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裁判年月日・裁判所
平成30年3月1日 福岡高等裁判所 那覇支部 棄却 那覇地方裁判所 平成24(行ウ)30
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判決文本文23,514 文字)

主文 1 本件控訴を棄却する。 2 控訴費用は控訴人の負担とし,当審における参加によって生じた費用は補助参加人らの負担とする。 事実 及び理由 第1 控訴の趣旨 1 原判決中控訴人敗訴部分を取り消す。 2 上記取消部分につき被控訴人らの請求をいずれも棄却する。 第2 事案の概要(略称は原判決のものを用いる。) 1 沖縄県(県)の住民である被控訴人らは,県と大成JVとの間で締結されたトンネル建設に係る数個の工事請負契約のうち,本件各契約が,既に施工済みの工事を新たに施工するかのように装ってされた虚偽の契約であったため,県が,本件各契約に関して支給された国庫補助金及びその利息分について国から返還を命ぜられ,同利息分7177万6779円(本件利息分)の損害を被ったなどと主張して,控訴人に対し,法242条の2第1項4号に基づき,以下の①及び②の各行為並びに③ないし⑤の各怠る事実を対象とし,本件利息分の損害について,以下の①ないし⑤のとおり,損害賠償請求ないし賠償命令をするよう求める住民訴訟である本件訴訟を提起した。 ① Aが3項目合意を了承した上で,第1契約について予算執行伺いを決裁するとともに,第2契約を締結する原因を作るなどした行為等に関し,Aに対し,7177万6779円及びこれに対する平成24年12月28日(訴状送達日の翌日。以下同じ。)から支払済みまで民法所定の年5分の割合による遅延損害金の賠償命令を,補助参加人Bが,3項目合意をし,第1契約に関し虚偽の文書を作成し,第2契約の支出負担行為をしたこと等に関し,補助参加人Bに対し同額の賠償命令をすること(主位的請求)② 当時の沖縄県知事Cが,Aらを指揮監督すべき義務に違反し,故意又は過 失により, ,第2契約の支出負担行為をしたこと等に関し,補助参加人Bに対し同額の賠償命令をすること(主位的請求)② 当時の沖縄県知事Cが,Aらを指揮監督すべき義務に違反し,故意又は過 失により,Aらによる前記①の行為を阻止しなかった行為に関し,Cに対し,前記①と同額の金員を支払うように請求すること③ Aらが故意又は過失により前記①の違法な行為をして県に本件利息分の損害を与えたことについて,控訴人がAらに対する法243条の2に基づく賠償命令又は不法行為に基づく損害賠償請求権の行使を違法に怠る事実に関し,A及び補助参加人Bに対し,前記①と同額の賠償命令をすること(主位的請求),又は,Aに対し前記①と同額の金員の支払を請求し,補助参加人Bに対し,6582万8006円(被控訴人らにおいて本件利息分のうち第1契約に係る分と主張する額)及びこれに対する平成24年12月28日から支払済みまで民法所定の年5分の割合による遅延損害金の支払を請求すること(予備的請求)④ Cが故意又は過失により前記②の行為をして又は知事の県職員に対する一般的な管理監督権限の行使を怠って県に本件利息分の損害を与えたことについて,控訴人がCに対する不法行為に基づく損害賠償請求権の行使を違法に怠る事実に関し,Cに対し,前記②と同額の金員を支払うように請求すること⑤ 補助参加人大成建設らが故意又は過失により本件各契約に係る不正行為に全面的に加担して県に本件利息分の損害を与えたことについて,控訴人が補助参加人大成建設らに対する不法行為に基づく損害賠償請求権の行使を違法に怠る事実に関し,補助参加人大成建設らに対し,連帯して前記①と同額の金員を支払うよう請求すること原審は,本件訴えのうち,前記①,②及び前記③の主位的請求のうちAに係る部分及び補助参加人Bに係る部分のう 実に関し,補助参加人大成建設らに対し,連帯して前記①と同額の金員を支払うよう請求すること原審は,本件訴えのうち,前記①,②及び前記③の主位的請求のうちAに係る部分及び補助参加人Bに係る部分のうち同人に対し588万7413円及びこれに対する平成24年12月28日から支払済みまで年5分の割合による金員の賠償命令をすることを求める部分を除く部分についてはいずれも不適法であるとして却下した上で,被控訴人らの請求は,控訴人に対し,Aに対し,6 588万9366円及びこれに対する平成24年12月28日から支払済みまで年5分の割合による金員を支払うよう請求することを求める部分(③の予備的請求の一部(第1契約に係る部分)),補助参加人Bに対し,588万7413円及びこれに対する同日から支払済みまで年5分の割合による金員の賠償命令をすることを求める部分(③の主位的請求の一部(第2契約に係る部分)),及び補助参加人Bに対し,6582万8006円及びこれに対する同日から支払済みまで年5分の割合による金員を支払うよう請求することを求める部分(③の予備的請求(第1契約に係る部分のうち被控訴人らの主張する額))については理由があるが,その余は理由がないとして,被控訴人らの請求を一部認容したところ,控訴人が控訴した。したがって,原判決中,被控訴人ら敗訴部分は当審の審判の対象ではない。 2 前提事実等,争点並びに争点に関する当事者及び補助参加人Bの主張は,次のとおり訂正し,後記3のとおり当審における当事者及び補助参加人Bの補充的主張を付加するほかは,原判決の「事実及び理由」第2の1ないし3(ただ及びオ及びオのとおりであるから,これを引用する。 原判決5頁10行目末尾に「補助参加人Bは,第2契約の締結につき,支出負担行為等の決裁権者であり,法2 「事実及び理由」第2の1ないし3(ただ及びオ及びオのとおりであるから,これを引用する。 原判決5頁10行目末尾に「補助参加人Bは,第2契約の締結につき,支出負担行為等の決裁権者であり,法243条の2第1項所定の職員に該当する。」を加える。 原判決7頁13行目から同14行目にかけての「交付」を「作成」と改める。 原判決13頁21行目及び同16頁14行目の「及び第2契約」をいずれも削除する。 原判決17頁13行目の「a」及び同18行目冒頭から同18頁5行目末尾までをいずれも削除する。 原判決18頁10行目冒頭から同12行目の「行為が,」までを「監査委 員において,補助金適正化法違反により返還を求められた利息相当額の損害を発生させたAらの行為が,」と改める。 原判決24頁までを「補助参加人Bは,第1契約の締結に向けて,① 変更契約に当たって当初の請負率を乗じず,別件随意契約にするという方針を打ち出し,②第1契約を5億円以下とし,議会の審議を回避するという方針を打ち出し,③ 増額分を積算根拠のないまま10億3900万円とし,④ 大成JVとの間で3項目合意をした上(その1つが第1契約となった。),⑤ 第1契約につき虚偽文書(乙35の3・9)を作成した。そして,補助参加人Bは,」と改める。 原判決24頁23行目の「」を削除する。 原判決25頁14行目冒頭から同17行目の「各行為」までを「補助参加人Ba①ないし⑤の各行為」と改める。 原判決28頁9行目冒頭から同20行目末尾までを削除する。 原判決28頁21行目冒頭から同29頁1行目までを次のとおり改める。 「 Aは,請負率を乗じることなく10億円以上を追加支出する随意契約を締結するという,追加工事においても請負率を乗じるという県の方針に 8頁21行目冒頭から同29頁1行目までを次のとおり改める。 「 Aは,請負率を乗じることなく10億円以上を追加支出する随意契約を締結するという,追加工事においても請負率を乗じるという県の方針に反しかつ議会の審議を回避する内容の3項目合意を了承せず,また違法な第1契約の予算執行伺を決裁せずに,第1契約が締結されないようにすべき義務を負うのに,これを怠り,3項目合意を了承し,第1契約の予算執行伺を決裁したのであるから,Aのこれらの行為は不法行為を構成する。そして,3項目合意のような手法を採ることについて認識していたのであるから,事後的に何らかの問題が生じることについて少なくとも重過失がある。また,Aには,第1契約に関し,本件取消決定がされ,県に本件利息分相当額の損害が生じることについての予測可能性があったことは明ら かである。」原判決29頁10行目冒頭から同11行目末尾までを削除する。 3 当審における当事者及び補助参加人Bの補充的主張 控訴人の主張ア監査請求前置の有無(本案前の)について本件監査請求に係る請求書においては,Aらに対する不法行為に基づく損害賠償請求権に係る記載やその請求原因事実となる具体的な行為に係る記載は全くされておらず,その特定もされていない。また,被控訴人らも,控訴人による本件監査請求の対象についての求釈明に応答した原審第1準備書面において,不法行為に基づく損害賠償請求権については触れていない。これらからすれば,第1契約につきAらに対する不法行為に基づく損害賠償請求権の行使を怠る事実は本件監査請求の対象とされていなかったというべきである。 イ監査請求期間の制限に係る規定(法242条2項本文)の適用の有無(本案前の 被控訴人らの主張す 権の行使を怠る事実は本件監査請求の対象とされていなかったというべきである。 イ監査請求期間の制限に係る規定(法242条2項本文)の適用の有無(本案前の 被控訴人らの主張するAらの不法行為は,第1契約に基づく違法な公金支出が存在しなければ成立し得ないものであるから,結局,被控訴人らの主張する損害賠償請求権は,財務会計上の行為が違法,無効であることに基づいて発生する実体法上の請求権である。したがって,第1契約につきAらに対する不法行為に基づく損害賠償請求権の行使を怠る事実は,不真正怠る事実を対象とするものであって,監査請求期間の制限を受ける。 ウ監査請求期間の起算日(本案前のについて本件においては,損害と主張される利息分の前提となる第2契約に基づく公金支出の時点で,当該公金支出の違法及び損害の発生を主張して監査請求することができた(このように解しても,住民訴訟において事後に発生した利息分の損害について請求の拡張をすることができるから不都合は ない。)のであるから,監査請求期間の起算日は第2契約に基づく公金支出の日とされるべきである。このように解さないと,損害の発生ごとに監査請求をし得ることとなり,法的安定性の観点から定められた期間制限の趣旨が没却されることになり不合理である。 エ補助参加人Bの故意,重過失又は過失の有無,行為の違法について 第1契約についてa 行為の違法性について公共工事においては,単年度予算に基づいて工事を施工することとの関係上,当該年度に計上された予算の範囲を超えて増額変更等をすることはできないことから,発注者が請負代金を増額すべき場合又は費用を負担すべき場合に,請負代金の増額等に代えて設計図書を変更する(当初契約 上,当該年度に計上された予算の範囲を超えて増額変更等をすることはできないことから,発注者が請負代金を増額すべき場合又は費用を負担すべき場合に,請負代金の増額等に代えて設計図書を変更する(当初契約の請負代金額に収まるように当該年度に施工した工事を計上して新たに設計図書を作成し,これと当初契約上の設計図書を変更する。)という同額変更を行い,当初契約から押し出された工事を当初契約と同じ請負人との間で別の随意契約を締結して工事を施工させることは従前から一般的に行われているところ,3項目合意はこれを内容とするものであるから,何ら違法なものではない。また,補助参加人Bは,第1契約の締結権限を有しておらず,本件工事の設計図書の変更や中止について指示できる立場にもない。補助参加人Bの関与は,本庁道路街路課と協議,調整の上,既施工だが現場指示に基づいて施工された送水管沈下対策工事を主体とする設計図書を作成して本庁道路街路課に提出したことにすぎず,どのような内容の契約を締結するかは県(本庁)の権限である。さらに,送水管沈下対策工事を随意契約とすることとしたのは,南部土木事務所と本庁道路街路課の協議によるもので,補助参加人B1人の独断で行われたものではな く,かつ,実際の工期と異なる第1契約が締結され,これに基づく支出がされるまでには,補助参加人B以外の多数の者が関与しているのであるから,補助参加人Bの行為が補助金等の交付決定の取消しや補助金等及び利息の返還命令を招来する蓋然性の高い行為であり違法であるといえない。 b 因果関係について補助参加人Bの行為の後,実際の工期と異なる第1契約が締結され,これに基づく支出がされるには,補助参加人B以外の多数の者,とりわけ正当な権限を持つ本庁の担当課の者が関与しているので 補助参加人Bの行為の後,実際の工期と異なる第1契約が締結され,これに基づく支出がされるには,補助参加人B以外の多数の者,とりわけ正当な権限を持つ本庁の担当課の者が関与しているのであるから,補助参加人Bの行為と損害との間には相当因果関係はない。 第2契約についてa 第2契約において支出に見合った成果が得られていないものではないから,「最小の経費で最大の効果を挙げる」という地方財政法4条1項,法2条14項及び同232条以下等の趣旨に反するものではなく,第2契約締結に係る補助参加人Bの違法性の程度は軽微である。 b また,補助参加人Bが第2契約を締結するに至ったのは,前工事に引き続き随意契約方式で行う後工事の予定価格の算定については,前工事の請負率を乗じるなどして算定する必要があるとの会計検査院の新たなルール設定に合わせることが原因となっていること,大成JVの請求額よりも低額であり,資材等の買取りについては次の請負業者に引き継ぐから無駄な支出になっていないこと,県においては,契約締結日以降を工事開始日とする事務処理上の慣行があり,補助参加人Bとしても,上記慣行に反して,契約締結日以前の日付を工期とする契約を締結することはあり得ない選択であったこと,本件工事が補助事業の一環として行われており,補助金交付申請を行うのは当然であって,精算合意の方法を思い付かなくてもやむを得ないことから,補 助参加人Bに重過失はない。 オ A Aの負う義務についてAが他人である補助参加人Bの行為について責任を負う法的な根拠はないから,原判決の判示するようなAが補助参加人Bの行為を阻止すべき義務を負わない。 また,Aは,予算執行伺に関し決裁権限を有するのみであるところ Bの行為について責任を負う法的な根拠はないから,原判決の判示するようなAが補助参加人Bの行為を阻止すべき義務を負わない。 また,Aは,予算執行伺に関し決裁権限を有するのみであるところ,予算執行伺は,法に定められた事項ではなく,財務規則上も支出負担行為の上限を定めることのみが規定され,その決裁事項は,支出負担行為に先立って,特定の公金の支出が予算の目的に即しているか,予算の範囲内の金額のものであるか,契約の方法として入札か随意契約等を確認し,執行すべき予算の上限を決裁するにすぎないから,これに対する決裁権限から導かれる作為義務は,その具体的な事務の範囲内のものに限定されるべきで,補助参加人Bの行為を阻止すべき義務の根拠とはならない。 第1契約に関する予算執行伺は,追加費用の支払の必要が生じたので,同額変更した上で,当初契約から押し出された覆工コンクリート工等について随意契約を締結し,平成20年度予算をもって充てたいというものである。そして,追加変更工事の必要があり,かつ,同額変更と別件随意契約による手法が一般的に行われていたのであって,予算執行の目的に適合することが明らかであり,かつ,Aの権限の範囲内で行えるのであるから,Aの決裁は適正である。 違法性,重過失及び因果関係の有無について補助参加人Bの行為に違法性はなく,補助参加人Bの行為と損害との間に相当因果関係もない以上,補助参加人Bの行為を阻止しなかったAの行為についても違法性や損害との間の相当因果関係を欠くものである。 また,Aには,重過失の前提となる作為義務も存在しない。 補助参加人Bの主張(補助参加人Bの故意,重過失又は過失の有無,行為について)ア第1契約について 行為の違法 また,Aには,重過失の前提となる作為義務も存在しない。 補助参加人Bの主張(補助参加人Bの故意,重過失又は過失の有無,行為について)ア第1契約について 行為の違法性について補助参加人Bは,財務規則上,第1契約締結やこれに関連する事務について権限を有しておらず,請負率を乗じないで別件随意契約を締結することについても,これを提案したにすぎないのであって,決定権限を有する本庁道路街路課においてこれを採用し,決定したのである。したがって,補助参加人Bが,請負率を乗じない方針を決定したとか,3項目合意を主導し,第1契約締結に積極的に関与したなどとはいえない。 なお,追加工事について請負率を乗じないで精算することは全国的に広く行われており,そのこと自体は違法ではない。 また,既に完了した送水管沈下対策工事を取り出して作成した設計図書については,沖縄県土木建築部工事監督要領に従い,南部土木事務所の担当者が,本庁道路街路課の指示を受け,両者で協議して作成したもので,補助参加人Bに対する説明はされておらず,単に補助参加人Bの押印を得たにすぎない。そして,沖縄県土木建築部工事監督要領に従うと,南部土木事務所の担当職員は,補助参加人Bでなく本庁道路街路課の指示に従うことになるのであるから,上記補助参加人Bの行為は,設計図書の送付を了解するものにすぎないというべきであり,違法との評価を受けるものではない。 さらに,補助参加人Bは,財務規則上,第1契約締結やそれに関連する事務について権限を有しないこと,第1契約によって支出した費用に見合った成果が存在すること,補助参加人Bは,本件工事の特性からやむなく3項目合意をもって対処したもので,当初は施工が既に完了した とはいえない ないこと,第1契約によって支出した費用に見合った成果が存在すること,補助参加人Bは,本件工事の特性からやむなく3項目合意をもって対処したもので,当初は施工が既に完了した とはいえない覆工コンクリート工を対象としていたが,県(本庁)の指示により送水管沈下対策工事を対象とすることに至ったもので,手続上のミスにより契約の締結が工事完了後となったにすぎず,法や地方財政法の趣旨に反するものではないこと,補助参加人Bの送水管沈下対策工事を取り出して作成した設計図書の送付への関与が受動的かつ消極的なものにすぎないことに照らせば,補助参加人Bの行為が違法であるとしても,その程度は極めて軽微で,悪質性も認められないものであるから,補助参加人Bの行為が違法と評価されるべきではない。 重過失ないし過失の有無補助参加人Bは,既に完了したとはいえない覆工コンクリート工を抜き出して別件随意契約の対象とすることを予定したのであるから,工期を偽った第1契約が締結されることを認識していないし,予見もできなかった。 また,3項目合意がされた後,設計図書の差替えや支出負担に関するいくつもの決裁手続を経て第1契約が締結され,その後も,県による完了実績報告及び内閣府沖縄総合事務局による完了検査を経た後,会計検査院の実地検査及び指摘がされて本件取消決定及び本件返還命令がされたのであるから,補助参加人Bにおいて,本件返還命令がされることを容易に思い至ることができたとはいえないし,法律の専門家でもない補助参加人Bが,補助金の返還のみならず利息相当額の返還まで求められることに思い至ることは不可能である。 さらに,補助事業における事業費は,請負契約の締結,補助金交付申請,交付決定,完了検査(補助金額に見合った成果の ならず利息相当額の返還まで求められることに思い至ることは不可能である。 さらに,補助事業における事業費は,請負契約の締結,補助金交付申請,交付決定,完了検査(補助金額に見合った成果の確認)という手続に沿った費用支出が行われるもので,請負人との精算合意という契約方式で支払う仕組みがないから,補助参加人Bが,補助金を受けない方法を思い付くことは不可能である。補助参加人Bを始め,当時の担当職員 は,第1契約が違法であるとの認識を有しておらず,実際に本件工事の請負契約上も,追加工事の実施後に双方の協議の上で精算することがあり得ることを想定する条項があるのであって,事務処理上の慣行のために本来の工事期間に基づいて第1契約を締結できなかったにすぎない。 したがって,補助参加人Bにつき重過失又は過失はない。 イ第2契約について 行為の違法性について第2契約によって支出した費用に見合った成果が存在することに照らすと,第2契約の締結行為が法や地方財政法の趣旨に反するものとはいえず,補助参加人Bが第2契約を締結したことの違法性は軽微なものであって,これを不法行為上違法と評価すべきではない。 重過失ないし過失の有無 Bの行為に違法性はなく,補助参加人Bに重過失又は過失はないこと,補助参加人Bを始めとする南部土木事務所の職員らにおいて第2契約が違法であるとの認識がなかったことに照らすと,補助参加人Bに重過失又は過失はない。 被控訴人らの反論ア控訴人の主張について監査請求前置の有無(本案前の)について本件監査請求に係る監査請求書において原判決が摘示するとおりの記載があることに加え,Aが第1契約及び第2契約に係る予算執行伺 控訴人の主張について監査請求前置の有無(本案前の)について本件監査請求に係る監査請求書において原判決が摘示するとおりの記載があることに加え,Aが第1契約及び第2契約に係る予算執行伺及び3項目合意を了承した事実の記載があることに照らすと,本件監査請求は,Aらに対する不法行為に基づく損害賠償請求をも対象としていたものといえる。 監査請求期間の制限に係る規定(法242条2項本文)の適用の有無 (本案前の 本件においては,第1契約及び第2契約に関する補助金の申請が不正なものであり,補助金適正化法に違反するとして本件取消決定及び本件返還命令がされ利息相当額の損害が発生したもので,補助金適正化法違反による損害を発生せしめたAらの行為につき不法行為上違法かどうかが問題となるのであって,上記各契約に基づく公金支出に財務会計法規の違反があるから損害が生じたものではない。したがって,Aらに対する損害賠償請求を怠る事実については,財務会計法規に違反するかどうかを認定しなければ損害賠償請求が成り立たないという関係にはない。 監査請求期間の起算日(本案前のについて本件返還命令がされるまでは,これにより生じた利息相当額の損害についての損害賠償請求権は発生する余地がなく,監査請求もし得ないから,原判決の判断は正当である。 補助参加人Bイ)についてa 第1契約について 行為の違法性について少なくとも既施工の工事を取り出して同額変更をし,随意契約をすることが一般的であるとはいえず,むしろ当初契約に含まれる工事費用の増額は当初契約の請負率を乗じる必要があることが当然のルールである。そして,3項目合意は,上記のルールに反した支出をする点及び本来は議会の決議及び知事の決裁が必要な変更契約を 約に含まれる工事費用の増額は当初契約の請負率を乗じる必要があることが当然のルールである。そして,3項目合意は,上記のルールに反した支出をする点及び本来は議会の決議及び知事の決裁が必要な変更契約を議会の承認を得ない範囲で細分化する点で極めて問題のある行為であり,かつ,本件返還命令に至る経過を決定付けるもので極めて重要な行為であって違法なものである。補助参加人Bも,3項目合意の時点で,既施工部分が当初契約額を超過していたことを認識して いた。そして,3項目合意の時点で,既施工部分について別件随意契約を締結し請負率を乗じずに支出することは合意されており,虚偽契約である第1契約を締結することを決定付けたものである。さらに,随意契約の対象が既施工部分である送水管沈下対策工事と変更された際に,その設計図書を作成,提出したのは補助参加人Bである。補助参加人Bは,県の土木工事に長年携わり,責任のある立場にあったもので,補助事業等である工事を実施後に補助金等の申請を行ってはならないという極めて当然のことを理解していないはずはなく,補助参加人Bの行為は違法である。 因果関係について Bの行為が既施工部分の追加費用について随意契約という形式で支出することを決定付けたもので,補助参加人Bの主張する県の事務処理上の慣行に従えば,補助参加人Bの行為後に関与した者らによって,実際の工期に合わせた工事契約が締結されるということもあり得なかったのであるから,補助参加人Bの行為と損害との間の因果関係を否定することはできない。 b 第2契約について支出に見合った成果があるとの主張は手続を軽視するもので妥当でないし,第2契約において支出した費用が適正であるか否かは担保されていないから法の趣旨に反しないとはいえない。 契約について支出に見合った成果があるとの主張は手続を軽視するもので妥当でないし,第2契約において支出した費用が適正であるか否かは担保されていないから法の趣旨に反しないとはいえない。 その他控訴人の主張する点は,いずれも補助参加人Bの責任を免じる理由にならない。 Aて県においては,当時,1件3億円以上5億円未満の工事請負費の予算執行は部長等の専決事項とされていたから,第1契約についてもAに予 算執行権限があった。他方,支出負担行為及び狭義の支出は予算執行の一内容をなすにすぎない。そして,部長が上記権限を有し,かつ支出負担行為よりも上位の者が決裁する以上,予算執行伺は,予算の執行権限を有する者が予算の執行それ自体を決裁する制度で,極めて重要なものである。そうすると,Aにおいて,予算執行伺を決裁するに当たり,事後契約に基づく補助金申請がされないようにすることについて注意義務がないということはあり得ない。 そして,既施工の工事を抜き出して随意契約を締結することは許されないところ,本件工事が平成18年12月23日から平成21年3月25日までの工事であることや,送水管沈下対策工事がトンネルの掘削前に行われるべきものであり,これが5億円も残存するならトンネル掘削工事がほとんど始まっていないこととなり,そのことは設計図書を見れば看取できることなどに照らすと,Aは,第1契約が既施工の工事を抜き出して随意契約を締結するものであることについて容易に認識できた。 イ補助参加人Bの主張について 第1契約についてa 行為の違法性について本件の経緯に照らすと,補助参加人Bが3項目合意を主導したというべきであるし,第1契約は3項目合意の内容を単に実行するものにすぎないから ついてa 行為の違法性について本件の経緯に照らすと,補助参加人Bが3項目合意を主導したというべきであるし,第1契約は3項目合意の内容を単に実行するものにすぎないから,県(本庁)の関与があったことを踏まえても,補助参加人Bが積極的に関与したというべきであり,補助参加人Bの行為が違法でないとはいえない。 また,支出に見合った成果があるとの主張は手続を軽視するもので妥当でないし,後追い契約である第1契約の金額が適正であるか否かを担保する手続が履践されているわけではないから,第1契約の締結が法の趣旨に反しないとはいえない。さらに,覆工コンクリート工の 未施工分が,3項目合意における10億円弱分も残存していたわけではないから,いずれにしても補助参加人Bは第1契約が後追い契約となることを認識して手続を進めており,本庁の指示に従ったにすぎないとはいえない。補助参加人Bの第1契約に関する関与は重大であり,補助参加人Bの行為の違法性は軽微ではない。 b 重過失ないし過失の有無について上記aのとおり,覆工コンクリート工の未施工分が,3項目合意における10億円弱分も残存していたわけではない。また,上記aに主張したところに照らし,本庁の手続が存在することが補助参加人Bの責任を免じるものではない。さらに,補助参加人Bの地位や経歴に照らすと,利息相当額の損害が生じることも容易に予測できたというべきである。 その他補助参加人Bの主張する点はいずれも補助参加人Bの責任を免ずべき理由とはならない。 第2契約について 第3 当裁判所の判断 1 当裁判所も,被控訴人らの請求(当審において審判の対象となる部分)は,原審の認容した限度で 免ずべき理由とはならない。 第2契約について 第3 当裁判所の判断 1 当裁判所も,被控訴人らの請求(当審において審判の対象となる部分)は,原審の認容した限度で理由があると判断する。その理由は,次のとおり訂正し,後記2のとおり,当審における当事者及び補助参加人Bの補充的主張に対する判断を付加するほかは,原判決の「事実及び理由」第3の3ないし5及び7ないし11除く。)のとおりであるから,これを引用する。 原判決41頁20行目の「及び第2契約」を削除する。 原判決43頁18行目及び同25行目の「措置」の次にいずれも「やその他必要な措置」を加える。 原判決43頁26行目の「第1契約」の前に「大成JVが追加費用の請求をしたことやこれに対応するために3項目合意をしたこと,これを踏まえて対象を送水管沈下対策工事と変更した第1契約を締結したこと,その後3項目合意の対象となった工事のうちの一部が一般競争入札となり,結局他のJVが受注したため,大成JVが追加費用を要求し,第2契約が締結されたことなど,第1契約及び第2契約の締結に至る事実経過に加え,」を加える。 原判決44頁10行目の「考えられるのであって,」の次に「被控訴人らが,具体的に求める措置のほかに,その他必要な措置をとることを求めていることに照らしても,」を加える。 原判決44頁13行目の「本件監査請求」の前に「第1契約及び第2契約の締結に至る事実経過を主張するなどといった」を加える。 原判決44頁16行目の「経緯」を「経緯における行為の違法」と,同17行目の「ものというべきである」を「と解し得る」とそれぞれ改める。 原判決44頁20行目の「契機が十分に与えられていた」を「対象として認識することが十分に可能である おける行為の違法」と,同17行目の「ものというべきである」を「と解し得る」とそれぞれ改める。 原判決44頁20行目の「契機が十分に与えられていた」を「対象として認識することが十分に可能である記載内容であった」と改める。 原判決44頁21行目末尾に「その経緯において不法行為上違法と評価できる行為が存在すれば,それに基づいて損害賠償請求権を行使し得るのであるから,」を加える。 原判決46頁20行目の「及び第2契約」を削除する。 原判決49頁4行目冒頭から同16行目末尾までを次のとおり改める。 「 以上によれば,本件監査請求に係る監査請求期間の起算日を検討すべきものは,補助参加人Bの第2契約に係る支出負担行為及び支出命令に関し,賠償命令をしないことに係る怠る事実である。」原判決49頁18行目冒頭から同50頁9行目末尾までを削除する。 原判決51頁6行目の「同損害賠償請求権も発生していない」を「同損害賠償請求権が発生しておらず,又はこれを行使することができない」と改める。 原判決55頁19行目の「及び第2契約」を削除する。 原判決55頁22行目冒頭から同56頁1行目末尾までを削除する。 原判決62頁6行目の「本庁」を「本庁の技術管理課」と,同7行目の「照会する」を「照会し,変更請負額の算定においては,既工種・追加新工種の全てに請負率が適用となる旨の回答を得る」とそれぞれ改め,同行の「39頁」の次に「,甲27」を加える。 原判決63頁16行目の「本件入札時」から同17行目の「発覚したこと」までを「本件入札時に予定されていた範囲を超える送水管の沈下対策工事をしたこと」と改める。 原判決63頁22行目の「交付し,」を「交付した。同月13日,南部土木事務所は,大成JVと設計変更協議が整 でを「本件入札時に予定されていた範囲を超える送水管の沈下対策工事をしたこと」と改める。 原判決63頁22行目の「交付し,」を「交付した。同月13日,南部土木事務所は,大成JVと設計変更協議が整っていない状況であるが,当初契約金相当分の工事はほぼ完了する状況であるとして,今後の対応方針について,現工事の増額変更により処理する案と,現在施工中の分について同額変更し追加分について別件随意契約とする案とを提示して,本庁道路街路課及び土木整備統括官と協議をした。その結果,前者の案を採用すると,前記イの本庁技術管理課の見解に従えば請負率を乗じる必要があることから,後者の案が採用された(甲12の5・84頁)。そして,南部土木事務所は,大成JVに対し,」と改める。 原判決65頁1行目の「報告を受けた。」の次に「これに対し,Aは,なぜもっと早めに同額変更で対応し,別件で残った工事を発注しなかったのかを尋ねたところ,Dは,市街地における工事であり,トンネル掘削を途中で中止すると,トンネル上部にある家屋等の構造物に影響を及ぼし,安全上大 きな問題を惹起することがあり得ることや,中止して別件工事として発注するまでの経費が増大することなどから,トンネル掘削工事を完了した後での変更協議とならざるを得ず,同額変更はできなかった,工法の変更や当初予測できなかった現場での変更が生じて,最終的に精算変更することとしたため,増額となった,などと説明した。」を加える。 原判決65頁5行目の「17頁,」の次に「甲13の3・104頁,」を加える。 原判決65頁15行目の「中止された。」の次に「南部土木事務所は,残存させる覆工コンクリート工の金額を4億2000万円程度と見込んでいた。」を加える。 原判決65頁22行目の「これに係る直接工事費」を「当 頁15行目の「中止された。」の次に「南部土木事務所は,残存させる覆工コンクリート工の金額を4億2000万円程度と見込んでいた。」を加える。 原判決65頁22行目の「これに係る直接工事費」を「当初予定されていた送水管沈下対策工事に対する費用」と改める。 原判決66頁7行目の「A」の次に「及び本庁道路街路課」を,同行の「51頁」の次に「,12の5・89頁」を加える。 原判決66頁13行目の「本庁道路街路課」の前に「補助参加人Bの決裁を経て,」を加える。 原判決66頁14行目の「12月中旬,」の次に「会計課から上記の指摘を受けたため,覆工コンクリート工を対象とすることはできず,」を,同15行目の「送水管」の前に「新規の工事と認めることができ,請負率を乗じることなく随意契約を締結可能な」をそれぞれ加える。 原判決66頁18行目の「なお,」を「Aは,Dの報告を受け,上記決裁文書に添付された随意契約理由書(乙35の3)や工事設計書(乙35の9,10)を確認した上で,上記の報告を了承した。上記随意契約理由書には,本件工事につき,平成18年度に3年国債工事として契約した工事であること,掘削工,支保工,覆工コンクリート工,インバート(底版)コンクリート工,残土処理工等を実施するものであること,トンネル掘削工事はE側か ら進めてきたが,F側についてトンネル上空を通過する企業局送水管の沈下対策を追加する必要が生じたこと,沈下対策は,掘削前に注入式長尺鋼管先受工及び鏡ボルトによる補助工法を先行して行うものであり,今回新たな追加工事として随意契約を行いたい旨の記載があった。また,上記工事設計書中の平面図では,F側出口部分及びE側の一部が工事個所として摘示されている。もっとも,」と改める。 原判決68頁5行目の「指示し,」の次に 随意契約を行いたい旨の記載があった。また,上記工事設計書中の平面図では,F側出口部分及びE側の一部が工事個所として摘示されている。もっとも,」と改める。 原判決68頁5行目の「指示し,」の次に「本庁の道路街路課とともに」を加える。 原判決69頁15行目の「52」を「54」と改める。 原判決72頁7行目の「1」を削除する。 原判決76頁23行目の「本体工事に含まれる工事を新たな工種として抜き出して」を「既施工の工事(覆工コンクリート工)をも含む内容の工事を対象として」と改める。 原判決76頁25行目の「主導した上,」の次に「覆工コンクリート工を対象とすることはできない旨の指摘を受け,対象とする工事の内容を変更することとなった後も,既施工の工事である送水管沈下対策工事を対象とすることについて決裁をして承諾し,」を加える。 原判決77頁26行目の「Bに」を「Bの行為は違法ではないし,また,補助参加人Bには」と改める。 原判決78頁1行目の「しかしながら,」の次に「前記認定事実のとおり,南部土木事務所において,残存させる覆工コンクリート工の金額は4億2000万円程度と見込んでいたにとどまるところ,3項目合意は,この額を超えて,履工コンクリート工等を目的として合計9億7900万円分の随意契約を締結するというものであるから,3項目合意が既施工の覆工コンクリート工に対して新たに契約を締結する内容を含むことが明らかであるし,上記の工事金額の見込みに照らしても,覆工コンクリート工を第1契約の目的と すれば工期を偽装したとされることはなかったとの補助参加人Bの主張は前提を欠くものである。また,」を加える。 原判決78頁3行目の「本庁」の前に「仮に」を加える。 原判決78頁5行目の「従ったことにより,」の次に「補助 ることはなかったとの補助参加人Bの主張は前提を欠くものである。また,」を加える。 原判決78頁3行目の「本庁」の前に「仮に」を加える。 原判決78頁5行目の「従ったことにより,」の次に「補助参加人Bの行為の違法性が否定されるものではないし,」を加える。 原判決80頁8行目の「これらの方法」の前に「この間に」を加える。 原判決80頁19行目から同20行目にかけての「こういった取扱いが慣例化する」を「工期を偽ることが問題であると考えない」と改める。 原判決83頁6行目冒頭から同84頁14行目末尾までを次のとおり改める。 「ア Aが負担する注意義務の内容について前記前提事実のとおり,Aは,第1契約当時県の土木建築部部長の地位にあり,予算執行伺を決裁する権限を有し,実際に第1契約締結の前提となる予算執行伺の決裁をした。 そして,前記前提事実,証拠(乙7,35の1~10,乙36の1~7,乙75,証人A)及び弁論の全趣旨によれば,事務決裁規定上,第1契約締結当時,部長は,財務規則の規定に基づき,1件3億円以上5億円未満の工事請負費の予算執行を専決する権限を有するものの(事務決裁規定6条17項オ),課長が支出負担行為の専決権限を有していたこと,財務規則上,部局及びかい(歳出予算等の令達を受けてその執行をする出先機関で知事が別に指定し,告示したもの。財務規則2条1号)において予算を執行しようとするときは,その理由,金額,配当予算額(かいにあっては令達予算額)その他必要な事項を記載した書類を作成し,予算執行伺をしなければならないとされ(同規則53条1項本文),支出負担行為は,同規則53条の規定により(すなわち,予算執行伺により)決裁を受けた金額を超えてはならないとされていたこと(同規則 56条1項),予算執行伺 れ(同規則53条1項本文),支出負担行為は,同規則53条の規定により(すなわち,予算執行伺により)決裁を受けた金額を超えてはならないとされていたこと(同規則 56条1項),予算執行伺は,支出負担行為に先立って,特定の公金の支出が,予算の目的に即しているか,予算の範囲内の金額のものであるか,契約の方法として,入札か随意契約かなどを確認し,執行すべき予算の上限を決裁するもので,その後の支出負担行為において,契約の相手方,契約金額,請負契約の場合の工期等の個別具体的な項目を確定すること,予算執行伺後に徴求された見積りの金額が,予算執行伺によって定められた執行すべき予算の上限を超える場合には,契約を締結することができないこと,以上の各事実等が認められる。 以上によれば,契約金額,請負契約の場合の工期等の個別具体的な項目は,予算執行伺ではなく支出負担行為において初めて確定されるものということはできる。しかし,予算執行伺が,支出負担行為に先立って,上記内容を確認し,執行すべき予算の上限を決裁するものであり,この上限を超える予算は執行できないこと,上記事務決裁規定のとおり,予算執行に係る専決権限が課長よりも上位の部長に付与されていることに照らすと,予算執行伺は,工事の個別具体的な事項を決定する前提として,そもそも当該工事について予算を執行し公金を支出する必要性及びその上限金額を,より上位の地位にある者が判断し,違法不当な内容を含む工事に対して予算が執行されないようにする手続であるということができる。したがって,予算執行伺の決裁権者であるAとしては,予算執行伺及びその添付書類並びにそれに関するやりとり等から違法な内容を含む工事に対して予算が執行され,支出負担行為がされる可能性があることを容易に認識し得たのであれば,予算 権者であるAとしては,予算執行伺及びその添付書類並びにそれに関するやりとり等から違法な内容を含む工事に対して予算が執行され,支出負担行為がされる可能性があることを容易に認識し得たのであれば,予算執行伺を決裁せず,担当職員らに事情を確認するなどして,違法な支出負担行為がされることを阻止すべき職務上の注意義務を負うものと解するべきである。そして,決裁権者としては,予算執行伺及び添付書類の記載内容を確認した上で決裁することは最低限求められる義務であり,仮にこれらを怠ったとすれ ば,上記義務を甚だしく怠ったとして,違法な支出負担行為によって県に生じた損害につき,不法行為責任を免れないというべきである。 イ Aの重過失の存否について前記認定事実によれば,Aは,当初,当時の部下であるDから,対象とする工事の内容を覆工コンクリート工とする予算執行伺の決裁を求められた際,同人からの報告及びその際の質問と回答により,大成JVとの間で,設計変更に係る追加費用の負担は本来は変更の時点で同額変更し,未施工分について別件で発注すべきものを,それをしなかったため,既に施工済みの工事を新規の追加工事として随意契約を締結するものであることを理解した上で,同決裁をしたものである。この点において,既にAには違法な契約が締結されようとしていることの認識があったと認められる。 その後,Dから,会計課から当初の契約内容に含まれている覆工コンクリート工等を抜き出して改めて随意契約とすることは困難であると指摘を受けたことから,随意契約の対象を送水管沈下対策工事に変更することの報告を受け,送水管沈下対策工事がトンネルを掘削する前に行われるべき工事を対象とするものであることを容易に理解し得る内容の随意契約理由書等を確認の上,これを了承し,これを受けて,その 変更することの報告を受け,送水管沈下対策工事がトンネルを掘削する前に行われるべき工事を対象とするものであることを容易に理解し得る内容の随意契約理由書等を確認の上,これを了承し,これを受けて,その後に第1契約が締結された。以上によれば,Aは,上記送水管対策工事が既に施工済みのものであること,そのような施工済みの工事について再度請負契約を締結するという違法な行為に予算が執行され,ひいては契約が締結され得ることを認識していたか,少なくとも容易に認識し得たものというべきである。 そうすると,Aは,施工済みの工事について再度請負契約を締結するという違法な行為に予算が執行され,ひいては契約が締結され得ることを認識し,又は容易に認識し得たから,送水管沈下対策工事を対象とす る予算執行伺を決裁しないなどして,違法な内容の工事契約が締結されることを防ぐ義務を負っていたというべきところ,これを怠り,上記のとおりの内容の工事についての予算執行を了承したものであり,その結果第1契約が締結されるに至ったのであり,上記の義務違反について重大な過失があったというべきである。 これに対し,Aは,信頼する部下からの報告があり,新規の工事について契約を締結するものだと認識していたという趣旨の証言も繰り返ししているが,DがAに対し,予算執行伺の添付書類を見れば明らかに虚偽と判明する説明をしたとは考えられないし,Aも添付書類を確認せずに決裁印を押捺したり,工事の変更を了承するはずもないから同証言は信用できない。仮に,添付書類を確認せずに,部下の報告を根拠や裏付けなく軽信し,又は新規の工事についての契約だと勝手に思い込んで決裁したとすれば,そのこと自体重過失というべきことは前に判示したとおりであって,結局,上記証言は,Aの重過失を否定するものに 拠や裏付けなく軽信し,又は新規の工事についての契約だと勝手に思い込んで決裁したとすれば,そのこと自体重過失というべきことは前に判示したとおりであって,結局,上記証言は,Aの重過失を否定するものにはなり得ない。 加えて,Aは,本件工事が国庫補助金の対象となっていることを認識していた(甲12の8,乙35の6,7)のであるから,本件工事において補助金適正化法に反する違法な契約を締結すれば,補助金の交付決定の取消し並びに補助金等及び利息の返還命令を受け得ることも当然に認識し得たといえるから,本件で被控訴人らが主張している本件利息分の損害の発生についても,Aにおいて,少なくとも重大な過失があったものと認められる。」原判決84頁19行目の「第1契約」から同20行目の「行為により」までを「第1契約締結により」と改める。 2 当審における当事者及び補助参加人Bの補充的主張に対する判断 控訴人の主張について ア監査請求前置の有無(本案前の)について本件監査請求に係る請求書において,Aらに対する不法行為に基づく損害賠償請求権に係る記載やその請求原因事実となる具体的な行為に係る明示的な記載がされていないとしても,第1契約及び第2契約の締結に至る経緯等における違法,不当についても監査の対象とする趣旨であったと解することができることは前記判示(訂正後の原判決の「事実及び理由」第3の3)のとおりである。また,具体的な監査請求の対象は,当該監査請求において請求人が何を対象として取り上げる意思であったのかを,請求書の記載内容,添付書面等に照らして客観的,実質的に判断すべきものであり,通常は生の社会的事実を取り上げる意思であって,違法事由はもちろん請求の法的根拠によっても分断されないものである。 かを,請求書の記載内容,添付書面等に照らして客観的,実質的に判断すべきものであり,通常は生の社会的事実を取り上げる意思であって,違法事由はもちろん請求の法的根拠によっても分断されないものである。そして,控訴人の主張する被控訴人らの訴訟における主張内容は,請求の法的根拠等を明らかにするよう求められたのに対し,訴訟の初期の段階で答えたものであり,訴訟の進行のため当面の法律構成を明らかにしたにすぎないと解されるのであって,本件監査請求において,不法行為に基づく損害賠償請求を除外する意思であったと主張するものとまでは認められない。よって,監査請求の対象が上記の被控訴人らの訴訟における主張により直ちに左右されるものではない。 イ監査請求期間の制限に係る規定(法242条2項本文)の適用の有無(本案前の 第三者の地方公共団体に対する不法行為に基づいて当該地方公共団体が当該第三者に対して取得したとされる損害賠償請求権の行使を怠る事実を対象とする監査請求については,そこに当該地方公共団体の財務会計行為が介在し,当該行為が客観的には財務会計法規に違反するといい得る場合であっても,監査委員が損害の発生を含む不法行為の成否を監査するに際して当該行為が財務会計法規に違反して違法であるかどうかの判断をしな ければならない関係にないときは,法242条2項の規定の適用はないと解すべきである。そして,第1契約に関しAらの行為について不法行為の成否を判断するに当たっては,対象となるAらの行為は財務会計上の行為に当たらないものであることや,損害として主張されているのが本件返還命令により生じた利息相当額であることからすれば,必ずしも当該行為が財務会計法規に違反して違法であるかどうかの判断をしなければならないものとは解されない。 ウ監 主張されているのが本件返還命令により生じた利息相当額であることからすれば,必ずしも当該行為が財務会計法規に違反して違法であるかどうかの判断をしなければならないものとは解されない。 ウ監査請求期間の起算日(本案前のについて本件利息分の損害は,本件取消決定及び本件返還命令によって初めて生じたものであり,少なくとも本件取消決定がされるまでは,補助参加人Bの第2契約に係る支出負担行為及び支出命令に関し,本件利息分に係る損害賠償請求権が発生しておらず,又はこれを行使することができないことは前記判示(訂正後の原判決の「事実及び理由」第3の5)のとおりである。控訴人の主張するように後に請求の拡張をし得えたり,第2契約に係る公金支出それ自体に対する監査請求とは別に監査請求がし得ることとなるとしても,上記判断は左右されない。 エ補助参加人Bについて 第1契約についてa 行為の違法性について既に施工された工事の一部を取り出して新たな請負契約を締結することが従来行われていたことを認めるに足りる的確な証拠はなく(控訴人主張のGトンネル工事(乙88~90)における事例がそのようなものであるかは証拠上明らかではない。),これを内容とする3項目合意が違法でないとの控訴人の主張はその前提を欠き採用できない。 また,補助参加人Bが既施工の工事を対象として新たな請負契約を 随意契約で締結するという違法な内容を含む3項目合意を主導したほか,覆工コンクリート工を対象とすることはできない旨の指摘を受け,対象とする工事の内容を変更することとなった後も,既施工の工事である送水管沈下対策工事を対象とすることについて決裁をして承諾していた以上,これらは,本件取消決定や本件返還命令を招く蓋然性の高い行為で 象とする工事の内容を変更することとなった後も,既施工の工事である送水管沈下対策工事を対象とすることについて決裁をして承諾していた以上,これらは,本件取消決定や本件返還命令を招く蓋然性の高い行為であったというほかなく,補助参加人Bが第1契約の締結等に関する権限を有しておらず,第1契約の締結及びこれに基づく支出に関し補助参加人B以外の者が関与していたことは,補助参加人Bの行為について違法性があるとの判断を左右するものではない。 b 因果関係について補助参加人Bの行為の内容及びその性質が前記aのとおりのものである以上,第1契約の締結及びこれに基づく支出に関し補助参加人B以外の者が関与していたからといって,補助参加人Bの行為と損害との間の相当因果関係の存在が否定されるものではない。 第2契約について補助参加人Bの財務会計法規に違反する第2契約の締結について,前記判示(訂正後の原判決の「事実及び理由」第3の9)のとおり,法や地方財政法の趣旨に反しないなどということはできず,その違法性が軽微であるとはいえない。 その他,控訴人が第2契約の締結につき補助参加人Bに重過失がないとして種々主張する点も,いずれも違法な第2契約を締結することを正当化し得るものではなく(むしろ契約締結日以降を工事開始日とする慣行が存在するということは,工事開始後に契約を締結することが許されないことの表れであるとも解し得る。),補助参加人Bに重過失があるとの判断を左右する事情とはいえない。 オ A Aの負う義務についてAの権限が第1契約に係る予算執行伺の決裁にとどまるものであったとしてもAには前記判示(訂正後の原判決の「事実及び理由」第3の1って,控訴人の主張は採用することが Aの負う義務についてAの権限が第1契約に係る予算執行伺の決裁にとどまるものであったとしてもAには前記判示(訂正後の原判決の「事実及び理由」第3の1って,控訴人の主張は採用することができない。 なお,前記判示(訂正後の原判決の「事実及び理由」第3の11)のとおり,第1契約に係る予算執行伺は,施工済みの工事について再度請負契約を締結することを内容とする点で違法なものであるし,既施工の工事の一部を取り出して新たな請負契約を締結することが従来行われていたことを認めるに足りる的確な証拠はないことおりであって,控訴人の主張は,これらの点からも前提を欠き採用することができない。 違法性,重過失及び因果関係の有無について補助参加人Bの行為に違法性がない,補助参加人Bの行為と損害との間に因果関係がない,あるいはAに作為義務がないとの控訴人の主張がいずれも採用できない以上,控訴人の主張はその前提を欠き採用することができない。 なお,控訴人は,原判決は,Aの過失について,被控訴人らの主張する過失とは異なる過失を認定しており,弁論主義違反がある旨主張するが,被控訴人らの主張は前記(訂正後の原判決の「事実及び理由」第2の3被控訴人らの主張))のとおりのものということができるから,原判決の認定が弁論主義に違反するとはいえない。 補助参加人Bの主張についてア第1契約について 行為の違法性について補助参加人Bが第1契約の締結等に関する権限を有していなかったと してもそのことが補助参加人Bの行為の違法性に影響を及ぼすものでないこと,既施工の工事である送水管沈下対策工事を対象とすることについて決裁をしたことが違法と評価できることある。 たと してもそのことが補助参加人Bの行為の違法性に影響を及ぼすものでないこと,既施工の工事である送水管沈下対策工事を対象とすることについて決裁をしたことが違法と評価できることある。 また,前記判示(訂正後の原判決の「事実及び理由」第3の9及び1支出に見合った成果があるからといって,補助参加人Bの県に現実の損害を与えた行為の違法性が軽微であるともいえない。 重過失ないし過失の有無補助参加人Bの,既に完了したとはいえない覆工コンクリート工を抜き出して別件随意契約の対象とすることを予定したのであるから,工期を偽った第1契約が締結されることを認識していないとの主張がその前提を欠くことは前記判示(訂正後の原判決の「事実及び理由」第3の1 )のとおりである。 また,補助参加人Bりのものである以上,第1契約の締結及びこれに基づく支出,これに引き続く本件取消決定及び本件返還命令等に関し補助参加人B以外の者が関与していたからといって,補助参加人Bの重過失が否定されるものではないし,違法に受領した金員について受領時からの利息を付して返還する必要があることは当然のことである以上,本件利息分の返還を求められる可能性があることは容易に認識し得たというべきである。 さらに,本件工事につき,補助事業として補助金の交付を受けることを前提としていたとか,違法性の意識がなかったからといって,前記判示(訂正後の原判決の「事実及び理由」第3の10)の点も踏まえると,そのことにより本件取消決定及び本件返還命令の予見可能性がないとか,これらを回避すべき義務を怠ったことにならないとは いえず,補助参加人Bの重過失が否定されるものではない。 イ第2契約について 行為の違法性につい 能性がないとか,これらを回避すべき義務を怠ったことにならないとは いえず,補助参加人Bの重過失が否定されるものではない。 イ第2契約について 行為の違法性について補助参加人Bの第2契約の締結の違法性が軽微とはいえないことは, 重過失ないし過失の有無 Bの行為が違法であり,かつ,補助参加人Bに重過失が認められることはこれまでに判示したとおりであって,補助参加人Bの主張はその前提を欠くし,違法であるとの意識がなかったことをもって重過失が存在しないとはいえないこと 3 よって,原判決は正当であって,本件控訴は理由がないから棄却することとして,主文のとおり判決する。 福岡高等裁判所那覇支部民事部 裁判長裁判官多見谷寿郎 裁判官蛭川明彦 裁判官神谷厚毅

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