令和4年8月9日判決言渡 令和4年(行ケ)第10023号審決取消請求事件 口頭弁論終結日令和4年6月21日判決 原告 株式会社ダイハチ 同訴訟代理人弁護士 尾関孝彰 佐藤慧太 同訴訟代理人弁理士 岡本武也 石原啓策 小早川俊一郎 被告 株式会社ベガスベガス 同訴訟代理人弁護士 小林幸夫 藤沼光太 同訴訟代理人弁理士 佐々木實 押本泰彦 主文 1 原告の請求を棄却する。 2 訴訟費用は原告の負担とする。 事実及び理由 第1 請求特許庁が取消2016-300169号事件について令和4年2月3日にした審決を取り消す。 第2 事案の概要 1 特許庁における手続の経緯等 ⑴ 被告は、以下のとおりの登録第5334030号商標(以下「本件商標」という。)の商標権者である(甲2、3)。 商標別紙1記載のとおり 登録出願日平成21年8月18日 設定登録日平成22年7月2日 指定役務第41類「セミナーの企画・運営又は開催、運動施設の提供、娯楽施設の提供、映画・ 標別紙1記載のとおり 登録出願日平成21年8月18日設定登録日平成22年7月2日指定役務第41類「セミナーの企画・運営又は開催、運動施設の提供、娯楽施設の提供、映画・演芸・演劇・音楽又は教育研修のための施設の提供、遊戯用器具の貸与」 ⑵ア原告は、平成28年3月9日、本件商標の指定役務中「娯楽施設の提供」に係る商標登録について、商標法50条1項所定の商標登録取消審判(以下「本件審判」という。)を請求し、同月23日、その登録がされた(甲3)。 特許庁は、本件審判の請求を取消2016-300169号事件として審理し、平成29年5月9日、「本件審判の請求は、成り立たない。」との 審決(以下「第1次審決」という。甲180)をした。 イ(ア) 原告は、第1次審決の取消しを求める審決取消訴訟(知的財産高等裁判所平成29年(行ケ)第10126号。以下「第1次審決取消訴訟」という。)を提起し、同裁判所は、同年12月25日、第1次審決を取り消す旨の判決(以下「第1次判決」という。甲99)をした。 その後、被告は、第1次判決を不服として上告受理の申立て(最高裁判所平成30年(行ヒ)第90号)をしたが、平成30年9月25日に上告不受理決定がされ、第1次判決は確定した(甲100)。 (イ) 第1次判決の理由の要旨は、①第1次審決は、被告の2015年(平成27年)7月22日の発寒店の折込チラシ(以下「本件折込チラシ1」 という。甲60)記載の「ベガス発寒店ファンのお客様へ」の部分に使 用された「ベガス」の文字部分が出所識別機能を果たし得るものと認定した上、本件折込チラシ1に本件商標と社会通念上同一と認められる商標が付されていると認定したが、上記文字部分は、店内改装のため一 用された「ベガス」の文字部分が出所識別機能を果たし得るものと認定した上、本件折込チラシ1に本件商標と社会通念上同一と認められる商標が付されていると認定したが、上記文字部分は、店内改装のため一時休業する店舗の名称を一部省略した略称を表示したものにすぎず、本件折込チラシ1に係る娯楽施設の提供という役務の出所自体を示すもので はないと理解するのが自然であるから、本件折込チラシ1に上記文字部分を付する行為は、本件商標について商標法2条3項にいう「使用」をするものであると認めることはできない、②被告の同年1月5日の苫小牧店の折込チラシ(以下「本件折込チラシ2」という。)に本件商標と社会通念上同一と認められる商標が付されていると認定した第1次審決の 判断には誤りがある、③したがって、その余の点を判断するまでもなく、被告が本件審判の請求の登録前3年以内の期間(以下「要証期間」という。)内に本件審判の請求に係る指定役務について本件商標と社会通念上同一と認められる商標を使用していることを証明したものと認められるとした第1次審決の判断に誤りがあるというものである。 ⑶ア(ア) 特許庁は、第1次判決の確定を受けて、取消2016-300169号事件の審理を再開し、令和2年6月26日、「本件商標の指定役務中、第41類「娯楽施設の提供」についての商標登録を取り消す。」との審決(以下「第2次審決」という。甲184)をした。 (イ) 第2次審決の理由の要旨は、①本件折込チラシ1に「ベガス」の文 字部分を付する行為は、本件商標について商標法2条3項にいう「使用」をするものであると認めることはできない、②本件折込チラシ2には、本件商標と社会通念上同一と認められる商標が付されていないから、本件商標について同項にいう「使用」をするも 標法2条3項にいう「使用」をするものであると認めることはできない、②本件折込チラシ2には、本件商標と社会通念上同一と認められる商標が付されていないから、本件商標について同項にいう「使用」をするものであると認めることはできない、③別紙2記載の被告の2014年(平成26年)6月6日の北 仙台店の折込チラシ(以下「本件折込チラシ3」という。甲101の1、 2)の裏面には、「ベガス北仙台店/パチンコ・スロット/11機種導入」と記載されている部分が認められ、この部分には「ベガス」の文字部分が使用されているが、本件折込チラシ3に上記文字部分を付する行為は、本件商標について同項にいう「使用」をするものであると認めることはできない、④別紙3記載の被告の同年7月27日の北仙台店の折込チラ シ(以下「本件折込チラシ4」という。甲104)には、「ベガス北仙台店今月の新台ラインナップ」と記載されている部分が認められ、この部分には「ベガス」の文字部分が使用されているが、本件折込チラシ4に上記文字部分を付する行為は、本件商標について、同項にいう「使用」をするものであると認めることはできない、⑤したがって、被告は、要 証期間内に、日本国内において商標権者、専用使用権者又は通常使用権者のいずれかが本件審判の請求に係る指定役務について本件商標(社会通念上同一のものを含む。)の使用をしていることを証明したものと認められず、また、被告は、上記指定役務について使用をしていないことについて正当な理由があることも明らかにしていないから、同法50条の 規定により、上記指定役務についての本件商標の商標登録を取り消すべきものであるというものである。 イ(ア) 被告は、令和2年7月31日、本件商標の使用の事実に係る判断(本件折込チラシ1及び2 規定により、上記指定役務についての本件商標の商標登録を取り消すべきものであるというものである。 イ(ア) 被告は、令和2年7月31日、本件商標の使用の事実に係る判断(本件折込チラシ1及び2に係る判断を除く。)の誤りを取消事由として、第2次審決の取消しを求める審決取消訴訟(知的財産高等裁判所令和2年 (行ケ)第10091号。以下「第2次審決取消訴訟」という。)を提起し、同裁判所は、令和3年2月3日、第2次審決を取り消す旨の判決(以下「第2次判決」という。甲170)をした。 その後、原告は、第2次判決を不服として上告受理の申立て(最高裁判所令和3年(行ヒ)第135号)をしたが、同年8月20日に上告不 受理決定がされ、第2次判決は確定した。 (イ) 第2次判決の理由の要旨は、①被告の2014年(平成26年)6月6日の北仙台店の本件折込チラシ3は、「パチンコ・スロット」の遊技機の提供の役務に係るチラシであって、本件折込チラシ3に記載された「ベガス北仙台店」の標章の構成中の「ベガス」の文字部分は、同標章の要部である、上記「ベガス」の文字部分と本件商標とを対比すると、 両者は、字体の違いはあるが、構成する文字が同一であり、「ベガス」という同一の称呼が生じ、「ラスベガス」を想起させる点において観念が共通することからすると、「ベガス北仙台店」の標章は、本件商標と社会通念上同一の商標である、そうすると、原告が同日山新折込センターを介して本件折込チラシ3を「河北新報」に折り込んで2万9000枚配布 した行為は、「パチンコ・スロット」の遊技機の提供の役務に関する広告としてのチラシに本件商標と社会通念上同一の商標を付して頒布した行為(商標法2条3項8号)であると認められるから、本件商標の「使用」に該当する。②被告 コ・スロット」の遊技機の提供の役務に関する広告としてのチラシに本件商標と社会通念上同一の商標を付して頒布した行為(商標法2条3項8号)であると認められるから、本件商標の「使用」に該当する。②被告の同年7月27日の北仙台店の本件折込チラシ4は、「パチンコ・スロット」の遊技機の提供の役務に係るチラシであっ て、本件折込チラシ4に記載された「ベガス北仙台店」の標章の構成中の「ベガス」の文字部分は、同標章の要部である、①と同様の理由により、「ベガス北仙台店」の標章は、本件商標と社会通念上同一の商標である、そうすると、原告が同日山新折込センターを介して本件折込チラシ4を「河北新報」に折り込んで3万4300枚配布した行為は、「パチン コ・スロット」の遊技機の提供の役務に関する広告としてのチラシに本件商標と社会通念上同一の商標を付して頒布した行為であると認められるから、本件商標の「使用」に該当する、③したがって、その余の点を判断するまでもなく、被告は、商標権者である被告が要証期間内に本件審判の請求に係る指定役務について本件商標と社会通念上同一と認 められる商標を使用していることを証明したものと認められるから、こ れを否定した第2次審決の判断に誤りがあるというものである。 ⑷ 特許庁は、第2次判決の確定を受けて、取消2016-300169号事件の審理を再開し、令和4年2月3日、「本件審判の請求は、成り立たない。」との審決(以下「本件審決」という。)をし、その謄本は、同月14日、原告に送達された。 ⑸ 原告は、令和4年3月10日、本件審決の取消しを求める本件訴訟を提起した。 2 本件審決の理由の要旨本件審決の理由は、別紙審決書(写し)記載のとおりである。その要旨は、①被告が平成26年6月6日に山新折込センタ 月10日、本件審決の取消しを求める本件訴訟を提起した。 2 本件審決の理由の要旨本件審決の理由は、別紙審決書(写し)記載のとおりである。その要旨は、①被告が平成26年6月6日に山新折込センターを介して「ベガス北仙台店」 の標章が記載された本件折込チラシ3を「河北新報」に折り込んで2万9000枚配布した行為及び同年7月27日に山新折込センターを介して「ベガス北仙台店」の標章が記載された本件折込チラシ4を「河北新報」に折り込んで3万4300枚配布した行為は、「パチンコ・スロット」の遊技機の提供の役務に関する広告としてのチラシに本件商標と社会通念上同一の商標を付して頒布し た行為(商標法2条3項8号)であると認められるから、本件商標の「使用」に該当するものと認められる、②そして、本件折込チラシ3の裏面の「ベガス北仙台店」の文字は「ベガスベガス北仙台店」の略称であることや、「ベガス北仙台店」の文字に含まれる「ベガス」の文字が、「ベガスベガス」の略称として理解されることは、「ベガス北仙台店」の文字を本件折込チラシ3の他の記載部 分から分離して観察することができることを否定すべき理由になるものとは認められず、本件折込チラシ4の「ベガス北仙台店」の文字についても、これと同様であり、また、一つの広告に特定のブランド名の商標とそのブランド名の略称の商標が記載されることは、取引上普通に行われており、そのいずれもが同一の事業者の出所識別標識として認識され得ることは、特段不自然ではない から、本件折込チラシ3に「ベガスベガス北仙台店」の標章の記載があり、こ れが出所識別標識としての機能を果たし得ることは、「ベガスベガス北仙台店」又は「ベガスベガス」の略称としての「ベガス北仙台店」の標章又はこれに含まれる「ベガス」の文字 標章の記載があり、こ れが出所識別標識としての機能を果たし得ることは、「ベガスベガス北仙台店」又は「ベガスベガス」の略称としての「ベガス北仙台店」の標章又はこれに含まれる「ベガス」の文字部分が出所識別標識としての機能を果たし得ることを打ち消し、又は否定すべき理由になるものとは認められない、③したがって、被告は、要証期間である同年6月6日及び7月27日に、日本国内において、 商標権者である被告が、本件審判の請求に係る指定役務「娯楽施設の提供」の範ちゅうに含まれる「パチンコ・スロット」の遊技機の提供の役務について、本件商標と社会通念上同一と認められる商標を使用していたことを証明したというべきであるから、本件商標の請求に係る指定役務についての登録は、商標法50条の規定により、取り消すことはできないというものである。 第3 当事者の主張 1 取消事由1(本件商標の使用の事実の判断の誤り)について⑴ 原告の主張ア本件折込チラシ3及び4は、第1次審決に係る審判手続及び第1次審決取消訴訟において証拠として提出されていた。 第1次判決は、本件折込チラシ1及び2のほかには、被告が本件商標を使用したことを裏付ける証拠は提出されていないと認定した上で、被告が要証期間内に本件審判の請求に係る指定役務について本件商標と社会通念上同一と認められる商標を使用していることを証明したものと認められるとした第1次審決の判断に誤りがあるとして、第1次審決を取り消す旨の 判断をし、第1次判決は、確定した。 第1次判決の上記認定には、本件折込チラシ3及び4が本件商標の使用の事実を肯定するに足りる証拠とはなり得ないという認定を含むというべきである。 そうすると、本件折込チラシ3及び4に「ベガス北仙台店」の標章が記載 件折込チラシ3及び4が本件商標の使用の事実を肯定するに足りる証拠とはなり得ないという認定を含むというべきである。 そうすると、本件折込チラシ3及び4に「ベガス北仙台店」の標章が記載 されていることをもって、本件商標の「使用」に該当するとした本件審決 は、第1次審決の取消判決である第1次判決の拘束力に違反するものである。 イ第1次判決は、①本件折込チラシ1には、「ベガス発寒店ファンのお客様へ」と記載されている部分が認められ、この部分には「ベガス」の文字部分(以下「本件文字部分」という場合がある。)が使用されており、本件文字部分は本件商標と同一のものと認められる、②本件折込チラシ1に接し た需要者は、同チラシにおいて、パチンコ、スロットマシンなどの娯楽施設の提供という役務に係る出所を示す文字は、同チラシにおいて多用されている「ベガスベガス」又は「VEGASVEGAS」であって、一箇所だけで用いられた本件文字部分は、店内改装のため一時休業する店舗の名称を一部省略した略称を表示したものにすぎず、本件折込チラシ1に係る 上記役務の出所自体を示すものではない、③被告が本件文字部分を「ベガスベガス」又は「VEGASVEGAS」の略称表示であると認めるとおり、本件折込チラシ1に係る役務の出所を示す表示は、多用された「ベガスベガス」又は「VEGASVEGAS」の標章であると認めるのが相当であるから、これらと異なる標章である本件文字部分が出所識別機能を果 たし得るとは認められない、④「ベガス」という略称表示の使用をもって、本件商標についての使用であると認めることは、実質的には商標としては異なる略称表示に係る信用までを保護することを意味するから、商標法50条1項の不使用取消制度の趣旨に照らしても、 示の使用をもって、本件商標についての使用であると認めることは、実質的には商標としては異なる略称表示に係る信用までを保護することを意味するから、商標法50条1項の不使用取消制度の趣旨に照らしても、相当ではないと判断した。 第1次判決は、その判決主文を導くのに、使用該当性が問題となる登録商 標と同一の文字が記載されている広告において、当該登録商標は商標権者の正式名称の略称であり、同広告においては正式名称が多用されており、略称である当該登録商標は1か所だけ記載されているにすぎない場合、使用に当らないとの法律判断を示したものであり、この法律判断には、第1次判決の拘束力が及ぶ。 そこで、本件折込チラシ1と本件折込チラシ3及び4を対比すると、本件 折込チラシ1における「ベガス」なる文字は、店内改装のため一時休業する店舗の名称「ベガスベガス発寒店」を一部省略した略称を表示したものにすぎないのに対し、本件折込チラシ3における「ベガス」なる文字は、開店時間が通常と異なる店舗の名称「ベガスベガス北仙台店」を一部省略した略称を表示したものにすぎず、また、本件折込チラシ4における「ベガス」なる 文字は、「Cさん」が来店する店舗の名称「ベガスベガス北仙台店」を一部省略した略称を表示したものにすぎないことからすると、本件折込チラシ1、3及び4における各「ベガス」なる文字は、いずれも、店舗の名称を一部省略した略称を表示したものにすぎないという点で共通するから、第1次判決の上記拘束力により、本件折込チラシ3及び4記載の「ベガス北仙台店」の 出所識別機能は否定すべきである。 そうすると、本件折込チラシ3及び4に「ベガス北仙台店」の標章が記載されていることをもって、本件商標の「使用」に該当するとした本件審決は、第1次判決の拘束 出所識別機能は否定すべきである。 そうすると、本件折込チラシ3及び4に「ベガス北仙台店」の標章が記載されていることをもって、本件商標の「使用」に該当するとした本件審決は、第1次判決の拘束力に違反するものである。 ウ以上のとおり、本件折込チラシ3及び4における本件商標の使用の事実を 認めた本件審決の判断は、第1次判決の拘束力に違反するから、誤りである。 ⑵ 被告の主張ア被告は、平成26年6月6日に山新折込センターを介して「ベガス北仙台店」の標章が記載された本件折込チラシ3を「河北新報」に折り込んで2万9000枚配布し、同年7月27日に山新折込センターを介して「ベ ガス北仙台店」の標章が記載された本件折込チラシ4を「河北新報」に折り込んで3万4300枚配布した。 被告の上記各配布行為は、「パチンコ・スロット」の遊技機の提供の役務に関する広告としてのチラシに本件商標と社会通念上同一の商標を付して頒布した行為(商標法2条3項8号)であると認められるから、本件商 標の「使用」に該当する。 したがって、本件審決における本件商標の使用の事実に係る認定判断に誤りはない。 イ第1次判決は、本件折込チラシ1及び2の具体的な記載に基づいて、本件折込チラシ1及び2において、本件商標を使用しているとはいえないと判断したものであるから、第1次判決の拘束力は、上記判断にのみに及ぶ。 他方で、第1次審決取消訴訟において、本件折込チラシ3及び4が証拠として提出されていたとしても、本件折込チラシ3及び4における本件商標の使用の事実は争点とされていなかったから、第1次判決の拘束力違反をいう原告の主張は失当である。 2 取消事由2(手続違背)について ⑴ 原告の主張本件審決に係る審判手続では 件商標の使用の事実は争点とされていなかったから、第1次判決の拘束力違反をいう原告の主張は失当である。 2 取消事由2(手続違背)について ⑴ 原告の主張本件審決に係る審判手続では、令和4年1月12日、原告に対し、副本の送付通知、書面審理通知及び審理終結通知を同時に行い、原告が主張立証する機会を一切与えることなく、同年2月3日、本件審決をしたから、本件審決には審理不尽の手続違背がある。 また、本件審決に係る審判手続において、審理再開の申立てをしても、その再開が認められる可能性はほぼ皆無であったから、審理再開の申立ての手段があることと審理不尽の有無とは直接的な関係は存在しない。 ⑵ 被告の主張原告は、令和元年6月5日付け審判事件回答書(乙2)において、前記1(1) と同内容の主張をしている。 また、被告は、本件審決に係る審判手続において、令和3年10月25日付け指令書(乙3)に応じて、第2次審決取消訴訟で提出した証拠(甲123ないし170)を提出したにすぎず、新たな主張立証をしていない。 さらに、審判長は、審理終結後であっても、当事者の申立てにより又は職権 で、審理の再開ができるが(商標法56条1項、特許法156条3項)、本件審 決に係る審判手続において、原告はかかる申立てをしなかった。 以上によれば、本件審決に審理不尽の手続違背があるとの原告の主張は、失当である。 第4 当裁判所の判断 1 取消事由1(本件商標の使用の事実の判断の誤り)について ⑴ 本件商標の使用の事実について証拠(甲101ないし106(枝番のあるものは枝番を含む。))及び弁論の全趣旨によれば、①被告は、平成26年6月6日、山新折込センターを介して、別紙2記載の本件折込チラシ3を「河北新報」に折り込 証拠(甲101ないし106(枝番のあるものは枝番を含む。))及び弁論の全趣旨によれば、①被告は、平成26年6月6日、山新折込センターを介して、別紙2記載の本件折込チラシ3を「河北新報」に折り込んで2万9000枚配布し、同年7月27日、山新折込センターを介して、別紙3記載の 本件折込チラシ4を「河北新報」に折り込んで3万4300枚配布したこと、②本件折込チラシ3の裏面には、上部において、「ベガスベガス北仙台店」及び「新台入替しました」との2段書きの金色の大きな文字の見出しが付され、その左下側において、外側の線が太く、内側の線が細い二重の円の中に、3段書きで上から順に「ベガス北仙台店」の黒色の文字、「パチンコ・スロット」 の赤色の文字及び「11機種導入」の赤色の文字が記載され、さらに、中央部から下部において、パチンコ台及びスロットマシンの図形が、3段にわたり、1段目は3台、2段目及び3段目は各4台掲載されていること、③本件折込チラシ4には、上部右側において、「ベガス北仙台店今月の新台ラインナップ」との横書きの赤色の見出しが付され、その下に、パチンコ台・スロ ットマシンの図形が、4段にわたり、各段5台ずつ掲載されていることが認められる。 上記認定事実によれば、第2次判決と同様の理由(前記第2の⑶イ(イ))により、被告が平成26年6月6日に山新折込センターを介して「ベガス北仙台店」の標章が記載された本件折込チラシ3を「河北新報」に折り込んで 2万9000枚配布した行為及び同年7月27日に山新折込センターを介し て「ベガス北仙台店」の標章が記載された本件折込チラシ4を「河北新報」に折り込んで3万4300枚配布した行為は、「パチンコ・スロット」の遊技機の提供の役務に関する広告としてのチラシに本件商 て「ベガス北仙台店」の標章が記載された本件折込チラシ4を「河北新報」に折り込んで3万4300枚配布した行為は、「パチンコ・スロット」の遊技機の提供の役務に関する広告としてのチラシに本件商標と社会通念上同一の商標を付して頒布した行為(商標法2条3項8号)であると認められる。これと同旨の本件審決の判断に誤りはない。 ⑵ 原告の主張について原告は、①本件折込チラシ3及び4は、第1次審決に係る審判手続及び第1次審決取消訴訟において証拠として提出されており、第1次判決は、本件折込チラシ1及び2のほかには、被告が本件商標を使用したことを裏付ける証拠は提出されていないと認定しているところ、この認定には、本件折込チラシ3及 び4が本件商標の使用の事実を肯定するに足りる証拠とはなり得ないという認定を含むというべきであるから、本件折込チラシ3及び4に「ベガス北仙台店」の標章が記載されていることをもって、本件商標の「使用」に該当するとした本件審決は、第1次審決の取消判決である第1次判決の拘束力に違反する、②第1次判決は、その判決主文を導くのに、使用該当性が問題となる登録商標 と同一の文字が記載されている広告において、当該登録商標は商標権者の正式名称の略称であり、同広告においては正式名称が多用されており、略称である当該登録商標は1か所だけ記載されているにすぎない場合、使用に当らないとの法律判断を示したものであり、この法律判断には、第1次判決の拘束力が及ぶところ、第1次判決の上記拘束力により、本件折込チラシ3及び4記載の「ベ ガス北仙台店」の出所識別機能は否定すべきであるから、本件折込チラシ3及び4に「ベガス北仙台店」の標章が記載されていることをもって、本件商標の「使用」に該当するとはいえない旨を主張する。 しかしなが ス北仙台店」の出所識別機能は否定すべきであるから、本件折込チラシ3及び4に「ベガス北仙台店」の標章が記載されていることをもって、本件商標の「使用」に該当するとはいえない旨を主張する。 しかしながら、原告の上記主張は、いずれも理由がない。 ア ①について 商標登録不使用取消審判事件についての審決の取消訴訟において審決取消 しの判決が確定したときは、再度の審理及び審決には、行政事件訴訟法33条1項の規定により、同取消判決の拘束力が及び、この拘束力は、判決主文が導き出されるのに必要な主要事実についての事実認定及び法律判断にわたるものと解される。 しかるところ、第1次判決(甲99)は、「第3 原告主張の取消事由」と して、取消事由1ないし5を摘示しているところ、取消事由1は、「本件折込チラシ1が「娯楽施設の提供」の範ちゅうに含まれる「パチンコ・スロットマシンの提供」に係るチラシであると認定した審決の判断には誤りがある。」、取消事由2は、「本件折込チラシ2が本件商標と社会通念上同一と認められる商標の付されているチラシであると認定した審決の判断には誤りがある。」、 取消事由3は、「本件折込チラシ1及び2を頒布した行為が商標法2条1項8号にいう「役務に関する広告に標章を付して頒布する行為」に該当すると認定した審決の判断には誤りがある。」、取消事由4は、「本件折込チラシ1に本件商標と社会通念上同一と認められる商標が付されていると認定した審決の判断には誤りがある。」、取消事由5は、本件折込チラシ1に記載されている 「ベガス発寒店ファンのお客様へ」という部分のうち、本件文字部分(ベガス)が「自他役務の識別標識としての機能を果たし得ると認定した審決の判断には誤りがある。」というものであって、いずれも本件折込チラシ ベガス発寒店ファンのお客様へ」という部分のうち、本件文字部分(ベガス)が「自他役務の識別標識としての機能を果たし得ると認定した審決の判断には誤りがある。」というものであって、いずれも本件折込チラシ1及び2に係る本件商標の事実の判断の誤りを取消事由とするものである。 第1次判決には、本件折込チラシ3及び4に係る取消事由は摘示されてお らず、また、「第4 被告の反論」においては、「1 本件折込チラシ1についての取消事由に対する反論」及び「2 本件折込チラシ2についての取消事由に対する反論」が摘示されているが、本件折込チラシ3及び4には言及がない。そして、第1次判決には、「第5 当裁判所の判断」の「1 認定事実」中に「⑶ 本件折込チラシ1及び本件折込チラシ2のほかには、被告が 本件商標を使用したことを裏付ける証拠は提出されていない。」との摘示があ るが、本件折込チラシ3及び4に関する言及はない上、「4 まとめ」として「以上のとおり、取消事由2、4及び5は理由があるから、その余の点を判断するまでもなく、被告が要証期間内に本件審判の請求に係る指定役務について本件商標と社会通念上同一と認められる商標を使用していることを証明したものと認められるとした第1次審決の判断に誤りがある。」と の記載がある。これらの第1次判決の記載に照らせば、第1次判決は、第1次審決を取り消した判決主文を導き出されるのに必要な主要事実として、本件折込チラシ1及び2に係る本件商標の使用の事実に関する第1次審決の判断の誤りを取消事由として審理及び判断の対象とし、その理由中で、かかる取消事由を認める事実認定及び法律判断をしたものであり、本件折込チラ シ3及び4については判決主文を導き出されるのに必要な主要事実として判断をしていないことは明らかで し、その理由中で、かかる取消事由を認める事実認定及び法律判断をしたものであり、本件折込チラ シ3及び4については判決主文を導き出されるのに必要な主要事実として判断をしていないことは明らかである。 そうすると、本件折込チラシ3及び4が第1次審決に係る審判手続及び第1次審決取消訴訟において証拠として提出されており、第1次判決の「第5当裁判所の判断」の「1 認定事実」中に「⑶ 本件折込チラシ1及び本件 折込チラシ2のほかには、被告が本件商標を使用したことを裏付ける証拠は提出されていない。」との摘示があるからといって、上記摘示は、本件折込チラシ3及び4が本件商標の使用の事実を肯定するに足りる証拠とはなり得ないという認定を含むものと認めることはできない。 したがって、原告主張の①は、その前提を欠くものであり、理由がない。 イ ②について前記アのとおり、第1次判決は、本件折込チラシ1及び2に係る本件商標の使用の事実に関する第1次審決の判断の誤りを取消事由として審理及び判断の対象とし、その理由中で、かかる取消事由を認める事実認定及び法律判断をしたものであり、第1次審決の取消判決である第1次判決の拘束力は、 かかる理由中の判断に及ぶが、本件折込チラシ3及び4については判決主文 を導き出されるのに必要な主要事実として判断がされていないから、第1次判決の拘束力が及ぶことはない。 したがって、原告主張の②は、理由がない。 ⑶ 小括以上のとおり、本件審決における本件商標の使用の事実の判断に誤りはな いから、原告主張の取消事由1は理由がない。 2 取消事由2(手続違背)について原告は、本件審決に係る審判手続では、令和4年1月12日、原告に対し、副本の送付通知、書面審理通知及び審理終結通知を同時 ら、原告主張の取消事由1は理由がない。 2 取消事由2(手続違背)について原告は、本件審決に係る審判手続では、令和4年1月12日、原告に対し、副本の送付通知、書面審理通知及び審理終結通知を同時に行い、原告が主張立証する機会を一切与えることなく、同年2月3日、本件審決をしたから、本件審決に は審理不尽の手続違背がある旨主張する。 しかしながら、審判合議体には、特に審判請求人に弁駁の機会を与えることなく、事件の審理が熟したと判断する裁量権が与えられており、審理終結通知をいつの時点でするかについては、審判合議体の審判指揮の裁量に委ねられていると解されること、審理終結通知が送付された後であっても、審判長は、必 要があれば当事者の申立てにより又は職権で審理を再開することもできるところ(商標法56条1項、特許法156条3項)、原告は、本件審決に係る審判手続の審理終結通知を受けた後であっても、追加の主張立証が必要であると考えれば、審理再開の申立てをすることができたものであるが、原告はかかる申立てをしておらず、審判合議体においては原告の追加の主張立証の必要性を認識 できなかったことに照らすと、原告の上記主張は採用することができない。 したがって、原告主張の取消事由2は理由がない。 第5 結論以上のとおり、原告主張の取消事由はいずれも理由がない。その他、原告は、縷々主張するが、いずれも本件審決の結論に影響を及ぼすものとは認められず、 理由がない。 したがって、本件審決にこれを取り消すべき理由は認められないから、原告の請求は棄却されるべきものである。 知的財産高等裁判所第1部 裁判長裁判官大鷹一郎 裁判官小川卓逸 の請求は棄却されるべきものである。 知的財産高等裁判所第1部 裁判長裁判官大鷹一郎 裁判官小川卓逸 裁判官遠山敦士 (別紙1) 本件商標 (別紙2) 本件折込チラシ3(裏面) (表面) (別紙3) 本件折込チラシ4
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