平成14(行コ)230 食品衛生法違反処分取消請求控訴事件(原審・千葉地方裁判所平成13年(行ウ)第35号)

裁判年月日・裁判所
平成15年4月23日 東京高等裁判所 警察関係
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判決文本文5,570 文字)

主文 本件控訴を棄却する。 控訴費用は控訴人の負担とする。 事実及び理由 第一控訴の趣旨一原判決を取り消す。 二被控訴人が控訴人に対し平成13年5月24日付けで行った食品衛生法違反通知を取り消す。 第二事案の概要一本件事案の概要は、当審における当事者双方の主張として二及び三のとおり加えるほかは、原判決「事実及び理由」欄中の「第2 事案の概要」に記載のとおりであるから、これを引用する。 なお、本判決においても、原則として原判決と同じ略語を用いる。 二当審における控訴人の主張 1 食品衛生法違反事由に関する判断権限について(一) 国の行政機関の権限は、明確に区分されることが前提とされており、その上で、相互調整ないし相互連絡により行政の一体性が確保されるべきものとされている。 厚生労働省設置法(第4条第35号、第39号、第16条)によると、販売の用に供する食品の輸入に際し検査及び指導を行うことは、検疫所の権限とされており、それは厚生労働大臣の権限に基づいている。検疫所長は、このような権限を有するからこそ、輸入者に対し、輸入しようとする当該食品について、食品衛生法違反の有無を検査し、あるいは検査を受けるように命令することができるのである(食品衛生法第15条第3項)。 他方、財務省設置法(第4条第23号、第24号、第26号、第27号、第16条)によると、税関長には、販売の用に供する食品の輸入に際し、その検査及び指導を行う権限が与えられていない(検査手数料についても、食品衛生法第15条第6項における検査手数料のような規定が存在しない。)。 なお、関税法第67条には、税関長が、輸入貨物に対し、「必要な検査」をし、「許可」を与える権限を有することが定められているが、財務省設置法に規定されていない所掌事務が関税法によ が存在しない。)。 なお、関税法第67条には、税関長が、輸入貨物に対し、「必要な検査」をし、「許可」を与える権限を有することが定められているが、財務省設置法に規定されていない所掌事務が関税法により定められるということはあり得ないから、関税法第67条第1項における「検査」とは、「当該貨物の品名並びに数量及び価格」についてのものが主であり、同項における「その他必要な事項」もこれに類するものであって、厚生労働省が所掌する事務事項を含まないと解すべきである。また、関税法第70条第2項における「証明」とは、食品衛生法に関しては、同法違反がないという厚生労働省の判断を示した証明を指し、同条項における「確認」も、厚生労働省がそのような証明をしたということの確認のみを意味するものであって、このことは関税関係の基本通達(甲19)からも明らかである。 (二) 関税法に定められたすべての事務が財務省に属するわけではない。それは各条文の定め方によるものであり、食品衛生法違反に係る事務については明らかに厚生労働省の所掌である(厚生労働省設置法第4条第35号、第39号)。 輸入手続は、通常、税関長の判断によりなされるが、関税法第70条第2項のように「他の法令」に基づく手続を要する場合には、「他の法令」に規定される事務内容が財務省の所掌に属するものでないならば、その解釈運用は、財務省(税関長)ではなく、当該省庁が行うべきである。 そのため、検疫所長が食品衛生法違反通知を発した食品について、税関長(財務省)が、検疫所長(厚生労働省)の判断を無視し、食品衛生法違反でないことを独自に認定して輸入許可を発することは、厚生労働省設置法第4条及び財務省設置法第4条に反し、許されないというべきである。 (三) 実質的に考えても、税関長の判断が検疫所長の判断に反することはあり得 独自に認定して輸入許可を発することは、厚生労働省設置法第4条及び財務省設置法第4条に反し、許されないというべきである。 (三) 実質的に考えても、税関長の判断が検疫所長の判断に反することはあり得ない。 食品衛生法違反に基づく規制等は、税関長の所管事項でないため、税関には食品衛生法違反について判断を加えるための検査器材も人材も存しない。したがって、税関長が食品衛生法違反について独自の判断を行うことは不可能である。 また、一般に、食品衛生法違反の最終的な判断権限は厚生労働大臣に帰属するはずであるのに、輸入食品についてだけ税関長にその権限があるとすることは、不自然、不合理である。 (四) 以上のとおり、検疫所長が食品衛生法に違反する旨の通知を発した食品について、税関長が、輸入者の提出した資料等も考慮して、食品衛生法第6条に規定する食品等に該当しないと判断し、輸入を許可するということは、法的にも実際上もあり得ないというべきである。 したがって、食品衛生法違反の通知が発せられた場合、輸入申告者は、当該貨物を適法に輸入する道を閉ざされることになる。 この点からも、本件通知については処分性が認められるべきである。 2 不服申立手段の存否について(一) 原判決は、本件通知を行政処分でないとした上で、税関長が輸入者の輸入申告を受理しないということがあれば、その不受理を拒否処分とみて取消訴訟を提起し、その中で本件通知に係る判断を争うことができるとする。 しかしながら、不受理を拒否処分とみて取消訴訟を提起することについては、明文の根拠規定がなく、むしろ、平成5年に成立した行政手続法では、この点について意識的に規定をおかず、かつ、同法は、一般的に、不受理を申請に対する行政庁の審査応答義務の不履行として、不作為の違法確認訴訟をもって対処すべきであるとする 年に成立した行政手続法では、この点について意識的に規定をおかず、かつ、同法は、一般的に、不受理を申請に対する行政庁の審査応答義務の不履行として、不作為の違法確認訴訟をもって対処すべきであるとする立場をとるものと解されている。 したがって、不受理を拒否処分とみて取消訴訟を提起することはできない。 なお、仮に上記不受理を拒否処分とみて取消訴訟を提起することが許されるとしても、それが認められるのは、申請者に申請権がある場合に限られる。そして、不作為の違法確認訴訟も、提起できるのは処分庁に応答義務がある場合に限られるから、問題は税関長を被告として不作為の違法確認の訴えを提起することができるか否かに集約される。 (二) 原判決は、税関長が、本件通知を行政処分でないとして輸入者の輸入申告を放置するのであれば、輸入者は、不作為の違法確認の訴えを提起することができ、その中で本件通知についての判断を争うことが可能であるとも判示する。 しかしながら、輸入許可については、法の定める要件を充足している限り義務的になされるべき覊束的行政行為であると解されるが、輸入要件が欠缺している場合には、関税実務上、税関長に、輸入申告に対する応答義務がなく、輸入不許可処分をする義務がないと解されている。このような片面的な覊束的行政行為に対しては、不作為の違法確認訴訟を提起できないものと解される。 (三) 以上のように、本件通知の処分性を否定すると、当該食品を輸入しようとする者は、結局行政訴訟を提起する道をすべて塞がれることになるから、本件通知の処分性は肯定されるべきである。 三当審における被控訴人の主張食品衛生法違反事由に関する判断権限について 1 税関長には、関税法第70条により、輸入する食品が食品衛生法に適合するか否かを確認するための検査、その他様々な行為を行う権限 審における被控訴人の主張食品衛生法違反事由に関する判断権限について 1 税関長には、関税法第70条により、輸入する食品が食品衛生法に適合するか否かを確認するための検査、その他様々な行為を行う権限が付与されている。 2 財務省設置法においても、関税法における税関長の権限と矛盾なく定められている。 すなわち、財務省設置法第4条第25号は、「関税に関する法令の規定による輸出入貨物(略)の取締りに関すること」をも財務省の所掌事務の一つとしており、同法第16条は、第4条第25号を含めた同条第23ないし第28号の事務のすべてを税関の所掌事務としている。関税法が、財務省設置法第4条第25号の「関税に関する法令の規定」に該当することはいうまでもなく、また、関税法第70条は、輸出入の許可に当たり他の法令に基づく検査の完了等の要件を具備することが要求される場合、税関がそれを確認することを求めているが、これはまさに、財務省設置法第4条第25号における「輸出入貨物(略)の取締り」に当たることである。 なお、検査手数料に関する規定が食品衛生法にあり、関税法にないとしても、そのことが税関長の法律上の調査権限を否定するものではない。 したがって、財務省設置法上、食品衛生法違反に関する取締権限が税関にないとする控訴人の主張は、明らかに理由がない。 第三当裁判所の判断一当裁判所も、控訴人の本件請求は不適法であり却下すべきものと判断する。その理由は、当審における控訴人の主張に対する判断として二のとおり加えるほかは、原判決「事実及び理由」欄中の「第3 当裁判所の判断」に記載のとおりであるから、これを引用する(ただし、原判決6頁14行目の各「税関」(2か所)をいずれも「税関長」に、同8行目の「以上によれば」を「以上のほか、乙6及び弁論の全趣旨によると、本件通知は、 載のとおりであるから、これを引用する(ただし、原判決6頁14行目の各「税関」(2か所)をいずれも「税関長」に、同8行目の「以上によれば」を「以上のほか、乙6及び弁論の全趣旨によると、本件通知は、法令に直接の根拠を有するものではなく、「輸入食品等監視指導業務基準」(平成8年1月29日付け衛検第26号生活衛生局長通知)に根拠を置くものであり、また、その内容も、検査結果の通知と、その結果が食品衛生法に違反する場合に輸入者の取るべき措置を事実上指導するものであることが認められることからするならば」に、それぞれ改める。)。 二当審における控訴人の主張について 1 食品衛生法違反事由に関する判断権限について控訴人は、検疫所長が食品衛生法違反通知を発した食品について、税関長が、それを食品衛生法第6条に規定する食品等に該当せず、食品衛生法に違反しないと判断して、輸入を許可する権限を有するものではない旨、したがって、控訴人は、被控訴人から本件通知がなされた段階で、本件食品を適法に輸入する道を閉ざされることになる旨を主張する。 しかしながら、関税法第70条において、税関長に対し、輸入申告に係る食品が食品衛生法に適合するか否かを確認するための最終的な権限が付与されていることは、法文上明らかであり、かつ、それが財務省設置法における規定と何ら矛盾するものでないことは、当審における被控訴人の主張のとおりである。 また、それは、厚生労働大臣(検疫所長)が、輸入に係る食品について食品衛生法に基づく取締権限を有することと相入れないものではなく、法により、輸入手続の各段階において、各行政主体の権限の行使が定められたものというべきである。 なお、控訴人は、食品衛生法に関する関税法第70条第2項の「証明」及び「確認」とは、食品衛生法違反がないとする厚生労働省の証明及び において、各行政主体の権限の行使が定められたものというべきである。 なお、控訴人は、食品衛生法に関する関税法第70条第2項の「証明」及び「確認」とは、食品衛生法違反がないとする厚生労働省の証明及びその証明の確認を意味するものであり、そのことは関税関係通達からも明らかであるとも主張するが、控訴人主張の通達(甲19)は、定型的な証明手段を記載したものと解され、控訴人の主張するような趣旨を記載したものとは認め難い。 そして、被控訴人から食品衛生法違反の通知がなされたことにより、直ちに本件食品の輸入許可が得られないという法的効果が発生するわけではないことは、前記引用に係る原判決において説示するとおりである。 以上のとおりであるから、控訴人の上記主張は失当である。 2 不服申立手段の存否について税関長が貨物を輸入しようとする者の輸入申告を受理せず、又は輸入申告を放置する場合、控訴人の主張するように、貨物の輸入者において取消訴訟ないしは不作為の違法確認訴訟を提起することができないものではなく、このことも、前記引用に係る原判決において判示するとおりである。 また、控訴人が本件通知に係る食品衛生法違反を争う場合には、引き続き厚生労働大臣から食品衛生法第22条に基づく処分がなされる可能性があるが、それに対し取消訴訟を起こすことも可能であり、その訴訟において食品衛生法違反の有無を争う余地があることも明らかである。 したがって、控訴人にとって、本件通知に対する不服申立ての手段がないとはいえず、その点に関する控訴人の上記主張も失当というべきである。 第四結論以上によれば、原判決は相当であり、本件控訴は理由がないから棄却することとし、控訴費用の負担について、行政事件訴訟法第7条、民事訴訟法第67条第1項、第61条を適用して、主文のとおり判決する。 東 以上によれば、原判決は相当であり、本件控訴は理由がないから棄却することとし、控訴費用の負担について、行政事件訴訟法第7条、民事訴訟法第67条第1項、第61条を適用して、主文のとおり判決する。 東京高等裁判所第5民事部裁判長裁判官濱野惺裁判官持本健司裁判官竹内努

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