令和3年2月24日判決言渡令和2年(行ケ)第10049号審決取消請求事件口頭弁論終結日令和2年12月17日判決 原告小橋工業株式会社 訴訟代理人弁護士高橋雄一郎同阿部実佑季同北島志保 被告松山株式会社 訴訟代理人弁理士樺澤聡同山田哲也 主文 1 特許庁が無効2018-800039号事件について令和2年3月23日にした審決を取り消す。 2 訴訟費用は被告の負担とする。 事実及び理由 第1 請求主文同旨第2 事案の概要 1 特許庁における手続の経緯等⑴ 原告は,名称を「作業機」とする発明に係る特許(特許第5976246号。平成27年9月4日を出願日とする特願2015-174637号(原 出願)の一部を平成28年3月10日に新たな特許出願とした特願2016-46843号に係る特許。設定登録日平成28年7月29日。請求項の数1。以下「本件特許」という。)の特許権者である。 ⑵ 被告は,平成30年4月13日,特許庁に本件特許(請求項1に係る発明についての特許)につき無効審判請求をし,特許庁は上記請求を無効2018-800039号事件(以下「本件無効審判」という。)として審理した。 原告は,令和元年8月30日付けで訂正請求(以下「本件訂正」という。)をした(甲87の1,2)。 特許庁は,令和2年3月23日,結論を「特許第5976246号の特許請求の範囲を訂正請求書に添付された訂正特許請求の範囲のとおり訂正することを認める。特許第5 う。)をした(甲87の1,2)。 特許庁は,令和2年3月23日,結論を「特許第5976246号の特許請求の範囲を訂正請求書に添付された訂正特許請求の範囲のとおり訂正することを認める。特許第5976246号の請求項1に係る発明についての特許を無効とする。審判費用は,被請求人の負担とする。」とする審決(以下「本件審決」という。)をし,その謄本は同年4月1日に原告へ送達された。 ⑶ 原告は,令和2年4月21日,本件審決の取消しを求めて本件訴訟を提起した。 2 特許請求の範囲の記載本件訂正後の特許請求の範囲の請求項1の記載は,以下のとおりである(A~Jの分説は本件審決において付与された(本件審決8頁)。以下,本件訂正後の請求項1に係る発明を「本件発明」という。)。 A 走行機体の後部に装着され,耕うんロータを回転させながら前記走行機体の前進走行に伴って進行して圃場を耕うんする作業機において,B 前記作業機は前記走行機体と接続されるフレームと,C 前記フレームの後方に設けられ,前記フレームに固定された第1の支点を中心にして下降及び跳ね上げ回動可能であり,その重心が前記第1の支点よりも後方にあるエプロンと,D 前記フレームに固定された第2の支点と前記エプロンに固定された第3 の支点との間に設けられ,前記第2の支点と前記第3の支点との距離を変化させる力を作用させることによって前記エプロンを跳ね上げる方向に力を作用させる,ガススプリングを含むアシスト機構とを具備し,J 前記ガススプリングは,シリンダーと,前記シリンダーの内部に挿入されたピストンと,前記ピストンから延長されるピストンロッドとを有し,E 前記アシスト機構は,さらに,前記ガススプリングがその中に位置し,前記第2の支点及び第3の支点を通る同一軸上で移 内部に挿入されたピストンと,前記ピストンから延長されるピストンロッドとを有し,E 前記アシスト機構は,さらに,前記ガススプリングがその中に位置し,前記第2の支点及び第3の支点を通る同一軸上で移動可能な第1の筒状部材と第2の筒状部材とを有し,F 前記第1の筒状部材の前記フレーム側の一端には前記第2の支点が,前記第1の筒状部材の前記エプロン側の他端には前記ピストンロッドの先端が接続され,前記第2の筒状部材の前記フレーム側の一端には前記シリンダーの先端が接続され,G 前記第2の筒状部材の外周に突設された第1の突部が前記第3の支点を回動中心とし,前記エプロンに台座を介して設けられた第2の突部に接触して前記第3の支点と前記第2の支点との距離を縮める方向に変化することにより,前記エプロンを跳ね上げるのに要する力は,エプロン角度が増加する所定角度範囲内において徐々に減少し,H 前記ガススプリングは,前記エプロンが下降した地点において収縮するように構成されるI ことを特徴とする作業機。 3 本件審決の理由の要旨⑴ 本件無効審判において,原告は,次のような無効理由を主張した(本件審決9頁)。 ア無効理由1本件発明は,本件特許の出願前に公然知られた又は公然実施された検甲1(被告製「ニプログランドロータリーSKS2000(製造番号100 7)」)に係る発明であるから,特許法29条1項1,2号に該当し,特許を受けることができないものである。 仮に,同一でないとしても,本件発明は,検甲1に係る発明に基づいて当業者が容易に発明をすることができたものであるから,特許法29条2項の規定により,特許を受けることができないものである。 イ無効理由2本件発明は,甲14に記載された発明に基づいて当業者が容易に発明をすること をすることができたものであるから,特許法29条2項の規定により,特許を受けることができないものである。 イ無効理由2本件発明は,甲14に記載された発明に基づいて当業者が容易に発明をすることができたものであるから,特許法29条2項の規定により,特許を受けることができないものである。 ウ無効理由3本件発明は,本件特許の出願の日前の他の特許出願であって本件特許の出願後に出願公開された甲18の願書に最初に添付された明細書,特許請求の範囲又は図面に記載された発明と同一であり,しかも,本件特許の出願に係る発明の発明者が当該他の特許出願の発明の発明者と同一ではなく,また本件特許の出願時の出願人が当該他の特許出願の出願人と同一でもないので,特許法29条の2の規定により,特許を受けることができないものである。 エ無効理由4本件特許の特許出願の願書に添付した明細書(以下「本件明細書」という。その内容は別紙特許公報のとおりである。)の発明の詳細な説明の記載は,当業者が本件発明を実施することができる程度に明確かつ十分に記載されたものではないので,特許法36条4項1号に規定する要件を満たしていないものである。 ⑵ 本件審決の理由は,別紙審決書(写し)のとおりであり,各無効理由に対する判断の要旨は次のとおりである。 ア無効理由1について 本件発明は,本件特許の原出願前に公然知られた発明でも公然実施された発明でもなく,かつ,そのような発明に基づいて当業者が容易に発明をすることができたものでもない(本件審決93頁)。 イ無効理由2について本件発明は,甲14に記載された発明及び甲23ないし30に記載された事項に基づいて,当業者が容易に発明をすることができたものではない(本件審決95頁)。 ウ無効理由3について 2について本件発明は,甲14に記載された発明及び甲23ないし30に記載された事項に基づいて,当業者が容易に発明をすることができたものではない(本件審決95頁)。 ウ無効理由3について本件発明は,本件特許の出願の日前の他の特許出願であって本件特許の出願後に出願公開された甲18の願書に最初に添付された明細書,特許請求の範囲又は図面に記載された発明と同一ではないから,先願明細書である甲18に記載された発明ではない(本件審決100頁)。 エ無効理由4について本件明細書の発明の詳細な説明の記載は,「エプロンを跳ね上げるのに要する力は,エプロン角度が増加する所定角度範囲内において徐々に減少」するとの構成(構成要件G)を当業者が実施できる程度に明確かつ十分に記載されていないから,特許法36条4項1号の規定に違反している(本件審決88頁)。 4 原告主張の取消事由特許法36条4項1号に関する判断(無効理由4について)の誤り第3 原告の主張 1 審決の誤りの有無本件明細書の発明の詳細な説明の記載は,本件発明の構成要件Gの「エプロンを跳ね上げるのに要する力は,エプロン角度が増加する所定角度範囲内において徐々に減少」するという構成を当業者が実施できる程度に明確かつ十分に記載されていないから,特許法36条4項1号の規定(以下,特許法36条4 項1号所定の要件を「実施可能要件」という。)に違反しているとの本件審決の判断は誤りである。以下,本件審決が,本件明細書が実施可能要件を欠く理由として述べた各判断について詳述する。 2 構成要件Gを裏付ける理論的説明について⑴ 本件審決の判断本件審決は,アシスト操作力とエプロン角度との関係について記載された本件明細書の【0028】と本件特許の特許出願の願書に添付された図 2 構成要件Gを裏付ける理論的説明について⑴ 本件審決の判断本件審決は,アシスト操作力とエプロン角度との関係について記載された本件明細書の【0028】と本件特許の特許出願の願書に添付された図面である【図7】(以下,本件特許の特許出願の願書に添付された図面は,【】を付し,例えば「【図7】」のように示す。図面の内容は,別紙特許公報に掲載されたとおりである。)の記載によっても,実施例のどのような支点の位置関係であれば「逆の特性」(エプロン角度が大きくなるほどアシスト機構が作用する力が大きくなる。)を奏するのか当業者に理解できず,「所定の回転角度に対する支点152の移動距離が大きくなる」ことと,「てこの原理」及び「逆の特性を奏する」こととの関係も不明であると判断した(本件審決84頁図の下2~14行目)。 また,本件審決は,原告が,本件無効審判において,「本件発明においてエプロン角度が増加するにつれてアシスト力が徐々に増加する論理は,エプロン角度が増加するにつれて,ガススプリング自体の力(F)は小さくなる(F1>F2)が,その差は小さいのに対して,エプロン角度が増加するにつれて,sinθの値が増加(sinθ1<sinθ2)する割合のほうが大きいので,『てこの原理』の作用点(エプロンの重心位置)において,エプロンを持上げる方向に作用する力(アシスト力)は,エプロン角度が増加するにつれて大きくなる(F1sinθ1<F2sinθ2)。」と主張したことに関して,原告主張の上記の式及び説明は本件明細書等に記載されたものではなく,当業者が容易に理解するとも認められないと判断した(本件審決85頁9~32行目)。 上記の本件審決の判断は,本件訂正後の請求項1,本件明細書及び本件特 許の特許出願の願書に添付された図面によっても,構成要件G とも認められないと判断した(本件審決85頁9~32行目)。 上記の本件審決の判断は,本件訂正後の請求項1,本件明細書及び本件特 許の特許出願の願書に添付された図面によっても,構成要件Gの「エプロンを跳ね上げるのに要する力は,エプロン角度が増加する所定角度範囲内において徐々に減少」するとの構成を裏付ける理論的説明は明らかでないとの趣旨と解される。 ⑵ 判断の誤りの有無とその理由アしかし,当業者は,本件訂正後の請求項1,本件明細書及び本件特許の特許出願の願書に添付された図面と力学的な技術常識により,構成要件Gの「エプロンを跳ね上げるのに要する力は,エプロン角度が増加する所定角度範囲内において徐々に減少」するとの構成を裏付ける理論的説明を理解することができるものであり,本件審決の前記⑴の判断は誤りである。 その理由は,次のイのとおりである。 イ(ア) 本件発明に係る作業機の構造本件訂正後の請求項1に記載された「第1の支点」,「第2の支点」,「第3の支点」は,本件明細書において,それぞれ実施例に記載された具体的な部材の構造とともに説明されている。すなわち,「第1の支点」は,「フレーム」を構成するシールドカバー120に固定された「支点140」であり,エプロン130がフレームに対して下降及び跳ね上げ回動する際の回動中心である(本件明細書【0017】,【0020】)。また,「第2の支点」は,「フレーム」を構成する主フレーム110に設けられた台座111による「支点151」であり,支点151は,ガススプリングを内包する「第1の筒状部材」である内側筒状部材210の一端に設けられる(本件明細書【0021】,【0024】)。さらに,「第3の支点」は,エプロン130に台座134を介して設けられた「第2の突部」の回動中心である 筒状部材」である内側筒状部材210の一端に設けられる(本件明細書【0021】,【0024】)。さらに,「第3の支点」は,エプロン130に台座134を介して設けられた「第2の突部」の回動中心である「支点152」であって,支点152は,内側筒状部材210の外側に位置する「第2の筒状部材」である外側筒状部材220に設けられる。(本件明細書【0021】,【0024】,甲47(審判 乙1)7頁[参考図1],[参考図2])。 上記の各支点の作業機全体に対する位置関係は,【図2】及び【図3】に,本件発明の実施例に係る作業機の全体構造として図示されている。 (イ) 構成要件Gを裏付ける理論的説明構成要件Gにおける「エプロンを跳ね上げるのに要する力」をFs,第3の支点に働くアシスト力をFg,エプロンに働く重力による,第1の支点を中心とするモーメント(第1の支点からの距離と力の積)をTw,第3の支点(152)に働くアシスト力Fgによる,第1の支点を中心とするモーメントをTa,第1の支点からエプロンを持ち上げる位置(エプロン操作者がエプロンを持ち上げるために手をかける位置)までの距離をR,第1の支点から第3の支点までの距離をRa,第1の支点からエプロンの重心までの距離をRw,第1の支点とエプロンを持ち上げる位置とを結ぶ直線の鉛直方向に対する角度をβ,第1の支点とエプロンの重心とを結ぶ直線の鉛直方向に対する角度をα,第1の支点と第3の支点とを結ぶ直線と,第2の支点と第3の支点とを結ぶ直線がなす角度をθaとすると(別紙図1(原告従業員作成の平成31年3月22日付け陳述書である甲60(審判乙14)5頁の図面)),これらの関係は,被告が提示した次の式で表される(ただし,「Fg」は「FG」と表されている。)。 エプロンが,第1の 31年3月22日付け陳述書である甲60(審判乙14)5頁の図面)),これらの関係は,被告が提示した次の式で表される(ただし,「Fg」は「FG」と表されている。)。 エプロンが,第1の支点を通る直線に対してなす角度をθとし,エプロンが最も下降したときにθ=0°とすると,α,βは,θに,θ=0°のときのそれぞれの一定の角度(α0,β0)を加えた角度(α=α0+θ,β=β0+θ)として表される。これを上記の式に当てはめると次のとおりとなる。 Fs=((Rw・W・sin(α0+θ)-(Ra・Fg・sinθa)/(R・sin(β0+θ))「エプロンを跳ね上げるのに要する力」(Fs)は,上記の式で表すことができるから,構成Gの「エプロンを跳ね上げるのに要する力は,エプロン角度が増加する所定角度範囲内において徐々に減少」するという構成は,上記の式において,Fsが,θが増加する所定角度範囲内において徐々に減少するような構成である。 (ウ) 理論的説明に対する認識そして,構成要件Gの「エプロンを跳ね上げるのに要する力は,エプロン角度が増加する所定角度範囲内において徐々に減少」するとの構成の理論的説明として前記(イ)の式が妥当することは,原告と被告の間で争いがないものであり,本件発明の作業機の構造と力学的な技術常識により,当業者であれば認識することができる。 (エ) 本件明細書の【0028】の記載本件明細書【0028】には「てこの原理」により逆の特性を奏することが記載されている。 「エプロンを跳ね上げるのに要する力」(操作力)は,「エプロン荷重」から「アシスト力」(アシスト機構が作用してガススプリングの力によってエプロンの持ち上げをアシストする力)を引いた差分であることは技術常識であり,この技術常識から,本 (操作力)は,「エプロン荷重」から「アシスト力」(アシスト機構が作用してガススプリングの力によってエプロンの持ち上げをアシストする力)を引いた差分であることは技術常識であり,この技術常識から,本件発明において,エプロン角度が増加するにつれて「エプロンを跳ね上げるのに要する力」(操作力)が「徐々に減少」するという構成要件Gは,エプロン角度が増加するにつれて,アシスト力が徐々に増加することを意味すると容易に理解することができる。また,本件明細書の【0028】に記載された「てこの原理」とは,本件発明にかかる作業機の第1の支点(支点140)を「支点」とし,ガススプリングの力が及ぼされる第3の支点を「力点」とし,エプロンの重心位置を「作用点」としてアシスト力を得る仕組みそのものを説明するための用語であると理解される。 これを図示すると,別紙図3(被告提出の平成30年9月25日付け口頭審理陳述要領書である甲71の26頁の図面)のとおりであり,第1の支点(140)と第3の支点(152)との距離をL,エプロンが下に降りている状態で(別紙図3の上図),第3の支点(152)に,第2の支点(151)に向かう方向にガススプリングにより加えられる力をF1,そのときの,第1の支点と第3の支点を結ぶ直線と第3の支点と第2の支点を結ぶ直線がなす角度をθ1とし,他方,エプロンが上に上がっている状態で(別紙3の下図),第3の支点に,第2の支点に向かう方向にガススプリングにより加えられる力をF2,そのときの,第1の支点と第3の支点を結ぶ直線と第3の支点と第2の支点を結ぶ直線のなす角度をθ2とする。そうすると,エプロンが持ち上げられるにつれて,ガススプリングにより加えられる力が小さくなり,F2<F1となるが,θ2>θ1であり,そのためsinθ2>si の支点を結ぶ直線のなす角度をθ2とする。そうすると,エプロンが持ち上げられるにつれて,ガススプリングにより加えられる力が小さくなり,F2<F1となるが,θ2>θ1であり,そのためsinθ2>sinθ1であり,F1がF2に減少する割合よりも,sinθ1がsinθ2に増加する割合が大きいことから,F2・Lsinθ2>F1・Lsinθ1となり,アシスト力はエプロンが持ち上げられるにつれて大きくなり,エプロンを跳ね上げるのに要する力は徐々に減少する。このように,本件発明は,「てこの原理」により逆の特性(エプロンが持ち上げられるにつれてガススプリングにより加えられる力は小さくなるがアシスト力は大きくなる)を奏するものであり,構成要件Gの構成を裏付ける理論的説明を当業者が認識できることからすれば,本件明細書の【0028】の「てこの原理」も,当業者であれば認識できる。 3 構成要件Gを実施する際の作業機の姿勢について⑴ 本件審決の判断本件審決は,構成要件Gを実施する際の作業機の姿勢について,「エプロンの前面部分(耕うんロータに面した側)や耕うんロータに付着した土を掻き落としたり,耕うんロータに設けられた耕うん爪を取り替えたりする場合に は,エプロンを跳ね上げた状態に保持する。」(【0002】)際に,作業機の姿勢を「トラクタ油圧機構で作業機を持ち上げ調整した姿勢」や「スタンド姿勢」等のように作業機を前傾させることは,本件訂正後の請求項1,本件明細書又は本件特許の特許出願の願書に添付された図面には記載されていないとした。そして,本件明細書には「耕うん状態においてエプロンが下降した状態から,作業者が誤ってエプロンを跳ね上げることがなくなり,相当程度の力をもって(ただし,アシスト機構が存在しないときに要する力よりは小さい)一旦エプ 書には「耕うん状態においてエプロンが下降した状態から,作業者が誤ってエプロンを跳ね上げることがなくなり,相当程度の力をもって(ただし,アシスト機構が存在しないときに要する力よりは小さい)一旦エプロンをある程度の角度まで跳ね上げれば,その後はますます軽い力で跳ね上げることが可能となる。」(【0037】),「ガススプリングは,前記エプロンが下降した地点において,収縮するよう構成しているため,最も長い時間である耕うん時においてガススプリングのピストンロッド表面が汚れることがなくなり,ガススプリングの寿命が大幅に向上する。」(段落【0041】)と記載されており,「耕うん状態」や「耕うん時」が耕うん作業時を指すことは明らかであるから,構成要件Gの「エプロンを跳ね上げる力は,エプロン角度が増加する所定角度範囲内において徐々に減少」することは,少なくとも,上記耕うん作業時の作業機の傾きのときに実現できることを説明する必要があるとした上で,それが,原告が主張する「トラクタ油圧機構で作業機を持ち上げ調整した姿勢」や「スタンド姿勢」等の本件明細書等に記載のない条件下でしか実現できないのであれば,本件発明が実施可能であるとはいえない旨判断した(本件審決86頁18行目~87頁2行目)。 ⑵ 判断の誤りの有無とその理由しかし,本件明細書の【0036】,【0026】,【0021】の記載に照らすと,【0037】に記載された「耕うん状態」,【0041】に記載された「耕うん時」とは,「エプロンが下降した状態」(ロック機構によりアシスト機構が作用しないようにロックされた状態)をいうものであり,実際に圃場で耕うん作業を行っている耕うん作業時の状態に限定されるものではないか ら,構成要件Gの「エプロンを跳ね上げる力は,エプロン角度が増加する所定角度範囲 態)をいうものであり,実際に圃場で耕うん作業を行っている耕うん作業時の状態に限定されるものではないか ら,構成要件Gの「エプロンを跳ね上げる力は,エプロン角度が増加する所定角度範囲内において徐々に減少」することは,少なくとも上記耕うん作業時の作業機の傾きのときに実現できることを説明する必要があるとした本件審決の前記⑴の判断は誤っている。 本件明細書の【0002】に記載された「耕うんロータに付着した土を掻き落としたり,耕うんロータに設けられた耕うん爪を取り替えたりする」という作業は,実際に圃場で耕うん作業を行っている耕うん作業時の状態ではなく,「作業機全体が地上に引き上げられた状態」(スタンドに載置した場合を含む。以下,同じ。)で行われるから,そのときに実施可能であることが示されれば,構成要件Gが実施可能であったことが立証されたことになる。そして,「作業機全体が地上に引き上げられた状態」のときは,作業機の水平に対する傾きは前傾18.0°~34.8°(甲59(審判乙13))又は前傾17.41°~33.97°(甲90~92)である。甲60(審判乙14)で,【図2】に記載された作業機の位置関係を基礎にして,第3の支点152の位置を,第1の支点140を中心として25°下方に移動させた「第1の作業機」(別紙図2の青色で記載された構造)について採用された「第1の姿勢」(スタンド姿勢)(作業機が水平に対して33°前傾した姿勢)及び「第2の姿勢」(作業機が水平に対して18°前傾した姿勢),甲64(審判乙18)で「第1の作業機」に採用された「最上げ姿勢」(トラクタ油圧機構で作業機を最も持ち上げた状態での姿勢)(入力軸が水平に対して30.5°前傾した姿勢)は,いずれも上記の「作業機全体が地上に引き上げられた状態」のときに当たる。そして, 上げ姿勢」(トラクタ油圧機構で作業機を最も持ち上げた状態での姿勢)(入力軸が水平に対して30.5°前傾した姿勢)は,いずれも上記の「作業機全体が地上に引き上げられた状態」のときに当たる。そして,上記の甲60(審判乙14)の「第1の姿勢」及び「第2の姿勢」のとき,及び甲64(審判乙18)の「最上げ姿勢」のときの「エプロンを跳ね上げるのに要する力」と「エプロン角度」の関係は,それぞれ甲60(審判乙14)の7頁のグラフ(別紙図4)の青色線,黄色線,甲64(審判乙18)の6頁のグラフ(別紙図5)の青色線のとおりで あり,少なくともこれらの姿勢のときに,「エプロンを跳ね上げる力は,エプロン角度が増加する所定角度範囲内において徐々に減少」することは立証されているから,構成要件Gが実施可能であったことは立証されている。 4 エプロンの操作者がエプロンを跳ね上げる力の減少の程度について⑴ 本件審決の判断本件審決は,構成要件Gが実施可能であるというためには,「耕うん作業時の作業機の傾き」のときに実現できることを説明する必要があるとの立場を前提とした上で,本件明細書の【0037】に「相当程度の力をもって(ただし,アシスト機構が存在しないときに要する力よりは小さい)一旦エプロンをある程度の角度まで跳ね上げれば,その後はますます軽い力で跳ね上げることが可能となる。」と記載されていることからみて,構成要件Gにおいて,「エプロンを跳ね上げるのに要する力」が「徐々に減少」するとは,エプロンの操作者が,そのような力が徐々に減少することを明確に知覚することができる程度に減少すること(例えば【図7】のグラフ)と解することができるとし,甲64(審判乙18)の6頁のグラフ(別紙図5)に記載された「作業姿勢」(入力軸が水平に対して3.0°前傾した姿勢) とができる程度に減少すること(例えば【図7】のグラフ)と解することができるとし,甲64(審判乙18)の6頁のグラフ(別紙図5)に記載された「作業姿勢」(入力軸が水平に対して3.0°前傾した姿勢)のグラフ(緑色線)の傾きからみて,エプロンの操作者が,エプロンを跳ね上げるのに要する力が徐々に減少することを明確に知覚することができる程度の減少が生じているとは認められないとし,構成要件Gを実現できたことにはならず,本件発明は実施可能であるとはいえないと判断した(本件審決87頁8~21行目)。 ⑵ 判断の誤りの有無とその理由しかし,前記3⑵〔本判決11頁〕のとおり,構成要件Gを「耕うん作業時の作業機の傾き」のときに実現できることを説明する必要があるとする本件審決の見解は誤っており,そのような見解を前提とする前記⑴の本件審決の判断は誤りである。前記3⑵〔本判決11頁〕のとおり,「作業機全体が地上に引き上げられた状態」のときに実施可能であることが示されれば,構成 要件Gが実施可能であったことが立証されたことになる。また,構成要件Gにおいて,「エプロンを跳ね上げるのに要する力」が「徐々に減少」するとは,エプロンの操作者が,そのような力が徐々に減少することを明確に知覚することができる程度にまで減少することが必要であるとはいえない。そして,甲60(審判乙14)の「第1の姿勢」及び「第2の姿勢」のとき,及び甲64(審判乙18)の「最上げ姿勢」のときの「エプロンを跳ね上げるのに要する力」と「エプロン角度」の関係は,それぞれ甲60(審判乙14)の7頁のグラフ(別紙図4)の青色線,黄色線,甲64(審判乙18)の6頁のグラフ(別紙図5)の青色線のとおりであり,これらのグラフの傾きによれば,少なくともこれらの姿勢のときには,「エプロンを跳ね上 7頁のグラフ(別紙図4)の青色線,黄色線,甲64(審判乙18)の6頁のグラフ(別紙図5)の青色線のとおりであり,これらのグラフの傾きによれば,少なくともこれらの姿勢のときには,「エプロンを跳ね上げるのに要する力」が「徐々に減少」するということができ,構成要件Gが実施可能であったことが立証されているといえる。 5 発明の構成の実施に過度な試行錯誤を要するかについて⑴ 本件審決の判断本件審決は,原告が,本件無効審判において,「本件発明においてエプロン角度が増加するにつれてアシスト力が徐々に増加する論理は,エプロン角度が増加するにつれて,ガススプリング自体の力(F)は小さくなる(F1>F2)が,その差は小さいのに対して,エプロン角度が増加するにつれて,sinθの値が増加(sinθ1<sinθ2)する割合のほうが大きいので,『てこの原理』の作用点(エプロンの重心位置)において,エプロンを持上げる方向に作用する力(アシスト力)は,エプロン角度が増加するにつれて大きくなる(F1sinθ1<F2sinθ2)。」と主張したことに関して,上記の式及び説明に基づいて構成要件Gの「エプロンを跳ね上げるのに要する力は,エプロン角度が増加する所定角度範囲内において徐々に減少」するとの構成を実施するとしても,当業者に過度の試行錯誤を要すると判断する(本件審決85頁9~32行目)。 ⑵ 判断の誤りの有無とその理由アしかし,構成要件Gの「エプロンを跳ね上げるのに要する力は,エプロン角度が増加する所定角度範囲内において徐々に減少」するとの構成を実施するために,当業者は過度の試行錯誤を要しないものであり,本件審決の前記⑴の判断は誤りである。その理由は,次のとおりである。 イ原告は,【図2】に記載された各支点の基本的な位置関係に基づき を実施するために,当業者は過度の試行錯誤を要しないものであり,本件審決の前記⑴の判断は誤りである。その理由は,次のとおりである。 イ原告は,【図2】に記載された各支点の基本的な位置関係に基づき,構成要件Gの「エプロンを跳ね上げるのに要する力」と「エプロン角度」の変化曲線をシミュレーションし,甲60(審判乙14)の7頁のグラフ(別紙図4),甲64(審判乙18)の6頁のグラフ(別紙図5)の結果を得た。 これらによれば,【図2】に記載された作業機の位置関係を基礎にして,第3の支点152の位置を,第1の支点140を中心として25°下方に移動させた「第1の作業機」において,「第1の姿勢」(作業機が水平より33°前傾した状態)である場合には甲60(審判乙14)の7頁のグラフ(別紙図4)の青色線のとおりとなり,「第2の姿勢」(作業機が水平より18°前傾した状態)である場合には同グラフの黄色線のとおりとなり,【図7】に相当する程度に,「エプロンを跳ね上げるのに要する力」が「徐々に減少」する構成を実現できることが確認できた。また,「第1の作業機」において,「最上げ姿勢」(作業機が水平より30.5°前傾した状態)である場合には,甲64(審判乙18)の6頁のグラフ(別紙図5)の青色線のとおりとなり,【図7】に相当する程度に,「エプロンを跳ね上げるのに要する力」が「徐々に減少」する構成を実現できることが確認できた。 したがって,構成要件Gの「エプロンを跳ね上げるのに要する力は,エプロン角度が増加する所定角度範囲内において徐々に減少」するとの構成を実施するために,当業者は過度の試行錯誤を要しない。 6 原告の主張の変遷の有無について⑴ 本件審決の判断 本件審決は,原告が,平成31年2月7日付け口頭審理陳述要領書(2)(甲78)で, に,当業者は過度の試行錯誤を要しない。 6 原告の主張の変遷の有無について⑴ 本件審決の判断 本件審決は,原告が,平成31年2月7日付け口頭審理陳述要領書(2)(甲78)で,「例えば,エプロンが下降した状態でガススプリングが伸長状態になり,エプロンが跳ね上げられた状態でガススプリングが圧縮状態になるように,ガススプリングの作業機に対する取り付け方向を逆にすれば,エプロン角度が増加するにつれて,ガススプリング自体の力が大きくなる」こと(甲78,8頁),「ガススプリングの変化率を高く設定し,伸長時と圧縮時の反力の差が大きいガススプリングを用いることは容易である」こと(甲78,9頁),「ガススプリングの取り付け方向を逆にしたり,伸縮方向が異なるガススプリングを用いたりすることによって,F1<F2という関係を実現することは可能である」こと(甲78,10頁)を説明したことについて,これらの説明は,「本件発明のガススプリングは,前記エプロンが下降した地点において収縮するように構成されること」,「エプロン角度が増加するにつれて,ガススプリング自体の力(F)は小さくなる(F1>F2)が,その差は小さい(つまり,ガススプリングの変化率が小さいこと。)こと」や,「エプロンを持上げる方向に作用する力(アシスト力)は,エプロン角度が増加するにつれて大きくなる(F1sinθ1<F2sinθ2)」こと等と整合しないことは明らかであって,原告が矛盾した説明をして説明が二転三転していることから,当業者は,本件明細書から,どのような構成にすれば構成要件Gを実施できるかを理解することができず,本件発明は実施可能であったということはできないと判断した(本件審決87頁22行目~88頁21行目)。 ⑵ 判断の誤りの有無とその理由しかし,本件審決が指 を実施できるかを理解することができず,本件発明は実施可能であったということはできないと判断した(本件審決87頁22行目~88頁21行目)。 ⑵ 判断の誤りの有無とその理由しかし,本件審決が指摘する原告の平成31年2月7日付け口頭審理陳述要領書(2)(甲78)における上記説明は,本件発明の構成について説明したものではなく,特許庁審判官が発出した平成30年12月25日付け審理事項通知書(甲75,4~5頁)により,本件発明と同様の支点の位置関係を有する検甲1・甲14・甲18の作業機との違いを問われたことに応え, 本件発明と同様の支点の位置関係を有する作業機であっても,支点の位置関係以外の構成を変えることにより,構成要件Gを備えない場合があることを説明したものである。そのため,原告の上記説明が,構成要件Gを裏付ける理論的説明と異なったとしても,構成要件Gを裏付ける理論的説明について原告の説明が矛盾したり二転三転したものではなく,当業者が,本件明細書から,どのような構成にすれば構成要件Gを実施できるかを理解することができなかったとはいえないし,本件発明が実施可能でなかったということはできない。したがって,本件審決の前記⑴の判断は誤りである。 7 実施可能要件の具備以上に検討したところによれば,本件明細書の発明の詳細な説明の記載は,構成要件Gの「エプロンを跳ね上げるのに要する力は,エプロン角度が増加する所定角度範囲内において徐々に減少」するという構成を当業者が実施できる程度に明確かつ十分に記載されており,実施可能要件を備えている。 第4 被告の主張 1 審決の誤りの有無原告の主張は争う。 本件明細書の発明の詳細な説明の記載は,本件発明の構成要件Gの「エプロンを跳ね上げるのに要する力は,エプロン角度が増加する所定角度 第4 被告の主張 1 審決の誤りの有無原告の主張は争う。 本件明細書の発明の詳細な説明の記載は,本件発明の構成要件Gの「エプロンを跳ね上げるのに要する力は,エプロン角度が増加する所定角度範囲内において徐々に減少」するという構成を当業者が実施できる程度に明確かつ十分に記載されていないから特許法36条4項1号の規定に違反しているとの本件審決の判断に誤りはない。 2 構成要件Gを裏付ける理論的説明について⑴ 本件審決の判断原告主張のとおり本件審決が判断したことは争わない。 ⑵ 判断の誤りの有無とその理由原告の主張は争う。 本件審決の判断に誤りはない。 当業者は,本件明細書及び本件特許の特許出願の願書に添付された図面によって,構成要件Gの「エプロンを跳ね上げるのに要する力は,エプロン角度が増加する所定角度範囲内において徐々に減少」するとの構成の理論的説明を認識することはできないし,本件明細書の【0028】の「「てこの原理」により,逆の特性(エプロン角度が大きくなるほどアシスト機構が作用する力1が大きくなる。)を奏する。」という記載の意味を理解することはできない。原告が主張する式や説明は,本件明細書に記載がないから,当業者はそれらを認識することはできない。また,本件明細書の【0028】の記載及び【図7】は,本件発明と構成を異にする原告の「FTE240」という製品に関するものであり,「FTE240」において構成要件Gが実施可能であるとしても,本件発明において構成要件Gは実施できない。 3 構成要件Gを実施する際の作業機の姿勢について⑴ 本件審決の判断原告主張のとおり本件審決が判断したことは争わない。 ⑵ 判断の誤りの有無とその理由原告の主張は争う。 本件審決の判断に誤りはない。 本件明細 の作業機の姿勢について⑴ 本件審決の判断原告主張のとおり本件審決が判断したことは争わない。 ⑵ 判断の誤りの有無とその理由原告の主張は争う。 本件審決の判断に誤りはない。 本件明細書の【0037】の「耕うん状態においてエプロンが下降した状態から,作業者が誤ってエプロンを跳ね上げることがなくなり,相当程度の力をもって・・・一旦エプロンをある程度の角度まで跳ね上げれば,その後はますます軽い力で跳ね上げることが可能となる。」との記載における「耕うん状態」は,「耕うん作業時」(【図2】の「耕うん姿勢」)の意味にしか理解できないし,本件明細書に記載されている作業機の姿勢は,【図2】の「耕うん姿勢」が唯一であり,しかも,この「耕うん姿勢」に原告も同意して検証が行われたのであるから,構成要件Gが,「トラクタ油圧機構で作業機を持ち 上げ調整した姿勢」や「スタンド姿勢」など本件明細書に記載のない条件下でしか実現できないのであれば,構成要件Gは実施可能であるとはいえない。 4 エプロンの操作者がエプロンを跳ね上げる力の減少の程度について⑴ 本件審決の判断原告主張のとおり本件審決が判断したことは争わない。 ⑵ 判断の誤りの有無とその理由原告の主張は争う。 本件審決の判断に誤りはない。 構成要件Gの「前記エプロンを跳ね上げるのに要する力」が「エプロン角度が増加する所定角度範囲内において徐々に減少」する程度について,本件明細書の【0037】には「・・・相当程度の力をもって・・・一旦エプロンをある程度の角度まで跳ね上げれば,その後はますます軽い力で跳ね上げることが可能となる。」と記載されており,【図7】のグラフに,アシスト操作力が約250Nから約0Nになることが示されているから,【0037】の「相当程度の力」は約25 の後はますます軽い力で跳ね上げることが可能となる。」と記載されており,【図7】のグラフに,アシスト操作力が約250Nから約0Nになることが示されているから,【0037】の「相当程度の力」は約250Nを意味し,「ますます軽い力」は約ゼロに向かう力を意味する。原告は,作業機が耕うん姿勢のときにエプロンを跳ね上げるのに要する力が約250Nから約0Nになることを立証していないから,構成要件Gが実施可能であることを立証していない。 5 発明の構成の実施に過度な試行錯誤を要するかについて⑴ 本件審決の判断原告主張のとおり本件審決が判断したことは争わない。 ⑵ 判断の誤りの有無とその理由ア原告の主張は争う。 本件審決の判断に誤りはない。 イ(ア) 本件明細書の【0028】には「上記実施例の各支点の位置関係からこのような荷重の傾向が観察される。」と記載されており,【図2】の作 業機の支点の位置により【図7】のグラフが得られたことが明らかにされている。原告は,【図2】に記載された作業機の位置関係を基礎にして,第3の支点152の位置を,第1の支点140を中心として25°下方に移動させた「第1の作業機」(別紙図2の青色で記載された構造)について,力学的なシミュレーションにより「エプロンを跳ね上げるのに要する力」が「エプロン角度が増加する所定角度範囲内において徐々に減少」する変化曲線を得た(甲60(審判乙14)の7頁のグラフ(別紙図4)の青色線,黄色線,甲64(審判乙18)の6頁のグラフ(別紙図5)の青色線)と主張する。しかし,「第1の作業機」は,【図2】の作業機とは第3の支点(152)の位置が異なり,本件明細書,本件特許の特許出願の願書に添付された図面に記載されていないものであるから,「第1の作業機」を用いて得た甲60( 1の作業機」は,【図2】の作業機とは第3の支点(152)の位置が異なり,本件明細書,本件特許の特許出願の願書に添付された図面に記載されていないものであるから,「第1の作業機」を用いて得た甲60(審判乙14)の7頁のグラフ(別紙図4)及び甲64(審判乙18)の6頁のグラフ(別紙図5)に基づいて,本件発明の構成要件Gが実施可能であるとする原告の主張は誤りである。 (イ) また,「第1の作業機」の計算に用いたガススプリング(甲65)は,直径をφ16mmにした「オールガスタイプ」のものであり,【図5】及び【図6】に記載された「フリーピストンタイプ」のものでなく,【図5】及び【図6】に記載された「フリーピストンタイプ」のピストンでは【図7】のグラフが得られないことは明らかである。 (ウ) 本件発明に係る作業機を自ら開発した原告ですら,【図7】のグラフのデータを得た日に存在していた「当時の作業機」を再現できないのであるから,構成要件Gが実施不可能であることは明らかである 6 原告の主張の変遷の有無について⑴ 本件審決の判断原告主張のとおり本件審決が判断したことは争わない。 ⑵ 判断の誤りの有無とその理由 原告の主張は争う。 本件審決の判断に誤りはない。 原告は,本件発明の技術的意味を十分理解した者であれば間違うはずのない説明事項を間違って説明しており,説明が二転三転しているから,当業者が本件発明を実施することはできなかった。 7 実施可能要件の具備原告の主張は争う。 本件明細書の発明の詳細な説明の記載は,構成要件Gの「エプロンを跳ね上げるのに要する力は,エプロン角度が増加する所定角度範囲内において徐々に減少」するという構成を当業者が実施できる程度に明確かつ十分に記載されておらず,実施可能要件を欠いてい 件Gの「エプロンを跳ね上げるのに要する力は,エプロン角度が増加する所定角度範囲内において徐々に減少」するという構成を当業者が実施できる程度に明確かつ十分に記載されておらず,実施可能要件を欠いている。 第5 当裁判所の判断 1 審決の誤りの有無本件審決は,本件無効審判において主張された無効理由4に関し,本件明細書の発明の詳細な説明の記載は,本件発明の構成要件Gの「エプロンを跳ね上げるのに要する力は,エプロン角度が増加する所定角度範囲内において徐々に減少」するという構成を当業者が実施できる程度に明確かつ十分に記載されていないから,特許法36条4項1号の規定に違反している判断した(本件審決83頁1行目~88頁28行目)。しかし,当裁判所は,本件審決の上記判断は誤りであると判断する。以下,本件審決が,本件明細書が実施可能要件を欠く理由として述べた各判断について詳述する。 2 構成要件Gを裏付ける理論的説明について⑴ 本件審決の判断ア本件審決は,実施可能要件に関し,本件明細書の【0028】と【図7】について,次のとおり判断した。 「しかしながら,上記記載によれば,「上記実施例の各支点の位置関係」に おいて,エプロンを上げていくと,被請求人が説明するところによる「所定の回転角度に対する支点152の移動距離が大きくな」ることが必然的に成され,該移動距離が大きくなることにより,結果的に,「てこの原理」により「逆の特性(エプロン角度が大きくなるほどアシスト機構が作用する力1が大きくなる。)を奏する」ものであるが,上記逆の特性が奏するとされる「上記実施例の各支点の位置関係」について,本件特許明細書には記載されておらず,どのような支点の位置関係であれば,上記逆の特性が奏するのか,当業者には理解できない。 しかも,説 が奏するとされる「上記実施例の各支点の位置関係」について,本件特許明細書には記載されておらず,どのような支点の位置関係であれば,上記逆の特性が奏するのか,当業者には理解できない。 しかも,説明において,「所定の回転角度に対する支点152の移動距離が大きくなる」ことと,「てこの原理」及び「逆の特性(エプロン角度が大きくなるほどアシスト機構が作用する力1が大きくなる。)を奏する」こととの関係も不明である。」(本件審決84頁図の下2~14行目)イまた,本件審決は,実施可能要件に関し,てこの原理の説明について,次のとおり判断した。 「これに対し,被請求人は,上記「てこの原理」に関して,「本件発明においてエプロン角度が増加するにつれて『アシスト力』が徐々に増加する論理は,『エプロン角度が増加するにつれて,ガススプリング自体の力(F)は小さくなる(F1>F2)が,その差は小さいのに対して,エプロン角度が増加するにつれて,sinθの値が増加(sinθ1<sinθ2)する割合のほうが大きい』ので,『てこの原理』の作用点(エプロンの重心位置)において,エプロンを持上げる方向に作用する力(アシスト力)は,エプロン角度が増加するにつれて大きくなる(F1sinθ1<F2sinθ2)」(上記第4 3(4)ア及びウ)と主張している。 しかしながら,上記式及びその説明は,そもそも,本件明細書等には記載されていないものであって,「てこの原理」との語句に接した当業者が,上記式及び説明のように理解するとも認められない。 特に,上記式は,アシスト力がエプロン角度が増加するにつれて大きくなるための条件を提示しているに過ぎず,その条件の中で,上記Fやθをどのようにすればよいのか,当業者が容易に理解することはできない。 通常のガススプリン ト力がエプロン角度が増加するにつれて大きくなるための条件を提示しているに過ぎず,その条件の中で,上記Fやθをどのようにすればよいのか,当業者が容易に理解することはできない。 通常のガススプリングの出力特性や,普段の作業で用いられるエプロン角度では,必ずしも,「エプロン角度が増加するにつれて,ガススプリング自体の力(F)は小さくなる(F1>F2)」割合と比較して,「エプロン角度が増加するにつれて,sinθの値が増加(sinθ1<sinθ2)する割合のほうが大き」くなるものではないから,「エプロン角度が増加するにつれて,ガススプリング自体の力(F)は小さくなる(F1>F2)」とされる減少傾向や,「エプロン角度が増加するにつれて,sinθの値が増加(sinθ1<sinθ2)する割合の方が大きい」とされる増加傾向が,各支点の配置やガススプリングの出力特性等の条件において得られるのか,さらに,ガススプリング自体の力(F)の減少傾向と,sinθの値の増加傾向とが,どのようにバランスして,「エプロン角度が増加するにつれて大きくなる(F1sinθ1<F2sinθ2)」となるのか,十分に説明されていない。 よって,上記式及びその説明は,本件明細書等に記載されたものではなく,また,上記式及び説明に基づいて本件発明を実施するとしても,当業者に過度の試行錯誤を要するものと認められる。 したがって,上記式及びその説明を勘案しても,本件明細書等は,本件発明を実施可能な程度に記載されているとはいえない。」(本件審決84頁図の下15行目~85頁32行目)。 ⑵ 判断の誤りの有無ア前記⑴の本件審決の判断は,当業者は,本件訂正後の請求項1,本件明細書及び本件特許の特許出願の願書に添付された図面によっても構成要件Gの「エプロンを跳ね上げるのに要する力は, 判断の誤りの有無ア前記⑴の本件審決の判断は,当業者は,本件訂正後の請求項1,本件明細書及び本件特許の特許出願の願書に添付された図面によっても構成要件Gの「エプロンを跳ね上げるのに要する力は,エプロン角度が増加する所定角度範囲内において徐々に減少」するとの構成を裏付ける理論的説明 を理解することができず,本件明細書は実施可能要件を充足していないとの趣旨であると認められる。 イしかし,当業者は,本件訂正後の請求項1,本件明細書及び本件特許の特許出願の願書に添付された図面と力学的な技術常識により,構成要件Gの「エプロンを跳ね上げるのに要する力は,エプロン角度が増加する所定角度範囲内において徐々に減少」するとの構成を裏付ける理論的説明を理解することができたものと認められ,本件審決の上記判断は誤りである。 その理由は,次の⑶のとおりである。 ⑶ 理由ア本件発明に係る作業機の構造本件訂正後の請求項1,本件明細書及び本件特許の特許出願の願書に添付された図面によれば,本件発明に係る作業機の構造は,次のとおり認められる。 (ア) 作業機の全体構造本件発明は,「走行機体の後部に装着され,耕うんロータを回転させながら前記走行機体の前進走行に伴って進行して圃場を耕うんする」「作業機」(構成要件A)に関するものであり,「前記走行機体と接続されるフレーム」(構成要件B)と「前記フレームの後方に設けられ」る「エプロン」(構成要件C),「前記フレームに固定された」「ガススプリングを含むアシスト機構」(構成要件D)を具備するものであるところ,本件明細書の「実施例」(【0016】~【0021】)には,作業機の全体構造を示す【図1】~【図3】とともに,フレーム(主フレーム110とシールドカバー120),耕うんロータ102,エプロ ところ,本件明細書の「実施例」(【0016】~【0021】)には,作業機の全体構造を示す【図1】~【図3】とともに,フレーム(主フレーム110とシールドカバー120),耕うんロータ102,エプロン103,エプロン跳ね上げアシスト機構141を具備する「作業機100」の具体的構造が記載されている。 (イ) 「ガススプリングを含むアシスト機構」の構造 本件発明の作業機が具備する「アシスト機構」は,「前記フレームに固定された」「第2の支点」と「前記エプロンに固定された」「第3の支点」との間に設けられ,「前記第2の支点と前記第3の支点との距離を変化させる力を作用させることによって前記エプロンを跳ね上げる方向に力を作用させる」ものであるところ(構成要件D),本件明細書の【0021】には,作業機の側面図である【図2】,【図3】とともに,アシスト機構141を「支点151」(第2の支点)と「支点152」(第3の支点)との間に設ける具体的構造が記載されている。 (ウ) 「エプロン」の構造本件発明の作業機が具備する「エプロン」は,「前記フレームに固定された第1の支点を中心にして下降及び跳ね上げ回動可能」であり,「その(エプロンの)重心が前記第1の支点よりも後方にある」ところ(構成要件C),本件明細書の【0020】には,作業機の側面図である【図2】,【図3】とともに,エプロン130を「支点140」(第1の支点)を中心に回動可能とする具体的構造が記載されている。 イ構成要件Gを裏付ける理論的説明力学に関する技術常識を勘案し,前記アの本件発明に係る作業機の構造に照らすと,構成要件Gにおける「エプロンを跳ね上げるのに要する力は,エプロン角度が増加する所定角度範囲内において徐々に減少」するとの構成を導く理論的説明に関しては,次のと 件発明に係る作業機の構造に照らすと,構成要件Gにおける「エプロンを跳ね上げるのに要する力は,エプロン角度が増加する所定角度範囲内において徐々に減少」するとの構成を導く理論的説明に関しては,次のとおり認めることができる。(下記(ア)~(ウ)につき,別紙図1(甲60(審判乙14)の5頁の図)参照。)(ア) エプロンを跳ね上げるのに要する力エプロンを持ち上げるときには,エプロン操作者(作業者)がエプロンの下端に手をかけて力を入れて持ち上げるところ,構成要件Gにおける「エプロンを跳ね上げるのに要する力」は,その文言からすると,エプロンの手をかける位置に垂直に上向きにかかる力(Fs)を意味する ものと認められる。 そして,エプロンを持ち上げるときにエプロンに加えられる力を検討すると,「エプロンを跳ね上げるのに要する力」(Fs)の他,エプロンの重心に鉛直方向に働く重力(W),第3の支点に,第2の支点の方向に働くアシスト力(Fg)が加えられている。 (イ) 第1の支点を中心とするモーメントa しかしながら,エプロンは,第1の支点を中心として回動する構造となっているから,エプロンに加えられる力は,第1の支点を中心とするモーメントとして働く。 b 第1の支点とエプロンを持ち上げる位置(エプロン操作者がエプロンを持ち上げるために手をかける位置)とを結ぶ直線の鉛直方向に対する角度をβ,第1の支点とエプロンの重心とを結ぶ直線の鉛直方向に対する角度をα,第1の支点と第3の支点とを結ぶ直線と,第2の支点と第3の支点とを結ぶ直線がなす角をθaとし,第1の支点を中心とする円の半径と垂直をなす方向に働く力について,エプロンを持ち上げる位置に働く力をFu,第3の支点に働く力をFa,エプロンの重心に働く力をFwとすると,これらの各点において とし,第1の支点を中心とする円の半径と垂直をなす方向に働く力について,エプロンを持ち上げる位置に働く力をFu,第3の支点に働く力をFa,エプロンの重心に働く力をFwとすると,これらの各点において第1の支点を中心とする円の半径と垂直をなす方向に働く力は,次のとおり表される。 Fu=Fs・sinβ Fa=Fg・sinθaFw=W・sinαこのうち,FuとFaは上向きの力であり,Fwは下向きの力である。 c そして,第1の支点からエプロンを持ち上げる位置までの距離をR,第1の支点から第3の支点までの距離をRa,第1の支点からエプロンの重心までの距離をRwとし,第1の支点を中心とするモーメント(第1の支点からの距離と力の積)について,エプロンを持ち上げる位置のモーメントをTu,第3の支点のモーメントをTa,エプロン の重心のモーメントをTwとすると,これらの各点における第1の支点を中心とするモーメント(第1の支点からの距離と力の積)は,次のとおり表される。 Tu=R・Fu Ta=Ra・Fa Tw=Rw・Fwこのうち,TuとTaは上向きのモーメントであり,Twは下向きのモーメントである。 d エプロンを持ち上げる場合には,第1の支点を中心とする上向きのモーメントが下向きのモーメントより大きくなるから,Tu+Ta>Twとなる。これに前記cの各項を当てはめると,次のとおりとなる。 R・Fu+Ra・Fa>Rw・Fw更にこれに前記bの各項を当てはめると,次のとおりとなる。 R・Fs・sinβ+Ra・Fg・sinθa>Rw・W・sinαこれを,「エプロンを跳ね上げるのに要する力」(Fs)について整理すると,次のとおりとなる。 Fs>(Rw・W・sinα-Ra・Fg・sin𝜃𝑎)R・sinβ (ウ) エ ・W・sinαこれを,「エプロンを跳ね上げるのに要する力」(Fs)について整理すると,次のとおりとなる。 Fs>(Rw・W・sinα-Ra・Fg・sin𝜃𝑎)R・sinβ (ウ) エプロン角度エプロンが,第1の支点を通る直線に対してなす角度をθとし,エプロンが最も下降したときにθ=0°とし,そのときの第1の支点とエプロンを持ち上げる位置とを結ぶ直線の鉛直方向に対する角度をβ0,第1の支点とエプロンの重心とを結ぶ直線の鉛直方向に対する角度をα0とすると,β=θ+β0,α=θ+α0となり,これを前記(イ)dの最後の式に当てはめると,次のとおりとなる。 Fs>(Rw・W・sin(𝜃+α0)-Ra・Fg・sin𝜃𝑎)R・sin(𝜃+β0) (エ) 「エプロンを跳ね上げるのに要する力」が,「エプロン角度が増加す る所定角度範囲内において徐々に減少」するとの構成a 「エプロンを跳ね上げるのに要する力」(Fs)は,前記(ウ)の式で表すことができ,エプロンが持ち上げられるにつれて,エプロン角度θが増加するから(角度θaもエプロンが持ち上げられるにつれて増加するが,その増加割合はエプロン角度θとは異なる。),構成要件Gの「エプロンを跳ね上げるのに要する力は,エプロン角度が増加する所定角度範囲内において徐々に減少」するという構成は,前記(ウ)の式において,Fsが,θが増加する所定角度範囲内において徐々に減少するような構成であると認められる。 b 前記(ウ)の式中の各項目のうち,エプロンの重心に鉛直方向に働く重力W(前記(ア)),第1の支点からエプロンの重心までの距離Rw(前記(イ)c),第1の支点からエプロンを持ち上げる位置までの距離R(前記(イ)c),第1の支点から第3の支点までの距離Ra(前記(イ)c) 記(ア)),第1の支点からエプロンの重心までの距離Rw(前記(イ)c),第1の支点からエプロンを持ち上げる位置までの距離R(前記(イ)c),第1の支点から第3の支点までの距離Ra(前記(イ)c),エプロンが最も下降したとき(θ=0°のとき)の第1の支点とエプロンを持ち上げる位置とを結ぶ直線の鉛直方向に対する角度β0(前記(ウ)),第1の支点とエプロンの重心とを結ぶ直線の鉛直方向に対する角度α0(前記(ウ))は,エプロンの重さ,大きさ,形状等により定めることができる。また,第1の支点と第3の支点を結ぶ線と,第3の支点と第2の支点を結ぶ線がなす角度θa(エプロンが持ち上げられるにつれて増加するが,その増加割合はエプロン角度θとは異なる。)について,エプロンが最も下降したとき(θ=0°のとき)の角度θa0も,エプロンの重さ,大きさ,形状等により定めることができる。そして,第3の支点に働くアシスト力(Fg)(前記(ア))は,本件発明の構成要件Dによれば,ガススプリングにより,第2の支点と第3の支点との距離を変化させることによってエプロンを跳ね上げる方向に作用する力であり,ガススプリングの反発力と伸びが適切な 特性を有するようなものを選択することにより,設定することができる。 このように,前記(ウ)の式中の各項目のうち,θ以外の項目を適宜設定し,Fsが,θが増加する所定角度範囲内において徐々に減少するような構成を実現することにより,構成要件Gにおける「エプロンを跳ね上げるのに要する力は,エプロン角度が増加する所定角度範囲内において徐々に減少」するとの構成は実現されるものと認められる。 ウ理論的説明に対する認識力学に関する技術常識を勘案し,本件発明に係る作業機の構造に照らすと,前記イのとおり,構成要件Gの「エプロンを跳 徐々に減少」するとの構成は実現されるものと認められる。 ウ理論的説明に対する認識力学に関する技術常識を勘案し,本件発明に係る作業機の構造に照らすと,前記イのとおり,構成要件Gの「エプロンを跳ね上げるのに要する力は,エプロン角度が増加する所定角度範囲内において徐々に減少」するという構成は,前記イ(ウ)〔本判決27頁〕の式において,Fsが,θが増加する所定角度範囲内において徐々に減少するような構成であると認められる。 もっとも,「エプロンを跳ね上げるのに要する力」(Fs)が前記イ(ウ)の式で表すことができることや,構成要件Gの「エプロンを跳ね上げるのに要する力は,エプロン角度が増加する所定角度範囲内において徐々に減少」するという構成が,前記イ(ウ)の式において,Fsが,θが増加する所定角度範囲内において徐々に減少するような構成であることは,本件特許の請求項1や本件明細書には直接には記載されていない。 しかし,被告は,本件無効審判において,平成30年9月25日付け口頭審理陳述要領書(甲71)の26頁で別紙図3を示し,平成31年2月7日付け口頭審理陳述要領書(2)(甲76)の42~49頁で,力学的検証を行い,48頁6行目で,上向きのモーメントと下向きのモーメントが等しいときに次の式(「式⑫」)が成り立つことを示した。 R・Fs・sinβ=Rw・W・sinα-Ra・Fg・sinA (式⑫) (上記の式⑫のR,Fs,Rw,Ra,Fg,角度α,角度βは,前記イで述べたものと同じであり,式⑫の角度Aは,前記イ(イ)b〔本判決26頁〕で述べた角度θaと同じである。上記の式⑫に基づいて,上向きのモーメントが下向きのモーメントよりも大きいときのモーメントの関係を示すとR・Fs・sinβ+Ra・Fg・sinθa>Rw・W・sin 頁〕で述べた角度θaと同じである。上記の式⑫に基づいて,上向きのモーメントが下向きのモーメントよりも大きいときのモーメントの関係を示すとR・Fs・sinβ+Ra・Fg・sinθa>Rw・W・sinαとなり,これは,前記イ(イ)d〔本判決27頁〕の「R・Fs・sinβ+Ra・Fg・sinθa>Rw・W・sinα」という式と同じである。)そして,被告は,平成31年3月1日付け口頭審理陳述要領書(4)(甲82)の11頁で,上記の式(「式⑫」)を変形すると,次の式となることを示した。 Fs=(Rw・W・sinα-Ra・Fg・sinA)/(R・sinβ)(上記の式のR,Fs,Rw,Ra,Fg,角度α,角度βは,前記イで述べたものと同じであり,上記の式の角度Aは,前記イ(イ)b〔本判決26頁〕で述べた角度θaと同じである。上記の式は,等号か不等号かが異なる点を除けば,前記イ(イ)d〔本判決27頁〕でFsについて整理した式と同じである。)原告は,原告従業員作成の平成31年3月22日付け陳述書である甲60(審判乙14)の6頁で,構成要件Gにおける「エプロンを跳ね上げるのに要する力」(Fs)の計算方法として被告が提示した上記の式を採用することを示し,「エプロンを跳ね上げるのに要する力」(Fs)と,エプロン角度θとの関係をシミュレーションした。原告は,原告従業員作成の令和元年8月22日付け陳述書である甲64(審判乙18)でも,同様の考え方に基づくシミュレーションを行った。なお,甲60(審判乙14)の6頁に書かれた式は,次のとおりであり,FgがFGと表されているが,式の示す内容は,被告が口頭審理陳述要領書(4)(甲82)の11頁で示した上記の式と同じである。 そして,角度α,β,θaは,前記イ(ウ),(エ)〔本判決27 されているが,式の示す内容は,被告が口頭審理陳述要領書(4)(甲82)の11頁で示した上記の式と同じである。 そして,角度α,β,θaは,前記イ(ウ),(エ)〔本判決27頁〕のとおり,エプロン角度θとともに変化するものであるから(ただし,角度α及び角度βは,エプロン角度θが増加する分だけ増加するのに対し,角度θaの増加割合は,エプロン角度θの増加割合とは異なる。),この式により,「エプロンを跳ね上げるのに要する力」(Fs)とエプロン角度との関係が示されるものであり,その点について,当事者間に争いがなかった。 このように,構成要件Gの「エプロンを跳ね上げるのに要する力は,エプロン角度が増加する所定角度範囲内において徐々に減少」するという構成の理論的説明の具体的内容は,本件無効審判においては,本件発明に係る作業機の構造と力学に関する技術常識に基づいて被告が提示し,原告は,それに基づいて,構成要件Gを実現する具体例をシミュレーションし,後記5〔本判決47頁〕のとおり構成要件Gが実現できることを具体的に示した。 そうすると,構成要件Gの「エプロンを跳ね上げるのに要する力は,エプロン角度が増加する所定角度範囲内において徐々に減少」するという構成の理論的説明は,力学に関する技術常識を勘案し,本件訂正後の請求項1及び本件明細書の記載により把握される本件発明に係る作業機の構造を参照するならば,当業者であれば認識できるものであったと認められる。 エ本件明細書【0028】の記載(ア) 本件明細書【0028】の記載は,次のとおりである。 「【0028】[アシスト操作力とエプロン角度との関係]図7は,アシスト操作力とエプロン角度の関係を示すグラフである(出願人が製造販売する耕うん作業機を用いて実測した結果である。 りである。 「【0028】[アシスト操作力とエプロン角度との関係]図7は,アシスト操作力とエプロン角度の関係を示すグラフである(出願人が製造販売する耕うん作業機を用いて実測した結果である。)。ア シスト機構が作用しない場合には,エプロン角度(最も下降した状態を0°とし,これから回動するにつれて回動角度をエプロン角度と定義した。)が10°を超えたあたりから,ほぼ一定の荷重がかかることが理解される。他方で,アシスト機構が作用する場合には,エプロン角度0°近傍から,ほぼ線形に荷重が低減していく。そして,エプロン角度が約60°の点で荷重がゼロになる。つまり,作業者からみれば,だんだんと軽くなっていく。上記実施例の各支点の位置関係からこのような荷重の傾向が観測される。上記説明したガススプリング250は圧縮状態の力のほうが,伸長状態の力よりも大きいが,支点152が支点151に近づくにつれ,所定の回転角度に対する支点152の移動距離が大きくなるため,「てこの原理」により,逆の特性(エプロン角度が大きくなるほどアシスト機構が作用する力1が大きくなる。)を奏する。」(イ) 力学に関する技術常識を勘案し,本件訂正後の請求項1及び本件明細書の記載から認められる本件発明に係る作業機の構造に照らすと,本件明細書の【0028】の記載は,次のとおり理解することができると認められる。 a すなわち,本件明細書の【0028】の記載は,エプロンを持ち上げる力をアシストする力とエプロン角度について述べるものであり,本件発明の作業機において,エプロンは,第1の支点(140)を中心として回転運動するものであり,ガススプリングにより加えられるアシスト力は第3の支点(152)に加えられるものであり,それによって,エプロンを持ち上げる力をアシストす は,第1の支点(140)を中心として回転運動するものであり,ガススプリングにより加えられるアシスト力は第3の支点(152)に加えられるものであり,それによって,エプロンを持ち上げる力をアシストする力を得ることからすると,本件明細書の【0028】に記載された「てこの原理」とは,本件発明にかかる作業機の第1の支点(140)を「支点」とし,ガススプリングの力が及ぼされる第3の支点(152)を「力点」とし, エプロンの重心位置を「作用点」として,ガススプリングの力によってエプロンの持ち上げをアシストする力を得る関係を説明するものとして理解することができる。 b また,【0028】に,「上記説明したガススプリング250は圧縮状態の力の方が,伸長状態の力よりも大きい」とした上で,「逆の特性(エプロン角度が大きくなるほどアシスト機構が作用する力1が大きくなる。)」と記載されていることからすると,「逆の特性」とは,「てこの原理」における「力点」に及ぼされるガススプリング自体の力が,エプロン角度の増加に伴ってガススプリングが伸長状態となるために徐々に減少するにもかかわらず,「てこの原理」の「作用点」において得られるアシスト力が,エプロン角度の増加に伴って徐々に増加することを述べているものと理解できる。 c さらに,【0028】の「支点152が支点151に近づくにつれ,所定の回転角度に対する支点152の移動距離が大きくなるため」との記載は,「てこの原理」によって前記bの「逆の特性」を奏する理由を述べたものである。そして,てこの原理によれば,作用点に働く力が同じでも,力点と支点との距離が遠くなれば,力点に加える力は少なくて済むところ,本件発明に係る作業機においては,第1の支点(140)(てこの原理における「支点」)と第3の支点(15 作用点に働く力が同じでも,力点と支点との距離が遠くなれば,力点に加える力は少なくて済むところ,本件発明に係る作業機においては,第1の支点(140)(てこの原理における「支点」)と第3の支点(152)(てこの原理における「力点」)との距離は構造上変わらない。エプロンが持ち上げられエプロン角度が増加するにつれて第1の支点(140)との距離が大きくなるのは,第1の支点(140)と,第3の支点(152)と第2の支点(151)の2点を通る直線との間の距離であって,この直線に沿って,ガススプリングによる力が働いている。 そうすると,「てこの原理」により「逆の特性」を奏するのは,エプロンが持ち上げられエプロン角度が増加するにつれて,ガススプリン グ自体の力は小さくなるが,第3の支点(152)と第2の支点(151)の2点を通る直線と第1の支点(140)(てこの原理における「支点」)との距離が大きくなることから,両者の積で表されるモーメント(アシスト力として働く力)が大きくなることを意味しているものとして理解できる。 d これを図示すると,別紙図3(被告提出の平成30年9月25日付け口頭審理陳述要領書である甲71の26頁の図面)のとおりである。 第1の支点(140)と第3の支点(152)との距離をL,エプロンが下に降りている状態で(別紙図3の上図),第3の支点に,第2支点に向かう方向にガススプリングにより加えられる力をF1,そのときの,第1の支点と第3の支点を結ぶ直線と第3の支点と第2の支点を結ぶ直線がなす角度をθ1とすると,第3の支点に,第1の支点を中心とする円の半径と直角をなす方向に働く力は,F1・sinθ1であり,第1の支点と第3の支点の距離はLであるから,第3の支点に働くモーメント(第1の支点を中心として,第3の支点に,エ 第1の支点を中心とする円の半径と直角をなす方向に働く力は,F1・sinθ1であり,第1の支点と第3の支点の距離はLであるから,第3の支点に働くモーメント(第1の支点を中心として,第3の支点に,エプロンを上向きに動かすように働くモーメント)は,力と距離の積であるF1・sinθ1・Lである。 他方,エプロンが上に上がっている状態で(別紙図3の下図),第3の支点に,第2支点に向かう方向にガススプリングにより加えられる力はF2であり,そのときの,第1の支点と第3の支点を結ぶ直線と第3の支点と第2の支点を結ぶ直線のなす角度をθ2とすると,第3の支点に,第1の支点を中心とする円の半径と直角をなす方向に働く力は,F2・sinθ2であり,第1の支点と第3の支点の距離はLであるから,第3の支点に働くモーメント(第1の支点を中心として,第3の支点に,エプロンを上向きに動かすように働くモーメント)は,力と距離の積である,F2・sinθ2・Lである。 上記のとおり,エプロンが下に降りている状態で(別紙図3の上図)第3の支点に働くモーメントはF1・sinθ1・Lであり,エプロンが上に上がっている状態で(別紙図3の下図)第3の支点に働くモーメントはF2・sinθ2・Lであるところ,前記cのとおり,「てこの原理」により「逆の特性」を奏するのは,エプロンが持ち上げられエプロン角度が増加するにつれて,ガススプリング自体の力は小さくなるが,第3の支点(152)と第2の支点(151)の2点を通る直線と第1の支点(140)(てこの原理における「支点」)との距離が大きくなることから,両者の積で表されるモーメント(アシスト力として働く力)が大きくなることを意味しているものとして理解されるから,このような「てこの原理」に従った整理をするならば,エプロンが 離が大きくなることから,両者の積で表されるモーメント(アシスト力として働く力)が大きくなることを意味しているものとして理解されるから,このような「てこの原理」に従った整理をするならば,エプロンが下に降りている状態で(別紙図3の上図)第3の支点に働くモーメントは,ガススプリング自体の力であるF1と,第3の支点(152)と第2の支点(151)の2点を通る直線と第1の支点(140)との距離であるLsinθ1の積であるF1・Lsinθ1であり,エプロンが上に上がっている状態で(別紙図3の下図)第3の支点に働くモーメントは,ガススプリング自体の力であるF2と,第3の支点(152)と第2の支点(151)の2点を通る直線と第1の支点(140)との距離であるLsinθ2の積であるF2・Lsinθ2であるとして整理される。 エプロンが上に上がっている状態(別紙図3の下図)では,エプロンが下に降りている状態(別紙図3の上図)よりも,上向きのモーメントは大きくなり,作業者がエプロンを持ち上げる力は少なくなるから,F2・Lsinθ2>F1・Lsinθ1となる。 ガススプリングは,圧縮状態の力の方が伸長状態の力よりも大きい(【0028】)から,F2<F1であるが,他方,θ2>θ1であるから,sinθ2>sinθ1であり,エプロンが持ち上げられるにつれて,F1がF 2に減少する割合よりも,sinθ1がsinθ2に増加する割合の方が大きいと,F2・Lsinθ2>F1・Lsinθ1となる。このように,エプロンが持ち上げられるにつれてガススプリングにより加えられる力が小さくなり,F2<F1となるが,それとは逆に,エプロンに働くモーメントが大きくなるようにすれば,F2・Lsinθ2>F1・Lsinθ1となる。このようにして,「てこの原理」における「 えられる力が小さくなり,F2<F1となるが,それとは逆に,エプロンに働くモーメントが大きくなるようにすれば,F2・Lsinθ2>F1・Lsinθ1となる。このようにして,「てこの原理」における「力点」に及ぼされるガススプリング自体の力が,エプロン角度の増加に伴ってガススプリングが伸長状態となるために徐々に減少するにもかかわらず,「てこの原理」の「作用点」において得られるアシスト力が,エプロン角度の増加に伴って徐々に増加し,このことを,【0028】では「逆の特性」と述べているものと理解されるものと認められる。 (ウ) 前記イ(エ)〔本判決27頁〕のとおり,構成要件Gの「エプロンを跳ね上げるのに要する力は,エプロン角度が増加する所定角度範囲内において徐々に減少」するという構成の理論的説明は,前記イ(ウ)〔本判決27頁〕の式において,Fsが,θが増加する所定角度範囲内において徐々に減少するような構成であり,前記ウ〔本判決29頁〕のとおり,技術常識を勘案し,本件訂正後の請求項1及び本件明細書の記載により把握される本件発明に係る作業機の構造を参照するならば,上記の理論的説明は,当業者であれば認識できるものと認められる。そして,被告が,本件無効審判において,口頭審理陳述要領書(平成30年9月25日,甲71)の25~26頁で別紙図3を示し,F2・Lsinθ2>F1・Lsinθ1との式が成り立つことを示し,この式が成り立つことについては原告も争っていないことを考慮すると,【0028】が前記(イ)a~dのとおりの意味であることは,当業者であれば認識できたものと認められる。 なお,前記イ(ウ)〔本判決27頁〕のエプロン角度は,エプロンが,第1の支点を通る直線に対してなす角度をθとし,エプロンが最も下降し たときにθ=0°とするも たものと認められる。 なお,前記イ(ウ)〔本判決27頁〕のエプロン角度は,エプロンが,第1の支点を通る直線に対してなす角度をθとし,エプロンが最も下降し たときにθ=0°とするものであり,別紙図3に示された角度θ1,θ2とは異なるが,エプロンが持ち上げられるに従って前記イ(ウ)〔本判決27頁〕のエプロン角度θは大きくなり,他方,エプロンが下降した状態の角度θ1よりもエプロンが上昇した状態の角度θ2の方が大きいから,エプロンが持ち上げられるに従って大きくなる点でこれらは共通する。そして,前記イ(ウ)〔本判決27頁〕の式中の各項目のうち,θ以外の項目を適宜設定し,Fsが,θが増加する所定角度範囲内において徐々に減少するような構成を実現する(前記イ(エ)〔本判決27頁〕)に当たっては,【0028】に「ガススプリング250は圧縮状態の力のほうが,伸長状態の力よりも大きい」と記載されていることから,エプロン角度が増加するに従って第3の支点に働くガススプリング自体のアシスト力(Fg)が弱くなるような設定をする必要があり,それにもかかわらず操作者がエプロンを跳ね上げるのに要する力Fsが減少していくことの説明が【0028】において行われているものと認められる。 (エ) 被告は,本件明細書の【0028】の記載及び【図7】は,本件発明と構成を異にする原告の「FTE240」という製品に関するものであり,「FTE240」において構成要件Gが実施可能であるとしても,本件発明において構成要件Gは実施できないと主張する。しかし,本件明細書の【0028】の記載は,本件発明に関して前記(イ),(ウ)のとおり理解できるものと認められるところ,この論理は,特定の製品以外の耕うん機にも適用可能なはずであるし,現に,後記5のとおり本件発明の構成要件G 8】の記載は,本件発明に関して前記(イ),(ウ)のとおり理解できるものと認められるところ,この論理は,特定の製品以外の耕うん機にも適用可能なはずであるし,現に,後記5のとおり本件発明の構成要件Gは実施可能であるから,被告の上記主張は,採用することができない。 3 構成要件Gを実施する際の作業機の姿勢について⑴ 本件審決の判断本件審決は,作業機の姿勢について,次のとおり判断した。 「しかしながら,上記作業機の姿勢について,「エプロンの前面部分(耕うんロータに面した側)や耕うんロータに付着した土を掻き落としたり,耕うんロータに設けられた耕うん爪を取り替えたりする場合には,エプロンを跳ね上げた状態に保持する。」(本件明細書等の段落【0002】)際に,作業機の姿勢を「トラクタ油圧機構で作業機を持ち上げ調整した姿勢」や「スタンド姿勢」等のように作業機を前傾させることは,本件明細書等には記載されていない。しかも,本件明細書等に,「耕うん状態においてエプロンが下降した状態から,作業者が誤ってエプロンを跳ね上げることがなくなり,相当程度の力をもって(ただし,アシスト機構が存在しないときに要する力よりは小さい)一旦エプロンをある程度の角度まで跳ね上げれば,その後はますます軽い力で跳ね上げることが可能となる。」(段落【0037】),「ガススプリングは,前記エプロンが下降した地点において,収縮するよう構成しているため,最も長い時間である耕うん時においてガススプリングのピストンロッド表面が汚れることがなくなり,ガススプリングの寿命が大幅に向上する。」(段落【0041】)と記載されており,「耕うん状態」や「耕うん時」が耕うん作業時を指すことは明らかであるから,本件発明の「エプロンを跳ね上げる力は,エプロン角度が増加する所定角度範囲 向上する。」(段落【0041】)と記載されており,「耕うん状態」や「耕うん時」が耕うん作業時を指すことは明らかであるから,本件発明の「エプロンを跳ね上げる力は,エプロン角度が増加する所定角度範囲内において徐々に減少」するようにアシスト機構に作用させるのは,少なくとも,上記耕うん作業時の作業機の傾きのときに実現できることを説明する必要がある。 よって,被請求人が主張する「トラクタ油圧機構で作業機を持ち上げ調整した姿勢」や「スタンド姿勢」等の本件明細書等に記載のない条件下でしか実現できないのであれば,本件発明が実施可能であるとはいえない。」(本件審決86頁18行目~87頁2行目)⑵ 判断の誤りの有無とその理由アしかし,本件審決の前記⑴の判断は誤りである。その理由は,次のイのとおりである。 イ(ア) 構成要件Gを実現する際の作業機の傾きについて,本件訂正後の請求項1においては何ら限定は加えられていないが,本件明細書の【発明が解決しようとする課題】【0006】【0007】,【発明の効果】【0013】によれば,本件発明は,エプロンを跳ね上げるためのアシスト機構に従来存した課題を解決し,安定したアシスト動作が可能であり,ガススプリングの劣化も防止した作業機を提供することにあると解されるところ,【0002】には「このようなロータリ作業機は走行機体と接続されるフレームと,フレームの後方に設けられ,フレームに固定された支点(第1の支点)を中心にして下降及び跳ね上げ回動可能なエプロンを有している。エプロンの前面部分(耕うんロータに面した側)や耕うんロータに付着した土を掻き落としたり,耕うんロータに設けられた耕うん爪を取り替えたりする場合には,エプロンを跳ね上げた状態に保持する。」と記載されている。そして,エプロンを跳 タに面した側)や耕うんロータに付着した土を掻き落としたり,耕うんロータに設けられた耕うん爪を取り替えたりする場合には,エプロンを跳ね上げた状態に保持する。」と記載されている。そして,エプロンを跳ね上げるためのアシスト動作が必要になるのは,耕うんロータに付着した土を掻き落としたり,耕うんロータに設けられた耕うん爪を取り替えたりするという作業を行うときであり,これらの作業は,その目的,性質や手順等に照らし,「耕うん爪が圃場に侵入した状態」ではなく,作業機が前傾している「作業機全体(刃を含む)が地上から引き上げられた状態」で行うのが通常であると認められる。また,そのような作業が行われるときの作業機の水平に対する前傾の傾きは,甲59(審判乙13)により認められる18. 0°~34.8°と,甲90~92により認められる17.41°~33.97°を併せた範囲である17.41°~34.8°の範囲であると認められる。以上のような発明の目的等に照らしてみると,作業機が前傾している「作業機全体が地上に引き上げられた状態」(上記認定の作業機の水平に対する前傾の傾きが17.41°~34.8°である状態)で構成要件Gを実現することができるのであれば,構成要件Gは実施可 能であると認められる。構成要件Gが実施可能であるというために,作業機が上記以外の姿勢の場合にも構成要件Gが実施可能であることを示さなければならないとする根拠はない。 しかるところ,甲60(審判乙14)における「第1の姿勢」(入力軸が水平より33°前傾した状態)及び「第2の姿勢」(入力軸が水平より18°前傾した状態),甲64(審判乙18)における「最上姿勢」(トラクタ油圧機構で作業機を最も持ち上げた位置,入力軸が水平より30. 5°前傾した状態)は,作業機の水平に対する前傾の傾き が水平より18°前傾した状態),甲64(審判乙18)における「最上姿勢」(トラクタ油圧機構で作業機を最も持ち上げた位置,入力軸が水平より30. 5°前傾した状態)は,作業機の水平に対する前傾の傾きが上記の17. 41°~34.8°の範囲内に入っており,上記の「作業機全体が地上に引き上げられた状態」であるものと認められる。そして,後記4⑵イ(ア)(本判決43頁)のとおり,甲60(審判乙14)によれば,「第1の作業機」において,「第1の姿勢」及び「第2の姿勢」で,エプロンを跳ね上げるのに要する力は,一般的な作業者が感じることができる程度に徐々に減少したことが認められ,甲64(審判乙18)によれば,「第1の作業機」において,「最上姿勢」で,エプロンを跳ね上げるのに要する力は,一般的な作業者が感じることができる程度に徐々に減少したことが認められるから,構成要件Gは実施可能であると認められる。 (イ) 被告は,本件明細書の【0037】の「耕うん状態においてエプロンが下降した状態から,作業者が誤ってエプロンを跳ね上げることがなくなり,相当程度の力をもって・・・一旦エプロンをある程度の角度まで跳ね上げれば,その後はますます軽い力で跳ね上げることが可能となる。」との記載における「耕うん状態」は,「耕うん作業時」(【図2】の「耕うん姿勢」)の意味にしか理解できないし,本件明細書に記載されている作業機の姿勢は,【図2】の「耕うん姿勢」が唯一であり,しかも,この「耕うん姿勢」に原告も同意して検証が行われたのであるから,「トラクタ油圧機構で作業機を持ち上げ調整した姿勢」や「スタンド姿勢」などの本 件明細書に記載のない条件下でしか実現できないのであれば,本件発明の構成要件Gは実施可能であるとはいえないと主張する。 しかし,【0037】の記載は 姿勢」や「スタンド姿勢」などの本 件明細書に記載のない条件下でしか実現できないのであれば,本件発明の構成要件Gは実施可能であるとはいえないと主張する。 しかし,【0037】の記載は,実施例の説明にとどまるし,前記(ア)で指摘した点をも踏まえて検討すると,耕うん状態においては,エプロンを跳ね上る必要が通常ないばかりか,安全等のために不用意にエプロンが跳ね上げられるのを防止する必要があるところ,「耕うん状態」への言及は,耕うん作業中に作業者が誤ってエプロンを跳ね上げることがなくなることに関してなされたと解する余地があり,【0037】の記載から逆に,耕うん状態においてもアシスト機構が適切に機能することが必要であるとして本件発明の内容を限定する根拠はない。また,【図2】も,耕うん機の形状や構成を説明する図であって,アシスト機構の説明をするための図ではないと解する余地もあるから,これによって耕うん状態においてもアシスト機構が働くことが示されていると断定することはできない。したがって,被告の上記主張を採用することはできない。 なお,被告従業員作成の平成30年1月31日付け報告書である甲13には,耕うん姿勢でエプロンを跳ね上げるのに要する力を測定することが記載されていたところ,本件無効審判において,審判検甲1を用いてエプロンを跳ね上げるのに要する力の測定(検証)を行うに当たり,原告は,平成30年10月9日付け口頭審理陳述要領書(甲73)に「「前記エプロンを跳ね上げるのに要する力は,エプロン角度が増加する所定角度範囲内において徐々に減少する」ことを,報告書(甲第13号証)に記載された方法により測定することについて特に異存はない。」(甲73,3頁)と記載し,その結果,エプロンを跳ね上げるのに要する力の測定(検証)は,耕うん姿勢で する」ことを,報告書(甲第13号証)に記載された方法により測定することについて特に異存はない。」(甲73,3頁)と記載し,その結果,エプロンを跳ね上げるのに要する力の測定(検証)は,耕うん姿勢で行われた。しかし,上記の原告の対応は,審判検甲1を用いてエプロンを跳ね上げるのに要する力を測定(検証)する方法に関するものにとどまり,本件無効審判におけるその後の原告 の主張を制限する根拠となるようなものであったとは認められず,その後原告の主張が実際に制限されたことも窺われない。そうすると,原告が上記のような対応をしたとしても,原告が,耕うん姿勢以外の「作業機全体が地上に引き上げられた状態」で構成要件Gが実施可能である旨主張することが,信義則又は禁反言の原則に反するとは認められない。 4 エプロンを跳ね上げる力の減少の程度について⑴ 本件審決の判断本件審決は,エプロンを跳ね上げる力の減少の程度について,次のとおり判断した。 「また,被請求人は,乙第18号証を提出し,「耕うん姿勢」(作業機の入力軸が前傾3.0°)において,「エプロンを跳ね上げるのに要する力」の変改を計算し,グラフ化したところ,「仮に,耕うん状態からエプロンを跳ね上げるとした場合でも,要する力は徐々に減少することが分かります。」(上記1(13)イのグラフ中段)と主張する。 しかしながら,「エプロンを跳ね上げるのに要する力は,エプロン角度が増加する所定角度範囲内において徐々に減少」することにおいて,本件特許明細書の【0037】に「相当程度の力をもって(ただし,アシスト機構が存在しないときに要する力よりは小さい)一旦エプロンをある程度の角度まで跳ね上げれば,その後はますます軽い力で跳ね上げることが可能となる。」と記載されていることからみて,本件発明に ,アシスト機構が存在しないときに要する力よりは小さい)一旦エプロンをある程度の角度まで跳ね上げれば,その後はますます軽い力で跳ね上げることが可能となる。」と記載されていることからみて,本件発明において,「エプロンを跳ね上げるのに要する力」が「徐々に減少」することは,エプロンの操作者が該要する力が徐々に減少することを明確に知覚することができる程度の減少(例えば,本件特許の図7のグラフ。)と解することができるところ,乙第18号証に記載の該グラフの傾きからみて,エプロンの操作者が該要する力を知覚できる程度に減少しているとは認められない。 よって,耕うん作業時の姿勢において,エプロンの操作者が明確に知覚す ることができない該要する力の減少程度では,構成Gを実現できたことにはならず,本件発明が実施可能であるとはいえない。」(本件審決87頁3~21行目)⑵ 判断の誤りの有無とその理由アしかし,本件審決の前記⑴の判断は誤りである。その理由は,次のイのとおりである。 イ(ア) 前記⑴の本件審決の判断は,耕うん作業時の姿勢において構成要件Gを実現できなければならないことを前提とするものである。しかし,前記3⑵イ(ア)〔本判決39頁〕のとおり,「作業機全体が地上に引き上げられた状態」で構成要件Gを実現することができるのであれば,構成要件Gは実施可能であると認められるから,上記の本件審決の判断は,その前提において採用することができない。前記3⑵イ(ア)〔本判決39頁〕のとおり,甲60(審判乙14)における「第1の姿勢」及び「第2の姿勢」,甲64(審判乙18)における「最上姿勢」は,「作業機全体が地上に引き上げられた状態」であるものと認められるから,それらの姿勢において,「エプロンを跳ね上げるのに要する力は,エプロン角度 の姿勢」,甲64(審判乙18)における「最上姿勢」は,「作業機全体が地上に引き上げられた状態」であるものと認められるから,それらの姿勢において,「エプロンを跳ね上げるのに要する力は,エプロン角度が増加する所定角度範囲内において徐々に減少」するとの構成が実施可能であるとすれば,構成要件Gは実施することができるものと認められる。 (イ) そして,構成要件Gの,「エプロンを跳ね上げるのに要する力は,エプロン角度が増加する所定角度範囲内において徐々に減少」するとの構成が実施可能であるというためには,エプロンを跳ね上げるのに要する力が,エプロン角度の増加に伴って,一般的な作業者が感じることができる程度に徐々に減少することが必要であると認められる。その理由は,次のとおりである。 すなわち,構成要件Gの「エプロンを跳ね上げるのに要する力は,エ プロン角度が増加する所定角度範囲内において徐々に減少する」という文言によれば,構成要件Gが実現されているというためには,エプロンを跳ね上げるのに要する力が,エプロン角度の増加に伴って徐々に減少することが必要である。また,本件明細書には,「しかしながら,エプロンはそれなりの重量があり,その重心が支点(第1の支点)よりも後方にあることから,作業者にとってエプロンを跳ね上げる作業は重労働である。」【背景技術】【0003】と記載されており,エプロンに重量があるためエプロンを跳ね上げる作業が作業者にとって重労働であることが背景技術として指摘されている。そして,このような背景技術の問題点を解決するために,先行技術文献に,エプロンを跳ね上げる作業を容易にするために跳ね上げる力を補助するエプロン跳ね上げアシスト機構が記載されていたところ(【0004】),それらの先行技術が有していた問題点が,本件発明が 行技術文献に,エプロンを跳ね上げる作業を容易にするために跳ね上げる力を補助するエプロン跳ね上げアシスト機構が記載されていたところ(【0004】),それらの先行技術が有していた問題点が,本件発明が解決しようとする課題として指摘されている(【発明が解決しようとする課題】【0006】【0007】)。更にそれに続けて本件発明の内容が記載され(【課題を解決するための手段】【0008】~【0012】),発明の効果として「本発明の作業機によれば,安定したアシスト動作が可能であり,ガススプリングの劣化も防止した作業機を提供することができる。また,エプロンが下降状態にあるときに,いきなりエプロンが跳ね上がらないようにすることが可能となる。」(【0013】)と記載されている。このような本件明細書の記載によれば,本件発明は,エプロンに重量があるためエプロンを跳ね上げる作業が作業者にとって重労働であることを解決し,エプロンを跳ね上げる作業を容易にするために設けられるエプロン跳ね上げアシスト機構について,先行技術の問題点を解決することを課題とするものであることが認められ,そのような課題を解決することにより,エプロン跳ね上げアシスト機構の安定したアシスト動作を可能にし,エプロンを跳ね上げる作業を容易 にして,究極的には,エプロンに重量があるためエプロンを跳ね上げる作業が作業者にとって重労働であるという問題を解決するものであると認められる。構成要件Gの「エプロンを跳ね上げるのに要する力」は,作業者がエプロンを跳ね上げるのに要する力であるところ,上記のような本件発明の意義に鑑みれば,構成要件Gの「エプロンを跳ね上げるのに要する力は,エプロン角度が増加する所定角度範囲内において徐々に減少する」という構成が実現されているというためには,エプロンを跳 うな本件発明の意義に鑑みれば,構成要件Gの「エプロンを跳ね上げるのに要する力は,エプロン角度が増加する所定角度範囲内において徐々に減少する」という構成が実現されているというためには,エプロンを跳ね上げる作業が作業者にとって容易になる必要があるというべきであり,エプロンを跳ね上げるのに要する力が,エプロン角度の増加に伴って,一般的な作業者が感じることができる程度に徐々に減少することが必要であると認められる。【図7】には,エプロンを跳ね上げるのに要する力が,エプロン角度がおおむね0°から60°に変化する間に,250Nから0Nまで徐々に減少したことが示されているところ,後記(エ)のとおり,エプロンを跳ね上げるのに要する力の減少の程度が【図7】に示された具体的な数値に限定されると解する根拠はないが,【図7】は,本件発明において,エプロンを跳ね上げるのに要する力が一般的な作業者が感じることができる程度に徐々に減少することを裏付けることを意図しているといえる。 (ウ) しかるところ,甲60(審判乙14)の7頁のグラフ(別紙図4)によれば,「第1の作業機」において,「第1の姿勢」の場合(同グラフの青色線)には,エプロンを跳ね上げるのに要する力は,エプロン角度が0°から60°に変化する間に,250Nから0Nになるまで徐々に減少したことが認められ,「第2の姿勢」の場合(同グラフの黄色線)には,エプロンを跳ね上げるのに要する力は,エプロン角度が0°から60°に変化する間に,約230Nから約75Nまで,割合でいうと3分の1以下になるまで徐々に減少したことが認められる。また,甲64(審判 乙18)の6頁のグラフ(別紙図5)によれば,「第1の作業機」において,「最上姿勢」の場合(同グラフの青色線)には,エプロンを跳ね上げるのに要する力 が認められる。また,甲64(審判 乙18)の6頁のグラフ(別紙図5)によれば,「第1の作業機」において,「最上姿勢」の場合(同グラフの青色線)には,エプロンを跳ね上げるのに要する力は,エプロン角度が0°から60°に変化する間に,約230Nから約20Nまで,割合でいうと11分の1以下になるまで徐々に減少したことが認められる。これらの場合には,エプロンを跳ね上げるのに要する力は,エプロンが上に持ち上げられるまでの間に徐々に減少しており,減少の割合はいずれも相当に大きいから,エプロンを跳ね上げるのに要する力の減少は,一般的な作業者が感じることができる程度のものであったと認められる。そうすると,これらの場合には,エプロンを跳ね上げるのに要する力が,エプロン角度の増加に伴って,一般的な作業者が感じることができる程度に徐々に減少したものと認められ,構成要件Gの実施が可能であることが立証されたものと認められる。したがって,構成要件Gは実施可能であると認められる。 (エ) 被告は,構成要件Gの「前記エプロンを跳ね上げるのに要する力」が「エプロン角度が増加する所定角度範囲内において徐々に減少」する程度について,本件明細書の【0037】には「・・・相当程度の力をもって・・・一旦エプロンをある程度の角度まで跳ね上げれば,その後はますます軽い力で跳ね上げることが可能となる。」と記載されており,【図7】のグラフに,アシスト操作力が約250Nから約0Nになることが示されているから,【0037】の「相当程度の力」は約250Nを意味し,「ますます軽い力」は約ゼロに向かう力を意味すると主張する。 しかし,本件発明においては,作業機の大きさや重量は制限されていないから,本件発明に係る作業機としては,種々の大きさ,重量のものが想定され,そのことは 」は約ゼロに向かう力を意味すると主張する。 しかし,本件発明においては,作業機の大きさや重量は制限されていないから,本件発明に係る作業機としては,種々の大きさ,重量のものが想定され,そのことは,【0030】に「変形例」として「重量のあるエプロンを有する大型の耕うん作業機や代かき機等」と挙げられていることからも裏付けられるものであり,そのことに鑑みれば,本件発明に おいてエプロンを跳ね上げるのに要する力が具体的な数値に限定されると解することはできない。そして,本件明細書の【0037】は,本件発明の実施例の説明であり,【図7】は,本件発明の実施例に係る作業機の跳ね上げアシスト機構の効果を示す図にとどまり,構成要件Gの「前記エプロンを跳ね上げるのに要する力」が「エプロン角度が増加する所定角度範囲内において徐々に減少」する程度が【図7】に示された具体的な数値に限定されるとする記載は本件明細書にはないし,そのように解する根拠はない。したがって,被告の上記主張は,採用することができない。 5 発明の構成の実施に過度な試行錯誤を要するかについて⑴ 本件審決の判断本件審決は,前記2⑴イ〔本判決22頁〕のとおり,原告が主張する式及び説明に基づいて本件発明を実施するとしても,当業者に過度の試行錯誤を要するものと判断した。 ⑵ 判断の誤りの有無とその理由アしかし,本件審決の前記⑴の判断は誤りである。その理由は,次のイのとおりである。 イ(ア) 前記2⑶イ(エ) 〔本判決27頁〕のとおり,前記2⑶イ(ウ) 〔本判決27頁〕の式中の各項目のうち,θ以外の項目を適宜設定し,Fsが,θが増加する所定角度範囲内において徐々に減少するような構成を実現することにより,構成要件Gにおける「エプロンを跳ね上げるのに要する力は,エプロ 中の各項目のうち,θ以外の項目を適宜設定し,Fsが,θが増加する所定角度範囲内において徐々に減少するような構成を実現することにより,構成要件Gにおける「エプロンを跳ね上げるのに要する力は,エプロン角度が増加する所定角度範囲内において徐々に減少」するとの構成は実現されるものと認められるところ,前記2⑶イ(ウ)〔本判決27頁〕の式中の各項目のうち,θ以外の項は複数存在することから,それらについて適切な数値の組合せを見出して本件発明に係る作業機を作成して本件発明を実施するために過度な試行錯誤を要するかを 検討することが必要となる。 この点に関し,原告は,【図2】に記載された各支点の基本的な位置関係に基づき,構成要件Gの「エプロンを跳ね上げるのに要する力」と「エプロン角度」の変化曲線をシミュレーションし,甲60(審判乙14)の7頁のグラフ(別紙図4)の結果を得た。そして,同グラフによれば,【図2】に記載された作業機の位置関係を基礎にして,第3の支点152の位置を,第1の支点140を中心として25°下方に移動させた「第1の作業機」において,「第1の姿勢」(作業機が水平より33°前傾した状態)の場合(同グラフの青色線)には,エプロンを跳ね上げるのに要する力は,エプロン角度が0°から60°に変化する間に,250Nから0Nに徐々に減少したことが認められ,「第2の姿勢」(作業機が水平より18°前傾した状態)の場合(同グラフの黄色線)には,エプロンを跳ね上げるのに要する力は,エプロン角度が0°から60°に変化する間に,約230Nから約75Nまで徐々に減少したことが認められる。また,甲64(審判乙18)の6頁のグラフ(別紙図5)によれば,「第1の作業機」において,「最上姿勢」(トラクタ油圧機構で作業機を最も持ち上げた位置,入力軸が水平 で徐々に減少したことが認められる。また,甲64(審判乙18)の6頁のグラフ(別紙図5)によれば,「第1の作業機」において,「最上姿勢」(トラクタ油圧機構で作業機を最も持ち上げた位置,入力軸が水平より30.5°前傾した状態)の場合,エプロンを跳ね上げるのに要する力は,エプロン角度が0°から60°に変化する間に,約230Nから約20Nまで徐々に減少したことが認められる。そして,前記4⑵イ(ア)〔本判決43頁〕のとおり,これらの場合は,エプロンを跳ね上げるのに要する力が,一般的な作業者が感じることができる程度に徐々に減少したものと認められる。そうすると,これらのシミュレーションにより,構成要件Gの実施が可能であることが立証されたものと認められる。 これらのシミュレーションは,コンピュータを用いたものと推認されるが,その実施が特に困難であったとは認められず,上記の結果を得る ために過度の試行錯誤が必要であったことを窺わせる事情はない。 したがって,前記2⑶イ(ウ) 〔本判決27頁〕の式中の各項目のうち,θ以外の項目について適切な数値の組合せを見出して本件発明に係る作業機を作成して構成要件Gの「エプロンを跳ね上げるのに要する力は,エプロン角度が増加する所定角度範囲内において徐々に減少」するとの構成を実施するために,当業者は過度の試行錯誤を要しないものと認められる。 (イ)a 被告は,本件明細書の【0028】には「上記実施例の各支点の位置関係からこのような荷重の傾向が観察される。」と記載されており,【図2】の作業機の支点の位置により【図7】のグラフが得られたことが明らかにされているとした上,原告が,力学的なシミュレーションにより「エプロンを跳ね上げるのに要する力」が「エプロン角度が増加する所定角度範囲内において徐々に減少」 【図7】のグラフが得られたことが明らかにされているとした上,原告が,力学的なシミュレーションにより「エプロンを跳ね上げるのに要する力」が「エプロン角度が増加する所定角度範囲内において徐々に減少」する変化曲線を得たとする「第1の作業機」(別紙図2の青色で記載された構造)は,【図2】の作業機とは第3の支点(152)の位置が異なり,本件明細書,本件特許の特許出願の願書に添付された図面に記載されていないものであるから,「第1の作業機」を用いて得た甲60(審判乙14)の7頁のグラフ及び甲64(審判乙18)の6頁のグラフに基づいて,本件発明の構成要件Gが実施可能であるとする原告の主張は誤りであると主張する。 しかし,【図2】の作業機は,本件発明の構成を説明するための作業機の一例であるところ(【0016】),本件発明の特許請求の範囲において,支点の位置に関しては,第2の支点及び第3の支点の位置について,アシスト機構が両支点を通る同一軸上で移動可能であること(構成要件E)が定められているのみであることからすると,その定めを充たしていれば,本件発明の作業機における第2の支点及び第3 の支点の位置は,【図2】に示される具体的な位置と同じである必要はない。そして,特許出願の願書に添付される図面は,設計図のように寸法等が正確なものが求められるものではなく,発明の技術内容を理解できる程度の精度で表現されていれば足りるものであり,【図2】も,本件発明の構成を説明するために示されたものであって,設計図のように厳密な形状や寸法等を具体的に示したものとは認められないから,【図2】の作業機とは第3の支点(152)の位置が異なるのみで全体の構成が同じであり,構成要件Eも満たしている「第1の作業機」において,構成要件Gの「エプロンを跳ね上げるの のとは認められないから,【図2】の作業機とは第3の支点(152)の位置が異なるのみで全体の構成が同じであり,構成要件Eも満たしている「第1の作業機」において,構成要件Gの「エプロンを跳ね上げるのに要する力は,エプロン角度が増加する所定角度範囲内において徐々に減少」するという構成が実施可能であることが示されていれば,本件発明の構成要件Gは実施可能であると認められる。本件明細書の【0028】には「上記実施例の各支点の位置関係からこのような荷重の傾向が観察される。」と記載されているが,本件発明の構成が特許請求の範囲により特定されていることからしても,上記の【0028】の記載は,本件発明の作業機における第2の支点及び第3の支点の位置が【図2】に示される具体的な位置と同じであることまでを要求するものとは認められない。したがって,被告の上記主張は,採用することができない。 b 被告は,「第1の作業機」の計算に用いたガススプリング(甲65(審判乙19))は,直径をφ16mmにした「オールガスタイプ」のものであり,【図5】及び【図6】に記載された「フリーピストンタイプ」のものでないところ,【図5】及び【図6】に記載された「フリーピストンタイプ」のピストンでは【図7】のグラフが得られないことは明らかであると主張する。 しかし,本件発明におけるアシスト機構で用いるガススプリングについて,本件訂正後の請求項1には,「ガススプリング」と記載されて いるのみであり,「オールガスタイプ」であるか「フリーピストンタイプ」であるかについての特定がない。また,本件明細書の【0029】には,「上記実施例においては,ガススプリングとして,フリーピストンを有するものを用いたが,フリーピストンを用いない従来型のガススプリングを用いることも可能である。 。また,本件明細書の【0029】には,「上記実施例においては,ガススプリングとして,フリーピストンを有するものを用いたが,フリーピストンを用いない従来型のガススプリングを用いることも可能である。」と記載されており,本件発明のガススプリングが「フリーピストンタイプ」のものに限られない旨記載されている。そうすると,「オールガスタイプ」のガススプリング(甲65(審判乙19))を計算に用いて,前記(ア)のとおり,「第1の作業機」により構成要件Gが実施可能であることが示されていること(甲60(審判乙14)1~2頁,甲64(審判乙18)1頁,甲65(審判乙19))からすれば,構成要件Gは実施可能であると認められる。そして,「オールガスタイプ」のガススプリング(甲65(審判乙19))は,その構造に照らし,本件特許の原出願時に実施可能であったものと推認され,本件特許の原出願時に実施できなかったことを裏付ける具体的な証拠はない。したがって,被告の上記主張は,採用することができない。 c 被告は,本件発明に係る作業機を自ら開発した原告ですら,【図7】のグラフのデータを得た日に存在していた「当時の作業機」を再現できないのであるから,構成要件Gが実施不可能であることは明らかであると主張する。 しかし,特許発明が実施可能性であるか否かは,実施例に示された例をそのまま具体的に再現することができるか否かによって判断されるものではないから,本件特許の原出願時に当業者が本件明細書の記載に基づいて本件発明を実施することができたか否かは,【図7】のグラフのデータを得た「当時の作業機」自体を再現できるか否かによって判断されるものではない。前記(ア)のとおり,甲60(審判乙14), 甲64(審判乙18)によれば,構成要件Gが実施可能であることが認め 「当時の作業機」自体を再現できるか否かによって判断されるものではない。前記(ア)のとおり,甲60(審判乙14), 甲64(審判乙18)によれば,構成要件Gが実施可能であることが認められる。したがって,被告の上記主張は,採用することができない。 6 原告の主張の変遷の有無について⑴ 本件審決の判断本件審決は,原告作成の平成30年10月9日付け口頭審理陳述要領書(甲73),平成31年2月7日付け口頭審理陳述要領書(2)(甲78)における説明について,次のとおり判断した(下記の「被請求人要領書(1)」は,原告作成の平成30年10月9日付け口頭審理陳述要領書(甲73)であり,「被請求人要領書(2)」は,原告作成の平成31年2月7日付け口頭審理陳述要領書(2)(甲78)である。)。 「無効理由4について,被請求人要領書(1)においても,上記(3)のとおりの説明を行っている。 そして,その説明に付加する形で,被請求人要領書(2)では,「(1)エプロン角度が増加するにつれて,ガススプリング自体の力が大きくなる(F1<F2)場合」について,「『圧縮状態の力の方が,伸長状態の力よりも大きい』というガススプリングの特性を前提とし,かつ,エプロンが下降した状態でガススプリングが圧縮状態になり,エプロンが跳ね上げられた状態でガススプリングが伸長状態になるような方向でガススプリングが作業機に取り付けられていることを前提としている。したがって,例えば,エプロンが下降した状態でガススプリングが伸長状態になり,エプロンが跳ね上げられた状態でガススプリングが圧縮状態になるように,ガススプリングの作業機に対する取付方向を逆にすれば,エプロン角度が増加するにつれて,ガススプリング自体の力が大きくなる(F1<F2)」ことや,「このように でガススプリングが圧縮状態になるように,ガススプリングの作業機に対する取付方向を逆にすれば,エプロン角度が増加するにつれて,ガススプリング自体の力が大きくなる(F1<F2)」ことや,「このように,ピストンロッドとシリンダーの径サイズの組み合わせ,及びストローク長,ガススプリングの全長の数値等を適宜選択することにより,ガススプリングの変化率を高く 設定し,伸長時と圧縮時の反力の差が大きいガススプリングを用いることは容易である。」こと,及び「したがって,仮に,検甲第1号証・甲第14号証・甲第18号証と本件発明との支点等の位置が相違しないとしても,ガススプリングの取り付け方向を逆にしたり,伸縮方向が異なるガススプリングを用いたりすることによって,F1<F2という関係を実現することは可能である。」ことを説明している。 しかしながら,これらの説明(特に上記下線部。)は,本件発明の「ガススプリングは,前記エプロンが下降した地点において収縮するように構成される」こと,及び上記(3)で挙げた「エプロン角度が増加するにつれて,ガススプリング自体の力(F)は小さくなる(F1>F2)が,その差は小さい」(つまり,ガススプリングの変化率が小さいこと。)ことや,「エプロンを持上げる方向に作用する力(アシスト力)は,エプロン角度が増加するにつれて大きくなる(F1sinθ1<F2sinθ2)」こと等と整合しないことは明らかであって,本件発明の技術的意味を十分理解した者であれば,間違うはずのない説明事項である。 この点について,さらに,被請求人上申書(2)では,主張を差し替えて説明しているものの,結局,主に上記(3)の主張のみに戻して整理したものであるから,被請求人要領書(2)の上記主張が他の主張と矛盾したものであって,説明が二転三 人上申書(2)では,主張を差し替えて説明しているものの,結局,主に上記(3)の主張のみに戻して整理したものであるから,被請求人要領書(2)の上記主張が他の主張と矛盾したものであって,説明が二転三転していることからみても,本件特許の出願時に,当業者がどのようにすれば上記事項を備えるように,本件発明が実施可能であったということはできない。」(本件審決87頁23行目~88頁21行目)⑵ 判断の誤りの有無とその理由アしかし,本件審決の前記⑴の判断は誤りである。その理由は,次のイのとおりである。 イ(ア) 本件無効審判の経過については,次のとおり認められる。 a 特許庁審判官は,平成30年12月25日付け審理事項通知書(甲 75)を発出した。 平成30年12月25日付け審理事項通知書(甲75)には,「3 合議体の暫定的な見解」,「(5)無効理由4について」において,次のとおり記載されていた(下記の平成30年9月25日付け口頭審理陳述書は甲71であり,平成30年10月9日付け口頭審理陳述要領書は甲73である。)。 「請求人は,「エプロンを跳ね上げるのに要する力は,エプロン角度が増加する所定角度範囲内において徐々に減少」する点について,発明の詳細な説明に当業者が実施可能な程度に記載されていないとして,審判請求書(30~32頁)において,大まかに,本件発明で用いられたガススプリングの構成が不明であること,本件明細書の段落【0028】に記載の「てこの原理」の支点・力点・作用点等が不明であること,を主張している。また,平成30年9月25日付け口頭審理陳述書において,ガススプリングの特性及び各支点の位置関係について,その26頁の【参考説明図】を用いて説明している。これに対し,被請求人は,平成30年10月9日付け口頭審理 年9月25日付け口頭審理陳述書において,ガススプリングの特性及び各支点の位置関係について,その26頁の【参考説明図】を用いて説明している。これに対し,被請求人は,平成30年10月9日付け口頭審理陳述要領書において,該「てこの原理」による仕組みを,該【参考説明図】を用いて説明している。 エプロンを跳ね上げるのに要する力が,エプロン角度が増加する所定角度範囲内において徐々に減少するとされる論理である該「てこの原理」が該【参考説明図】のとおりであるならば,本件発明と支点等の位置が特に相違しない検甲第1号証・甲第14号証・甲第18号証のものとの違いは,どの様な要件となるのか不明である。」(甲75,4頁30行目~5頁10行目)さらに,平成30年12月25日付け審理事項通知書(甲75)には,「5 被請求人に対して」,「(5)」において,次のとおり記載され ていた。 「上記3(5)について,「てこの原理」以外に,本件発明において該要する力が減少する要件,あるいは影響を与える要件があるのであれば,詳しく説明して下さい。」(甲75,6頁6~8行目)b 原告は,前記aの平成30年12月25日付け審理事項通知書(甲75)による説明の要請に応え,平成31年2月7日付け口頭審理陳述要領書(2)(甲78)において,別紙6(甲78,6頁14行目~10頁14行目)のとおり記載した。 (イ) 別紙6(平成31年2月7日付け口頭審理陳述要領書(2)(甲78)6頁14行目~10頁14行目)によれば,原告は,その記載において,本件発明と同様の支点の位置関係を有する作業機であっても,エプロン角度の増加に伴うガススプリング自体の力の増減,エプロン角度の増加に伴うガススプリング自体の力の減少の割合とsinθ2がsinθ1(sinθ1,sinθ の位置関係を有する作業機であっても,エプロン角度の増加に伴うガススプリング自体の力の増減,エプロン角度の増加に伴うガススプリング自体の力の減少の割合とsinθ2がsinθ1(sinθ1,sinθ2は別紙図3のsinθ1,sinθ2と同じ。)より増加する割合などの要素を変えることにより,エプロン角度が増加するにつれてアシスト力が徐々に減少する構造も,ほぼ一定の構造も,本件発明のように徐々に増加する構造も適宜設計することができることを述べたものと認められる。そして,平成31年2月7日付け口頭審理陳述要領書(2)(甲78)の記載のうち,本件審決が,本件発明の説明と整合しないと指摘する箇所(前記⑴における指摘箇所)は,本件発明と同様の支点の位置関係を有する作業機であっても,本件発明の構成要件Gのようにエプロン角度の増加に伴ってアシスト力が増加するのとは異なる構成も設計できることを述べた箇所であるものと認められる。そのため,平成31年2月7日付け口頭審理陳述要領書(2)(甲78)に,本件審決が指摘する箇所(前記⑴における指摘箇所)の記載があったとしても,それをもって,原告が本件発明の理論的説明や技術的意義を誤って説明したも のとも,原告の本件発明に関する説明が二転三転しているとも認めることはできず,本件発明を実施することができなかったとは認められない。 7 実施可能要件の具備そうすると,本件明細書の発明の詳細な説明の記載は,本件発明の構成要件Gの「エプロンを跳ね上げるのに要する力は,エプロン角度が増加する所定角度範囲内において徐々に減少」するという構成を当業者が実施できる程度に明確かつ十分に記載されているものと認められ,本件明細書の発明の詳細な説明の記載は構成要件Gを当業者が実施できる程度に明確かつ十分に記載されてい 徐々に減少」するという構成を当業者が実施できる程度に明確かつ十分に記載されているものと認められ,本件明細書の発明の詳細な説明の記載は構成要件Gを当業者が実施できる程度に明確かつ十分に記載されていないから実施可能要件を欠き特許法36条4項1号の規定に違反しているとした本件審決の判断は誤りである。 被告は種々の主張をするが,いずれも上記の結論を左右するものではない。 8 結論以上によれば,本件審決には,これを取り消すべき違法があり,原告主張の取消事由は理由がある。 よって,原告の請求を認容することとし,主文のとおり判決する。 知的財産高等裁判所第3部 裁判長裁判官鶴岡稔彦 裁判官上田卓哉 裁判官中平健 別紙図1(原告従業員作成の平成31年3月22日付け陳述書である甲60(審判乙14)5頁の図面) 別紙図2(原告従業員作成の平成31年3月22日付け陳述書である甲60(審判乙14)3頁の図面) 別紙図3(被告提出の平成30年9月25日付け口頭審理陳述要領書である甲71の26頁の図面) 別紙図4(原告従業員作成の平成31年3月22日付け陳述書である甲60(審判乙14)7頁のグラフ) 別紙図5(原告従業員作成の令和元年8月22日付け陳述書である甲64(審判乙18)6 平成31年3月22日付け陳述書である甲60(審判乙14)7頁のグラフ) 別紙図5(原告従業員作成の令和元年8月22日付け陳述書である甲64(審判乙18)6頁のグラフ) 別紙6(原告作成平成31年2月7日付け口頭審理陳述要領書(2)である甲78の6頁14行目~10頁14行目) (6)「3(5)」(無効理由4:本件発明と検甲第1号証・甲第14号証・甲第18号証との違い)について被請求人の平成30年10月9日付け口頭審理陳述要領書(以下「被請求人要領書(1)」という。)21頁2~8行で説明したとおり、本件明細書【0028】に記載された「てこの原理」とは、第1の支点(支点140)を「支点」とし、ガススプリングの力が及ぼされる第3の支点を「力点」とし、エプロンの重心位置を「作用点」として、ガススプリングの力によってエプロンの持ち上げをアシストする力(アシスト機構が作用する力、すなわち「アシスト力」)を得るための論理である。 そして、「エプロンを跳ね上げるのに要する力は、エプロン角度が増加する所定角度範囲内において徐々に減少」するという論理を、「てこの原理」で言い換えると、エプロン角度が増加するにつれて、「てこの原理」の作用点(エプロンの重心位置)において得られる「アシスト力」が徐々に増加するという論理をいう。 また、本件発明においてエプロン角度が増加するにつれて「アシスト力」が徐々に増加する論理は、被請求人要領書(1)21頁16~24行で説明したとおり、「エプロン角度が増加するにつれて、ガススプリング自体の力(F)は小さくなる(F1>F2)が、その差は小さいのに対して、エプロン角度が増加するにつれて、sinθの値が増加(sinθ1>sinθ2)する割合 ロン角度が増加するにつれて、ガススプリング自体の力(F)は小さくなる(F1>F2)が、その差は小さいのに対して、エプロン角度が増加するにつれて、sinθの値が増加(sinθ1>sinθ2)する割合のほうが大きい」ので、「てこの原理」の作用点(エプロンの重心位置)において、エプロンを持ち上げる方向に作用する力(アシスト力)は、エプロン角度が増加するにつれて大きくなる(F1sinθ1<F2sinθ2)という点にある。 このように、「てこの原理」における「力点」に及ぼされるガススプリング自体の力(F)が、エプロン角度の増加に伴って徐々に減少するにもかかわらず、「てこの 原理」における「作用点」において得られるアシストカは、エプロン角度の増加に伴って徐々に増加するということを、本件明細書では、「「てこの原理」により、逆の特性(エプロン角度が大きくなるほどアシスト機構が作用する力1が大きくなる。)を奏する。」(本件明細書【0028】)と表現している。 したがって、例えば、①エプロン角度が増加するにつれて、ガススプリング自体の力が大きくなる(F1<F2)場合や、②エプロン角度が増加するにつれてガススプリング自体の力は小さくなる(F1>F2) が、その減少の程度が大きく、sinθ1<sinθ2という増加の程度を上回る場合には、「F1sinθ1>F2sinθ2」という関係が成立し、「アシスト力」は、エプロン角度が増加するにつれて徐々に減少するから、エプロンを跳ね上げるのに要する力は、エプロン角度が増加する所定角度範囲内において徐々に「増加」することになる。 具体的には、①の場合について、「エプロン角度が増加するにつれて、ガススプリング自体の力は小さくなる(F1>F2)」という本件発明における論理は、「圧縮状態の力のほうが、伸長状態 することになる。 具体的には、①の場合について、「エプロン角度が増加するにつれて、ガススプリング自体の力は小さくなる(F1>F2)」という本件発明における論理は、「圧縮状態の力のほうが、伸長状態の力よりも大きい」というガススプリングの特性を前提とし、かつ、エプロンが下降した状態でガススプリングが圧縮状態になり、エプロンが跳ね上げられた状態でガススプリングが伸長状態になるような方向でガススプリングが作業機に取り付けられていることを前提としている。 したがって、例えば、エプロンが下降した状態でガススプリングが伸長状態になり、エプロンが跳ね上げられた状態でガススプリングが圧縮状態になるように、ガススプリングの作業機に対する取り付け方向を逆にすれば、エプロン角度が増加するにつれて、ガススプリング自体の力が大きくなる(F1<F2)。 また、②の場合について検討すると、F1>F2という減少の程度がsinθ1<sinθ2という増加の程度を上回るようにガススプリングを設計すれば、「F1sinθ1>F2sinθ2」という関係が成立する。すなわち、伸長時と圧縮時におけるガス反力の差が大きくなるように、ガススプリングのガス反力の大きさやエプロンの持ち上げアシストに使用するストローク領域等を選択すればよい。 この点について、請求人は、乙第3号証に基づき、「ガススプリングが広範囲のストロークで略一定のバネ力を発揮することは、当業者の技術常識である」(請求人要領書(1)25頁4~8行)と主張する。 しかし、乙第3号証には「②バネ定数とガス反力を広い範囲で設計することができます。」、「⑥用途に応じた設計が可能なため、幅広い用途に対応できます。」(乙第3号証1頁「特長」)とも記載されている。 また、乙第6号証には、シリンダー内部に充填され い範囲で設計することができます。」、「⑥用途に応じた設計が可能なため、幅広い用途に対応できます。」(乙第3号証1頁「特長」)とも記載されている。 また、乙第6号証には、シリンダー内部に充填されているガスがピストンによって圧縮されることにより反力が上昇する程度(変化率)を算出することができること、ピストンロットとシリンダーの径サイズの組み合わせ、及びストローク長、ガススプリングの全長の数値から、変化率およそ35%や100%のガススプリングを設計することができること(乙第6号証2頁)、ガススプリングの伸長時の基準反力(F1)に変化率の数値(変化率35%であれば「1.35」)を掛けることによって、圧縮時の反力(F2)を算出することができること、「高い変化率のガススプリングを選定すると反力の上昇が大きい」こと(乙第6号証3頁)が記載されている。 このように、ピストンロットとシリンダーの径サイズの組み合わせ、及びストローク長、ガススプリングの全長の数値等を適宜選択することにより、ガススプリングの変化率を高く設定し、伸長時と圧縮時の反力の差が大きいガススプリングを用いることは容易である。 したがって、仮に、検甲第1号証・甲第14号証・甲第18号証と本件発明との支点等の位置が相違しないとしても、ガススプリングの取り付け方向を逆にしたり、伸縮方向が異なるガススプリングを用いたりすることによって、F1<F2という関係を実現することは可能である(①)。 また、F1>F2という関係が成立する場合には、F1>F2の減少の程度がsinθ1<sinθ2という増加の程度を上回るようにガススプリングを設計することにより、「F1sinθ1>F2sinθ2」という関係を実現することが可能である(②)。 したがって、仮に、検甲第1号証・甲第1 sinθ2という増加の程度を上回るようにガススプリングを設計することにより、「F1sinθ1>F2sinθ2」という関係を実現することが可能である(②)。 したがって、仮に、検甲第1号証・甲第14号証・甲第18号証と本件発明との支点等の位置が相違しないとしても、上述したその他の要素により、「アシスト力」が、エプロン角度が増加するにつれて徐々に減少する構造も、ほぼ一定である構造も、徐々に増加する構造も適宜設計することができる。 したがって、請求人の主張する無効理由4には理由がない。 JP 5976246 B1 2016.8.23(57)【特許請求の範囲】【請求項1】走行機体の後部に装着され、耕うんロータを回転させながら前記走行機体の前進走行に伴って進行して圃場を耕うんする作業機において、前記作業機は前記走行機体と接続されるフレームと、前記フレームの後方に設けられ、前記フレームに固定された第1の支点を中心にして下降及び跳ね上げ回動可能であり、その重心が前記第1の支点よりも後方にあるエプロンと、前記フレームに固定された第2の支点と前記エプロンに固定された第3の支点との間に設けられ、前記第2の支点と前記第3の支点との距離を変化させる力を作用させることによって前記エプロンを跳ね上げる方向に力を作用させる、ガススプリングを含むアシスト機構とを具備し、前記アシスト機構は、さらに、前記ガススプリングがその中に位置する同一軸上で移動可能な第1の筒状部材と第2の筒状部材とを有し、前記第1の筒状部材には前記第2の支点と前記ガススプリングの一端とが接続され、前記第2の筒状部材には前記ガススプリングの他端が接続され、前記第2の筒状部材に設けられた第1の突部が前記第3の支点を回動中心とする第2の突部に接触して前記第3の支点と前記第2の支 端とが接続され、前記第2の筒状部材には前記ガススプリングの他端が接続され、前記第2の筒状部材に設けられた第1の突部が前記第3の支点を回動中心とする第2の突部に接触して前記第3の支点と前記第2の支点との距離を縮める方向に変化することにより、前記エプロンを跳ね上げるのに要する力は、エプロン角度が増加する所定角度範囲内において徐々に減少し、前記ガススプリングは、前記エプロンが下降した地点において収縮するように構成される 別紙 (2)JP 5976246 B1 2016.8.23ことを特徴とする作業機。 【発明の詳細な説明】【技術分野】【0001】本発明は作業機に関する。特に、走行機体の後部に装着され、耕うんロータを回転させながら走行機体の前進走行に伴って進行して圃場を耕うんするロータリ作業機に関する。 【背景技術】【0002】このようなロータリ作業機は走行機体と接続されるフレームと、フレームの後方に設けられ、フレームに固定された支点(第1の支点)を中心にして下降及び跳ね上げ回動可能なエプロンを有している。エプロンの前面部分(耕うんロータに面した側)や耕うんロータに付着した土を掻き落としたり、耕うんロータに設けられた耕うん爪を取り替えたりする場合には、エプロンを跳ね上げた状態に保持する。 【0003】しかしながら、エプロンはそれなりの重量があり、その重心が支点(第1の支点)よりも後方にあることから、作業者にとってエプロンを跳ね上げる作業は重労働である。 【0004】特許文献1に記載されているように、エプロンを跳ね上げる作業を容易にするために、ガススプリングの弾性力を利用して跳ね上げる力を補助するエプロン跳ね上げアシスト機構(補助機構)が提案されている。この特許文献1記載のアシスト機構(補助機構)は、ロータリ作業 業を容易にするために、ガススプリングの弾性力を利用して跳ね上げる力を補助するエプロン跳ね上げアシスト機構(補助機構)が提案されている。この特許文献1記載のアシスト機構(補助機構)は、ロータリ作業機の作業機本体の幅方向端部に設けられた側部カバーとエプロンの幅方向端部との間に設けられたガススプリングを有し、ガススプリングのロッド側端部は側部カバーに設けられた案内孔に沿って上下方向に移動可能に支持されている。特許文献2,3記載のアシスト機構(補助機構)は、耕うんロータの上方を覆うシールドカバーの上方にアシスト機構(補助機構)を設けている。 【先行技術文献】【特許文献】【0005】【特許文献1】特開2008-278757号公報【特許文献2】特開2010-63367号公報【特許文献3】特開2014-97042号公報【発明の概要】【発明が解決しようとする課題】【0006】しかしながら、特許文献1記載のアシスト機構(補助機構)は、エプロンの幅方向端部に設けられているため、作業中にガススプリングが畦や側壁等の障害物に接触して損傷する恐れがある。 【0007】また、特許文献2記載のアシスト機構(補助機構)は、ガススプリングのピストンロッドが露出しており、特許文献3記載のアシスト機構(補助機構)は、ガススプリングを横にしたままで用いるため、いずれもガススプリングから窒素ガスが漏洩する可能性があり、耐久性をさらに向上する必要がある。 【課題を解決するための手段】【0008】本発明の実施形態による作業機は、走行機体の後部に装着され、耕うんロータを回転させながら走行機体の前進走行に伴って進行して圃場を耕うんする作業機において、作業機は走行機体と接続されるフレーム(主フレームやシールドカバーを含む概念である。以下同じ。)と、フレームの後方に設けられ ながら走行機体の前進走行に伴って進行して圃場を耕うんする作業機において、作業機は走行機体と接続されるフレーム(主フレームやシールドカバーを含む概念である。以下同じ。)と、フレームの後方に設けられ、フレームに固定された第1の支点を中心にして下 (3)JP 5976246 B1 2016.8.23降及び跳ね上げ回動可能であり、その重心が支点よりも後方にあるエプロンと、フレームに固定された第2の支点とエプロンに固定された第3の支点との間に設けられ、第2の支点と第3の支点との距離を変化させる力を作用させることによってエプロンを跳ね上げる方向に力を作用させる、ガススプリングを含むアシスト機構とを具備し、ガススプリングは、シリンダーと、シリンダーの内部に挿入されたピストンと、ピストンから延長されるピストンロッドと、ピストンロッドを安定させるためのロッドガイドと、シリンダーとピストンとで区画されるシリンダー内部を移動可能なフリーピストンとを有し、シリンダー内部のうちフリーピストンとピストンとの間及びピストンとロッドガイドとの間にはそれぞれオイルが充填され、アシスト機構は、さらに、同一軸上で移動可能な第1の筒状部材と第2の筒状部材とを有し、第1の筒状部材には第2の支点とガススプリングの一端とが接続され、第2の筒状部材には第3の支点とガススプリングの他端とが接続されることを特徴とする。 【0009】上記作業機において、アシスト機構は、さらに、同一軸上で移動可能な第1の筒状部材と第2の筒状部材とを有し、第1の筒状部材には第2の支点とガススプリングの一端とが接続され、第2の筒状部材には第3の支点とガススプリングの他端とが接続されることが望ましい。また、第1の筒状部材又は第2の筒状部材のエプロン側の一端に、下方に向け 第2の支点とガススプリングの一端とが接続され、第2の筒状部材には第3の支点とガススプリングの他端とが接続されることが望ましい。また、第1の筒状部材又は第2の筒状部材のエプロン側の一端に、下方に向けた開口が存在してもよい。さらに、第1の筒状部材と第2の筒状部材との間に樹脂カラーを介在させてもよい。 【0010】上記作業機において、ガススプリングは、エプロンが下降した地点において、収縮するよう構成することが望ましい。 【0011】上記作業機において、アシスト機構は、エプロンが下降した地点において、第2の支点と第3の支点との距離を変化させる力を作用させないようにするロック機構を有することが望ましい。ロック機構は第2の筒状部材に設けられた回動可能な制止レバーを有し、制止レバーが第2の筒状部材の一端を閉じることによって第2の筒状部材から第1の筒状部材が突出することを防止し、制止レバーが第2の筒状部材の一端を開くことによって第2の筒状部材から第1の筒状部材が突出することを許容するよう構成してもよい。また、ロック機構は、制止レバーを第2の筒状部材の一端を閉じる方向に回動させる手段と、制止レバーを第2の筒状部材の一端を開く位置に一時的に固定する手段とを有してもよい。 【0012】上記作業機において、アシスト機構は複数のガススプリングを含んでもよい。 【発明の効果】【0013】本発明の作業機によれば、安定したアシスト動作が可能であり、ガススプリングの劣化も防止した作業機を提供することができる。また、エプロンが下降状態にあるときに、いきなりエプロンが跳ね上がらないようにすることが可能となる。 【図面の簡単な説明】【0014】【図1】本発明の実施例に係る作業機の背面図である。 【図2】本発明の実施例に係る作業機の耕うん時の側面図である。 【図3】本発明の ないようにすることが可能となる。 【図面の簡単な説明】【0014】【図1】本発明の実施例に係る作業機の背面図である。 【図2】本発明の実施例に係る作業機の耕うん時の側面図である。 【図3】本発明の実施例に係る作業機のエプロン跳ね上げ時の側面図である。 【図4】本発明の実施例に係る作業機の跳ね上げアシスト機構の背面図である。 【図5】本発明の実施例に係る作業機の跳ね上げアシスト機構の耕うん時の側面図である。 【図6】本発明の実施例に係る作業機の跳ね上げアシスト機構のエプロン跳ね上げ時の側面図である。 【図7】本発明の実施例に係る作業機の跳ね上げアシスト機構の効果を示す図表である。 【発明を実施するための形態】 (4)JP 5976246 B1 2016.8.23【0015】以下、図面を参照して本発明の作業機の実施例について説明する。但し、本発明の作業機は多くの異なる態様で実施することが可能であり、以下に示す例の記載内容に限定して解釈されるものではない。なお、本実施の形態で参照する図面において、同一部分または同様な機能を有する部分には同一の符号を付し、その繰り返しの説明は省略する。また、説明の便宜上、上方(上部)又は下方(下部)という語句を用いて説明するが、上方(上部)又は下方(下部)はそれぞれ作業機の作業状態における向きを示す。また、同様に、前方(前側)又は後方(後側)という語句を用いて説明するが、前方(前側)は作業機に対する作業機を牽引する走行機体の方向を示し、後方(後側)は走行機体に対する作業機の方向を示す。 【0016】〈実施例〉図1から図6を用いて、本発明の実施例に係る作業機の全体構成及び跳ね上げアシスト機構(補助機構)の構成について説明する。本発明の実施例に係る作業機は、耕うん作業機や代 す。 【0016】〈実施例〉図1から図6を用いて、本発明の実施例に係る作業機の全体構成及び跳ね上げアシスト機構(補助機構)の構成について説明する。本発明の実施例に係る作業機は、耕うん作業機や代かき機のように、例えばトラクタなどの走行機体の後部に連結され、作業爪を回転させることで土壌を耕し又は撹拌する作業機である。実施例では、作業機の一例として耕うん作業機を用いて本発明の構成を説明するが、本発明に係る作業機は代かき機であってもよく、耕うん作業機又は代かき機以外の作業機であってもよい。 【0017】[作業機100の構成]図1は、本発明の実施例に係る作業機の背面図である。図2は、本発明の実施例に係る作業機の耕うん時の側面図である。図3は、本発明の実施例に係る作業機のエプロン跳ね上げ時の側面図である。実施例に係る作業機100は、フレーム(主フレーム110とシールドカバー120とを含む)、耕うんロータ102、エプロン130等から構成されている。 【0018】主フレーム110は、トラクタ等の走行機体と接続される。主フレーム110は円筒形であり、内部に動力伝達軸を有する。トラクタ等の走行機体から回転動力を得て、これを進行方向左右へと回転軸の向きを代える。主フレーム110内の動力伝達軸は作業機100側部のチェーンケース105に接続され、このチェーンケース105内のチェーン伝達機構によって、耕うんロータ102の回転軸104に動力が伝達される。 【0019】耕うんロータ102は回転軸104と、この回転軸104に設けられた多数の耕うん爪103とから構成される。図1に示されているように、多数の耕うん爪103は進行方向右又は左に曲げられており、個々の耕うん爪103が土を掘り起こす領域(幅)は隣接する爪103との間で重なりあいがある。この耕うんロータ102は 図1に示されているように、多数の耕うん爪103は進行方向右又は左に曲げられており、個々の耕うん爪103が土を掘り起こす領域(幅)は隣接する爪103との間で重なりあいがある。この耕うんロータ102は進行方向前方から後方に向かって土をかき上げるよう回転する。その結果エプロン130の内側には土が付着する。 【0020】エプロン130は、シールドカバー120に固定された支点140を中心にして下降及び跳ね上げ回動可能である。エプロン130の重心は前記支点よりも後方にある。したがって、エプロン130は自重により下降しようとする。エプロン130の先端にはステンレスの整地板131が溶接されている。整地板131はエプロン130の内側から外側に向かってループを描くように構成されている。この整地板131が耕うんロータ102によって掘り起こされた圃場を平坦にする。整地板131の両端には可動式の延長整地板132が設けられている。延長整地板132を開くことによって整地板131とともに広い幅範囲を整地することが可能になる。主フレーム110に設けられた台座とエプロン130との間にコンプレッションロッド142が備えられている。コンプレッションロッド142は、エプロン130が下降状態にあるときに、エプロン130及び整地板131を圃場に一定の圧力で押さえつける働きをする。コンプレッションロッド142が作用する力の (5)JP 5976246 B1 2016.8.23大きさは、作業者の操作によって調整可能である。エプロン130の内側には土が付着する場合があるため、ゴムシートでエプロン内側が覆われている。また、シールドカバーの内側もゴムシートで覆われている。 【0021】実施例においては、上記構成に加えて、さらに、エプロン跳ね上げアシ 着する場合があるため、ゴムシートでエプロン内側が覆われている。また、シールドカバーの内側もゴムシートで覆われている。 【0021】実施例においては、上記構成に加えて、さらに、エプロン跳ね上げアシスト機構(補助機構)141が備えられている。エプロン跳ね上げアシスト機構(補助機構)141は、主フレーム110に設けられた台座111による支点151と、エプロン130に設けられた台座134による支点152との間に設けられ、支点151と支点152の距離を変化させる力を作用させる。具体的には、この両者の距離を縮めることによってエプロン130を跳ね上げる方向に力を作用させる。このエプロン跳ね上げアシスト機構141にはロック機構153が備えられている。このロック機構153はエプロン130が下降した状態(図2)において、支点151と支点152との距離を縮める方向の力を作用させないようにする。 【0022】[跳ね上げアシスト機構の構成]図4は本発明の実施例に係る作業機の跳ね上げアシスト機構141の背面図である。図5は本発明の実施例に係る作業機の跳ね上げアシスト機構141の耕うん時の側面図である。図6は本発明の実施例に係る作業機の跳ね上げアシスト機構141のエプロン跳ね上げ時の側面図である。実施例に係る作業機の跳ね上げアシスト機構141は、内側筒状部材210、外側筒状部材220と、その中に位置するガススプリング250等から構成されている。 【0023】[ガススプリングの構成]ガススプリング250は、内側に空間を包摂する円筒形のシリンダー251と、シリンダー251の内部に挿入されたピストン256と、このピストン256から延長されるピストンロッド252と、フリーピストン257とから構成されている。ピストンロッド252の先端にはブラケット253が、シリンダー 1の内部に挿入されたピストン256と、このピストン256から延長されるピストンロッド252と、フリーピストン257とから構成されている。ピストンロッド252の先端にはブラケット253が、シリンダー251の先端にはブラケット254が設けられている。ピストンロッド252とシリンダー251の他端近傍には、ピストンロッド252を安定させるためのロッドガイド258が設けられている。フリーピストン257は、シリンダー251とピストン256とで区画されるシリンダー内部を移動可能である。フリーピストンとシリンダー251の内壁との間には可塑性樹脂からなるOリングがはめ込まれている。フリーピストン257とシリンダー先端との間の第1部屋261(図5、図6においてはフリーピストン257の右側の部屋)には窒素が充填されている。この窒素の体積が変化することによって、ガススプリング250はスプリングのように伸び縮みし、ブラケット253、254の間隔が小さい場合はこれを大きくする方向で力を作用させる。ガススプリング250内部のピストン256とフリーピストン257との間の第2部屋260(図5、図6においてはフリーピストン257の左側の部屋)及びピストン256とロッドガイド258との間の第3部屋280(図5、図6においてはピストン256の左側の部屋)にはオイルが充填されている。このオイルが窒素のガススプリング250外への漏洩を防ぐ。ピストン256には、ガススプリング250の伸長方向に沿ってオリフィス(孔)259が形成されている。第2部屋260と第3部屋280に充填されたオイルは、ピストン256に形成されたオリフィス259を介して相互に移動する。具体的には、ピストンロッド252がシリンダー251の外側に向かって伸長するに従って、第3部屋280内のオイルがオリフィス259を介 ピストン256に形成されたオリフィス259を介して相互に移動する。具体的には、ピストンロッド252がシリンダー251の外側に向かって伸長するに従って、第3部屋280内のオイルがオリフィス259を介して第2部屋260に移動し、ピストン256とフリーピストン257との間隔が広くなる。 【0024】[内側及び外側筒状部材の組み合わせの構成]跳ね上げアシスト機構141は、ガススプリング250の伸長方向の力を圧縮方向の力に変換するため、内側筒状部材210と外側筒状部材220とを組み合わせている。内側筒状部材210と外側筒状部材220とは、同一軸上で移動可能である。両者の間には図示 (6)JP 5976246 B1 2016.8.23しない樹脂製の筒状のカラー(樹脂カラー)が設けられており、内側筒状部材210と外側筒状部材220との摺動による異音の発生を防止している。ガススプリング250のブラケット254は外側筒状部材220とピン271によって接続されている。ピン271は内側筒状部材210に設けられた長形穴内部において前後に動く。ガススプリング250のブラケット253は内側筒状部材210とピン270によって接続されている。支点151は内側筒状部材の一端に設けられ、支点152は外側筒状部材に設けられている。 この結果、ガススプリング250が伸長する方向に力を作用させると、これとは逆に、アシスト機構は支点151と支点152の間隔が圧縮する方向に力を作用させる。この結果、エプロン130を跳ね上げる方向に回動させる。 【0025】上記構成を前提にすれば、アシスト機構141内部のガススプリング250は、地平と略平行(若干の傾きはあるにせよ)に配置され、垂直に配置されるわけではない。一般的なガススプリングにおいては、ピ 25】上記構成を前提にすれば、アシスト機構141内部のガススプリング250は、地平と略平行(若干の傾きはあるにせよ)に配置され、垂直に配置されるわけではない。一般的なガススプリングにおいては、ピストンロッドをシリンダーよりも下方に配置することが、ガスの漏洩とガススプリングの劣化の防止の観点から望ましいが、実施例によれば、上記したガススプリングを使用しているため、ガススプリングが地平と略平行であってもガスの漏洩とガススプリングの劣化を抑制することができる。 【0026】[ロック機構の構成]エプロン跳ね上げアシスト機構141にはロック機構153が備えられている。このロック機構153はエプロン130が下降した状態において、支点151と支点152との距離を縮める方向の力を作用させないようにする。この結果、耕うん時にアシスト機構141が働いてエプロンが跳ね上がらない。ロック機構153は図4に示すとおり、外側筒状部材220に固定されており、支点231を中心として回動するロックバー230とこれから延長されるレバー240と、このロックバー230の回動を規制する回動規制板233とから構成されている。 【0027】レバー240を下に倒すと、ロックバー230が外側筒状部材220の一端を閉じるので内側筒状部材210が飛び出してくるのを規制する。その結果、アシスト機構は支点151と支点152の間隔が圧縮する方向に力を作用させなくなる。レバー240を上に倒すと、ロックバー230が外側筒状部材220の一端を開くので内側筒状部材210が飛び出してくる。その結果、アシスト機構は支点151と支点152の間隔が圧縮する方向に力を作用させる。このようにして耕うん時にはレバー240を下に倒してアシスト機構の動作をロックすることができる。 【0028】[アシスト操作力とエプ 構は支点151と支点152の間隔が圧縮する方向に力を作用させる。このようにして耕うん時にはレバー240を下に倒してアシスト機構の動作をロックすることができる。 【0028】[アシスト操作力とエプロン角度との関係]図7は、アシスト操作力とエプロン角度の関係を示すグラフである(出願人が製造販売する耕うん作業機を用いて実測した結果である。)。アシスト機構が作用しない場合には、エプロン角度(最も下降した状態を0° とし、これから回動するにつれて回動角度をエプロン角度と定義した。)が10° を超えたあたりから、ほぼ一定の荷重がかかることが理解される。他方で、アシスト機構が作用する場合には、エプロン角度0° 近傍から、ほぼ線形に荷重が低減していく。そして、エプロン角度が約60° の点で荷重がゼロになる。 つまり、作業者からみれば、だんだんと軽くなっていく。上記実施例の各支点の位置関係からこのような荷重の傾向が観測される。上記説明したガススプリング250は圧縮状態の力のほうが、伸長状態の力よりも大きいが、支点152が支点151に近づくにつれ、所定の回転角度に対する支点152の移動距離が大きくなるため、「てこの原理」により、逆の特性(エプロン角度が大きくなるほどアシスト機構が作用する力1が大きくなる。 )を奏する。 【0029】[変形例1]上記実施例においては、ガススプリングとして、フリーピストンを有するものを用いたが (7)JP 5976246 B1 2016.8.23、フリーピストンを用いない従来型のガススプリングを用いることも可能である。この場合は、通常の状態であるところの、エプロンが下降した状態においてピストンロッドはシリンダーよりも下方に位置することが望ましい。フリーピストンを用いない従来型のガスス を用いることも可能である。この場合は、通常の状態であるところの、エプロンが下降した状態においてピストンロッドはシリンダーよりも下方に位置することが望ましい。フリーピストンを用いない従来型のガススプリングであっても、ピストンロッドがシリンダーよりも下方に位置することによって内部のオイルがピストン側に移動し、窒素ガスの漏洩を防止するからである。 【0030】[変形例2]上記実施例においては、ガススプリングは1本のみの例を示したが、ガススプリングは複数本用いてもよい。このようにして十分なアシスト力を得ることが可能となる。特に、重量のあるエプロンを有する大型の耕うん作業機や代かき機等においては、ガススプリングは複数本用いることが望ましい。この場合、アシスト機構を作業機の幅方向に複数個間隔を開けて配置してもよい。 【0031】[変形例3]上記実施例においては、1つのアシスト機構のなかにガススプリングは1本のみである例を示したが、1つのアシスト機構のなかにガススプリングを複数本用いてもよい。このようにして十分なアシスト力を得ることが可能となる。また、筒状部材は円筒でなく、断面が楕円の楕円筒状、断面が長方形の角型筒状であってもかまわない。 【0032】[変形例4]上記実施例においては、自動ロック機構は、制止レバーを上下させるだけの構成であったが、制止レバーを第2の筒状部材の一端を閉じる方向に回動させるよう付勢するスプリングと、制止レバーを第2の筒状部材の一端を開く位置に一時的に固定するガイド形状(例えばガイドに段差を設けるなど)としてもよい。このような構成により、付勢スプリングによって、エプロンが最も降下した位置で自動的にロックがかかる。また、制止レバーを第2の筒状部材の一端を開く位置に一時的に固定するガイド形状とすることによって、エプロンが 構成により、付勢スプリングによって、エプロンが最も降下した位置で自動的にロックがかかる。また、制止レバーを第2の筒状部材の一端を開く位置に一時的に固定するガイド形状とすることによって、エプロンが最も降下した位置でロックを外し、ロックを外した状態でエプロンを跳ね上げることができる。 【0033】[実施例による作用効果]以上の構成により、以下の様な作用効果を奏する。 【0034】第1に、本発明の実施例によれば、アシスト機構はエプロンの幅方向端部に設けられていないので、作業中にガススプリングが畦や側壁等の障害物に接触して損傷することがない。アシスト機構は、フレームに固定された第2の支点とエプロンに固定された第3の支点との間に設けられているところ、フレームは構造部材であり既に強度が十分なので、耐久性を向上させることができる。 【0035】第2に、本発明の実施例の構成を前提にすれば、ガススプリングがほぼ地平と略平行に配置されざるをえず、一般的なガススプリング(フリーピストンが存在しないもの)ではガスの漏洩可能性が高くなりがちである。本発明の実施例によれば、ガススプリング内部にフリーピストンを有し、フリーピストンとピストンとの間の部屋及びピストンとロッドガイドとの間の部屋にはそれぞれオイルが充填されている。この結果、フリーピストンの先に充填されている窒素等のガスがガススプリングから漏れだす可能性が低くなり、ガススプリングの劣化が防止され、ガススプリングの寿命が大幅に向上する。これは、作業機のメンテナンスコストの低減にも寄与する。 【0036】第3に、本発明の実施例によれば、エプロンが下降した状態(すなわち、耕うん時の状態である。エプロンが跳ね上がった状態の時間よりもはるかに長い時間においてこの状態が維持される。)において、ガススプリングのピス 本発明の実施例によれば、エプロンが下降した状態(すなわち、耕うん時の状態である。エプロンが跳ね上がった状態の時間よりもはるかに長い時間においてこの状態が維持される。)において、ガススプリングのピストンロッドが、シリンダーよりも下方に (8)JP 5976246 B1 2016.8.23位置する。その結果、ガススプリングのピストンロッドが、シリンダーよりも上方に位置する場合と比較して、窒素等のガスがガススプリングから漏れだす可能性が低くなり、ガススプリングの劣化が防止され、ガススプリングの寿命が大幅に向上する。これは、作業機のメンテナンスコストの低減にも寄与する。 【0037】第4に、本発明の実施例によれば、アシスト機構が作用する力によって、エプロンを跳ね上げるのに要する力が小さくなる。さらに、その力が所定角度範囲内において、徐々に小さくなるようアシスト機構を調整しているため、耕うん状態においてエプロンが下降した状態から、作業者が誤ってエプロンを跳ね上げることがなくなり、相当程度の力をもって(ただし、アシスト機構が存在しないときに要する力よりは小さい)一旦エプロンをある程度の角度まで跳ね上げれば、その後はますます軽い力で跳ね上げることが可能となる。 つまり、エプロンの跳ね上げに要する力を減らすとともに、回転角度が上昇するに従って跳ね上げに要する力が減少していく。 【0038】第5に、本発明の実施例において、同一軸上で移動可能な第1の筒状部材と第2の筒状部材とを有し、第1の筒状部材には第2の支点と前記ガススプリングの一端とが接続され、第2の筒状部材には第3の支点と前記ガススプリングの他端とが接続される位置から、伸長時に力が加わるガススプリングを圧縮時に力が加わる二重筒構成としている。この結果、ガスス リングの一端とが接続され、第2の筒状部材には第3の支点と前記ガススプリングの他端とが接続される位置から、伸長時に力が加わるガススプリングを圧縮時に力が加わる二重筒構成としている。この結果、ガススプリングのピストンロッドが筒状部材に覆われ、表面が汚れることがなくなり、ガススプリングの寿命が大幅に向上する。これは、作業機のメンテナンスコストの低減にも寄与する。 【0039】第6に、本発明の実施例においては、耕うん時には、内側筒状部材と外側筒状部材とが、ガススプリングのピストンロッドを二重に覆い隠す状態となる。つまり、周辺環境に応じて劣化が見られるピストンロッドを保護している。 【0040】第7に、本発明の実施例において、内側筒状部材の一端(エプロン側)には、下方に向けた開口(小さな穴)が存在する。この小さな開口によって内側筒状部材の中にたまった水分を排出することが可能となる。 【0041】第8に、本発明の実施例において、ガススプリングは、前記エプロンが下降した地点において、収縮するよう構成しているため、最も長い時間である耕うん時においてガススプリングのピストンロッド表面が汚れることがなくなり、ガススプリングの寿命が大幅に向上する。これは、作業機のメンテナンスコストの低減にも寄与する。 【0042】第9に、本発明の実施例において、アシスト機構は、外側筒状部材と内側筒状部材との間に樹脂カラーを介在させている。この結果、外側筒状部材と内側筒状部材とが摺動する際に、異音の発生を防ぐことが可能となる。 【0043】以上、本発明について図面を参照しながら説明したが、本発明は上記の実施形態に限られるものではなく、本発明の趣旨を逸脱しない範囲で適宜変更することが可能である。 【符号の説明】【0044】100:作業機、210:内側筒状部材、220:外側 明したが、本発明は上記の実施形態に限られるものではなく、本発明の趣旨を逸脱しない範囲で適宜変更することが可能である。 【符号の説明】【0044】100:作業機、210:内側筒状部材、220:外側筒状部材、250:ガススプリング、251:シリンダー、252:ピストンロッド、256:ピストン、257:フリーピストン【要約】【課題】安定したアシスト動作が可能な作業機を提供すること。 【解決手段】同一軸上で移動可能な第1の筒状部材と第2の筒状部材とを有し、第1の筒状部材には第2の支点とガススプリングの一端とが接続され、第2の筒状部材にはガスス (9)JP 5976246 B1 2016.8.23プリングの他端が接続され、第2の筒状部材に設けられた第1の突部が第3の支点を回動中心とする第2の突部に接触して第3の支点と第2の支点との距離を縮める方向に変化することにより、エプロンを跳ね上げるのに要する力は、エプロン角度が増加する所定角度範囲内において徐々に減少し、ガススプリングは、エプロンが下降した地点において収縮するように構成されるエプロンを跳ね上げる方向に力を作用させるアシスト機構を開示する。 【選択図】図5【図1】【図2】 (10)JP 5976246 B1 2016.8.23【図3】【図4】【図5】【図6】 (11)JP 5976246 B1 2016.8.23【図7】 (12)JP 5976246 B1 2016.8.23̶̶̶̶̶̶̶̶̶̶̶̶̶̶̶̶̶̶̶̶̶̶̶̶̶̶̶̶̶̶̶̶̶̶̶̶̶̶̶̶̶̶̶̶̶̶̶̶̶̶̶̶フロントページの続き(72)発明者小澤英樹岡山県岡山市南区中畦684番地小橋工業株式会社内(72)発明 ̶̶̶̶̶̶̶̶̶̶̶̶̶̶̶̶̶̶̶̶̶̶̶̶̶̶̶̶̶̶̶̶̶̶̶̶フロントページの続き(72)発明者小澤英樹岡山県岡山市南区中畦684番地小橋工業株式会社内(72)発明者中谷公紀岡山県岡山市南区中畦684番地小橋工業株式会社内(72)発明者滝口貴智岡山県岡山市南区中畦684番地小橋工業株式会社内(72)発明者藤原伸明岡山県岡山市南区中畦684番地小橋工業株式会社内審査官中村圭伸(56)参考文献特開2010-63367(JP,A)実公平2-49403(JP,Y2)実開昭62-4647(JP,U)特開2013-215185(JP,A)特開2014-97042(JP,A)(58)調査した分野(Int.Cl.,DB名)A01B 33/12A01B 35/04F16F 9/00 - 9/05F16F 9/38
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