平成17(ワ)8359等 損害賠償請求事件

裁判年月日・裁判所
平成19年3月23日 東京地方裁判所
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判決文本文36,470 文字)

平成19年3月23日判決言渡同日原本領収裁判所書記官平成17年(ワ)第8359号損害賠償請求事件(第1事件)同年(ワ)第13753号損害賠償請求事件(第2事件)口頭弁論終結日平成18年12月22日判決岩手県奥州市<以下略>第1事件原告株式会社環境保全サービス(以下「原告会社」という。)高知県高岡郡<以下略>第2事件原告A1(以下「原告A1」という。また,原告会社と原告A1を併せて「原告ら」ともいう。)原告ら訴訟代理人弁護士柏木薫同松浦康治同今井浩高知県高知市<以下略>第1事件及び第2事件被告B1(以下「被告」という。)同訴訟代理人弁護士平井昭光同原井大介主文 被告は,原告A1に対し,金100万円及びこれに対する平成17年7月11日から支払済みまで年5分の割合による金員を支払え。 原告会社の請求及び原告A1のその余の請求をいずれも棄却する。 訴訟費用は,原告会社と被告との間においては,被告に生じた費用の3分の1を原告会社の負担とし,その余は各自の負担とし,原告A1と被告との間にお いては,原告A1に生じた費用の5分の1を被告の負担とし,その余は各自の負担とする。 この判決は,第1項に限り,仮に執行することができる。 事実 及び理由第1請求 第1事件被告は,原告会社に対し,金659万6791円及びこれに対する平成17年5月13日(訴状送達の日の翌日)から支払済みまで年5分の割合による金員を支払え。 第2事件被告は,原告A1に対し,金1000万円及びこれに対する平成17年7月11日(訴状送達の日の翌日)から支払済みまで年5分の割合による金員を支払え。 第2事案の概要第1事件は,原告会社と高知大学との共同研究契約に基づく研究を通じて原告A1がした発明に 平成17年7月11日(訴状送達の日の翌日)から支払済みまで年5分の割合による金員を支払え。 第2事案の概要第1事件は,原告会社と高知大学との共同研究契約に基づく研究を通じて原告A1がした発明につき,被告が,原告会社及び原告A1に無断で,自らを発明者として第三者に特許を受ける権利を譲渡し,当該第三者に特許出願させたとして,原告会社が,被告に対し,不法行為に基づく損害賠償請求として,当該特許出願に対応するために要した弁護士費用等相当額の損害賠償及び民法所定の遅延損害金の支払を求めた事案である。 第2事件は,原告A1が,上記特許出願により自己の発明者名誉権を侵害され,被告が上記発明が自己の研究成果であるかのように偽って文部科学省に助成金の交付申請をしたこと,及び学術団体から学術賞を受賞するよう仕向けたことによって,自己の名誉感情を侵害されたとして,被告に対し,不法行為に基づく慰謝料及び民法所定の遅延損害金の支払を求めた事案である。 前提事実( )当事者等 ア原告会社原告会社は,廃ガラスのリサイクル等を業とする株式会社である。 (争いのない事実)イ原告A1原告A1は,平成10年当時,高知大学理学部附属水熱化学実験所(以下「水熱化学実験所」という。)の教授であった者であり,平成11年3月に同大学を退官した。 (争いのない事実)ウ被告被告は,平成10年当時,水熱化学実験所の助教授であった者であり,平成11年3月に原告A1が同大学を退官後,その後任として教授となった。 (争いのない事実)エC1(ア)C1(以下「C1」という。)は,コロンビア国立大学理学部にて化学を専攻し,コークスに関する研究を行い,学位を取得して卒業した後,同大学助手として有機化学及び無機化学を中心に研究した。その後,同人は,同国国立研究所にてセ 。)は,コロンビア国立大学理学部にて化学を専攻し,コークスに関する研究を行い,学位を取得して卒業した後,同大学助手として有機化学及び無機化学を中心に研究した。その後,同人は,同国国立研究所にてセラミックス,ガラス,鉱物等の無機化学を中心に研究し,その間,東北大学に研究生として留学したこともあった。 この間,同人は,水熱化学の分野ないし水熱ホットプレス法について学んだことはなかった。 (争いのない事実,証人C1,弁論の全趣旨)(イ)C1は,平成10年4月,高知大学大学院修士課程に入学し,原告A1を指導教官とし,コロンビア黒砂からの鉱物の分離を研究課題とした。 (争いのない事実)( )本件共同研究の内容及び実施 ア本件共同研究の実施原告会社は,平成10年4月ころ,高知大学に対し,水熱ホットプレス法を用いた廃ガラス粉砕材のリサイクリング技術の開発に関する共同研究(以下「本件共同研究」という。)を申し込み,原告A1は,同研究の実験を補助するアルバイトとしてC1を雇用した上で,同年5月ころから,本件共同研究を開始した。 ただし,書類上の処理は遅れ,原告会社は,高知大学に対し,同年7月8日付けで本件共同研究の申込書(甲2)を提出し,両者間の共同研究契約書(甲3)は,平成11年1月18日付けで作成された(以下,この契約を「本件共同研究契約」という。)。 その内容は,次のとおりである。 (共同研究の題目等)第1条甲(高知大学)及び乙(原告会社)は,次の共同研究を実施するものとする。 ( )研究題目 水熱ホットプレス法を用いた廃ガラス粉砕材のリサイクリング技術の開発( )研究目的及び内容 水熱ホットプレス法を基礎として,ガラスビン粉砕材を低温で固化させるための技術開発を行う。さらに粉砕材の土壌改質材への転換技術の開発を行い,環境 リサイクリング技術の開発( )研究目的及び内容 水熱ホットプレス法を基礎として,ガラスビン粉砕材を低温で固化させるための技術開発を行う。さらに粉砕材の土壌改質材への転換技術の開発を行い,環境に調和したガラスビン粉砕材のリサイクリング法の創成を目指す。 ( )研究実施場所 水熱化学実験所(研究期間)第2条本共同研究の研究期間は,平成11年2月5日から平成11年3月31日までとする。 (共同研究に従事する者),第3条甲及び乙は,それぞれ別表第1に掲げる者(注:高知大学側は原告A1 原告会社側はD1)を本共同研究に参加させるものとする。…(研究経費の負担)第4条甲及び乙は,それぞれ別表第2に掲げる研究経費(注:高知大学側は直接経費42万円,原告会社側は直接経費250万円及び研究料42万円)を負担するものとする。 (特許出願)第10条甲は,甲に属する教官が,本共同研究の結果独自に発明を行い,当該発明に係る特許を受ける権利を国が承継した場合において特許出願を行おうとするときは,当該発明を独自に行ったことについて,あらかじめ乙の同意を得るものとする。…(優先的実施)第11条甲は,本共同研究の結果生じた発明であって,甲に承継された特許を受ける権利又はこれに基づき取得した特許権…を,乙又は乙の指定する者に限り,当該特許の優先的に実施できる期間…を出願したときから10年を超えない範囲内において許諾することができるものとする。…(研究成果の取扱い)第16条共同研究による研究成果は,原則として公表するものとする。 ただし,公表の時期・方法などについては,甲乙協議の上,定めるものとする。 (争いのない事実,甲3,53,乙9の1)イ本件共同研究の成果(ア)第1報告書原告A1は,平成10年6月中旬ころ,原告会社に対し, の時期・方法などについては,甲乙協議の上,定めるものとする。 (争いのない事実,甲3,53,乙9の1)イ本件共同研究の成果(ア)第1報告書原告A1は,平成10年6月中旬ころ,原告会社に対し,同月10日付け報告書「熱水ホットプレス方法による廃棄ガラスの処理に関する研究」(甲4ReportNo.1の1及び2。以下「第1報告書」という。)を送付した。 第1報告書(甲4の1)には,以下の記載がある。 Ⅰ.目的初期のアプローチは,熱水ホットプレス条件下の廃棄ガラスの凝固程度を決定するために行われます。さらに,この研究は,熱水ホットプレス処理を用いて,廃棄ガラスを利用することへの最大の経済的条件処理とします。 Ⅱ.実験.廃棄ガラスサンプルの作製:A廃棄ガラスは,12時間の間隔で機械にかけ,ボールを使って粉砕しましAlO た。機械にかけた後に,ガラスは最高250の網でふるわれました。…(争いのない事実)(イ)第2報告書Report原告A1は同年7月下旬ころ原告会社に対し同月27日付け報告書「,,,熱水ホットプレス法による廃棄ガラス処理の研究」(甲5の1及び2。以下No.2「第2報告書」という。)を送付した。 第2報告書(甲5の1)には,以下の記載がある。 Ⅰ.範囲この段階の実験目的は,廃棄ガラスを圧縮するための最も安価な処理条件を決定し,…。 Ⅱ.実験1.熱水ホットプレス処理…オートクレーブのメインボディは,直径30㎜のピストンシリンダタイプ構造です。含水率が決定されたサンプル粉をシリンダ内に入れた後,そのサンプルを単軸方向に押すために,上部と底からピストンに圧力をかけます。 …従って,指定された熱水の条件下で凝固する間,サンプルを維持します。 Ⅲ.結果および議論…結果によると,低い含水率ではこの のサンプルを単軸方向に押すために,上部と底からピストンに圧力をかけます。 …従って,指定された熱水の条件下で凝固する間,サンプルを維持します。 Ⅲ.結果および議論…結果によると,低い含水率ではこの熱水条件下で,ガラス粒子が互いに良好な 。 接触ができません。水によるこの現象は,含水率10まで上昇変化しましたwt%そして,ガラスへの水の拡散が非常に安定しているガラスの新たな段階と抵抗力を作り出していることが図5と写真図7によって観察されました。…SEM(争いのない事実)(ウ)第3報告書Report原告A1は同年11月4日ころC1を伴って原告会社に赴き報告書「,,,熱水ホットプレス方法による廃棄ガラス処理」(甲6の1及び2。以下「第3No.3報告書」という。)を提出するとともに,同報告書の内容について,C1が英語で,原告A1が日本語で,それぞれ口頭による説明を行った。 第3報告書(甲6の1)には,以下の記載がある。 Ⅱ.実験1.熱水ホットプレス過程実験は,凝固合成のために使われた熱水ホットプレスと,前と同じタイプのオートクレーブ(レポート2参照)を使って実施されました。…事前に決定された含水率のサンプル粉が,シリンダ内に込められ,その時,サンプルを単軸方向に圧縮するために,圧力が上部と底からピストンに加わります。…従って,あらゆる熱水条件においても凝固反応のを通してサンプルを維持します。 オートクレーブの加熱作用は,シートタイプヒーターを使って実行されました。 /min大部分のガラスサンプルの加熱速度は,130~225℃の間の温度,5℃で設定されました。サンプル圧縮において,100の能力を持つインストロンKNユニバーステストマシンを使用し,60の圧力を提供しました。…MPaⅢ.結果と議論図1は,圧縮 ℃の間の温度,5℃で設定されました。サンプル圧縮において,100の能力を持つインストロンKNユニバーステストマシンを使用し,60の圧力を提供しました。…MPaⅢ.結果と議論図1は,圧縮された青色ガラスの反応の物質的な特性…と実験の様々な時間においての,温度,含水率,および単軸の圧力に関して要約します。含水率と温度だけが相対的な密度と引張強度への主要な影響を持っているのが,図から見られます。 従って,温度が増大する時には,密度と引張強度が増大しています。さらに,下の値で,含水率10の時,これを持つこれらの性質も増加します。この点が減wt%少すると引張強度の著しい減少認められます。 …さらに,200℃,60,2時間,および含水率12で,圧縮されMPawt%た青色ガラスを105℃で5日間おいて前もって再熱し,1時間750℃で再加熱しました。この処理は写真により見られるように多孔性の外観を引き起こしSEMました(図9)。この結果は特に重要です。なぜなら300℃への再熱した時,少しの水損失が示され,この場合,多くのクラックが溶液段階にできたと思われたからです。750℃の時,水損失の多くは液体段階から起こり,大きい多孔性を持ち,おそらく,この増した温度がガラスを軟化させました。(図9については,別紙1参照。以下,ここで言及されたガラス固化体の多孔化技術を「本件多孔化技術」という。)Ⅳ.結論…。 3.一般に,含水率が最大10まで増加するとき引張強度は増加します…wt%4.空気中5日,105℃で再加熱した時,水の損失は少なく,300℃までは変わりませんでした。多くのクラックは水位相に伝わり,弱い構造を引き起こしました。ところが1時間空気中750℃で再熱した時,ガラスは多孔性のより強い構造となりました。…(争いのな ,300℃までは変わりませんでした。多くのクラックは水位相に伝わり,弱い構造を引き起こしました。ところが1時間空気中750℃で再熱した時,ガラスは多孔性のより強い構造となりました。…(争いのない事実,甲7,53,弁論の全趣旨)( )本件修士論文等 ア本件修士論文原告A1の高知大学退官に伴い,平成11年4月から,C1の指導教官は,被告に変更された。C1は,そのころ,研究課題を水熱ホットプレス法によるガラス廃棄物のリサイクルに変更し,平成12年2月,これに関する修士論文(乙2の1及び2。以下「本件修士論文」という。)をまとめ,同年3月,同大学修士課程を修了 した。 本件修士論文には,以下の記載がある。 第4章多孔性ガラス材料の合成4.1序論…本章においては,廃棄物をインテリジェント材料へ変換するために,廃棄ガラスから多孔性ガラス材料を作製した。まず水熱ホットプレス法により廃棄ガラスからガラス固化体を作製し,ガラスと水との水熱反応により形成された新しい相の中の水が加熱中に蒸発し気孔を形成することを期待し,空気中,さまざまな温度で通常の仮焼を行った。 4.2実験方法4.2.1材料実験に使用した青色ガラス粉末の化学組成は,定量湿式化学分析により決定し,…ガラスは粉砕して46から53μの粒度分布を持つ粉末を得た。 m4.2.2水熱ホットプレス法によるガラス固化体の水熱ホットプレス作製緻密化過程は,…水熱ホットプレスオートクレーブを用いて実施した。青色ガラス粉末(10)に水(5-20)を添加して乳鉢内で混練した。ガラス粉末をオgwt%ートクレーブの反応室に置き,5-60の圧力で一軸加圧し,毎分5℃の昇MPa温速度を用い…熱伝導率を決定するためには,200の青色ガラス粉末を乳鉢で10のgwt%水を をオgwt%ートクレーブの反応室に置き,5-60の圧力で一軸加圧し,毎分5℃の昇MPa温速度を用い…熱伝導率を決定するためには,200の青色ガラス粉末を乳鉢で10のgwt%水を添加して混練した。試料は…オートクレーブの反応室に置いた。次の水熱ホットプレス条件を用いた。 温度200℃,荷重圧 ,反応時間2時間,昇温・降温速度毎MPa分1℃4.2.3多孔性ガラスの作製水熱ホットプレス法により作製したガラス固化体は,白金るつぼ中で50℃から 850℃の温度で3時間加熱した。全ての試料は毎分5℃で加熱し,室温まで冷却した。…4.3.2含水量と焼成温度が得られた多孔性ガラスのカサ密度におよぼす影響…600℃以上の高温での加熱の後では,カサ密度は著しく減少し,固化体中に気孔が形成された。…図4-6(注:図4-3は誤記と認める。)は,多孔性ガラスの圧縮強度におよぼ,すガラス固化体作製時の含水量の影響を示す。含水量は,特に10以上ではwt%圧縮強度の値に大きな影響を示さなかった。それに対して,低い含水量(5)wt%では,生成物の圧縮強度はかなり減少した。…4.3.3仮焼温度の影響…ガラス固化体は,次の条件で作製した。200℃,21,3時間,含水MPa量10,そして固化体はさまざまな温度において空気中で1時間仮焼した。 wt%…650℃の仮焼の後には,初期の小さな気孔の形成が観察されたが,構造は不均一であった。より高温での仮焼により,固化体中の気孔の径は増加した。気孔は,薄いガラス壁で囲まれており閉口気孔と考えられる。…750℃以上の高温では大きな変化は観察されなかった。…仮焼温度の多孔性ガラスの圧縮強度におよぼす影響を,図4-4(注:「図4-5」は誤記と認める。)に示す。700℃以 おり閉口気孔と考えられる。…750℃以上の高温では大きな変化は観察されなかった。…仮焼温度の多孔性ガラスの圧縮強度におよぼす影響を,図4-4(注:「図4-5」は誤記と認める。)に示す。700℃以下の低温で仮焼した試料では,圧縮強度は低くなった。固化体が750℃まで加熱された時には,多孔性ガラスの強度は顕著に増加した。次の条件(200℃,21,2時間,含水量10,加熱速MPawt%度毎分5℃)での水熱ホットプレスにより合成したガラス固化体の750℃,1時MPa間の仮焼により得られた多孔性ガラスに対して,圧縮強度の最高値は約14であった。…4.3.4荷重圧の影響 …低い圧縮強度を与えた低荷重圧(<10)を除いて,荷重圧に対して圧縮MPa強度はほぼ一定の値を示した。10以上の荷重圧は,得られた多孔性物質のMPa圧縮強度に大きな影響を及ぼさないことを意味している。 イ国際会議発表また,C1は,平成12年11月,メキシコにおいて開催された国際会議において,同趣旨の発表を行った。その発表者には,C1のほか,C1の夫E1及び被告が含まれていたが,原告A1は含まれていなかった(乙12)。 (以上,争いのない事実)( )F1報告書 被告及びF1(以下「F1」という。)は,平成13年5月ころ,珪酸塩ガラスの水熱反応と多孔性ガラスの生成に及ぼすその影響について研究し(乙4の1),F1は,同年8月,その研究結果を「多孔性ガラス粉末と多孔性ガラス製品の合成」と題する報告書(乙4の2)にまとめた。 (乙4の1~3,5)( )本願発明 ア本件出願株式会社テクノネットワーク四国(以下「四国」という。)は,平成13年9月TN25日,以下の内容の特許出願をした(甲1。以下この出願を「本件出願」といい,出願に係る発明を併せ ア本件出願株式会社テクノネットワーク四国(以下「四国」という。)は,平成13年9月TN25日,以下の内容の特許出願をした(甲1。以下この出願を「本件出願」といい,出願に係る発明を併せて「本願発明」という。本願発明の各請求項ごとの発明を「本件請求項1の発明」のようにいう。また,別紙2の公開特許公報記載の特許請求の範囲,明細書及び図面を「本件明細書」という。)。 出願番号特願2001-290418発明の名称ガラス多孔体及びその製造方法発明者被告特許請求の範囲本件明細書(別紙2)の該当欄に記載のとおり (争いのない事実)イ構成要件の分説本願発明を構成要件に分説すると,以下のとおりである。 (ア)請求項1ガラス粉末と水の混練物を水熱処理を行うことにより,水が拡散した固化体Aを得て,該固化体を加熱することにより発泡させて,内部に気孔を有する多孔体としBて作製したことを特徴とするガラス多孔体。 C(イ)請求項2ガラス粉末と水の混練物をオートクレーブ内で加圧した後,この圧力状態をD保ったまま所定の温度まで加熱して水熱条件下で成形し,一定の時間保持した後冷却することにより水が拡散した固化体を得て,該固化体を加熱炉内で所定時間加熱することにより発泡させて,内部に気孔Eを有する多孔体として作製したことを特徴とするガラス多孔体。 F(ウ)請求項3気孔が閉気孔であるG請求項1又は2記載のガラス多孔体。 H(エ)請求項4ガラスを水とともに水熱処理を行うことによりガラス中に水を拡散させ,Iその後加熱することにより発泡させて,内部に閉気孔を有するように作製すJることを特徴とするガラス多孔体の製造方法。 K(オ)請求項5 ガラス粉末に水を加えて混練し,オートクレーブ内で所定の圧力で加圧し ことにより発泡させて,内部に閉気孔を有するように作製すJることを特徴とするガラス多孔体の製造方法。 K(オ)請求項5 ガラス粉末に水を加えて混練し,オートクレーブ内で所定の圧力で加圧したL後,この圧力を保ったまま所定の温度まで加熱して水蒸気による水熱条件下で成形し,一定の時間保持した後に室温まで冷却することにより水が拡散した固化体を得て,該固化体を加熱炉内で所定時間加熱して発泡させて,内部に閉気孔を有するMように作製することを特徴とするガラス多孔体の製造方法。 N(カ)請求項6原材料としての廃ガラスを粉砕してから分級し,得られたガラス粉末に水をO加えて混練してからピストン・シリンダタイプのオートクレーブ内に充填して所定の圧力で加圧した後,この圧力を保ったまま所定の温度まで加熱して水熱条件下で成形し,一定の時間保持した後に室温まで冷却することにより水が拡散した固化体を得て,この固化体を電気炉内で所定時間加熱して発泡させて,内部に閉気孔を有すPるように作製することを特徴とするガラス多孔体の製造方法。 Q(キ)請求項7ガラス粉末の粒子直径が50μm以下であるR請求項4,5,又は6に記載のガラス多孔体の製造方法。 S(ク)請求項8ガラス粉末に対する添加水量が10重量以上であるT%請求項4,5,6又は7に記載のガラス多孔体の製造方法。 U(ケ)請求項9オートクレーブ内のガラス粉末を加圧する圧力が10以上であるVMPa請求項4,5,6,7又は8に記載のガラス多孔体の製造方法。 W (コ)請求項10加熱炉による加熱温度が750℃以上であるX請求項4,5,6,7,8又は9に記載のガラス多孔体の製造方法。 Y(サ)請求項11オートクレーブ内の昇温速度と降温速度を毎分1℃としたZ 求項10加熱炉による加熱温度が750℃以上であるX請求項4,5,6,7,8又は9に記載のガラス多孔体の製造方法。 Y(サ)請求項11オートクレーブ内の昇温速度と降温速度を毎分1℃としたZ。 AA請求項4,5,6,7,8,9又は10に記載のガラス多孔体の製造方法(争いのない事実)ウ本件多孔化技術と本願発明との関係(ア)本件多孔化技術には,本件請求項2の発明が開示されている。 (イ)本件多孔化技術には,本件請求項5の発明が開示されている。 (ウ)本件多孔化技術には,本件請求項6の発明が開示されている。 (エ)本件多孔化技術には,本件請求項8の発明が少なくとも添加水量12重量の限度で開示されている。 %(オ)本件多孔化技術には,本件請求項9の発明が少なくとも加圧圧力60の限度で開示されている。 MPa(カ)本件多孔化技術には,本件請求項10の発明が少なくとも加熱温度750℃の限度で開示されている。 (争いのない事実)( )被告による文部科学省への申請書提出 ア被告は,平成14年7月ころ,文部科学省に対し,「平成14年度大学等発ベンチャー創出支援提案公募申請書」(甲9)を提出した(以下「本件助成金申請」という。)。 同年9月,本件助成金申請は採択され,その後,被告は,助成金約9400万円を得た。 イ同申請書には,以下の記載がある。 ・開発課題名廃棄ガラスビンの多孔質軽量板・断熱材へのリサイクル技術の開発・申請者(代表者)被告・開発者被告(開発代表者),G1(分担開発者),H1(分担開発者)・マネジメント事業者四国TN・開発の背景と目的「…これまでのガラスを発泡させる方法は,炭酸カルシウム,炭化珪素などの高温で分解し気体を発生する発泡剤をガラス粉末に添加している。この方法では,発 ネジメント事業者四国TN・開発の背景と目的「…これまでのガラスを発泡させる方法は,炭酸カルシウム,炭化珪素などの高温で分解し気体を発生する発泡剤をガラス粉末に添加している。この方法では,発泡剤からの気体の発生温度が非常に狭い上に発泡時にはガラス自体が軟化している必要があり,発泡を制御することが非常に難しい。特に均一な大型発泡体を作成することは困難である。それに対して本研究開発では,申請者らの有する水熱技術を活用し,ガラス粒子の中にあらかじめ水を拡散させてから加熱することにより,ガラス中の水分が蒸発する際に発泡する新しい技術を利用して多孔体を作成しようとするものである。 申請者らは,ガラス粉末を水熱ホットプレス(用語説明参照)することにより得られた固化体を空気中で加熱することにより,発泡現象が起こり密度0.3程g/cm3度の軽量多孔体が作成できることを発見した。(特許出願済:特願2001-290418)しかし,この方法では最初に一つ一つの固化体をバッチ式で作成する必要があり形状制御も難しいために,工業化には適さない。そこで,本技術を用いたガラス多孔体の製造の工業化を目指すためには,ホットプレスせずに粉末の状態で水熱処理(用語説明参照)してから成形し発泡させる方法を確立する必要がある。 これまでの研究で,水熱処理したガラス粉末を成形してから加熱することにより,ガラス多孔体が得られることを実験室レベルで確認しており,特許の出願を予定している。 本研究開発では,埋め立て等にしか利用されていない廃棄ガラスビンから低コス トで大型の多孔体を作成する技術を確立し,ガラス多孔体を断熱材や軽量板として利用することにより,発泡スチロールによる公害問題を改善し,現在社会の命題である自然調和型社会の構築に貢献することを目的とする。」・専門 を作成する技術を確立し,ガラス多孔体を断熱材や軽量板として利用することにより,発泡スチロールによる公害問題を改善し,現在社会の命題である自然調和型社会の構築に貢献することを目的とする。」・専門用語の説明用語「水熱ホットプレス法」,説明「水熱化学実験所が独自に開発した無機粉末を水熱条件下で固化させる方法。水熱条件下にある粉末を,オートクレーブの外部から圧搾し粒子間隙に存在する水を搾り出して粉末を緻密化させると同時に,水熱反応により粒子間を連結させることにより,機械的強度の高い固化体を製造できる。」用語「水熱処理(水熱反応)」,説明「100℃,1気圧以上の高温高圧下の水が存在する状態で,物質を加熱処理すること。…圧力容器(オートクレーブ)内に水を入れて密閉し加熱することにより,水の沸騰が抑えられ,高温高圧下の水が得られる。 …」(争いのない事実)( )被告による学術賞の受賞 日本セラミックス協会は,平成17年1月,被告に対し,水熱反応技術の新しい展開に関する研究につき,同協会賞学術賞を授与した(甲46。以下「本件受賞」という。)。その推薦理由には,以下のような記載がある。 「…以下に示す3種類の新しい水熱反応技術を開発し,新しい水熱合成法を展開した。 ①単結晶育成技術では,…②複酸化物の直接合成技術では,…③多孔体の作製技術では,水熱条件下にある粉末を加圧しながら水熱処理することにより,マクロポアとメソポアの境界付近の均一な気孔径を有する多孔体を作製する新しい合成技術を開発した。さらに,水熱反応を利用した廃棄ガラスビンから 発泡多孔体を作製する廃棄ガラスビンのリサイクル技術を開発した。…」(争いのない事実)( )本件博士論文 C1は,平成17年4月,高知大学に対し博士の学位取得を申請し,同年9月,。 「水熱ホット 多孔体を作製する廃棄ガラスビンのリサイクル技術を開発した。…」(争いのない事実)( )本件博士論文 C1は,平成17年4月,高知大学に対し博士の学位取得を申請し,同年9月,。 「水熱ホットプレス法による廃棄無機材料のリサイクル」と題する博士論文(甲40。 以下「本件博士論文」という。)により,高知大学から理学博士の学位を授与された(甲40,41,乙6) 争点 ( )第1事件及び第2事件に共通する争点 ア本件多孔化技術と本願発明との関係イ本願発明の発明者( )第1事件の争点 ア被告の行為の違法性,損害発生及び因果関係,故意又は過失イ損害額( )第2事件の争点 ア被告の行為の違法性,損害発生及び因果関係,故意又は過失(ア)発明者名誉権の侵害(イ)本件助成金申請による名誉感情の侵害(ウ)本件受賞による名誉感情の侵害イ損害額 争点に関する当事者の主張( )第1事件及び第2事件に共通する争点 ア本件多孔化技術と本願発明との関係(原告らの主張)(ア)本件請求項1の発明(無加圧発泡) a( )第3報告書記載の実験は,ガラス粉末と水の混練物を加圧しながらa水熱処理する方法を採用している。 。 ( )本件請求項1の発明は,加圧して得た固化体についての発明であるb( )よって,本件多孔化技術には,本件請求項1の発明がすべて開示さcれている。 Ab本件明細書には無加圧発泡についての記載は全くないから構成要件,,の「ガラス粉末と水の混練物を水熱処理」は,無加圧発泡を含んでいない。 また,「水熱処理」と「水熱ホットプレス法」とは同一である。前者は,オートクレーブ内にガラス粉末と水の混練物を入れて温度を上げ,高温高圧の状態にして固化体を得るものであり,後者は混練物をオートク 。 また,「水熱処理」と「水熱ホットプレス法」とは同一である。前者は,オートクレーブ内にガラス粉末と水の混練物を入れて温度を上げ,高温高圧の状態にして固化体を得るものであり,後者は混練物をオートクレーブ内に入れた状態で機械的に圧搾圧をかけて加圧した後加熱して水熱状態にして固化体を得る方法であるが,両者は共にオートクレーブを使用し,水熱を利用している点及び高圧状態にする点で大きな相違はない。 (イ)本件請求項3の発明(閉気孔)a第3報告書の図9下段の750℃で再加熱されたガラス固化体の断面の(走査型電子顕微鏡)写真(甲6の2の3-13頁)によると,気孔が閉気孔でSEMあることが明らかである。 bしたがって,本件多孔化技術には,本件請求項3の発明が開示されている。 c後記被告の主張(イ)bは否認する。 (ウ)本件請求項4の発明(製造方法その1)a本件多孔化技術には,本件請求項1の発明及び本件請求項3の発明が開示されている。 bしたがって,本件多孔化技術には,本件請求項4の発明も開示されている。 (エ)本件請求項7の発明(粒子直径)a( )本件多孔化技術は,粒子直径63μ以下のガラス粉末を使用してamいる。 ( )すなわち,第1報告書には,廃棄ガラスサンプルは粉砕後に最高25b0メッシュの網でふるわれた旨の記載があるが,これは,規格の呼び口径ではJIS63μに相当する。 mb構成要件に示された50μ以下との要件は,本件多孔化技術に開Rm示された63μ以下との要件に含まれる。 mc( )50μ以下との限定により,その効果に格別の差異はない。 am( )本件明細書の段落【0013】には,「この時に原材料としてガラス粉b末の粒子直径が50μ以下であることが好ましい。」との記載があ 以下との限定により,その効果に格別の差異はない。 am( )本件明細書の段落【0013】には,「この時に原材料としてガラス粉b末の粒子直径が50μ以下であることが好ましい。」との記載があるが,その理m由は説明されていない。 dしたがって,本件多孔化技術には,本件請求項7の発明が開示されている。 e後記被告の主張(エ)bは否認する。 水の拡散時間は,水熱溶液へのザブ漬け条件か,飽和水蒸気下条件か,水熱ホットプレス条件かといった点や,温度や圧力によっても影響され,水熱ホットプレス条件では高圧により水の浸透速度が極度に大きくなる。ガラス粉末の粒子直径が50μ以下なら最適で,63μでは良好な発泡体が得られないとする実験結果mmは示されていない。 (オ)本件請求項8の発明(添加水量)aガラス粉末に対する添加水量が12重量であることは,本件多孔化技%術に開示されているから,製造条件のうち添加水量を10重量以上と拡大するこ%とは,極めて容易なことである。 bしたがって,本件多孔化技術には,実質的に,本件請求項8の発明がす べて開示されている。 (カ)本件請求項9の発明(加圧圧力)aオートクレーブ内のガラス粉末に加圧する圧力が60であることMPaMPaは,本件多孔化技術に開示されているから,製造条件のうち加圧圧力を10以上と拡大することは,極めて容易なことである。 bしたがって,本件多孔化技術には,実質的に,本件請求項9の発明がすべて開示されている。 (キ)本件請求項10の発明(加熱温度)a加熱炉による加熱温度が750℃であることは,本件多孔化技術に開示されているから,製造条件のうち加熱炉による加熱温度を750℃以上と拡大することは,極めて容易なことである。 bしたがって,本件多孔化技術には, 加熱温度が750℃であることは,本件多孔化技術に開示されているから,製造条件のうち加熱炉による加熱温度を750℃以上と拡大することは,極めて容易なことである。 bしたがって,本件多孔化技術には,実質的に,本件請求項10の発明がすべて開示されている。 (ク)本件請求項11の発明(昇温降温速度)a第3報告書には,大部分のガラスサンプルの加熱速度を5℃に設/min定した旨の記載がある。 bしかし,ガラス固化体の成形において加熱速度を低い値にすれば亀裂を防げるということは,当業者にとって慣用の技術手段である。 この点については,原告A1も,平成10年,ガラス固化体作成時の昇温降温速度を毎分1℃に制御すると,それより昇温降温速度が早い場合に比べ,亀裂や反応層のない均一で強度のある固化体が得られることを論文(甲34)により報告した。 cしたがって,本件多孔化技術には,昇温速度と降温速度とを毎分1℃とする本件請求項11の発明が実質的に開示されている。 d後記被告の主張(ク)bは否認する。 (被告の主張) (ア)本件請求項1の発明(無加圧発泡)a原告らの主張(ア)aのうち,( )は認め,( )及び( )は否認する。 abcamb( )本件明細書に開示されている技術的思想は,①粒子直径が50μ以下のガラス粉末と水の混練物(添加水量は10以上)を水熱処理を行うことwt%により,水が拡散した固化体を得て,該固化体を750℃で加熱することにより発泡させて,閉気孔を有するガラス多孔体を製造する方法(以下「無加圧発泡」という。),及び②粒子直径が50μ以下のガラス粉末と水の混練物(添加水量は1m 以上)を,オートクレーブ内で10以上に加圧した後,この圧力状態をwt%MPa保ったまま所定の温度まで昇温速度毎分1℃で加熱 粒子直径が50μ以下のガラス粉末と水の混練物(添加水量は1m 以上)を,オートクレーブ内で10以上に加圧した後,この圧力状態をwt%MPa保ったまま所定の温度まで昇温速度毎分1℃で加熱して水熱条件下で成形し,一定の時間保持した後,降温速度毎分1℃で冷却することにより水が拡散した固化体を得て,該固化体を加熱炉内で所定時間750℃にて加熱することにより発泡させて,閉気孔を有するガラス多孔体を製造する方法(以下「加圧発泡」という。)である。 ( )被告は,原告A1の高知大学退官後の研究により,ガラス粉末と水のb混練物を加圧しないままで水熱処理しても,ガラス粉末が凝集し塊となり,それを加熱すると発泡するとの知見を得た(前提事実( )参照)。この方法を利用すると, 加圧装置の必要がなく,大量のガラス粉末を一度に処理できるため,発泡体の工業的生産に有利となる。 ( )したがって,本件請求項1の発明は,第1~第3報告書に開示されたc技術情報より広い権利範囲を有するものであり,両者は同一ではない。 (イ)本件請求項3の発明(閉気孔)a原告らの主張(イ)a及びbは否認する。 原告ら指摘の写真から気孔が閉気孔か否かを判断することはできない。 b被告は,原告A1の高知大学退官後に,C1と共に研究を続ける中で,ピクノメータを用いた密度測定や透水率測定を行い,気孔の大部分が閉気孔であるとの知見を初めて得た。 (ウ)本件請求項4の発明(製造方法その1)原告らの主張(ウ)は否認する。 (エ)本件請求項7の発明(粒子直径)a原告らの主張(エ)は否認する。 第3報告書において報告された多孔体の原料として用いられた廃棄ガラス粉末の粒子のサイズは不明である。 b拡散に要する時間は,拡散距離の2乗に比例する。このため,粒子の大きさが直径5 )は否認する。 第3報告書において報告された多孔体の原料として用いられた廃棄ガラス粉末の粒子のサイズは不明である。 b拡散に要する時間は,拡散距離の2乗に比例する。このため,粒子の大きさが直径50μから63μまで増加した場合,拡散速度が変化しないと仮mm定すると,中心まで水が拡散するために要する時間は約1.59倍となる。また,この系では化学反応も起こるため,拡散速度は反応時間とともに低下し,大きな粒子の場合,中心内部まで水が拡散することができず,良好な発泡体は得られない。 本件請求項7の発明は,50μ以下との構成を採用したことにより,最適実施m例を得たものである。 (オ)本件請求項8の発明(添加水量)a原告らの主張(オ)は否認する。 b被告及びC1は,原告A1の高知大学退官後,最適条件を求めて実験を重ね,本件請求項8の発明に到達したものであるから,本件請求項8の発明がすべて本件多孔化技術の発明者によるものではない。 (カ)本件請求項9の発明(加圧圧力)a原告らの主張(カ)は否認する。 b被告及びC1は,原告A1の高知大学退官後,最適条件を求めて実験を重ね,本件請求項9の発明に到達したものであるから,本件請求項9の発明がすべて本件多孔化技術の発明者によるものではない。 (キ)本件請求項10の発明(加熱温度)a原告らの主張(キ)は否認する。 b被告及びC1は,原告A1の高知大学退官後,最適条件を求めて実験を重ね,本件請求項10の発明に到達したものであるから,本件請求項10の発明がすべて本件多孔化技術の発明者によるものではない。 (ク)本件請求項11の発明(昇温降温速度)a原告らの主張(ク)のうち,aは認め,b及びcは否認する。 原告らの主張する手段は慣用であるとはされていない。 b構成要件は,昇温速度 のではない。 (ク)本件請求項11の発明(昇温降温速度)a原告らの主張(ク)のうち,aは認め,b及びcは否認する。 原告らの主張する手段は慣用であるとはされていない。 b構成要件は,昇温速度だけでなく降温速度も規定している。また,Z昇温速度及び降温速度は,ガラスの種類によっても異なり,しかも,廃棄ガラス(ソーダ石灰ガラス)の固化に関して,昇温速度,降温速度を具体的に規定した前例はないところ,構成要件は,具体的に毎分1℃と指定するものである。 Zイ本願発明の発明者(原告らの主張)(ア)原告A1は,本件共同研究当時,C1に対し,詳細な指示を与えた上,本件共同研究の実験作業を補助させた。そうして研究を進める中で,原告A1が,C1に対し,200℃,60,2時間,含水率12の条件で圧縮されたMPawt%青色ガラスを105℃で5日間おいて前もって再加熱し,それを1時間750℃で再加熱すること及びその際白金坩堝を使用することを指示し,実験を行わせた。その結果,原告A1は,本件多孔化技術として,水熱処理されたガラス固化体が再加熱により多孔性になること,及びその発明としての価値を発見した。 (イ)当時,水熱化学実験所においては,新素材開発を助教授であった被告主体に,環境関連を原告A1主体にと研究分野を分けており,被告は,本件共同研究に関与していなかった。 (ウ)本件多孔化技術には本願発明がいずれも開示されているから,本願発明の発明者は,本件多孔化技術を見いだした原告A1のみである。 (エ)後記被告の主張(イ)(加圧発泡の技術)a及びbは否認する。 同cのうち,原告A1がC1から発泡体について報告を受けたこと,及び同人に対し当該実験結果をレポートにまとめるよう指示したことは認め,その余は否認する。 同dは否認する。原告A1 は否認する。 同cのうち,原告A1がC1から発泡体について報告を受けたこと,及び同人に対し当該実験結果をレポートにまとめるよう指示したことは認め,その余は否認する。 同dは否認する。原告A1の退官後に被告及びC1が行ったとされる実験は,いずれも本件多孔化技術の後追いの実験を行ったものにすぎず,発明と評価し得る創作性のないものである。 (オ)同(ウ)(無加圧発泡の技術)aは否認する。同bのうち,( )及び( )は明らabかに争わず,( )は不知。 c(カ)同(エ)は否認する。 (被告の主張)(ア)認否上記原告らの主張(ア)は否認する。 同(イ)は否認する。原告A1と被告との間の研究分野の分担は,大まかなものであった。 同(ウ)は否認する。 (イ)加圧発泡の技術a以下のとおり,本件多孔化技術として,水熱処理されたガラス固化体が再加熱により多孔性になることを発見したのは,C1である。 また,C1と被告とは,原告A1の高知大学退官後,協力して,当初断片的な結果にすぎなかった本件多孔化技術を特許出願に値する発明へと作り上げていった。 したがって,本願発明のうち,加圧発泡の技術の発明者は,被告及びC1である。 b原告A1は,C1に対し,「水熱ホットプレス法を用いてガラスビン粉砕材を低温で固化させる」との研究テーマを与え,研究をするように指示するとともに,当該研究に関連して,固化体の加熱試験について示差熱分析()法を用DTAいるようにとの一般的な指導を行っただけで,何ら詳細な指示を与えず,研究を任 せきりであった。C1は,原告A1から与えられた上記研究テーマについて,主体的に課題及び解決方法を模索・研究した。 cこのような形で進められた本件共同研究において,C1は,法でDTAはなく,坩堝を使用するようにとの被告の指導 から与えられた上記研究テーマについて,主体的に課題及び解決方法を模索・研究した。 cこのような形で進められた本件共同研究において,C1は,法でDTAはなく,坩堝を使用するようにとの被告の指導に従い,加熱する試料の選択,加熱する試料の量その他につき,原告A1からは一切の指示を受けないまま,自らすべて決定して研究を行った。その結果,C1は,ガラスビン粉砕材の固化体を加熱すると発泡体が得られるとの知見を直接最初に得た。原告A1は,この発泡体を見ることなく,C1の口頭の報告を基に,C1に対し,当該実験結果をレポートにまとめるように指示した。 d原告A1の高知大学退官後,被告は,C1と共に,当該発泡体が断熱材や軽量板に応用可能であるとの有用性を見いだし,また,実験の条件を様々に変化させてガラス固化体を作成し,かつ,再加熱の条件も様々に変化させて実験を行わせ,当該発泡体を得るための製造のパラメータを見いだし,加圧発泡の発明を完成させた。 (ウ)無加圧発泡の技術a以下のとおり,本願発明のうち,新規性があり特許となり得る発明は,無加圧発泡の技術であり,その発明者は,被告単独,又は被告及びF1である。 b( )本件修士論文は,平成12年3月ころ,製本が完了し,高知大学図a書館において閲覧可能な状態で備え置かれ,公開の情報となった。 また,同様の内容は,同年11月にメキシコで開催された国際会議において発表され(前提事実( )イ),国際的にも公知となった。 ( )本件修士論文には,前記(イ)のとおり,加圧発泡の技術が開示されていbる。 ( )F1は,C1が修士課程を修了した後,被告の指導・監督の下に,ガcラス粉末をことさらに加圧しない条件下で水熱処理し,これを高温の気流中で再加 熱することにより多孔性ガラス粉末(中空球)を作成す F1は,C1が修士課程を修了した後,被告の指導・監督の下に,ガcラス粉末をことさらに加圧しない条件下で水熱処理し,これを高温の気流中で再加 熱することにより多孔性ガラス粉末(中空球)を作成するという実験を行った結果,①ガラス多孔体を得る工程における前段階であるガラス固化体を得るためには,加圧を必要とせず,水熱処理をするだけで十分であるとの知見を発見し,②無加圧発泡の際における好適条件を見いだした。 (エ)以上より,本願発明の発明者は,少なくとも原告A1ではない。 ( )第1事件の争点 ア被告の行為の違法性,損害発生及び因果関係,故意又は過失(原告会社の主張)(ア)被告は,故意又は過失により,四国に対し,自らを発明者として特TN許を受ける権利を譲渡し,同社をして本件出願をさせた。 (イ)原告会社は,本件共同研究契約に基づき,本件共同研究の結果生じた発明で高知大学に承継された特許を受ける権利又はこれに基づき取得された特許権につき,優先的実施権を有する(本件共同研究契約11条1項)。また,実際,原告会社は,本願発明の事業化を計画している。 (ウ)本件出願は,本件助成金申請においても利用されているため,今後審査請求がされ,権利化が図られる可能性が高い。原告会社がこの事業化を進めた後に本件出願が特許された場合,本件共同研究の経費として支出したものも含め,事業化のための開発投資が無駄に帰することになる。このため,原告会社としては,現時点で本件出願の帰趨を明確にしておく必要が生じた。そこで,原告会社は,本件出願が公開されて以来,弁護士及び弁理士に委任するなどして,高知大学に対し,本件出願を本件共同研究契約に従って処理するように申し入れてきたが,高知大学はこれに応じない。 (被告の主張)(ア)原告会社の主張(ア)のうち,本願 及び弁理士に委任するなどして,高知大学に対し,本件出願を本件共同研究契約に従って処理するように申し入れてきたが,高知大学はこれに応じない。 (被告の主張)(ア)原告会社の主張(ア)のうち,本願発明の特許を受ける権利を被告が四TN国に譲渡し,同社が本件出願をしたことは認め,その余は否認する。 (イ)同(イ)のうち,本件共同研究契約の内容は認め,その余は不知。 (ウ)同(ウ)のうち,高知大学が原告会社の申入れに応じないことは認め,被告の行為又は本件出願と原告会社の損害との因果関係は否認し,その余は不知。 イ損害額(原告会社の主張)(ア)弁護士費用合計459万6791円原告会社は,本件出願に対抗することを原告ら訴訟代理人らに依頼し,弁護士報酬及び諸費用として159万6791円を支払っており,更に弁護士報酬として300万円を支払うことを約した。 (イ)弁理士費用100万円原告会社は,本件出願に対抗するため,調査,鑑定等を弁理士に依頼し,弁理士報酬として100万円を支払うことを約した。 (ウ)原告会社担当者に生じた費用100万円原告会社は,本件出願に対抗するため,必要な業務を原告会社の担当者に行わせ,その業務に係る人件費及び出張旅費等の費用を負担することを余儀なくされた。その合計額は100万円を下らない。 (エ)合計以上より,原告会社が被告の不法行為により受けた損害額は,合計659万6791円を下らない。 よって,原告会社は,被告に対し,不法行為に基づく損害賠償請求として,659万6791円及び民法所定の遅延損害金の支払を求める。 (被告の主張)原告会社の主張はいずれも否認する。 ( )第2事件の争点 ア被告の行為の違法性,損害発生及び因果関係,故意又は過失 (ア)発明者名誉権の侵害(原告A1の主 を求める。 (被告の主張)原告会社の主張はいずれも否認する。 ( )第2事件の争点 ア被告の行為の違法性,損害発生及び因果関係,故意又は過失 (ア)発明者名誉権の侵害(原告A1の主張)TNa被告は故意又は過失により本願発明の発明者を被告であるとして,,,四国に本件出願をさせたことにより,原告A1が本願発明の発明者として有する発明者名誉権を侵害した。 b後記被告の主張bは否認する。 (被告の主張)a原告A1の主張aは否認する。 b本願発明は新規性を欠くから,特許の要件を充たさない。そうである以上,原告A1の発明者名誉権の侵害はない。 (イ)本件助成金申請による名誉感情の侵害(原告A1の主張)a被告は,本件助成金申請に当たり,ガラス多孔体の製造の工業化を被告の開発課題としたが,その開発課題の前提となる技術の1つとして,本件出願を被告の発明に係るものとして引用した行為(前提事実( )イ)は,原告A1の本件共同 研究における役割及び成果を完全に否定し,かつ,その成果である本件多孔化技術を盗用したものであって,社会通念上許される限度を超えている。 b被告には,上記行為につき,故意又は過失があった。 c原告A1は,上記行為により,名誉感情を害された。 (被告の主張)a原告A1の主張は否認する。 b被告は,水熱ホットプレス法を利用したのでは発泡体の工業的な量産が難しいため,それを超える新しい方法を開発することを目的とし,自らの行った研究を申請書に記載して本件助成金申請を行ったにすぎない。 (ウ)本件受賞による名誉感情の侵害 (原告A1の主張)a被告が,本件受賞の理由に被告の業績として含まれている水熱反応を利用した廃棄ガラスビンから発泡多孔体を作製する廃棄ガラスビンのリサイクル技術を自己の研究成果 感情の侵害 (原告A1の主張)a被告が,本件受賞の理由に被告の業績として含まれている水熱反応を利用した廃棄ガラスビンから発泡多孔体を作製する廃棄ガラスビンのリサイクル技術を自己の研究成果であるように称して,自己が同賞の対象者として推薦されるように仕向けた行為(前提事実( ))は,原告の本件共同研究における役割及び成果を完 全に否定し,かつ,その成果である本件多孔化技術を盗用したものであって,社会通念上許される限度を超えている。 b被告には,上記行為につき,故意又は過失があった。 c原告A1は,上記行為により,名誉感情を害された。 (被告の主張)原告A1の主張は否認する。 イ損害額(原告A1の主張)原告A1は,被告の不法行為により著しい精神的苦痛を受けたものであり,その相当な慰謝料は1000万円を下らない。 よって,原告A1は,被告に対し,不法行為に基づく慰謝料請求として,1000万円及び民法所定の遅延損害金の支払を求める。 (被告の主張)原告A1の主張は否認する。 第3当裁判所の判断 本件多孔化技術と本願発明との関係( )本件請求項1の発明(無加圧発泡)について ア請求項1の解釈(ア)本件請求項1の発明は,加圧発泡の技術を意味し,無加圧発泡の技術は含まれないものと解される。 (イ)すなわち,前提事実( )(「水熱処理」及び「水熱ホットプレス法」の用語説 明部分),証拠(甲58の1~4)及び原告A1本人尋問の結果によれば,「水熱処理」は,オートクレーブの外部からの圧搾というプロセスを含む「水熱ホットプレス法」を包含する概念であると認められる。また,本件明細書には,請求項1にいう「水熱処理」に被告が主張する加圧しない条件下での水熱処理が含まれる旨の説明はない上,発明の実施形態(【0013】~【00 法」を包含する概念であると認められる。また,本件明細書には,請求項1にいう「水熱処理」に被告が主張する加圧しない条件下での水熱処理が含まれる旨の説明はない上,発明の実施形態(【0013】~【0015】)及び実施例(【0017】~【0031】)として,いずれも混練物をピストン・シリンダタイプのオートクレーブ内に充填し,ピストンを駆動することにより所定の圧力で加圧して水熱条件下で成形し,固化体を得る方法は記載されているが,被告が主張する加圧しない条件下で水熱処理した実施態様は記載されていない。さらに,被告は,本件助成金申請において,「申請者らは,ガラス粉末を水熱ホットプレス(用語説明参照)することにより得られた固化体を空気中で加熱することにより,発泡現象が起こり密度0. 程度の軽量多孔体が作成できることを発見した。(特許出願済:特願20g/cm301-290418)しかし,この方法では最初に一つ一つの固化体をバッチ式で作成する必要があり形状制御も難しいために,工業化には適さない。そこで,本技術を用いたガラス多孔体の製造の工業化を目指すためには,ホットプレスせずに粉末の状態で水熱処理(用語説明参照)してから成形し発泡させる方法を確立する必要がある。これまでの研究で,水熱処理したガラス粉末を成形してから加熱することにより,ガラス多孔体が得られることを実験室レベルで確認しており,特許の出願を予定している。」(前提事実( ))と記載しているが,この記載は,本願発明は水 熱ホットプレスによるものであり,ホットプレスなしにガラス多孔体を得る技術は,その後の研究により実験室レベルでは成功し,別な特許出願を予定していることを意味していると認められる。 これらの事実によれば,当業者は,本件明細書につき,ピストン・シリンダタイプのオートクレーブによ その後の研究により実験室レベルでは成功し,別な特許出願を予定していることを意味していると認められる。 これらの事実によれば,当業者は,本件明細書につき,ピストン・シリンダタイプのオートクレーブにより水熱ホットプレスを行い,緻密化されたガラスの固化体を得,それを発泡現象により多孔体とする技術が記載されているものとして理解す るというべきである。よって,本件請求項1の発明は加圧発泡の技術を意味し,無加圧発泡の技術は含まれないものと解される。 (ウ)これに反する被告の主張は,採用することができない。 イ本件多孔化技術に含まれる技術第3報告書記載の実験は,ガラス粉末と水の混練物を加圧しながら水熱処理する方法を採用していること,すなわち,本件多孔化技術に加圧発泡の技術が含まれていることは,当事者間に争いがない。 ウ 結論 よって,本件多孔化技術には,本件請求項1の発明がすべて開示されていると認められる。 ( )本件請求項3の発明(閉気孔)について ア本件多孔化技術における気孔(ア)証拠(甲30,原告A1,被告)及び弁論の全趣旨によれば,本件多孔化技術により作製されたガラス固化体の気孔は閉気孔であったことが認められる。 (イ)また,証拠(甲6の1及び2,30,原告A1)及び弁論の全趣旨によれば,第3報告書中の図9下段の写真(甲6の2の3-13頁)は,本件多孔化技術により作製されたガラス固化体の気孔は閉気孔であることを示していることが認められる。 これに反する被告の主張は,採用することはできない。 イ 結論 以上のとおり,本件多孔化技術は,構成要件(閉気孔)を開示していたものであGるから,本件多孔化技術には,本件請求項3の発明が開示されていると認められる。 ( )本件請求項4の発明(製造方法その1)について 前記( )及び( ) 要件(閉気孔)を開示していたものであGるから,本件多孔化技術には,本件請求項3の発明が開示されていると認められる。 ( )本件請求項4の発明(製造方法その1)について 前記( )及び( )のとおり,本件多孔化技術には,本件請求項1及び3の発明が開 示されているから,本件多孔化技術には,本件請求項4の発明も開示されていると認められる。 ( )本件請求項7の発明(粒子直径)について ア本件多孔化技術における粒子直径証拠(甲4の1及び2)及び弁論の全趣旨によれば,第1報告書には,廃棄ガラスサンプルは粉砕後に最高250メッシュの網でふるわれた旨の記載があること,これは,規格の呼び口径では63μに相当することが認められるから,本件多JISm孔化技術は,粒子直径63μ以下のガラス粉末を使用しているものと認められmる。 しかし,第1~第3報告書には,ガラス固化体の原材料としてガラス粉末の粒子直径が50μ以下であることが好ましいことを示唆する記載はない。 mRイ構成要件本件請求項7の発明における構成要件は「ガラス粉末の粒子直径が50μmR,以下である」というものである(前提事実( )イ)。そして,本件明細書には,「原材 料としてガラス粉末の粒子直径が50μ以下であることが好ましい。」(【00m13】)と記載されている。 ウ検討(ア)本件明細書には,「原材料としてガラス粉末の粒子直径が50μ以下mであることが好ましい。」ことの理由については言及されていない。しかも,実施例には,粒子径が43~53μの粉末試料を使用し(【0017【002m】,3】),「粉末試料の粒子径を53μアンダーにしても同様な多孔体が得られmた。」旨結論づける(【0030】)とともに,本発明を実施するための μの粉末試料を使用し(【0017【002m】,3】),「粉末試料の粒子径を53μアンダーにしても同様な多孔体が得られmた。」旨結論づける(【0030】)とともに,本発明を実施するための好ましい水熱条件等を整理した部分(【0031】)においては,ガラス粉末の粒子直径について何ら言及していない。 しかし,これらの点は,本件請求項7の発明が特許法36条に違反したり,数値限定発明の要件を満たさず新規性又は進歩性を欠いているため,特許されないことは意味しても,本件請求項7の発明の発明者が被告など本件多孔化技術の発明者以外の者であることを妨げるものではない。 (イ)複数の者が共同発明者となるためには,課題を解決するための着想とその具体化の過程において,これらの者の間の一体的・連続的な協力関係の下に,それぞれが重要な貢献をなすことが必要であるというべきである。 本件請求項7の発明は,本件多孔化技術が見いだされた後,被告の指導の下に進められたC1の研究の結果導かれたものであり,構成要件に示された数値限定Rの技術的意義を見いだしたのは,被告及びC1である。 しかし,本件請求項7の発明は,本件多孔化技術の知見に基礎を置きつつ,より好ましい実施条件を追求して粒子直径の数値を更に限定したものであるから,本件請求項7の発明に至る研究の着想を提供したのは本件多孔化技術の発明者であって,被告及びC1はこれを具体化したという関係にあるということができる。 また,本件多孔化技術には本件請求項1~4の発明が開示されていることから明らかなとおり,本件請求項7の発明は,本件多孔化技術がいまだ公知になっていないことを前提とする。 さらに,本件請求項7の発明は,原告A1の補助としてではあるものの本件多孔化技術の研究に関与したC1が,原告A1の高知大学退官後も被 明は,本件多孔化技術がいまだ公知になっていないことを前提とする。 さらに,本件請求項7の発明は,原告A1の補助としてではあるものの本件多孔化技術の研究に関与したC1が,原告A1の高知大学退官後も被告の指導の下に同研究を継続した結果見いだされたものである。 これらの点を考慮すると,本件請求項7の発明は,本件多孔化技術の発明者とその後研究を発展させた被告及びC1とが,直接的に共同で研究を実施したという関係にはないものの,課題を解決するための着想とその具体化の過程において,なお一体的・連続的な協力関係の下にそれぞれ重要な貢献をしたものと認めるのが相当である。 (ウ)したがって,本件請求項7の発明は,本件多孔化技術の発明者並びに被告及びC1の共同発明と認められる。 これに反する原告ら及び被告の主張は,いずれも採用することができない。 ( )本件請求項8~10の発明(添加水量,加圧圧力及び加熱温度)について ア前提事実( )に加え,証拠(乙2の1及び2,7の5,証人C1,被告)に よれば,原告A1の高知大学退官後に,被告の指導の下に進められたC1の研究の結果,本件多孔化技術であるガラス固化体の多孔化技術の実施に当たり,ガラス粉末に対する添加水量が10以上であること,オートクレーブ内のガラス粉末wt%を加圧する圧力が10以上であること,加熱炉による加熱温度が750℃以MPa上であることが好ましい条件であることが判明したことが認められる。 イ他方,本件多孔化技術の実施条件が本件請求項8~10の定める条件の範囲内に含まれることは,当事者間に争いがない(前提事実( )ウ(エ)~(カ))。 ウしたがって,本願発明のうち本件請求項8~10の発明については,本件多孔化技術の発明者に加え,その後に研究を行った被告及びC1も,発明者に含ま に争いがない(前提事実( )ウ(エ)~(カ))。 ウしたがって,本願発明のうち本件請求項8~10の発明については,本件多孔化技術の発明者に加え,その後に研究を行った被告及びC1も,発明者に含まれるというべきである。 これに反する原告ら及び被告の主張は,いずれも採用することができない。 ( )本件請求項11の発明(昇温降温速度)について ア本件多孔化技術における昇温降温速度第3報告書には,大部分のガラスサンプルの加熱速度を5℃に設定した旨/minの記載があることは,当事者間に争いがない。 しかし,第1~第3報告書には,オートクレーブ内の昇温速度及び降温速度をもっと遅くすることや,毎分1℃とすることを示唆する記載はない。 Zイ構成要件本件請求項11の発明における構成要件Zは「オートクレーブ内の昇温速度と,降温速度を毎分1℃とした」というものである(前提事実( )イ)。そして,本件明 細書には,「良好なガラス多孔体を得るには…オートクレーブ内の昇温速度と降温速度は概ね毎分1℃とするのが適当である。」(【0016】)と記載されている。 ウ検討(ア)本件明細書には,「良好なガラス多孔体を得るには…オートクレーブ内の昇温速度と降温速度は概ね毎分1℃とするのが適当である。」ことに関連して,実施例として,オートクレーブ内の混練物を毎分1℃の昇温速度で加熱し,毎分1℃ の降温速度で冷却する旨の記載があるが(【0018】),その理由については言及されていない。 しかし,この点は,本件請求項11の発明が特許法36条に違反したり,数値限定発明の要件を満たさず新規性又は進歩性を欠いているため,特許されないことは意味しても,本件請求項11の発明の発明者が被告など本件多孔化技術の発明者以外の者であるとすることを妨げるものではない。 (イ 発明の要件を満たさず新規性又は進歩性を欠いているため,特許されないことは意味しても,本件請求項11の発明の発明者が被告など本件多孔化技術の発明者以外の者であるとすることを妨げるものではない。 (イ)本件請求項11の発明は,本件多孔化技術が見いだされた後,被告の指導の下に進められたC1の研究の結果導かれたものであり,構成要件に示されZた数値限定の技術的意義を見いだしたのは,被告及びC1である。 しかし,本件請求項11の発明は,本件請求項7の発明と同様に,本件多孔化技術の知見に基礎を置きつつ,より好ましい条件を追求して昇温速度及び降温速度の数値を限定したものであるから,本件請求項11の発明に至る研究の着想を提供したのは本件多孔化技術の発明者であって,被告及びC1はこれを具体化したという関係にあるということができる。 また,本件多孔化技術には本件請求項1~4の発明が開示されていることから明らかなとおり,本件請求項11の発明は,本件多孔化技術がいまだ公知になっていないことを前提とする。 さらに,本件請求項11の発明は,原告A1の高知大学退官の前後を通じてC1が本件多孔化技術の研究に関与した結果見いだされたものである。 これらの点を考慮すると,本件請求項11の発明も,本件請求項7の発明と同じく,本件多孔化技術の発明者と被告及びC1とが,一体的・連続的な協力関係の下にそれぞれが重要な貢献をしたものと認めるのが相当である。 したがって,本件請求項11の発明は,本件多孔化技術の発明者並びに被告及びC1の共同発明と認められる。 これに反する原告ら及び被告の主張は,いずれも採用することができない。 ( )小括 以上の認定及び前提事実( )ウをまとめると,次のとおりとなる。 ア本件請求項1~6の発明の発明者は,本件多孔化技術の発明者である。 イ ,いずれも採用することができない。 ( )小括 以上の認定及び前提事実( )ウをまとめると,次のとおりとなる。 ア本件請求項1~6の発明の発明者は,本件多孔化技術の発明者である。 イ本件請求項7~11の発明の発明者は,本件多孔化技術の発明者並びに被告及びC1である。 本件多孔化技術の発明者( )事実認定 前提事実及び争いのない事実に,証拠(各項に挙げたもの)及び弁論の全趣旨によれば,以下の事実が認められる。 ア本件共同研究の当時,水熱化学実験所においては,新素材開発を助教授であった被告主体に,環境関連を原告A1主体にと研究分野を分けており,被告は,本件共同研究に関与していなかった。 (甲52の4,原告A1)イ原告A1は,本件共同研究の実験を補助するアルバイトとして,月5万円の給料でC1を雇用したが,その際,水熱化学の分野ないし水熱ホットプレス法について学んだことのない同人に対し,その一般的な説明をしたほか,本件共同研究の目的及び行うべき実験の概要についても説明した上で,実験を行わせた。 (前提事実( )ア,甲7,20,29,30,57,乙9の1,証人C1,原告A 1)ウ原告A1は,C1に対して実験を指示するに当たり,指示の内容を紙に記載して具体的に説明した。 (甲57,証人C1,原告A1)エC1は,本件共同研究の実験を始めた当初,原告A1から指示された実験を指示されるままに行っていたが,実験の経験を重ねるうちに水熱化学ないし水熱ホットプレス法に関する理解を深め,次第に,実験の方法等について原告A1に提案したり,同人と議論するようになった。 (甲30,57,原告A1) オ原告A1は,本件共同研究を進める中で,水熱ホットプレス法により得られたガラス固化体の強度に満足できなかったことから,C1に対し り,同人と議論するようになった。 (甲30,57,原告A1) オ原告A1は,本件共同研究を進める中で,水熱ホットプレス法により得られたガラス固化体の強度に満足できなかったことから,C1に対し,ガラス固化体につき示差熱分析()法による加熱試験を行うように指示した。C1が,水熱DTA化学実験所で実験装置の管理を担当していた被告に相談したところ,被告は,ガラス試料が試料ホルダーから流れ出て装置を損傷するおそれがあるから,熱TG-DTA分析装置を指示された分析に使用することはできない旨説明し,当該分析のために白金坩堝を使用することを提案した。C1は,その旨原告A1に報告し,結局,原MPawt%告A1の指示ないし了解の下に,200℃,60,2時間,含水率12の条件で圧縮された青色ガラスを105℃で5日間おいて前もって再加熱し,それを白金坩堝を用いて1時間750度で再加熱した。 (争いのない事実,甲6の1及び2,乙1,7の1,証人C1,原告A1,被告)カC1が上記オのとおり実験を実施したところ,当該ガラス固化体は,発泡による多孔性の外観を呈した。 原告A1は,C1から上記ガラス多孔体を直ちに見せられたが,この多孔体を当初目指していた固化体とは異なるものの,原告会社に本件共同研究の成果として報告するに値する研究成果と考え,この段階で本件共同研究における実験を打ち切ることとし,C1に対し,更に電子顕微鏡撮影等を行った上,報告書を作成するように指示した。その際,原告A1は,C1に対し,この発泡現象につき,「この結果は特に重要です。」との所見を付することも指示した。 C1は,この指示に基づき,第3報告書を作成した。 (争いのない事実,甲6の1及び2,7,20,29,30,証人C1,原告A1)キ原告A1は,平成10年11月4日ころ,C1 を付することも指示した。 C1は,この指示に基づき,第3報告書を作成した。 (争いのない事実,甲6の1及び2,7,20,29,30,証人C1,原告A1)キ原告A1は,平成10年11月4日ころ,C1と共に原告会社に赴き,原告会社に対し,第3報告書に基づき説明を行い,上記発泡現象の意義及び産業上の有用性について説明した。 (前提事実( )イ(ウ),甲7,20,29,30,53,原告A1) ク証人C1は,原告A1からは実験の方法等について具体的な指示はなく, 自ら考えて実験を実施した旨証言する。 しかしながら,証人C1は,原告A1がガラス固化体の法による分析をCDTA1に指示したこと,ガラス多孔体を見せられた原告A1が本件共同研究の実験を打ち切ることとし,C1に報告書作成を指示したことは認め,更に「A先生はいつも私に指示を出すときに,ペーパー1枚,その中に図が書いてありまして,この図を使ってあなたがしなければならないことというようなことで御説明を頂きましたので,…」(証人尋問調書8頁)と証言しており,これらの証言内容からは,原告A1から同証人に対し実施すべき実験について具体的な指示があったことが窺われるところである。 また,第1~第3報告書(甲4の1及び2,5の1及び2,6の1及び2)と比較しながら,C1の本件修士論文(乙2の1及び2)を検討すると,本件多孔化技術の後追いの実験を行ったものにすぎないとの原告らの批評が当たっていると認められる。この事実は,本件共同研究当時のC1の実験能力の程度を推認させる重要な間接事実である。 さらに,基本的には,本件多孔化技術は,民間企業である原告会社との本件共同研究の遂行過程で得られたものであるところ,原告A1が本件共同研究の高知大学側の責任者であり,C1は,別に修士論文の課題を持ちながら,同研 的には,本件多孔化技術は,民間企業である原告会社との本件共同研究の遂行過程で得られたものであるところ,原告A1が本件共同研究の高知大学側の責任者であり,C1は,別に修士論文の課題を持ちながら,同研究の実験を補助するアルバイトとして雇用されていたものである。 これらの事実によれば,上記ア~キに認定の事実に反する証人C1の証言の一部は,採用することができず,他に上記認定を左右するに足りる証拠はない。 ケ被告は,本人尋問において,発泡による多孔性を有するガラス固化体に初めて意義を見いだしたのは被告であるかのような供述をするが,仮に被告が原告A1よりも先に多孔性を有するガラス固化体を見た上何らかの発言をしたとしても,本件共同研究に関与していなかった被告の発言は,感想程度のものと認めざるを得ず,この発言の点から,被告が本件多孔化技術の発明者となることはないというべきである。 ( ) 判断 ア「発明」とは,「自然法則を利用した技術的思想の創作のうち高度のもの」をいうことから,真の発明者といえるためには,当該発明における技術的思想の創作行為に対して現実に加担したことが必要である。したがって,具体的着想を示さずに,単なるアイデアや研究テーマを与えたにすぎない者は,技術的思想の創作行為に現実に加担したとはいえないから,真の発明者ということはできない。もっとも,化学関連の分野においては,一般的に,着想を具体化した結果を事前に予測することは容易でないため,実験の結果予測したのとは異なる結果を生じ,それが発明に結びつくことも少なくない。このような場合,当該結果の技術的な意義を見いだすとともに,その有用性を確認した者をもって真の発明者と見るべき場合がある。 イ(ア)上記( )に説示の事実によれば,本件共同研究の実験に第一線で従事し ていたのはC1 結果の技術的な意義を見いだすとともに,その有用性を確認した者をもって真の発明者と見るべき場合がある。 イ(ア)上記( )に説示の事実によれば,本件共同研究の実験に第一線で従事し ていたのはC1であるものの,研究の主体は飽くまで原告A1であり,C1はその補助として実験を実施していたにとどまるものというべきである。また,そうした実験の結果得られたガラス固化体の多孔化に技術的な意義を見いだし,有用性を確認したのも,原告A1であると認められる。 したがって,原告A1のみが,本件多孔化技術であるガラス固化体の多孔化技術という技術的思想の創作行為に対して現実に加担した者,すなわち発明者であるということができる。 これに反する被告の主張は,採用することができない。 (イ)よって,a本件請求項1~6の発明の発明者は,原告A1である。 b本件請求項7~11の発明の発明者は,原告A1並びに被告及びC1である。 第1事件について( )被告の行為の違法性の有無 ア前記2( )のとおり,本願発明の発明者は,原告A1並びに被告及びC1 であるところ,本件出願は,被告のみを発明者として行われており,冒認出願に当たる。 イ(ア)原告会社が本件共同研究の結果生じた発明で高知大学に承継された特許を受ける権利又はこれに基づき取得された特許権につき優先的実施権を有すること(11条)は,前提事実( )アのとおりである。 (イ)しかし,実施許諾の対象となる権利は,高知大学に承継された特許を受ける権利等であり,そもそも本件共同研究の結果,発明が得られたとしても,高知大学がその特許を受ける権利を承継すること又は特許出願することが本件共同研究契約上義務づけられているわけではない。しかも,原告会社が有する上記優先的実施権は,飽くまで高知大学が原告会社等 ても,高知大学がその特許を受ける権利を承継すること又は特許出願することが本件共同研究契約上義務づけられているわけではない。しかも,原告会社が有する上記優先的実施権は,飽くまで高知大学が原告会社等に許諾することができるというものであるにとどまり,契約上,原告会社が当然に優先的実施権を取得するとか,高知大学が優先的実施の許諾を義務づけられるという内容とはなっていない。 したがって,原告会社が本件共同研究契約に基づいて有する優先的実施権とは,本件共同研究の結果生じた発明が特許要件を充たすものである場合に,当該特許を受ける権利等が高知大学に承継されたときは,高知大学から,当該特許権等を一定期間優先的に実施し得るように許諾されることを期待し得る地位にとどまるものと理解するのが相当である。 (ウ)しかも,原告会社は,契約当事者ではない被告や四国に対しては,TNそのような地位を当然に主張し得るものではない。 ウ(ア)被告が本件共同研究契約とは何のかかわりもない全くの第三者であるとして検討すると,特許出願は特許法により認められた権利の行使であるから,後日拒絶査定が確定して特許を得られないことが確定しても,原則として,違法性が阻却されると解される。 しかし,特許権の設定登録がされた場合,特許権者以外の者は当該特許発明の業としての実施をすることができなくなり(特許法68条),このような事態から逃れるために,第三者は,費用をかけて無効審判請求等を行わざるを得なくなるから, 特許出願人が事実的,法律的根拠を欠くことを知りながら,又は特許出願人として特許出願に当たり通常必要とされる事実調査及び法律的検討をすれば,事実的,法律的根拠を欠くことを容易に知り得たといえるのに,あえて特許出願をした場合には,違法性が阻却されないことがあると解すべきである。 ( に当たり通常必要とされる事実調査及び法律的検討をすれば,事実的,法律的根拠を欠くことを容易に知り得たといえるのに,あえて特許出願をした場合には,違法性が阻却されないことがあると解すべきである。 (イ)登録拒絶理由のうち,冒認出願の点は,原告会社との関係において,不法行為法上違法とはならないと解される(特許法123条2項参照)。 また,新規性,進歩性等の欠如については,出願審査の請求(特許法48条の2)後に不法行為法上違法となることがあると解すべきである。本件では,本件出願につき,出願審査の請求はされていない。 したがって,被告が全くの第三者であるとして検討した場合であっても,原告会社との関係で,被告が四国をして本件出願をさせたことにつき不法行為法上違TN法であると認めることはできない。 エ以上によれば,本件出願は,原告会社との関係では,不法行為法上の違法性を有しないというべきである。 ( )まとめ よって,原告会社の被告に対する不法行為に基づく損害賠償請求は,その余の点について判断するまでもなく理由がない。 なお,契約責任の点については,原告会社は,300万円近い研究経費を負担して大学との共同研究を行ったにもかかわらず,その成果である多孔性ガラス材料が,原告A1の後任教授である被告により,原告会社に無断で,他社との間で実用化が図られようとしたものであり,原告会社に納得できない気持ちが残ることは,十分理解することができる。しかしながら,本件共同研究契約上の原告会社の地位は,上記( )イで述べたとおり,さほど強いものではないから,被告が他社と組んで公 知化された技術の実用化を目指すことを阻止することは,道義的にはともかく,契約条項上はできないものである。原告会社としては,高知大学又は原告A1に特許出願をしてもらうか,研究成果の公 と組んで公 知化された技術の実用化を目指すことを阻止することは,道義的にはともかく,契約条項上はできないものである。原告会社としては,高知大学又は原告A1に特許出願をしてもらうか,研究成果の公表時期を協議により定めるものと規定した16 条により,本件多孔化技術を一定期間秘匿しておくしかなかったものである。ところが,特許出願については,原告らは,長期間放置していたと評されてもやむを得ないものであるし,公表時期の協議については,C1の修士論文の課題変更が認められたことが同修士論文の備付け及び国際会議での発表による本件多孔化技術の公知化,被告による研究及び実用化につながっていったものである。公表時期の協議の点については,原告A1が自認するとおり,同原告の責任も重いといわなければならない。 第2事件について( )被告の行為の違法性,損害発生及び因果関係,故意又は過失 ア発明者名誉権の侵害(ア)発明者名誉権について,特許法上の規定はないが,工業所有権の保護に関する1883年3月20日のパリ条約(以下「パリ条約」という。)4条の3は,「発明者は,特許証に発明者として記載される権利を有する。」旨規定している。特許法26条は,「特許に関し条約に別段の定めがあるときは,その規定による。」としていることから,パリ条約4条の3は,我が国において直接適用されることになる。 また,特許法においても,①特許権の設定登録があったときに,特許庁長官が特許権者に特許証を交付すること(28条1項),及び特許証には発明者の氏名を記載しなければならないこと(同法施行規則66条4号),②特許を受けようとする者が特許出願に際して提出する願書に発明者の氏名及び住所又は居所を記載すること(36条1項2号),③発明者の氏名を出願公開の特許公報の掲載事項としたこと 法施行規則66条4号),②特許を受けようとする者が特許出願に際して提出する願書に発明者の氏名及び住所又は居所を記載すること(36条1項2号),③発明者の氏名を出願公開の特許公報の掲載事項としたこと(64条2項3号),④発明者の氏名を特許公報の掲載事項としたこと(66条3項3号)といった規定が存在しており,これらは,発明者が発明者名誉権を有することを前提とし,これを具体化した規定であると理解される。 したがって,発明者は,発明完成と同時に,特許を受ける権利を取得するととも に,人格権としての発明者名誉権を取得するものと解される。 また,上記②及び③のとおり,願書及び公開特許公報に発明者の氏名等を掲載すべきとされていることは,発明者名誉権を具体化した規定であると解されること,出願に係る発明につきたとえ特許がされても,後に無効審判請求等によって無効とされる可能性があることを考慮すると,特許要件ないし無効理由の有無によって発明者名誉権の保護の有無を決することは,同権利の保護を不安定なものにするものというべきことなどを考えると,いまだ登録されず,出願手続が特許庁に係属中のものであっても,又は当該出願に係る発明が特許要件を満たさない可能性があるとしても,発明者名誉権の法的保護は及ぶと解すべきである。 これに反する被告の主張は,採用することができない。 (イ)前記2( )のとおり,本願発明の発明者は,原告A1並びに被告及びC1 である。 ところが,被告は,自分のみが発明者であるとして四国に対し特許を受けるTN権利を譲渡したものであるが,このような被告の譲渡行為は発明者名誉権を侵害するものとして違法であり,かつ,原告A1の被った発明者名誉権侵害の被害との間に相当因果関係を有する。 (ウ)そして,本願発明の発明者がだれであるかについての被告の判 の譲渡行為は発明者名誉権を侵害するものとして違法であり,かつ,原告A1の被った発明者名誉権侵害の被害との間に相当因果関係を有する。 (ウ)そして,本願発明の発明者がだれであるかについての被告の判断には,少なくとも重大な過失があったものである。 すなわち,前提事実( )ウ,( ),( )及び( )並びに前記2( )に認定の事実によ れば,被告は,本件多孔化技術が本件共同研究の過程で発見されたものであり,C1は,アルバイトとして原告A1に雇用されていたこと,C1が修士2年目から行うことになった多孔性ガラス材料の研究は,本件多孔化技術に基礎を置くものであることを知っていたものであるから,被告は,少なくとも原告A1が本件多孔化技術の共同発明者である可能性が高いことを容易に知ることができたものと推認すべきである。ところが,被告は,原告A1に対し,被告を発明者として特許出願をす ることの可否を尋ねることなく,本件出願を行ったものであるから,本願発明の発明者がだれであるかの判断につき少なくとも重大な過失があることは明らかである。 なお,C1が平成12年11月にメキシコで多孔性ガラス材料の合成につての学会発表を行ったが(前提事実( )イ),その際,原告A1は,C1に対し,発表を行 ったこと自体や発表者に原告A1が含まれていないことにつき,抗議しなかったものである(甲52の1,原告A1)。しかしながら,このような原告A1の消極的な行為から,本件多孔化技術につき特許を受ける権利を放棄したとか,発明者として扱われる権利を放棄したものと認めることはできないから,上記抗議をしなかった行為を理由に,被告に重大な過失がなかったものと認めることはできない。 (エ)したがって,被告の特許を受ける権利の譲渡行為は,原告A1の発明者名誉権を侵害する とはできないから,上記抗議をしなかった行為を理由に,被告に重大な過失がなかったものと認めることはできない。 (エ)したがって,被告の特許を受ける権利の譲渡行為は,原告A1の発明者名誉権を侵害するものとして,不法行為を構成する。 イ本件助成金申請による名誉感情の侵害本件助成金申請において,被告は,「申請者らは,…軽量多孔体が作成できることを発見した。(特許出願済:特願2001-290418)」と記載している(前提事実( ))。上記2( )のとおり,本願発明の発明者は,原告A1並びに被告及びC 1であるところ,「申請者らは」との文言は,その文脈で考えれば,被告並びに分担開発者であるG1及びH1を意味するものと認められる。したがって,「申請者ら。 は,…発明した。」との表現は,一部において虚偽であるといわなければならないしかも,前記1に説示の事実によれば,本願発明の主要な部分は,既に本件多孔化技術に開示されており,被告及びC1により更に進展された部分はさほど多くはないものと認めざるを得ないから,本願発明全体に対する原告A1の寄与割合は極めて大きいものであり,原告A1を除外したことが,些細な点での誤りであると認めることはできない。 また,前記ア(ウ)に説示のとおり,本願発明の発明者がだれであるかの点についての被告の判断には,少なくとも重大な過失があったものである。 さらに,本件助成金申請の申請書における「申請者らは,…軽量多孔体が作成できることを発見した。」との主張は,私的な場面で行われたものではなく,公的な助成金を申請するために国家機関に対して行われたものであり,証拠(甲10)及び弁論の全趣旨によれば,当該申請書は,文部科学省の担当者だけでなく,提案の採否を担当する審査委員会に所属する多くの科学者を含む20名に及ぶ委員の目に触 に対して行われたものであり,証拠(甲10)及び弁論の全趣旨によれば,当該申請書は,文部科学省の担当者だけでなく,提案の採否を担当する審査委員会に所属する多くの科学者を含む20名に及ぶ委員の目に触れることが予定されていたことが認められる。 以上の事実に,自然科学の研究者の世界では,だれが最初にその発見をしたかの点は極めて重要な事項であり,その点についての誤りは,剽窃につながるものとして厳しく糾弾されていること(甲49~51,弁論の全趣旨)を考慮すると,本件助成金申請に当たりことさらに原告A1を侮辱等する具体的な記載は見当たらないこと,本件助成金申請の目的は,本願発明を更に発展させた技術の確立,事業化にあることなどを併せ考慮しても,被告による本件助成金申請における「申請者らは,…軽量多孔体が作成できることを発見した。」との記載は,社会通念上許容される限度を超えて原告A1の人格権の1つとしての名誉感情を侵害する違法な行為であり,故意過失の要件にも欠けるところはないと認められる。 これに反する被告の主張は採用することができない。 ウ本件受賞による名誉感情の侵害(ア)日本セラミックス協会賞学術賞を授賞するか否かは,同協会が決定することであり,原告A1に対する関係で違法となり得る行為は,受賞を目的として行われる,被告が発明者であるとの対外的主張である。 しかしながら,本件では,日本セラミックス協会賞学術賞の受賞に向けた被告による上記のような行為があったことの主張立証はないから,本件受賞による名誉感情の侵害をいう原告A1の主張は,その余の点について判断するまでもなく理由がない。 (イ)したがって,本件受賞による名誉感情の侵害をいう請求は,その余の点 について判断するまでもなく理由がない。 ( )損害額 本願発明は原告A1の単独発明ではな までもなく理由がない。 (イ)したがって,本件受賞による名誉感情の侵害をいう請求は,その余の点 について判断するまでもなく理由がない。 ( )損害額 本願発明は原告A1の単独発明ではなく,被告及びC1との共同発明であるが,本願発明全体に対する原告A1の寄与割合は極めて大きいものであること,本件出願は,本件修士論文の備付け及びC1の国際会議での発表(前提事実( ))のため, 新規性又は進歩性を欠くものとして特許されない可能性が高いことなど本件訴訟に表れた諸般の事情を考慮すると,原告A1に対する慰謝料は,本件出願についての発明者名誉権侵害の不法行為につき70万円,本件助成金申請の申請書における虚偽記載による名誉感情侵害の不法行為につき30万円と認めるのが相当である。 結論 よって,原告会社の請求は理由がないからこれを棄却し,原告A1の請求は主文第1項記載の限度で理由があるからその限度でこれを認容し,その余を棄却することとし,主文のとおり判決する。 東京地方裁判所民事第40部裁判長裁判官市川正巳裁判官杉浦正樹裁判官 頼晋一

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