主文 1 控訴人の被控訴人長野県知事に対する控訴を棄却する。 2 控訴人の被控訴人長野県佐久地方事務所長に対する控訴に基づいて,原判決の主文第二項を次のとおり変更する。 3 被控訴人長野県佐久地方事務所長が平成10年6月10日付で控訴人に対してした原判決別紙物件目録記載の土地の取得にかかる不動産取得税賦課決定のうち,課税標準額42万円,税額1万6800円を超える部分を取り消す。 4 控訴人の被控訴人長野県佐久地方事務所長に対するそのほかの請求を棄却する。 5 訴訟費用は,第1,2審を通じて,被控訴人長野県知事に生じた費用は全部控訴人の負担とし,そのほかの費用はこれを3分して,その1を控訴人の負担とし,残りを被控訴人長野県佐久地方事務所長の負担とする。 事実及び理由 第1 当事者の求めた裁判 1 控訴人(1) 原判決を取り消す。 (2) 被控訴人長野県佐久地方事務所長(被控訴人地方事務所長)が,平成10年6月10日付で控訴人に対してした原判決別紙物件目録記載の土地(本件土地)の取得にかかる不動産取得税賦課決定(課税標準額147万6000円,税額5万9000円)(本件賦課決定)を取り消す。 (3) 被控訴人長野県知事(被控訴人知事)は,控訴人に対し,本件土地の取得につき不動産取得税賦課決定をせよ。 2 被控訴人ら本件控訴をいずれも棄却する。 第2 事案の概要 1 本件は,不動産取得税の賦課決定の取消しを求める訴訟である。被控訴人地方事務所長は,控訴人に対し,本件土地の取得にかかる不動産取得税につき本件賦課決定をした。これに対し,控訴人は,被控訴人らは本件土地につき不動産取得税の課税標準となる価格を決定しないまま本件賦課決定をし,そうでないとしても,本件賦課決定の基礎となった固定資産課税台帳に登録された本件土地の価格(本件登 人は,被控訴人らは本件土地につき不動産取得税の課税標準となる価格を決定しないまま本件賦課決定をし,そうでないとしても,本件賦課決定の基礎となった固定資産課税台帳に登録された本件土地の価格(本件登録価格)は,不当に高額で適正な時価とはいえないのに,これを課税標準として本件賦課決定をしたとして,その取消しと,被控訴人知事に対し新たな賦課決定をするよう求めたものである。 原判決は,被控訴人知事に対する訴えは,義務づけ訴訟としての要件を具備していないとして却下し,被控訴人地方事務所長に対する請求を棄却したため,控訴人が不服を申し立てたものである。 2 以上のほかの事案の概要は,次のとおり付加するほか,原判決の該当欄記載のとおりであるから,これを引用する。 (控訴人の当審における主張)(1) 原判決は,被控訴人知事から権限の委任を受けた被控訴人地方事務所長が,御代田町長の行った平成10年度の登録価格を基礎として本件賦課決定の課税標準を定めている点において,本件賦課決定の中に地方税法73条の21第2項に基づく実質的な価格の決定が含まれているものと解することができると判断したが,明らかにフィクションであり,それによって手続の瑕疵を救済しようとするのは誤りである。 (2) 原判決は,本件賦課決定の課税標準の基礎となった価格は、御代田町長が自治大臣の定めた固定資産評価基準及び地方税法附創17条の2第1項の修正基準に基づいて決定した固定資産課税台帳に登録された平成10年度の登録価格と同一であるから、適正な時価と認められるとしているが,誤りである。 本件土地はもともと山林であったもので,別荘地としての開発から30年以上経過した現在でも,ほとんど建物が建築されておらず,下草や雑木が繁茂し放題の状態であり,開発前の山林の状態と変わっていない。電気,水道があ もともと山林であったもので,別荘地としての開発から30年以上経過した現在でも,ほとんど建物が建築されておらず,下草や雑木が繁茂し放題の状態であり,開発前の山林の状態と変わっていない。電気,水道があるとしても,別荘として利用されない限り無意味であり,道路があるからといって山林でなくなるものでもない。現状をありのままに見る限り,本件土地は山林ないし原野として評価するのが自然である。 (3) 被控訴人らは,地方税法は,知事や市町村長が固定資産評価基準以外の独自の方法によって適正な時価を算定することを認めていないと主張する。しかし,固定資産評価基準によって固定資産を評価したとしても,それは評価手続の適法にすぎず,結果としての評価額までも適法であることを保証するものではない。登録価格の適否については,固定資産評価基準その他の通達等による実際の登録価格決定にあたってされた評価方法とは別に,賦課期日の時価を算定するための他の方法も主張立証できるのであり,裁判所は,より適切合理的な最良の評価方法による価格評価を採用して賦課期日における時価を認定すべきものである。 (被控訴人らの当審における主張)(1) 被控訴人知事に対する請求について被控訴人知事は,地方税法3条の2及び長野県県税条例4条1項1号の規定により,県税に係る徴収金の賦課徴収に関する権限を地方事務所長に委任している。したがって,被控訴人知事に対して不動産取得税の賦課決定を求める控訴人の請求は,義務づけ訴訟としての要件を具備していないだけでなく,被告適格を欠く点でも不適法な訴えとして却下されるべきである。 (2) 本件賦課決定の適法性についてア最高裁判所昭和45年(行ツ)第82号・昭和50年12月18日第1小法廷判決(判例時報802号77頁以下)によれば,固定資産課税台帳に価格が登録さ ある。 (2) 本件賦課決定の適法性についてア最高裁判所昭和45年(行ツ)第82号・昭和50年12月18日第1小法廷判決(判例時報802号77頁以下)によれば,固定資産課税台帳に価格が登録されていない場合において,知事が地方税法73条の21第2項に基づく価格決定を行わず,のちに市町村の固定資産課税台帳に登録された価格を課税標準として不動産取得税の賦課決定を行っても,同一の基準で同一の評価となるべきものであるから,違法ではないとしている。本件でも,御代田町長は,本件土地について,前年度の価格を固定資産税の課税標準とすることが固定資産税の課税上著しく均衡を失すると認めて,地方税法附則17条の2の定めにより,自治大臣の定める基準(修正基準)によって修正した価格を固定資産税課税台帳登録価格としたのであるが,地方税法73条の21第2項によって知事が価格を決定する場合においても,同法附則11条の6の定めにより同じ修正基準が適用されることから,その価格は御代田町長の定めた登録価格と同一になるべきものである。 被控訴人地方事務所長は,平成10年4月3日に,長野地方法務局佐久支局での不動産登記申請書の閲覧調査によって控訴人による本件土地取得の事実を把握した。そして,すでにαの固定資産課税台帳に価格が登録されていたことから,当該価格により,不動産取得税の課税標準たる価格を決定したものである。控訴人は,土地の取得後直ちに賦課決定をしないのは違法であるというが,本人からの申告がなければ,土地の取得を認識することが事実上不可能であることを無視した主張である。 イ本件土地にかかる被控訴人地方事務所長による本件賦課決定処分は,地方税法73条の21第1項本文の定めに従って行ったものである。ところで,本件土地の平成10年度の固定資産税の納税者(本件土地の前所有 本件土地にかかる被控訴人地方事務所長による本件賦課決定処分は,地方税法73条の21第1項本文の定めに従って行ったものである。ところで,本件土地の平成10年度の固定資産税の納税者(本件土地の前所有者)は,当該年度の固定資産課税台帳登録の価格について争っておらず,登録価格は確定している。そして,その後当該不動産を取得した者もこれを争うことはできない。また,知事が固定資産課税台帳登録の価格により不動産取得税の賦課決定をした場合には,納税者は,賦課処分の取消訴訟において,登録価格が客観的に適正な時価でないと主張して課税標準たる価格を争うことはできないのである(最高裁判所昭和46年(行ツ)第9号・昭和51年3月26日第2小法廷判決,判例時報812号48頁以下)。よって,この価格によって行った本件賦課決定処分について,当該価格の違法性を主張して争うことはできない。 ウしたがって,御代田町長の登録価格により行った被控訴人地方事務所長の本件賦課決定は違法ではない。 (3) 土地の評価方法及びαによる登録価格についてア地方税法によれば,知事や市町村長は,固定資産評価基準によって固定資産の価格を定め,また不動産取得税の課税標準となるべき価格を決定するものとされており,それ以外の独自の方法によって土地の適正な時価を算定することを認めていない。したがって,登録価格の違法に関する判断においても,固定資産評価基準に対する当該評価額の基準適合性が問題となるべきであって,固定資産評価基準を全く無視した方法によってその違法性が判断されるべきではない。 イ裁判所提示の評価方法は,別荘用地として道路や電気,水道が整備され,管理会社が維持補修を行っている土地を山林と同視するもので不当である。また,別荘用地として販売された区画については,建物が建てられていなくても,別荘 方法は,別荘用地として道路や電気,水道が整備され,管理会社が維持補修を行っている土地を山林と同視するもので不当である。また,別荘用地として販売された区画については,建物が建てられていなくても,別荘地として利用される可能性のある土地というべきである。さらに,土地は個々に形状等が異なるにもかかわらず,その補正を行わずに平均で評価すること,先に購入した者は低い評価額となり,順次購入者が増える度に価格が上昇するということも不当である。 ウ αによる固定資産課税台帳登録価格は,以下のとおり,固定資産評価基準に照らして適正に行われたものである。 (ア) 本件土地の地目について固定資産評価基準によれば,別荘地において別荘建築のための基礎工事に着手していない土地であっても,付近の道路が整備され,電気及び飲料水が得られる状況にある場合には,宅地と認定することができるが,当該土地の現況からして宅地と認定することが不適当であると認められるものについては,雑種地と認定することとされている。本件土地は,上記要件は充足しているものの,管理不足の状況にあるため,αは本件土地を雑種地と認定した。 (イ) 宅地比準を85パーセントとした理由本件土地の現況は雑種地であるため,同じβ別荘地内で,すでに別荘が建築されている代表的な土地(標準宅地)の単位当たり価格から,伐採等に要する単位当たり経費を控除し,これを代表的な別荘地の単位当たり価格で除して得られた数値である0.85を,宅地から見た別荘地の比準割合とし,標準宅地の評点数に乗じるという方法によっている。 (ウ) 標準宅地の価格算定について固定資産評価基準によれば,標準宅地の適正な時価を求める場合には,当分の間,基準年度の初日の属する前年の1月1日の地価公示法による地価公示価格及び不動産鑑定士又は不動産鑑定士補に 価格算定について固定資産評価基準によれば,標準宅地の適正な時価を求める場合には,当分の間,基準年度の初日の属する前年の1月1日の地価公示法による地価公示価格及び不動産鑑定士又は不動産鑑定士補による鑑定評価から求められた価格等を活用することとし,これらの価格の7割を目途として評定することとされている。つまり,基準年度(本件では平成9年度)の初日の属する前年の1月1日(本件では平成8年1月1日)の価格の7割を目途として標準宅地の価格を評定することとなる。 αが依頼したA不動産鑑定士は,αや,周辺のε,小諸市の中等以下の別荘地の状況を勘案して,取引事例比較法に基づいて適正な補正を行ったうえ,価格基準日である平成8年1月1日の標準宅地の価格を1平方メートル当たり1万0500円と鑑定した。そこで,αは,平成8年1月1日から同年7月1日までにつきマイナス3パーセントの修正を行って,その7割の7070円を平成9年度の評価額とし,さらに平成8年7月1日から平成9年7月1日までにつきマイナス6パーセントの修正を行って6645円を平成10年度の評価額としたものである。控訴人は,こうした修正が不十分であると主張するが,本件標準宅地におけるマイナス3パーセント,6パーセントの修正は,周辺の下落率と比較して適当なものである。 (エ)本件土地の価格について本件土地の価格は,この標準宅地の価格6645円に比準して求められたものである。この比準については,固定資産評価基準に従って,標準宅地が2方路地であるのに本件土地は一方のみの接道であるので,比準割合を0.99としている。 控訴人は,本件土地上には急傾斜部分があり,建物を建てるには人工地盤の整備が不可欠であるのに,整形地としての比準割合で価格を決定している旨非難するが,整形地としての比準割合は,平面図的に見た る。 控訴人は,本件土地上には急傾斜部分があり,建物を建てるには人工地盤の整備が不可欠であるのに,整形地としての比準割合で価格を決定している旨非難するが,整形地としての比準割合は,平面図的に見た標準宅地と本件土地の形状の相違を補正する趣旨のものであるから,控訴人の主張は失当である。本件土地については,急傾斜部分について特段の補正は行っていないが,本件土地が所在する別荘地域全体が状況類似地区とされており,さらに,比準の対象となった標準宅地そのものが傾斜地で人工地盤を有しているのである。このような補正は,傾斜していることにより著しく価値が下がる場合に行うべきものであって,本件土地が所在する別荘地にあっては,傾斜地であるがために景観に優れているもので,傾斜地によるマイナス要因は存在しない。 (4) 本件賦課決定における課税標準について本件賦課決定においては,αの固定資産課税台帳登録の価格をそのまま課税標準としているのではなく,地方税法附則11条の5第1項及び長野県県税条例附則16条の3第1項の規定により,課税標準額を147万6000円(平成10年度の固定資産課税台帳登録価格295万2322円の2分の1)としているのである。 そして,不動産取得税における適正な時価」は,登録価格そのものではなく,課税標準によって判断されるものである。 この課税標準額では,1平方メートル当たり2795円となるが,これは,β別荘地における競売実例価格とほぼ等しいものであり,また,隣接する別荘地である「オーナーズヒルγ」における類似の急傾斜地の売買実例では,1平方メートル当たり1万4641円から3万2484円,その平成10年度の固定資産課税台帳登録価格は8913円から1万0531円になっていることからしても,不当な価格ということはできない。 第3 当裁判所の判断 当たり1万4641円から3万2484円,その平成10年度の固定資産課税台帳登録価格は8913円から1万0531円になっていることからしても,不当な価格ということはできない。 第3 当裁判所の判断 1 被控訴人知事に対する請求について当事者間に争いのない事実及び弁論の全趣旨によれば,被控訴人知事は,地方税法3条の2及び長野県県税条例4条1項1号の規定に基づいて,県税に係る徴収金の賦課徴収に関する事項を地方事務所長に委任していることが認められる。したがって,本件で問題となる不動産取得税に係る賦課決定処分の権限も被控訴人知事から被控訴人地方事務所長に委任されているのであって,被控訴人知事に対してその賦課決定を求める控訴人の請求は,被告適格を欠き不適法というべきである。よって,そのほかの点について検討するまでもなく,被控訴人知事に対する訴えは却下すべきものであり,これと結論を同じくする原判決はその部分において相当であり,控訴人の被控訴人知事に対する控訴は理由がない。 2 被控訴人地方事務所長に対する請求について(1) 控訴人による本件土地の取得,被控訴人地方事務所長による本件賦課決定の経緯及び内容,そして審査請求と裁決については,原判決の事実及び理由欄第二の二(6頁以下)記載のとおり当事者間に争いがないので,これを引用する。 (2) 被控訴人地方事務所長による課税標準の決定と本件賦課決定についてア地方税法によれば,不動産取得税の課税標準は,不動産を取得した時における不動産の価格であり(同法73条の13第1項),この価格とは,適正な時価をいうものとされている(同法73条5号)。また,固定資産課税台帳に固定資産の価格が登録されている不動産については,当該価格により当該不動産に係る不動産取得税の課税標準となるべき価格を決定するものとされ(同法 とされている(同法73条5号)。また,固定資産課税台帳に固定資産の価格が登録されている不動産については,当該価格により当該不動産に係る不動産取得税の課税標準となるべき価格を決定するものとされ(同法73条の21第1項本文),固定資産課税台帳に固定資産の価格が登録されていない不動産又は特別の事情があって当該固定資産の価格により難い不動産については,知事が同法388条1項に規定する固定資産評価基準によって,当該不動産に係る不動産取得税の課税標準となるべき価格を決定するものとされている(同法73条の21第2項)。そして,上記の「固定資産課税台帳に固定資産の価格が登録されている不動産」とは,不動産を取得した時において,その取得の日の属する年の固定資産税の賦課期日における不動産の価格が固定資産課税台帳に登録されている不動産を指し,そうでないときは「固定資産課税台帳に固定資産の価格が登録されていない不動産」として,知事は,固定資産評価基準により,当該不動産に係る不動産取得税の課税標準となるべき価格を決定すべきものと解される。 イところで,本件では,御代田町長が,地価の下落により,本件土地に係る平成9年度の固定資産税の課税標準の基礎となった価格を平成10年度の固定資産税の課税標準とすることが固定資産税の課税上著しく均衡を失すると認めて,地方税法附則17条の2第1項の特例を適用して,平成10年度の固定資産税の課税標準につき,自治大臣が定める基準によって修正した価格とすることを決定し,そのために,控訴人が本件土地を取得した平成10年2月18日の時点では,まだ固定資産課税台帳には修正価格が登録されていなかったものである。したがって,前記の「固定資産課税台帳に固定資産の価格が登録されていない不動産」として,被控訴人知事から権限の委任を受けた被控訴人地方事務 資産課税台帳には修正価格が登録されていなかったものである。したがって,前記の「固定資産課税台帳に固定資産の価格が登録されていない不動産」として,被控訴人知事から権限の委任を受けた被控訴人地方事務所長が,当該不動産に係る不動産取得税の課税標準となるべき価格を決定すべき場合に当たるものと認められる。 ウしかし,被控訴人地方事務所長が控訴人による本件土地の取得の事実を認識したのは平成10年4月3日であって,その時点ではすでに御代田町長によって平成10年度の固定資産課税台帳に本件土地の価格が295万2322円と登録されていたことから,被控訴人地方事務所長はこの登録価格に基づいて,地方税法附則11条の5第1項,長野県県税条例附則16条の3第1項により,その2分の1から,地方税法20条の4の2第1項に従って1000円未満の端数を切り捨てた金額147万6000円を課税標準として,100分の4の税率(同法73条の15)を乗じて,税額を5万9000円とする本件賦課決定をしたものである。したがって,被控訴人地方事務所長は本件賦課決定にあたって,本件土地に係る不動産取得税の課税標準となる価格を決定したものと認めることができる。 (3) 本件賦課決定における課税標準の相当性についてア固定資産評価基準と適正な時価前記のとおり不動産取得税の課税標準となる価格は,不動産を取得した時における不動産の価格であり,それは適正な時価であることを要する。 また,前記のとおり,地方税法によれば,知事等が同法73条の21第2項の規定によって不動産取得税の課税標準となるべき価格を決定する場合も,市町村長が固定資産の価格を決定する場合(同法403条1項)も,いずれも同法388条1項に基づいて自治大臣が定める固定資産評価基準によることを要するものとされている。 この固定資 決定する場合も,市町村長が固定資産の価格を決定する場合(同法403条1項)も,いずれも同法388条1項に基づいて自治大臣が定める固定資産評価基準によることを要するものとされている。 この固定資産評価基準は,課税にかかるコストを低減しながら,ある程度の幅での価格の妥当性を確保する手法として,法によって認められたものであるから,この基準によって評価されていれば,その価格に一応の妥当性があるものと推認することが可能である。しかしながら,固定資産評価基準の適用においても,例えば標準宅地の選定や価格の判定など,一義的に決定しがたい様々な要素や価値判断が必要となる部分が存在するのであって,固定資産評価基準によって評価されたというだけでは,常に評価の妥当性,価格の相当性が保証されるものでもないのである。 固定資産評価基準は,あくまでも上記の意味での適正な時価を求めるための一方法にすぎないのであって,固定資産評価基準に従って評価されていればそれが必ず適正な時価であるということはできない。 イ御代田町長による評価の方法証拠(乙1,2,7,12,14,16)によれば,御代田町長によって固定資産課税台帳に登録された本件土地の価格は295万2322円とされたが,それは,標準宅地として選定された長野県δ371番581の土地について,固定資産評価基準に従って,平成8年1月1日時点における不動産鑑定士による鑑定評価額である1平方メートル当たり1万0500円の7割に当たる7350円を平成8年度の評価額とし,同年1月1日から同年7月1日までの地価下落を勘案して3パーセントの減額修正を施した7070円を平成9年度の評価額,さらに平成8年7月1日から平成9年7月1日までの地価下落を勘案して6パーセントの減額修正をした6645円を平成10年度の評価額としたうえで,本件 トの減額修正を施した7070円を平成9年度の評価額,さらに平成8年7月1日から平成9年7月1日までの地価下落を勘案して6パーセントの減額修正をした6645円を平成10年度の評価額としたうえで,本件土地は,下草や雑木が繁茂し放題の状況であって,宅地と認定することが不適当であることから雑種地と認定し,宅地との比準割合については,本件土地のような雑種地を建物を建築できる状況にするまでに要する経費,具体的には立木の伐採、間伐,下刈り,抜根等に要する経費について,評価額より控除して求めることとし,代表的な別荘地の単位当たり価格から伐採等に要する単位当たり経費を控除し,これを代表的な別荘地の単位当たり価格で除して得られた数値である0.85をαにおける宅地から見た別荘地(雑種地)の比準割合とし,さらに,標準宅地が二方路地であるのに対して本件土地は一方のみの接道であることから本件土地の比準割合を0.99として地積の528平方メートルを乗じて評価額を求めた結果得られた価格であることが認められる。そして,標準宅地の平成8年1月1日の鑑定評価額は,隣接するε,小諸市の別荘地の類似性の高い基準地,標準地との評価バランスに配慮しながら,本件別荘地における平成4年12月,平成5年2月,同年4月の実際の取引事例による価格である1平方メートル当たり7732円から1万2400円をもとに,時点修正として14.6パーセントから12.6パーセントを減額し,地域格差による増額修正等を施した結果,1万0500円が相当とされたものであることが認められる(乙7,14の1ないし3)。 ウ通常の別荘地として評価することの当否しかしながら,証拠(甲1,3,4,乙19)及び弁論の全趣旨によれば,β別荘地について,次の事実を認めることができる。 a 本件土地が所在するβ別荘地は,標高約1 常の別荘地として評価することの当否しかしながら,証拠(甲1,3,4,乙19)及び弁論の全趣旨によれば,β別荘地について,次の事実を認めることができる。 a 本件土地が所在するβ別荘地は,標高約1100メートルの森泉山を含む周囲一帯(約40万坪)を,昭和44年に総武都市開発株式会社がリゾート開発した総区画数934区画の分譲別荘地である。 b 全域にわたって道路が設けられ,電気,水道が整備されてはいるものの,全体が急傾斜地(本件土地付近における斜度は30度から40度に達している。)で,眺望や景観の良好な地域も傾斜地等の地勢や方位の関係から一部地域に限られているため,開発後約30年を経過しているにもかかわらず,別荘地として利用される区画は極くわずかで,バブル経済崩壊後は長期にわたる景気の低迷から一層利用されなくなった。 c 平成13年2月現在での利用状況は,総区画数934のうち,販売済区画数が476,別荘等が建てられた区画数が79,そのうち,現に利用されているのは39戸,現在は利用不能だが,中規模以下の手直しで利用可能と思われるものが11戸にすぎず,そのほかは廃屋といった状況である。また,それ以外の区画は,急傾斜地に雑木や草が生い繁った山林同様の状態である。 そのため本件別荘地内の土地の取引事例は殆どなく,わずかに不動産競売手続による競売事例が存在するだけである。 以上のとおり認められ,特に開発後30年以上経過しても,このような利用状況であることからすれば,本件別荘地は,もはや別荘地としての開発に失敗したものと認めるのが相当である。そして総区画数のわずか5パーセント程度しか利用されておらず,その他の土地は山林同様の状態にある本件別荘地について,εや小諸市の通常の別荘地の評価とのバランスに配慮したり,平成4年や平成5年当時の古い取引事例に のわずか5パーセント程度しか利用されておらず,その他の土地は山林同様の状態にある本件別荘地について,εや小諸市の通常の別荘地の評価とのバランスに配慮したり,平成4年や平成5年当時の古い取引事例に基づいて平成8年1月1日時点の標準宅地の評価額を算定し,それをもとに地価下落率を考慮して平成9年度や平成10年度の評価額を求めるという方法は,本件別荘地の上記のような現況を無視し,もはや別荘地としての本来の価値が認められなくなった土地について,あくまでも通常の別荘地として評価しようとするものであって,客観性,合理性を欠くものと認められる。また,こうして求められた標準宅地の評価額を基準にして,まさしく山林同然の現況にある本件土地について,雑種地として,宅地に準じて15パーセント程度のわずかな比準修正を施しただけでその価格を評価することもまた,同様に不相当なものと認められる。 したがって,本件では,固定資産評価基準に従った前記評価は,土地の現況を無視した不相当な評価方法によるものと認められ,その価格を適正な時価と認めることはできない。 エ本件土地の適正な時価の算定方法そこで,本件土地の適正な時価について検討する。土地は,それを利用することによって収益を生み出すことが予定されているものであり,その評価は当該土地が有する収益力を資本還元した価格(収益還元価格)によるのを原則とすべきである。しかしながら,本件土地のように別荘地として開発された土地については,観念的にはその収益力を考えることは可能としても,一般の土地とは異なって,本来,その利用によって収益を生み出すことを直接には予定していないものであり,ことに本件では,前記のような本件別荘地の利用状況からすると,賃貸事例などが存在するとは思われず,その算定も困難といわざるを得ない。一方,前記のとお を生み出すことを直接には予定していないものであり,ことに本件では,前記のような本件別荘地の利用状況からすると,賃貸事例などが存在するとは思われず,その算定も困難といわざるを得ない。一方,前記のとおり,本件別荘地における取引事例も,不動産競売手続による事例のほかに殆どなく,取引事例比較法によることもできない。 本件別荘地内の多くの土地が山林同然の現況にあることからすれば,山林価格として当裁判所に顕著な1平方メートル当たり100円程度(営林署による山林の買受価格は通常1平方メートル当たり100円であり,一般での購入価格は通常1平方メートル当たり70円から80円と認められる)で評価することも考えられるが,前記のとおり,道路が設けられ,電気,水道の使用も可能な状態であって,建物が建築可能な状態に人工地盤を整備すれば別荘地として利用することも不可能ではないこと,実際にわずかとはいえ,別荘として現実に利用され,もしくは利用可能な状態にある区画も存在することからすると,それも相当とはいえない。 ところで,証拠(乙20)及び弁論の全趣旨によれば,本件別荘地に隣接して,ほぼ同様の急傾斜地を含む別荘地であるオーナーズヒルγが存在すること,同別荘地内で地積はいずれも1100から1200平方メートル前後の土地であるが,控訴人が本件土地を取得した時点に近接した時期の取引事例として,平成9年10月に1平方メートル当たり2万0133円及び3万2484円,同年12月に1平方メートル当たり1万4641円での売買事例が存在したこと,3万2484円で売買された土地は傾斜が緩やかで,ほぼ平らな土地であるが,そのほかはいずれも30度程度の急傾斜地であること,同別荘地は平成8年から分譲が開始された総区画数317の別荘地で,現在までに63区画が販売され,45区画で建物が建てら で,ほぼ平らな土地であるが,そのほかはいずれも30度程度の急傾斜地であること,同別荘地は平成8年から分譲が開始された総区画数317の別荘地で,現在までに63区画が販売され,45区画で建物が建てられ,すでに現実の利用率は14.2パーセントに達していることが認められる。したがって,同別荘地は,本件別荘地とは異なって,一応,別荘地としての通常の利用が図られているものと推認することができる。 とすると,本件別荘地も,別荘地として通常の利用がされるようになったとすれば,同別荘地の上記取引価格と同等程度の評価に達することが可能なものと認めることができる。一方,反対に,本件別荘地が全く別荘地と利用されていないとすれば,前記のような現況からしても,その全体を山林と同等に評価するほかないものと認められる。道路があり,電気,水道の利用が可能としても,それは別荘として利用される限りにおいて価値を生じるのであって,そうでない限り,それが存在するだけで土地の評価が上がるものではないからである。こうしてみると,総区画数の8割程度が別荘として現実に利用されていれば,一応,別荘地としては通常の利用がされているものとみて,本件別荘地もその8割程度が別荘として利用されている状態になれば,本件別荘地内の土地の平均的な評価は,隣接する前記別荘地の前記取引事例価格の平均値である1平方メートル当たり2万2419円に匹敵する価格になるが,反対に1区画も別荘地として利用されずに山林同然の状態であったとすれば,全体として山林としての評価にとどまることになり,前記のようにせいぜい1平方メートル当たり100円程度の評価しかできないものと考えられる。そうすると,いまだ通常の別荘地としての利用がなされていない本件別荘地の評価にあたっては,地域全体における別荘としての利用率を考慮して,実際に ル当たり100円程度の評価しかできないものと考えられる。そうすると,いまだ通常の別荘地としての利用がなされていない本件別荘地の評価にあたっては,地域全体における別荘としての利用率を考慮して,実際に別荘として利用される場合の価格を1平方メートル当たり2万2419円の評価をし,他方,別荘として利用されない区画については山林に準じて1平方メートル当たり100円の評価をして,その合計額を,適正な利用に達したと一応考えうる総区画数の8割で除して,その利用率に応じた価格を求め,それを本件別荘地の平均的な評価額と認めるのが相当と考えられる。このような評価の方法は,実際に,別荘地としての評価が,当該別荘地が多く利用されていればいるほど高まるものと考えられることからも合理的と認められる。 オ平均的な評価額と課税標準の計算そこで,本件別荘地の総区画数934の8割の747区画のうち,前記のとおり現実に別荘として利用されている39区画と,中規模以下の手直しで利用可能と思われるもの11区画との合計50区画については,1平方メートル当たり2万2419円の評価をし,その他の697区画については1平方メートル当たり100円の評価をして,その合計額を747で除して,利用率に応じた価格を得ることとする。 算式 (2万2419円×50+100円×697)÷747)そうして得られた価格は1平方メートル当たり1594円であるが,これが本件別荘地の平均的な評価額と認められる。 そして,固定資産評価基準によれば,標準宅地は,当該地域の主要な街路に沿接する宅地のうち,奥行,間口,形状等の状況が当該地域において標準的なものと認められるものを選定するものとされており(乙16),実際に本件別荘地で標準宅地として選定された前記土地もその位置や周囲の状況に照らしてごく平均的な区画 形状等の状況が当該地域において標準的なものと認められるものを選定するものとされており(乙16),実際に本件別荘地で標準宅地として選定された前記土地もその位置や周囲の状況に照らしてごく平均的な区画であることが認められること(乙12,14の1ないし3,弁論の全趣旨)からすれば,前記平均的な評価額は標準宅地の評価額に近似するものと認められる。また,証拠(乙12)及び弁論の全趣旨によれば,本件土地はこの標準宅地に比較して,接道条件の点で若干劣っていることが認められるのであって,少なくとも標準宅地を条件的に上回るものでないことは明らかであるから,前記平均的評価額以上の評価になりえないこともまた明らかということができる。 したがって,本件土地の評価額は,多くても前記平均的な評価額である1平方メートル当たり1594円と認めるのが相当であり,全体ではこれにその地積528平方メートルを乗じた84万1632円をもって相当と認める。そして課税標準は,地方税法附則11条の5第1項及び長野県県税条例附則16条の3第1項の規定により,その2分の1とされているので,その額を算出し,これから,地方税法20条の4の2第1項に従って1000円未満の端数を切り捨てて計算すべきであるから,その額は,42万円となる。そして,これに地方税法73条の15所定の税率100分の4を乗じた1万6800円が本件土地の取得に係る適正な不動産取得税額と認められる。 カ結論以上によれば,被控訴人地方事務所長の控訴人に対する本件賦課決定は,上記の課税標準額42万円,税額1万6800円を超える限度において違法というべきである。 3 したがって,原判決のうち,被控訴人知事に対する訴えを却下した部分は正当であり,控訴は理由がないが,被控訴人地方事務所長に対する控訴人の請求を棄却したのは失当で おいて違法というべきである。 3 したがって,原判決のうち,被控訴人知事に対する訴えを却下した部分は正当であり,控訴は理由がないが,被控訴人地方事務所長に対する控訴人の請求を棄却したのは失当であるので,控訴に基づいて原判決を変更して,上記違法と認められる限度で本件賦課決定を取り消すこととする。 よって,主文のとおり判決する。 東京高等裁判所第19民事部裁判長裁判官淺生重機裁判官西島幸夫裁判官原敏雄
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