令和7年9月3日判決言渡 令和7年(行ケ)第10016号審決取消請求事件 口頭弁論終結日令和7年6月4日判決 原告 イッセセイフティソシエダッドリミターダ 同訴訟代理人弁理士山田朋彦土橋編 被告 日本カリフォルニアカスタム株式会社 同訴訟代理人弁理士岸本忠昭鈴木いづみ松下ひろ美木村一弘 主文 1 原告の請求を棄却する。 2 訴訟費用は原告の負担とする。 3 原告のため、この判決に対する上告及び上告受理の申立てのための付加期間を30日と定める。 事実及び理由 第1 請求特許庁が取消2023-300480号事件について令和6年10月10日にした審決を取り消す。 第2 事案の概要 1 特許庁における手続の経緯等 (1) 登録第6485884号商標(以下「本件商標」という。)は、被告を商標権者とし、「CLASSICSNOWSOCKS」の文字を標準文字で表してなり、第35類「自動車並びにその部品及び附属品(布製の滑り止めタイヤチェーンを含む。)の小売又は卸売の業務において行われる顧客に対する便益の提供」を指定役務として、令和3年5月20日に登録出願、同年12月14日に設定登録されているものである。 (2) 原告は、令和5年7月10日、特許庁に対し、本件商標は商標法(以下「法」という。)53条の2に該当することを理由として、本件商標の登録を取り消すことを求めて審判の請求をした。特許庁は、これを取消 原告は、令和5年7月10日、特許庁に対し、本件商標は商標法(以下「法」という。)53条の2に該当することを理由として、本件商標の登録を取り消すことを求めて審判の請求をした。 特許庁は、これを取消2023-300480号事件として審理し、令和6年1 0月10日、「本件審判の請求は、成り立たない。」との審決(以下「本件審決」という。)をして、その謄本は同月18日に原告に送達された。 (3) 原告は、令和7年2月14日、本件審決の取消しを求める本件訴訟を提起した。 2 本件審決の理由の要旨 (1) 原告は、パリ条約の同盟国等である米国において、第12類「Anti-skidchainsforvehicles ; Anti-skidtextilecoversfortires」を指定商品とする米国登録第3838639号商標(「」。以下「引用商標」という。)の商標権に関する権利を所有する者であって、当該商標権は2010年8月24日に登録され、現在も有効に存続している。そうすると、原告は、本件商標の 登録出願時である令和3年(2021年)5月20日には、パリ条約の同盟国等において商標(引用商標)に関する権利を有する者であったと認められる。 他方、原告は、「Classic」の文字からなる商標(以下「使用商標」という。)について、使用主義を採用する米国において、商標登録がされていなくても使用の事実によって商標権が発生すると主張しているが、原告が提出する証拠によっても、 引用商標が使用されているウェブサイトや商品包装等に「Classic」の文字が付記的に表示されていることが確認できるにすぎず、これらの証拠をもって、使用商標が、パリ条約の同盟国等における商標に関する権利に係る商標であるとはいえない。したがって 等に「Classic」の文字が付記的に表示されていることが確認できるにすぎず、これらの証拠をもって、使用商標が、パリ条約の同盟国等における商標に関する権利に係る商標であるとはいえない。したがって、原告がパリ条約の同盟国等において商標(使用商標)に関する権利を有する者であったとする原告の主張は、その前提を欠くものである。 (2) 「CLASSICSNOWSOCKS」の文字を標準文字で表してなる本件商標と、橙色の略円形状の図形の右側に「ISSE」の文字を太文字で表してなる引用商標(「」)とは、図形の有無及び構成文字において明らかに相違することから、外観上相紛れるおそれはない。また、称呼においても、構成音及び音数が明らかに相違することから、相紛れることなく判然と区別し得る。 さらに、両者は特定の観念を生じないことから、観念において比較することはできない。そうすると、本件商標と引用商標とは、観念において比較できないとしても、外観及び称呼において相紛れるおそれがないから、両者の外観、称呼、観念等によって需要者に与える印象、記憶、連想等を総合して全体的に考察すると、両者は相紛れるおそれのない非類似の商標である。 (3) 原告は、パリ条約の同盟国等において、使用商標に関する権利を有する者ではないが、引用商標に関する権利を有する者である。しかし、本件商標と引用商標とは、相紛れるおそれのない非類似の商標である。そうすると、法53条の2のその他の要件を検討するまでもなく、同条の要件を欠く。したがって、本件商標は、法53条の2に該当するものとしてその登録を取り消すことはできない。 第3 原告の主張する審決取消事由 1 取消事由1(「商標に関する権利」の判断の誤り)米国において、商品「布製タイヤチェーン」に使用 るものとしてその登録を取り消すことはできない。 第3 原告の主張する審決取消事由 1 取消事由1(「商標に関する権利」の判断の誤り)米国において、商品「布製タイヤチェーン」に使用商標「Classic」等を使用した原告の商品が遅くとも2010年末に流通しており、その状況は現在にいたるまで変わっていない。また、同商品は、「Classic」を大きく表示した商 品包装の態様で遅くとも2015年前半には流通していた。このように、原告は、本件商標の出願日以前から、布製タイヤチェーンに使用商標「Classic」を誠実に悪意なく、採択・使用しているのであり、これは、商標としての機能を発揮する態様での使用であるから、米国においてコモン・ロー上の商標権が発生している。にもかかわらず、原告のハウスマークたる引用商標の部分のみを商標と判断し、 「Classic」の部分を付記的に表示されているにすぎないと判断した本件審決には誤りがある。 2 取消事由2(「当該権利に係る商標…に類似する商標」の判断の誤り)本件審決は、本件商標「CLASSICSNOWSOCKS」を一体として類否を判断したが、これを構成する「SNOWSOCKS」は、指定役務との関 係において「布製タイヤチェーン」という小売の対象商品を意味し、出所識別機能としての称呼や観念が生じないから、本件商標から「CLASSIC」の部分を分離抽出して類否を判断すべきである。そして、本件商標の「CLASSIC」の部分と使用商標「Classic」とは、外観・称呼・観念を共通にするから、両商標は類似する商標である。したがって、本件審決は、商標の類否判断の基礎となる 本件商標の要部認定において誤りがあり、それを前提とした類否の判断に誤りがある。 3 取消事由3(審理不 ら、両商標は類似する商標である。したがって、本件審決は、商標の類否判断の基礎となる 本件商標の要部認定において誤りがあり、それを前提とした類否の判断に誤りがある。 3 取消事由3(審理不尽の違法)原告の代理人又は代理人と実質的に同一視できる者であった被告が、正当な理由がないのに、原告の承諾を得ることなく商標登録出願をし、登録されたものが本件 商標である。本件商標は、原告との取引上の信義則や商道徳に反するだけでなく、 商標制度の悪用によって公正な競業秩序や消費者の利益を阻害しようとするものといっても過言ではなく、これが商標の類否の判断や本件審決の結論に大きく影響することは疑いない。したがって、本件審決は、このような重要な審理が十分に尽くされていない状態でなされたものであるともいえるから、手続上の違背があり、審理不尽の違法がある。 第4 被告の反論 1 取消事由1について原告が、パリ条約の同盟国等である米国において、「Anti-skidchainsforvehicles ; Anti-skidtextilecoversfortires」を商品とする商標権を有するのは、米国登録第3838639号商標(引用商標)のみであるから、本件商標と 比較すべきは引用商標である。原告が主張する使用商標「Classic」は、前記米国登録商標の使用証明の提出において商品の種類を表すために付記的に表示されて使用されているにすぎず、これが「商標に関する権利」に該当するとする原告の主張は失当である。 2 取消事由2について 本件商標は構成全体として一体不可分なものとして認識、把握されるものであり、本件商標から「CLASSIC」の文字を分離抽出することはできない。そうすると、「CLASSIC」の文字を分 いて 本件商標は構成全体として一体不可分なものとして認識、把握されるものであり、本件商標から「CLASSIC」の文字を分離抽出することはできない。そうすると、「CLASSIC」の文字を分離抽出して、原告が付記的に表示しているにすぎない「Classic」の文字と類否を判断すべきであるという原告の主張は失当である。 3 取消事由3について本件審決は、本件商標と引用商標とが非類似であると判断したものであるから、たとえ法53条の2のその余の要件を満たしたとしても結局は同条に該当することはない。したがって、本件審決に審理不尽の違法はなく、原告の主張は失当である。 第5 当裁判所の判断 1 取消事由1(「商標に関する権利」の判断の誤り)について (1) 原告は、本件商標の出願日以前から、布製タイヤチェーンに使用商標「Classic」を誠実に悪意なく、採択・使用しているのであり、これは、商標としての機能を発揮する態様での使用であるから、米国においてコモン・ロー上の商標権が発生している旨主張する(なお、原告は、「商標に関する権利」として、引用商標を主張してはいない。)。 (2) そこで検討するに、掲記の証拠及び弁論の全趣旨によると、使用商標「Classic」の使用実績として、以下の事実が認められる。 ア原告の英語版、スペイン語版及び日本語版のウェブサイトでは、「イッセ・スノーソックス」は原告が開発・製造する布製タイヤチェーンであり、そのうち、代表的なスノーソックス(標準モデル)を「ClassicModel」、制動性・ 耐久性に優れた高品質モデルを「SuperModel」、大型車両向けのモデルを「TruckModel」として表示して、布製タイヤチェーン(スノーソックス)が販売されている(甲5の 動性・ 耐久性に優れた高品質モデルを「SuperModel」、大型車両向けのモデルを「TruckModel」として表示して、布製タイヤチェーン(スノーソックス)が販売されている(甲5の3の1~3)。 また、原告の日本語版のウェブサイトにおける原告商品に関する「よくあるご質問」には、「クラシックとスーパーの違いは何ですか?-スーパーは高品質モデル、 クラシックは標準モデルです。雪や氷の上でブレーキをかけたときの停止距離は、スーパーがクラシックより約30%ほど短く、また同条件下での耐久性は、スーパーがクラシックの2倍ほど耐久性があります。雪山や坂道の多い道路、通常でもチェーンの装着が求められる場所ではスーパーのご使用をお勧めいたします。都市部を中心に、年に数回程度の急な雪に備えたい方はクラシックをお勧めいたします。」 と記載されている(乙17)。この記載は、英語版及びスペイン語版のウェブサイトにおいても同様に記載されていると推認される。 イ原告は、米国において、「」を2008年12月23日に商標登録出願し、2010年8月24日に米国商標登録第3838639号を取得している(引用商標)。そして、原告が2016年8月15日に提出した商標見 本のウェブサイト写真には、原告の商品一覧表の上部に、原告のハウスマークである「」が大きく表示され、その一覧表に掲載された布製タイヤチェーンの商品種別として、「ClassicC-600」等と記載され、ブランド名(「Brand」)として「」が表示されている。また、原告が2020年8月5日に提出した商標見本の写真には、商品包装の上部に 「」が表示され、商品の写真を挟んだ下部に「Classic」と表示されている。(甲5の4の1~3、甲7)ウ米国において、 020年8月5日に提出した商標見本の写真には、商品包装の上部に 「」が表示され、商品の写真を挟んだ下部に「Classic」と表示されている。(甲5の4の1~3、甲7)ウ米国において、原告の商品を販売している「ECSTuning」のSNSサイトには、原告の商品である布製タイヤチェーンについて、3種類のスタイルと2種類のサイズがあるとされ、それらが「ClassicC-600」、「Su perC-500」、「SuperECOC-700」の3種類とそれぞれに2種類のタイヤサイズが紹介されている(甲13の1・2)。 エ米国の消費者組織である「コンシューマー・リポート」の公式サイトにおいて、商品包装の上部に「」が表示され、商品の写真を挟んだ下部に「Classic」と記載された原告商品が紹介されている(甲14の1・ 2)。 オ米国の小売サイトにおいて、布製タイヤチェーンの種類として「Classic」及びタイヤサイズが記載された原告商品や、商品包装の下部に「Classic」と記載された原告商品が販売されている(甲5の5の1・2、甲8)。 (3) 以上の認定事実によると、布製タイヤチェーンとの関係で出所識別標識とし て機能している標章は、原告のハウスマークである「」又は 原告の略称である「ISSE」であって、「Classic」の文字は、原告が販売する布製タイヤチェーンが有しているグレードや性能、装着しようとしているタイヤへの適合を判断するための用途や品質を表示する文字として機能しているものであって、出所を識別するものとして機能しているものとはいえず、商標としての機能を発揮する態様で使用しているとは認められないから、米国のコモン・ロー上の 商標権が発生していると認めることはできない。そうする 所を識別するものとして機能しているものとはいえず、商標としての機能を発揮する態様で使用しているとは認められないから、米国のコモン・ロー上の 商標権が発生していると認めることはできない。そうすると、原告が主張する使用商標は法53条の2に規定する「商標に関する権利」に該当せず、原告は、同条の「商標に関する権利を有する者」に該当しないから、取消事由1に関する原告の主張は理由がない。 2 取消事由2及び3について 以上のとおり、取消事由1に関する原告の主張は理由がないから、取消事由2に関する原告の主張については判断の必要がない。また、前記認定判断によると、本件審決に審理不尽の違法は認められないから、取消事由3に関する原告の主張も理由がない。 3 結論 以上によると、原告の取消事由に係る主張には理由がなく、本件審決にこれを取り消すべき違法はないから、原告の請求を棄却することとして、主文のとおり判決する。 知的財産高等裁判所第1部 裁判長裁判官本多知成 裁判官伊藤清隆 裁判官 天野研司
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