令和4(ワ)4104 不正競争行為差止等請求事件

裁判年月日・裁判所
令和4年12月23日 東京地方裁判所
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令和4年12月23日判決言渡同日原本領収裁判所書記官令和4年(ワ)第4104号不正競争行為差止等請求事件口頭弁論終結日令和4年10月28日判決原告シーメンスアクチエンゲゼルシャフト 同訴訟代理人弁護士鈴木秀彦丸山悠被告CKD株式会社同訴訟代理人弁護士櫻林正己城山英紀 同訴訟代理人弁理士富澤孝同補佐人弁理士安田宗丘 主文 1 原告の請求をいずれも棄却する。 2 訴訟費用は原告の負担とする。 3 この判決に対する控訴のための付加期間を30日と定める。 事実及び理由 第1 請求 1 被告は、別紙被告製品目録記載の各製品を製造し、譲渡し、引き渡し、譲渡若しくは引渡しのために展示し、輸出し、輸入し、又は電気通信回線を通 じて提供してはならない。 2 被告は、別紙被告製品目録記載の各製品を廃棄せよ。 3 被告は、別紙被告製品目録記載の各製品の製造に用いられる金型その他の製造機具を廃棄せよ。 4 訴訟費用は、被告の負担とする。 5 仮執行宣言 第2 事案の概要原告は、別紙原告製品目録記載の製品(以下、符号に従い「原告製品A」ないし「原告製品B」といい、併せて「原告製品」という。)を販売している。他方、被告は、別紙被告製品目録記載の製品(以下、符号に従い「被告製品A」ないし「被告製品B」 以下、符号に従い「原告製品A」ないし「原告製品B」といい、併せて「原告製品」という。)を販売している。他方、被告は、別紙被告製品目録記載の製品(以下、符号に従い「被告製品A」ないし「被告製品B」といい、併せて「被告製品」という。)を販 売している。 本件は、原告が、原告製品の形態は周知な商品等表示に該当し、被告が被告製品を製造又は販売する行為は、上記商品等表示と類似の商品等表示を使用するものとして、不正競争防止法(以下「不競法」という。)2条1項1号の不正競争行為に該当すると主張して、被告に対し、不競法3条1項及び 2項に基づき、被告製品の製造等の差止め並びに被告製品及びその製造に用いられる金型その他の製造機具の廃棄を求める事案である。 なお、当裁判所は、本件事案に鑑み、和解勧告をしたものの、原告が和解を受け入れなかったことから、和解は打ち切られた。 1 前提事実(当事者間に争いのない事実並びに後掲の各証拠及び弁論の全趣 旨により認められる事実をいう。なお、証拠を摘示する場合には、特に記載のない限り、枝番を含むものとする。)⑴ 当事者ア原告は、ドイツ法に基づき設立された法人であり、製造業、エネルギー、ヘルスケア、インフラ等の分野における製造等及びシステム・ソリ ューションの事業を行っている(弁論の全趣旨)。 イ被告は、自動機械装置、駆動機器、空気圧制御機器、空気圧関連機器等の開発、製造、販売及び輸出等を目的とする株式会社である(弁論の全趣旨)。 ⑵ 原告製品の販売 原告製品は、昭和60年に、ランディスギア社の販売代理店であるイン ターシステム株式会社により、日本における販売が開始された。 その後、ランディスギア社のガスバルブ事業は、平成10年頃に、シー は、昭和60年に、ランディスギア社の販売代理店であるイン ターシステム株式会社により、日本における販売が開始された。 その後、ランディスギア社のガスバルブ事業は、平成10年頃に、シーメンス・ビルディング・テクノロジー社に譲渡され、同社は、平成22年に原告に吸収合併された。 (以上につき、甲1ないし3、弁論の全趣旨) ⑶ 被告製品の販売被告は、平成31年4月頃、被告製品の製造、販売を開始した。 ⑷ 製品の形態ア原告製品の形態は、別紙原告製品説明書記載のとおりである(弁論の全趣旨)。 イ被告製品の形態は、別紙被告製品説明書記載のとおりである(弁論の全趣旨)。 2 争点⑴ 原告製品の商品等表示性(争点1)⑵ 原告製品と被告製品の類似性(争点2) ⑶ 混同のおそれの有無(争点3)第3 争点に対する当事者の主張 1 争点1(原告製品の商品等表示性)について(原告の主張)⑴ 不競法2条1項1号にいう「商品等表示」とは、「人の業務に係る氏 名、商号、商標、標章、商品の容器若しくは包装その他の商品又は営業を表示するもの」をいうところ、商品の形態は、商標等と異なり、本来的には商品の出所を表示する目的を有するものではないが、商品の形態自体が特定の出所を表示する二次的意味を有するに至る場合があり、そのような場合には「商品等表示」に該当する。この点につき、裁判例上、商品の形 態自体が特定の出所を表示する二次的意味を有し、不競法2条1項1号に いう「商品等表示」に該当するためには、①商品の形態が客観的に他の同種商品とは異なる顕著な特徴を有しており(特別顕著性)、かつ、②その形態が特定の事業者によって長期間独占的に使用され、又は極めて強力な う「商品等表示」に該当するためには、①商品の形態が客観的に他の同種商品とは異なる顕著な特徴を有しており(特別顕著性)、かつ、②その形態が特定の事業者によって長期間独占的に使用され、又は極めて強力な宣伝広告や爆発的な販売実績等により、需要者においてその形態を有する商品が特定の事業者の出所を表示するものとして周知になっていること (周知性)を要すると解されている(知財高判平成24年12月26日判タ1408号235頁等参照)。 そして、本件においては、以下のとおり、原告製品の形態は特別顕著性及び周知性の双方の要件を満たす。 ⑵ 特別顕著性 日本においては、1980年代に液化天然ガスを主成分とした都市ガスへの切替えが進められた結果、ガスの供給圧力の高圧化やバルブのコストダウン・小型化が時代の要請となった。このような要請を受け、原告製品は、昭和59年以降、東京ガス株式会社、インターシステム株式会社及びランディスギア社による共同開発の成果として開発されたものであり、原 告製品の製造販売以前には類似の形態の製品は存在しなかった。 そして、被告は、平成7年頃から、旧形態の中圧B供給用のガスバルブ(以下「被告旧製品」という。)の販売を開始したところ、その形態は別紙写真目録記載1のとおりであり、原告製品の形態とは全く異なるものであった。また、日本ハネウェル株式会社は、低圧供給用のガスバルブを取り 扱っているが、その形態は同目録記載2のとおりであり、原告製品の形態とは全く異なっている。 現在においても、被告製品を除いては、原告製品と類似した形態の製品は皆無であるから、客観的にみて原告製品の形態が他の同種製品とは異なる顕著な特徴を有していることは明らかである。 ⑶ 周知性 ても、被告製品を除いては、原告製品と類似した形態の製品は皆無であるから、客観的にみて原告製品の形態が他の同種製品とは異なる顕著な特徴を有していることは明らかである。 ⑶ 周知性 原告製品は、日本において、昭和60年から現在に至るまで、販売代理店の変更等を経ながら、20年以上にわたって「シーメンスのガスバルブ」として広く認知されてきたものであり、平成7年頃に被告旧製品の販売が開始されてからも、原告製品の市場シェアは推定で100%近くを維持してきた。 また、原告製品の需要者は、中圧Bガスを使用する大規模な商業施設や工場において天然ガスを熱源とする装置設備メーカー及びそれらの装置に使用されるガスバーナーを製造販売するバーナーメーカーであり、その数は、日本国内では30社程度に限られている。そして、原告製品は、昭和60年の販売開始以来、その特異な形態、機能品質やサービスの質の高さ ゆえに市場に競合品がなく、今日まで販売が継続されてきたのであるから、原告製品の形態は、原告の商品等表示として周知のものといえる。 (被告の主張)⑴ 商品等表示性原告製品及び被告製品は、いずれも、中圧Bのガス遮断弁であるところ (以下、中圧Bのガス遮断弁である原告製品及び被告製品を「本件製品」と総称する。)、本件製品は、一般消費者が製品の外観に接し、それによって製品を識別した上で、購入意思決定の要素とする商品ではない。すなわち、本件製品の需要者は専門業者であるところ、購入の際に重要なのは、見た目ではなく、製品の性能、価格、信頼性、アフターサービス体制、製 造者の信頼性といった要素である。 そのため、取引の実態として、本件製品の購入を検討する専門業者は、メーカーとの取引開始 ではなく、製品の性能、価格、信頼性、アフターサービス体制、製 造者の信頼性といった要素である。 そのため、取引の実態として、本件製品の購入を検討する専門業者は、メーカーとの取引開始時点において、まずは当該メーカーの「会社自体の信頼性」について審査をする。そして、当該審査の結果、会社の経営環境の適正さが確認されたことを前提に、当該製品分野における技術力や調達 力、同種製品の性能、信頼性や、アフターサービス体制等の総合的な実力 を評価しない限り、顧客である専門業者は取引を行うことはない。 また、ビルメンテナンス業者も、交換部品を調達するに当たっては、ボイラーの仕様書や現品に基づき、「製造者名」や「品番」などを確認した上で、従来品と同一の製品を発注・購入し、検品を行うものであり、製品の外観だけで購入を決定することなどあり得ない。 このような取引の実態に照らせば、本件製品は、そもそも製品の形態が商品の識別表示となるような性格の製品ではない。 ⑵ 周知性以上のとおり、原告製品の形態にはそもそも商品等表示性が認められない以上、当然ながら、周知性も取得していない。 2 争点2(原告製品と被告製品の類似性)について(原告の主張)⑴ 原告製品と被告製品の対比については、別紙対比表の記載のとおりである。これによれば、原告製品と被告製品がその形状において類似していることは明らかであり、被告製品は原告製品のデッドコピーであるというこ とができる。 なお、原告製品と被告製品の相違点は、配管部分の色彩及び電気の接続部分の形状のみであるところ、これらも、製品全体の形態からすれば些細な相違点にすぎず、被告製品が原告製品のデッドコピーであることを覆すもの 原告製品と被告製品の相違点は、配管部分の色彩及び電気の接続部分の形状のみであるところ、これらも、製品全体の形態からすれば些細な相違点にすぎず、被告製品が原告製品のデッドコピーであることを覆すものではない。 ⑵ 被告は、被告製品が原告製品の互換品であることを理由に、原告製品を被告製品がある程度似た外観になることは必然的である旨主張するものの、仮に被告製品が原告製品の互換品であるとしても、原告製品と面間寸法が同一でありさえすれば、互換品として十分な機能を果たすはずであり、個々の部品の細部や内部構造等についてまで同一の形状にすべき理由 にはならない。 (被告の主張)⑴ 一見すると、原告製品及び被告製品は外観が類似するように思われる可能性はあるものの、両者は、配管の色彩及び電気の接続部分の形状が相違しており、実際に取引を行う当業者の立場に立てば、両者の区別は明白である。 ア配管部分の色彩原告製品は、配管部分がダクタイル鋳鉄に「黒色の塗装」をしたものである。そして、アクチュエータのボックスの基本色彩が黒色であることもあって、全体的に黒色である。 これに対し、被告製品は、配管部分がニッケルメッキでシャンパンゴ ールド色となっている。そのため、目に付く大きな部分において相違しており、両者の区別は一目瞭然である。 イ電気の接続部分の形状原告製品は、ボイラーからの電気信号(通電)が入力される「電気接続部分」には、ドイツにおける工業規格である「DIN端子方式」を採用 しているが、この方式は、最初の設置時の電気接続に手間がかかるため、メーカー側にはあまり歓迎されない。これに対し、被告製品は「端子台方式」を採用し、箱で覆うことで防水性を N端子方式」を採用 しているが、この方式は、最初の設置時の電気接続に手間がかかるため、メーカー側にはあまり歓迎されない。これに対し、被告製品は「端子台方式」を採用し、箱で覆うことで防水性を確保し、ドライバーなどで端子に電気配線を固定して電気接続を行う。 そして、当業者においては、電気的接続の方式には大きな関心を抱く ところ、制御装置と電気的接続のための機構は、本体正面の目立つ部分に形成されているから、当業者の観点に立って両製品の類比を判断すれば、原告製品と被告製品の区別は一目瞭然である。 ⑵ また、被告製品は原告製品の互換品であるところ、原告製品と同一の機能や性能を実現するためには、流路や圧力制御機構、弁の制御機構は、必 然的に似たような外観とならざるを得ない。 これに対し、原告は、面間寸法と配管径のみを同一にすれば互換可能であるはずである旨主張するが、同主張には理由がない。すなわち、被告製品のようなボイラー向けガスバーナー用のガスバルブ装置の場合、ガスの燃焼制御機能・性能についても互換させようとすれば、①バルブの開度に応じたガス圧や流量、②電気信号に応じたバルブ開度の反応速度について も近似したものにする必要がある。 そして、上記①のためには、配管内の流路形状や圧力調整機構も同様のものにする必要があるところ、配管自体は均一の肉厚の部材で構成することになるから、配管自体の外観も似たものにならざるを得ない。また、圧力調整機構は、内部のダイヤフラムの作用により圧力調整を行うものであ るから、圧力特性を同一にするためには、大きさや形状が同じダイヤフラムを使用する必要がある。そうすると、必然的に、ダイヤフラムを固定するための圧力調整機構も似たような形状とならざるを得ない。 るから、圧力特性を同一にするためには、大きさや形状が同じダイヤフラムを使用する必要がある。そうすると、必然的に、ダイヤフラムを固定するための圧力調整機構も似たような形状とならざるを得ない。 また、上記②のためには、バルブの制御機構も同様のものにする必要がある。 3 争点3(混同のおそれの有無)について(原告の主張)⑴ 「混同を生じさせる行為」には、被冒用者と冒用者との間に競業関係が存在することを前提に直接の営業主体の混同を生じさせる「狭義の混同惹起行為」のみならず、緊密な営業上の関係や同一の表示を利用した事業を 含むグループに属する関係があると誤信させるような「広義の混同惹起行為」を包含するものと解されている(最高裁平成10年9月10日判決・判時1655号160頁参照)。 ⑵ 前記2(原告の主張)のとおり、原告製品と被告製品は、その大きさから細部の構成まで極めて酷似しており、デッドコピーといっても過言では ない。 そして、原告製品は、ガスの供給圧力の高圧化、バルブのコストダウン・小型化の要請を受けて開発されたものであり、他の同種商品とは異なる顕著な特徴を有する製品であること、昭和60年の販売開始以来、競合品は皆無であり、20年以上もの長きにわたって「シーメンスのガスバルブ」という唯一無二の存在として需要者に認知されてきたこと、被告旧製 品の販売にもかかわらず、原告製品の市場シェアは推定で100%近くを維持してきたこと、以上の事情を踏まえれば、ガスボイラーや空調装置関連業界の事情に精通した需要者が被告製品を見ると、原告に無断でコピー品を製造したという印象を受ける可能性がある。その一方で、当該業界の事情にそれほど精通していない需要者が被告製品を見れば、被告が 関連業界の事情に精通した需要者が被告製品を見ると、原告に無断でコピー品を製造したという印象を受ける可能性がある。その一方で、当該業界の事情にそれほど精通していない需要者が被告製品を見れば、被告がここま で原告製品に酷似した製品の販売を開始し、現在も販売を継続していることは、原告と被告は何らかの緊密な関係にあるのか、あるいは、被告が原告から原告製品の製造販売を許諾されているのかという印象を受けるおそれがあることは明白である。 したがって、本件においては「広義の混同惹起行為」があり、被告によ る被告製品の販売行為は「混同を生じさせる行為」に該当することは明白である。 (被告の主張)争う。前記1の(被告の主張)において指摘したような本件製品の取引の実情に照らせは、広義・狭義を問わず、混同のおそれなど存在しない。 第4 当裁判所の判断 1 認定事実前記前提事実、後掲の各証拠及び弁論の全趣旨によれば、次の事実が認められる。 ⑴ 原告製品及び被告製品の機能・用途等 ア都市ガスの供給圧力は、圧力の低い方から、低圧(0.1MPa未 満)、中圧B(0.1MPa以上0.3MPa未満)、中圧A(0.3MPa以上1.0MPa未満)に分類される。そして、低圧は、一般家庭や一般の商業ビルや工場などに供給されるのに対し、中圧Bは、大規模な商業施設や工場に、中圧Aは、専ら大規模工場に供給される。 イ原告製品及び被告製品は、いずれも、事業用の比較的高圧な中圧Bを 使用するボイラーやバーナーの自動遮断弁(中圧Bのガス遮断弁)であり、大規模な商業施設や工場の暖房・熱源設備用のために用いられるものである。 (以上につき、甲2、乙3、弁論の全趣旨)⑵ 原告製品及び被告 ーナーの自動遮断弁(中圧Bのガス遮断弁)であり、大規模な商業施設や工場の暖房・熱源設備用のために用いられるものである。 (以上につき、甲2、乙3、弁論の全趣旨)⑵ 原告製品及び被告製品の形状等 ア原告製品は、ガスバルブ本体と、それに組み合わせるアクチュエータを一体としたものであり、その形状は、別紙原告製品説明書記載のとおりである。 イ被告製品は、同様に、ガスバルブ本体と、それに組み合わせるアクチュエータを一体としたものであり、その形状は、別紙被告製品説明書記 載のとおりである。 そして、被告製品は、主として、ガス配管と同じダクタイル鋳鉄製の管や金属製の弁、アクチュエータとその制御装置、検出信号入力装置等で構成されており、金属部品が多くを占める。そのため、その重量は全体で25~26kg程度であり、価格は約50万円前後(税抜き)であ る。 (以上につき、甲2、乙3、弁論の全趣旨)⑶ 原告製品の市場シェア原告製品は、昭和60年の発売開始から10年間程度は、市場に競合品がない状態であった。そして、平成6年頃に被告が旧製品の販売を開始し たものの、その後も、原告製品の市場シェアは推定で100%近くを維持 している。 (以上につき、甲2、3、弁論の全趣旨)⑷ 原告製品・被告製品の機能自動遮断弁は、ガスボイラーの運転停止やボイラーの異常燃焼、ガス圧力の異常などが検知されたときに、ボイラーからの検知部への通電停止信 号を受け、ガスの流れを遮断するためのものである。 そして、遮断弁に不具合があるとボイラーの運転自体が不可能となるため、原告製品や被告製品に故障が生じた際には、製品を使用している工場や商業施設に多大な支障が生じるおそれがある。 である。 そして、遮断弁に不具合があるとボイラーの運転自体が不可能となるため、原告製品や被告製品に故障が生じた際には、製品を使用している工場や商業施設に多大な支障が生じるおそれがある。 (以上につき、甲2、乙3、弁論の全趣旨) ⑸ 原告製品・被告製品の需要者及び購入・設置に至る経緯ア中圧Bのガス遮断弁の需要者は、主として、ガスボイラーを製造する専門業者であるガスボイラーメーカーのほか、ガスボイラーに使用するガスバーナーを製造する専門業者であるガスバーナーメーカーであり、日本国内では、約30社の需要者が存在する。 そして、前記⑷のとおり、不具合が生じた場合の支障が大きいことから、中圧Bのガス遮断弁の需要者であるガスボイラーメーカーやガスバーナーメーカーは、購入に当たって、製品の安全性・信頼性を重視しており、2ないし3年かけてテストを繰り返しながら慎重にガスバルブの採否を検討し、その検討のためには、製品内部の動作や構造についても 詳細な情報を要求する。 (以上につき、甲2、乙3、弁論の全趣旨)イ被告製品を購入する際には、専用システム又は文書により、製造者名のほか、型式、型番、品番及び価格を特定して発注する必要があり、納品後にも検品が必要となる。 また、被告製品を実際に使用するに当たっては、配管への接続のみな らず、ボイラーの電力出力部と被告製品の制御部との電気的接続作業や、調整や試運転テスト等が必要となる。(乙6、弁論の全趣旨)⑹ 被告製品の販売に至る経緯被告製品は、原告製品の性能やアフターサービスに対する不満を持つ顧客からの要望を受け、原告製品の互換品として開発・販売されるに至った ものである。(乙3、弁論の全趣 品の販売に至る経緯被告製品は、原告製品の性能やアフターサービスに対する不満を持つ顧客からの要望を受け、原告製品の互換品として開発・販売されるに至った ものである。(乙3、弁論の全趣旨)⑺ 原告製品・被告製品の宣伝状況等ア原告は、原告製品につき、テレビCMやチラシを使用した宣伝は行っていない。また、原告製品は、イーエムティー株式会社のホームページにおいて紹介されているところ、同ホームページにおいても、原告製品 の写真が掲載されているものの、特にその形態が強調されてはいない。 (乙7、弁論の全趣旨)イ被告製品のパンフレット(甲5)においても、表紙の約3分の1程度のスペースを占める被告製品の写真が掲載されているものの、「おもな特長」としては、「大流量・省スペース」、「中圧b(~0.3MP a)まで対応」、「幅広い圧力調整範囲(10kPa~150kPa)」といった点が強調されているにすぎず、形態についての言及はない。 2 争点に対する判断⑴ 不競法2条1項1号は、他人の周知な商品等表示(人の業務に係る氏名、 商号、商標、標章、商品の容器若しくは包装その他の商品又は営業を表示するものをいう。以下同じ。)と同一又は類似の商品等表示を使用等することをもって、不正競争に該当する旨規定している。この規定は、周知な商品等表示の有する出所表示機能を保護するという観点から、周知な商品等表示に化体された他人の営業上の信用を自己のものと誤認混同させて顧 客を獲得する行為を防止し、事業者間の公正な競争等を確保するものと解 される。そして、商品の形態は、特定の出所を表示する二次的意味を有する場合があるものの、商標等とは異なり、本来的には商品の出所表示機能を有するものではないから、上記規定 するものと解 される。そして、商品の形態は、特定の出所を表示する二次的意味を有する場合があるものの、商標等とは異なり、本来的には商品の出所表示機能を有するものではないから、上記規定の趣旨に鑑みると、その形態が商標等と同程度に不競法による保護に値する出所表示機能を発揮するような特段の事情がない限り、商品等表示には該当しないというべきである。そう すると、商品の形態は、①客観的に他の同種商品とは異なる顕著な特徴(以下「特別顕著性」という。)を有しており、かつ、②特定の事業者によって長期間にわたり独占的に利用され、又は短期間であっても極めて強力な宣伝広告がされるなど、その形態を有する商品が特定の事業者の出所を表示するものとして周知(以下「周知性」という。)であると認められ る特段の事情がない限り、不競法2条1項1号にいう商品等表示に該当しないと解するのが相当である。 そして、周知な商品等表示に化体された他人の営業上の信用を自己のものと誤認混同させて顧客を獲得する行為を防止するという同号の上記趣旨目的に鑑みると、商品の形態が、取引の際に出所表示機能を有するもので はないと認められる場合には、特定の出所を表示するものとして特別顕著性又は周知性があるとはいえず、上記商品の形態は、不競法2条1項1号にいう商品等表示に該当しないと解するのが相当である。 ⑵ これを本件についてみると、前記認定事実によれば、①本件製品は、中圧B供給用ガス遮断弁であるところ、その国内における需要者は、ガスボ イラーメーカーやガスバーナーメーカーの専門業者約30社に限られ、一般消費者が店頭において商品を見比べて購入するという性質の製品ではないこと、②本件製品は、その性質上、高度の安全性が求められる製品であり、不具合があると ーナーメーカーの専門業者約30社に限られ、一般消費者が店頭において商品を見比べて購入するという性質の製品ではないこと、②本件製品は、その性質上、高度の安全性が求められる製品であり、不具合があると、多大な損失が生ずる可能性があるため、需要者である専門業者は、購入に当たって、製品の安全性、信頼性を重視しているこ と、③現に、需要者は、2~3年かけてテストを繰り返しながら慎重に製 品の採否を検討するのであり、その検討のためには、製品内部の動作や構造についても詳細な情報を要求するのが通例であること、④被告製品自体、原告製品の機能やアフターサービスに対する需要者の要望を受けて、原告製品の互換品として開発されるに至ったものであること、⑤被告製品の価格は、約50万円と高額であり、原告製品も同程度であると推認され ること、⑥原告自身、原告製品に関する宣伝広告に当たって、原告製品の形態上の特徴それ自体を強調しておらず、被告においても、被告製品の形態をセールスポイントとするものではないこと、以上の事実が認められる。 上記認定事実によれば、本件製品の需要者は、約30社の専門業者に限 られるのであり、当該専門業者は、長期間費やし製品をテストするなどして、専ら安全性、信頼性の観点から本件製品を購入していることが認められることからすると、需要者である本件製品の専門業者は、取引の際にそもそも製品の形態自体に着目して本件製品を購入するものとはいえない。 上記認定に係る本件製品の取引の実情に鑑みると、原告製品の形態は、 一定程度の周知性があるとしても、出所表示機能を有するものではなく、不競法2条1項1号にいう商品等表示に該当しないと解するのが相当である。 仮に、原告製品の形態が商品等表示に該当するという見解に立ったとしても 性があるとしても、出所表示機能を有するものではなく、不競法2条1項1号にいう商品等表示に該当しないと解するのが相当である。 仮に、原告製品の形態が商品等表示に該当するという見解に立ったとしても、上記認定に係る本件製品の取引の実情を踏まえると、需要者である 本件製品の専門業者は、長期間費やし製品をテストするなどして、専ら安全性、信頼性の観点から本件製品を購入しているのであるから、当該需要者において原告製品と被告製品の誤認混同が生じないことは、明らかである。 したがって、被告が被告製品を製造又は販売する行為は、不競法2条1 項1号の不正競争行為に該当するものと認めることはできない。 ⑶ これに対し、原告は、原告製品と被告製品の類似性により、原告と被告との間に緊密な営業上の関係やグループ関係があるかのような混同が生じる旨主張する。 しかしながら、本件製品の需要者はその形態自体に着目して本件製品を購入するものではないことは、上記において説示したとおりである。そう すると、本件製品に係る取引の実情を踏まえると、原告主張に係る広義の混同が生じるものと認めることはできない。 その他に、原告提出に係る主張書面及び証拠を改めて検討しても、上記認定に係る本件製品の取引の実情に照らすと、前記判断を左右するには至らない。 したがって、原告の主張は、いずれも採用することができない。 第5 結論よって、原告の請求は理由がないからいずれも棄却することとし、主文のとおり判決する。 東京地方裁判所民事第40部 裁判長裁判官 中島基至 裁判官 裁判長裁判官 中島基至 裁判官 小田誉太郎 裁判官 國井陽平 (別紙)原告製品目録 A 中圧B供給用ガス遮断弁ユニットVGUシリーズ VGU30 B 中圧B供給用ガス遮断弁ユニットVGUシリーズ VGU10 (別紙)被告製品目録 A 中圧ガス複合弁GRVシリーズ GRV-2 B 中圧ガス複合弁GRVシリーズ GRV-1 (別紙)原告製品説明書 1 原告製品A及び原告製品B:原告製品A及び原告製品Bは、2つのVGJバルブ本体と当該バルブ本体の上に設置される2つのSKP(日本国内の型式はSKJ)アクチュエータからなっている。 2-1 原告製品A:上流側のアクチュエータはSKP15(日本国内の型式はSKJ15)であり、下流側のアクチュエータはSKP25.4(日本国内での型式はSKJ35)である。原告製品Aの外形及び外寸は写真1-1、図面1-1及び図面2-1のとおりである。 2-2 原告製品B:上流側、下流側のアクチュエータともにSKP15(日本国内の型式はSKJ15)である。原告製品Bの外形及び外寸は写真1-2、図面1-2及び図面2-2のとおりである。 3 原告製品A及び原告製品B:原告製品A及び原告製品Bの下部は、VGJバルブ本体であり、その形状・寸法は写真2及び図面 外寸は写真1-2、図面1-2及び図面2-2のとおりである。 3 原告製品A及び原告製品B:原告製品A及び原告製品Bの下部は、VGJバルブ本体であり、その形状・寸法は写真2及び図面3のとおりである。 4 原告製品A及び原告製品B: ガスバルブは故障等に備えて、図面4(図面4はVGU20の図面であるが、正面はほぼ原告製品Aと同じである)のとおり2個連結して使用される。 5 原告製品A及び原告製品B:VGJバルブ本体は、写真2及び図面3のとおり、略円柱状の弁装置本体が 垂直方向に配置され、その左右に、中が空洞となっている円柱状のガス流入管・排出管が水平方向に設置されている。ガス流入管・排出管の端部には、ガス流入管・排出管よりも径の大きい円盤状の取付板が設置されている。バルブ本体の底面には、略円柱状の弁装置本体よりも大きい略四角形の取付台が設置され、上面には略四角形のアクチュエータ取付台が設置されている。 6 原告製品A及び原告製品B:略円柱状の弁装置本体には、写真2のとおり、上流側(高い)から下流側(低い)に掛けて斜面を形成する外形で遮断弁ボディが形成されており、遮断弁ボディ外部の上流側には、円柱状のパイロット取り出しプラグが組み込まれ ており、下流側の上部には円柱状の突起が付されている。 7-1 原告製品A:原告製品Aの上部にはSKPアクチュエータが設置されている。その形状・寸法は写真3(SKP15)、写真4(SKP25.4)及び図面5(SKP 15)、図面6(SKP25.4)のとおりであり、写真3・図面5が上流側にあるアクチュエータ(SKP15)、写真4・図面6が下流側にあるアクチュエータ(SKP25.4)である。 7-2 原告製品B: 図面6(SKP25.4)のとおりであり、写真3・図面5が上流側にあるアクチュエータ(SKP15)、写真4・図面6が下流側にあるアクチュエータ(SKP25.4)である。 7-2 原告製品B: 原告製品Bの上部にはSKPアクチュエータが設置されている。その形状・寸法は写真3(SKP15)及び図面5(SKP15)のとおりであり、上流側、下流側ともにアクチュエータ(SKP15)である。 8 原告製品A及び原告製品B: 写真3(SKP15)、写真4(SKP25.4)及び図面5(SKP15)、図面6(SKP25.4)のとおり、アクチュエータ(SKP15)、アクチュエータ(SKP25.4)ともに、略四角形の取付台の上に設置されて、油圧ポンプが収まる円柱状の駆動部ユニット及びスイッチ類が収まる四角柱の形状をした駆動部ユニットの前面部からなる。 9 原告製品A:原告製品Aの下流側のアクチュエータ(SKP25.4)には、さらにガス圧の制御を行う装置が取り付けられており、その装置は略四角形のプレートの中央部にある調整スプリングを備えたパイプを有している。 10 原告製品A及び原告製品B:アクチュエータの駆動部ユニットは円柱状であり、取付台は略四角形であって、取付穴が角のそれぞれに対称形に開けられている。 写真1-1(VGU30) 写真1-2(VGU10) 写真2 ガスの流れ 写真3 写真4 図面1-1(VGU30) 通電表示インジケータ No, 写真4 図面1-1(VGU30) 通電表示インジケータ No, 検圧用プラグ(G1/4)ガス圧力スイッチ(G-L)GW2000A40.6MPaVGJ10SKJ25VGJ10SKJ15パイロット取り出しプラグ(G1/2)ガス二次圧設定口ガス二次圧導圧管接続口 (Rp1/4)元圧力計上流側遮断弁ボディ名称上流側アクチェータ備考・型式下流側遮断弁ボディ下流側アクチェータ下流側開度インジケータMadeinGermany 図面1-2(VGU10)(圧力計及び圧力スイッチはオプション装備) 図面2-1(VGU30)(圧力計及び圧力スイッチはオプション装備) 図面2-2(VGU10)(圧力計及び圧力スイッチはオプション装備) 図面3 図面4(圧力計及び圧力スイッチはオプション装備) P1P2P1P2ゲージとアクチェータ開度表示器を正面に見て、ガスの流れが左→右ゲージとアクチェータ開度表示器を正面に見て、ガスの流れが右→左ゲージアクチェータ開度表示器アクチェータ開度表示器ゲージVGU2□S□□□□R-□□□□VGU2□S□□□□L-□□□□ 図面5(SKP15) 図面6(SKP25.4) (別紙)被告製品 図面5(SKP15) 図面6(SKP25.4) (別紙)被告製品説明書 1 被告製品A及び被告製品B: 被告製品A及び被告製品Bは、2つのバルブ本体と当該バルブ本体の上に設置される2つのアクチュエータからなっている。 2-1 被告製品A:被告製品Aの外形及び外寸は写真1、図面1及び図面2-1のとおりであ る。 2-2 被告製品B:被告製品Bの外形及び外寸は図面2-2のとおりである。 3 被告製品A及び被告製品B:被告製品A及び被告製品Bの下部は、バルブ本体であり、その形状・寸法は写真2及び図面3のとおりである。 4 被告製品A及び被告製品B: ガスバルブは故障等に備えて、図面1のとおり2個連結して使用される。 5 被告製品A及び被告製品B:バルブ本体は、写真2及び図面3のとおり、略八角柱状の弁装置本体が垂直方向に配置され、その左右に、中が空洞となっている円柱状のガス流入管・排 出管が水平方向に設置されている。ガス流入管・排出管の端部には、ガス流入 管・排出管よりも径の大きい円盤状の取付板が設置されている。バルブ本体の底面には、略八角柱状の弁装置本体よりも大きい略四角形の取付台が設置され、上面には略四角形のアクチュエータ取付台が設置されている。 6 被告製品A及び被告製品B: 略八角柱状の弁装置本体には、写真2のとおり、上流側(高い)から下流側(低い)に掛けて斜面を形成する外形で遮断弁ボディが形成されており、遮断弁ボディ外部の上流側には、円柱状のパイロット取り出しプラグが組み込まれており、下流側の上部 のとおり、上流側(高い)から下流側(低い)に掛けて斜面を形成する外形で遮断弁ボディが形成されており、遮断弁ボディ外部の上流側には、円柱状のパイロット取り出しプラグが組み込まれており、下流側の上部には円柱状の突起が付されている。 7-1 被告製品A:被告製品Aの上部にはアクチュエータが設置されている。その形状・寸法は写真3、4及び図面4、5のとおりであり、写真3、図面4が上流側にあるアクチュエータ、写真4、図面5が下流側にあるアクチュエータである。 7-2 被告製品B:被告製品Bの上部にはアクチュエータが設置されている。その形状・寸法は上流側、下流側ともに写真3及び図面4のとおりである。 8 被告製品A及び被告製品B: 写真3、4及び図面4、5のとおり、アクチュエータは、上流側アクチュエータ、下流側アクチュエータともに、略四角形の取付台の上に設置されて、油圧ポンプが収まる円柱状の駆動部ユニット及びスイッチ類が収まる四角柱の形状をした駆動部ユニットの前面部からなる。 9 被告製品A: 被告製品Aの下流側のアクチュエータには、さらにガス圧の制御を行う装置が取り付けられており、その装置は略四角形のプレートの中央部にある調整スプリングを備えたパイプを有している。 10 被告製品A及び被告製品B: アクチュエータの駆動部ユニットは円柱状であり、取付台は略四角形であって、取付穴が角のそれぞれに対称形に開けられている。 写真1(GRV-2) 写真2 ガスの流れ 写真3 写真4 図面1(GRV-2) V-2) 写真2 ガスの流れ 写真3 写真4 図面1(GRV-2) 図面2-1(GRV-2) 図面2-2(GRV-1) 図面3 図面4 図面5 (別紙)写真目録

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