- 1 -主文本件控訴を棄却する。 控訴費用は控訴人の負担とする。 事実 及び理由第1控訴の趣旨 原判決を取り消す。 被控訴人が控訴人に対して平成13年12月25日付けでした原判決別表1記載の源泉徴収に係る所得税の各納税告知処分及び各不納付加算税賦課決定処分を取り消す。 第2事案の概要,,本件事案の概要は次のとおり控訴人の当審における主張を付加するほかは「」「」,原判決の 事実及び理由 中第二事案の概要に記載のとおりであるからこれを引用する。 利子等該当性について( )次のとおり,本件各履行引受契約においては,A金員の交付を受けた控 ,,訴人はこれを本件各社債等発行会社に対して返還する義務を負っておらずまた,後記( )のように,A金員は委任事務処理費用等にすぎないから,本 件各履行引受契約には消費寄託契約としての要素はない。 したがって,本件各社債等発行会社が本件各履行引受契約に基づいて控訴人に対して交付したA金員を預金と解する余地はなく,B金員の額とA金員の額との差額である本件金員をもって「預金の利子」と解する余地はない。 ア控訴人は本件各社債等発行会社に対するB金員の返還に代えて本件各履行引受契約の定める原債務の支払義務を負っているのではないから,原債務の支払債務を本件各社債等発行会社に対するA金員の返還義務に代わるものであると評価することはできない。 イA金員は,具体的な使途が完全に特定されて預けられ,その払戻しを求- 2 -めることができず,原債務の債権者に対してのみ支払うとされ,本件各社債等発行会社に対する払戻しが定められていないのであるから,預金ではない。 ウ金銭消費寄託は,金銭の(価値の)保管それ自体が主たる目的であるものに限定されるべきであり,保管が契約の され,本件各社債等発行会社に対する払戻しが定められていないのであるから,預金ではない。 ウ金銭消費寄託は,金銭の(価値の)保管それ自体が主たる目的であるものに限定されるべきであり,保管が契約の直接の目的ではなく,委任契約等の効力の一つとしてその中に包摂されるにすぎない場合には,委任契約等の効力として処理されるべきである。本件各履行引受契約は,原債務の支払事務の委託のみを目的とした委任契約であり,委任事務処理費用等の保管に伴って派生的に金銭の保管が生じているにすぎず,当事者としては委任事務の履行という本来の契約目的を実現しようという意思しか有していないから,本件各履行引受契約は消費寄託契約の要素を有していない。 エ本件各履行引受契約は,普通預金,当座預金及び定期預金等の典型的な預金契約とは外形的にも実質的にもその内容は大きく異なっており,A金員を預金であると解する余地はない。本件各履行引受契約においては,金銭の保管が主たる目的ではなく,控訴人にA金員を交付することが義務付けられていて,第三者に対する支払のみが予定され,本件各社債等発行会社に対する払戻しが予定されておらず,印鑑の届出や預金通帳・証書の発行の手続もない。本件各社債等発行会社は,その会計処理においてA金員を資産の部に預金として計上していない。 オ控訴人のA金員についての会計処理は,本件各履行引受契約が消費寄託契約としての要素を有することを裏付けるものではない。控訴人が本件金員を「定期預金利息」として会計処理したのは,委任事務を処理するための「預り金」として会計処理しようとしたところ,当時の長期信用銀行法により自由に勘定科目を設定することができなかったため,適切な勘定科目により処理することができなかったことによるものであるし(長期信用- 3 -,,,),銀 たところ,当時の長期信用銀行法により自由に勘定科目を設定することができなかったため,適切な勘定科目により処理することができなかったことによるものであるし(長期信用- 3 -,,,),銀行法18条同法施行規則18条銀行法20条同法施行規則19条これに加えて当時の監督官庁である大蔵省銀行局からの強い行政指導もあったのである。 ( )次のとおり,本件各履行引受契約は,当事者の目的及び合意内容に照ら せば,その法的性質は,本件各社債等発行会社に代わって,その原債務の支払の履行を引き受けることを目的とする委任契約であり,A金員は,委任契約に基づいて交付された委任事務処理費用等である。 ア本件各社債等発行会社は,A金員を委任事務処理費用等として交付したのであり,預金として交付する意思はなかった。本件各履行引受契約の内容及び控訴人と本件各社債等発行会社の意図と認識に照らして,A金員を預金と解する余地はない。本件各履行引受契約の目的は,本件各社債等発行会社が,A金員を支払うことにより,原債務をオフバランス化して当該債務を繰り上げて償還したものと取り扱い,原債務の償還損を計上した上で,その貸借対照表の負債の部からその原債務の帳簿価格を消去することである。 イ本件各履行引受契約においては,委任事務処理費用であるA金員が合理的に運用されることを前提に,B金員についてA金員の交付時点の現在価値を算定し,控訴人に対する事務手数料に報酬額を加えた上でA金員の額を算定したのであり,控訴人は,善管注意義務を尽くしてA金員を運用しさえすればB金員を賄うことができるのであって,受任者には特別な経済的負担はかかっていない。したがって,A金員の額が事務処理費用であるB金員の額に満たないことはA金員が委任事務処理費用等に該当しないことを基礎付けるものでは ができるのであって,受任者には特別な経済的負担はかかっていない。したがって,A金員の額が事務処理費用であるB金員の額に満たないことはA金員が委任事務処理費用等に該当しないことを基礎付けるものではない。 ウA金員が委任事務処理費用等に該当する場合でもその運用は禁じられるものではなく,控訴人がA金員について自己の資金と一緒に運用,管理を行っていたとしても,A金員を受任者として善管注意義務をもって保管し- 4 -ていたと評価することができるのであり,A金員が委任事務処理費用等ではないと評価することはできない。 ( )本件各履行引受契約に消費寄託契約の要素が認められたとしても,次の とおり,本件金員を利子であると評価する余地はない。 ア本件各履行引受契約においては,本件金員を利子として支払う旨の合意はされてない。 イ本件金員は,割引料としての性質を有するもので,償還差益に相当するものであり,本件各社債等発行会社は,本件金員について償還差益として法人税を納付済みである。本件各履行引受契約におけるA金員の交付に関し,国税当局も「税務上も債務者は債権者との関係において現実に債務,の履行が行われていないことから法的に原債務は消滅していないものの,債務履行引受者との関係においては,実質的に債務履行引受者が債務の肩代わりをしたのと同様であると考えられることからこの経済的機能を重視して,原則的に契約実行日に債務の一括弁済が行われたものと同視してこれに伴う償還差損益の計上を行うこと」を認めているのである(甲13,18。 )ウ本件各履行引受契約においては,納税義務者である本件各社債等発行会社は,A金員を委任事務処理費用等として支払った時点において,A金員を「償還費用」とし,本件金員を「償還差益」として取り扱うという,一般に公正妥当と認められ ては,納税義務者である本件各社債等発行会社は,A金員を委任事務処理費用等として支払った時点において,A金員を「償還費用」とし,本件金員を「償還差益」として取り扱うという,一般に公正妥当と認められた会計処理を行っているのである。したがって,本件金員の支払は,その経済的機能に照らしても,本件各社債等発行会社に対する利子の支払であると評価することはできない。 ( )源泉徴収義務が課されるべき「利子」は,源泉徴収制度の趣旨にかんが み,大量性,定量性を有するものに限定解釈されるべきである。 国内における支払該当性について( )銀行による振込送金による支払が行われた場合には,その支払地は,当 - 5 -該振込送金事務を担当した支店の所在地を基準とすべきであり,海外の支店における事務として行われたのであれば,海外で支払が行われたものと解すべきである。 ( )控訴人のケイマン支店は,物的施設及び人員は現地に存在しないが,同 支店における主たる事務内容は送受金のための口座管理であり,銀行法上の支店としての営業の実態・機能を備えていた。 国税通則法67条1項ただし書の適用の可否について( )本件各履行引受契約に基づいて交付されたA金員が預金であると解する としても,国税当局は,本件各社債等発行会社に対しては本件金員を原債務の償還に伴う「償還差益」として処理することを認めているのであるから,控訴人が,本件金員を利子として処理することは,事実上不可能であった。 ( )国外支店において勘定を管理する金銭の支払については,支払指図の作 成等単純な事務作業を国内の事務担当者に行わせていたとしても,国外払として取り扱うという税実務の慣例があったから,控訴人が当該支払を国内払と認識することは不可能であった。 第3当裁判所の判断 当裁 単純な事務作業を国内の事務担当者に行わせていたとしても,国外払として取り扱うという税実務の慣例があったから,控訴人が当該支払を国内払と認識することは不可能であった。 第3当裁判所の判断 当裁判所も,控訴人の本件請求は理由がないものと判断する。その理由は,次のとおり補正し,次項以下のとおり控訴人の当審における主張に対する判断を付加するほかは,原判決の「事実及び理由」中「第三争点に対する判断」に記載のとおりであるから,これを引用する。 「」「」。 ( )原判決25頁20行目の金融開発室を金融商品開発室に改める ( )原判決31頁1行目の「それ」から3行目の「返還するという」までを 「それを一定期間自由に運用して,A金員とこれに対する各支払日までの期間に応じた利息に相当する本件金員を加えたB金員を用意し,約定に係る相当な期間経過後の各支払日に原債務の支払をすることにより,寄託に係る元利金としてのB金員の返還を了し,A金員に関する一切の債務を消滅させる- 6 -という」に改め,6行目の「A金員を」の次に「約定に係る各支払日までの期間」を,7行目の「A金員」の前に「上記期間経過後の各支払日に」をそれぞれ加える。 利子等該当性について( )控訴人の主張は,要するに,本件各履行引受契約は,本件各社債等発行会 社に代わって,その原債務の支払の履行を引き受けることを目的とする委任契約であって,消費寄託契約としての性質を有せず,A金員は,委任契約に基づいて交付された委任事務処理費用等であるというのである。しかし,その主張は,いずれも採用することができない。その理由として,以下の点を付加する。 ( )A金員の交付・保管に関する契約当事者の認識について ア証拠(甲14)及び弁論の全趣旨によれば,控訴人がデット・ は,いずれも採用することができない。その理由として,以下の点を付加する。 ( )A金員の交付・保管に関する契約当事者の認識について ア証拠(甲14)及び弁論の全趣旨によれば,控訴人がデット・アサンプション取引を開始したのは昭和62年ころであること,当時,デット・アサンプション取引により銀行が受け取る金銭をどのように会計処理するかについて明確な指針となるものはなかったこと,そこで,控訴人が監督官庁である大蔵省に相談し,その結果,デット・アサンプション取引により「」()控訴人が預入れを受けた金銭を預金として処理するスキーム枠組みが組成されたこと,当時,大蔵省は,銀行以外の会社がデット・アサンプション取引を行うことによって支払事務の履行等をめぐりトラブルが生ずることを懸念したものと考えられること,その後,控訴人においても,デット・アサンプション取引により預かった金銭を預金として会計処理し,本件各履行引受契約に関しても,A金員を定期預金,本件金員を支払利息として会計処理してきたことを認めることができる。 上記事実によれば,控訴人において,デット・アサンプション取引を開始した時から,A金員を定期預金,本件金員を支払利息とする認識があったことを否定することはできないものといわなければならない。 - 7 -イ次に,本件各履行引受契約の相手方17社の認識について見るに,本件各履行引受契約の一覧は,原判決別表3に記載のとおりである。その各契(。 「」。),約書甲4の1~37以下原契約書ということがあるにおいてA金員の交付についてどのように規定されているかを見ると,契約の相手方17社について,次のとおり分類される(以下,会社名は「株式会社」を省略する。 。)①「預金の預入れ」としているもの。沖縄電力(甲4 交付についてどのように規定されているかを見ると,契約の相手方17社について,次のとおり分類される(以下,会社名は「株式会社」を省略する。 。)①「預金の預入れ」としているもの。沖縄電力(甲4の2,大日本イ)ンキ化学工業(甲4の15,中国電力(甲4の18・19,マルナカ))(甲4の34・35)②預託金預託金の預入れとしているもの石川島播磨重工業甲「」,「」。 (4の1,東北電力(甲4の22,三菱地所(甲4の36・37)))「」「」「」③英文の契約書のを支払資金の交付又は本件支払資金Depositと訳しているもの(なお「」には,寄託,預託,預入れ,預金,depositなどの意味がある。東京電力(甲4の6~10,東邦瓦斯(甲4の。))21)④「支払資金の交付」としているもの。九州電力(甲4の3~5,関)西電力(甲4の11~13,四国電力(甲4の14,中部電力(甲4))の16・17,阪急電鉄(甲4の23,北海道電力(甲4の24,)))北陸電力(甲4の25・26。なお,同27~33は「債務履行引受金の支払」との表題になっているが,規定の内容は同25・26と同じである)。 ⑤「資金の交付」としているもの。東海旅客鉄道(甲4の20)ウところで,原契約書において「支払資金の交付」とか「資金の交付」と規定しているからといって,A金員について相手方に預金の認識がないことを意味しない。 本件各変更契約の契約書(甲5の1~34・36・37。以下「変更契- 8 -約書」ということがある)を見ると,変更契約書には,明文で「長銀ロ。 ンドン支店に預け入れられている預金を,1999年(平成11年)1月27日付をもって長銀ケイマン支店に移管することに合意し」と規定しているもの とがある)を見ると,変更契約書には,明文で「長銀ロ。 ンドン支店に預け入れられている預金を,1999年(平成11年)1月27日付をもって長銀ケイマン支店に移管することに合意し」と規定しているものが次のとおり多数ある。 石川島播磨重工業(甲5の1,沖縄電力(甲5の2,大日本インキ化))学工業(甲5の15,中国電力(甲5の18・19,東海旅客鉄道(甲))5の20,北陸電力(甲5の25~33,マルナカ(甲5の34,三)))菱地所(甲5の36・37)また,明文で「預金の移管」と規定していない変更契約書においては,「本件支払資金の残額の移管(関西電力。甲5の11~13)と表現す」るか,原契約書の「長銀ロンドン支店」を「長銀ケイマン支店」に読み替えて原契約書を適用する旨規定している。 エその上,本件各履行引受契約に顕著な共通点は,各契約書(原契約書)の末尾に本件各社債等発行会社(以下「発行会社」ということがある)。 が支払うべき原債務の支払日(それはA金員の交付日から相当期間経過後に到来する)及び当該支払日に支払うべき元利金の金額(以下「当該元。 利金」ということがある)が具体的に明記され,控訴人はA金員を原資。 として発行会社に代わり発行会社のために当該元利金を期日どおり支払先に支払うものとされていること,及び控訴人が当該元利金を全額支払ったときはA金員に関する一切の債務が消滅するものと約定されていることである。 ,,,つまり控訴人が当該元利金を全額支払終わるまでは控訴人においてA金員及び各支払日に支払後の残額を発行会社のために預かっているものとされていることが原契約書及び変更契約書によって明らかである。 オ以上の諸点を総合すれば,本件各履行引受契約の相手方においても,A金員を原債務の支払という特定の目的のための定期 に預かっているものとされていることが原契約書及び変更契約書によって明らかである。 オ以上の諸点を総合すれば,本件各履行引受契約の相手方においても,A金員を原債務の支払という特定の目的のための定期払の預金とする認識が- 9 -あったものと認めるのが相当である。 カなお,本件各履行引受契約においては,控訴人が,A金員の預入れを受け,これを原資としてあらかじめ定められた各支払日に当該元利金を原債務の支払先に支払い,その全額の支払を完了することによって,A金員に関する控訴人の発行会社に対する一切の契約上の義務が消滅するものとされ,それまでの間,発行会社は,A金員又はその残額の「返還を請求できない(甲4の1・22「払戻しを請求せず(甲4の2・15・34・」),」 「返還を受けることができない(甲4の3・11・14・16・),」),「」(),「」23・24支払を請求せず甲4の18返還請求権を有さない(甲4の20「返還を請求せず(甲4の25)とか,A金員を「引き),」出すことはできない(甲4の6)とされている。 」これは,A金員の預入れが,あらかじめ定められた各支払日における原債務の当該元利金の支払を目的とし,その原資となるものであるという本件各履行引受契約の性質上,合意によって預金者である発行会社に課せられた制約であると解することができる。他方,控訴人は,このような約定の下に,各支払日までの期間,A金員を自由に運用して約定利息に相当する本件金員を上回る利殖を図り,A金員に本件金員を加えたB金員を発行会社の原債務の支払のために用意することができる。したがって,このような解約に関する制約を伴う預入れをもって,A金員の預入れが預金契約(消費寄託契約)の性質を有しないものと考えることはできない。 キ以上のとお の支払のために用意することができる。したがって,このような解約に関する制約を伴う預入れをもって,A金員の預入れが預金契約(消費寄託契約)の性質を有しないものと考えることはできない。 キ以上のとおり,本件各履行引受契約においては,控訴人が,A金員の預入れを受け,明示的に合意されている各支払日に一定金額の当該元利金(その合計がB金員)を支払先に送金し(原債務の支払,その全部の)支払が完了したとき,控訴人の預入先に対するA金員の返還義務が消滅するものであるから,消費寄託の側面を見れば,B金員の支払は,A金員の返還及び各支払日までの一定期間の約定利息としての本件金員の支- 10 -払義務の履行であるということができる。 そして,本件各社債等発行会社がいずれも我が国有数の企業であることに照らし,以上の点を各会社が認識していなかったものと考えることはできない。 ( )控訴人の見解について ア控訴人は,金銭消費寄託は,金銭の保管それ自体が主たる目的であるものに限定されるべきであり,本件各履行引受契約においては委任事務処理費用等の保管に伴って派生的に物や金銭の保管が生じているにすぎず,当事者としては,委任事務の履行という本来の契約目的を実現しようという意思しか有していないから,消費寄託契約の要素を有しているとはいえない旨主張する。 しかし,先に原判決を補正の上引用して説示のとおり,本件各履行引受契約は,控訴人が各支払日に本件各社債等発行会社の原債務の履行としてB金員を支払相手先に支払うという委任契約の性質を有するとともに,この委任契約の基盤になるものとして,銀行である控訴人が,A金員の寄託を受け,それを一定期間自由に運用して,A金員とこれに対する各支払日までの期間に応じた利息に相当する本件金員を加えたB金員を用意し,約定に係る相当な期 るものとして,銀行である控訴人が,A金員の寄託を受け,それを一定期間自由に運用して,A金員とこれに対する各支払日までの期間に応じた利息に相当する本件金員を加えたB金員を用意し,約定に係る相当な期間経過後の各支払日に原債務の支払をすることにより,寄託に係る元利金としてのB金員の返還を了し,A金員に関する一切の債務を消滅させるという金銭消費寄託の性質をも有するというべきであり,このように一つの契約に複合的な要素があることは何ら特異なことではない。 そして,本件各履行引受契約においては,本件各社債等発行会社は控訴人にA金員を預託()し,各支払日までの一定期間,控訴人が他のdeposit資金と共にA金員を自由に運用することができるということが,A金員の額を超えるB金員の支払を確実なものにする契約目的の根源なのであるか- 11 -ら,かなりまとまった額の金銭であるA金員の預託()及びその保deposit管という契約の要素が単なる派生的要素であるといえないことは明らかである。 イ控訴人は,本件各履行引受契約が,普通預金,当座預金及び定期預金等の典型的な預金契約とは外形的にも実質的にもその内容は大きく異なっているとして,A金員を預金であると解する余地はない旨主張する。 しかし,銀行法及び長期信用銀行法には,業務の範囲として「預金の受入れ」という以外に,預金について限定した規定はなく(なお,長期信用銀行法18条,同法施行規則18条,同規則別紙様式には「預金」,勘定に「その他の預金」がある,個人や企業の多様な活動に伴う経済需。)要に応ずるために,預金契約に様々な種類が生まれ,特約が生ずることはあり得ることである。したがって,典型的な預金契約と異なる約定が存在することをもって,A金員が預金でないということはできない。 ウ控訴人は,控 めに,預金契約に様々な種類が生まれ,特約が生ずることはあり得ることである。したがって,典型的な預金契約と異なる約定が存在することをもって,A金員が預金でないということはできない。 ウ控訴人は,控訴人が本件金員を「定期預金利息」として会計処理したのは,自由に勘定科目を設定することができなかったため,適切な勘定科目により処理することができなかったこと及び当時の監督官庁である大蔵省銀行局からの行政指導によるもので,本件各履行引受契約が消費寄託契約としての要素を有することを裏付けるものではない旨主張する。 しかし,控訴人がA金員を預金以外の預り金であると認識していたのであれば「その他負債」勘定の「その他の負債(長期信用銀行法18条,,」同法施行規則18条,同規則別紙様式)として処理することが可能であったというべきである。また,控訴人がA金員を預金でないと考えていたのであれば,なぜ本件各履行引受契約に係る契約書(原契約書及び変更契約書)に「預金「預託金「」等の用語を用いたのか,全く不可解で」」depositあるというほかない。 エ控訴人は,本件各社債等発行会社はA金員を委任事務処理費用等として- 12 -控訴人に交付したのであり,預金として交付する意思はなかった旨主張する。 しかし,①前記( )アに認定のとおり,控訴人においては,デット・ア サンプション取引の開始の際,その取引により控訴人が預入れを受けた金銭を「預金」として処理するスキーム(枠組み)が組成され,これによって本件各履行引受契約が締結されているものであること,②したがって,本件各履行引受契約の締結に至る過程で,その相手方である本件各社債等発行会社に対しても,控訴人のスキームは説明されていると考えるのが自然であること,③前記( )イないしエに認定のとおり,原契約書及 本件各履行引受契約の締結に至る過程で,その相手方である本件各社債等発行会社に対しても,控訴人のスキームは説明されていると考えるのが自然であること,③前記( )イないしエに認定のとおり,原契約書及び変更 契約書には,A金員について「預金「預託金「」等の用語が用い」」depositられている上,原契約書には,本件各社債等発行会社が支払うべき原債務の支払日及び当該支払日に支払うべき元利金の金額が具体的に明記され,控訴人はA金員を原資として発行会社に代わり発行会社のために当該元利金を期日どおり支払先に支払うものとされていること,④そして,控訴人が当該元利金の全額(B金員)を支払ったとき,A金員に関する一切の債務が消滅するものとされているが,A金員とB金員との差額である本件金員は,A金員の交付日から相当期間経過後に到来する各支払日までの控訴人によるA金員の自由な運用によって可能となるものであることが明らかである。 これらの諸点に照らせば,本件各社債等発行会社にA金員を預金として交付する意思がなかったものと認めることはできない。 オそのほか,控訴人は,A金員が委任事務処理費用等として控訴人に交付された旨の主張をする。 しかし,本件各履行引受契約が,委任契約の性質を有するとともに,金銭消費寄託の性質をも有することは前記のとおりであり,上記の点に関する控訴人の主張は,これと異なる見解に立つものであって,いずれも採用- 13 -することはできない。 カまた,控訴人は,本件各履行引受契約においては,本件金員を「利子」として支払う旨の合意はされてない旨主張する。 しかし,本件各履行引受契約には,本件各社債等発行会社がA金員を控訴人に預け入れ,控訴人が各支払日にB金員を各支払先に支払うことによってA金員と本件金員を本件各社債等発行会社に還元す い旨主張する。 しかし,本件各履行引受契約には,本件各社債等発行会社がA金員を控訴人に預け入れ,控訴人が各支払日にB金員を各支払先に支払うことによってA金員と本件金員を本件各社債等発行会社に還元する趣旨が合意されていることは明らかであるから,A金員を上回る本件金員は,A金員の預入れによって本件各社債等発行会社に発生する利子所得と観念すべきものであり,そのような契約がされている以上,法的に見て,当事者間に利子を支払う合意がされていないということはできない。 キ控訴人は,本件金員は,割引料としての性質を有するもので「償還差,益」に相当するものであり,本件各社債等発行会社は本件金員について「償還差益」として法人税を納付済みであり,本件金員の支払は,その経済的機能に照らしても,本件各社債等発行会社に対する利子の支払であると評価することはできない旨主張する。 しかし,本件金員は,一般的な用語としての「割引料」にも,税法上の「償還差益」にも当たらないことは明らかであるし,本件各社債等発行会社が本件金員について「償還差益」として法人税を納付済みであると認めるに足りる証拠はない。本件各履行引受契約によっては,本件各社債等発行会社の有する原債務は消滅するものではないから,本件各社債等発行会社が原債務を繰上償還したものとしてオフ・バランス化する経理処理が認められるとしても,法的に本件金員がA金員の預入れに対する利息の性質を有するものであることを否定することはできない。 ク控訴人は,源泉徴収義務が課されるべき「利子」は,源泉徴収制度の趣旨にかんがみ,大量性,定量性を有するものに限定解釈されるべきである旨主張する。 - 14 -しかし,前記( )アに認定のとおり,控訴人は,デット・アサンプショ ン取引を開始した昭和62年ころ,監督官庁である大蔵省に 定量性を有するものに限定解釈されるべきである旨主張する。 - 14 -しかし,前記( )アに認定のとおり,控訴人は,デット・アサンプショ ン取引を開始した昭和62年ころ,監督官庁である大蔵省に相談し,その結果,デット・アサンプション取引により控訴人が預入れを受けた金銭を「預金」として処理するスキーム(枠組み)が組成され,それ以降,デット・アサンプション取引により預かった金銭を預金として会計処理し,本件各履行引受契約に関しても,A金員を定期預金,本件金員を支払利息として会計処理してきたことを認めることができるのであるから,源泉徴収義務者の義務を履行することに何らの支障も生じないものといわなければならない。 ケ以上のとおり,控訴人の主張は,いずれも採用することができない。 国内における支払該当性について控訴人は,銀行による振込送金による「支払地」は,当該振込送金事務が物理的に行われた場所を基準とするのではなく,当該振込送金事務を担当した支店の所在地を基準とすべきである旨,また,控訴人のケイマン支店は,銀行法上の支店としての営業の実態・機能を備えていたのであり,振込送金事務はケイマン支店において行われていたものである旨主張する。 しかし,先に原判決を引用して説示のとおり,控訴人のケイマン支店は物的施設及び人員が現地に存在しないものであり,同支店の口座管理等の事務は控訴人本店のマーケット管理部内のケイマン支店担当者が行っていたのであるから,控訴人のケイマン支店がその営業の実態・機能を備えていたものと認めることはできない。上記事実及び証拠(甲5の6~10・21)によれば,控訴人は,平成11年1月31日をもってロンドン支店の業務を停止することになったため,同月27日以降,その本店において,名目のみケイマン支店の口座を利用してB金員の振 5の6~10・21)によれば,控訴人は,平成11年1月31日をもってロンドン支店の業務を停止することになったため,同月27日以降,その本店において,名目のみケイマン支店の口座を利用してB金員の振込送金を行っていたものであると認めることができる。 したがって,同日以降,本件金員の支払は国内に所在する控訴人本店において取り扱われたものと認めるのが相当であり,控訴人の上記主張は採用するこ- 15 -とができない。 国税通則法67条1項ただし書の適用の可否について( )控訴人は,本件各履行引受契約に基づいて交付されたA金員が預金であ ると解するとしても,国税当局は本件各社債等発行会社に対しては本件金員を原債務の償還に伴う「償還差益」として処理することを認めているのであるから,控訴人が本件金員を「利子」として処理することは事実上不可能であった旨主張する。 しかし,国税当局が本件各社債等発行会社に対して本件金員を原債務の償還に伴う「償還差益」として処理することを是認しているものと認めるに足りる証拠はない上,前記のとおり,控訴人はA金員を定期預金,本件金員を支払利息として会計処理してきたことを認めることができるのであるから,「国内において」支払ったものかどうかの法的見解を別にすれば,控訴人が源泉徴収義務者の義務を履行することに何らの支障も存しないものといわなければならない。 したがって,控訴人が本件金員を利子として処理することが事実上不可能であったとは認めることができず,控訴人の主張は採用することができない。 ( )控訴人は,国外支店において勘定を管理する金銭の支払については,支 払指図の作成の作業を国内の事務担当者に行わせていたとしても,国外払として取り扱われていたという税実務の慣例があったのであるから,控訴人が当該支払を「国内払 定を管理する金銭の支払については,支 払指図の作成の作業を国内の事務担当者に行わせていたとしても,国外払として取り扱われていたという税実務の慣例があったのであるから,控訴人が当該支払を「国内払」と認識することは不可能であった旨主張する。 しかし,控訴人主張のような「税実務の慣例」があったことを認めるに足りる証拠はない上,前記のとおりケイマン支店は物的施設及び人員が現地に存在せず,同支店に国外支店としての実体がないことを控訴人が知らなかったとはいえない筋合いであるから,本件金員の支払が「国内払」と評価されることは控訴人において当然予見することができたものというべ- 16 -きである。 したがって,控訴人の上記主張は採用することができない。 ,, 以上によれば控訴人の本件請求は理由がないからこれを棄却すべきでありこれと同旨の原判決は相当である。 よって,本件控訴は理由がないから棄却することとして,主文のとおり判決する。 東京高等裁判所第22民事部裁判長裁判官石川善則裁判官井上繁規裁判官河野泰義
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