ自体,外部に振動を伝播させない構成を採用しているのであり,現に被告製品においては,超音波モータの振動はダブルT型の素子を含むジャイロセンサには伝達されていないなどと主張する。 被告の主張は,乙64号証の実験結果等を根拠とするが,これに反する甲121号証の実験結果もあり,超音波モータの振動が設置部材を異にすること等によって,直ちに伝播しないものとなるとは認め難いから,被告の主張は採用できない。 ウ以上のとおり,寄与率は15%で相当であるから,これを被告の限界利益である●(省略)●円に乗じると,別紙認定損害額記載のとおり,15億1804万4322円(1円未満切捨て)となる。 したがって,特許法102条2項の推定による損害額は15億1804万4322円である。そして,これを対象期間の売上に応じて計算すると, 万4322円(1円未満切捨て)となる。 したがって,特許法102条2項の推定による損害額は15億1804万4322円である。そして,これを対象期間の売上に応じて計算すると, ①被告製品の販売開始から平成23年4月30日までの損害額は10億1972万6293円,②同年5月1日から平成24年10月31日までの損害額は4億9831万8029円である。 なお,以上の損害については念のため,本件特許に係る特許権の侵害による損害についても併せて判断したものであるが,損害額との関係では,2つの特許に係る特許権侵害のいずれからも同一,同内容の額の損害が発生し,それらは重複するものであって,二重に請求できるものではない。 (5) その他についてア間接侵害について被告は,被告製品について,デジタル一眼レフカメラ用レンズ,すなわち交換レンズであるから,本件特許発明の「装置」がカメラシステムに対応するとしても,特許法101条1項1号の「その物の生産にのみ用いる物」に相当するなどと主張する。 しかしながら,被告の主張は,損害論としては趣旨不明であるというほかなく,侵害論としても,原告は間接侵害を主張していないのであるから失当であり,理由がない。 イ市場における競合について(ア) まず,被告製品のうち,ニコン向け対象製品(ニコンカメラに装着できるレンズ)については,原告製品と被告製品が市場において競合することに当事者間に争いがない。そうすると,原告には,ニコン向け対象製品である被告製品の販売がなかったならば利益が得られたであろう事情が認められる。 他方で,被告は,ニコン以外向け対象製品(ニコンカメラ以外のカメラに装着できるレンズ)の市場において,原告には参 被告製品の販売がなかったならば利益が得られたであろう事情が認められる。 他方で,被告は,ニコン以外向け対象製品(ニコンカメラ以外のカメラに装着できるレンズ)の市場において,原告には参入できない事情があるなどとして,原告製品と被告製品が競合しないと主張する。 確かに,原告は,営業政策上,他社(例えばキヤノン)のカメラに装 着できる交換レンズを製造・販売しないものと解される。しかしながら,一眼レフカメラは,交換レンズを装着しないと使用できないものであるから,一眼レフカメラと交換レンズを併せた性能等が一眼レフカメラのみならず交換レンズの購入動機になるものと解される(例えば,特定の交換レンズの使用を目的として,これを装着できる一眼レフカメラを選択することがあり得る。)。そうすると,交換レンズを中心として考えるときには,原告製品と被告製品は並列的に選択の対象となるものであり,お互いに装着できる一眼レフカメラを異にするとしても,交換レンズは市場において競合すると解するのが相当である。 (イ) 被告は,被告製品の販売がなかったと仮定した場合の原告の逸失利益について,少なくとも平成21年6月以降は,被告製品の数量のほぼ半分は,原告でなくタムロンが販売していたと考えるべきであり,そのタムロンが販売したであろう数量については原告の逸失利益でなく実施料相当額として損害額の算定がされるべきであるなどと主張する。 そして,被告は,平成23年2月のBCNランキング(乙70)では,原告製品である「AF-SDXNIKKOR 18-200mmF3.5-5.6GEDVRII」と同じ高変倍ズームレンズのカテゴリに属するタムロンの「AF18-270mmF/3.5‐6.3 DiIIVCPZD ニコン NIKKOR 18-200mmF3.5-5.6GEDVRII」と同じ高変倍ズームレンズのカテゴリに属するタムロンの「AF18-270mmF/3.5‐6.3 DiIIVCPZD ニコン用」のシェアは,それぞれ3.7%及び4.7%であることを根拠として主張する。 しかしながら,上記のランキングは,平成23年2月の一時点を捉えたものにすぎないし,同月のBCNランキングでは,ニコンマウントの交換レンズのランキングにおいて,10位以内は,上記のタムロン製品を除くと原告の製品が占めており,10位の製品のシェアは2.5%である(なお,原告の推定によれば,原告のニコンマウントの交換レンズのシェアは約90%である〔甲120〕。)。 このように,被告の根拠は,推定覆滅事情として十分であるとはいえ ないし,その他タムロン製品の販売状況に照らして推定が覆滅する事情も見当たらないから,被告の主張は理由がない。 ウタイの洪水による原告工場の被災の影響について被告は,原告が,仮に,被告製品の販売台数に対応するに十分な製造能力を有していたとしても,洪水は偶発的なものであるから,タイ工場において洪水により操業ができなかった期間中は,原告は,原告製品を製造販売することができなかったとするべきであるなどと主張する。 しかしながら,原告タイ工場の操業停止期間があったとしても,それだけでは推定覆滅事情として十分であるとはいえないし,その他タイの洪水を原因として原告製品に欠品が生じたなどの事情は認められないから,被告の主張は理由がない。 (6) 特許法102条3項の適用についてア原告は,特許法102条2項が適用されたとしても,寄与率により否定された部分について,予備的に同条3項の いから,被告の主張は理由がない。 (6) 特許法102条3項の適用についてア原告は,特許法102条2項が適用されたとしても,寄与率により否定された部分について,予備的に同条3項の適用を主張する。 しかしながら,特許法102条2項は,被告の得た利益の額によって原告の損害額を推定するのに対し,同条3項は特許発明の実施に対して受けるべき金銭の額を損害とするものであるから,それぞれが前提を異にする別個の損害算定方法というべきであり,本件の事情の下で,同条2項の請求について寄与率により損害額が否定されたからといって,予備的に同条3項の適用を主張できるものとはいえない。 そうすると,特許法102条3項の適用を否定するのが相当であるから,原告の主張は理由がない。 イまた,原告は,特許法102条2項による損害算定に比較して同条3項による損害算定の方が多額になる場合にも,予備的に同項の適用を主張する。 しかしながら,本件特許発明の内容や甲97号証(実施料率〔第5 版〕)を踏まえて検討しても,同条項によって,上記(4)に認定した損害額15億1804万4322円を超えるような損害額は認められないから,原告の主張は理由がない。 (7) まとめ以上のとおり,特許法102条2項の推定による損害額は15億1804万4322円(①被告製品の販売開始から平成23年4月30日までの損害額10億1972万6293円,②同年5月1日から平成24年10月31日までの損害額4億9831万8029円)である。 また,本件事案の内容,経過等に鑑みると,被告が負担すべき弁護士費用・弁理士費用相当額としては5000万円が相当である。 そうすると,原告の損害額は15億6804万432 である。 また,本件事案の内容,経過等に鑑みると,被告が負担すべき弁護士費用・弁理士費用相当額としては5000万円が相当である。 そうすると,原告の損害額は15億6804万4322円である。 原告の請求は,不法行為に基づく損害賠償として15億6804万4322円及び内金10億1972万6293円に対する不法行為の後である平成23年5月1日から,内金5億4831万8029円に対する不法行為の後である平成24年11月1日から各支払済みまで民法所定の年5分の割合による遅延損害金を求める限度で理由がある。 第5 結論よって,主文のとおり判決する。 東京地方裁判所民事第29部 裁判長裁判官大須賀滋 裁判官小川雅敏 裁判官西村康夫

▼ クリックして全文を表示

🔍 類似判例を検索𝕏 でシェア← 一覧に戻る